JP2009025831A - 定着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 定着部材20として弾性層を有する定着ベルトを用いた場合でも定着部材の正確な温調制御を行い、その結果グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができる定着装置、該定着装置を搭載した画像形成装置を提供する。
【解決手段】 温度検出手段18が記録材Pの突入に伴う温度変動を検知する前に、加熱体16に供給する加熱に必要な電力が、所定電力で補正されること。
【選択図】 図2

Description

本発明は、定着装置に関する。
より詳しくは、加熱体と、弾性層を備え内周面が前記加熱体と摺動する可撓性を有する回転体と、前記回転体を介して前記加熱体とニップ部を形成する加圧部材と、前記回転体の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知温度に応じて前記加熱体への電力供給を制御する制御手段と、を有し、前記ニップ部で記録材を挟持搬送しつつ記録材上の未定着トナー画像を記録材に加熱定着する定着装置に関する。
近年、プリンタや複写機等の画像形成装置におけるカラー化が進んできている。このようなカラー画像形成装置に使用される定着装置としては、定着部材に弾性層を有する熱ローラ方式の定着装置が良く知られている。
しかし、弾性層を有する熱ローラ方式の定着方式においては、熱ローラ自体の熱容量が大きくなってしまい、定着ローラをトナー画像定着に適した温度までに昇温させるまでに必要な時間(ウォームアップタイム)が長いという問題があった。また、定着装置のコストも高価なものとなっていた。
ウォームアップタイムの短い定着装置として、白黒画像形成装置によく使用されるベルト定着方式の定着装置が良く知られている。このようなベルト定着装置の一例の概略構成模型図を図24に示す。
201は本例のベルト定着装置の全体符号である。202は定着ベルトユニットであり、横断面略半円弧状樋型のヒータホルダ207、このヒータホルダ207の下面にヒータホルダ長手(図面に垂直方向)に沿って固定して配設した定着ヒータ204、この定着ヒータ付きのヒータホルダ207にルーズに外嵌させた、可撓性を有するエンドレスベルト状(円筒状)の薄層の定着ベルト203などからなるアセンブリである。
205は弾性加圧ローラであり、その芯金の両端部を定着装置の側板間に回転自由に軸受させて配設してある。
定着ベルトユニット202は弾性加圧ローラ205の上側に、定着ヒータ204側を下向きにして加圧ローラ205に並行に配列し、ヒータホルダ207の両端部側を不図示の付勢手段で所定の押圧力で押し下げ状態にしてある。これにより、定着ヒータ204の下面を定着ベルト203を挟んで弾性加圧ローラ205の上面に加圧ローラの弾性に抗して圧接させて所定幅の定着ニップ部206を形成させている。
弾性加圧ローラ205は不図示の駆動機構により矢印の方向に所定の周速度にて回転駆動される。この弾性加圧ローラ205の回転駆動により、定着ニップ部206において弾性加圧ローラ205と定着ベルト203の外面との摩擦力で定着ベルト203に回転力が作用し、定着ベルト203はその内周面が定着ニップ部206において定着ヒータ204の下面に密着して摺動しながら矢印の方向に弾性加圧ローラ205の周速度にほぼ対応した周速度をもってヒータホルダ207の外回りを従動回転状態になる。
定着ベルト203は、厚さ50μm程度の耐熱性樹脂のエンドレスベルトを用い、その表面に厚さ10μmの離形層(フッ素樹脂などのコーティング層)を形成したものである。また、定着ベルト203の熱容量を小さくするため、定着ベルト203には弾性層を用いていない。
定着ヒータ204は、セラミック基板上に抵抗発熱体を形成したものである。定着ヒータ204裏面には温度検知手段209が当接され、定着ヒータ204の温度が検知され、不図示の制御手段により定着ヒータ204の温度が所望の温度になるように定着ヒータ204に対する供給電力が制御されて温調制御される。
弾性加圧ローラ205が回転駆動され、定着ベルト203が従動回転し、定着ヒータ204が所定温度に立ち上がって温調制御された状態において、未定着トナー像tを担持した記録材Pが定着ニップ部206の定着ベルト203と弾性加圧ローラ205との間に導入される。その記録材Pは未定着トナー像担持面が定着ベルト203の外面に密着して定着ベルト203と一緒に定着ニップ部206を挟持搬送されていく。その挟持搬送過程において、記録材Pに対して定着ヒータ204の熱が定着ベルト203を介して付与され、また定着ニップ部206の加圧力を受け、未定着トナー像tが記録材P上に定着画像として熱と圧力で定着される。記録材Pは定着ニップ部206を通過して定着ベルト203の面から曲率分離して排出される。
このような構成の定着装置201では、定着ベルト203の熱容量が非常に小さく、定着ヒータ204に電力を投入した後、短時間で定着ニップ部206をトナー画像の定着可能温度まで昇温させることが可能である。
しかし、このような、弾性層を設けていない定着ベルト203を使用しているベルト定着装置201をカラー画像形成装置の定着装置として使用すると、定着部材である定着ベルト203に弾性層が無いために、記録材Pの表面の凹凸やトナー層の有無による凹凸、そしてトナー層自体の凹凸などに定着ベルト203の表面が追従できず、凹部と凸部で定着ベルト203から加えられる熱量に差ができてしまう。定着ベルト203とよく接触する凸部においては、定着ベルト203からよく熱が伝わるため、大きな熱量が与えられ、定着ベルト203とあまりよく接触しない凹部においては、定着ベルト203からの熱が凸部に比べて伝わりにくいため、与えられる熱量が小さい。このように、トナー層に与えられる熱量が、トナー層の凹凸により変化するため、トナーの溶融状態が不均一になり、光沢ムラとなって、定着後の画像に影響をもたらしてしまう。
特に、カラー画像においては、複数色のトナー像を重ね、混色させて使用するため、トナー層の凹凸が白黒画像に比べて大きく、定着ベルト203に弾性層が無い場合、定着後の画像の光沢ムラが大きくなって画像品質を低下させる。また、記録材PがOHPシートの場合には定着後画像を投影した場合、定着後の画像表面が微視的に見て均一でないことに起因する光の散乱が発生し、結果として透過性の低下を招いてしまう。
弾性層を有しない定着ベルト203と、記録材Pや未定着トナー像tの凹凸部分に満遍なくよく熱が伝わるようにシリコンオイル等を定着ベルト203に塗布する方法も考えられるが、コストが高くなることや定着後画像および記録材Pがオイルでべとつくという問題があった。
そこで、弾性層を有する定着ベルトをベルト定着装置に使用することで、低コストなカラーオンデマンド定着装置を構成する定着装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
図25は定着部材として弾性層を有する定着ベルト203を用いたベルト定着装置の概略構成模型図である。図24の装置と共通する構成部材・部分には同一の符号を付して再度の説明を省略する。
この定着装置を用いる場合には、定着ベルト203の弾性層に用いられるシリコーンゴムの熱伝導率が小さいため、定着ベルト203の温度応答性は悪く、定着ヒータ204の温度上昇速度に対して、定着スリーブ温度の上昇速度が非常に遅い。さらに、定着ヒータ204の温度と定着ベルト203の温度差は最大数十℃にも達し、またその温度差は空回転時と、通紙時において大きく異なる。このため、従来のごとく温度検知素子209を、定着ヒータ204裏面に設置した系においては、定着ベルト203の温度制御は非常に困難であった。
そこで、図25の装置においては、定着ヒータ204部ではなく、定着ベルト203の内面や表面に温度検知手段209を配置させて、定着ベルト203自身の温度を検出し、PID制御などのフィードバック制御により定着ヒータ204の温度を制御することにより定着ベルト203の温調を行っている。
このような構成を用いることによって定着ベルト203の温度をより精度良く制御することが可能である。
特開平11−15303号公報
しかしながら、この定着装置を用いて、定着動作を行ったところ、以下にあげる2点の問題が発生した。
(1)問題点1
一定温調し、温度が安定している状態から記録材Pを通紙すると、記録材Pが定着ニップ部206に突入した直後に定着ベルト203の温度は急激に減少し、その後温度は上昇するものの、オーバーシュートが発生し、結果的に大きな温度変動を生じてしまう。
この現象について説明する。
従来の定着装置においては、空回転状態でPID制御を行いつづけた後、記録材Pを通紙している。このとき、図6に示すように、記録材Pが定着ニップ部206に突入した直後に定着ベルト203内面の温度は急激に減少し、その後温度は上昇するものの、オーバーシュートが発生する。具体的には、図6に示すように通紙前の空回転時においては、定着スリーブ203内面の温度は安定しているものの、記録材Pが定着ニップ部206に突入した直後、定着ベルト203内面の温度は、目標温度に対して約10℃低い温度まで降下した後、目標温度より約7℃高い値まで上昇し、その後安定するまで約10秒を要した。記録材Pが定着ニップ部206に突入した直後から、定着スリーブ203内面の温度が安定するまでの間、温度リップル(一定時間内における温度の最大値と最小値の差)は約17℃となった。そして、その後の連続通紙においては安定した温調(温度リップル約6℃)を示した。
空回転時に定着スリーブ203内面の温度が安定している状態において、定着ヒータ204に投入されている電力は約80Wで一定であり、その後連続通紙時において、定着スリーブ203内面の温度が安定している状態では、定着ヒータ204に投入されている電力は、約300Wでほぼ一定である。
一方、記録材Pが定着ニップ部206に突入した直後においては、温度減少に伴い約500Wまで上昇し、約20秒間振動した後に約300Wに落ち着くという挙動を示していた。この現象はPID制御の各ゲインを調整しても解決せず、これ以上温度変動を抑えることは困難であった。
このように約17℃の温度変動を生じた場合、試験に用いた電子写真方式カラー画像形成装置において、出力された印刷物の定着性は大きくばらついてしまい、また、光沢度(グロス)は大きく変動し画質の低下を招いた。さらには、記録材や印字パターンによっては大きな温度変動に伴う定着不良が生じてしまうという問題を生じる。
また、この現象はプロセススピードが速い場合ほど顕著であり、図6の測定時においては、プロセススピードは87mm/secであったが、プロセススピードが190mm/secの場合には定着ベルト203内面の温度は、記録材Pが定着ニップ部206に突入した直後に、目標温度に対して約20℃低い値まで降下し、その後目標温度に対して約8℃高い温度まで上昇し、約28℃の温度リップルとなった。この場合には、光沢度の変動幅はさらに大きくなり、部分的な定着不良も悪化する。
(2)問題点2
立ち上げ時のオーバーシュートが大きい。また、立ち上げ時の温度リップルが大きく、立ち上げ後の記録材突入時の温度ばらつきが大きい。
この現象について説明する。
この定着装置においては、立ち上げ温度制御シーケンスは、以下の二段階aとbから構成される。
a.「立上げ(固定)電力制御」
b.「PID制御」
aの「立ち上げ電力制御」は、定着装置温度を速やかに立上げ、オンデマンド性を確保する為に、一定電力が投入される制御であり、本例においては、定着ヒータ204には1000Wが投入される。このとき、定着ベルト203は、加圧ローラ205の回転に伴い、従動回転しながら定着ヒータ204により加熱される。温度検知手段209の検知温度が所定温度(目標温度−20℃:例えば、目標温度が190℃であれば、190℃−20℃=170℃)に達したときに、bの「PID制御」に移行し、以後はPID制御により定着ベルト203裏面の温度が目標温度に近づくように定着ヒータ204への投入電力は制御される。
上記制御を用いた場合、図21に示すように、オーバーシュートが発生し、また、オーバーシュートに伴う温度リップルも大きくなってしまう。
立ち上げ時のオーバーシュート及び温度リップルが大きくなることにより、以下の二点の問題を生じる。
(1).立ち上げ時のオーバーシュートによる高温での動作が繰り返されることにより、定着装置各部品へのダメージが大きくなり、定着装置の寿命が短くなってしまう。
(2).立ち上げ時の温度リップルが大きいため、記録材Pが突入する瞬間の温度が安定せず、記録材Pが定着ニップ部206を通過する間の温度変動も大きくなるため、出力された印刷物一枚の中でのグロス変動が大きくなり、画質上好ましくない。また、記録材Pの種類や印字パターンによっては温度が低下したポイントで定着不良が生じる。
一方、小さな電力で緩やかに立ち上げることによってオーバーシュートをある程度抑えることは可能であるものの、この場合には定着装置が所定温度に立ち上がるまでに、長時間がかかることとなり、オンデマンド性が損なわれてしまう。
このように、従来の定着装置の制御方法を用いた場合、オンデマンド性と、温調制御の安定性はトレードオフの関係にあった。
本発明者らがこの現象について鋭意検討を行ったところ、これらの問題は以下の二点の理由により発生することがわかった。
1)定着ベルト203の弾性層に用いられるシリコーンゴムの熱伝導率が小さく、熱容量が大きいため、定着ヒータ204へ通電してから定着ベルト203温度が上昇するまでの、応答性が悪いこと。
2)定着ベルト203裏面の温度を検出する温度検知手段209の位置が加熱体である定着ヒータ204からから離れていることによる検知タイミングの遅れがあること。
すなわち、PID制御に代表されるフィードバック制御は、制御量の変動を検知し、それに対応した操作量を加えることによって成り立っているため、PID制御を基調とした温調を行おうとした場合、上記の2つの理由1)と2)によるむだ時間(タイムラグ)が大きくなり、立ち上げ時や、記録材P突入時のような、温度変化が大きい場合には、温度検知手段209による検知結果を電力制御に反映しても、実際の定着ヒータ204や定着ニップ部206の温度はすでに異なる値となってしまっているため、正確な温度制御が出来ず、オーバーシュートやハンチング(温度リップル)を生じやすい。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、温度リップルを小さく抑えられる定着装置を提供することを目的とする。
本発明は下記の構成を特徴とする定着装置である。
加熱体と、弾性層を備え内周面が前記加熱体と摺動する可撓性を有する回転体と、前記回転体を介して前記加熱体とニップ部を形成する加圧部材と、前記回転体の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知温度に応じて前記加熱体への電力供給を制御する制御手段と、を有し、前記ニップ部で記録材を挟持搬送しつつ記録材上の未定着トナー画像を記録材に加熱定着する定着装置において、
