JP2008231503A - アルミニウム合金材およびアルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のアルミニウム合金材は、心材C1の少なくとも片面にろう材Fを備えるアルミニウム合金ブレージングシートB31(またはB32)の心材C1として使用されるアルミニウム合金材であって、Cu:2.5質量%を超え、3.5質量%以下を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
[アルミニウム合金材]
本発明の第1実施形態に係るアルミニウム合金材は、アルミニウム合金ブレージングシートの心材として使用されるアルミニウム合金材であり、Cu:2.5質量%を超え、3.5質量%以下を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなる。
以下、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金材の添加元素の含有量を数値限定した理由について説明する。
Cuは、アルミニウム合金中で固溶・析出強化してその強度を向上させる。また、Cuの添加によって、高温経時でのアルミニウム合金材の強度低下は小さくなる。さらに、アルミニウム合金ブレージングシートの心材とした場合、Cuを添加することで心材の電位をろう材の電位よりも貴とすることができるので、ろう材が心材(アルミニウム合金材)を犠牲防食し、アルミニウム合金ブレージングシートの耐食性を向上させる。
Siは、アルミニウム合金中で固溶・析出強化してその強度を向上させる。Siの含有量が0.05質量%未満では、十分な強度向上効果が得られない。一方、Siの含有量が1.0質量%を超えると、前記したCuと合わせてアルミニウム合金材の融点がさらに低下する場合があるので、アルミニウム合金材がろう付時に溶融する恐れがある。従って、本発明の第2実施形態におけるSi含有量は0.05〜1.0質量%とする。
Feは、アルミニウム合金中で金属間化合物として晶出・析出して分散強化に寄与する。また、晶出・析出した金属間化合物は、再結晶の核となって再結晶を促進させるので、グレイン組織を微細にする効果を有し、アルミニウム合金材の成形加工性を向上させる。Feの含有量が0.05質量%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、Feの含有量が1.5質量%を超えると、金属間化合物の晶出・析出が増加してアルミニウム合金材の成形加工性を低下させる場合がある。従って、本発明の第2実施形態におけるFeの含有量は0.05〜1.5質量%とする。
Mnは、アルミニウム合金中で金属間化合物として晶出・析出して分散強化に寄与する。Mnの含有量が0.05質量%未満では、分散強化の効果が十分に得られない。一方、Mnの含有量が1.5質量%を超えると、粗大な晶出物の量が増加するのでアルミニウム合金材の成形加工性を低下させる場合がある。従って、本発明の第2実施形態におけるMnの含有量は0.05〜1.5質量%とする。
Mgは、前記したCu、Si、Mnと同様に、アルミニウム合金に添加することにより、アルミニウム合金中で固溶・析出強化してその強度を向上させる。特にSiとの同時添加においては、金属間化合物を生成・析出して析出強化に寄与する。Mgの含有量が0.05質量%未満では、これら効果が十分に得られない。一方、Mgの含有量が0.6質量%を超えると、非腐食性フラックスを用いた雰囲気下でのろう付において、ろう付性を阻害する場合がある。また、ろう付前の素材(アルミニウム合金材)の伸びが低下して成形加工性が低下する場合がある。従って、本発明の第2実施形態におけるMgの含有量は0.05〜0.6質量%とする。
Niは、アルミニウム合金中で金属間化合物として存在して分散強化に寄与する。Niの含有量が0.05質量%未満では、分散強化の効果が十分に得られない。一方、Niの含有量が1.5質量%を超えると、金属間化合物が増加するのでアルミニウム合金材の成形加工性を低下させる場合がある。従って、本発明の第2実施形態におけるNiの含有量は0.05〜1.5質量%とする。
Crは、アルミニウム合金中で微細な金属間化合物を生成して、その強度を向上させる。Crの含有量が0.05質量%未満では、強度向上の効果が十分に得られない。一方、Crの含有量が0.3質量%を超えると、粗大な金属間化合物が生成するのでアルミニウム合金材の成形加工性を低下させる場合がある。従って、本発明の第2実施形態におけるCrの含有量は0.05〜0.3質量%とする。
