JP2009160622A - 電動サーボプレス、電動サーボプレスの制御装置及び制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 電動サーボプレス1は、急停止指令信号Sktに基づき、急停止モーションCRVsに従うサーボモータ10の回転停止制御に切り替え、当該急停止モーションに従って停止するまでの予定停止時刻t3に、機械式ブレーキ15が実際に制動を開始するようにブレーキ作動させ、かつサーボモータ10の回転駆動用電源を強制的に遮断する。これにより、サーボモータ10やその制御系等に異常などがあって暴走等しているような場合における急停止要求の場合でも、確実かつ迅速にサーボモータ10の回転を停止させることができる。
【選択図】図7
Description
かかる電動サーボプレスマシンでは、その利点(サーボモータによる自由なモーションが可能であり、従来の機械式プレスに備えられるフライホイールやクラッチ・ブレーキ装置を一掃化できる。)との関係において、以下のような検討が必要である。
これに対し、電動サーボプレスの場合は、運転状態をソフトウェアで比較的自由に制御可能であるという利点と、装置コストの低減、小型化等を促進するなどの観点から、サーボモータとクランク軸とが常に連結状態として駆動源と稼動部とを物理的に切り離すことができない構成が採用されるのが一般的である。
特に、電動サーボプレスをハンド・イン・ダイにて使用する場合、すなわち電動サーボプレスを一行程毎に停止させ、人手にてワークの出し入れを行って使用する場合、停止すべき時に電動サーボモータ延いてはスライドが動いてしまえば直接人身の安全を脅かす事態につながる惧れがあるため、より高度で安全確実な停止を実現可能なシステムを構築することが求められる。
この特許文献1に記載の電動サーボプレスによれば、サーボブレーキやダイナミックブレーキよりも大きな制動力のある機械式ブレーキを加えることにより急速に停止させることができ、かつ停止状態を保持し不意な起動等を防止することができるので安全であるとされる。
しかし、この特許文献1に記載のプレスは、停止の度に毎回機械式ブレーキが作動するため、機械式ブレーキの摩擦板が摩耗するため、定期的に摩擦板を交換しなければならないといった問題がある。
さらに、不意の起動等を防止するためには、サーボモータの最大トルク以上に機械式ブレーキの制動力が無ければならず、ブレーキが大型化し、更に大型化した摩擦板の定期的な交換も必要であることを考慮すると、経済的負担が大きくなる惧れがある。
かかる特許文献2に記載されたものは、段取り作業などにおいて作業者の人手等がプレス作業域(すなわち危険領域内)に侵入した場合、サーボモータの電源を遮断してしまうことで、操作ミスやサーボモータの暴走等による危険状態が生じないように考案されたものである。
すなわち特許文献2に記載されたものは、プレス(モータ回転)停止中において、その停止状態がより一層確実に維持されるようにしたものであって、プレス動作中に急停止要求があり直ちに停止する場合についての考慮はなされておらず、特許文献2に記載の構成をプレス動作中の急停止用にそのまま適用したとしても、例えば慣性力による動作がしばらく継続する惧れがある。
従って、プレス作業中に危険領域内へ人手等が侵入した場合、人手等が危険領域内に到達する前にプレスのスライドが確実に停止している保証がなく、人身に重大な危険を及ぼす惧れがある。特にプレスの動力伝達変換機構がクランク機構で構成されているプレスなどでは、サーボモータの電源を遮断し駆動力を消失させても、スライドやクランクの慣性力でプレスはしばらく動作し続ける惧れがあり、人身事故の危険性はさらに高まる惧れがある。
更に、特許文献4には、スライド側のリニアスケールとメインギア側のエンコーダとモータ軸側エンコーダとを用いて検出され、かつ検出された相互のずれ量を監視して異常を判断するプレスの暴走監視装置が提案されている。
確かにスライド側やクランク軸側、モータ軸側のエンコーダの故障等の異常はサーボモータが暴走を引き起こすひとつの要因であり、これらの異常を検出して対処することは暴走を防ぐために有効である。しかしながら、サーボモータの暴走はこれらの異常によるものだけではなく、例えばサーボモータのモーションコントローラ演算部の異常やモーションコントロールの記憶部の異常などによっても起こり得る。従って、特許文献4に記載のものでは、人身に危険を及ぼすような場合の対策としては不十分である惧れが高い。
かかる特許文献5に記載のものは、サーボモータの減速状況を監視するものであり、特許文献3や特許文献4のように、エンコーダの異常のみではなくモーションコントロールの演算部やモーションコントロールの記憶部等の異常によって発生する暴走に対しても有効に監視できる。
しかしながら、かかる暴走監視装置は、本来正常であれば所定に減速されているであろう時点において、予め設定した速度まで減速されていないことを検出してはじめて異常と判定するものであり、それから機械式ブレーキを作動させる方式であるので、この検出に要する時間分と、制動開始指令が与えられてから機械式ブレーキが実際に制動を開始するまでのブレーキ作動時間分だけ遅れて機械式ブレーキが実際に制動を開始しサーボモータの減速が開始されることになり、その結果最終的にその遅れ分だけ停止する時間が遅れることになる。また、サーボモータが暴走状態で加速駆動等していれば、制動に要する時間が延びるため、更にサーボモータ延いてはプレスマシンの停止は遅れることになる。
詳細には、例えば、危険域の手前に侵入検出装置を設置し、手等が侵入検出装置を通過してから危険域に到達するまでにプレスのスライドを確実に停止し、手等がスライドや金型等に挟まれるのを防止しようとするものである。
このため、侵入検出装置は危険域から定められた距離を隔てて設置され、例えば、手等が1.6m/秒の速度で移動する場合には、侵入検出装置を手等が通過してから危険域に到達するのに相当する時間内にプレスのスライドを確実に停止する必要がある。
このことは、侵入を検出してから確実にスライドが停止する時間が長くなれば、それだけ侵入検出装置は危険域(作業域)から離して設置しなければならず、延いてはプレスの作業性を低下させることとなる。言い換えると、プレスの作業性を良くするためには侵入検出装置が侵入を検出したら、できるだけ早く確実にスライドを停止することが必要となる。
一例として、ANSI.B11.1に定められている計算式を以下に示す。
安全距離(Ds)=K(Tm+Tr+Tbm)+Dpf
K=1.6m/sec(手の速度)
Tm:最大急停止時間(制御装置に入力されてから止まるまでの時間)
Tr:侵入検出装置反応時間
Tbm:オーバーラン監視時間(停止性能が劣化した場合に、それを検出するまでの時間)
Dpf:進入検出装置の性能による追加距離
