JP6098689B2 - 蓄電デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、蓄電デバイスに関する。
パソコン、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星、車両等に用いられる蓄電デバイスとして、超薄型化、小型化の可能なリチウムイオン電池が盛んに開発されている。このような蓄電デバイスに用いられる蓄電デバイス用外装材としては、容器として用いられている従来の金属製の缶とは異なり、軽量で、放熱性が高く、形状を自由に選択できるという点から、多層フィルムからなるラミネート型外装材(例えば基材層/第1接着層/アルミニウム箔層/第2接着層/シーラント層のような構成)が注目されている。
ラミネート型外装材は、アルミニウム箔層とシーラント層間の第2接着層の種類によって大きく2種類に分類される。つまり、第2接着層にドライラミネート用接着剤等の熱硬化性樹脂を使用するドライラミネート構成と、第2接着層に酸変性ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性材料を使用する熱ラミネート構成に大きく分類される。ドライラミネート構成の外装材は、成型性、低価格が求められるポータブル機器等の民生用途に広く使用されている。一方、熱ラミネート構成の外装材は、より高い信頼性が求められる電気自動車、衛星、潜水艦、電動自転車等の産業用途に広く使用されている。また最近では、第2接着層にポリオレフィン樹脂とイソシアネート系硬化剤の混合物を用いるハイブリッドラミネート構成も開発され、ドライラミネート構成と熱ラミネート構成の中間の性能を有する外装材として、新たな産業用途への展開が注目されている。
ラミネート型外装材を用いる蓄電デバイスは、正極、セパレータ、負極、電解液、並びにリード及びタブシーラントからなるタブを含む蓄電デバイス用内容物が、ラミネート型外装材により密封される。該蓄電デバイスの形態としては、以下の2種類が提案されている。
(i)ラミネート型外装材によりパウチを形成し、該パウチ内に蓄電デバイス用内容物を収納して密封するパウチタイプ。
(ii)ラミネート型外装材を冷間成型して凹部を形成し、形成した凹部に蓄電デバイス用内容物を収納して密封するエンボスタイプ。
エンボスタイプでは、内容物をより効率的に収納するため、貼り合わせるラミネート型外装材の両方に凹部を形成し、収納体積を増加させて蓄電容量を増加させる形態も採用されている。例えば、冷間成型により形成した凹部を有する2枚のラミネート型外装材の該凹部内に、正極、セパレータ、負極、電解液を収納し、リード及びタブシーラントからなるタブを外装材で挟み込んでその一部を外装材の外部に位置させるようにして、ラミネート型外装材の凹部周辺の端部をヒートシールしてヒートシール部を形成することで密封した蓄電デバイスが挙げられる。
前記(i)、(ii)のいずれの形態においても、前述のようにラミネート型外装材のシーラント層を向かい合わせ、タブを挟み込んだ状態で該ラミネート型外装材の端部をヒートシールすることで密封が行われる。ヒートシール条件は、温度、圧力、時間で制御される。一般に、高温でヒートシールするとシール時間を短縮できるが、温度が高すぎると樹脂の劣化等の不具合が発生すると想定される。圧力が低すぎると、溶着される樹脂の絡み合いが少なくなって界面剥離が生じやすく、剥離強度が低下する。圧力が高すぎると、ヒートシール部周辺に歪みが発生し、その部分に局所的に荷重がかかりやすくなることで剥離強度が低下し、またシーラント層間以外の部分でも剥離が発生しやすくなる。また、短時間でのヒートシールは作業性、コスト面で有利であるが、充分な密封性を考慮すると一定時間以上のヒートシールが必要である。
一方、蓄電デバイスにおいては、例えばリチウムイオン電池において、電解質であるLiPFやLiBFと電池内に浸入した水分が反応してフッ酸が発生し、電池内の圧力が持続的に上昇することがある。このような場合、ラミネート型外装材を使用した蓄電デバイスでは、場合によっては外装材のヒートシール部が破断するおそれがある。そのため、外装材のヒートシール部の破断を防止するために、ヒートシール部の剥離強度であるヒートシール強度を高めることが重要である。ヒートシール強度は、初期の剥離強度であるバースト強度(図5の領域A)と、剥離進行時の剥離強度が安定な値を示す領域での剥離強度であるシール強度(図5の領域B)からなる。つまり、バースト強度は、ヒートシール時にシーラント層の樹脂がヒートシール部の内部近傍に押し出されて形成されるポリ玉と呼ばれる樹脂溜まりが破断される際の剥離強度を表す。一方、シール強度は、ポリ玉の破断後の開裂において剥離強度が安定な値を示す領域での剥離強度を表す。一般に、ポリ玉が大きくなるほどそれを破断するために必要なエネルギーが大きくなるのでバースト強度が高まるが、一方でヒートシール部の厚みが薄くなるのでシール強度は低下する傾向にある。このように、外装材のヒートシール部におけるバースト強度とシール強度はトレードオフの関係にある。そのため、バースト強度とシール強度のいずれか一方の高めると他方が低下し、ヒートシール強度を全体として高めることは困難である。
また、蓄電デバイスの使用時は、ヒートシール部が電解液で膨潤するため、電解液で膨潤していない状態のヒートシール強度(以下、「常態ヒートシール強度」という。)よりも、電解液で膨潤した状態でのヒートシール強度(以下、「電解液膨潤ヒートシール強度」という。)が重要である。一般的には、電解液膨潤ヒートシール強度の方が常態ヒートシール強度に比べて低くなる傾向にある。これは、シーラント層に接触した電解液がシーラント層中を拡散浸透して内部を膨潤させ、さらに隣接する接着樹脂層にも拡散浸透することで、接着樹脂層と腐食防止処理層間の密着力の低下、及びシーラント層と接着樹脂層の凝集力の低下が起きるためであると考えられる。更に詳細には、ポリ玉の部分は応力が集中しやすいので、バースト強度は電解液の膨潤の有無によって大きく変動しないが、前記密着力及び凝集力の低下の影響によりシール強度が低下する。特に、電解液とシーラント層及び接着樹脂層の溶解度パラメータ(SP値)が近い場合、電解液の膨潤による影響が大きいため、電解液膨潤ヒートシール強度が重要となる。
