本発明は、振れを補正する振れ補正装置、および該振れ補正装置を有する撮像装置に関するものである。
現在のカメラは露出決定やピント合わせ等の撮影に際して重要な作業は全て自動化され、カメラ操作に未熟な人でも撮影失敗を起こす可能性は非常に少なくなっている。また、最近では、カメラに加わる手振れによる像振れを補正するシステムも研究されており、撮影者の撮影ミスを誘発する要因は殆ど無くなってきている。
ここで、手振れによる像振れを補正するシステムについて簡単に説明する。
撮影時のカメラの手振れは、周波数として通常1Hzないし10Hzの振動である。シャッタのレリーズ時点においてこのような手振れを起こしていても像振れの無い写真を撮影可能とするための基本的な考えとして、手振れによるカメラの振れを検出し、その検出値に応じて像振れ補正用のレンズ(以下、補正レンズ)を変位させなければならない。従って、カメラ振れが生じても像振れが生じない写真を撮影するためには、第1に、カメラの振れ(振動)を正確に検出し、第2に、手振れによる光軸変化を補正することが必要となる。
カメラ振れの検出は、原理的にいえば、加速度、角加速度、角速度、角変位等を検出し、カメラ振れによる像振れ補正の為にその出力を適宜演算処理する振れ検出部をカメラに搭載することによって行うことができる。そして、検出された振れ情報に基づき、撮影光軸を偏心させるための補正レンズを駆動して像振れ補正が行われる。
図9は像振れ補正機能を有するデジタルコンパクトカメラの外観図であり、光軸41に対して矢印42p,42yで示すカメラ縦振れ及び横振れに対し、像振れ補正を行う。尚、カメラ本体43の中で、43aはレリーズボタン、43bはモードダイアル(メインスイッチを含む)、43cはリトラクタブルストロボである。
図9ではカメラ本体43の背面に配置されて見えないが、該カメラ本体43の背面には液晶モニターが設けられており、後述する撮像素子で撮影される像を確認できるようになっている。撮影者はこの液晶モニターで撮影画像の構図を確認して、その後撮影を行う。
図10は、図9のデジタルコンパクトカメラに具備される像振れ補正装置に係る部分の構成を示す斜視図であり、44は撮像素子である。像振れ補正装置は、補正レンズ52を保持する保持枠53を矢印58p,58y方向に自在に駆動して、図9の矢印42p,42y方向の像振れ補正を行うものであり、詳細については後述する。45p,45yは各々矢印46p,46y回りの振れを検出する角速度計や角加速度計等の振れ検出部である。この振れ検出部45p,45yの出力は後述する演算部47p,47yを介して補正レンズ52の駆動目標値に変換され、像振れ補正装置のコイルに入力されて像振れ補正が行われる。
図11は、図10に示した演算部47p,47y等の詳細を示すブロック図であり、演算部47p,47yとも同様な構成である為に、図11では演算部47pのみを説明する。
演算部47pは、点線にて囲まれる以下の構成要素を具備している。DCカットフィルタ兼増幅部48p、ローパスフィルタ兼増幅部49p、アナログ トゥ ディジタル変換部(以下、A/D変換部)410p、カメラマイコン415の一部を有する。上記カメラマイコン415は、DCカットフィルタ411p、積分部412p、敏感度調整部413pを具備する。また、点線にて囲まれる414はカメラマイコン415の他の部(加算器及び差動器)を含む駆動部であり、後述のコイル57aを駆動するコイル駆動部414a及び後述のコイル57bを駆動するコイル駆動部414bを有する。
ここでは振れ検出部45pとして、カメラの振れ角速度を検出する振動ジャイロを用いており、振動ジャイロはカメラのメインスイッチのオンと同期して駆動され、カメラに加わる振れ角速度の検出を開始する。
振れ検出部45pからの振れ信号は、アナログ回路で構成されるDCカットフィルタ兼増幅部48pにより該信号に重畳しているDCバイアス成分がカットされると共に、適宜増幅される。DCカットフィルタ兼増幅部48pの出力信号はアナログ回路で構成されるローパスフィルタ兼増幅部49pによりA/D分解能に合わせて適宜増幅されると共に、振れ角速度信号に重畳する高周波のノイズがカットされる。これは振れ角速度信号がカメラマイコン415に入力される時のA/D変換部410pでのサンプリングが振れ角速度信号のノイズにより読み誤りが起きるのを避ける為である。
ローパスフィルタ兼増幅部49pの出力信号はA/D変換部410pによりサンプリングされてカメラマイコン415に取り込まれる。
DCカットフィルタ兼増幅部48pによりDCバイアス成分はカットされている訳であるが、その後のローパスフィルタ兼増幅部49pの増幅により再びDCバイアス成分が振れ角速度信号に重畳している。その為にカメラマイコン415内において再度DCカットを行う必要がある。そこで、カメラマイコン415内ではデジタルフィルタで構成されたDCカットフィルタ411pにより十分なDCカットを行っている。