記録材の先端が前記ニップ部に進入する前に、前記温度検知手段の検知温度に応じて電力を供給する状態から前記温度検知手段の検知温度に拘わらず所定電力を供給する状態に切り換わるタイミングがあり、前記所定電力は記録材の坪量に応じて設定される所定電力であり、第1の坪量の記録材の場合に設定される第1の所定電力が、第1の坪量よりも大きい第2の坪量の記録材の場合に設定される第2の所定電力よりも小さく、記録材の先端が前記ニップ部に進入する時は前記所定電力を供給する状態であり、且つ、記録材の後端が前記ニップ部に進入する前に前記所定電力を供給する状態は終了し、前記所定電力を供給する状態が終わると前記温度検知手段の検知温度に応じて電力を供給する状態で未定着トナー画像の定着処理を行うことを特徴とする定着装置。
これにより、オーバーシュートや温度リップルを小さく押さえて正確な温度制御を行うことを可能とすることにより、定着装置の寿命を延ばしつつ、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができる。
以上説明したように、本発明によれば、定着装置において定着部材として弾性層を有する定着ベルトを用いた場合でも定着部材の正確な温調制御を行い、その結果グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができ、また耐久性が高く高寿命な定着装置を提供することができる。
本発明の実施の形態について説明する。
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
〈実施の形態1〉
(1)画像形成装置例
図1は、本発明の実施の形態1に係るカラー画像形成装置を示す概略構成図である。本例の画像形成装置は電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。
この画像形成装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部1Yと、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部1Mと、シアン色の画像を形成する画像形成部1Cと、ブラック色の画像を形成する画像形成部1Bkの4つの画像形成部(画像形成ユニット)を備えており、これらの4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されている。
各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkには、それぞれ感光ドラム2a、2b、2c、2dが設置されている。各感光ドラム2a、2b、2c、2dの周囲には、帯電ローラ3a、3b、3c、3d、現像装置4a、4b、4c、4d、転写ローラ5a、5b、5c、5d、ドラムクリーニング装置6a、6b、6c、6dがそれぞれ設置されており、帯電ローラ3a、3b、3c、3dと現像装置4a、4b、4c、4d間の上方には露光装置7a、7b、7c、7dがそれぞれ設置されている。各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーが収納されている。
画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの各感光ドラム2a、2b、2c、2dの各1次転写部Nに、転写媒体としての無端ベルト状の中間転写体40が当接している。中間転写ベルト40は、駆動ローラ41、支持ローラ42、2次転写対向ローラ43間に張架されており、駆動ローラ41の駆動によって矢印方向(時計方向)に回転(移動)される。
1次転写用の各転写ローラ5a、5b、5c、5dは、各1次転写ニップ部Nにて中間転写ベルト40を介して各感光ドラム2a、2b、2c、2dに当接している。
2次転写対向ローラ43は、中間転写ベルト40を介して2次転写ローラ44と当接して、2次転写部Mを形成している。2次転写ローラ44は、中間転写ベルト40に接離自在に設置されている。
中間転写ベルト40の外側の駆動ローラ41近傍には、中間転写ベルト40の表面に残った転写残トナーを除去して回収するベルトクリーニング装置45が設置されている。
また、2次転写部Mの記録材Pの搬送方向下流側には定着装置12が設置されている。
また、この画像形成装置内には環境センサ50とメディアセンサ51が設置されている。
画像形成動作開始信号(プリント開始信号)が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの各感光ドラム2a、2b、2c、2dは、それぞれ帯電ローラ3a、3b、3c、3dによって一様に本実施の形態では負極性に帯電される。
そして、露光装置7a、7b、7c、7dは、入力されるカラー色分解された画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光を帯電された各感光ドラム2a、2b、2c、2d上にそれぞれ走査露光して静電潜像を形成する。
そして、まず静電潜像が形成された感光ドラム2a上に、感光ドラム2aの帯電極性(負極性)と同極性の現像バイアスが印加された現像装置4aによりイエローのトナーを感光体表面の帯電電位に応じて静電吸着させることで静電潜像を顕像化し、現像像とする。このイエローのトナー像は、1次転写部Nにて1次転写バイアス(トナーと逆極性(正極性))が印加された転写ローラ5aにより、回転している中間転写ベルト40上に1次転写される。イエローのトナー像が転写された中間転写ベルト40は画像形成部1M側に回転される。
そして、画像形成部1Mにおいても、前記同様にして感光ドラム2bに形成されたマゼンタのトナー像が、中間転写ベルト40上のイエローのトナー像上に重ね合わせて、1次転写部Nにて転写される。
以下、同様にして中間転写ベルト40上に重畳転写されたイエロー、マゼンタのトナー像上に、画像形成部1C、1Bkの感光ドラム2c、2dで形成されたシアン、ブラックのトナー像を各1次転写部Nにて順次重ね合わせて、フルカラーのトナー像を中間転写ベルト40上に形成する。
そして、中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー像先端が2次転写部Mに移動されるタイミングに合わせて、レジストローラ46により記録材(転写材)Pを2次転写部Mに搬送して、この記録材Pに、2次転写バイアス(トナーと逆極性(正極性))が印加された2次転写ローラ44によりフルカラーのトナー像が一括して2次転写される。フルカラーのトナー像が形成された記録材Pは定着装置12に搬送されて、定着ベルト20と加圧ローラ22間の定着ニップ部でフルカラーのトナー像を加熱、加圧して記録材P表面に溶融定着した後に外部に排出され、画像形成装置の出力画像となる。そして、一連の画像形成動作を終了する。
尚、画像形成装置内には環境センサ50を有しており、帯電、現像、1次転写、2次転写のバイアスや定着条件は画像形成装置内の雰囲気環境(温度、湿度)に応じて変更可能な構成となっており、記録材Pに形成されるトナー像濃度の調整のためや、最適な転写、定着条件を達成するために用いられる。また、画像形成装置内にはメディアセンサ51を有しており、記録材Pの判別を行うことによって、転写バイアスや定着条件は記録材に応じて変更可能な構成となっており、記録材Pに対する最適な転写、定着条件を達成するため用いられる。
上記した1次転写時において、感光ドラム2a、2b、2c、2d上に残留している1次転写残トナーは、ドラムクリーニング装置6a、6b、6c、6dによって除去されて回収される。また、2次転写後に中間転写ベルト40上に残った2次転写残トナーは、ベルトクリーニング装置45によって除去されて回収される。
(2)定着装置12
図2は本実施例における定着装置12の概略構成模型図である。本例の定着装置12は、定着ベルト加熱方式、加圧用回転体駆動方式(テンションレスタイプ)の加熱装置である。
1)装置12の全体的構成
20は第一の回転体(第一の定着部材)としての定着ベルトであり、ベルト状部材に弾性層を設けてなる可撓性を有する円筒状(エンドレスベルト状、スリーブ状)の部材である。この定着ベルト20は後記6)項で詳述する。
22は第二の回転体(第二の定着部材)としての加圧ローラである。17は加熱体保持部材としての、横断面略半円弧状樋型の耐熱性・剛性を有するヒータホルダ、16は加熱体(熱源)としての定着ヒータであり、ヒータホルダ17の下面に該ホルダの長手に沿って配設してある。定着ベルト20は、内周面が加熱体と摺動する。定着ベルト20はこのヒータホルダ17にルーズに外嵌させてある。定着ヒータ16は本実施例では後記2)項で詳述するようなセラミックヒータである。
ヒータホルダ17は、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂で形成し、定着ヒータ16を保持し、定着ベルト20をガイドする役割を果たす。本実施例においては、液晶ポリマーとして、デュポン社のゼナイト7755(商品名)を使用した。ゼナイト7755の最大使用可能温度は、約270℃である。
加圧ローラ22は、ステンレス製の芯金に、射出成形により、厚み約3mmのシリコーンゴム層を形成し、その上に厚み約40μmのPFA樹脂チューブを被覆してなる。この加圧ローラ22は芯金の両端部を装置フレーム24の不図示の奥側と手前側の側板間に回転自由に軸受保持させて配設してある。この加圧ローラ22の上側に、前記の定着ヒータ16・ヒータホルダ17・定着ベルト20等から成る定着ベルトユニットをヒータ16側を下向きにして加圧ローラ22に並行に配置し、ヒータホルダ17の両端部を不図示の加圧機構により片側98N(10kgf)、総圧196N(20kgf)の力で加圧ローラ22の軸線方向に附勢することで、定着ヒータ16の下向き面を定着ベルト20を介して加圧ローラ22の弾性層に該弾性層の弾性に抗して所定の押圧力をもって圧接させ、加熱定着に必要な所定幅の定着ニップ部27を形成させてある。加圧機構は、圧解除機構を有し、ジャム処理時等に、加圧を解除し、記録材Pの除去が容易な構成となっている。
18と19は第一と第二の温度検知手段としてのメインとサブの2つのサーミスタである。第一の温度検知手段としてのメインサーミスタ18は加熱体である定着ヒータ16に非接触に配置され、本実施例ではヒータホルダ17の上方において定着ベルト20の内面に弾性的に接触させてあり、定着ベルト20の内面の温度を検知する。第二の温度検知手段としてのサブサーミスタ19はメインサーミスタ18よりも熱源である定着ヒータ16に近い場所に配置され、本実施例では定着ヒータ16の裏面に接触させてあり、定着ヒータ16裏面の温度を検知する。
メインサーミスタ18は、ヒータホルダ17に固定支持させたステンレス製のアーム25の先端にサーミスタ素子が取り付けられ、アーム25が弾性揺動することにより、定着ベルト20の内面の動きが不安定になった状態においても、サーミスタ素子が定着ベルト20の内面に常に接する状態に保たれる。
図3に、本実施例の定着装置における、定着ヒータ16、メインサーミスタ18、サブサーミスタ19の位置関係をあらわす斜視模型図を示す。メインサーミスタ18は定着ベルト20の長手中央付近に、サブサーミスタ19は定着ヒータ16の端部付近に配設され、それぞれ定着ベルト20の内面、定着ヒータ16の裏面に接触するよう配置されている。
メインサーミスタ18、及びサブサーミスタ19は、その出力がそれぞれA/Dコンバータ64・65を介して制御回路部(CPU)21に接続され、制御回路部21は、メインサーミスタ18、サブサーミスタ19の出力をもとに、定着ヒータ16の温調制御内容を決定し、電力供給部(加熱手段)としてのヒータ駆動回路部28(図2・図4)によって定着ヒータ16への通電を制御する。
23と26は装置フレーム24に組付けた入り口ガイドと定着排紙ローラである。入り口ガイド23は、二次転写ニップを抜けた記録材Pが、定着ヒータ16部分における定着ベルト20と加圧ローラ22との圧接部である定着ニップ部27に正確にガイドされるよう、転写材を導く役割を果たす。本実施例の入り口ガイド23は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂により形成されている。
加圧ローラ22は駆動手段(図不示)により矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。この加圧ローラ22の回転駆動による該加圧ローラ22の外面と定着ベルト20との、定着ニップ部27における圧接摩擦力により円筒状の定着ベルト20に回転力が作用して該定着ベルト20がその内面側が定着ヒータ16の下向き面に密着して摺動しながらヒータホルダ17の外回りを矢印の方向に従動回転状態になる。定着ベルト20内面にはグリスが塗布され、ヒータホルダ17と定着ベルト20内面との摺動性を確保している。
加圧ローラ22が回転駆動され、それに伴って円筒状の定着ベルト20が従動回転状態になり、また定着ヒータ16に通電がなされ、該定着ヒータ16が昇温して所定の温度に立ち上げ温調された状態において、定着ニップ部27の定着ベルト20と加圧ローラ22との間に未定着トナー像を担持した記録材Pが入り口ガイド23に沿って案内されて導入され、定着ニップ部27において記録材Pのトナー像担持面側が定着ベルト20の外面に密着して定着ベルト20と一緒に定着ニップ部27を挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において、定着ヒータ16の熱が定着ベルト20を介して記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像tが記録材P上に加熱・加圧されて溶融定着される。定着ニップ部27を通過した記録材Pは定着ベルト20から曲率分離され、定着排紙ローラ26で排出される。
2)メインサーミスタ18
メインサーミスタ18は図2,3に示すように、定着ベルト20の長手中央付近に配置され、定着ベルト20の内面に接触するよう配置されている。このメインサーミスタ18は、定着ニップ部の温度により近い温度である定着ベルト20の温度を検出する手段として用いている。よって、通常の動作においては、メインサーミスタ18の検知温度が目標温度になるよう、温調制御される。
3)サブサーミスタ19
サブサーミスタ19は図3に示すように、定着ヒータ16の端部付近に配設され、定着ヒータ16の裏面に接触するよう配置されている。このサブサーミスタ19は、加熱体である定着ヒータ16の温度を検出し、定着ヒータの温度が所定温度以上にならないようにモニターする、安全装置としての役割を果たしている。