ヒートシール強度の向上を目的とした蓄電デバイス用外装材の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
最外層である基材層、アルミニウム箔層、化成処理層、接着剤層、及び最内層であるヒートシール層が順次積層され、前記ヒートシール層が、前記接着剤層側の第1ポリプロピレン層と、第1ポリプロピレン層よりも融点が低く、メルトフローレート(MFR)が高い最内層側の第2ポリプロピレン層で構成された蓄電デバイス用外装材(特許文献1)。
該蓄電デバイス用外装材では、前記(i)、(ii)のような形態とするためにヒートシール部を形成する際、第1ポリプロピレン層よりも融点が低く、MFRが高い最内層の第2ポリプロピレン層が容易に溶融し、高いバースト強度が得られる。しかし、第2ポリプロピレン層の流動性が高いことでヒートシール部が薄くなりやすく、シール強度が低下する傾向にある。また、充分な電解液膨潤ヒートシール強度を得ることも困難である。
その他、特許文献1に記載の蓄電デバイス用外装材の製造では、第1ポリプロピレン層と第2プロピレン層を別々に形成するため、工程が複雑でエネルギーロスも大きい。
特開2007−294380号公報
本発明は、簡便に製造でき、電解液膨潤下であってもヒートシール部のバースト強度及びシール強度が高い蓄電デバイス用外装材を用いた蓄電デバイスの提供を目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]正極、セパレータ、負極、電解液、並びにリード及びタブシーラントからなるタブを有する蓄電デバイス用内容物と、基材層の一方の面側に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層された蓄電デバイス用外装材とを備え、
前記蓄電デバイス用外装材における前記シーラント層同士が接触し、その周囲の端部にヒートシール部が形成され、前記タブの一部が外部に位置するように前記蓄電デバイス用内容物が収納されて密封された蓄電デバイスであって、
前記接着樹脂層には、オレフィン系エラストマーが分散され、
前記ヒートシール部の内部側には前記シーラント層の樹脂溜まりが形成されていることを特徴とする蓄電デバイス。
[2]前記接着樹脂層における前記オレフィン系エラストマーが分散されるマトリックス樹脂が酸変性ポリプロピレン樹脂であり、前記シーラント層がポリプロピレン樹脂からなるフィルムにより形成されている[1]に記載の蓄電デバイス。
[3]前記オレフィン系エラストマーが、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・1−ブテン共重合体及び1−ブテン・α−オレフィン・エチレン共重合体からなる群から選ばれる1種以上である[1]又は[2]に記載の蓄
電デバイス。
[4]前記接着樹脂層に、下記の測定方法で測定される分散径が1nm〜10μmのオレフィン系エラストマーが分散されている[1]〜[3]のいずれかに記載の蓄電デバイス。
(測定方法)
前記蓄電デバイス用外装材から切り出した試料片を樹脂で包埋し、断面切削し、四酸化ルテニウムにより染色した後に再度断面切削し、断面についてプラチナ蒸着を行った後に走査型顕微鏡により観察して、該断面における前記オレフィン系エラストマーの最長径を測定して分散径とする。
[5]前記接着樹脂層(100質量%)中に分散される前記オレフィン系エラストマーの含有量が5〜35質量%である[1]〜[4]のいずれかに記載の蓄電デバイス。
本発明の蓄電デバイスは、簡便に製造でき、電解液膨潤下であってもヒートシール部のバースト強度及びシール強度が高い蓄電デバイス用外装材を有している。
本発明の蓄電デバイス用外装材の一例を示した断面図である。 本発明の蓄電デバイス用外装材の他の例を示した断面図である。 本発明の蓄電デバイス用外装材の他の例を示した断面図である。 本発明の蓄電デバイス用外装材の他の例を示した断面図である。 ヒートシール強度について説明するグラフである。 本発明の蓄電デバイス用外装材により形成したヒートシール部の開裂状態を示した図である。 従来の蓄電デバイス用外装材により形成したヒートシール部の開裂状態を示した図である。 本発明の蓄電デバイスの一例を示した図である。
以下、本発明の蓄電デバイス用外装材の実施形態の一例を示して、詳細に説明する。
[第1実施形態]
本実施形態の蓄電デバイス用外装材1は(以下、「外装材1」という。)は、図1に示すように、基材層11の一方の面側に、接着剤層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着樹脂層15及びシーラント層16が順次積層された積層体である。外装材1は、蓄電デバイスにおいて基材層11が外側、シーラント層16が内側として用いられる。
(基材層11)
基材層11は、金属箔層13上に接着剤層12を介して形成される。基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、また加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。また、エンボス成型時の金属箔層13の破断防止や、金属箔層13と他の金属の間の短絡を防止する絶縁性の付与等の役割を果たす。
基材層11としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等の延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。なかでも成型性、耐熱性、耐ピンホール性、絶縁性を向上させる点から、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
