しかしながら、上述の如く、リヤワイパ装置及びロック装置は、通常、バックドアの車幅方向中央部に配置されている。このため、例えば細い針金などの開錠用部材を、防水グロメットを貫通させてピボット孔からロック装置に向けて故意に侵入させ、この針金の先端でロック装置のロック部分を引っ張る等によりロック装置が開錠されてしまう可能性があり、その構造上、車両の盗難防止効果が低かった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の盗難防止効果を高めることができるワイパピボット及びリヤワイパ装置を提供することにある。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ロック装置を有する開閉ドアの内部に取付けられたワイパモータによって、前記開閉ドアの車体外板に形成されたピボット孔を貫通するピボット軸を回転させて前記開閉ドアの外部に設けられたワイパアーム及びワイパブレードを往復回動させることにより、前記開閉ドアに設けられたウィンドウを払拭する車両用ワイパ装置におけるワイパピボットであって、前記開閉ドアの内部に設けられて前記ピボット軸を回転可能に支持するピボットホルダと、前記ピボットホルダに取り付けられ、前記ピボット孔のうち少なくとも前記ロック装置側の内周縁を囲繞するように前記ピボット孔に近接して配置された侵入阻止壁を有する盗難防止用スリーブと、前記侵入阻止壁に埋設された金属製の板材と、を備えたことを特徴とする。
このように、請求項1に記載の発明によれば、ピボットホルダに盗難防止用スリーブの装着部を装着することにより、盗難防止用スリーブの侵入阻止壁が、ピボット孔のうち少なくともロック装置側の内周縁を囲繞し、しかもピボット孔に近接して配置されるので、不心得者がピボット孔から針金などの開錠用部材をロック装置に向けて故意に侵入させ、ロック装置を開錠させようとしても、侵入阻止壁によって針金などの開錠用部材の侵入が阻止されるため、ワイパピボットとしての車両の盗難防止効果を高めることができる。
また、盗難防止用スリーブは、ピボット軸の軸線方向に沿ってピボットホルダの外周部に装着するだけなので、盗難防止用スリーブのピボットホルダへの組付作業も容易である。
さらに、侵入阻止壁には、金属製の板材が埋設されているので、例えば侵入阻止壁が薄肉でも針金などの開錠用部材の貫通を確実に防止できる。
また、前記課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、ロック装置を有する開閉ドアの内部に取付けられたワイパモータによって、前記開閉ドアの車体外板に形成されたピボット孔を貫通するピボット軸を回転させて前記開閉ドアの外部に設けられたワイパアーム及びワイパブレードを往復回動させることにより、前記開閉ドアに設けられたウィンドウを払拭する車両用ワイパ装置におけるワイパピボットであって、前記開閉ドアの内部に設けられて前記ピボット軸を回転可能に支持するピボットホルダと、前記ピボットホルダの外周部に装着される装着部と、該装着部における前記ピボット軸の先端側に前記ピボット軸の径方向外側に向けて延出して形成された鍔状部と、前記ピボット孔のうち少なくとも前記ロック装置側の内周縁を囲繞するように前記鍔状部から前記ピボット軸の先端側に向けて起立して形成されて前記ピボット孔に近接して配置された侵入阻止壁と、を有する盗難防止用スリーブと、前記侵入阻止壁に埋設された金属製の板材と、を備えたことを特徴とする。
このように、請求項2に記載の発明によれば、ピボットホルダに盗難防止用スリーブの装着部を装着することにより、鍔状部が開閉ドアの車体外板の内側でピボット孔に対面し、しかも鍔状部からピボット軸の先端側に向けて侵入阻止壁が起立して形成されてピボット孔に近接して配置されているので、不心得者がピボット孔から針金などの開錠用部材をロック装置に向けて故意に侵入させ、ロック装置を開錠させようとしても、侵入阻止壁によって針金などの開錠用部材の侵入が阻止されるため、ワイパピボットとしての車両の盗難防止効果を高めることができる。
また、盗難防止用スリーブは、ピボット軸の軸線方向に沿ってピボットホルダの外周部に装着するだけなので、盗難防止用スリーブのピボットホルダへの組付作業も容易である。
さらに、侵入阻止壁には、金属製の板材が埋設されているので、例えば侵入阻止壁が薄肉でも針金などの開錠用部材の貫通を確実に防止できる。
