JP2009135468A - 半導体基板およびその作製方法、ならびに半導体装置の作製方法 - Google Patents

半導体基板およびその作製方法、ならびに半導体装置の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラス基板などの耐熱性の低い支持基板にバッファ層を介して単結晶半導体層が固定された半導体基板を作製する。
【解決手段】加速された水素イオンを半導体基板に照射し、水素を多量に含んだ損傷領域を形成する。単結晶半導体基板と支持基板を接合させた後、半導体基板を加熱して損傷領域で単結晶半導体基板を分離する。単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層にレーザビームを照射する。レーザビームの照射により単結晶半導体層を溶融させることで、再結晶化することでその結晶性を回復させ、かつ単結晶半導体層の表面を平坦化させる。レーザビームの照射後、単結晶半導体層を溶融させない温度で加熱し、そのライフタイムを向上させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、バッファ層を介して単結晶半導体層が固定された半導体基板の作製方法および半導体装置の作製方法に関する。
単結晶半導体のインゴットを薄くスライスして作製されるシリコンウエハに代わり、絶縁表面に薄い単結晶半導体層を設けたシリコン・オン・インシュレータ(以下、「SOI」ともいう)と呼ばれる半導体基板を使った集積回路が開発されている。SOI基板を使った集積回路は、トランジスタのドレインと基板間における寄生容量が低減できることから、半導体集積回路の性能を向上させるものとして注目を集めている。
SOI基板として、SIMOX基板、貼り合わせ基板が知られている。例えばSIMOX基板は、単結晶シリコン基板に酸素イオンを注入し、1300℃以上で熱処理して埋め込み酸化物(BOX;Buried Oxide)層を形成することにより、表面に単結晶シリコン薄膜を形成してSOI構造を得ている。
SOI基板を製造する別な方法としては、水素イオン注入剥離法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。水素イオン注入剥離法は、シリコンウエハに水素イオンを注入することによって表面から所定の深さに微小気泡層を形成し、該微小気泡層を劈開面とすることで、別のシリコンウエハに薄いシリコン層を接合する。さらにシリコン層を分離する熱処理を行うことに加え、酸化性雰囲気下での熱処理でシリコン層に酸化膜を形成した後に該酸化膜を除去し、次に1000℃から1300℃で熱処理を行って接合強度を高める必要があるとされている。
また、ガラス基板に単結晶シリコン層が貼り付けられたSOI基板を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、800℃を越える高温の熱処理を必要としないSOI基板の作製方法として、接合強度を高めるために、絶縁基板にレーザ光を照射している。さらに、特許文献2では、望ましい実施形態として、レーザ光を照射した後、単結晶シリコン層を鏡面研磨することが記載されている。
また、本出願人は、特許文献3及び特許文献4にスマートカット(登録商標)を利用して耐熱性の高い基板を支持基板として用いる半導体装置の作製方法を開示している。さらに、特許文献5にスマートカット(登録商標)を利用して支持基板として透光性基板を用いた半導体装置の作製方法を開示している。
特開2000−124092号公報 特開2005−252244号公報 特開平11−163363号公報 特開2000−012864号公報 特開2000−150905号公報
ガラス基板はシリコンウエハよりも大面積であり、安価であることから、ガラス基板を支持基板として用いることで、大面積で安価なSOI基板を作製することが可能になる。しかしながら、ガラス基板は、歪み点が700℃以下であり、耐熱性が低い。このため、ガラス基板の耐熱温度を超える温度で加熱することはできず、プロセス温度は700℃以下に制限されてしまう。つまり、剥離面における結晶欠陥の除去、表面の平坦化の工程にも、プロセス温度の制約がある。
従来、シリコンウエハに貼り付けられた半導体層の結晶欠陥の除去は、1000℃以上の温度で加熱することで実現できるが、歪み点が700℃以下のガラス基板に貼り付けられた半導体層の結晶欠陥の除去には、このような高温プロセスは用いることができない。すなわち、従来では、歪み点が700℃以下のガラス基板に貼り付けられた単結晶半導体層を、加工する前の単結晶半導体基板と同程度の結晶性を有する単結晶半導体層に回復させる再結晶化方法は確立されていない。
また、ガラス基板はシリコンウエハよりも撓みやすく、表面にうねりがある。特に一辺が30cmを超える大面積のガラス基板に対して機械研磨による処理を行うことは困難である。よって、加工精度や、歩留まり等の観点から、剥離面の機械研磨による処理は、支持基板に貼り付けられた半導体層の平坦化処理に用いることは推奨されない。その一方で、高性能な半導体素子を作製するには、剥離面における表面の凹凸を抑えることが要求されている。それは、SOI基板からトランジスタを作製する場合、半導体層上にゲート絶縁層を介してゲート電極が形成される。よって、半導体層の凹凸が大きいと、絶縁耐圧性の高いゲート絶縁層を作製することが困難である。そのため、絶縁耐圧性を高めるために厚いゲート絶縁層が必要になる。よって、半導体層の表面の凹凸が大きいと、電界効果移動度が低下する、しきい値電圧値の大きさが増加するなど、半導体素子の性能が低下する原因となる。
このように、耐熱性が低く、撓みやすいガラス基板のような基板が支持基板に用いられると、シリコンウエハから剥離されて支持基板上に固定された半導体層の表面凹凸を改善することが困難であるいという問題が顕在化する。
このような問題点に鑑み、本発明は、耐熱性の低い基板が支持基板に用いられたとしても、高性能な半導体素子を形成することを可能とする半導体基板および半導体装置の作製方法を提供することを課題の1つとする。また、高性能な半導体素子を形成することが可能な半導体基板を提供することを課題の1つとする。
本発明の半導体基板の作製方法の1つは、単結晶半導体基板および支持基板を用意し、イオンドーピング装置により、加速されたイオンを単結晶半導体基板に照射することで、単結晶半導体基板の表面から所定の深さの領域に損傷領域を形成し、支持基板または単結晶半導体基板の少なくとも一方にバッファ層を形成し、バッファ層を介して支持基板と単結晶半導体基板を密着させ、バッファ層の表面と、バッファ層表面と密接している面とを接合させることで、支持基板に単結晶半導体基板を固定し、単結晶半導体基板の加熱によって損傷領域に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を支持基板から分離することにより、単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層が固定された支持基板を形成し、単結晶半導体層にレーザビームを照射して、単結晶半導体層を溶融することで、単結晶半導体層を再結晶化させ、再結晶化された単結晶半導体層を400℃以上かつ溶融させない温度で加熱することである。
本発明の半導体装置の作製方法の1つは、単結晶半導体基板および歪み点が700℃以下の支持基板を用意し、イオンドーピング装置により、加速されたイオンを単結晶半導体基板に照射することで、単結晶半導体基板の表面から所定の深さの領域に損傷領域を形成し、支持基板または単結晶半導体基板の少なくとも一方にバッファ層を形成し、バッファ層を介して支持基板と単結晶半導体基板を密着させ、バッファ層の表面と、バッファ層表面と密接している面とを接合させることで、支持基板に単結晶半導体基板を固定し、単結晶半導体基板の加熱によって損傷領域に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を支持基板から分離することにより、単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層が固定された支持基板を形成し、単結晶半導体層にレーザビームを照射して、単結晶半導体層を溶融することで、単結晶半導体層を再結晶化させ、再結晶化された単結晶半導体層を400℃以上かつ歪み点以下の温度で、単結晶半導体層を溶融させずに加熱し、加熱された単結晶半導体層をエッチングして、複数の第2単結晶半導体層に分割し、複数の第2単結晶半導体層上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層を介して複数の第2単結晶半導体層上にゲート電極を形成し、複数の第2単結晶半導体層にドナーまたはアクセプタとなる不純物を添加する。
発明の半導体基板の1つは、歪み点が700℃以下の支持基板と、バッファ層と、バッファ層を介して、支持基板に固定された単結晶半導体層とを有し、単結晶半導体層の水素濃度は、5×1018原子/cm以上5×1020原子/cm以下である。
なお、単結晶とは、ある結晶軸に注目した場合、その結晶軸の方向が試料のどの部分において同じ方向を向いている結晶のことをいい、かつ結晶と結晶との間に結晶粒界が存在しない結晶である。なお、本明細書では、結晶欠陥やダングリグボンドを含んでいても、上記のように結晶軸の方向が揃っており、粒界が存在していない結晶であるものは単結晶とする。
また、結晶構造を有する層の再結晶化とは、その結晶構造と異なる状態(例えば、液相状態)を経て、再び結晶構造を有する層になることをいう。また、単結晶半導体を再結晶化して、単結晶半導体となることを、本明細書では、再単結晶化ということとする。
本発明の半導体基板および半導体装置の作製方法において、レーザビームの照射により、単結晶半導体層のレーザビームが照射されている領域の表面から深さ方向の一部を溶融する。例えば、表面およびその表面近傍を溶融する。または、単結晶半導体層のレーザビームが照射されている領域の深さ方向の全てを溶融する。
本発明の半導体基板および半導体装置の作製方法において、不活性気体雰囲気中で、半導体層にレーザビームを照射することが好ましい。あるいは、レーザビームの照射は、単結晶半導体層の上面におけるレーザビームの照射領域に不活性気体を吹き付けながら行うことが好ましい。不活性気体には、窒素ガスまたは希ガスを用いることができる。不活性気体とは、レーザビームの照射工程で、単結晶半導体層の表面と反応して酸化膜を形成しない分子または原子の気体である。例えば、不活性気体には、窒素ガス(Nガス)、アルゴンやキセノンなどの希ガスなどがある。
本発明において、支持基板には歪み点が650℃以上700℃以下の基板を用いることが好ましい。支持基板にはガラス基板を用いることができる。例えば、無アルカリガラス基板を用いることができる。
本発明において、バッファ層は、1層または2層以上の膜で形成することができる。バッファ層には、支持基板側からナトリウムが拡散することを防止できるバリア層を含むことが好ましい。また、バッファ層は、単結晶半導体層に密着し、かつ塩素またはフッ素などのハロゲンを含む絶縁膜を有することが好ましい。
本発明の半導体装置の作製方法は、プロセス温度700℃以下で、単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層を溶融することで、再結晶化して、結晶性を回復させることが可能である。また、プロセス温度700℃以下で、単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層を平坦化することが可能である。
また、レーザビームを照射して単結晶半導体層を溶融し再単結晶化した後、溶融させない加熱処理を行うことで、再単結晶化された単結晶半導体層のライフタイムを向上させることができる。
したがって、耐熱性の低い基板が支持基板に用いられたとしても、本発明に係る半導体基板を用いて高性能な半導体素子を形成することが可能になる。例えば、大面積を有する透光性ガラス基板を用いて、高性能な表示装置を作製することが可能になる。
以下に、本発明を説明する。本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなく、その形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は実施形態および実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、異なる図面間で同じ参照符号が付されている要素は同じ要素を表しており、材料、形状、作製方法などについて繰り返しになる説明は省略している。
(実施形態1)
本実施形態では、バッファ層を介して単結晶半導体層が支持基板に固定されている半導体基板およびその作製方法について説明する。
図1は、半導体基板の構成例を示す斜視図である。半導体基板10は、バッファ層111を介して単結晶半導体層112が支持基板100に固定されている基板である。単結晶半導体層112は、単結晶半導体基板を薄くすることで形成される層である。バッファ層111の表面と支持基板100の表面が接合することで、単結晶半導体層112が支持基板100に固定されている。半導体基板10はいわゆるSOI構造の基板であり、絶縁層上に単結晶半導体層が形成されている基板である。
バッファ層111は、単層構造でも膜を2層以上積層した多層構造でもよい。バッファ層111を構成する膜は、単結晶半導体基板の表面に成膜処理によって形成された膜でなる。本実施形態ではバッファ層111は3層構造であり、支持基板100側から、第2絶縁層114、第1絶縁層113b、第1絶縁層113aが積層されている。
図1の半導体基板10において、第2絶縁層114は接合層として機能している膜である。つまり、第2絶縁層114の表面と、支持基板100の表面が接合することで、単結晶半導体層112が支持基板100に固定されている。
また、第1絶縁層113aは、バリア層として機能する絶縁膜である。バリア層は、半導体基板の作製時、およびこの半導体基板を用いた半導体装置の作製時に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物(代表的には、ナトリウム)が、支持基板100側から単結晶半導体層112に侵入することを防ぐ膜である。バリア層を形成することで、半導体基板および半導体装置が不純物で汚染されることを防止できるため、その信頼性を向上させることができる。
単結晶半導体層112は、単結晶半導体基板を薄膜化することで形成される層である。単結晶半導体基板には、市販の半導体基板を用いることができ、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板も用いることができる。
支持基板100は、絶縁表面を有する基板を用いる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。好ましくは支持基板100としてガラス基板を用いるのがよい。ガラス基板には、熱膨張係数が25×10−7/℃以上50×10−7/℃以下(好ましくは、30×10−7/℃以上40×10−7/℃以下)であり、歪み点が580℃以上700℃以下、好ましくは、650℃以上690℃以下である基板を用いることが好ましい。また、半導体装置の汚染を抑えるため、ガラス基板は無アルカリガラス基板が好ましい。無アルカリガラス基板の材料には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料などがある。例えば、支持基板100として、無アルカリガラス基板(商品名AN100)、無アルカリガラス基板(商品名EAGLE2000(登録商標))または無アルカリガラス基板(商品名EAGLEXG(登録商標))を用いることが好ましい。
無アルカリガラス基板(商品名AN100)は次の物性値を有する無アルカリガラス基板である。比重2.51g/cm、ポワソン比0.22、ヤング率77GPa、二軸弾性係数98.7GPa、熱膨張率38×10−7/℃。
無アルカリガラス基板(商品名EAGLE2000(登録商標))は次の物性値を有する無アルカリガラス基板である。比重2.37g/cm、ポワソン比0.23、ヤング率70.9GPa、二軸弾性係数92.07GPa、熱膨張率31.8×10−7/℃。
また、支持基板100には、ガラス基板の他、セラミック基板、石英基板やサファイア基板などの絶縁体でなる絶縁性基板、金属やステンレスなどの導電体でなる導電性基板、シリコンやガリウムヒ素など半導体でなる半導体基板などを用いることができる。また、支持基板には、ガラス基板、石英基板などの透光性の基板が好ましい。透光性の基板を用いることで、表示装置の製造に適した半導体基板10を作製することができる。
以下、図3〜図5を参照して、図1に示す半導体基板10の作製方法を説明する。
まず、単結晶半導体基板110を準備する。単結晶半導体基板110は、所望の大きさ、形状に加工されている。図3は、単結晶半導体基板110の構成の一例を示す外観図である。矩形状の支持基板100に貼り合わせること、および縮小投影型露光装置などの露光装置の露光領域が矩形であること等を考慮すると、図3に示すように単結晶半導体基板110の形状は矩形であることが好ましい。なお、本明細書において、特段の断りがない場合、矩形には正方形および長方形を含む。
もちろん、単結晶半導体基板110には、図3の形状の基板に限定されるものではなく、様々な形状の単結晶半導体基板を用いることができる。例えば、円形、五角形、六角形などの多角形の基板を用いることができる。もちろん、市販の円形状の単結晶半導体ウエハを単結晶半導体基板110に用いることも可能である。
円形状の単結晶半導体ウエハには、シリコンやゲルマニウムなどの半導体ウエハ、ガリウムヒ素やインジウムリンなどの化合物半導体ウエハなどがある。単結晶半導体ウエハの代表例は、単結晶シリコンウエハであり、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径400mm、直径450mmの円形のウエハが知られている。
矩形の単結晶半導体基板110は、円形状の単結晶半導体ウエハを切断することで形成することができる。基板の切断には、ダイサー或いはワイヤソー等の切断装置、レーザ切断、プラズマ切断、電子ビーム切断、その他任意の切断手段を用いることができる。また、基板として薄片化する前の半導体基板製造用のインゴットを、その断面が矩形になるように直方体状に加工し、この直方体状のインゴットを薄片化することでも、矩形状の単結晶半導体基板110を製造することができる。
また、単結晶半導体基板110の厚さは特に限定されないが、単結晶半導体基板110を再利用することを考慮すれば、厚い方が1枚の原料ウエハからより多くの単結晶半導体層112を形成することができるため、好ましい。市場に流通している単結晶シリコンウエハの厚さは、そのサイズはSEMI規格に準じており、例えば直径6インチのウエハは膜厚625μm、直径8インチのウエハは膜厚725μm、直径12インチのウエハは775μmとされている。なお、SEMI規格のウエハの厚さは公差±25μmを含んでいる。もちろん、原料となる単結晶半導体基板110の厚さはSEMI規格に限定されず、インゴットをスライスするときに、その厚さを適宜調節することができる。もちろん、再利用された単結晶半導体基板110を用いるときには、その厚さは、SEMI規格よりも薄くなる。
なお、単結晶半導体基板110に、単結晶シリコン基板のような結晶構造がダイヤモンド構造の第14族元素でなる基板を用いる場合は、その主表面の面方位は、(100)であってもよいし、(110)面であってもよいし、(111)であってもよい。(100)の単結晶半導体基板110を用いることで、単結晶半導体層112とその表面に形成される絶縁層との界面準位密度を小さくすることができるため、電界効果型トランジスタの作製に好適である。
主表面が(110)の単結晶半導体基板110を用いることで、第2絶縁層114と単結晶半導体層112との接合面において、第2絶縁層114を構成する元素と単結晶半導体層112を構成する第4族元素(例えばシリコン元素)との結合が密に形成されるため、第2絶縁層114と単結晶半導体層112との結合力が向上する。
主表面が(110)面の単結晶半導体基板110を用いることで、その主表面には、他の面方位に比べて原子が密に配列しているため、単結晶半導体層112の平坦性が向上する。したがって、主表面が(110)面の単結晶半導体層112を用いて作製したトランジスタは、小さいS値、高電界効果移動度などの、優れた電気的特性を有する。なお、主表面が(110)面の単結晶半導体基板は、(100)面の単結晶半導体基板よりも比較してヤング率が大きく、劈開しやすいという長所がある。
まず、単結晶半導体基板110を洗浄し、清浄にする。次に、図4(A)に示すように、単結晶半導体基板110上に第1絶縁層113を形成する。第1絶縁層113は単層構造、2層以上の多層構造とすることができる。第1絶縁層113の厚さは5nm以上400nm以下とすることができる。第1絶縁層113を構成する膜には、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化ゲルマニウム膜、窒化ゲルマニウム膜、酸化窒化ゲルマニウム膜、窒化酸化ゲルマニウム膜などのシリコンまたはゲルマニウムを組成に含む絶縁膜を用いることができる。また、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの金属の酸化物でなる絶縁膜、窒化アルミニウムなどの金属の窒化物でなる絶縁膜、酸化窒化アルミニウム膜などの金属の酸化窒化物でなる絶縁膜、窒化酸化アルミニウム膜などの金属の窒化酸化物でなる絶縁膜を用いることもできる。
第1絶縁層113を構成する絶縁膜は、化学気相法(CVD法)、スパッタ法、原子層エピタキシ法(ALE法)法、単結晶半導体基板110を酸化するまたは窒化するなどの方法により形成することができる。CVD法には、減圧CVD法、熱CVD法、プラズマ励起CVD法(以下、PECVD法という)などがある。PECVD法は、350℃以下の低温処理であり、また他のCVD法よりも成膜速度が大きいので、好ましい。
なお、本明細書において、酸化窒化物とは、その組成として、窒素原子よりも酸素原子の数が多い物質とし、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素原子より窒素原子の数が多い物質とする。例えば、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、Siが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、Siが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。但し、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、Si及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
第1絶縁層113には、ナトリウムが単結晶半導体層112に侵入することを防ぐためのバリア層となる絶縁膜を少なくとも1層含むことが好ましい。バリア層は1層でも2層以上でもよい。例えば、支持基板100にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物を含むような基板(代表的には、ガラス基板)を用いた場合、支持基板100が加熱されると、このような不純物が支持基板100から単結晶半導体層112に拡散するおそれがある。よって、バリア層を形成することで、このようなアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物が単結晶半導体層112に移動することを防止することができる。バリア層として機能する膜には、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などがある。このような膜を含ませることで、第1絶縁層113をバリア層として機能させることができる。
例えば、第1絶縁層113を単層構造とする場合は、バリア層として機能する膜で第1絶縁層113を形成することが好ましい。この場合、厚さ5nm以上200nm以下の窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜で、単層構造の第1絶縁層113を形成することができる。
第1絶縁層113を、バリア層を1層含む2層構造の膜とする場合は、上層は、ナトリウムなどの不純物をブロッキングするためのバリア層で構成する。上層は、厚さ5nm〜200nmの窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜で形成することができる。バリア層として機能するこれらの膜は、不純物の拡散を防止するブロッキング効果が高いが、内部応力が高い。そのため、単結晶半導体基板110と接する下層の絶縁膜には、上層の絶縁膜の応力を緩和する効果のある膜を選択することが好ましい。このような絶縁膜には、酸化シリコン膜および酸化窒化シリコン膜、および単結晶半導体基板110を熱酸化して形成した熱酸化膜などがある。下層の絶縁膜の厚さは5nm以上300nm以下とすることができる。
本実施形態では、第1絶縁層113を第1絶縁層113aと第1絶縁層113bでなる2層構造とする。第1絶縁層113をブロッキング膜として機能させる第1絶縁層113aと第1絶縁層113bの組み合わせは、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜と窒化シリコン膜、酸化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜などがある。
例えば、下層の第1絶縁層113aとして、プロセスガスにSiHおよびNOを用いてPECVD法により酸化窒化シリコン膜で形成することができる。また、第1絶縁層113aとして、プロセスガスに有機シランガスと酸素を用いて、PECVD法により酸化シリコン膜を形成することもできる。また、単結晶半導体基板110を酸化した、酸化膜で第1絶縁層113aを形成することもできる。
有機シランとは、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC)、またはトリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH)などの化合物である。
上層の第1絶縁層113bは、プロセスガスにSiH、NO、NHおよびHを用いてPECVD法で形成した窒化酸化シリコン膜で、または、プロセスガスにSiH、N、NHおよびHを用いてPECVD法で形成した窒化シリコン膜で形成することができる。
例えば、PECVD法で、酸化窒化シリコンでなる第1絶縁層113a、窒化酸化シリコンでなる第1絶縁層113bを形成する場合、単結晶半導体基板110をPECVD装置のチャンバーに搬入する。そして、第1絶縁層113aの形成用プロセスガスとしてSiHおよびNOをチャンバーに供給し、このプロセスガスのプラズマを生成し、酸化窒化シリコン膜を単結晶半導体基板110上に形成する。次に、チャンバーに導入するガスを第1絶縁層113b形成用のプロセスガスに変更する。ここでは、SiH、NO、NHおよびHを用いる。これらの混合ガスのプラズマを生成して、酸化窒化シリコン膜上に窒化酸化シリコン膜を連続して形成する。また、複数のチャンバーを有するPECVD装置を用いる場合は、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜と異なるチャンバーで形成することもできる。もちろん、チャンバーに導入するガスを変更することで、下層に酸化シリコン膜を形成することもできるし、上層に窒化シリコン膜を形成することもできる。
上記のように第1絶縁層113aおよび第1絶縁層113bを形成することで、スループット良く、複数の単結晶半導体基板110に第1絶縁層113を形成することができる。また、大気に触れさせることなく第1絶縁層113a、第1絶縁層113bを形成できるので、第1絶縁層113aと第1絶縁層113bの界面が大気によって汚染されることを防止することができる。
また、第1絶縁層113aとして、単結晶半導体基板110を熱酸化処理して酸化膜を形成することができる。この酸化膜を形成するための、熱酸化処理には、ドライ酸化でも良いが、酸化雰囲気中にハロゲンを含むガスを添加することが好ましい。ハロゲンを含んだ雰囲気中で、単結晶半導体基板110を酸化することで、ハロゲンを含んだ酸化膜を第1絶縁層113aとして形成することができる。ハロゲンを含むガスとして、HCl、HF、NF、HBr、Cl、ClF、BCl、F、Brなどから選ばれた一種類又は複数種類のガスを用いることができる。
例えば、酸素に対しHClを0.5〜10体積%(好ましくは3体積%)の割合で含む雰囲気中で、700℃以上の温度で熱処理を行う。950℃以上1100℃以下の加熱温度で熱酸化を行うとよい。処理時間は0.1〜6時間、好ましくは0.5〜1時間とすればよい。形成される酸化膜の膜厚は、10nm〜1000nm(好ましくは50nm〜200nm)、例えば100nmの厚さとすることができる。
このような温度範囲で酸化処理を行うことで、ハロゲン元素によるゲッタリング効果を得ることができる。ゲッタリングとしては、特に、金属不純物を除去する効果がある。すなわち、塩素の作用により、金属などの不純物が揮発性の塩化物となって気相中へ離脱して、単結晶半導体基板110から除去される。また、酸化膜に含まれるハロゲン元素により、単結晶半導体基板110の表面の未結合手が終端されるため、酸化膜と単結晶半導体基板110との界面の局在準位密度が低減できる。
このハロゲンを含む雰囲気での熱酸化処理により、酸化膜にハロゲンを含ませることができる。ハロゲン元素を1×1017atoms/cm〜5×1020atoms/cmの濃度で含ませることにより、半導体基板10において、金属などの不純物を捕獲して単結晶半導体層112の汚染を防止する保護膜として機能させることができる。
また、単結晶半導体基板110の酸化膜を形成する方法は、700℃以上の温度で加熱する熱酸化処理の他の方法を用いることもできる。例えば、酸素ラジカル(Oラジカル)、または水酸化ラジカル(OHラジカル)を含んだプラズマによるプラズマ処理、または高密度プラズマ処理、オゾン添加水(O水)による酸化処理などにより、単結晶半導体基板110の酸化膜を形成することができる。
なお、熱酸化処理は高温プロセスであるため、熱応力が発生しやすく、そのために単結晶半導体基板110にすべり転位などの結晶欠陥が発生しやすくなる。よって、第1絶縁層113を形成するために、単結晶半導体基板110を酸化処理する場合は、熱酸化処理よりも、CVD法、スパッタリング法、又はオゾン添加水による酸化処理など、700℃以下の低温プロセスの処理を行うことが好ましい。
次に、運動エネルギーを有するイオンを単結晶半導体基板110に照射することで、単結晶半導体基板110の所定の深さに結晶構造を損傷された損傷領域115を形成する。図4(B)は損傷領域115を形成する工程を説明する断面図である。図4(B)に示すように、第1絶縁層113を介して、加速されたイオン121を単結晶半導体基板110に照射することで、単結晶半導体基板110の表面から所定の深さの領域にイオンが添加され、損傷領域115を形成することができる。イオン121は、ソースガスを励起して、ソースガスのプラズマを生成し、このプラズマに含まれるイオンを、電界の作用によりプラズマから引き出して、加速したイオンである。
損傷領域115が形成される領域の深さは、イオン121の加速エネルギーとイオン121の入射角によって調節することができる。加速エネルギーは加速電圧、ドーズ量などにより調節できる。イオン121の平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に損傷領域115が形成される。そのため、イオン121を添加する深さで、単結晶半導体基板110から分離される単結晶半導体層117の厚さが決定される。この単結晶半導体層の厚さが20nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下になるように、損傷領域115が形成される深さを調節する。
