そこで、本発明は、上記事情に鑑み、記録テープをハブに巻回したときに、そのハブの軸方向への変動を抑制でき、巻回された記録テープの1枚飛び出しや巻き乱れを抑制できて、落下等の衝撃を受けた際に、その1枚飛び出しした記録テープがフランジに当たって折れたり、テープエッジダメージを受けることにより発生する問題を低減でき、更にはサーボ信号の読取エラーやデータ信号の記録・再生エラーを低減できるテープリール、記録テープカートリッジ、マシンリール、引出部材及びドライブ装置を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のテープリールは、記録テープが巻回される筒状のハブと、前記ハブとは別体で形成され、該ハブの両端部に配置されるフランジと、前記フランジの少なくとも一方に設けられ、前記ハブの内側で該フランジ同士を連結するとともに、該ハブの内周面とは非接触とされた連結部材と、を有し、前記ハブの外周面の一端側と他端側は半径が異なり、前記記録テープのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さい側が前記ハブの小径側となるように前記記録テープが前記ハブに巻回されていることを特徴としている。
そして、請求項2に記載のテープリールは、請求項1に記載のテープリールにおいて、前記ハブが、前記フランジに形成された係合部に係合する被係合部を有し、該ハブが前記フランジに対して相対回転不能とされるとともに、前記係合部と前記被係合部との間には、前記ハブの半径方向に所定の隙間が形成されていることを特徴としている。
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、両端部に半径差が設けられたハブにおいて、そのハブとフランジとは互いに独立した状態になっている。すなわち、このテープリールでは、ハブ或いはフランジの変形が相互に連動・影響しない構成とされている。このような構成のテープリールでは、次の(1)、(2)のような作用を奏する。
(1)ハブの軸線に対して略垂直な方向にテンション(張力)を加えて記録テープを巻回すると、記録テープに作用する面圧分布の片寄りによって、記録テープはハブの小径側のフランジ側へ寄って巻回される。
(2)テープエッジの湾曲の曲率半径が小さい側がハブの小径側となるように記録テープを巻回すると、記録テープが移動する方向は、ハブの小径側となる。
つまり、請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、上記(1)、(2)の相乗効果により、記録テープをハブの小径側のフランジ側に寄せて巻回することができる。したがって、記録テープのハブの軸方向(記録テープの走行方向に対して垂直な方向)への変動を抑制することができ、記録テープの巻き乱れを抑制することができて、整巻き性を向上させることができる。
これにより、ハブに巻回された記録テープの巻き面からの1枚又は複数枚飛び出しや段差の発生を抑制できるとともに、その1枚飛び出しした記録テープが、輸送時や落下時、更にはハンドリング時等において衝撃を受けた際に、フランジに当たって折れたり、テープエッジダメージを受けることによって発生する問題を低減することができる。そして、ドライブ装置内での記録テープの走行時にも、記録テープがハブの軸方向(記録テープの走行方向に対して垂直な方向)へ位置変動することを抑制できるので、テープ走行位置を安定させることができる。
このため、高密度記録であっても、サーボ信号の読取エラーやデータ信号の記録・再生エラーを低減することができ、いわゆるポジションエラーシグナル(位置誤差信号)やオフトラックの低減を期待することができる。なお、ここで言う「連結」とは、連結部材とフランジ、又は連結部材同士を、互いに溶着したり、いわゆるスナップフィット等により互いに締結したりすることを含む。また、係合部及び被係合部は少なくとも3個、ほぼ等間隔に設けられ、周方向には殆ど隙間が無い状態で係合する。これにより、ハブとフランジとが同軸的に配置される。
また、請求項3に記載のテープリールは、請求項1又は請求項2に記載のテープリールにおいて、前記ハブの弾性率が70GPa以上とされていることを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、整巻き性を更に向上させることができる。特に、ハブの弾性率を190GPa以上とすると、より良好な巻き形状が得られる。
また、請求項4に記載のテープリールは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のテープリールにおいて、前記記録テープの幅に対する前記ハブの一端側と他端側の半径差の比が、0.00039以上0.00474以下であることを特徴としている。
記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比が0に近い場合には(略円筒状のハブの場合には)、巻回される記録テープをハブの小径側へ移動させるという効果が得られない。また、記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比が大き過ぎた場合には、記録テープがハブの小径側のフランジ面に過剰に押し付けられて、テープエッジダメージを受け、いわゆる放射が発生したり、走行時にフランジと干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象が発生するおそれがある。
このため、請求項4に記載の発明では、記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比を特定している。具体的には、その半径差の比を0.00039以上0.00474以下の範囲としている。ここで、記録テープの湾曲量が小さければ(例えば0.5mm〜2.0mmであれば)、この範囲で充分に機能する。しかし、テープリールの生産性や設計の自由度の観点から、記録テープの湾曲量が大きくなっても(例えば2.5mmになっても)、記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比が0.00055以上0.00400以下の範囲であれば、良好な結果を得ることができる。
つまり、記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比が0.00055以上0.00400以下の範囲では、記録テープのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さくても(記録テープの湾曲量が、例えば2.5mmのように大きくなっても)、記録テープがハブの小径側のフランジ面へ過剰に押し付けられたり、フランジとの干渉などによる、テープエッジダメージや異音などの走行不良現象を抑制することができる。なお、測定方法の詳細は後述するが、ここで言う「湾曲量」とは、長さ1.0mの記録テープの両端部を結ぶ線を基準線として、その基準線と記録テープの中央部との離隔距離のことである。
また、請求項5に記載のテープリールは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のテープリールにおいて、前記記録テープの幅が略12.65mmであり、前記ハブの一端側と他端側の半径差が、5μm以上60μm以下であることを特徴としている。
ハブの一端側と他端側の半径差が0に近い場合には(略円筒状のハブの場合には)、巻回される記録テープをハブの小径側へ移動させるという効果が得られない。また、ハブの一端側と他端側の半径差が大き過ぎた場合には、記録テープがハブの小径側のフランジ面に過剰に押し付けられて、テープエッジダメージを受け、いわゆる放射が発生したり、走行時にフランジと干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象が発生するおそれがある。
このため、請求項5に記載の発明では、記録テープの幅が略12.65mmの場合において、ハブの一端側と他端側の半径差を5μm以上60μm以下としている。ここで、記録テープの湾曲量が小さければ(例えば0.5mm〜2.0mmであれば)、この範囲で充分に機能する。しかし、テープリールの生産性や設計の自由度の観点から、記録テープの湾曲量が大きくてなっても(例えば2.5mmになっても)、ハブの一端側と他端側の半径差が7μm以上50μm以下の範囲であれば、良好な結果を得ることができる。
つまり、記録テープの幅が略12.65mmの場合において、ハブの一端側と他端側の半径差が7μm以上50μm以下の範囲では、記録テープのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さくても(記録テープの湾曲量が、例えば2.5mmのように大きくなっても)、記録テープがハブの小径側のフランジ面に過剰に押し付けられたり、フランジとの干渉などによる、テープエッジダメージや異音などの走行不良現象を抑制することができる。
また、請求項6に記載のテープリールは、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のテープリールにおいて、前記記録テープの湾曲量の絶対値が、0.15mm以上2.5mm以下であることを特徴としている。
請求項6に記載の発明によれば、記録テープの湾曲量の絶対値を0.15mm以上2.5mm以下の範囲とすることで、大きな湾曲により記録テープがハブの小径側のフランジ面へ過剰に押し付けられたり、フランジとの干渉などによる、テープエッジダメージや異音などの走行不良現象を抑制することができる。また、通常、湾曲が0付近では、湾曲値の極性が変動することにより巻き乱れが発生しやすく、巻き面は、いわゆるザラ巻きの状態となるが、湾曲量の絶対値を0.15mm以上とし、これと請求項1〜請求項5の構成要件を兼ね備えることによって巻き乱れが抑制され、より整巻きに近い巻き面となる。
つまり、記録テープがテープエッジダメージを受けて、いわゆる放射が発生したり、記録テープが走行時にハブの小径側のフランジと干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象を防ぐことができ、適正で安定したテープ走行位置と巻き乱れの少ない状態を実現することができる。