基材層11は、単層フィルムであってもよく、2層以上のフィルムが積層された積層フィルムであってもよい。基材層11が単層フィルムの場合、二軸延伸ポリエステルフィルム又は二軸延伸ポリアミドフィルムのいずれか一方が好ましい。基材層11が積層フィルムの場合、二軸延伸ポリエステルフィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムの積層フィルムが好ましく、外側から順に二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルムが積層された積層フィルムがより好ましい。
基材層11には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の添加剤が分散、又は表面に塗布されてもよい。スリップ剤としては、脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等)等が挙げられる。アンチブロッキング剤としては、シリカ等の各種フィラー系のアンチブロッキング剤が好ましい。添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
基材層11の厚さは、耐突き刺し性、絶縁性、エンボス加工性等の点から、6〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。
(接着剤層12)
接着剤層12は、基材層11と金属箔層13間に形成される。接着剤層12は、基材層11とアルミニウム箔層13を強固に接着するのに必要な密着力を有するだけでなく、エンボス成型する際には基材層11によって金属箔層13の破断を保護するための追随性等も求められる。
接着剤層12としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等のポリオールを主剤とし、芳香族系や脂肪族系のイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン系接着剤等が挙げられる。前記接着剤の主剤における水酸基(OH基)に対する硬化剤のイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO/OH)は、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
接着剤層12の厚さは、接着強度、追随性、加工性等の点から、1〜10μmが好ましく、2〜6μmがより好ましい。
(金属箔層13)
金属箔層13は、接着剤層12と接着樹脂層15間に形成される。金属箔層13は、水分が蓄電デバイス内に浸入するのを防止することに加え、エンボス成型に対する優れた延展性、深絞り成形性が求められる。
金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属箔を使用することができ、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
アルミニウム箔としては、公知の軟質アルミニウム箔が使用でき、耐ピンホール性及び成型時の延展性の点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。鉄を含むアルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が下限値以上であれば耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が上限値以下であれば、柔軟性が向上する。
アルミニウム箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、10〜100μmが好ましく、15〜80μmがより好ましい。
金属箔層13には、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。脱脂処理としては、大きく区分するとウェットタイプとドライタイプが挙げられる。
ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂やアルカリ脱脂等が挙げられる。酸脱脂に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、アルミニウム箔のエッチング効果が向上する点から、必要に応じて鉄(III)イオンやセリウム(III)イオン等の供給源となる各種金属塩を配合してもよい。アルカリ脱脂に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム等の強エッチングタイプのアルカリが挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤を配合したものを用いてもよい。ウェットタイプの脱脂処理は浸漬法やスプレー法で行われる。
ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、アルミニウムを焼鈍処理する工程において、その処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。また、該脱脂処理の他にも、フレーム処理やコロナ処理等が挙げられる。さらには特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解・除去する脱脂処理を採用してもよい。
(腐食防止処理層14)
腐食防止処理層14は、接着樹脂層15と金属箔層13間に形成される。腐食防止処理層14は、電解液や電解質と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を防止するだけでなく、アンカー層として接着樹脂層15との密着力を向上させることができる。