Tiは、アルミニウム合金中で微細な金属間化合物を生成して、その強度を向上させる。Tiの含有量が0.05質量%未満では、強度向上の効果が十分に得られない。一方、Tiの含有量が0.3質量%を超えると、粗大な金属間化合物が生成するのでアルミニウム合金材の成形加工性を低下させる場合がある。従って、本発明の第2実施形態におけるTiの含有量は0.05〜0.3質量%とする。
Zrは、アルミニウム合金中で微細な金属間化合物を生成して、その強度を向上させる。Zrの含有量が0.05質量%未満では、強度向上の効果が十分に得られない。一方、Zrの含有量が0.3質量%を超えると、粗大な金属間化合物が生成するのでアルミニウム合金材の成形加工性を低下させる場合がある。従って、本発明の第2実施形態におけるZrの含有量は0.05〜0.3質量%とする。
Vは、アルミニウム合金中で微細な金属間化合物を生成して、その強度を向上させる。Vの含有量が0.05質量%未満では、強度向上の効果が十分に得られない。一方、Vの含有量が0.3質量%を超えると、粗大な金属間化合物が生成するのでアルミニウム合金材の成形加工性を低下させる場合がある。従って、本発明の第2実施形態におけるVの含有量は0.05〜0.3質量%とする。
Snは、アルミニウム合金中で高温時におけるCuの析出を促進して強度向上に寄与する。Snの含有量が0.01質量%未満では、その効果が十分に得られない。一方、Snの含有量が0.1質量%を超えると、その効果が飽和する、すなわち、その効果がSnの含有量を0.1質量%とした場合と変化しないので、結果としてコストアップとなる。従って、本発明の第2実施形態におけるSnの含有量は0.01〜0.1質量%とする。
Cdは、Snと同様に、アルミニウム合金中で高温時におけるCuの析出を促進して強度向上に寄与する。Cdの含有量が0.01質量%未満では、その効果が十分に得られない。一方、Cdの含有量が0.1質量%を超えると、その効果が飽和するので、結果としてコストアップとなる。従って、本発明の第2実施形態におけるCdの含有量は0.01〜0.1質量%とする。
Inは、Sn、Cdと同様に、アルミニウム合金中で高温時におけるCuの析出を促進して強度向上に寄与する。Inの含有量が0.01質量%未満では、その効果が十分に得られない。一方、Inの含有量が0.1質量%を超えると、その効果が飽和するので、結果としてコストアップとなる。従って、本発明の第2実施形態におけるInの含有量は0.01〜0.1質量%とする。
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金材には、不可避的不純物として、本発明の第2実施形態に係るアルミニウム合金材の添加元素であるSi、Fe、Mn、Mg、Ni、Cr、Ti、Zr、V、Sn、Cd、Inを、前記したそれぞれの含有量の下限値未満含有していてもよい。これらの添加元素を、それぞれの含有量の下限値未満含有しても、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金材の性能を何ら妨げるものではない。なお、これらの添加元素の前記した効果を得るには、本発明で規定する含有量を特に含有させる必要がある。
次に、前記した本発明の実施形態に係るアルミニウム合金材を心材としたアルミニウム合金ブレージングシート(以下、ブレージングシートという)について、適宜図面を参照しながら説明する。図1(a)は心材の片面にろう材を有するブレージングシートを示す断面図であり、(b)は心材の両面にろう材を有するブレージングシートを示す断面図である。図2は心材の一方の片面にろう材を有し、他方の片面に犠牲陽極材を有するブレージングシートを示す断面図である。
また、図1(b)に示すように、ブレージングシートB32は、心材C1(または心材C2)の両面にアルミニウム合金からなるろう材F,Fを備えている。
ブレージングシートB31,B32,B4の心材C1は前記した第1実施形態に係るアルミニウム合金材であり、心材C2は前記した第2実施形態に係るアルミニウム合金材である。心材C1,C2の添加元素の含有量および含有量を数値限定した理由については前記したので説明を省略する。
ブレージングシートB31,B32,B4のろう材Fとしては、アルミニウム合金からなる公知のろう材を使用することができる。このようなアルミニウム合金としては、例えば、Al−Si系合金、Al−Si−Zn系合金、Al−Si−Mg(Bi)系合金等を挙げることができる。
