JP2008536523A - モナチンの生体内分泌のための生成物及び方法 - Google Patents

モナチンの生体内分泌のための生成物及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】モナチン甘味料の生体内生産のための生成物及び方法が提供される。
【解決手段】該生成物は、モナチンを分泌するように又はモナチン分泌を向上させるように遺伝子操作されている微生物;モナチンを生産するように遺伝子操作されている微生物;及び、モナチンを分泌するか又はモナチンの分泌を向上させるように且つモナチンを生産するように遺伝子操作されている微生物を包含する。該方法は、そのような遺伝子操作された微生物においてモナチンを生産することを含んで成る。
【選択図】なし

Description

本発明は一般にモナチン甘味料の生体内生産のための生成物及び方法に関する。より詳しくは、本発明はモナチン甘味料の生体内分泌のための生成物及び方法に関する。
モナチンは次の化学式を有する高甘味度甘味料である:
Figure 2008536523
モナチンは、次の4つの可能な立体異性配置をもたらす2つの不斉中心を含む:R,R配置(“R,R立体異性体”又は“R,Rモナチン”)、S,S配置(“S,S立体異性体”又は“S,Sモナチン”)、R,S配置(“R,S立体異性体”又は“R,Sモナチン”)及びS,R配置(“S,R立体異性体”又は“S,Rモナチン”)。本明細書中で用いる場合、特に断らない限り、“モナチン”という語は、モナチンの4つの立体異性体全部を含む組成物、モナチン立体異性体の任意の組み合わせを含む組成物(例えばモナチンのR,R立体異性体とS,S立体異性体のみを含む組成物)、並びに単一の立体異性形を指して言う。
本開示の目的上、モナチン炭素骨格は上記化学式に描写したように番号付けられ、即ちアルコール基に結合した炭素が2位の炭素で、そしてアミノ基に直接共有結合した炭素が4位の炭素と見なされる。結論として、R,Rモナチン、S,Sモナチン、R,Sモナチン及びS,Rモナチンへの言及は、異なって指摘されない限り、それぞれ2R,4Rモナチン、2S,4Sモナチン、2R,4Sモナチン及び2S,4Rモナチンを意味する。
文献では、モナチン炭素骨格は別の方法でも番号付けされ、アルコール基に結合した炭素が4位の炭素で、アミノ基に結合した炭素が2位の炭素であると番号付けされていることもあることに注意すべきである。従って、例えば、本明細書中の2S,4Rモナチンへの言及が、別の番号付け法を使った文献中の2R,4Sモナチンへの言及と同じになるだろう。
更に、様々な命名法があるために、モナチンは、2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−アミノグルタル酸;4−アミノ−2−ヒドロキシ−2−(1H−インドール−3−イルメチル)ペンタン二酸;4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)グルタミン酸;及び3−(1−アミノ−1,3−ジカルボキシ−3−ヒドロキシブタ−4−イル)インドールをはじめとする、多数の別の化学名で知られている。
少なくとも一部はその甘味特性のために、モナチンの経済的入手源を得ることが望ましいだろう。モナチンの幾つかの異性体形は、南アフリカのトランスバール地方に生育する植物Sclerochiton ilicifoliusの根皮の中に検出される。しかしながら、乾燥した根皮に存在するモナチンの濃度は、その酸の形のインドールとして表すと、約0.007質量%であるとわかった。米国特許第4,975,298号明細書を参照のこと。更に、該植物においてモナチンを生産する方法は未知である。他方で、米国出願第10/422,366号明細書(“366出願明細書”)は、特に、モナチンの生体内及び試験管内生産のためのポリペプチド、経路及び微生物を開示している(これは参考として本明細書に組み込まれる)。
モナチンの生産は平衡過程であると思われる。平衡量よりも高くモナチンの生産を増加させ、且つモナチンの生産を一層経済的にするためには、生成物を除去するか又はモナチンを生産する反応に係る基質の量を増加させることが望ましいだろう。従って、生体内生産に関しては、生成物を除去しそして平衡を前方に押し進める手段として、細胞からモナチンを分泌させることが望ましい。本明細書の目的上、“細胞”、“生物体”及び“微生物”なる用語は相互交換可能に用いられ、別記しない限り、その非限定例としては、細菌、真菌、例えば酵母、カビ、藻類、原生動物、微生物及びウイルスが挙げられる。
本発明者らは、細胞からモナチンを例えばペリプラズム中に又は周囲の培地中へと分離するために、モナチンと協同作用することが今まで知られていなかった輸送体(トランスポーター)を使用する新規方法を開発した。輸送体は、1又は複数の細胞膜を通過する或る種の溶質の輸送を触媒する細胞膜タンパク質である。例えば、抗生物質に対する臨床的耐性を獲得している細菌種は、その薬剤又は別の毒性物質を、細胞膜を通過して培地中へと排出するために輸送体を使用する。例えばそれらの排出ポンプは、ATP加水分解かプロトン運動力のいずれかからのエネルギーを利用して、毒性物質の排出を促進する。自然にモナチンを生産する野生型微生物は現在1つも報告されておらず、同様にモナチンを分泌するための輸送体についても今までに報告されていない。
ある態様によれば、モナチン(即ち、モナチンの4つの立体異性体全部又はその部分組み合わせ、例えば単一の異性体形)を生体内(in vivo)で生産する方法が提供され、この方法は、1又は複数のタイプの輸送体系を使用して、細胞の内側に存在するモナチンをペリプラズム又は媒質(例えば培地)中に分泌せしめることを含んでなる。適当な輸送体系の非限定例としては、AcrAB系、EmrAB系、及びAcrAB又はEmrABの同族体からなる系が挙げられる。或る置換では、モナチンを生産する能力を有するように遺伝子操作された微生物によりモナチンが生産され、そして少なくとも部分的に分泌される。その対応する野生型は、モナチンを分泌することのできる1又は複数の輸送体系を有するが、それ自体はモナチンを生産しない。或る置換では、本来モナチンを生産することができるが、モナチンを分泌することのできる1もしくは複数の輸送体系又は輸送体系の1もしくは複数の成分を発現又は過剰発現するように遺伝子操作されている微生物により、モナチンが生産されそして少なくとも部分的に分泌される。或る置換では、モナチンを分泌することに係る輸送体系又は輸送体系の成分を発現又は過剰発現するように遺伝子操作されている微生物により、モナチンが生産されそして少なくとも部分的に分泌される。或る置換では、モナチンを分泌することのできる輸送体の成分を発現するように遺伝子操作されている微生物により、モナチンが生産されそして少なくとも部分的に分泌される。例えば、AcrAB及び/又はEmrABのような輸送体系のチャンネル形成タンパク質成分を過剰発現するように微生物を遺伝子操作することができる。別の例としては、その微生物にとって異種であるか、生来であるか、又はその組み合わせである、輸送体の成分を発現するように微生物を遺伝子操作することができる。
或る態様によれば、微生物とその環境との間の溶質の直接交換を可能にする1又は複数の輸送体系を発現又は過剰発現するように遺伝子修飾されている微生物が提供される。また或る態様では、モナチンを選択的に輸送する輸送体、例えばモナチン経路の中の中間体よりも選択的にモナチンを輸送する輸送体を発現又は過剰発現するように、微生物が遺伝子操作される。
或る態様によれば、例えば本明細書の実施例に記載のように、適当な対照と比較して増加した輸送体活性を示す細胞においてモナチンが生産される。一変形では、モナチンを分泌することのできる1又は複数の型の輸送体系を過剰発現するように遺伝子操作されている微生物においてモナチンが生産される。一変形では、輸送体系の1又は複数の成分を過剰発現するように遺伝子操作されている微生物においてモナチンが生産される。例えば、輸送体系のチャンネル形成タンパク質成分(例えばAcrAB又はEmrAB)を過剰発現するように遺伝子操作されている微生物中でモナチンを生産することができる。別の例としては、付加的に又は代わりに、輸送体系の外膜因子成分(例えばTolC)を過剰発現する微生物中でモナチンを生産することができる。一変形では、誘導化合物(例えば輸送体系もしくは輸送体系成分の発現を触発するか、又は分泌活性を刺激する化合物)に暴露された微生物においてモナチンが生産される。例えば、その増殖培地中にデカン酸ナトリウム、カルボニルシアニド3−クロロフェニルヒドラゾン(“CCCP”)又はサリチレートが供給されている微生物においてモナチンを生産することができる。「増殖培地」、「培地」及び「発酵培地」は本明細書中では相互交換可能に用いられる。一変形では、誘導化合物の存在が、誘導化合物欠損下ではモナチンを分泌するように思われない微生物において、モナチン輸送を引き起こす。一変形では、誘導化合物の存在が適当な対照により分泌される量に比較して増加された、微生物によるモナチン分泌を引き起こす。
本発明の別の態様によれば、モナチンを分泌する輸送体効率を変更する方法が提供される。一変形では、該方法は、モナチンオペロン遺伝子を含有するプラスミドを用いて、標的輸送体に欠失を有する宿主微生物を形質転換せしめ、そして野生型対照に比較してモナチン輸送/分泌の減少についてスクリーニングすることを含んで成る。一変形では、多コピープラスミド上にそれらをクローニングし、上述の通りモナチンを生産するように操作された宿主を形質転換せしめ、そして各輸送体遺伝子の過剰発現が全くない野生型対照に比較したモナチン輸送量の増加についてスクリーニングを実施する。一変形では、誘導物質を使って輸送体活性を増加させ、そして適当な未誘導の対照に対してモナチン生産及び/又は分泌を比較することにより、モナチン分泌が評価される。
或る態様によれば、1又は複数の輸送体を欠いている微生物、例えばYhcP(AaeB), YccS, YjcQ及びYhfKとして同定された4つの特定の推定排出輸送体を欠いている微生物においてモナチンが生産される。
或る態様によれば、グルタミン酸栄養素要求体においてモナチンが生産される。一変形では、モナチンを生産する能力を有するように遺伝子操作されたグルタミン酸栄養素要求体においてモナチンが生産される。一変形では、モナチンを分泌することのできる1もしくは複数の型の輸送体系を又はそのような輸送体系の成分を過剰発現するように遺伝子操作されているグルタミン酸栄養素要求体においてモナチンが生産される。一変形では、アミノ酸輸送を増加させる発酵条件のもとで培養されるグルタミン酸栄養素要求体において、モナチンが生産される。
或る態様によれば、グルタミン酸塩又は構造的に類似した分子をリンゴ酸塩に交換してトランスロケートすることのできる1又は複数の輸送体系を含む微生物において、モナチンが生産される。一変形では、グルタミン酸塩又は構造的に類似した分子をリンゴ酸塩に交換してトランスロケートすることのできる1又は複数の輸送体系を含有し、且つモナチンを生産する能力を有するように遺伝子操作されている微生物において、モナチンが生産される。一変形では、グルタミン酸塩又は構造的に類似した分子をリンゴ酸塩に交換してトランスロケートすることのできる1又は複数の輸送体系を含有し、且つグルタミン酸栄養素要求体であるように遺伝子操作されている微生物において、モナチンが生産される。
本開示を読めば、本発明の特定態様が、参考として挙げた変形及び態様の1つ、複数又は全部を包含し、あるいは具体的に同定されていないが、本明細書中の開示から明らかになるであろう変形又は態様を代わりに又は付加的に包含することは、当業者に明白であろう。例えば、本開示の中に具体的に同定されている化合物(例えばデカン酸ナトリウム及び/又はCCCP及び/又はサリチル酸塩)及び本開示の中に同定されていない化合物を使って輸送体の発現を誘導することは、本発明の範囲内にあると見なされるだろう。
同様に、本発明に係る態様は、具体的に同定されていない変形/態様の組み合わせを包含し得る。例えば、同時に多数の処理を実施して個別にモナチン分泌を改善することも本発明の範囲内であると見なされる。例えば、アンピシリン及び/又はTween 20の供給をデカン酸ナトリウムの供給と組み合わせることができる。実施例7は、本発明に従った変形/態様を組み合わせることを含んでなる適当な態様の例証である。実施例7では、デカン酸ナトリウムを増殖培地に供給することによって輸送体を発現するように誘導されそしてTolCを過剰発現するように遺伝子操作される微生物において、モナチンが生産される。
従って、全てが本発明の精神や範囲から逸脱することなく、本発明が様々な観点において変更可能であることは本記載から明白であろう。従って、本記載は本来例示的であって限定的でないと見なすべきであり、そして多数の態様/変形が開示されているが、当業者には本発明の更に別の態様/変形が、本発明の典型的な態様/変形を示す本明細書の記載から明白であろう。従って、特に断らない限り、全ての実施例はそのように明記されているかどうかに係わらず、非限定的である。
或る態様によれば、本開示は、微生物の外側に、例えばペリプラズム中に又は媒質(例えば培地)中にモナチンを分泌するための方法及び生成物を提供する。或る態様によれば、本開示は、宿主微生物の外側の所望の環境、例えば媒質(培地を含む)中にモナチンを分泌させるための輸送体の開発と使用を提供する。そのような微生物の外側へのモナチンの輸送は、例えば本明細書中の実施例に記載されるような適当な対照に比較して、モナチン生産の量及び/又は速度を増加させることもできる。
本明細書中で用いる場合、“含む”とは“含んで成る”ことを意味する。加えて、単数形の“1つの(a又はan)”又は“その(the)”は、その文脈が明確に別の意味を表さない限り複数形の対象物も含む。例えば、“或るタンパク質を含む”という言及は、1又は複数のそのようなタンパク質を包含し、“細胞を含む”という言及は1又は複数の細胞及び当業者に既知であるその同等物などへの言及を包含する。
本明細書中で用いる場合、“約”という語は、何らかの測定で起こる実験誤差の範囲を含む。異なって言及されない限り、全ての測定値は、たとえ“約”という単語が表現的に用いられなくても、それらの前に“約”という単語を有するように解釈される。
本明細書中で用いる場合、“増加した輸送体活性”という語は、モナチン生産又は分泌の量及び/又は速度が、適当な対照からのモナチン生産の量及び/又は速度よりも高いという観察結果を意味する。
本明細書中で用いる場合、“分泌される”及び“排出される”という語は相互に交換可能に用いられ、或る物質を細胞の内側からペリプラズム中に又は細胞の外側の環境、例えば周囲の培地中に該物質を生産・分泌する細胞を言う。或る面では、該細胞はその物質の一部を細胞内に維持するだろう。
本明細書中で用いる場合、“部分的に分泌される”及び“部分的に排出される”という語は相互に交換可能に用いられ、特定の物質の一部を細胞から生産・分泌するが、全部ではないことを言う。
本明細書中で用いる場合、“モナチンオペロン遺伝子”(単数又は複数)という語は、モナチンの合成において用いられる1又は複数の酵素をコードする遺伝子を包含する。
本明細書中で用いる場合、“ポンプ”(単数又は複数)、“ポンプ系”(単数又は複数)及び“排出系”(単数又は複数)という語は、相互に交換可能に用いられ、そして或る物質を細胞の内側から所望の環境、例えば細胞を取り巻く媒質へと移動させることができそして/又は或る物質を細胞を取り巻く領域から細胞の内側へと移動させることができる、1又は複数の輸送体を包含する。
本明細書中で用いる場合、“異種”という語は、言及される要素に対して外来であるか又は生来でない要素を包含する。例えば、輸送体系の異種成分は、その系の本来の成分ではない成分を言う。
本明細書中で用いる場合、“〜と協同する”という語は、1又は複数の分子の機能を達成又は増強するような方法で、別の分子と相互作用、共有結合及び/又は制御する1又は複数の分子を包含する。加えて、その語は、別の分子の下流活性化又は阻害に至る調節経路を開始させる1又は複数の分子を包含する。
本明細書中で用いる場合、“単離”、“単離し”及び“単離する”という語は、或る物質をその環境から又は宿主から除去する工程を包含し、その工程は特に断らない限り、必ずしも一定の純度を有する物質を提供しなくてもよい。
本明細書中で用いる場合、“輸送体系の1又は複数成分”という語句は、完全な輸送体系それ自体を包含する。
微生物中でのモナチンの生産
特にWO 03/091396 A2(例えば図1〜3と11〜13参照)に記載のように、モナチンは生物学的変換を含む多段階経路を経由してトリプトファンから生産せしめることができる(即ち、ポリペプチドを用いて基質から生成物への反応を促進すること)。記載の経路は、トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸に生物学的に変換すること、インドール−3−ピルビン酸を2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸(“MP”)に生物学的に変換すること、そしてMPをモナチンに生物学的に変換することを包含する。
トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸に変換するのに有用な酵素としては、酵素分類(“EC”)2.6.1.27、1.4.1.19、1.4.99.1、2.6.1.28、1.4.3.2、1.4.3.3、2.6.1.5、2.6.1.-、2.6.1.1、2.6.1.21及び3.5.1.-の構成員が挙げられる。それらの分類としては例えば次のようなポリペプチドが挙げられる:L−トリプトファンとα−KG(即ちα−ケトグルタル酸、2−オキソグルタル酸とも称する)をインドール−3−ピルビン酸とL−グルタミン酸に変換する、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ;D−トリプトファンと2−オキソ酸をインドール−3−ピルビン酸とアミノ酸に変換する、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ;L−トリプトファンとNAD(P)をインドール−3−ピルビン酸とNH3とNAD(P)Hに変換する、トリプトファンデヒドロゲナーゼ;D−アミノ酸とFADをインドール−3−ピルビン酸とNH3とFADH2に変換する、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ;L−トリプトファンとフェニルピルビン酸をインドール−3−ピルビン酸とL−フェニルアラニンに変換する、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ;L−アミノ酸とH2OとO2を2−オキソ酸とNH3とH2O2に変換する、L−アミノ酸オキシダーゼ;D−アミノ酸とH2OとO2を2−オキソ酸とNH3とH2O2に変換する、D−アミノ酸オキシダーゼ;L−トリプトファンとH2OとO2をインドール−3−ピルビン酸とNH3とH2O2に変換する、トリプトファンオキシダーゼが挙げられる。それらの酵素分類は更に、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、D−アミノ酸(又はD−アラニン)アミノトランスフェラーゼ、及び複数のアミノトランスフェラーゼ活性を有する広域(多基質)アミノトランスフェラーゼも包含し、その幾つかはトリプトファンと2−オキソ酸をインドール−3−ピルビン酸とアミノ酸に変換することができる。加えて、それらの酵素分類は、水の存在下でトリプトファンをインドール−3−ピルビン酸とアンモニウムに変換することができるフェニルアラニンデアミナーゼを包含する。
インドール−3−ピルビン酸をMPに変換するのに有用な酵素としては、酵素分類4.1.3.-、4.1.3.16、4.1.3.17及び4.1.2.-の構成員が挙げられる。それらの酵素分類は、炭素−炭素シンセターゼ/リアーゼ、例えば2つのカルボン酸基質の縮合を触媒するアルドラーゼを包含する。ペプチド型のEC 4.1.3.-は、求電子剤としてオキソ酸基質(例えばインドール−3−ピルビン酸)を使って炭素−炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼであり、一方でEC 4.1.2.-は、求電子剤としてアルデヒド基質(例えばベンズアルデヒド)を使って炭素−炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼである。例えば、KHGアルドラーゼ(EC 4.1.3.16)とProAアルドラーゼ(EC 4.1.3.17)は、インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸をMPに変換することが知られている。MPは化学反応、例えばアルドール縮合を使って生成することもできる。
MPをモナチンに変換するのに有用な酵素としては、次の酵素分類の構成員が挙げられる:トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.27)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(1.4.1.19)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(1.4.99.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(1.4.1.2-4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.20)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(2.6.1.28)、又はアミノトランスフェラーゼファミリー(2.6.1.-)の一般的な構成員、例えばアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.1)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(2.6.1.5)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、又はD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.21)が挙げられる(WO 03/091396 A2の図2を参照のこと)。この反応は化学反応を使って実施することもできる。ケト酸(MP)のアミノ化は、アンモニアと水素化シアノホウ素ナトリウムを使った還元アミノ化により実施される。WO 03/091396 A2の図11〜13は、MPをモナチンに変換するのに利用でき、その上更にインドール−3−ピルビン酸又はトリプトファンからのモナチンの収率の増加を提供する、追加のポリペプチドを示す。
本明細書に記載の通り、モナチンは、モナチンを生産する能力を有するように遺伝子操作されている微生物を使って、例えば上記に示した経路を使って、生体内で(in vivo)生産することができ、或いは上記に開示された酵素を発現する生物体に適切な条件下で適当な基質を提供することにより、生産することができる。例えば、野生型形がトリプトファンを生産し且つWO 03/091396中に解明された経路に示された酵素のうちの少なくとも1つを発現し、そして野生型には存在しないがモナチン生産経路において有用である別の酵素を発現するように遺伝子操作されている生物を使って、モナチンを生産することができる。
本発明の或る態様によれば、モナチンを分泌することができる1又は複数の輸送体系を発現する生物体(例えば宿主細胞)において、モナチンが生産される。或る態様では、その野生型において1又は複数の輸送体系を発現する生物体においてモナチンが生産される。また或る態様によれば、その微生物にとって異種である1又は複数の輸送体系を発現するように遺伝子操作されている生物体において、モナチンが生産される。或る態様によれば、外側の媒質にモナチンを輸送するために用いられる輸送体系の1又は複数の成分を発現するように遺伝子操作されている生物体においてモナチンが生産される。
或る生物から輸送体活性を有するポリペプチドをコードする核酸を単離し、そして特定の宿主生物中にクローニングすることができる。輸送体活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の例としては、非限定的に、(1)リゾビウム(Rhizobium)由来のAAp及びBra遺伝子、(2)アラビドプシスAUX1遺伝子又はPIN1ポリペプチド(パーミアーゼ、オーキシン分泌)、(3)マロノモナス・ルブラ(Malonomonas rubra)のMadN(アセテート排出ポンプ)、(4) カチオン又は疎水性分子の代わりにアニオンに対して特異性を有する、哺乳類多剤耐性ポリペプチド及び酵母Pdr12に類似しているL.ラクチス(L. lactis)有機アニオン輸送体、 (5)肝臓から非胆汁有機アニオンを分泌することができる、多剤耐性ポリペプチドMrp2、及び(6)アスパラギン酸/グルタミン酸キャリヤー(AGC)ポリペプチド。リゾビウム由来のAAp遺伝子とBra遺伝子は、主に棒状細菌におけるグルタミン酸とアスパラギン酸の取り込みに関与する一般的アミノ酸輸送体である。しかしながら、それらは、異種アミノ酸が培地中に高レベルで存在する場合には別のアミノ酸を排出することができる。実施例25は、アラビドプシス(Arabidopsis)のオーキシン輸送体遺伝子の過剰発現がモナチン生産の増加を引き起こすことを示す。
更に、オーキシン輸送体の同族体の発現又は過剰発現も、モナチン生産の増加を引き起こすと期待されるだろう。そのような同族体の例としては、図1に示されるオーキシン輸送体の保存領域を含有するものが挙げられる。例えば、オーキシン輸送体の同族体は、PXGKTXAXVGXSGSGKSTVVSLXERFYXPXXGXXXLDG、LXLXXLRXQIGLVXQEPXLFATXIXENXLG、及びQVGERGXQLSGGQKQRIAIARAMLXXPXILLLDEATSALDから選択された1又は複数のアミノ酸配列を含んで成ることができ、ここでXは、図1Bに示されるように同族体のアミノ酸配列と共に整列した時の、AtPGP1, BrABB97035, StAAD10836, ZmPGP1_AAR00316, SbAAR10387, OsXP_483819, OS_CAD59580及びAtPGP19のいずれか1つの指摘の位置にあるアミノ酸である。オーキシン輸送体の別の適当な同族体は、LPXGYXTXVGERGVQLSGGQXQRIAIARA及びLLDEATSALDAESEXXXQEALから選択された1又は複数のアミノ酸配列を含んで成ることができ、ここでXは図1Dに示されるように同族体のアミノ酸配列と共に整列した時の、AtPGP1, BrABB97035, StAAD10836, ZmPGP1_AAR00316, SbAAR10387, OsXP_483819, OS_CAD59580及びAtPGP19のいずれか1つの指摘の位置にあるアミノ酸である。
モナチンを分泌することができる輸送体の非限定例としては、AcrAB排出系とEmrAB排出系が挙げられる。実施例1は、AcrABポンプがモナチンを分泌できることを証明する。実施例2は、EmrABポンプがモナチンを分泌できることを証明する。実施例3は、AcrABとEmrAB排出系の両方についてのモナチンを分泌する能力を例証する。
AcrABとEmrABに関する陽性試験結果に基づいて、ある種の別の輸送体もモナチンを分泌できるだろうと予想される。一般的に、AcrABとEmrAB系は多剤輸送体として知られる輸送体の部類に属する。多剤輸送体は、毒性分子の能動的な排出により広範囲の毒性分子に対して細胞を保護することができる輸送体である。多剤輸送体により排出される分子の種類の広範囲の重複や、多剤輸送体としてのAcrABとEmrAB輸送体系の分類に基づくと、
別の多剤輸送体もモナチンを分泌できるだろうと予想される。特に、RNDファミリーの別の輸送体(AcrABを含む多剤輸送体のサブクラス)及びMFファミリーの別の輸送体(EmrABを含む多剤輸送体の別のサブクラス)が、モナチンを分泌できると予想される。試験した輸送体の同族体もモナチンを分泌すると期待される。餌(bait)としてAcrA, AcrB, EmrA, EmrB又はTolCペプチドを使った微生物データベースERGOのBLAST検索は、それぞれ154、213、231、236及び115個の同族体の同定をもたらした。
更に詳しくは、AcrEFはAcrABに対して高度に相同である排出ポンプであり、従ってAcrEF系はモナチンを分泌可能であると予想される。実施例24は、AcrEF輸送体系をコードする遺伝子が不活性化(ノックアウト)されている変異E.coli株を提供する。
AcrABに対する相同性のためにモナチンを分泌させるのに有用であると予想される輸送体の別の非限定例としては、以下のものが挙げられる:
・シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)由来のAcrA同族体MexA。Fernandez-Recio, J.,他、“A model of a transmembrane drug-efflux pump from Gram-negative bacteria,” FEBS Lett. 578:5-9 (2004);
・生成物がAcrRABに関連している遺伝子mtrRCDを含有する、ナイセリア・ゴノロエ(Neisseria gonorrhoeae)由来の多剤輸送体系。Pan, W., & Spratt, B.G., “Regulation of the permeability of the gonococcal envelop by the mtr system, “Mol. Microbiol. 11:769-775 (1994) ;
・RND型輸送体の構成員に相同である、遺伝子ameBの生成物。それらとしてはE.coliのAcrB、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)のMexB, MexD及びMexF、シュードモナス・プティダ(Pseudomonas putida)のTtgB, TtgE及びSrpBが挙げられる。
・AcrABのものに類似している基質範囲を有する、多剤耐性に関係するAcrEF排出ポンプ(ノボビオシンも輸送する)。AcrEF系はインドール排出に重要な役割を果たす。AcrEF排出ポンプはE.coliにおける溶剤耐性に関与しており、溶剤耐性を改善するためにTolCを使用する。
・mdtABCDと改名されたyegMNOBオペロンの生成物。ここでmdtは多剤輸送体を表す。Baranova N. & Nikaido H., “The baeSR two-componet regulatory system activates transcription of the yegMNOB (mdtABCD) transporter gene cluster in Escherichia coli and increases its resistance to novobiocin and deoxycholate, “J. Bacteriaol. 184:4168-4176 (2002). AcrABは多剤輸送体であり且つノボビオシンも排出できるため、mdtABCDオペロンはモナチン輸送体の候補となり得る。
・yhiU/V遺伝子産物。Ma, D.,他、”Genes acrA and acrB encode a stress-induced efflux of Escherichia coli,” Mol. Microbiol. 16:45-55 (1995); Ma, D.他、”Efflux pumps and drug resistance in gram-negative bacteria,” Trends Microbiol. 2:489-493 (1994)。