なお、記録テープの湾曲量の絶対値を0.5mm以上2.0mm以下の範囲にすると、ハブに記録テープを巻回させたときに、そのテープエッジのフランジへの寄り具合が適度となるので、より好ましい。つまり、走行時における記録テープのハブの軸方向への位置変動が少なくなって巻き乱れが抑制され、かつ上下フランジのどちらかに沿った状態で整巻きされるので、記録テープにおいて、テープエッジダメージが低減される。
また、請求項7に記載のテープリールは、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のテープリールにおいて、前記記録テープの厚さが、7.5μm以下であることを特徴としている。
記録テープの厚さが厚い場合には、記録テープの剛性も増すため、テープエッジの強度が増し、フランジへの押し付け・衝撃・摩擦・摩耗に対してもテープエッジダメージ等の問題が発生し難くなる。一方、同じ幅の記録テープでも、記録テープの厚さが薄くなると、同じテンションを加えて記録テープを巻回した場合に、記録テープの幅方向に掛かる応力の分布も変わって来る。このため、請求項7に記載の発明では、本発明の適用に効果的な記録テープの厚さを特定している。
また、請求項8に記載のテープリールは、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のテープリールにおいて、前記記録テープが、ドライブ装置側の記録再生ヘッドの位置決め基準となるサーボ信号を有し、前記ハブに巻回された該記録テープの、前記ハブの外周面の半径が小さい側のテープエッジが、前記記録テープの走行時におけるサーボトラッキング制御の基準とされていることを特徴としている。
請求項8に記載の発明によれば、ハブに巻いた記録テープの一方のフランジ側に寄るテープエッジが、記録テープの走行時におけるサーボトラッキング制御の基準となる側のテープエッジと一致するので、記録テープのテープ走行位置を安定させることができる。このため、サーボトラッキングエラーやデータ信号の記録・再生エラーを低減することができる。
また、本発明に係る請求項9に記載の記録テープカートリッジは、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のテープリールと、前記テープリールを回転可能に収容するケースと、を備えたことを特徴としている。
請求項9に記載の発明によれば、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。特に、記録テープカートリッジは、1個当たりの記録容量を増加させるために、記録テープが薄肉化される傾向にあり、これによって、記録テープの剛性が下がり、テープエッジの強度も低下してしまうが、記録テープの巻き面からの1枚飛び出しの発生頻度やその飛び出し量を低減させることができるため、薄い記録テープを使用してもテープエッジダメージを受け難い。
また、請求項10に記載の記録テープカートリッジは、請求項9に記載の記録テープカートリッジにおいて、前記テープリールが単一であることを特徴としている。
請求項10に記載の発明によれば、テープリールにおいて、記録テープの整巻き性を向上させることができ、また、記録テープの走行時におけるハブの軸方向(記録テープの走行方向に対して垂直な方向)への位置変動を抑制することができるため、高精度化し難いドライブ装置側のマシンリールにおける記録テープのハブの軸方向(記録テープの走行方向に対して垂直な方向)への変動を、記録テープカートリッジ側のテープリールで抑制することができる。したがって、高記録容量が望まれるコンピューターのデータバックアップ用としての1リールの記録テープカートリッジに好適となる。なお、マシンリールを高精度に製作するのが困難なのは、引出部材をその中に収容する機能を搭載するために、形状が複雑になるからである。
また、本発明に係る請求項11に記載のマシンリールは、ドライブ装置内に設けられ、記録テープカートリッジから引き出された記録テープが巻回されるマシンリールであって、記録テープが巻回される筒状のハブと、前記ハブとは別体で形成され、該ハブの両端部に配置されるフランジと、前記フランジの少なくとも一方に設けられ、前記ハブの内側で該フランジ同士を連結するとともに、該ハブの内周面とは非接触とされた連結部材と、を有し、前記ハブの外周面の一端側と他端側は半径が異なり、前記記録テープのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さい側が前記ハブの小径側となるように前記記録テープが前記ハブに巻回されることを特徴としている。
そして、請求項12に記載のマシンリールは、請求項11に記載のマシンリールにおいて、前記ハブが、前記フランジに形成された係合部に係合する被係合部を有し、該ハブが前記フランジに対して相対回転不能とされるとともに、前記係合部と前記被係合部との間には、前記ハブの半径方向に所定の隙間が形成されていることを特徴としている。
請求項11及び請求項12に記載の発明によれば、マシンリールにおいて、請求項1及び請求項2に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。すなわち、このマシンリールでは、両端部に半径差が設けられたハブにおいて、そのハブとフランジとが互いに独立した状態とされ、ハブ或いはフランジの変形が相互に連動・影響しない構成とされている。このような構成のマシンリールでは、次の(1)、(2)のような作用を奏する。
(1)ハブの軸線に対して略垂直な方向にテンション(張力)を加えて記録テープを巻回すると、記録テープに作用する面圧分布の片寄りによって、記録テープはハブの小径側のフランジ側へ寄って巻回される。
(2)テープエッジの湾曲の曲率半径が小さい側がハブの小径側となるように記録テープを巻回すると、記録テープが移動する方向は、ハブの小径側となる。
つまり、請求項11及び請求項12に記載の発明によれば、上記(1)、(2)の相乗効果により、記録テープをハブの小径側のフランジ側に寄せて巻回することができるため、ドライブ装置内での記録テープの走行時に、記録テープがハブの軸方向(記録テープの走行方向に対して垂直な方向)へ位置変動することを抑制でき、記録テープの走行位置を安定させることができる。したがって、記録テープの巻き乱れを抑制することができて、整巻き性を向上させることができ、ハブに巻回された記録テープの巻き面からの1枚又は複数枚飛び出しや段差の発生を抑制することができる。
これにより、高密度記録であっても、記録再生ヘッドによるサーボ信号の読取エラーやデータ信号の記録・再生エラーを低減することができ、いわゆるポジションエラーシグナル(位置誤差信号)やオフトラックの低減を期待することができる。また、記録テープの走行時において、ドライブ装置に設けられたテープガイドやマシンリールのフランジ、更にはテープリールのフランジとの過剰な接触により発生するテープエッジダメージを防止することができる。なお、ここで言う「連結」とは、連結部材とフランジ、又は連結部材同士を、互いに溶着したり、いわゆるスナップフィット等により互いに締結したりすることを含む。また、係合部及び被係合部は少なくとも3個、ほぼ等間隔に設けられ、周方向には殆ど隙間が無い状態で係合する。これにより、ハブとフランジとが同軸的に配置される。
また、請求項13に記載のマシンリールは、請求項11又は請求項12に記載のマシンリールにおいて、前記ハブの弾性率が70GPa以上とされていることを特徴としている。
請求項13に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果と同様に、整巻き性を更に向上させることができる。特に、ハブの弾性率を190GPa以上とすると、より良好な巻き形状が得られる。
また、請求項14に記載のマシンリールは、請求項11〜請求項13の何れか1項に記載のマシンリールにおいて、巻回される前記記録テープの幅に対する前記ハブの一端側と他端側の半径差の比が、0.00039以上0.00474以下であることを特徴としている。
請求項14に記載の発明によれば、マシンリールにおいて、請求項4に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。すなわち、巻回される記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比が0に近い場合には(略円筒状のハブの場合には)、巻回される記録テープをハブの小径側へ移動させるという効果が得られない。
また、巻回される記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比が大き過ぎた場合には、記録テープがハブの小径側のフランジ面に過剰に押し付けられて、テープエッジダメージを受け、いわゆる放射が発生したり、走行時にフランジと干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象が発生するおそれがある。
このため、請求項14に記載の発明では、巻回される記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比を特定している。具体的には、その半径差の比を0.00039以上0.00474以下の範囲としている。ここで、記録テープの湾曲量が小さければ(例えば0.5mm〜2.0mmであれば)、この範囲で充分に機能する。しかし、マシンリールの生産性や設計の自由度の観点から、記録テープの湾曲量が大きくなっても(例えば2.5mmになっても)、巻回される記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比が0.00055以上0.00400以下の範囲であれば、良好な結果を得ることができる。
つまり、記録テープの幅に対するハブの一端側と他端側の半径差の比が0.00055以上0.00400以下の範囲では、記録テープのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さくても(記録テープの湾曲量が、例えば2.5mmのように大きくなっても)、記録テープがハブの小径側のフランジ面へ過剰に押し付けられたり、フランジとの干渉などによる、テープエッジダメージや異音などの走行不良現象を抑制することができる。なお、測定方法の詳細は後述するが、ここで言う「湾曲量」とは、長さ1.0mの記録テープの両端部を結ぶ線を基準線として、その基準線と記録テープの中央部との離隔距離のことである。