損傷領域115の形成は、イオンドーピング処理で行うことができる。イオンドーピング処理には、イオンドーピング装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表的な装置は、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種をチャンバー内に配置された被処理体に照射する非質量分離型の装置である。非質量分離型の装置であるのは、プラズマ中のイオン種を質量分離しないで、全てのイオン種を被処理体に照射しているからである。これに対して、イオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置は、プラズマ中のイオン種を質量分離し、ある特定の質量のイオン種を被処理体に照射する装置である。
イオンドーピング装置の主要な構成は、被処理物を配置するチャンバー、所望のイオンを発生させるイオン源、およびイオンを加速し、照射するための加速機構である。イオン源は、所望のイオン種を生成するためのソースガスを供給するガス供給装置、ソースガスを励起して、プラズマを生成させるための電極などで構成される。プラズマを形成するための電極として、フィラメント型の電極や容量結合高周波放電用の電極などが用いられる。加速機構は、引出電極、加速電極、減速電極、接地電極等の電極など、およびこれらの電極に電力を供給するための電源などで構成される。加速機構を構成する電極には多数の開口やスリットが設けられており、イオン源で生成されたイオンは電極に設けられた開口やスリットを通過して加速される。なお、イオンドーピング装置の構成は上述したものに限定されず、必要に応じた機構が設けられる。
本実施形態では、イオンドーピング装置で、水素を半導体ウエハに添加することにする。プラズマソースガスとして水素を含むガスを供給する。例えば、Hを供給する。水素ガスを励起してプラズマを生成し、質量分離せずに、プラズマ中に含まれるイオンを加速し、加速されたイオンを単結晶半導体基板110に照射する。
イオンドーピング装置において、水素ガスから生成されるイオン種(H、H 、H )の総量に対してH の割合が50%以上とする。より好ましくは、そのH の割合を80%以上とする。イオンドーピング装置は質量分離を行わないため、プラズマ中に生成される複数のイオン種のうち、1つを50%以上とすることが好ましく、80%以上とすることが好ましい。同じ質量のイオンを照射することで、単結晶半導体基板110の同じ深さに集中させてイオンを添加することができる。
損傷領域115を浅い領域に形成するためには、イオン121の加速電圧を低くする必要があるが、プラズマ中のH イオンの割合を高くすることで、原子状水素(H)を効率よく、単結晶半導体基板110に添加できる。H イオンはHイオンの3倍の質量を持つことから、同じ深さに水素原子を1つ添加する場合、H イオンの加速電圧は、Hイオンの加速電圧の3倍にすることが可能と考えられる。イオンの加速電圧を大きくできれば、イオンの照射工程のタクトタイムを短縮することが可能となり、生産性やスループットの向上を図ることができる。
また、加速されたイオン121を単結晶半導体基板110に照射する工程は、イオン注入装置で行うこともできる。イオン注入装置は、チャンバー内に配置された被処理体に、ソースガスをプラズマ励起して生成された複数のイオン種を質量分離し、特定のイオン種を照射する質量分離型の装置である。したがって、イオン注入装置を用いる場合は、水素ガスを励起して生成されたHイオンおよびH イオンを質量分離して、HイオンまたはH イオンの一方のイオンを加速して、単結晶半導体基板110に照射する。
損傷領域115には、5×1020atoms/cm以上の水素(H)を含ませることが好ましい。単結晶半導体基板110に局所的な高濃度の水素添加領域を形成すると、結晶構造が失われ微小な空洞が形成されるため、損傷領域115は多孔質構造となっている。そのため、比較的低温(600℃以下)の熱処理によって損傷領域115に形成された微小な空洞の体積変化が起こり、損傷領域115に沿って単結晶半導体基板110を劈開(分離)することができる。なお、損傷領域115に含まれる水素濃度はイオン121のドーズ量や加速電圧などによって制御される。
水素ガスを用いて、イオンドーピング装置でイオンを単結晶半導体基板110に添加する場合、加速電圧10kV以上200kV以下、ドーズ量1×1016ions/cm以上6×1016ions/cm以下とすることができる。この条件で水素イオンを添加することで、イオン121に含まれるイオン種および、その割合にもよるが、損傷領域115を単結晶半導体基板110の深さ50nm以上500nm以下の領域に形成することができる。
例えば、単結晶半導体基板110が単結晶シリコン基板であり、第1絶縁層113aが厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜であり、第1絶縁層113bが厚さ50nmの窒化酸化シリコン膜の場合、ソースガスが水素であり、加速電圧40kV、ドーズ量2.2×1016ions/cmの条件では、単結晶半導体基板110から厚さ100nm程度の単結晶半導体層を分離することができる。また、第1絶縁層113aを厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜とし、他は同じ条件で水素イオンをドープすると、単結晶半導体基板110から厚さ70nm程度の単結晶半導体層を分離することができる。
イオン121のソースガスにヘリウム(He)を用いることもできる。ヘリウムを励起して生成されるイオン種がHeが殆どであるため、質量分離を伴わないイオンドーピング法でも、Heを主なイオン121として、単結晶半導体基板110に照射することができる。よって、イオンドーピング法で、効率良く、微小な空孔を損傷領域115に形成することができる。ヘリウムを用いて、イオンドーピング法でイオンを単結晶半導体基板110に照射する場合、加速電圧10kV以上200kV以下、ドーズ量1×1016ions/cm以上6×1016ions/cm以下とすることができる。
ソースガスに塩素ガス(Clガス)、フッ素ガス(Fガス)などのハロゲンガスを用いることもできる。
イオン注入装置とイオンドーピング装置では、ソースガスから生成される水素イオン種H、H 、およびH の割合は、大きく異なる。図44は、イオンドーピング装置で100%水素ガス(イオン源の圧力:4.7×10−2Pa)から生成されるイオン種の質量分析結果を示すグラフである。横軸はイオン種の質量である。質量1、2、3のスペクトルは、それぞれH、H 、H に対応する。縦軸は、スペクトルの強度であり、イオンの量に対応する。図44では、質量3のイオンの数を100とした場合の相対比で、他の質量を有するイオン種の数量を表している。図44から、プラズマ中に生成される水素イオン種の割合は、H:H :H =1:1:8程度となることが分かる。イオンドーピング装置で水素イオンを打ち込んだ単結晶シリコンウエハについて、水素濃度分布を二次イオン質量分析した結果からも、単結晶シリコンウエハに照射される水素イオン種のうちH が約80%を占めることが確認されている。
図45は、イオン注入装置で、イオン源の圧力がおよそ3×10−3Paの場合の、PHから生成したイオン種の質量分析結果を示すグラフである。図44と同様、横軸はイオン種の質量を示し、質量1、2、3のスペクトルは、それぞれH、H 、H に対応する。縦軸はイオンの量に対応するスペクトルの強度である。図45からは、プラズマ中の水素イオン種の割合はH:H :H =37:56:7である。なお、図45はソースガスがPHの場合のデータであるが、ソースガスに100%Hガスを用いたときも、水素イオン種の割合は同様になる。つまり、水素ガスから生成されるイオン種の割合はH:H :H =37:56:7である。
したがって、イオン注入装置では、水素イオン種H、H 、およびH のうち、H は7%程度しか生成されず、他方、イオンドーピング装置ではH の割合を50%以上、80%程度にすることが可能である。以下に、イオンドーピング装置とイオン注入装置でH が生成される割合が大きく異なる理由を考察する。
[水素プラズマ中のイオン]
水素プラズマ中には、H、H 、H といった水素イオン種が存在する。以下に、各水素イオン種の反応過程(生成過程、消滅過程)を示す反応式を列挙する。また、図46に、これら反応の一部を模式的に表したエネルギーダイアグラムを示す。なお、図46に示すエネルギーダイアグラムは模式図に過ぎず、反応に係るエネルギーの関係を厳密に規定するものではない点に留意されたい。
e+H→e+H+e ・・・・・(1)
e+H→e+H +e ・・・・・(2)
e+H→e+(H→e+H+H ・・・・・(3)
e+H →e+(H →e+H+H ・・・・・(4)
+H→H +H ・・・・・(5)
+H→H+H+H ・・・・・(6)
e+H →e+H+H+H ・・・・・(7)
e+H →H+H ・・・・・(8)
e+H →H+H+H ・・・・・(9)
[H の生成過程]
上記のように、H は、主として反応式(5)により表される反応過程により生成される。一方で、反応式(5)と競合する反応として、反応式(6)により表される反応過程が存在する。H が増加するためには、少なくとも、反応式(5)の反応が、反応式(6)の反応より多く起こる必要がある(なお、H が減少する反応としては他にも(7)、(8)、(9)が存在するため、(5)の反応が(6)の反応より多いからといって、必ずしもH が増加するとは限らない。)。反対に、反応式(5)の反応が、反応式(6)の反応より少ない場合には、プラズマ中におけるH の割合は減少する。各反応式において、右辺(最右辺)の生成物の増加量は、その左辺(最左辺)に示す原料の濃度や、その反応に係る速度係数などに依存する。ここで、H の運動エネルギーが約11eVより小さい場合には(5)の反応が主要となり(すなわち、反応式(5)に係る速度係数が、反応式(6)に係る速度係数と比較して十分に大きくなり)、H の運動エネルギーが約11eVより大きい場合には(6)の反応が主要となることが実験的に確認されている。
荷電粒子は電場から力を受けて運動エネルギーを得る。該運動エネルギーは、電場によるポテンシャルエネルギーの減少量に対応している。例えば、ある荷電粒子が他の粒子と衝突するまでの間に得る運動エネルギーは、荷電粒子が移動することによって失うポテンシャルエネルギーに等しい。つまり、電場中において、他の粒子と衝突することなく長い距離を移動できる状況では、そうではない状況と比較して、荷電粒子の運動エネルギー(の平均)は大きくなる傾向にある。このように、荷電粒子の運動エネルギーが増大する傾向は、粒子の平均自由行程が大きい状況、すなわち、圧力が低い状況で生じ得る。また、平均自由行程が小さくとも、衝突までに大きな運動エネルギーを得ることができる状況であれば、荷電粒子の運動エネルギーは大きくなる。すなわち、平均自由行程が小さくとも、電位差が大きい状況であれば、荷電粒子の持つ運動エネルギーは大きくなると言える。
これをH に適用してみる。プラズマの生成に係るチャンバー内のように電場の存在を前提とすれば、該チャンバー内の圧力が低い状況ではH の運動エネルギーは大きくなり、該チャンバー内の圧力が高い状況ではH の運動エネルギーは小さくなる。つまり、チャンバー内の圧力が低い状況では(6)の反応が主要となるため、H は減少する傾向となり、チャンバー内の圧力が高い状況では(5)の反応が主要となるため、H は増加する傾向となる。また、プラズマ生成領域における電場(又は電界)が強い状況、すなわち、ある二点間の電位差が大きい状況では、H の運動エネルギーは大きくなる。反対の状況では、H の運動エネルギーは小さくなる。つまり、電場が強い状況では(6)の反応が主要となるためH は減少する傾向となり、電場が弱い状況では(5)の反応が主要となるため、H は増加する傾向となる。
例えば、図45のデータを得たイオン源の場合には、H、H およびH のうち、H が7%程度しか生成されていない。他方、図44のデータを得たイオン源の場合には、H の割合を50%以上(図44のデータでは80%程度)とすることが可能である。これは、上述したように、チャンバー内の圧力および電場に起因するものと考えられる。
[H の照射メカニズム]
図44のような複数のイオン種を含むプラズマを生成し、生成されたイオン種を質量分離しないで半導体基板に照射する場合、半導体基板の表面には、H、H 、H の各イオンが照射される。イオンの照射からイオン注入層の形成までのメカニズムを考察するために、次の5種類のモデル(モデル1乃至5)を考える。
1.照射されるイオン種がHで、照射後もH(H)である場合
2.照射されるイオン種がH で、照射後もH (H)のままである場合
3.照射されるイオン種がH で、照射後に2個のH(H)に分裂する場合
4.照射されるイオン種がH で、照射後もH (H)のままである場合
5.照射されるイオン種がH で、照射後に3個のH(H)に分裂する場合
[シミュレーション結果と実測値との比較]
上記のモデル1乃至5を基にして、水素イオン種をシリコン基板に照射するシミュレーションを行った。シミュレーション用のソフトウェアとして、SRIM(the Stopping and Range of Ions in Matter)を用いた。SRIMは、モンテカルロ法によるイオン導入過程のシミュレーションソフトウェアであり、TRIM(the Transport of Ions in Matter)の改良版である。なお、SRIMは非晶質構造を対象とするソフトウェアではあるが、高エネルギー、高ドーズの条件で水素イオン種をシリコン基板に照射する場合には、SRIMを適用することが可能である。それは、水素イオン種とSi原子の衝突により、シリコン基板の結晶構造が非単結晶構造に変化するためである。
以下に、シミュレーション結果について説明する。なお、本実施形態のシミュレーションでは、モデル2を用いた計算ではH を質量2倍のHに置き換えている。また、モデル3ではH を運動エネルギー1/2のHに置き換え、モデル4ではH を質量3倍のHに置き換え、モデル5ではH を運動エネルギー1/3のHに置き換えている。
上記のモデル1乃至モデル5を用いて、加速電圧80kVで水素イオン種をSi基板に照射した場合(H換算で10万個照射時)について、それぞれ、シリコン基板中の水素元素(H)の深さ方向の分布を計算した。図47に、その計算結果を示す。さらに、図47に、Si基板中の水素元素(H)の深さ方向の分布の実測値も示す。この実測値は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)により測定したデータ(以下、SIMSデータと呼ぶ。)ある。SIMSで測定した試料は、図44のデータを測定した条件で生成した水素イオン種(H、H 、H )を、加速電圧80kVで照射したSi基板である。
図47において、モデル1乃至モデル5を用いた計算値のグラフの縦軸は、それぞれ、水素原子の数を示す右縦軸である。SIMSデータのグラフの縦軸は、水素原子の濃度を示す左縦軸である。計算値およびSIMSデータ共に、そのグラフの横軸はSi基板表面からの深さを表している。実測値であるSIMSデータと計算値とを比較すると、モデル2およびモデル4は明らかにSIMSデータのグラフから外れており、また、SIMSデータにはモデル3に対応するピークは存在していない。このことから、モデル2乃至モデル4の寄与は、モデル1およびモデル5の寄与よりも、相対的に小さいことが分かる。イオンの運動エネルギーの単位がkeVであるのに対して、H−Hの結合エネルギーは数eV程度に過ぎないことを考慮すると、モデル2およびモデル4の寄与が小さいのは、Si元素との衝突により、大部分のH やH が、HやHに分離しているためと予想される。従って、モデル2乃至モデル4は、以下の考察では考慮しない。次に、モデル1およびモデル5を用い、加速電圧が80kV、60kV、および40kVで、水素イオン種をSi基板に照射した場合(H換算で10万個照射時)をシミュレーションした結果を説明する。
図48乃至図50に、Si基板中の水素(H)の深さ方向の分布を計算した結果を示す。図48、図49および図50には、それぞれ、加速電圧が80kV、60kV、および40kVの場合の計算結果が示されている。さらに、図48乃至図50には、実測値であるSIMSデータ、およびSIMSデータにフィッティングしたカーブ(以下、フィッティング関数と呼ぶ)も示されている。SIMSで測定した試料は、図44のデータを測定した条件で生成した水素イオン種(H、H 、H )を、加速電圧80kV、60kV、または40kVで加速して、照射したSi基板である。なお、モデル1およびモデル5を用いた計算値のグラフの縦軸は右縦軸の水素原子の数であり、SIMSデータおよびフィッティング関数のグラフの縦軸は左縦軸の水素原子の濃度である。また、各グラフの横軸はSi基板表面からの深さを表している。
ここでは、フィッティング関数はモデル1およびモデル5を考慮して以下の計算式(f1)により求めている。計算式(f1)中、X、Yはフィッティングに係るパラメータであり、Vは体積である。
[フィッティング関数]
=X/V×[モデル1のデータ]+Y/V×[モデル5のデータ]・・・(f1)
フィッティング関数の決定には、現実に照射されるイオン種の割合(H:H :H =1:1:8程度、図44参照。)を考えれば、H の寄与(すなわち、モデル3)についても考慮すべきであるが、以下に示す理由により、ここでは、H の寄与を除外している。
・モデル3に示される照射過程により導入される水素は、モデル5の照射過程と比較して僅かであるため、除外しても大きな影響はない(SIMSデータにモデル3に対応するピークが現れていない。図47参照)。
・モデル3によるSi基板中の水素元素の深さ方向プロファイルは、モデル5の深さ方向プロファイルとピーク位置が近いため(図47参照)、モデル3の寄与は、モデル5の照射過程において生じるチャネリング(結晶の格子構造に起因する原子の移動)により隠れてしまう可能性が高い。すなわち、モデル3のフィッティングパラメータを見積もるのは困難である。これは、本シミュレーションが非晶質Siを前提としており、結晶性に起因する影響を考慮していないことによるものである。
図51に、計算式(f1)のフィッティングパラメータを示す。いずれの加速電圧においても、Si基板に導入されるHの数の比は、[モデル1]:[モデル5]=1:42〜1:45程度(モデル1におけるHの数を1とした場合、モデル5におけるHの数は42以上45以下程度)であり、照射されるイオン種の数の比は、[H(モデル1)]:[H (モデル5)]=1:14〜1:15程度(モデル1におけるHの数を1とした場合、モデル5におけるH の数は14以上15以下程度)である。モデル3を考慮していないことや、非晶質Siと仮定して計算していることなどを考えれば、図51に示す比は、実際の照射に係る水素イオン種の比(H:H :H =1:1:8程度、図44参照。)に近い値が得られていると言える。
[H を用いる効果]
図44に示すようなH の割合を高めた水素イオン種を基板に照射することで、H に起因する複数のメリットを享受することができる。例えば、H はHやHなどに分離して基板内に導入されるため、主にHやH を照射する場合と比較して、イオンの導入効率を向上させることができる。これにより、SOI基板の生産性向上を図ることができる。また、同様に、H が分離した後のHやHの運動エネルギーは小さくなる傾向にあるから、薄い半導体層の製造に向いている。なお、ここでは、H を効率的に照射するために、図44に示すような水素イオン種を照射可能なイオンドーピング装置を用いる方法について説明している。イオンドーピング装置は廉価で、大面積処理に優れているため、このようなイオンドーピング装置を用いてH を照射することで、半導体特性の向上、ならびに、SOI基板の大面積化、低コスト化および生産性向上などの顕著な効果を得ることができる。
以上の考察により、H をより多く単結晶半導体基板110に打ち込むには、イオン注入装置よりイオンドーピング装置を用いる方が好ましい。
また、イオンドーピング装置では、生成されたイオン種の質量分離を行っていないため、ソースガスの利用効率が高い。また、加速されたイオンを面状または線状に照射することができるので、タクトタイムを短縮することが容易である。これに対して、イオン注入装置は、生成したイオンを質量分離して特定のイオン種だけを基板に打ち込めるという特徴がある。しかし、質量分離を行うことで、ソースガスから生成されるイオンの利用効率がイオンドーピング装置よりも低くなる。また、イオン注入装置ではビーム形状が点状のイオンビームを走査することによりイオンを打ち込むため、大面積を処理するにはスループットに問題が生じる。したがって、ソースガスの利用効率、および大面積処理の点から、イオンドーピング装置で、イオン121を照射して、単結晶半導体基板110中に損傷領域115を形成することが好ましい。
損傷領域115を形成した後、図4(C)に示すように、第1絶縁層113の上面に第2絶縁層114を形成する。第2絶縁層114を形成する工程では、単結晶半導体基板110の加熱温度は、損傷領域115に添加した元素または分子が析出しない温度とし、その加熱温度は350℃以下が好ましい。言い換えると、この加熱温度は損傷領域115からガスが抜けない温度である。なお、損傷領域115を形成する前に第2絶縁層114を形成することもできる。この場合は、第2絶縁層114を形成するときのプロセス温度は、350℃以上にすることができる。
第2絶縁層114は、平滑で親水性の接合面を単結晶半導体基板110の表面に形成するための層である。そのため、第2絶縁層114の平均粗さRaが0.7nm以下が好ましく、0.4nm以下がより好ましい。また、第2絶縁層114の厚さは10nm以上200nm以下とすることができる。好ましい厚さは5nm以上500nm以下であり、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
第2絶縁層114には、化学的気相反応により形成される絶縁膜が好ましい。例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などを、第2絶縁層114として形成することができる。第2絶縁層114として、PECVD法で酸化シリコン膜を形成する場合には、ソースガスに有機シランガスおよび酸素(O)ガスを用いることが好ましい。ソースガスに有機シランを用いることで、プロセス温度が350℃以下で、平滑な表面を有する酸化シリコン膜を形成することができる。また、熱CVD法で、加熱温度が500℃以下200℃以上で形成されるLTO(低温酸化物、low temperature oxide)で形成することができる。LTOの形成には、シリコンソースガスにモノシラン(SiH)またはジシラン(Si)などを用い、酸素ソースガスにNOなどを用いることができる。
例えば、ソースガスにTEOSとOを用いて、酸化シリコン膜でなる第2絶縁層114を形成するための条件例としては、チャンバーに、流量15sccmでTEOSを導入し、流量750sccmでOを導入する。成膜圧力は100Pa、成膜温度300℃、RF出力300W、電源周波数13.56MHzが挙げられる。
また、図4(B)の工程と図4(C)の工程の順序を逆にすることもできる。すなわち、単結晶半導体基板110に、第1絶縁層113および第2絶縁層114を形成した後、損傷領域115を形成することもできる。この場合、第1絶縁層113と第2絶縁層114を同じ成膜装置で形成できる場合は、第1絶縁層113と第2絶縁層114の形成を連続して行うことが好ましい。
また、図4(B)の工程を行った後、図4(A)の工程と図4(C)の工程を行うこともできる。すなわち、単結晶半導体基板110にイオン121を照射して損傷領域115を形成した後、第1絶縁層113および第2絶縁層114を形成することもできる。この場合、第1絶縁層113と第2絶縁層114を同じ成膜装置で形成できる場合は、第1絶縁層113と第2絶縁層114の形成を連続して行うことが好ましい。また、損傷領域115を形成する前に、単結晶半導体基板110の表面を保護するために、単結晶半導体基板110を酸化処理して、表面に酸化膜を形成し、酸化膜を介してイオンを単結晶半導体基板110に照射することもできる。損傷領域115を形成した後はこの酸化膜を除去する。また、酸化膜を残した状態で、第1絶縁層113を形成することもできる。
次に、第1絶縁層113、損傷領域115および第2絶縁層114が形成された単結晶半導体基板110と支持基板100を洗浄する。この洗浄工程は、純水中での超音波洗浄で行うことができる。超音波洗浄はメガヘルツ超音波洗浄(メガソニック洗浄)が好ましい。超音波洗浄の後、単結晶半導体基板110および支持基板100の一方または両方をオゾン添加水で洗浄することは好ましい。オゾン添加水で洗浄することで、有機物の除去と、第2絶縁層114表面および支持基板100の親水性を向上させる表面活性化処理を行うことができる。また、オゾン添加水の他、酸素添加水、水素添加水、又は純水等で洗浄処理してもよい。このような洗浄処理をすることで、接合面を親水性にすることができ、接合面のOH基を増大させることができる。OH基の増大により水素結合による接合をより強固にすることが可能である。
また、第2絶縁層114の表面、および支持基板100の活性化処理には、オゾン添加水による洗浄の他、原子ビーム若しくはイオンビームの照射処理、プラズマ処理、若しくはラジカル処理で行うことができる。原子ビーム若しくはイオンビームを利用する場合には、アルゴン等の不活性ガス中性原子ビーム若しくは不活性ガスイオンビームを用いることができる。このような表面処理により、400℃以下の温度であっても異種材料間を接合することが容易となる。
図4(D)は接合工程を説明する断面図である。第2絶縁層114を介して、支持基板100と単結晶半導体基板110を密接させる。本実施形態の場合は、支持基板100表面と第2絶縁層114表面を密接させ、密接された部分が接合される。支持基板100表面と第2絶縁層114表面との接合の結合力は、初期の段階においてファン・デル・ワールス力が作用するものと考えられ、第2絶縁層114表面と支持基板100表面に圧力を加えると、密接部分に水素結合が形成され、第2絶縁層114表面と支持基板100表面とをより強固に結合させることができる。
よって、単結晶半導体基板110の端の一箇所に300〜15000N/cm程度の圧力を加える。この圧力は、1000〜5000N/cmが好ましい。圧力をかけた部分から第2絶縁層114と支持基板100とが接合しはじめ、接合部分が第2絶縁層114の全面におよぶ。その結果、支持基板100に単結晶半導体基板110が固定される。この接合工程は、加熱処理を伴わず、常温で行うことができるため、支持基板100に、ガラス基板のように耐熱温度が700℃以下の低耐熱性の基板を用いることが可能である。
支持基板100に単結晶半導体基板110を接合させた後、支持基板100と第2絶縁層114との結合力を増加させるための加熱処理または加圧処理を行うことが好ましい。この処理温度は、損傷領域115に亀裂を発生させない温度とし、室温以上400℃未満の温度範囲で処理することができる。また、この温度範囲で加熱しながら、支持基板100に単結晶半導体基板110を貼り合わせることで、支持基板100と第2絶縁層114との接合界面での結合力を強固にすることができる。また、加圧処理では、接合面に垂直な方向に圧力が加わるように行うことが好ましい。この加熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。
次いで、加熱処理を行い、損傷領域115で剥離を生じさせて、単結晶半導体基板110から単結晶半導体層117を分離する。図4(E)は、単結晶半導体基板110から単結晶半導体層117を分離する分離工程を説明する図である。118を付した要素は単結晶半導体層117が分離された単結晶半導体基板110を示している。
加熱処理を行うことで、温度上昇によって損傷領域115に形成されている微小な孔には、イオンドーピングで添加した元素が析出し、内部の圧力が上昇する。圧力の上昇により、損傷領域115の微小な孔に体積変化が起こり、損傷領域115に亀裂が生じるので、損傷領域115沿って単結晶半導体基板110が劈開される。第2絶縁層114は支持基板100に接合しているので、支持基板100上には単結晶半導体基板110から分離された単結晶半導体層117が固定される。単結晶半導体層117を単結晶半導体基板110から分離するための加熱処理の温度は、支持基板100の歪み点を越えない温度とする。
この加熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。
加熱炉は、抵抗発熱体などにより加熱された炉からの輻射を主として、被処理物を加熱する装置である。
RTA装置は、ランプ光を利用した加熱装置である。RTA装置として、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置がある。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、上記のランプから発する光による熱輻射、およびランプから発する光で気体を加熱し、加熱された気体からの熱伝導によって、被処理物を加熱する装置である。気体には、窒素、アルゴンなどの希ガスのような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。また、LRTA装置、GRTA装置には、ランプだけでなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。
マイクロ波加熱装置は、マイクロ波の輻射によって被処理物を加熱する装置である。マイクロ波加熱装置には、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。
RTA装置などの加熱装置を用いて、支持基板100に貼り付けられた単結晶半導体基板110の温度を400℃以上支持基板の歪み点以下の範囲に上昇させる。例えば、加熱温度の上限は650℃とすることができる。
GRTA装置を用いる場合は、例えば、加熱温度550℃以上650℃以下、処理時間0.5分以上60分以内とする。抵抗加熱装置を用いる場合は、加熱温度550℃以上650℃以下、処理時間2時間以上4時間以内とする。マイクロ波加熱装置を用いる場合は、例えば、周波数2.45GHzのマイクロ波を10分間以上20分間以内照射する。
抵抗発熱体を有する縦型炉を用いた加熱処理の具体的な処理方法を説明する。単結晶半導体基板110が貼り付けられた支持基板100を縦型炉のボートに載置する。ボートを縦型炉のチャンバーに搬入する。単結晶半導体基板110の酸化を抑制するため、まずチャンバー内を排気して真空状態とする。真空度は、5×10−3Pa程度とする。真空状態にした後、窒素をチャンバー内に供給して、チャンバー内を大気圧の窒素雰囲気にする。この間、温度を200℃に上昇させる。
チャンバー内を大気圧の窒素雰囲気にした後、温度200℃で2時間加熱する。その後、1時間かけて400℃に温度上昇させる。加熱温度400℃の状態が安定したら、1時間かけて600℃に温度上昇させる。加熱温度600℃の状態が安定したら、600℃で2時間加熱処理する。その後、1時間かけて、加熱温度を400℃に下げ、10分〜30分間後に、チャンバー内からボートを搬出する。大気雰囲気下で、ボート上の単結晶半導体基板118、および単結晶半導体層117が貼り付けられた支持基板100を冷却する。
上記の抵抗加熱炉を用いた加熱処理は、第2絶縁層114と支持基板100との結合力を強化するための加熱処理と、損傷領域115に分離を生じさせる加熱処理が連続して行われる。この2つの加熱処理を異なる装置で行う場合は、例えば、抵抗加熱炉において、処理温度200℃、処理時間2時間の加熱処理を行った後、貼り合わされた支持基板100と単結晶半導体基板110を炉から搬出する。次いで、RTA装置で、処理温度600℃以上700℃以下、処理時間1分以上30分以下の加熱処理を行い、単結晶半導体基板110を損傷領域115で分割させる。
700℃以下の低温処理で、第2絶縁層114と支持基板100を強固に接合させるためには、第2絶縁層114の表面、および支持基板の表面にOH基、水分子(HO)が存在することが好ましい。これは、第2絶縁層114と支持基板100との接合が、OH基や水分子が共有結合(酸素分子と水素分子の共有結合)や水素結合を形成することで開始するからである。
