JP5214899B2 - 熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

この本発明は、例えばカーエアコン用コンデンサ、エバポレータ、オイルクーラー、ラジエータなどの熱交換器、特に冷媒として二酸化炭素(CO2)で代表される自然冷媒を用いた冷凍サイクルを組みこんだ熱交換器に適用されるろう付け構造部材に最適なアルミニウム合金複合材に関するものである。
周知のようにアルミニウム合金は、軽量で熱伝導性に優れること、また適切な処理により高耐食性を実現できること、さらに複合材であるブレージングシートを利用したろう付けにより効率的な接合が可能であることなどから、自動車用を主とする熱交換器用の材料として重用されている。そして近年は、自動車の高性能化あるいは環境対応のため、その熱交換器についてより軽量でしかもより高い耐久性を有するように性能の向上が強く求められており、そこでこれらの要請に対応できるアルミニウム合金複合材料の開発が望まれている。
一般に、ろう付けに使用される熱交換器用ブレージングシート、すなわちアルミニウム合金複合材の芯材としては、Al−Mn系合金が使用され、ろう材としては、Al−Si系合金が使用され、さらに腐食環境となる箇所には、犠牲防食材として、Al−Zn系合金もしくは、Al−Si−Zn系合金が使用されている。
近年の自動車用熱交換器の軽量・薄肉化の要求に応えつつも強度を向上させる方法としては、熱交換器用アルミニウム合金複合材の芯材に用いるアルミニウム合金に、材料強度の向上に寄与する元素、すなわち強化元素を添加して、アルミニウム合金の強度を高める試みがなされている。ここで、アルミニウム合金における強化元素としては、Cu、Mn、Si、Fe、Ti等、種々のものがあるが、簡単に強化するための元素としては、固溶強化による強度向上に寄与するCuがある。そこで、熱交換器用のアルミニウム合金複合材の芯材として従来よりもCuを多量に添加するものを用いる試みがなされている(特許文献1)。
またアルミニウム合金芯材におけるCuの添加は、アルミニウムの電位を貴化させるため、犠牲防食材との電位差を容易に大きくすることができ、そのため耐食性向上のために芯材にCuを添加することもある。
特開平11−343531号公報
前述のように熱交換器用アルミニウム合金複合材において、その芯材にCuを多量に添加した場合、ろう付け加熱後の冷却過程、および熱交換器としての運転時の熱履歴によって、粒界にAl−Cu系金属間化合物が析出し、粒界腐食が発生する危険性がある。粒界腐食は、アルミニウム合金の一般的な腐食形態である孔食と比較し、腐食の進行速度が極めて速く、そのため熱交換器用アルミニウム合金としては、粒界腐食が発生しない材料が要求されるが、Cuを添加して芯材強度を高めようとする従来の試みは、耐食性、特に粒界腐食の点で問題が生じざるを得なかったのである。
さらに、近年の二酸化炭素を冷媒とするエアコン装置では、フロンを用いた場合よりも作動圧力が高く、圧縮したときの冷媒温度も高くなる。例えばコンプレッサの下流側において圧縮された二酸化炭素冷媒を冷却するためのガスクーラーでは、入口の冷媒温度が130〜200℃もの高温となることがある。したがって、二酸化炭素を冷媒とする場合には、フロンを冷媒とする場合よりも高温高圧での耐久性に優れていることが要求されるが、この点でも従来の熱交換器用アルミニウム合金複合材では不充分であった。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、熱交換器のろう付け構造部材として使用されるアルミニウム合金複合材として、高い耐食性および高い耐圧強度を兼ね備えたアルミニウム合金複合材を提供することを目的とするものである。