また、サブサーミスタ19により、立ち上げ時の定着ヒータ16の温度のオーバーシュートや、端部の昇温をモニターし、例えば端部の昇温により定着ヒータ20の端部の温度が所定の温度を超えた場合には、それ以上に端部昇温が悪化しないようにスループットを落とす等の制御を行う為の判断に用いられる。
4)定着ヒータ16
熱源としての定着ヒータ16は、本実施例では、窒化アルミの基板上に、銀・パラジウム合金を含んだ導電ペーストをスクリーン印刷法によって均一な厚さの膜状に塗布することで抵抗発熱体を形成した上に耐圧ガラスによるガラスコートを施した、セラミックヒータを使用している。
図4はそのようなセラミックヒータの一例の構造模型図であり、(a)は一部切欠き表面模型図、(b)は裏面模型図、(c)は拡大横断面模型図である。
この定着ヒータ16は、
(1).通紙方向と直交する方向を長手とする横長の窒化アルミ基板a、
(2).上記の窒化アルミ基板aの表面側に長手に沿ってスクリーン印刷により線状あるいは帯状に塗工した、電流が流れることにより発熱する銀パラジウム(Ag/Pd)合金を含んだ導電ペーストの、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の抵抗発熱体層b、
(3).上記の抵抗発熱体層bに対する給電パターンとして、同じく窒化アルミ基板aの表面側に銀ペーストのスクリーン印刷等によりパターン形成した、第1と第2の電極部c・d及び延長電路部e・f、
(4).抵抗発熱体層bと延長電路部e・fの保護と絶縁性を確保するためにそれ等の上に形成した、定着ベルト20との摺擦に耐えることが可能な、厚み10μm程度の薄肉のガラスコートg、
(5).窒化アルミ基板aの裏面側に設けたサブサーミスタ19
等からなる。
上記の定着ヒータ16は表面側を下向きに露呈させてヒータホルダ17に固定して支持させてある。
上記定着ヒータ16の第1と第2の電極部c・d側には給電用コネクタ30が装着される。ヒータ駆動回路部28から上記の給電用コネクタ30を介して第1と第2の電極部c・dに給電されることで抵抗発熱体層bが発熱して定着ヒータ16が迅速に昇温する。ヒータ駆動回路部28は制御回路部(CPU)21により制御される。
通常使用においては、加圧ローラ22の回転開始とともに、定着ベルト20の従動回転が開始し、定着ヒータ16の温度の上昇とともに、定着ベルト20の内面温度も上昇していく。定着ヒータ16への通電は、PID制御によりコントロールされ、定着ベルト20の内面温度、すなわち、メインサーミスタ18の検知温度が190℃になるように、入力電力が制御される。
5)定着ヒータ駆動回路部28
図5は定着手段の温度制御手段としての制御回路部(CPU)21と定着ヒータ駆動回路部28のブロック図である。上記定着ヒータ16の給電用電極部c・dは給電コネクタ(不図示)を介してこの定着ヒータ駆動回路部28に接続されている。
定着ヒータ駆動回路部28において、60は交流電源、61はトライアック、62はゼロクロス発生回路、21は制御回路部(CPU)である。トライアック61は制御回路部21により制御される。トライアック61は定着ヒータ16の発熱抵抗体層bに対する通電・遮断を行う。
交流電源60はゼロクロス検知回路62を介して制御回路部21にゼロクロス信号を送出する。制御回路部21はこのゼロクロス信号を基にトライアック61を制御する。このようにして定着ヒータ駆動回路部28から定着ヒータ16の発熱抵抗体層bに通電されることで、定着ヒータ16の全体が急速昇温する。
定着ベルト20の温度を検知するメインサーミスタ18と定着ヒータ16の温度を検知するサブサーミスタ19の出力はそれぞれA/Dコンバータ64・65を介して制御回路部(CPU)21に取り込まれる。
制御回路部21はメインサーミスタ18からの定着ヒータ16の温度情報をもとにトライアック61により定着ヒータ16に通電するAC電圧を位相、波数制御等により、ヒータ通電電力を制御して定着ヒータ16の温度が所定の制御目標温度(設定温度)に維持されるように制御する。
すなわち、メインサーミスタ18、サブサーミスタ19の温度は電圧値として制御回路部21でモニターされ、これにより定着ベルト20の温度が所定の設定温度に温調維持されるように、また定着ヒータの16が所定温度内で駆動されるように定着ヒータ16への通電電力の制御が行われる。
代表的な温度制御方式としてはPID制御が用いられる。また電力の制御法としては、波数制御や位相制御などがあるが、ここでは位相制御を用いて説明する。
すなわちメインサーミスタ18の温度を制御回路部21が2μsecごとに検知し、制御回路部21内で所望の温調温度に制御するようにPID制御にて定着ヒータ16への電力供給量を決定する。たとえば電力の指定を5%刻みで行うには、一般に電源から供給される交流波形の1半波にたいして5%刻みの通電角を用いて行われる。通電角はゼロクロス発生回路62にてゼロクロス信号を検知したときを起点にトライアック61をONするタイミングとして求められる。
6)定着ベルト20
本実施の形態において、定着ベルト20はベルト状部材に弾性層を設けてなる円筒状(エンドレスベルト状)の部材である。
具体的には、SUSにより、厚み30μmの円筒状に形成したエンドレスベルト(ベルト基材)上に、厚み約300μmのシリコーンゴム層(弾性層)を、リングコート法により形成した上に、厚み30μmのPFA樹脂チューブ(最表面層)を被覆してなる。このような構成で作成した定着ベルト20の熱容量を測定したところ、12.2×10−2J/cm・℃(定着ベルト1cmあたりの熱容量)であった。
(1).定着ベルトの基層
定着ベルト20の基層にはポリイミドなどの樹脂を用いることも出来るが、ポリイミドよりもSUSやニッケルといった、金属のほうが、熱伝導率がおよそ10倍と大きく、より高いオンデマンド性を得ることができることから、本実施の形態においては、定着ベルト20の基層には、金属であるSUSを用いた。
(2).定着ベルトの弾性層
定着ベルト20の弾性層には、比較的熱伝導率の高いゴム層を用いている。これはより高いオンデマンド性を得る為である。本実施の形態で用いた材質は比熱が約12.2×10−1J/g・℃である。
(3).定着ベルトの離型層
定着ベルト20の表面には、フッ素樹脂層を設けることで、表面の離型性を向上し、定着ベルト20表面にトナーが一旦付着し、再度記録材Pに移動することで発生するオフセット現象を防止することができる。また、定着ベルト20の表面のフッ素樹脂層を、PFAチューブとすることで、より簡便に、均一なフッ素樹脂層を形成することが可能となる。
(4).定着ベルトの熱容量
一般に、定着ベルト20の熱容量が大きくなると、温度立ち上がりが鈍くなり、オンデマンド性が損なわれる。たとえば、定着装置の構成にも拠るが、スタンバイ温調無しで、1分以内での立ち上がりを想定した場合、定着ベルト20の熱容量は約4.2J/cm・℃以下である必要があることが分かっている。
本実施の形態においては、室温状態からの立ち上げの際に、定着ヒータ16に約1000Wの電力を投入して、定着ベルト20が190℃に20秒以内に立ち上がる様に設計してある。シリコーンゴム層には、比熱が約12.2×10−1J/g・℃の材質を用いており、このとき、シリコーンゴムの厚みは500μm以下でなければならなく、定着ベルト20の熱容量は約18.9×10−2J/cm・℃以下である必要がある。また、逆に、4.2×10−2J/cm・℃以下にしようとすると、定着ベルト20のゴム層が極端に薄くなり、OHT透過性やグロスムラなどの画質の点において、弾性層を持たないオンデマンド定着装置と同等になってしまう。
本実施の形態においては、OHT透過性やグロスの設定など高画質な画像を得るために必要なシリコーンゴムの厚みは200μm以上であった。この際の熱容量は8.8×10−2J/cm・℃であった。
つまり、本実施の形態と同様の定着装置の構成における、定着ベルト20の熱容量は4.2×10−2J/cm・℃以上4.2J/cm・℃以下が一般的に対象となる。この中で、よりオンデマンド性と高画質の両立を図ることができる、熱容量8.8×10−2J/cm・℃以上18.9×10−2J/cm・℃以下の定着ベルトを用いることとした。
(3)通紙開始時における定着装置の温度制御
本実施の形態では定着ヒータ16に投入する電力を補正する際に、記録材Pの坪量による熱容量の違いを考慮した、定着ヒータに必要となる必要電力値と略同一の電力を、記録財Pが定着ニップ部に突入するタイミングとあわせて投入することとした。これは、同条件で連続通紙を行った場合において、必要電力値は記録材Pの坪量によって変動する事が実験的に分かっているからである。
本実施の形態においては、実験によって求まった必要電力値からペーパーモードによって場合分けしたテーブルに従って定着ヒータ16に投入する電力を補正する。実際にはユーザーがプリントモードを指定することによって、ホストコンピュータ70よりプリントモード情報を、プリント信号とともに受信し、制御回路部21により通紙時の投入電力を決定する。
表1に本実施の形態における各ペーパーモードと通紙時投入電力の関係を示す。
Figure 2009025831
PID制御を行わず所定の電力を投入する時間は定着ベルト20の温度リップルを最小限にするように選んだものである。通紙開始時の記録材Pの突入前から補正した電力を投入する。これは、記録材Pの定着ニップ部への突入と同時に補正電力を投入すると、定着ベルト20の温度の低下が大きくなってしまう場合があるためである。補正電力投入のタイミングが早すぎると定着ベルト20の温度の上昇が大きくなってしまい、遅すぎると前出したように記録材Pの定着ニップ部への突入後に定着ベルト20の温度の低下が生じてしまう。本実施の形態においては、適切なタイミングである約0.5秒を用いた。また、PID制御を行わず所定の電力を投入する時間が短すぎると、通常のPID制御に近づくため、所定電力投入の効果が小さくなってしまう。長すぎると通紙時に伴う定着ベルト20の温度の変動が大きくなりPID制御に戻った際に温度リップルが大きくなってしまう。このため、本実施の形態では通紙開始前約0.5秒から約1秒間、所定電力投入制御を行うこととした。
図10に本実施の形態における、電力制御方法についてのフローチャートを示す。
以下にフローに従って、実際の補正動作について説明する。
図10において、画像形成装置は電源ON後にプリント信号を受信可能な状態に立ち上がる(a1)。図不示のホストコンピュータからプリントコマンドを受信(a2)すると、プリント信号からペーパーモードを読み取る(a3)。プリンタ内の制御回路部(CPU)21は、表1に示すようにペーパーモードに対応した通紙時投入電力E2(W)を決定する(a4)。その後、制御回路部21はヒータ駆動回路28を駆動することにより、定着ベルト20を所定温度に温調すべく、ヒータ21の立ち上げ温調制御を開始する(a5)。定着ベルト20が所定温度付近になり、立ち上げ温調が終了(a6)すると、プリント温調温度である190℃を目標温度に設定してPID制御により目標温度に温調される(a7)。その後、記録材突入の約0.5秒前まで、PID制御を行いながら、目標温度で待機する(a8)。
記録材突入の約0.5秒前になると、PID制御を中止し、a4時に決定された通紙時投入電力として所定の電力E2(W)を出力し(a9)、記録材突入後約約0.5秒後まで継続して、E2(W)を投入しつづける(a10)。その後、プリント温調温度である190℃を目標温度に設定してPID制御を再開する(a11)。
以上の動作をプリント終了まで続け(a12)、プリントジョブが終了した時点で、温調制御が終了する(a13)。この補正は、プリンタ内の制御回路部(CPU)21内に備えられた、ペーパーモードと通紙時投入電力E2(W)のテーブル(表1)に基づいて行う。
以上、説明したように、記録材Pの突入タイミングの前後一定時間、PID制御を中止し、定着ヒータに投入される電力を所定の値に補正して投入することによって、温度検知のむだ時間による通紙開始時の記録材Pの突入に伴う温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行うことができる。
さらに、記録材Pの坪量による熱容量の違いを考慮した、所定電力の補正を行うことによって、記録材Pの熱容量にかかわらず、安定した温度制御を行うことが出来る。
(4)本実施の形態を用いた場合の、温度測定結果および画像出力実験結果
本実施の形態においては、通紙開始時の記録材突入前の約0.5秒から約1秒間、PID制御を禁止するとともに表1に基づいた固定電力を投入し、その後PID制御を再開するようにした。このとき投入される電力は先述したように用いる紙の坪量に従い決定されるものである。PID制御を禁止し、所定の電力を投入する時間については、上述した理由から記録材突入前の約0.5秒から約1秒間としてある。
1)実験方法
定着装置はプロセススピード87mm/secで回転し、メインサーミスタ18の検知温度を190℃となるように温調され、十分な時間が経過している。
この状態で、坪量が128g/mであるニューNPI上質紙128g(日本製紙、商品名)という記録材を連続通紙(16枚/分)した。
この際、定着スリーブ20内面温度として、メインサーミスタ18の温度測定値を記録した。また、電力についてはYOKOGAWA製WT200 DIGITAL POWER METERを介して電力値の出力を同じくキーエンス製PC用温度レコーダーNR250にてA/D変換しPCに取り込むことにより測定した。
定着後画像の光沢度については、測定器として、日本電色工業株式会社製の光沢度計PG−3Dを使用し、JIS Z 8741における75度鏡面光沢度測定方法により測定を行った。
記録材上のトナー量としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの、いわゆる1次色のべた画像部のトナー量が約0.5〜0.6mg/cm、レッド、グリーン、ブルーの、いわゆる2次色(二色のトナーを重ねた画像)のべた画像部のトナー量が約1.0〜1.2mg/cmの状態で定着を行い、定着後画像の光沢度を測定した。
定着性を評価する為の擦り試験としては、記録材P上に5mm×5mmの黒単色のべ夕画像を形成し、本実施の形態における定着装置を用いて50枚連続して16ppmの速度で定着し、その後、画像形成面上にシルボンC(商品名)を介して所定重量(200g)のおもりを載せた状態で画像形成面を5往復摺擦させ、その摺擦の前後での、画像の反射濃度低下率(%)を求めた。この反射濃度の変化率(濃度低下率)が小さいほど定着性が良いと言える。反射濃度の測定にはGretag Macbeth RD918(商品名)を用いた。測定には定着した50枚の記録材のうち1,2,3,5,10,20,30,40,50枚目の記録材の各被記録紙で9点の濃度低下率を測定して、その最悪値を用いた。