従来の機械式プレスにおいては、常に機械式ブレーキの制動力で停止しているため、使用の経過に伴ってブレーキライニング等の摩耗などが増加する傾向にある。このため、ブレーキの監視を行い、停止時間が延びてきたら異常と検出するオーバーラン監視装置を装備することが求められ、上記安全距離計算式においても、オーバーラン監視時間(Tbm)が考慮に入れられている。
ここで、上記安全距離計算式でいうオーバーラン監視時間(Tbm)とは、ブレーキ劣化により急停止時間が延びた場合に、それをオーバーラン監視装置が検出するのに要する時間であり、上記安全距離計算式では、これを考慮して安全距離を求めている。このことは、別の言い方をすると、性能劣化や故障等が発生しても確実に停止できる時間を最大急停止時間とするべきである、という考え方を基礎とするものである。このような考え方は、プレスの作業が人身事故などにつながる惧れがあることに鑑みれば、電動サーボプレスにおいても採用すべきである。
このため、電動サーボプレスでは従来の機械式プレスに採用されるサーボモータに比べ非常に大きな駆動トルクを擁するサーボモータが要求される。
従って、サーボモータが暴走等した場合において、従来の機械式プレスのように機械式ブレーキの制動力で停止させようとすると、この大きな駆動トルクに打ち勝ってサーボモータを停止させることが要求されるため、機械式ブレーキはサイズの大きなものとなり、以って製品コストの増大、延いてはそのメンテナンスコストも増大するなどといった惧れが生じる。
加えて、大きな制動トルクで減速させることは、プレスマシンに比較的大きな振動や騒音等の発生を招く惧れがあり、かかる観点からも好ましくない。
また、暴走を発生させ得る全ての要因を監視し検出することは難しい。
従って、常に機械式ブレーキを作動させて、確率(発生頻度)の低い暴走対策を図るという考え方もあるが、かかる考え方では、確率(発生頻度)の高い指令に基づくプレス停止に際しても機械式ブレーキを作動させることになるので、経済的・生産的に不利である。
電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御方法であって、
急停止指令に応じて、所定の急停止モーションに従ったサーボモータの回転停止制御を実行する一方、
当該回転停止制御の実行開始から所定期間経過したことを条件に、
電動サーボプレスの機械式ブレーキをサーボモータの出力に対して実際に作用させて制動すると共に、サーボモータに対する前記回転停止制御を少なくとも含む電子制御或いは駆動電源供給の少なくとも一方を停止すること
を特徴とする。
電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御装置であって、
急停止指令が発生されたときに、記憶手段に記憶されている急停止モーションに基づいてサーボモータの回転停止制御を実行する急停止制御手段と、
前記急停止制御手段による回転停止制御が実行された場合に、所定のブレーキ作動開始タイミングにおいて電動サーボプレスの機械式ブレーキに対してサーボモータの出力に対する制動動作の開始を指示すると共に、所定の制御解除タイミングにおいて前記急停止制御手段による回転停止制御の実行を停止するよう指示する制御手段と、
を含んで構成したことを特徴とすることができる。
本発明において、前記制御手段が実行する前記サーボモータに対する駆動電源供給を停止する制御には、サーボモータに接続される駆動電源供給ラインをハードウェア的に遮断する制御が含まれることを特徴とすることができる。
また、本発明において、前記サーボモータが、ロータの磁極位置に同期した回転駆動信号により回転駆動される同期型モータであることを特徴とすることができる。
本発明において、前記急停止指令は、作業員の手操作に基づき生成される非常停止指令、或いは危険領域に人手等が侵入したこと基づき生成される侵入検出信号の少なくとも一方に基づいて生成されることを特徴とすることができる。
また、本発明において、前記予定停止時刻は、前記回転停止制御の実行前のサーボモータの回転速度及び目標減速度合いに応じて変化されることを特徴とすることができる。
その後、シリンダ装置16内のエアの排出が進み、略完全に排気されるとバネ(スプリング)の全ての力で摩擦板を押し付けることになる。すなわち、制動力増加時間Tbd(例えば15msec)を経て機械式ブレーキ15の制動力が増大して規定制動力となり、この規定制動力でサーボモータ10を制動し停止させることとなる。
プレス制御部50には、非常停止装置61と侵入検出装置62が接続され、更に設定部55、表示部56も接続され、これらによって後述する制御解除タイミングの設定、ブレーキ作動開始タイミングの設定、更にはサーボ制御信号Scntを介してサーボコントローラ28内の記憶手段に記憶される急停止モーションの設定等も行えるように構成されている。本実施の形態においては、例えば、サーボ制御信号Scntは双方向のシリアル通信線で構成されており、各種プレス成形のためのモーションの設定やそれらの選択、運転モードの選択、サーボパラメータの設定や選択などの信号の送受が可能となっており、これらの信号全てがサーボ制御信号Scntに含まれるものである。
論理手段42は急停止指令信号Sktのみでなく、その他の制御手段49(例えばワーク搬送手段の制御等)による停止指令信号に対しても同様に急停止できるように、それぞれの信号をAND処理し、何れか一方の信号が生成(H→Lレベル)された場合でも急停止信号Sscを出力(H→Lレベル)するように構成されている。論理処理手段44、46、48も同様の目的である。
PWM制御信号Scはサーボモータ10の各相に対応する各制御素子23へ出力され、各制御素子23はモータ各相に対応する駆動信号Sdを各パワートランジスタ25に生成出力する。すなわち、各パワートランジスタ25を含む駆動回路24が、サーボモータ10を回転駆動する。Iu、Iv、Iwがモータ駆動電流である。なお、図5ではサーボモータ10の各相の巻線とパワートランジスタ25の接続についての詳細は公知であるため省略している。また、V21は制御用電源で、Vmtはモータ回転駆動用電源である。
すなわち、
サーボドライバ21は、プレス制御部50からのベース駆動遮断信号Sbc(H→Lレベル)を受けると(図1等参照)、図3に示す制御リレー33を駆動トランジスタ32を介して消勢し、制御リレー33の接点を開放する。これにより、図5の制御電源V21が遮断され、制御素子(ベース駆動素子)23の電源は消失される。つまり、サーボドライブ回路20内のパワートランジスタ25への制御信号Scを消滅させる。
このことにより、制御素子23は各パワートランジスタ25を駆動できず、モータ駆動電流Iu、Iv、Iwは遮断され、サーボモータ10の駆動力が消失する。すなわち、モータ回転駆動用電源Vmtからサーボモータ10を遮断し、サーボモータ10の回転制御(急停止時は回転停止制御)を強制的に解除する。
このため、故障等によりモータ駆動電流Iu、Iv、Iwが遮断できなかったとしても、サーボモータ10の回転駆動力は生じ得ない。すなわち、かかる同期型モータを用いることは安全サイドである。
