JP2010229568A - セルロース複合糸条及び織編物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース繊維マルチフィラメントと合成繊維マルチフィラメントが混繊され、撚糸されてなり、かつ、セルロース繊維マルチフィラメントの混率が50〜85wt%であるセルロース複合糸条、及び該複合糸条が少なくとも一部に配置されてなる織編物、並び該セルロース複合糸条の製造方法。
【選択図】なし
Description
フィラメント素材には、紡績糸素材にはない独特な光沢感などの特性があり、高い機能性を有するにもかかわらず、該フィラメント素材が紳士用肌着として用いられなかったのは以下の理由によるものである。
一方、疎水性の合成繊維マルチフィラメントからなる衣料では、寸法安定性、湿潤強度に優れ、洗濯による風合い変化も少ないが、吸水性や吸湿性が不足しているため、着用中のムレ感が大きくなることがあった。又、一部の疎水性の合成繊維フィラメントからなる衣料の中には、着用中に生じる衣料と皮膚間の圧迫、スレ、コスレなどにより角質細胞へミクロな摩擦刺激が生じることがあり、皮膚が赤くなったり、違和感を感じたり、あるいは特に乾燥肌の人の場合は冬場の乾燥時にかゆみを感じることがあった。
即ち、本発明は下記の通りである。
1.セルロース繊維マルチフィラメントと合成繊維マルチフィラメントが混繊され、撚糸されてなり、かつ、セルロース繊維マルチフィラメントの混率が50〜85wt%であることを特徴とするセルロース複合糸条。
2.該合成繊維マルチフィラメントがポリエステル系合成繊維又はポリアミド系合成繊維である上記1記載のセルロース複合糸条。
3.上記1または2に記載されたセルロース複合糸条が少なくとも一部に配置されてなる織編物。
4.セルロース繊維マルチフィラメントと合成繊維マルチフィラメントが、セルロース繊維マルチフィラメントの混率が50〜85wt%になるように混繊された後に撚糸されることを特徴とする、上記1または2記載のセルロース複合糸条の製造方法。
また、伸縮性、滑り性に優れて動作時にも拘束感がなく着心地が楽であり、肌触りが柔らかく、皮膚に対する物理的摩擦刺激が小さく、継続着用しても肌に優しく、かつフィラメントのもつ美しい外観を保持することができる。
本発明のセルロース複合糸条は、セルロース繊維マルチフィラメントと合成繊維マルチフィラメントが混繊され、撚糸されてなり、かつ、セルロース繊維マルチフィラメントの混率が50〜85wt%であることを特徴とする。より好ましくは60〜80wt%である。セルロース繊維マルチフィラメントの混率が50wt%未満であると、肌に直接触れた時の清涼感が不足する。85wt%を超えると多量の発汗時に布帛が肌に張り付いて不快感が生じ、また繰り返し洗濯による風合変化が発生しやすくなる。
本発明では、セルロース繊維マルチフィラメントと合成繊維マルチフィラメントが単糸レベルで混繊されている。セルロース繊維マルチフィラメント糸と合成繊維マルチフィラメント糸の混繊方法としては、例えば、インターレース法(エアー交絡法)や、静電気力による電気開繊法で開繊して交絡させる方法が挙げられる。
このような混繊状態とするために、インターレース法の場合、交絡数は糸長1mあたり20個以上、120個以下が好ましい。より好ましくは70個以上、120個以下である。交絡数が20個未満であると単糸が均一に混繊しない場合がある。交絡数が120個を越えると糸の膨らみが減って汗処理機能が低下する傾向にあり、肌触りも硬く皮膚刺激が増大する傾向にある。
従来、複数の糸条を混繊し、撚糸する場合には、複数の糸条を一度に交撚することが行われていたが、この方法では相互の単糸の混じり合いが不均一な状態で撚糸されることがあり、本発明の複合糸条を得ることは困難であった。本発明ではセルロース繊維マルチフィラメントと合成繊維マルチフィラメントとが前述の混率になるように混繊された後に、撚糸されることによって、相互の単糸が均一に混じり合い、かつ各単糸間の距離を適度に保つことができることを見出した。
本発明のセルロース複合糸条に用いられるセルロース繊維マルチフィラメントは単糸繊度が0.1〜5.6dtexであることが好ましく、より好ましくは2.8dtex以下、さらに好ましくは1.4dtex以下である。セルロース繊維マルチフィラメントの単糸繊度が5.6dtexを超えると肌触りが悪くなることがある。
