JP2011060501A - リチウムイオン電池用包装材 - Google Patents
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Abstract
【課題】成型性、耐衝撃性に優れ、エンボス成型時や折り曲げ時にクラックにより辺や角が破断しにくく、かつ耐電解液特性に優れ、フッ酸が発生しても接着樹脂層の接着剤が劣化して密着力が低下することを抑制できるリチウムイオン電池用包装材の提供を目的とする。
【解決手段】基材層11の一方の面に、少なくとも接着剤層12、アルミニウム箔層13、化成処理層14、接着樹脂層15及びシーラント層16が順次積層したリチウムイオン電池用包装材10において、接着樹脂層15が、酸変性スチレン系エラストマー樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂からなる混合樹脂を含有し、前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂(質量:Ma)と酸変性ポリオレフィン樹脂(質量:Mb)との混合比(Mb/Ma)が1.5〜99であることを特徴とするリチウムイオン電池用包装材10。
【選択図】図1
【解決手段】基材層11の一方の面に、少なくとも接着剤層12、アルミニウム箔層13、化成処理層14、接着樹脂層15及びシーラント層16が順次積層したリチウムイオン電池用包装材10において、接着樹脂層15が、酸変性スチレン系エラストマー樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂からなる混合樹脂を含有し、前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂(質量:Ma)と酸変性ポリオレフィン樹脂(質量:Mb)との混合比(Mb/Ma)が1.5〜99であることを特徴とするリチウムイオン電池用包装材10。
【選択図】図1
Description
本発明は、リチウムイオン電池用包装材に関する。
近年、パソコン、携帯電話などの携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星、車両などに用いられる電池として、超薄型化、小型化の可能なリチウムイオン電池が盛んに開発されている。このようなリチウムイオン電池に用いる包装材としては、従来の電池用包材として用いられている金属製の缶とは異なり、軽量で、放熱性が高く、電池の形状を自由に選択できるという点から、少なくともアルミニウム箔層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層された多層フィルムを袋状に成型加工した包装材が注目を集めている。
このような多層フィルムは一般的に、アルミニウム箔層とシーラント層の間の接着樹脂層が、熱硬化性材料であるドライラミネート用接着樹脂層からなるドライラミネート構成(基材層/接着剤層/アルミニウム箔層/化成処理層/接着樹脂層/シーラント層)と、アルミニウム箔層とシーラント層の間の接着樹脂層が熱可塑性材料からなる熱ラミネート構成(基材層/接着剤層/アルミニウム箔層/化成処理層/接着樹脂層/シーラント層)の2種類のものに大きく分類される。
ドライラミネート構成の多層フィルムは、エンボス加工など、成型性が求められるポータブル機器などの民生用途に使用される。一方、熱ラミネート構成の多層フィルムは、信頼性や安全性が求められる電気自動車、衛星、潜水艦、電動自転車などの大型用途に使用される。
ドライラミネート構成の多層フィルムは、エンボス加工など、成型性が求められるポータブル機器などの民生用途に使用される。一方、熱ラミネート構成の多層フィルムは、信頼性や安全性が求められる電気自動車、衛星、潜水艦、電動自転車などの大型用途に使用される。
リチウムイオン電池は、前述した多層フィルムを袋状に加工したリチウムイオン電池用包装材の内部に、正極、セパレータ、負極、電解液及びタブなどの内容物を密封することにより得られる。該包装材に前記内容物を密封する形態としては、下記2種類の形態が知られている。
(1)多層フィルムを用いてパウチを形成し、該パウチ内に内容物を収納するパウチタイプ。
(2)多層フィルムをプレスで冷間成型して凹部を形成し、該凹部に内容物を収納するエンボスタイプ。近年、効率的に多層フィルム内に前記内容物を配置するために、片面だけでなく両面に凹部が形成されるようにエンボス成型した複数の多層フィルムを貼り合わせ、収納部分である凹部の体積を増加させ、電池容量を増加させることも行われている。
(1)多層フィルムを用いてパウチを形成し、該パウチ内に内容物を収納するパウチタイプ。
(2)多層フィルムをプレスで冷間成型して凹部を形成し、該凹部に内容物を収納するエンボスタイプ。近年、効率的に多層フィルム内に前記内容物を配置するために、片面だけでなく両面に凹部が形成されるようにエンボス成型した複数の多層フィルムを貼り合わせ、収納部分である凹部の体積を増加させ、電池容量を増加させることも行われている。
しかしながら、エンボス成型により凹部が形成された多層フィルムは、金型での絞り加工時やヒートシール後の折り曲げ時に、多層フィルム内の各層の延伸性の差や、加熱工程でのフィルムの結晶化状態により、アルミニウム箔層と接着樹脂層の間が剥離したり、接着樹脂層とシーラント層でクラックが生じたりすることがある。また、エンボス成型時には、延伸率の高い部位であるフィルムの辺や角でクラックによる破断が起こりやすい。前記多層フィルムの辺や角における破断は、一般的にドライラミネート品よりも熱ラミネート品の方が起こりやすい。そのため、熱ラミネート品であっても、ドライラミネート品と同等の成型性や耐衝撃性を付与し、エンボス成型時にクラックによる破断がないようにすることが求められている。
また、リチウムイオン電池の内容物としては、正極材及び負極材と共に、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの非プロトン性の溶媒に、電解質(リチウム塩)を溶解した電解液、もしくは該電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層が用いられる。電解質のリチウム塩(LiPF6、LiBF4など)は、溶媒中に残存する水分や、接着樹脂層やシーラント層の端部などから侵入してくる水分と反応し、フッ酸を発生させる。一般的に熱ラミネート品よりもドライラミネート品の接着樹脂層の方がエステル基やウレタン基など加水分解性の高い結合部を多く有している。そのため、ドライラミネート品は、フッ酸による加水分解反応が起こりやすく、アルミニウム箔層とシーラント層間の密着力が低下し層間剥離が起こりやすいなど、耐電解液特性や耐フッ酸性が低い。そのため、ドライラミネート品であっても、熱ラミネート品と同程度に、アルミニウム箔層とシーラント層間の耐電解液特性や耐フッ酸性を持たせることが求められている。
そこで、エンボス成型時に多層フィルム内のクラックにより発生する辺や角の破断対策や、リチウム塩の加水分解により発生するフッ酸や電解液による、接着剤の劣化対策などが検討されている。例えば、下記のリチウムイオン電池用包装材が示されている。
(i)電解液やフッ酸と接触しても剥離を抑制するために、接着樹脂層に、スチレン系熱可塑性エラストマーを含有する接着剤を用いたリチウムイオン電池用包装材(特許文献1、2)。金属とポリオレフィンフィルムの間に用いる該接着剤は、スチレン系熱可塑性エラストマーとカップリング剤、又はスチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤からなる。スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として用いることにより、金属とポリオレフィンフィルムの接着性が向上し、85℃の高温でも優れた接着性が保持され、また電解液に対しても耐性が付与される。
(ii)プレス成型、折り曲げ部位における白化を抑制するために、オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有する接着層、熱接着性樹脂層を用いたリチウムイオン電池用包装材(特許文献3)。該接着層は酸変性ポリオレフィン樹脂とオレフィン系エラストマー樹脂からなる。酸変性ポリオレフィン樹脂にオレフィン系エラストマーを添加することで、接着層の強靭性、耐熱性、成型性が向上する。