腐食防止処理層14を形成する処理としては、例えば、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物と各種熱硬化性の樹脂からなる腐食防止処理剤によるクロメート処理、希土類元素である酸化物(例えば、酸化セリウム、酸化ジルコン等)とリン酸塩と各種熱硬化性の樹脂からなる腐食防止処理剤によるセリアゾル処理等が挙げられる。腐食防止処理層14は、金属箔層13に耐食性を付与できる塗膜であれば、前記処理で形成した塗膜には限定されない。例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等で形成したものであってもよい。腐食防止処理層14は、単層には限定されず、複数層で耐食性を有する構成を採用してもよい。
腐食防止処理層14の厚さは、腐蝕防止機能とアンカーとしての機能の点から、5nm〜1μmが好ましく、10nm〜200nmがより好ましい。
(接着樹脂層15)
接着樹脂層15は、シーラント層16と腐食防止処理層14の間に形成される。接着樹脂層15を形成する接着樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、又はポリオレフィン樹脂を酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。接着樹脂層15がポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂で形成されていれば、ポリエステルウレタン系接着剤で形成される場合に比べて耐加水分解性が向上し、デバイス内で電解質と水分との反応によってフッ酸が発生したとしても、接着樹脂層15の分解劣化による密着力の低下が起こり難い。
また、接着樹脂層15としては、酸変性ポリオレフィン樹脂がより好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂の一部が酸変性され、極性基を有する。そのため、接着樹脂層15が酸変性ポリオレフィン樹脂であれば、シーラント層16を無極性のポリオレフィン樹脂とした場合でも、極性を有する腐食防止処理層14と無極性のシーラント層16の両方に強固に密着することができる。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン、ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン等が挙げられる。また、前記のものにアクリル酸やメタクリル酸等の極性分子をブロック又はランダム共重合した共重合体、架橋ポリオレフィン等のポリマー等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂におけるポリオレフィン樹脂は、前記ポリオレフィン樹脂が使用できる。酸変性ポリオレフィン樹脂におけるグラフト変性に用いる化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、又はその無水物等が挙げられる。なかでも、無水マレイン酸が特に好ましい。接着樹脂層15は、酸変性ポリオレフィン樹脂のなかでも、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂がさらに好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(100質量%)における無水マレイン酸の変性率は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。なお、前記無水マレイン酸の変性率とは、無水マレイン酸変性プロピレン樹脂の全質量に対する無水マレイン酸に由来する部分の質量の割合である。
また、接着樹脂層15は、オレフィン系エラストマーが分散される。オレフィン系エラストマーが分散されることで、充分なバースト強度を維持しつつシール強度を向上させることができ、ヒートシール強度全体を向上させることが可能となる。また、エンボス成型時の延伸白化耐性の向上、密着力の改善、異方性低減等の様々な効果も得られる。
オレフィン系エラストマーとしては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・1−ブテン共重合体及び1−ブテン・α−オレフィン・エチレン共重合体からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
オレフィン系エラストマーは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
接着樹脂層15(100質量%)中に分散されるオレフィン系エラストマーの含有量は、5〜35質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。オレフィン系エラストマーの含有量が下限値以上であれば、剥離界面が接着樹脂層15と腐食防止処理層14の界面に移行することを抑制しやすく、シール強度が向上する。オレフィン系エラストマーの含有量が上限値以下であれば、接着樹脂層15の凝集力の低下によるシール強度の低下を抑制しやすい。
オレフィン系エラストマーの分散径は、1nm〜10μmが好ましく、10〜1000nmがより好ましい。オレフィン系エラストマーの分散径が下限値以上であれば、軟化剤としての効果が得られやすい。オレフィン系エラストマーの分散径が上限値以下であれば、延伸時のクラックによる白化を抑制しやすい。
なお、オレフィン系エラストマーの分散径は、以下の方法で測定される。外装材から所定の大きさの試料片を切り出し、該試料片を樹脂で抱埋したものをウルトラマイクロトームにより断面切削する。その後、四酸化ルテニウムにより70℃で2〜4時間染色し、再度ウルトラマイクロトームで断面切削して、染色された断面についてプラチナ蒸着(導通処理)を行った後に走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、測定した最長径を分散径とする。
