JP6168200B2 - リチウムイオン電池用外装材及びリチウムイオン電池 - Google Patents

リチウムイオン電池用外装材及びリチウムイオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン電池用外装材及びリチウムイオン電池に関する。
二次電池としては、携帯電話、ノート型パソコンをはじめとする携帯機器の小型化に伴い、高エネルギー密度で、軽量化が可能なリチウムイオン電池が多く採用されている。リチウムイオン電池用外装材(以下、単に「外装材」ということがある。)としては、特に大型機器用の二次電池用途において、従来使用されていた缶型とは異なり、形状の自由度、薄型化、軽量化、放熱性の点で優位であるラミネート型の外装材(例えば基材層/接着剤層/アルミニウム箔層/接着樹脂層/シーラント層のような構成)が注目されている(例えば、特許文献1)。
ラミネート型の外装材を使用したリチウムイオン電池としては、(1)一辺が開口するように製袋し、その内部に、正極、負極、セパレータ、電解液等の電池内容物を収納した後に密封した三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピローパウチタイプ等の形態、(2)外装材を冷間成型して凹部を形成し、前記凹部内に電池内容物を収納した後に密封したエンボスタイプの形態がある。(1)、(2)いずれの形態についても、外装材のシーラント層同士を合わせて端縁部をヒートシールにより融着することで密封が行われる。
一方、リチウムイオン電池においては、電解質であるLiPFやLiBFが電池内に浸入した水分と反応してフッ酸を発生させたり、過電圧による充電や過大電流での放電等により電池内の圧力が持続的に上昇することがある。シーラント層の融着による密封は、瞬間的な耐圧性には優れるものの、持続的な耐圧性は缶型の外装材に比べて劣っている。そのため、ラミネート型の外装材を使用したリチウムイオン電池は、場合によっては、電池内の持続的な圧力の上昇によって、外装材を融着した部分(以下、「ヒートシール部」という。)が容易に開裂する、又はヒートシール部の手前で外装材が破断することがある。電池内容物である電解液は可燃性を有しており、特に満充電状態の電池は内部に大きな電気エネルギーを蓄えている。そのため、発火を防ぐために外装材のヒートシール部に容易に開裂が生じる、又はヒートシール部の手前で外装材が破断することを防止することが重要である。
特開2001−202927号公報
本発明は、電池内の圧力が持続的に上昇した場合であっても、ヒートシール部に容易に開裂が生じる、又はヒートシール部の手前で外装材が破断することを抑制できるリチウムイオン電池用外装材、及び該リチウムイオン電池用外装材を備えたリチウムイオン電池の提供を目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]基材層の一方の面側に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層され、かつ前記シーラント層同士をヒートシールして融着したヒートシール部を有するリチウムイオン電池用外装材であって、
前記シーラント層が複数層からなり、該シーラント層内のいずれかの層が層状の下記開裂誘導部であることを特徴とするリチウムイオン電池用外装材。
(シーラント層の開裂誘導部)
前記シーラント層内の開裂誘導部となる層の総質量に対して、当該層を形成するベース樹脂に分散径1〜100μmで分散する非相溶系の熱可塑性樹脂が5〜50質量%配合され、開裂時の応力が、前記ヒートシール部におけるシーラント層同士の融着面の開裂時の応力よりも小さい部分。
[2]基材層の一方の面側に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層され、かつ前記シーラント層同士をヒートシールして融着したヒートシール部を有するリチウムイオン電池用外装材であって、
前記シーラント層が単層からなり、該シーラント層自体が層状の下記開裂誘導部であることを特徴とするリチウムイオン電池用外装材。
(シーラント層の開裂誘導部)
前記シーラント層の総質量に対して、前記シーラント層を形成するベース樹脂に分散径1〜100μmで分散する非相溶系の熱可塑性樹脂が5〜50質量%配合され、開裂時の応力が、前記ヒートシール部におけるシーラント層同士の融着面の開裂時の応力よりも小さい部分。
[3]前記腐食防止処理層が、3価クロムを含有する腐食防止処理剤で形成された層である[1]又は[2]に記載のリチウムイオン電池用外装材。
[4]前記接着樹脂層が、酸変性エラストマー樹脂及び酸変性ポリオレフィン系樹脂の少なくとも一方を含有する[1]〜[3]のいずれかに記載のリチウムイオン電池用外装材。
[5]前記接着樹脂層及びシーラント層がいずれも熱可塑性樹脂を含有する[1]〜[4]のいずれかに記載のリチウムイオン電池用外装材。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のリチウムイオン電池用外装材を備えたリチウムイオン電池。
本発明のリチウムイオン電池用外装材は、電池内の圧力が持続的に上昇した場合であっても、ヒートシール部の低応力での開裂、又はヒートシール部手前での外装材の破断を抑制できる。
また、本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池用外装材を備えているため、電池内の圧力が持続的に上昇した場合であっても、ヒートシール部の低応力での開裂、又はヒートシール部の手前での外装材の破断が生じ難い。
本発明のリチウムイオン電池用外装材の一例を示した断面図である。 図1のリチウムイオン電池用外装材の剥離形態の一例を示した断面図である。 本発明のリチウムイオン電池用外装材の他の例を示した断面図である。 従来のリチウムイオン電池用外装材の一例を示した断面図である。 図4のリチウムイオン電池用外装材の剥離形態の一例を示した断面図である。
以下、本発明のリチウムイオン電池用外装材の実施形態の一例を示して詳細に説明する。
[第1実施形態]
本実施形態のリチウムイオン電池用外装材1(以下、「外装材1」という。)は、図1に示すように、基材層11の一方の面に、成型向上層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着樹脂層15、及びシーラント層16が順次積層されており、シーラント層16同士をヒートシールして融着したヒートシール部1aを有する。ヒートシール部1aは、三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピローパウチタイプ、エンボスタイプ等の形態のリチウムイオン電池とする際、電池を密封するために行われるヒートシールにより形成される部分である。
(基材層11)
基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