したがって、第2絶縁層114、支持基板100の表面を活性化して親水性とすることは好ましい。また、酸素または水素を含ませるような方法で、第2絶縁層114を形成することが好ましい。例えば、処理温度400℃以下のPECVD法により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などを形成することで水素を膜に含ませることができる。酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成するには、例えば、プロセスガスにSiHおよびNOを用いればよい。窒化酸化シリコン膜を形成するには、例えば、プロセスガスにSiH、NHおよびNOを用いればよい。窒化シリコン膜を形成するには、例えば、プロセスガスにSiH、およびNHを用いればよい。また、PECVD法で形成するときの原料に、TEOS(化学式Si(OC)のようなOH基を有する化合物を用いることが好ましい。
なお、プロセス温度が700℃以下であることを低温処理というのは、プロセス温度がガラス基板の歪み点以下の温度になるからである。対照的に、スマートカット(登録商標)で形成されるSOI基板では単結晶シリコン層と単結晶シリコンウエハを貼り付けるために800℃以上の加熱処理を行っており、ガラス基板の歪み点を超える温度での加熱処理を必要とするからである。
なお、図4(E)に示すように、単結晶半導体基板110の周辺部が支持基板100に接合しない場合が多い。これは、単結晶半導体基板110の周辺部が面取りされているため、または、単結晶半導体基板110を移動した際に第2絶縁層114の周辺部を傷つけたり汚れたりさせるため、支持基板100と第2絶縁層114とが密着しない単結晶半導体基板110の周辺部では損傷領域115が分離しにくいため、などの理由によるものと考えられる。そのため、支持基板100には、単結晶半導体基板110よりもサイズが小さい単結晶半導体層117が貼り付けられ、また、単結晶半導体基板118の周囲には凸部が形成され、その凸部上に、支持基板100に貼り付けられなかった第1絶縁層113b、第1絶縁層113aおよび第2絶縁層114が残っている場合がある。
支持基板100に密着された単結晶半導体層117には、損傷領域115の形成、および損傷領域115での劈開などによって、結晶性が損なわれている。つまり、加工前の単結晶半導体基板110には無かった転位などの結晶欠陥や、ダングリングボンドのようなミクロな結晶欠陥が単結晶半導体層117に形成されている。また、単結晶半導体層117の表面は、単結晶半導体基板110からの分離面であり、平坦性が損なわれている。単結晶半導体層117の結晶性を回復させるために、レーザビームを照射して、単結晶半導体層117を溶融させ、再結晶化させる。また、単結晶半導体層117の表面を平坦化するためにレーザビームを照射し、単結晶半導体層117を溶融させる。図5(A)は、レーザ照射処理工程を説明するための図面である。
図5(A)に示すように、レーザビーム122を単結晶半導体層117に対して走査しながら、レーザビーム122を単結晶半導体層117の分離面の全面に照射する。レーザビーム122の走査は、例えば、レーザビーム122を移動せずに、単結晶半導体層117が固定された支持基板100を移動する。矢印123は、支持基板100の移動方向を示す。
レーザビーム122を照射すると、単結晶半導体層117がレーザビーム122を吸収し、レーザビーム122が照射された部分が温度上昇する。この部分の温度が単結晶半導体基板110の融点以上の温度になると、溶融する。レーザビーム122が照射されなくなると、単結晶半導体層117の溶融部分の温度は下がり、やがて、溶融部分は凝固し、再結晶化する。レーザビーム122を走査することで、単結晶半導体層117全面にレーザビーム122を照射する。または、単結晶半導体層117の再単結晶化すべき領域のみ選択的にレーザビーム122を照射することもできる。
図5(B)は、レーザ照射工程後の半導体基板の構造を示す断面図であり、単結晶半導体層119は、再単結晶化された単結晶半導体層117である。また、図5(B)の外観図が図1である。
レーザ照射処理された単結晶半導体層119は、単結晶半導体層117よりも結晶性が向上される。または、レーザ照射処理によって平坦性を向上することができる。これは単結晶半導体層117を溶融させることで、単結晶半導体層中のダングリングボンドや、単結晶半導体層とバッファ層界面に存在する欠陥のようなミクロの欠陥を修復することができるからである。なお、単結晶半導体層の結晶性は、電子後方散乱回折像(EBSP;Electron Back Scatter Diffraction Pattern)の測定、X線回折像の測定、光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察、ならびにラマン分光スペクトルの測定などにより評価することができる。また、単結晶半導体層表面の平坦性は、原子間力顕微鏡による観察などにより評価することができる。
レーザビーム122の照射によって、単結晶半導体層117のレーザビーム122が照射されている領域を、部分溶融または完全溶融させる。なお、単結晶半導体層117が完全溶融状態であるとは、膜の表面から下面までの層全体が溶融されていることをいう。図5(A)の積層構造では、完全溶融状態とは、単結晶半導体層117の上面から第1絶縁層113との界面まで溶融され、液体状態になっていることをいう。他方、単結晶半導体層117を部分溶融させるとは、溶融されている深さが第1絶縁層113との界面(単結晶半導体層117の厚さ)よりも浅くなるように、単結晶半導体層117を溶融させることである。つまり、単結晶半導体層117が部分溶融状態であるとは、上層は溶融して液相となり、下層は溶けずに、固相の単結晶半導体のままである状態をいう。
レーザビーム122の照射により、単結晶半導体層117が部分溶融すると、液相となった半導体の表面張力により平坦化が進行する。同時に、支持基板100への熱の拡散により単結晶半導体層117の冷却が進み、単結晶半導体層117中には深さ方向に温度勾配が生じ、支持基板100側から、単結晶半導体層117表面へと固液界面が移動して、再結晶化する。いわゆる縦成長が起こる。また、この結晶化には下層の溶融しない領域を種として再結晶化が進行する。
下層の固相部分は単結晶であり、結晶方位が揃っているため、結晶粒界が形成されず、レーザ照射処理後の単結晶半導体層119は、結晶粒界の無い単結晶半導体層とすることができる。また、溶融された上層は、凝固することで再結晶化するが、下層の固相のまま残った単結晶半導体と結晶方位が揃った単結晶半導体が形成される。よって、主表面の面方位が(100)の単結晶シリコンウエハを単結晶半導体基板110に用いた場合、単結晶半導体層117の主表面の面方位は、(100)であり、レーザ照射処理によって部分溶融し、再結晶化された単結晶半導体層112の主表面の面方位は(100)になる。
また、レーザビーム122の照射により、単結晶半導体層117が完全溶融すると、液相となった半導体の表面張力により平坦化が進行する。また、完全溶融された領域は、凝固する過程で、溶融された領域と隣接している単結晶半導体から結晶成長し、横成長が起こる。溶融されていない部分は、単結晶であり、結晶方位が揃っているため、結晶粒界が形成されず、レーザ照射処理後の単結晶半導体層119を、結晶粒界の無い単結晶半導体層とすることができる。つまり、完全溶融された領域は、凝固することで再結晶化するが、隣接している溶融していない部分の単結晶半導体と結晶方位が揃った単結晶半導体が形成される。よって、主表面の面方位が(100)の単結晶シリコンウエハを単結晶半導体基板110に用いた場合、単結晶半導体層117の主表面の面方位は、(100)であり、レーザ照射処理によって完全溶融し、再結晶化された単結晶半導体層119の主表面の面方位は(100)になる。
レーザビーム122の照射よって、単結晶半導体層117を部分溶融または完全溶融させることで、表面が平坦な単結晶半導体層119を形成することができる。これは、単結晶半導体層117の溶融された部分は液体であるため、表面張力の作用によって、その表面積が最小になるように変形する。つまり、液体部分は凹部、および凸部が無くなるように変形し、この液体部分が凝固し、再結晶化するため、表面が平坦化された単結晶半導体層119を形成することができる。
単結晶半導体層119の表面を平坦化することで、単結晶半導体層119上に形成されるゲート絶縁膜の膜厚を5nm乃至50nm程度まで薄くすることが可能である。よって、ゲート電圧を抑え、なおかつ、高いオン電流のトランジスタを形成することができる。
従来のSOI基板の製造技術では、単結晶半導体層の平坦化には機械研磨が必要とされている。これに対して、本実施形態のレーザ照射処理は、単結晶半導体層の平坦化と結晶性の優れた単結晶半導体層の形成という2つの重要な処理を実現しており、従来のSOI基板の製造技術では全く想定されていない新しい技術である。
レーザビーム122を照射するときの単結晶半導体層117の温度は室温、または支持基板の歪み点以下の温度にすることができる。支持基板100に固定された単結晶半導体層117を加熱し、単結晶半導体層117の温度を室温よりも上昇させることができる。加熱温度は支持基板100の歪み点以下であり、200℃以上650℃以下とすることができる。
レーザビーム照射時に単結晶半導体層が固定された支持基板を加熱することで、単結晶半導体層の溶融に必要なレーザビームのエネルギーを低減することができる。したがって、レーザビームのビーム形状の幅(走査方向の長さ)を長くできるため、またはレーザビームのオーバーラップ率を小さくできるため、走査速度を速くすることができる。このことにより、1枚の基板を処理するタクトタイムが短くなるので、レーザ照射処理のスループットが向上する。レーザビームのエネルギーを低下できるのは、加熱によって、1ショットのパルスによって単結晶半導体層117が溶融している時間が延長されるからと考えられる。
レーザ発振器には、発振の仕方により、パルス発振、連続発振レーザ、疑似連続発振レーザパルスに分けることができる。単結晶半導体層117の溶融部分を再単結晶化させるには、パルス発振レーザを用いることが推奨される。パルス発振レーザを用いる場合は、レーザビームが1パルス(1ショット)照射されると、次のパルスが照射されるまでに、パルスが照射された領域は、溶融し、凝固して再結晶化する。つまり、1つのパルスが照射されて溶融された領域は、次のパルスが照射される時には再結晶化し、固相状態に戻っている。したがって、パルスレーザ発振から発振されたレーザビームによって溶融された領域が凝固するときは、溶融されていない単結晶から結晶成長し、単結晶構造となることが、最も安定な状態となる。
他方、連続発振レーザの場合は、レーザビームが間欠的に照射されるのではなく常時照射されるので、レーザビームの走査によって、溶融領域(液相領域)と固相領域の界面がその方向に移動する。そのため、溶融された部分が凝固するときに、結晶成長が均一になりにくく、結晶軸の方向が揃わず、粒界ができやすくなる。このことは、疑似連続発振レーザも同様である。
よって、レーザ照射工程では、パルス発振レーザを用いる方が、再現性良く単結晶半導体層117を再単結晶化することができる。パルス発振レーザには、繰り返し周波数が10MHz未満、好ましくは10kHz以下のレーザを用いることができる。繰り返し周波数を10MHz未満とすることで、レーザビームの1ショット毎に、次のショットが照射される前に照射領域を溶融、凝固させることができる。また、パルス発振レーザから照射されるレーザビームのパルス幅は10n秒以上500n秒以下とすることができる。
図5(A)のレーザ照射工程に用いるパルス発振レーザには、例えば、XeClレーザ、KrFレーザなどのエキシマレーザ、Arレーザ、Krレーザ等の気体レーザがある。また、固体レーザも用いることができ、例えば、YAGレーザ、YVOレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、KGWレーザ、KYWレーザ、Yレーザ等がある。レーザビームとしては、これらレーザ発振器の基本波、高調波(第2高調波、第3高調波、第4高調波など)を用いることができる。これらの固体レーザには、同じレーザ媒質を用いても、発振の仕方が連続発振、または疑似連続発振となる発振器もある。
また、レーザビーム122を発振するレーザ発振器は、その発振波長が、紫外光域乃至可視光域にあるものが選択される。レーザビーム122の波長は、単結晶半導体層117に吸収される波長とする。その波長は、レーザ光の表皮深さ(skin depth)などを考慮して決定することができる。例えば、波長は250nm以上700nm以下の範囲とすることができる。
レーザビーム122のエネルギーは、レーザビーム122の波長、レーザビーム122の表皮深さ、単結晶半導体層117厚などを考慮して決定することができる。パルス発振レーザを用いた場合、レーザビーム122のエネルギー密度は、例えば、300mJ/cm以上700mJ/cm以下の範囲とすることができる。
レーザビーム122の照射の雰囲気は、雰囲気を制御しない大気雰囲気でも、不活性気体雰囲気のいずれでもよい。大気雰囲気および不活性気体雰囲気の双方で、単結晶半導体層117の結晶性の回復および平坦化の効果があることが確認されている。また、大気雰囲気よりも不活性気体雰囲気が好ましいことが確認されている。窒素などの不活性気体雰囲気のほうが、大気雰囲気よりも単結晶半導体層117の平坦性を向上させる効果が高く、また、不活性気体雰囲気のほうが大気雰囲気よりもクラックのような変形が発生することが抑えられ、結晶欠陥の減少および平坦化を実現するためのレーザビーム122の使用可能なエネルギー範囲が広くなる。
不活性気体雰囲気中でレーザビーム122を照射するには、気密性のあるチャンバー内でレーザビーム122を照射すればよい。このチャンバー内に不活性気体を供給することで、不活性気体雰囲気中で、レーザビーム122を照射することができる。チャンバーを用いない場合は、単結晶半導体層117におけるレーザビーム122の被照射面に不活性気体を吹き付けながら、その被照射面にレーザビーム122を照射することで、不活性気体雰囲気でのレーザビーム122の照射を実現することができる。
不活性気体とは、レーザビームの照射工程で、単結晶半導体層の表面と反応して酸化膜を形成しない分子または原子の気体である。例えば、不活性気体には、窒素ガス(Nガス)、アルゴンやキセノンなどの希ガスなどがある。また、不活性気体の酸素濃度は30ppm以下であることが好ましく、10ppm以下がより好ましい。
また、レーザ照射処理を気密性のあるチャンバー内でおこなう場合は、チャンバー内を減圧し、真空状態とすることで、不活性気体雰囲気でレーザ照射処理を行うのと同じ効果を得ることができる。チャンバー内の圧力は12Pa以下、または、酸素分圧が30ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは、チャンバー内の圧力は4Pa以下、または酸素分圧は10ppm以下とする。
また、レーザビーム122を光学系を通過させて、被照射面でのレーザビーム122のビーム形状を線状または矩形状にする。このことにより、スループット良くレーザビーム122の照射を行うことができる。
レーザビーム122を単結晶半導体層117に照射する前に、単結晶半導体層117の表面に形成されている自然酸化膜などの酸化膜を除去する処理を行う。それは、単結晶半導体層117表面に酸化膜が存在する状態で、レーザビーム122を照射しても、平坦化の効果が十分に得られない場合があるためである。酸化膜の除去処理は、フッ酸で単結晶半導体層117を処理することで行うことができる。フッ酸による処理は、単結晶半導体層117の表面が撥水性を示すまで行うことが望ましい。撥水性があることで、単結晶半導体層117から酸化膜が除去されたことが確認できる。
図5(A)のレーザビーム122の照射工程は、次のように行うことができる。まず、単結晶半導体層117を1/100に希釈されたフッ酸で110秒間処理して、表面の酸化膜を除去する。次に、単結晶半導体層117が貼り付けられた支持基板100をレーザ照射装置のステージ上に配置する。単結晶半導体層117を加熱する場合は、ステージに設けられた抵抗加熱装置などの加熱手段により、単結晶半導体層117を200℃以上650℃以下の温度に加熱する。例えば、加熱温度を500℃とする。
レーザビーム122のレーザ発振器として、XeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:25n秒、繰り返し周波数60Hz)を用いる。光学系により、レーザビーム122の断面を300mm×0.34mmの線状に整形する。レーザビーム122を単結晶半導体層117に対して走査しながら、レーザビーム122を単結晶半導体層117に照射する。レーザビーム122の走査は、レーザ照射装置のステージを移動することで行うことができ、ステージの移動速度がレーザビームの走査速度に対応する。レーザビーム122の走査速度を調節して、単結晶半導体層117の同じ領域にレーザビーム122が1〜20ショット照射されるようにする。レーザビーム122のショット数は1以上11以下が好ましい。レーザビーム122を1ショット照射し、単結晶半導体層117を溶融させることで、再単結晶化させ、かつ表面を平坦化することが可能である。ショット数が小さいほど、レーザ照射処理のタクトタイムが短縮できる。
レーザビーム122の照射によって溶融させる加熱処理と、その後の溶融させない加熱処理によって、より完全な単結晶半導体層を得ることができる。このような優れた結晶性を有する単結晶半導体層112が固定された半導体基板10から、高いオン電流、高い電界効果移動度のトランジスタを形成することができる。
単結晶半導体層117にレーザビーム122を照射する前に、単結晶半導体層117をエッチングすることができる。このエッチングにより、単結晶半導体層117の分離面に残っている損傷領域115を除去することができる。損傷領域115を除去することで、レーザビーム122の照射による、表面の平坦化の効果、および結晶性の回復の効果を高めることができる。
このエッチングには、ドライエッチング法、またはウエットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法では、エッチングガスに、塩化硼素、塩化珪素または四塩化炭素などの塩化物ガス、塩素ガス、弗化硫黄、弗化窒素などの弗化物ガス、酸素ガスなどを用いることができる。ウエットエッチング法では、エッチング液に水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide、略称;TMAH)溶液を用いることができる。
このエッチングを行う場合も、単結晶半導体層117にレーザビーム122を照射する前に、エッチング処理された単結晶半導体層117表面に形成されている自然酸化膜などの酸化膜を除去する処理を行うことが好ましい。酸化膜の除去処理は、フッ酸で単結晶半導体層117を処理することで行うことができる。
レーザビーム122を照射した後、単結晶半導体層119を溶融させない温度で加熱する加熱処理を行う。図5(B)は、この加熱処理工程を説明するための断面図である。図5(B)には、電磁波124の輻射により単結晶半導体層119が加熱されることを示している。単結晶半導体層119の加熱は、電磁波124の輻射に限定されるものではなく、熱伝導により単結晶半導体層119を加熱することも可能である。もちろん、輻射と熱伝導の組み合わせにより、単結晶半導体層119を加熱することも可能である。
図5(C)は、加熱処理後の半導体基板の構造を示す断面図であり、単結晶半導体層112は、単結晶半導体層を溶融させない温度で加熱された単結晶半導体層119に対応する。また、図5(C)の外観図が図1である。
図5(B)の加熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。
単結晶半導体層119の欠陥などを修復するため、単結晶半導体層119の温度は400℃以上とする。また、この加熱温度は、単結晶半導体層119を溶融させない温度で、かつ支持基板100の歪み点以下の温度である。この加熱温度は500℃以上が好ましく、例えば、加熱温度は500℃以上650℃以下とすることができ、550℃以上に単結晶半導体層119を加熱することがより好ましい。
加熱処理の雰囲気は不活性気体雰囲気とすることができる。不活性気体とは、この加熱処理において単結晶半導体層の表面と反応して酸化膜を形成しない分子または原子の気体である。例えば、不活性気体には、窒素ガス(Nガス)、アルゴンやキセノンなどの希ガスなどがある。また、不活性気体雰囲気中の酸素濃度は30ppm以下であることが好ましく、10ppm以下がより好ましい。また、加熱処理の雰囲気を減圧状態(真空状態)にすることで、単結晶半導体層表面の酸化を防止することができる。圧力は1×10−3〜5×10−3Paとすることが好ましい。
加熱処理によって、単結晶半導体層112のライフタイムを、加熱処理を行っていない単結晶半導体層119よりも向上させることができる。この理由は明らかではないが、単結晶半導体層119を溶融させない加熱処理によって、レーザ照射工程で修復されなかった単結晶半導体層119内部のミクロな欠陥が修復されていること、バッファ層111と単結晶半導体層119との界面でのダングリングボンドが修復されていることではないかと考えられる。ライフタイムの向上の効果を得るため、加熱温度は400℃以上とし、500℃以上が好ましく、550℃以上がより好ましい。
半導体(シリコン)に光を照射すると、半導体中に電子および正孔(キャリア)が生成され、やがて電子と正孔が再結合し、消滅する。このキャリアが生成し、再結合して消滅するまでの平均寿命をライフタイムという。ライフタイムは、再結合ライフタイム、およびキャリアライフタイムとも呼ばれている。ライフタイムが長いほど、半導体中の欠陥、不純物が少ない。よってライフタイムが長い単結晶半導体層により、優れた電気特性を有し、かつ高信頼性のトランジスタを作製することができる。
このように、本実施形態では、レーザビーム122の照射による溶融させる加熱処理と、その後の溶融させない加熱処理によって、より完全な単結晶構造の単結晶半導体層112を形成することができる。このような優れた結晶性を有する単結晶半導体層112が固定された半導体基板10から、高いオン電流、高い電界効果移動度のトランジスタを形成することができる。
また、図4(B)の損傷領域115の形成に、イオンドーピング法で、ソースガスに水素ガスを用いて、水素イオンを単結晶半導体基板110に添加した場合、単結晶半導体基板110から分離された単結晶半導体層117にも水素が高濃度に含まれる。図5(A)のレーザ照射工程、図5(B)の加熱処理を行った後の単結晶半導体層112の水素濃度は、単結晶半導体層117よりも低くなるが、プロセス温度が700℃以下とすることで、5×1018原子/cm以上5×1020原子/cm以下とすることができる。その水素濃度は、1×1019原子/cm以上1×1020原子/cm以下が好ましい。水素濃度が高くなると、単結晶半導体層112の水素濃度が変動しやすくなり、半導体装置の信頼性を低下させる要因となる。
図5(B)の加熱処理を、例えば、抵抗加熱炉によって行う場合、単結晶半導体層119を処理温度500℃で1時間加熱した後、加熱温度を550℃以上650℃以下に上昇させ、この温度で4時間加熱する。あるいは、処理温度500℃で単結晶半導体層119を1時間加熱した後、加熱温度を600℃に上昇させ、600℃の温度で4時間加熱する。RTA装置で行う場合は、処理温度600℃以上700℃以下、処理時間0.5分以上30分以下の加熱処理を行う。
単結晶半導体層117にレーザビーム122を照射した後、単結晶半導体層119をエッチングして、薄膜化してもよい。単結晶半導体層119の厚さは、単結晶半導体層112から形成される素子の特性に合わせて決めることができる。支持基板100に貼り付けられた単結晶半導体層112の表面に、薄いゲート絶縁層を段差被覆性良く形成するには、単結晶半導体層119厚さは50nm以下とすることが望ましく、その厚さは50nm以下5nm以上とすればよい。この薄膜化工程は、図5(B)の加熱処理の前に行うことが好ましい。それは、薄膜化工程のエッチングによる単結晶半導体層119の損傷を図5(B)の加熱処理によって、回復することができるからである。
単結晶半導体層119を薄膜化するためのエッチングには、ドライエッチング法、またはウエットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法では、エッチングガスに、塩化硼素、塩化珪素または四塩化炭素などの塩化物ガス、塩素ガス、弗化硫黄、弗化窒素などの弗化物ガス、酸素ガスなどを用いることができる。ウエットエッチング法では、エッチング液にTMAH溶液を用いることができる。
図4(A)から図5(C)までの工程を700℃以下の温度で行うことができるため、支持基板100に歪み温度が700℃以下のガラス基板を用いることが可能である。よって、安価なガラス基板を使用できるため、半導体基板10の材料コストを低減することができる。
なお、本実施形態の方法を用いて、1枚の支持基板100に複数の単結晶半導体層112を貼り付けることもできる。単結晶基板110に対して、図4(A)〜図4(C)の工程を行い、図4(C)の構造の単結晶半導体基板110を複数枚形成する。そして、図4(D)の工程を複数回繰り返して、複数の単結晶半導体基板110を一枚の支持基板100に貼り付ける。そして、図4(E)〜図5(C)の工程を行うことで、図2に示すように、複数の単結晶半導体層112が貼り付けられた支持基板100でなる半導体基板20を作製することができる。
半導体基板20を作製するためには、支持基板100に300mm×300mm以上のガラス基板を用いることが好ましい。大面積ガラス基板として、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板が好適である。マザーガラス基板としては、例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)などのサイズの基板が知られている。
マザーガラス基板のような大面積な基板を支持基板100として用いることで、SOI基板の大面積化が実現できる。SOI基板の大面積化が実現すれば、1枚のSOI基板から多数のIC、LSI等のチップを製造することができ、1枚の基板から製造されるチップ数が増加するので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
図2の半導体基板20のように、支持基板100が、ガラス基板のような撓みやすく、脆い支持基板の場合、1枚の支持基板に貼り付けられた複数の単結晶半導体層112を、研磨処理で平坦化することは極めて困難である。本実施形態では、この平坦化処理をレーザビーム122の照射処理で行うため、支持基板100を損壊させるような力を加えることなく、かつ歪み点を超える温度で支持基板100を加熱することなく、1枚の支持基板100に固定された複数の単結晶半導体層117の平坦化を可能にする。すなわち、レーザビームの照射処理は、図2のような複数の単結晶半導体層112を固定した半導体基板20の作製工程においては、非常に重要な処理である。すなわち、本実施形態はレーザビームの照射処理について、従来のSOI基板の製造技術では、全く想定されておらず、極めて新しい概念であることを示している。
本実施形態で示したように、本発明は、レーザ照射処理によって単結晶半導体層を溶融させることによる再結晶化および平坦化を行うレーザ処理工程、および、その後の溶融させない加熱処理により、水素を5×1018原子/cm以上の濃度で含み、かつ、ライフタイムが向上した単結晶半導体層をガラス基板上に形成する方法に関して、従来にない革新的な技術を提供するものである。また、本実施形態は、水素を5×1018原子/cm以上の濃度で含む単結晶半導体層をガラス基板に固定するための技術を提供するものである。本実施形態の半導体基板を用いて、トランジスタを含む半導体装置を形成することで、高性能、多機能の半導体装置を作製することができる。
なお、本実施形態の半導体基板の作製方法は、他の実施形態の半導体基板の作製方法、および他の実施形態の半導体装置の作製方法と組み合わせることができる。
(実施形態2)
本実施形態では、バッファ層を介して単結晶半導体層が支持基板に固定されている半導体基板およびその作製方法について説明する。本実施形態では、支持基板にバッファ層を形成して、半導体基板を作製する方法を説明する。
図6は、半導体基板の構成例を示す斜視図である。半導体基板30は、支持基板100に単結晶半導体層112が貼り付けられている。単結晶半導体層112は、単結晶半導体基板を薄くすることで形成された層であり、バッファ層111およびバッファ層101を介して支持基板100に固定されている。半導体基板30はいわゆるSOI構造の基板であり、絶縁層上に単結晶半導体層が形成されている基板である。支持基板100に形成されたバッファ層101の表面と単結晶半導体層112に形成されたバッファ層111の表面が接合することで、単結晶半導体層112が支持基板100に固定されている。
バッファ層101は、単層構造の膜または膜を2層以上積層した多層構造の膜であり、バッファ層101を構成する膜は、支持基板100の表面に成膜処理によって形成された膜でなる。本実施形態ではバッファ層101は2層構造の膜であり、支持基板100側から、絶縁層103、絶縁層104が積層されている。本実施形態では、支持基板100に密接して形成された絶縁層103をバリア層として機能させている。また、バッファ層111は、単層構造の膜または膜を2層以上積層した多層構造の膜であり、バッファ層111を構成する膜は、単結晶半導体基板の表面に成膜処理によって形成された膜でなる。本実施形態では、バッファ層111は単層構造であり、絶縁層131でなる。
以下、図8〜図10を参照して、図6に示す半導体基板30の作製方法を説明する。
まず、支持基板100にバッファ層101を形成する工程を説明する。図8は、バッファ層101を形成する工程を説明するための断面図である。バッファ層101を構成する膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化ゲルマニウム膜、窒化ゲルマニウム膜、酸化窒化ゲルマニウム膜、窒化酸化ゲルマニウム膜などのシリコンまたはゲルマニウムを組成に含む絶縁膜を用いることができる。また、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの金属の酸化物でなる絶縁膜、窒化アルミニウムなどの金属の窒化物でなる絶縁膜、酸化窒化アルミニウム膜などの金属の酸化窒化物でなる絶縁膜、窒化酸化アルミニウム膜などの金属の窒化酸化物でなる絶縁膜を用いることもできる。バッファ層101を構成する絶縁膜は、CVD法、スパッタ法などの方法により形成することができる。
バッファ層101には、ナトリウムが単結晶半導体層112に侵入することを防ぐためのバリア層を含むことが好ましい。バリア層は1層でも2層以上でもよい。例えば、支持基板100にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物を含むような基板を用いた場合、支持基板100が加熱されたりすると、このような不純物が支持基板100から単結晶半導体層112に拡散するおそれがある。よって、バッファ層101にバリア層を形成することで、このようなアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物が単結晶半導体層112に移動することを防止することができる。バリア層として機能する膜には、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などがある。このような膜を含ませることで、バッファ層101をバリア層として機能させることができる。