積分部412pはDCカットフィルタ411pの出力信号の積分を始め、角速度信号を角度信号に変換する。敏感度調整部413pは積分された角度信号をその時のカメラの焦点距離、被写体距離情報により適宜増幅し、振れ角度に応じて適切な量、像振れ補正装置の被駆動部が駆動されるように変換する。焦点距離、被写体距離により撮影光学系が変化し、被駆動部の駆動量に対し光軸偏心量が変わる為、この補正を行う必要がある。この敏感度調整部413pの信号はピッチ方向の像振れ補正目標値となり、この値に基づいて像振れ補正装置の機構部分(以下、単に像振れ補正装置という)を駆動し始める。
駆動部414については、像振れ補正装置の説明の後に説明する。
図12及び図13は像振れ補正装置を示す図であり、詳しくは、図12は像振れ補正装置の正面図、図13は図12のB−B断面図である。
図12において、52は像振れ補正の為の補正レンズ、53は補正レンズ52を保持する保持枠、54は像振れ補正装置の地板である。
保持枠53のピン53a,53b,53cと地板54のピン54a,54b,54cの間には120度間隔で放射方向に引っ張りコイルバネ55a,55b,55cが設けられており、保持枠53は地板54に対して弾性支持されている。
図13で示す様に、保持枠53と地板54の間には転動ボール56cが設けられている。 又、引っ張りコイルバネ55a〜55cは、図13に示した様に、光軸51と直交する平面方向に対して斜めに配置され、保持枠53を地板54に押し付けている。そして、その付勢力で転動ボール56cは保持枠53と地板54の間に挟持される。尚、転動ボール56a,56bも転動ボール56cと同様、保持枠53と地板54の間に平面方向3箇所に設けられており、図12では保持枠53の影に隠れて見えないが、その配置位置だけを図示している。
このように保持枠53は転動ボール56a〜56cを介して地板54に位置規制されている為に光軸51方向には移動規制されるが、光軸51と直交する平面内には自由に移動(図12の矢印58p,58yの方向)できる。
保持枠53の耳部53d,53e,53f,53gにはコイル57a,57bが取り付けられ、その対向面の地板54側にはネオジウム等の永久磁石59a,59bが設けられている。永久磁石59a,59bの背面には強磁性材料のヨーク510a,510bが設けられ、コイル57a,57bの地板54とは反対の対向面にも地板54に対して固定された強磁性材料のヨーク511a,511bが設けられている。尚、図13では、永久磁石59a、ヨーク510a、コイル57a、ヨーク511aは省略している。その為に永久磁石59a,59bは各々ヨーク510a,511aで形成される磁路を形成しており、コイル57a,57bはその磁路内に配置される事になる。
ここで、補正レンズ52、保持枠53、コイル57a,57b、引っ張りコイルバネ55a〜55cで像振れ補正作用部(以下、被駆動部)を構成している。
図13において、永久磁石59bの磁気回路はコイル57bに向かって垂直に貫いている為に、コイル57bに電流を流すと、図12に示すように、保持枠53等の被駆動部は矢印512b方向或いはその反対方向に駆動される。同様に、コイル57aに電流を流すと、被駆動部は矢印512a方向或いはその反対方向に駆動される。
そして、その駆動量は引っ張りコイルバネ55a〜55cのバネ定数とコイル57a,57bと永久磁石59a,59bの関連で生ずる推力との釣り合いで求まる。即ち、コイル57a,57bに流す電流量に基づいて補正レンズ52の偏心量を制御できる。
尚、図12、図13では、被駆動部側にコイル57a,57bを設け、地板54側に永久磁石59a,59bを設けている。しかし、被駆動部側に永久磁石59a,59bを設け、地板54側にコイル57a,57bを設けても、同様な効果を得ることが出来る。
図11に戻って、駆動部414は、対のコイル57a,57bに電流を流して補正レンズ52(被駆動部)をピッチ方向58p、ヨー方向58yに駆動する為の概略の回路構成を示す図である。
敏感度調整部413p,413yの出力は、補正レンズ52をピッチ方向58p、ヨー方向58y方向に動かして像振れ補正を行う為の駆動目標値である。しかし、図12からわかるように、コイル57a,57bによる保持枠53の駆動方向は矢印512a及びその反対方向、矢印512b及びその反対方向である。
そこで、ピッチ方向58pの像振れ補正を行う為に敏感度調整部413p(ピッチ方向駆動目標値)からは,コイル駆動回路414a及びコイル駆動回路414bに対して各コイル59a,59bに同位相の電流を与える。これにより、コイル57a,57bはその合成力で補正レンズ52を矢印58p方向に駆動する。