(i)電解液やフッ酸と接触しても剥離を抑制するために、接着樹脂層に、スチレン系熱可塑性エラストマーを含有する接着剤を用いたリチウムイオン電池用包装材(特許文献1、2)。金属とポリオレフィンフィルムの間に用いる該接着剤は、スチレン系熱可塑性エラストマーとカップリング剤、又はスチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤からなる。スチレン系熱可塑性エラストマーを主成分として用いることにより、金属とポリオレフィンフィルムの接着性が向上し、85℃の高温でも優れた接着性が保持され、また電解液に対しても耐性が付与される。
(ii)プレス成型、折り曲げ部位における白化を抑制するために、オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有する接着層、熱接着性樹脂層を用いたリチウムイオン電池用包装材(特許文献3)。該接着層は酸変性ポリオレフィン樹脂とオレフィン系エラストマー樹脂からなる。酸変性ポリオレフィン樹脂にオレフィン系エラストマーを添加することで、接着層の強靭性、耐熱性、成型性が向上する。
しかしながら、(i)のリチウムイオン電池用包装材は、熱可塑性エラストマーの耐熱性が低いため、熱可塑性エラストマーを主成分として使用する場合、接着樹脂層が高温に曝されると該層の端部から電解液が侵入する。そのため、侵入した電解液により接着剤の膨潤、分解が起こり、金属とポリオレフィンフィルムの間の密着力が低下する。また、前記接着剤がチタン系のカップリング剤を含有している場合は、金属との密着に寄与する無水マレイン酸とチタンが架橋構造を形成する。そのため、前記と同様に金属とポリオレフィンフィルムの間の密着力が低下する。
また、(ii)のリチウムイオン電池用包装材では、プレス成型時の白化を抑制するために、接着剤において酸変性ポリオレフィン樹脂に添加するオレフィン系エラストマー樹脂の量を増加させていくと、該接着剤に含有されるマレイン酸の相対量が少なくなる。その結果、金属との密着力が低下するため、耐白化性と密着性を両立させることは困難である。
また、(ii)のリチウムイオン電池用包装材では、プレス成型時の白化を抑制するために、接着剤において酸変性ポリオレフィン樹脂に添加するオレフィン系エラストマー樹脂の量を増加させていくと、該接着剤に含有されるマレイン酸の相対量が少なくなる。その結果、金属との密着力が低下するため、耐白化性と密着性を両立させることは困難である。
そこで、本発明は、成型性、耐衝撃性に優れ、エンボス成型時や折り曲げ時にクラックにより辺や角が破断しにくく、かつ耐電解液特性に優れ、フッ酸が発生しても接着樹脂層の接着剤が劣化して密着力が低下することを抑制できるリチウムイオン電池用包装材の提供を目的とする。
本発明のリチウムイオン電池用包装材は、基材層の一方の面に、少なくとも接着剤層、アルミニウム箔層、化成処理層、接着樹脂層及びシーラント層が順次積層したリチウムイオン電池用包装材において、前記接着樹脂層が、酸変性スチレン系エラストマー樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂からなる混合樹脂を含有し、前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂(質量:Ma)と酸変性ポリオレフィン樹脂(質量:Mb)との混合比(Mb/Ma)が1.5〜99であることを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン電池用包装材は、前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂が、無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂であることが好ましい。
また、前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
また、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のマレイン酸の変性率が0.1〜20質量%であることが好ましい。
また、前記無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂が、無水マレイン酸変性の(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリブチレン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリイソプレン/ポリスチレン)共重合体からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂のビガッド軟化点が100℃以上180℃未満であることが好ましい。
また、前記接着樹脂層が、受酸剤、粘着付与剤、カップリング剤、安定剤、充填剤、難燃剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
また、前記化成処理層が、腐蝕防止処理剤を塗布して形成された塗膜であることが好ましい。
また、本発明のリチウムイオン電池用包装材は、前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂が、無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂であることが好ましい。
また、前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
また、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のマレイン酸の変性率が0.1〜20質量%であることが好ましい。
また、前記無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂が、無水マレイン酸変性の(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリブチレン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリイソプレン/ポリスチレン)共重合体からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂のビガッド軟化点が100℃以上180℃未満であることが好ましい。
また、前記接着樹脂層が、受酸剤、粘着付与剤、カップリング剤、安定剤、充填剤、難燃剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
また、前記化成処理層が、腐蝕防止処理剤を塗布して形成された塗膜であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池用包装材は、成型性、耐衝撃性に優れ、エンボス成型時や折り曲げ時にクラックにより辺や角が破断しにくく、かつ耐電解液特性に優れ、フッ酸が発生しても接着樹脂層の接着剤が劣化して密着力が低下することを抑制できる。
以下、本発明のリチウムイオン電池用包装材の実施形態の一例を示して詳細に説明する。
本実施形態のリチウムイオン電池用包装材10(以下、「包装材10」という。)は、図1に示すように、基材層11の一方の面に、接着剤層12、アルミニウム箔層13、化成処理層14、接着樹脂層15及びシーラント層16が順に積層された多層フィルムである。
本実施形態のリチウムイオン電池用包装材10(以下、「包装材10」という。)は、図1に示すように、基材層11の一方の面に、接着剤層12、アルミニウム箔層13、化成処理層14、接着樹脂層15及びシーラント層16が順に積層された多層フィルムである。
(基材層)
基材層11は、リチウムイオン電池を製造する時のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
基材層11としては、絶縁性を有する樹脂層が好ましい。該樹脂層としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。なかでも、成型性、耐熱性、耐ピンホール性、絶縁性を向上させる点から、延伸ポリアミドフィルムや延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
基材層11は、単層であってもよく、複数層であってもよい。
基材層11は、リチウムイオン電池を製造する時のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
基材層11としては、絶縁性を有する樹脂層が好ましい。該樹脂層としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。なかでも、成型性、耐熱性、耐ピンホール性、絶縁性を向上させる点から、延伸ポリアミドフィルムや延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