例えば、バッファ層101を単層構造とする場合は、バリア層として機能する膜でバッファ層101を形成することが好ましい。この場合、厚さ5nm以上200nm以下の窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜で、単層構造のバッファ層101を形成することができる。
バッファ層101を、バリア層を1層含む2層構造の膜とする場合は、支持基板100に密接して形成される膜に、ナトリウムなどの不純物をブロッキングするためのバリア層で構成する。本実施形態では、絶縁層103をバリア層として形成する絶縁膜で形成する。絶縁層103は、厚さ5nm〜200nmの窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜で形成することができる。
バリア層として機能するこれらの膜は、不純物の拡散を防止するブロッキング効果が高いが、内部応力が高い。そのため、絶縁層103と密接して形成される絶縁層104は、バッファ層101の応力を緩和する効果のある膜を形成することが好ましい。このような絶縁膜には、酸化シリコン膜および酸化窒化シリコン膜などがある。絶縁層104の厚さは5nm以上300nm以下とすることができる。絶縁層104の上面は接合面となるため、その平均粗さRaが0.7nm以下が好ましく、0.4nm以下がより好ましい。また、絶縁層104の厚さは10nm以上200nm以下とすることができる。好ましい厚さは5nm以上500nm以下であり、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
例えば、絶縁層103は、プロセスガスにSiHおよびNOを用いてPECVD法で形成した酸化窒化シリコン膜で形成することができる。また、絶縁層104として、プロセスガスに有機シランガスと酸素を用いて、PECVD法で酸化シリコン膜を形成することができる。
例えば、PECVD法で、窒化酸化シリコンでなる絶縁層103、酸化窒化シリコンでなる絶縁層104を形成する場合、支持基板100をPECVD装置のチャンバーに搬入する。そして、絶縁層103を形成するためのプロセスガスとしてSiH、NO、NHおよびHおよびNOをチャンバーに供給し、このプロセスガスのプラズマを生成し、窒化酸化シリコン膜を支持基板100上に形成する。次に、チャンバーに導入するガスを絶縁層104形成用のプロセスガスに変更する。ここでは、SiHおよびNOを用いる。これらの混合ガスのプラズマを生成して、窒化酸化シリコン膜上に酸化窒化シリコン膜を連続して形成する。また、複数のチャンバーを有するPECVD装置を用いる場合は、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜と異なるチャンバーで形成することもできる。もちろん、チャンバーに導入するガスを変更することで、下層に酸化シリコン膜を形成することもできるし、上層に窒化シリコン膜を形成することもできる。
上記のように絶縁層103と絶縁層104を連続して形成することで、スループット良く、複数の支持基板100にバッファ層101を形成することができる。また、大気に触れさせることなく絶縁層103と絶縁層104を形成できるので、絶縁層103と絶縁層104の界面が大気によって汚染されることを防止することができる。
次に、図9を用いて、単結晶半導体基板110を処理する方法を説明する。まず、実施形態1と同様に、単結晶半導体基板110を洗浄し、清浄にする。そして、図9(A)に示すように、単結晶半導体基板110表面に保護膜132を形成する。イオン照射工程で、単結晶半導体基板110が金属などの不純物に汚染されることを防止する、照射されるイオンの衝撃で単結晶半導体基板110の表面が損傷することを防止するなどの目的のために、保護膜132を形成する。この保護膜132は、CVD法などにより、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどの絶縁材料を堆積することで形成できる。また、単結晶半導体基板110を酸化するまたは窒化することで、保護膜132を形成することができる。例えば、単結晶半導体基板110を酸化して、酸化膜でなる保護膜132を形成するには、熱酸化処理(ドライ酸化処理、水蒸気酸化処理)や、オゾン添加水による酸化処理によって形成することができる。ドライ酸化処理の場合、酸化雰囲気中にハロゲンを含むガスを添加することが好ましい。ハロゲンを含むガスとして、HCl、HF、NF、HBr、Cl、ClF、BCl、F、Brなどから選ばれた一種類又は複数種類のガスを用いることができる。
次に、図9(B)に示すように、保護膜132を介して、電界で加速されたイオンでなるイオン121を単結晶半導体基板110に照射して、単結晶半導体基板110の表面から所定の深さの領域に、損傷領域115を形成する。この工程は、実施形態1の損傷領域115の形成方法と同様に行うことができる。
損傷領域115を形成した後、保護膜132を除去する。次に、図9(C)に示すように、単結晶半導体基板110上面にバッファ層111を構成する絶縁層131を形成する。絶縁層131は、図4(A)の第1絶縁層113aと同様に形成することができる。また、絶縁層131は、単結晶半導体基板110を酸化処理して形成することもできる。なお、酸化処理のプロセス温度は、損傷領域115に添加した元素または分子が析出しない温度でとし、その加熱温度は350℃以下が好ましい。このような低温の酸化処理には、オゾン添加水による酸化処理、プラズマ処理または高密度プラズマ処理による酸化処理などを用いることができる。
絶縁層131は、平滑で親水性の接合面を単結晶半導体基板110の表面に形成するための層である。そのため絶縁層131の平均面粗さRaが0.7nm以下が好ましく、0.4nm以下がより好ましい。また、絶縁層131の厚さは10nm以上200nm以下とすることができる。好ましい厚さは5nm以上500nm以下であり、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
絶縁層131には、化学的気相反応により形成される絶縁膜で形成することができる。例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などを、絶縁層131として形成することができる。絶縁層131として、PECVD法で酸化シリコン膜を形成する場合には、ソースガスに有機シランガスおよび酸素(O)ガスを用いることが好ましい。ソースガスに有機シランを用いることで、プロセス温度が350℃以下で、平滑な表面を有する酸化シリコン膜を形成することができる。また、熱CVD法で、加熱温度が500℃以下200℃以上で形成されるLTO(低温酸化物、low temperature oxide)で形成することができる。LTOの形成には、シリコンソースガスにモノシラン(SiH)またはジシラン(Si)などを用い、酸素ソースガスに一酸化二窒素(NO)などを用いることができる。
例えば、ソースガスにTEOSとOを用いて、酸化シリコン膜でなる絶縁層131を形成するための条件例としては、チャンバーに、流量15sccmでTEOSを導入し、流量750sccmでOを導入する。成膜圧力は100Pa、成膜温度は300℃、RF出力は300W、電源周波数は13.56MHzとする例が挙げられる。
次に、損傷領域115およびバッファ層111が形成された単結晶半導体基板110と、バッファ層101が形成された支持基板100を洗浄する。この洗浄工程は、純水による超音波洗浄で行うことができる。超音波洗浄はメガヘルツ超音波洗浄(メガソニック洗浄)が好ましい。超音波洗浄の後、単結晶半導体基板110と支持基板100の両方または一方をオゾン添加水で洗浄することが好ましい。オゾン添加水で洗浄することで、有機物の除去と、バッファ層101、およびバッファ層111の親水性を向上させる表面活性化処理を行うことができる。
また、バッファ層101、およびバッファ層111の表面活性化処理は、オゾン添加水による洗浄の他原子ビーム若しくはイオンビームの照射処理、プラズマ処理、若しくはラジカル処理で行うことができる。原子ビームまたはイオンビームの照射処理を行う場合は、アルゴン等の希ガスを励起することで、中性原子ビームまたはイオンビームを生成する。
図9(D)は接合工程を説明する断面図である。この接合工程は、図4(D)の接合工程と同様に実施することができる。バッファ層101およびバッファ層111を介して、支持基板100と単結晶半導体基板110を密接させて、バッファ層101表面とバッファ層111の表面を接合させ、支持基板100に単結晶半導体基板110を固定する。
支持基板100に単結晶半導体基板110を貼り合わせた後、バッファ層101とバッファ層111との接合界面での結合力を増加させるための加熱処理を行うことが好ましい。この処理温度は、損傷領域115に亀裂を発生させない温度とし、200℃以上450℃以下の温度範囲で処理することができる。
次いで、加熱処理を行い、損傷領域115で剥離を生じさせて、単結晶半導体基板110から単結晶半導体層117を分離する。図9(E)は、単結晶半導体基板110から単結晶半導体層117を分離する分離工程を説明する図である。この工程は、図4(E)の分離工程と同様に行うことができる。
加熱処理を行うことで、損傷領域115の微小な孔に体積変化が起こり、損傷領域115に亀裂が生じるので、損傷領域115沿って単結晶半導体基板110が分離され、支持基板100上には、図9(E)に示すように、単結晶半導体基板110から分離された単結晶半導体層117が支持基板100に固定される。
次に、図10(A)に示すように、支持基板100に密着された単結晶半導体層117に、レーザビーム122を照射する。このレーザ照射工程は実施形態1(図5(A)参照)のレーザ照射工程と同様に行うことができる。レーザビーム122を単結晶半導体層117に対して走査しながら、レーザビーム122を単結晶半導体層117の分離面に照射して、単結晶半導体層117を溶融させることで、再単結晶化され、かつ表面が平坦化された単結晶半導体層119を形成する。
レーザビーム122を照射する際に、支持基板100に固定された単結晶半導体層117を加熱し、単結晶半導体層117の温度を上昇させる。加熱温度は200℃以上支持基板100の歪み点以下とすることができる。加熱温度は400℃以上が好ましく、450℃以上がより好ましい。具体的には、加熱温度は、400℃以上670℃以下が好ましく、450℃以上650℃以下がより好ましい。
単結晶半導体層を加熱することで、単結晶半導体層中のダングリングボンドや、単結晶半導体層と下地膜の界面の欠陥などのミクロの欠陥を除去することができ、より完全な単結晶半導体層を得ることができる。転位などの結晶欠陥や、ダングリングボンドなどのミクロの結晶欠陥が少ない単結晶半導体層112が固定された半導体基板30から、高いオン電流、高い電界効果移動度のトランジスタを形成することができる。
なお、単結晶半導体層117にレーザビーム122を照射する前に、単結晶半導体層117をエッチングすることができる。このエッチングにより、単結晶半導体層117の分離面に残っている損傷領域115を除去することが好ましい。損傷領域115を除去することで、レーザビーム122の照射による、表面の平坦化の効果、および結晶性の回復の効果を高めることができる。
このエッチングには、ドライエッチング法、またはウエットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法では、エッチングガスに、塩化硼素、塩化珪素または四塩化炭素などの塩化物ガス、塩素ガス、弗化硫黄、弗化窒素などの弗化物ガス、酸素ガスなどを用いることができる。ウエットエッチング法では、エッチング液に水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide、略称;TMAH)溶液を用いることができる。
単結晶半導体層117にレーザビーム122を照射した後、単結晶半導体層112をエッチングして、薄膜化してもよい。単結晶半導体層112の厚さは、単結晶半導体層112から形成される素子の特性に合わせて決めることができる。支持基板100に貼り付けられた単結晶半導体層112の表面に、薄いゲート絶縁層を段差被覆性良く形成するには、単結晶半導体層112厚さは50nm以下とすることが望ましく、その厚さは50nm以下5nm以上とすればよい。
単結晶半導体層112を薄膜化するためのエッチングには、ドライエッチング法、またはウエットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法では、エッチングガスに、塩化硼素、塩化珪素または四塩化炭素などの塩化物ガス、塩素ガス、弗化硫黄、弗化窒素などの弗化物ガス、酸素ガスなどを用いることができる。ウエットエッチング法では、エッチング液にTMAH溶液を用いることができる。
次に、単結晶半導体層119の欠陥の修復などを行うため、単結晶半導体層119を溶融させない温度で、加熱処理する。図10(B)には、電磁波124の輻射により単結晶半導体層119を加熱することを示す断面図である。この加熱処理は、実施形態1の加熱処理(図5(B)参照)と同様に行うことができる。400℃以上の加熱処理により、単結晶半導体層112のライフタイムを向上させることができる。
以上の工程を経て、単結晶半導体層112がバッファ層101、バッファ層111を介して支持基板100に固定された半導体基板30が作製される(図10(C)、図6参照)。
また、図9(B)の損傷領域115の形成に、イオンドーピング法で、ソースガスに水素ガスを用いて、水素イオンを単結晶半導体基板110に添加した場合、単結晶半導体基板110から分離された単結晶半導体層117にも水素が高濃度に含まれる。図10(B)の加熱処理を行った後の単結晶半導体層112の水素濃度は、単結晶半導体層117よりも低くなるが、プロセス温度が700℃以下とすることで、5×1018原子/cm乃至5×1020原子/cmとすることができる。単結晶半導体層112の水素濃度は、1×1019原子/cm以上1×1020原子/cm以下が好ましい。水素濃度が高くなると、単結晶半導体層112の水素濃度が変動しやすくなり、半導体装置の信頼性を低下させる要因となる。
図9(A)から図10(B)までの工程を700℃以下の温度で行うことができるため、支持基板100に耐熱温度が700℃以下のガラス基板を用いることが可能である。よって、安価なガラス基板を使用できるため、半導体基板30の材料コストを低減することができる。
実施形態1の半導体基板10(図1参照)と異なり、本実施形態の半導体基板30は、支持基板100表面がバッファ層101で覆われている。よって、半導体基板30のバッファ層101にバリア層を設けることで、実施形態1の半導体基板10よりも、単結晶半導体層112の汚染を防止する効果を高めることができる。
なお、本実施形態の方法を用いて、1枚の支持基板100に複数の単結晶半導体層112を貼り付けることもできる。図8に示すように、バッファ層101を形成した支持基板100を用意する。バッファ層101には、バリア層として機能する層を含ませることが好ましい。図9(A)〜図9(C)までの工程を繰り返して、バッファ層111および損傷領域115が形成された単結晶半導体基板110を複数枚用意する。そして、バッファ層101が形成された支持基板100に図9(C)の構造の単結晶半導体基板110を複数枚貼り付ける。次いで、図9(E)〜図10(B)の工程を行うことで、図7に示すように、一枚の支持基板100に、複数の単結晶半導体層112が貼り付けられた半導体基板40を作製することができる。
半導体基板40を作製するためには、支持基板100に300mm×300mm以上のガラス基板を用いることが好ましい。大面積ガラス基板として、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板が好適である。マザーガラス基板としては、例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)などのサイズの基板が知られている。
マザーガラス基板のような大面積な基板を支持基板100として用いることで、SOI基板の大面積化が実現できる。SOI基板の大面積化が実現すれば、1枚のSOI基板から多数のIC、LSI等のチップを製造することができ、1枚の基板から製造されるチップ数が増加するので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
図7の半導体基板40のように、ガラス基板のような撓みやすく、脆い支持基板の場合、1枚の支持基板に貼り付けられた複数の単結晶半導体層を、研磨処理で平坦化することは極めて困難である。本実施形態では、この平坦化処理をレーザビーム122の照射処理で行うため、支持基板100を損壊させるような力を加えることなく、かつ歪み点を超える温度で支持基板100を加熱することなく、1枚の支持基板100に固定された単結晶半導体層117の平坦化を可能にする。すなわち、レーザビームの照射処理は、図7のような複数の単結晶半導体層を固定した半導体基板40の作製工程においては、非常に重要な処理である。
本実施形態で示したように、本発明は、レーザ照射処理によって単結晶半導体層を溶融させることによる再結晶化および平坦化を行うレーザ処理工程、および、その後の溶融させない加熱処理により、水素を5×1018原子/cm以上の濃度で含み、かつ、ライフタイムが向上した単結晶半導体層をガラス基板上に形成する方法に関して、従来にない革新的な技術を提供するものである。また、本実施形態は、水素を5×1018原子/cm以上の濃度で含む単結晶半導体層をガラス基板に固定するための技術を提供するものである。本実施形態の半導体基板を用いて、トランジスタを含む半導体装置を形成することで、高性能、多機能の半導体装置を作製することができる。
なお、本実施形態の半導体基板の作製方法は、他の実施形態の半導体基板の作製方法、および他の実施形態の半導体装置の作製方法と組み合わせることができる。
(実施形態3)
本実施形態では、バッファ層を介して単結晶半導体層が支持基板に固定されている半導体基板およびその作製方法について説明する。本実施形態では、1枚の半導体基板から、複数の単結晶半導体層を支持基板に固定する方法を説明する。
まず、単結晶半導体基板110に実施形態1の図4(A)〜図4(D)の工程を行う。加工された単結晶半導体基板110の断面図を図11(A)に示す。
次に、損傷領域115で分割することによって、複数に分割された単結晶半導体層を支持基板に固定するため、バッファ層111および単結晶半導体基板110をエッチングして、溝145を形成する。図11(B)は、溝145が形成された単結晶半導体基板110の断面図であり、図11(E)は、平面図である。図11(E)の切断線x−xによる断面図が図11(B)である。
単結晶半導体基板140は、溝145が形成された単結晶半導体基板110に対応する。単結晶半導体基板140は複数の凸部を有する。溝145の底面は、損傷領域115よりも深くし、凸部に損傷領域115が含まれるようにする。このことにより、分割された単結晶半導体層を支持基板に固定することができる。なお、バッファ層111付きの単結晶半導体基板140を単結晶半導体基板141と呼ぶこととする。
次に、単結晶半導体基板141と支持基板100を洗浄した後、図11(C)に示すように、単結晶半導体基板141と支持基板を接合する。この工程は実施形態1と同様に行うことができる。
次に、加熱処理を行って、図11(D)に示すように、単結晶半導体基板140の損傷領域115で分離を生じさせる。単結晶半導体基板141に溝145が形成されていることから、複数の単結晶半導体層147がバッファ層111を介して支持基板100に固定される。単結晶半導体基板148は、単結晶半導体層147が分離された後の単結晶半導体基板140である。単結晶半導体基板140の分割のための加熱処理は、実施形態1と同様に行うことができる。
次に、図12(A)に示すように、支持基板100に密着された単結晶半導体層147に、レーザビーム122を照射する。このレーザ照射工程は実施形態1(図5(A)参照)のレーザ照射工程と同様に行うことができる。レーザビーム122を単結晶半導体層147に対して走査しながら、レーザビーム122を単結晶半導体層147の分離面に照射する。レーザビーム122の照射によって単結晶半導体層147は溶融されることで、再単結晶化し、かつ平坦化され、単結晶半導体層149が形成される。また、実施形態1と同様、レーザビーム照射工程の前に、単結晶半導体層147をエッチング処理することもできる。
次に、単結晶半導体層149の欠陥の修復などを行うため、単結晶半導体層149を溶融させない温度で、加熱処理する。図12(B)には、電磁波124の輻射により単結晶半導体層149を加熱することを示す断面図である。なお、単結晶半導体層149の加熱は電磁波124の輻射によるものに限定されることない。この加熱処理は、実施形態1の加熱処理(図5(B)参照)と同様に行うことができる。400℃以上の加熱処理により、単結晶半導体層142のライフタイムを向上させることができる。また、実施形態1と同様、加熱処理工程の前に、単結晶半導体層149をエッチング処理することもできる。
以上の工程を経て、複数の単結晶半導体層142がバッファ層111を介して支持基板100に固定された半導体基板50が作製される(図12(C)参照)。図12(D)は、半導体基板50の平面図であり、図12(C)は図12(D)の切断線x−xによる断面図である。
また、本実施形態でも損傷領域115の形成に、イオンドーピング法で、ソースガスに水素ガスを用いて、水素イオンを単結晶半導体基板110に添加した場合、単結晶半導体基板110から分離された単結晶半導体層147にも水素が高濃度に含まれる。図12(C)の加熱処理を行った単結晶半導体層142の水素濃度は、単結晶半導体層147よりも低くなるが、プロセス温度を700℃以下とすることで、単結晶半導体層142に5×1018原子/cm以上5×1020原子/cm以下の水素を含ませることができる。単結晶半導体層142の水素濃度は、1×1019原子/cm以上1×1020原子/cm以下が好ましい。水素濃度が高くなると、単結晶半導体層142の水素濃度が変動しやすくなり、半導体装置の信頼性を低下させる要因となる。
本実施形態で示したように、本発明は、レーザ照射処理によって単結晶半導体層を溶融させることによる再結晶化および平坦化を行うレーザ処理工程、および、その後の溶融させない加熱処理により、ライフタイムが向上した単結晶半導体層をガラス基板上に形成する方法に関して、従来にない革新的な技術を提供するものである。また、本実施形態は、水素を5×1018原子/cm以上の濃度で含む単結晶半導体層をガラス基板に固定するための技術を提供するものである。本実施形態の半導体基板を用いて、トランジスタを含む半導体装置を形成することで、高性能、多機能の半導体装置を作製することができる。
なお、本実施形態の半導体基板の作製方法は、他の実施形態に示す半導体基板の作製方法、および半導体装置の作製方法と組み合わせることができる。例えば、本実施形態でも、実施形態2のように、支持基板100にバッファ層101を形成することもできる。
(実施形態4)
本実施形態では、バッファ層を介して単結晶半導体層が支持基板に固定されている半導体基板およびその作製方法について説明する。本実施形態では、複数の単結晶半導体基板を支持基板に貼り合わせて、複数の単結晶半導体層を支持基板に固定する方法を説明する。
図13(A)は、半導体基板の構成例を示す断面図であり、図13(B)は平面図である。図13(B)の切断線x−xによる断面図が図13(A)である。本実施形態では、1枚の支持基板100に、バッファ層111を介して25個の単結晶半導体層152が固定されている。単結晶半導体層152は、単結晶半導体基板110から分離された層である。その他の構成については、実施形態1の半導体基板10と同様である。以下、図14(A)〜図16(B)を用いて、本実施形態の半導体基板の作製方法を説明する。
まず、単結晶半導体基板110に実施形態1の図4(A)〜図4(D)の工程を行う。加工された単結晶半導体基板110の断面図を図14(A)に示す。
次に、図14(B)に示すように、バッファ層111および単結晶半導体基板110の周囲をエッチングして、周囲に段差155を形成する。損傷領域115で分離することによって、複数の分離された単結晶半導体層152を支持基板100に固定するため、段差155を形成する。図14(B)は、段差155が形成された単結晶半導体基板110の断面図であり、図14(C)は、平面図である。図14(C)の切断線x−xによる断面図が図14(B)である。
単結晶半導体基板150は、段差155が形成された単結晶半導体基板110に対応する。単結晶半導体基板150は損傷領域115を含む凸部を有する。つまり、段差155の底部は、損傷領域115よりも深くなるように単結晶半導体基板110をエッチングする。このことにより、半導体基板60において、隣接する単結晶半導体層152の間隔を狭くすることが容易になる。なお、バッファ層111付きの単結晶半導体基板150を単結晶半導体基板151と呼ぶこととする。
次に、単結晶半導体基板151と支持基板100を洗浄した後、図15(A)に示すように、複数の単結晶半導体基板151と支持基板100を接合する。この工程は実施形態1と同様に行うことができるが、実施形態1と異なる点は、単結晶半導体基板151を複数接合することである。複数の単結晶半導体基板151は隣接させず、1枚おきに接合させる。
次に、加熱処理を行って、図15(B)に示すように、単結晶半導体基板151の損傷領域115で分離を生じさせる。この加熱処理は、実施形態1と同様に行うことができる。単結晶半導体基板158は、単結晶半導体層157が分離された後の単結晶半導体基板150である。
さらに、図15(C)に示すように、支持基板100において、単結晶半導体層157の間に、複数の単結晶半導体基板151を接合する。そして、加熱処理を行って、図15(D)に示すように、単結晶半導体基板151の損傷領域115で分離を生じさせる。この加熱処理は、実施形態1と同様に行うことができる。図15(A)〜図15(D)の工程を繰り返すことで、1枚の支持基板100に複数の単結晶半導体層157を隣接して固定することができる。単結晶半導体基板151の周囲に段差155を形成することで、図15(C)に示すように、単結晶半導体層157に接触させることなく、単結晶半導体基板151を接合することが容易にできる。なお、本実施形態では、全ての単結晶半導体基板151に段差155を形成する必要はない。例えば、図15(A)においては、段差155が形成されていない、図14(A)の構造の単結晶半導体基板110を貼り付けることもできる。段差155を形成することで、隣接する2つの単結晶半導体層157の間隔を狭くすることが容易になる。
次に、図16(A)に示すように、支持基板100に密着された複数の単結晶半導体層157に、レーザビーム122を照射する。このレーザ照射工程は実施形態1(図5(A)参照)のレーザ照射工程と同様に行うことができる。レーザビーム122を単結晶半導体層157に対して走査しながら、レーザビーム122を単結晶半導体層157の分離面に照射する。レーザビーム122の照射によって、単結晶半導体層157は溶融され、再結晶化して、結晶性が向上し、且つ表面が平坦化された単結晶半導体層159が形成される。また、実施形態1と同様、レーザ照射処理工程の前に、単結晶半導体層157をエッチング処理することができる。
次に、単結晶半導体層159の欠陥の修復などを行うため、単結晶半導体層159を溶融させない温度で、加熱処理する。図16(B)には、電磁波124の輻射により単結晶半導体層159を加熱することを示す断面図である。加熱処理は電磁波124の輻射によるものに限定されることない。この加熱処理は、実施形態1の加熱処理(図5(B)参照)と同様に行うことができる。400℃以上の加熱処理により、単結晶半導体層159のライフタイムを向上させ、単結晶半導体層152を得ることができる。また、実施形態1と同様、加熱処理工程の前に、単結晶半導体層159をエッチング処理することができる。
以上の工程を経て、複数の単結晶半導体層152がバッファ層111を介して支持基板100に固定された半導体基板60が作製される(図13(A)、図13(B)参照)。
また、本実施形態でも損傷領域115の形成に、イオンドーピング法で、ソースガスに水素ガスを用いて、水素イオンを単結晶半導体基板110に添加した場合、単結晶半導体基板110から分離された単結晶半導体層157にも水素が高濃度に含まれる。図16(B)の加熱処理を行った単結晶半導体層152の水素濃度は、単結晶半導体層157よりも低くなるが、プロセス温度を700℃以下とすることで、単結晶半導体層152に5×1018原子/cm以上5×1020原子/cm以下の水素を含ませることができる。単結晶半導体層152の水素濃度は、1×1019原子/cm以上1×1020原子/cm以下が好ましい。水素濃度が高くなると、単結晶半導体層152の水素濃度が変動しやすくなり、半導体装置の信頼性を低下させる要因となる。
本実施形態で示したように、本発明は、レーザ照射処理単結晶半導体層を溶融させることによる再結晶化および平坦化を行うレーザ処理工程、および、その後の溶融させない加熱処理により、水素を5×1018原子/cm以上の濃度で含み、かつ、ライフタイムが向上した単結晶半導体層をガラス基板上に形成する方法に関して、従来にない革新的な技術を提供するものである。また、本実施形態は、水素を5×1018原子/cm以上の濃度で含む単結晶半導体層をガラス基板に固定するための技術を提供するものである。本実施形態の半導体基板を用いて、トランジスタを含む半導体装置を形成することで、高性能、多機能の半導体装置を作製することができる。
なお、本実施形態の半導体基板の作製方法は、他の実施形態の半導体基板の作製方法、および他の実施形態の半導体装置の作製方法と組み合わせることができる。例えば、本実施形態でも、実施形態2のように、支持基板100にバッファ層101を形成することもできる。あるいは、実施形態1のように、単結晶半導体基板110上に3層構造のバッファ層111を形成することもできる。また、単結晶半導体基板151の代わりに、実施形態3の単結晶半導体基板141(図11(B)参照)を支持基板100に貼り合わせることもできる。
(実施形態5)
単結晶半導体層が分離された単結晶半導体基板は再生処理して、単結晶半導体基板110として再利用することができる。本実施形態では、再生処理方法について説明する。本実施形態では、実施形態1で使用された単結晶半導体基板118の再生処理方法を説明する。
図4(E)に示すように、単結晶半導体基板118の周囲には、支持基板100に貼り付けられなかった部分が残っている。この部分に、支持基板100に貼り付けられなかった、第1絶縁層113b、第1絶縁層113aおよび第2絶縁層114が残っている。
まず、第1絶縁層113b、第1絶縁層113aおよび第2絶縁層114を除去するエッチング処理を行う。例えば、これらの膜が、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、または窒化酸化シリコンなどで形成されている場合、フッ酸を用いたウエットエッチング処理で、第1絶縁層113b、第1絶縁層113aおよび第2絶縁層114を除去することができる。
次に、単結晶半導体基板118をエッチング処理して、その周囲の凸部および単結晶半導体層117の分離面を除去する。単結晶半導体基板118のエッチング処理はウエットエッチング処理が好ましく、エッチング液に水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide、略称;TMAH)溶液を用いることができる。
単結晶半導体基板118をエッチング処理した後、その表面を研磨し、表面を平坦化する。研磨処理には、機械研磨、または化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、略称:CMP)などを用いることができる。単結晶半導体基板の表面を平滑にするため、1μm〜10μm程度研磨することが望ましい。研磨後は、単結晶半導体基板表面に研磨粒子などが残るため、フッ酸洗浄やRCA洗浄を行う。
以上の工程を経ることにより単結晶半導体基板118を、実施形態1〜4の単結晶半導体基板110として再利用することができる。単結晶半導体基板118を再利用することで、半導体基板10の材料コストを削減することができる。