また、請求項15に記載のマシンリールは、請求項11〜請求項13の何れか1項に記載のマシンリールにおいて、巻回される前記記録テープの幅が略12.65mmであり、前記ハブの一端側と他端側の半径差が、5μm以上60μm以下であることを特徴としている。
請求項15に記載の発明では、マシンリールにおいて、請求項5に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。すなわち、ハブの一端側と他端側の半径差が0に近い場合には(略円筒状のハブの場合には)、巻回される記録テープをハブの小径側へ移動させるという効果が得られない。
また、ハブの一端側と他端側の半径差が大き過ぎた場合には、巻回される記録テープがハブの小径側のフランジ面に過剰に押し付けられて、テープエッジダメージを受け、いわゆる放射が発生したり、走行時にフランジと干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象が発生するおそれがある。
このため、請求項15に記載の発明では、記録テープの幅が略12.65mmの場合において、ハブの一端側と他端側の半径差を5μm以上60μm以下としている。ここで、記録テープの湾曲量が小さければ(例えば0.5mm〜2.0mmであれば)、この範囲で充分に機能する。しかし、マシンリールの生産性や設計の自由度の観点から、記録テープの湾曲が大きくなっても(例えば2.5mmになっても)、ハブの一端側と他端側の半径差が7μm以上50μm以下の範囲であれば、良好な結果を得ることができる。
つまり、記録テープの幅が略12.65mmの場合において、ハブの一端側と他端側の半径差が7μm以上50μm以下の範囲では、記録テープのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さくても(記録テープの湾曲量が、例えば2.5mmのように大きくなっても)、記録テープがハブの小径側のフランジ面に過剰に押し付けられたり、フランジとの干渉などによる、テープエッジダメージや異音などの走行不良現象を抑制することができる。
また、請求項16に記載のマシンリールは、請求項11〜請求項15の何れか1項に記載のマシンリールにおいて、巻回される前記記録テープの湾曲量の絶対値が、0.15mm以上2.5mm以下であることを特徴としている。
請求項16に記載の発明によれば、マシンリールにおいて、請求項6に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。すなわち、記録テープの湾曲量の絶対値を0.15mm以上2.5mm以下の範囲とすることで、大きな湾曲により記録テープがハブの小径側のフランジ面へ過剰に押し付けられたり、フランジとの干渉などによる、テープエッジダメージや異音などの走行不良現象を抑制することができる。また、通常、湾曲が0付近では、湾曲値の極性が変動することにより巻き乱れが発生しやすく、巻き面は、いわゆるザラ巻きの状態となるが、湾曲量の絶対値を0.15mm以上とし、これと請求項11〜請求項15の構成要件を兼ね備えることによって巻き乱れが抑制され、より整巻きに近い巻き面となる。
つまり、記録テープがテープエッジダメージを受けて、いわゆる放射が発生したり、記録テープが走行時にハブの小径側のフランジと干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象を防ぐことができ、適正で安定したテープ走行位置と巻き乱れの少ない状態を実現することができる。
なお、記録テープの湾曲量の絶対値を0.5mm以上2.0mm以下の範囲にすると、ハブに記録テープを巻回させたときに、そのテープエッジのフランジへの寄り具合が適度となるので、より好ましい。つまり、走行時における記録テープのハブの軸方向への位置変動が少なくなって巻き乱れが抑制され、かつ上下フランジのどちらかに沿った状態で整巻きされるので、記録テープにおいて、テープエッジダメージが低減される。
また、請求項17に記載のマシンリールは、請求項11〜請求項16の何れか1項に記載のマシンリールにおいて、巻回される前記記録テープの厚さが、7.5μm以下であることを特徴としている。
請求項17に記載の発明によれば、マシンリールにおいて、請求項7に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。すなわち、記録テープの厚さが厚い場合には、記録テープの剛性も増すため、テープエッジの強度が増し、フランジへの押し付け・衝撃・摩擦・摩耗に対してもテープエッジダメージ等の問題が発生し難くなる。一方、同じ幅の記録テープでも、記録テープの厚さが薄くなると、同じテンションを加えて記録テープを巻回した場合に、記録テープの幅方向に掛かる応力の分布も変わって来る。このため、請求項17に記載の発明では、本発明の適用に効果的な記録テープの厚さを特定している。
また、請求項18に記載のマシンリールは、請求項11〜請求項17の何れか1項に記載のマシンリールにおいて、巻回される前記記録テープが、ドライブ装置に設けられた記録再生ヘッドの位置決め基準となるサーボ信号を有し、前記ハブに巻回された該記録テープの、前記ハブの外周面の半径が小さい側のテープエッジが、前記記録テープの走行時におけるサーボトラッキング制御の基準とされていることを特徴としている。
請求項18に記載の発明によれば、マシンリールにおいて、請求項8に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。すなわち、ハブに巻いた記録テープの一方のフランジ側に寄るテープエッジが、記録テープの走行時におけるサーボトラッキング制御の基準となる側のテープエッジと一致するので、記録テープのテープ走行位置を安定させることができる。このため、サーボトラッキングエラーやデータ信号の記録・再生エラーを低減することができる。
また、本発明に係る請求項19に記載の引出部材は、記録テープカートリッジから記録テープを引き出し、請求項11〜請求項18の何れか1項に記載のマシンリールのハブに収容されて、該ハブの外周面の一部を構成する巻取面を備えた引出部材であって、前記巻取面の一端側と他端側は半径が異なり、前記ハブに収容された状態で、前記巻取面と前記ハブの外周面とが略面一となることを特徴としている。
引出部材の巻取面とハブの外周面との間で段差が生じた場合、マシンリールのハブに記録テープを巻回したときに、この段差により、いわゆる「写り」が発生し、その部分でドロップアウトが生じたり、エラーとなったりする可能性が大きくなる。しかし、請求項19に記載の発明によれば、マシンリールのハブの外周面の一部を構成する引出部材の巻取面の一端側と他端側の半径を変え、引出部材がハブに収容された状態で、引出部材の巻取面とハブの外周面とが略面一となるようにしているため、ハブの外周面の全体に渡って、このような段差は生じない。このため、請求項11〜請求項18の何れか1項に記載の効果と略同一の効果を得ることができる。
また、本発明に係る請求項20に記載のドライブ装置は、装填された記録テープカートリッジから引き出された記録テープが巻回される請求項11〜請求項18の何れか1項に記載のマシンリールを有することを特徴としている。
請求項20に記載の発明によれば、ドライブ装置において、請求項11〜請求項18の何れか1項に記載の効果と略同一の効果を得ることができる。すなわち、ドライブ装置内での記録テープの走行時に、記録テープがハブの軸方向へ位置変動するのを抑制することができ、テープ走行位置を安定させることができる。このため、高密度記録であっても、記録再生ヘッドによるサーボ信号の読取エラーやデータ信号の記録・再生エラーを低減することができ、いわゆるポジションエラーシグナル(位置誤差信号)やオフトラックの低減を期待することができる。
また、ドライブ装置に設けられたテープガイドやマシンリールのフランジ、更にはテープリールのフランジとの過剰な接触により発生するテープエッジダメージを防止することができる。つまり、テープエッジダメージにより、いわゆる放射が発生したり、走行時にフランジと干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象を防ぐことができ、適正で安定したテープ走行位置と巻き乱れの少ない状態を実現できる。
また、請求項21に記載のドライブ装置は、請求項20に記載のドライブ装置において、請求項19に記載の引出部材を有することを特徴としている。
請求項21に記載の発明によれば、ドライブ装置において、請求項19に記載の発明の効果と略同一の効果を得ることができる。すなわち、マシンリールのハブの外周面の一部を構成する引出部材の巻取面の一端側と他端側の半径を変え、引出部材がハブに収容された状態で、引出部材の巻取面とハブの外周面とが略面一となるようにしているため、ハブの外周面の全体に渡って、段差は生じない。このため、段差が生じた場合に、マシンリールのハブに記録テープを巻回したとき発生する、いわゆる「写り」が発生し難い。
以上のように、本発明によれば、記録テープをハブに巻回したときに、そのハブの軸方向への変動を抑制でき、巻回された記録テープの1枚飛び出しや巻き乱れを抑制できる。したがって、落下等の衝撃を受けた際に、その1枚飛び出しした記録テープがフランジに当たって折れたり、テープエッジダメージを受けることにより発生する問題を低減でき、更にはサーボ信号の読取エラーやデータ信号の記録・再生エラーの発生を低減できる。
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図1において、記録テープカートリッジ10のドライブ装置70(図5参照)への装填方向を矢印Aで示し、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向(右側)とする。また、矢印C方向を本実施形態における幅方向とし、上下方向及び高さ方向、更にはリール20(リールハブ22)及びマシンリール80(リールハブ82)の軸方向と同方向とする。
図1、図2で示すように、記録テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。このケース12は、ポリカーボネート(PC)等の樹脂製の上ケース14と下ケース16とが、それぞれ天板14Aの周縁に立設された周壁14Bと、底板16Aの周縁に立設された周壁16Bとを互いに当接させた状態で、超音波溶着やネジ止め等によって接合されて構成されている。