・AcrBとAcrDは、耐性根粒形成部(“RND”)スーパーファミリーに属し、同様のトポロジーを共有し、各々が300アミノ酸残基以上を含む1対の大きなペリプラズムループを含む。ループ領域の置換に付随して起こる基質範囲の変化は、基質の認識(及び恐らくは結合)がその2つのペリプラズムループによって大部分決定されるということを暗示するものとして解釈される。Elkins, C.A. & Nikaido, H., “Substrate specificity of the RND-type multidrug efflux pumps AcrB and AcrD of Escherichia coli is determined predominantly by two large periplasmic loops,”J. Bacteriol. 184:6490-6498 (2002). AcrAB輸送体により輸送される基質の特異性に対して影響を与え得る2つのペリプラズムループ中に突然変異を作成して、モナチンに対する特異性を高め、且つモナチン中間体の輸送を減少させることが可能である。
EmrABと相同性を有するためにモナチンを分泌できると期待される輸送体の非限定例としては、以下のものが挙げられる:
・MdeA(多剤排出系A)は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)中に同定された多剤耐性排出タンパク質を染色体上にコードする。MdeAは主要促進因子スーパーファミリーに属し、既知の排出タンパク質の中でもE. coli由来のEmrBとバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)由来のLmrBに最も密接に関係している。MdeAとタンパク質配列データベースとの比較は、仮定の及び既知のMDRタンパク質に対して優位な残基の一致を示した。標準BLASTP検索(2002年6月)におけるトップ100の該当数のうち、実験的に確かめられた排出又はMDRタンパク質はわずか5個であった。
・MdeAに37%相同であるB.サチリス(O35018)のLmrB(Kumano M.他、”A 32 kb nucleotide sequence from the region of the lincomycin-resistance gene (22 degrees-25 degrees) of the Bacillus subtilis chromosome and identification of the site of the lin-2 mutation,” Microbiology 143:2775-2782 (1997));
・MdeAに24%相同であるナイセリア・ゴノロエ(Neisseria gonorrhoeae)(AAD54074) のFarB(Lee E.H. & Shafer W.M., “The farAB-encoded efflux pump mediates resistance of gonococci to long-chained antibacterial fatty acids,” Mol. Microbiol. 33:839-845 (1999));
・MdeAに24%相同であるストレプトミセス・グラウセセンス(Streptomyces glaucescens)(P39886)のTcmA(Gulifoile P.G. and Hutchinson C.R., “The Streptomyces glaucescens TcmR protein represses transcription of the divergently oriented tcmR and tcmA gene by binding to an intergenic operator region,” J. Bacteriol. 174:3659-3666 (1992));
・MdeAに25%相同であるストレプトマイセス・アニュラタス(Streptomyces anulatus)(P42670)のPur8。(Tercero J.A.他、”The pur8 gene from the pur cluster of Streptomyces alboniger encodes a highly hydrophobic polypeptide which confers resistance to puromycin,” Eur. J. Bacteriol. 218:963-971 (1993))。上述したLmrB, TcmA, pur8及びEmrBタンパク質は、疎水性化合物又は抗生物質に対する耐性を付与し、一方でFarBタンパク質は抗菌性脂肪酸に対する耐性を付与する;
・MdeAに23%相同であるS.アウレウス(S. aureus)のQacAタンパク質は、密接に関連した機能的に特徴付られたブドウ球菌排出タンパク質である。Mitchell B.A.他、”QacA multidrug efflux pump from Staphylococcus aureus: comparative analysis of resistance to diamidines, biguanidines and guanylhydrazones,” Antimicrob. Agents Chemother. 42:475-477 (1998)。MdeAとそれらの6つの既知MDRの複数整列は、細菌MDRタンパク質中に同定された多数のモチーフの保存を証明する。Putman M.他、”Molecular properties of bacterial multidrug transporters,” Microbiol. Mol. Biol. Rev. 64:672-693 (2000)。MdeAは14個のTMSを有すると推定され、MdeAとQacAの整列は、推測のTMS領域と実験的に証明されたTMS領域の一致を示した。(Huang J.他、”Novel chromosomally encoded multidrug efflux transporter MdeA in Staphylococcus aureus,” Antimicrob. Agents Chemother. 48:909-917 (2004)。
実施例4の方法は、一定の輸送体(例えば上記に示したもの)のモナチン分泌能力を確認するために実施した。更に、実施例4の方法は、モナチンの分泌に有用な追加の輸送体についてスクリーニングするためにも用いることができる。モナチンを輸送することのできる輸送体を同定するための方策は、グルタミン酸、トリプトファン、インドール化合物を輸送できる任意の生物、又はモナチンを分泌する能力と一致しうる別の特徴を有する任意の生物に適用されるだろう。そのような生物としては、非限定的に以下のものが挙げられる:(1)多数の推定二次輸送体を有する生物、例えばE.コリ(E. coli)、B.サチリス(B. subtilis)、パントエ(Pantoea)及びリケッチア(Ricksettia)〔二次活性輸送体は電気化学勾配を利用し、典型的には多数の(>7)膜貫通領域並びに細胞質と細胞外間隙に位置する領域を有する〕、(2)コリネバクテリア(Corynebacteria)やブレビバクテリア(Brevibacteria)のようなグルタミン酸を分泌する生物、(3)大豆、エンドウ豆、落花生及び豆のような植物をはじめとする植物及びマメ科植物、(4)リゾビウム(Rhizobium)種、(5)乳酸菌、アセトバクター(Acetobacter)株、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のような酸に対して高耐性である生物、(6)インドール−ピルビン酸を分泌する生物、例えばストレプトマイセス・チャタノゲンシス
(Streptomyces chattanogensis)及びP.ステワルティ(P. stewartii)、(7) GRAS (generally recognized as safe)である生物、例えば非限定的にストレプトミセス・ナタレンシス(Streptomyces natalensis)、ストレプトミセス・グリセオフラビス(Streptomyces griseoflavus)、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・フラギリス(Saccharomyces fragilis)、カンジダ・ユーティリス(Candida utilis)、ギガーティナセ(Gigartinaceae)及びソリエリセエ(Soliericeae)科のメンバー、フルセラリア・ファスティギアタ(Furcellaria fastigiata)、カンジダ・ギリーモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・リポティカ(Candida lipolytica)、並びに(8)アミノ酸を合成することのできる生物、例えば非限定的に、E.コリ、及び別のエンテロバクター属(Enterobacteriaceae)〔例えばクレブシエラ(Klebsiella)、パントエ(Pantoea)及びi株〕、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)株、バシラス(Bacillus)株、及びサッカロミセス(Saccharomyces)株。グルタミン酸に富む合成又は天然ポリペプチド〔例えばプラスモジウム・ファルシパラム(Plasmodium falciparum)由来の高グルタミン酸ポリペプチド、GLURP〕を唯一の窒素源として利用する能力についても、生物をスクリーニングすることが可能である。そのような生物は、グルタミン酸を分泌する能力を持ち、その能力が毒性であるか又は細胞の浸透ポテンシャルに悪影響を及ぼし得るような高レベルの細胞内グルタミン酸の存在下でも、それら生物を生存可能にする。実施例15は、パントエ、特にパントエ・ステワーティ(Pantoea stewartii)がモナチンを生産及び輸送できることを示す。
幾つかの形態の輸送体ポリペプチド、例えば一般アミノ酸/ポリアミン輸出ポリペプチド、ジカルボン酸輸出ポリペプチド、オーキシン分泌ポリペプチド、及び多剤耐性ポリペプチドなどは基質としてモナチンを認識する。加えて、幾つかのスーパーファミリーは、モナチン排出を実施できる輸送体ポリペプチドを含有する。それらとしては、2.A.1(MFS)、2.A.6 (RND)、2.A.7 (SMR)、2.A.67 (MATE)、CAAT(TC 2.A.78)及び2.A.69 (AEC)が挙げられる。それらのスーパーファミリーは、オーキシン(モナチン誘導体に構造的に類似している)、薬剤、抗生物質及び多種多様な有機分子に関連した基質を認識する排出輸送体ポリペプチドを含有する。例えば、E.コリのAcrEFポリペプチド(及び他のRNDメンバー、例えばAcrAB及びMexAB)は、インドールや疎水性領域を有する多数の他の化合物を放出させる複合的排出ポンプである。加えて、5つのABC輸出ファミリーは、ポリペプチドのような分子を分泌する機能を有するポリペプチドを含む。それらのABCファミリーポリペプチドはモナチンを輸送するのに利用できる。
本発明の或る態様によれば、モナチンは適当な対照、例えば本明細書中の実施例に記載のもの、に比較して増加された輸送体活性を示すことができる微生物中で生産される。「増加された輸送体活性」は、モナチン生産又は分泌の量及び/又は速度の増加により観察される。理論に縛られることなく、ポンプ成分の過剰発現は、機能的輸送体系の形成の尤度及び/又は利用能の増加へと言い換えられ、よって、増加された分泌はモナチンの増加生産に相当する。
或る態様によれば、増加された輸送体活性は、モナチンを分泌できる1又は複数の形態の輸送体系(例えばAcrAB及び/又はEmrAB系)を過剰発現するように微生物を遺伝子操作することにより、実現される。
或る態様によれば、増加された活性は、モナチンを分泌できる輸送体系の1又は複数成分を過剰発現するように微生物を遺伝子操作することにより、達成される。例えば、RNDファミリー多剤輸送体のチャンネル形成タンパク質成分、例えば、チャンネル形成タンパク質(例えばAcrAB及び/又はEmrAB)又は例えば該系の各成分(例えばAcrA及びAcrB)を過剰発現するように遺伝子操作されている微生物中で、モナチンを生産することができる。
輸送体系の生産又は過剰生産は、様々な方法により達成することができる。モナチンの輸送に関係する(1又は複数の)遺伝子の発現を増加させるための当業者に既知である一般的方法は、遺伝子コピー数を増加させることである。遺伝子コピー数の増加は、モナチン輸送能力がある適当な宿主微生物を、ベクター上の調節要素に連結した形で着目の(1又は複数の)輸送体遺伝子を担持しているベクター/プラスミドを用いて形質転換せしめることにより、達成することができる。輸送体/輸送体成分遺伝子を含有するこのベクターは、宿主微生物に各輸送体又はその成分を過剰発現させる。生物中の輸送体系を増加させる別の方法は、誘導物質(インデューサー)又は抑制物質(リプレッサー)といった調節分子を使用することである。
AcrAB輸送体系又はその成分の生産又は過剰生産は、次の方法により達成することが可能である:
・RamAは、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)ATCC 13048系株中のAraC-XylS転写活性因子ファミリーに属する113アミノ酸調節タンパク質である。RamAの過剰発現は、AcrAB-TolC薬物排出ポンプの一成分であるAcrAの生産を増加させる。実施例17は、RamAの過剰発現がモナチン分泌の増加をもたらすことを示す。
・RamAは、marRABオペロンの転写活性因子であるとも報告されており、そしてMarAはmarRABオペロンによりコードされる活性因子タンパク質である。Chollet, R.他、”RamA is an alternate activator of the multidrug resistance cascade in Enterobacter aerogenes,” Antimicrob. Agents Chemother. 48:2518-2523 (2004)。marRABオペロンは、主としてAcrAB-TolC排出ポンプによる毒性化合物の排出をアップレギュレートすることにより、耐性を媒介すると報告されている。
・二成分シグナル伝達系の或る種の応答調節因子の過剰発現が、acrD, emrKY, mdtABC及びmdtEFをはじめとする多数の薬剤輸送体系遺伝子をアップレギュレートすると報告されている。Hirakawa, H.他、”Indole induces the expression of multidrug transporter genes in Escherichia coli,” Molecular Microbiology 55:113-1126 (2005)。それらは全てモナチンの輸送体系の候補である。
・baeSR二成分調節系は、AcrAB輸送体系に相同であるエシェリキア・コリ(Escherichia coli;大腸菌)中のyegMNOB(mdtABCD)輸送体遺伝子クラスターの転写を活性化する。Baranova, N. & Nikaido, H., “The baeSR two-component regulatory system activates transcription of the yegMNOB(mdtABCD) transporter gene cluster in Escherichia coli and increases its resistance to novobiocin and deoxycholate,” J. Bacteriol. 184:4168-4176 (2002)。
・BaeSR二成分調節系は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli;大腸菌)中の薬剤耐性を付与する輸出遺伝子の発現も調節する。Nakakubo, S.他、J. Bacteriol. 184:4161-4167 (2002) ; Baranova, N, & Nikaido, H., J. Bacteriol. 184:4168-4176 (2002)。E.コリ多剤排出AcrABの不在下でのBaeR過剰発現は、抗生物質ノボビオシンをはじめとする多数の毒性物質に対する耐性を付与する。AcrABはノボビオシンとモナチンを輸送できるので、このことはノボビオシンだけでなく恐らくモナチンも同様に輸送できるBaeRにより活性化される追加の(1又は複数の)輸送体があることを示唆する。Nishino, K.他、”Genome-wide analyses of Escherichia coli gene expression responsive to the BaeSR two-component regulatory system,” J. Bacteriol. 187:1763-1772 (2005年3月)。実施例19は、BaeRの過剰発現がモナチン排出の増加を引き起こすことを示す。
・marRの突然変異はacrAB遺伝子の増加発現を引き起こす。(Ma, D.他、”Genes acrA and acrB encode a stress-induced efflux system of E.coli,” Mol. Microbiol. 16:45-55 (1995))そしてmarAを発現する多コピープラスミドを担持している株において。Miller, P.F. & Sulavik, M.C., “Overlaps and parallels in the regulation of intrinsic multiple-antibiotic resistance in Escherichia coli,” Mol. Microbiol. 21:441-448 (1996)。よって、marA遺伝子又は不活性marR遺伝子の過剰発現はAcrAB輸送体系の増加を引き起こす。
・MarA, SoxS及びSidA(転写調節因子のXylS/AraCファミリーのメンバーである)は広域調節因子であり、AcrAB輸送体系の発現を活性化する。AcrABと多剤耐性に関係する3つの別のE.コリ遺伝子tolC, acrEF及びacrD(これらはモナチン輸送体の候補でもある)はSdiAによっても活性化される。Baranova, N. & Nikaido, H., “The baeSR two-component regulatory system activates transcription of the yegMNOB (mdtABCD) transporter gene cluster in Escherichia coli and increases its resistance to novobiocin and deoxycholate,” J. Bacteriol. 184:4168-4176 (2002)。実施例18は、MarAの過剰発現がモナチン排出の増加を引き起こすことを示す。
或る態様によれば、AcrABに対して高度に相同であり、従ってモナチンを分泌すると期待されるポンプAcrEFの活性の増加は、次の改変により達成することができる:
・推定プロモーター配列を含む挿入要素IS1及びIS10要素の存在が、それらの挿入変異体におけるacrF発現の8〜10倍増加を引き起こし、かくしてAcrEF活性を増加させ、且つモナチン生産能のある宿主におけるモナチン輸送を増加させる。Olliver A.他、”Overexpression of the multidrug efflux operon acrEF by insertional activation with IS1 or IS10 elements in Salmonella enterica serovar typhimurium DT204 acrB mutants selected with fluoroquinolones,” Antimicrob. Agents Chemother. 49289-301 (2005年1月)。別の場合には、acrEFオペロンの上流にIS1又はIS2が組み込まれているE.コリ株は、高レベルのAcrE及びAcrFタンパク質を生産した。Kobayashi K.他、”Suppression of hypersensitivity of Escherichia coli acrB mutant to organic solvents by integrational activation of the acrEF operon with the IS1 or IS2 element, J. Bacteriol. 183:2646-2653 (2001)。上記に列挙した例は、AcrAB輸送体系に高度に相同であるためにモナチンを輸送できるAcrEF輸送体系を過剰発現せしめる幾つかの方法を記載している。
・EnvR(正式にはenvCD)はacrEFオペロンの転写リプレッサーである。従って、非機能的EnvR調節因子はacrEF転写を増加させるかもしれない。acrEF転写を増加させることは、AcrAB輸送体系に高度に相同であるためにモナチンを輸送できると推定されるAcrEF輸送体系の過剰発現をもたらす。
本発明の或る態様によれば、増加された輸送体活性は次の方法により達成され得る:TolCのようなRNDファミリー多剤輸送体の外膜因子成分を過剰発現させることによる;その野生型形態がTolCを発現する生物体においてTolCと協同して機能的輸送体を形成する別の輸送体系成分を過剰発現させることによる;又はそれらの組み合わせ。TolCと協同する輸送体系成分は、非遺伝子的に操作することが可能である。機能的TolCの存在について微生物をスクリーニングするための当業界で既知の方法のいずれも利用できる。例えば、Werner, J.他、”Assembly of TolC, a structurally unique and multifunctional outer membrane protein of Escherichia coli K-12,” J. Bact. 185:6540-6547 (2003)参照。加えて、実施例5はTolCをクローン化しそして過剰発現させるために利用できる方法を記載しているが、当業界で既知の方法のいずれも利用できる。実施例6は、TolCの過剰発現がモナチンの分泌を増加させることを証明する。TolCは複数の異なる排出ポンプと協同して機能するために、TolCの過剰発現は、より差別的(特異的)である輸送体の別の成分を過剰発現させることによって起こるよりもずっと大きな増加された輸送体活性をもたらし得る。
TolC依存性機構は、病原性タンパク質や抗菌剤のためのユビキタス排出ルートを提供する。Koronakis, V., “TolC−the bacterial exit duct for proteins and drugs,” FEBS Lett. 555:66-71 (2003)。実施例6からの結果に基づけば、モナチンを生産でき且つTolCと協同して作用する排出ポンプ/輸送体系(例えばAcrAB及びEmrAB)を有するような宿主株は、TolCチャンネル存在数の増加のためにモナチン輸送の増加を示すかもしれない。そのような別の輸送体系の非限定例としては、以下のものが挙げられる:
・ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)におけるrtxB, rtxD, rtxE及びtolCによりコードされる四成分I型分泌系(TISS)。Boardman, B.K. & Satchell, K.J., “Vibrio cholerae strains with mutations in an atypical type I secretion system accumulate RTX toxin intracellularly,” J. Bacteriol. 186:8137-8143 (2004)。
・EmrKYとYhiUVはそれらの活性にTolCを必要とする三成分排出ポンプである。Fralick, J.A., “Envidence that TolC is required for functioning of the Mar/AcrAB efflux pump of E. coli.,” J. Bact. 178:5803-5805 (1996); Nishino, K. & Yamaguchi, A., “EvgA of the two-component signal transduction system modulates production of the YhiUV multidrug transport in Escherichia coli,“ J.Bact. 184:2319-2323 (2002)。
同様に、TolC同族体も、AcrAB系と協同作用してモナチンの生産速度又は量の改善を提供するかもしれない。TolCファミリーのメンバー間の全体的比較は、特徴的な構造要素が保存されていることを証明する。このことは、全ての同族体が同様に折り畳まれそして同等の性質を有することを強く示唆している。 TolC同族体間での重要な構造アミノ酸の保存が、TolCタンパク質ファミリーを包含する輸出及び排出系に共通な機構を確証する。チャンネル−トンネルのコア機能がグラム陰性菌全体を通して共通であると結論づけることができると報告されている。Andersen, C.他、”Chunnel vision. Export and efflux through bacterial channel-tunnels,” EMBO Rep. 1:313-8 (2000)。モナチンの分泌に有用性がある同族体の非限定例としては、以下のものが挙げられる:
・TolCファミリーメンバーがグラム陰性菌に広範囲に存在するという報告と一致する30種以上の細菌種において同定された約100の同族体。Dinh, T.他、”A family of extracytoplasmic proteins that allow transport of large molecules across the outer membranes of gram-negative bacteria,” J. Bacteriol. 176:3825-3831 (1994) ; Andersen, C.他、”Chunnel vision. Export and efflux through bacterial channel-tunnels,” EMBO Rep. 1:313-318 (2000) 。
・E.コリゲノムは3つのtolC同族体及びABC, MFS (EmrAB)及びRND (AcrAB)ファミリーの約30の内膜トランスロカーゼをコードする。
・シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)は、RNAプロトンアンチポーター並びに3つのTolC同族体OprM, OprJ及びOprNのうちの1つを含む4つの主要排出(Mex)系を有する。それらの観察結果は、細菌が広域で時には重複する特異性を有する多数の排出ポンプと並行して作用する数種のTolC同族体を有すると報告されている事実と一致する。Koronakis V.他、”Structure and function of TolC: the bacterial exit duct for proteins and drugs,” Annu Rev Biochem. 73:467-489 (2004)。
・薬剤排出に関与し(そして恐らくモナチン排出にも関与するであろう)或る種のTolC同族体は、FusA, OprA, OpcM, NodT3, NodT2, NodT1, SmeC, SrpC, TtgC, MtrEである。Andersen C.他、”Chunnel vision. Export and efflux through bacterial channel-tunnels, “EMBO Rep. 1:313-318 (2000)。
TolCの活性を増加させると、モナチンの分泌の増強を達成することができる。TolC活性を増加させる可能な方法の非限定例としては以下のものが挙げられる:
・TolCはMarAによりアップレギュレートされる。エシェリキア・コリ(大腸菌)とサルモネラ菌の多重抗生物質耐性(mar)遺伝子座は、marRAB遺伝子座によりコードされる活性化タンパク質であるMarAによって誘導される、この種の耐性に関与する最も多く記載される系であろう。mar遺伝子座は、主としてAcrAB-TolC排出ポンプを介したある種の抗生物質、感染防止剤及び有機溶剤のアップレギュレート排出により耐性を媒介すると報告されている。Randall, L.P.& Woodward, M.J., “The multiple antibiotic resistance (mar) locus and its significance,” Res. Vet. Sci. 72:87-93 (2002)。
・TolCレベルは、Rob又はSoxSに加えてMarAによりプラスにレギュレートされる。可能なmar-rob-soxボックス配列はtolC遺伝子の上流に存在する。それらの知見は、tolCがストレス条件に応答してmar-soxレギュロンの一員であることを示唆する。改善された有機溶剤寛容性レベルを有する大腸菌変異体は、高レベルの外膜タンパク質TolCと内膜タンパク質AcrAを示した。Aono, R.他、”Involvement of outer membrane protein TolC, a possible member of the mar-sox regulon, in maintenance and improvement of organic solvent tolerance of Escherichia coli K-12,” J. Bacteriol. 180:938-944 (1998)。
・RamAは、ひいてはtolC過剰発現を引き起こすmarA転写を増強する調節タンパク質である。Chollet, R.他、”RamA is an alternate activator of the multidrug resistance cascade in Enterobacter aerogenes,” Antimicrob Agents Chemother. 48:2518-2523 (2004)。実施例17は、RamAの過剰発現がモナチン排出の増加を引き起こすことを示す。
或る態様によれば、輸送体活性の増加は、モナチンを分泌できるポンプを発現している微生物を、誘導化合物(即ち、輸送体系又は輸送体系成分の発現を触発する化合物)に暴露することにより、達成される。例えば、AcrAB系を発現している微生物を、デカン酸ナトリウム又はサリチル酸ナトリウに暴露することができる。、実施例1は、デカン酸ナトリウムを用いて、AcrABポンプを誘導してモナチンを分泌できることを証明する。別の例として、EmrAB系を発現している微生物を、増殖培地中にてカルボニル2−クロロフェニルヒドラゾン(“CCCP”)に暴露してもよい。実施例2は、CCCPが増加されたモナチン輸送を誘導できることを証明する。実施例14はサリチル酸が増加されたモナチン輸送を誘導できることを証明する。
AcrAB輸送体系の別の可能な誘導物質としては、非限定的に下記のものが挙げられる:
・フィトアレキシンはAcrAB輸送体系の誘導物質である。Burse, A.他、”The phytoalexin-inducible multidrug efflux pump AcrAB contributes to virulence in the fire blight pathogen, Erwinia amylovora, “Mol Plant Microbe Interact. 17:43-54 (2004)。
・ブドウ糖、鉄又は窒素のような栄養素の制限は、AcrAB輸送体系の過剰発現のための誘導条件として作用する。acrABがバッチ培養又はケモスタット培養における増殖中にE.コリの増殖速度の関数として制御されることが報告されている。ケモスタット培養では、acrABの発現は制限栄養素に関係なく増殖速度に反比例する。acrABの発現のレベルは、鉄又は窒素制限のいずれかと比較してブドウ糖制限下の方がより大きい。acrAB転写の増殖速度調節は、静止期シグマ因子の存在を必要としない。推定上のギアボックス共通配列がacrABプロモーターの−10領域に同定された。Rand, J.D.他、”Increased expression of the multidrug efflux genes acrAB occurs during slow growth/stationary phase of Escherichia coli,” FEMS Microbiol Lett. 207:91-95 (2002)。