基材層11は、単層であってもよく、複数層であってもよい。
基材層11は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤などの添加剤が配合されていてもよい。スリップ剤としては、脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミドなど)などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、シリカなどの各種フィラー系のアンチブロッキング剤が好ましい。添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
基材層11の厚さは、6〜40μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。
基材層11の厚さは、6〜40μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。
(接着剤層)
接着剤層12は、基材層11とアルミニウム箔層13を接着する層である。
接着剤層12を形成する接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどのポリオールを主剤とし、芳香族系や脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした2液硬化型のポリウレタン系接着剤が好ましい。該接着剤は、塗工後に40℃で4日以上のエージング処理を行うことで、主剤のポリオールのOH基と、硬化剤のイソシアネートのNCO基が反応し、基材層11とアルミニウム箔層13が強固に接着される。
主剤のOH基に対する硬化剤のNCO基のモル比(NCO/OH)は、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
接着剤層12の厚さは、接着強度や、追随性、加工性などの点から、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
接着剤層12は、基材層11とアルミニウム箔層13を接着する層である。
接着剤層12を形成する接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどのポリオールを主剤とし、芳香族系や脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした2液硬化型のポリウレタン系接着剤が好ましい。該接着剤は、塗工後に40℃で4日以上のエージング処理を行うことで、主剤のポリオールのOH基と、硬化剤のイソシアネートのNCO基が反応し、基材層11とアルミニウム箔層13が強固に接着される。
主剤のOH基に対する硬化剤のNCO基のモル比(NCO/OH)は、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
接着剤層12の厚さは、接着強度や、追随性、加工性などの点から、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
(アルミニウム箔層)
アルミニウム箔層13の材質としては、公知の軟質アルミニウム箔が使用できるが、耐ピンホール性、及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。
該アルミニウム箔における鉄の含有量は、アルミニウム箔の全質量100質量%に対して、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であれば、耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が9.0質量%以下であれば、柔軟性が向上する。
アルミニウム箔層13の材質としては、公知の軟質アルミニウム箔が使用できるが、耐ピンホール性、及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。
該アルミニウム箔における鉄の含有量は、アルミニウム箔の全質量100質量%に対して、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であれば、耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が9.0質量%以下であれば、柔軟性が向上する。
また、アルミニウム箔は、未処理のアルミニウム箔も用いてもよいが、脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。脱脂処理としては、大きく区分するとウェットタイプとドライタイプが挙げられる。
ウェットタイプの脱脂処理としては、酸脱脂やアルカリ脱脂などが挙げられる。
酸脱脂に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、アルミニウム箔のエッチング効果が向上する点から、必要に応じて鉄(III)イオンやセリウム(III)イオンなどの供給源となる各種金属塩を配合してもよい。
アルカリ脱脂に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムなどの強エッチングタイプのアルカリが挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤を配合したものを用いてもよい。
ウェットタイプの脱脂処理は浸漬法やスプレー法で行われる。
ウェットタイプの脱脂処理としては、酸脱脂やアルカリ脱脂などが挙げられる。
酸脱脂に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、アルミニウム箔のエッチング効果が向上する点から、必要に応じて鉄(III)イオンやセリウム(III)イオンなどの供給源となる各種金属塩を配合してもよい。
アルカリ脱脂に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムなどの強エッチングタイプのアルカリが挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤を配合したものを用いてもよい。
ウェットタイプの脱脂処理は浸漬法やスプレー法で行われる。
ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、アルミニウムを焼鈍処理する工程において、その処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。また、該脱脂処理の他にも、フレーム処理やコロナ処理などが挙げられる。さらには特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解・除去する脱脂処理も挙げられる。
アルミニウム箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、9〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。
(化成処理層)
化成処理層14は、電解液と水分との反応により発生するフッ酸によるアルミニウム箔層13の腐蝕を防止し、さらにアルミニウム箔層13の塗れ性を向上させて接着樹脂層15との密着力を向上させる役割を果たす。
化成処理層14は、塗布型、又は浸漬型の耐酸性の腐蝕防止処理剤により形成された塗膜であることが好ましい。化成処理層14が前記塗膜であれば、アルミニウム箔層13の酸に対する腐蝕の防止効果が向上する。さらに、アルミニウム箔層13上にアンカーが形成されることでアルミニウム箔層13と接着樹脂層15の密着力がより強固になり、電解液などの耐内容物特性が向上し、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下が抑制できる。
該塗膜は、例えば、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物と各種熱硬化性の水溶性樹脂からなる腐蝕防止処理剤によるクロメート処理、希土類元素である酸化物(例えば酸化セリウム)とリン酸塩と各種樹脂からなる腐蝕防止処理剤によるセリアゾール処理などにより形成できる。
化成処理層14は、アルミニウム箔層13の耐蝕性を満たす塗膜であれば、上記処理で形成した塗膜には限定されない。例えば、Zr処理、ZrO処理などが挙げられる。