ケース12の内部には、リール(テープリール)20が1つだけ回転可能に収容される。このリール20は、軸心部(巻芯部)を構成する円筒状のリールハブ22と、その上端部に配置される環状の上フランジ24と、その下端部に配置される円板状の下フランジ26と、を有しており、リールハブ22と上下フランジ24、26とが互いに独立した状態となるように別体で成形されている。
すなわち、図3、図4で示すように、上フランジ24の内縁部で、かつ同心円周上には、円筒状の上円筒部(連結部材)24Aが垂設されており、下フランジ26の上面には、上円筒部24Aと略同一径を有する円筒状の下円筒部(連結部材)26Aが立設されている。そして、リールハブ22は、下円筒部26A及び上円筒部24Aの外径寸法よりも大きい内径寸法を有しており、下円筒部26A及び上円筒部24Aと非接触状態で(下円筒部26A及び上円筒部24Aの外周面とリールハブ22の内周面との間に所定の隙間が形成される状態で)外挿可能になっている。
また、リールハブ22の長さは、下円筒部26Aの長さと上円筒部24Aの長さを合わせた長さとほぼ同一とされており、下円筒部26Aの上端面中央部(又は上円筒部24Aの下端面中央部)には、その周方向に沿って、断面が三角形状の溶着リブ25が突設されている。また更に、下フランジ26の下円筒部26Aの外側には、所定長さ(幅を含む)及び所定高さのリブ23(係合部)が、同軸的かつ断続的に少なくとも3個、ほぼ等間隔に突設されており、リールハブ22の下端面の中央部には、そのリブ23が、リールハブ22の周方向には隙間が殆ど無く、リールハブ22の半径方向には所定の隙間が有る状態で挿入可能な所定長さ(幅を含む)及び所定深さの係合溝(被係合部)22Aが、リールハブ22の周方向に沿って断続的に少なくとも3個、対向するリブ23と同間隔に形成されている。
したがって、下フランジ26の下円筒部26Aへリールハブ22を外挿し、リールハブ22の係合溝22Aを下フランジ26のリブ23に係合させて、下フランジ26に対してリールハブ22を位置決めし(センタリングし)、上フランジ24の上円筒部24Aをリールハブ22内に挿入して、その上円筒部24Aの下端面を下円筒部26Aの上端面に当接させ、この状態で、超音波を発振させて、溶着リブ25を溶融することにより、上円筒部24Aが下円筒部26Aに溶着される構成である。
つまり、これにより、上フランジ24、下フランジ26及びリールハブ22が、同軸的に配置された状態で(同軸を維持した状態で)組み立てられ、リールハブ22が上下フランジ24、26によって保持されるとともに、リールハブ22が上下フランジ24、26に対して相対回転不能とされる(周方向に相対的に移動不能とされる)構成である。そして、リールハブ22と上下フランジ24、26とが相互に変形の影響を受けない構成になっている。
すなわち、このような構成のリール20では、係合溝22Aとリブ23との間に、リールハブ22の半径方向に所定の隙間が形成され、下円筒部26A及び上円筒部24Aの外周面と、リールハブ22の内周面との間に、所定の隙間が形成されている(非接触とされている)ので、リールハブ22或いは上下フランジ24、26の変形が、相互に連動・影響することがない。
なお、本実施形態では、上フランジ24に円筒状の上円筒部24Aを垂設するとともに、下フランジ26に円筒状の下円筒部26Aを立設して、それらを溶着・連結し、リールハブ22を上フランジ24と下フランジ26とで保持する構成にしたが、上フランジ24又は下フランジ26のどちらか一方に、リールハブ22と略同じ高さとされ、リールハブ22の内側に配置される連結部材(図示省略)を設け、その連結部材を直接下フランジ26又は上フランジ24に連結して、リールハブ22を上フランジ24と下フランジ26とで保持する構成にしてもよい。
また、ここで言う「連結」とは、上円筒部24Aと下円筒部26Aを互いに溶着したりする以外に、いわゆるスナップフィットにより、上円筒部24Aと下円筒部26Aを互いに締結したりする場合も含まれる。すなわち、例えば、上円筒部24A及び下円筒部26Aの形状を変え、上円筒部24Aに係止部(図示省略)を設け、下円筒部26Aに係止部が係止される被係止部(図示省略)を設けて、上円筒部24Aと下円筒部26Aとを、被係止部に係止部を係止させて締結するような構造にしてもよい。
また、図4で示すように、このリールハブ22の外周面は、側断面視にて上フランジ24側の半径の方が下フランジ26側の半径よりも大きく形成されており、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRが5μm〜60μmの範囲とされている。すなわち、記録テープTの幅(ここでは、1/2インチ幅の略12.65mm)に対して、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRの比が0.00039〜0.00474の範囲とされている。
ここで、そのリールハブ22の外周面における半径の測定方法について説明する。図10で示すように、リール20のドライブ装置70とのチャッキング部(後述するリールギア44)を下にして、図示しないマスターチャッキングギア(高精度の基準ギア)上に、そのリール20をセットする。そして、この状態で、接触式の3次元測定機のタッチセンサープローブ90で、リールハブ22の外形を、下端部側から上端部側まで測定する。
なお、このとき、リールハブ22の半径を測定する際の仮の中心(軸心)は、マスターチャッキングギアの中心(軸心)とする。更に、測定位置の上端部及び下端部の位置は、直径1mmのタッチセンサープローブ90を使用するため、上フランジ24又は下フランジ26に干渉しないように、測定時にその中心位置がリールハブ22の上端部及び下端部から、それぞれ0.7mm〜1.0mmの範囲となるように設定する。そして、その測定点がトータルで、少なくとも10点以上となるように、ほぼ等間隔に測定点を設定する。この測定を60度毎の6箇所で同様に行う。
この結果から、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔR=ΔRmax−(ΔRmax−ΔRmin)/2=(ΔRmax+ΔRmin)/2を算出する。なお、ΔRmaxはΔR1〜ΔR6の最大値であり、ΔRminはΔR1〜ΔR6の最小値である。また、ΔR1〜ΔR6は60度毎6箇所それぞれの位置でのリールハブ22の大径側(上フランジ24側)の半径値−小径側(下フランジ26側)の半径値(n=1〜6)である。
また、リールハブ22は、その外形において、上フランジ24側と下フランジ26側とで半径が異なっていればよいため、リールハブ22の外周面が側面視にて直線で結ばれるテーパー形状でなくてもよい。つまり、リールハブ22の外周面に微細な凹凸があってもよいし、リールハブ22の外周面が側面視にて、曲線で結ばれる形状であってもよい。更に、リールハブ22の外周面が側面視にて屈曲していてもよく、また、その一部がリールハブ22の軸線と平行になっていてもよい。
さて、情報記録再生媒体としての磁気テープ等の記録テープTは、このようなリール20のリールハブ22の外周面に、所定の巻き締め力(テンション或いは張力)F(例えばF=0.588N〜0.980N)で巻回され、上フランジ24及び下フランジ26によって、その巻回された記録テープTの幅方向の変動幅が規制されるようになっている。なお、上フランジ24と下フランジ26の互いに対向する面は、外方側(外周縁側)に向かうに従って徐々にそのフランジ間隔が増加するようなテーパー面24B、26Bとされている(図3、図4参照)。また、この記録テープTは、記録容量の増加のため、厚さが7.5μm以下、好ましくは6.9μm以下とされている。
ここで、この記録テープTは、剛性の高いリールハブ22に巻回されると、その巻き形状(巻き姿)が良好になる。例えば、記録テープTを、ヤング率(弾性率)が概略70GPaのアルミニウム材のリールハブ22に巻回すると、巻き形状(巻き姿)が良好になり、ヤング率(弾性率)が概略190GPa又は概略210GPaのステンレス鋼材のリールハブ22に巻回すると、巻き形状(巻き姿)が更に良好になることが、出願人の実験の結果から判明している。
このように、記録テープTは、ヤング率(弾性率)の高いリールハブ22に巻回する方が、きれいに巻かれる傾向にある。したがって、リールハブ22の材質は、合成樹脂(プラスチック)に限定されるものではなく、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属でもよく、更には、アルミニウム製やステンレス製の金属リング(図示省略)を、インサート成形や圧入等により、合成樹脂製(プラスチック製)のリールハブ22の内周面側又はリールハブ22内に、一体的に設ける構成にしてもよい。
また、通常、記録テープTは、幅方向(上方向又は下方向)に湾曲しており、本実施形態では、記録テープTの上エッジTAを上側にして見た場合に、その上側に湾曲する方を−湾曲、下側に湾曲する方を+湾曲としている。したがって、図14で示す記録テープTは上エッジTAを上側にしているので、+湾曲の記録テープTとなり、図15で示す記録テープTは上エッジTAを上側にしているので、−湾曲の記録テープTとなる。本実施形態のリール20では、後述するように、+湾曲の記録テープTをリールハブ22に巻回するようになっており、その湾曲量ΔDは0.15mm〜2.5mmの範囲とされている。
ここで、「湾曲量ΔD」とは、長さ1.0mの記録テープTの両端部を結ぶ線を基準線として、その基準線と記録テープTの中央部との離隔距離のことであり、次に、その記録テープTの湾曲量ΔDを測定する方法について説明する。図11には、テープ形状測定装置100が示されている。このテープ形状測定装置100には略直方体状の静電吸着台102が備えられており、静電吸着台102の上部には案内部材104が設けられている。
案内部材104は、図12で示すように、静電吸着台102の上面(吸着面102A)との間に隙間を空けた状態で、静電吸着台102の上部を静電吸着台102の長手方向に沿って水平移動可能に構成されており、案内部材104の上面を覆うようにして、規定の1mに両端の余裕分を加えた長さに予め切断された記録テープTが静電吸着台102の吸着面102Aに配置される。そして、記録テープTの両端側が、長さに余裕を持った状態でフリーとされて、ノズル108によって、記録テープTに空気が吹き付けられる。
そして更に、記録テープTに空気が吹き付けられたまま、案内部材104及びノズル108が吸着面102Aに沿って、所定速度でスライド(移動)する。これにより、記録テープTは、吸着面102A上から一旦離隔し、余分な力が取り除かれた状態で、再度吸着面102A上に案内されることとなる。