この方法もベース駆動遮断による方法と同様に、予め制御解除タイミング設定値T21−1が設定されている。急停止指令信号Sktが生成されると、制御解除タイミング計数手段47は経過時間の計数を開始する。その計数値が設定値T21−1に達すると、論理処理手段48を介して電磁接触器遮断信号Sccを出力する。これにより電磁接触器22は駆動電流Iu、Iv、Iwを遮断して回転停止制御を強制的に解除する。
ブレーキ作動開始タイミング設定手段(55、56、50)により設定されたタイミングにて、機械式ブレーキ15の作動を開始し、
制御解除タイミング設定手段(55、56、50)により設定されたタイミングにて、サーボモータ10の回転停止制御を強制的に解除する。
これらの作動タイミングの一例を図7に示す。
ここでは、回転停止制御を強制的に解除する手段として、ベース駆動を遮断する方法のみを記載し、電磁接触器22により動力を遮断する方法の記載は省略している。どちらも回転停止制御を強制的に解除するものであり、同じ考え方で設定されるべきものである。なお、これらの制御強制解除手段が十分信頼性のある回路で構成されているものであれば、何れか一方のみを採用することができるし、両方を用いることもできる。
従って、ブレーキ制御手段と制御強制解除手段を確実に動作させてサーボモータ10を停止させることが重要である。
より詳細には、制御強制解除手段によってサーボモータ10の駆動力を無くすことで回転駆動制御や回転停止制御の異常(すなわち、サーボモータ10の暴走)を確実に防止しながら、ブレーキ制御手段により機械式ブレーキ15を作動させて確実にサーボモータ10を停止させるという思想を、本実施の形態では実現する。
図4において制御リレー33Aは非接地側、制御リレー33Bは接地側に接続しているのは、同一要因で両回路が同時に故障等するのを防止するためのもので安全リレーにおける一般的な使用方法である。なお、各制御リレー33A、33Bの故障検出回路等は安全リレーとして公知であるため図示を省略した。
また、サーボモータ10の動力を遮断する電磁接触器22についても同様に、2系統の出力と2つの電磁接触器を用いて構成することができる。但し、ベース駆動信号遮断によるサーボモータ10の駆動力消失を確実に行うことが期待できる場合は、電磁接触器22を省略することも可能である。
なお、図示してはいないが、安全上重要な侵入検出装置62も同様に冗長性のある回路構成とすることができ、侵入検出装置の2系統の出力がプレス制御部50に入力される構成とすることができる。
本実施の形態では、非接触でかつ検出感度が高い光線式安全装置を用いた。光線式安全装置は安全ガードのように開閉の必要がなく、操作性の良いプレス作業を提供できる。しかし、光線式安全装置においては何時でも人手等が侵入できる構成であるため、確実なスライドの停止が必要不可欠となる。
ここにおいて、光線式安全装置の光線の走査位置は、規格に基づく速度1.6m/secで進行(移動)する人手等が危険領域に到達する以前に、サーボモータ10を完全に停止、つまり電動サーボプレス1(スライド9)を停止できるものとして選択された位置である。
以下に、米国国家規格(ANSI)の場合を示す。各国によって若干異なる部分はあるが基本的考え方は同じである。
安全距離(Ds)=K(Tm+Tr+Tbm)+Dpf
K=1.6m/sec(手等の移動速度)
Tm:最大急停止時間(制御装置に入力されてから止まるまでの時間)
Tr:侵入検出装置反応時間
Tbm:オーバーラン監視時間(停止性能が劣化した場合に、それを検出するまでの時間)
Dpf:侵入検出装置の性能(最小検出物体の大きさによる)による追加距離
Tmは、図7での最大急停止時間である。TrとDpfは、光線式安全装置の性能によって決定される。Tbmは、従来の機械式プレスにおいて用いられるオーバーラン監視装置に起因するものである。
なお、本発明による電動サーボプレス1では機械式ブレーキの劣化が殆ど無いと考えられるので省略できるとの考えである。
侵入検出手段62は、危険領域に向かって進む人手等を検出したときに、侵入検出信号Sinを生成出力する。
なお、手動によって材料(ワーク)を送給するプレス作業(ハンド・イン・ダイ方式)における本発明者等が行った調査によれば、前者(信号Sem)の発生する機会よりも後者(信号Sin)の発生機会が多いことが解明されている。
当該急停止信号Sscを受けたサーボコントローラ28は、内部に記憶されている基準急停止モーションから急停止モーションを生成し、それに従ったモーション信号Smをサーボドライバ21へ送る。
サーボドライバ21により駆動されるサーボモータ10では、時刻t0を起点にして減速停止制御を開始し、図7に示すように、急停止モーションCRVs(最高速度からの急停止の場合の減速カーブ(減速パターン)に従って減速する。サーボモータ10の制御が正常に行われている場合は(通常の場合ほとんどそうであるが)、予定停止時間Ts(例えば70msec)経過して、つまり予定停止時刻t3にサーボモータ10は完全停止する。因みに、時刻t0においてサーボモータ駆動電流(回転駆動用電源Vmt)を遮断してサーボモータ10を回転自由状態とした場合は、これよりはるかに長い時間(例えば数秒間)に亘って回転が続くことになる。特に、動力伝達変換機構5がクランク機構の場合は、その慣性が大きいのでより長時間回転が続く惧れがある。
より詳細には、急停止モーションCRVsによる予定停止時刻t3とブレーキ制動開始時刻t31が概略同時になるように、タイミング設定値T11は設定される。しかし、これは、予定停止時刻t3とブレーキ制動開始時刻t31が、後述するように完全に一致することまでは要求されるものではない。
このため、図7では、タイミング調整時間Tf1(例えば10msec)が設けられている。
従って、ブレーキ作動信号Sslc出力タイミング設定値T11は、
T11=Ts−T12+Tf1
で求められ、例えば具体的な時間例として、
T11(20msec)=Ts(70msec)−T12(60msec)+Tf1(10msec)
などが想定される。
従って、機械式ブレーキ15の実際の作動開始タイミングと同様に、制御解除タイミング設定値T21(及び/又はT21−1:以後、T21を代表的に用いて説明)は設定される。
具体的には、急停止モーションCRVsによる予定停止時刻t3に合わせて実際にサーボモータ10の駆動力が消滅するように、制御解除信号(Sbc及び/又はScc)の出力タイミング設定値T21が設定される。より詳細には、急停止モーションCRVsによる予定停止時刻t3と駆動力消滅時刻t32が概略同時となるよう設定値T21は設定される。しかし、これは、時刻t3と時刻t32が、後述するように完全に一致することまでは要求されるものではない。
このため、図7ではタイミング調整時間Tf2(例えば20msec)が設けられている。従って、制御解除信号(Sbc及び/又はScc)出力タイミング設定値T21は、
T21=Ts−T22+Tf2で求められ、例えば具体的な時間例として、