基材層11としては、絶縁性を有する樹脂層が好ましい。具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。なかでも、成型性、耐熱性、耐ピンホール性、絶縁性が向上する点から、延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
基材層11は、単層フィルムであってもよく、2層以上のフィルムが積層された積層フィルムであってもよい。基材層11が単層フィルムの場合は、二軸延伸ポリエステルフィルム又は二軸延伸ポリアミドフィルムのいずれか一方が好ましい。基材層11が積層フィルムの場合は、二軸延伸ポリエステルフィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムの積層フィルムが好ましく、外側から順に二軸延伸ポリエステルフィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムが積層された積層フィルムがより好ましい。
基材層11の厚さは、6〜40μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。
基材層11には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の添加剤が分散、又は表面上に塗布されてもよい。
スリップ剤としては、例えば、脂肪酸アミド(オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等)等が挙げられる。
アンチブロッキング剤としては、シリカ等の各種フィラー系のアンチブロッキング剤が好ましい。
添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(成型向上層12)
成型向上層12は、基材層11と金属箔層13の密着性を向上させ、外装材1の成型性を向上させる役割を果たす。成型向上層12を設けることにより、成型の際に起こりうる金属箔層13のクラック、ピンホールの発生を抑制することが容易になる。成型向上層12としては、下記樹脂(A)及びカップリング剤(B)の少なくとも一方を含有する層が挙げられる。
樹脂(A):ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリル系樹脂及びアイオノマー樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱融着性樹脂。
カップリング剤(B):シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤及びジルコネート系カップリング剤からなる群から選ばれる1種以上のカップリング剤。
成型向上層12は、樹脂(A)又はカップリング剤(B)のいずれか一方を含有する層であってもよく、樹脂(A)とカップリング剤(B)を両方含有する層であってもよい。
成型向上層12に用いるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、αポリオレフィン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
ポリエーテル系樹脂としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
ポリウレタン系樹脂としては、ポリ−n−ブチルイソシアネート、ポリ−n−ヘキシルイソシアネート、2−6−ポリウレタン等が挙げられる。
ポリビニル系樹脂としては、エチレン・酢酸ビニル共重合、ポリ塩化ビニル、スチレンビニル、酢酸ビニル等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。
ポリアクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、ポリカルボン酸等が挙げられる。
フェノール系樹脂としては、ランダムノボラック型、ハイオルソノボラック型、アルカリレゾール型、アンモニアレゾール型、ベンジルエーテルレゾール型等の樹脂が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。
メラミン系樹脂としては、グアナミン、アニリン等が挙げられる。
エポキシ系樹脂としては、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、環状脂肪族型等の樹脂が挙げられる。
不飽和ポリエステル系樹脂としては、オルソフタル酸系、イソフタル酸系、テレフタル酸系、ジシクロ系、脂肪式飽和酸系、ビスフェノール系等の樹脂が挙げられる。
シリコーン系樹脂としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
ポリスルフォン系樹脂としては、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリアリルスルフォン、アリルポリフェニルスルフォン等が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂としては、ポリテトラメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
ポリアリル系樹脂としては、ポリアリルアミン、ポリアリルアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリルエーテルケトン等が挙げられる。
アイオノマー樹脂としては、エチレン系、スチレン系、エラストマー系の樹脂やエチレンカルボン酸共重合体をNa、K、Li、Zn等のイオン源で重合したもの等が挙げられる。
成型向上層12に用いるシラン系カップリング剤としては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート等が挙げられる。
アルミネート系カップリング剤としては、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等が挙げられる。
ジルコネート系カップリング剤としては、トリメトキシジルコネート、テトラメトキシジルコネート、テトラプロポキシジルコネート、クロロトリエトキシジルコネート、エチルトリメトキシジルコネート、フェニルトリメトキシジルコネート等が挙げられる。
外装材1は、基材層11と金属箔層13の間に成型向上層12が設けられていることで、基材層11と金属箔層13の密着強度が増大するので、例えば冷間成型の際に引張り及び圧縮応力が外装材1に付与された場合でも、基材層11と金属箔層13の密着性を充分に確保することが容易になる。これにより、外装材1の成型性が向上する。つまり、基材層11と金属箔層13の剥離を抑制やすくなるので、その部分から金属箔層13が破断したり、ピンホールが生じたりすることを抑制しやすい。