実施形態2〜4の半導体基板の製造方法で使用された単結晶半導体基板も、本実施形態の方法で再生処理することができる。
(実施形態6)
本実施形態では、本発明に係る半導体基板を用いた半導体装置、およびその作製方法について説明する。本実施形態では、本発明に係る半導体基板を用いた半導体装置の一例として、トランジスタについて説明する。複数のトランジスタを組み合わせることで、各種の半導体装置が形成される。以下、図17〜図19の断面図を用いて、トランジスタの作製方法を説明する。なお、本実施形態では、nチャネル型のトランジスタとpチャネル型のトランジスタを同時に作製する方法を説明する。
まず、半導体基板を用意する。本実施形態では、図1の半導体基板10を用いる。つまり、絶縁表面を有する支持基板100上に、バッファ層111を介して単結晶半導体層112が固定された半導体基板を用いる。なお、トランジスタを作製する半導体基板は、図1の構成に限定されるものではなく、本発明に係る半導体基板を用いることができる。
図17(A)に示すように、支持基板100上の単結晶半導体層112をエッチングにより所望の形状に加工する(パターニングする)ことで、単結晶半導体層603と単結晶半導体層604とを形成する。単結晶半導体層603からp型トランジスタが形成され、単結晶半導体層604からn型トランジスタが形成される。なお、実施形態3の半導体基板50(図12(C)、(D)参照)を用いた場合は、単結晶半導体層142をエッチングすることで単結晶半導体層603と単結晶半導体層604とを形成する。
単結晶半導体層603と単結晶半導体層604には、閾値電圧を制御するために、ドナーまたはアクセプタとなる元素を添加してもよい。アクセプタとなる元素はp型不純物元素であり、硼素、アルミニウム、ガリウムなどがある。また、ドナーとなる元素はn型不純物元素であり、リン、砒素などがある。例えば、アクセプタ元素としてボロンを添加する場合、5×1016cm−3以上1×1017cm−3以下の濃度で添加すればよい。閾値電圧を制御するための不純物の添加は、単結晶半導体層112に対して行ってもよいし、単結晶半導体層603と単結晶半導体層604に対して行ってもよい。また、閾値電圧を制御するための不純物の添加を、単結晶半導体基板110に対して行ってもよい。または、単結晶半導体基板110に不純物を添加した後、さらに、閾値電圧を微調整するために、単結晶半導体層112に不純物を添加してもよい。または、単結晶半導体層112から単結晶半導体層603および単結晶半導体層604を形成した後、単結晶半導体層603と単結晶半導体層604に不純物元素を添加してもよい。
例えば、単結晶半導体基板110に弱いp型の単結晶シリコン基板を用いた場合を例に、この不純物元素の添加方法の一例を説明する。まず、単結晶半導体層112をエッチングする前に、単結晶半導体層112全体にボロンを添加する。このボロンの添加は、p型トランジスタの閾値電圧を調節することを目的とする。ドーパントガスにBを用い、1×1016〜1×1017/cmの濃度でボロンを添加する。ボロンの濃度は、活性化率などを考慮して決定される。たとえば、ボロンの濃度は6×1016/cmとすることができる。次に、単結晶半導体層112をエッチングして、単結晶半導体層603、604を形成する。そして、単結晶半導体層604のみにボロンを添加する。この2回目のボロンの添加は、n型トランジスタの閾値電圧を調節することを目的とする。ドーパントガスにBを用い、1×1016〜1×1017/cmの濃度でボロンを添加する。たとえば、ボロンの濃度は6×1016/cmとすることができる。
なお、単結晶半導体基板110に、p型トランジスタ又はn型トランジスタの一方の閾値電圧に適した導電型および抵抗を有する基板が用いることができる場合は、閾値制御をするための不純物添加の工程を1回にすることができ、単結晶半導体層603または単結晶半導体層604の一方に閾値電圧の制御のための不純物元素を添加すればよい。
次に図17(B)に示すように、単結晶半導体層603と単結晶半導体層604を覆うように、ゲート絶縁膜606を形成する。ゲート絶縁膜606は、プロセス温度を350℃以下で、PECVD法により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜または窒化シリコン膜などを1層、または2層以上積層して形成することができる。また、高密度プラズマ処理を行うことにより単結晶半導体層603と単結晶半導体層604の表面を酸化または窒化することで形成した酸化物膜または窒化物膜をゲート絶縁膜606とすることができる。高密度プラズマ処理は、例えばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスとを用いて行う。この場合プラズマの励起をマイクロ波により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、単結晶半導体層の表面を酸化または窒化することにより、1〜20nm、望ましくは5〜10nmの絶縁膜が単結晶半導体層に接するように形成される。厚さ5〜10nmの絶縁膜をゲート絶縁膜606として用いることができる。
次に図17(C)に示すように、ゲート絶縁膜606上に導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、単結晶半導体層603と単結晶半導体層604の上方に電極607を形成する。導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることができる。導電膜の材料には、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることができる。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いてもよい。または、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を、導電膜として用いてもよい。
また、本実施形態では電極607を単層の導電膜で形成しているが、本実施形態はこの構成に限定されない。電極607は積層された複数の導電膜で形成されていてもよい。電極607を2層構造とする場合、2つの導電膜の材料の組み合わせとして、1層目に窒化タンタルまたはタンタル(Ta)を、2層目にタングステン(W)を用いることができる。上記例の他に、窒化タングステンとタングステン、窒化モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型を付与する不純物がドーピングされた珪素とニッケルシリサイド、n型を付与する不純物がドーピングされたSiとWSix等も用いることができる。
また、電極607を、3つ以上の導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜との積層構造を採用するとよい。
なお導電膜をエッチングして、電極607を形成する際に、エッチングに用いるマスクとして、レジストの代わりに酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜等をマスクとして用いてもよい。この場合、酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜等をエッチングする工程が加わるが、エッチング時におけるマスクの膜減りがレジストよりも少ないため、所望の幅を有する電極607を形成することができる。またマスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極607を形成してもよい。
なお液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
また導電膜をエッチングする方法としては、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、マスクの形状によっても、テーパー形状の角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素及び四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄及び弗化窒素などのフッ素系ガス、又は酸素を適宜用いることができる。
次に図17(D)に示すように、電極607をマスクとして一導電型を付与する不純物元素を単結晶半導体層603、単結晶半導体層604に添加する。本実施形態では、単結晶半導体層603にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加し、単結晶半導体層604にn型を付与する不純物元素(例えばリンまたはヒ素)を添加する。この工程は、単結晶半導体層603にソース領域、またはドレイン領域となる不純物領域を形成し、単結晶半導体層604には、高抵抗領域として機能する不純物領域を形成するための工程である。
なお、p型を付与する不純物元素を単結晶半導体層603に添加するときには、p型を付与する不純物元素が添加されないように、単結晶半導体層604はマスク等で覆う。他方、n型を付与する不純物元素を単結晶半導体層604に添加するときには、n型を付与する不純物元素が添加されないように、単結晶半導体層603はマスク等で覆う。或いは、先に単結晶半導体層603および単結晶半導体層604にp型もしくはn型を付与する不純物元素のいずれか一方を添加した後、一方の半導体膜のみに選択的により高い濃度でp型もしくはn型のうちの他方を付与する不純物元素のいずれか一方を添加するようにしてもよい。この不純物の添加工程により、単結晶半導体層603にp型の高濃度不純物領域608が形成され、単結晶半導体層604には、n型の低濃度不純物領域609が形成される。また、単結晶半導体層603、604において、それぞれ、電極607と重なる領域はチャネル形成領域610、611となる。
次に、図18(A)に示すように、電極607の側面にサイドウォール612を形成する。サイドウォール612は、例えば、ゲート絶縁膜606および電極607を覆うように新たに絶縁膜を形成し、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより、新たに形成された該絶縁膜を部分的にエッチングすることで形成することができる。この異方性エッチングにより、新たに形成された絶縁膜が部分的にエッチングされて、電極607の側面にサイドウォール612が形成される。なおこの異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜606も部分的にエッチングされる。サイドウォール612を形成するための絶縁膜は、PECVD法やスパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、1層または2層以上積層して形成することができる。本実施形態では、膜厚100nmの酸化シリコン膜をPECVD法によって形成する。酸化シリコン膜のエッチングガスには、CHFとヘリウムの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール612を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
次に図18(B)に示すように、電極607およびサイドウォール612をマスクとして単結晶半導体層604にn型を付与する不純物元素を添加する。この工程は、単結晶半導体層604にソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域を形成するための工程である。この工程では、単結晶半導体層603はマスク等で覆い、単結晶半導体層604にn型を付与する不純物元素を添加する。
上記不純物元素の添加により、電極607、サイドウォール612がマスクとなり、単結晶半導体層604に一対のn型の高濃度不純物領域614が自己整合的に形成される。次に、単結晶半導体層603を覆うマスクを除去した後、加熱処理を行い、単結晶半導体層603に添加したp型を付与する不純物元素、および単結晶半導体層604に添加したn型を付与する不純物元素を活性化する。図17(A)〜図18(B)に示す一連の工程により、pチャネル型トランジスタ617、およびnチャネル型トランジスタ618が形成される。
なお、ソース領域およびドレイン領域の抵抗を下げるために、単結晶半導体層603の高濃度不純物領域608、単結晶半導体層604の高濃度不純物領域614をシリサイド化して、シリサイド層を形成してもよい。単結晶半導体層603、604に金属を接触させ、加熱処理によって、半導体層中のシリコンと金属とを反応させてシリサイド化合物を生成することで、シリサイド化を行うことができる。この金属にはコバルトまたはニッケルが好ましく、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、Hf(ハフニウム)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。単結晶半導体層603、単結晶半導体層604の厚さが薄い場合には、この領域の単結晶半導体層603、単結晶半導体層604の底部までシリサイド反応を進めてもよい。シリサイド化のための加熱処理には、抵抗加熱炉、RTA装置、マイクロ波加熱装置、またはレーザ照射装置を用いることができる。
次に図18(C)に示すように、pチャネル型トランジスタ617、nチャネル型トランジスタ618を覆うように絶縁膜619を形成する。絶縁膜619として、水素を含む絶縁膜を形成する。本実施形態では、モノシラン、アンモニア、NOを含むソースガスを用いて、PECVD法で形成した膜厚600nm程度の窒化酸化シリコン膜を形成する。これは、水素を絶縁膜619に含ませることで、絶縁膜619から水素を拡散させて、単結晶半導体層603、単結晶半導体層604の未結合手を終端させることができるからである。また、絶縁膜619を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がpチャネル型トランジスタ617、nチャネル型トランジスタ618へ侵入するのを防ぐことができる。具体的に絶縁膜619として、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などを用いるのが望ましい。
次に、pチャネル型トランジスタ617、nチャネル型トランジスタ618を覆うように、絶縁膜619上に絶縁膜620を形成する。絶縁膜620は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることができる。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、またはアリール基のうち少なくとも1種を有していてもよい。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜620を形成してもよい。絶縁膜620は、その表面をCMP法などにより平坦化させてもよい。
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち、少なくとも1種を有していてもよい。
絶縁膜620の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップコート、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
次に、窒素雰囲気中で、400℃〜450℃程度(例えば、410℃)の加熱処理を1時間程度行い、絶縁膜619から水素を拡散させ、単結晶半導体層603および単結晶半導体層604の未結合手を水素で終端する。なお、単結晶半導体層112は、非晶質シリコン膜を結晶化した多結晶シリコン膜とくらべて非常に欠陥密度が小さいため、この水素による終端処理を短時間にすることができる。
次に、図19に示すように、単結晶半導体層603と単結晶半導体層604がそれぞれ一部露出するように絶縁膜619および絶縁膜620にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形成は、CHFとHeの混合ガスを用いたドライエッチング法で行うことができるが、これに限定されるものではない。そして、該コンタクトホールを介して単結晶半導体層603と単結晶半導体層604に接する導電膜621、622を形成する。導電膜621はpチャネル型トランジスタ617の高濃度不純物領域608に接続されている。導電膜622はnチャネル型トランジスタ618の高濃度不純物領域614に接続されている。
導電膜621、622は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。具体的に導電膜621、622として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等を用いることができる。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いてもよい。導電膜621、622は、上記金属が用いられた膜を単層または複数積層させて形成することができる。
アルミニウムを主成分とする合金の例として、アルミニウムを主成分としニッケルを含むものが挙げられる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方とを含むものも例として挙げることができる。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜621、622を形成する材料として最適である。特にアルミニウムシリコン(Al−Si)膜の形状をエッチングで加工する場合は、エッチング用のマスクを形成する際のレジストベークにおけるヒロックの発生をアルミニウム膜に比べて防止することができる。また、珪素(Si)の代わりに、アルミニウム膜に0.5%程度のCuを混入させてもよい。
導電膜621、622は、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物を用いて形成された膜である。アルミニウムシリコン(Al−Si)膜を間に挟むようにバリア膜を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、単結晶半導体層603と単結晶半導体層604上に薄い酸化膜ができていたとしても、バリア膜に含まれるチタンがこの酸化膜を還元し、導電膜621、622と、単結晶半導体層603および単結晶半導体層604とがそれぞれ良好なコンタクトをとることができる。またバリア膜を複数積層するようにして用いてもよい。その場合、例えば、導電膜621、622を下層からTi、窒化チタン、Al−Si、Ti、窒化チタンの5層構造とすることができる。
また導電膜621、622として、WFガスとSiHガスから化学気相成長法で形成したタングステンシリサイドを用いてもよい。また、WFを水素還元して形成したタングステンを、導電膜621、622として用いてもよい。
図19には、pチャネル型トランジスタ617およびnチャネル型トランジスタ618の上面図と、この上面図の切断線A−A’に沿った断面図が共に示されている。なお、図19の上面図では導電膜621、622、絶縁膜619、絶縁膜620を省略した図を示している。
本実施形態では、pチャネル型トランジスタ617とnチャネル型トランジスタ618が、それぞれゲートとして機能する電極607を1つずつ有する場合を例示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明で作製されるトランジスタは、ゲートとして機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造のトランジスタとすることができる。また、このトランジスタは、ゲートプレナー構造のトランジスタとすることができる。
なお、本発明の半導体基板が有する半導体層は、単結晶半導体基板を薄片化した層であるため、結晶配向のばらつきがない。そのため、本発明の半導体基板を用いて作製される複数のトランジスタの閾値電圧や移動度などの電気的特性のばらつきを小さくすることができる。また、結晶粒界が殆どないため、結晶粒界に起因するトランジスタのリーク電流を抑え、また、半導体装置の省電力化を実現することができる。したがって、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
レーザ結晶化により得られる多結晶の半導体膜からトランジスタを作製する場合、高い移動度を得るために、レーザ光の走査方向を考慮して、トランジスタの半導体膜のレイアウトを決める必要があったが、本発明の半導体基板はその必要がないため、半導体装置の設計における制約が少ない。
(実施形態7)
本実施形態では、本発明に係る半導体基板を用いた半導体装置、およびその作製方法について説明する。本実施形態では、本発明に係る半導体基板を用いた半導体装置の一例として、トランジスタについて説明する。複数のトランジスタを組み合わせることで、各種の半導体装置が形成される。以下、図20〜図22の断面図を用いて、トランジスタの作製方法を説明する。なお、本実施形態では、nチャネル型のトランジスタとpチャネル型のトランジスタを同時に作製する方法を説明する。
まず、図20(A)に示すように、半導体基板を準備する。本実施形態では、図1の半導体基板10を用いる。つまり、絶縁表面を有する支持基板100上に、バッファ層111を介して単結晶半導体層112が固定された半導体基板を用いる。なお、トランジスタを作製する半導体基板は、図1の構成に限定されるものではなく、本発明に係る半導体基板を用いることができる。
なお、単結晶半導体層112には、nチャネル型電界効果トランジスタ及びpチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に合わせて、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物元素(アクセプタとなる不純物元素)、若しくはリン、砒素などのn型不純物元素(ドナーとなる不純物元素)を添加することが好ましい。すなわち、nチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に対応してp型不純物元素を添加し、pチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に対応してn型不純物元素を添加して、所謂ウェル領域を形成する。不純物イオンのドーズ量は1×1012ions/cm乃至1×1014ions/cmとするのが好ましい。さらに、電界効果トランジスタのしきい値電圧を制御する場合には、これらのウェル領域にp型若しくはn型不純物元素を添加すればよい。
次に、図20(B)に示すように、単結晶半導体層112をエッチングして、半導体素子の配置に合わせて島状に分離した単結晶半導体層651、単結晶半導体層652を形成する。本実施形態では、単結晶半導体層651からnチャネル型のトランジスタを作製し、単結晶半導体層652からpチャネル型のトランジスタを作製する。なお、実施形態3の半導体基板50(図12(B)、(C)参照)を用いた場合は、単結晶半導体層142をエッチングすることで単結晶半導体層651、単結晶半導体層652を形成する。
次に、図20(C)に示すように、単結晶半導体層651、単結晶半導体層652上に、ゲート絶縁層653、ゲート電極を形成する導電層654、及び導電層655を順に形成する。
ゲート絶縁層653は、CVD法、スパッタリング法、又はALE法等により、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層等の絶縁層を用いて、単層構造又は積層構造で形成する。
また、ゲート絶縁層653は、単結晶半導体層651、単結晶半導体層652に対してプラズマ処理を行うことにより、表面を酸化又は窒化することで形成してもよい。この場合のプラズマ処理はマイクロ波(代表的な周波数は2.45GHz)を用いて励起したプラズマによるプラズマ処理も含むものとする。例えばマイクロ波で励起され、電子密度が1×1011/cm以上1×1013/cm以下、且つ電子温度が0.5eV以上1.5eV以下のプラズマを用いた処理も含むものとする。このようなプラズマ処理を適用して単結晶半導体層表面の酸化処理又は窒化処理を行うことにより、薄くて緻密な膜を形成することが可能である。また、単結晶半導体層表面を直接酸化するため、界面特性の良好な膜を得ることができる。また、ゲート絶縁層653は、CVD法、スパッタリング法、又はALE法により形成した膜に対してマイクロ波を用いたプラズマ処理を行うことで形成してもよい。
なお、ゲート絶縁層653は単結晶半導体層651、単結晶半導体層652との界面を形成するので、ゲート絶縁層653のうち単結晶半導体層651、および単結晶半導体層652と接する層は、酸化シリコン層、または酸化窒化シリコン層で形成することが好ましい。これは、窒化シリコン層又は窒化酸化シリコン層のように酸素よりも窒素の含有量が多い膜を形成すると、トラップ準位が形成され界面特性が問題となる恐れがあるからである。
ゲート電極を形成する導電層は、タンタル、窒化タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、又はニオブ等から選択された元素、またはこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体材料でなる膜を用いて、CVD法やスパッタリング法により、単層膜又は積層膜で形成する。積層膜とする場合は、異なる導電材料を用いて形成することもできるし、同一の導電材料を用いて形成することもできる。本形態では、ゲート電極を形成する導電層を、導電層654及び導電層655の2層構造で形成する例を示す。
ゲート電極を形成する導電層を、導電層654及び導電層655の2層の積層構造とする場合は、例えば、窒化タンタル層とタングステン層、窒化タングステン層とタングステン層、窒化モリブデン層とモリブデン層の積層膜を形成することができる。なお、窒化タンタル層とタングステン層との積層膜とすると、両者のエッチングの選択比が取りやすく好ましい。なお、例示した2層の積層膜において、先に記載した膜がゲート絶縁層653上に形成される膜とすることが好ましい。ここでは、導電層654は、20nm乃至100nmの厚さで形成する。導電層655は、100nm乃至400nmの厚さで形成する。なお、ゲート電極は3層以上の積層構造とすることもでき、その場合は、モリブデン層とアルミニウム層とモリブデン層の積層構造を採用するとよい。
次に、導電層655上にレジストマスク656、レジストマスク657を選択的に形成する。そして、レジストマスク656、レジストマスク657を用いて第1のエッチング処理及び第2のエッチング処理を行う。
まず、レジストマスク656、レジストマスク657を用いた第1のエッチング処理により導電層654及び導電層655を選択的にエッチングして、単結晶半導体層651上に、導電層658及び導電層659を形成し、単結晶半導体層652上に導電層660及び導電層661を形成する(図20(D)参照)。
次に、レジストマスク656、レジストマスク657を用いた第2のエッチング処理により導電層659及び導電層661の端部をエッチングして、導電層662及び導電層663を形成する(図20(E)参照)。なお、導電層662及び導電層663は導電層658及び導電層660よりも幅(キャリアがチャネル形成領域を流れる方向(ソース領域とドレイン領域を結ぶ方向)に平行な方向の長さ)が小さくなるように形成する。このようにして、導電層658及び導電層662からなる2層構造のゲート電極665、並びに導電層660及び導電層663からなる2層構造のゲート電極666を形成する。
第1のエッチング処理及び第2のエッチング処理に適用するエッチング法は適宜選択すればよいが、エッチング速度を向上するにはECR(Electron Cyclotron Resonance)方式やICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)方式などの高密度プラズマ源を用いたドライエッチング装置を用いればよい。第1のエッチング処理および第2のエッチング処理のエッチング条件を適宜調節することで、導電層658、660、及び導電層662、663の側面を所望のテーパー形状とすることができる。所望のゲート電極665、666を形成した後、レジストマスク656、657は除去すればよい。
次に、ゲート電極665、ゲート電極666をマスクとして、単結晶半導体層651及び単結晶半導体層652にアクセプタまたはドナーとなる不純物元素668を添加する。単結晶半導体層651には、導電層658及び導電層662をマスクとして自己整合的に一対の不純物領域669が形成される。また、単結晶半導体層652には、導電層660及び導電層663をマスクとして自己整合的に一対の領域670が形成される(図21(A)参照)。
不純物元素668としては、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型不純物元素を添加する。ここでは、nチャネル型トランジスタの高抵抗領域を形成するため、不純物元素668としてn型不純物元素であるリンを添加する。また、不純物領域669に、1×1017atoms/cm乃至5×1018atoms/cm程度の濃度でリンが含まれるように、リンを添加することとする。
次に、nチャネル型トランジスタのソース領域、およびドレイン領域となる不純物領域を形成するため、単結晶半導体層651を部分的に覆うようにレジストマスク671を形成し、単結晶半導体層652を覆うようにレジストマスク672を選択的に形成する。そして、レジストマスク671をマスクとして、単結晶半導体層651にアクセプタまたはドナーとなる不純物元素673を添加して、単結晶半導体層651に一対の不純物領域675を形成する(図21(B)参照)。
ここでは、不純物元素673としては、n型不純物元素であるリンを単結晶半導体層651に添加し、添加されるリンの濃度を5×1019atoms/cm乃至5×1020atoms/cmとすることとする。不純物領域675はソース領域又はドレイン領域として機能する。不純物領域675は導電層658及び導電層662と重ならない領域に形成される。
また、単結晶半導体層651において、不純物領域676は、不純物領域669において不純物元素673が添加されなかった領域である。不純物領域676は、不純物領域675よりも不純物濃度が低く、高抵抗領域またはLDD領域として機能する。単結晶半導体層651において、導電層658および導電層662と重なる領域にチャネル形成領域677が形成される。
なお、LDD領域とは、チャネル形成領域と、高濃度に不純物元素を添加して形成するソース領域またはドレイン領域との間に形成された低濃度に不純物元素を添加した領域のことである。LDD領域を設けると、ドレイン領域近傍の電界を緩和してホットキャリア注入による劣化を防ぐという効果がある。また、ホットキャリアによるオン電流値の減少を防ぐため、ゲート絶縁層を介してLDD領域をゲート電極と重ねて配置させた構造(「GOLD(Gate−drain Overlapped LDD)構造」とも呼ぶ)としてもよい。
次に、レジストマスク671及びレジストマスク672を除去した後、pチャネル型トランジスタのソース領域およびドレイン領域を形成するため、単結晶半導体層651を覆うようにレジストマスク679を形成する。そして、レジストマスク679、導電層660及び導電層663をマスクとして不純物元素680を添加して、単結晶半導体層652に一対の不純物領域681と、一対の不純物領域682と、チャネル形成領域683を形成する(図21(C)参照)。
不純物元素680は、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物元素が用いられる。ここではp型不純物元素である硼素を1×1020atoms/cm乃至5×1021atoms/cm程度含まれるように添加するものとする。
単結晶半導体層652において、不純物領域681は導電層660及び導電層663と重ならない領域に形成され、ソース領域又はドレイン領域として機能する。不純物領域681に、ここではp型不純物元素である硼素を1×1020atoms/cm乃至5×1021atoms/cm程度含まれるようする。