2)実験結果
図7に本実施の形態を用いた場合の定着装置における通紙前後での定着ヒータ16に投入する電力と定着ベルト20内面温度の挙動を記録したグラフを示す。
図7に示すように記録材Pの定着ニップ部突入前後において、安定した温調(温度リップル約7℃)を示した。
このとき、記録材Pの定着ニップ部突入前後に定着ヒータ16に投入される電力は、空回転時の約80Wから記録材Pが定着ニップ部に突入する0.5秒前に、強制的に約300Wが投入されており、記録材Pが定着ニップ突入した後に大きな電力変動を生じることなく、安定した温調制御を行うことができた。
このように、約7℃以内の温度リップルを保つことができれば、出力された印刷物の一枚内でのグロス変動は、単色で約4、2次色では約6であった。表2に、本実施の形態における、各色のグロスの、記録材1枚内での平均値及び記録材1枚内でのグロス変動幅を示す。このように本発明を適用することにより平均値が比較的高く、記録材1枚内での変動幅も小さい、安定したグロスを得ることが出来た。
Figure 2009025831
また、定着性試験における濃度低下率の最悪値は15%であり、良好な定着性を得ることができた。
(5)比較例1
従来の定着装置においては、記録材P突入前後での所定電力投入を行わず、全てPID制御により温調制御を行っている。
1)実験方法
第一の実施の形態における実験と同様の定着装置構成、測定方法を用いて実験を行ったので、ここでは省略する。ただし、従来の定着装置における制御は上述したとおり、所定電力投入を行わず、全てPID制御により温調制御を行った点が異なる。
2)実験結果
図6に比較例1の定着装置における、記録材の定着ニップ部突入前後に定着ヒータ16に投入される電力と、定着ベルト20内面の温度挙動を記録したグラフを示す。
図6に示すように記録材Pが定着ニップ部に突入する前の空回転時においては、定着スリーブ20内面温度は安定した挙動を示すものの、記録材Pがの定着ニップ部に突入した直後に、定着スリーブ20内面温度は、目標温度に対して約10℃低い値まで降下した後、目標温度に対して約7℃高い温度まで上昇する。その後、定着スリーブ20内面温度が安定するまでに、約10秒を要し、温度リップルは約17℃となった。そして、その後の記録材P連続通紙においては、安定した温調(温度リップル約6℃)を示した。
このように、約17℃の温度リップルを生じた場合、試験に用いたインライン型の電子写真方式カラー画像形成装置においては出力された印刷物のグロスは、記録材P一枚内において、単色で約9、2次色では約14変動し、画質の低下を招いた(表3)。
Figure 2009025831
また、定着性試験における濃度低下率の最悪値は28%であった。定着性が20%を超えるような場合には、画像をユーザーが使用している時に、文字がはがれたり、ハーフトーン画像がぼやけてしまうばかりでなく、手や衣服やほかの紙が汚れるといった問題が発生する。
記録材P内の、濃度低下率の大きい領域は、定着ベルト20内面の温度が落ち込んだ領域と一致しており、温度リップルが生じることによる部分的な温度低下が、定着性に影響を及ぼしていることが分かった。このように、本比較例においては、測定ポイントによる定着性のばらつきが大きく、定着装置として、十分な性能が得られない。
(6)考察
記録材Pが定着ニップ部に突入する前後に、所定の値に固定された電力を投入することによる効果は、以下のように考えられる。
空回転時および通紙時における、安定した状態において、定着ヒータ16に投入される電力は、ほぼ一定である。定常時における前回転時必要電力値をE1(W)、記録材通紙時の呈上時に必要とされる電力値をE2(W)とする。
記録材Pが定着ニップ部に突入するとき、記録材により、定着ベルト20温度が急激に降下する。通常のPID制御であれば、温度変動をメインサーミスタ18によって検知してから、電力制御が行われる。このため、メインサーミスタ18が発熱部から離れて設置されている場合、急激な温度変化が生じた際に、メインサーミスタ18の検知温度が、定着ヒータ16や定着ニップ部の温度の実際の温度と異なる値を示すため、過剰に電力が投入されたり、逆に投入電力が不足する場合がある。そのため、温度リップルが生じ、定着スリーブ20内面温度が安定しない。
これに対して、本実施例においては、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングとあわせて、あらかじめ必要とされる電力E2(W)を固定値として投入するため、電力の過不足が生じない。したがって、通常のPID制御よりも温度リップルを小さくすることが可能となる。
所定電力の投入は長時間は必要でなく、ある程度定着ベルト20内面温度が安定するまでの区間投入すれば、その後は通常のPID制御に復帰しても、十分安定した温調制御が可能である。
また、記録材Pの性質によって、通紙により定着ベルト20から奪われる熱量は異なるため、本実施の形態においては、特に記録材Pの坪量に着目し、熱容量の違いを考慮した略必要電力に補正した。
これにより、安定した温度制御(温度リップル約7℃)が達成できた。
(7)所定電力値について
尚、通紙開始時に投入される所定電力値はE2(W)と略同一であれば良く、E2(W)との電力差の大きさについては所望の温度リップルとなる範囲であれば良い。
すなわち、本実施の形態においてはペーパーモードにより、記録材が定着ニップ部に突入する前後に投入する所定電力(通紙時オフセット電力)を決定している。このとき、ペーパーモードの対応メディアにおいて必要な電力が厳密に一致していなくても、略同一であればよい。これは、一定時間の所定電力投入後はPID制御に戻ることによって、再び目標温度に近づくように制御されるからである。つまり、厳密に一致していない場合に温度が目標温度から遠ざかることになるが、その後再びPID制御により、目標温度に近づく様に制御されるわけである。そのときの温度変動が所望の温度リップル内であれば良い。
一般にプリントスピードが高速の場合においては記録材Pの坪量の違いに伴う適切な通紙時オフセット電力の違いの差がさらに大きくなるため、本実施の形態よりさらに細かく通紙時オフセット電力の場合分けを行うことが必要である。このような場合には、ペーパーモードをさらに細かくすることや、紙厚センサなどを利用して坪量と対応させることにより、さらに細かい坪量と通紙時オフセット電力の対応を行うことで、所望の温度リップル内での温度制御が可能である。
(8)まとめ
以上、本実施の形態においては、通紙開始時の記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミング前後に、一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータ16に投入される電力を所定の値に補正して投入することによって、温度検知のむだ時間による通紙開始時の記録材Pの突入に伴う温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行うことができた。
また、投入する電力値を決定する際に、記録材Pの坪量による熱容量の違いを考慮し、補正を行うことにより、さらに正確に安定した温度制御を行うことができた。
温度リップルを小さく押さえることで、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果良好な定着性を示し、定着温調温度が不適切な場合に発生する画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高品質な画像を得ることができた。
〈実施の形態2〉
本実施の形態では、通紙開始時の記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータ16に投入される電力を所定の電力に補正して投入する際に、メディアセンサを用いて定着装置からの伝熱性や熱容量が特殊な記録材Pを検知し、その伝熱性や熱容量を考慮した略必要電力値に補正することによって、温度検知のむだ時間による、記録材Pが定着ニップ部に突入した際の温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行う方法について説明する。
本実施の形態では、定着装置の大まかな構成と制御は実施の形態1と同様である。しかし、定着ヒータ16に投入される電力を所定の電力に補正する際に、定着装置からの伝熱性や熱容量が特殊な記録材Pの、伝熱性や熱容量を考慮した略必要電力値に補正することが異なる。
画像形成装置の構成は実施の形態1と同様であり、図1に示すとおりである。また、定着装置の構成は、実施の形態1と同様で図2〜4に示した通りであり、重複する説明は省略する。
記録材P表面の平滑性が悪い、いわゆるラフ紙と呼ばれる記録材や、OHTなどのフィルム系の記録材においては定着装置から記録材Pへの伝熱性や熱容量が異なることから、定着時の条件が同じであっても、所定の電力に補正する際に必要な電力が異なる。
これは、略同一な坪量の記録材において、一般的な平滑紙の熱の伝わりに比べて、ラフ紙においては表面の平滑性が悪いことにより熱の伝わりが悪く、また、OHTなどのフィルム系の記録材においては表面性が良いことと、材質が違うために熱容量が大きいことから定着の際により多くの熱量を必要とするからである。
より正確な温度制御を行う為には、定着ヒータ16に投入される電力を所定の電力に補正する際に、定着装置からの伝熱性や熱容量が特殊な記録材Pの伝熱性や熱容量を考慮した略必要電力値に補正することが有効である。よって、これらのメディアの違いをメディアセンサ51で判別することによって伝熱性や熱容量を考慮した略必要電力値に補正することとした。
メディアセンサ51の構成概略図を図8に示す。メディアセンサ51は光源としてLED33、読取手段としてCMOSセンサ34、結像レンズとしてレンズ35、36を有している。LED33を光源とする光は、レンズ35を介し、記録材搬送ガイド31もしくは記録材搬送ガイド31上の記録材P表面に照射される。この反射光は、レンズ36を介し集光されてCMOSセンサ34に結像される。これによって、記録紙搬送ガイド31もしくは記録材Pの表面映像を読み取る。これにより、記録材Pの紙繊維の表面状態を読み込み、そのアナログ出力をA/D変換しディジタルデータとする。ディジタルデータのゲイン演算及びフィルタ演算は、制御プロセッサ(図不示)によってプログラマブルに処理される。そして、映像比較演算をおこない、この映像比較演算結果に基づき紙種を判定する。
本実施の形態では定着ヒータ16に投入する電力を補正する際に、メディアセンサ51により記録材がラフ紙、またはOHTなどのフィルム系の記録材であることを検知することにより記録材Pの伝熱性や熱容量の違いを考慮した略必要電力に補正することにした。ここで実施の形態1における所定電力値は、同一ペーパーモード内においても、記録材Pがラフ紙である場合やOHTなどのフィルム系の記録材である場合には異なる補正値を用いるものとした。
表4に本実施の形態における各ペーパーモードと通紙時投入電力の関係を示す。
Figure 2009025831
記録材Pが一般的な伝熱性および熱容量をもつメディアの場合には、実施の表4の「平滑紙」欄の値を用いる。
記録材がラフ紙の場合には表4に示すように、補正値を一般的な平滑紙に比べて小さくし、また、OHTなどのフィルム系の記録材(フィルムメディア)の場合には補正値を一般的な平滑紙に比べて大きくした。
次に、本実施の形態を用いた場合の実際の補正動作について説明する。
図11に本実施の形態における、記録材Pが定着ニップ部に突入タイミングの前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータに投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、メディアセンサを用いて定着装置からの伝熱性や熱容量が特殊な記録材Pを検知し、その伝熱性や熱容量を考慮して定着ヒータ16に必要となる必要電力値を投入する方法についてのフローチャートを示す。
以下にフローに従って、実際の補正動作について説明する。
図11において、画像形成装置は電源ON後にプリント信号を受信可能な状態に立ち上がる(b1)。不図示のホストコンピュータからプリントコマンドを受信(b2)すると、プリント信号からペーパーモードを読み取る(b3)。その後、制御回路部21はヒータ駆動回路28を駆動することにより、定着ベルト20を所定温度に温調すべく、ヒータ21の立ち上げ温調制御を開始する(b4)。その後、メディアセンサ51により記録材Pが普通紙であるか、ラフ紙(伝熱性が低く、熱容量の小さい記録材)であるか、フィルムメディア(伝熱性が高く、熱容量の大きい記録材)であるかを判別する(b5)。その後、プリンタ内の制御回路部(CPU)21は、表1、4に示すようにペーパーモードと記録材の特性(普通紙であるか、ラフ紙であるか、フィルムメディアであるか)に対応した通紙時投入電力E2(W)を決定する(b6)。定着ベルト20が所定温度付近になり立ち上げ温調が終了(b7)すると、プリント温調温度である190℃を目標温度に設定してPID制御により目標温度に温調される(b8)。その後、記録材が定着ニップ部に突入する約0.5秒前まで定着器を駆動、温調しつつ、待機する(b9)。
記録材が定着ニップ部に突入する約0.5秒前を検知した際に(b9)、PID制御を禁止し、b6時に決定された通紙時投入電力E2(W)を出力し(b10)、記録材た定着ニップ部へ突入した後約約0.5秒経過するまで、E2を投入し続ける(b11)。その後、プリント温調温度である190℃を目標温度に設定してPID制御を再開する(b12)。
以上の動作をプリント終了まで継続し(b13)、プリントジョブが終了すると同時に、温調制御が終了する(b14)。
以上、説明したように、通紙開始時の記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後一定時間、PID制御を禁止し、定着ヒータに投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、メディアセンサを用いて定着装置からの伝熱性や熱容量が特殊な記録材Pを検知し、その伝熱性や熱容量を考慮した略必要電力値に補正することによって、温度検知のむだ時間に記録材Pが定着ニップ部に突入した際に、定着ベルトの温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行うことができる。
次に、本実施の形態を用いた場合の、温度挙動の安定化や、画質改善の効果を、従来例や実施の形態1との比較により示すため、以下に示す条件で、定着装置の温度挙動を測定し、定着画像の確認を行った。