接着樹脂層15に分散されるオレフィン系エラストマーは、該オレフィン系エラストマーの全質量に対して、前記分散径の条件を満たすオレフィン系エラストマーが5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
接着樹脂層15を形成する樹脂のメルトフローレート(MFR)は、温度230℃、荷重2.16kgfの条件において、3〜30g/10分が好ましい。前記MFRが下限値以上であれば、加工性が向上する。前記MFRが上限値以下であれば、ヒートシール時のシールやせの発生を抑制しやすい。
接着樹脂層15の厚さは、2〜50μmが好ましい。
(シーラント層16)
シーラント層16は、腐食防止処理層14上に接着樹脂層15を介して形成される。外装材1のシーラント層16同士を向かい合わせにし、シーラント層16の融解温度以上で外装材1の端部をヒートシールすることにより、蓄電デバイスにおける正極、負極、電解液等の内容物を密封する。
シーラント層16としては、ポリオレフィン樹脂、又はポリオレフィン樹脂を酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂のフィルムが挙げられ、ポリオレフィン樹脂フィルムが好ましい。
シーラント層16を形成するポリオレフィン樹脂としては、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン、ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン等が挙げられる。また、前記のものにアクリル酸やメタクリル酸等の極性分子をブロック又はランダム共重合した共重合体、架橋ポリオレフィン等のポリマー等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
シーラント層16を形成する酸変性ポリオレフィン樹脂におけるポリオレフィン樹脂は、前記ポリオレフィン樹脂が使用できる。酸変性ポリオレフィン樹脂におけるグラフト変性に用いる化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、又はその無水物等が挙げられる。
シーラント層16は、単層フィルムからなる層であってもよく、多層フィルムからなる層であってもよい。また、例えば防湿性を付与する目的で、エチレン−環状オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムを用いてもよい。シーラント層16を形成するフィルムは、例えば、インフレーション法、キャスト法等により形成される。
シーラント層16は、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤等の各種添加剤が含有されていてもよい。スリップ剤、アンチブロッキング剤等の添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、シーラント層16の結晶性を制御することで、ヒートシール部の端面から蓄電デバイス内部への水分の浸入を抑制する効果を高めることができる。また、シーラント層16の溶融粘度を調整することで、ヒートシール時に押出された樹脂の流動性を調整することができる。
シーラント層16を形成する樹脂のMFRは、230℃、2.16kgfにおいて1〜15g/10分が好ましい。
シーラント層16の厚さは、10〜80μmが好しい。
外装材1では、電解液膨潤下であっても、ヒートシール部のバースト強度を充分に確保しつつ、シール強度を高めることができ、ヒートシール強度を全体的に底上げできる。また、電解液膨潤下においても充分なシール強度が得られる。このような効果が得られる要因は以下のように考えられる。
従来、外装材のヒートシール部において充分なヒートシール強度を得ようとする場合には、トレードオフの関係にあるバースト強度とシール強度の一方がある程度低下することを代償に他方を最適化する方法、又はバースト強度とシール強度を共に中間強度に設定する方法のいずれかが採用されている。しかし、これらの方法ではヒートシール強度が全体として大きく向上しない。具体的には、例えば、図7に例示した、基材層111、第1接着層112、アルミニウム箔層113、腐食防止処理層114、第2接着層115(オレフィン系エラストマーが分散されていない接着層)及びシーラント層116が順次積層された従来の蓄電デバイス用外装材101を用いて、シーラント層116同士をヒートシールしてヒートシール部101aを形成して蓄電デバイスを形成する場合、ヒートシール部101aの内部側にシーラント層116の樹脂が押出されてポリ玉116が形成される。剥離の初期ではポリ玉116bが破断し(バースト強度、図5の領域A)、その後の開裂は、ヒートシール融着面116aよりも密着力が低い腐食防止処理層114と接着樹脂層115の界面に移行する(シール強度、図5の領域B)と考えられる。ポリ玉116bを大きくすると、バースト強度は向上するが、ヒートシール部101aが薄くなることでポリ玉116bが破断した後の開裂が腐食防止処理層114と接着樹脂層115の界面に移行しやすくなり、充分なシール強度が得られ難くなる。
これに対し、図6に示すように、外装材1を用いてシーラント層16同士をヒートシールしてヒートシール部1aを形成して蓄電デバイスを形成した場合は、接着樹脂層15にオレフィン系エラストマーが分散されていることで、接着樹脂層15とシーラント層16の間で弾性率の差や、凝集力の差が生じ、ポリ玉16aが破断した後の開裂が接着樹脂層15とシーラント層16の界面に誘導されると考えられる。この接着樹脂層15とシーラント層16の界面での剥離強度が、腐食防止処理層14と接着樹脂層15の界面での剥離強度に比べて高いため、同等のバースト強度を有する従来の外装材に比べてより高いシール強度が達成されると考えられる。