又、ヨー方向58yの像振れ補正を行う為に敏感度調整部413y(ヨー方向駆動目標値)からは、コイル駆動回路414a及びコイル駆動回路414bに対しては各コイル59a,59bに逆位相の電流を与える。これにより、コイル57a,57bはその合成力で保持枠53を矢印58y方向に駆動する。
コイル57a,57bに同位相で同じ量の電流が印加された場合には、図14で示すように、コイル57aは矢印512a方向に駆動力を発生し、コイル57bは512b方向に駆動力を発生するので、その合力は矢印58pとなる。
また、コイル57a,57bに逆位相で同じ量の電流が印加された場合には、図15で示すように、コイル56aは矢印512a方向と反対方向の矢印512a’方向に駆動力を発生し、コイル57bは矢印512方向に駆動力を発生する。よって、その合力は矢印58yとなる。
このように二つのコイル57a,57bの発生力を駆動部414にて適宜合成して補正レンズ52をピッチ方向58p、ヨー方向58yに振れ検出部45p,45yの出力に基づいて駆動することで、像振れ補正を行っている。
次に、加速度検出について述べる。
上記で述べた像振れ補正装置では、振動ジャイロ(振れ検出部45p,45y)を用いて手振れの回転方向の振動による振れの角速度を検出し、角度振れ補正を行っている。しかし、手振れには回転方向の振動による角度振れと並進変位方向の振動によるシフト振れが存在する。振動ジャイロでは角度振れを補正することはできるが、シフト振れを補正することはできない。手振れによるカメラの並進変位方向の振動は、特にマクロ撮影時において撮影失敗を起こす大きな原因となり得る。しかし、手振れ時の加速度は非常に小さいため、カメラに取り付けられる加速度検出センサは精度の高いものが求められる。高精度の加速度検出センサとしては、サーボ型加速度計が挙げられる。
ここで、図16、図17に示すサーボ型加速度計の構成について述べる。図16は磁気を利用したサーボ型加速度計の外観図であり、図17は図16のC−C断面図である。
図16、図17において、11はサーボ型加速度計の地板基板、12は保持枠である。13は可動部であり、後述の板バネによって片持ち弾性支持され、加速度によって変位する。14は永久磁石であり、駆動コイル15からの磁気を受けることで可動部13を変位させる。16は板バネであり、一端は可動部13を片持ち弾性支持し、もう一方端は保持枠12によって保持されており、可動部13及び永久磁石14は矢印20方向とその逆の矢印21方向に変位可能である。地板基板11上には永久磁石14の下方位置に駆動コイル15が配置され、可動部13の変位を検出する変位検出部17が配置されている。この変位検出部17の端子と駆動コイル15の各端子は地板基板11上のプリント配線に対して電気的に接続される。
図18はサーボ型加速度計の回路構成を示すブロック図である。このサーボ型加速度計が図16に示す矢印21方向に加速度を受けると、可動部13および永久磁石14は慣性力により矢印20方向に移動する。この時の可動部13の変位を変位検出部31(図16、図17の変位検出部17に相当)が検出する。変位検出部31の出力信号はアナログ回路で構成される増幅部32により増幅される。増幅部32の出力信号は位相進み補償部33により位相進みが補償され、コイル駆動部34によって増幅された電流が駆動コイル35(図16、図17の駆動コイル15に相当)に流れる。
このとき、駆動コイル35により発生した磁界は、図16、図17において、フレミングの法則により可動部13及び永久磁石14に矢印20方向とは逆の矢印21方向に力を与え、受けた加速度と駆動コイル15(35)によって発生した磁界による力とのつり合った位置に変位する。この際、駆動コイル15に流れた電流量はサーボ型加速度計が受けた加速度に比例するので、電流量を電圧に変換し、加速度検出兼増幅部36によって増幅して加速度信号を検出する。
上記のように、振動ジャイロを用いて角速度検出を行う像振れ補正装置では、角速度しか検出することができず、手振れに含まれるシフト振れを補正することはできない。したがって、手振れによる像振れを適切に防ぐには、新たに高精度且つ高価な加速度センサを搭載する必要があった。
これに対し、特許文献1では、保持部材が弾性支持部材によって片持ち支持されており、保持枠は光軸の略直交する平面内で移動可能である。そこで、保持枠がシフト振れの加速度を受けることにより、駆動コイルに流れる駆動電流が変化することを利用して、実際の駆動電流と理想的駆動電流との差を加味することでシフト振れ量を算出し、振れ補正を行っている。したがって、高精度且つ高価な加速度センサを像振れ補正装置に搭載する必要がなくなる。
