JP4817544B2 - 防振制御装置、カメラ及び補正手段位置制御装置 - Google Patents
防振制御装置、カメラ及び補正手段位置制御装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型カメラ等の光学機器に搭載される防振制御装置や、該防振制御装置を具備するカメラや、補正手段位置制御装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在のカメラは露出決定やピント合せ等の撮影にとって重要な作業は全て自動化されているため、カメラ操作に未熟な人でも撮影失敗を起こす可能性は非常に少なくなっている。
【0003】
また、最近では、カメラに加わる手振れを防ぐシステムも研究されており、撮影者の撮影ミスを誘発する要因は殆ど無くなってきている。
【0004】
ここで、手振れを防ぐシステムについて簡単に説明する。
【0005】
撮影時のカメラの手振れは、周波数として通常1Hzないし10Hzの振動であるが、シャッタのレリーズ時点においてこのような手振れを起こしても像振れの無い写真を撮影可能とするための基本的な考えとして、上記手振れによるカメラの振動を検出し、その検出値に応じて補正レンズを変位させなければならない。従って、カメラ振れが生じても像振れが生じない写真を撮影するためには、第1に、カメラの振動を正確に検出し、第2に、手振れによる光軸変化を補正することが必要となる。
【0006】
この振動(カメラ振れ)の検出は、原理的にいえば、加速度、角加速度、角速度、角変位等を検出する振れ検出センサと、カメラ振れ補正の為にその出力を適宜演算処理する演算部を具備した振動検出装置をカメラに搭載することによって行うことができる。そして、この検出情報に基づき、撮影光軸を偏心させる補正手段を駆動させて像振れ抑制が行われる。
【0007】
図5は防振システムを有するコンパクトカメラの外観斜視図であり、光軸41に対して矢印42p,42yで示すカメラ縦振れ及び横振れに対し振れ補正を行う機能を有している。
【0008】
尚、カメラ本体43の中で、43aはレリーズボタン、43bはモードダイヤル(メインスイッチを含む)、43cはリトラクタブルストロボ、43dはファインダ窓である。
【0009】
図6は、図5に示したカメラの内部構成を示す斜視図であり、44はカメラ本体、51は補正手段、52は補正レンズ、53は補正レンズ52を図中58p,58y方向に自在に駆動して図7の矢印42p,42y方向の振れ補正を行う支持枠であり、詳細については後述する。45p,45yは各々矢印46p,46y回りの振れを検出する角速度計や角加速度計等の振動検出装置である。
【0010】
振動検出装置45p,45yの出力は後述する演算装置47p,47yを介して補正手段51の駆動目標値に変換され、該補正手段51のコイルに入力して振れ補正を行う。尚、54は地板、56p,56yは永久磁石、510p,510yはコイルである。
【0011】
図7は前記演算装置47p,47yの詳細を示すブロック図であり、これらは同様な構成である為に同図では演算装置47pのみを用いて説明する。
【0012】
演算装置47pは、一点鎖線にて囲まれる、DCカットフィルタ48p、ローパスフィルタ49p、アナログ・ディジタル変換回路(以下、A/D変換回路と記す)410p、駆動装置419p及び破線で示すカメラマイコン411より構成される。また、前記カメラマイコン411は、記憶回路412p、差動回路413p、DCカットフィルタ414p、積分回路415p、記憶回路416p、差動回路417p、PWMデューティ変更回路418pで構成される。
【0013】
ここでは、振動検出装置45pとして、カメラの振れ角速度を検出する振動ジャイロを用いており、該振動ジャイロはカメラのメインスイッチのオンと同期して駆動され、カメラに加わる振れ角速度の検出を開始する。
【0014】
振動検出装置45pの出力信号は、アナログ回路で構成されるDCカットフィルタ48pにより該出力信号に重畳しているDCバイアス成分がカットされる。このDCカットフィルタ48pは 0.1Hz以下の周波数の信号をカットする周波数特性を有しており、カメラに加わる1〜10Hzの手振れ周波数帯域には影響が及ばないようになっている。しかしながら、この様に 0.1Hz以下をカットする特性にすると、振動検出装置45pから振れ信号が入力されてから完全にDCがカットされるまでには10秒近くかかってしまうという問題がある。そこで、カメラのメインスイッチがオンされてから例えば 0.1秒まではDCカットフィルタ48pの時定数を小さく(例えば10Hz以下の周波数の信号をカットする特性にする)しておく事で、 0.1秒位の短い時間でDCをカットし、その後に時定数を大きくして( 0.1Hz以下の周波数のみカットする特性にして)DCカットフィルタ48pにより振れ角速度信号が劣化しない様にしている。