前述のような課題を解決すべく、本発明者らがアルミニウム合金複合材の耐食性および強度と、複合材製造時における熱履歴および合金成分組成との関係について詳細に実験・検討を重ねた結果、芯材合金へのSi、Fe、Mn、Cu、Tiの添加量を適切に調整するとともに、複合材製造時における熱履歴を適切に規制して、Al−Mn系金属間化合物の分布状態を適切に調整することによって、充分な耐食性を確保しつつ、高い耐圧強度を達成できることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
すなわち請求項1の発明の熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合は、アルミニウム合金芯材の少なくとも片面にアルミニウム合金ろう材を積層し、熱間圧延により接合してなる熱交換器用アルミニウム合金複合材において、前記アルミニウム合金芯材として、Mn:0.5〜1.8%、Si:0.3〜1.0%、Ti:0.05〜0.25%を含有し、かつFe:0.4%以下、Cu:0.05%未満に規制され、残部がAlおよび不可避不純物よりなるアルミニウム合金が用いられ、かつ片面のろう材としてAl−Si−Zn合金ろう材が用いられ、しかも600℃、3分の加熱を施した後において芯材中に存在する円相当径0.4μm以上のAl−Mn系金属間化合物が10個/mm以下となる組織を有することを特徴とするものである。
また請求項2の発明の熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合材は、アルミニウム合金芯材の少なくとも片面にアルミニウム合金ろう材を積層し、熱間圧延により接合してなる熱交換器用アルミニウム合金複合材において、前記アルミニウム合金芯材として、Mn:0.5〜1.8%、Si:0.3〜1.0%、Ti:0.05〜0.25%、Cu:0.05〜0.20%未満を含有し、かつFe:0.4%以下に規制され、残部がAlおよび不可避不純物よりなるアルミニウム合金が用いられ、かつ片面のろう材としてAl−Si−Zn合金ろう材が用いられ、しかも600℃、3分の加熱を施した後において芯材中に存在する円相当径0.4μm以上のAl−Mn系金属間化合物が10個/mm以下となる組織を有することを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明の熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合材の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合材を製造する方法において、請求項1もしくは請求項2に記載の成分組成のアルミニウム合金からなる芯材の少なくとも片面にろう材を積層して熱間圧延し、さらに冷間圧延を施すにあたり、熱間圧延開始直前までに、芯材が450℃以上、520℃未満の範囲内の温度に曝される加熱処理を受け、かつその加熱処理が次の(1)式を満たす条件で行われることを特徴とするものである。
X<1 ・・・(1)
ただし、
X={(t/45)+(t/27)+(t/17)+(t/10)+(t/6.1)+(t/2.5)+(t/1.0)}×[芯材中のMn含有量(mass%)]
ここで、
:加熱処理中に芯材温度が450℃以上、460℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が460℃以上、470℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が470℃以上、480℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が480℃以上、490℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が490℃以上、500℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が500℃以上、510℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が510℃以上、520℃未満の範囲内にある時間(h)