(製造方法)
以下、外装材1の製造方法について説明する。ただし、外装材1の製造方法は以下に記載される方法には限定されない。外装材1の製造方法としては、例えば、下記工程(I)〜(III)を有する方法が挙げられる。
(I)金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
(II)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、接着剤層12を介して基材層11を貼り合わせる工程。
(III)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、接着樹脂層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程。
工程(I):
金属箔層13の一方の面に、腐食防止処理剤を塗布し、乾燥、硬化を行って腐食防止処理層14を形成する。腐食防止処理剤としては、例えば、塗布型クロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。
腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、ダイコート、バーコート、キスコート、コンマコート等が挙げられる。
金属箔層13には、未処理の金属箔を使用してもよく、ウェットタイプ又はドライタイプの脱脂処理を施した金属箔を使用してもよい。
工程(II):
金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した反対側に、接着剤層12を形成する接着剤を用いて基材層11を貼り合わせる。貼り合わせる方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウェットラミネーション等の手法が挙げられる。
工程(II)では、接着性の促進のため、室温〜100℃の範囲でエージング(養生)処理を行ってもよい。
工程(III):
基材層11、接着剤層12、金属箔層13及び腐食防止処理層14がこの順に積層された積層体の腐食防止処理層14側に、接着樹脂層15を形成する接着樹脂を介してシーラント層16を貼り合わせる。
シーラント層16を積層する方法としては、例えば、前記積層体の腐食防止処理層14上に接着樹脂を押出ラミネートし、シーラント層16を形成するフィルムを積層し、それらを挟み込むようにして加熱圧着するサンドラミネーション法が挙げられる。その後、腐食防止処理層14と接着樹脂層15との密着性を向上させる目的で、熱処理(エージング処理、熱ラミネーション等)を施してもよい。
また、インフレーション法又はキャスト法にて、接着樹脂15とシーラント層16が積層された多層フィルムを作製し、該多層フィルムを前記積層体上に熱ラミネーションにより積層することで、接着樹脂層15を介してシーラント層16を積層してもよい。
以上説明した工程(I)〜(III)により、外装材1が得られる。
なお、外装材1の製造方法は、前記工程(I)〜(III)を順次実施する方法には限定されない。例えば、工程(II)を行ってから工程(I)を行う等、順番を入れ替えてもよい。また、腐食防止処理層14の形成を、シーラント層16を積層する押出ラミネーションの際にインラインで行ってもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の蓄電デバイス用外装材の他の例である蓄電デバイス用外装材2(以下、「外装材2」)という。)について説明する。外装材2において外装材1と同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態の外装材2は、図2に示すように、基材層11の一方の面側に、接着剤層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着樹脂層15、シーラント層16が順次積層され、基材層11の他方の面側に保護層17が形成された積層体である。
(保護層17)
保護層17は、基材層11における金属箔層13側と反対側の表面に、所望の特性に応じて形成される。保護層17により、基材層11をキズ等から防止する耐擦性や、電解液等が漏洩した場合等に基材層11が溶解されることを防止する耐薬品性、更に成型性を高める滑り性、表面賦形による摩擦の低下等による深絞り性等の機能を向上させることができる。
保護層17を形成する成分としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、シロキサン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
保護層17は、フィラー、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の添加剤が分散、又は表面上に塗布されてもよい。
保護層17の厚さは、追随性、加工性等の点から、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜30μmがより好ましい。
(製造方法)
外装材2は、基材層11における金属箔層13を貼り合わせる側と反対側に、保護層17を設ける以外は、外装材1と同様にして製造できる。
保護層17の形成方法としては、塗工、ディッピング、スプレー法等の公知の方法を採用できる。また、保護層17は、前記樹脂を溶融させて押出す押出成型等で形成することもできる。また、保護層17の外表面には、エンボス加工等の加工を施してもよい。
[第3実施形態]