定着装置はプロセススピード87mm/secで回転し、メインサーミスタ検知温度を190℃一定になるように温調され十分な時間が経過している。この状態において、ラフメディアとして、坪量が75g/mであるFoxRiverBond(Fox River、商品名)と、フィルムメディアとして、坪量が166g/mであるカラーレーザー光沢フィルム GF−2(Canon販売、商品名)を連続通紙(16枚/分)した。
この際に、定着スリーブ20内面温度として、メインサーミスタ18の温度測定値を記録した。
また、電力についてはYOKOGAWA製WT200 DIGITAL POWER METERを介して電力値の出力を同じくキーエンス製PC用温度レコーダーNR250にてA/D変換しPCに取り込むことにより測定した。
通紙前に定着ヒータ16に投入される電力はそれぞれの条件において略同一であり、約80Wであった。
表5に比較例1の定着装置と実施の形態1、2における通紙前後での温度リップルを示す。
Figure 2009025831
表5から分かるように、本実施の形態を行うことによって、さらに安定した温度制御(温度リップル約7℃)が達成できた。
これは次のような根拠による。
十分に温まった定着装置において、FoxRiverBond(75g/m)は坪量から該当するペーパーモードで定着ヒータ16に投入される電力は実施の形態1においては275Wである。しかし、この記録材はいわゆるラフ紙と呼ばれる伝熱性が悪く、熱容量の小さい記録材であり、記録材に与えられる熱量が、通常の平滑紙に比べて小さくなる為、所定電力を投入した際に相対的に電力過剰の状態となる。このため、記録材Pが定着ニップ部に突入時した際に温度上昇が発生し、温度リップルが一般的な平滑紙に比べて大きくなる。
実施の形態2においては、ラフ紙を判別することによって、記録材が定着ニップ部に突入する前後で投入される電力は、ラフ紙の低伝熱性、低熱容量という性質を考慮して、小さく設定されていることから、記録材Pの突入時の温度上昇がおさえられる為、温度リップルが小さくなる。
OHTなどのフィルム系の記録材においては、ラフ紙とは逆方向の補正により、同様の効果が得られる。
このように、本実施の形態においては、記録材Pがラフ紙やOHT等のフィルムメディアである場合に、メディアセンサの検知結果にしたがって記録材が定着ニップ部に突入する際に投入される所定電力値の値補正することによって、安定した温度制御(温度リップル約7℃)が達成できた。
尚、本実施の形態においてはラフ紙とOHTなどのフィルム系記録材の判別による、投入電力の変更について説明したが、ラフ紙以外の、定着装置からの伝熱性や熱容量が特殊な記録材Pについても同様な補正によって通紙時オフセット電力を決定することが可能である。
〈実施の形態3〉
本実施の形態では、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータ16に投入される電力を所定の電力に補正して投入する際に、定着装置の蓄熱具合により、所定電力値を補正することによって、記録材Pが定着ニップ部に突入した際の温度変動を抑え、より安定した温度制御を行う方法について説明する。
本実施の形態では、定着装置の大まかな構成と制御は実施の形態1、2と同様である。しかし、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後で、所定電力で定着ヒータ16に投入される電力を補正する際に、所定電力値を、定着装置の蓄熱具合を考慮した値に補正することが異なる。
画像形成装置の構成は実施の形態1と同様であり、図1に示すとおりである。また、定着装置の構成は、実施の形態1、2と同様で図2〜4に示した通りである。よって重複する説明は省略する。
本実施の形態では記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後に、所定電力で定着ヒータ16に投入する電力を補正する際に、定着装置の蓄熱具合を考慮した略必要電力に補正することとした。
つまりは、空回転時に安定した温調を行うために必要な電力を、「空回転オフセット電力」として、記録材Pの通紙時に、安定した温調を行う為に必要な電力を、「通紙時に投入される所定電力」とする。
このとき、「通紙時に投入される所定電力=空回転オフセット電力+通紙時オフセット電力」となるように、「通紙時オフセット電力」を定義する。また、本実施の形態においては、空回転オフセット電力を定着装置の蓄熱具合によって変動するものとした。
空回転オフセット電力や、通紙時オフセット電力の最適値は、定着装置の蓄熱具合によって変動する。例えば、室温状態の定着装置の立ち上げ直後の、最適な空回転オフセット電力は約200W、十分に温まった定着装置においては、空回転オフセット電力は約80Wが最適である。
また、ペーパーモードが厚紙1の場合、通紙時オフセット電力は、室温状態からの定着装置立ち上げ直後では420W、十分に温まった状態においては300Wが最適である。
本実施の形態においては、このような、定着装置の蓄熱具合によって定着ヒータ16に投入する電力が異なる場合においても、所定電力値を補正し、より精密な温調制御に対応できるようにした。
表6に、本実施の形態の定着装置が十分に温まっている状態での、各ペーパーモードにおける通紙時オフセット電力を示す。前述した実施の形態1では、定着装置が十分に温まっている状態であり、この時の空回転オフセット電力は80Wに相当する。この電力と表6に示す通紙時オフセット電力を足し合わせたものは、実施の形態1の表1に示した通紙時投入電力と等しい。
Figure 2009025831
また、定着装置の蓄熱具合は室温状態からの立ち上げ後の定着ヒータ16への電力投入時間に依存することが分かっているため、本実施の形態においては印字カウントに従い空回転オフセット電力を変更することとした。印字カウントとは室温状態からの立ち上げ後に連続印字した場合の、定着装置のA4サイズ紙の印字枚数に対応するカウント数である。印字カウントとヒータホルダ温度、空回転オフセット電力は再現良く表7に示すような関係を示すことが分かった。
Figure 2009025831
さらに、本実施の形態においては、プリントジョブ終了後、定着装置が蓄熱した状態で再び立ち上げ制御を行う場合には、ヒータ16へ通電を開始する直前の、サブサーミスタ19の検知温度に応じて、定着装置の蓄熱具合を予想し、定着器の蓄熱具合が同等となる印字カウントを決定して、空回転オフセット電力を決定している。具体的には通電開始時のサブサーミスタ19の検知温度が40℃以下であるときには立ち上げ後のヒータホルダ温度が55℃以下であることが予想される為、印字カウントは1であるとして、連続印字されれば1枚毎にカウントを2、3、4と増加させ、それに伴い空回転オフセット電力は下げる制御を用いる。以下同様にして、立ち上げ開始前の検知温度が41〜55℃であるときには、ヒーターホルダ温度が60℃程度であると予想されるため、印字カウントは2あるとする。同様に、検知温度が56〜75℃であるときには印字カウント3、検知温度が76〜95℃であるときには印字カウント4、検知温度が96〜125℃であるときには印字カウント6、検知温度が126℃以上であるときには印字カウント10として、空回転オフセット電力を決定する。
図12に本実施の形態における、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータに投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、定着装置の蓄熱具合を考慮した必要電力値と略同一に補正する方法についてのフローチャートを示す。
以下にフローに従って、実際の補正動作について説明する。
図12において、画像形成装置は電源ON後にプリント信号を受信可能な状態に立ち上がる(c1)。図不示のホストコンピュータからプリントコマンドを受信(c2)すると、プリント信号からペーパーモードを読み取る(c3)。そして、サブサーミスタ19の温度Taを検知する(c4)。この検知温度Taから、表7にしたがって、空回転オフセット電力(W)を決定する(c5)。その後、制御回路部21はヒータ駆動回路28を駆動することにより、定着ベルト20を所定温度に温調すべく、ヒータ21の立ち上げ温調制御を開始する(c6)。その後、メディアセンサ51により記録材Pが普通紙であるか、ラフ紙(伝熱性の低い記録材)であるか、フィルムメディア(伝熱性の高い記録材)であるかを判別する(c7)。その後、プリンタ内の制御回路部(CPU)21は、表6に示すようにペーパーモードと記録材の性質(普通紙であるか、ラフ紙であるか、フィルムメディアであるか)に対応した通紙時オフセット電力(W)を決定する(c8)。定着ベルト20の温度が所定温度に近づき、立ち上げ温調が終了(c9)すると、プリント温調温度である190℃を目標温度に設定してPID制御により目標温度に温調される(c10)。その後、記録材が定着ニップ部に突入する約0.5秒前まで、定着装置を駆動、温調した状態で待機させる(c11)。
定着ニップ部に記録材が突入する約0.5秒前を検知した時点で、PID制御を禁止し、c5で決定された空回転オフセット電力(W)とc8で決定された通紙時オフセット電力(W)との和の電力(W)を出力し(c12)、記録材突入後から約0.5秒後まで継続して、この電力を印加しつづける(c13)。その後、プリント温調温度である190℃を目標温度に設定してPID制御を再開する(c14)。
以上の動作をプリント終了まで継続し(c15)、プリントジョブが終了すると同時に、温調制御が終了する(c16)。
以上、説明したように、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータに投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、定着装置の蓄熱具合を考慮した略必要電力値に補正することによって、温度検知のむだ時間により、記録材P体定着ニップ部の突入した際に、定着ベルト20の温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行うことができる。
本実施の形態においては、定着器の室温状態から、耐久中の高温状態までの幅広い条件において通紙時に投入する電力が精度良く決定できる為、さらに安定した温度制御を行うことができる。
このようにして定着器の蓄熱具合によらず安定した温度制御(温度リップル約7℃)が達成できた。
以上、本実施の形態では、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミング前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータ16に投入される電力を所定の電力に補正して投入する際に、定着装置の蓄熱具合を考慮した、略必要電力値に補正することによって、温度検知のむだ時間による通紙開始時の記録材Pの突入に伴う温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行うことができた。
このように、温度リップルを小さく押さえることで、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果良好な定着性を示し、定着温調温度が不適切な場合に発生する画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができた。
〈実施の形態4〉
本実施の形態では、録材Pが定着ニップ部に突入するタイミング前後に、PID制御を禁止し、定着ヒータ16に投入される電力を所定の電力に補正して投入する際に、環境センサを用いて記録材Pの水分量の違いを考慮した略必要電力に補正することによって、記録材Pが定着ニップ部に突入した際に、定着ベルトの温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行う方法について説明する。
本実施の形態では、定着装置の大まかな構成と制御は実施の形態3と同様である。しかし、定着ヒータ16に投入される電力を補正する際に、記録材Pの環境放置状態による熱容量の違いを考慮した略必要電力に補正することが異なる。
画像形成装置の構成は実施の形態1と同様であり図1に示すとおりである。また、定着装置の構成は、実施の形態1、2、3と同様で図2〜4に示した通りであり、重複する説明は省略する。
本実施の形態では定着ヒータ16に投入する電力を補正する際に、環境センサ50により環境を検知することにより記録材Pの放置された環境による熱容量の違いを考慮した略必要電力に補正することにした。補正電力を考えるときに空回転オフセット電力補正分と通紙時オフセット電力補正分の和を補正電力として扱い、ここで通紙時オフセット電力を記録材Pの吸湿具合によって変動するものとし、高含水量環境(例えばH/H(30℃/80%Rh)環境)においてはより多くの電力を投入することとした。
図9に3種類の環境における各坪量の放置紙を連続通紙したときに必要な電力を示す。条件は以下のとおりである。プロセススピードは87mm/sec、190℃一定温調にて十分な時間が経過した状態で測定した。図9に示すように、H/H環境においては、各坪量の環境放置紙の連続通紙(16枚/分)時の定着ヒータ16に投入する、温度維持に必要な電力は、L/L(15℃.10%)環境放置紙やJ/J(24.5℃.45%)環境放置紙の場合に比べて、約30W大きいと言う傾向を示した。
H/H環境放置紙において連続通紙(16枚/分)時の定着ヒータ16に投入する電力が大きくなるのは、紙が吸湿していることにより熱容量が大きくなっていることによる。
本実施の形態は、高湿度環境放置紙を用いた場合の連続通紙時の定着ヒータ16に投入する温度維持に必要な電力が、通常環境或いは低湿度環境放置しを用いた場合に比べて高いことに対応させる為に行うものである。
表8に本実施の形態におけるペーパーモードと通紙時オフセット電力の関係を示す。
Figure 2009025831
図13に、本実施の形態における、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータ16に投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、環境センサを用いて記録材Pの環境放置状態の違いを考慮して定着ヒータ16に必要となる必要電力値と略同一になるよう投入電力を補正する方法についてのフローチャートを示す。
以下にフローに従って、実際の補正動作について説明する。