【0015】
DCカットフィルタ48pの出力信号は、アナログ回路で構成されるローパスフィルタ49pによりA/D変換回路410pの分解能にあわせて適宜増幅されると共に、振れ角速度信号に重畳する高周波のノイズをカットされる。これは、振れ角速度信号をカメラマイコン411に入力する時のA/D変換回路410pのサンプリングが振れ角速度信号のノイズにより読み誤りが起きるのを避ける為である。また、ローパスフィルタ49pの出力信号は、A/D変換回路410pによりサンプリングされてカメラマイコン411に取り込まれる。
【0016】
DCカットフィルタ48pによりDCバイアス成分はカットされている訳であるが、その後のローパスフィルタ49pの増幅により再びDCバイアス成分が振れ角速度信号に重畳している為に、カメラマイコン411内において再度DCカットを行う必要がある。
【0017】
そこで、例えばカメラのスイッチのオンから 0.2秒後にサンプリングされた振れ角速度信号を記憶回路412pで記憶し、差動回路413pにより記憶値と振れ角速度信号の差を求めることでDCカットを行う。尚、この動作では大雑把なDCカットしか出来ない為に(カメラのメインスイッチのオンから 0.2秒後に記憶された振れ角速度信号の中にはDC成分ばかりでなく、実際の手振れも含まれている為)、後段でデジタルフィルタにより構成されたDCカットフィルタ414pにて十分なDCカットを行っている。このDCカットフィルタ414pの時定数もアナログのDCカットフィルタ48pと同様に変更可能になっており、カメラのメインスイッチのオンから 0.2秒後から更に 0.2秒費やしてその時定数を徐々に大きくしている。具体的には、このDCカットフィルタ414pはメインスイッチのオンから 0.2秒経過した時には10Hz以下の周波数をカットするフィルタ特性を有しており、その後50msec毎にフィルタでカットする周波数を5Hz,1Hz, 0.5Hz, 0.2Hzと下げていく。
【0018】
但し、上記動作の間に撮影者がレリーズボタン43aを半押し(sw1をオン)して測光,測距を行った時は直ちに撮影を行う可能性があり、時間を費やして時定数変更を行う事が好ましくない場合もある。そこで、その様な時は撮影条件に応じて時定数変更を途中で中止する。例えば、測光結果により撮影シャッタスピードが1/60となる事が判明し、撮影焦点距離が150mmの時には防振の精度はさほど要求されない為に、DCカットフィルタ414pは 0.5Hz以下の周波数をカットする特性まで時定数変更した時点で完了とする(シャッタスピードと撮影焦点距離の積により時定数変更量を制御する)。これにより、時定数変更の時間を短縮でき、シャッタチャンスを優先する事が出来る。勿論、より速いシャッタスピード、或いはより短い焦点距離の時は、DCカットフィルタ414pの特性は1Hz以下の周波数をカットする特性まで時定数変更した時点で完了とし、より遅いシャッタスピード,長い焦点距離の時は、時定数が最後まで変更完了するまで撮影を禁止する。
【0019】
積分回路415pは、カメラのレリーズボタン43aの半押し(sw1のオン)に応じてDCカットフィルタ414pの出力信号の積分を始め、角速度信号を角度信号に変換する。但し、前述した様にDCカットフィルタ414pの時定数変更が完了していない時には時定数変更が完了するまで積分動作を行わない。尚、図7では省略しているが、積分された角度信号はその時の焦点距離,被写体距離情報により適宜増幅され、振れ角度に応じて適切な量補正手段51を駆動するように変換される(ズームフォーカスにより撮影光学系が変化し、補正手段51の駆動量に対し光軸偏心量が変わる為、この補正を行う必要がある)。
【0020】
レリーズボタン43aの押し切り(sw2のオン)で補正手段51を振れ角度信号に応じて駆動し始める訳であるが、この時、補正手段51の振れ補正動作が急激に始まらない様に注意する必要がある。記憶回路416p及び差動回路417pは、この対策の為に設けられている。記憶回路416pは、レリーズボタン43aの押し切り(sw2のオン)に同期して積分回路415pの振れ角度信号を記憶する。差動回路417pは、積分回路415pの信号と記憶回路416pの信号の差を求める。その為、スイッチsw2のオン時の差動回路417pの二つの信号入力は等しく、該差動回路417pの補正手段51に対する駆動目標値信号はゼロであるが、その後ゼロより連続的に出力が行われる(記憶回路416pはスイッチsw2のオン時点の積分信号を原点にする役割となる)。これにより、補正手段51は急激に駆動される事が無くなる。