この発明の熱交換器用アルミニウム合金複合材は、腐食環境下でも極めて良好な耐食性を示すとそもに、高い耐圧強度を示すことができ、したがって熱交換器のろう付け構造部材に使用すれば、薄肉化しても充分な耐久性を示すことができ、過酷な腐食環境下にさらされる自動車等の熱交換器のろう付け構造部材向けの複合材として最適である。またこの発明の熱交換器用アルミニウム合金複合材の製造方法によれば、複合材製造過程における特に芯材の熱間圧延開始直前までの熱履歴を適切に制御することによって、上述のような優れた性能を有する熱交換器用アルミニウム合金複合材を、確実かつ安定して製造することができる。
この発明の熱交換器用アルミニウム合金の複合材の基本的な構成としては、アルミニウム合金芯材の少なくとも一方の面、すなわち片面もしくは両面にろう材を配した構成とされる。そして芯材のアルミニウム合金としては、基本的には後述するようなAl−Mn−Si系合金を用い、またろう材のうち、片面側のもののアルミニウムろう合金としては、犠牲効果を与えるためにAl−Si−Zn系合金を用いる。
このようなアルミニウム合金複合材の製造にあたっては、後に改めて説明するように、芯材合金、ろう材合金のそれぞれを鋳造して得られた各鋳塊に対し、必要に応じて面削や均質化処理を施し、芯材およびろう材を重ね合わせ、熱間圧延前予備加熱を経て熱間圧延を施し、その後、必要に応じて中間焼鈍を挟みながら最終板厚まで冷間圧延するのが通常である。
上述のような複合材製造過程において、Al−Mn−Si系合金からなる芯材中では、鋳造時に過飽和に固溶したSiおよびMnが、その後の製造工程での加熱(代表的には均質化処理および熱間圧延前予備加熱)によってAl−Mn系金属間化合物として析出および成長する。この複合材がブレージングシートとしてろう付けに使用されれば、改めて600℃程度の加熱を受けるため、芯材中のAl−Mn系金属間化合物粒子のうち微細なものはろう付け加熱時に再固溶する。しかしながら、複合材製造時において不適切な加熱を受けて粗大に成長したAl−Mn系金属間化合物粒子は、最終的にろう付け時に加熱を受けても、充分に再固溶せずに大きいまま残り、そのAl−Mn系金属間化合物が熱交換器製品としての使用時にカソードサイトして作用するため、製品の耐食性を阻害する。また成長したAl−Mn系金属間化合物粒子とAlマトリックスとの界面には、ろう付け後の冷却中やその後の熱交換器としての使用時の熱サイクル中に受ける加熱によりAl−Cu系金属間化合物が優先析出する傾向がある。ここで、Al−Mn系金属間化合物は結晶粒界にも多数存在するのが通常であり、そのためAl−Cu系金属間化合物の粒界析出が促進されてしまう。このような粒界析出が生じれば、材料の粒界腐食の原因となるから、この点からも、成長したAl−Mn系金属間化合物粒子が耐食性に悪影響を及ぼすこととなる。
そこでこの発明では、複合材製造時に芯材が受ける熱履歴を厳密に制御することによって、粗大なAl−Mn系金属間化合物を少なくし、これによって耐食性を向上させることとしている。また、複合材製造時の芯材熱履歴を適切に制御することによって、ろう付け加熱後にAl−Mn系金属間化合物が微細に析出するようにし、これによりろう付け加熱後の強度を増加させる効果をも得ることとしている。
すなわちこの発明では、耐食性および強度を向上させるために、熱交換器用複合材における芯材の合金成分組成を適切に調整するとともに、その成分組成の芯材合金が最適な組織となるように、芯材が複合材製造過程で受ける熱履歴を厳密に規定している。
そこで先ずこの発明における芯材合金の成分限定理由について説明する。
Mn:
この発明の熱交換器用複合材の芯材合金のMn量は、0.5〜1.8%の範囲内とする。すなわち、MnはAl−Mn系金属間化合物として晶出または析出して、ろう付け後の強度の向上に寄与し、またSiと共存することにより、Al−Mn系の金属間化合物を生成して強度を向上させる元素である。またAl−Mn系金属間化合物は、Feを取り込むため、Feによる耐食性阻害効果を抑制する働きもあり、さらにMnの添加は、アルミニウム合金の電位を貴にするため、複合材をチューブとしてその外面にフィンを設ける場合において、チューブを構成する複合材の芯材合金としてMnを添加しておけば、フィンとの電位差を大きくして、外部耐食性を向上させることができる。これらの効果を確実に得るためには、0.5%以上のMnを添加する必要があり、好ましくは1.0%以上のMnを添加する。但しMn量が1.8%を越えれば、巨大な金属間化合物が晶出して、製造性を阻害するおそれがあり、したがって、芯材合金におけるMn量の上限は1.8%とした。
Si:
この発明の熱交換器用複合材における芯材合金のSi量は0.3〜1.0%の範囲内とする。すなわちSiは、マトリックスに固溶したり、またAl−Mn系金属間化合物を生成したりすることによって、ろう付け後の強度を向上させる元素であり、さらにSiの添加は、アルミニウム合金の電位を貴にするため、複合材をチューブとしてその外面にフィンを設ける場合において、チューブの芯材合金としてSiを添加しておけば、フィンとの電位差を大きくして、外部耐食性を向上させることができる。これらのSi添加の効果を得るためには、0.3%以上のSiの含有が必要であり、より好ましくは0.6%以上のSi量とする。一方、芯材に過剰にSiが含有されれば、単独で晶出したSiにより耐食性を低下させるおそれがあるとともに、合金の融点を低下させて、ろう付け時に材料の溶融を招いてしまうおそれがある。このような過剰なSiの含有による悪影響を回避するために、Si量の上限は1.0%とする必要がある。
Ti:
この発明の熱交換器用複合材の芯材合金のTi量は0.05〜0.25%の範囲内とする。Tiは、耐食性、特に耐孔食性の向上に寄与する。すなわちアルミニウム合金中に添加されたTiは、その濃度の高い領域と濃度の低い領域とに分かれ、それらが板厚方向に交互に積層状に分布し、Ti濃度の低い領域がTi濃度の高い領域よりも優先的に腐食することにより、腐食形態が層状となり、その結果板厚方向への腐食の進行が妨げられ、耐孔食性が向上する。このような耐孔食性向上の効果を充分に得るためには、0.05%以上のTiが必要である。一方、Ti添加量が0.25%を越えれば、鋳造時に粗大な化合物が生成されて製造性を阻害するおそれがあり、したがって、芯材合金のTi量の上限は0.25%とした。なおTi添加には鋳造組織を微細に安定化する効果もあるが、この効果をさらに高めるため、芯材合金にTiと併せて0.02%以下のBを添加することは許容される。
Fe:
この発明の熱交換器用複合材の芯材としては、Feは、不純物として0.4%以下に規制される。すなわちFeは通常のアルミニウム合金において不可避的に含有されるのが通常であるが、Feが過剰に含有されれば、Feを含む金属間化合物が表面に晶出して腐食速度を速めてしまう。このような過剰なFeの含有による悪影響を回避するためには、不純物としてのFe量を0.4%以下に制限する必要がある。
Cu:
請求項1の発明の熱交換器用複合材においては、その芯材合金中のCuを不純物として0.05%未満に制限し、また請求項2の発明の熱交換器用複合材においては、その芯材合金中にCuを微量、すなわち0.05%以上、0.20%未満の範囲内で含有するものとする。すなわちCuは、通常マトリックス中に固溶してろう付け後の強度を向上させ、さらに材料の電位を貴にするところから、複合材をチューブとしてその外面にフィン材を設ける場合においてフィンとチューブとの電位差を大きくし、これにより外部耐食性を向上させるに効果がある。しかしながらCuを過剰に添加した場合には、ろう付け加熱後の冷却過程および熱交換器としての使用時における熱サイクル中の熱履歴によって、粒界にAl−Cu系金属間化合物が析出し、粒界腐食が発生する危険性がある。特に粒界に0.4μm以上に成長したAl−Mn系金属間化合物粒子が存在すれば、その周囲に選択的にAl−Cu系金属間化合物の析出が起こり、そのため粒界腐食が起こりやすくなる。請求項1で規定しているように、芯材合金のCuを不純物として0.05%未満に制限する場合には、複合材製造時の熱履歴に関わらず粒界腐食は発生しないが、含有されるCu量が極めて少ないため、通常の製造条件では、機械的強度が低くなるおそれがある。