また、成型向上層12は、基材層11と金属箔層13との間で緩衝層としても機能する。つまり、成型向上層12により、成型時に加わる応力を緩和し、成型時に金属箔層13が破断することを抑制できるため、成型性が向上する。特に、成型向上層12を樹脂(A)で形成した場合、成型時の緩衝層としての効果がより良好に発揮される。
この例の成型向上層12は、接着剤層を兼ねている。成型向上層12が接着剤層を兼ねるようにする形態としては、例えば、樹脂(A)のなかでもポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱接着性の樹脂を使用する形態、接着剤を含有させる形態が挙げられる。
成型向上層12に含有させる接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネートを作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤が好ましい。
主剤が有する水酸基に対する硬化剤が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。
カップリング剤(B)及び比較的硬い樹脂(ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂等。)の場合、成型向上層12の厚さは、20nm〜500nmが好ましく、20〜100nmがより好ましい。成型向上層12の厚さが20nm以上であれば、皮膜ヌケ、ムラ等の発生を抑制しやすく、密着強度が充分に得られやすい。成型向上層12の厚さが500nm以下であれば、成型向上層12が硬くなりすぎることを抑制しやすく、優れた成型性が得られやすい。
また、成型向上層12に弾性に富む成分(ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等。)を使用し、応力を緩和する機能を付与する場合、成型向上層12の厚さは、500nm〜50μmが好ましい。成型向上層12の厚さが20nm以上であれば、充分な密着強度が得られやすい。また、成型向上層12の厚さが50μmを超えても、応力を緩和する効果はあまり変化しないのでコスト面で不利である。
成型向上層12は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
(金属箔層13)
金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス綱等の各種金属箔を使用することができ、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
アルミニウム箔としては、例えば、公知の軟質アルミニウム箔が使用でき、耐ピンホール性、及び成型時の延展性の点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が下限値以上であれば耐ピンホール性、延展性が向上する。鉄の含有量が上限値以下であれば、柔軟性が向上する。
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、9〜200μmが好ましく、15〜200μmがより好ましい。
金属箔層13には、未処理のアルミニウム箔も使用してもよいが、脱脂処理を施したアルミニウム箔が好ましい。脱脂処理としては、大きく区分するとウェットタイプとドライタイプに分けられる。
ウェットタイプの脱脂処理としては、例えば、酸脱脂やアルカリ脱脂等が挙げられる。酸脱脂に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸等の無機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、アルミニウム箔のエッチング効果が向上する点から、必要に応じて鉄イオン等の供給源となる各種金属塩を配合してもよい。アルカリ脱脂に使用するアルカリとしては、例えば、エッチング効果が高いものとして水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤を配合したものが挙げられる。ウェットタイプの脱脂処理は、浸漬法やスプレー法で行われる。
ドライタイプの脱脂処理としては、例えば、アルミニウム箔を焼鈍処理する工程において、その処理時間を長くすることで脱脂処理を行う方法が挙げられる。また、該脱脂処理の他にも、フレーム処理、コロナ処理等が挙げられる。さらに、特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解及び除去する脱脂処理を採用してもよい。
(腐食防止処理層14)
腐食防止処理層14は、電解液と水分との反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を防止し、また塗れ性を向上させて接着樹脂層15との密着性を向上させる役割を果たす。
腐食防止処理層14は、例えば、リン酸クロメート処理、塗布型クロメート処理等のクロム系化成処理、あるいは、ジルコニウム、チタン等のノンクロメート系化成処理等により形成できる。なかでも、その効果に特に優れると共に廃液処理の観点から、塗布型クロメート処理により形成される層であることが好ましい。また、3価クロムを含有する腐食防止処理剤によるクロメート処理は、環境破壊物質である6価クロムを使用する場合に比べて環境付加が小さい点で好ましい。
腐食防止処理層14は、金属箔層13の耐食性が充分に得られる塗膜であれば前記処理で形成した塗膜には限定されない。例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等により形成してもよい。
腐食防止処理層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。
腐食防止処理層14の厚さは、腐食防止機能とアンカーとしての機能の点から、10nm〜5μmが好ましく、20nm〜500nmがより好ましい。
(接着樹脂層15)
接着樹脂層15は、シーラント層16と、腐食防止処理層14が形成された金属箔層13とを接着する層である。
接着樹脂層15を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂、エラストマー樹脂に、無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性エラストマー樹脂が挙げられる。なかでも、金属箔層13への優れた接着性から、酸変性エラストマー樹脂及び酸変性ポリオレフィン系樹脂の少なくとも一方が好ましく、酸変性ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ポリオレフィン系樹脂及び酸変性ポリオレフィン系樹脂は、電解液等の耐内容物特性がより優れており、フッ酸発生時でも接着樹脂の劣化による密着力の低下を抑制しやすい。
エラストマー樹脂としては、例えば、スチレン系又はオレフィン系の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