また、図13で示すように、静電吸着台102には、長手方向に沿って複数の電極対110が配設され、記録テープTの吸着面102Aへの案内とともに、その吸着面102Aに案内された記録テープTに対応する電極対110のスイッチが順次作動するようになっており、吸着面102Aは、記録テープTの案内に対応して順次帯電するようになっている。これにより、記録テープTは、静電気(電荷)を帯び、その静電吸着によって吸着面102Aに順次吸着される。
そして更に、ノズル108から吹き出された空気が、この吸着された記録テープTを所定の圧力で押圧するようになっている。このように、記録テープTが所定の圧力で押圧されると、吸着面102A及び記録テープTの下面に同伴し、記録テープTと吸着面102Aとの間に介在する空気が押し出される。したがって、記録テープTを吸着面102Aに良好に密着させることができる。
次いで、吸着面102Aに吸着された記録テープTの形状を、光学的測定装置112によって測定する。静電吸着台102には、光学的測定装置112のレーザー発生器114から照射されるレーザー光Lが通過可能な透明部116が設けられており、記録テープTが吸着面102Aに吸着された状態で、その透明部116にレーザー光Lを照射し、静電吸着台102の下方に配置されたレーザー受光器118で、透過したレーザー光Lを受光する。これにより、記録テープTのエッジの位置が測定可能となる。
具体的には、図14で示すように、測定点A、B、Cの上側にそれぞれ配置するレーザー発生器114から、測定点Aと測定点Cを結ぶ基準線ACを跨ぐように、幅方向に帯状のレーザー光Lをそれぞれ照射する。そして、静電吸着台102の下方、即ち測定点A、B、Cの下側にそれぞれ配置するレーザー受光器118で、各透明部116を透過したレーザー光Lをそれぞれ受光する。このとき、記録テープTが湾曲している場合、幅方向に帯状のレーザー光Lの受光量(透過したレーザー光Lの幅方向の長さ)は少なくなる。
次いで、レーザー受光器118により、透過したレーザー光Lの幅方向の長さを検出し、測定点A、B、Cの位置(上エッジTAの位置)を求める。そして、この測定点A、B、Cの位置に基づいて、基準線ACと測定点Bとの距離、即ち変位量(ΔD)を算出し、算出された値が測定点Bにおける湾曲量となる。ここで、基準線ACの長さは1.0mであることがJISX6175に規定されている。
そして、図14で示すように、記録テープTのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さい側が図示の下側である場合、即ち基準線ACが記録テープTで覆われる場合を、記録テープTの極性が+湾曲であるとし、図15で示すように(なお、図15は図14を簡略化したものである)、記録テープTのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さい側が図示の上側である場合、即ち基準線ACと記録テープTのテープエッジの上側(いわゆる上エッジTA)との間に隙間δが生じる場合を、記録テープTの極性が−湾曲であるとしている。なお、リールハブ22に記録テープTが巻回された状態では、この上エッジTA側がリールハブ22の上フランジ24側となる。
一方、図2で示すように、下フランジ26における底壁28の下面には、リールギア44が環状に形成されており、下ケース16の中央部には、そのリールギア44(図3、図4参照)を外部に露出するためのギア開口40が穿設されている。このギア開口40から露出されるリールギア44が、ドライブ装置70(図5参照)側の駆動ギア(図示省略)に噛合されて回転駆動されることにより、ケース12内において、リール20がケース12に対して相対回転可能とされる。
また、底壁28の下面におけるリールギア44の径方向内側には、磁性材より成る環状のリールプレート46(図3、図4参照)がインサート成形等により固着されており、ドライブ装置70側の環状マグネット(図示省略)の磁力によって吸着・保持されるようになっている。更に、図2で示すように、リール20は、上ケース14及び下ケース16の内面にそれぞれ部分的に突設されて、ギア開口40と同軸的な円形の軌跡上にある内壁としての遊動規制壁42によってガタつかないように保持されている。
また、図1、図2で示すように、ケース12の右壁12Bには、リール20に巻装された記録テープTを引き出すための開口18が形成されており、この開口18から引き出される記録テープTの自由端部には、ドライブ装置70の引出部材であるリーダーブロック85(図7(A)参照)によって係止(把持)されつつ引き出し操作されるリーダーピン30が固着されている。リーダーピン30の記録テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝32が形成されており、この環状溝32がリーダーブロック85のフック85Aに係止される(図7(B)参照)。
また、ケース12の開口18の内側、即ち上ケース14の天板14A内面及び下ケース16の底板16A内面には、ケース12内においてリーダーピン30を位置決めして保持する上下一対のピン保持部36が設けられている。このピン保持部36は、記録テープTの引き出し側が開放された略半円形状をしており、直立状態のリーダーピン30の両端部34は、その開放側からピン保持部36内に出入可能とされている。
また、ピン保持部36の近傍には、板バネ38が固定配置されるようになっており、この板バネ38の二股状の先端部がリーダーピン30の上下両端部34にそれぞれ係合してリーダーピン30をピン保持部36に保持するようになっている。なお、リーダーピン30がピン保持部36に出入する際には、板バネ38の先端部は適宜弾性変形してリーダーピン30の移動を許容する構成である。
また、その開口18は、ドア50によって開閉される。このドア50は、開口18を閉塞可能な大きさの略矩形板状に形成され、ケース12の右壁12Bに沿って移動できるように、開口18内側の天板14A及び底板16Aには、ドア50の上下端部を摺動可能に嵌入させる溝部64が形成されている。
また、ドア50の後端部中央には、シャフト52が突設されており、そのシャフト52には、コイルバネ58が挿嵌されている。そして、シャフト52の後端には、そのコイルバネ58を脱落防止とする拡開部54が形成されている。また、下ケース16には、そのシャフト52に挿嵌されたコイルバネ58の後端を係止する係止部62を有する支持台60が突設されている。
したがって、ドア50は、シャフト52が支持台60上に摺動自在に支持されるとともに、コイルバネ58の後端が係止部62に係止されることにより、そのコイルバネ58の付勢力によって、常時開口18の閉塞方向へ付勢される構成である。なお、開口18の開放時、シャフト52を支持する支持台66を支持台60の後方側に更に突設しておくことが好ましい。
また、ドア50の前端部には、開閉操作用の凸部56が外方に向かって突設されている。この凸部56が、記録テープカートリッジ10のドライブ装置70への装填に伴い、そのドライブ装置70側の開閉部材(図示省略)と係合するようになっている。これにより、ドア50がコイルバネ58の付勢力に抗して開放される構成である。
次に、記録テープカートリッジ10が装填されるドライブ装置70の一例について説明する。図5〜図7で示すように、このドライブ装置70は、記録テープカートリッジ10からリーダーピン30を把持して引き出すリーダーブロック85を収容し、そのリーダーピン30を介して引き出された記録テープTが巻回されるマシンリール80を有している。
そして、このマシンリール80も、リール20とほぼ同様の構成とされている。すなわち、このマシンリール80は、軸心部(巻芯部)を構成する円筒状のリールハブ82と、その上端部に配置される環状の上フランジ84と、その下端部に配置される円板状の下フランジ86と、を有しており、リールハブ82と上下フランジ84、86とが互いに独立した状態となるように別体で成形されている。
すなわち、上フランジ84の内縁部で、かつ同心円周上には、円筒状の上円筒部(連結部材)84Aが垂設されており、下フランジ86の上面には、上円筒部84Aと略同一径を有する円筒状の下円筒部(連結部材)86Aが立設されている。そして、リールハブ82は、下円筒部86A及び上円筒部84Aの外径寸法よりも若干大きい内径寸法を有しており、下円筒部86A及び上円筒部84Aと非接触状態で(下円筒部86A及び上円筒部84Aの外周面とリールハブ82の内周面との間に所定の隙間が形成される状態で)外挿可能になっている。
また、リールハブ82の長さは、下円筒部86Aの長さと上円筒部84Aの長さを合わせた長さとほぼ同一とされており、下円筒部86Aの上端面中央部(又は上円筒部84Aの下端面中央部)には、その周方向に沿って、断面が三角形状の溶着リブ(図示省略)が突設されている。また更に、下フランジ86の下円筒部86Aの外側には、所定長さ(幅を含む)及び所定高さのリブ(係合部:図示省略)が、同軸的かつ断続的に少なくとも3個、ほぼ等間隔に突設されており、リールハブ82の下端面の中央部には、そのリブが、リールハブ82の周方向には隙間が殆ど無く、リールハブ82の半径方向には所定の隙間が有る状態で挿入可能な所定長さ(幅を含む)及び所定深さの係合溝(被係合部:図示省略)が、リールハブ82の周方向に沿って断続的に少なくとも3個、対向するリブと同間隔に形成されている。
したがって、下フランジ86の下円筒部86Aへリールハブ82を外挿し、リールハブ82の係合溝を下フランジ86のリブに係合させて、下フランジ86に対してリールハブ82を位置決めし(センタリングし)、上フランジ84の上円筒部84Aをリールハブ82内に挿入して、その上円筒部84Aの下端面を下円筒部86Aの上端面に当接させ、この状態で、超音波を発振させて、溶着リブを溶融することにより、上円筒部84Aが下円筒部86Aに溶着される構成である。
つまり、これにより、上フランジ84、下フランジ86及びリールハブ82が、同軸的に配置された状態で(同軸を維持した状態で)組み立てられ、リールハブ82が上下フランジ84、86によって保持されるとともに、リールハブ82が上下フランジ84、86に対して相対回転不能とされる(周方向に相対的に移動不能とされる)構成である。そして、リールハブ82と上下フランジ84、86とが相互に変形の影響を受けない構成になっている。