そこでこの発明では、後に改めて説明するように、450℃以上、520℃未満の範囲内の温度で式(1)を満たすように熱間圧延直前までの加熱を制御することによって、Mn、Siを含む金属間化合物の複合材製造工程での析出粗大化を防止し、ろう付け加熱後に固溶したMn、SiやAl−Mn系金属間化合物の微細な析出物が多くなるよう制御し、これらによる強度向上を可能としているのである。一方、請求項2で規定しているように芯材合金に0.05%以上、0.20%未満のCuを含有する場合には、450℃以上、520℃未満の範囲内の温度で式(1)を満たすように熱間圧延直前までの加熱を制御することによって、芯材中のAl−Mn系金属間化合物の析出・粒成長を少なくすることができる。そしてこのような制御により、粒界に存在するAl−Mn系金属間化合物粒子数を減少させて、粒界でのAl−Cu系金属間化合物の選択的析出を抑制し、粒界腐食の発生を抑制することが可能となるのである。
以上のような芯材合金についての各成分の残部は、Alおよび不可避不純物とすればよい。
次にろう材について説明すると、この発明の複合材では、芯材の片面もしくは両面にろう材が積層され、かつそのうちの一つ、すなわち芯材の片面に配されるろう材としては、犠牲防食機能を持たせるべく、Al−Si−Zn系合金が用いられる。通常、熱交換器ではAl−Si−Zn系合金が存在する側の面が腐食環境に曝される面となり、これが犠牲防食層として機能して耐食性に寄与する。Al−Si−Zn系合金ろう材の具体的成分組成は、特に限定するものではなく、熱交換器の複合材の犠牲防食ろう材として一般に用いているものを用いれば良いが、通常は、Si7〜12%、Zn1.0〜4.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物よりなるアルミニウム合金を使用することが好ましく、このような成分組成範囲内のAl−Si−Zn系合金であれば、より高い耐食性を得ることができる。ここで、Al−Si−Zn系合金ろう材の厚さとクラッド率は任意に設定できるが、クラッド率は通常は3〜15%が好適である。
なお、芯材の片面に犠牲防食効果を有するAl−Si−Zn系合金ろう材を配するとともに、反対側の面にもろう材を配して3層の複合材とする場合においては、Al−Si−Zn系合金ろう材と反対側の面のろう材としては、一般的なAl−Si系合金を用いることができ、その成分組成は特に限定されるものではないが、通常はSiを7〜12%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるものを用いることが望ましい。
さらにこの発明の複合材では、芯材の組織条件として、ろう付けに相当する600℃、3分の加熱を施した後において、その芯材中に存在する円相当径0.4μm以上のサイズのAl−Mn系金属間化合物の密度が、10個/mm以下となる組織を有することが必要である。このように芯材の組織条件を定めた理由は次の通りである。
既に述べたように、Al−Mn−Si系合金からなる芯材中では、鋳造時に過飽和に固溶したSiおよびMnが、その後の製造工程での加熱(代表的には均質化処理および熱間圧延前予備加熱)によってAl−Mn系金属間化合物として析出および成長し、この複合材がろう付けに使用されれば、改めて600℃程度の加熱を受けるため、芯材中のAl−Mn系金属間化合物粒子のうち微細なものはろう付け加熱時に再固溶する。しかしながら、複合材製造時において不適切な加熱を受けて粗大に成長したAl−Mn系金属間化合物粒子は、最終的にろう付け時に加熱を受けても、充分に再固溶せずに大きいまま残り、そのため熱交換器製品としての使用時にカソードサイトして作用して、製品の耐食性を阻害する。