・RobAはDNA結合タンパク質のXylS/AraCサブファミリーの一員であり、AcrAB輸送体系を活性化する。robAが過剰発現されると、それは大腸菌の多抗生物質耐性を誘導する。RobAの過剰発現により誘導される多抗生物質耐性は、AcrAB排出の活性化に加えてmicFの活性化にも大きく依存する。Tanaka, T.他、”RobA-induced multiple antibiotic resistance largely depends on the activation of the AcrAB efflux,” Microbiol. Immunol. 41:697-702 (1997). 実施例16は、RobAの過剰発現がモナチン排出の増加をもたらすことを示す。
・cysH, icdA (イソシトレートデヒドロゲナーゼ)、metE又はpurB(アデニロスクシネートリアーゼ)変異はAcrAB輸送体系の活性化を引き起こす。低レベルのナリジキシ酸を有する栄養素プレート上でE.コリの変異体及び別の細菌の変異体をスクリーニングすることにより、その耐性は別の遺伝子座の突然変異に起因することが報告されている。転座誘発ライブラリーにおけるナリジキシ酸耐性(Nalr)変異体の約10%が、cysH, icdA(イソシトレートデヒドロゲナーゼ), metE又はpurB(アデニロスクシネートリアーゼ)変異の結果として増殖因子要求性を示す。それらの変異体の全ての耐性は、機能的AcrAB-TolC排出ポンプを必要とする。acrABの転写は各種のNal(r)変異体において増加する。icdAB及びpurB変異体において、既知のシグナル経路の各々がAcrAB-TolCポンプを活性化するために利用できる。突然変異により引き起こされたブロックの上流に集積する代謝産物は、AcrAB-TolCポンプのレベルを増加させ、それにより生物体からのナリジキシ酸を除去することができる。Helling他、”Toxic waste disposal in Escherichia coli, “J Bacteriol. 184:3699-3703 (2002)。モナチン生産可能な宿主株において上記の各変異体を作成し、AcrAB輸送体を介して輸送されるモナチンを増加させることができた。実施例23は、cysH遺伝子の欠失がモナチン生産の増加を引き起こすことを証明する。
・サリチレートは少なくとも2つの機構(その1つはMarを含む)によりAcrAB-TolC排出ポンプを誘導する。Cohen, S.P.他、”Salicylate induction of the antibiotic resistance in Escherichia coli: activation of the mar operon and mar-independent pathway,” J. Bacteriol. 175:7856-7862 (1993)。
・4%エタノール、デカノエートのような脂肪酸、又は高浸透圧(0.4M NaCl)の培地といった、幾つかの全体的ストレスシグナルは、AcrAB輸送体系の発現を増強する。よって、環境条件を利用してAcrAB輸送体系の発現に間接的に影響を及ぼすことができる。Ma D.他、”Efflux pumps and drug resistance in gram-negative bacteria,” Trends Microbiol. 2:489-493 (1994)。
・モナチンの輸送に関与する遺伝子の発現を増加させるための当業者に周知の1つの一般的方法は、遺伝子コピーの数を増加させることである。これは、ベクター上の調節要素に連結された着目の(1又は複数の)輸送体遺伝子を担持するベクター/プラスミドを用いて、モナチン輸送能のある当な宿主微生物を形質転換することにより達成することができる。輸送体/輸送体成分遺伝子を有するこのベクターは、宿主微生物に各々の輸送体又は輸送体成分を過剰発現させることができる。
本発明に係る別の態様は、グルタミン酸栄養要求体、即ち突然変異の結果としてグルタミン酸を合成する能力を失った生物体、においてモナチンを生産することを含んでなる。理論に固執せずに、本発明者らは、グルタミン酸を分泌するのに有用である輸送体がモナチンも分泌できるという仮説を立てた。グルタミン酸栄養要求体は、おそらくまだグルタミン酸輸送体を有するだろうが、モナチンを合成するのに細胞が利用できる炭素が多量に存在するため(それがグルタミン酸を合成するのに消費されないため)そして/又はグルタミン酸からのグルタミン酸輸送体との競合がないため、グルタミン酸栄養要求体はモナチンを生産及び分泌せしめるのに適当であろう。
グルタミン酸栄養要求体を調製する1つの方法は、Eikmanns, B.J.他、”Cloning, sequence analysis and inactivation of the Corynebacterium glutamicum icd gene encoding isocitrate dehydrogenase and biochemical characterization of the enzyme,” J. Bacteriol., 177:774-782 (1995)に与えられている。しかしながら、当業界で既知の任意方法を利用できる。
実施例8は、グルタミン酸栄養要求体になるように突然変異された宿主株の一例、Corynebacterium glutamacium ATCC 13032株を提供し、そしてこの株におけるモナチンの増加された排出を証明する。実施例9は、モナチン排出ポテンシャルを増加させると期待される、E.コリのグルタミン酸栄養素要求(icdA欠損)株の一例を提供する。
モナチン輸送を更に増加させるために、モナチンを生産するのに適したグルタミン酸栄養要求体を、モナチンの分泌を提供する1又は複数の別法と組み合わせることができると考えられる。モナチン生産/輸送を増加させると推定又は証明された別の処置及び細胞操作と組み合わせて、モナチン生産に必要な遺伝子を用いて形質転換されたグルタミン酸栄養要求株(不活性化されたicd遺伝子を有する)は、モナチン生産/輸送の更なる増加を示す。例えば、グルタミン酸栄養要求体をAcrAB及び/又はEmrAB輸送体のための誘導物質に暴露せしめることができ;あるいはグルタミン酸栄養要求体を輸送体もしくは輸送体成分(例えばTolC)を過剰発現するように遺伝子操作することができ;あるいは発酵培地成分をTween20/40/60及び/又はアンピシリン(10μg/mL)のような界面活性剤を含むように変更することができ;又はそれらを組み合わせることができる。
モナチンを分泌させるための本発明の別の態様は、リンゴ酸に代わりグルタミン酸又はオキソグルタル酸を転座することができる微生物を遺伝子操作して、モナチンを生産する能力を有するようにすることを含む。関連の態様としては、グルタミン酸栄養要求体となるように遺伝子操作されているような生物体においてモナチンを生産することを含む。実施例10は、モナチンの生産においてリンゴ酸の代わりにグルタミン酸を転座(トランスロケーション)することのできる微生物の使用を例証する。
理論に縛られずに、モナチンはグルタミン酸骨格を有し又は4−置換グルタミン酸誘導体であると見なされる。従って、モナチンは、リンゴ酸のような基質に代わってグルタミン酸を転座する輸送体により、細菌細胞の外に輸送することができる。DiT2遺伝子によりコードされるアラビドプシス(Arabidopsis)色素体に含まれるグルタミン酸/リンゴ酸輸送体は、アンチポート形式でグルタミン酸とリンゴ酸を転座する。Renne, P.他、”The Arabidopsis mutant dct is deficient in the plastidic glutamate/malate translocator DiT2,”Plant J. 35:316-331 (2003); Taniguchi, M.他、”Identifying and Characterizing Plastidic 2-Oxoglutarate/Malate and Dicarboxylate Transporters in Arabidopsis thaliana,”Plant and Cell Physiology 43:706-717 (2002)。グルタミン酸/リンゴ酸輸送体ファミリーは、ほうれん草クロロプラスト中の2−オキソグルタル酸/リンゴ酸輸送体と相同であり、それはクエン酸及びコハク酸のためのアンチポーターであると思われるE.コリのCitZT輸送体に関連している。Pos, K.M.他、”The Escherichia coli Citrate Carrier CitT: a Member of a Novel Eubacterial Transporter Family Related to the 2-Oxoglutarate/Malate Translocator from Spinach Chloroplasts,” Journal of Bacteriology 180:4160-4165 (1998)。この輸送体が、宿主をグルタミン酸又はモナチンを上清中に排出しながらリンゴ酸を取り込めるようにするという可能性がある。モナチン輸送を増加させる働きをするリンゴ酸の別の可能性は、グルコースとは異なる形で代謝経路への炭素分布及び増殖速度に影響を及ぼす、別の炭素源としてリンゴ酸が働くという役割によるものである。リンゴ酸は2つの遺伝子によりコードされるリンゴ酸酵素によりピルビン酸へと内部変換され〔Fischer, E. & Sauer, U., “Metabolic flux profiling of Escherichia coli mutants in central carbon metabolism using GC-MS,” Eur. J. Biochem. 270:880-891 (2003)〕、そして、ピルビン酸はモナチンの前駆体の1つであるため、ピルビン酸の利用可能性が大きくなればモナチン生産が増加し、結果として増加されたモナチン分泌をもたらす(蓄積した代謝産物を排除するための微生物の輸送体の誘導については別の参考文献を参照のこと)。
主炭素源としてのリンゴ酸上でのE.コリの増殖は、媒質、例えば培地中へのモナチン排出の増加をもたらした。
本発明の別の態様では、生産されるモナチンの量は、温度及び/又は1もしくは複数の追加の化合物、例えば細胞膜を摂動(混乱)させる化合物(アンピシリンやTween)での処理により、影響を受ける。更に、微生物からのモナチンの排出は、最適温度を選択することによりそして/又は微生物を1もしくは複数の追加の化合物、例えば細胞膜を摂動(混乱)させる化合物(アンピシリンやTween)で処理することにより、増加させることができる。そのような効果に適当な化合物の例としては、エタムブトール、アンピシリン、Tween及び/又はビオチンが挙げられる。例えば、実施例20は、温度の増加、並びにコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)細胞に提供されるピルビン酸ナトリウムの量の増加が、増加されたモナチン排出を引き起こしたことを示す。更に、実施例21は、単独での又はビオチンと組み合わせたアンピシリン処理が、増加されたモナチン排出を引き起こしたことを示す。更に、実施例22は、単独での又はTween20と組み合わせたエタムブトール処理が、コリネバクテリウムにおけるモナチン排出にプラスの効果を与えたことを示す。
本発明の別の態様は、ある種の輸送体を発現しないために選択された微生物、又はある種の輸送体を発現しないように操作されている微生物において、モナチンを生産させることを含んで成る。実施例11は、ある種の輸送体―YhcP (AaeB), YccS, YjcQ及びYhfKとして同定された4つの推定排出輸送体の欠失が、モナチンの増加生産をもたらすことを証明する。理論に縛られずに、ある種のポンプはモナチンの生産経路に沿って形成される中間体も輸送することができ、それらの中間体の排出が遅滞又は減少したモナチンの生産を引き起こすと考えられる。結果として、それらのポンプの欠失が、促進又は増加されたモナチン生産をもたらすだろう。
本発明の別の態様は、改変された細胞エンベロープを有するように操作された微生物において、例えばマイコール酸が欠損もしくは抑制されるように操作された微生物において、モナチンを生産せしめることを含んで成る。理論に縛られずに、そのようなアプローチは、外的透過障壁の衰弱のために、モナチン排出の増加をもたらし得ると信じられる。より詳しくは、コリネバクテリウム属の細胞エンベロープの主な脂質構成要素であるマイコール酸は、細胞壁アラビノガラクタン又はエステル化トレハロースとグリセロールに共有結合した形で見つかる。マイコール酸含有成分は、この細胞エンベロープの構造と機能において重要な役割を果たすと思われる。というのは、主として、それらの成分が、別の脂質と一緒になって、前記細菌に非常に低い透過性を付与する超低流動性の外的透過障壁を形成するからである。これは、多数の抗生物質に対するマイコバクテリアの固有の耐性を説明する。Kacem, R.他、”Importance of mycoloyltransferases on the physiology of Corynebacterium glutamicum,” Microbiology 150:73-84 (2004)。
微生物により生産されるモナチンは、それが分泌された後に培地から回収することができる。更に、微生物により生産されたモナチンは、それが分泌された後に培地から単離することもできる。分離法は、発酵培地からの有機酸の単離について当業者に既知であり、それは典型的にはクロマトグラフィー法及び/又は抽出法に頼るものである。モナチンはグルタミン酸に類似している。発酵ブロスからのグルタミン酸の精製のための多数の方法が当業界で既知である。複雑な生物学的媒質からのモナチンの単離は以前に記載されている(WO 03091396、実施例6参照)。媒質からモナチンを収集及び/又は単離するために利用できる方法の一例は、低pHで強カチオン交換クロマトグラフィー、例えばBio-RadからのAG50WX-8樹脂(H型)を使用することである。この方法では、化合物モナチンのアミノ基を帯電させ、そして該樹脂に結合させる。汚染有機酸は、低pHでは樹脂に結合せず、樹脂を通過する。次いで、中性pHでアニオン交換クロマトグラフィー、例えばDEAE樹脂を使って、アミノ酸を互いに分離することができる(例えばトリプトファン、アラニン、モナチンを分離する)。
次の実施例は、本発明を実行、利用及び/又は理解する上で通常の技量を有する人を助けるためのものである。それらの実施例は本開示の範囲を制限するものではない。例えば、実施例で使用するモナチンは大部分はS,Sモナチンである。しかしながら、実施例の輸送体の特異性は輸送体分子の不斉に基づくものではないと思われる。従って、S,Sモナチンを輸送すると証明された系は、モナチンの4種の立体異性体全てを輸送するのに効果的であろう。
実施例1
AcAB排出ポンプの誘導はモナチン輸送を増加させる
エシェリキア・コリ(Escherichia coli)のAcrAB TolC系は、細胞質膜成分/プロトン交互輸送体(アンチポーター)AcrB及びペリプラズム補助タンパク質AcrAから成る多剤排出ポンプである。AcrA及びAcrBの受入れ番号はAcr(タンパク質:NP_414995, DNA: NC_000913)及びAcrB(タンパク質:NP_414996, DNA:NC_000913)である。該細胞は、抗生物質、界面活性剤、色素及び有機溶剤をはじめとする多種多様な抗菌性化合物を、外膜チャンネルTolCを通して媒質中に直接排出させるためにこの系を使用する。AcrAB遺伝子は、デカン酸ナトリウムの付加により誘導可能である。Zgurskaya, H.I. & Nikaido, H., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7190-7195 (1999)。
媒質への2.5 mMデカン酸ナトリウムの添加が、80〜160μg/mlノボビオシンに対する寛容を引き起こすことを調べるために、E.コリB21 DE3を用いた予備研究を実施した。これは、acrAB遺伝子がデカン酸ナトリウム添加により誘導され、そしてノボビオシンに対する耐性を付与するという証拠として採用した。Rosenberg, E.Y.他、Molecular Microbiol. 48:1609-1619 (2003)。
実験に使用した微生物株はE.コリBL21(DE3)::aspC/proA/pET32(WO 03091396)であった。記号::は、当業界で知られるように、「形質転換された」を意味する。実施例12は、微生物を形質転換するための非限定的な典型法を提供する。接種用に、E.コリ株を、100μg/mLのアンピシリンを含有するLuria-Bertani(“LB”)培地中で37℃及び250 rpmにて一晩増殖させた。実験処置用には、E.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地であるTrp-1+グルコース培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を、次の通り調製した。800mLのナノ純水に次の試薬を添加した:2g (NH4)2SO4及び13.6g KH2PO4。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増やし、培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、0.2 g MgSO4・7H2O, 0.01 g CaCl2・2H2O及び0.5 mg FeSO4・7 H2Oを1.8 mL容量において培地に添加し、次いで0.2 mLのNeidhardt微量栄養素溶液を添加した。Neidhardt, F.C.,他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含む(リットルあたり):0.18 g (NH4)6(MO7)24・4H2O, 1.24 g H3BO3, 0.36 g CoCl2・6H2O, 0.12 g CuSO4(無水)、0.8 g MnCl2・4H2O及び0.14 g ZnSO4・7H2O。50%グルコース溶液を別々に調製し、無菌濾過した。40 mLのグルコース溶液と10 mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を1Lの最終容量になるように前記基本培地(950mL)に添加した。2〜5v/v%のE.コリ接種材料を、500 mLのバッフル振盪フラスコ中に入れた100μg/mlのアンピシリンを含む100μg/mlの培地容量に添加した。250 rpmで攪拌しながら誘導まで37℃にてインキュベートした。0.6 OD600nmで、0.5 mM IPTGを使ってpET32ベクター上のモナチンオペロン遺伝子(aspC及びproA)の誘導を開始させた。0.5 mM塩酸ピリドキシン、及び0.2 mLのBalchビタミン類(Balch, W.E.他、Methanogens: reevaluation of a unique biological group,” Microbiol. Rev. 43:260-296 (1979))を誘導時に添加し、誘導後にインキュベーション温度を30℃に下げた。誘導後3.5時間目に1gのL−トリプトファン、5 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMのピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20-ソルビタンモノラウレート)を添加した。幾つかの処置は、誘導後3.5時間目に2.5 mMデカン酸ナトリウム添加を伴った。モナチン分析及び乾燥細胞重量測定用の試料は、24時間目と30時間目に採取した。モナチン分析は実施例13に記載の通り実施した。
Figure 2008536523
Figure 2008536523
E.コリBL21(DE3)::aspC/proA/pET32を2.5mM デカン酸ナトリウムで処理することにより、モナチン分泌量/乾燥細胞重量(“dcw”)の9倍以上の増加(1.58に対して14.6、1.57に対して15.2 mgモナチン/g dcw)が観察された。従って、モナチン排出はAcrAB排出系のターニング・オン又はアップレギュレーション発現により増加され得る。適当な誘導物質に暴露されると、AcrAB輸送系の輸送体系同族体もモナチン輸送を増加させるかもしれない。
実施例2
EmrAB排出ポンプの誘導がモナチン輸送を増加させる−E.コリ及びC.グルタミカム
多剤排出ポンプであるEmrB排出ポンプはemrB遺伝子(Genbank受入番号NP_417171, DNA NC_000913)によりコードされる。Lomovskaya, O. & Lewis, K, “emr, an E. coli locus for multidrug resistance,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:8938-8942 (1992) 。emrB遺伝子は、増殖/発酵培地への誘導物質カルボニルシアニド3−クロロフェニルヒドラゾン( “CCCP”)の添加によりアップレギュレートすることができる。Lomovskaya, O.他、”Differential regulation of the mcb and emr operons of E. coli: Role of mcb in multidrug resistance,” Antimicrob. Agents Chemother. 40:1050-1052 (1996)。この実施例は、CCCP処理の結果としての増加されたモナチン排出を示す。
実験に使用する株は、E.コリMG1655::aspC/proA/pProNde及びE.コリBL21(DE3)::aspC/proA/pET30を含んだ。接種用には、50μg/mLのカナマイシンを含有するLuria-Bertani(“LB”)培地中で37℃及び250 rpmにて一晩増殖させた。
実験処理用に、E.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地であるTrp-1+グルコース培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を、次の通り調製した。800mLのナノ純水に次の試薬を添加した:2g (NH4)2SO4及び13.6g KH2PO4。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増やし、培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、0.2 g MgSO4・7H2O, 0.01 g CaCl2・2H2O及び0.5 mg FeSO4・7 H2Oを1.8 mL容量において培地に添加し、次いで0.2 mLのNeidhardt微量栄養素溶液を添加した。Neidhardt, F.C.,他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含む(リットルあたり):0.18 g (NH4)6(MO7)24・4H2O, 1.24 g H3BO3, 0.36 g CoCl2・6H2O, 0.12 g CuSO4(無水)、0.8 g MnCl2・4H2O及び0.14 g ZnSO4・7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、無菌濾過した。40mLのグルコース溶液と10mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を1Lの最終容量になるように前記基本培地(950mL)に添加した。
処置用には、2〜5v/v%のE.コリ接種材料を500mLのバッフル振盪フラスコ中に入れた50μg/mlのカナマイシンを含む100μg/mlの培地容量に添加した。処置条件は、全体を通しての250 rpmでの攪拌と、誘導までの37℃インキュベーション、次いで、誘導後の30℃インキュベーションを含んだ。0.5〜0.6 OD600nmで、プラスミド遺伝子の誘導を開始した。誘導時に、0.5 mM IPTG、0.5%アラビノース、0.5mM塩酸ピリドキシン及び0.2 mLのBalchビタミン類を添加した。誘導後3.5時間目に1gのL−トリプトファン、5 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMのピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)、10μg/mlアンピシリン及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20-ソルビタンモノラウレート)を添加した。幾つかの処置は、10μM カルボニルシアニド3−クロロフェニルヒドラゾン(”CCCP”)添加を伴った。1つの処置は、誘導後3.5時間目に追加の10μM CCCP容量の添加を含んだ。CCCPはEmrB排出系を誘導した。モナチン分析及び乾燥細胞重量測定用の試料は、10,15.5,25.6及び31時間目に採取した。モナチン分析は実施例13に記載の通り実施した。
Figure 2008536523
E.コリBL21(DE3)::aspCproApET30株を用いた時、振盪フラスコを1回(10μM)又は2回(20μM)のCCCP添加処理することにより、31時間目に1.8倍又は3.5倍以上のモナチン/dcw(33.0/18.1又は64.2/18.1)の増加が観察された。E.コリMG1655::aspCproApProNde株では、31時間目にモナチン/dcwの2倍増加が観察された。従って、モナチン排出は、EmrAB排出ポンプのターンオン又はアップレギュレーション発現により少なくとも2倍増加させることができる。モナチン排出は、モナチン輸送を増加させることが示されている別の処置と組み合わせることにより、更に増加させることが可能である。
実施例3
EmrAB及びAcrAB輸送体それぞれによるモナチン輸送に対する影響を調べるための、E.コリemrB及びacrAB遺伝子の不活性化(ノックアウト)
記載の通り、鋳型pKD3からPCRによって所望のノックアウト生成物を作製するためにプライマーを設計した。Datsenko K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products, “Proceed. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-6645 (2000)。
emrB ノックアウトプライマー配列:
E.コリEmrBF
(5’-AAGCTAACGCTGGCTAATCCAGAGGTGCGTGTGATGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’);
E.コリEmrBR
(5’-AAAGCCAGTTCAAATGAACTGGCTTAGTTGTACTTACATATGAATATCCTCCTTA-3’);
acrABノックアウトプライマー配列:
E.コリAcrAF
(5’-GACCAATTTGAAATCGGACACTCGAGGTTTACATATGAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’);
E.コリAcrBR
(5’-CTTACGCGGCCTTAGTGATTACACGTTGTATCAATGATGCATATGAATATCCTCCTTA-3’)
emrB及びacrAB遺伝子の欠失のためのPCR生成物を、次のPCRプロトコルを使って増幅せしめた。100μLの反応液中、100 ngの鋳型(pKD3)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products, “Proceed. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-6645 (2000))、0.4μMの各プライマー、0.4 mMの各dNTP、5.6UのExpand High Fidelity(商標)ポリメラーゼ(Roche, Indianapolis, IN)、1.0 UのPfuポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)及びMgを含む1×Expand(商標)緩衝液を使用した。使用した熱循環プログラムは、94℃で3分間の熱開始と、以下の段階の8回の反復、すなわち、94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で1分30秒、それに続いて以下の段階の22回の反復、すなわち、94℃で30秒、58℃で30秒及び72℃で1分30秒を含んだ。前記22回の反復の後、試料を72℃にて7分間維持し、次いで4℃にて保存した。このPCRプロトコルにより、emrB及びacrABノックアウトプライマー対の両方について1.1 Kbの生成物が産生された。
Quiagenゲル抽出キット(Valencia, CA)を用いて0.8%TAE−アガロースゲルからPCR生成物をゲル精製した。そのPCR生成物をSmartSpec 3000(商標)分光光度計を使って定量した。
ゲル精製したPCR生成物を用いてE.コリBW25113/pKD46株を形質転換せしめた。Datsenko K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products,” Proceed. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645 (2000)。各生成物1μLに40μLの細胞を添加し、BioRad Gene Pulsar IIを使ったエレクトロポレーションにより、以下の条件下で形質転換せしめた:0.2cmキュベット中、2.5 kV, 25μF,200オーム。225rpmで振とうしながら、37℃にて4時間1mlのSOC中に細胞を回収し、次いで室温に一晩(振盪せずに)置いた。クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むLB培地上に細胞を播き、37℃で一晩インキュベートした。クロラムフェニコール耐性形質転換体を非選択的LB培地上で単一コロニー精製し(42℃で増殖)、そして単一コロニーをクロラムフェニコール耐性の保持とアンピシリン耐性の喪失(pKD46の治癒を示す)について試験した。emrB又はacrAB遺伝子の正しい欠失の確認は、次の欠失遺伝子座の上流及び下流のプライマーを使ったコロニーPCRにより、実施した:
EmrBupstreamF:5’-GTATCGGTCAGCCGGTCACT-3’
EmrBdownstreamR:5’-TGTTCGATCTGCGCVTTCTGC-3’
AcrAupstreamF:5’-TAATCGACGCCGTTCTTCTG-3’
AcrAdownstreamR:5’-GCGGTTGAACTAACGGACAC-3’
emrBの欠失については、プライマーEmrBupstreamFとEmrBdownstreamRを使って、せん断形1.9 kb PCR生成物を野生型2.4 kb生成物に比較して観察した。acrABの欠失については、プライマーAcrAupstreamFとAcrBdownstreamRを使って、せん断形1.9 kb生成物を野生型5.679 kb生成物に比較して観察した。