すなわち、このような構成のマシンリール80では、係合溝とリブとの間に、リールハブ82の半径方向に所定の隙間が形成され、下円筒部86A及び上円筒部84Aの外周面と、リールハブ82の内周面との間に所定の隙間が形成されている(非接触とされている)ので、リールハブ82或いは上下フランジ84、86の変形が相互に連動・影響することがない。
なお、本実施形態では、上フランジ84に円筒状の上円筒部84Aを垂設するとともに、下フランジ86に円筒状の下円筒部86Aを立設して、それらを溶着・連結し、リールハブ82を上フランジ84と下フランジ86とで保持する構成にしたが、上フランジ84又は下フランジ86のどちらか一方に、リールハブ82と略同じ高さとされ、リールハブ82の内側に配置される連結部材(図示省略)を設け、その連結部材を直接下フランジ86又は上フランジ84に連結して、リールハブ82を上フランジ84と下フランジ86とで保持する構成にしてもよいことは、リール20と同様である。
また、リールハブ82の外周面は、側断面視にて上フランジ84側の半径の方が下フランジ86側の半径よりも大きく形成されており、リールハブ82の上フランジ84側と下フランジ86側の半径差ΔRが5μm〜60μm(記録テープTの幅に対するリールハブ82の上フランジ84側と下フランジ86側の半径差ΔRの比が0.00039〜0.00474)の範囲とされている。これらのこともリール20と同様である。
また、リールハブ82は、その外形において、上フランジ84側と下フランジ86側とで半径が異なっていればよいため、リールハブ82の外周面が側面視にて直線で結ばれるテーパー形状でなくてもよい。つまり、リールハブ82の外周面に微細な凹凸があってもよいし、リールハブ82の外周面が側面視にて、曲線で結ばれる形状であってもよい。更に、リールハブ82の外周面が側面視にて屈曲していてもよく、また、その一部がリールハブ82の軸線と平行になっていてもよい。
更に、上フランジ84と下フランジ86の互いに対向する面は、外方側(外周縁側)に向かうに従って徐々にそのフランジ間隔が増加するようなテーパー面84B、86Bとされており(図6参照)、その上フランジ84及び下フランジ86によって、リールハブ82に巻回された記録テープTの幅方向の変動幅が規制されるようになっている。これらのこともリール20と同様である。
また、リールハブ82の剛性を高めることが望ましいこともリール20の場合と同様である。すなわち、リールハブ82の材質は、合成樹脂(プラスチック)に限定されるものではなく、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属でもよく、更には、アルミニウム製やステンレス製の金属リング(図示省略)を、インサート成形や圧入等により、合成樹脂製(プラスチック製)のリールハブ82の内周面側又はリールハブ82内に、一体的に設ける構成にしてもよい。
ところで、マシンリール80のリールハブ82には、図7で示すように、リーダーピン30を把持し、平面視にて弓形状を成すリーダーブロック85がリールハブ82に対して着脱可能(収納可能)に設けられている。このリーダーブロック85が外れた状態で露出するリールハブ82のフラット面82Aの高さ方向(リールハブ82の軸方向)には、リーダーブロック85の一端部に取り付けられたリーダーテープ87を許容するスリット部82Bが形成されている。
そして、リーダーブロック85のフラット面85Bがリールハブ82のフラット面82Aに対面した状態で、リーダーブロック85はリールハブ82に装着され、この状態でリーダーブロック85はリールハブ82の外周面(巻取面)の一部を構成する。ここで、リーダーブロック85の円弧面(巻取面)85C側を、リールハブ82の外周面と同様の形状とする必要がある。
すなわち、リーダーブロック85はリールハブ82に装着された状態で、リールハブ82の巻取面の一部を構成するため、リーダーブロック85の円弧面85Cとリールハブ82の外周面との間で段差が生じた場合、リールハブ82に記録テープTを巻回したときに、この段差により、いわゆる「写り」が発生し、その部分でドロップアウトが生じたりエラーとなったりする可能性が大きくなる。
そのため、リーダーブロック85の円弧面85C側をリールハブ82の外周面と同様の形状とすることで、リーダーブロック85がリールハブ82に装着された状態で、リーダーブロック85の円弧面85Cとリールハブ82の外周面とが略面一となるようにし、リールハブ82の外周面の全体に渡って段差が生じないようにしている。
また、ドライブ装置70には、複数のテープガイド72、74、76、78が配設されている(ここでは、テープガイドを4つ配設している)。このテープガイド72〜78は、円筒状のハブ72C〜78Cと、そのハブ72C〜78Cの上側に形成されるフランジ72A〜78Aと、下側に形成されるフランジ72B〜78Bとを有しており、ドライブ装置70内に装填された記録テープカートリッジ10から引き出された記録テープTの上下方向(ハブ72C〜78Cの軸方向)の位置を規制するようになっている。そして、テープガイド74とテープガイド76の間には、記録再生ヘッド88が配設されており、その記録再生ヘッド88により、記録テープTに対して情報の記録や再生が行われるようになっている。
以上のような構成の記録テープカートリッジ10及びドライブ装置70において、次に、その作用について説明する。上記構成の記録テープカートリッジ10では、ドライブ装置70に装填しない不使用時(保管時や運搬時等)には、開口18がドア50によって閉塞されている。そして、記録テープTを使用する際には、前壁12Aを先頭にして記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿って、ドライブ装置70内へ装填する。
すると、記録テープカートリッジ10は図示しないバケット内に挿入され、そのバケット(ドライブ装置70側)に設けられた開閉部材が、ドア50の凸部56に係合する。そして、この状態で、記録テープカートリッジ10が更に矢印A方向へ移動すると、開閉部材が凸部56をコイルバネ58の付勢力に抗しつつ相対的に後方へ移動させる。すると、その凸部56が突設されているドア50は、右壁12Bに沿って溝部64内を後側へ摺動し、開口18を開放する。
こうして、記録テープカートリッジ10がドライブ装置70(バケット)に所定深さ装填され、開口18が完全に開放されると、記録テープカートリッジ10を収容したバケットが所定高さ下降し、ドライブ装置70の位置決め部材(図示省略)が、下ケース16に形成された位置決め用の穴部(図示省略)に相対的に挿入される。これにより、記録テープカートリッジ10がドライブ装置70内における所定位置に正確に位置決めされ、ドア50のそれ以上の摺動(後方への移動)が規制される。
また、この記録テープカートリッジ10(バケット)の下降動作によって、駆動ギアが相対的にギア開口40から進入し、リールギア44と噛合するとともにリール20を所定高さまで上昇させる(図6参照)。そして、駆動ギアとリールギア44とが完全に噛合した状態で、リールプレート46が、駆動ギアの内側に設けられた環状マグネットの磁力によって吸着・保持されることにより、リール20は、駆動ギアに対するリールギア44の噛合が維持されつつ、ケース12内で、そのケース12に対して相対回転可能となるロック解除状態とされる。
一方、開放された開口18からは、ドライブ装置70側に設けられたリーダーブロック85(図7(A)参照)がケース12内に進入し、ピン保持部36に位置決め保持されたリーダーピン30を把持して引き出す。なお、このとき、記録テープカートリッジ10はドライブ装置70内において正確に位置決めされているので、リーダーブロック85は確実にリーダーピン30の環状溝32にそのフック85Aを係止させることができる。また、リール20は、その回転ロック状態が解除されているので、リーダーピン30の引出動作に伴って回転できる。
こうして、開口18から引き出されたリーダーピン30を把持したリーダーブロック85は、図7(B)で示すように、マシンリール80が回転することによって、リールハブ82の一部を構成するように、そのリールハブ82に取り付けられる(収容される)。そして、そのマシンリール80とリール20とを同期して回転駆動することにより、記録テープTは、マシンリール80に巻き取られつつ順次ケース12から引き出される。
また、このとき、図5、図6で示すように、ケース12内から引き出された記録テープTは、最も記録テープカートリッジ10に近接配置されたテープガイド72に摺接する。このテープガイド72は、回転自在に支持され、その高さ位置が中央或いは上下どちらか一方の位置、例えば下位置に偏在するように組み付けられている。
したがって、テープガイド72に摺接した記録テープTは、そのテープガイド72の上側のフランジ72Aによって、上端のエッジが規制された状態で走行し、次に、回転自在に支持されたテープガイド74に摺接する。このテープガイド74は、その幅方向(高さ方向)の中心位置が、リールハブ22の幅方向(高さ方向)の中心位置よりも上位置に偏在されるように組み付けられ、その下側のフランジ74Bによって、記録テープTの下端のエッジを規制するようになっている。
そして、テープガイド74によって位置規制された記録テープTは、次に、回転自在に支持されたテープガイド76に摺接する。なお、このテープガイド76に摺接する前に、記録テープTは記録再生ヘッド88に摺接する。テープガイド76は、テープガイド74とは逆に、即ちテープガイド72と同様に、その幅方向(高さ方向)の中心位置が、リールハブ22の幅方向(高さ方向)の中心位置よりも下位置に偏在されるように組み付けられ、その上側のフランジ76Aによって、記録テープTの上端のエッジを規制するようになっている。
そして、テープガイド76によって位置規制された記録テープTは、最後に、回転自在に支持されたテープガイド78に摺接する。テープガイド78は、テープガイド74と同様に、その幅方向(高さ方向)の中心位置が、リールハブ22の幅方向(高さ方向)の中心位置よりも上位置に偏在されるように組み付けられ、その下側のフランジ78Bによって、記録テープTの下端のエッジを規制するようになっている。
このように、ドライブ装置70内の各テープガイド72〜78の高さ位置(幅方向の位置)が、記録テープTのテープパス経路に沿って交互に異なっていると、記録テープTの幅方向(上下方向)の位置規制を好適に行える利点がある。なお、各テープガイド72〜78は、それぞれ回転自在に支持されているので、記録テープTのエッジが各テープガイド72〜78によってダメージを受けることは少ない。