化成処理層14の厚さは、腐蝕防止機能とアンカーとしての機能の点から、10nm〜5μmが好ましく、20nm〜500nmがより好ましい。
化成処理層14は、電解液と水分との反応により発生するフッ酸によるアルミニウム箔層13の腐蝕を防止し、さらにアルミニウム箔層13の塗れ性を向上させて接着樹脂層15との密着力を向上させる役割を果たす。
化成処理層14は、塗布型、又は浸漬型の耐酸性の腐蝕防止処理剤により形成された塗膜であることが好ましい。化成処理層14が前記塗膜であれば、アルミニウム箔層13の酸に対する腐蝕の防止効果が向上する。さらに、アルミニウム箔層13上にアンカーが形成されることでアルミニウム箔層13と接着樹脂層15の密着力がより強固になり、電解液などの耐内容物特性が向上し、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下が抑制できる。
該塗膜は、例えば、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物と各種熱硬化性の水溶性樹脂からなる腐蝕防止処理剤によるクロメート処理、希土類元素である酸化物(例えば酸化セリウム)とリン酸塩と各種樹脂からなる腐蝕防止処理剤によるセリアゾール処理などにより形成できる。
化成処理層14は、アルミニウム箔層13の耐蝕性を満たす塗膜であれば、上記処理で形成した塗膜には限定されない。例えば、Zr処理、ZrO処理などが挙げられる。
化成処理層14の厚さは、腐蝕防止機能とアンカーとしての機能の点から、10nm〜5μmが好ましく、20nm〜500nmがより好ましい。
(接着樹脂層)
接着樹脂層15は、酸変性ポリオレフィン樹脂と酸変性スチレン系エラストマー樹脂との混合樹脂を含有する層である。本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂とは、酸をグラフト共重合して変性したポリオレフィン樹脂を意味する。また、酸変性スチレン系エラストマー樹脂とは、酸をグラフト共重合して変性したスチレン系エラストマー樹脂を意味する。
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、カルボン酸、エポキシ化合物によりグラフト変性したポリオレフィン樹脂などが挙げられ、無水マレイン酸でグラフト変性した無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。また、前記のものにアクリル酸やメタクリル酸などの極性分子を共重合した共重合体、架橋ポリオレフィンなどのポリマーなどが挙げられ、所望の特性に応じて分散、共重合などを実施した樹脂が使用できる。
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。前記酸変性ポリオレフィン樹脂が無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であれば、アルミニウム箔層13とシーラント層16の密着力をより強固にできる。そのため、電解液などの耐内容物特性が向上し、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下が抑制できる。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
接着樹脂層15は、酸変性ポリオレフィン樹脂と酸変性スチレン系エラストマー樹脂との混合樹脂を含有する層である。本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂とは、酸をグラフト共重合して変性したポリオレフィン樹脂を意味する。また、酸変性スチレン系エラストマー樹脂とは、酸をグラフト共重合して変性したスチレン系エラストマー樹脂を意味する。
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、カルボン酸、エポキシ化合物によりグラフト変性したポリオレフィン樹脂などが挙げられ、無水マレイン酸でグラフト変性した無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。また、前記のものにアクリル酸やメタクリル酸などの極性分子を共重合した共重合体、架橋ポリオレフィンなどのポリマーなどが挙げられ、所望の特性に応じて分散、共重合などを実施した樹脂が使用できる。
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。前記酸変性ポリオレフィン樹脂が無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であれば、アルミニウム箔層13とシーラント層16の密着力をより強固にできる。そのため、電解液などの耐内容物特性が向上し、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下が抑制できる。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
無水マレイン酸変性ポリプロピレンのマレイン酸の変性率は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。変性率が0.1質量%以上であれば、アルミニウム箔層13との密着力が向上する。変性率が20質量%以下であれば、シーラント層16との密着力が向上する。
無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂のビガット軟化点は、100℃以上180℃未満が好ましい。ビガッド軟化点が100℃以上であれば、耐熱性が向上し、接着樹脂層15が高温下で軟化して強度が低下することを抑制しやすい。そのため、ホットメルト型接着剤を用いた場合によく見られる、高温でのアルミニウム箔層13とシーラント層16の密着力の低下を防止しやすい。ビガッド軟化点が180℃未満であれば、容易に軟化できるため接着特性が得られやすい。
ビガッド軟化点は、JIS K7206に準拠した方法で測定される。
ビガッド軟化点は、JIS K7206に準拠した方法で測定される。
スチレン系エラストマー樹脂は、ポリスチレンに代表されるハードセグメントとエチレン、ブタジエンに代表されるソフトセグメントからなり、ハードセグメントとソフトセグメントの割合やソフトセグメントへのグラフト反応によりカルボキシ基、エポキシ基などを付与して変性し、各種樹脂との相溶性や、各種基材との密着性を改良できる。
酸変性スチレン系エラストマー樹脂としては、カルボン酸、エポキシ化合物によりグラフト変性したスチレン系エラストマー樹脂が挙げられ、無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂が好ましい。前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂が無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂であれば、アルミニウム箔層13とシーラント層16の密着力をより強固にできる。そのため、電解液などの耐内容物特性が向上し、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下を抑制できる。
酸変性スチレン系エラストマー樹脂としては、カルボン酸、エポキシ化合物によりグラフト変性したスチレン系エラストマー樹脂が挙げられ、無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂が好ましい。前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂が無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂であれば、アルミニウム箔層13とシーラント層16の密着力をより強固にできる。そのため、電解液などの耐内容物特性が向上し、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下を抑制できる。