溶解物の作製:BW25113ΔEmrB及びBW25113ΔAcrAB株について、それぞれE.コリのBL21DE3又はE.コリMG1655産生宿主中へのノックアウトの輸送を可能にするため、P1ファージ溶解物を作製した。ドナー株を10μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB培地中で一晩増殖させた。その培養物を、1:10希釈度において5 mM CaCl2を含む新鮮LB培地に接種し、37℃で70分間インキュベートした。各培養物の1mLを3μL又は5μLのファージ原液(ATCC 25404-B1)と共に37℃で20分間インキュベートした。次いでファージ/培養物を、5 mM CaCl2を含む4mLの軟寒天と混合し、それをLB培地上に積層した。ファージを使用しない対照実験を設定した。プレートの右側を上に傾けて37℃にて5時間インキュベートし、その後、ファージを含む全てのプレートについて溶解を観察した。対照プレートは予想通り細胞溶解が全くなかった。プレートを37℃で一晩インキュベートし、その後、実験プレート上には予想通りファージ耐性コロニーが観察された。各プレートからの軟寒天を、無菌の使い捨てループを使って、遠心管中に掻き取った。2mLのLB培地を用いてプレートを洗浄し、洗浄液を遠心管中の軟寒天と混合した。該遠心管に5滴のクロロホルムを添加し、それを穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートした。その混合物を10,000×gで10分間遠心分離し、0.2μmシリンジフィルターを用いて上清を濾過し、ファージ溶解物を得た。全てのファージ溶解物を4℃で保存した。
産生宿主中への形質導入:P1形質導入によりemrBノックアウトをE.コリBL21DE3株に移行し、acrABノックアウトをE.コリMG1655性に移行せしめ、それぞれBL21DE3ΔemrBとMG1655ΔacrAB株を作製した。BL21DE3ΔemrBとMG1655ΔacrAB株を10μg/mLクロラムフェニコールを含むLB培地中で一晩増殖させた。その培養物を、1:10希釈度を使って5 mM CaCl2が補足された新鮮LB培地5mLに接種した。継代培養物を37℃で60分間インキュベートした。培養物を遠心分離し、500μLのMC緩衝液(0.1 M MgSO4, 5 mM CaCl2)中に再懸濁し、室温で20分間インキュベートした。ドナー溶解物の様々な希釈液(MC緩衝液中1:100〜1×)を同容量にて100μLの培養物に添加した。混合物を37℃で20分間インキュベートし、その後200μLのクエン酸緩衝液(0.1 Mクエン酸及び220 mM NaOH、pH 5.5に調整)と1mLのLBを各試験管に添加した。培養物を200 rpmにて攪拌しながら37℃で1時間インキュベートし、次いで遠心分離して細胞ペレットを得た。細胞ペレットを100μLのクエン酸緩衝液中に再懸濁し、10μg/mLクロラムフェニコールを含むLB培地上に塗抹した。
適当な選択培地上で再画線培養することにより、単一クロラムフェニコール耐性コロニーを精製し、BW25113 ノックアウト株について上述したようなPCRにより、単一コロニーを試験し、emrB及びacrABノックアウトの存在を確認した。それぞれEmrAB及びAcrAB輸送体系に対するemrB及びacrABノックアウトの効果は、適当な抗生物質を使って輸送体変異体の表現型を評価し、そして下記の第3.1表及び第3.2表に示すような野生型対照微生物と比較することにより、決定した。
Figure 2008536523
第3.1表の観察結果に基づいて、EmrAB輸送体系がCCCPの排出の原因であることが確認された。CCCPの不在下(0μM)では、野生型とΔemrB E.コリ株の両方について24時間目に同様な増殖が観察される。しかしながら、20μMのCCCPを添加すると、欠失株E.コリBL21DE3ΔemrB::aspCproApET30は、恐らく毒性分子CCCPを排出する能力を欠くため、増殖が80倍/99%減少することを示した。それらのデータは、CCCPを輸送することに関してEmrAB系の重要な役割を確証する。
Figure 2008536523
このように、表3.2の観察結果に基づいて、AcrAB輸送体系がノボビオシンの排出を担い、この系がデカン酸ナトリウムにより誘導されることが確証された。ノボビオシンの不在下(0μM)では、pProNdeベクター上のモナチンオペロン(aspC, proA)により形質転換された野生型株とΔacrAB E.コリ株の両方について、24時間目に同様な増殖が観察される。40又は80 ppmのノボビオシンの存在下では、ΔacrAB E.コリ株で増殖が完全に阻害されるが、一方で対応する対照は増殖のわずかな阻害しか示さなかった。AcrABを誘導するデカン酸ナトリウムの存在下では、対応する対照株は0ppm、40ppm又は80ppmのノボビオシンを用いた場合と同様な光学濃度に増殖し、一方でΔAcrABA E.コリ株は完全に阻害された。
実施例4
E.コリ、コリネバクテリウム種又は他の微生物からのモナチン輸送体を同定する方策
本明細書中の別の実施例からのデータは、AcrAB及びEmrAB多剤排出ポンプがモナチンを輸送できることを示した。デカン酸によるAcrAB輸送体系の誘導は、モナチン排出の更なる増加を引き起こした。acrAB及びemrAB輸送体系遺伝子に加えて、推定上の膜トポロジー推論及びバイオインフォマティクスアプローチを使って、多数の輸送体遺伝子を同定することができる。E.コリゲノムは、過剰発現されると薬剤耐性を付与することができる少なくとも20種の薬剤輸送体系をコードすると報告されている。
それらの輸送体のうちの幾つかはそれらの生来のプロモーターから発現されないかもしれず、又はそれらの発現が生来の宿主中の一般的又は特異的なリプレッサー分子により抑制されているのかもしれない。Nishino, K.&Yamaguchi, A., “Analysis of a complete library of putative drug transporter genes in Escherichia coli,” J. Bacteriol. 183: 5803-5812 (2001)。acrABが除去されたそれらの輸送体のうちの幾つかは、通常の醗酵及び/又は培養条件下で最適に発現されないという報告もあり〔Sulavik, M.C.他、”Antibiotic susceptibility profiles of Escherichia coli strains lacking multidrug efflux pump genes, “Antimicrob. Agents Chemother. 45: 1126-1136 (2001)〕、従って、それらの輸送体の活性を検出するのに特別な方法が必要なわけではない。上記の情報に基づくと、E.コリや他の微生物の追加の輸送体が、様々な効率及び選択性で、モナチンを輸送できるかもしれない。
バイオインフォマティクス(生物情報学)アプローチ(特定の輸送体性質、膜貫通領域などの調査)、パブリックドメイン文献検索等を用いて、輸送体遺伝子候補の起源を同定し、そして輸送体の誘導因子についての情報を得ることができる。輸送体は以前に同定されたクラスに分類することができる(専門家には周知)。各クラスからの1又は2つのメンバーを、モナチン輸送の役割を決定するために同定することができる。モナチン輸送の増加を示す微生物株を輸送体遺伝子の過剰発現のない野生型対照と比較すると、各輸送体がモナチン排出に何らかの役割を有することが示唆される。この方策は、試験した各輸送体からの観察結果を全輸送体クラスに波及できるようにする可能性がある。
例えばモナチンオペロン(aspC, proA)をベクター中にクローニングし、そして特定の輸送体又は輸送体系もしくは個々の輸送体成分が欠けている宿主成分中に形質転換せしめることができる。モナチン生産能力を有する特定の輸送体変異体を、適当な野生型対照と比較したモナチン輸送の減少についてスクリーニングする。モナチン輸送の減損を引き起こす輸送体の欠失は、各輸送体がモナチン排出に役割を果たしていることを示す。
例えば、モナチンオペロン(aspC, proA)をベクター中にクローニングでき、各々が特定の輸送体又は輸送体系もしくは個々の輸送体成分を過剰発現するように遺伝子操作されている宿主微生物中に形質転換せしめることができる。輸送体遺伝子の過剰発現なしの野生型対照に比較してモナチン輸送の増加を示す微生物株は、その各輸送体がモナチン排出に何らかの役割を果たすことを示唆する。
特異的増殖条件又は一般的誘導物質は、輸送体系のモナチン排出活性を増加させることができる。誘導物質は輸送体特異的であるか又は一般的であることができ、それらが輸送体の活性を増加させることによりモナチン輸送体活性について容易にスクリーニングできるようにするため、有益である。例えば、インドールは、acrD, acrE, cusB, emrK, mdtA, mdtE及びyceLをはじめとする多数の輸送体遺伝子の発現を増加させる。Hirakawa, H.他、”Indole induces the expression of multidrug transporter genes in Escherichia coli, “Molecular Microbiology 55:113-1126 (2005)。誘導された系と対応する未誘導の対照とのモナチン排出の比較は、モナチンを輸送できる輸送体系及び誘導物質の評価を可能にする。例えば、実施例1、2及び14を参照のこと。
例えば、モナチンオペロン(aspC, proA)をベクター中にクローニングして、適当な宿主微生物中に形質転換せしめることができる。モナチン産生株を適当な誘導物質で処理しそしてモナチン排出の増加について調べることができる。マイクロアレイ分析を用いて、増加されたモナチン排出をもたらす誘導条件のもとで過剰発現される輸送体遺伝子を同定することができる。それらの輸送体遺伝子候補を上記の通り過剰発現させてモナチン排出における役割を調べることができる。
例えば、モナチンオペロン(aspC, proA)をベクター中にクローニングし、1又は複数の既知モナチン輸送体、例えばAcrAB又はEmrAB系が欠損した宿主微生物中に形質転換せしめることができる。何らかの主要既知輸送体を欠いている宿主バックグラウンドにおけるモナチン輸送体の誘導は、野生型微生物における、又は特定の輸送体又は輸送体系もしくは個々の輸送体成分を過剰発現するように操作されている微生物株における、付加的なモナチン輸送体の検出を可能にするだろう。適当な対照株に比較してモナチン輸送の増加を示す微生物株は、各々の誘導物質及び/又は輸送体がモナチン排出に重要な役割を果たし得ることを示す。
本明細書に記載の実施例にて観察されるモナチン排出に加えて、恐らく培地中のインドール−3−ピルビン酸(“I3P”)のようなモナチン中間体が関係する反応のためと思われる、赤色形成が培地中に観察され、このことはモナチン中間体も輸送されていることを示す。
結果としての色素形成(I3P複合体形成による)を伴うインドール−3−ピルビン酸排出は、I3P輸送体についてのスクリーンとして利用できる。モナチンとインドール−3−ピルビン酸のようなモナチン中間体との構造類似性を仮定すれば、I3P輸送が可能な輸送体系はモナチン輸送のための候補となり得る(輸送体がI3Pとモナチンとを区別しないだろうという仮説)。例えば、ストレプトマイセス・グリセオグラビス(Streptomyces griseoglavus)は細胞及び細胞外インドール−3−ピルビン酸の有効な生産体であり、I3Pとモナチン輸送体についてスクリーニングするための有力な候補生物体となり得る。El-Abyad, M.S.& Farid, M., “Optimization of culture conditions for indole-3-pyruvic acid production by Streptomyces griseoflavus, “Can. J. Microbiol. 40:754-760 (1994)。モナチン排出の効率を増加させるためには、インドール−3−ピルビン酸のようなモナチン中間体/前駆体並びにトリプトファンやピルビン酸塩のような開始基質の輸送を減少させることにより、輸送体候補を改変してモナチン輸送体に対する特異性を増加させることが必要とされるだろう。
実施例5
TolCのクローニング及び過剰発現
本実施例は、E.コリtolC遺伝子をクローニング及び過剰発現するために使用した方法を記載する。
ポリメラーゼ連鎖反応プロトコル:pProNcoベクター(Clontech, Palo Alto, CA)中へのクローニングのため、5′制限部位と突出部を有するプライマーを設計した。プライマー配列:N末端:5’-GGCCTTGGCCATGGAAATGAAGAAATTGCTCCCC-3’及びC末端:5’-CCGGCCAAGCTTTCAGTTACGTGAAAGGGTTAT-3’。TolC遺伝子は次のPCRプロトコルを使って増幅させた。50μLの反応物中、0.150μgの鋳型(E.coli MG1655)、1.6μMの各プライマー、0.4 mM各dNTP、2.8UのExpand High Fidelity(商標)ポリメラーゼ(Roche, Indianapolis, IN)、0.5U Pfuポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)、Mgを含む1×Expand(商標)緩衝液、及び2.5μLのDMSOを用いた。使用した熱循環プログラムは、94℃で3分間の熱開始、以下の段階の8回の反復:94℃で30秒、52℃で45秒及び72℃で2分30秒。この後、以下の段階の18回の反復:94℃で30秒、59℃で45秒、及び72℃で2分30秒。この反復の後、試料を72℃で7分間維持し、次いで4℃で保存した。このPCRプロトコルにより約1475 bpの生成物が産生された。
tolC遺伝子のクローニング:PCR生成物を、Quiagenゲル抽出キット(Valencia, CA)を用いて0.8%TAE−アガロースゲルからゲル精製した。PCR生成物は、SmartSpec 3000TM分光光度計を使って定量した。製造業者の推奨プロトコル(Invitrogen, Carlsbad, CA)に従って生成物をTOPO平滑末端クローニングした。上記プロトコルを用いて形質転換体をPCRスクリーニングし、TolC挿入断片を確認した。製造業者の推奨プロトコル(New England Biolabs, Beverly, MA)に従って、確認済みのTOPOクローンを制限酵素NcoI及びHindIIIで消化し、Quiagenゲル抽出キット(Valencia, CA)を用いて1.475 kbバンドを0.8%TAE−アガロースゲルからゲル精製した。制限酵素NcoIとHindIIIを使った消化に続いてエビアルカリホスファターゼでの処理と0.8%TAE−アガロースゲルからの精製により、ベクターpProNcoを調製した。
消化したベクターと挿入断片とをRapidTM DNA連結キット(Roche, Indianapolis,IN)を使って連結せしめた。処理した挿入断片約50 ng、処理したベクター100 ng(挿入断片:ベクターのモル比は3:1)、5UのT4 DNAリガーゼ、及び1×連結緩衝液を室温で5分間インキュベートした。高純度PCR生成物精製キット(Roche)を用いて連結反応液を浄化し、それをE.コリ DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)中に形質転換せしめた。各連結反応液10μLを40μLのDH10B細胞に添加し、それを次の条件下でBioRad Gene Pulsar IIを使ったエレクトロポレーションにより形質転換せしめた:0.2cmキュベット中2.5 kV, 25μF,200Ω。1mLの室温SOC中で225rpmで37℃にて振盪しながら1時間、細胞を回収した。該細胞をカナマイシン(50μg/mL)含有LBプレート上に塗抹し;プレートを37℃で一晩インキュベートした。
生成した形質転換体から、Quiagenスピンミニプレプキットを使ってプラスミドDNAを精製し、NcoIとHindIIIでの制限消化により正しい制限断片についてスクリーニングした。正しい挿入断片を有すると思われるプラスミドの配列を、ジデオキシ連鎖終止DNA配列分析法により確認した。
tolC遺伝子発現:配列分析により確認したプラスミドDNAを、E.コリ発現宿主BL21 (DE3)(Novagen, Madison, WI)中にサブクローニングした。培養物を増殖させ、Quiagenミニプレプキットを使ってプラスミドを単離し、制限消化により素性を確かめた。培養物を50mLのカナマイシン含有(50mg/L)LB培地中で、30℃で225rpmにて0.5〜0.6のOD600にまで増殖させ、tolC遺伝子の過剰発現のために100mM IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)と0.5%アラビノースにより誘導した。モナチン輸送に対するTolCの過剰発現の効果は、下記実施例6と7に記載される。
実施例6
E.コリ中でのtolC過剰発現により増加されたモナチンの排出
グラム陰性菌では、薬剤耐性は一部は、3種のタンパク質から構成される膜貫通型排出ポンプの活性によるものである。エシェリキア・コリ(Escherichia coli;大腸菌)からの代表的ポンプは、三量体外膜タンパク質TolC(アロステリック型チャンネルである)、三量体内膜プロトン交互輸送体(アンチポーター)AcrB及びペリプラズムタンパク質AcrAの集合体である。このポンプは、プロトン電気化学力を使って、細菌から外側に基質を輸送する。Fernandez-Recio, J.他、”A Method of a transmembrane drug-efflux pump from Gram-negative bacteria,” FEBS Lett. 578:5-9 (2004)。
E.コリ中のTolC遺伝子は、幾つかの異なる排出ポンプと協同して機能する外膜タンパク質をコードする。TolCは、エシェリキア・コリ(Escherichia coli;大腸菌)やシュードモナス・エルギノーザ(Pserudomonas aeruginosa;緑膿菌)といったグラム陰性菌からの様々な基質の輸送に重要な役割を果たしている。TolC同族体はグラム陰性菌の中でユビキタスであり、約100種のTolC同族体が同定されている。Dinh, T.他、”J. Bacteriol. 176:3825-3831 (1994); Johnson, J. & Church, M., J. Mol. Biol. 287:695-715 (1999); Anderson, C.他、EMBO Rep. 1:313-318 (2000)。TolCチャンネルの利用能の増加がモナチン輸送を増加させるかどうかを調べるために、tolC遺伝子をE.コリ中で過剰発現させた。
モナチンオペロン(aspC、アルパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子とproA、アルドラーゼ遺伝子)及び、tolC遺伝子含有又は不含有のいずれかのpProNdeプラスミド(US 20040235123に記載された通りに改変された、ClontechからのpProLAR)を有するE.コリ株BL21 (DE3)をモナチン輸送について試験した。
実験に使用した株は、E.coli BL21 (DE3) ::aspCproApET32及びtolCpProNde又はtolC不含有のpProNdeであった。接種用に、E.コリ株を100μg/mLアンピシリンと50μg/mLカナマイシンを含むLuria-Bertani(“LB”)培地中37℃及び250rpmで一晩増殖させた。
実験処置用に、Trp-1+グルコース培地、即ちE.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を以下の通り調製した:800 mLのナノ純粋に、2gの(NH4)2SO4と13.6gのKH2PO4を添加した。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増やし、そして培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、1.8 mL容量において0.2gのMgSO4・7H2O、0.01 g CaCl2・2H2O及び0.5mg FeSO4・7H2Oを培地に添加し、次いで0.2mLのNeidhardtの微量栄養溶液を添加した。Neidhardt, F.C.他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24-4H2O, 1.24g H3BO3, 0.36 g CoCl2-6H2O、0.12gのCuSO4(無水)、0.8gMnCl2-4H2O及び0.14gのZnSO4-7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、滅菌濾過した。40 mLのグルコース溶液と10 mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS)緩衝液を基本培地(950 mL)に1L最終容量になるように添加した。
処理用に、100μg/mLのアンピシリンと50μg/mLのカナマイシンを含有する500mLのバッフル振盪フラスコ中の100 mLの培地容量に、3〜4v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験を通して30℃の温度と250rpmの攪拌を含んだ。0.4 OD600nmで、プラスミド遺伝子の誘導を開始せしめた。誘導時、0.5mM IPTG, 0.5%アラビノース、0.5mM塩酸ピリドキシン及び0.2mL のBalchビタミン類〔Balch, W.E.他、”Methanogens: reevaluation of a unique biological group, “Microbiol. Rev. 43:260-296 (1979)〕を添加した。誘導後3時間目に、1gのL−トリプトファン、5 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)の添加を行った。或る処理は、誘導後3時間目に2.5 mMデカン酸ナトリウム添加を伴った。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、6.5、25及び50時間目に採取した。
排出されたモナチンの量は、実施例13に記載の方法を使って測定した。
Figure 2008536523
Figure 2008536523
上述した通り、25時間目のサンプリング時点において、TolC過剰発現を有する株は乾燥細胞重量1g当たり0.939 mgのモナチンを排出したのに対し、tolC過剰発現なしの株は0.056 mg/gのモナチンを排出した。これは、TolCチャンネルの利用能が増加されている株において、モナチン輸送量の16.8倍増加に相当する。50時間目のサンプリング時点でも同様な傾向が得られ、モナチン輸送量の15.8倍増加が観察された。それらのデータは、tolC遺伝子が過剰発現されているE.コリ株においてより多量のモナチンが輸送されることを示す。
実施例7
E.コリにおけるAcrAB排出ポンプの誘導と組み合わせたtolC過剰発現によるモナチン排出の増加
AcrAB多剤排出ポンプはE.コリでは2.5mMデカン酸ナトリウムの添加により誘導できることが上記から証明された。この実施例では、TolCチャンネルの増加された利用能とAcrAB排出ポンプの誘導との組み合わせを評価した。tolC遺伝子を過剰発現するE.コリ株を、AcrABポンプを同時に誘導するために更に2.5 mMデカン酸ナトリウムでの処理にかけた。
排出されるモナチンの量は、実施例13に記載の方法を使って測定した。
Figure 2008536523
Figure 2008536523
上記表に示す通り、AcrAB輸送体系がデカン酸ナトリウムで処理された条件下にあるE.コリ株は、tolC遺伝子の過剰発現と組み合わせた場合、それぞれ25時間及び50時間目のサンプリング時点において、tolC過剰発現なしの処理に対してモナチン輸送の58.5及び91.1倍の増加が得られた。それらのデータは、増加されたモナチン排出のためのAcrAB輸送系の誘導とtolC遺伝子の過剰発現とを組み合わせることの追加の利点を証明する。
実施例8
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)グルタミン酸栄養素要求(欠損)株はモナチン排出及び/又は生産を増加させる
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC株13032はグルタミン酸産生株である。NADP+依存性イソシトレートデヒドロゲナーゼ遺伝子(ICD;EC 1.1.1.42、GenBank受入番号X71489 )は、クエン酸サイクルの鍵酵素の1つであり、D−イソシトレートを2−オキソグルタル酸とCO2及びNADPHに変換する。2−オキソグルタル酸は更に還元アミノ化されてグルタミン酸を形成する。icd遺伝子の不活性化はグルタミン酸栄養素要求性を引き起こす。Eikmanns, B.J.他、”Cloning, sequence analysis and inactivation of the Corynebacterium glutamicum icd gene encoding isocitrate dehydrogenase and biochemical characterization of the enzyme,” J. Bacteriol., 177:774-782 (1995)。2つのicd変異体はHermann Sahm博士(Institut fur Biotechnologie des Forschungszentrums Julich, Germany)から得られた。グルタミン酸栄養素要求性は、icd変異体がグルタミン酸補給なしの最少培地中で増殖できないことにより確認した。icd変異体を、pEKEX-2ベクター上に置かれたモナチンオペロン(aspC/proA)(Eikmanns他、Gene 102:93-98 (1991))(以後APpEKEX-2と称する)により形質転換した。モナチンオペロンの誘導は、モナチン生産と細胞の外側への排出を引き起こした。
APpEKEX-2により形質転換されたC.グルタミカム13032株(不活性化icd遺伝子を有するか又は有さない)を、5μg/mLのクロラムフェニコールが補足されたLB培地中で30℃及び250rpmにて一晩増殖させた。実験処理には、100 mLのKraemer’A培地を各振盪フラスコ中で使用した。Hoisted C. & Kraemer, R., “Evidence for an efflux carrier system involved in the secretion of glutamate by Corynebacterium glutamicum,” Arch. Microbiol 151:342-347 (1989)。Kraemer’s A 培地は次のものを含んだ(リットル当たり):5g (NH4)2SO4、5g尿素、2gKH2PO4、1.53gK2HPO4、0.249gMgSO4・7H2O、50gグルコース、0.01g FeSO4・7H2O、0.01gMnSO4・H2O、0.01gCaCl2・2H2O、0.03 mg ZnSO4・7H2O、0.1 mg H3BO3、0.07 mg CaCl2・6H2O、0.01 mg NiCl2・2H2O、0.03 mg CuCl2・2H2O、(NH4)6Mo7O24-4H2OからのMo+6として0.1 mg、及び1μgのビオチン。pHを7.0に調整した。全てのフラスコ(グルタミン酸栄養素要求株(icd2)並びに野生型対照株)に5mMのグルタミン酸を補足した。
処理用に、500mLのバッフル振盪フラスコ中100 mLの培地容量に4〜7v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験を通して30℃の温度と250rpmでの攪拌を含んだ。モナチンオペロン遺伝子のOD600nm誘導は0.4〜0.7で開始された。0.5mM IPTGを誘導に使用し、誘導の時点で0.5 mM塩酸ピリドキシンと0.04 mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)を添加した。1gのL−トリプトファン、5g/Lのピルビン酸ナトリウム及び10μg/mLのアンピシリンを誘導後3時間目に添加した。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、接種後約24時間及び48時間目(実行時間)に採取した。
Figure 2008536523
モナチンはグルタミン酸骨格を有するので、細胞の外側へのモナチン輸送の1つの可能な候補となるのはグルタミン酸排出輸送体であろう。しかしながら、今までコリネバクテリウム属にはグルタミン酸輸送体は同定されていない。理論に縛られずに、グルタミン酸輸送体がモナチンを輸送できるとしたら、グルタミン酸栄養素要求体の場合のグルタミン酸輸送と競合せずに、より多くのモナチンを該輸送体によって排出できるだろうと期待する。加えて、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においてはピルビン酸はグルタミン酸とモナチン生産の両方の中間体である。グルタミン酸産生菌ではグルタミン酸への高い炭素流入が起こるために、グルタミン酸生産を欠損しているコリネバクテリウムの使用が、ピルビン酸からモナチンへの変換の増加を引き起こし得る。ICD酵素はエネルギー産生と中間代謝の両方に重要な役割を果たす(Eikmanns, B.J.他、”Cloning, sequence analysis, and inactivation of the Corynebacterium gluamicum icd gene encoding isocitrate dehydrogenase and biochemical characterization of the enzyme,” J. Bacteriol. 177:774-782 (1995))ので、不活性化されたicd遺伝子を有する株でのモナチン生産には追加の利点があるだろう。もう1つの追加の可能性は、ICDの上流の反応からの中間体の蓄積が、それらの中間体の構築を妨害する排出ポンプの形成を活性化しうること、そしてこの排出ポンプがモナチンを輸送できることである。
モナチンオペロン(aspCproApEKEX-2)により形質転換されたC.グルタミカム 13032 icd2グルタミン酸栄養素要求体は、乾燥細胞重量1グラム当たり平均15.97mgのモナチンを生産し、それに対比してモナチンオペロンを有する野生型対照は、乾燥細胞重量1グラム当たり0.28mgのモナチンを生産した。それらの結果は、モナチンオペロンにより形質転換された不活性なicd遺伝子を有するC.グルタミカム13032グルタミン酸栄養素要求体が、機能的icd遺伝子を有する野生型株よりも57倍多くのモナチンを排出したことを示す。
実施例9
E.コリ(E. coli)グルタミン酸栄養素要求(icdA欠損)株は、増加されたモナチン排出能力を有する
低レベルのナリジクス酸を有する栄養素プレート上でE.コリ及び他の細菌の変異体をスクリーニングすることで、耐性が異なる遺伝子座での突然変異に由来することがわかった。1つのそのような遺伝子座は、イソシトレートデヒドロゲナーゼをコードするicdA遺伝子である。icdA遺伝子における突然変異は、グルタミン酸栄養素要求性を引き起こし、多量のクエン酸とイソクエン酸(IcdAにより触媒される反応よりも前の中間体)の蓄積をもたらす。そのような中間体蓄積とナリジクス酸耐性との関係は、次のように推定される:代謝産物/中間体は細胞からナリジクス酸を除去する排出ポンプを活性化し、それにより毒性を防止する。icdA変異体では増加されたacrAB転写が起こると報告され、E.コリicdA変異体ではナリジクス酸耐性の発現にAcrAB-TolC排出ポンプを必要とすることが証明された。Helling, R.B.他、”Toxic waste disposal in Escherichia coli,” J. Bacteriol. 184:3699-3703 (2002)。よって、icdAに突然変異を有し且つモナチン生産のための遺伝子により形質転換されているE.コリ株において、モナチン輸送の増加はAcrAB-TolC輸送体の誘導に起因すると予想されるだろう。