特開平7−301838号公報
しなしながら、上記のシフト振れ検出手法では、保持枠自体が振れ補正のために移動し慣性力を受けるので手振れによるシフト振れの加速度と振れ補正による保持枠の加速度を分離することが困難であり、シフト振れ補正の精度が低下するものであった。
なお、保持枠は手振れを検出した際に、振れを防ぐ方向(光学的に補正する方向)に移動するが、移動時に保持枠自身も加速度を持ってしまうので、検出される加速度が手振れのものなのか、保持枠移動に伴う加速度なのかわからなくなる。保持枠は本来、手振れの加速度検出のみによって移動されるべきなので、二つの加速度を分離する必要がある。
(発明の目的)
本発明の目的は、新たに加速度検出センサを備えることなく、手振れに含まれるシフト振れを補正して、精度の高い振れ補正を行うことのできる振れ補正装置および撮像装置を提供しようとするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、振れ補正用の補正手段と、前記補正手段を光軸方向に延びた弾性部材により弾性支持する弾性支持手段と、前記補正手段の位置を検出する位置検出手段と、駆動コイルと磁石を用いて前記補正手段を光軸と直交する平面内において移動させる駆動手段と、前記補正手段が振れによる加速度を受けたときに前記駆動コイルに生ずる電流により前記加速度を検出する加速度検出手段と、振れ補正非作動時に検出される前記加速度より算出される振れ補正量に基づいて前記駆動コイルを駆動し、前記補正手段の光軸と直交する方向の振れを補正する振れ補正制御手段とを有する振れ補正装置であって、前記加速度検出手段による加速度検出動作と前記振れ補正制御手段による振れ補正動作を交番的に行わせると共に、前記振れ補正動作を行う期間と前記加速度検出動作の期間の間に、前記補正手段の移動を安定させる安定化待機を行う期間を設ける振れ補正装置とするものである。
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記振れ補正装置を具備することを特徴とする撮像装置とするものである。
本発明によれば、新たに加速度検出センサを備えることなく振れを補正して、精度の高い振れ補正を行うことができる振れ補正装置または撮像装置を提供できるものである。
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1ないし3に示す通りである。
図1ないし図3は本発明の実施例1に係わるシフト振れを補正するための振れ補正装置を示す構成図であり、詳しくは、図1は振れ補正装置を示す正面図、図2は図1のA−A断面図、図3は振れ補正装置を示す斜視図である。なお、以下の実施例では、振れ補正を行う保持枠自身を加速度計として使って、シフト振れを補正する技術について説明している。しかし、振動ジャイロなどの角速度検出手段を有していれば、本実施例の構造の保持枠を使って角度振れも補正することができるものである(但し、本実施例の動作では角度振れとシフト振れを同時に補正することはできない)。
図1ないし図3において、63は振れ補正用の補正レンズ、62は補正レンズ63を保持する保持枠、64aは保持枠62上に設置された保持枠基板である。66(66a,66b)は振れ補正装置の駆動手段の一部を成す駆動コイルであり、保持枠基板64a上に設けられ、電気的に接続されている。61は振れ補正装置の地板であり、地板61の下部には地板基板64bが取り付けられている。65(65a〜65d)は保持枠62を弾性支持する光軸方向に延びた棒状の弾性支持部材であり、一方が保持枠基板64aに接続され、もう一方が地板基板64bに接続されている。弾性支持部材65は導電性をもち、保持枠基板64aと地板基板64bを電気的に接続しているので、地板基板64b側から電気的信号を送り、駆動コイル66に流れる電流量を制御することができる。
67(67a,67b)は駆動コイル66からの磁気を受けることで保持枠62を動かす永久磁石であり、地板61に固定された下部ヨーク68b上に固定されている。図1ないし図3では不図示であるが、駆動コイル66から上方の少しの距離を置いた位置に上部ヨーク68aが設置されており、永久磁石67、上部ヨーク68a及び下部ヨーク68bにより一連の磁気回路が形成されている。