また、請求項3に記載の発明では、盗難防止用スリーブが、弾性材料にて形成され、侵入阻止壁の先端部が開閉ドアの車体外板の内面に接触して配置されているので、車体外板の内面と侵入阻止壁との間に隙間は無く、針金などの開錠用部材をピボット孔から侵入させてロック装置に送り込もうとしても、針金などの開錠用部材の侵入が確実に阻止される。しかも、盗難防止用スリーブ全体は弾性材料にて形成されているので、侵入阻止壁の先端部を車体外板の内面に接触させても、車体外板から伝わる振動を侵入阻止壁が吸収できるため車両走行中の振動などによる騒音の発生を防止できる。
また、盗難防止用スリーブにおいて、より好適には、侵入阻止壁の先端部を車体外板の内面に押し付けて密着接触させるが、このとき、請求項4に記載の発明では、侵入阻止壁の外周形状が基端部側から先端部側に向けて径方向内側に小径となる外周曲面を有しているので、侵入阻止壁を車体外板の内面に単に押し付けて密着接触させることにより、侵入阻止壁は径方向内側に倒れ込む(オーバーハングする)。これにより、侵入阻止壁の車体外板の内面への密着接触によって侵入阻止壁が径方向外側へ開いてしまうといった密着不良を防止し、針金などの開錠用部材の侵入をより確実に阻止できる。
さらに、請求項5に記載の発明では、侵入阻止壁の横断面形状が基端部側から先端部側に向けて先細り状を成すため、侵入阻止壁の基端部側は肉厚が比較的厚くなって針金などの開錠用部材の貫通を阻止でき、侵入阻止壁の先端部側は薄肉となり剛性が低く、侵入阻止壁の先端部の車体外板の内面への接触による車両走行中の振動などによる騒音の発生を防止できる。
また、請求項6に記載の発明のように、盗難防止用スリーブを回り止め構造によりピボットホルダの外周部周りに回転不可とすることで、車両走行時の振動やワイパ装置の駆動による振動等によって盗難防止用スリーブがピボットホルダの外周部周りに回転するのを防止できる。これにより、侵入阻止壁をピボット孔の内周縁全周ではなくピボット孔のうちロック装置側の内周縁を囲繞するように形成した場合でも、侵入阻止壁がピボット孔のうちロック装置側の内周縁を囲繞する状態を維持できるので、車両走行時の振動やワイパ装置の駆動による振動等によってワイパピボットとしての車両の盗難防止効果が低下することを防止できる。
そして、請求項7に記載の発明のように、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のワイパピボットをリヤワイパ装置に適用すれば、車両のバックドアに設けられたロック装置の開錠による盗難を防止することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
はじめに、図1乃至図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係るリヤワイパ装置10の構成について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る車両40の車体後部が示されている。この車両40の車体後部には、バックドア42が設けられており、このバックドア42における車幅方向中央部の開閉端側(ヒンジと反対側)の縁部には、ロック装置44が設けられている。このロック装置44では、バックドア42に設けられたキーシリンダ46にキーを差し込んで所定方向に回すと、キーシリンダロッド48が上昇又は下降し、ラッチ部材50及びストライカ部材52がロック状態又はアンロック状態に切り替わる構成となっている。
また、バックドア42の車幅方向中央部には、リヤワイパ装置10が設けられている。本実施形態のリヤワイパ装置10では、図2,図3に示されるように、バックドア42のリヤウィンドウ54に形成されたピボット孔56を貫通するピボット軸14をワイパモータ16によって回転させてリヤウィンドウ54の外部に設けられたワイパアーム18及び不図示のワイパブレードを往復回動させることによりリヤウィンドウ54を払拭する構成となっている。
また、本実施形態のリヤワイパ装置10では、ピボット孔56とピボット軸14との間にゴム製の防水グロメット20が設けられており、この防水グロメット20でピボット孔56とピボット軸14との間の隙間が封水されている。
リヤワイパ装置10のワイパピボット12には、バックドア42の内部に設けられてピボット軸14を回転可能に支持するピボットホルダ22が備えられている。また、このピボットホルダ22には、例えば細い針金などの開錠用部材58(図6参照)をピボット孔56からロック装置44に向けて故意に侵入させてロック装置44を開錠させるのを防止する盗難防止用スリーブ24が装着されている。