図13において、画像形成装置は電源ON後にプリント信号を受信可能な状態に立ち上がる(d1)。不図示のホストコンピュータからプリントコマンドを受信(d2)すると、プリント信号からペーパーモードを読み取る(d3)。そして、サブサーミスタ19の温度Taを検知する(d4)。この検知温度Taから、表7にしたがって、空回転オフセット電力(W)を決定する(d5)。その後、環境センサ50により画像形成装置の雰囲気環境の絶対水分量X(g/kg:乾燥空気1kg中の水分量)を算出し、その絶対水分量が21(g/kg)以上であれば、高含水量環境、そうでなければ一般環境であると判別する(d6)。その後、制御回路部21はヒータ駆動回路28を駆動することにより、定着ベルト20を所定温度に温調すべく、ヒータ21の立ち上げ温調制御を開始する(d7)。その後、メディアセンサ51により記録材Pが普通紙であるか、ラフ紙(伝熱性が低く、熱容量の小さい記録材)であるか、フィルムメディア(伝熱性が高く、熱容量の大きい記録材)であるかを判別する(d8)。その後、プリンタ内の制御回路部(CPU)21は、表6、8に示すようにペーパーモードと記録材の性質(普通紙であるか、ラフ紙であるか、フィルムメディアであるか)、また雰囲気環境(高含水量環境であるか、一般環境であるか)に対応した通紙時オフセット電力(W)を決定する(d9)。定着ベルト20温度が所定の値に近づき、立ち上げ温調が終了(d10)すると、プリント温調温度である190℃を目標温度に設定してPID制御により目標温度に温調される(d11)。その後、記録材が定着ニップ部に突入する約0.5秒前を検知するまで、定着装置は駆動、温調された状態で待機する(d12)。
記録材が定着ニップ部に突入するの約0.5秒前を検知した後、PID制御を禁止し、d5時に決定された空回転オフセット電力(W)とd8時に決定された通紙時オフセット電力(W)との和の電力(W)を投入し(d13)、記録材が定着ニップ部に突入した後約0.5秒経過するまで継続する(d14)。その後、プリント温調温度である190℃を目標温度に設定してPID制御を再開し、定着ベルト20温度は目標温度に温調される(d15)。
プリント終了までPID制御を継続し(d16)、プリントジョブ終了と同時に温調制御が終了する(d17)。この補正は、プリンタ内の制御回路部(CPU)21内に、サブサーミスタ19の検知温度Taと空回転オフセット電力(W)のテーブル(表7)と、ペーパーモードとメディアセンサ51の判別結果による記録材の性質(普通紙であるか、ラフ紙であるか、フィルムメディアであるか)と雰囲気環境(高含水量環境であるか、一般環境であるか)をパラメータとして持つ、通紙時オフセット電力E2(W)決定用テーブル(表6、8)を備え、そのテーブルに基づいて行う。
以上、説明したように、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミング前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータ16に投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、環境センサを用いて記録材Pの環境放置状態の違いを考慮した略必要電力に補正することによって、記録材Pが定着ニップ部に突入した際の温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行うことができる。
次に、本実施の形態を用いた場合の、定着ベルト20温度挙動や、画質に対する効果を、従来例や実施の形態3との比較により示す。
実験条件は次に示すとおりである。
定着装置はプロセススピード87mm/secで回転し、メインサーミスタ検知温度を190℃一定になるように温調され十分な時間が経過している。この状態で、通常の平滑紙として、坪量が64g/mであるオフィスプランナー(Canon販売、商品名)と、105g/mであるニューNPI上質紙105g(日本製紙、商品名)というメディアのJ/J(24.5℃/45%Rh)環境放置紙と、H/H(30℃.80%)環境放置紙を連続通紙(16枚/分)した。
この際に、定着スリーブ内面温度として、メインサーミスタ18出力をモニターした。
また、電力についてはYOKOGAWA製WT200 DIGITAL POWER METERを介して電力値の出力を同じくキーエンス製PC用温度レコーダーNR250にてA/D変換しPCに取り込むことにより測定した。
通紙前に定着ヒータ16に投入される電力はそれぞれの条件において略同一であり、約80Wであった。
表9に従来の定着装置と実施の形態3、4における通紙前後での温度リップルを示す。
Figure 2009025831
表9から分かるように、本実施の形態を行うことによって、さらに安定した温度制御(温度リップル約7℃)が達成できた。
これは次のような根拠による。
十分に温まった定着装置の通紙前の空回転時において温度維持に必要な電力は約80Wであり、J/J(24.5℃.45%)環境においてペーパーモードが普通紙のとき(61〜105g/m)、このペーパーモードにおける通紙時オフセット電力を用いて電力補正を行うとき、投入される電力は275W(80+195W)である。一方、H/H(30℃.80%)環境放置紙であるNPI(105g/m)で連続通紙(16枚/分)を行った場合、記録材の熱容量が大きい為、定着装置の温度維持に必要な電力はJ/J環境放置紙を使用した場合より大きく、この差から温度リップルを生じてしまう。
本実施の形態においては、高含水量環境でない場合の投入電力は275Wであるのに対し、高含水量環境であるH/H環境においては290W(80+210W)を投入することとした。
上記制御により、記録材の放置環境を問わず、常に適切な電力補正が行われるため,所望の温度リップル(約7℃)での温度制御が達成できた。
このように、本実施の形態においては、記録材Pの環境放置状態の違いを考慮して、記録材が定着ニップ部に突入する際に投入する電力を補正することによって、安定した温度制御(温度リップル約7℃)が達成できた。
尚、H/H環境などの高含水量環境時はペーパーモードにおける通紙時オフセット電力を変更している。このとき、ペーパーモードの対応メディアにおいて必要な電力が厳密に一致していなくても、略同一であればよく、そのときの温度変動が所望の温度リップル内であれば良い。
一般にプリントスピードが高速の場合においては、記録材Pの吸湿量の違いに伴う適切な通紙時オフセット電力の違いの差がさらに大きくなるため、高含水量環境時において、開直紙と放置紙を区別する必要が生じる場合がある。このような場合には記録材Pへの転写時における転写バイアスの情報などを利用して開直紙と放置紙を区別することにより、所望の温度リップル内での温度制御が可能である。以上、本実施の形態では、記録材Pが定着ニップ部に突入するタイミングの前後一定時間PID制御を禁止し、定着ヒータ16に投入される電力を所定の電力に補正して投入する際に、環境センサを用いて記録材Pの環境放置状態の違いを考慮した略必要電力に補正することによって、記録材Pが定着ニップ部に突入する際の温度変動を生じることなく、より安定した温度制御を行うことができた。
このように、温度リップルを小さく押さえることで、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果良好な定着性を示し、定着温調温度が不適切な場合に発生する画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができた。
〈参考例1〉
本参考例においては、紙突入時だけでなく、前回転時においても固定電力を投入する区間を設け、前回転中の温度リップルを小さくすることにより、より安定した定着性能を確保する方法について説明する。
(1)画像形成装置例
本参考例では、画像形成装置の構成は実施の形態1と同様であり図1に示すとおりである。よって、重複する説明は省略する。
(2)定着装置12
本参考例では、定着装置の構成は、実施の形態1、2、3と同様で図2〜4に示した通りであり、重複する説明は省略する。
(3)定着装置の立ち上げ温度制御
図18を用いて本参考例における定着装置の制御シーケンスについて説明する。本参考例においては、次のようにして立ち上げ温度制御を行っている。
すなわち、「立ち上げ電力(第一電力レベル)出力」→「所定温度検知」→「一定電力(第二電力レベル)投入」→「PID制御」、である。
「立ち上げ電力(第一電力レベル)」には、オンデマンド性を確保する為に、定着ヒータ16には電力1000Wが投入される。加圧ローラ22の回転に伴い、定着ベルト20は従動回転しながら定着ヒータ16により加熱される。本参考例においては「立ち上げ電力(1000W)」投入後、すぐには「PID制御」に移行せず、メインサーミスタ18の検知温度が所定温度(目標温度−20℃:本参考例では、目標温度は190℃であることから、190℃−20℃=170℃)に達したときに、約1.5秒間、「第二の電力レベルである所定電力(約200W)」を投入した後に「PID制御」に移行し、以後は「PID制御」により定着ヒータ16への投入電力は制御するようにした。
図22に本参考例における、立ち上げ温調中にフィードバック制御を禁止する領域を設け、前記領域内において、定着ヒータ16に投入される電力に、定着装置温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、定着装置温度を安定させるための第二電力レベルと、の二段階の電力レベルを用い、立ち上げ温調中に所定温度を検知した後に切り替える方法についてのフローチャートを示す。
以下にフローに従って、実際の補正動作について説明する。
図22において、画像形成装置は電源ON後にプリント信号を受信可能な状態に立ち上がる(e1)。不図示のホストコンピュータからプリントコマンドを受信(e2)すると、制御回路部21はヒータ駆動回路28を駆動することにより、定着ベルト20を所定温度に温調すべく、ヒータ21の立ち上げ温調制御を開始する(e3)。まず、立ち上げ電力(第一の電力レベル)として、1000Wを投入する(e4)。その後メインサーミスタ18の温度をモニターし(e5)、メインサーミスタ18の検知温度が所定温度(目標温度−20℃:本参考例では、目標温度は190℃であることから、190℃−20℃=170℃)を検知するまで定着装置を駆動させた状態で待機させる(e6)。
メインサーミスタ18が所定温度を検知した時点で、第二の電力レベルである所定電力として200Wが、定着ヒーター16に投入される(e7)。この電力は1.5秒間継続して投入され(e8)、1.5秒経過したら、立ち上げ温調制御を終了して(e9)、PID制御に移行する(e10)。以降は、実施の形態4と同様の制御(図13、d11〜d17に記載されたものと同様。図22中では、「通常温調」と表現した。)を行う。以上の動作をプリントが終了まで続け(e11)、プリントジョブが終了したら、温調制御が終了する(e12)。
以上、説明したように、立ち上げ温調中にフィードバック制御を禁止する領域を設け、前記領域内において、定着ヒータ16に投入される電力に、定着装置温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、定着装置温度を安定させるための第二電力レベルと、の二段階の電力レベルを用い、立ち上げ温調中に所定電力を検知した後に、第一電力レベルから第二電力レベルに切り替えることによって、オーバーシュートや温度リップルを生じることなく、より安定した温度制御を行うことができる。
次に、本参考例を用いた場合の定着装置の温度プロファイルと、定着性及び光沢度の測定結果を示す。
本実験の内容は、次のとおりである。
1)測定方法
定着装置の定着ベルト20内面温度として、メインサーミスタ18の出力をモニターした。
また、電力についてはYOKOGAWA製WT200 DIGITAL POWER METERを介して電力値の出力をキーエンス製PC用温度レコーダーNR250にてA/D変換しPCに取り込むことにより測定した。
定着後画像の光沢度(グロス)については、次の方法を用いて測定を行った。測定器として、日本電色工業株式会社製の光沢度計PG−3Dを使用し、JISZ 8741における75度鏡面光沢度測定方法により測定を行った。記録材上のトナー量としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの、いわゆる1次色のべた画像部のトナー量が約0.5〜0.6mg/cm、レッド、グリーン、ブルーの、いわゆる2次色のべた部が約1.0〜1.2mg/cmの状態で定着を行い、定着後画像の光沢度を測定した。
定着性を評価する為の擦り試験としては、記録材P上に5mm×5mmの黒単色のべ夕画像を形成し、本参考例における定着装置を用いて50枚連続して16ppmの速度で定着し、その後、画像形成面上にシルボンC(商品名)を介して200gのおもりを載せ、画像形成面を5往復摺擦させ、その摺擦の前後で画像の反射濃度の低下率(%)を求めた。この反射濃度の変化率(濃度低下率)が小さいほど定着性が良いと言える。測定には定着した50枚の記録材のうち1,2,3,5,10枚目で、9点の濃度低下率を測定して、その最悪値を用いた。
2)実験条件
本実験において、定着装置は室温から立ち上げるものとする。定着装置は、動作を開始するのとほぼ同時に、定着ヒータ16に第一の電力(1000W)が投入され、メインサーミスタ18の検知温度が目標温度170℃(目標温度(190℃)−20℃)になるまでこの電力を投入した。
メインサーミスタ18の検知温度が170℃に達した時点で約1.5秒間PID制御を禁止し、第二の電力(約200W)を投入する。第二の電力投入から1.5秒後に、立ち上げの目標温度を190℃として、PID制御を再開し、目標温度で一定になるように温調を行った。その後、坪量が75g/mであるゼロックス4024(Xerox、商品名)という記録材を連続通紙した。
尚、投入した約200Wの電力は空回転状態で190℃温調を行う為に必要な電力、つまりは目標温度での温度維持に必要な電力値である。
また、耐久試験として、本参考例における定着装置を用い、2枚間欠の連続印字を15万枚行い、耐久後の加圧ローラのトルクを測定した。
3)実験結果
図19に本参考例を用いた場合の定着装置における立ち上げ温調での定着ヒータ16に投入する電力と定着ベルト20内面の温度挙動をあらわすグラフを示す。
図19に示すように立ち上げによるオーバーシュートも含めて安定した温調(温度リップル約7℃、目標温度に対して±3.5℃)を示した。
温度リップルが約7℃の場合には、試験に用いたインライン型の電子写真方式カラー画像形成装置においては、出力された印刷物のグロスは単色で約4の変動幅であり、また、2次色では約6の変動幅と小さかった(表10)。
Figure 2009025831
また、耐久試験として、坪量75g/m、USレターサイズのゼロックス4024紙を15万枚、2枚間欠でプリントした。定着性の濃度低下率の最悪値は13%であり、各測定ポイントでのばらつきも少なく、安定した良好な定着性を得ることができた。
さらに、目標温度に近いところで定着できる為、記録材や印字パターンによらずホットオフセットなどの定着不良が生じることなく高品質な画像を得ることができた。