ここで、駆動コイル66aに電流を加えると、フレミングの左手の法則により、矢印71y方向(以下、71y軸方向と記す)に電磁力が発生する。保持枠62は弾性支持部材65により弾性支持をされている状態にあるので、補正レンズ63の光軸に直交する平面内において71y軸方向に移動(以下、平行移動とも記す)することができる。同様にして、駆動コイル66bに電流を加えることで、保持枠62は光軸に直交する平面内において矢印71x方向(以下、71x軸方向と記す)に移動(以下、平行移動とも記す)することができる。つまり、手振れ振動に対して、駆動コイル66a,66bの電流を振れ検出部(不図示)から得られた振れ情報により制御することで、保持枠62(補正レンズ63)を光軸に直交する平面内を2自由度で平面移動させ、シフト振れ補正をすることができる。
保持枠62が平行移動するとき、補正レンズ63の光軸方向、つまり矢印71z方向(以下、71z軸方向と記す)にも保持枠62は移動する。しかし、平面移動量に対して弾性支持部材65の長さが十分長く光軸方向に延びているので、71z軸方向の移動量は非常に微小であり、像振れ補正に対して無視することができる。なお、本実施例1では、保持枠62側に駆動コイル66を取り付け、地板61側に永久磁石67を取り付けているが、保持枠62側に永久磁石67を取り付け、地板61側に駆動コイル66を取り付けても構わない。
上記手振れに起因するシフト振れを補正する一連の動作を“振れ補正動作”と呼び、この期間を“振れ補正期間”と呼ぶものとする。
69(69a,69b)は保持枠62の位置を検出する位置センサであるところのフォトリフレクタであり、地板基板64bに電気的に接続されている。保持枠62が71y軸方向に移動するとき、フォトリフレクタ69aから発せられた光が保持枠62の鏡面部62aにより反射され、その反射による光量を電気的に変換し、測定することで、保持枠62の71y軸方向の位置を検出することができる。また、保持枠62が71x軸方向に移動するとき、フォトリフレクタ69bから発せられた光が保持枠62の鏡面部62bにより反射され、その反射による光量を電気的に変換し、測定することで、保持枠62の71x軸方向の位置を検出することができる。保持枠62が71z軸方向に移動するとき、フォトリフレクタ69から検出される電流量は変化するが、上記のように保持枠62の平面移動量に対して弾性支持部材65の長さが十分長ければ、71z軸方向の移動量は非常に微小であるので、無視することができる。なお、本実施例1では、位置検出手段としてフォトリフレクタ69を用いているが、フォトインタラプタなどの光学位置検出センサやその他の位置検出センサを用いても構わない。
次に、加速度検出について述べる。
図1ないし図3において、保持枠62は図16のサーボ加速度計の可動部13の役割を果たし、弾性支持部材65は板バネ16の役割を果たす。保持枠62はフォトリフレクタ69からの信号により、駆動コイル66の電流を制御することで、ある一定の基準位置に静止している。この振れ補正装置が図1の矢印74方向に加速度を受けるとき、保持枠62は慣性力により矢印75方向に移動を行う。このときの保持枠62の位置変位をフォトリフレクタ69によって検出する。フォトリフレクタ69の出力信号は増幅部により増幅され、駆動コイル66に電流がフィードバックされる。このときの駆動コイル66により発生した磁界はフレミングの法則により永久磁石67に電磁力を与え、保持枠62を矢印75と逆の74方向に力を与える。これにより、保持枠62は受けた加速度と駆動コイル66によって発生した磁界による力がつりあった位置に変位する。
この時、駆動コイル66に流れた電流量を検出することで加速度を求めることができる。
振れ補正装置が受けた加速度を検出する一連の動作を“加速度検出動作”と呼び、この期間を“加速度検出期間”と呼ぶものとする。
駆動コイル66、フォトリフレクタ69、及び、弾性支持部材65はそれぞれ保持枠基板64a、地板基板64bを介して、不図示の演算部、増幅部及び駆動部を有する電気回路に電気的に繋がっている。
本実施例1は、上記の振れ補正動作と加速度検出動作を交番的に行うことで、撮像装置等の光学装置に加わる手振れによる保持枠62およびシフトレンズ63の光軸と直交する方向のシフト振れを補正するものである。
以下、実際の動作について説明する。説明では理解を簡単にするために1軸方向の手振れによる振れ補正に関して述べる。
図4は本実施例1に係わる振れ補正に係る一連の動作を示すフローチャートであり、この動作は、例えば図11のカメラマイコン415に相当する不図示のマイコンによって実行される。また、図5は保持枠62の時間に対する71y軸方向の位置変位を示す図であり、図6は保持枠62が更新された基準位置84bに移動した後の振れ補正装置の平面図である。