無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂としては、無水マレイン酸変性のSEBS(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリブチレン/ポリスチレン)共重合体、SBS(ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレン)共重合体、SEPS(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリスチレン)共重合体、SEP(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)共重合体、SIS(ポリスチレン/ポリイソプレン/ポリスチレン)共重合体からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。前記無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂を用いれば、接着樹脂層15の柔軟性が向上する。そのため、エンボス成型時や折り曲げ時にクラックによる辺や角の破断を抑制しやすい。
酸変性スチレン系エラストマー樹脂としては、無水マレイン酸変性SEBSが特に好ましい。
酸変性スチレン系エラストマー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性スチレン系エラストマー樹脂としては、無水マレイン酸変性SEBSが特に好ましい。
酸変性スチレン系エラストマー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性スチレン系エラストマー樹脂のマレイン酸の変性率は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。変性率が0.1質量%以上であれば、アルミニウム箔層13との密着力が向上する。変性率が20質量%以下であれば、シーラント層16との密着力が向上する。
接着樹脂層15における酸変性スチレン系エラストマー樹脂(質量:Ma)と酸変性ポリオレフィン樹脂(質量:Mb)との混合比(Mb/Ma)は、1.5〜99であり、2.3〜19が好ましい。混合比(Mb/Ma)が1.5以上であれば、シーラント層16との密着力が高くなる。混合比(Mb/Ma)が99以下であれば、接着樹脂層15の柔軟性が高くなる。
接着樹脂層15の厚さは、3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
接着樹脂層15の厚さは、3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
接着樹脂層15には、受酸剤、粘着付与剤、カップリング剤、安定剤、充填剤、難燃剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。これにより、所望の特性に合わせて機能を付与することができる。
(シーラント層)
シーラント層16を構成する成分としては、ポリオレフィン樹脂、又はポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸などでグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸などをグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。これらポリオレフィン樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シーラント層16を構成する成分としては、ポリオレフィン樹脂、又はポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸などでグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸などをグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。これらポリオレフィン樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シーラント層16は、単層フィルムからなる層であってもよく、多層フィルムからなる層であってもよい。また、例えば防湿性を付与する目的で、エチレン−環状オレフィン共重合体、ポリメチルペンテンなどの樹脂を介在させた多層フィルムを用いてもよい。
また、シーラント層16は、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の各種添加剤が含有されていてもよい。スリップ剤、アンチブロッキング剤等の添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シーラント層16の厚さは、10〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
また、シーラント層16は、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の各種添加剤が含有されていてもよい。スリップ剤、アンチブロッキング剤等の添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シーラント層16の厚さは、10〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
包装材10における前記各層は、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマー処理、ブラスト処理などの表面改質を行ってもよい。
包装材10を用いることにより、例えば下記のようなリチウムイオン電池を作成できる。
エンボス成型してシーラント層16側に凹部を形成した包装材10を2つ作成し、それら各々の凹部の内部に、正極、セパレータ、負極及びタブを入れ、その後にシーラント層16が向かい合うように2つの包装材10を重ね合わせ、その3辺をシールする。その後、真空状態にして残った1辺から電解液を注入し、残り1辺を最後にシールして内部を密封することで、リチウムイオン電池を作成する。
包装材10を用いることにより、例えば下記のようなリチウムイオン電池を作成できる。
エンボス成型してシーラント層16側に凹部を形成した包装材10を2つ作成し、それら各々の凹部の内部に、正極、セパレータ、負極及びタブを入れ、その後にシーラント層16が向かい合うように2つの包装材10を重ね合わせ、その3辺をシールする。その後、真空状態にして残った1辺から電解液を注入し、残り1辺を最後にシールして内部を密封することで、リチウムイオン電池を作成する。
以上説明した包装材10は、酸変性スチレン系エラストマー樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂からなる混合樹脂を含有する接着樹脂層15を用いることで、成型性、耐衝撃性、耐熱性及び密着性を兼ね備えることができる。そのため、エンボス成型時や折り曲げ時にクラックにより辺や角が破断し難く、かつ電解液などの耐内容物特性に優れ、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下が抑制される。
なお、本発明のリチウムイオン電池用包装材は、前述した包装材10には限定されない。例えば、接着剤層12とアルミニウム箔層13の間に、化成処理層14と同様の化成処理層を設けたリチウムイオン電池用包装材であってもよい。該リチウムイオン電池用包装材は、シーラント層側からだけでなく、基材層側からのアルミニウム箔層の腐蝕を防止する効果が得られる。
(製造方法)
以下、リチウムイオン電池用包材の製造方法として、前述した包装材10の製造方法について説明する。ただし、リチウムイオン電池用包材の製造方法は下記方法には限定されない。包装材10の製造方法としては、例えば、下記工程(I)〜(III)を有する方法が挙げられる。
(I)アルミニウム箔層13表面を化成処理して化成処理層14を形成する工程。
(II)表面に化成処理層14が形成されたアルミニウム箔層13における化成処理層14と反対側の面と、基材層11とを、接着剤層12を介して貼り合せる工程。
(III)基材層11、接着剤層12、アルミニウム箔層13及び化成処理層14からなる積層体における化成処理層14上に、接着樹脂層15を介してシーラント層16を積層する工程。
以下、リチウムイオン電池用包材の製造方法として、前述した包装材10の製造方法について説明する。ただし、リチウムイオン電池用包材の製造方法は下記方法には限定されない。包装材10の製造方法としては、例えば、下記工程(I)〜(III)を有する方法が挙げられる。
(I)アルミニウム箔層13表面を化成処理して化成処理層14を形成する工程。
(II)表面に化成処理層14が形成されたアルミニウム箔層13における化成処理層14と反対側の面と、基材層11とを、接着剤層12を介して貼り合せる工程。
(III)基材層11、接着剤層12、アルミニウム箔層13及び化成処理層14からなる積層体における化成処理層14上に、接着樹脂層15を介してシーラント層16を積層する工程。