不純物領域682は、導電層660と重なり、導電層663と重ならない領域に形成されており、不純物元素680が導電層660を貫通して、単結晶半導体層652に添加された領域である。不純物領域670はn型の導電性を示すため、不純物領域682がp型の導電性を有するように、不純物元素680を添加する。不純物領域682に含まれる不純物元素680の濃度を調節することで、不純物領域682をソース領域又はドレイン領域として機能させることができる。または、LDD領域として機能させることもできる。
単結晶半導体層652において、導電層660および導電層663と重なる領域にチャネル形成領域683が形成される。
次に、層間絶縁層を形成する。層間絶縁層は、単層構造又は積層構造で形成することができるが、ここでは絶縁層684及び絶縁層685の2層の積層構造で形成する(図22(A)参照)。
層間絶縁層としては、CVD法やスパッタリング法により、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層等を形成することができる。また、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル若しくはエポキシ等の有機材料、シロキサン樹脂等のシロキサン材料、又はオキサゾール樹脂などを用いて、スピンコート法などの塗布法により形成することができる。なお、シロキサン材料とは、Si−O−Si結合を含む材料に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。有機基にはフルオロ基が含まれていてもよい。オキサゾール樹脂は、例えば、感光性ポリベンゾオキサゾール等である。感光性ポリベンゾオキサゾールは、誘電率が低く(常温1MHzで誘電率2.9)、耐熱性が高く(示差熱天秤(TG/DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)で昇温5℃/minで熱分解温度550℃)、吸水率が低い(常温24時間で0.3wt%)材料である。オキサゾール樹脂は、ポリイミド等の比誘電率(3.2〜3.4程度)と比較すると、比誘電率が低いため(2.9程度)、寄生容量の発生が抑制され、半導体装置を高速で動作させることができる。
例えば、絶縁層684として窒化酸化シリコン層を膜厚100nmで形成し、絶縁層685として酸化窒化シリコン層を膜厚900nmで形成する。また、絶縁層684及び絶縁層685を、プラズマCVD法を適用して連続成膜する。なお、層間絶縁層は3層以上の積層構造とすることもできる。また、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層又は窒化シリコン層と、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ等の有機材料、シロキサン樹脂等のシロキサン材料、又はオキサゾール樹脂を用いて形成した絶縁層との積層構造とすることもできる。
次に、層間絶縁層(本形態では絶縁層684及び絶縁層685)にコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールにソース電極又はドレイン電極として機能する導電層686を形成する(図22(B)参照)。
コンタクトホールは、単結晶半導体層651に形成された不純物領域675、単結晶半導体層652に形成された不純物領域681に達するように、絶縁層684及び絶縁層685に選択的に形成する。
導電層686は、アルミニウム、タングステン、チタン、タンタル、モリブデン、ニッケル、ネオジムから選ばれた一種の元素または当該元素を複数含む合金からなる単層膜または積層膜を用いることができる。例えば、当該元素を複数含む合金からなる導電層として、チタンを含有したアルミニウム合金、ネオジムを含有したアルミニウム合金などを形成することができる。また、積層膜とする場合、例えば、アルミニウム層若しくは上述したようなアルミニウム合金層を、チタン層で挟持する構成とすることができる。
図22(B)に示すように、半導体基板10を用いて、nチャネル型トランジスタおよびpチャネル型トランジスタを作製することができる。
(実施形態8)
本実施形態では、本発明に係る半導体基板を用いた半導体装置、およびその作製方法について説明する。複数のトランジスタを組み合わせることで、各種の半導体装置が形成される。図23を用いて、本実施形態では、半導体基板10を用いた半導体装置の作製方法の一例としてトランジスタを作製する方法を説明する。なお、本実施形態では、nチャネル型のトランジスタとpチャネル型のトランジスタを同時に作製する方法を説明する。
図23(A)に示すように、支持基板100上に、バッファ層111、単結晶半導体層112が形成された半導体基板を用意する。バッファ層111は3層構造であり、バリア層となる第1絶縁層を含んでいる。なお、図1に示す構成の半導体基板10を適用する例を示すが、本明細書で示すその他の構成の半導体基板も適用できる。
単結晶半導体層112は、nチャネル型電界効果トランジスタ及びpチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に合わせて、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型不純物元素を添加された不純物領域(チャネルドープ領域)を有している。
保護層804をマスクとしてエッチングを行い、露呈している単結晶半導体層112及びその下方のバッファ層111の一部を除去する。次いで、有機シランをソースガスに用いて酸化シリコン膜をPECVD法で堆積する。この酸化シリコン膜は、単結晶半導体層112の表面よりも高くなるように厚く堆積する。次いで、単結晶半導体層112上に重なる酸化シリコン膜を研磨により除去した後、保護層804を除去して、素子分離絶縁層803を残存させる。素子分離絶縁層803により単結晶半導体層112は、素子領域805及び素子領域806に分離される(図23(B)参照。)。
次いで、単結晶半導体層112上に、第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜上にゲート電極層808a、808bを形成し、ゲート電極層808a、808bをマスクとして第1の絶縁膜をエッチングしてゲート絶縁層807a、807bを形成する。
ゲート絶縁層807a、807bは酸化シリコン膜、若しくは酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造で形成すればよい。ゲート絶縁層として酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜なども用いることができる。ゲート絶縁層807a、807bは、プラズマCVD法や減圧CVD法により絶縁膜を堆積することで形成しても良いし、プラズマ処理による固相酸化若しくは固相窒化で形成すると良い。半導体層を、プラズマ処理により酸化又は窒化することにより形成するゲート絶縁層は、緻密で絶縁耐圧が高く信頼性に優れているためである。例えば、亜酸化窒素(NO)をArで1〜3倍(流量比)に希釈して、10〜30Paの圧力において3〜5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して単結晶半導体層112(素子領域805、806)の表面を酸化若しくは窒化させる。この処理により1nm〜10nm(好ましくは2nm〜6nm)の絶縁膜を形成する。さらに亜酸化窒素(NO)とシラン(SiH)を導入し、10〜30Paの圧力において3〜5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加してPECVD法により酸化窒化シリコン膜を形成してゲート絶縁層を形成する。固相反応と気相成長法による反応を組み合わせることにより界面準位密度が低く絶縁耐圧の優れたゲート絶縁層を形成することができる。
また、ゲート絶縁層807a、807bとして、二酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、二酸化チタン、五酸化タンタルなどの高誘電率材料を用いても良い。ゲート絶縁層807a、807bに高誘電率材料を用いることにより、ゲートリーク電流を低減することができる。
ゲート電極層808a、808bは、スパッタリング法、蒸着法、CVD法等の手法により形成することができる。ゲート電極層808a、808bはタンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)から選ばれた元素、又は前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成すればよい。また、ゲート電極層808a、808bとしてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜や、AgPdCu合金を用いてもよい。
次いで、ゲート電極層808a、808bを覆う第2の絶縁膜810を形成し、さらにサイドウォール構造の側壁絶縁層816a、816b、817a、817bを形成する。pチャネル型電界効果トランジスタ(pFET)となる領域の側壁絶縁層816a、816bは、nチャネル型電界効果トランジスタ(nFET)となる領域の側壁絶縁層817a、817bよりも幅を広くする。次いで、nチャネル型電界効果トランジスタとなる領域にヒ素(As)などを添加して浅い接合深さの第1の不純物領域880a、880bを形成し、pチャネル型電界効果トランジスタとなる領域にボロン(B)などを添加して浅い接合深さの第2の不純物領域815a、815bを形成する(図23(C)参照)。
次いで、第2の絶縁膜810を部分的にエッチングしてゲート電極層808a、808bの上面と、第1の不純物領域880a、880b及び第2の不純物領域815a、815bとを露出させる。次いで、nチャネル型電界効果トランジスタとなる領域にAsなどをドーピングして深い接合深さの第3の不純物領域819a、819bを形成し、pチャネル型電界効果トランジスタとなる領域にBなどをドーピングして深い接合深さの第4の不純物領域824a、824bを形成する。次いで、活性化のための熱処理を行う。次いで、シリサイドを形成するための金属膜としてコバルト膜を成膜する。次いでRTAなどの熱処理(500℃、1分)を行い、コバルト膜に接する部分のシリコンをシリサイド化させ、シリサイド822a、822b、823a、823bを形成する。また、ゲート電極層808a、808b上にも、これらの層を構成する多結晶シリコン膜とコバルト膜とが反応してシリサイド818a、818bが形成される。その後、コバルト膜を選択的に除去する。次いで、シリサイド化の熱処理よりも高い温度で熱処理を行い、シリサイド部分の低抵抗化を図る(図23(D)参照。)。素子領域806にはチャネル形成領域826が、素子領域805にはチャネル形成領域821が形成される。
次いで、層間絶縁層827を形成し、レジストからなるマスクを用いて層間絶縁層827に深い接合深さの第3の不純物領域819a、819bや深い接合深さの第4の不純物領域824a、824bにそれぞれ達するコンタクトホール(開口)を形成する。エッチングは、用いる材料のエッチングの選択比によって、一回で行っても複数回行っても良い。
エッチング方法及びエッチング条件は、コンタクトホールを形成する層間絶縁層827の材料によって適宜設定すればよい。ウエットエッチング、ドライエッチング、またはその両方を適宜用いることができる。本実施の形態ではドライエッチングを用いる。エッチング用ガスとしては、Cl、BCl、SiClもしくはCClなどを代表とする塩素系ガス、CF、SFもしくはNFなどを代表とするフッ素系ガス又はOを適宜用いることができる。また用いるエッチング用ガスに希ガス気体を添加してもよい。添加する希ガス元素としては、He、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種の元素を用いることができる。ウエットエッチングのエッチャントは、フッ素水素アンモニウム及びフッ化アンモニウムを含む混合溶液のようなフッ酸系の溶液を用いるとよい。
コンタクトホールを覆うように導電膜を形成し、導電膜をエッチングして各ソース領域又はドレイン領域の一部とそれぞれ電気的に接続するソース電極層又はドレイン電極層としても機能する配線層840a、840b、840c、840dを形成する。配線層は、PVD法、CVD法、蒸着法等により導電膜を成膜した後、所望の形状にエッチングして形成することができる。また、液滴吐出法、印刷法、電解メッキ法等により、所定の場所に選択的に導電層を形成することができる。更にはリフロー法、ダマシン法を用いても良い。配線層の材料は、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、Ti、Zr、Ba等の金属、及びSi、Ge、又はその合金、若しくはその窒化物を用いて形成する。また、これらの積層構造としても良い。
本実施の形態では、層間絶縁層827に形成されたコンタクトホールを埋めるように埋込配線層として配線層840a、840b、840c、840dを形成する。埋込み型の配線層840a、840b、840c、840dは、コンタクトホールを埋め込む十分な膜厚の導電膜を形成し、コンタクトホール部だけに導電膜を残し、不要な導電膜部分を除去して形成する。
埋込み型の配線層840a、840b、840c、840d上に絶縁層828及び引き回し配線層として配線層841a、841b、841cを形成する。
以上の工程で支持基板100に接合された単結晶半導体層112の素子領域805を用いてnチャネル型電界効果トランジスタ832を、素子領域806を用いてpチャネル型電界効果トランジスタ831が作製できる(図23(E)参照)。なお、本実施形態において、nチャネル型電界効果トランジスタ832及びpチャネル型電界効果トランジスタ831は配線層841bによって電気的に接続されている。
実施形態6〜8では、pチャネル型トランジスタとnチャネル型トランジスタが、それぞれゲートとして機能する電極を1つずつ有する場合を例示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明で作製されるトランジスタは、ゲートとして機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造のトランジスタとすることができる。また、このトランジスタは、ゲートプレナー構造のトランジスタとすることができる。
本発明の半導体基板が有する単結晶半導体層は、単結晶半導体基板を薄片化した層であるため、結晶配向のばらつきがない。そのため、実施形態6〜8に示すように、半導体基板を用いて作製される複数のトランジスタの閾値電圧や移動度などの電気的特性のばらつきを小さくすることができる。また、本発明の半導体基板が有する単結晶半導体層は結晶粒界が殆どないため、結晶粒界に起因するリーク電流を抑え、また、半導体装置の省電力化を実現することができる。したがって、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
レーザ結晶化により得られる多結晶の半導体膜からトランジスタを作製する場合、高い移動度を得るために、レーザ光の走査方向を考慮して、トランジスタの半導体膜のレイアウトを決める必要があったが、本発明の半導体基板はその必要がないため、半導体装置の設計における制約が少ない。
実施形態6〜8に示すように、nチャネル型トランジスタとpチャネル型電界効果トランジスタを、同時に半導体基板に形成することができるため、これらのトランジスタを用いて、各種の回路を形成することができる。例えば、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタを相補的に組み合わせることによってCMOS構造を構成することができる。
このCMOS構造上に、さらに配線や素子などを積層することでマイクロプロセッサなどの半導体装置を作製することができる。なお、マイクロプロセッサは、演算回路(Arithmetic logic unit。ALUともいう。)、演算回路制御部(ALU Controller)、命令解析部(Instruction Decoder)、割り込み制御部(Interrupt Controller)、タイミング制御部(Timing Controller)、レジスタ(Register)、レジスタ制御部(Register Controller)、バスインターフェース(Bus I/F)、読み出し専用メモリ、及びメモリインターフェース(ROM I/F)を有している。
マイクロプロセッサを、CMOS構造を含む集積回路で形成することで、処理速度の高速化のみならず低消費電力化を図ることができる。
トランジスタの構造は実施形態6〜8に限定されず、その構造はチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、二つ形成されるダブルゲート構造もしくは三つ形成されるトリプルゲート構造であっても良い。
本発明に係る半導体基板を用いて、複数のトランジスタを組み合わせることで、各種の半導体装置が形成される。以下、実施形態9〜11では、トランジスタ、容量素子などを含む回路を有する半導体装置について、説明する。
(実施形態9)
本実施形態では、半導体装置の一例として、マイクロプロセッサについて説明する。図24はマイクロプロセッサ2000の構成例を示すブロック図である。
マイクロプロセッサ2000は、演算回路2001(Arithmetic logic unit。ALUともいう。)、演算回路制御部2002(ALU Controller)、命令解析部2003(Instruction Decoder)、割り込み制御部2004(Interrupt Controller)、タイミング制御部2005(Timing Controller)、レジスタ2006(Register)、レジスタ制御部2007(Register Controller)、バスインターフェース2008(Bus I/F)、読み出し専用メモリ2009、およびROMインターフェース2010を有している。
バスインターフェース2008を介してマイクロプロセッサ2000に入力された命令は、命令解析部2003に入力され、デコードされた後、演算回路制御部2002、割り込み制御部2004、レジスタ制御部2007、タイミング制御部2005に入力される。演算回路制御部2002、割り込み制御部2004、レジスタ制御部2007、タイミング制御部2005は、デコードされた命令に基づき、様々な制御を行う。
演算回路制御部2002は、演算回路2001の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込み制御部2004は、マイクロプロセッサ2000のプログラム実行中に、外部の入出力装置や周辺回路からの割り込み要求を処理する回路であり、割り込み制御部2004は、割り込み要求の優先度やマスク状態を判断して、割り込み要求を処理する。レジスタ制御部2007は、レジスタ2006のアドレスを生成し、マイクロプロセッサ2000の状態に応じてレジスタ2006の読み出しや書き込みを行う。タイミング制御部2005は、演算回路2001、演算回路制御部2002、命令解析部2003、割り込み制御部2004、およびレジスタ制御部2007の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えば、タイミング制御部2005は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えている。図24に示すように、内部クロック信号CLK2は他の回路に入力される。
(実施形態10)
本実施形態では、非接触でデータの送受信を行う機能、および演算機能を備えた半導体装置の一例を説明する。図25は、このような半導体装置の構成例を示すブロック図である。図25に示す半導体装置2020は、無線通信により外部装置と信号の送受信を行って動作する演算処理装置として機能する。
図25に示すように、半導体装置2020は、アナログ回路部2021、デジタル回路部2022、アンテナ2023、および容量部2024を有している。アナログ回路部2021は、共振容量を有する共振回路2031、定電圧回路2032、整流回路2033、復調回路2034、変調回路2035、リセット回路2036、発振回路2037および電源管理回路2038を有している。デジタル回路部2022は、RFインターフェース2041、制御レジスタ2042、クロックコントローラ2043、CPUインターフェース2044、中央処理ユニット2045(CPU2045)、ランダムアクセスメモリ2046(RAM2046)、読み出し専用メモリ2047(ROM2047)を有している。
半導体装置2020の動作の概要は以下の通りである。アンテナ2023が受信した信号によって、共振回路2031は誘導起電力を生じる。誘導起電力は、整流回路2033を経て容量部2024に充電される。この容量部2024はセラミックコンデンサーや電気二重層コンデンサーなどのキャパシタで形成されていることが好ましい。容量部2024は、半導体装置2020を構成する基板に集積されている必要はなく、他の部品として半導体装置2020に組み込むこともできる。
リセット回路2036は、デジタル回路部2022をリセットし初期化する信号を生成する。例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号をリセット信号として生成する。発振回路2037は、定電圧回路2032により生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。復調回路2034は、受信信号を復調する回路であり、変調回路2035は、送信するデータを変調する回路である。
例えば、復調回路2034はローパスフィルタで形成され、振幅変調(ASK)方式の受信信号を、その振幅の変動をもとに、二値化する。また、送信データを振幅変調(ASK)方式の送信信号の振幅を変動させて送信するため、変調回路2035は、共振回路2031の共振点を変化させることで通信信号の振幅を変化させている。
クロックコントローラ2043は、電源電圧または中央処理ユニット2045における消費電流に応じてクロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成している。電源電圧の監視は電源管理回路2038が行っている。
アンテナ2023から半導体装置2020に入力された信号は復調回路2034で復調された後、RFインターフェース2041で制御コマンドやデータなどに分解される。制御コマンドは制御レジスタ2042に格納される。制御コマンドには、読み出し専用メモリ2047に記憶されているデータの読み出し、ランダムアクセスメモリ2046へのデータの書き込み、中央処理ユニット2045への演算命令などが含まれている。
中央処理ユニット2045は、CPUインターフェース2044を介して読み出し専用メモリ2047、ランダムアクセスメモリ2046、制御レジスタ2042にアクセスする。CPUインターフェース2044は、中央処理ユニット2045が要求するアドレスより、読み出し専用メモリ2047、ランダムアクセスメモリ2046、制御レジスタ2042のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
中央処理ユニット2045の演算方式は、読み出し専用メモリ2047にOS(オペレーティングシステム)を記憶させておき、起動とともにプログラムを読み出し実行する方式を採用することができる。また、専用回路で演算回路を構成して、演算処理をハードウェア的に処理する方式を採用することもできる。ハードウェアとソフトウェアを併用する方式では、専用の演算回路で一部の演算処理を行い、プログラムを使って、残りの演算を中央処理ユニット2045が処理する方式を適用できる。
(実施形態11)
本実施形態では、半導体装置の構成例として表示装置について説明する。
まず、図26〜図28を用いて、本実施形態の表示装置の構成について説明する。本実施形態では、表示装置として、アクティブマトリクス型表示装置について説明する。
図26は、本実施形態のアクティブマトリクス型表示装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態のアクティブマトリクス型表示装置は、画素部2100、信号線駆動回路2101、走査線駆動回路2102、信号線駆動回路2101に接続された複数の信号線2103、および走査線駆動回路2102に接続された複数の走査線2104を有する。
複数の信号線2103は列方向に配列され、複数の走査線2104は信号線2103と交差して行方向に配列されている。画素部2100には、信号線2103および走査線2104がつくる行列に対応して、複数の画素2105が行列状に配列されている。画素2105は、走査線2104および信号線2103に接続されている。画素2105はスイッチング素子および表示素子を含む。スイッチング素子は、走査線2104に入力される信号に従って、画素が選択か非選択かを制御する。表示素子は信号線2103から入力されるビデオ信号によって階調が制御される。
図27および図28を用いて、画素2105の構成例を説明する。本発明をアクティブマトリクス型液晶表示装置に適用した場合の、画素2105の構成例を図27に示す。画素2105は、スイッチング素子としてスイッチングトランジスタ2111を有し、表示素子として液晶素子2112を有する。スイッチングトランジスタ2111はゲートが走査線2104に接続され、ソースまたはドレインの一方が信号線2103に接続され、他方が液晶素子2112に接続されている。
液晶素子2112は画素電極と対向電極と液晶を含む。画素電極と対向電極がつくる電界により、液晶の配向が制御される。液晶は、2枚の基板の間に封入されている。保持容量2113は、液晶素子2112の画素電極の電位を保持するための素子であり、液晶素子2112の画素電極に接続されている。
本発明をアクティブマトリクス型エレクトロルミネッセンス表示装置に適用した場合の、画素2105の構成例を図28に示す。画素2105は、スイッチング素子として選択用トランジスタ2121を有し、表示素子として発光素子2122を有する。さらに、画素2105は、選択用トランジスタ2121にゲートが接続された表示制御用トランジスタ2123を有する。発光素子2122は、一対の電極と、一対の電極に挟まれた発光材料を有する。
次に、本発明に係る半導体基板から、表示装置を作製するための、回路配置を説明する。図29は、実施形態1の作製方法により作製された半導体基板20の主要部を示す図面である(図2参照)。1枚の半導体基板20から、表示装置を構成する複数の基板を作製することができる。図29には、1つの単結晶半導体層112から、1つの表示装置を作製するための回路配置例を示す。各単結晶半導体層112には、1つの表示パネル形成領域2129が形成される。表示装置は、画素部2100、信号線駆動回路2101、および走査線駆動回路2102を有する。そのため、各表示パネル形成領域は、これらが形成される領域(画素形成領域2130、信号線駆動回路形成領域2131.走査線駆動回路形成領域2132)を有する。
なお、1つの単結晶半導体層112に、複数の表示パネル形成領域を設けることもできる。また、表示装置を作製するために用いられる半導体基板は半導体基板20に限定されるものではなく、本発明に係る他の半導体基板を用いることができる。
図30は、液晶表示装置の構成例を示す図面である。図30(A)は液晶表示装置の画素の平面図であり、図30(B)はJ−K切断線による図30(A)の断面図である。図30(A)に示すように、画素は、半導体層2201、半導体層2201と交差している走査線2202、走査線2202と交差している信号線2203、画素電極2204、画素電極2204と半導体層2201を電気的に接続する電極2205を有する。半導体層2201は、SOI基板に貼り合わせられた半導体層2201から形成された層であり、画素のトランジスタ2206を構成する。
図30(B)に示すように、基板2200上に、第2絶縁層114、第1絶縁層113bと第1絶縁層113aでなる第1絶縁層113、半導体層2201が積層されている。基板2200は分割された支持基板100である。半導体層2201は、単結晶半導体層112をエッチングによる素子分離により形成された層である。半導体層2201には、チャネル形成領域2210、n型の高濃度不純物領域2211が形成されている。トランジスタ2206のゲート電極2212は走査線2202に含まれる。また、トランジスタ2206のソース電極またはドレイン電極となる2つの電極のうち、一方は信号線2203に含まれ、他方は、電極2205で構成されている。半導体層2201とゲート電極2212の間にはゲート絶縁層2213が形成されている。
半導体層2201、ゲート絶縁層2213および走査線2202を覆って、層間絶縁膜2214が形成されている。層間絶縁膜2214上には、信号線2203、画素電極2204および電極2205が設けられている。さらに、層間絶縁膜2214上には、柱状スペーサ2215が形成されている。信号線2203、画素電極2204、電極2205および柱状スペーサ2215を覆って配向膜2216が形成されている。対向基板2220には、対向電極2221、対向電極2221を覆う配向膜2222が形成されている。柱状スペーサ2215は、基板2200と対向基板2220の隙間を維持するために形成される。柱状スペーサ2215によって形成される隙間に液晶層2223が形成されている。信号線2203および電極2205と高濃度不純物領域2211との接続部は、コンタクトホールの形成によって層間絶縁膜2214に段差が生じるので、この接続部では液晶層2223の液晶の配向が乱れやすい。そのため、この接続部に柱状スペーサ2215を形成することで、液晶の配向の乱れを防ぐことができる。
次に、エレクトロルミネセンス表示装置(以下、EL表示装置という。)について、説明する。図31は実施形態3の方法で作製されたEL表示装置を説明するための図面である。図31(A)はEL表示装置の画素の平面図であり、図31(B)は画素の断面図である。図31(A)に示すように、画素は、選択用トランジスタ2401、表示制御用トランジスタ2402、走査線2403、信号線2404、および電流供給線2405、画素電極2406を含み、これらが基板2200上に形成されている。エレクトロルミネセンス材料を含んで形成される層(EL層)が一対の電極間に挟んだ構造の発光素子が各画素に設けられている。発光素子の一方の電極が画素電極2406である。
選択用トランジスタ2401は、単結晶半導体層112からなる半導体層2408を有する。選択用トランジスタ2401において、ゲート電極は走査線2403に含まれ、ソース電極またはドレイン電極となる2つの電極のうち、一方は信号線2404に含まれ、他方は電極2409として形成されている。表示制御用トランジスタ2402は、ゲート電極2410が電極2409と電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極となる2つの電極のうち、一方は、画素電極2406に電気的に接続される電極2411として形成され、他方は、電流供給線2405に含まれている。
表示制御用トランジスタ2402はpチャネル型のトランジスタであり、単結晶半導体層112からなる半導体層2412を有する。図31(B)に示すように、半導体層2412には、チャネル形成領域2413、p型の高濃度不純物領域2414が形成されている。半導体層2412とゲート電極2410の間の絶縁層2415は、選択用トランジスタ2401、表示制御用トランジスタ2402のゲート絶縁層を構成する。
半導体層2408、2412、走査線2403表示制御用トランジスタ2402のゲート電極2410を覆って、層間絶縁膜2417が形成されている。層間絶縁膜2417上に、信号線2404、電流供給線2405、電極2409、および電極2411などが形成されている。また、層間絶縁膜2417上には、電極2411に電気的に接続されている画素電極2406が形成されている。画素電極2406は周辺部が絶縁性の隔壁層2418で囲まれている。画素電極2406上にはEL層2419が形成され、EL層2419上には対向電極2420が形成されている。補強板として対向基板2421が設けられており、対向基板2421は樹脂層2422により基板2200に固定されている。基板2200は支持基板100に対応する基板である。