ただし、Al−Mn系金属間化合物であってもその円相当径0.4μm未満の微細なAl−Mn系金属間化合物は、耐食性阻害の影響が小さい。また0.4μm以上のAl−Mn系金属間化合物であっても、105個/mm2以下の場合には、耐食性を阻害するおそれが少ない。一方、成長したAl−Mn系金属間化合物、特に結晶粒界に存在する大きなAl−Mn系金属間化合物は、Al−Cu系金属間化合物の粒界析出を助長し、結果的に粒界腐食の感受性を増すが、特に円相当径0.4μm以上の大きなAl−Mn系金属間化合物がAl−Cu系金属間化合物の析出の核となる傾向がある。そこで円相当径0.4μm以上のAl−Mn系金属間化合物の分布密度を105個/mm2以下に規制することによって、Al−Cu系金属間化合物の析出を抑制して、粒界腐食の発生を抑制することができるのである。
なおここで、上述のところから明らかなように、芯材中におけるAl−Mn系金属間化合物の存在状態は、ろう付け加熱の影響を大きく受けるから、この発明では代表的なろう付け加熱条件である600℃×3分間の加熱を施した後の状態でのAl−Mn系金属間化合物の分布条件を規定することとした。
次にこの発明の熱交換器用アルミニウム合金複合材の製造方法について説明する。
この発明のアルミニウム合金複合材を製造するにあたっては、まず構成要素となる芯材とろう材の素材を半連続鋳造法などの通常の方法に従って鋳造する。得られた鋳塊については、必要に応じて面削や予備熱間圧延などを施して厚さを調整し、芯材とろう材を重ね合わせた後、熱間圧延によりクラッド接合される。続いて、冷間圧延および必要に応じて中間焼鈍および/または最終焼鈍を含む工程で所定の板厚、所定の加工調質状態とする。ここで中間焼鈍および最終焼鈍はこの発明の方法では必須ではないが、中間焼鈍は、最終板厚まで歩留まり良く圧延するために必要な場合に行ない、また最終焼鈍は、後に改めて説明するように、熱交換器としての流路形状を形成するために圧下率50%以上の冷間加工をろう付け加熱前に行う場合に実施することが好ましい。
さらにこの発明の熱交換器用アルミニウム合金複合材の製造方法における具体的プロセス条件について説明する。
前述のようにこの発明の複合材を製造するにあたっては、芯材とろう材とを重ね合わせて熱間圧延によりクラッド接合することが必須であるが、熱間圧延までには均質化処理や熱間圧延前予備加熱で代表される加熱処理を受ける。ここで、均質化処理は、偏析を減じて鋳塊組織の均質性を増すための処理であり、芯材鋳塊に対しては一般に均質化処理を行なうことが多いが、このような均質化処理を行なう場合、芯材鋳塊単独で加熱して均質化処理を行ない、その後に鋳塊の面削を行ない、さらに面削後の芯材鋳塊を、ろう材厚さを予備熱間圧延などで調整したろう材と重ねた合わせて、熱間圧延のための予備加熱処理(熱間圧延開始温度を確保するために加熱する処理)を施すのが通常である。また芯材鋳塊の均質化処理を省略して、面削後の芯材鋳塊をろう材とともに熱間圧延予備加熱処理に供することも可能である。
そしてこのように均質化処理や熱間圧延前予備加熱で代表される熱間圧延開始直前までの加熱処理の条件として、この発明の製造方法では、450℃以上、520℃未満の温度に曝される加熱処理であって、かつ(1)式を満たすことを規定している。
X<1 ・・・(1)
ただし、
X={(t/45)+(t/27)+(t/17)+(t/10)+(t/6.1)+(t/2.5)+(t/1.0)}×[芯材中のMn含有量(mass%)]
であり、またt〜tは、それぞれ、
:加熱処理中に芯材温度が450℃以上、460℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が460℃以上、470℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が470℃以上、480℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が480℃以上、490℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が490℃以上、500℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が500℃以上、510℃未満の範囲内にある時間(h)