T21(60msec)=Ts(70msec)−T22(30msec)+Tf2(20msec)
などが想定される。
しかし、運用上の実際では、例えば電源電圧変動等の外乱の影響等により、実際のブレーキ作動開始時やモータ停止時が常に予定通りとは限らない。しかも、作業員の各タイミング設定作業に厳密な正確性を求めることは作業効率等の面から現実的であるとは言い難い。このため、外乱の影響等によるバラツキを吸収し、作業効率等を現実的なものとすることができるように、タイミング調整時間Tf1、Tf2を設けたものである。但し、タイミング調整時間Tf1、Tf2をあまり長く設定すると、その分だけ最大急停止時間Tmが若干ではあるが長くなるので、外乱の影響等や作業効率等の現実性と、侵入検出装置2を設置する際の安全距離と、を比較考量して、タイミング調整時間Tf1、Tf2を設定することが望ましい。
なお、回転軸がフリーとなる時間が許容されるのは、スライド9が実際に自重落下を起こさない極わずかな時間のみであり、具体的には、許容される時間は、小型のプレスマシンでは最大10msec程度、大型のプレスマシンでも最大30msec程度である。
従って、このような設定の場合、最大急停止時間Tmは、タイミング調整時間分だけ長くなるが、機械式ブレーキ15の摩擦板の摺動は全く発生せず、かつ、機械式ブレーキ15が実際にサーボモータ10に制動を掛けている状態においてサーボモータ10の駆動制御が停止されるため回転自由状態が全く存在しないこととなり、機械式ブレーキ15の摩擦板等の摩耗を最少に留めつつ、サーボモータ10の不用意な回転等の発生等が確実に防止されたサーボモータ10延いては電動サーボプレス1の急停止制御が実現できることになる。
図7では最高速度にて運転中の状況から急停止を示し、図8では中間速度Viからの停止状況を示している。
サーボコントローラ28は、急停止信号を受けると、そのときの運転速度に見合った急停止モーションを演算生成する。図8のCRVs−1は、最高速度Vmaxの急停止モーションCRVsと同じ加速度で回転停止するよう演算されたものである。
一方、CRVs−2は同じく急停止モーションCRVsと同じ時間で停止するように演算されたものである。
このように、中間速度での急停止モーションは、予定停止時間Ts以内で停止することができるものであれば、これらの何れか又はこれらの間を取ったようなモーションを採用することができる。本実施の形態では同じ加速度のCRVs−1を採用した場合について説明されている。
従って、本実施の形態においても、このような方法を採用した。しかし、比較的速度変化の少ないモーションしか設定しない場合には、従来の機械式プレスマシンと同様に、プレス速度(spm)から急停止モーションを演算生成することも可能である。
ブレーキ制御手段は、プレス制御部50にて構成され、予め設定したブレーキ作動タイミングT1、つまり時刻t31において機械式ブレーキ15が実施に制動を開始するよう制御する。
制御強制解除手段は、プレス制御部50、サーボドライブ回路20を含んで構成され(電磁接触器22を含むこともできる)、予め設定された制御解除タイミングT2、つまり時刻t32に回転停止制御を強制的に解除する。
これらにより、図8に示す時刻t3にて急停止指令信号Sktに基づく回転停止制御が終了しているか否かに拘わらず、時刻t31において必ず機械式ブレーキ15による停止動作が行われると共に、時刻t32においてサーボモータ10の回転停止制御が強制的に解除されることになる。
正常な場合は、最大急停止時間Tmよりもはるかに短い時間で停止できるので安全である。
従って、サーボモータ10が暴走等したような場合においても、最大急停止時間Tmで確実にサーボモータ10を停止させることが保証され、安全が確保される。また、サーボモータ10の暴走等は頻繁に起こるものではないので、機械式ブレーキ15の摩耗はそれほど生じず、耐久性の高い高価な大容量のブレーキ装置も必要がないため経済的である。
図7はプレスの運転速度が最高速度Vmaxの時からの急停止の動作タイミングを示し、図8では更に中速Vi(最高速度Vmaxの約2/3の速度)の場合も同時に示している。
プレス制御部50からサーボドライブ回路20に通常の運転信号(プレス動作用信号)としてのサーボ制御信号Scntが出力される。サーボモータ10は、サーボ制御信号Scntに対応して選択されたモーションに従って、サーボモータ10は所定速度(V)で回転制御されている。なお、このときスライド9が昇降されてプレス加工が行われる。
この際のモータ回転速度は生産性の点から最高速度Vmaxで運転されている場合(図7)、或いは例えば特殊加工(例えば、深絞り)のために中速(例えば、2/3×Vmax)で運転されている場合(図8)等、要求に応じて様々である。
時刻t0において、図1に示す非常停止ボタン61の操作により非常停止信号Semが生成され、或いは侵入検出装置62により侵入検出信号Sinが生成されると、直ちに信号発生手段41から急停止指令信号Sktが生成され、プレス制御部50は急停止信号Ssc(H→L)をサーボコントローラ28に出力する。
ここで、サーボコントローラ28で生成される前記急停止モーションは、サーボモータ10に対する指令値であり、実際にサーボモータ10はこの急停止モーションに従うように制御される。実際にサーボモータ10が回転停止制御されて動作するモーションは指令値と偏差が生じていて、厳密には異なるモーションとなる。しかし、現実的には僅かな偏差であり、ここでは両者とも同じく急停止モーション(図7のVmaxのときはCRVs、図8のViのときはCRVs−1)として扱うこととする。すなわち、急停止モーションCRVsやCRVs-1は指令値としての急停止モーションでもあり、実際にサーボモータ10が減速停止する急停止モーションでもあるとする。
なお、これらの制御システム並びにサーボモータ10が正常な時は、最高速度Vmax時(図7)は予定停止時刻t3にて停止し、中速Vi時(図8)は予定停止時刻t3より前に停止している。
ブレーキ作動信号発生時刻t1において、ブレーキ作動開始タイミング計数手段45は、予め設定されているブレーキ作動開始タイミング設定値T11に達する。このことにより、ブレーキ作動開始タイミング計数手段45は論理処理手段46を介して機械式ブレーキ作動信号Sslcを電磁弁17に出力(H→Lレベル)する。
電磁弁17は、ブレーキ作動信号Sslcにより作動し、その所定時間後に、機械式ブレーキ15のシリンダ装置16内のエアを排出し、それに伴って機械式ブレーキ15の摩擦板が移動(ブレーキストローク)を開始する。
すなわち、時刻t31において、実際に機械式ブレーキ15が制動を開始するように、時刻t1にて先行指令するわけである。当該先行指令は、サーボモータ10が暴走等しているか否かの判断や監視をすることなく実行されるので、実際にブレーキ動作のタイミングが遅れたりすることがない。