次に、本発明の蓄電デバイス用外装材の他の例である蓄電デバイス用外装材3(以下、「外装材3」)という。)について説明する。外装材3において外装材1と同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態の外装材3は、図3に示すように、基材層11の一方の面側に、接着剤層12、腐食防止処理層14、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着樹脂層15、シーラント層16が順次積層された積層体である。つまり、外装材3は、金属箔層13の両側に腐食防止処理層14が形成されている以外は、外装材1と同じである。
(製造方法)
外装材3の製造方法としては、金属箔層13の両面に腐食防止処理層14を形成する以外は外装材1の製造方法と同じ方法が挙げられる。金属箔層13の両面の腐食防止処理層14は、各々を順次形成してもよく、両方を一度に形成してもよい。
[第4実施形態]
次に、本発明の蓄電デバイス用外装材の他の例である蓄電デバイス用外装材4(以下、「外装材4」)という。)について説明する。外装材4において外装材1と同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態の外装材4は、図4に示すように、基材層11の一方の面側に、接着剤層12、腐食防止処理層14、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着樹脂層15、シーラント層16が順次積層され、基材層11の他方の面側に保護層17が形成された積層体である。つまり、外装材4は、金属箔層13の両側に腐食防止処理層14が形成されている以外は、外装材2と同じである。
(製造方法)
外装材4の製造方法としては、金属箔層13の両面に腐食防止処理層14を形成する以外は外装材2の製造方法と同じ方法が挙げられる。
金属箔層13の両面の腐食防止処理層14は、各々を順次形成してもよく、両方を一度に形成してもよい。
以上説明したように、本発明の蓄電デバイス用外装材は、電解液膨潤下であっても、ヒートシール部のバースト強度の低下を抑制しつつ、シール強度を高めることができる。また、本発明の蓄電デバイス用外装材は、接着樹脂層にオレフィン系エラストマーを分散させるだけで製造工程が特に複雑化しないため、簡便に製造できる。
なお、本発明の蓄電デバイス用外装材は、前記外装材1〜4には限定されない。
[蓄電デバイス]
本発明の蓄電デバイスは、前述した本発明の蓄電デバイス用外装材によって、正極、セパレータ、負極、電解液、並びにリード及びタブシーラントからなるタブを有する蓄電デバイス用内容物を、前記タブの一部が外部に位置するように密封した蓄電デバイスである。本発明の蓄電デバイスは、前述した本発明の蓄電デバイス用外装材を有する以外は、公知の形態を採用できる。
以下、本発明の蓄電デバイスの一例としてエンボスタイプの蓄電デバイスを示す。
本実施形態の蓄電デバイス5は、図8に示すように、凹部1bが形成された外装材1を2枚有し、それら外装材1がシーラント層を合わせるように重ね合わされ、凹部1bの周囲の端部がヒートシールされてヒートシール部1aが形成されることで密封されている。蓄電デバイス5の凹部1bの内部には正極、セパレータ、負極、電解液が収納され、さらに正極及び負極のそれぞれに接続されたリード21及びタブシーラント22からなるタブ20が、その一部が外部に位置するようにして密封される。
本発明の蓄電デバイスは、前述した本発明の蓄電デバイス用外装材を使用する以外は公知の方法で製造できる。例えば、前記蓄電デバイス5は、以下のようにして得られる。
外装材1に冷間成型により凹部1bを形成し、凹部1bを形成した2枚の外装材1を、シーラント層同士を向かい合うように重ね合わせ、凹部1bの内部に、少なくとも正極、負極、セパレータ、並びに正極及び負極に接続されたタブ20を収納し、タブ20のリード21をシーラント層間に挟み込まれるように引き出した状態で、外装材1の3辺をヒートシールする。その後、真空状態において、残った1辺から電解液を注入し、残りの1辺を最後にヒートシールすることで凹部1bの全周に亘ってヒートシール部1aを形成して内部を密封し、蓄電デバイス5とする。
本発明の蓄電デバイスとしては、例えば、パソコン、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星、潜水艦、電気自動車、電動自転車等に用いられる蓄電デバイスが挙げられる。蓄電デバイスとしては、これらの用途に用いられるリチウムイオン電池が好ましい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[使用材料]
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(基材層)
基材フィルムA−1:二軸延伸ポリアミドフィルム ON(厚さ25μm、ユニチカ社製)。
(接着剤層)
接着剤B−1:ポリエステルウレタン系接着剤(厚さ4μm)。
(金属箔層)
金属箔C−1:軟質アルミニウム箔 O8079材(厚さ40μm、東洋アルミニウム社製)。
(腐食防止処理層)
処理剤D−1:3価クロム、リン酸及びアクリル系樹脂からなる塗布型クロメート処理剤。
(接着樹脂層)
接着樹脂E−1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン AT2770(三井化学社製、厚さ20μm)100質量%からなる接着樹脂。
接着樹脂E−2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン AT2770(三井化学社製)85質量%に、オレフィン系エラストマー P−2060(三井化学社製)15質量%を分散させた接着樹脂(厚さ20μm)。
接着樹脂E−3:無水マレイン酸変性ポリプロピレン AT2770(三井化学社製)70質量%に、オレフィン系エラストマー P−2060(三井化学社製)30質量%を分散させた接着樹脂(厚さ20μm)。