工程(I):
金属化合物、リン化合物、バインダー樹脂、架橋剤などから構成される腐蝕防止処理剤を、アルミニウム箔層13上に塗工し、乾燥・硬化を行い、化成処理層14を形成する。腐蝕防止処理剤の塗工方法としては、公知の方法を使用でき、例えば、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、バーコーター、キスコーター、コンマコーターなどによる塗工が挙げられる。
アルミニウム箔層13は、未処理のアルミニウム箔を用いてもよく、ウェットタイプまたはドライタイプの脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いてもよい。
また、必要に応じてアルミニウム箔の両面に化成処理層を形成してもよい。
金属化合物、リン化合物、バインダー樹脂、架橋剤などから構成される腐蝕防止処理剤を、アルミニウム箔層13上に塗工し、乾燥・硬化を行い、化成処理層14を形成する。腐蝕防止処理剤の塗工方法としては、公知の方法を使用でき、例えば、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、バーコーター、キスコーター、コンマコーターなどによる塗工が挙げられる。
アルミニウム箔層13は、未処理のアルミニウム箔を用いてもよく、ウェットタイプまたはドライタイプの脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いてもよい。
また、必要に応じてアルミニウム箔の両面に化成処理層を形成してもよい。
工程(II):
表面に化成処理層14を形成したアルミニウム箔層13と、基材層11とを、アルミニウム箔層13における化成処理層14と反対側の面と基材層11が向かい合うように、接着剤層12を形成する前記接着剤により貼り合わせる。貼り合わせの方法としては、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、ウェットラミネートなどが挙げられる。これにより、基材層11、接着剤層12、アルミニウム箔層13及び化成処理層14が順次積層された積層体が得られる。
表面に化成処理層14を形成したアルミニウム箔層13と、基材層11とを、アルミニウム箔層13における化成処理層14と反対側の面と基材層11が向かい合うように、接着剤層12を形成する前記接着剤により貼り合わせる。貼り合わせの方法としては、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、ウェットラミネートなどが挙げられる。これにより、基材層11、接着剤層12、アルミニウム箔層13及び化成処理層14が順次積層された積層体が得られる。
工程(III):
前記積層体の化成処理層14上に、接着樹脂層15を介してシーラント層16を積層する。積層方法としては、ドライプロセスとウェットプロセスが挙げられる。
ドライプロセスの場合は、前記積層体の化成処理層14上に、接着樹脂層15を形成する接着樹脂からなるペレットを用いて押出ラミネートにより接着樹脂層15を形成し、さらにインフレーション法またはキャスト法により得られるシーラント層16を積層する。なお、化成処理層14は、この押出ラミネートの際にインラインで設けてもよい。その後、化成処理層14と接着樹脂層15との密着力を向上させる目的で、熱処理(エージング処理や熱ラミネートなど)を施してもよい。ただし、本発明においては、上述したような層構成を形成させることで、押出ラミネート時の少ない熱量でも密着性に優れる包装材10が得られる。
また、インフレーション法またはキャスト法にて、接着樹脂層15とシーラント層16との多層フィルムを作成し、該多層フィルムを前記積層体上に熱ラミネートにより積層してもよい。
前記積層体の化成処理層14上に、接着樹脂層15を介してシーラント層16を積層する。積層方法としては、ドライプロセスとウェットプロセスが挙げられる。
ドライプロセスの場合は、前記積層体の化成処理層14上に、接着樹脂層15を形成する接着樹脂からなるペレットを用いて押出ラミネートにより接着樹脂層15を形成し、さらにインフレーション法またはキャスト法により得られるシーラント層16を積層する。なお、化成処理層14は、この押出ラミネートの際にインラインで設けてもよい。その後、化成処理層14と接着樹脂層15との密着力を向上させる目的で、熱処理(エージング処理や熱ラミネートなど)を施してもよい。ただし、本発明においては、上述したような層構成を形成させることで、押出ラミネート時の少ない熱量でも密着性に優れる包装材10が得られる。
また、インフレーション法またはキャスト法にて、接着樹脂層15とシーラント層16との多層フィルムを作成し、該多層フィルムを前記積層体上に熱ラミネートにより積層してもよい。
ウェットプロセスの場合は、前記積層体の化成処理層14上に、接着樹脂層15を形成する接着樹脂を含有する接着樹脂液を塗工し、溶媒を揮発させた後、接着樹脂を軟化点以上の温度まで加熱し、溶融させて焼き付けを行う。その後、シーラント層16を熱ラミネートなどの熱処理により積層することにより、包装材10が得られる。
前記接着樹脂液とは、前述した接着樹脂層15を形成する接着樹脂を、有機溶媒に分散させた分散液、又は有機溶媒に溶解させた溶液である。接着樹脂液を用いる場合には、該接着樹脂液に架橋剤、シランカップリング剤などの各種添加剤を配合してもよい。
前記接着樹脂液の塗工方法としては、前記工程(I)において挙げた各種塗工方法が使用できる。また、熱ラミネートとしては、シリンダーを使用した熱ロール方式やオーブンを利用した熱風方式など、種々の方式を採用できる。
前記接着樹脂液とは、前述した接着樹脂層15を形成する接着樹脂を、有機溶媒に分散させた分散液、又は有機溶媒に溶解させた溶液である。接着樹脂液を用いる場合には、該接着樹脂液に架橋剤、シランカップリング剤などの各種添加剤を配合してもよい。
前記接着樹脂液の塗工方法としては、前記工程(I)において挙げた各種塗工方法が使用できる。また、熱ラミネートとしては、シリンダーを使用した熱ロール方式やオーブンを利用した熱風方式など、種々の方式を採用できる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
以下、本実施例で使用した原料を示す。( )内は、形成した層の厚さを示す。
[使用原料]
(基材層)
A−1:2軸延伸ポリアミドフィルム(25μm)
(接着剤層)
B−1:ポリウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン(株)製)(4μm)
(アルミニウム箔層)
C−1:軟質アルミニウム箔8079材(40μm)
(化成処理層)
D−1:塗布型の腐蝕防止処理剤(クロメート処理)
D−2:表面処理なし
(接着樹脂層)
E−1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変性率1質量%)からなる接着剤(5μm)
E−2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変性率1質量%)90質量%と無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂(SEBS、変性率1.8質量%)10質量%からなる接着剤(5μm)
E−3:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変性率1質量%)70質量%と無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂(SEBS、変性率1.8質量%)30質量%からなる接着剤(5μm)
E−4:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変性率1質量%)50質量%と無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー(SEBS、変性率1.8質量%)50質量%からなる接着剤(5μm)
E−5:ポリウレタン系接着剤(A525/50、三井化学ポリウレタン社製)(4μm)
(シーラント層)
F−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)の接着樹脂層側の面にコロナ処理を施したフィルム。
以下、本実施例で使用した原料を示す。( )内は、形成した層の厚さを示す。
[使用原料]
(基材層)
A−1:2軸延伸ポリアミドフィルム(25μm)
(接着剤層)
B−1:ポリウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン(株)製)(4μm)