【0021】
差動回路417pからの目標値信号は、PWMデューティ変更回路418pに入力される。補正手段51のコイル510p(図6参照)には振れ角度に対応した電圧或いは電流を印加すれば、補正レンズ52はその振れ角度に対応して駆動される訳であるが、補正手段51の駆動消費電力及びコイルの駆動トランジスタの省電力化の為にはPWM駆動が望ましい。
【0022】
そこで、PWMデューティ変更回路418pは、目標値に応じてコイル駆動デューティを変更している。例えば、周波数が20KHzのPWMにおいて、差動回路417pの目標値が「2048」の時にはデューティ「0」とし、「4096」の時にはデューティ「100」とし、その間を等分にしてデューティを目標値に応じて決定していく。尚、デューティの決定は目標値ばかりではなく、その時のカメラの撮影条件(温度やカメラの姿勢,電源の状態)によって細かく制御して精度良い振れ補正が行われるようにする。
【0023】
PWMデューティ変更回路418pの出力は、PWMドライバ等の公知の駆動装置419pに入力され、該駆動装置419pの出力を補正手段51のコイル510p(図6参照)に印加して振れ補正を行う。駆動装置419はスイッチsw2のオンに同期してオンされ、フィルムへの露光が終了するとオフされる。又、露光が終了してもレリーズボタン43aが半押し(sw1のオン)されている限り積分回路415pは積分を継続しており、次のスイッチsw2のオンで再び記憶回路416pが新たな積分出力を記憶する。
【0024】
レリーズボタン43aの半押しを止めると、積分回路415pはDCカットフィルタ414pの出力の積分を止め、該積分回路415pのリセットを行う。リセットとは、今まで積分してきた情報をすべて空にする事である。
【0025】
メインスイッチのオフで振動検出装置45pがオフされ、防振シーケンスは終了する。
【0026】
尚、積分回路415pの出力信号が所定値より大きくなった時にはカメラのパンニングが行われたと判定して、DCカットフィルタ414pの時定数を変更する。例えば 0.2Hz以下の周波数をカットする特性であったものを1Hz以下をカットする特性に変更し、再び所定時間で時定数をもとに戻していく。この時定数変更量も積分回路415pの出力の大きさにより制御される。即ち、出力信号が第1の閾値を超えた時には、DCカットフィルタ414pの特性を 0.5Hz以下をカットする特性にし、第2の閾値を超えた時は、1Hz以下をカットする特性とし、第3の閾値を超えた時は、5Hz以下をカットする特性にする。
【0027】
又、積分回路415pの出力が非常に大きくなった時には、該積分回路415pを一旦リセットして演算上の飽和(オーバーフロー)を防止している。
【0028】
図7において、DCカットフィルタ414pはメインスイッチのオンから 0.2秒後に作動を開始する構成になっているが、これに限るものではなく、レリーズボタン43aの半押しより作動を開始しても良い。この場合はDCカットフィルタの時定数変更が完了した時点より積分回路415pを作動させる。
【0029】
又、積分回路415pもレリーズボタン43aの半押し(sw1のオン)で作動を開始させていたが、レリーズボタン43aの押し切り(sw2のオン)より作動を開始する構成にしても良い。この場合には、記憶回路416p及び差動回路417pは必要無くなる。
【0030】
図7では、演算装置47p内に、DCカットフィルタ48p及びローパスフィルタ49pを設けているが、これらは振動検出装置45p内に設けられても良いのは言うまでもない。
【0031】
図8〜図10は、補正手段51の詳細を示す図であり、詳しくは、図8は補正手段51の正面図、図9(a)は図8の矢印B方向より見た側面図、図9(b)は図8のA−A断面図、図10は補正手段51の斜視図である。
【0032】
図8において、補正レンズ52(図9(b)に示す様に、この補正レンズ52は、支持枠53に固定される二枚のレンズ52a,52bと、地板54に固定されるレンズ52cにより成り、撮影光学系の群を構成している)は、支持枠53に固定される。
【0033】
支持枠53には強磁性材料のヨーク55が取付けられ、該ヨーク55の同図の裏面にはネオジウム等の永久磁石56p,56yが吸着固定(かくれ線で示す)されている。又、支持枠53から放射状に延出する3本の支持軸53aは地板54の側壁54bに設けられた長孔54aに嵌合している。
【0034】