振れ補正用のスイッチにより振れ補正機能がONになると、図4のフローチャートがスタートし、まず、ステップ#2001にて、駆動コイル66の電流を制御し、保持枠62を基準位置84a(図6参照)に静止させる。次のステップ#2002では、保持枠62を基準位置84aに静止させたまま、シフト振れの加速度を検出する。ある一定時間に定められた加速度検出期間81a(図5参照)において、保持枠62は受けた加速度により位置変位をするが、その変位量は振れ補正期間における保持枠62の変位量に比べると非常に微小であるので、図5ではその変位量を不図示とする。
次のステップ#2003では、上記ステップ#2002で検出された加速度信号を使って積分処理を行い、保持枠62を変位させる振れ補正量を演算する。そして、次のステップ#2004にて、上記ステップ#2003で算出された振れ補正量と振れ補正期間82aの時間から、振れ補正期間82a後の保持枠62の安定化待機期間83aの長さを演算する。安定化待機期間とは、保持枠62が振れ補正量によって定まる目標位置に達して停止し、該保持枠62が加速度を持たなくなるまでの待機時間である。具体的には、いくつかの閾値を設け、各閾値の範囲によって安定化待機期間を設定しておき、算出された振れ補正量がそれぞれの閾値のどの範囲に含まれるかを判定し、それに対応した安定化待機期間を設定する。なお、安定化待機期間が必要な理由は以下の通りである。検出される加速度が手振れのものなかの保持枠移動に伴う加速度のものなのかがわからなくなるため、保持枠の振れ補正伴う移動によって発生する加速度と手振れの加速度を分離する必要がある。そこで、二つの加速度を分離する為に、保持枠が振れ補正量によって決まる目標位置まで移動し終え、慣性力(加速度)がなくなるまで待機させる必要があるからである。
次のステップ#2005では、上記ステップ#2003で算出された振れ補正量より基準位置を84aから基準位置84bに更新する。続くステップ#2006では、保持枠62が上記ステップ#2005で更新された基準位置84bに来るように駆動コイル66の電流を制御することで保持枠62を変位させ(図6の状態)、ある一定時間に定められた振れ補正期間において振れ補正を行う。そして、次のステップ#2007にて、保持枠62が更新された基準位置84bに静止するように安定化待機動作を行う。
次のステップ#2008では、未だ露光中であるなど、振れ補正機能のONが継続されているか否かを判定し、ONが継続されている場合はステップ#2001に戻る。そして、以下、図5に示す、81b→82b→82bのように、加速度検出動作→振れ補正動作→安定化待機動作を繰り返す。この際、基準位置は84cに来るように駆動コイル66の電流を制御され、保持枠62が変位させられる。
その後、上記ステップ#2008において振れ補正機能がOFFになったことを判定すると、上記の加速度検出動作、振れ補正動作及び安定化待機動作を終了する。
上記実施例1によれば、加速度検出動作と振れ補正動作を交番的に行うと共に、振れ補正動作の後に安定化待機期間を設けるようにしている。よって、撮像装置に加わる手振れによる加速度と振れ補正による保持枠62の加速度を分離することができ、高精度の振れ補正を行うことができる。
また、保持枠62の安定化待機期間を、加速度検出動作によって得られた振れ補正量によって可変にすることで、振れ補正動作から加速度検出動作までの期間を短縮することができ、振れ補正の精度をより向上させることができる。
ここまで、1軸方向の振れ補正について述べたが、本実施例1に係わる振れ補正装置は2軸方向のシフト振れを検出するものであり、2軸方向の振れ補正を同時に行うものである。2軸方向の振れ補正において、加速度検出期間と振れ補正期間は一定期間に定められているが、安定化待機期間は保持枠62の振れ補正量によって決まるので、算出された2軸のそれぞれの安定化待機期間が異なる場合がある。この時は、それぞれ2軸について算出された安定化待機期間の長い方の時間を、実際の安定化待機期間と設定する。
図7は本発明の実施例2に係わる振れ補正装置の振れ補正に係わる一連の動作を示すフローチャートである。振れ補正装置の構成は、上記実施例1と同様であるものとする。
なお、上記実施例1では、x軸方向の加速度検出とy軸方向の加速度検出を同時に行い、また同時にx,y軸方向の振れ補正動作を行っている。しかし、振れ補正量がx,y軸方向で異なると、安定化待機時間を含めた振れ補正動作の時間が異なってくる。また、安定化待機時間を含めた振れ補正動作期間は、加速度を検出しておらず、その間の手振れを検出することはできないので、振れ補正動作期間は短ければ短いほうが良い。例えば、x軸方向の振れ補正動作にかかる時間が、y軸方向のものより長いときは、y軸方向は待機している時間が無駄になる。
そこで、本発明の実施例2では、交互に加速度検出、振れ補正動作を行うことで、片方の軸方向の振れ補正動作が長いときでも、その間もう片方の軸方向については加速度検出に費し、上記の場合に比べて補正の効果を良くしようとするものである。