:加熱処理中に芯材温度が510℃以上、520℃未満の範囲内にある時間(h)
とする。
このように熱間圧延開始直前までの加熱処理の条件を定めた理由は次の通りである。
すなわち、熱間圧延開始直前までの加熱処理のうち、熱間圧延予備加熱が450℃の達しない温度で行われれば、熱間圧延によってろう材と芯材を良好に接合することが困難となり、また均質化処理も450℃未満では鋳塊均質化の効果が得られない。一方、均質化処理および熱間圧延前予備加熱を含め、加熱処理温度が520℃以上の高い温度の場合には、Al−Mn系の析出物の成長が速いため、適切な組織状態を得ることが困難となる。
さらに、式(1)は上記の450℃以上、520℃未満の範囲内を10℃ごとに複数の温度域に区分し、各温度域での加熱時間と芯材合金のMn含有量との関係を規定したものであるが、式(1)のXの値はAl−Mn系析出物の成長度と正の相関性を持ち、その値が1以上となれば、成長したAl−Mn系析出物粒子が増えて、耐食性に悪影響を与えるか、または強度不足を招く原因となって不適当となることが本発明者等の詳細な実験により判明している。また式(1)のt〜tの値は、それぞれ加熱処理中に450℃以上、520℃未満で10℃ごとに区切った各温度域に芯材がさらされる時間を示している。ここで、芯材が相対的に高温の温度域にある場合には、たとえその温度域に曝される時間が短時間であっても、成長したAl−Mn系析出物が増えて、Xの値が高くなるのに対し、相対的に低温の温度域では、同様の状態になるのに長時間を要する。また芯材合金中のMn含有量が多いほど、成長したAl−Mn系析出物の分布が増え、Xの値が大きくなる。そこで(1)式については、温度域を10℃ごとに区分して、各温度域における時間の影響をt〜tについての係数で補正するとともに、芯材合金中のMn含有量の影響をも考慮して定めたのである。
なお式(1)中のt〜tについての各係数は、前述のような観点および多数の実験結果をもとに決定したが、その一部を後述する実施例1において詳細に示す。
上記以外の工程条件、すなわち熱間圧延および冷間圧延の条件、さらには中間焼鈍や最終焼鈍を行なう場合の焼鈍条件は、特に限定されるものではなく、常法に従えば良いが、熱間圧延は、その熱間圧延中にAl−Mn系の析出物が成長しないように、450℃未満の温度で開始することが好ましいが、450℃以上の温度で熱間圧延を開始しても、熱間圧延時には材料は圧延ロールとの接触により急速に冷却されるのが通常であり、そのため熱間圧延中に450℃以上の温度にさらされる時間は極めて短く、したがって450℃以上の温度で熱間圧延を開始しても、実操業においてはAl−Mn系金属間化合物の析出に実質的に影響を与えないことが確認されている。また熱間圧延後の冷間圧延の前、あるいは冷間圧延の中途において中間焼鈍を行う場合には、Al−Mn系金属間化合物の析出に影響を与えないように、バッチ焼鈍の場合には420℃以下、CAL焼鈍の場合にはピーク温度500℃以下、10分以内とするのが望ましい。また冷間圧延後に最終焼鈍を行なう場合も同様の条件が望ましい。
以上のようにして得られたアルミニウム合金複合材を熱交換器に使用するにあたっては、そのままろう付けすることもあるが、通常は冷間加工によって冷媒もしくは熱媒体を流通させるための流路形状(例えば溝形状)を形成してチューブ素材とし、そのチューブ素材によって流路を有するチューブを形成するとともに、そのチューブにフィン材やヘッダー等の他部材と組み付けて、ろう付けにより接合し、ろう付け構造体とするのが通常である。