図9(a),図10に示す様に、支持軸53aと長孔54aは、補正レンズ52の光軸57方向には嵌合してガタは生じないが、光軸57と直交する方向には長孔54aが延びているため、支持枠53は地板54に対し光軸57方向には移動規制されるが、光軸と直交する平面内には自由に移動できる(矢印58p,58y,58r)。但し、図8に示す様に支持枠53上のピン53bと地板上のピン54c間に引っ張りコイルバネ59が掛けられている為に各々の方向(58p,58y,58r)に弾性的に規制されている。
【0035】
地板54には永久磁石56p,56yに対向してコイル510p,510yが取付けられている(一部かくれ線)。ヨーク55、永久磁石56p、コイル510pの配置は図9(b)の様になっており(永久磁石56y、コイル510yも同じ配置)、コイル510pに電流を流すと支持枠53は矢印58p方向に駆動され、コイル510yに電流を流すと、前記支持枠53は矢印58y方向に駆動される。
【0036】
そして、その駆動量は各々の方向における引っ張りコイルバネ59のバネ定数とコイル510p,510yと永久磁石56p,56yの関連で生じる推力との釣り合いで求まる。即ち、コイル510p,510yに流す電流量に基づいて補正レンズ52の偏心量を制御できる。
【0037】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明した防振システムをコンパクトカメラに搭載する場合には、サイズと共にそのコストも最優先事項になる。その様な中で図8〜10で説明した補正手段は全体の構成部品も少なく、それら一つ一つも小さく且つ安価な部品である為にコンパクトカメラ向きであると云える。
【0038】
しかしその組立工程において、引っ張りコイルバネ59を取り替えながら補正レンズ52の位置を調整してゆく工程は時間がかかる割に連続的な調整が出来ず、コストアップになると云う問題があった。
【0039】
その解決策として、引っ張りコイルバネ59の引っ掛け部である地板54上のピン54cの位置を該地板54に対して引っ張りコイルバネ59の弾性方向に調整することで引っ張りコイルバネ59の弾性力を変更して補正レンズ52の位置を調整することも考えられる。この調整方法であれば連続的な調整が可能であり、調整時間も短く出来るメリットはあるが、調整機構を配置する為に補正手段51が大型化し、又、構成部品が増えるのでコストアップになってしまう。
【0040】
(発明の目的)
本発明の目的は、部品点数の増加が無く、短い時間で補正手段の移動開始位置の調整を行うことができる防振制御装置、カメラ及び補正手段位置制御装置を提供しようとするものである。
【0041】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1及び2に記載の発明は、光学機器の光軸に直交する平面内で移動する補正手段と、該補正手段を駆動する電磁手段と、前記補正手段を移動可能に弾性支持する弾性手段と、前記光学機器に加わる振れを検出する振動検出手段と、該振動検出手段の出力に基づいて前記電磁手段に電力を供給する電力供給手段とを有し、前記電力供給手段の電力供給量に応じて前記電磁手段に発生する駆動力を前記弾性手段の弾性力とつり合わせることで、前記振れを補正する防振制御装置において、前記防振制御装置は、前記補正手段の位置を検出する位置検出手段を有さず、前記補正手段の前記振れ補正の為の移動の開始位置であって前記補正手段の駆動開始時の初期目標値を初期設定電力として記憶する記憶手段を有し、前記補正手段駆動開始時の初期目標値は、前記防振制御装置の組み立て工程時に、該防振制御装置とは異なる装置に設けられた位置検出手段の出力が最も小さくなる前記補正手段の位置であることを特徴とする防振制御装置とするものである。
【0046】
以上の各構成は、補正手段の位置調整を組み立て工程時に行わず、ユーザーが防振制御装置を搭載したカメラ等の光学機器を使用する度に、電気的に前記補正手段の移動開始位置を所定の位置から行えるようにすれば、部品点数の増加無く組み立て時の調整工程を短く出来る事に着目してなされた構成である。
【0047】
換言すれば、補正手段の駆動力を弾性力とバランスさせて前記補正手段を駆動して振れ補正を行うものにおいて、前記補正手段の所定の位置からのずれに相当する弾性力分を打ち消す駆動力を実使用時の初期段階で前記補正手段に与えることで、前記補正手段の光軸位置を撮影光軸等の光軸と一致させ、この状態から振れ補正を開始させる構成にしている。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0049】