図7、図8において、「シリンダ内圧力」は、シリンダ装置16内のエア圧力が低下する様子を示しており、「ブレーキストローク」は、機械式ブレーキ15の摩擦板が移動する様子を示している。
制御解除信号発生時刻t2において、制御解除タイミング計数手段43は、予め設定されている制御解除タイミング設定値T21に達する。このことにより、制御解除タイミング計数手段43は論理処理手段44を介して制御解除信号をベース駆動遮断信号Sbc(H→Lレベル)としてサーボドライバ21へ出力するなお、電磁接触器遮断信号Sccに関連する制御強制解除も同様であるのでここでの記述は省略する。
サーボドライバ21は、ベース駆動遮断信号Sbc(H→Lレベル)を受けると、制御リレー33の作動時間やその他の回路の遅れ時間後に、サーボモータ10の駆動電流Iu、Iv、Iwを消失させる。
(正常の場合)
急停止制御手段(50,20)は、図7に示す最高速度(Vmax)の時、急停止モーションCRVsに従いサーボモータ10の回転を減衰させ、予定制御時間Ts(例えば70msec)を経過した予定停止時刻t3にて速度零(停止)とするように働く。
また、図8に示す中速の時は、急停止モーションCRVs−1又はCRVs−2に従いサーボモータ10の回転を減衰させ、予定制御時間Ts以内で速度零(停止)とするように働く。何れの場合においても、予定停止時刻t3までにはサーボモータ10は停止される。
時刻t0から急回転停止制御に切り替えたにも拘わらず、何らかの原因(例えば、エンコーダ11からサーボドライバ21にフィードバックする信号S11に異常が発生するなど)で、サーボモータ10が最高速度(又は、それ以下の速度)で回転継続(暴走)している場合は、予定制御時間Tsの経過時においてもサーボモータ10は回転している。
ここで、本実施の形態では、サーボモータ10に同期型モータ(ACサーボモータ)を採用しているので、ロータの磁極(永久磁石)に対応する回転駆動信号Sdが入力されなければ駆動力が生じない。従って、最高速度Vmax以上の速度の駆動信号がロータ磁極に対応した信号として自然発生的に発生することは考え難いので、サーボモータ10が暴走している状況においても、最高速度Vmaxを超えることは想定し難い。
すなわち、図7に示す最高回転時においても、図8に示す中速時においても、サーボモータ10が暴走等した場合の予定停止時刻t3における速度は、0〜Vmaxの範囲内であり、最も高速の場合でもVmaxであると考えることができる。
機械式ブレーキ作動信号Sslcにて電磁弁17が作動され、機械式ブレーキ15の作動が開始される。予定停止時刻t3から調整時間Tf1(例えば、10msec)後のブレーキ制動開始時刻t31には、図7、図8の「ブレーキストローク」にて示すように可動側摩擦板が移動して固定側の摩擦板と接触し、制動を開始する。すなわち、時刻t31において実際に機械式ブレーキ15が制動を開始する。
ベース駆動遮断信号Sbc(H→Lレベル)により、制御リレー33の作動時間やその他の回路の遅れ時間後に、サーボモータの駆動電流Iu、Iv、Iwが消失される。このことにより、予定停止時刻t3から調整時間Tf2(例えば、20msec)後の時刻t32にサーボモータ10の磁界が消滅され、駆動力が消滅される。
正常の場合は、予定停止時間Tsで回転停止制御が終了する。サーボモータ10は回転停止されスライド9は昇降停止している。確率的に殆どの場合は正常であるから、機械式ブレーキ15は停止している状態を保持するだけである。つまり、機械式ブレーキ15の摩擦板の消耗はほとんど発生しない。更に、サーボモータ10の急停止制御は強制解除されサーボモータ10へ供給される駆動電流が消滅しているので、サーボコントローラ28やサーボドライバ21に如何なる異常が発生していたとしても、サーボモータ10に駆動力は生ぜず、機械式ブレーキ15にて停止状態が保持されることになる。すなわち、この状態であれば危険域(作業域)に安心して手等を入れることができる。
何らかの異常でサーボモータ10が暴走している場合、予定停止時刻t3おいてもサーボモータ10は回転され、スライド9は動作される。最悪の場合、サーボモータ10は最高回転Vmaxで回転している可能もある。
かかる場合において、本実施の形態では、図7、図8に示したように、ブレーキ制動開始時刻t31に機械式ブレーキ15は制動を開始する。その後も機械式ブレーキ15のシリンダ装置16内のエアは排気され、全てのバネ力(スプリングの付勢力)で摩擦板を押し付けるようになり機械式ブレーキ15の持つ最大能力でサーボモータ10を制動することとなる。
それと並行して、駆動力消滅時刻t32にてサーボモータ10の駆動力は消滅するので、サーボモータ10が暴走状態であっても、それ以降は駆動力が無くなり、機械式ブレーキ15の最大能力でサーボモータ10は減速停止されることとなる。最高速度Vmaxからの機械式ブレーキ15による制動の場合、図7に示すブレーキ減速カーブCRVsに従いサーボモータ10は減速され、ブレーキ制動時間Tb(例えば70msec)にて確実に停止されることとなる。
従って、本実施の形態においては、機械式ブレーキ15はサーボモータ10の駆動力に勝る制動力を備える必要はなく、慣性力による作動を停止させる制動力を持てば十分であることが理解される。
サーボモータ10が暴走している場合、ブレーキ制動開始時刻t31や駆動力消滅時刻t32における速度は、前述したように0〜Vmaxの範囲であるが、その時の速度は規定することはできない。
図8には、中速Viのまま前記時刻に至った場合の減速カーブCRVs−1を示した。すなわち、中速Viのまま機械式ブレーキ15により制動した場合は、CRVs−1に従い、サーボモータ10は減速され停止されることとなる。かかる場合は、最高速度Vmaxであった場合のブレーキ制動時間Tbに比べて短い時間で停止されることになり、安全サイドである。
換言すれば、本実施の形態においては、如何なる場合においても、最大急停止時間Tm以内でサーボモータ10を停止させることができるので、安全な電動サーボプレスを提供できるものである。
以上のように、本実施の形態では、如何なる場合においても時刻t4においては、サーボモータ10(すなわち、電動サーボプレス1のスライド9)は確実に停止されていることになる。時刻t0から時刻t4までの時間が、最大急停止時間Tmであり、最大急停止時間Tm以内で確実に停止させることができる。例えば、本実施の形態において具体的な最大急停止時間の一例としては、以下のような例が想定される。
最大急停止時間Tm(160msec)=Ts(70msec)+Tf2(20msec)+Tb(70msec)
安全距離Ds(0.288)=1.6(Tm(0.16)+Tr(0.02)+Tbm(0))+Dpf(0)
K=1.6m/sec(手の速度)
Tm:最大級停止時間(一例:0.16sec)
Tr:侵入検出装置反応時間(一例:0.02sec)
Tbm:オーバーラン監視時間(一例:0sec)
Dpf:侵入検出装置の性能による追加距離(一例:0sec)