振れ補正用のスイッチにより振れ補正機能がONになると、図7のフローチャートがスタートし、まず、ステップ#3001にて、駆動コイル66bの電流を制御し、保持枠62を71x軸方向の基準位置に静止させる。次のステップ#3002では、駆動コイル66aの電流を制御し、保持枠62を71y軸方向の基準位置に静止させる。そして、次のステップ#3003にて、71x軸方向の加速度を検出し、続くステップ#3004にて、上記ステップ#3003にて検出された加速度信号に対して積分処理を行い、71x軸方向の振れ補正量を演算する。次のステップ#3005では、上記ステップ#3004にて算出された71x軸方向の振れ補正量に応じて、安定化待機期間を演算する。
次に、ステップ#3006へ進むと、上記ステップ#3004にて算出された71x軸方向の振れ補正量により71x軸方向の基準位置を更新する。そして、次のステップ#3007にて、71x軸方向の振れ補正動作を行い、続くステップ#3008において安定化待機動作を行う。
また、上記のステップ#3006〜#3009の動作をしている期間において、同時にステップ#3009〜#3011の動作を行う。つまり、ステップ#3009へ進むと、71y軸方向の加速度を検出し、次のステップ#3010にて、上記ステップ#3009にて求められた加速度信号に対して積分処理を行い、71y軸方向の振れ補正量を演算する。続くステップ#3011では、71y軸方向の振れ補正量に応じた安定化待機期間を算出する。
次のステップ#3012では、振れ補正機能がONかを判定し、OFFならばフローチャートを終了する。一方、振れ補正機能がONならば、ステップ#3013〜#3015の動作とステップ#3016〜#3018の動作を平行して行う。
詳しくは、ステップ#3013へ進むと、71x軸方向の加速度を検出し、次のステップ#3014にて、上記ステップ#3013にて求められた加速度信号に対して積分処理を行い、71y軸方向の振れ補正量を演算する。続くステップ#3015では、71y軸方向の振れ補正量に応じた安定化待機期間を算出する。
また、ステップ#3016へ進むと、上記ステップ#3004にて算出された71x軸方向の振れ補正量により71x軸方向の基準位置を更新する。そして、次のステップ#3017にて、71x軸方向の振れ補正動作を行い、続くステップ#3018において安定化待機動作を行う。
次のステップ#3019では、振れ補正機能がONか否かを判定し、OFFならばフローチャートを終了する。一方、振れ補正機能がONならば、上記ステップ#3006及び#3009に戻り、71x軸方向、71y軸方向についての加速度検出動作、振れ補正動作及び安定化待機動作を繰り返す。
上記駆動コイル66a,66bによる発生力によって保持枠62が受ける力の方向はそれぞれ直角に交わる71y軸方向、71x軸方向と独立しているので、お互いの発生力が加速度検出動作、振れ補正動作に影響しない。その為、ステップ#3013〜#3015とステップ#3016〜#3018の動作は、ステップ#3006〜#3008とステップ#3009〜#3011の動作を同時に行うことができる。
上記実施例2によれば、71x軸方向の加速度検出動作中に、71y軸方向の振れ補正動作を行い、71y軸方向の加速度検出動作中に、71x軸方向の振れ補正動作を行うようにしているので、一連の動作を短時間に行えることになる。
次に、図8を用いて、本発明の実施例3に係わる振れ補正装置について説明する。なお、振れ補正装置の構成は上記実施例1と同様であるものとする。
上記実施例1の振れ補正量演算部では、加速度検出期間における手振れの加速度を検出して、振れ補正量を算出している。よって、振れ補正期間及び安定化待機期間における手振れに対して必要な振れ補正量を検出することができず、振れ補正量に誤差が発生する虞があった。
本実施例3では、シフト振れによる加速度振動の周期が、加速度検出期間、振れ補正期間、安定化待機時間の和に対して十分に大きいとき、次のように振れ補正量を補正して算出する。
図8は矢印71y方向の保持枠62の時間に対する位置変位を示したものであり、87は、本実施例3に係わる振れ補正量演算部によって求められた振れ補正量を用いて振れ補正を行ったときの保持枠62の変位を示したものである。また、88は71y軸方向についての加速度検出動作と振れ補正動作を同時に行える場合の、理想的な振れ補正動作の位置変位であり、以下、理想振れ補正量と呼ぶ。86aは振れ補正機能がONになったときの基準位置であり、86bは更新された基準位置であり、基準位置86a,86bの差が算出された振れ補正量となる。