図1は補正手段44(図8〜図10の補正手段51に相当する)のカメラ43(図5参照)への組み込み前の位置調整に関する構成を示すブロック図であり、補正手段初期位置設定工具に設けられるIRED(赤外発光ダイオード)12の投射光はカメラ43に組み込まれる予定の補正手段44の構成要素である補正レンズ52を通して補正手段初期位置設定工具に設けられた2次元PSD(ポジションセンシティブダイオード)13(以下、PSD13と記す)に入射している。
【0050】
そして、補正レンズ52の矢印15p方向の位置変化に応じてPSD13の入射面に入射するIRED12の投射光位置が変わるので、それに応じてPSD13の出力が変化する。
【0051】
図1において、補正手段44(詳しくは補正レンズ52)は矢印15pの方向及び紙面垂直方向(以下、15y方向と記す)に駆動可能に配置されてあり、図8等に示したコイル510p,510yに電流を与えることで永久磁石56p,56yとの関連により補正手段44の補正レンズ52は15p及び15y方向(各々図8の58p,58y方向と同じ方向)に駆動され、その駆動量は引っ張りコイルバネ59(図8等参照)の弾性力とコイル510p,510yに流す電流の量で設定される。
【0052】
PSD13は2次元方向のIRED12の投射光の重心位置を検出しており、矢印15p及び15yの方向の重心位置を各々出力できる。そして、このPSD13の各々の出力はA/D変換(アナログ信号をディジタル信号に変換)されて補正手段初期位置設定工具に設けられた調整マイコン11に入力される。
【0053】
調整マイコン11に入力された信号は後述する演算を行われた後に調整用駆動手段14に出力され、該調整用駆動手段14は補正手段44のコイル510p,510yに各々PSD13の出力に比例した電流を与える。
【0054】
ここで、コイル510p,510yに流す電流の方向は、PSD13の出力が増えると、その出力を減らすように補正レンズ52を駆動するような公知の負帰還構成になっており、コイル510p,510yに電流を流し始めると瞬時に補正レンズはPSD13の出力が最小になる様に移動する。
【0055】
尚、調整マイコン11内の演算は、PSD13の出力を上記負帰還が安定する範囲での増幅演算と、負帰還を安定制御する為の公知の位相進み演算である。
【0056】
ここでPSD13の出力が最小になる位置を補正レンズ52を初期設定したい位置(撮影光軸41(図5参照)と補正レンズ52の光軸が略一致する位置:以下、補正レンズ52の可動中心位置)に設定しておくと、この時にコイル510p,510yに各々流す電流量が、引っ張りコイルバネ59の弾性力のアンバランスによる補正レンズ52の位置ずれを相殺する初期目標値になる。即ち、引っ張りコイルバネ59のアンバランスにより補正レンズ52がその可能中心位置に対してずれている時に、図1の装置に組み込むと、瞬時にその補正レンズ52を可動中心位置に移動させる初期目標値が求められる。
【0057】
ここでは初期目標値としては調整用駆動手段14に与える値、例えば調整用駆動手段14が補正手段44をリニア駆動する場合は、調整用駆動手段14に与えるD/A変換(ディジタル信号をアナログ信号に変換)する前の値、該調整用駆動手段14が補正手段44を公知のPWM駆動する場合は、その時のデューティ値である。そして、初期目標値が調整マイコン11に記憶された後に補正手段44を図1の調整工具から取り出し、カメラ43の撮影鏡筒に組み込む。
【0058】
又、調整マイコン11に記憶された初期目標値は、図7に示すカメラマイコン411に移植されて補正手段駆動開始時の初期目標値として記憶される。
【0059】
撮影時には、その撮影に先立って補正手段44に初期目標値を入力し、補正レンズ52を可動中心位置に移動させ、その後防振システムのオンの時は、振動検出装置からの振れ補正目標値を初期目標値に重畳させて振れ補正を行いながら露光を行う。
【0060】
図2は撮影時の動作を説明するフローチャートであり、このフローは、防振システムが搭載されるカメラの撮影指示であるレリーズボタンの押し切り(sw2のオン)でスタートする。
【0061】
ステップ#1001においては、コイル510p,510yに各々上記初期目標値に応じた駆動電流をカメラ内の駆動装置419(図7では、図8の矢印58pの駆動用にコイル510pに電流を印加する駆動装置419pのみ示しているが、実際には矢印58y方向の為にコイル510yに電流を印加する駆動装置419yを有し、両者をあわせて駆動装置419と称する)を通して与える。図1の調整用駆動手段14は調整工具用のものであるが、カメラ43内にもそれと同特性の駆動手段が設けられている。これにより、補正レンズ52は中心位置に配置される。
【0062】