接着樹脂層15は、単層であってもよく、複数層であってもよい。
接着樹脂層15の厚さは、1〜40μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。接着樹脂層15の厚さが1μm以上であれば、充分な接着強度が得られやすい。接着樹脂層15の厚さが40μm以下であれば、シール端面から電池内部に透過する水分量を低減しやすい。
(シーラント層16)
シーラント層16は、外装材1の内層であり、電池組み立て時に熱融着される層である。つまり、シーラント層16は、熱融着性のフィルムにより形成される層である。外装材1のシーラント層16同士を向かい合わせにし、シーラント層16の融解温度以上でヒートシールすることにより、リチウムイオン電池を密閉できる。
シーラント層16を構成する樹脂としては、耐衝撃性及びヒートシール性に優れたリチウムイオン電池が得られやすい点から、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
ポリプロピレンとしては、ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレンが挙げられる。
シーラント層16は、単層フィルムからなる層であってもよく、多層フィルムからなる層であってもよい。例えば、防湿性を付与する目的で、エチレン−環状オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムを用いてもよい。
シーラント層16の厚さは、25〜100μmが好しい。シーラント層16の厚さが25μm以上であれば、優れたヒートシール性が得られやすい。シーラント層16の厚さが100μm以下であれば、シール端面から電池内部に透過する水分量を低減しやすい。
シーラント層16には、難燃剤、スリップ剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等を配合又は塗布してもよい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
外装材1においては、接着樹脂層15及びシーラント層16が、いずれも熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。これにより、外装材1の耐衝撃性及びヒートシール性が向上する。
(開裂誘導部)
本発明者は、ラミネート型の外装材のヒートシール部における低応力での開裂、又はヒートシール部手前での外装材の破断の発生について詳細に検討した。
本発明の外装材のような積層フィルムにおける剥離形態としては、接着性を有する層とそれ以外の層の界面において開裂が進行する界面剥離、接着性を有する層同士が積層されている場合にそれらの層間で開裂が進行する層間剥離、接着性を有する層の内部で開裂が進行する凝集剥離の3種類が考えられる。これらの剥離形態については、開裂時の応力、夾雑物シール性で比較すると、以下の関係がある。
界面剥離<層間剥離≦凝集剥離。
界面剥離は、一般に開裂時の応力が小さく、開裂が進行しやすい。また、凝集剥離は相溶性が高い同種成分内で開裂が進行するため、異種成分同士の層間で開裂が進行する層間剥離に比べて開裂時の応力が大きくなることがある。
リチウムイオン電池におけるラミネート型の外装材のヒートシール部では、シーラント層の融着面に剥離のきっかけが生じると、開裂が接着樹脂層と腐食防止処理層の界面へと移行し、そこから界面剥離の形態で開裂が進行して開裂応力が低くなる。図4に従来のリチウムイオン電池用外装材101(以下、「外装材101」という。)を示して具体的に説明する。
外装材101は、基材層111の一方の面に、成型向上層112、金属箔層113、腐食防止処理層114、接着樹脂層115、及びシーラント層116が順次積層された多層フィルムであり、シーラント層16同士をヒートシールして融着したヒートシール部101aを有する。外装材101は、ヒートシール部101aを形成することで内部に電池内容物を収納できるようになっている。このような従来の外装材101では、内部の圧力がフッ酸の発生等で上昇し、ヒートシール部101におけるシーラント層116同士の融着面116aの内部側の縁部分116bに剥離のきっかけが生じた場合でも、開裂が進行し難くなるように、接着樹脂層115及びシーラント層116の内部又は層間での開裂時の応力を、シーラント層116同士の融着面116aの開裂時の応力と同等に高く設定している。しかし、従来の外装材101では、図5に示すように、ヒートシール部101aの内部近傍で、開裂が接着樹脂層115と腐食防止処理層114の界面へと移行し、そこから界面剥離の剥離形態で開裂が進行することで低い応力で開裂し、要求される強度が得られないことがわかった。
本発明の外装材1では、接着樹脂層15及びシーラント層16の少なくとも一方が、層状の開裂誘導部を有することを特徴とする。開裂誘導部は、開裂時の応力が、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの開裂時の応力よりも小さい部分である。接着樹脂層15及びシーラント層16の少なくとも一方が開裂誘導部を有する外装材1では、シーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bで剥離のきっかけが生じた際、開裂の進行が開裂誘導部に誘導される。例えば、シーラント層16を開裂誘導部とした場合、図2に示すように、シーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bで剥離のきっかけが生じた際、開裂の進行が開裂誘導部としたシーラント層16に誘導される。これにより、ヒートシール部1aの内部近傍において開裂が接着樹脂層15と腐食防止処理層14の界面へと移行することが抑制され、剥離形態が界面剥離となることが抑制されるので、結果的に外装材1に低応力での開裂及び破断が生じ難くなる。
開裂誘導部は、接着樹脂層15とシーラント層16の少なくとも一方が有する。開裂誘導部の形態としては、すなわち下記形態(a)〜(c)が挙げられる。
(a)接着樹脂層15のみが開裂誘導部を有する形態。
(b)シーラント層16のみが開裂誘導部を有する形態。
(c)接着樹脂層15とシーラント層16の両方が開裂誘導部を有する形態。
形態(a)としては、例えば、下記形態(a1)及び(a2)が挙げられる。
(a1)接着樹脂層15が単層からなり、該接着樹脂層15自体が開裂誘導部である。
(a2)接着樹脂層15が複数層からなり、該接着樹脂層15のいずれかの層が開裂誘導部である。
形態(a1):
形態(a1)としては、例えば、単層の接着樹脂層15に、非相溶系の熱可塑性樹脂、及びアンチブロッキング剤、フィラー等の各種添加剤から選ばれる1種以上を配合することで、接着樹脂層15自体を開裂誘導部とする形態(a11)が挙げられる。前記成分を配合することで接着樹脂層15内での同種樹脂部分の融着面積が小さくなり、接着樹脂層15内での開裂時の応力を小さくできる。形態(a11)では、開裂が接着樹脂層15とシーラント層16の層間、又は接着樹脂層15の内部に誘導され、剥離形態が層間剥離又は凝集剥離に誘導される。