本発明のセルロース複合糸条に用いられるセルロース繊維マルチフィラメントには、酸化チタン1.5〜5wt%が含有されていることが好ましい。一定量の酸化チタンを含有することによって、薄地の布帛において透けを防止する効果が得られる。1.5wt%未満では透け防止効果が不十分であり、5wt%を越えるとセルロース繊維の紡糸性が不安定になり、強度低下や伸度低下を誘発する恐れがあり、好ましくない。透け防止効果の点からは、合成繊維マルチフィラメントに同程度の酸化チタンが含有されていても良いが、風合の点からセルロース繊維マルチフィラメントのみに酸化チタンが含有されていれば良い。
また、本発明において、編物または織物とする方法は特に限定はなく、通常の編機または織機を用いて製造することができる。編物の組織としてはフライス、スムース、天竺、鹿ノ子、片袋、ポンチローマ、ミラノリブ、パール編など丸編物や横編物などの緯編物、ハーフトリコット、ツーウェイ、ダブルデンビー、アトラスなどトリコット組織、サテンネット、トリコネットなどのラッセル組織などの経編物が用いられる。織物の組織としては、平織、綾織、朱子織およびその変化組織等が挙げられる。
(1)接触冷感性の測定
織編物の接触冷感性を評価するために、以下の方法で200g/m2の水分が付与された時の最大熱移動量Qmaxを測定する。
カトーテック社製のサーモラボIIを使用する。この装置は温められた熱板を試料上に置いたときの熱の移動量を測定するものである。具体的な測定方法としては、測定に使用する試料を20℃、65%RH環境下で24時間調湿した後、8cm×8cmにサンプリングされ、編地裏側(ウェル方向のループ数が少ない方の面)を上にして置かれた編地サンプルに、20℃、65%RH環境下で30℃に温められた熱板を置いた瞬間の最大熱移動量(Qmax)を測定する。
Qmax値に10以上の差が有れば、体感でも清涼性の優劣が明確であり、Qmax値が大きい織編物ほど、清涼性に優れる。
5人のモニターが試料をハンドリングして、ヒヤリ感およびベタツキ感について評価を行い、過半数を占めた評価結果をまとめた。
セルロース繊維マルチフィラメントとして84dtex45フィラメントのキュプラブライト糸[旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標)]を、合成繊維マルチフィラメントとして34dtex18フィラメントのW型断面ポリエステルフルダル糸(酸化チタン含有量3.0wt%)[旭化成せんい社製、テクノファイン(登録商標)]を、それぞれ用いて、両フィラメント糸を下記条件でインターレース交絡させてから、撚数300t/mで撚糸してセルロース繊維混率71wt%のセルロース複合糸条を得た。
インターレースインターレースノズル:京セラ KC−AJI−L(1.5mm径、推進型)、
フィード率:両フィラメント糸とも1.5%オーバーフィード、
エアー圧:1.5×105Pa、
加工速度:300m/分
該複合糸条を用いて、20ゲージのダブル丸編機にて、フライス組織を編成した。該編地を液流染色機にて精練剤と過酸化水素で80〜90℃×30分間下晒後、PH調整、水洗し、乾燥した後、170℃×1分の熱セットを行い、布帛サンプルを得た。
セルロース繊維マルチフィラメントとして84dtex45フィラメントのキュプラフルダル糸(酸化チタン含有量2.5wt%)[旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標)]を、合成繊維マルチフィラメントとして34dtex18フィラメントのW型断面ポリエステルフルダル糸(酸化チタン含有量3.0wt%)[旭化成せんい社製、テクノファイン(登録商標)]を用いる以外は実施例1と同条件で、インターレース交絡させ、撚糸してセルロース繊維混率71wt%のセルロース複合糸条を得た。実施例1と同様にして、布帛サンプルを得た。
セルロース繊維マルチフィラメントとして33dtex24フィラメントのキュプラブライト糸[旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標)]を、合成繊維マルチフィラメントとして44dtex36フィラメントのポリエステルフルダル糸(酸化チタン含有量3.0wt%)[旭化成せんい社製、テック(登録商標)]を用いて、実施例1と同条件で、インターレース交絡させ、撚糸してセルロース繊維混率43wt%のセルロース複合糸条を得た。該複合糸条を用いて、26ゲージのダブル丸編機にて、フライス組織を編成して、実施例1と同様に布帛サンプルを得た。