また、耐久試験後の、駆動トルクを測定したところ約3.0kgf・cmであった。このとき定着装置の不具合は見られなかった。
(4)比較例2
図20を用いて比較例における定着装置の立ち上げ時の制御シーケンスについて説明する。
本比較例においては、「立ち上げ電力(1000W)出力」→「所定温度(170℃)検知」→「PID制御」、という立ち上げ制御を行っている。すなわち、定着ヒータ16に、第一の電力(1000W)を投入し、メインサーミスタ18の検知温度が170℃に達した時点で、立ち上げの目標温度を190℃として、PID制御に移行し、第二の電力を投入する区間を持たないことを特徴とする。
このとき、図21に示すように、PID制御中にオーバーシュートが発生し、また、オーバーシュートに伴う温度リップルも大きくなってしまう。
本比較例の定着装置を用いた場合における定着ベルト温度挙動測定、定着性評価、および耐久試験結果を示す。
1)実験方法
参考例1における定着装置を用いた実験と同様にして行ったのでここでは省略する。
2)実験条件
室温状態である定着装置は、動作するのとほぼ同時に定着ヒータ16に、第一の電力(1000W)が投入され、メインサーミスタ18の検知温度が目標温度170℃になるまで第一の電力を投入した。その後、第二の電力投入は行わず、目標温度を190℃としたPID制御に移行する。その後、坪量が75g/mであるゼロックス4024(Xerox、商品名)というメディアを連続通紙(16枚/分)した。
また、参考例1で説明したものと同様の耐久試験を実施した。
3)実験結果
図21に従来例における立ち上げ温調での定着ヒータ16に投入する電力と定着ベルト20裏面の温度挙動をあらわすグラフを示す。
図21に示すように、定着ベルト20裏面温度は、約9秒で所望の温度に立ち上がるものの、その後オーバーシュートを起こし、約210℃まで温度が上昇した。その後、定着ベルト20裏面温度は、上下動を繰り返し、目標温度である190℃に対して温度リップル7℃以内で安定するまでに、さらに10秒程度を要した。
このようなオーバーシュートを生じた場合、試験に用いたインライン型の電子写真方式カラー画像形成装置においては、出力された印刷物のグロスは一枚の出力紙内で、単色で約8変動し、また、2次色では約13変動し、画質の低下を招いた(表11)。
Figure 2009025831
また、定着性の濃度低下率の最悪値は22%であった。濃度低下率が20%を超えるような場合には、画像をユーザーが使用している時に、文字がはがれたり、ハーフトーンの画像がぼやけてしまうばかりでなく、手や衣服やほかの紙が汚れたりする等の問題が発生した。
さらに、オーバーシュートの途中で紙が通紙された場合、記録材や印字パターンによらずホットオフセットなどの定着不良が生じてしまうという問題を生じた。
また、耐久試験後の定着装置の駆動トルクを測定したところ約4.5kgf・cmであった。このとき、条件によっては定着装置の駆動中に定着ベルトのスリップが発生することがあった。
(5)考察
まず、オーバーシュートと温度リップルについて述べる。
本参考例を用いた場合に効果の得られる理由は次のようである。従来の定着装置においては、定着ベルト20の弾性層に用いられるシリコーンゴムの熱伝導率が小さく、熱容量が大きいため、定着ヒータ16の昇温に対する定着ベルト20の温度応答性が悪い。また、メインサーミスタ18の位置が発熱部である定着ヒータ16から離れていることによる検知タイミングの遅れがあることから、立ち上げ時のように、温度が急激に上昇する場合には、メインサーミスタ18の検知温度は、定着ニップ部の温度を大きく下回る値を示すこととなる。そのため、定着ヒータ16の温度が実際には十分昇温しているにも関わらず、メインサーミスタ18の検知温度は十分上昇していない為、高い電力が投入されつづけることとなり、オーバーシュートを生じる。
また、一旦オーバーシュートを生じると、メインサーミスタ18が、一定のタイムラグの後、所望の温度より高いことを検知し、電力を抑える制御を行う。このとき、電力を抑えて、定着ヒータ16の発熱量を小さくし、定着ニップ部の温度が適正となっても、メインサーミスタ18は、検知温度が高いと認識してしまう。このため、必要以上に電力を抑えることとなってしまい、アンダーシュートを生じる。このオーバーシュート、アンダーシュートの繰り返しが、温度リップルとなって現れる。
さらに本定着装置においては、温度の応答性が悪い定着ベルト20を用いた状態でオンデマンド性を確保するべく、立ち上げ電力に大きな電力(1000W)を用いる為に、その後すぐさまPID制御などのフィードバック制御に戻った場合、電力の変動幅が大きく、温度変動の大きい不安定な制御となる。
ここで、立ち上げ電力投入後、メインサーミスタ18の検知温度が所定温度(目標温度−20℃)に達したときに、約1.5秒間所定電力(約200W)を投入することで、PID制御に移行する際の電力変動を比較的緩やかにすることにより、オーバーシュートを小さくし、また、オーバーシュートに伴う温度リップルも小さくすることができる。
次に、定着部材の耐久性について述べる。
従来例のように立ち上げにおいて定着スリーブ20内面温度が約210℃まで達する場合、定着ヒータ16と定着ベルト20内面の間に介在するグリスが、急速に劣化する。定着ベルト20と、定着ヒータ16をはじめとするベルト内部の構成物との動摩擦力は、特にグリスの状態に大きく影響され、グリスが不必要な部位に移動することにより量が減少した場合や、グリス自体が劣化した場合には、この動摩擦力が大きくなることが知られている。
このため、定着装置の耐久が進むと、定着装置のトルクが上昇し、最悪の場合、定着ヒータ16をはじめとするベルト内部の構成物との動摩擦力が、加圧ローラ22、もしくは記録材Pとの最大静止摩擦力を超え、定着ベルト20のスリップが発生してしまう。
定着ベルト20と、定着ヒータ16をはじめとするベルト内部の構成物との動摩擦力は、定着装置の駆動時における、駆動手段への負荷のなかでも最も大きな要因である。即ち、定着装置の駆動トルクを測定値によって、代用することができる。
この定着装置の初期状態における駆動トルクは約1.5kgf・cmであり、定着ベルト20のスリップは、この駆動トルクが約4.0kgf・cmを超えると発生する場合があることが分かっている。
参考例1および比較例2においては、耐久寿命が短くなる顕著なものとして、定着ベルト20のスリップを例として挙げたが、定着装置のオーバーシュートが大きい場合には、定着装置内の各部材に過度の負担を強いることから、本参考例を用いてオーバーシュートを防止することで、定着装置内の各部材の寿命を伸ばす効果があることは言うまでもない。
尚、参考例1で説明した、第二の電力の値(約200W)は定着装置の空回転状態で安定して190℃温調を維持する為に必要な電力であり、実験的に求めたものである。ただし、ここで投入する電力は、必要電力と厳密に一致していなくても、略同一であればよい。すなわち、第二電力を投入し、定着装置温度が安定した後はPID制御によっても大幅な電力変動は生じない為、温度リップルを小さくすることができる。
以上、本参考例では、立ち上げ温調中にフィードバック制御を禁止する領域を設け、前記領域内において、定着ヒータ16に投入される電力に、定着装置温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、定着装置温度を安定させるための第二電力レベルと、の二段階の電力レベルを有し、第一の電力を投入した立ち上げ温調中に所定温度を検知した際に、第二の電力に切り替え、定着装置温度が安定した状態でフィードバック制御に復帰することによって、オーバーシュートを生じることなく、より安定した温度制御を行うことができた。
このように、オーバーシュートとそれに伴う温度リップルを小さく押さえることで、定着装置の寿命が長く、また、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果良好な定着性を示し、定着温調温度が不適切な場合に発生する画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができた。
〈参考例2〉
本参考例では、立ち上げ温調中にフィードバック制御を禁止する領域を設け、前記領域内において、定着ヒータ16に投入される電力に、定着装置温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、定着装置温度を安定させるための第二電力レベルと、の二段階の電力レベルを有し、第一電力レベルでの立ち上げ温調中に所定温度を検知した際、第二電力レベルに切り替えることを特徴とする定着装置において、第二電力レベルを、立ち上げ前のサブサーミスタ19の検知温度に基づいて補正することによって、オーバーシュートを生じることなく、より安定した温度制御を行う方法について説明する。
本参考例では、定着装置の大まかな構成と制御は参考例1と同様である。しかし、定着ヒータ16に投入される電力を補正する際に、定着装置の蓄熱具合を考慮した略必要電力に補正することが異なる。
画像形成装置の構成は実施の形態1と同様であり、図1に示すとおりである。また、定着装置の構成は、実施の形態1と同様で図2〜4に示した通りである。よって重複する説明は省略する。
本参考例では、立ち上げ温調中に定着ヒータ16に投入する第二の電力レベルを補正する際に、定着装置の蓄熱具合を考慮した略必要電力に補正することとした。
つまりは、立ち上げ温調中に所定温度を検知した後において、定着装置を目標温度で温度維持するのに必要な、第二の電力レベルを、定着装置の蓄熱具合によって変動するものとした。例えば、室温状態からの定着装置の立ち上げ電力投入後、所定温度を検知した際に、定着装置を目標温度に維持するのに必要な第二の電力レベルが約200W、また十分に温まった定着装置を立ち上げた際に、定着装置を目標温度に維持するのに必要な第二の電力レベルが約80Wであることから、定着装置の蓄熱具合を考慮し、定着装置の蓄熱具合によって定着ヒータ16に投入すべき電力が異なる状況に対応できるようにした。
本参考例においては、通電開始時のサブサーミスタ19の検知温度から定着装置の蓄熱具合を予想し、所定電力値を変更することとした。
図16にヒータホルダ17の温度と定着装置の温度を所定の値に維持するのに必要な電力の値との関係をプロットしたグラフを示す。このように、ヒータホルダ温度と、定着装置の温度を所定の値に維持するのに必要となる電力の値は再現良く図16に示すような関係を示す。
Figure 2009025831
そこで、本参考例においては、プリントジョブ終了後、定着装置に余熱が残った状態で再び立ち上げる場合には、通電開始時のサブサーミスタ19の検知温度に応じて表12に示すように、立ち上げ後のヒータホルダ17の温度を予想し、第二電力レベルの値を決定している。
具体的には、通電開始時のサブサーミスタ19の検知温度が40℃以下であるときには立ち上げ後のヒータホルダ温度が55℃以下であることが予想される為、立ち上げ1として、第二電力レベルの値として、200Wを用いる。
以下同様にして、立ち上げ開始前のサブサーミスタ検知温度が41〜55℃であるときには立ち上げ2とし、56〜75℃であるときには立ち上げ3であるとし、76〜95℃であるときには立ち上げ4であるとし、96〜125℃であるときには立ち上げ5であるとし、126℃以上であるときには立ち上げ6であるとして、第二電力レベルの値を決定する。
図23に本参考例における、立ち上げ温調中にフィードバック制御を禁止する領域を設け、前記領域内において、定着ヒータ16に投入される電力に、定着装置温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、定着装置温度を安定させるための第二電力レベルと、の二段階の電力レベルを有し、立ち上げ温調中に所定温度を検知した後に第一電力レベルから、第二電力レベルに、投入電力レベルを切り替える際に、第二電力レベルを、立ち上げ前のサブサーミスタ19の検知温度に基づいて、定着装置の蓄熱具合を考慮した必要電力値に補正する方法についてのフローチャートを示す。
以下にフローに従って、実際の補正動作について説明する。
図23において、画像形成装置は電源ON後にプリント信号を受信可能な状態に立ち上がる(f1)。不図示のホストコンピュータからプリントコマンドを受信(f2)すると、まず、サブサーミスタの温度Taを検知して(f3)、サブサーミスタの検知温度の結果からテーブル(表12)に従い所定電力(第二の電力レベル)(W)を決定する(f4)。その後、制御回路部21はヒータ駆動回路28を駆動することにより、定着ベルト20を所定温度に温調すべく、ヒータ21の立ち上げ温調制御を開始する(f5)。まず、立ち上げ電力(第一の電力レベル)として、1000Wを投入する(f6)。その後メインサーミスタの温度をモニターし(f7)、メインサーミスタ18の検知温度が所定温度(目標温度−20℃:本実施の形態では、目標温度は190℃であることから、190℃−20℃=170℃)を検知するまで待つ(f8)。
メインサーミスタ18の検知温度が所定温度になると、次に、f4で決定した第二の電力レベルを出力する(f9)。この動作を1.5秒間継続した後(f10)、立ち上げ温調制御が終了して(f11)、PID制御に復帰し、目標温度での温調が行われる(f12)。以降、通常温調制御(図13、d11〜d17に記載されたものと同様の制御)をプリント終了まで続け(f13)、プリントジョブが終了したら、温調制御が終了する(f14)。
以上、説明したように、立ち上げ温調中にフィードバック制御を禁止する領域を設け、前記領域内において、定着ヒータ16に投入される電力に、定着装置温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、定着装置温度を安定させるための第二電力レベルと、の二段階の電力レベルを有し、立ち上げ温調中に所定温度を検知した後に、第一電力レベルから、第二電力レベルに切り替える際に、第二電力レベルを、立ち上げ前のサブサーミスタ19の検知温度に基づいて、定着装置の蓄熱具合を考慮した必要電力値に補正することによって、オーバーシュートを生じることなく、より安定した温度制御を行うことができる。
本参考例を用いた場合の効果については、原理的に参考例1と同様であるため、ここでは省略する。しかし、本参考例においては、室温状態の定着装置から十分に暖まった状態の定着装置まで幅広い条件の定着装置において立ち上げ時に投入する電力が精度良く決定できる為、さらに安定した温度制御を行うことができる。
このようにして定着装置の蓄熱具合によらず安定した温度制御(温度リップル約7℃以内)が達成できた。