盗難防止用スリーブ24は、図3に示されるように、ピボット軸14の軸線方向に沿って貫通する装着孔26Aを備えた装着部26を有し、この装着孔26Aにピボットホルダ22の先端細径部28を挿入することにより、先端細径部28の外周部に装着されている。盗難防止用スリーブ24の装着部26におけるピボット軸14の先端側には、ピボット軸14の径方向外側に向けて延出する鍔状部30が形成されている。
この鍔状部30は、図4,図5に示されるように、車両下方向(Y方向)に延びる略半円形状で構成されている。また、鍔状部30におけるピボット軸14の先端部側(X方向側)の端面30Aは、図3に示されるように、車両上方向から下方向に向かうに従ってピボット孔56から遠ざかる傾斜面となっている。
なお、図3に示されるように、防水グロメット20の鍔状部30側の端面20Aは、鍔状部30におけるピボット軸14の先端部側の端面30Aとの隙間を小さくするために、端面30Aと対峙する同様な傾斜面となっている。
そして、鍔状部30には、図3乃至図5に示されるように、ピボット軸14の先端側(車体外板を構成するリヤウィンドウ54)に向けて起立しピボット孔56に近接して配置された侵入阻止壁32が形成されている。ここで、本実施形態では、ロック装置44がピボット孔56の下側でバックドア42の開閉端側(車両のルーフ側に設けられたヒンジと反対側)の縁部に配置されている。従って、細い針金などの開錠用部材58(図6参照)をピボット孔56からロック装置44に向けて侵入させることを侵入阻止壁32で防止するためには、侵入阻止壁32をピボット孔56のうち少なくともロック装置44側の内周縁を囲繞する形状とする必要がある。
そこで、本実施形態では、図2,図3に示されるように、侵入阻止壁32を、材料費低減、小型化をも考慮して、ピボット孔56のロック装置44側の内周縁を囲繞する形状としている。つまり、侵入阻止壁32は、図4,図5に示されるように、鍔状部30の下側(Y方向側)でピボット軸14の軸線L1回りの略180度の範囲に亘って形成されている。
また、本実施形態の盗難防止用スリーブ24は、例えば樹脂成形等によって全体がゴムなどの弾性材料にて形成され、比較的硬質の弾性材料を使用しており、侵入阻止壁32の先端部32Aは、図3に示されるように、リヤウィンドウ54の内面54Aに接触して配置されている。
ここで、本実施形態の侵入阻止壁32の外周形状は、図4,図5に示されるように、鍔状部30側から先端部32A側に向けて径方向内側に小径となる外周曲面となっている。この構成により、図3に示されるように、侵入阻止壁32をリヤウィンドウ54の内面54Aに押し付けて密着接触させることで、侵入阻止壁32が二点鎖線で示されるピボット軸14の先端側に向けた起立状態から実線で示される径方向内側に倒れ込んだ状態となっている(つまりオーバーハングした状態となっている)。
さらに、侵入阻止壁32の横断面形状は、図3における断面図で示されるように、鍔状部30側から先端部32A側に向けて先細り状を成している。つまり、侵入阻止壁32の基端部側は、肉厚が比較的厚くなっており、侵入阻止壁32の先端部32A側は、薄肉となり剛性が低くなっている。
そして、装着部26のピボット孔56と反対側の端面26Bには、図3乃至図5に示されるように、装着孔26Aの周囲に係合凸部34A,34Bが設けられている。そして、この係合凸部34A,34Bを、図3に示されるように、ピボットホルダ22の段部36に形成された係合凹部38A,38Bに係合させることにより、盗難防止用スリーブ24がピボットホルダ22の外周部周りに回転不可となっている。
また、この盗難防止用スリーブ24の侵入阻止壁32には、金属製の板材66が埋設されている。なお、この板材66は、盗難防止用スリーブ24の樹脂成形時に同時に埋設されることが望ましい。
次に、上記構成からなるリヤワイパ装置10が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態に係るリヤワイパ装置10によれば、ピボットホルダ22に盗難防止用スリーブ24の装着部26を装着することにより、鍔状部30がバックドア42のリヤウィンドウ54の内側でピボット孔56に対面し、しかも鍔状部30からピボット軸14の先端側に向けて侵入阻止壁32が起立して形成されてピボット孔56に近接して配置されている。
従って、図6に示されるように、不心得者が細い針金などの開錠用部材58を、防水グロメット20を貫通させてピボット孔56からロック装置44(図2参照)に向けて故意に侵入させ、ロック装置44を開錠させようとしても、侵入阻止壁32によって針金などの開錠用部材58の侵入が阻止されるため、ワイパピボット12としての車両40の盗難防止効果を高めることができる。