セルロース繊維マルチフィラメントとして56dtex45フィラメントのキュプラブライト糸[旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標)]を、合成繊維マルチフィラメントとして33dtex26フィラメントのポリアミド(ナイロン66)糸を用いて、実施例1と同条件で、インターレース交絡させ、撚糸してセルロース繊維混率63wt%のセルロース複合糸条を得た。該複合糸条を用いて、26ゲージのダブル丸編機にて、フライス組織を編成して、実施例1と同様に布帛サンプルを得た。
セルロースマルチフィラメントとして22dtex12フィラメントのキュプラ糸(酸化チタン不含有)[旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標)]を、合繊マルチフィラメントとして167dtex60フィラメントのW型断面ポリエステル(旭化成せんい社製、テクノファイン(登録商標))を用いて、両フィラメント糸を実施例1と同条件でインターレース交絡させてセルロース繊維混率12wt%のセルロース複合糸条を得た。該複合糸条を用いて、18ゲージのダブル丸編機にて、フライス組織を編成して、実施例1と同様に布帛サンプルを得た。
セルロースマルチフィラメントとして167dtex90フィラメントのキュプラ糸(酸化チタン不含有)[旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標)]を、合繊マルチフィラメントとして22dtex6フィラメントの丸型断面ポリエステル(旭化成せんい社製)を用いて、両フィラメント糸を実施例1と同条件でインターレース交絡させてセルロース繊維混率88wt%のセルロース複合糸条を得た。該複合糸条を用いて、18ゲージのダブル丸編機にて、フライス組織を編成した。実施例1と同様にして、比較例2の布帛を得た。
セルロースマルチフィラメントとして83dtex12フィラメントのキュプラ糸(酸化チタン不含有)[旭化成せんい社製、ベンベルグ(登録商標)]を、合繊マルチフィラメントとして83dtex30フィラメントのW型断面ポリエステル(旭化成せんい社製、テクノファイン(登録商標))を用いて、実施例1と同条件で、インターレース交絡させた後に、ベルトニップ方式の摩擦仮撚加工機(村田機械社製、33Hマッハクリンパー)に供給して下記の条件にて仮撚加工を行い、セルロース繊維混率50wt%のセルロース複合糸条を得た。該複合糸条を用いて、20ゲージのダブル丸編機にて、フライス組織を編成して、比較例3の布帛を得た。
仮撚加工条件
仮撚ヒーター:175℃
セットヒーター:使用せず
仮撚数:2151t/m、
延伸比:1.00
加工速度:300m/分
実施例の布帛は接触冷感性の指標であるQmax値が高く、清涼性に優れる。更にハンドリングにおいても実施例の布帛はヒヤリ感が感じられ、清涼感に優れたものである。比較例1,3の布帛はQmax値が実施例より10以上小さく、清涼性が劣る。また、比較例2の布帛はQmax高いもののハンドリング時のベタツキ感が劣る。
また、伸縮性、滑り性に優れて動作時にも拘束感がなく着心地が楽であり、肌触りが柔らかく、皮膚に対する物理的摩擦刺激が小さく、継続着用しても肌に優しく、かつフィラメントのもつ美しい外観を保持することができる。
したがって、本発明のセルロース複合糸条および織編物は、肌に直接触れる衣料、寝具、タオル、ハンカチ類などの製品に好適であり、特に、本発明の布帛を用いた肌着は、女性用肌着として優れているのみならず、紳士用肌着としても十分な機能を満たすものである。
Claims (4)
- セルロース繊維マルチフィラメントと合成繊維マルチフィラメントが混繊され、撚糸されてなり、かつ、セルロース繊維マルチフィラメントの混率が50〜85wt%であることを特徴とするセルロース複合糸条。
- 該合成繊維マルチフィラメントがポリエステル系合成繊維又はポリアミド系合成繊維であることを特徴とする請求項1記載のセルロース複合糸条。
- 請求項1または2に記載されたセルロース複合糸条が少なくとも一部に配置されてなる織編物。
- セルロース繊維マルチフィラメントと合成繊維マルチフィラメントが、セルロース繊維マルチフィラメントの混率が50〜85wt%になるように混繊された後に撚糸されることを特徴とする、請求項1または2記載のセルロース複合糸条の製造方法。
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