(アルミニウム箔層)
C−1:軟質アルミニウム箔8079材(40μm)
(化成処理層)
D−1:塗布型の腐蝕防止処理剤(クロメート処理)
D−2:表面処理なし
(接着樹脂層)
E−1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変性率1質量%)からなる接着剤(5μm)
E−2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変性率1質量%)90質量%と無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂(SEBS、変性率1.8質量%)10質量%からなる接着剤(5μm)
E−3:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変性率1質量%)70質量%と無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂(SEBS、変性率1.8質量%)30質量%からなる接着剤(5μm)
E−4:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(変性率1質量%)50質量%と無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー(SEBS、変性率1.8質量%)50質量%からなる接着剤(5μm)
E−5:ポリウレタン系接着剤(A525/50、三井化学ポリウレタン社製)(4μm)
(シーラント層)
F−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)の接着樹脂層側の面にコロナ処理を施したフィルム。
[実施例1及び2]
アルミニウム箔層13上に塗布型の腐蝕防止処理剤(D−1)からなる化成処理層14をバーコーターにより設け、乾燥ユニットにおいて150〜200℃で焼き付け処理を施した。化成処理層14の厚さはドライで0.1〜0.2μmであった。次いで、アルミニウム箔層13の、化成処理層14とは反対側の面に、ドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(B−1)を用いて耐熱性の基材層11を設けた。次に、化成処理層14上に接着剤(E−2〜E−3)からなる接着樹脂層15をバーコーターにより設け、乾燥ユニットにおいて150〜200℃で焼き付け処理を行った。接着樹脂層15の厚さはドライで5μmであった。その後、シーラント層16と接着樹脂層15を、熱ラミネート装置において150〜170℃で4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着した後、40℃、48時間のエージングを施すことでリチウムイオン電池用包装材を作成した。
アルミニウム箔層13上に塗布型の腐蝕防止処理剤(D−1)からなる化成処理層14をバーコーターにより設け、乾燥ユニットにおいて150〜200℃で焼き付け処理を施した。化成処理層14の厚さはドライで0.1〜0.2μmであった。次いで、アルミニウム箔層13の、化成処理層14とは反対側の面に、ドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(B−1)を用いて耐熱性の基材層11を設けた。次に、化成処理層14上に接着剤(E−2〜E−3)からなる接着樹脂層15をバーコーターにより設け、乾燥ユニットにおいて150〜200℃で焼き付け処理を行った。接着樹脂層15の厚さはドライで5μmであった。その後、シーラント層16と接着樹脂層15を、熱ラミネート装置において150〜170℃で4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着した後、40℃、48時間のエージングを施すことでリチウムイオン電池用包装材を作成した。
[比較例1]
接着剤(E−2)〜接着剤(E−3)の代わりに、接着剤(E−1)を用いた以外は、実施例1及び2と同様にしてリチウムイオン電池用包装材を作成した。
接着剤(E−2)〜接着剤(E−3)の代わりに、接着剤(E−1)を用いた以外は、実施例1及び2と同様にしてリチウムイオン電池用包装材を作成した。
[比較例2]
接着剤(E−2)〜接着剤(E−3)の代わりに、接着剤(E−4)を用いた以外は、実施例1及び2と同様にしてリチウムイオン電池用包装材を作成した。
接着剤(E−2)〜接着剤(E−3)の代わりに、接着剤(E−4)を用いた以外は、実施例1及び2と同様にしてリチウムイオン電池用包装材を作成した。
[比較例3]
基材層11を設けるまでは実施例1及び2と同様に行った。次に、ポリウレタン系接着剤(E−5)からなる層を実施例1及び2と同様にバーコーターにより設け、乾燥ユニットにおいて80℃で乾燥した。その後、シーラント層16と、ポリウレタン系接着剤(E−5)からなる層を、熱ラミネート装置において60℃で4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着した後、40℃、48時間のエージングを施すことでリチウムイオン電池用包装材を作成した。
基材層11を設けるまでは実施例1及び2と同様に行った。次に、ポリウレタン系接着剤(E−5)からなる層を実施例1及び2と同様にバーコーターにより設け、乾燥ユニットにおいて80℃で乾燥した。その後、シーラント層16と、ポリウレタン系接着剤(E−5)からなる層を、熱ラミネート装置において60℃で4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着した後、40℃、48時間のエージングを施すことでリチウムイオン電池用包装材を作成した。
[比較例4]
化成処理層14を設けない以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオン電池用包装材を作成した。
化成処理層14を設けない以外は、実施例2と同様にしてリチウムイオン電池用包装材を作成した。
[評価方法]
各例で得られたリチウムイオン電池用包装材を100mm×15mmサイズの短冊状に切り取り、耐電解液評価用サンプルとし、下記に示す条件で耐電解液評価1、耐電解液評価2を行った。また、同様に得られたリチウムイオン電池用包装材を15mm×100mmサイズの長方形に切り取り、成型評価用サンプルとし、下記に示す条件で成型評価を行った。
各例で得られたリチウムイオン電池用包装材を100mm×15mmサイズの短冊状に切り取り、耐電解液評価用サンプルとし、下記に示す条件で耐電解液評価1、耐電解液評価2を行った。また、同様に得られたリチウムイオン電池用包装材を15mm×100mmサイズの長方形に切り取り、成型評価用サンプルとし、下記に示す条件で成型評価を行った。
(耐電解液評価1)
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1の溶液にLiPF6が1.5Mになるように調整した電解液を作成し、内容量250mlのテフロン(登録商標)容器に充填した。該容器の中に耐電解液評価用サンプルを入れ、密栓後85℃で1週間保管した。保管後のサンプルの剥離状況を、以下の基準にて評価した。なお、△以上の評価を合格とした。
○:ディラミネートせず、ラミネート強度が剥離困難、またはシーラント層の破断レベルであった。
△:ディラミネートは起こらないが、ラミネート強度が剥離可能レベル(100gf/15mm以上、クロスヘッドスピードが300mm/分)であった。
×:ディラミネートによる浮きが確認できた。
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1の溶液にLiPF6が1.5Mになるように調整した電解液を作成し、内容量250mlのテフロン(登録商標)容器に充填した。該容器の中に耐電解液評価用サンプルを入れ、密栓後85℃で1週間保管した。保管後のサンプルの剥離状況を、以下の基準にて評価した。なお、△以上の評価を合格とした。
○:ディラミネートせず、ラミネート強度が剥離困難、またはシーラント層の破断レベルであった。
△:ディラミネートは起こらないが、ラミネート強度が剥離可能レベル(100gf/15mm以上、クロスヘッドスピードが300mm/分)であった。
×:ディラミネートによる浮きが確認できた。
(耐電解液評価2)
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1の溶液にLiPF6が1.5Mになるように調整した電解液を作成し、内容量250mlのテフロン(登録商標)容器に充填した。該容器の中に耐電解液評価用サンプルを入れ、密栓後85℃で4週間保管した。保管後のサンプルの剥離状況を、上記評価と同基準にて評価した。なお、△以上の評価を合格とした。