実施例10
炭素基質としてのリンゴ酸がE.コリにおけるモナチン排出/流出を増加させる
モナチンはグルタミン酸骨格を有し、4−置換グルタミン酸誘導体であると考えることもできる。従って、モナチンは、例えばリンゴ酸のような基質に代わってグルタミン酸を輸送する輸送体により、細胞、例えば細菌細胞の外側に輸送される可能性がある。DiT2遺伝子によりコードされるアラビドプシス(Arabidopsis)プラスチド中のグルタミン酸/リンゴ酸輸送体は、対向輸送(アンチポート)方式でグルタミン酸とリンゴ酸を転送する。Renne, P.他、”The Arabidopsis mutant dct is deficient in the plastidic glutamate/malate translocator DiT2,” Plant J. 35:316-331 (2003); Taniguchi, M.他、”Identifying and Characterizing Plastidic 2-Oxoglutarate/Malate and Dicarboxylate Transporters in Arabidopsis thaliana,” Plant and Cell Physiology, 2002, 43:706-717 (2002)。グルタミン酸/リンゴ酸輸送体ファミリーは、クエン酸とコハク酸の対向輸送体(アンチポーター)であると思われるE.コリ中のCitT輸送体に類似している、ほうれん草クロロプラストの2−オキソグルタル酸/リンゴ酸輸送体と相同である。Pos, K.M., “The Escherichia coli citrate carrier CitT: a member of a novel eubacterial transporter family related to the 2-oxoglutarate/malate translocator from spinach chloroplasts,” J. Bacteriol. 180:4160-4165 (1998)。E.コリCitTタンパク質は、ジ−及びトリカルボン酸の輸送に関与する細菌輸送体の新規ファミリーの一員であると報告されている。モナチンはジカルボン酸である。恐らく、この輸送体が、宿主にグルタミン酸又はモナチンを上清中に排出しながらリンゴ酸を取り込めるようにするのだろう。リンゴ酸がモナチン輸送体を増加させる働きをする別の可能性は、グルコースとは異なる形で増殖速度と代謝経路への炭素分布に影響を及ぼす代替的炭素源としてリンゴ酸が働くという役割のためであるかもしれない。リンゴ酸は2つの遺伝子によりコードされるリンゴ酸酵素により内部的にピルビン酸に変換され得る〔Fischer, E. & Sauer, U., “Metabolic flux profiling of Escherichia coli mutants in central carbon metabolism using GC-MS, “Eur. J. Biochem. 270:880-891 (2003)〕。そしてピルビン酸はモナチン前駆体の1つであるため、ピルビン酸の入手可能性が大きくなれば、増加されたモナチン生産と、その結果としての増加されたモナチン分泌をもたらし得る。主要炭素源としてのリンゴ酸上でのE.コリの増殖は、培地中へのモナチン排出の増加を引き起こした。
接種用に、pET30上のE.コリBL21 DE3 aspC/proAを、50μg/mLカナマイシン含有LB培地中で37℃及び250rpmにて一晩増殖させた。実験処理には、実施例6に記載のようなTrp-1培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (2004))及び50μg/mLのカナマイシンを使用した。リンゴ酸とグルコースはそれらの各処理について最初は4 g/Lであった。処理フラスコには、250 mLのバッフル振盪フラスコ中50 mLの培地容量に、2.2%v/v%接種材料を添加した。グルコース処理用には、0.8 OD600nmでモナチンオペロンの誘導を開始した。リンゴ酸処理用には、0.25 ODで誘導を開始した。誘導には、0.5 mM IPTG, 0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2 mL Balchビタミン液(Balch, W.E.他、”Methanogens: reevalutation of a unique biological group,” Microbiol. Rev. 43:260-296 (1979))を添加した。誘導時には温度を30℃に下げた。1gのL−トリプトファン、5 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMピリドキサル−5′−リン酸("PLP”)、10μg/mLのアンピシリン、及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)を誘導後3時間目に添加した。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、誘導後24時間目に採取した。
Figure 2008536523
上記に示す結果から、グルコース処理に比較してリンゴ酸処理により、単位バイオマス当たりのモナチン輸送が増加された(6.28に対して7.72)。主炭素源としてのリンゴ酸は、単位バイオマス当たり23%高いモナチン輸送をもたらした。モナチン排出を増加させることが証明されている又は期待される別の条件と組み合わせて、主炭素源及び副次炭素源としてリンゴ酸を使用すると、モナチン生産及び排出を更に増加させることができるだろう。
実施例11
E.コリ中の推定排出輸送体(“PET”)Aae輸送体欠失によるモナチン排出の増加
細菌、酵母及び植物において推定排出輸送体(“PET”)のファミリーが報告されている。E.コリにおいて同定された受入番号を有するPETファミリーメンバーとしては、YjcQ(P32715)、YccS(P75870)、YhfK(P45537)及びYhcP(P46481)が挙げられる。PETファミリーのメンバーのうちの1つ、AaeAB/YhcPだけが、現在までに機能的に特徴付けられている。Van Dyk, T.K.他、”Characterization of the Escherichia coli AaeAB efflux pump: a metabolic relief valve?,” J. Bacteriol. 2004 Nov; 186:7196-7204 (2004)。細菌及び酵母タンパク質は、6つの推定α−ヘリックス膜貫通スパンナー(TMS)を示す約170残基のN−末端疎水性配列から成る二重内部反復要素に続いて、大きなC末端親水性細胞質領域を提示する。植物タンパク質は、そのようなユニットを1つだけ表示するが、それらは更に大きいC末端細胞質領域を有する。アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)は、PETファミリーの少なくとも7つのパラログをコードする。グラム陰性菌タンパク質は、しばしば、膜融合タンパク質をコードする遺伝子も含有するオペロン中に見つかる遺伝子によりコードされる。この事実は、PETファミリータンパク質が排出ポンプであることを強く示唆する。Harley, K.T. & Saier, M.H. Jr., “A novel ubiquitous family of putative efflux transporters,” J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 2:195-198 (2000)。
実験に使用するPET変異体株は、サンディエゴのカリフォルニア大学のMilton Saier博士より得られ、E.コリBW 25113野生型及び4つの単一ノックアウト変異体E.コリBW 25113ΔyhcP, E.コリBW 25113ΔyccS, E.コリBW 25113ΔyjcQ, E.コリBW 25113ΔyhfK及びクアド変異体E.コリBW 25113ΔyhcPΔyccSΔyjcQΔyhfKを含んだ。全ての株は、本明細書中の別の実施例に記載の通りpProNdeベクター上のモナチンオペロン遺伝子aspC及びproAにより形質転換せしめた。菌株は、50μg/mLカナマイシンを含むLuria-Beratni(“LB”)培地中で37℃及び250 rpmで一晩増殖させた。
実験処理には、E.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地であるTrp-1+グルコース培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を次の通り調製した。800mLのナノ純水に2 g (NH4)2SO4及び13.6 g KH2PO4を添加した。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増加させ、培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、0.2gのMgSO4・7H2O、0.01gのCaCl2・2H2O及び0.5 mgのFeSO4・7H2Oを1.8 mL容量において培地に添加し、次いで0.2 mLのNeidhardt微量栄養素溶液(Neidhardt, F.C.他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974))を添加した。Neidhardt’s培地は次のものを含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24・4H2O、1.24g H3BO3、0.36g CoCl2・6H2O、0.12g CuSO4(無水)、0.8g MnCl2・4H2O及び0.14g ZnSO4・7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、滅菌濾過した。40mLのグルコース溶液と10mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を1Lの最終容量になるように基本培地(950mL)に添加した。
モナチン生産振盪フラスコには、50μg/mLのカナマイシンを含む500mLのバッフル振盪フラスコ中に100mLの培地容量になるように3〜4%v/v接種材料を添加した。処理条件は、全体を通して250rpmの攪拌と、誘導までは37℃の温度で、次いで誘導後は30℃の温度であった。0.6のOD600nmで、プラスミド遺伝子の誘導を開始した。誘導時、0.5 mM IPTG、0.5%アラビノース、0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2mLのBalchビタミン液を添加した。1gのL−トリプトファン、5 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMのピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)、10μg/mlのアンピシリン及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)を誘導後3.5時間目に添加した。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、24時間目と30時間目又は31時間目に採取した。モナチンは実施例13に記載のようなLC/MS/MSにより測定した。結果を下記に示す。
Figure 2008536523
四重PET変異体株E.コリBW25113ΔyhcP(aaeB)ΔyccSΔyjcQΔyhfKは、野生型又は4つの単独変異体(これらは全て1.6〜2.02mgモナチン/g乾燥細胞重量の範囲に平均を有する)のいずれよりも有意に多量の、即ち乾燥細胞重量当たり6.16mgの、モナチンを排出した。
YhcP排出系は或る種のヒドロキシル化芳香族カルボン酸に対して高度の特異性を有すると報告されている。AaeAB(YhcP)排出系の狭窄特異性は、AcrAB-TolCのような多剤排出系と明確に対照的である。Van Dyk, T.K.他、”Characterization of the Escherichia coli AaeAB efflux pump: a metabolic relief valve?,” J. Bacteriol. 186:7196-7204 (2004)。AaeAB排出系の役割は「代謝開放弁(metabolic relief valve)」としてであり、代謝の混乱/内部応力が生じたとしたら(例えばモナチン又はモナチン中間体の蓄積)、該排出系の発現が活性化されるだろうと予想される。
モナチン排出の増加が四重PET(Aae)輸送体欠失バックグラウンドに観察されるという事実は、1又は複数のモナチン中間体の排出における1又は複数のPET輸送体の推定上の役割を指摘する。このように、モナチンを生産するように操作されているがそれらの4つのPET/Aae輸送体の組み合わせ不活性化を有する株では、モナチン中間体の損失が減少し、結果として、より多くのモナチンが該細胞により生産されそしてAcrAB TolC/EmrAB TolC等のような輸送体系により輸送されるだろう。別の可能性は、四重PET変異体バックグラウンドにおいて、モナチン生合成に関係があるか又は無関係でありその後モナチン輸送体を誘導する代謝産物の大量の蓄積が起こり、それが増加されたモナチン排出を引き起こすというものである。
個々のPET輸送体の様々な欠失組み合わせが、四重PET輸送体欠失株のモナチン排出と同程度有効であるか又はより有効である。四重PET変異体バックグラウンドを、モナチン輸送を増加させることが証明された別の輸送体又は条件と組み合わせて、モナチン輸送に更に有効な株を作製することが可能である。
上記結果は、直接又は間接的機構のいずれかを通して、YhcP(Aae)、YccS、YjcQ及びYhfK推定排出輸送体(PET)の組み合わせ欠失を有するE.コリ株が、対応する野生型対照株よりも、乾燥細胞重量当たりより多量のモナチンを排出した。
実施例12
コリネバクテリウム・グルタミカムの形質転換
本明細書がコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glucamicum)の形質転換に言及する場合、次の方法を使用した。
0.1の開始OD600nmになるように200mlのMB培地(5 g/L酵母エキス、15 g/Lトリプトン、5 g/L ソイトン、5 g/L塩化ナトリウム)中に出発接種材料を接種することにより、C.グルタミカムのエレクトロコンピテント細胞を調製した。0.7のOD600nmまで培養物を200 rpmでインキュベートし、そして4℃での遠心により細胞を収集した。細胞ペレットを、40 mLの氷冷緩衝液(5%グルセロールを含有する20 mM HEPES, pH 7.2)で3回洗浄した。次いで細胞ペレットを20 mLの氷冷10%v/vグリセロールで2回洗浄し、該ペレットを1mLの10%v/vグリセロール中に再懸濁した。洗浄したエレクトロコンピテント細胞を150μLアリコートに分け、−80℃にて凍結保存した。
エレクトロコンピテントC.グルタミカム細胞の形質転換前に、150μLのエレクトロコンピテント細胞を氷上で解凍した。該細胞に1μgの所望のプラスミドを添加し、氷上で5分間インキュベートし、次いで冷却した0.2cmキュベットに移した。細胞懸濁液の上に、層が混合しないように注意しながら0.8 mLの氷冷10%グリセロールを積層し、そして200Ω, 25 uFd, 12.5 kV/cmでエレクトロポレーションした。細胞懸濁液を4mLの46℃予熱MB培地に移し、振盪せずに46℃で6分間インキュベートした。細胞懸濁液を30℃,200 rpmで50分間インキュベートした後、適当な選択性抗生物質を含むMBプレート上に塗布し、30℃でインキュベートしてC.グルタミカム株を増殖させた。
実施例13
モナチン及びモナチン立体異性体の検出方法
この実施例は、モナチン、トリプトファン及びグルタミン酸の存在を検出するために使用した方法を記載する。それはモナチンの4つの立体異性体の分離及び検出方法も記載する。
モナチン及びトリプトファンのLC/MS/MS多重反応モニタリング(“MRM”)解析
試験管内又は生体内生化学反応から誘導されたモナチン及びトリプトファンについての混合物の分析は、クロマトグラフとMicromass Quattro Ultima三重四極子質量分析器の間にWaters 996 Photo-Diode Array (PDA)吸光度モニターが連続して配置された、Waters 2795液体クロマトグラフを含む、Waters/Micromass液体クロマトグラフィー縦列質量分析(“LC/MS/MS”)装置を用いて実施した。LC分離は、Xterra MS C8逆相クロマトグラフィーカラム、2.1 mm×250 mmを用いて40℃にて実施した。LC移動相は、A)0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸を含む水、及びB)0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸を含むメタノールから成った。
勾配溶出は、0〜4分の5%Bから35%Bへの直線勾配、4〜6.5分の35%Bから60%Bへの直線勾配、6.5〜7分の60%Bから90%Bへの直線勾配、7〜11分の90%Bの定組成、11〜12分の90%Bから95%Bへの直線勾配、12〜13分の95%Bから5%Bへの直線勾配、及び溶出と溶出の間隙の5分間の再平衡化であった。流速は0.25 mL/分であり、PDA吸収を200 nm〜400 nmでモニタリングした。ESI−MSの全てのパラメータは、着目の分析物のプロトン化分子イオン([M+H]+)の発生、及び特徴的な断片イオンの生成に基づいて、最適化しそして選択した。次の機器パラメータをモナチンとトリプトファンのLC/MS/MS多重反応モニタリング(“MRM”)分析に利用した。キャピラリー:3.5 kV;Cone:40V;Hex1:20V;Aperture:0V;Hex2:0V;供給源温度:100℃;脱溶媒和温度:350℃;脱溶媒和ガス:500L/時間;コーンガス:50L/時間;低質量分解(Q1):12.0;高質量分解(Q1):12.0;イオンエネルギー:0.2;流入口:−5V;衝突エネルギー:8;流出口:1V;低質量分解(Q2):15;高質量分解(Q2):15;イオンエネルギー(Q2):3.5;乗数:650。5つのモナチン特異的親−子MRM遷移を使って、試験管内及び生体内反応においてモナチンを特異的に検出する。モニタリングされる遷移は293.1から158.3、293.1から168.2、293.1から211.2、293.1から230.2、及び293.1から257.2である。トリプトファンはMRM遷移204.7から146.4を用いてモニタリングされる。モナチンとトリプトファンの内部標準定量には、各分析物対d5−トリプトファン及びd5−モナチンの4種の比を含有する較正基準を分析する。それらのデータを線形最小二乗法にかけて、モナチンとトリプトファンについての検量線を作成する。各試料に一定量のd5−トリプトファンとd5−モナチンを添加し、そして上述の検量線と組み合わせて応答比(モナチン/d5−モナチン;トリプトファン/d5−トリプトファン)を使用して、混合物中の各分析物の量を算出する。
モナチンのキラルLC/MS/MS(MRM)測定
試験管内及び生体内反応におけるモナチンの立体異性体分布の測定は、1−フルオロ−2,4−ジニトロフェニル−5−L−アラニンアミド(“FDAA”)による誘導体化と、それに続く逆相LC/MS/MS MRM測定により実施した。
FDAAによるモナチンの誘導体化
50μLの試料又は標準物に200μLのアセトン中1%FDAA溶液を添加した。40μLの1.0M炭酸水素ナトリウム溶液を加え、混合物を時折混合しながら40℃で1時間インキュベートした。試料を取り、冷却し、そして20μLの2.0 M HCl(緩衝化された生物混合物の中和には更に多くのHClが必要かもしれない)により中和した。完全に脱気した後、試料を即座にLC/MS/MSにより分析した。
試験管内及び生体内反応におけるモナチンの立体異性体分布の測定のためのLC/MS/MS多重反応モニタリング
分析は前の項目に記載したLC/MS/MS機器を使って実施した。4つのモナチン立体異性体の全部(特にFDAA−モナチン)を分離することができるLC分離は、Phenomenex Luna 2.0×250 mm(3μm)C18逆相クロマトグラフィーカラムを使って40℃にて実施した。LC移動相はA)0.05%(質量/容積)酢酸アンモニウムを含む水、及びB)アセトニトリルから成った。溶出は、0〜2分の定組成の13%B、2〜15分の13%Bから30%Bへの直線勾配、15〜16分の30%Bから80%Bへの直線勾配、16〜21分の定組成の80%B、及び21〜22分の80%Bから13%Bへの直線勾配、及び実施の間の8分間の再平衡化であった。流速は0.23 mL/分であり、PDA吸収を200 nm〜400 nmでモニタリングした。ESI−MSの全てのパラメータは、FDAA−モナチンのプロトン化分子イオン([M−H]-)の発生、及び特徴的な断片イオンの生成に基づいて、最適化しそして選択した。
次の機器パラメータを負イオンESI/MS方式でモナチンのLC/MS解析に利用した。キャピラリー:2.0 kV;Cone:25V;Hex1:10V;Aperture:0V;Hex2:0V;基点温度:100℃;脱溶媒和温度:350℃;脱溶媒和ガス:500L/時間;コーンガス:50L/時間;低質量分解(Q1):12.0;高質量分解(Q1):12.0;イオンエネルギー:0.2;流入口:−5V;衝突エネルギー:20;流出口:1V;低質量分解(Q2):12;高質量分解(Q2):12;イオンエネルギー(Q2):3.0;乗数:650。3つのFDAA−モナチン特異的親−子遷移を使って、試験管内及び生体内反応においてFDAA−モナチンを特異的に検出する。モニタリングされる遷移は543.6から268.2、543.6から499.2、及び543.6から525.2である。FDAA−モナチン立体異性体の同定は、精製済モナチン立体異性体に比較した時のクロマトグラフィー保持時間と、質量スペクトルデータに基づく。
実施例14
サリチル酸による誘導はモナチン輸送を増加させる
aspCProApEKEX-2により形質転換されたC.グルタミカムATCC 13032株を、25μg/mLカナマイシンが補足されたLB培地中で、37℃でインキュベートしそして250rpmで振盪しながら一晩増殖させた。実験処理フラスコには、100mLのKraemer’s A培地を各振盪フラスコに使用した。Hoisted C. & Kraemer, R. “Evidence for an efflux carrier system involved in the secretion of glutamate by Corynebacterium glutamicum,” Arch. Microbiol. 151:342-347 (1989)。Kraemer’s A培地は次のものを含んだ(リットル当たり):5g (NH4)2SO4、5g尿素、2g KH2PO4、1.53g K2HPO4、0.249g MgSO4・7H2O、50gグルコース、0.01g FeSO4・7H2O、0.01g MnSO4・H2O、0.01g CaCl2・2H2O、0.03 mg ZnSO4・7H2O 、0.1 mg H3BO3、0.07 mg CaCl2・6H2O、0.01 mg NiCl2・2H2O、0.03 mg CuCl2・2H2O、0.1mg (NH4)6Mo7O24・4H2OからのMo+6として0.1 mg、及び1μgビオチン。pHを7.0に調整した。
処理用には、4.2 v/v%の接種材料を500mLのバッフル振盪フラスコ中の100mLの培地容量に添加した。実験全体を通して37℃と250rpmの攪拌を含んだ。サリチル酸ナトリウム(0,1mMまたは2mM)を接種後1時間目に添加した。0.45〜0.6のOD600nmで、モナチンオペロン遺伝子の誘導を開始した。誘導には0.5 mM IPTGを使用し、誘導時点での添加は0.5mM塩酸ピリドキシン及び0.4 mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)を含んだ。1gのL−トリプトファン、5 g/Lのピルビン酸ナトリウム、10μg/mlのアンピシリンを誘導後3時間目に添加した。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、23.5時間目と48時間目に採取した。
Figure 2008536523
MarAはacrAB, tolC及びmarRABを含むmarレグロンの発現を活性化し、一方でMarRはMarAの合成を抑制することによってこの応答をダウンレギュレートする。或る種の抗生物質、サリチル酸のような弱芳香族酸、及び構造的に多様な範囲の別の化合物、例えば解離剤カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(“CCCP”)の添加は、marレグロンの誘導を引き起こし、よってAcrABとTolC発現を引き起こすことが証明された。Grkovic, S.他、”Regulation of Bacterial Drug Export Systems,” Microbiology and Molecular Biology Reviews 66:671-701 (2002)。
加えて、E.コリのEmrAB多剤ポンプは、CCCP、弱酸サリチル酸及び多数の他の構造的に無関係の薬剤の存在下で誘導される。抑制はMarR型の抑制タンパク質であるEmrRにより制御される。Cohen, S.P.他、”Salicylate induction of antibiotic resistance in Escherichia coli: activation of the mar operon and a mar-independent pathway,” J. Bacteiol. 175:7856-7862 (1993); Lomovskaya, O.他、”EmrR is a negative regulator of the Escherichia coli multidrug resistance pump EmrAB,” J. Bacteriol. 177:2328-2334 (1995)。よってサリチル酸添加は、E.コリにおけるAcrAB及びEmrAB輸送体系活性を増加させる。コリネバクテリウムへのサリチル酸の添加は、AcrAB/EmrAB又は別の輸送体の同族体を誘導し、増加されたモナチン輸送をもたらすだろう。
かくして、1mM又は2mMサリチル酸ナトリウムによるコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の処理は、輸送されるモナチンの増加を引き起こす。モナチン分析は実施例13に記載のようにして実施した。48時間目にはモナチン排出の7%増加が観察され、そして23.5時間目には輸送されるモナチンの70%増加が観察された。
実施例15
パントエ・ステワーティ(Pantoe stewartii)におけるモナチン生産及び排出の証明
パントエ・ステワーティ(Pantoe stewartii)(ATCC 8200)細胞を一晩培養物からの栄養素ブロス中でP.ステワーティ細胞の1%接種材料を培養することにより、エレクトロコンピテントのP.ステワーティ細胞を調製した。該細胞を〜0.6のOD600nmにまで26℃及び250rpmにてインキュベートした。細菌を遠心分離(10,000×gで10分)によりペレット化し、50mLの10 mM HEPES (pH 7.0)中で洗浄した。25 mLの10 mM HEPES緩衝液(pH 7.0)を用いた洗浄と、続いて上記と同じ遠心プロトコルを繰り返した。次いで細胞を25mLの10%グリセロール中で1回洗浄した。遠心後、細胞を500μLの10%グリセロール中に再懸濁した。40μLアリコートを凍結させ、使用まで−80℃に保持した。
Stratagene QuickChange 部位特異的突然誘発キット(Stratagene, Inc.)に記載のプロトコルに従ってそして以下の変異誘発オリゴヌクレオチド(NdeI部位に下線が引かれている):
5’-GAGGAGAAAGGTACATATGGGTGAACAGAAAC-3’
5’-CAGTTTCTGTTCACCCATATGTACCTTTCTCC-3’
を使うことにより、pPROLarA.122(ClonTech Laboratories, Inc.)を部位特異的突然変異誘発により改変して、bp 132の箇所に(ヌクレオチド番号付はClonTech Laboratoriesにより記載された通り)NdeI制限部位を導入し、ベクターpPRONdeを作製した。
熱循環プロトコル:
1)96℃で5分
2)96℃で30秒
3)55℃で45秒
4)72℃で3分
5)段階2〜4を24回繰り返す
6)72℃で10分
レシピ:
10×伸長ポリメラーゼ緩衝液 5μL
dNTPs(各10mM) 1μL
pPRONde(〜50ng/uL) 0.1μL
PCRプライマー(各) 0.5μL
伸長ポリメラーゼ 0.5μL
水 42.4μL
合計 50μL
生じたPCR生成物を、PCR精製キット(Quiagen)により精製し、そしてNdeI制限エンドヌクレアーゼにより消化した。次いで消化されたDNAを0.8%アガロースゲル上でのゲル精製により精製し、一緒に連結せしめた。連結混合物をエタノール沈澱により沈澱させ、親のプラスミドを線状化するためにKpnI制限エンドヌクレアーゼで消化した。反応混合物を用いてDH10BエレクトロコンピテントE.コリを形質転換せしめた。KpnI制限エンドヌクレアーゼでの消化により形質転換体をKpnI部位の削除についてスクリーニングした。
pPRONdebベクターの29 bp切片を、該ベクター中のこの断片の反復がストレス条件下でベクター不安定性を引き起こすことが以前に示されているため、Quikchange部位特異的突然変異誘発(Stratagene, La Jolla, CA)を使って除去した。突然変異誘発のためのプライマーは次のものであった:
5’−ACGTCTGTGTGGAATTCTCGGACACCGAGGAG−3’及び
5’−CTCCTCGGTGTCCGAGAATTCCACACAGACGT-3’。
突然変異誘発は製造業者のプロトコルの通りに実施した。クローンをEcoRIでの消化によりスクリーニングし、所望のDNA断片の削除により新規EcoRI制限部位を作製し、そして変異体を配列分析により確認した。得られたベクターをpPRONdeDelと命名した。制限部位NdeIとBamHIを使って、ベクターpPRONdeDel中にaspC遺伝子を導入した。続いて制限部位BamHIとNotIを使ってproA遺伝子をベクターpPRONdeDel中に導入し、ベクターaspC/proA/pPRONdeDel (APpPRONdeDel)を作製した。
Bio-Radエレクトロポレーションマニュアルに記載された通りに、0.2cmキュベットとBio-Rad Gene Pulser II系を使ってベクターAPpPRONdeDelをエレクトロコンピテントPantoea stewartii中に形質転換せしめた。該細胞を900μLのSOC培地中に26℃で250rpmにて1時間回収した。細胞をカナマイシン(25μg/mL)を含むLB−寒天板上に塗布した。