こうして、記録テープTが、テープガイド72〜78によって幅方向(上下方向)の位置が規制されつつ、リーダーピン30がマシンリール80のリールハブ82に収容されたら、そのマシンリール80とリール20とが同期して回転駆動することにより、記録テープTは、マシンリール80に巻き取られつつ順次ケース12から引き出され、所定のテープガイド74、76間に配設された記録再生ヘッド88によって情報の記録や再生が行われる。
ここで、記録再生ヘッド88は、例えば図示しないアクチュエーターによって、上下方向(高さ方向)に移動可能に支持され、記録テープT上に設けられたサーボ信号S(図8参照)に追従して、記録テープTの幅方向(リールハブ22、82の軸方向)に移動可能になっている。
このサーボ信号Sは、例えば図8で示すように、4本(又は5本等でもよい)平行に並べられたパターンPが略「ハ」字状とされて1組とされ、その略「ハ」字状とされた1組のサーボ信号Sが、記録テープTの上下端部近傍に、その拡開側を外側にして複数組1列に配設されて構成されている。
このようなサーボ信号Sによれば、1組のサーボ信号S間(図8においてWで示す)の検知時間(距離)が長くなったときには、走行している記録テープTの位置が記録再生ヘッド88に対して、上下どちらかにずれていることが判るので、それによって、記録再生ヘッド88の上下方向(高さ方向)の位置を調整することができる。
本実施形態のリール20及びマシンリール80は、共にそのリールハブ22、82の外周面の上フランジ24、84側の半径が、下フランジ26、86側の半径よりも大径とされ、そのリールハブ22、82に+湾曲とされた記録テープTが巻回されるので、後述するように、記録テープTは、リールハブ22、82の下フランジ26、86側端部に適度に寄り、その走行基準は、リールハブ22、82の下フランジ26、86側(小径側)とされる。
つまり、これにより、記録テープTの上下方向(リール20及びマシンリール80の軸方向)への位置変動が好適に抑制され、記録テープTの走行位置を安定させることができる。したがって、記録テープTの下フランジ26、86側のエッジを、記録テープTの走行時におけるサーボトラッキング制御の基準とすることにより、サーボ信号Sの読取エラー(サーボトラッキングエラー)やデータ信号(情報)の記録・再生エラーの発生を低減することができる。
こうして、各テープガイド72〜78、リール20及びマシンリール80のリールハブ22、82の形状、記録テープTの湾曲の向きによって、その高さ位置(幅方向の位置)が規制されつつ記録再生ヘッド88に摺接することで、情報の記録や再生がエラー無く終了した記録テープTは、駆動ギア及びマシンリール80が逆回転することによってリール20に巻き戻される。
記録テープTがリール20に最後まで巻き戻されて、リーダーピン30がピン保持部36に保持されると、記録テープカートリッジ10を収容しているバケットは所定高さ上昇し、位置決め部材が位置決め用の穴部から抜き出されるとともに、駆動ギアがギア開口40から抜き出され、リールギア44に対する駆動ギアの噛合が解除される。そして、リール20が、記録テープカートリッジ10内において元の高さ位置まで下降する。
その後、記録テープカートリッジ10は、図示しないイジェクト機構によって矢印A方向とは反対方向に移動されるが、この移動に伴って、ドア50はコイルバネ58の付勢力によって開口18の閉塞方向へ摺動し、開口18を完全に閉塞する(初期状態に復帰する)。こうして、開口18が閉塞された記録テープカートリッジ10は、ドライブ装置70(バケット)内から完全に排出される。
次に、上記したリール20及びマシンリール80の作用・効果について、更に詳細に説明する。なお、マシンリール80の作用・効果は、リール20の作用・効果と略同一であるため、以下、主にリール20について説明し、マシンリール80については、適宜その説明を省略する。
図3、図4で示すように、このリール20は、上フランジ24に垂設された上円筒部24Aと下フランジ26に立設された下円筒部26Aとが溶着されるとともに、その上円筒部24A及び下円筒部26Aの外側に、リールハブ22が挿嵌されて組み立てられている。そして、このリールハブ22の内周面と、上円筒部24A及び下円筒部26Aの外周面との間には所定の隙間が形成され、リールハブ22の上下フランジ24、26との相対回転を不能とする(周方向の相対的な移動を不能とする)回り止め用の係合溝22Aとリブ23との間にも、リールハブ22の半径方向に所定の隙間が形成されている。
したがって、このリールハブ22と上下フランジ24、26とは、互いにその変形による影響が及ばないようになっている。つまり、リールハブ22と上下フランジ24、26とは互いに独立した状態であり、例えば、記録テープTの巻き締め力Fにより、リールハブ22が変形したとしても、上フランジ24又は下フランジ26が、その変形の影響を受けて変形するおそれはない(図9(B)参照)。
また、このリール20のリールハブ22は、アルミニウムやステンレスなどの金属製とされるか、又は、そのような材質の金属リングがインサート成形や圧入等により、合成樹脂製のリールハブ22と一体化されて構成されている。つまり、このリールハブ22のヤング率(弾性率)は、70GPa以上(アルミニウムを使用した場合)、好ましくは190GPa以上(ステンレスを使用した場合)とされている。
ここで、一般に、記録テープTは、その湾曲の極性の違いにより、上フランジ24側へ寄せられたり、下フランジ26側へ寄せられて巻回される。図16には外周面の半径が上フランジ24側と下フランジ26側とでほぼ同一とされた従来のリールハブ(図示省略)に、−湾曲、+湾曲の記録テープTをそれぞれ巻回した巻き姿測定チャートの一例が示されている。なお、この図16では途中の巻き面の変動は省略している。
図16(A)で示すように、記録テープTの湾曲の向きを示す極性が−方向(−湾曲)の場合は、記録テープTは巻回されるにつれて、リールハブ22の軸方向に沿って上フランジ24側へ移動する。そして、図16(B)で示すように、記録テープTの湾曲の向きを示す極性が+方向(+湾曲)の場合は、記録テープTは巻回されるにつれて、リールハブ22の軸方向に沿って下フランジ26側へ移動する。このように、記録テープTは、その湾曲の極性の違いによって、移動する方向が変わる。
また、このリール20は、リールハブ22の外周面の上フランジ24側の半径が、下フランジ26側の半径よりも大きく形成されている。したがって、リールハブ22の軸線に対して略垂直な方向にテンション(張力)を加えて記録テープTを巻回すると、記録テープTに作用する面圧分布の片寄りによって、記録テープTはリールハブ22の小径側である下フランジ26側へ寄って巻回される。
よって、図9で示すように、このリールハブ22に巻回される記録テープTは、テープエッジの湾曲の向きを示す極性が+方向(+湾曲)とされている。つまり、記録テープTのテープエッジの湾曲の曲率半径の小さい側が下フランジ26側となるように、その記録テープTがリールハブ22に巻回されている。これにより、記録テープTを下フランジ26側に適度に寄せることができ、その巻き姿(巻き形状)を良好にできるとともに、記録テープTの走行基準をリールハブ22の下フランジ26側(小径側)にすることができる。
以下、このような構成とされたリール20に記録テープTを巻回したときに、その記録テープTがリールハブ22の小径側へ寄って巻回されること、即ち記録テープTの走行基準がリールハブ22の小径側とされること、及び巻き姿(巻き形状)が良好になることを実際の実験データを基に説明する。なお、説明の便宜上、リールハブ22の外周面の上フランジ24側の半径が、下フランジ26側の半径よりも大きく形成されている場合の半径差ΔRを「+」の値とし、その逆の場合(下フランジ26側の半径が、上フランジ24側の半径よりも大きく形成されている場合)の半径差ΔRを「−」の値として示す。
図17〜図19に、リールハブ22の材質が異なるリール20に、+湾曲(湾曲量ΔD=+0.86mm)の記録テープTをそれぞれ巻回した巻き姿測定チャートを示す。すなわち、図17はリールハブ22の材質が、グラスファイバー(GF)を10%添加したポリカーボネート(PC:ヤング率が70GPa未満)であり、リールハブ22の半径差ΔRが、ΔR=−0.003mm(−3μm)とされた(半径差ΔRが±0に近い)リール(図示省略)の巻き姿測定チャートである。
そして、図18はリールハブ22の材質が、アルミニウム(Al:ヤング率が70GPa以上)であり、リールハブ22の半径差ΔRが、ΔR=+0.040mm(+40μm)とされたリール20の巻き姿測定チャートであり、図19はリールハブ22の材質が、アルミニウム(Al:ヤング率が70GPa以上)であり、リールハブ22の半径差ΔRが、ΔR=−0.040mm(−40μm)とされたリール20の巻き姿測定チャートである。
この図17〜図19から、図18で示す巻き姿測定チャートが極めて良好であることが判る。つまり、リールハブ22の材質が、アルミニウム(Al:ヤング率が70GPa以上)であり、リールハブ22の半径差ΔRが、ΔR=+0.040mm(+40μm)とされたリール20に、湾曲量ΔDが、ΔD=+0.86mmの+湾曲の記録テープTを巻回したときに、良好な巻き姿(巻き形状)が得られている。
ここで更に、「リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔR」、即ち「記録テープTの幅(1/2インチ幅で略12.65mm)に対するリールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRの比」を変化させたときの「記録テープTの巻き姿の良否」及び「テープエッジの良否」についての評価を表1で示す。なお、この表1は、外周面の上フランジ24側の半径が、下フランジ26側の半径よりも大きいリールハブ22についてであり、よって、符号「+」は省略されている。
この表1の結果から判るように、記録テープTの幅に対して、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRが0.005mm(5μm)未満の場合には(記録テープTの幅に対するリールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRの比が0.00039未満の場合には)、巻き姿が良好でない。つまり、巻回される記録テープTをリールハブ22の小径側へ移動させるという効果が得られていないか、或いは測定の精度により、リールハブ22の形状を正確に把握できていないことも考えられる。