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1の溶液にLiPF6が1.5Mになるように調整した電解液を作成し、内容量250mlのテフロン(登録商標)容器に充填した。該容器の中に耐電解液評価用サンプルを入れ、密栓後85℃で4週間保管した。保管後のサンプルの剥離状況を、上記評価と同基準にて評価した。なお、△以上の評価を合格とした。
(成型評価)
絞り深さ10mmまで調整可能な、長方形で150mm×100mmサイズの冷間成型用装置を用いてエンボス成型加工を行い、絞り量の評価を行った。絞り量に関しては、角が破断せずに成型できる絞り量を記載した。なお、△以上の評価を合格とした。
○:7mm以上の絞り量で、辺や角が破断せずに成型可能であった。
△:6mm以上7mm未満の絞り量で、辺や角が破断せずに成型可能であった。
×:6mm以上の絞り量で、辺や角の一部分が破断した。
絞り深さ10mmまで調整可能な、長方形で150mm×100mmサイズの冷間成型用装置を用いてエンボス成型加工を行い、絞り量の評価を行った。絞り量に関しては、角が破断せずに成型できる絞り量を記載した。なお、△以上の評価を合格とした。
○:7mm以上の絞り量で、辺や角が破断せずに成型可能であった。
△:6mm以上7mm未満の絞り量で、辺や角が破断せずに成型可能であった。
×:6mm以上の絞り量で、辺や角の一部分が破断した。
(総合評価)
上記評価結果を総合し、以下の基準にて総合評価した。
○:全ての評価結果が○であった。
△:全ての評価結果において×がなく、○又は△である。
×:全ての評価結果において1以上の×がある。
実施例及び比較例におけるリチウムイオン電池用包装材の層構成及び評価結果を表1に示す。
上記評価結果を総合し、以下の基準にて総合評価した。
○:全ての評価結果が○であった。
△:全ての評価結果において×がなく、○又は△である。
×:全ての評価結果において1以上の×がある。
実施例及び比較例におけるリチウムイオン電池用包装材の層構成及び評価結果を表1に示す。
表1に示すように、酸変性ポリプロピレン樹脂と酸変性スチレン系エラストマー樹脂からなる混合樹脂を含有する接着樹脂層を有する実施例1及び2のリチウムイオン電池用包装材は、耐電解液評価1において全サンプルで端部から剥離もなく剥離困難であり、耐電解液特性に優れており、耐電解液評価2においても耐電解液特性に優れていた。
また、実施例1及び2のリチウムイオン電池用包装材は、成型性にも優れていた。特に実施例2のリチウムイオン電池用包装材は、7mm以上の絞り量でも辺や角が破断しなかった。
また、実施例1及び2のリチウムイオン電池用包装材は、成型性にも優れていた。特に実施例2のリチウムイオン電池用包装材は、7mm以上の絞り量でも辺や角が破断しなかった。
一方、接着樹脂層15が酸変性ポリプロピレン樹脂だけで構成される比較例1のリチウムイオン電池用包装材では、耐電解液評価1、2ともに、シーラント層16とアルミニウム箔層13の剥離がない結果であった。しかし、成型性に関しては、絞り量が6mm以上で辺の破断は観察されなかったが、角が破断した。
また、酸変性スチレン系エラストマー樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂との混合比(Mb/Ma)が1の比較例2のリチウムイオン電池用包装材は、耐電解液評価2において、混合比(Mb/Ma)が2.3と9である実施例1及び2のリチウムイオン電池用包装材に比べて、耐電解液特性が低下する結果となった。
接着樹脂層15をポリウレタン系のドライラミネート用接着剤からなる層とした比較例3のリチウムイオン電池用包装材は、耐電解液評価1、2ともに完全にデラミネートしてしまった。
化成処理層14を形成しなかった比較例4のリチウムイオン電池用包装材は、成型性に関しては実施例2と同程度の絞り性を有するが、耐電解液評価1、2では完全にデラミネートしてしまった。
以上のように、本発明によれば、成型性、衝撃性、耐熱性に優れ、エンボス成型時や折り曲げ時にクラックによる辺や角の破断が生じ難く、かつ電解液などの耐内容物特性に優れ、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下が起こり難いリチウムイオン電池用包装材が得られる。
また、酸変性スチレン系エラストマー樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂との混合比(Mb/Ma)が1の比較例2のリチウムイオン電池用包装材は、耐電解液評価2において、混合比(Mb/Ma)が2.3と9である実施例1及び2のリチウムイオン電池用包装材に比べて、耐電解液特性が低下する結果となった。
接着樹脂層15をポリウレタン系のドライラミネート用接着剤からなる層とした比較例3のリチウムイオン電池用包装材は、耐電解液評価1、2ともに完全にデラミネートしてしまった。
化成処理層14を形成しなかった比較例4のリチウムイオン電池用包装材は、成型性に関しては実施例2と同程度の絞り性を有するが、耐電解液評価1、2では完全にデラミネートしてしまった。
以上のように、本発明によれば、成型性、衝撃性、耐熱性に優れ、エンボス成型時や折り曲げ時にクラックによる辺や角の破断が生じ難く、かつ電解液などの耐内容物特性に優れ、フッ酸が発生しても接着剤の劣化による密着力の低下が起こり難いリチウムイオン電池用包装材が得られる。
10 リチウムイオン電池用包装材 11 基材層 12 接着剤層 13 アルミニウム箔層 14 化成処理層 15 接着樹脂層 16 シーラント層
Claims (8)
- 基材層の一方の面に、少なくとも接着剤層、アルミニウム箔層、化成処理層、接着樹脂層及びシーラント層が順次積層したリチウムイオン電池用包装材において、
前記接着樹脂層が、酸変性スチレン系エラストマー樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂からなる混合樹脂を含有し、前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂(質量:Ma)と酸変性ポリオレフィン樹脂(質量:Mb)との混合比(Mb/Ma)が1.5〜99であることを特徴とするリチウムイオン電池用包装材。 - 前記酸変性スチレン系エラストマー樹脂が、無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂である、請求項1に記載のリチウムイオン電池用包装材。
- 前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用包装材。
- 前記無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のマレイン酸の変性率が0.1〜20質量%である、請求項3に記載のリチウムイオン電池用包装材。
- 前記無水マレイン酸変性スチレン系エラストマー樹脂が、無水マレイン酸変性の(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリブチレン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリスチレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)共重合体、(ポリスチレン/ポリイソプレン/ポリスチレン)共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、請求項2に記載のリチウムイオン電池用包装材。
- 前記無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂のビガッド軟化点が100℃以上180℃未満である、請求項3又は4に記載のリチウムイオン電池用包装材。
- 前記接着樹脂層が、受酸剤、粘着付与剤、カップリング剤、安定剤、充填剤、難燃剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤からなる群から選ばれる1種以上を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン電池用包装材。
- 前記化成処理層が、腐蝕防止処理剤を塗布して形成された塗膜である、請求項1〜7のいずれかに記載のリチウムイオン電池用包装材。
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