このように、オーバーシュートとそれに伴う温度リップルを小さく押さえることで、定着装置の寿命が長く、また、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果良好な定着性を示し、定着温調温度が不適切な場合に発生する画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができた。
また、ここでは立ち上げ前のサブサーミスタ19の検知温度を用いて、ヒータホルダ温度を予測し、所定電力値を決定したが、サブサーミスタを使わず、印字枚数数からヒータホルダ温度を予測し、所定電力値を決定する方法を用いても良い。
〈参考例3〉
本参考例では、立ち上げ温調中にフィードバック制御を禁止する領域を設け、前記領域内において、定着ヒータ16に投入される電力に、定着装置温度をすみやかに立ち上げるための第一電力レベルと、定着装置温度を安定させるための第二電力レベルと、の二段階の電力レベルを用い、立ち上げ温調中に所定温度を検知した後に第一電力レベルから、第二電力レベルへ切り替える際に、第二電力レベルは、ヒータホルダ17に当接させたサーミスタの検知温度に基づいて、定着装置の蓄熱具合を考慮した必要電力値に補正されることによって、オーバーシュートを生じることなく、さらに安定した温度制御を行う方法について説明する。
本参考例では、定着装置の大まかな構成と制御は実施の形態1と同様であるが、図17に示すように、ヒータホルダ17内には第三の温度検知手段としての第三のサーミスタ70が設置されている。定着ヒータ16に投入される電力を補正する際に、第三のサーミスタ70を利用して、定着装置の蓄熱具合を考慮した略必要電力値に補正することが異なる。
画像形成装置の構成は実施の形態1と同様であり、図1に示すとおりである。また、定着装置の構成は、先述したように図2〜4に示した通りである。よって重複する説明は省略する。
本参考例では定着装置の蓄熱具合を考慮する際に、ヒータホルダ17に当接した第三のサーミスタ70を用いて蓄熱具合を直接測定することとした。
このようにする事によって、定着装置の蓄熱具合をより精度よく求めることができる。
図16にヒータホルダ17の温度と、定着装置温度を維持するために必要な、電力値との関係をプロットしたものを示す。このように、ヒータホルダ温度と、定着装置の温度維持に必要となる所定電力値は再現良く図7に示すような関係を示す。
第三のサーミスタ70の検知温度から、図16において線形補間により決定された所定電力値を用いることによって、さらに精度よく必要電力値を求めることができる。
本参考例を用いた場合の効果については、原理的に参考例2と同様であるため、ここでは省略する。しかし、本参考例においては、室温状態の定着装置から十分に暖まった状態の定着装置まで幅広い条件の定着装置において、立ち上げ時に投入する第二電力レベルの値がさらに精度良く決定できる為、非常に安定した立ち上げ温度制御を行うことができる。
このようにすることによって、定着装置の蓄熱具合によらず安定した立ち上げ温度制御(温度リップル約7℃以内)が達成できた。
このように、オーバーシュートとそれに伴う温度リップルを小さく押さえることで、定着装置の寿命が長く、また、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果良好な定着性を示し、定着温調温度が不適切な場合に発生する画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができた。
〈その他〉
1)このように、上述した実施の形態1〜4において、プロセススピードは87mm/sec、プリントスピードは16枚/分、温調温度は190℃、所定電力の投入時間は通紙開始時の記録材突入前の約0.5秒から約1秒間として説明した。しかし、記録材の種類や得たい画像の画質によっては、もしくはより良好な定着性を得る為などの条件によっては、プロセススピードやプリントスピード、温調温度、を異なる設定にしたほうが良い場合が考えられる。このような場合においても、本発明法を適用することによって、温度変動の小さい精度の良い温調を行うことが可能であり、同様の効果が得られる。このとき、補正される所定電力の値と所定電力の投入時間は、プロセススピード、プリントスピード、温調温度によって異なることは言うまでもない。
2)また、上述した各実施の形態において、温度制御を行う為の電力制御として基本的にPID制御を用いる場合について説明した。これは目標温度に素早く近づけ、尚且つ外乱に対しても強い制御方法として用いたものである。よって、P制御、PI制御、またその他のフィードバック制御を用いても温度制御を行うことができ、同様の効果が得られる。
3)また、上述した実施の形態1〜4において、記録材の熱容量や定着装置からの伝熱性の違いを考慮して所定電力の値を決定するために、ペーパーモードや、メディアセンサ、環境センサを用いて説明した。が、実際に定着装置に記録材が突入する前に記録材の熱容量や定着装置からの伝熱性の違いを直接測定する方法を用いて、その結果を所定電力の値に反映することによっても本発明を適用することができ、同様もしくは温度制御の点では更に精度の良い温度制御を行うことができる。
4)また、上述した実施の形態1〜4において、定着装置の蓄熱具合を考慮して所定電力の値を決定するために、定着装置の印字枚数や、通電開始時のサブサーミスタ19の温度を用いて説明したが、実際に定着装置内、例えばヒータホルダ17や加圧ローラ22に新たなサーミスタを追加し、定着装置の蓄熱具合を直接測定する方法を用いても本発明を適用することができ、同様もしくは温度制御の点では更に精度の良い温度制御を行うことができる。
5)また、上述した参考例1〜3において、プロセススピードは87mm/sec、温調温度は190℃、所定電力の投入時間はメインサーミスタ18の検知温度が170℃(目標温度−20℃)の後で、約1.5秒として説明した。しかし、記録材の種類や得たい画像の画質によっては、もしくはより良好な定着性を得る為などの条件によっては、プロセススピードやプリントスピード、温調温度、を異なる設定にしても、本参考例を適用することによって、温度変動の小さい精度の良い温調制御を行うことが可能である。このとき、補正される所定電力の値と所定電力の投入時間は、プロセススピード、温調温度によって異なることは言うまでもない。
6)また、上述した参考例1〜3において、立ち上げ電力制御は2段階の制御として説明したが、3段階以上の制御を用いても差し支えない。この場合は、電力値の設定等、より精密な制御が可能となり、より安定した温調制御が可能となる。
7)また、上述した各実施の形態において、定着ヒータ16に供給する電力を、それぞれの条件に好適な定着装置に必要な所定電力で補正する制御として説明したが、この制御を擬似的に達成する方法として、温調時の目標温度を一時的に変更して定着ヒータ16に供給する電力が結果的に定着装置に必要な所定電力となるように目標温度の変更で補正してもよい。つまり、上述した実施の形態1〜4において、記録材Pが定着ニップ部に突入する約0.5秒前から約1秒間メインサーミスタ18、もしくはサブサーミスタ19の目標温度を記録材Pが突入する前の状態より高く設定して、結果的に定着装置を所定温度に維持するのに必要な電力が投入されるように制御する方法や、上述した参考例1〜3において、メインサーミスタ18の検知温度が170℃(目標温度−20℃)に到達した後で、約1.5秒間目標温度を高く設定し、結果的に定着装置を所定温度に維持するために必要な電力が投入されるように制御する方法を用いてもよく、同様の効果が得られる。
8)また、上述した各実施の形態において、定着装置の第一の温度検知手段は加熱体とは異なる場所にあるものとして説明したが、第一の温度検知手段が加熱体上にあったとしても、例えば、発熱領域と異なる場所にある場合や、温度検知手段の応答性が遅い場合においても、同様の効果が得られる。
9)また、上述した各実施の形態において、定着ベルト20の熱容量は少なくとも4.2×10−2J/cm・℃以上4.2J/cm・℃のもので構成される定着装置を用いて説明した。これは、定着ベルト20の熱容量が4.2×10−2J/cm・℃以上の場合にはオンデマンド性が損なわれ、定着ベルト20の熱容量が4.2J/cm・℃以下の場合には、定着ベルト20の弾性層厚みが十分確保できず、光沢ムラ等の画像不良が現れるためである。しかしながら、上記以外の熱容量を有する定着ベルトを有する定着装置であっても本発明を適用することができ、同様の効果が得ることが可能である。
10)また、本発明の実施の形態においては、定着ベルト20に弾性層を設けた定着装置について説明した。しかしながら、定着部材が実施の形態中で説明した程度の熱容量を持つ定着装置であれば、弾性層の有無は特に問わない。
11)また、加熱体としてセラミック基板上に抵抗発熱体を形成してなるセラミックヒータを用いる定着装置において説明した。これはローコストなカラー用オンデマンド定着装置の加熱体として用いる為であり、加熱体にハロゲンランプや電磁誘導発熱部材を用いることもでき、同様の効果が得られる。
12)また、定着ニップを形成させる第一と第二の定着部材は、実施の形態1ないし4の定着ベルトや加圧ローラの形態に限られるものではない。第一と第二の定着部材の両方に加熱体(熱源)を具備させた形態の装置にすることもできる。
13)また、加熱体は必ずしも定着ニップ部27に位置していなくてもよい。例えば、熱源を定着ニップ部27よりも定着ベルト移動方向上流ないし下流側に位置させて配設することも出来る。
14)また、実施例の定着装置は加圧用回転体駆動方式であるが、エンドレスの定着ベルトの内周面に駆動ローラを設け、定着ベルトにテンションを加えながら駆動する方式の装置であってもよい。
15)また、本発明において定着装置には、未定着画像を記録材上に永久画像として加熱定着させる定着装置ばかりでなく、未定着画像を記録材上に仮定着させる像加熱装置、画像を担持した記録材を再加熱して、光沢等の画像表面性を改質する像加熱装置なども包含される。
16)また、画像形成装置の作像方式は電子写真方式に限られず、静電記録方式、磁気記録方式等であってもよいし、また転写方式でも直接方式でもよい。
本発明の実施の形態におけるカラー画像形成装置の概略構成図 本発明の第一ないし四の実施の形態及び参考例における定着装置の断面模式図 本発明の第一ないし四の実施の形態及び参考例における定着ヒータ・メインサーミスタ・サブサーミスタの位置関係を示す斜視模型図 加熱体としてのセラミックヒータの構成模式図 本発明の定着装置の制御回路部(CPU)と定着ヒータ駆動回路部のブロック図 従来の定着装置を用いてメディアの通紙前後の温度変化と投入電力のグラフ 本発明の第一の実施の形態における定着装置を用いてメディアの通紙前後の温度変化と投入電力のグラフ メディアセンサを示す概略構成図 各環境放置紙を連続通紙する際に必要となる電力のグラフ 本発明の第一の実施の形態における、記録材Pの坪量による熱容量の違いを考慮した定着ヒータ16に必要となる必要電力値と略同一に補正する方法についてのフローチャート メディアセンサを用いて定着装置からの伝熱性が特殊な記録材Pを検知し、その伝熱性を考慮して定着ヒータ16に必要となる必要電力値と略同一に補正する方法についてのフローチャート 定着装置の蓄熱具合を考慮した定着ヒータ16に必要となる必要電力値と略同一に補正する方法についてのフローチャート 環境センサを用いて記録材Pの環境放置状態の違いを考慮して定着ヒータ16に必要となる必要電力値と略同一に補正する方法についてのフローチャート 従来の定着装置における立ち上げ温調での定着ヒータに投入する電力と定着ベルトの温度を示す図 本発明の第四の実施の形態における定着装置における立ち上げ温調での定着ヒータに投入する電力と定着ベルトの温度を示す図 ヒータホルダの温度と所定電力値の関係をプロットした図 参考例3における定着装置の断面模式図 参考例1における定着装置の立ち上げ電力制御図 参考例1における定着装置の立ち上げ温度プロファイル図 従来の定着装置の立ち上げ電力制御図 従来の定着装置の立ち上げ温度プロファイル図 通紙開始時の記録材Pの突入タイミングとあわせて、一定時間PID制御を行わず、定着ヒータに投入される電力を所定の値に補正して投入する際に、環境センサを用いて記録材Pの環境放置状態の違いを考慮して定着ヒータ16に必要となる必要電力値と略同一に補正する方法についてのフローチャート 環境センサを用いて記録材Pの環境放置状態の違いを考慮して定着ヒータ16に必要となる必要電力値と略同一に補正する方法についてのフローチャート 従来のベルト定着方式の定着装置の断面模式図 従来のベルト定着方式において定着ベルト内面当接型のサーミスタを用いた定着装置の断面模式図
符号の説明
1M、1C、1Y、1Bk 画像形成部
2a、2b、2c、2d 感光ドラム
3a、3b、3c、3d 帯電ローラ
4a、4b、4c、4d 現像装置
5a、5b、5c、5d 転写ローラ
6a、6b、6c、6d ドラムクリーニング装置
12 定着装置
16 セラミックヒータ(加熱体)
18 メインサーミスタ(第一の温度検知手段)
19 サブサーミスタ(第一の温度検知手段)
20 定着ベルト(第一の回転体)
21 制御回路部(電力制御部)
22 加圧ローラ(第二の回転体)
28 電源(電力供給部)
40 中間転写ベルト
44 2次転写ローラ
45 ベルトクリーニング装置
46 レジストローラ
50 環境センサ
51 メディアセンサ
P 記録材
N (1次)転写部
M (2次)転写部
t トナー

Claims (1)

  1. 加熱体と、弾性層を備え内周面が前記加熱体と摺動する可撓性を有する回転体と、前記回転体を介して前記加熱体とニップ部を形成する加圧部材と、前記回転体の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知温度に応じて前記加熱体への電力供給を制御する制御手段と、を有し、前記ニップ部で記録材を挟持搬送しつつ記録材上の未定着トナー画像を記録材に加熱定着する定着装置において、
    記録材の先端が前記ニップ部に進入する前に、前記温度検知手段の検知温度に応じて電力を供給する状態から前記温度検知手段の検知温度に拘わらず所定電力を供給する状態に切り換わるタイミングがあり、前記所定電力は記録材の坪量に応じて設定される所定電力であり、第1の坪量の記録材の場合に設定される第1の所定電力が、第1の坪量よりも大きい第2の坪量の記録材の場合に設定される第2の所定電力よりも小さく、記録材の先端が前記ニップ部に進入する時は前記所定電力を供給する状態であり、且つ、記録材の後端が前記ニップ部に進入する前に前記所定電力を供給する状態は終了し、前記所定電力を供給する状態が終わると前記温度検知手段の検知温度に応じて電力を供給する状態で未定着トナー画像の定着処理を行うことを特徴とする定着装置。
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