この場合において、安全距離は0.288mで、危険域(作業域)の手前288mmの位置に侵入検出装置62の光線走査位置を設置することが要求される。これは、従来の機械式プレスと比較して、ほぼ同等の安全距離であり、本実施の形態によれば、電動サーボプレスでありながら機械式プレスと同等以上の作業員の安全を保証しつつ、作業容易性と生産性を向上させることができることとなる。
この方式は、エア圧(空気圧)を用いてレリースするため、摩擦板を押し当てるための強力なバネを採用することができ、大きな制動トルクが要求されるブレーキに適した構造である。また、この方式は、多数のバネを用いること、更に、ダブルソレノイドバルブを用いて排気する方法を併用することにより、高い信頼性と確実性を備えることができる。
また、従来の機械式プレスの多くにおいても、この方式が採用されており、製品品質等からの信頼性等の面においても信頼のおけるものであり、かつ入手容易性も高い。
かかる観点から、本実施の形態に係る電動サーボプレスにおいても、この方式を採用した。
当該機械式ブレーキ15と同等の性能のブレーキを装備した従来の機械式プレスにおいての最大急停止時間Tm−mは、
Tm−m(130msec)=作動遅れ時間T12(60msec)+ブレーキ制動時間Tb(70msec)
である。
前述したように、本実施の形態における電動サーボプレス1の最大急停止時間Tmは160msecであるので、従来の機械式プレスに比べ、30msecだけ最大急停止時間が延びたことになる。
しかし、電動サーボプレス1の最大急停止時間は、サーボモータ10の回転停止制御で停められなかった場合に機械式ブレーキ15を作動させて停止させた場合の停止時間であり、このような場合であっても30msecしか延びていないのである。更に、タイミング調整時間Tf1やTf2をゼロに近づけたならば、本実施の形態に係る電動サーボプレス1の最大急停止時間は、更に20msec短縮され、140msecとなり、従来の機械式プレスと殆ど変わらない急停止性能を実現できることとなる。
例えば、特許文献5に記載されるもののように、減速停止指令後の減速状態を監視して正常に減速されないことを検出してからブレーキを作動させたのでは、前記無駄時間が存在する場合には、当該無駄時間分だけブレーキの作動が遅れるため、最適なタイミングで機械式ブレーキを作動させることはできない。更に、特許文献5に記載の方法で最大急停止時間を本発明と同程度まで短縮しようとすれば、より早期に制動を開始する必要があるため、大きな制動力を有する容量の大きな機械式ブレーキを採用せざるを得ないことになる。
これに対し、本実施の形態によれば、電動サーボプレスであるためモーション設定の自由度が高く様々なプレス加工への対応を実現可能としながら、従来の機械式プレスと同程度の急停止性能をもち安全性が高いと共に作業効率や操作性も良く、かつ機械式ブレーキの消耗も殆ど無く、機械式ブレーキのメンテナンス周期も比較的長くすることができる経済的な電動サーボプレスの提供を実現することができるのである。
この一方で、電動サーボプレスには、万が一のときには確実にサーボモータを制動停止可能であることが要求される。
このため、例えば、機械式ブレーキ15の制動力をテストするテストモードを設け、プレス作業の開始前、或いは終了前などの適宜のタイミングで、サーボモータ10の回転停止制御を実行しない状態で機械式ブレーキ15の制動力のみで最大急停止時間内で停止できることなどを確認するようにすることもできる。
また、従来の電動サーボモータの急停止制御のように、機械式ブレーキ15を酷使することが無いため、小容量の機械式ブレーキを備えれば良く、また摩擦板の摩耗も抑制できるためメンテナンス時間や費用を低減できるため、経済的負担が小さくかつ生産性の高い電動サーボプレスを提供することができる。
しかも、パワートランジスタ25の制御信号Scをソフトウェア的に消失させたり、ベース駆動信号Sdをソフトウェア的に消失させたり、更には回転駆動用電源Vmtをハードウェア的(或いは物理的)に遮断して、モータ駆動電流Iを遮断するので、迅速な電流遮断ができると共に、信頼性高く確実に電流遮断を行うことができる。
なお、本実施の形態のように、サーボモータ10として、ロータ磁極位置に同期した回転駆動信号Sdを受けて初めて回転駆動される同期型モータを採用すれば、より一層サーボモータ10の回転暴走に対して安全サイドにある電動サーボプレスを提供することができる。
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは勿論である。
5 クランク機構(動力伝達変換機構)
7 クランク軸用エンコーダ
9 スライド
10 サーボモータ
15 機械式ブレーキ
20 サーボドライブ回路
22 電磁接触器
24 駆動回路
25 パワートランジスタ
28 サーボコントローラ
50 プレス制御部
52 演算部
53 記憶部
55 設定部
56 表示部
61 非常停止装置
62 侵入検出装置
電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御方法及び装置であって、
急停止指令に応じて、所定の急停止モーションに従ったサーボモータの回転停止制御を実行する一方、
前記急停止指令の発生から、サーボモータの回転が停止しているか否かに拘わらず、それぞれに対応して設定される所定期間を経過したことを条件に、
電動サーボプレスの機械式ブレーキをサーボモータの出力に対して実際に作用させて制動すると共に、
サーボモータに対する前記回転停止制御を少なくとも含む電子制御或いは駆動電源供給の少なくとも一方を停止すること
を特徴とする。
電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御装置であって、
急停止指令が発生されたときに、記憶手段に記憶されている急停止モーションに基づいてサーボモータの回転停止制御を実行する急停止制御手段と、
前記急停止指令が発生された場合に、サーボモータの回転が停止しているか否かに拘わらず、
所定のブレーキ作動開始タイミングにおいて電動サーボプレスの機械式ブレーキに対してサーボモータの出力に対する制動動作の開始を指示すると共に、
所定の制御解除タイミングにおいて前記急停止制御手段による回転停止制御の実行を停止するよう指示する制御手段と、
を含んで構成したことを特徴とすることができる。
従って、サーボモータ10が暴走等したような場合においても、最大急停止時間Tmで確実にサーボモータ10を停止させることが保障され、安全が確保される。また、サーボモータ10の暴走等は頻繁に起こるものではないので、機械式ブレーキ15の磨耗はそれほど生じず、耐久性の高い高価な大容量のブレーキ装置も必要が無いため経済的である。
一例として、ANSI.B11.1に定められている計算式を以下に示す。
安全距離(Ds)=K(Tm+Tr+Tbm)+Dpf
K=1.6m/sec(手の速度)
Tm:最大急停止時間(制御装置に入力されてから止まるまでの時間)