画素電極2406、EL層2419および対向電極2420により、発光素子2122(図28参照)が構成されている。画素電極2406及び対向電極2420は、いずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。また、EL表示装置において、発光素子の発光の取り出し方によって、3つの構造に分類される。1つは、基板2200を通過させてから取り出す構造(下面射出構造とも呼ばれる)である。2つめは、基板2200側と逆側の面から、光を射出させる構造(上面射出構造とも呼ばれる)である。最後は、光を基板2200を通過させ、かつ基板2200と逆側の面からも光を射出させる構造(両面射出構造とも呼ばれる)である。本実施形態のEL表示装置は、これら3つの構造をとりうる。
下面射出構造の場合は、画素電極2406は透光性電極とし、対向電極2420は反射電極とすることが好ましい。これに対し、上面射出構造の場合は、画素電極2406は反射電極とし、対向電極2420は透光性電極とすることが好ましい。両面射出構造の場合は、画素電極2406及び対向電極2420ともに透光性電極とすることが好ましい。
画素電極2406、および対向電極2420を反射電極とするには、タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、クロム、銀等の金属元素、又は当該金属元素を含む合金材料若しくは化合物材料等の反射性を有する導電材料を用いて形成すればよい。
また、画素電極2406、および対向電極2420を透光性電極とするには、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、又はガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)等の透光性を有する導電材料を用いて形成すればよい。また、反射性を有する導電材料でなる膜を数nm乃至数十nmの膜厚で形成することで、可視光を透過させることができるため、薄い膜厚とすることで、上記の反射性を有する導電材料でなる膜を透光性電極とすることができる。
また、透光性電極は、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性組成物を用いて形成した電極は、薄膜におけるシート抵抗が10000Ω/□以下、波長550nmにおける透光率が70%以上であることが好ましい。また、導電性組成物に含まれる導電性高分子の抵抗率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、又はこれらの2種以上の共重合体などがあげられる。
共役導電性高分子の具体例としては、ポリピロ−ル、ポリ(3−メチルピロ−ル)、ポリ(3−ブチルピロ−ル)、ポリ(3−オクチルピロ−ル)、ポリ(3−デシルピロ−ル)、ポリ(3,4−ジメチルピロ−ル)、ポリ(3,4−ジブチルピロ−ル)、ポリ(3−ヒドロキシピロ−ル)、ポリ(3−メチル−4−ヒドロキシピロ−ル)、ポリ(3−メトキシピロ−ル)、ポリ(3−エトキシピロ−ル)、ポリ(3−オクトキシピロ−ル)、ポリ(3−カルボキシルピロ−ル)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルピロ−ル)、ポリN−メチルピロール、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−オクトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(2−オクチルアニリン)、ポリ(2−イソブチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
上記導電性高分子を、単独で導電性組成物として透光性電極を形成してもよい。また、導電性組成物で形成される透光性電極の膜質、膜強度等の膜特性を調整するために、導電性高分子に有機樹脂を添加することもできる。
有機樹脂としては、導電性高分子と相溶または混合分散可能である熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は光硬化性樹脂等を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド若しくはポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、若しくはポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、若しくはポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、若しくはポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂、又はこれら樹脂の共重合体などが挙げられる。
さらに、導電性組成物の電気伝導度を調整するために、導電性組成物にアクセプタ性またはドナー性ドーパントをドーピングすることにより、共役導電性高分子の共役電子の酸化還元電位を変化させてもよい。
アクセプタ性ドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等を使用することができる。ハロゲン化合物としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等が挙げられる。ルイス酸としては五フッ化燐、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素等が挙げられる。プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸と、有機カルボン酸、有機スルホン酸等の有機酸を挙げることができる。有機カルボン酸及び有機スルホン酸としては、前記カルボン酸化合物及びスルホン酸化合物を使用することができる。有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等を挙げられる。
ドナー性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は4級アミン化合物等を挙げることができる。
また、導電性組成物を、水または有機溶剤(アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、又は芳香族系溶剤など)に溶解させて、湿式法により透光性電極となる薄膜を形成することができる。
導電性組成物を溶解する溶媒としては、特に限定することはなく、上述した導電性高分子及び有機樹脂などの高分子樹脂化合物を溶解するものを用いればよい。例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、N‐メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はトルエンなどの単独もしくは混合溶剤に溶解すればよい。
導電性組成物を、上述のように溶媒に溶解した後、塗布法、コーティング法、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、印刷法等の湿式法を用いて層間絶縁膜2417上に形成することで、画素電極2406を得ることができる。溶媒の乾燥は、熱処理を行ってもよいし、減圧することで行ってもよい。また、有機樹脂が熱硬化性の場合は熱処理を行えばよいし、光硬化性の場合は光照射処理を行えばよい。
隔壁層2418は、CVD法、スパッタリング法、塗布法等により基板全面に絶縁層を形成した後、選択的にエッチングして形成することができる。また、液滴吐出法、印刷法等を用いて、選択的に形成することもできる。その他、ポジ型感光性樹脂を用いて全面に絶縁層を形成した後、当該絶縁層を露光及び現像することにより、所望の形状とすることもできる。
EL層2419としては、少なくとも発光層を形成し、該発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜形成してもよい。EL層は、インクジェット法などの塗布法や蒸着法により形成することができる。
次に、基板2200と対向させるように対向基板2421を設ける(図31(B)参照)。対向基板2421と対向電極2420との間には、樹脂層2422を設けてもよいし、不活性ガスを充填させた構成としてもよい。なお、対向電極2420を覆うように保護層を形成してもよい。
本実施形態のEL型表示装置では、トランジスタのチャネル形成領域が単結晶半導体層で形成されている。よって、本実施形態のEL表示装置は、多結晶半導体をチャネル形成領域として利用する表示装置と比較して、画素ごとにおけるトランジスタ特性のバラツキを低減することができる。そのため、画素ごとの表示むらを抑制することができる。
なお、本実施形態の表示装置を構成するトランジスタの構成は特に限定されない。例えば、上記実施の形態6〜8で示す構成の電界効果トランジスタを適用することもできる。
また、本実施形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施形態12)
半導体基板10を用いて様々な電気機器を作製することができる。電気機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポなど)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍など)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)などの画像データを表示する表示装置を備えた装置)などが含まれる。
本実施形態では、図32および図33を用いて、電気機器の具体的な態様を説明する。図32(A)は携帯電話機1901の一例を示す外観図である。この携帯電話機1901は、表示部1902、操作スイッチ1903などを含んで構成されている。表示部1902に、図30で説明した液晶表示装置または図31で説明したEL表示装置を適用することで、表示むらが少なく画質の優れた表示部1902とすることができる。
また、図32(B)は、デジタルプレーヤー1911の構成例を示す外観図である。デジタルプレーヤー1911は、表示部1912、操作部1913、イヤホン1914などを含んでいる。イヤホン1914の代わりにヘッドホンや無線式イヤホンを用いることができる。表示部1912に、図30で説明した液晶表示装置または図31で説明したEL表示装置を適用することで、画面サイズが0.3インチから2インチ程度の場合であっても。高精細な画像および多量の文字情報を表示することができる。
また、図32(C)は、電子ブック1921の外観図である。この電子ブック1921は、表示部1922、操作スイッチ1923を含んでいる。電子ブック1921にはモデムを内蔵していてもよいし、図25の半導体装置2020を内蔵させて、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。表示部1922には、図30で説明した液晶表示装置、または図31で説明したEL表示装置を適用することで、高画質の表示を行うことができる。
図33は本発明を適用した携帯電話1800の構成の一例であり、図33(A)が正面図であり、図33(B)が背面図であり、図33(C)が展開図である。携帯電話1800は、電話と携帯情報端末の双方の機能を備えており、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な所謂スマートフォンである。携帯電話1800は、カメラを内蔵しており、静止画、動画を撮影が可能となっている。
携帯電話1800は、筐体1801及び筐体1802の二つの筐体で構成されている。筐体1801には、表示部1805、スピーカー1806、マイクロフォン1807、操作キー1808、ポインティングデバイス1809、カメラ用レンズ1810、外部接続端子1811、イヤホン端子1812等が設けられている。表示部1805には、図30で説明した液晶表示装置、または図31で説明したEL表示装置を適用することで、高画質の表示を行うことができる。
筐体1802には、キーボード1815、外部メモリスロット1816、カメラ用レンズ1817、ライト1818等を備えている。また、アンテナは筐体1801内部に内蔵されている。
また、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
表示部1805は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。表示部1805と同一面上にカメラ用レンズ1810を備えているため、テレビ電話が可能である。また、表示部1805をファインダーとしカメラ用レンズ1817及びライト1818で静止画及び動画の撮影が可能である。スピーカー1806及びマイクロフォン1807は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生等が可能である。操作キー1808では、電話の発着信、電子メール等の簡単な情報入力、画面のスクロール、カーソル移動等が可能である。更に、重なり合った筐体1801と筐体1802(図33(A))は、スライドし、図33(C)のように展開する。展開させた状態では、携帯電話1800を携帯情報端末として使用できる。この状態では、キーボード1815、ポインティングデバイス1809を用いることで、円滑な操作が可能である。外部接続端子1811はACアダプタ及びUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータ等とのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット1816に記録媒体を挿入しより大量のデータ保存及び移動に対応できる。
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能等を備えたものであってもよい。
本実施例では、レーザ照射処理によって、単結晶半導体層の結晶性が向上すること、およびレーザ照射処理後の加熱処理によって単結晶半導体層のライフタイムが向上することを説明する。結晶性の評価およびライフタイムの評価をするため3種類の半導体基板を製造した。第1は、本発明に係る半導体基板であり、単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層に対して、レーザ照射処理および加熱処理を行った半導体基板である。第2は、レーザ照射処理を行い、加熱処理を行っていない半導体基板である。第3は、レーザ照射処理および加熱処理を行っていない半導体基板である。
以下、半導体基板の製造方法について説明する。図34は、実験に用いた半導体基板の積層構造を示す断面図である。半導体基板は実施形態1の製造方法(図4(A)〜図5(C)参照)により、半導体基板を作製した。単結晶シリコン層201が酸化窒化シリコン膜202、窒化酸化シリコン膜203、および酸化シリコン膜204でなるバッファ層111を介してガラス基板200に固定されている。
本実施例の半導体基板のバッファ層に含まれる膜の厚さは、それぞれ以下の通りである。
・酸化窒化シリコン膜202 50nm
・窒化酸化シリコン膜203 50nm
・酸化シリコン膜204 50nm
半導体基板を作製するため、単結晶半導体基板110に単結晶シリコンウエハが用いられている。単結晶シリコンウエハは、5インチ角の四角い基板である。その導電型はP型で、抵抗率が10Ω・cm程度である。また、結晶方位は、主表面が(100)であり、側面が<110>である。支持基板100であるガラス基板200は、厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(商品名 AN100)である。
第1絶縁層113として、PECVD法により、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜202と、厚さ50nmの窒化酸化シリコン膜203でなる2層構造の絶縁膜を形成した(図4(A)参照)。酸化窒化シリコン膜202のプロセスガスは、SiH、およびNOであり、流量比は、SiH\NO=4\800である。成膜工程の基板温度は400℃である。窒化酸化シリコン膜203のプロセスガスは、SiH、NH、NO、およびHであり、流量比は、SiH\NH\NO\H=10\100\20\400ある。成膜工程の温度は350℃である。
単結晶シリコンウエハに損傷領域を形成するために、イオンドーピング装置を用い、水素イオンを単結晶シリコンウエハに添加している。ソースガスには100%水素ガスを用い、水素ガスを励起して生成されたプラズマ中のイオンを質量分離せずに、電界で加速して単結晶シリコンウエハ基板に照射して、損傷領域115を形成した(図4(B)参照)。イオンドーピング装置において、水素ガスを励起することで、H、H 、H という3種類のイオン種が生成され、この全てのイオン種を加速し、単結晶シリコンウエハに照射する。水素ガスから発生された水素イオン種のうち、80%程度がH である。
水素イオンドーピングの条件は、例えば、電源出力100W、加速電圧40kV、ドーズ量2.2×1016ions/cmとした。
第2絶縁層114として、PECVD法により、厚さ50nmの酸化シリコン膜204を形成した(図4(C)参照)。酸化シリコン膜204の成膜用プロセスガスには、TEOS、およびOを用い、その流量比は、TEOS\O=15\750である。また、成膜工程の温度は300℃である。
ガラス基板200、および膜202〜204が形成された単結晶シリコンウエハを純水中で超音波洗浄した後、オゾンを含む純水で洗浄した後、ガラス基板200表面と単結晶シリコンウエハ表面に形成された酸化シリコン膜204を密着させて、接合させた(図4(D)参照)。次に、損傷領域115で劈開を生じさせるため、加熱炉において、200℃、2時間の加熱処理を行い、ガラス基板200と酸化シリコン膜204の結合強度を向上させ、引き続き、加熱炉において、600℃、4時間の加熱を行うことで、単結晶シリコンウエハを劈開させ、単結晶シリコン層201を単結晶シリコンウエハから分離している。
なお、図4(A)〜図4(D)までの工程(バッファ層の形成、損傷領域の形成、接合工程、単結晶シリコンウエハの分離工程)を行って製造された半導体基板を「半導体基板x」と呼ぶこととする。
次に、半導体基板xを純水で洗浄した後、1/100に希釈されたフッ酸で単結晶シリコン層201を処理して、表面に形成された自然酸化膜を除去した。次に、単結晶シリコン層201にレーザビームを照射し、溶融させ、再結晶化させた。レーザ発振器には、波長308nmのビームを発振するXeClエキシマレーザを用いた。レーザビームのパルス幅25nsecであり、繰り返し周波数30Hzである。
光学系により、レーザビームの被照射面でのビーム形状を線状に集光し、レーザビームを幅方向(ビーム形状の短軸方向)に走査した。また、レーザ照射時には半導体基板xは加熱せず、室温である。このレーザ照射処理工程まで行って製造された半導体基板を「半導体基板y」と呼ぶこととする。
レーザビームを照射した後、縦型抵抗加熱炉において、窒素雰囲気で半導体基板yを加熱処理した。本実施例では、処理の条件が異なる2種類の半導体基板を作製した。条件の1つは、500℃で1時間の加熱した後、引き続き、550℃で4時間加熱処理するというものである。この条件の加熱処理を行った半導体基板を「半導体基板A」と呼ぶこととする。もう一方の加熱処理の条件は、500℃で1時間加熱した後、引き続き、600℃で4時間加熱するというものである。この条件の加熱処理工程を行った半導体基板を「半導体基板B」と呼ぶ。
なお、レーザ照射処理後、500℃で1時間の加熱した後550℃で4時間加熱処理をして作製された半導体基板Aにおいて、ガラス基板200は20ppm程度シュリンクすることが確認された。シュリンクを発生する工程が、微細な位置あわせが必要な工程(例えば、縮小露光装置による露光工程など)の前に生じたシュリンクであるため、本発明の半導体基板を用いての半導体装置の作製においては、影響がない。
表1に、半導体基板x、y、AおよびBと、レーザビーム照射工程と加熱処理工程との対応を示す。
本発明に係る半導体基板A、および半導体基板B、ならびに比較例である半導体基板x、および半導体基板yについて、それぞれ、単結晶シリコン層201の結晶性を評価した。結晶性を評価するために、ラマン分光測定、およびライフタイム評価測定を行った。本実施例では、これらの測定結果をもとに、溶融させて再結晶化を行うレーザ照射処理によって単結晶シリコン層の結晶性が向上すること、および、レーザ照射処理後の溶融させない加熱処理によって、単結晶シリコン層の結晶性がさらに向上することを説明する。
なお、本実施例の半導体基板と、実施例3〜5の半導体基板と区別するため、製造方法を示すアルファベットの後に参照符号に「−1」を付けて、半導体基板A−1、半導体基板B−1、半導体基板x−1、半導体基板y−1と呼ぶこととする。半導体基板の参照符号については、実施例3〜5でも同様とする。
ラマン分光測定、およびライフタイム評価測定を行った各半導体基板を製造する際の水素イオンドーピングの条件は次の通りである。ソースガス100%水素、電源出力100W、加速電圧40kV、ドーズ量2.2×1016ions/cm。単結晶シリコンウエハから分離された単結晶シリコン層201の厚さは120nmである。
また、半導体基板y−1、半導体基板A−1、半導体基板B−1に行ったレーザ照射処理工程の条件は次の通りである。レーザビームのビーム形状の幅を340μmとし、走査速度は1.0mm/秒とした。レーザビームのパルスのオーバーラップ率が90%で、同じ領域にパルスが約10ショット照射される条件である。レーザビームのエネルギー密度は、660mJ/cmとした。また、窒素気体雰囲気とするため、レーザビームの被照射面に窒素ガスを吹き付けながらレーザビームを照射した。
ラマン分光の測定結果を図35および図36に示す。図35はラマンシフトのグラフであり、図36はラマンスペクトルの半値全幅(FWHM;full width at half maximum)のグラフである。なお、各基板について、9箇所ラマンスペクトルを測定した。
図35に示すラマンシフトのピーク波数(ピーク値ともいう。)は、結晶格子の振動モードで決定される値であり、結晶の種類によって固有の値となる。内部応力のない単結晶シリコンのラマンシフトは520.6cm−1である。シリコンのラマンシフトがこの波数に近いほど、結晶構造が単結晶に近く、結晶性が良いことの指標とすることができる。
また、図36に示すFWHMが小さいほど、結晶状態に揺らぎが少なく、均一であることを示している。市販の単結晶シリコンウエハのFWHMは、2.5cm−1〜3.0cm−1程度であり、この値に近いほど結晶性が単結晶シリコンウエハのように均一な結晶構造を有していることの指標とすることができる。
図35および図36のグラフからレーザ照射処理によって、単結晶シリコン層の結晶性が回復されることが分かる。レーザ照射処理することで、加工する前の単結晶シリコンウエハと同程度の結晶性に回復させることができることが分かる。なお、図35および図36のグラフから、半導体基板y−1と、半導体基板A−1、B−1のデータに大きな変化がない。よって、本実施例の加熱処理では、ラマン分光分析で検出されるような単結晶シリコン層の結晶構造の変化を生じさせていないと推測される。
図37は、半導体基板x−1、半導体基板y−1、半導体基板A−1および半導体基板B−1のライフタイム評価結果のグラフである。本実施例では、測定装置に、コベルコ科研(株)社製のマイクロ波光導電減衰(Microwave Photo Conductive Decay)法を用いたライフタイム評価装置を使用した。
マイクロ波光導電減衰法(以下、μ−PCD法という)とは、半導体の表面にレーザ光を照射して、半導体中にキャリアを発生させ、かつレーザ光が照射されている位置にマイクロ波を照射し、半導体で反射されたマイクロ波の強度の減衰状態を検出することで、ライフタイムを評価する方法である。μ−PCD法では、半導体中にキャリアが生成されると半導体の抵抗値が下がるため、キャリアが発生した領域でのマイクロ波の反射率が高くなることを利用しており、反射マイクロ波の強度を検出することで、ライフタイムを評価している。
単結晶シリコンに光を照射すると価電子帯で発生した電子と伝導帯に発生した正孔は、再結合し、消滅する。単結晶シリコン層に汚染や欠陥が多数あると、電荷トラップ中心の密度が高くなるため、単結晶シリコンでのキャリアの再結合の確率が増加するので、ライフタイムは短くなる。このため、ライフタイムは単結晶シリコンなど半導体の結晶構造が完全であるかを評価するパラメータとして利用されている。
図37のグラフの縦軸は、反射マイクロ波の検出信号のピーク値である。図37において、ピーク値が大きいほどライフタイムが長いことを示すため、ピーク値からライフタイムを評価することができる。半導体基板x−1と半導体基板y−1とを比較すると、レーザ照射処理によってライフタイムを長くできることが分かる。また、半導体基板y−1と半導体基板A−1、半導体基板B−1を比較すると、レーザ照射処理の後の加熱処理を行うことで、ライフタイムが格段に長くなることが分かる。
図35、図36を参照すると、半導体基板y−1と半導体基板A−1、B−1のラマン分光による結晶性の評価は同程度である。これに対して、図37のライフタイムの向上という結果から、加熱処理を行っていない単結晶シリコン層よりも、レーザ照射処理後に加熱処理を行った単結晶シリコン層のほうがより完全性の高い単結晶構造となっていると考えられる。その理由は明らかではないが、加熱処理によって、ライフタイムを短縮させる電荷トラップ中心密度(例えば、ダングリングボンド)が減少したと考えられる。
ライフタイムを向上させるため、レーザ照射工程後の加熱処理温度は400℃以上とする。加熱温度は500℃以上が好ましく、550℃以上がより好ましい。また、この加熱処理は、単結晶半導体層を溶融させないようにし、また支持基板の温度がその歪み点を超えないようにする。
本実施例では、単結晶シリコン層がレーザビーム122の照射により溶融していることを説明する。また、レーザビームの照射により、単結晶シリコン層が再結晶化され、単結晶構造になることを説明する。
レーザ照射処理前の半導体基板x−2の単結晶シリコン層201にレーザビームを照射し、単結晶シリコン層201の相変化を分光学的な手法により測定した。具体的には、単結晶シリコン層201のレーザビームが照射されている領域にプローブ光を照射し、その反射光の強度変化を測定する。反射光の強度から、単結晶シリコン層201が固相状態であるか液相状態であるかを判別することが可能である。シリコンは固相から液相状態に変化すると、屈折率が急激に上昇し、可視光に対する反射率が急激に上昇する。よって、プローブ光に可視光域の波長のレーザビームを用い、プローブ光の反射光の強度変化を検出することで、単結晶シリコン層201の固相から液相への相変化、および液相から固相への相変化検出することができる。よって、単結晶シリコン層201に照射するXeClエキシマレーザビームと、単結晶シリコン層201で反射されたプローブ光を異なるフォトディテクタで受光し、2つのフォトディテクタの検出信号をオシロスコープに入力し、フォトディテクタの検出信号の変化を調べることで、XeClエキシマレーザビームの照射時間と単結晶シリコン層201の相変化の関係を知ることができる。ここでは、プローブ光としてNd:YVOレーザーの第2高長波である532nmのビームをプローブ光とした。
図38は、測定結果を示すオシロスコープの信号波形の写真である。図38の写真において、下の信号波形は、XeClエキシマレーザの強度変化に対応する信号波形である。上の信号波形は、単結晶シリコン層で反射されたプローブ光の強度変化に対応する信号波形である。図38の横軸は時間を表し、格子の間隔が100ナノ秒である。
測定条件は以下の通りである。窒素雰囲気とし、XeClエキシマレーザのエネルギー密度は、539mJ/cmとした。また、半導体基板y−2を製造するためのレーザビーム320を1ショット単結晶シリコン層に照射している。なお、XeClエキシマレーザビームの強度を示す信号波形に2つのピークが現れているが、これは測定に用いた、XeClエキシマレーザ発振器の仕様によるものである。
なお、図38のデータを測定した半導体基板y−2の単結晶シリコン層201の厚さは100nmである。損傷領域115を形成するときのドーピングの条件は、ソースガス100%水素、電源出力100W、加速電圧40kV、ドーズ量は2.2×1016ions/cmとしている。
図38に示すように、XeClレーザビームが照射されると、プローブ光に対応する信号強度は急激に増大し、XeClレーザビームの照射後、やがて減衰する。よって検出信号の強度の変化からは次のことが分かる。単結晶シリコン層201にXeClレーザビームを照射することで、レーザビームの照射領域の温度が融点以上に上昇し、その領域は溶融される。そして、レーザビームの照射後も、この領域は溶融状態(液晶状態)がしばらく保持されるが、やがて、この領域の温度が下降すると凝固し始め、完全に固相状態に戻る。つまり、XeClレーザビームの照射によって、単結晶シリコン層201が溶融することが確認された。
次に、XeClレーザビームを照射して、単結晶シリコン層を溶融させることで、再結晶化すること、および再結晶化されたシリコン層が単結晶構造であることを説明する。
図39(A)および図39(B)は、半導体基板x−3および半導体基板y−3の単結晶シリコン層表面の電子後方散乱回折像(EBSP;Electron Back Scatter Diffraction Pattern)の測定データから得られた逆極点図(IPF、inverse pole figure)マップである。図39(A)は、レーザ照射工程を行っていない半導体基板x−3の単結晶シリコン層のIPFマップであり、図39(B)は、レーザ照射工程を行った半導体基板y−3のIPFマップである。図39(C)は、結晶の各面方位をカラーコード化し、IPFマップの配色と結晶方位の関係を示すカラーコードマップである。
半導体基板x−3および半導体基板y−3の製造において、損傷領域115を形成するときのドーピングの条件は、電源出力100W、加速電圧40kV、ドーズ量2.0×1016ions/cmである。半導体基板x−3、y−3の単結晶シリコン層の厚さは100nm程度である。
半導体基板y−3のレーザ照射処理の条件は次の通りである。被照射面でのレーザビームの断面形状は幅350μm、長さ126mmの線状であり、レーザビームの走査速度(基板の移動速度)1.0mm/秒である。単結晶シリコン層201の同じ領域に照射されるレーザビームのショット数はビーム幅と走査速度から計算して10.5ショットとなる。レーザビームのエネルギー密度は648mJ/cmである。レーザビームの照射雰囲気を窒素雰囲気とするため、レーザビームの被照射面に窒素ガスを吹き付けている。
図39(A)と図39(B)のIPFマップによると、レーザビームの照射前と照射後で単結晶シリコン層201の結晶方位が乱れることなく、単結晶シリコン層201表面の面方位は使用した単結晶シリコンウエハと同じ(100)面方位を維持していることが分かる。また、レーザビームの照射前と照射後で単結晶シリコン層201に結晶粒界が存在していないことが分かる。このことは、図39(A)および図39(B)のIPFマップが、図39(C)のカラーコードマップの(100)方位を示す色(カラー図面では赤色)でなる一色の四角の像であることから、確認できる。
したがって、EBSPの測定によって、主表面の面方位が(100)の単結晶シリコンウエハから、主表面の面方位が(100)の単結晶シリコン層が形成され、この単結晶シリコン層にレーザビームを照射し溶融された単結晶シリコン層も主表面の面方位は(100)であることが確認された。