また、記録テープTの幅に対して、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRが0.060mm(60μm)より大きい場合には(記録テープTの幅に対するリールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRの比が0.00474より大きい場合には)、巻き姿が良好であるが、リールハブ22の近傍を起点とした半径方向への放射不良やテープエッジダメージが見られた。
つまり、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRが大き過ぎた場合には、記録テープTが下フランジ26側へ過剰に押し付けられて、テープエッジダメージを受け、いわゆる放射が発生したり、走行時に記録テープTが下フランジ26と干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象が発生するおそれがあることが判る。
このため、このリール20では、記録テープTの幅(1/2インチ幅で略12.65mm)に対して、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRを5μm〜60μmの範囲としている。つまり、記録テープTの幅に対するリールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRの比を0.00039〜0.00474の範囲としている。
また、記録テープTは、湾曲量ΔDが小さ過ぎる(0に近い)場合、その極性(巻回されるにつれて移動する方向)が定まらず、上下方向に位置変動して、巻き乱れが発生しやすくなり、巻き面は、いわゆるザラ巻きの状態となる。一方、記録テープTは、湾曲量ΔDが大き過ぎる場合で、かつ+湾曲の場合は、下フランジ26側へ過剰に押し付けられて、テープエッジダメージを受け、いわゆる放射が発生したり、走行時に記録テープTが下フランジ26と干渉して、更にテープエッジダメージを受けたり、その他にもシンチングなどの欠陥に発展する現象が発生したり、テープ走行位置が過剰に片側に寄ったりしてしまう。このため、適度な湾曲量ΔDに設定する必要がある。表2には、記録テープTの湾曲量ΔDとテープエッジの状態が示されている。
この表2の結果により、記録テープTは、湾曲量ΔDが0.15mm〜2.5mmの範囲では、テープエッジに問題が生じないことが判る。このため、本実施形態では、記録テープTの湾曲量ΔDを絶対値で、ΔD=0.15mm〜2.5mmとしている。これにより、記録テープTにおいて、適正で安定したテープ走行位置と巻き乱れの小さい状態を実現することができる。つまり、巻き乱れが抑制され、より整巻きに近い巻き面となる。
なお、記録テープTの湾曲量ΔDが絶対値で、ΔD=0.5mm〜2.0mmの範囲であれば、リールハブ22に記録テープTを巻回させたときに、テープエッジの下フランジ26側への寄り具合が適度となるので、より好ましい。すなわち、走行時における記録テープTのリールハブ22の軸方向への位置変動が少なくなって巻き乱れが抑制され、かつ下フランジ26側に沿った状態で整巻きされるので、記録テープTにおいて、テープエッジダメージが低減される。
したがって、記録テープTの湾曲量ΔDが0.5mm〜2.0mmのように小さい場合には(記録テープTのテープエッジの湾曲の曲率半径が大きい場合には)、記録テープTの幅に対して、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRが5μm〜60μm(記録テープTの幅に対するリールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRの比が0.00039〜0.00474)でも充分に機能する。
しかし、リール20の生産性や設計の自由度の観点から、記録テープTの湾曲量ΔDが2.5mmのように大きくされる場合もある(記録テープTのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さくされる場合もある)。この場合には、記録テープTの幅に対して、リールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRを7μm〜50μm(記録テープTの幅に対するリールハブ22の上フランジ24側と下フランジ26側の半径差ΔRの比を0.00055〜0.00400)の範囲とすることが好ましい。
この範囲であれば、記録テープTをリールハブ22に巻回させたときに、記録テープTがリールハブ22の下フランジ26側の内面に過剰に押し付けられたり、下フランジ26と干渉したりすることはなく、記録テープTのテープエッジの下フランジ26側への寄り具合が適度となる。つまり、記録テープTの湾曲量ΔDが2.5mmになっても、テープエッジダメージや異音などの走行不良現象を抑制することができるとともに、良好な巻き姿が得られる。
以上、説明したように、本実施形態に係るリール20では、リールハブ22或いは上下フランジ24、26の変形が相互に連動・影響しない(互いに独立した)構成とし、リールハブ22の上フランジ24側の半径を下フランジ26側の半径よりも大きくしたので、次の(1)、(2)のような作用を奏する。
(1)リールハブ22の軸線に対して略垂直な方向にテンション(張力)を加えて記録テープTをリールハブ22に巻回すると、記録テープTに作用する面圧分布の片寄りによって、記録テープTはリールハブ22の小径側である下フランジ26側へ寄って巻回される。
(2)記録テープTのテープエッジの湾曲の曲率半径が小さい側がリールハブ22の小径側となるように、記録テープTをリールハブ22に巻回すると、記録テープTが移動する方向は、リールハブ22の小径側である下フランジ26側となる。
つまり、本実施形態によれば、(1)、(2)の相乗効果により、記録テープTをリールハブ22の小径側である下フランジ26側に適度に寄せて巻回することができる。したがって、記録テープTのリールハブ22の軸方向への変動を抑制することができ、記録テープTの巻き乱れを抑制することができて、整巻き性を向上させることができる(巻き姿を良好にできる)。
これにより、リールハブ22に巻回された記録テープTの巻き面からの1枚又は複数枚飛び出しや段差の発生を抑制できるとともに、その1枚飛び出しした記録テープTが、輸送時や落下時、更にはハンドリング時等において衝撃を受けた際に、上フランジ24又は下フランジ26に当たって折れたり、テープエッジダメージを受けることによって発生する問題を低減することができる。
そして、ドライブ装置70内での記録テープTの走行時にも、記録テープTがリールハブ82の軸方向へ位置変動することを抑制できるので、テープ走行位置を安定させることができる。特に、リーダーブロック85を収容する機能を搭載するために形状が複雑になって高精度化し難いマシンリール80における記録テープTのリールハブ82の軸方向への変動を、リール20側でも抑制することができる。このため、高密度記録であっても、サーボ信号Sの読取エラー(サーボトラッキングエラー)やデータ信号の記録・再生エラーを低減することができ、いわゆるポジションエラーシグナル(位置誤差信号)やオフトラックの低減を期待することができる。
また、記録テープTの厚さが厚い場合には、記録テープTの剛性も増すため、テープエッジの強度が増し、上下フランジ24、26への押し付け・衝撃・摩擦・摩耗に対してもテープエッジダメージ等の問題が発生し難くなる。しかし、最近の記録テープTは、1カートリッジ当たりの記録容量を増やすために、その厚さが薄くされる傾向にあり、同じ幅の記録テープTの場合、同じテンションを加えてリール20(リールハブ22)に巻回した際に、記録テープTの幅方向に掛かる応力分布が変化する。
つまり、巻回される記録テープTの剛性が低下し、テープエッジ強度が低下して、1枚飛び出しによる折れ曲がりや、走行時におけるテープエッジダメージが、これまで以上に問題となる。これに対し、本実施形態のリール20は、記録テープTの位置変動を抑制することができるため、1枚飛び出し現象の飛び出し量や発生頻度自体を低減することができる。よって、厚さが薄くされた(例えば6.9μm以下とされた)記録テープTに対して有効となる。
また、この記録テープTの湾曲は、熱処理によって、その向きを変えることもできる。すなわち、リールハブ22の外周面がテーパー形状に形成されているリール(図示省略)に記録テープTを巻き取った状態で、適切な熱処理を行うことにより、クリープ現象による形状定着効果によって、一様な湾曲が付与され、良好な巻き癖をつけることができる。本実施形態では、+湾曲の記録テープTを用いたが、リールハブ22の外周面において、上フランジ24側の半径を下フランジ26側の半径をよりも小さくすれば、−湾曲の記録テープTを用いてもよい。この場合の走行基準は上フランジ24側となる。
図20、図21に、リールハブ22の材質が異なるリール20に、−湾曲(湾曲量ΔD=−0.15mm)の記録テープTをそれぞれ巻回した巻き姿測定チャートを示す。すなわち、図20はリールハブ22の材質が、グラスファイバー(GF)を10%添加したポリカーボネート(PC:ヤング率が70GPa未満)であり、リールハブ22の半径差ΔRが、ΔR=−0.003mm(−3μm)とされた(半径差ΔRが±0に近い)リール(図示省略)の巻き姿測定チャートである。
そして、図21はリールハブ22の材質が、アルミニウム(Al:ヤング率が70GPa以上)であり、リールハブ22の半径差ΔRが、ΔR=−0.040mmとされたリール20の巻き姿測定チャートである。この図20、図21から、リールハブ22の材質が、アルミニウム(Al:ヤング率が70GPa以上)であり、リールハブ22の半径差ΔRが、ΔR=−0.040mmとされた場合には、−湾曲(湾曲量ΔD=−0.15mm)の記録テープTを巻回すれば、巻き姿(巻き形状)が良好になることが判る。
また、本実施形態では、リール20を単一でケース12内に収容して構成される記録テープカートリッジ10に適用した実施例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、2つのリールをケース内に収容した2リールタイプの記録テープカセットに、本発明を適用してもよいことは言うまでもない。