次のステップ#1002においては、所定時間待機する。これは補正レンズ52が可動中心位置に配置されるまでには所定の時間が必要な為であり、例えば30msこのステップで待機する。その後、ステップ#1003へ進み、防振システムがオンになっているか否かを判定し、オンしていない場合はステップ#1006直ちに進むが、オンしている場合はステップ#1004へ進む。
【0063】
ステップ#1004へ進むと、補正手段44に振動検出装置45p,45yからの振れ補正目標値を与え、補正手段44を振れ補正駆動させる。続くステップ#1005においては、所定の時間(例えば30ms)待機する。これも振れ補正駆動が安定するまで待機する為である。
【0064】
ステップ#1006へ進むと、露光を行い、露光が終了するまで待機する。そして、次のステップ#1007において、振れ補正目標値及び初期目標値を補正手段に入力することを止め、補正手段の駆動を停止させ、このフローは終了する。
【0065】
このように、カメラの撮影開始指示であるレリーズボタンの操作(sw2のオン)に応じて補正手段44に初期目標値を与え、所定時間待機して補正手段44の動作が安定してから振れ補正目標値を該補正手段44に与えており、又、防振を行わない場合でも露光前には初期目標値を補正手段44に与えるフローになっている。
【0066】
以上の実施の第1の形態は、補正レンズ52の位置調整を組み立て時に行わず、ユーザーが撮影を行う度に電気的に位置調整を行える構成にしておけば、部品点数の増加無く組み立て時の調整工程を短く出来る事に着目してなされたものであり、これを実現する為に、実施の第1の形態では、撮影光軸に直交する平面内で移動する補正手段44を駆動する電磁手段(コイル510p,510y)と、前記補正手段44を弾性支持する弾性手段(引っ張りコイルバネ59)と、カメラに加わる振動を検出する振動検出手段(振動検出装置45p,45y)と、この振動検出手段の出力に基づいて前記電磁手段に電力を供給する電力供給手段(駆動手段419)とを有し、電力供給手段の電力供給量に応じて電磁手段に発生する駆動力を弾性手段の弾性力とつり合わせることで振れを補正する装置において、補正手段44の前記振れ補正の為の移動の開始位置が前記平面内の所定の位置からとなるように、前記電力供給手段が前記電磁手段に供給する初期設定電力(初期目標値)を記憶する記憶手段(カメラマイコン411内)を有する構成にしており、前記初期設定電力は、組み立て工程時に予め得ておき、前記記憶手段に記憶しておくようにしている。
【0067】
そして、被写体の撮影を開始するのに先立って、つまり撮影の為のレリーズ操作に応答して前記初期設定電力を前記電磁手段に与え、事前に補正手段44と撮影光軸とを一致させておき、その後所定時間経過してから、前記振動検出手段の出力に基づいた電力を電磁手段に与え、振れ補正を開始する構成にしている(図2のステップ#1001,#1004参照)。
【0068】
また、防振を行わない時にも、少なくとも撮影時には電磁手段に初期設定電力を与える構成にしておき、少なくとも撮影時には補正手段の光軸と撮影光軸を一致させ、最良の光学性能で撮影が出来るようにしている(図2のステップ#1003のnoの場合)
又、組み立て工程時には、補正手段44の移動による撮影光軸の偏心量を測定する偏心量測定手段(PSD13)と、偏心量測定手段の出力を電磁手段に負帰還する位置制御手段(調整マイコン11、調整用駆動手段14)を用いて撮影光軸の偏心量が最小になるように補正手段44を制御し、その時に電磁手段に与える供給電力を測定し、前記記憶手段に記憶する構成にしている。
【0069】
これにより、部品点数の増加が無く、短い時間で補正手段の移動開始位置の調整を行うことが可能となる。
【0070】
(実施の第2の形態)
図3は本発明の実施の第2の形態に係るカメラにおける補正手段44の位置調整に関する構成図であり、補正手段初期位置設定工具に設けられたIRED12の投射光は補正レンズ52を含むカメラ43の撮影光学系を通して補正手段初期位置設定工具に設けられたPSD13に入射している。
【0071】
ここで、補正手段44は既にカメラの撮影鏡筒内に設置してあり、カメラ43の撮影面(フィルム面)にフィルムの代わりに、図4に示す様に、PSD13が仮固定されている。尚、22はカメラ43の背蓋である。そして、補正手段44に設けられた補正レンズ52の矢印15p,15y方向の位置変化に応じてPSD13の出力が変化する。
【0072】
図3で、補正手段44は矢印15pの方向及び紙面垂直方向である15y方向に駆動可能に配置されており、図8等に示したコイル510p,510yに電流を与えることで永久磁石56p,56yとの関連により補正手段44は矢印15p及び15y方向(図8の58p、58y方向と同じ方向)に駆動され、その駆動量は引っ張りコイルバネ59の弾性力とコイル510p,510yに流す電流の量で設定される。