(シーラント層)
フィルムF−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)。
[外装材1の作製方法]
金属箔C−1上に処理剤D−1をバーコータにより塗布し、乾燥ユニットにおいて180℃で焼付け処理を施し、金属箔層上に乾燥厚さ30nmの腐食防止処理層を形成した。次いで、金属箔層における腐食防止処理層の反対面に、ドライラミネート手法により接着剤B−1を用いて基材フィルムA−1を貼り合わせ、40℃7日間エージングをすることで接着剤B−1を熱架橋し、接着剤層(厚さ4μm)を介して基材層を積層した。次に、腐食防止処理層/金属箔層/接着剤層/基材層の積層体の腐食防止処理層上に、接着樹脂層を形成する接着樹脂を押出成型機から厚さ20μmとなるように押出し、シーラント層を形成するフィルムF−1を重ね、それらを挟み込みながら貼り合わせた。その後、熱ラミネート装置により、180℃、4kg/cm、2m/分の条件で加熱圧着し、冷却することで図1に例示した積層構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
[評価方法]
(電解液膨潤ヒートシール強度:バースト強度及びヒートシール強度)
作製した蓄電デバイス用外装材を縦100mm×横50mmの大きさに切り出し、その短辺の中間部を基準に折り返し、長辺同士を重ねた側端部分を幅3mmでヒートシール(温度190℃、面圧0.5MPa、時間3秒)して、上部が開口している正方形の袋状の外装材を得た。その後、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を質量比1:1:1で混合し、6フッ化リン酸リチウムを濃度を1mol/Lとなるように加え、更に1000質量ppmの水分を加えた電解液3mgを、真空状態において前記袋状の外装材に注入した後、該袋状の外装材の開口部分を幅10mmでヒートシール(温度190℃、面圧0.5MPa、時間3秒)してサンプルとした。
前記サンプルを60℃で1週間放置した後、該サンプルにおけるヒートシール部を含む側端側を縦50mm×横15mmの大きさで切り出した試験片に対し、JIS Z1713に準拠して、引張速度300mm/分の条件で、電解液膨潤下のヒートシール強度を測定した。バースト強度は初期の剥離強度である第1極大値(図5の領域Aの極大値)、シール強度は剥離強度の値が安定する領域(図5の領域B)の最大値を採用した。評価は以下の基準で行った。
「○(良好)」:バースト強度70N/15mm以上かつシール強度30N/15mm以上。
「×(不良)」:バースト強度70N/15mm未満又はシール強度30N/15mm未満。
[実施例1〜2、比較例1]
前記作成方法により表1に示す構成の外装材1を作製し、電解液膨潤下のヒートシール強度を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006098689
接着樹脂層にオレフィン系エラストマーを15質量%又は30%分散させた実施例1、2では、バースト後の開裂がシーラント層と接着樹脂層の界面に移行することで、接着樹脂層にオレフィン系エラストマーを分散させていない比較例1と比べ、同等のバースト強度で、より高いシール強度が得られた。
1〜4 蓄電デバイス用外装材
5 蓄電デバイス
11 基材層
12 接着剤層
13 金属箔層
14 腐食防止処理層
15 接着樹脂層
16 シーラント層
16a ポリ玉
17 保護層
20 タブ
21 リード
22 タブシーラント

Claims (5)

  1. 正極、セパレータ、負極、電解液、並びにリード及びタブシーラントからなるタブを有する蓄電デバイス用内容物と、基材層の一方の面側に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層された蓄電デバイス用外装材とを備え、
    前記蓄電デバイス用外装材における前記シーラント層同士が接触し、その周囲の端部にヒートシール部が形成され、前記タブの一部が外部に位置するように前記蓄電デバイス用内容物が収納されて密封された蓄電デバイスであって、
    前記接着樹脂層には、オレフィン系エラストマーが分散され、
    前記ヒートシール部の内部側には前記シーラント層の樹脂溜まりが形成されていることを特徴とする蓄電デバイス。
  2. 前記接着樹脂層における前記オレフィン系エラストマーが分散されるマトリックス樹脂が酸変性ポリプロピレン樹脂であり、前記シーラント層がポリプロピレン樹脂からなるフィルムにより形成されている請求項1に記載の蓄電デバイス。
  3. 前記オレフィン系エラストマーが、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・1−ブテン共重合体及び1−ブテン・α−オレフィン・エチレン共重合体からなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
  4. 前記接着樹脂層に、下記の測定方法で測定される分散径が1nm〜10μmのオレフィン系エラストマーが分散されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
    (測定方法)
    前記蓄電デバイス用外装材から切り出した試料片を樹脂で包埋し、断面切削し、四酸化ルテニウムにより染色した後に再度断面切削し、断面についてプラチナ蒸着を行った後に走査型顕微鏡により観察して、該断面における前記オレフィン系エラストマーの最長径を測定して分散径とする。
  5. 前記接着樹脂層(100質量%)中に分散される前記オレフィン系エラストマーの含有量が5〜35質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
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