形態(a1)は、開裂誘導部の厚さが厚いほど、開裂が進行する際に糸引きが促進されやすくなるので、外装材1がより剥離し難くなる。
非相溶系の熱可塑性樹脂とは、ベース樹脂に分散径1〜100μmで分散する樹脂を意味する。なお、前記分散径は、以下の方法で測定される。外装材から所定の大きさの試料片を切り出し、該試料片を樹脂で抱埋したものをウルトラミクロトームにより断面切削する。その後、四酸化ルテニウムにより70℃で2〜4時間染色し、再度ウルトラミクロトームで断面切削して、染色された断面について白金蒸着(導通処理)を行った後に走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、測定した最大径を分散径とする。
非相溶系の熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ベース樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合には、ポリスチレン、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なかでも、高いヒートシール強度の発現性の点から、熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン系エラストマーがより好ましい。また、スチレン系エラストマーとしては、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体及びスチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体の少なくとも一方が好ましい。
アンチブロッキング剤としては、微粉シリカ、ゼオライト、タルク等が挙げられる。なかでも、高いヒートシール強度の発現性の点から、微粉シリカが好ましい。
形態(a11)において接着樹脂層15に非相溶系の熱可塑性樹脂を配合する場合、接着樹脂層15(100質量%)におけるその配合量は、5〜40質量%であり、10〜25質量%が好ましい。前記配合量が40質量%を超えると、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bに剥離のきっかけが生じた際に、開裂の進行を開裂誘導部に誘導しやすいが、ヒートシール強度が低下する。前記配合量が5質量%未満であると、開裂が安定せず、誘導が不充分になる。
形態(a11)において接着樹脂層15に前記添加剤を配合する場合、接着樹脂層15(100質量%)におけるその配合量は、5〜50質量%であり、10〜30質量%が好ましい。前記配合量が50質量%を超えると、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bに剥離のきっかけが生じた際に、開裂の進行を開裂誘導部に誘導しやすいが、ヒートシール強度が低下する。前記配合量が5質量%未満であると、開裂が安定せず、誘導が不充分になる。
形態(a2):
形態(a2)においては、複数層の接着樹脂層15における開裂誘導部とする層は、1層でもよく2層以上でもよい。形態(a2)においては、複数層の接着樹脂層15におけるシーラント層16側の最表層を開裂誘導部とする形態が好ましい。
形態(a2)としては、例えば、複数層の接着樹脂層15のいずれかの層に、非相溶系の熱可塑性樹脂、又は、アンチブロッキング剤、フィラー等の各種添加剤を配合することで、接着樹脂層15におけるいずれかの層を開裂誘導部とした形態(a21)が挙げられる。前記成分を配合することで、接着樹脂層15におけるいずれかの層の同種樹脂部分の融着面積を小さくし、開裂時の応力を小さくできる。形態(a21)では、接着樹脂層15における開裂誘導部となる層の内部、又は開裂が接着樹脂層15における開裂誘導部である層と開裂誘導部でない層の層間に開裂が誘導され、剥離形態が層間剥離又は凝集剥離となる。また、複数層の接着樹脂層15におけるシーラント層16側の最表層を開裂誘導部とした場合、該最表層の内部、又は該最表層とシーラント層16の層間に開裂が誘導され、剥離形態が層間剥離又は凝集剥離に誘導される。
非相溶系の熱可塑性樹脂としては、前記形態(a11)で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい形態も同じである。
添加剤としては、前記形態(a11)で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい形態も同じである。
形態(a21)において非相溶系の熱可塑性樹脂を配合する場合、接着樹脂層15における配合する層の総質量(100質量%)に対する配合量は、5〜40質量%であり、10〜25質量%が好ましい。前記配合量が40質量%を超えると、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bに剥離のきっかけが生じた際に、開裂の進行を開裂誘導部に誘導しやすいが、ヒートシール強度が低下する。前記配合量が5質量%未満であると、開裂が安定せず、誘導が不充分になる。
形態(a21)において添加剤を配合する場合、接着樹脂層15における配合する層の総質量(100質量%)に対する配合量は、5〜50質量%であり、10〜30質量%が好ましい。前記配合量が50質量%を超えると、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bに剥離のきっかけが生じた際に、開裂の進行を開裂誘導部に誘導しやすいが、ヒートシール強度が低下する。前記配合量が5質量%未満であると、開裂が安定せず、誘導が不充分になる。
形態(b)としては、下記形態(b1)及び(b2)が挙げられる。
(b1)シーラント層16が単層からなり、該シーラント層16自体が開裂誘導部である。
(b2)シーラント層16が複数層からなり、該シーラント層16のいずれかの層が開裂誘導部である。
形態(b1)としては、例えば、単層のシーラント層16に、非相溶系の熱可塑性樹脂、及びアンチブロッキング剤、フィラー等の各種添加剤から選ばれる1種以上を配合することで、シーラント層16自体を開裂誘導部とする形態(b11)が挙げられる。前記成分を配合することでシーラント層16内での同種樹脂部分の融着面積が小さくなり、シーラント層16内での開裂時の応力を小さくできる。形態(b11)では、開裂が接着樹脂層15とシーラント層16の層間、又はシーラント層16の内部に誘導され、剥離形態が層間剥離又は凝集剥離に誘導される。
非相溶系の熱可塑性樹脂及び添加剤については、前記形態(a11)で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい形態も同じである。
形態(b1)は、開裂誘導部の厚さが厚いほど、開裂が進行する際に糸引きが促進されやすくなるので、外装材1がより剥離し難くなる。