接種のため、P.ステワーティ細胞を25μg/mLのカナマイシンを含むLuria-Bertani(“LB”)培地中で30℃及び250rpmにて一晩増殖させた。実験処理用に、Trp-1+グルコース培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を以下の通り調製した。800mLのナノ純水に、次の試薬を添加した:2 g (NH4)2SO4及び13.6g KH2PO4。pHを7.0に調整し、容量を948mLに増やし、そして培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、0.2gのMgSO4・7H2O、0.01gのCaCl2・2H2O及び0.5 mgのFeSO4・7H2Oを1.8 mL容量にて培地に添加し、次いで0.2 mLのNeidhardt微量栄養素溶液を添加した。Neidhardt, F.C.他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24・4H2O、1.24g H3BO3、0.36g CoCl2・6H2O、0.12g CuSO4(無水)。0.8g MnCl2・4H2O及び0.14g ZnSO4・7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、滅菌濾過した。40mLのグルコース溶液と10mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を1Lの最終容量になるように基本培地(950mL)に添加した。
処理用に、25μg/mLのカナマイシンを含む500mLのバッフル振盪フラスコ中の100mLの培地容量に3.5〜5.0v/v%の接種材料を添加した。処理条件は、実験全体を通しての250rpmの攪拌と、誘導までの37℃に続いて誘導後の30℃の温度を含んだ。0.35〜0.50のOD600nmで、プラスミド遺伝子の誘導を開始した。誘導には1.0 mM IPTG、0.5%アラビノース、0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2mLのBalchビタミン液を添加した。10g/LのL−トリプトファン、10 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMピリドキサル−5′リン酸(“PLP”)及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)を誘導後3時間目に添加した。或る処理は、誘導後3.0時間目に2.5 mMデカン酸ナトリウム及び/又は10μg/mLアンピシリン添加を含んだ。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、24,30及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
パントエ・ステワーティ(Pantoae stewartii)におけるモナチンオペロン、aspC−アミノトランスフェラーゼ及びproA−アルドラーゼの過剰発現は、モナチンの増加された発現を引き起こした。Tween 20とアンピシリンを培地に添加すると、48時間までのモナチン分泌に4〜5倍の増加が生じる。Tween 20とアンピシリンは、細胞エンベロープに影響を及ぼすことにより細胞に応力を与え、それによって細胞の外側への代謝産物の輸送を助けると報告されている。
このことは、パントエ属及びパントエ・ステワーティ(Pantoae stewartii)におけるモナチン生産及び排出の第一の証拠である。
実施例16
RobAタンパク質の過剰発現によるモナチン分泌の増加
RobAはDNA結合タンパク質のXylS/AraCサブファミリーの一員であり、エシェリキア・コリ(Escherichia coli;大腸菌)の多抗生物質耐性を誘導することが証明されている。RobAの過剰発現により誘導される多抗生物質耐性は、AcrAB排出の活性化に加えてmicFの活性化にも大きく依存すると報告されている。Tanaka, T.他、”RobA-induced multiple antibiotic resistance largely depends on the activation of the AcrAB efflux,” Microbiol. Immunol. 41:697-702 (1997)。MicF小RNAはOmpCポリンをコードする遺伝子から分岐コードされ、別のポリンであるOmpFの発現を抑制する。MicFがモナチン排出において果たす正確な役割はまだ確定されていない。
実験に用いる株は、pUC19ベクター中にクローン化されたE.コリ由来のrobA遺伝子と共にE.コリ MG1655:aspC/proA/pProNdeDelを含んだ。対照株はpUC19ベクターを含有するE.コリMG1655::aspC/proA/pProNdeであった。次のプライマー:
5′-TTAAGGCCGTCGACATGGATCAGGCCGGCATTAT-3′
5′-TTCCAAGGTTGGATCCCTAAACGATGCGGCAGGC-3′
を使ってE.コリW3110からrobA遺伝子を増殖させ、増幅された断片の末端にSalI部位とBamHI部位を導入した。ベクターpUC19(GenBank/EMBL受入番号L09137)のSalI部位とBamHI部位の間にPCR断片をクローニングした。接種用に、100μg/mLのアンピシリンと50μg/mLのカナマイシンを含むLB(Luria-Bertani)培地中でE.コリ株を37℃及び250rpmで一晩増殖させた。
実験処理用に、E.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産のために用いられている最少培地、Trp-1+グルコース培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を次の通り調製した。まず、800mL のナノ純水に次の試薬: 2 g (NH4)2SO4及び13.6g KH2PO4を添加した。pHを7.0に調整し、容量を948mLに増やし、そして培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、0.2gのMgSO4・4H2O、0.01gのCaCl2・2H2O及び0.5 mgのFeSO4・7H2Oを1.8 mL容量にて培地に添加し、次いで0.2 mLのNeidhardt微量栄養素溶液を添加した。Neidhardt, F.C.他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次の成分を含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24・4H2O、1.24g H3BO3、0.36g CoCl2・6H2O、0.12g CuSO4(無水)。0.8g MnCl2・4H2O及び0.14g ZnSO4・7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、滅菌濾過した。40mLのグルコース溶液と10mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を1Lの最終容量になるように基本培地(950mL)に添加した。
処理用に、100μg/mLアンピシリンと50μg/mLのカナマイシンを含む500mLのバッフル振盪フラスコ中の100mLの培地容量に3.5〜5.0 v/v%の接種材料を添加した。処理条件は、実験全体を通しての250rpmの攪拌と、誘導までの37℃温度に続いて誘導後の30℃温度を含んだ。0.30〜0.50のOD600nmで、プラスミド遺伝子の誘導を開始した。誘導には1.0 mM IPTG、0.5%L−アラビノース、0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2mLのBalchビタミン液を添加した。10g/LのL−トリプトファン、10 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)を誘導後3時間目に添加した。或る処理は、誘導後3時間目に2.5 mMデカン酸ナトリウム添加を含んだ。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、24,30及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
デカン酸ナトリウム処理無しでのRobAの過剰発現は、48時間でのモナチン排出の増加をもたらした。乾燥細胞重量当たりのモナチンは、RobA過剰発現無しでは2.94 mg/g平均であるのに比較して、RobAを過剰発現させた時には48時間で平均10.41 mg/g であった。RobA過剰発現は、モナチン排出の3.5倍増加をもたらした。これは、RobA過剰発現がAcrAB発現又はmicF発現に対してプラスの効果を有し、増加されたモナチン排出を引き起こすという証拠である。MicFがモナチン排出に果たす正確な役割はまだ解明されていない。
Figure 2008536523
2.5 mMデカン酸ナトリウム処理によるRobAの過剰発現は、48時間でのモナチン排出の増加をもたらした。乾燥細胞重量当たりのモナチンは、RobA過剰発現無しでは平均4.31 mg/gであるのに比較して、RobAを過剰発現させた時には48時間で平均25.62 mg/g であった。デカン酸ナトリウム存在下でのRobA過剰発現は、モナチン排出の5倍以上の増加をもたらした。これは、RobA過剰発現とデカン酸塩添加がAcrAB発現又はmicF発現に対してプラスの効果を有しそして恐らく相乗効果を有し、増加されたモナチン排出を引き起こすという証拠である。MicFがモナチン排出に果たす正確な役割はまだ解明されていない。
Figure 2008536523
E.コリMG1655ΔAcrAB株における2.5 mMデカン酸ナトリウム添加によるRobAの過剰発現は、24,30及び48時間でのモナチン排出の増加をもたらした。乾燥細胞重量当たりのモナチン量は、ΔAcrAB株でRobA過剰発現無しでは48時間目に平均39.3 mg/gであるのに比較して、この株でRobAを過剰発現させた時には平均81.7mg/g であった。デカン酸ナトリウムの存在下でのΔAcrAB株におけるRobA過剰発現は、モナチン排出の2倍以上の増加をもたらした。この事実は、ΔAcrAB株におけるRobA過剰発現とデカン酸添加が、恐らくmicF遺伝子か又はAcrAB輸送体系以外の輸送体系に対する作用のために、増加されたモナチン排出を引き起こすということの証拠である。
総合すると、上記データは、結果としてRoAがモナチン排出に対してプラスの効果を有し、それがAcrAB又は他の輸送体の活性化によるものであり得ることを証明する。
実施例17
RamAタンパク質の過剰発現によるモナチン排出の増加
RamAは、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)中のAraC-XylS転写活性因子ファミリーに属する113アミノ酸調節タンパク質である。RamAの過剰発現は、薬剤感受性エシェリキア・コリJM109及びE.エロゲネスATCC 13048においてMDR表現型を誘導し、そしてAcrAB-TolC薬物排出ポンプの一成分であるAcrAの生産を増加させたと報告されている。RamAは、marRABオペロンの転写を増強するだけでなく、mar欠失株において多剤耐性(“MDR”)表現型を誘導することもできると示されている。RamAは Marレグロンの転写活性化因子であることに加えて、MDRカスケードの自律的活性化因子でもある。Chollet, R.他、”RamA is an alternate activator of the multidrug resistance cascade in Enterobacter aerogenes,” Antimicrob. Agents Chemother. 48:2518-2523 (2004)。
実験に使用した株は、pUC19ベクター(GenBank/EMBL受入れ番号L09137)中にクローニングしたエンテロバクター・エロゲネス由来のramA遺伝子と共にE.coli MG1655::aspC/proA/pProNdeDelを含んだ。対照株はpUC19ベクターを有するE.coli MG1655::aspC/proA/pProNdeであった。増幅断片の末端にSalI部位とBamHI部位を導入するプライマー:
5′-GGCCGGTTAAGTCGACATGAATATATCCGCTCAGG-3′
5′-TTAACCTTGGATCCTCAGTGCGCGCGGCTGT-3′
を使って、ramA遺伝子を増幅せしめた。PCR断片をベクターpUC19(GenBank/EMBL受入番号L09137)のSalI部位とBamHI部位の間にクローニングした。接種用に、E.コリ株を100μg/mLアンピシリンと50μg/mLカナマイシンを含むLuria-Bertani(“LB”)培地中37℃及び250rpmで一晩増殖させた。
実験処置用に、Trp-1+グルコース培地、即ちE.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を以下の通り調製した:800 mLのナノ純水に、2gの(NH4)2SO4と13.6gのKH2PO4を添加した。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増やし、そして培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、1.8 mL容量において0.2 g MgSO4・7H2O、0.01 g CaCl2・2H2O及び0.5mg FeSO4・7H2Oを培地に添加し、次いで0.2 mLのNeidhardtの微量栄養溶液を添加した。Neidhardt, F.C.他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24-4H2O, 1.24g H3BO3, 0.36g CoCl2-6H2O、0.12g CuSO4(無水)、0.8gMnCl2-4H2O及び0.14gのZnSO4-7H2O。50%グルコース溶液を別々に調製し、滅菌濾過した。40 mLのグルコース溶液と10 mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を基本培地(950 mL)に1L最終容量になるように添加した。
処理用に、100μg/mLのアンピシリンと50μg/mLのカナマイシンを含有する500mLの振盪フラスコ中の100 mLの培地容量に、3.5〜5.0 v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験全体を通して250rpmの攪拌と、誘導まで37℃の温度で、誘導後は30℃の温度であった。0.30〜0.50 OD600nmで、プラスミド遺伝子の誘導を開始せしめた。誘導時、1.0 mM IPTG、0.5%アラビノース、0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2 ml のBalchビタミン液を添加した。誘導後3時間目に、10g/LのL−トリプトファン、10 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)の添加を行った。或る処理は、誘導後3時間目に2.5 mMデカン酸ナトリウム添加を伴った。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、24、30及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
デカン酸ナトリウム処理無しでのRamA過剰発現は、30時間と48時間の両方でモナチン排出の増加をもたらした。乾燥細胞重量当たりのモナチン量は、RamA過剰発現無しでは48時間目に平均2.94 mg/gであるのに比較して、RamAを過剰発現させた時には平均5.92 mg/g であった。RamA過剰発現はモナチン排出を2倍増加させた。これは、RamA過剰発現が、marオペロン又は多剤耐性輸送体遺伝子に対してあるいはその両方に対してプラスの効果を生じ、モナチン排出の増加を引き起こすということの証拠である。
Figure 2008536523
2.5 mMデカン酸ナトリウム処理を伴うRamA過剰発現は、30時間と48時間の両方でモナチン排出の増加をもたらした。乾燥細胞重量当たりのモナチン量は、RamA過剰発現無しでは48時間目に平均4.31 mg/gであるのに比較して、RamAを過剰発現させた時には平均13.90 mg/g であった。デカン酸ナトリウムの存在下でのRamA過剰発現はモナチン排出を3.2倍増加させた。これは、RamA過剰発現が、marオペロン又は多剤耐性輸送体遺伝子に対してあるいはその両方に対して作用し、デカン酸ナトリウムの存在下でのモナチン排出の増加を引き起こすということの証拠である。
Figure 2008536523
モナチンオペロンを有するE.コリΔAcrAB株でのRamAの過剰発現は、RamAの過剰発現無しでの同株よりも多量のモナチン排出を引き起こした。48時間目には、RamA過剰発現は乾燥細胞重量1g当たり61.1 mgのモナチンを生成し、そしてRamAの過剰発現無しでは39.3 mg/gであった。これはRamA過剰発現によるモナチン排出の1.5倍増加を意味する。これらのデータは、RamA過剰発現がAcrAB輸送体の係わりなくしてモナチン排出を増加させることを証明する。このモナチン排出に対するプラスの効果は、marオペロンの活性化又はAcrAB以外の輸送体遺伝子/系の活性化によるものと考えられる。
かくして、本発明者らは、E.コリにおけるramA遺伝子の過剰発現がモナチン排出の増加を引き起こすことを証明した。このモナチン排出の増加は、AcrAB系が削除された宿主バックグラウンドにも観察された。これは、モナチン排出に対するRamAのプラスの効果がAcrAB輸送体系とは無関係の輸送体系に対するそれの作用のためであるという証拠になる。
実施例18
MarAタンパク質の過剰発現によるモナチン排出の増加
acrAB発現の転写活性化は、転写活性化因子のAraCファミリーの一員であるMarAを過剰発現する株における、多剤耐性の主原因である。MarAは、多種の標的遺伝子のプロモーターの近くに位置するmarボックスと称されるDNA領域に結合することにより、それ自身の転写と多数のmarレグロン遺伝子の転写を活性化する。acrABプロモーターは、MarAが結合しそして転写を活性化すると証明されているmarボックスに近接している。Alexshun, M.N. & Levy, S.B., “Regulation of chromosomally mediated multiple antibiotic resistance: the mar regulon,” Antimicrob. Agents Chemother: 41:2067-2075 (1997)。
加えて、MarAの過剰発現がAcrAB-TolCポンプ複合体のTolC成分の合成の増加を引き起こすことも証明されている。これをtolC遺伝子の上流の推定mar/rob/soxボックスの同定と組み合わせると、tolCもまたmarレグロンに属することを強く示唆する。Aono, R.他、”Involvement of outer membrane protein TolC, a possible member of the mar-sox regulon, in maintenance and improvement of organic solvent tolerance of Escherichia coli K-12,” J. Bacteriol. 180:938-944 (1998)。
MarAは多岐機能のタンパク質をコードする遺伝子の転写を生体内と試験管内の両方で促進することができるので、MarAの転写活性化機能は性質が広範囲であると報告されている。MarAを構成的に発現する株の遺伝子整列分析は、60を超えるE.コリ遺伝子がこのタンパク質により差別的に制御されることを示している(Barbosa, T.M. & Levy, S.B, “Differential expression of over 60 chromosomal genes in Escherichia coli by constitutive expression of MarA,” J. Bacteriol. 182:3467-3474 (2000)。その一方で、誘導性MarA発現系を使った第二の研究は、追加の67個のMarA調節遺伝子を同定した。Pomposiello, P.J.他、”Genome-wide transcriptional profiling of the Escherichia coli responses to superoxide stress and sodium salicylate,” J. Bacteriol. 183:3890-3902 (2001)。MarAは、本質的に共通配列から派生したmarboxを有する遺伝子も活性化することができると報告されている。Barbosa, T.M. & S.B. Levy, “Activation of the Escherichia coli nfnB gene by MarA through a highly divergent marbox in a class II promoter,” Mol. Microbiol. 45:191-202 (2002)。
まとめると、MarAはacrAB, tolC及びmarRABを包含するレグロンの発現を活性化し、その一方で、MarRはMarAの合成を抑制することによりこの応答をダウンレギュレートする。プラスミドからのMarAの過剰発現はmarレグロン遺伝子を活性化するのに十分であるけれども、抗生物質テトラサイクリン及びクロラムフェニコール、弱芳香酸、例えばサリチル酸、並びに構造的に多岐に渡る範囲の他の化合物、例えば解離剤カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン、酸化還元−環化化合物メナジオン及びプルムバギンの添加が、marレグロン発現の誘導を引き起こすと証明されている。Grkovic S.他、”Regulation of bacterial drug export systems, “Microbiol. Mol. Biol. Rev. 66:671-701 (2002)。
実験に使用する株は、pUC19ベクター(GenBank/EMBL受入番号L09137)中にクローニングしたE.コリ由来のmarA遺伝子を有するE.コリMG1655::aspC/proA/pProNdeであった。対照株はpUC19ベクターを有するE.コリMG1655::aspC/proA/pProNdeであった。プライマーEcoliMarASalIF:
5′-TTAAGGCCGTCGACATGACGATGTCCAGACGCAATA -3′
EcoliMarABamHIR:
5′-GCAGTGCCGGATCCCTAGCTGTTGTAATGATTTA -3′
を使って、PCR技術(当業者に周知)によりE.コリW3110からmarA遺伝子を増幅せしめた。接種用に、E.コリ株を100μg/mLアンピシリンと50μg/mLカナマイシンを含むLuria-Bertani(“LB”)培地中37℃及び250rpmで一晩増殖させた。
実験処置用に、Trp-1+グルコース培地、即ちE.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を以下の通り調製した:800 mLのナノ純水に、2gの(NH4)2SO4と13.6gのKH2PO4を添加した。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増やし、そして培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、1.8 mL容量において0.2 g MgSO4・7H2O、0.01 g CaCl2・2H2O及び0.5 mg FeSO4・7H2Oを培地に添加し、次いで0.2 mLのNeidhardtの微量栄養溶液を添加した。Neidhardt, F.C.他、”Cultuire medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24-4H2O, 1.24g H3BO3, 0.36 g CoCl2-6H2O、0.12g CuSO4(無水)、0.8gMnCl2-4H2O及び0.14gのZnSO4-7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、滅菌濾過した。40 mLのグルコース溶液と10 mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を基本培地(950 mL)に最終容量1Lになるように添加した。
処理用に、100μg/mLのアンピシリンと50μg/mLのカナマイシンを含有する500mLのバッフル振盪フラスコ中の100 mLの培地容量に、3.2〜3.6 v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験全体を通して250rpmの攪拌と、誘導まで37℃の温度で、誘導後は30℃の温度であった。0.35〜0.50 OD600nmで、プラスミド遺伝子の誘導を開始せしめた。誘導時、1.0 mM IPTG、0.5%L−アラビノース、0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2mL のBalchビタミン液を添加した。誘導後3.0 時間目に、10g/LのL−トリプトファン、10 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)の添加を行った。接種後24時間目に再び10g/Lのピルビン酸ナトリウムを各フラスコに添加した。或る処理は、誘導後3.0時間目に2.5 mMデカン酸ナトリウム添加を伴った。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、24、30及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
上記からわかるように、marAの過剰発現は、デカン酸ナトリウムの添加なしでモナチン排出(乾燥細胞重量当たりのモナチン量)の増加を引き起こした。marA遺伝子の過剰発現のために乾燥細胞重量1gあたりのモナチンmg量に10倍の増加がみられる。このモナチン排出の有意な増加は、AcrAB輸送体系に対するMarAの影響、多数の輸送体系と相互作用するtolC遺伝子の転写の増加、及び/又はモナチン排出に役割を果たし得る別の輸送体系の可能なアップレギュレーションによるものであると説明することができる。
Figure 2008536523
上記からわかるように、marAの過剰発現は、デカン酸ナトリウム添加の存在下ではモナチン排出(乾燥細胞重量当たりのモナチン量)の更なる増加を引き起こした。2.5 mMのデカン酸ナトリウムの添加では、72時間目でmarA株は乾燥細胞重量当たり平均で51.9 mgのモナチンを排出したが対照株ではわずか2.7 mg/gであり、これはモナチン排出の19倍増加を表す。この知見は、marA過剰発現がモナチンを排出する輸送体(1又は複数)に対して実質的な効果があることを意味する。marA過剰発現とデカン酸ナトリウムの相乗効果が起こるようである。
Figure 2008536523
acrABノックアウト変異体とmarA過剰発現の組合せは、72時間目に乾燥細胞重量1g当たり平均209 mgのモナチン量を生じ、それに対してmarAプラスミドを含まないacrABノックアウト変異体では62.6 mgであった。24時間目までに、acrABノックアウト/marA過剰発現株は2倍以上(54.6対22.2 mgモナチン/gdcw)対照を上回った。これは、AcrAB輸送体の欠失と調節遺伝子(例えばmarA)の過剰発現との組合わせがモナチン排出に相乗作用を有することの一例である。
MarAはacrAB発現を活性化することが知られているが、acrABノックアウト株では、通常よりも相当多量のモナチンが排出された。MarA発現が、acrAに加えて、輸送に関与する多数の遺伝子、例えばmtr(トリプトファン特異的輸送タンパク質)、ompX(外膜タンパク質X)及びyadG(輸送体系の推定ATP結合成分)の発現を増加できると報告されている。よって、この効果は、モナチン排出に関与するAcrAB以外の輸送体系の誘導に起因するのかもしれない。MarAは多重輸送体系の一成分であるtolCの転写を活性化することも知られている。従ってモナチン輸送の増加は、TolCを必要とする多重輸送体の作用によるものであろう。
これらの結果は、MarAがエシェリキア・コリ(Escherichia coli)のモナチン輸送に強力なプラス効果を有することを証明する。
実施例19
BaeRタンパク質の過剰発現によるモナチン排出の増加
BaeSR二成分調節系は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli;大腸菌)中の薬剤耐性を付与する輸出遺伝子の発現も調節する。Nagakubo, S.他、J. Bacteriol. 184:4161-4167 (2002) ; Baranova, N, & Nikaido, H., “The baeSR two-component regulatory system activates transcription of the yegMNOB (mdtABCD) transporter gene cluster in Escherichia coli and increases its resistance to novobiocin and deoxycholate,” J. Bacteriol. 184:4168-4176 (2002)。BaeSR二成分系は、薬剤輸送体遺伝子の発現を制御することにより、E.コリの薬剤耐性を活性調節すると報告されている。Baranova, N, & Nikaido, H., “The baeSR two-component regulatory system activates transcription of the yegMNOB (mdtABCD) transporter gene cluster in Escherichia coli and increases its resistance to novobiocin and deoxycholate,” J. Bacteriol. 184:4168-4176 (2002) ; Nagakubo, S.K.他、”The putative response regulator BaeR stimulates multidrug resistance of Escherichia coli via a novel multidrug exporter system, MdtABC,” J. Bacteriol. 184:4161-4167 (2002)。応答調節剤BaeRは、多剤排出系をコードするmdtABCとacrDの発現を調節する。Hirakawa, H.K.他、”Comprehensive studies on the drug resistance mediated by the expression of response regulators of two-component signal transduction systems in Escherichia coli,” J. Bacteriol. 185:1851-1856 (2003); Hirakawa, H.K.他、”β-Lactam resistance modulated by the overexpression of response regulators of two-component signal transduction systems in Escherichia coli,” J. Antimicrob. Chemother. 52:576-582 (2003)。E.コリ主要多剤排出系AcrABの欠損のバックグラウンドにおけるBaeRの過剰生産は、β−ラクタム、ノボビオシン、ドデシル硫酸ナトリウム及び胆汁酸塩に対して耐性を付与すると報告されている。BaeRが、MdtABC、AcrD及び別の輸送体系の機能にとって必要である外膜チャンネルtolC遺伝子の発現を増加させるとも報告されている。Nishino, K.他、”Roles of TolC-dependent multidrug transporters of Escherichia coli in resistance to β-lactams,” Antimicrob. Agnets Chemother. 47:3030-3033 (2003); Nishino, K. & Yamaguchi, A., “Analysis of a complete library of putative drug transporter genes in Escherichia coli,” J. Bacteriol. 183:5803-5812 (2001)。