【0073】
PSD13は2次元方向のIRED12の投射光の重心位置を検出しており、矢印15p及び15yの方向の重心位置を各々出力できる。そして、PSD13の各々の出力はA/D変換されてカメラ43に搭載されるカメラマイコン411に入力される。
【0074】
カメラマイコン411に入力された信号は、後述する演算を行われた後に駆動装置419に出力され、該駆動装置419は補正手段44のコイル510p,510yに各々PSD13の出力に比例した電流を与える。
【0075】
尚、コイル510p,510yに流す電流の方向は、PSD13の出力が増えると、その出力を減らすように補正レンズ52を駆動するような公知の負帰還構成になっており、コイル510p,510yに電流を流し始めると、瞬時に補正レンズはPSD13の出力が最小になるように移動する。
【0076】
ここで、カメラマイコン411内の演算は、PSD13の出力を上記負帰還が安定する範囲での増幅演算と、負帰還を安定制御する為の公知の位相進み演算である。
【0077】
ここでPSD13の出力が最小になる位置を補正レンズ52を初期設定したい位置(補正レンズの可動中心位置)に設定しておくと、この時にコイル510p,510yに各々流す電流量が、引っ張りコイルバネ59の弾性力のアンバランスによる補正レンズ52の位置ずれを相殺する初期目標値になる。
【0078】
即ち、引っ張りコイルバネ59のアンバランスにより補正レンズ52がその中心位置に対してずれている時に、図3の装置に組み込むと、瞬時にその補正レンズ52を中心位置に移動させる初期目標値が求められる。
【0079】
ここでは初期目標値としては駆動装置419に与える値、例えば駆動装置が補正手段44をリニア駆動する場合は、該駆動装置419に与えるD/A変換前の値、駆動装置419が補正手段44を公知のPWM駆動する場合はその時のデューティ値である。そして、初期目標値がカメラマイコン411に記憶された後にPSD13をカメラ43より外す。言い換えると、補正手段初期位置設定工具からカメラを外すことになる。
【0080】
撮影時には、その撮影に先立ってカメラマイコン411に記憶された初期目標値を基に補正手段44を可動中心位置に移動させ、その後防振システムオンの時は振動検出装置45p,45yからの振れ補正目標値を初期目標値に重畳させて振れ補正を行いながら露光を行い、その露光シーケンスは前述の図2と同様である。
【0081】
上記の実施の第2の形態によれば、補正手段44をカメラ内に搭載した状態で補正レンズ52の位置調整を行う構成にしており、上記実施の第1の形態の様に調整マイコン11からカメラマイコン411に記憶値を移し変える作業を省くことが出来る。
【0082】
そして、この実施の第2の形態では、補正手段44の補正レンズ52の位置調整のみならず、カメラ43内のその他の撮影光学系21を含めてトータルな光軸位置調整が行えるので、撮影レンズの光学町政が迅速かつ精度良く行えるようになる。
【0083】
なお、上記実施の各形態では、カメラ(レンズ鏡筒)に適用した例を述べたが、これに限定されるものではなく、その他の防振機能を有する光学機器へも適用できるものである。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、部品点数の増加が無く、短い時間で補正手段の移動開始位置の調整を行うことができる防振制御装置、カメラ又は補正手段位置制御装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1の形態において補正手段のカメラへの組み込み前の位置調整の為の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の第1の形態におけるカメラの撮影時の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の第2の形態において補正手段の調整に関する構成図である。
【図4】本発明の実施の第2の形態に係るカメラの斜視図である。
【図5】従来例の防振システムを搭載したカメラの全体構成を示す斜視図である。
【図6】従来例の防振システムを搭載したカメラの内部構成を示す斜視図である。
【図7】従来例の防振システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図8】従来例の振れ補正光学装置を示す正面図である。
【図9】図8のA−A断面及び矢印B方向より見た図である。