形態(b11)においてシーラント層16に非相溶系の熱可塑性樹脂を配合する場合、シーラント層16(100質量%)におけるその配合量は、5〜50質量%であり、10〜25質量%が好ましい。前記配合量が50質量%を超えると、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bに剥離のきっかけが生じた際に、開裂の進行を開裂誘導部に誘導しやすいが、ヒートシール強度が低下する。前記配合量が5質量%未満であると、開裂が安定せず、誘導が不充分になる。
シーラント層16に前記添加剤を配合する場合、シーラント層16(100質量%)におけるその配合量は、5〜50質量%であり、10〜30質量%が好ましい。前記配合量が50質量%を超えると、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bに剥離のきっかけが生じた際に、開裂の進行を開裂誘導部に誘導しやすいが、ヒートシール強度が低下する。前記配合量が5質量%未満であると、開裂が安定せず、誘導が不充分になる。
形態(b2):
形態(b2)においては、複数層のシーラント層16における開裂誘導部とする層は、1層でもよく2層以上でもよい。形態(b2)においては、複数層のシーラント層16における接着樹脂層15側の最表層と、融着面16a側の最表層の少なくとも一方を開裂誘導部とする形態が好ましい。
形態(b2)としては、例えば、複数層のシーラント層16のいずれかの層に、非相溶系の熱可塑性樹脂、又は、アンチブロッキング剤、フィラー等の各種添加剤を配合することで、シーラント層16におけるいずれかの層を開裂誘導部とした形態(b21)が挙げられる。前記成分を配合することで、シーラント層16におけるいずれかの層の同種樹脂部分の融着面積を小さくし、開裂時の応力を小さくできる。形態(a21)では、シーラント層16における開裂誘導部となる層の内部、又は開裂がシーラント層16における開裂誘導部である層と開裂誘導部でない層の層間に開裂が誘導され、剥離形態が層間剥離又は凝集剥離に誘導される。また、複数層のシーラント層16における接着樹脂層15側の最表層を開裂誘導部とした場合、該最表層の内部、又は該最表層とシーラント層16の層間に開裂が誘導され、剥離形態が層間剥離又は凝集剥離に誘導される。
非相溶系の熱可塑性樹脂及び添加剤については、前記形態(a21)で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい形態も同じである。
形態(b21)において非相溶系の熱可塑性樹脂を配合する場合、シーラント層16における配合する層の総質量(100質量%)に対する配合量は、5〜50質量%であり、10〜25質量%が好ましい。前記配合量が50質量%を超えると、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bに剥離のきっかけが生じた際に、開裂の進行を開裂誘導部に誘導しやすいが、ヒートシール強度が低下する。前記配合量が5質量%未満であると、開裂が安定せず、誘導が不充分になる。
形態(b21)において添加剤を配合する場合、シーラント層16における配合する層の総質量(100質量%)に対する配合量は、5〜50質量%であり、10〜30質量%が好ましい。前記配合量が50質量%を超えると、ヒートシール部1aにおけるシーラント層16同士の融着面16aの内部側の縁部分16bに剥離のきっかけが生じた際に、開裂の進行を開裂誘導部に誘導しやすいが、ヒートシール強度が低下する。前記配合量が5質量%未満であると、開裂が安定せず、誘導が不充分になる。
形態(c)としては、例えば、前記形態(a11)と形態(b11)を組み合わせた形態(c1)、前記形態(a11)と形態(b21)を組み合わせた形態(c2)、前記形態(a21)と形態(b11)を組み合わせた形態(c3)、前記形態(a21)と形態(b21)を組み合わせた形態(c4)等が挙げられる。
外装材1では、接着樹脂層15及びシーラント層16を単層としたり、複数層としたりして、開裂誘導部を設ける位置の制御、つまり剥離面の制御ができる。開裂誘導部は、シーラント層16の融着面16aに近いことが好ましい。つまり、接着樹脂層15よりもシーラント層16に形成されることが好ましく、シーラント層16が複数層からなる場合は、融着面16a側の層が開裂誘導部であることが好ましい。これにより、開裂が接着樹脂層15と腐食防止処理層14の界面に達して界面剥離が生じることを抑制することが容易になり、より安定して高い剥離強度を得ることができる。
ラミネート型の外装材を使用したリチウムイオン電池において外装材に要求される剥離強度には、開裂が始まった直後の剥離強度(以下、「バースト強度」という。)と、開裂が持続的に進行している際の剥離強度(以下、「シール強度」という。)の2種類がある。
外装材1のシール強度は、30N/15mm以上が好ましく、40N/15mm以上がより好ましい。
外装材1のバースト強度は、シール強度よりも5N/15mm以上高いことが好ましく、シール強度よりも10N/15mm以上高いことがより好ましい。
前記バースト強度及びシール強度は、シーラント層同士を重ね合わせてヒートシールしてヒートシール部を形成した外装材から縦100mm×横15mmの短冊状の試料片を切り出し、該試料片について、JIS Z1713に準拠して、引張速度300mm/分の条件で測定した値である。
(製造方法)
以下、外装材1の製造方法について説明する。ただし、外装材1の製造方法は以下に記載する方法には限定されない。
外装材1の製造方法としては、例えば、下記工程(I)〜(IV)を有する方法が挙げられる。
(I)金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
(II)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、接着層を兼ねる成型向上層12を介して基材層11を貼り合わせる工程。
(III)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、接着樹脂層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程。
(IV)得られた積層体を、シーラント層16同士が向かい合うようにしてヒートシールし、ヒートシール部1aを形成する工程。
工程(I):
金属箔層13の一方の面に、例えば、金属化合物、リン化合物、バインダー樹脂、架橋剤から構成される腐食防止処理剤を塗工し、乾燥・硬化を行って腐食防止処理層14を形成する。
塗工方法としては、公知の方法を採用でき、例えば、グラビアコータ、グラビアリバースコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、ダイコータ、バーコータ、キスコータ、コンマコータ等が挙げられる。
なお、前述したように、金属箔層13は、未処理の金属箔を用いてもよく、ウェットタイプ又はドライタイプの前処理を施した金属箔を用いてもよい。