Tr:侵入検出装置反応時間
Tbm:オーバーラン監視時間(停止性能が劣化した場合に、それを検出するまでの時間)
Dpf:侵入検出装置の性能による追加距離
従来の機械式プレスにおいては、常に機械式ブレーキの制動力で停止しているため、使用の経過に伴ってブレーキライニング等の摩耗などが増加する傾向にある。このため、ブレーキの監視を行い、停止時間が延びてきたら異常と検出するオーバーラン監視装置を装備することが求められ、上記安全距離計算式においても、オーバーラン監視時間(Tbm)が考慮に入れられている。
ここで、上記安全距離計算式でいうオーバーラン監視時間(Tbm)とは、ブレーキ劣化により急停止時間が延びた場合に、それをオーバーラン監視装置が検出するのに要する時間であり、上記安全距離計算式では、これを考慮して安全距離を求めている。このことは、別の言い方をすると、性能劣化や故障等が発生しても確実に停止できる時間を最大急停止時間とするべきである、という考え方を基礎とするものである。このような考え方は、プレスの作業が人身事故などにつながる惧れがあることに鑑みれば、電動サーボプレスにおいても採用すべきである。
電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御方法及び装置であって、
急停止指令に応じて、所定の急停止モーションに従ったサーボモータの回転停止制御を実行する一方、
サーボモータが正常である場合において、急停止指令が発生した時刻を基準時刻として、前記回転停止制御の実行によりサーボモータの回転が停止される予定時刻或いはその付近の時刻を予定停止時刻とし、
前記基準時刻から前記予定停止時刻までの所要時間から、電動サーボプレスの機械式ブレーキのブレーキ作動遅れ時間を差し引いて設定される前記基準時刻に対する第1の所定時刻を取得すると共に、
前記基準時刻から前記予定停止時刻までの所要時間から、前記回転停止制御の停止指令を送出してから当該回転停止制御が実際に停止されるまでの作動遅れ時間を差し引いて設定される前記基準時刻に対する第2の所定時刻を取得し、
急停止指令の発生から、サーボモータの回転が停止しているか否かに拘わらず、前記第1の所定時刻を経過したときに、前記機械式ブレーキに作動指令を送出すると共に、
急停止指令の発生から、サーボモータの回転が停止しているか否かに拘わらず、前記第2の所定時刻を経過したときに、サーボモータに対する前記回転停止制御を少なくとも含む電子制御或いは駆動電源供給の少なくとも一方を停止するための停止指令を送出すること
を特徴とする。
電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御装置であって、
急停止指令が発生されたときに、記憶手段に記憶されている急停止モーションに基づいてサーボモータの回転停止制御を実行する急停止制御手段と、
サーボモータが正常である場合において、急停止指令が発生した時刻を基準時刻として、前記回転停止制御の実行によりサーボモータの回転が停止される予定時刻或いはその付近の時刻を予定停止時刻とし、
前記基準時刻から前記予定停止時刻までの所要時間から、電動サーボプレスの機械式ブレーキのブレーキ作動遅れ時間を差し引いて設定される前記基準時刻に対する第1の所定時刻を記憶する部分と、
前記基準時刻から前記予定停止時刻までの所要時間から、前記回転停止制御の停止指令を送出してから当該回転停止制御が実際に停止されるまでの作動遅れ時間を差し引いて設定される前記基準時刻に対する第2の所定時刻を記憶する部分と、
を備え、
急停止指令の発生から、サーボモータの回転が停止しているか否かに拘わらず、前記第1の所定時刻を経過したときに、前記機械式ブレーキに作動指令を送出すると共に、
急停止指令の発生から、サーボモータの回転が停止しているか否かに拘わらず、前記第2の所定時刻を経過したときに、前記急停止制御手段による回転停止制御を停止するための停止指令を送出する制御手段と、
を含んで構成したことを特徴とすることができる。
本発明において、前記急停止指令は、作業員の手操作に基づき生成される非常停止指令、或いは危険領域に人手等が侵入したこと基づき生成される侵入検出信号の少なくとも一方に基づいて生成されることを特徴とすることができる。
また、本発明において、前記予定停止時刻は、前記回転停止制御の実行前のサーボモータの回転速度及び目標減速度合いに応じて変化されることを特徴とすることができる。
制御解除信号発生時刻t2(本発明に係る第2の所定時刻に相当する)において、制御解除タイミング計数手段43は、予め設定されている制御解除タイミング設定値T21に達する。このことにより、制御解除タイミング計数手段43は論理処理手段44を介して制御解除信号をベース駆動遮断信号Sbc(H→Lレベル)としてサーボドライバ21へ出力するなお、電磁接触器遮断信号Sccに関連する制御強制解除も同様であるのでここでの記述は省略する。
サーボドライバ21は、ベース駆動遮断信号Sbc(H→Lレベル)を受けると、制御リレー33の作動時間やその他の回路の遅れ時間後に、サーボモータ10の駆動電流Iu、Iv、Iwを消失させる。
また、本発明において、前記予定停止時刻は、前記回転停止制御の実行前のサーボモータの回転速度及び目標減速度合いに応じて変更可能であることを特徴とすることができる。
Claims (20)
- 電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御方法であって、
急停止指令に応じて、所定の急停止モーションに従ったサーボモータの回転停止制御を実行する一方、
当該回転停止制御の実行開始から所定期間経過したことを条件に、
電動サーボプレスの機械式ブレーキをサーボモータの出力に対して実際に作用させて制動すると共に、サーボモータに対する前記回転停止制御を少なくとも含む電子制御或いは駆動電源供給の少なくとも一方を停止すること
を特徴とする電動サーボプレスの制御方法。 - 電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御装置であって、
急停止指令に応じて、所定の急停止モーションに従ったサーボモータの回転停止制御を実行する一方、
当該回転停止制御の実行開始から所定期間経過したことを条件に、
電動サーボプレスの機械式ブレーキをサーボモータの出力に対して実際に作用させて制動すると共に、サーボモータに対する前記回転停止制御を少なくとも含む電子制御或いは駆動電源供給の少なくとも一方を停止すること