ブレージングシートB4の犠牲陽極材S(以下、犠牲材という)としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる公知の犠牲材を使用することができる。なお、アルミニウム合金としては、例えば、Al−Zn系合金、Al−Zn−Mg系合金、そしてこれらにMn、Si等を含有した合金等が挙げられる。
まず、心材(アルミニウム合金材)用アルミニウム合金、ろう材用アルミニウム合金および犠牲材用アルミニウム合金をそれぞれ連続鋳造により、溶解、鋳造し、必要に応じて面削、均質化熱処理して、心材用鋳塊、ろう材用鋳塊および犠牲材用鋳塊を得る。さらに、ろう材用鋳塊および犠牲材用鋳塊については、それぞれ所定の厚さに熱間圧延または切断して、ろう材用アルミニウム合金板および犠牲材用アルミニウム合金板を得る。なお、必要に応じて、心材用鋳塊も所定の厚さに熱間圧延または切断して心材用アルミニウム合金板としてもよい。
さらに、ろう材用アルミニウム合金板と犠牲材用アルミニウム合金板の間に心材用鋳塊(または心材用アルミニウム合金板)を挟むように重ね合わせ、その後の工程を経ることで、図2に示すブレージングシートB4を製造することができる。
以上の製造方法は、本発明の実施形態に係るブレージングシート(またはアルミニウム合金材)を製造するための一例であり、必ずしもこの製造方法に限定されるものではない。
まず、表1に示す組成の心材用アルミニウム合金、ろう材用アルミニウム合金(Si:10質量%、Fe:0.2質量%を含有)および犠牲材用アルミニウム合金(Si:0.1質量%、Fe:0.2質量%、Mn:0.1質量%、Zn:2.0質量%を含有)を使用し、それぞれについて連続鋳塊により、溶解、鋳造した後、均質化熱処理および熱間圧延を実施して、心材用アルミニウム合金板、ろう材用アルミニウム合金板および犠牲材用アルミニウム合金板を得た。
各実施例および各比較例より、JIS Z2201に規定されている5号試験片をそれぞれ作製し、常温で引張試験機にて素材伸びを測定して、素材伸びが26%以上であるものを成形加工性が良好であると評価した。この結果を、表2および表3に示す。
各実施例および各比較例を、それぞれ幅100mm×長さ200mmの短冊状に切断して、市販の非腐食性フラックス(FL−7、森田化学工業株式会社)を5g/m2塗布し、乾燥後、長手方向が垂直方向となるように釣り下げ、窒素雰囲気中、590℃で2分間保持してろう付加熱を行った。
まず、表2に示すように、心材に含有されるCuの含有量が本発明(請求項1)で規定した範囲を満足する実施例1〜4は、200℃、300時間後(高温経時後)の200℃での高温経時強度が145MPa以上と高温経時強度に優れていた。また、素材伸びは26%以上で成形加工性も良好であった。
C1,C2 心材(アルミニウム合金材)
F ろう材
S 犠牲陽極材
Claims (4)
- 心材の少なくとも片面にろう材を備えるアルミニウム合金ブレージングシートの前記心材として使用されるアルミニウム合金材であって、
Cu:2.5質量%を超え、3.5質量%以下を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金材。 - 前記アルミニウム合金材が、Si:0.05〜1.0質量%、Fe:0.05〜1.5質量%、Mn:0.05〜1.5質量%、Mg:0.05〜0.6質量%、Ni:0.05〜1.5質量%、Cr:0.05〜0.3質量%、Ti:0.05〜0.3質量%、Zr:0.05〜0.3質量%、V:0.05〜0.3質量%、Sn:0.01〜0.1質量%、Cd:0.01〜0.1質量%、In:0.01〜0.1質量%のうち少なくとも1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金材。
- 請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金材を心材とし、その片面または両面にアルミニウム合金からなるろう材を備えることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
- 請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金材を心材とし、その一方の片面にアルミニウム合金からなるろう材を備え、他方の片面にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる犠牲陽極材を備えることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
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