【図10】従来例の振れ補正光学装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
11 調整マイコン
12 IRED
13 PSD
14 調整用駆動手段
21 固定レンズ
44 補正手段
52 補正レンズ
53 支持枠
54 地板
57 光軸
59 引っ張りコイルバネ59
411 カメラマイコン
510p,510y コイル
Claims (7)
- 光学機器の光軸に直交する平面内で移動する補正手段と、
該補正手段を駆動する電磁手段と、
前記補正手段を移動可能に弾性支持する弾性手段と、
前記光学機器に加わる振れを検出する振動検出手段と、
該振動検出手段の出力に基づいて前記電磁手段に電力を供給する電力供給手段とを有し、
前記電力供給手段の電力供給量に応じて前記電磁手段に発生する駆動力を前記弾性手段の弾性力とつり合わせることで、前記振れを補正する防振制御装置において、
前記防振制御装置は、前記補正手段の位置を検出する位置検出手段を有さず、前記補正手段の前記振れ補正の為の移動の開始位置であって前記補正手段の駆動開始時の初期目標値を初期設定電力として記憶する記憶手段を有し、
前記補正手段駆動開始時の初期目標値は、前記防振制御装置の組み立て工程時に、該防振制御装置とは異なる装置に設けられた位置検出手段の出力が最も小さくなる前記補正手段の位置であることを特徴とする防振制御装置。 - 請求項1に記載の防振制御装置を具備するカメラであって、前記電磁手段に対しての前記初期設定電力の供給は、被写体の撮影を開始するのに先立って行われることを特徴とするカメラ。
- 請求項1に記載の防振制御装置を具備するカメラであって、前記電磁手段に対しての前記初期設定電力の供給は、撮影の為のレリーズ操作に応答して行われることを特徴とするカメラ。
- 前記初期設定電力を前記電磁手段に供給してから所定時間経過後に、前記振動検出手段の出力に基づいた電力を前記電磁手段に供給して、前記振れ補正を開始させることを特徴とする請求項2又は3に記載のカメラ。
- 前記補正手段を用いて振れ補正することが指示されていない場合でも、少なくとも撮影時には前記電磁手段に前記初期設定電力を与えることを特徴とする請求項2又は3に記載のカメラ。
- 光学機器の光軸に直交する平面内で移動する補正手段、
該補正手段を駆動する電磁手段、
前記補正手段を移動可能に弾性支持する弾性手段、
前記光学機器に加わる振れを検出する振動検出手段、
前記電磁手段の駆動中心を設定する記憶手段、
該記憶手段及び前記振動検出手段の出力に基づいて前記電磁手段に電力を供給する電力供給手段で構成され、
前記補正手段の位置を検出する位置検出手段を有さず、
前記電力供給手段の電力供給量に応じて前記電磁手段に発生する駆動力を前記弾性手段の弾性力とつり合わせることで前記振れを補正する防振制御装置を有するカメラと、
前記補正手段の移動による前記光軸の偏心量を測定する偏心量測定手段及び該偏心量測定手段の出力を前記電磁手段に負帰還する位置制御手段を有し、
前記位置制御手段は、前記光軸の偏心量が最小になるように前記補正手段を制御し、その際に前記電磁手段に供給されている電力を測定する補正手段初期位置設定工具とで構成された補正手段位置制御装置において、
前記補正手段初期位置設定工具で設定された、前記補正手段の駆動開始時の初期目標値を前記初期設定電力として記憶させることを特徴とする補正手段位置制御装置。 - 光学機器の光軸に直交する平面内で移動する補正手段、
該補正手段を駆動する電磁手段、
前記補正手段を移動可能に弾性支持する弾性手段、
前記光学機器に加わる振れを検出する振動検出手段、
前記電磁手段の駆動中心を設定する記憶手段、
該記憶手段及び前記振動検出手段の出力に基づいて前記電磁手段に電力を供給する電力供給手段で構成され、
前記補正手段の位置を検出する位置検出手段を有さず、
前記電力供給手段の電力供給量に応じて前記電磁手段に発生する駆動力を前記弾性手段の弾性力とつり合わせることで前記振れを補正する防振制御装置を有するカメラの、前記補正手段の移動による前記光軸の偏心量を測定する偏心量測定手段と、
該偏心量測定手段の出力を前記電磁手段に負帰還する位置制御手段とを有し、
前記位置制御手段は、前記光軸の偏心量が最小になるように前記補正手段を制御し、その際に前記電磁手段に供給されている電力を測定する補正手段初期位置設定工具とで構成された補正手段位置制御装置であって、
前記補正手段初期位置設定工具で設定された、前記補正手段の駆動開始時の初期目標値を前記記憶手段に前記初期設定電力として記憶させることを特徴とする補正手段位置制御装置。
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