また、本実施形態では、盗難防止用スリーブ24が、弾性材料にて形成され、侵入阻止壁32の先端部32Aがバックドア42のリヤウィンドウ54の内面54Aに接触して配置されている。
従って、リヤウィンドウ54の内面54Aと侵入阻止壁32との間に隙間は無く、針金などの開錠用部材58をピボット孔56から侵入させてロック装置44に送り込もうとしても、針金などの開錠用部材58の侵入が確実に阻止される。
さらに、本実施形態では、鍔状部30におけるピボット軸14の先端部側の端面30Aは、車両上方向から下方向に向かうに従ってピボット孔56から遠ざかる傾斜面となっている。従って、防水グロメット20を貫通させてピボット孔56からロック装置44に向けて侵入された針金などの開錠用部材58は、図6に示される如く端面30Aに接触することなく円滑に侵入阻止壁32に導かれてロック装置44(図2参照)への侵入が阻止される。
また、本実施形態に係る盗難防止用スリーブ24においては、侵入阻止壁32の先端部32Aをリヤウィンドウ54の内面54Aに押し付けて密着接触させているが、本実施形態では、侵入阻止壁32の外周形状が鍔状部30側から先端部32A側に向けて径方向内側に小径となる外周曲面を有している。従って、侵入阻止壁32をリヤウィンドウ54の内面54Aに単に押し付けて密着接触させることにより、侵入阻止壁32は径方向内側に倒れ込んだ状態となっている(オーバーハングした状態となっている)。
これにより、侵入阻止壁32のリヤウィンドウ54の内面54Aへの密着接触によって侵入阻止壁32が径方向外側へ開いてしまうといった密着不良を防止し、針金などの開錠用部材58の侵入をより確実に阻止できる。
また、本実施形態のように、盗難防止用スリーブ24をピボットホルダ22の外周部周りに回転不可とすることで、車両40走行時の振動やワイパ装置の駆動による振動等によって盗難防止用スリーブ24がピボットホルダ22の外周部周りに回転するのを防止できる。
従って、本実施形態のように、侵入阻止壁32をピボット孔56の内周縁全周ではなくピボット孔56のうちロック装置44側の内周縁を囲繞するように鍔状部30からピボット軸14の先端側に向けて起立して形成した場合でも、侵入阻止壁32がピボット孔56のうちロック装置44側の内周縁を囲繞する状態を維持できる。これにより、車両40走行時の振動やワイパ装置の駆動による振動等によってワイパピボット12としての車両40の盗難防止効果が低下することを防止できる。
さらに、盗難防止用スリーブ24全体は弾性材料にて形成されているので、侵入阻止壁32の先端部32Aをリヤウィンドウ54の内面54Aに接触させても、リヤウィンドウ54から伝わる振動を侵入阻止壁32が吸収できるため車両走行中の振動などによる騒音の発生を防止できる。
また、本実施形態では、侵入阻止壁32の横断面形状が鍔状部30側から先端部32A側に向けて先細り状を成している。このため、侵入阻止壁32の鍔状部30側、つまり基端部側は肉厚が比較的厚くなって針金などの開錠用部材58の貫通を阻止できる。また、侵入阻止壁32の先端部32A側は薄肉となり剛性を低くしたので、弾性材料を比較的硬質なものとして開錠用部材58の侵入阻止効果を高めても、侵入阻止壁32の先端部32Aのリヤウィンドウ54の内面54Aへの接触による車両走行中の振動などによる騒音の発生を防止できる。
しかも、本実施形態に係る盗難防止用スリーブ24は、ピボット軸14の軸線方向に沿ってピボットホルダ22の外周部に装着するだけなので、盗難防止用スリーブ24のピボットホルダ22への組付作業も容易である。
さらに、侵入阻止壁32には、金属製の板材66が埋設されている。従って、侵入阻止壁32が例えば肉厚の形状や硬質の特殊なゴムで構成されてなくても針金などの開錠用部材58の貫通を確実に防止できる。
以上詳述したように、本実施形態に係るリヤワイパ装置10によれば、車両40のバックドア42に設けられたロック装置44の開錠による盗難を防止することができる。
次に、本発明の一実施形態に係るリヤワイパ装置10の変形例について説明する。
上記実施形態では、ピボット孔56が車体外板を構成するリヤウィンドウ54に形成されていたが、この限りではない。その他にも、ピボット孔56は、例えばバックドア42に設けられた車体外板としてのアウターパネルに形成されていても良い。
また、上記実施形態では、ワイパモータ16の出力軸をピボット軸14とし、この出力軸としてのピボット軸14にワイパアーム18を直接的に固定しているが、ピボット軸14は、別途車体に固定されたピボットホルダ(不図示)に回転自在に支持されると共にワイパモータ16の出力軸に連結された揺動リンク機構(不図示)により回転されるピボット軸であっても良い。