工程(II):
例えば、ポリウレタン系接着剤等の接着剤と、成型向上層12を形成する前記樹脂(A)及びカップリング剤(B)の少なくとも一方とを含有する混合物を使用して、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーション等の手法により、金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に基材層11を貼り合わせる。また、熱融着性を有する樹脂(A)を使用する場合、押し出し等の方法で接着樹脂層15を形成し、熱ラミネーションにより基材層11を貼り合せてもよい。
工程(III):
例えば、工程(II)で得られた積層体の腐食防止処理層14側に、接着樹脂層15を形成する接着樹脂を使用してシーラント層16を積層する。
積層方法としては、ウェットラミネーション、押し出しラミネーション、ドライラミネーション、ホットメルトラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ヒートラミネーション等が挙げられる。その後、腐食防止処理層14と接着樹脂層15の密着性を向上させる目的で、熱処理(エージング処理や熱ラミネート等。)を施すことが好ましい。
また、接着樹脂層15とシーラント層16を形成する樹脂を共押出することで多層フィルムを作成し、該積層フィルムを前記積層体の腐食防止処理層14上に熱ラミネートにより積層させてもよい。
工程(IV):
例えば、得られた積層体のシーラント層16同士が向かい合うように重ね合わせ、端縁部をヒートシールしてヒートシール部1aを形成する。ヒートシールの条件は、公知の条件を適宜採用できる。
ヒートシール部を形成した外装材1の形態は、特定の形状には限定されない。例えば、三方シール、四方シール、ピローパウチタイプ等や、冷間成型により電池内容物を収納する凹部を形成したエンボスタイプ等が挙げられる。
以上説明した工程(I)〜(IV)により、外装材1が得られる。
なお、外装材1の製造方法は、前記工程(I)〜(IV)を順次実施する方法には限定されない。例えば、工程(II)を行ってから工程(I)を行ってもよい。また、金属箔層の両面に腐食防止処理層を設けてもよい。また、工程(III)を行った後に工程(II)を行ってもよい。また、腐食防止処理層14の形成を、シーラント層16を積層する押出ラミネーションの際にインラインで行ってもよい。
以上説明した本発明の外装材は、開裂誘導部を有することにより、ヒートシール部の融着面に剥離のきっかけが生じても、層間剥離又は凝集剥離に誘導して界面剥離が生じることを抑制できるので、電池内の圧力が持続的に上昇した場合であってもヒートシール部に破損が生じることを抑制できる。
なお、本発明の外装材は、前記外装材1には限定されない。例えば、外装材1では、金属箔層13における接着樹脂層15側、すなわち電解液と水分との反応により発生するフッ酸と接する可能性のある側に腐食防止処理層14が設けられているが、必要に応じて、金属箔層13の基材層11側にも腐食防止処理層を設けてもよい。具体的には、図3に例示した積層構成を有するリチウムイオン電池用外装材2(以下、「外装材2」という。)であってもよい。
外装材2は、基材層11の一方の面に、成形向上層12、腐食防止処理層14、金属箔層13、腐食防止処理層14、接着樹脂層15、及びシーラント層16が順次積層された積層構成を有する外装材である。
また、基材層と金属箔層の間に、成型向上層の代わりにドライラミネート用の接着剤により形成した接着剤層が設けられていてもよい。また、基材層と金属箔層の間に、成型向上層と前記接着剤層の両方が設けられていてもよい。この場合、接着剤層と成型向上層の積層構成は、基材層側から、成型向上層/接着剤層という積層順序であってもよく、接着剤層/成型向上層という積層順序であってもよく、接着剤層/成型向上層/接着剤層という積層順序であってもよい。接着剤層とは成型向上層を別々に設ける場合は、成型向上層の成分を水、溶剤等の溶媒にて適宜希釈し、塗工、ディッピング、スプレー法等の公知の方法により成型向上層を形成してもよい。
<リチウムイオン電池>
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の外装材を備えたリチウムイオン電池である。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池用外装材を使用する以外は公知の形態を採用できる。
例えば、外装材をシーラント層同士が対向するように重ね合わせ、それら外装材の端縁部をヒートシールして袋状とし、その内部に電池内容物を収納し、ヒートシールにより密封する三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピローパウチタイプや、外装材を冷間成型して凹部を形成し、前記凹部に電池内容物を収納し、ヒートシールにより密封するエンボスタイプ等が挙げられる。
本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、本発明の外装材を使用する以外は公知の方法を採用できる。例えば、エンボスタイプであれば、以下の方法が挙げられる。
本発明の外装材を冷間成型して凹部を形成し、該凹部内に、正極、セパレータ、負極を収納し、タブが凹部から外部に導出されるようにした後、外装材をシーラント層が対向するように重ね合わせ、1辺を残してヒートシールする。その後、開口した1辺から電解液を注入し、残りの1辺を真空環境下でヒートシールして密封することによりリチウムイオン電池を得る。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の外装材を備えているので、電池内の圧力が持続的に上昇した場合であっても、ヒートシール部に破損が生じ難く、長期信頼性に優れている。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
<非相溶系の熱可塑性樹脂による開裂誘導部の形成>
[使用材料]
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(基材層11)
基材フィルムA−1:二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)。
(成型向上層12)
混合物B−1:シラン系カップリング剤(商品名「KBM−403」、信越シリコーン社製)と、ポリウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン社製)の混合物。
(金属箔層13)
金属箔C−1:軟質アルミニウム箔8079材(厚さ40μm)。
(腐食防止処理層14)
処理剤D−1:フッ化クロム(III)、リン酸及びアクリル系樹脂を固形分比率40:20:40で混合した混合溶剤からなる塗布型クロメート処理用の処理剤。
(接着樹脂層15)