実験に使用する株は、baeR挿入断片を有するか又は全く挿入断片のないpUC19ベクターと組み合わせたE.コリMG1655::aspC/proA/pProNdeであった。増幅断片の末端にSalI部位とBamHI部位を導入するプライマー
EcolibaeRSalIF:
5′-GGCCTTCCGTCGACATGACCGAGTTACCAATC -3′及び
EcolibaeRBamHIR:
5′-TTCCAAGGTTGGATCCCTAAACGATGCGGCAGGC -3′
を使って、E.コリW3110からbaeR遺伝子を増幅せしめた。生じたPCR断片をベクターpUC19(GenBank/EMBL受入番号L09137)のSalIとBamHI部位の間にクローニングした。接種用に、E.コリ株を100μg/mLアンピシリンと50μg/mLカナマイシンを含むLuria-Bertani(“LB”)培地中37℃及び250rpmで一晩増殖させた。
実験処置用に、Trp-1+グルコース培地、即ちE.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地(Zeman他、Folia Microbiol. 35:200-204 (1990))を以下の通り調製した:800 mLのナノ純水に、2gの(NH4)2SO4と13.6gのKH2PO4を添加した。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増やし、そして培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、1.8 mL容量において0.2 g MgSO4・7H2O、0.01 g CaCl2・2H2O及び0.5 mg FeSO4・7H2Oを培地に添加し、次いで0.2 mLのNeidhardtの微量栄養素溶液を添加した。Neidhardt, F.C.他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24-4H2O、1.24g H3BO3、0.36g CoCl2-6H2O、0.12g CuSO4(無水)、0.8gMnCl2-4H2O及び0.14g ZnSO4-7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、滅菌濾過した。40 mLのグルコース溶液と10 mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を基本培地(950 mL)に1L最終容量になるように添加した。
処理用に、100μg/mLのアンピシリンと50μg/mLのカナマイシンを含有する500mLのバッフル振盪フラスコ中の100 mLの培地容量に、3.5〜5.0 v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験全体を通して250rpmの攪拌と、誘導まで37℃の温度で、誘導後は30℃の温度であった。0.35〜0.38 OD600nmで、プラスミド遺伝子の誘導を開始せしめた。誘導時、1.0 mM IPTG、0.5%L−アラビノース、0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2mL のBalchビタミン液を添加した。誘導後3.5 時間目に、10g/LのL−トリプトファン、10 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)及び0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)の添加を行った。各フラスコに再び別の10g/L増分のピルビン酸ナトリウムを再添加した。或る処理は、誘導後3.5時間目に2.5 mMデカン酸ナトリウム添加を伴った。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、24、30及び72時間目に採取した。
Figure 2008536523
baeRの過剰発現は、baeR過剰発現のない対照株に比較して、デカン酸ナトリウム非存在下でのモナチン排出の増加を引き起こした。72時間目には、同様の条件下での非baeR対照株の2.3 mgに比較して、baeR過剰発現株は乾燥細胞重量1g当たり平均で24.9 mgのモナチンを排出した。これは、デカン酸処理無しのbaeR過剰発現がモナチン排出の約11倍増加を引き起こすことを証明する。この効果は、mdtABCDもしくはacrD又は両転写体系の活性化のためであろう。生来のAcrAB系もモナチン輸送に役割を果たすかもしれない。加えて、BaeRが複数の排出系の機能に必要とされるtolC遺伝子発現を増加できることは知られている。
Figure 2008536523
baeRの過剰発現は、baeR過剰発現無しの対照株に比較して、2.5 mMデカン酸ナトリウム添加の存在下でのモナチン排出の増加を引き起こした。72時間目には、baeR過剰発現株は、同様な条件下での非baeR株の2.7 mgに比較して、乾燥細胞重量1g当たり平均で66.8 mgのモナチンを排出した。この結果は、baeR過剰発現をデカン酸ナトリウム処理と組み合わせると、デカン酸処理無しの場合と比較して約25倍増加したモナチン排出をもたらすことを証明する。デカン酸ナトリウムはAcrAB輸送体系を活性化できることは知られている。加えて、BaeRが数種の排出系の機能に必要とされるtolC遺伝子発現を増加できることも知られている。この増加されたモナチン排出は、デカン酸添加によるAcrAB輸送体系の活性化に加えてmdtABCD及び/又はacrDの活性化のためであるかもしれない。
Figure 2008536523
生来の多剤輸送体AcrABはbaeR過剰発現の効果を遮断しうると報告されている。AcrAB輸送体系の不在下でのbaeR過剰発現の役割を調べるために、acrAB遺伝子欠失を有する宿主株を使用した。ΔacrAB宿主株では、baeR遺伝子の過剰発現が、対照ΔacrAB株に対してモナチン排出の3.5倍増加(dcw g当たり39.3mgに比較して137.3 mgのモナチン)を引き起こした。これは、AcrABの他に複数の輸送体がモナチン輸送に関与しているという明確な証拠である。更に、BaeRが、MdtABCD又はAcrD多剤輸送体系に加えて数種の排出系の機能に必要とされるtolC遺伝子発現を増加できることも知られている。Nishino, K.他、”Genome-wide analysis of Escherichia coli gene expression responsive to the BaeSR two-component regulatory system,” J Bacteriol. 187:1763-1772 (2005年3月)。このように、MdtABCDもしくはAcrD又はその両方の輸送体系がacrABノックアウト株におけるモナチン輸送に関与する。
かくして、本発明者らは、BaeRがモナチン排出に対してプラスの効果を有することを証明した。インドールがBaeSR二成分シグナル伝達系を介してmdtABCD及びacrD遺伝子発現を誘導すると報告されている。Nishino, K.他、”Genome-wide analysis of Escherichia coli gene expression responsive to the BaeSR two-component regulatory system,”J. Bacteriol. 187:1763-1772 (2000年3月)。インドール処理もモナチン排出にプラスの効果を有するだろうと予想するのは当然なことである。菌体密度調節因子SdiAは、acrABとacrDの発現を調節すると報告されている。Wei, Y.他、”Global impact of sdiA amplification revealed by comprehensive gene expression profiling of Escherichia coli,” J. Bacteriolo. 183:2265-2272 (2001)。よって、当然、SdiAもモナチン排出にプラスの効果を有するだろうと予想される。
実施例20
増加された温度及びピルビン酸ナトリウム処理によるコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)におけるモナチン排出の増加
aspCproA pEKEX-2により形質転換されたC.グルタミカム13032株を、25μg/mLカナマイシンが補足されたLB培地中で30℃にてインキュベートし且つ250rpmで振盪することにより、一晩増殖させた。実験処理には、100 mLのKraemer’A培地を各振盪フラスコ中で使用した。Hoisted C. & Kraemer, R., “Evidence for an efflux carrier system involved in the secretion of glutamate by Corynebacterium glutamicum,” Arch. Microbiol 151:342-347 (1989)。Kraemer’s A 培地は次のものを含んだ(リットル当たり):5g (NH4)2SO4、5g尿素、2gKH2PO4、1.53gK2HPO4、0.249gMgSO4・7H2O、50gグルコース、0.01g FeSO4・7H2O、0.01g MnSO4・H2O、0.01g CaCl2・2H2O、0.03 mg ZnSO4・7H2O、0.1 mg H3BO3、0.07 mg CaCl2・6H2O、0.01 mg NiCl2・2H2O、0.03 mg CuCl2・2H2O、(NH4)6Mo7O24・4H2OからのMo+6として0.1 mg、及び1μgのビオチン。pHを7.0に調整した。
処理用に、500mLのバッフル振盪フラスコ中100 mLになるように3.5〜5.0 v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験を通して30℃又は35℃の温度と250rpmでの攪拌を含んだ。モナチンオペロン遺伝子のOD600nm誘導は0.45 〜0.51で開始された。1.0 mM IPTGを誘導に使用し、誘導の時点で0.2 mLのBalch 1000×ビタミン原液と0.5 mM塩酸ピリドキシンを添加した。1.0gL−トリプトファン、10又は15g/Lのピルビン酸ナトリウム及び0.04mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)を誘導後3時間目と誘導後24時間目にも添加した。2回の供給時間の各々に10又は15g/Lを添加することにより、合計20又は30g/Lのピルビン酸ナトリウムを各フラスコに添加した。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、接種後約24、30及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
30℃で、ピルビン酸ナトリウムのレベルの増加は、乾燥細胞重量当たりのモナチン量を増加させた(54時間目に2.7に対して4.7mg/g)。35℃では、付加的なピルビン酸塩が乾燥細胞重量当たりのモナチン量を更に23.8から35.2 mg/gへと増加させた。30℃から35℃への温度増加は、乾燥細胞重量を7.48 g/Lから2.50 g/Lに減少させた。合計16の処理を含む要因計画実験において、温度とピルビン酸ナトリウムの両方が、乾燥細胞重量当たりのモナチン量に対する統計的に有意な要因であった。バイオマスの減少によるモナチン収率の増加は、炭素流入分布の変化が生じたことを示唆する。Ohnishi, J.他、Appl. Microbiol. Biotechnol. 62:69-75 (2003)。
よって、本発明者らは、添加するピルビン酸ナトリウムの量と生物体のインキュベーション温度の操作を通して、モナチン排出を増加できることを証明した。恐らく、この増加されたモナチン排出はモナチン生産の増加に伴って起こることであるが、モナチン排出それ自体に対する要因の影響を無視することはできない。増殖培地組成及び増殖条件を変化させるという当業者に周知の統計実験計画の継続使用により、細胞から生産されそして細胞外に排出されるモナチンの量を増加させることができる。モナチン排出への更なる効果は、非限定的にTween、ビオチン及び/又はアンピシリンをはじめとするコリネバクテリウム属(Corynebacterium)のミコール酸層に影響を及ぼすことが知られている試薬の1つ又は複数と組み合わせた、エタムブトールの使用を通して得ることができる。
実施例21
ビオチン及びアンピリシン処理によるコリネバクテリウム・グルタミカムにおけるモナチン排出の増加
aspCproA pEKEX-2により形質転換されたC.グルタミカム13032株を、50μg/mLカナマイシンが補足されたLB培地中で30℃にてインキュベートし且つ250rpmで振盪することにより、一晩増殖させた。実験処理には、100 mLのKraemer’A培地を各振盪フラスコ中で使用した。Hoisted C. & Kraemer, R., “Evidence for an efflux carrier system involved in the secretion of glutamate by Corynebacterium glutamicum,” Arch. Microbiol 151:342-347 (1989)。Kraemer’s A 培地は次のものを含んだ(リットル当たり):5g (NH4)2SO4、5g尿素、2gKH2PO4、1.53gK2HPO4、0.249gMgSO4・7H2O、50gグルコース、0.01g FeSO4・7H2O、0.01g MnSO4・H2O、0.01g CaCl2・2H2O、0.03 mg ZnSO4・7H2O、0.1 mg H3BO3、0.07 mg CaCl2・6H2O、0.01 mg NiCl2・2H2O、0.03 mg CuCl2・2H2O、(NH4)6Mo7O24-4H2OからのMo+6として0.1 mg、及び1μg又は200μgのビオチン。pHを7.0に調整した。
処理用に、500mLのバッフル振盪フラスコ中100 mLの培地容量において接種材料を0.100吸光度(600nm)まで添加した。処理条件は、実験を通して37℃の温度と250rpmでの攪拌を含んだ。モナチンオペロン遺伝子の誘導は0.26〜0.33 OD600nmで開始された。0.5 mM IPTGを誘導に使用し、誘導の時点で1.0 mM塩酸ピリドキシンと0.04mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)を添加した。誘導後3時間目に1.0 gのL−トリプトファンと5 g/Lピルビン酸ナトリウム及びアンピシリン(0又は10μg/mlのいずれか)を添加した。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、接種後約24時間及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
誘導後3時間目のアンピシリン添加は、乾燥細胞重量当たりのモナチン量に3〜12倍の増加を引き起こした。最初の培地中のビオチンを200から1μg/mLに減少させると、乾燥細胞重量当たりのモナチン量が1.0から4.2 mg/mLに増加した。アンピシリンとビオチンの処理組み合わせ(それぞれ10μg/mLと1μg/mL)は、乾燥細胞重量当たりのモナチン量を7.9〜18倍増加させた(それぞれ13.5/1.7と16.2/0.9)。
よって、本発明者らは、宿主生物が暴露されるビオチンとアンピシリンの量の操作を通して、モナチン排出を増加できることを証明した。恐らく、この増加されたモナチン排出はモナチン生産の増加に伴って起こることであるが、ビオチン及び/又はアンピシリンのモナチン排出それ自体に対する直接的な影響を無視することはできない。
増殖培地組成及び増殖条件を変化させるという当業者に周知の統計実験計画の継続使用により、細胞から生産されそして細胞外に排出されるモナチンの量を増加させることができる。モナチン排出への更なる効果は、非限定的にTween、ビオチン及び/又はアンピシリンをはじめとするコリネバクテリウム属(Corynebacterium)のミコール酸層に影響を及ぼすことが知られている試薬の1つ又は複数と組み合わせた、エタムブトールの使用を通して得ることができる。Eggeling, L. & Sahm, H., “The Cell Wall Barrier of Corynebacterium glutamicum and Amino Acid Efflux,” J. BioSci. And BioEng. 92:201-213 (2001)。
実施例22
エタムブトールを使ったコリネバクテリウム属におけるモナチン排出の増加
C.グルタミカムの増殖培地へのエタムブトール(“EMB”)の添加がL−グルタミン酸排出を引き起こし、一方でEMBの不在下では全く排出が起こらなかったと報告されている。Radmacher, E.他、”Ethambutol, a cell wall inhibitor of Mycobacterium tuberculosis, elicits L-glutamate efflux of Corynebacterium glutamicum,” Microbiology 151:1359-1368 (2005年5月)。EMBは報告上、分子レベルでは一連のアラビノシルトランスフェラーゼ(EmbCAB)を標的とする。C.グルタミカムの単一アラビノシルトランスフェラーゼをコードするemb遺伝子を、Tetリプレッサー(“TetR”)の調節下に置いた。生化学分析と組み合わせて、この株とemb過剰発現株を用いた実験は、emb発現がL−グルタミン酸排出と関係があり、且つEMB耐性を増加させることを示した。加えて、EMBは細胞壁アラビノガラクタン中のアラビナン付着の低下と、細胞壁結合型ミコール酸の含量の減少を引き起こした。かくして、EMBの添加は、細胞エンベロープの著しい無秩序化を引き起こし、それは細胞形態の検査からも実証された。
C.グルタミカムの細胞質膜の脂質組成の変化がL−グルタミン酸排出を引き起こすことから、細胞エンベロープの重要な構造変化が膜へと送達され、それが恐らく膜張力を増加させることにより、輸送体系を活性化するのだろうと推測されている。Radmacher, E.他、”Ethambutol, a cell wall inhibitor of Mycobacterium tuberculosis, elicits L-glutamate efflux of Corynebacterium glutamicum,” Microbiology 151:1359-1368 (2005年5月)。
aspCproA pEKEX-2により形質転換されたC.グルタミカムATCC 13032株を、25μg/mLカナマイシンが補足されたLB培地中で30℃にてインキュベートし且つ250rpmで振盪することにより、一晩増殖させた。実験処理には、100 mLのKraemer’A培地を各振盪フラスコ中で使用した。Hoisted C. & Kraemer, R., “Evidence for an efflux carrier system involved in the secretion of glutamate by Corynebacterium glutamicum,” Arch. Microbiol 151:342-347 (1989)。Kraemer’s A 培地は次のものを含んだ(リットル当たり):5g (NH4)2SO4、5g尿素、2gKH2PO4、1.53gK2HPO4、0.249gMgSO4・7H2O、50gグルコース、0.01g FeSO4・7H2O、0.01gMnSO4・H2O、0.01gCaCl2・2H2O、0.03 mg ZnSO4・7H2O、0.1 mg H3BO3、0.07 mg CaCl2・6H2O、0.01 mg NiCl2・2H2O、0.03 mg CuCl2・2H2O、(NH4)6Mo7O24-4H2OからのMo+6として0.1 mg、及び1μgのビオチン。pHを7.0に調整した。
処理用に、500mLのバッフル振盪フラスコ中100 mLの培地容量に3.5〜5.0 v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験を通して30℃の温度と250rpmでの攪拌を含んだ。振盪フラスコの接種の前か又はトリプトファンとピルビン酸塩を添加する最初の供給時点で、エタムブトール(10 mg/L)を添加した。モナチンオペロン遺伝子のOD600nm誘導は0.40 〜0.51で開始された。1.0 mM IPTGを誘導に使用し、誘導の時点で0.2 mLのBalch ビタミン液と0.5 mM塩酸ピリドキシンを添加した。1gのL−トリプトファン、10 g/Lのピルビン酸ナトリウム及び0.04mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)を誘導後3時間目に添加した。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、接種後約24、30/31及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
エタムブトール添加によりモナチン排出(mg/g乾燥細胞重量)が増加した。48時間目には、10 mg/gエタムブトール処理が乾燥細胞重量1グラム当たり平均1.06 mgのモナチンを排出したのに対し、エタムブトール処理なしの対照は乾燥細胞重量1グラム当たり0.51 mgのモナチンを排出した。
Figure 2008536523
接種後24時間目に追加の10g/Lのピルビン酸ナトリウムを投与すると、モナチン生産/排出に更なる増加が観察された。48時間目に追加のピルビン酸ナトリウム補給を伴う10 mg/Lエタムブトール処理が、乾燥細胞重量当たり平均2.19 mg/gのモナチン排出を有したのに対し、同じエタムブトール添加で24時間目の追加のピルビン酸補給無しの処理では1.06 mg/gであった。
Figure 2008536523
エタムブトール処理と組み合わせた供給時(誘導後3時間目)の0.2%Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)及び10μg/mLアンピシリンの添加により、モナチン排出が更に大きく増加することが観察された。モナチン排出にとって好都合であるTween、アンピシリン及びエタムブトール処理の間に相乗効果が得られた。10 mg/Lエタムブトールを用いるTween/アンピシリン処理は、エタムブトール添加なしの同処理よりも、12倍のモナチン排出を引き起こした(それぞれ、9.14 mgモナチン/g乾燥細胞重量と、0.74 mgモナチン/g乾燥細胞重量)。
よって、本発明者らは、エタムブトールの添加がコリネバクテリウム属のモナチン排出に対してプラスの効果を有することを証明した。エタムブトールがグルタミン酸排出のみに影響を与え、別のアミノ酸の排出には影響しないと報告されているので、それらのデータは、モナチンがグルタミン酸と同じ輸送体を介して排出されるのだろうということを示唆している。Radmacher E.他、”Ethambutol, a cell wall inhibitor of Mycobacterium tuberculosis, elicits L-glumamate efflux of Corynebacterium glutamicum,” Microbiology, 151:1359-68 (2005年5月)。加えて、本発明者らは、Tween及びアンピシリンと組み合わせたエタムブトール処理のプラスの効果が、コリネバクテリウム属における増幅されたモナチン排出応答を引き起こし、それはエタムブトールのみで観察されるものよりも大きいということも証明した。
実施例23
cysH欠失を有する宿主株におけるモナチン排出の増加
CysH〔ホスホアデニリル硫酸("PAPS")レダクターゼ〕、icdA(イソシトレートデヒドロゲナーゼ)、metE又はpurB(アデニロスクシネートリアーゼ)変異体がAcrAB輸送体系の活性化を引き起こすことが報告されている。その変異により引き起こされたブロックの上流に蓄積する代謝産物は、AcrAB-TolCポンプのレベルを増加させ得る。Helling, R.B.他、”Toxic waste disposal in Escherichia coli,” J Bacteriol. 184:3699-3703 (2002)。本発明者らはcysH欠失がモナチン排出に及ぼす影響を調べた。
記載の通り、鋳型pKD4からPCRによってE.コリBL21DE3中に所望のノックアウト生成物を作製するためにプライマーを設計した。Datsenko K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products, “Proceed. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-6645 (2000)。
cysHノックアウトプライマー配列:
E.コリcysHKO-正プライマー
5’-CGCGTGAGCGTCGCATCAGGCAAGGCAAACAGTGAGGAATCTATGTCCAAAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’

E.コリcycHKO-逆プライマー
5’-CGCCCCCATCATTTCTGACAGAGGCGTTTAATTTGTCCGGCAATATTTACCCTTCCATATGAATATCCTCCTTAG
-3′
cysH遺伝子の欠失のためのPCR生成物を、次のPCRプロトコルを使って増幅せしめた。100μLの反応液中、1μgの鋳型(pKD4)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products, “Proceed. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-6645 (2000))、0.4μMの各プライマー、0.4 mMの各dNTP、1×PCR緩衝液、及び2μLのPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)を使用した。使用した熱循環プログラムは、94 ℃で30 秒間の熱開始と、以下の段階の30回の反復、すなわち、94℃で1分、55℃で1分、72℃で4分であった。その30回の反復に続いて、試料を72℃で10分間維持し、次いで4℃で保存した。このPCRプロトコルは1.6 Kbの生成物を産生した。
PCR生成物をQuiagen PCR精製キット(Valencia, CA)を用いて精製した。該PCR生成物をSmartSpec 3000(商標)分光光度計を使って定量した。
ゲル精製したPCR生成物を用いてE.コリBW25113/pKD46株を形質転換せしめた。Datsenko K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products,” Proceed. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645 (2000)。PCR生成物1μLに40μLの細胞を添加し、BioRad Gene Pulsar IIを使ったエレクトロポレーションにより、以下の条件下で形質転換せしめた:0.2cmキュベット中、2.5 kV, 25μF,200オーム。225 rpmで振とうしながら、37℃にて3時間500μLのSOC中に細胞を回収した。次いでカナマイシン(50μg/mL)含有LBプレート上に細胞を塗布した。該プレートを37℃で一晩インキュベートした。5つのカナマイシン耐性形質転換体をコロニーPCRスクリーニングして、生成物を確認した。
溶解物の作製:BW25113ΔcycHノックアウト株のE.コリBL21DE3生産宿主中への輸送を可能にするために、P1ファージ溶解物を作製した。ドナー株を25μg/mLカナマイシン含有LB培地中で一晩増殖させた。その培養物を、1:10希釈度において5 mM CaCl2を含む新鮮LB培地に接種し、37℃で70分間インキュベートした。各培養物の1mLを3μL又は5μLのファージ原液(ATCC 25404-B1)と共に37℃で20分間インキュベートした。次いでファージ/培養物を、5 mM CaCl2を含む4mLの軟寒天と混合し、それをLB培地上に積層した。ファージを使用しない対照実験を設定した。プレートの右側を上に傾けて37℃にて5時間インキュベートし、その後、ファージを含む全てのプレートについてコンフルエント溶解を観察した。対照プレートは予想通り細胞溶解が全くなかった。プレートを37℃で一晩インキュベートし、その後、実験プレート上には予想通りファージ耐性コロニーが観察された。各プレートからの軟寒天を、無菌使い捨てループを使って、遠心管中に掻き取った。2mLのLB培地を用いてプレートを洗浄し、洗浄液を遠心管中の軟寒天と混合した。該遠心管に5滴のクロロホルムを添加し、それを穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートした。その混合物を10,000×gで10分間遠心分離し、0.2μmシリンジフィルターを用いて上清を濾過し、ファージ溶解物を得た。該ファージ溶解物を4℃で保存した。
産生宿主中への形質導入
P1形質導入によりcysHノックアウトをE.コリBL21DE3株に移行せしめ、BL21DE3ΔcysH株を作製した。E.コリBL21DE3ΔcysHを25μg/mLクロラムフェニコール含有LB培地中で一晩増殖させた。該培養物を1:10の希釈度において、5 mM CaCl2が補足された5mLの新鮮LB培地に接種した。継代培養物を37℃で60分間インキュベートした。培養物を遠心分離し、500μLのMC緩衝液(0.1 M MgSO4, 5 mM CaCl2)中に再懸濁し、室温で20分間インキュベートした。ドナー溶解物の様々な希釈液(MC緩衝液中1:100〜1×)を同容量にて100μLの培養物に添加した。混合物を37℃で20分間インキュベートし、その後200μLのクエン酸緩衝液(0.1 Mクエン酸及び220 mM NaOH、pH 5.5に調整)と1mLのLBを各試験管に添加した。培養物を200 rpmにて攪拌しながら37℃で1時間インキュベートし、次いで遠心分離して細胞ペレットを得た。細胞ペレットを100μLのクエン酸緩衝液中に再懸濁し、25μg/mLカナマイシンを含むLB培地上に塗抹した。単一のカナマイシン耐性コロニーを適当な培地上で再画線培養することにより精製した。
L−システイン及び/又はL−メチオニンが補足されたM9培地上での増殖により、システイン及びメチオニン栄養素要求性(cysH欠失を確証するあ表現型)について試験した。
接種用に、E.コリ株BL21 DE3 aspCproA pET32及びBL21 DE3ΔcysH::aspCproA pET32を、100μg/mLアンピシリンを含有するLuria-Bertani(LB)培地中で37℃及び250 rpmにて一晩増殖させた。