なお、図39(A)および図39(B)のIPFマップに現れている点は、CI値の低い部分を表している。CI値とは、結晶方位を決定するデータの信頼性、確度を示す指標値である。結晶粒界、結晶欠陥などでCI値が低くなる。つまり、CI値が低い部分が少ないほど完全性の高い結晶構造であり、結晶性が良いと評価することができる。半導体基板x−3のIPFマップよりも、半導体基板y−3のIPFマップのほうが、CI値の低い部分が少ない。よって、EBSPの測定から、レーザビームを照射することで、単結晶シリコン層の結晶欠陥、ダングリングボンドなどのミクロの欠陥が修復されていると推測することが可能である。
本実施例では、レーザ照射処理によって、単結晶シリコン層201の平坦性が向上することを説明する。表面の平坦性は、原子間力顕微鏡による観察像(以下、AFM像という。)を解析することでから得られる表面粗さを示す測定値で評価した。本実施例では、実施例2のライフタイム評価およびラマン分光分析を行った4種類の半導体基板x−1、y−1、A−1、B−1について、表面粗さを評価した。
測定条件は以下の通りである。
・原子間力顕微鏡(AFM):走査型プローブ顕微鏡SPI3800N/SPA500(セイコーインスツルメンツ(株)製)
・測定モード:ダイナミックフォースモード(DFMモード)
・カンチレバー:SI−DF40(シリコン製バネ定数42N/m、共振周波数250〜390kHz、探針の先端R≦10nm)
・測定面積:5μm×5μm
・測定点数:256×256点
なお、DFMモードとは、ある周波数(カンチレバーに固有の周波数)でカンチレバーを共振させた状態で、カンチレバーの振動振幅が一定になるように探針と試料との距離を制御しながら、試料の表面形状を測定する測定モードのことである。このDFMモードでは、試料の表面とカンチレバーとが非接触であるため、試料の表面を傷つけることなく、元の形状を保ったまま測定できる。
図40(A)〜図40(D)は、それぞれ、各半導体基板x−1、y−1、A−1、およびB−1の単結晶シリコン層201表面のAFM像である。
図41に、AFM像をもとに計算された各半導体基板x−1、y−1、A−1、B−1の単結晶シリコン層の表面粗さを示す。付属のソフトウェアにより、表面粗さ解析を行い、平均面粗さRa、自乗平均面粗さRMS、および山谷の最大高低差P−Vを算出した。図41(A)は算術平均粗さRaのグラフであり、図41(B)は自乗平均面粗さRMSのグラフであり、図41(C)は、山谷の最大高低差値P−Vのグラフである。本実施例では、半導体基板x−1、y−1、A−1およびB−1をそれぞれ2枚用意し、1枚の基板について3箇所、表面粗さ解析を行っている。
図41(A)〜図41(C)のデータから、レーザ照射処理により、溶融されて再結晶化された単結晶シリコン層201の表面が平坦化されることが分かる。また、レーザ照射処理した後に加熱処理を行っても単結晶シリコン層の平坦性が維持されていることが分かる。したがって、レーザビーム照射処理の効果の1つは、支持基板100として用いたガラス基板の耐熱温度以下のプロセス温度での、単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層の平坦化と、いうことができる。
以下、本明細書において表面の平坦性の指標に使用する平均面粗さRa、自乗平均面粗さRMS、および山谷の最大高低差P−Vについて説明する。
平均面粗さ(Ra)とは、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したものである。基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値と表現でき、式(a1)で与えられる。
なお、測定面とは全測定データの示す面であり、式(a2)で表される。式(a2)において、(X,Y)の範囲は、(0,0)〜(Xmax,Ymax)である。
また、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(X,Y)(X,Y)(X,Y)(X,Y)で表される4点により囲まれる長方形の領域とし、指定面が理想的にフラットであるとしたときの面積をSとする。よって、面積Sは式(a3)で求められる。
また、基準面とは、指定面の高さの平均値をZとするとき、Z=Zで表される平面である。基準面はXY平面と平行となる。なお、平均値Zは式(a4)で求められる。
自乗平均面粗さ(RMS)とは、断面曲線に対するRMSを、測定面に対して適用できるよう、Raと同様に三次元に拡張したものである。自乗平均面粗さ(RMS)は、基準面から指定面までの偏差の自乗を平均した値の平方根と表現でき、下記式(a5)で与えられる。
山谷の最大高低差(P−V)は、指定面において、最も高い山頂の標高Zmaxと最も低い谷底の標高Zminの差と表現でき、式(a6)で与えられる。
ここでいう山頂と谷底とはJISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている「山頂」「谷底」を三次元に拡張したものであり、山頂とは指定面の山において最も標高の高いところ、谷底とは指定面において最も標高の低いところと表現される。
本実施例では、本発明に係る半導体基板の単結晶シリコン層の水素濃度について説明する。本実施例では、半導体基板x−4、半導体基板y−4、半導体基板A−1の単結晶シリコン層の水素濃度を二次イオン質量分析法(SIMS、Secondary Ion Mass Spectrometry)で分析した。半導体基板A−1は、実施例2のラマン分光分析およびライフタイム評価を行った半導体基板である。
図42は、半導体基板x−4と半導体基板y−4のSIMS分析による水素濃度深さ方向プロファイルである。図42において、水素濃度の値はシリコン層内のみ有効である。
本実施例の半導体基板x−4、および半導体基板y−4の製造において、損傷領域115を形成するときの水素イオンドーピングの条件は、電源出力50W、加速電圧80kV、ドーズ量2.5×1016ions/cmである。この条件により、単結晶シリコン層201の厚さは220nm程度となる。また、酸化窒化シリコン膜202の厚さは100nmとした。
本実施例では、半導体基板y−4に対するレーザ照射工程では、レーザビームの幅を340μmとし、走査速度1.0mm/秒として、レーザビームが約10ショット照射されるようにした。この条件では、オーバーラップ率は90%となる。また、レーザ照射工程の温度は室温である。また、XeClエキシマエネルギー密度と照射雰囲気が異なる4つ条件(a〜d)でレーザ照射処理を行った。条件a〜dは以下の通りである。
a.637mJ/cm気体雰囲気
b.543mJ/cm 大気雰囲気
c.543mJ/cm気体雰囲気
d.449mJ/cm気体雰囲気
なお、レーザビームの被照射面に窒素ガスを吹き付けることで、窒素気体雰囲気を実現している。
図42に示すように、レーザ照射処理によって、単結晶シリコン層201の上層側(深さが浅い側)の水素濃度が低下することが分かる。レーザビームのエネルギー密度が高いほど、水素濃度が低くなっている。レーザ照射処理を行わない半導体基板x−4では単結晶シリコン層201は1×1020原子/cm以上3×1020原子/cm以下程度の水素を含んでいるが、レーザ照射処理によって、単結晶シリコン層201の上部の水素濃度は、1×1020原子/cm以下に低下し、1×1019原子/cm以上3×1020原子/cm以下となっている。
半導体基板y−4の単結晶シリコン層201において、半導体基板x−4よりも水素濃度が低下している領域は、レーザビームの照射によって溶融された領域および溶融された領域からの熱伝導により水素ガスが放出する温度以上に加熱された領域であると推測される。
図43は、半導体基板A−1の水素濃度の深さ方向プロファイルである。図43において、各プロファイルの濃度の値はシリコン層内のみ有効である。
図43に示すように、半導体基板A−1の単結晶シリコン層201の水素濃度は1×1019原子/cm程度である。つまり、実施例1の作製方法によって、半導体基板の単結晶シリコン層201の水素濃度を5×1018原子/cm以上5×1020原子/cm以下にできることが分かる。
本実施例では、レーザ照射処理後の加熱処理によって単結晶半導体層のライフタイムが向上することを図52及び図53を用いて説明する。ライフタイムの評価をするため、同一基板に対して、2種類の条件にて処理を施した半導体基板を製造した。第1の条件は、本発明に係る半導体基板の作製方法であり、単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層に対して、レーザ照射処理および加熱処理を行った。また、第2の条件では、レーザ照射処理を行わずに加熱処理を行った。
以下、本実施例における半導体基板の製造方法について説明する。図52は、実験に用いた半導体基板の作製工程を示す図である。本実施例においては、実施形態1の製造方法により半導体基板を作製した。
はじめに、単結晶半導体基板を、酸素に対しHClを3体積%の割合で含む雰囲気中で熱酸化処理して、第1絶縁層として機能する酸化シリコン膜502を形成した。熱酸化処理の温度は、950℃とし、膜厚は50nmとした(図52(A))。
単結晶半導体基板としては、単結晶シリコンウエハ510が用いられている。単結晶シリコンウエハは、5インチ角の四角い基板である。その導電型はP型で、抵抗率が5〜40Ω・cm程度である。また、結晶方位は、主表面が(100)であり、側面が<100>である。
次いで、単結晶シリコンウエハ510に損傷領域を形成するために、イオンドーピング装置を用い、水素イオンを単結晶シリコンウエハ510に添加した。ソースガスには100%水素ガスを用い、水素ガスを励起して生成されたプラズマ中のイオンを質量分離せずに、電界で加速して単結晶シリコンウエハ基板に照射して、損傷領域115を形成した。水素イオンドーピングの条件は、例えば、電源出力100W、加速電圧25kV、ドーズ量1.8×1016ions/cmとした。
次いで、PECVD法により、第2絶縁層として機能する窒化酸化シリコン膜503を形成した(図52(B))。窒化酸化シリコン膜の膜厚は50nmとした。また、窒化酸化シリコン膜503の成膜用プロセスガスには、SiH、NH、NO、及びHを用い、その流量比は、SiH\NH\NO\H=10\100\20\400である。また、成膜工程の温度は300℃である。
酸化シリコン膜502及び窒化酸化シリコン膜503が形成された単結晶シリコンウエハを純水中で超音波洗浄し、その後、オゾンを含む純水で洗浄した。また、支持基板として用いるガラス基板550を純水中で超音波洗浄した。ガラス基板550としては、厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(商品名 AN100)を用いた。
次に、ガラス基板550表面と単結晶シリコンウエハ表面に形成された窒化酸化シリコン膜503を密着させて、接合させた(図52(C))。その後、損傷領域115で分離させるため、加熱炉において、200℃、2時間の加熱処理を行い、ガラス基板550と窒化酸化シリコン膜503の結合強度を向上させ、引き続き、加熱炉において、600℃、4時間の加熱を行うことで、単結晶シリコンウエハ510を分離させ、単結晶シリコン層501をガラス基板550に固定した(図52(D))。
本実施例の半導体基板は、ガラス基板550上に、窒化酸化シリコン膜503、酸化シリコン膜502、及び単結晶シリコン層501が順に積層された構造を有する。本実施例では、分離後の単結晶シリコン層501の厚さは120nm程度である。
次に、単結晶シリコン層501表面を純水で洗浄した後、1/100に希釈されたフッ酸で単結晶シリコン層501を処理して、表面に形成された自然酸化膜を除去した。その後、オゾン添加水(O水)によって、単結晶シリコン層501表面を処理して、酸化膜を形成した。
次いで、単結晶シリコン層501に第1のエッチング処理を施して、酸化膜及び単結晶シリコン層501の分離面に残っている損傷領域を除去した(図52(E))。本実施例においては、単結晶シリコン層501の分離面にドライエッチングを行うことにより、単結晶シリコン層501の膜厚を110nm程度とした。第1のエッチング処理におけるエッチング条件は次の通りである。
・コイル型の電極に投入する電力 150W
・下部電極に投入する電力 40W
・反応圧力 1.0Pa
・エッチングガス(塩素の流量) 100sccm
第1のエッチング処理を行ったのち、1/100に希釈されたフッ酸で単結晶シリコン層501を処理して、表面に形成された自然酸化膜を除去した。その後、単結晶シリコン層501の領域Aに対して、レーザビームを照射し、溶融させ、再結晶化させた(図52(F))。また、単結晶シリコン層501の領域Bに対しては、レーザビームを照射せずに、未照射の領域とした。
領域Aへのレーザビームの照射には、波長308nmのビームを発振するXeClエキシマレーザを用いた。レーザビームのパルス幅25nsecであり、繰り返し周波数30Hzである。また、レーザビームのエネルギー密度は782mJ/cmとした。光学系により、レーザビームの被照射面でのビーム形状を線状に集光し、レーザビームを幅方向(ビーム形状の短軸方向)に走査した。また、レーザ照射は、室温で窒素ガスを照射領域に吹き付けながら行った。
次に、単結晶シリコン層501表面を純水で洗浄した後、1/100に希釈されたフッ酸で単結晶シリコン層501を処理して、表面に形成された自然酸化膜を除去した。その後、オゾン添加水(O水)によって、単結晶シリコン層501表面を処理して、酸化膜を形成した。
そして、単結晶シリコン層501に第2のエッチング処理を施して、単結晶シリコン層501の膜厚を約50nmに薄くした(図52(G))。なお、エッチング条件は、図52(E)で示した第1のエッチング処理の条件と同様である。
第2のエッチング処理を終えた後、縦型抵抗加熱炉において、窒素雰囲気で半導体基板を加熱処理した。本実施例では、600℃で4時間の加熱処理を行った。
以上の工程によって、レーザビームを照射した領域Aと、未照射の領域Bとを有する本実施例の半導体基板を作製した。
本実施例では、レーザ照射処理及びその後の加熱処理によって単結晶半導体層のライフタイムが向上すること示すために、以下の各工程での単結晶シリコン層の領域A及び領域Bについてライフタイムをそれぞれ測定した。ライフタイムの測定には、前述のμ−PCD法を用いた。また、条件1乃至条件5において、ライフタイムの測定には同一の半導体基板を用いた。
条件1 単結晶基板から分離した単結晶シリコン層(図52(D))
条件2 第1のエッチング処理後の単結晶シリコン層(図52(E))
条件3 レーザ照射処理後の単結晶シリコン層(図52(F))
条件4 第2のエッチング処理後の単結晶シリコン層(図52(G))
条件5 加熱処理後の単結晶シリコン層(図52(H))
ライフタイムの測定結果を図53に示す。図53において、縦軸は反射マイクロ波の検出信号のピーク値を示し、ピーク値が大きいほどライフタイムが長いことを示すため、ピーク値からライフタイムを評価することができる。なお、当該ピーク値は、単結晶シリコン層の膜厚に比例するため、図53では、ピーク値を膜厚で割って規格化した値をグラフに用いている。また、図53において、黒色の棒グラフは領域Aにおけるピーク値を示し、白色の棒グラフは領域Bにおけるピーク値を示す。なお、条件1及び条件2においては、領域Aと領域Bの条件に差異が無いため、双方の領域とも同じ値を示している。
図53より、条件3の領域Aと領域Bを比較すると、レーザ照射処理によってライフタイムを長くできることが分かる。また、条件3の領域Aと、条件5の領域Aを比較すると、レーザ照射処理の後に加熱処理を行うことで、ライフタイムが格段に長くなることが分かる。また、条件3の領域Bと条件5の領域Bを比較すると、レーザ照射を行わない場合でも加熱処理によって多少のライフタイムの向上が見られるが、条件5の領域A及び領域Bの比較から、レーザ照射処理と加熱処理を併用することで、その効果が格段に向上することが示された。
以上示したように、単結晶半導体基板から分離した単結晶シリコン層に、レーザ照射処理と、その後の加熱処理を行うことによって単結晶シリコン層のライフタイムを格段に向上させることができる。この理由は明らかではないが、レーザ照射処理によって結晶性が回復した単結晶シリコン層に対して、加熱処理を行うことで、単結晶シリコン層中でライフタイムを短縮させる電荷トラップ中心密度(例えば、ダングリングボンド)を減少させることができると考えられる。
半導体基板の構成の一例を示す外観図。 単結晶半導体基板の構成の一例を示す外観図。 半導体基板の作製方法を示す外観図。 半導体基板の作製方法を示す断面図。 半導体基板の作製方法を示す断面図。 半導体基板の構成の一例を示す外観図。 単結晶半導体基板の構成の一例を示す外観図。 半導体基板の作製方法を示す断面図。 半導体基板の作製方法を示す断面図。 半導体基板の作製方法を示す断面図。 半導体基板の作製方法を示す断面図、および平面図。 半導体基板の作製方法を示す断面図、および平面図。 半導体基板の構成の一例を示す断面図、および平面図。 半導体基板の作製方法を示す断面図、および平面図。 半導体基板の作製方法を示す断面図。 半導体基板の作製方法を示す断面図。 半導体装置の作製方法を説明する断面図。 半導体装置の作製方法を説明する断面図。 半導体装置の作製方法を説明する断面図。 半導体装置の作製方法を説明する断面図。 半導体装置の作製方法を説明する断面図。 半導体装置の作製方法を説明する断面図。 半導体装置の作製方法を説明する断面図。 マイクロプロセッサの構成の一例を示すブロック図。 RFCPUの構成の一例を示すブロック図。 アクティブマトリクス表示装置の構成例を示すブロック図。 液晶表示装置の画素の構成例を示す回路図。 エレクトロルミネセンス装置の画素の構成例を示す回路図。 半導体基板における回路の配置例を示す斜視図。 (A)液晶表示装置の画素の平面図。(B)J−K切断線による図30(A)の断面図。 (A)エレクトロルミネセンス表示装置の画素の平面図。(B)J−K切断線による図31(A)の断面図。 (A)携帯電話の外観図。(B)デジタルプレーヤーの外観図。(C)電子ブックの外観図。 携帯電話の外観図。 測定に用いた半導体基板の断面図。 単結晶シリコン層のラマンシフトのピーク波数を示すグラフ。 単結晶シリコン層のラマンスペクトルの半値全幅を示すグラフ。 単結晶シリコン層のライフタイム評価測定結果を示すグラフ。 オシロスコープの信号波形の写真。 EBSPから得られた、単結晶シリコン層のIPFマップ。 AFMで観察した単結晶シリコン層のAFM像。 AFM像をもとに計算された単結晶シリコン層の表面粗さのグラフ。 SIMSによる単結晶シリコン層の水素濃度の深さ方向プロファイル。 SIMSによる単結晶シリコン層の水素濃度の深さ方向プロファイル。 イオンドーピング装置でHガスから生成されるイオン種の質量分析結果を示すグラフ。 イオン注入装置でPHガスから生成されるイオン種の質量分析結果を示すグラフ。 水素分子、水素イオン(H、H 、H )のエネルギーダイアグラム。 加速電圧が80kVの場合の水素元素の深さ方向プロファイル(計算値および実測値)のグラフ。 加速電圧が80kVの場合の水素元素の深さ方向プロファイル(計算値、実測値およびフィッティング関数)のグラフ。 加速電圧が60kVの場合の水素元素の深さ方向プロファイル(計算値、実測値およびフィッティング関数)のグラフ。 加速電圧が40kVの場合の水素元素の深さ方向プロファイル(計算値、実測値およびフィッティング関数)のグラフ。 図48乃至図50に示すフィッティング関数のフィッティングパラメータ(水素元素比および水素イオン種比)の表。 実施例6の半導体基板の作製方法を示す断面図。 単結晶シリコン層のライフタイム評価測定結果を示すグラフ。
符号の説明
10 半導体基板
20 半導体基板
30 半導体基板
40 半導体基板
50 半導体基板
60 半導体基板
100 支持基板
101 バッファ層
103 絶縁層
104 絶縁層
110 単結晶半導体基板
111 バッファ層
112 単結晶半導体層
113 絶縁層
113a 絶縁層
113b 絶縁層
114 絶縁層
114a 絶縁膜
115 損傷領域
116 単結晶半導体層
117 単結晶半導体層
118 単結晶半導体基板
119 単結晶半導体層
121 イオン
122 レーザビーム

Claims (33)

  1. 単結晶半導体基板および支持基板を用意し、
    加速されたイオンを前記単結晶半導体基板に照射することで、前記単結晶半導体基板の表面から所定の深さの領域に損傷領域を形成し、
    前記支持基板または前記単結晶半導体基板の少なくとも一方にバッファ層を形成し、
    前記バッファ層を介して前記支持基板と前記単結晶半導体基板を密着させ、前記バッファ層の表面と、前記バッファ層表面と密接している面とを接合させることで、前記支持基板に前記単結晶半導体基板を固定し、
    前記単結晶半導体基板の加熱によって前記損傷領域に亀裂を生じさせ、前記単結晶半導体基板を前記支持基板から分離することにより、前記単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層が固定された支持基板を形成し、
    前記単結晶半導体層にレーザビームを照射して、前記単結晶半導体層を溶融することで、前記単結晶半導体層を再結晶化させ、
    再結晶化された前記単結晶半導体層を400℃以上かつ溶融させない温度で加熱することを特徴とする半導体基板の作製方法。
  2. 単結晶半導体基板、および歪み点が700℃以下の支持基板を用意し、
    加速されたイオンを前記単結晶半導体基板に照射することで、前記単結晶半導体基板の表面から所定の深さの領域に損傷領域を形成し、
    前記支持基板または前記単結晶半導体基板の少なくとも一方にバッファ層を形成し、
    前記バッファ層を介して前記支持基板と前記単結晶半導体基板を密着させ、前記バッファ層の表面と、前記バッファ層表面と密接している面とを接合させることで、前記支持基板に前記単結晶半導体基板を固定し、
    前記単結晶半導体基板の加熱によって前記損傷領域に亀裂を生じさせ、前記単結晶半導体基板を前記支持基板から分離することにより、前記単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層が固定された支持基板を形成し、
    前記単結晶半導体層にレーザビームを照射して、前記単結晶半導体層を溶融することで、前記単結晶半導体層を再結晶化させ、
    再結晶化された前記単結晶半導体層を400℃以上かつ歪み点以下の温度で、前記単結晶半導体層を溶融させずに加熱することを特徴とする半導体基板の作製方法。
  3. 請求項1または2において、
    前記再結晶化された単結晶半導体層の加熱温度は、500℃以上であることを特徴とする半導体基板の作製方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項において、
    前記支持基板は、歪み点が650℃以上700℃以下であることを特徴とする半導体基板の作製方法。
  5. 請求項1乃至3のいずれか1項において、
    前記支持基板は、歪み点が650℃以上700℃以下のガラス基板であることを特徴とする半導体基板の作製方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項において、
    前記レーザビームの照射により、前記単結晶半導体層の前記レーザビームが照射されている領域を表面から当該領域の厚さよりも浅い部分までを溶融することを特徴とする半導体基板の作製方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項において、
    不活性気体雰囲気中で、前記単結晶半導体層に前記レーザビームを照射することを特徴とする半導体基板の作製方法。
  8. 請求項7において、
    前記不活性気体は、窒素ガスまたは希ガスであることを特徴とする半導体基板の作製方法。
  9. 請求項7において、
    前記不活性気体雰囲気の酸素濃度は、30ppm以下であることを特徴とする半導体基板の作製方法。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項において、
    水素ガスを励起して、H を含むプラズマを生成し、前記プラズマに含まれるイオンを加速して、前記単結晶半導体基板に照射することで、前記損傷領域を形成することを特徴とする半導体基板の作製方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体層内へのナトリウムの侵入を防ぐためのバリア層を有することを特徴とする半導体基板の作製方法。
  12. 請求項1乃至10のいずれか1項において、
    前記バッファ層は、窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜でなる層を有することを特徴とする半導体基板の作製方法。
  13. 請求項1乃至10のいずれか1項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体基板を酸化した酸化物膜でなる層を有することを特徴とする半導体基板の作製方法。
  14. 請求項1乃至10のいずれか1項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体層に接する絶縁層を有し、
    当該絶縁層は、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜でなることを特徴とする半導体基板の作製方法。
  15. 単結晶半導体基板および歪み点が700℃以下の支持基板を用意し、
    加速されたイオンを前記単結晶半導体基板に照射することで、前記単結晶半導体基板の表面から所定の深さの領域に損傷領域を形成し、
    前記支持基板または前記単結晶半導体基板の少なくとも一方にバッファ層を形成し、
    前記バッファ層を介して前記支持基板と前記単結晶半導体基板を密着させ、前記バッファ層の表面と、前記バッファ層表面と密接している面とを接合させることで、前記支持基板に前記単結晶半導体基板を固定し、
    前記単結晶半導体基板の加熱によって前記損傷領域に亀裂を生じさせ、前記単結晶半導体基板を前記支持基板から分離することにより、前記単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層が固定された支持基板を形成し、
    前記単結晶半導体層にレーザビームを照射して、前記単結晶半導体層を溶融することで、前記単結晶半導体層を再結晶化させ、
    再結晶化された前記単結晶半導体層を400℃以上かつ歪み点以下の温度で、前記単結晶半導体層を溶融させずに加熱し、
    前記加熱された単結晶半導体層をエッチングして、複数の第2単結晶半導体層に分割し、
    複数の前記第2単結晶半導体層上にゲート絶縁層を形成し、
    前記ゲート絶縁層を介して、複数の前記第2単結晶半導体層上にゲート電極を形成し、
    複数の前記第2単結晶半導体層にドナーまたはアクセプタとなる不純物を添加することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  16. 請求項15において、
    前記再結晶化された単結晶半導体層の加熱温度は、500℃以上であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  17. 請求項15または16において、
    前記支持基板は、歪み点が650℃以上700℃以下であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  18. 請求項15または16において、
    前記支持基板は、歪み点が650℃以上700℃以下のガラス基板であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  19. 請求項15乃至18のいずれか1項において、
    前記レーザビームの照射により、前記単結晶半導体層の前記レーザビームが照射されている領域を表面から当該領域の厚さよりも浅い部分までを溶融することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  20. 請求項15乃至19のいずれか1項において、
    不活性気体雰囲気中で、前記単結晶半導体層に前記レーザビームを照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  21. 請求項20において、
    前記不活性気体は、窒素ガスまたは希ガスであることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  22. 請求項20において、
    前記不活性気体雰囲気の酸素濃度は、30ppm以下であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  23. 請求項15乃至22のいずれか1項において、
    水素ガスを励起して、H を含むプラズマを生成し、前記プラズマに含まれるイオンを加速して、前記単結晶半導体基板に照射することで、前記損傷領域を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  24. 請求項15乃至23のいずれか1項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体層内へのナトリウムの侵入を防ぐためのバリア層を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  25. 請求項15乃至23のいずれか1項において、
    前記バッファ層は、窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜でなる層を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  26. 請求項15乃至23のいずれか1項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体基板を酸化した酸化物膜でなる層を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  27. 請求項15乃至23のいずれか1項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体層に接する絶縁層を有し、
    当該絶縁層は、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜でなることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  28. 歪み点が700℃以下の支持基板と、
    バッファ層と、
    前記バッファ層を介して、前記支持基板に固定された単結晶半導体層と、
    を有し、
    前記単結晶半導体層の水素濃度は、5×1018原子/cm以上であることを特徴とする半導体基板。
  29. 請求項28項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体層内へのナトリウムの侵入を防ぐためのバリア層を有することを特徴とする半導体基板。
  30. 請求項28項において、
    前記バッファ層は、窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜でなる層を有することを特徴とする半導体基板。
  31. 請求項28項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体層を酸化した酸化物膜でなる層を有することを特徴とする半導体基板。
  32. 請求項28項において、
    前記バッファ層は、前記単結晶半導体層に接する絶縁層を有し、
    当該絶縁層は、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜でなることを特徴とする半導体基板。
  33. 請求項28項において、
    前記支持基板は、歪み点が650℃以上700℃以下のガラス基板であることを特徴とする半導体基板。
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