接着樹脂E−1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)。
接着樹脂E−2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)に、非相溶系の熱可塑性樹脂であるスチレン系エラストマー(商品名「タフテック」、旭化成社製)を15質量%となるように分散させた接着樹脂。
接着樹脂E−3:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(同上)に、非相溶系の熱可塑性樹脂(同上)を2質量%となるように分散させた接着樹脂。
接着樹脂E−4:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(同上)に、非相溶系の熱可塑性樹脂(同上)を50質量%となるように分散させた接着樹脂。
(シーラント層16)
フィルムF−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)。
フィルムF−2:ポリプロピレン樹脂に、非相溶系の熱可塑性樹脂を25質量%となるように分散させた無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)。
フィルムF−3:ポリプロピレン樹脂に、非相溶系の熱可塑性樹脂を2質量%となるように分散させた無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)。
フィルムF−4:ポリプロピレン樹脂に、非相溶系の熱可塑性樹脂を60質量%となるように分散させた無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)。
[外装材の作成]
金属箔C−1の一方の面に、処理剤D−1をマイクログラビアにより塗工し、乾燥ユニットにて150〜250℃で焼き付け処理を施すことで、金属箔層13上に、腐食防止処理層14を積層した。次いで、金属箔層13の腐食防止処理層14と反対側の面に、ドライラミネートにより混合物B−1を使用して基材フィルムA−1を貼り合せ、成型性向上層17を介して基材層11を積層した。次いで、得られた積層体の腐食防止処理層14上に、押出ラミネート機により接着樹脂を押出して接着樹脂層15を積層した。その後、シーラント層16を形成するフィルムを熱ラミネートすることで図1に例示した構成の外装材を得た。
[評価]
各例で得られた外装材2枚をシーラント層16同士が対向するように重ね合わせ、それら外装材の端縁部を上下からヒートシールバーで挟み、温度190℃、圧力1.0MPa、時間3秒の条件で、各残膜厚になるようにギャップを設け、シール前の積層部分A(接着樹脂層15/シーラント層16/シーラント層16/接着樹脂層15)の膜厚に対するシール後の積層部分Aの膜厚変化率が表1に示す値となるようにヒートシールを行った。その後、ヒートシールした外装材から縦100mm×横15mmの短冊状の試料片を切り出した。該試料片について、JIS Z1713に準拠して、ヒートシール部を一端から他端に向けて引張速度300mm/分で剥離し、シール強度及びバースト強度を測定した。剥離モードは、剥離面を目視にて確認した。
評価基準は、以下のとおりである。
シール強度は、40N/15mm以上を「○(良)」、40N/15mm未満を「×(不良)」とした。バースト強度は、シール強度より10N/15mm以上大きいものを「○(良)」、それ未満のものを「×(不良)」とした。また、剥離モードは、層間剥離又は凝集剥離であるものを「○(良)」、界面剥離であるものを「×(不良)」とした。
[実施例1〜6及び比較例10]
前記した作成方法により、接着樹脂層15とシーラント層16が表1の構成の外装材を作成し、剥離モード、バースト強度及びシール強度を評価した。
Figure 0006168200
表1に示すように、接着樹脂層15に非相溶系の熱可塑性樹脂を配合して開裂誘導部とした実施例1及び2では、剥離モードを層間剥離又は凝集剥離に導くことができ、安定した高い剥離強度が得られた。また、シーラント層16に非相溶系の熱可塑性樹脂を配合して開裂誘導部とした実施例3〜6では、剥離モードを層間剥離又は凝集剥離に導くことができ、安定した高い剥離強度が得られた。
一方、接着樹脂層15およびシーラント層16に本発明の開裂誘導部を形成していない比較例1〜10では、充分な剥離強度が得られなかった。
1 リチウムイオン電池用外装材
11 基材層
12 成型向上層
13 金属箔層
14 腐食防止処理層
15 接着樹脂層
16 シーラント層
16a シーラント層同士の融着面

Claims (6)

  1. 基材層の一方の面側に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層され、かつ前記シーラント層同士をヒートシールして融着したヒートシール部を有するリチウムイオン電池用外装材であって、
    前記シーラント層が複数層からなり、該シーラント層内のいずれかの層が層状の下記開裂誘導部であることを特徴とするリチウムイオン電池用外装材。
    (シーラント層の開裂誘導部)
    前記シーラント層内の開裂誘導部となる層の総質量に対して、当該層を形成するベース樹脂に分散径1〜100μmで分散する非相溶系の熱可塑性樹脂が5〜50質量%配合され、開裂時の応力が、前記ヒートシール部におけるシーラント層同士の融着面の開裂時の応力よりも小さい部分。
  2. 基材層の一方の面側に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層され、かつ前記シーラント層同士をヒートシールして融着したヒートシール部を有するリチウムイオン電池用外装材であって、
    前記シーラント層が単層からなり、該シーラント層自体が層状の下記開裂誘導部であることを特徴とするリチウムイオン電池用外装材。
    (シーラント層の開裂誘導部)
    前記シーラント層の総質量に対して、前記シーラント層を形成するベース樹脂に分散径1〜100μmで分散する非相溶系の熱可塑性樹脂が5〜50質量%配合され、開裂時の応力が、前記ヒートシール部におけるシーラント層同士の融着面の開裂時の応力よりも小さい部分。
  3. 前記腐食防止処理層が、3価クロムを含有する腐食防止処理剤で形成された層である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用外装材。
  4. 前記接着樹脂層が、酸変性エラストマー樹脂及び酸変性ポリオレフィン系樹脂の少なくとも一方を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材。
  5. 前記接着樹脂層及びシーラント層がいずれも熱可塑性樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材を備えたリチウムイオン電池。
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