実験処理には、E.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地であるTrp-1+1グルコース培地(Zeman他、Folia Microbiol, 35:200-204 (1990))を次のようにして調製した。まず、800 mLナノ純水に2g (NH4)2SO4と13.6gのKH2PO4を添加した。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増やし、培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、0.2g MgSO4・7H2O、0.01g CaCl2・2H2O及び0.5 mg FeSO4・7H2Oを1.8 mLの容量で培地に添加した後、0.2 mLのNeidhardt微量栄養素溶液を添加した。Neidhardt, F.C.他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24・4H2O、1.24g H3BO3 、0.36g CoCl2・6H2O、0.12g CuSO4(無水)、0.8gMnCl2 ・4H2O、及び0.14g ZnSO4・7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、滅菌濾過した。40mLのグルコース溶液と10 mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を前記基本培地(950mL)に添加して最終容量1Lとした。
処理用に、500mLのバッフル振盪フラスコ中100 mLの培地容量に3.5〜5.0 v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験を通して250rpmでの攪拌と、誘導までの37℃で誘導後は30℃の温度であった。プラスミド遺伝子の誘導はOD600nm 0.44 〜0.52で開始された。誘導時、1.0 mM IPTG、0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2 mLのBalch ビタミン液を添加した。10gのL−トリプトファン、10 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)及び0.2%Tween20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)を誘導後3.0時間目に添加した。ピルビン酸の最初の供給から3時間後、別の10 g/Lのピルビン酸ナトリウムを各フラスコに添加した。幾つかの処理は2.5 mMデカン酸ナトリウム(又は0 mMデカン酸ナトリウム処理として無菌蒸留水)を含んだ。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、接種後約24、30及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
デカン酸ナトリウム添加無しでは、ΔcysH変異体は48時間目までに対照株よりも乾燥細胞重量当たり5倍多くのモナチンを排出した(4.2 mg/gに対して21.4 mg/g)。それらの結果は、ΔcysH変異体株がより多量のモナチンを排出することを証明した。この効果は、おそらくAcrAB及び/又は別の輸送体系の誘導によるものであろう。
Figure 2008536523
AcrAB輸送体系の誘導因子であるデカン酸ナトリウムの添加により、ΔcysH変異体において更に多量のモナチンが排出された。該変異体は24時間目までに乾燥細胞重量あたり100 mg/g以上多いモナチンを排出した。これは、対照株よりも60%以上多い(70.9 mgモナチンに対して115.0 mgモナチン/g乾燥細胞重量)。これらの結果は、ΔcysH変異体株がより多量のモナチンを排出することを確証した。この効果は恐らくAcrAB及び/又は別の輸送体系の誘導のためであろう。ΔcysH変異体とデカン酸ナトリウム添加の組み合わせにより最大のモナチン排出が観察されたという事実は、AcrAB輸送体系及び/又は別の輸送体系の関与を指摘する。
cysH,icdA(イソシアネートデヒドロゲナーゼ)、metE又はpurB(アデニロスクシネートリアーゼ)突然変異はいずれもAcrAB輸送体系の活性を引き起こすと報告されているので〔Helling, R.B.他、”Toxic waste disposal in Escherichia coli,” J. Bacteriol. 184:3699-3703 (2002)〕、次の遺伝子:cysH, icdA, metE又はpurBのうちの1つ又は複数に欠失を有する株において、増加されたモナチン排出が期待される。
実施例24
AcrEF輸送体系はモナチン排出に影響を及ぼし得る
エシェリキア・コリ(Escherichia coli)は、ある種の生理学的条件下で、トリプトファンの代謝産物であるインドールを生産する。acrEF遺伝子(該遺伝子の産物はエネルギー依存性多剤排出ポンプである)の不活性化は、インドール排出を減少させることが証明された。acrEF遺伝子の再導入はインドール排出を回復させた。ΔacrEF変異体は報告上、親株よりも多量の細胞内インドールを蓄積した。この変異体は、親株よりもインドールの増殖阻害効果に対して感受性であった。これらの結果は、AcrEF系がインドール排出における重要な役割を担う証拠として解釈された。Kawamura-Saito, K.他、”Role of multiple efflux pumps in Escherichia coli in indole expulsion,” FEMS Microbiol. Lett. 179:345-352 (1999)。envR遺伝子の不活性化はAcrEF輸送体系の過剰発現をもたらす。
鋳型pKD3からPCRによってΔenvRノックアウト生成物を構築するためにプライマーを設計した。Datsenko K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products, “Proceed. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-6645 (2000)。
Pfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)、鋳型としてのpKD3〔Datsenko K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products, “Proceed. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-6645 (2000)〕、並びにプライマーENVR1(5’-CACTCTGTGTCGAATATATTTATTTCCTGAATAATTAATCTGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’)及びENVR2(5’-ACTGTGACGAACTGAATTTTCAGGACAGAATGTGAATTTACATATGAATATCCTCCTTA-3’)を使って、ΔenvRノックアウト生成物を作製しそして増幅せしめた。使用した熱循環プログラムは、95℃で2分間の熱開始と、95℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で2分の10回反復、それに続いて95℃で30秒、58℃で30秒及び72℃で2分の25回循環を含んだ。最終段階は70℃にて7分間のインキュベーションであった。2つのPCR反応からのPCR生成物(合計200μL)を、製造業者の教示に従ってQIAquickゲル抽出キット(Quiagen Hilden, Germany)を用いて精製した。ΔenvRノックアウトPCR生成物を10μLの二重蒸留水を用いて溶出せしめた。
株BW25113/pKD46〔Datsenko K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products, “Proceed. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-6645 (2000)〕を、製造業者により推奨される通りにGene Pulser IIエレクトロポレーション装置(Bio-Rad, Hercules, CA)を使ったエレクトロポレーションにより、1μLのPCR生成物(250 ng)を用いて形質転換せしめ、次いでSOC培地中での150分間の増殖後にクロラムフェニコール10μg/mL含有LB固形培地上に播種した(Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd Edition 2001, Sambrook and Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, USA)。該プレートを37℃で一晩インキュベートした。
クロラムフェニコール耐性コロニーをPCRによりスクリーニングして、envR遺伝子座の状態を調べた。プライマーENVR3(5’-CCTCTCGTATAAATACACATTAGGTGATAGATTAACCTTCG-3’)とENVR4(5’-GCAACAGAAACAGACAAATGCCGCAATATG‐3’)を用いたコロニーPCRは、envRがクロラムフェニコール耐性遺伝子により破壊されているか又はenvR遺伝子が破壊されていないかによって、それぞれ1.2 kbバンド又は0.8 kbバンドを生じた。ΔenvR欠失株を同定し、BW25113ΔEnvRと命名した。
溶解物を作製するために、実施例3に記載の通りにBW25113ΔEnvRからP1ファージ溶解物を調製し、E.コリMG1655モナチン生産株中にノックアウトを転座できるようにした。
生産宿主中への形質導入のため、emrB及びacrABノックアウトについて実施例3に記載されているのと同様にして、プラスミドpaspCproAProNdedel を含有するE.コリMG1655株にenvR欠失を転座せしめた。欠失envR遺伝子を有する株を、25μg/mLのクロラムフェニコールと50μg/mLのカナマイシンを含有するLBプレート上で平板培養することにより選択した。ΔenvR欠失株を同定し、MG1165 ΔEnvRpApProNdedelと命名した。
MG1165ΔEnvRpApProNdedelバックグラウンド中の別の遺伝子の破壊を可能にするために、クロラムフェニコール耐性マーカーをenvR遺伝子座より切り出した。15 ngのpCP20(Datsenko K.A. & Wanner, B.L., “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products,”Proceed. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-6645 (2000))を用いて、製造業者により推奨される通りに形質転換及びストレージソリューション・プロトコル(TSS、Epicentre Biotechnologies, Madison, WI)に従って、MG1165ΔEnvRpApProNdedelを形質転換せしめた。30℃で30分間の増殖後、細胞を50μg/mLのアンピシリンと25μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、30℃で一晩インキュベートした。単一コロニーが得られ、それを25μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート上に再塗布し、42℃で一晩インキュベートした。前の段階からの単一コロニーを、25μg/mLのカナマイシンを含むLBプレートと、25μg/mLのクロラムフェニコールを含むプレート上にレプリカ塗布した。クロラムフェニコール感受性カナマイシン耐性株を、上述のプライマーENVR3とENVR4を使ったコロニーPCRにより、envR遺伝子座からのクロラムフェニコールマーカーの欠失について試験した。クロラムフェニコール耐性マーカーを損失したenvR遺伝子座の増幅は、クロラムフェニコール耐性マーカーを含むenvR遺伝子座の増幅から生じる1.2 Kbバンドに対比して、0.3 Kbバンドを生成した。生じた株をMG1165ΔEnvRpApProNdedel CanSと命名した。emrB及び/又はacrAB遺伝子は実施例3に記載のものと同様にして破壊することができる。
AcrAB及びEmrAB輸送体系はモナチンを輸送することもできるため、モナチン輸送に対するenvR欠失の影響及び結果として起こるAcrEF輸送体系の活性化は、恐らくAcrABとEmrAB輸送体系の一方又は両方が削除されている宿主株において顕著であろう。
インドールとモナチンの構造的類似性を仮定すれば、AcrEF輸送体がインドール−3−ピルビン酸排出のためにも働くだろうと予想される。従って、AcrEF輸送体をコードする遺伝子の欠失は、モナチン中間体を細胞の外に漏出しないようにし、それによってモナチン生産に多量に流入できるようにする可能性がある。同時に、AcrEF輸送体はモナチン排出のために機能しうる。実施例25はインドール−3−酢酸を排出させる輸送体がモナチン排出のためにも機能しうることを示す。AcrEF輸送体系を不活性化するのか又は過剰発現するかの決定は、インドール−3−ピルビン酸輸送量に対するモナチン輸送量の相対比に依存するだろう。
実施例25
アラビドプシス属(Arabidopsis)オーキシン輸送体の過剰発現によるモナチン排出の増加
オーキシン(主にインドール−3−酢酸、IAA)は植物ホルモンである。オーキシンの指向性輸送は、正常な植物成長にとって不可欠であり、主にPIN−FORMED(PIN)タンパク質ファミリーにより特徴付けられる排出キャリヤー複合体により媒介される。哺乳類の多剤耐性/P−糖タンパク質(MDR/PGP)の植物相同分子種(オルソログ)もオーキシン排出に機能する。MDR/PGPは細胞質膜上の排出複合体を安定化し、且つATP依存性オーキシン輸送体として機能すると報告されている。輸送の特異性や指向性は、PINタンパク質と相互作用することにより提供されるようである。Blakeslee J.J.他、“Auxin transport, Curr. Opin. Plant Biol. 8:494-500 (2005年10月)。別の研究者は、オーキシンの輸送におけるMDR/PGP様ABC輸送体の関与を示唆しており、AtPGP1 (NP_181228) が直接オーキシンの一次能動輸送に直接関係していることを示唆している。MDR様ABC輸送体AtPGP4はオーキシン媒介側根及び根毛成長に関係している。〔Santelia D.他、FEBS Lett. 579:5399-5406 (2005年10月);Geisler M.他、”Cellular efflux of auxin catalyzed by the Arabidopsis MDR/PGP transporter AtPGP1,” The Plant Journal 44:179 (2005)〕。或る観点では、モナチンがオーキシンと構造的相同性を有するので、モナチンを排出させるためのオーキシン輸送体の使用を調べた。
アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana )mRNA(カタログNo. M1634310)は、Biochain(Hayward, CA)から入手した。mRNAをRNAアーゼ不含有の水により50 ng/μLの最終濃度に10倍希釈した。記載の通りに、ただし鋳型として1μgの全RNAの代わりに100 ngのmRNAを使って、逆転写系(Promega, Madison, WI)とランダムプライマーを使って、mRNAからcDNAを作製した。
AtPGP1遺伝子を、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)とアラビドプシス・タリアナcDNAを鋳型として使って、PCRにより三成分系で増幅せしめた。転写解読枠の塩基1〜1453を次のプライマーPGP1:
5’-CATATGATGGATAATGACGGTGGTGCTCCTCCTCC-3’
及びプライマーPGP2:
5’-CATTTGCGACTCGAGCAGCCTCCTCTATCTC-3’
を使って増幅させた。これは、転写解読枠の5′にNdeI制限部位を導入した。63℃のアニーリング温度と2分間の伸長時間を用いた。PCR断片をアガロースゲル電気泳動により精製し、製造業者により推奨される通りにQIAquickゲル抽出キット(Quiagen Hilden, Germany)を使って抽出した。精製済PCR生成物を製造業者の推奨通りにpCR4.0 Blunt-TOPO (Invirtogen Carlsbad, CA)中にクローニングした。配列は直接配列決定法(Agencourt, Beverly MA)により確かめた。得られたプラスミドをpAtPGP1-5 と命名した。転写解読枠の塩基1423〜2829を、プライマーPGP3(5’-GAGATAGAGGAGGCTGCTCGAGTCGCAAATG-3’)及びプライマーPGP4(5’-GAGAGCATAAGATGCATAAAGACAGAACTGAGCTACCACC-3’)を使って増幅せしめた。55℃のアニーリング温度と2分の伸長時間を用いた。PCR断片を精製し、上記と同様にpCR4.0 Blunt-TOPO 中にクローニングし、そして配列を確認した。生じたプラスミドをpAtPGP1-Cと命名した。転写解読枠の塩基2791〜3861を、プライマーPGP5(5’-GCGGCCGCCTAAGCATCATCTTCCTTAACCCTAGAACTTGAACCTGAC-3’)及びプライマーPGP6(5’-GGTGTAGCTCAGTTCTGTCTTTATGCATCTTATGCTCTC-3’)を使って増幅させた。55℃のアニーリング温度と2分の伸長時間を用いた。これは、転写解読枠の末端にNotI制限部位を導入した。PCR断片を精製し、pCR4.0 Blunt-TOPO中にクローニングし、そして上述したように配列を確認した。得られたプラスミドをpAtPGP1-3′と命名した。
三つの切片を個別にクローニングした後、3′と中央の切片を一緒に連結した。得られた切片を次いで5′切片と連結して全長転写解読枠を再構築し、それを最終プラスミドの中に挿入した。pAtPGP1-C, pAtPGP1-3’及びpBluescript SK- (Stratagene, La Jolla, CA)をXhoIとNsiI、NsiIとNotI、又はXhoIとNotIでそれぞれ消化した。1.4 kb (pAtPGP1-C)、1.0 Kb (pAtPGP1-3’)及び3.0 Kb (pBluescript SK-)断片を上記と同様にアガロースゲル電気泳動により精製し、抽出した。精製断片をQuick Ligation Ligase (New England Biolabs, Ipswich, MA)を用いて連結せしめた。得られたプラスミドをpAtPGP1-C3’と命名した。 pAtPGP1-C3’, pAtPGP1-5’及びpProNdedelをそれぞれXhoIとNotI、NdeIとNotI、又はNdeIとNotIのいずれかで消化した。2.4 kb (pAtPGP1-C3’)、1.4 Kb (pAtPGP1-5’)及び2.6 Kb(pProNdedel−これはpProNdedelの作製を記載した手順を用いる;実施例15参照)断片を、アガロースゲル電気泳動により精製し、上記と同様に抽出した。それらの精製断片を上記と同様に連結せしめた。得られたプラスミドをpPro-AtPGP1と命名し、制限酵素分析により確認した。
コンピテントE.コリB121-DE3::aspCproApET32を、形質転換及びストレージソリューション(TSS、Epicentre Biotechnologies)を使って調製した。製造業者の推奨通りにpProAtPGP1を用いてコンピテントE.コリB121-DE3::aspCproApET32を形質転換せしめ、それを100μg/mLのアンピシリンと50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布した。第二のプラスミドpPro-AtPGP1を含有する形質転換体E.コリB121-DE3::aspCproApET32を、上述したプライマーPGP1とPGP2 、又はPGP5とPGP6をそれぞれ使って、PGP1の5′及び3′領域のPCR増幅により確認した。
接種材料の調製のため、E.コリ株を100μg/mLアンピシリンと50μg/mLカナマイシンを含有するLuria-Bertani(LB)培地中で37℃及び250 rpmにて一晩増殖させた。実験処理には、E.コリ細胞中でのトリプトファンの増加生産に使用されている最少培地であるTrp-1+1グルコース培地(Zeman他、Folia Microbiol, 35:200-204 (1990))を次のようにして調製した。まず、800 mLナノ純水に2g (NH4)2SO4と13.6gのKH2PO4を添加した。pHを7.0に調整し、容量を948 mLに増やし、培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌後、0.2g MgSO4・7H2O、0.01g CaCl2・2H2O及び0.5 mg FeSO4・7H2Oを1.8 mLの容量で培地に添加した後、0.2 mLのNeidhardt微量栄養素溶液を添加した。Neidhardt, F.C.他、”Culture medium for Enterobacteria,” J. Bacteriol. 119:736-746 (1974)。Neidhardt培地は次のものを含んだ(リットル当たり):0.18g (NH4)6(MO7)24・4H2O、1.24g H3BO3 、0.36g CoCl2・6H2O、0.12g CuSO4(無水)、0.8g MnCl2・4H2O、及び0.14g ZnSO4・7H2O。50%グルコース溶液を別に調製し、滅菌濾過した。40mLのグルコース溶液と10 mLの1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸(“MOPS”)緩衝液を前記基本培地(950mL)に添加して最終容量1Lとした。
処理用に、500 mLのバッフル振盪フラスコ中100 mL培地容量において3.5 v/v%接種材料を添加した。処理条件は、実験を通して250rpmでの攪拌と、誘導までは37℃で誘導後は30℃の温度を含んだ。プラスミド遺伝子の誘導はOD600nm 0.54 〜0.62で開始された。誘導時、1.0 mM IPTG、0.5%L−アラビノース、0.5 mM塩酸ピリドキシン及び0.2 mLのBalch ビタミン液を添加した。10g/LのL−トリプトファン、10 g/Lのピルビン酸ナトリウム、0.04 mMピリドキサル−5′−リン酸(“PLP”)及び0又は0.2%Tween20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)を誘導後3時間目に添加した。モナチン及び乾燥細胞重量測定用の試料は、接種後約24、30及び48時間目に採取した。
Figure 2008536523
プラスミド上にモナチンオペロンを有する株におけるアラビドプシスオーキシン輸送体遺伝子の誘導は、ブランクベクター(オーキシン遺伝子なし)による対照処理に比較して、乾燥細胞重量当たりのモナチン量を増加させた。24時間目の乾燥細胞重量当たりのモナチン量は、平均9.6 mg/gであるのに対し、オーキシン遺伝子無しのブランクベクター対照では1.5 mg/gであった。更に、ブランクベクター対照では2.2 mg/gであったのに対して、誘導後3時間目のTween 20での処理は、24時間目の乾燥細胞重量当たりのモナチン量を平均29.4 mg/gに増加させた。これは、AtPGP1オーキシン輸送体遺伝子を発現する株について乾燥細胞重量当たり13倍のモナチン排出の増加を意味する。
オーキシン輸送体AtPGP19(Q9LJX0)はAtPGP1と同様な機能を有すると報告されており、同様にモナチンを輸送すると予想される。その上、文献は、アラビドプシスPGPの系統分析に基づいてp−糖タンパク質(PGP)の3つのクラスター/分岐群を報告している。AtPGP1はクラスIのプロトタイプに属し、オーキシン輸送を触媒する。AtPGP1とAtPGP19に加えて、オーキシン輸送に役割を果たすと期待されるクラスI PGPの別のメンバーとしては、アラビドプシス属由来のAtPGP13, AtPGP14, AtPGP10, AtPGP2並びにオリザ・サチバ(Oryza sativa;コメ)由来のOsPGP9, OsPGP8, OsPGP7及びOsPGP6(”Geisler, M. & A.S. Murphy,”The ABC of auxin transport: The role of p-glycoproteins in plant development,” FEBS Letters 580:1094-1102 (2006))が挙げられる。上記に言及したクラスIのPGPは全て、モナチン輸送の能力を有すると期待される。
その上、クエリー(検索要求)としてAtPGP1タンパク質配列を使ったNCBIデータベースのBLAST分析は、モナチン輸送に役割を果たすことができる多数の同族体、例えば非限定的にBr ABB97035、St AAD10836、Sb AAR10387、Os XP483819、Os CAD59580、ZMPGP1 AAR00316、が存在することを示す。それらの同族体の全ての配列整列を図1に示す。
このように、本発明者らはモナチン排出のためのオーキシン輸送体の役割を示す強力な証拠を提供する。
図1は、オーキシン輸送体AtPGP1と7種の異なるタンパク質との間の相同性を示す配列の整列、即ちNCBIデータベースのBLAST分析の結果の一部分である。それらのタンパク質はBr ABB97035,St AAD10836,Sb AAR10387,Os XP483819,Os CAD59580,ZMPGP1及びAAR00316として表記される。

Claims (31)

  1. 遺伝子操作された微生物を使ってモナチンを分泌させることを含んで成る方法。
  2. 前記微生物が、モナチンを分泌することができる輸送体系の1又は複数の成分を発現又は過剰発現するように遺伝子操作されている、請求項1記載の方法。
  3. 前記微生物が、モナチンを分泌することができ且つ前記微生物にとって異種である輸送体系の1又は複数の成分を発現するように遺伝子操作されている、請求項1記載の方法。
  4. 前記微生物が、モナチンを分泌することができ且つ前記微生物にとって生来である輸送体系の1又は複数の成分を過剰発現するように遺伝子操作されている、請求項1記載の方法。
  5. 前記微生物が、モナチンを合成するように遺伝子操作されている、請求項1記載の方法。
  6. 前記微生物がAcrAB輸送体系、AcrAB輸送体系の同族体、EmrAB輸送体系、及びEmrAB輸送体系の同族体から選択された1又は複数の輸送体系を含有する、請求項1記載の方法。
  7. 微生物においてモナチンを生産する方法であって、前記モナチンを分泌することができる輸送体系又は前記モナチンを分泌することができる輸送体系の成分を発現又は過剰発現するように前記微生物を誘導し;そして前記微生物から前記モナチンを分泌させることを含んで成る方法。
  8. 前記輸送体系がAcrAB輸送体系であり、そして前記誘導段階が培地にデカン酸ナトリウムを供給することを含んで成る、請求項7記載の方法。
  9. 前記輸送体系がEmrAB輸送体系であり、そして前記誘導段階が培地にカルボニルシアニド−3−クロロフェニルヒドラゾンを供給することを含んで成る、請求項7記載の方法。
  10. 前記モナチンの分泌が、適当な対照に比較して増加されたモナチン排出である、請求項7記載の方法。
  11. TolC, RobA, RamA, MarA, BaeR及びその同族体から選択された1又は複数のタンパク質を発現又は過剰発現するように遺伝子操作された微生物を使って、生体内でモナチンを生産することを含んで成る方法。
  12. グルタミン酸栄養素要求体においてモナチンを生産することを含んで成る方法。
  13. 前記微生物が、モナチンを生産するように遺伝子操作されているか、モナチンを分泌することができる輸送体系の1又は複数の成分を発現又は過剰発現するように遺伝子操作されているか、あるいはその両方である、請求項12記載の方法。
  14. リンゴ酸と引き換えにグルタミン酸又はグルタミン酸に類似した溶質をトランスロケートすることができる微生物においてモナチンを生産することを含んで成る方法。
  15. 前記誘導段階が培地にサリチル酸を供給することを含んで成る、請求項7記載の方法。
  16. オーキシン輸送体、オーキシン輸送体の同族体又はその組み合わせを生産するかあるいは生産又は過剰発現するように遺伝子操作されている微生物において、モナチンを生産することを含んで成る方法。
  17. 前記オーキシン輸送体の前記同族体が、図1に示されるようにAtPGP1, BrABB97035, StAAD10836, ZmPGP1_AAR00316, SbAAR10387, OsXP_483819, OS_CAD59580及びAtPGP19と共に整列した時に、図1に示される共通配列を有するアミノ酸配列を含んで成る、請求項16記載の方法。
  18. 前記オーキシン輸送体の前記同族体が、
    PXGKTXAXVGXSGSGKSTVVSLXERFYXPXXGXXXLDG、LXLXXLRXQIGLVXQEPXLFATXIXENXLG、及びQVGERGXQLSGGQKQRIAIARAMLXXPXILLLDEATSALDから選択された1又は複数のアミノ酸配列を含んで成り、ここでXは、図1Bに示されるように前記アミノ酸配列と共に整列した時にAtPGP1, BrABB97035, StAAD10836, ZmPGP1_AAR00316, SbAAR10387, OsXp_483819, OS_CAD59580及びAtPGP19のいずれか1つの指摘の位置にあるアミノ酸である、請求項16記載の方法。
  19. 前記オーキシン輸送体の前記同族体が、
    LPXGYXTXVGERGVQLSGGQXQRIAIARA及びLLDEATSALDAESEXXXQEALから選択された1又は複数のアミノ酸配列を含んで成り、ここでXは、図1Dに示されるように前記アミノ酸配列と共に整列した時にAtPGP1, BrABB97035, StAAD10836, ZmPGP1_AAR00316, SbAAR10387, OsXp_483819, OS_CAD59580及びAtPGP19のいずれか1つの指摘の位置にあるアミノ酸である、請求項16記載の方法。
  20. cysH遺伝子を欠失している微生物においてモナチンを生産することを含んで成る方法。
  21. 前記微生物がcysH遺伝子を欠失するように遺伝子操作されている、請求項20記載の方法。
  22. 遺伝子操作前の微生物に比較してその細胞エンベロープ中のミコール酸のレベルが不足または低下するように遺伝子操作されている微生物を使って、モナチンを生産することを含んで成る方法。
  23. 前記微生物がパントエ(Pantoea)科のメンバーである、請求項1記載の方法。
  24. 前記微生物がコリネバクテリウム(Corynebacterium)科のメンバーである、請求項1記載の方法。
  25. 前記微生物が、適当な対照に比較してモナチン生産、モナチン排出又はモナチン生産とモナチン排出の両方を増加させる化合物に暴露される、請求項7記載の方法。
  26. 前記化合物がアンピシリン、エタムブトール、ピルビン酸塩、Tween及びその組み合わせから選択される、請求項25記載の方法。
  27. 前記遺伝子操作された微生物がYhcP(AaeB)、YccS、YjcQ及びYhfKから選択された1又は複数の輸送体を欠いている、請求項1記載の方法。
  28. モナチンを分泌する輸送体効果を確かめることにより、モナチン輸送体を同定することを含んで成る方法。
  29. モナチンを分泌することができる遺伝子操作された微生物。
  30. 前記微生物がモナチンを生産又は過剰生産するように遺伝子操作されている、請求項29記載の微生物。
  31. 前記微生物が、モナチンを分泌することができる1又は複数の輸送体系を発現又は過剰発現するように遺伝子操作されている、請求項29記載の微生物。
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