を特徴とする電動サーボプレスの制御装置。 - 前記回転停止制御の実行開始から所定期間経過した時期が、正常である場合において前記回転停止制御の実行によりサーボモータが回転停止される予定停止時刻或いはその付近であることを特徴とする請求項2に記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記サーボモータに対する前記回転停止制御を少なくとも含む電子制御或いは駆動電源供給の少なくとも一方を停止することには、サーボモータに接続される制御信号ライン或いは駆動電源供給ラインをハードウェア的に遮断することが含まれることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記サーボモータに対する駆動電源供給を停止することには、サーボモータドライブ回路の一部を構成するパワートランジスタの制御信号を消失させ前記パワートランジスタのベース駆動信号を消失させること、或いは前記サーボモータへ供給される駆動電流を電磁接触器により遮断することの少なくとも一方が含まれることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 電子制御されるサーボモータの回転を動力伝達変換機構を介してスライドの上下往復動に変換し、当該スライドの上下往復動を利用してワークに対してプレス加工を施す電動サーボプレスの制御装置であって、
急停止指令が発生されたときに、記憶手段に記憶されている急停止モーションに基づいてサーボモータの回転停止制御を実行する急停止制御手段と、
前記急停止制御手段による回転停止制御が実行された場合に、所定のブレーキ作動開始タイミングにおいて電動サーボプレスの機械式ブレーキに対してサーボモータの出力に対する制動動作の開始を指示すると共に、所定の制御解除タイミングにおいて前記急停止制御手段による回転停止制御の実行を停止するよう指示する制御手段と、
を含んで構成したことを特徴とする電動サーボプレスの制御装置。 - 前記所定のブレーキ作動開始タイミングは、正常である場合において前記回転停止制御の実行によりサーボモータが回転停止される予定停止時刻或いはその付近において、電動サーボプレスの機械式ブレーキがサーボモータの出力に対して実際に作用して制動するように設定されることを特徴とする請求項6に記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記所定の制御解除タイミングは、正常である場合において前記回転停止制御の実行によりサーボモータが回転停止される予定停止時刻或いはその付近において、前記急停止制御手段による回転停止制御が実際に停止されるように設定されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記制御手段は、正常である場合において前記回転停止制御の実行によりサーボモータが回転停止される予定停止時刻或いはその付近において、サーボモータに対する駆動電源供給を停止する制御を実行することを特徴とする請求項6〜請求項8の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記制御手段が実行する前記急停止制御手段による回転停止制御の実行の停止には、サーボモータに接続される制御信号ラインをハードウェア的に遮断する制御が含まれることを特徴とする請求項6〜請求項9の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記制御手段が実行する前記サーボモータに対する駆動電源供給を停止する制御には、サーボモータに接続される駆動電源供給ラインをハードウェア的に遮断する制御が含まれることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記制御手段が実行する前記サーボモータに対する駆動電源供給を停止する制御には、サーボモータドライブ回路の一部を構成するパワートランジスタの制御信号を消失させ前記パワートランジスタのベース駆動信号を消失させる制御、或いは前記サーボモータへ供給される駆動電流を電磁接触器により遮断する制御の少なくとも一方が含まれることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 少なくとも、前記所定のブレーキ作動開始タイミングを記憶する部分と、前記所定のブレーキ作動開始タイミングにおいて電動サーボプレスの機械式ブレーキに対してサーボモータの出力に対する制動動作の開始を指示する部分と、前記所定の制御解除タイミングを記憶する部分と、前記所定の制御解除タイミングにおいて前記急停止制御手段による回転停止制御の実行を停止するよう指示する部分と、が、安全性に対する信頼性を高めるよう冗長性をもって構成されることを特徴とする請求項6〜請求項12の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記電動サーボプレスの機械式ブレーキをサーボモータの出力に対して実際に作用させて制動する時期が、サーボモータに対する前記回転停止制御を少なくとも含む電子制御或いは駆動電源供給の少なくとも一方を停止する時期に対して同時或いは所定に早い時期であることを特徴とする請求項2〜請求項13の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記機械式ブレーキは、電磁弁を作動させてシリンダ内のエアを排気することでスプリングの付勢力に抗するエア圧をレリースし、前記スプリングの付勢力を介して摩擦要素をサーボモータの出力に対して押圧して制動する構造であることを特徴とする請求項2〜請求項14の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記サーボモータが、ロータの磁極位置に同期した回転駆動信号により回転駆動される同期型モータであることを特徴とする請求項2〜請求項15の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記急停止指令は、作業員の手操作に基づき生成される非常停止指令、或いは危険領域に人手等が侵入したこと基づき生成される侵入検出信号の少なくとも一方に基づいて生成されることを特徴とする請求項2〜請求項16の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記予定停止時刻は、前記回転停止制御の実行前のサーボモータの回転速度に拘らず、サーボモータが最高速度で運転されている状態或いは電動サーボプレスが最高速度で運転されている状態から、前記回転停止制御の実行によりサーボモータが回転停止される予定停止時刻であることを特徴とする請求項3〜5、7〜17の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 前記予定停止時刻は、前記回転停止制御の実行前のサーボモータの回転速度及び目標減速度合いに応じて変化されることを特徴とする請求項3〜5、7〜17の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置。
- 請求項1〜請求項19の何れか1つに記載の電動サーボプレスの制御装置を備えた電動サーボプレス。
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