シフト振れによる加速度振動の周期が、加速度検出期間、振れ補正期間、安定化待機期間の和に対して十分大きいとき、それぞれの期間81d,82d,83dにおいて理想振れ補正量88は時間変化に呈して線形変化であると言える。
そこで、各期間81d,82d,83dの時間をそれぞれT1,T2,T3とし、実施例1の振れ補正量演算部によって積分処理され、算出された振れ補正量をxとする。すると、期間81d,82d,83dにおける理想振れ補正量Xは、
X=x・(T1+T2+T3)/T1 ……………(1)
のような(1)式にて求めることができる。
このように、加速度検出期間、振れ補正期間、安定化待機期間の割合に応じて、振れ補正量を補正する(基準値を86bに更新する)ようにしているので、誤差の少ない振れ補正を行うことができる。
(本発明と実施例の対応)
シフトレンズ63(不図示の撮像素子であってもよい)および保持枠62が本発明の振れ補正用の補正手段に相当する。また、弾性支持部材65が、本発明の、補正手段を光軸方向に延びた弾性部材により弾性支持する弾性支持手段に相当する。また、フォトリフレクタ69および鏡面部62a,62bが、本発明の、補正手段の位置を検出する位置検出手段に相当する。また、駆動コイル66、永久磁石67、不図示の増幅部等が、本発明の、駆動コイルと磁石を用いて補正手段を光軸と直交する平面内において移動させる駆動手段に相当する。
また、図4のステップ#2002や図7のステップ#3003,#3009,#3013の動作を実行する不図示のマイコンが、本発明の、補正手段が振れによる加速度を受けたときに駆動コイルに生ずる電流により加速度を検出する加速度検出手段に相当する。また、図4のステップ#2006や図7のステップ#3007,#3017の動作を実行する不図示のマイコンが、本発明の、振れ補正制御手段に相当する。この振れ補正制御手段は、振れ補正非作動時に検出される前記加速度より算出される振れ補正量に基づいて駆動コイルを駆動する。そして、補正手段の光軸と直交する方向の振れを補正する。また、不図示のマイコンは、加速度検出動作と振れ補正動作を交番的に行わせると共に、振れ補正動作を行う期間と加速度検出動作の期間の間に、補正手段の移動を安定させる安定化待機を行う期間を設けるようにしている。なお、図4のステップ#2003や、図7のステップ#3008,#3018を実行する部分が、上記安定化待機を行う期間に相当する。また、71x軸方向が一方の軸方向に相当し、71y軸方向が他方の軸方向に相当する。
以上は撮像装置に具備される振れ補正装置を例にして説明を続けてきたが、本発明の装置は小型で高安定な機構にまとめることが出来るので、撮像装置に限られず、デジタルビデオカメラや、監視カメラ、Webカメラ、携帯電話などにも展開できる。
本発明の実施例1に係わる振れ補正装置を示す正面図である。
図1のA−A断面図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正装置を示す斜視図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正装置の像振れ補正に関する一連の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施例1に係わる振れ補正装置の保持枠位置変位を示す図である。
本発明の実施例1に係わる振れ補正装置の像振れ補正時を示す平面図である。
本発明の実施例2に係わる振れ補正装置の像振れ補正に関する一連の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施例2に係わる振れ補正装置の保持枠位置変位を示す図である。
従来の防振カメラを示す外観図である。
従来の防振カメラの像振れ補正装置の概略構成を示す斜視図である。
従来の防振カメラの像振れ補正装置の回路構成を示すブロック図である。
従来の像振れ補正装置を示す正面図である。
従来の問題点を説明する像振れ補正装置を示すB−B断面図である。
従来の像振れ補正装置の駆動法を説明するための図である。
従来の像振れ補正装置の駆動法を説明するための図である。
従来の磁気を利用したサーボ型加速度計を示す外観図である。
図16のC−C断面図である。
従来のサーボ型加速度計の回路構成を示すブロック図である。
符号の説明
61 地板
62 保持枠
62a,62b 鏡面部
63 補正レンズ
64a 保持枠基板
64b 地板基板
65(65a〜65d) 弾性支持部材
66(66a,66b) 駆動コイル
67(67a,67b) 永久磁石
68(68a,68b) ヨーク
69(69a,69b) フォトリフレクタ
81a〜81d 加速度検出動作を行う加速度検出期間
82a,82b 振れ補正動作を行う振れ補正期間
83a,83b 安定化待機動作を行う安定化待機期間