ここで、熱交換器に用いる流路形成用のチューブ素材は、溝形状などの複雑な形状を要するものであることが多く、肉厚が場所によって異なることが多い。具体的には、最も薄い部分で、板厚減少率(圧下率)が50%以上となるような冷間加工を加えてチューブ素材とすることがある。このようなチューブ素材を板から冷間加工するにあたっては、プレスや溝付きロール圧延機を用いて、厚さを薄くする部分から、厚さを厚くする部分へ材料の塑性加工を生じさせる加工を適用することが有効である。そしてこのようにして得られたチューブ材においては、特に肉厚の薄い部分(冷間加工度の大きい部分)では、粒界腐食が生じれば腐食の貫通が生じやすくなるから、肉厚の薄い部分では粒界腐食の発生を確実に抑制することが望まれる。しかるにこの発明による複合材の場合、板厚減少率(圧下率)50%以上の冷間加工が加えられた最も薄い部分でも、粒界腐食の発生を確実かつ安定して防止することが可能となる。またこのようにろう付け加熱前に板厚減少率(圧下率)で50%以上の冷間加工を加えておけば、ろう付けのための加熱過程において、ろう材の溶融前に芯材の再結晶が完了するため、より良好なろう付け性を得ることもできる。したがってこれらの観点から、この発明の熱交換器用アルミニウム合金複合材をろう付け加熱前にチューブ素材に冷間加工するにあたっては、最も薄い部分(最も板厚減少率が大きい部分)で50%以上の板厚減少率となるような加工を加えておくことが好ましい。
このように、50%以上の板厚減少率(圧下率)で冷間加工されて得られたチューブ素材では、その最薄部でも耐粒界腐食性に優れ、かつ優れたろう付け性を発揮することができる。
上述のようなチューブ素材を実際に熱交換器に用いるにあたっては、片面に溝形状を形成した全体として板状のチューブ素材を2枚重ね合わせたり、あるいは同様に片面に溝形状を形成した全体として板状のチューブ素材における溝形状を有する側の面に蓋材を重ねたり、さらには折り畳んだりして流路を形成し、ろう付け加熱することによって熱交換器の流路用として機能することになる。なおフィン材やヘッダー等などの他部材のろう付けも同時に行なうのが通常である。
ろう付けに際しての雰囲気や加熱温度、時間等の条件については特に限定されるものではなく、またろう付け方法自体も特に限定されず、例えば従来からアルミニウム合金のろう付けに適用されている真空ろう付け法、ノコロックスろう付け法等を適宜適用することができる。なお一般的なろう付け加熱条件としては、600℃×3分間の条件が代表的であり、そこでこの発明において規定するろう付け後のAl−Mn系金属間化合物の分散状態の指標として、600℃×3分間加熱後の状態で規定した。
以上のようにして得られた熱交換器は、高耐圧特性を有しており、しかも良好な耐食性を有しているから、例えば厳しい腐食環境下で使用される自動車等においても、良好な耐久性を発揮することができる。
以下、実施例に基づいて、この発明をさらに詳細に説明する。なお以下の実施例は飽くまで説明のためのものであり、この発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものでないことはもちろんである。
通常の半連続鋳造により表1に示すC1〜C12、S1、S2の各合金のスラブを鋳造した。これらのうち、C1〜C12は複合材の芯材となる合金であり、そのうちC1〜C3がこの発明で規定する成分組成範囲内の合金である。またS1、S2は、複合材のろう材となる合金である。なおS1は、Znが添加されていないろう材であり、チューブ内部のろう付けに使用されるろう材である。これらの合金を用いた各実施例1、2を、次に具体的に説明する。
実施例1:
まず前記式(1)の各温度における係数を決定するために行なった実施例を示す。
表2、表3のNo.1〜No.28に示す組合せで、次のように複合材を作成した。すなわち、各芯材の鋳塊を面削し、両面のクラッド率が各8%となるよう板厚を調整して予備熱間圧延されたろう材を、芯材の両面に重ね合わせた。その後、表2、表3中に示す条件で熱間圧延の予備加熱(均質化処理を兼ねたもの)を実施した。ここで熱間圧延前予備加熱としては、図1に示す所定温度T0まで昇温速度33℃/hで加熱し、到達後±4℃の範囲で所定時間の温度保持を行なう方法を適用した。また式(1)の各係数を決定するために、所定温度T0における保持時間を種々変化させた。
このようにして熱間圧延前予備加熱を行なった各材料No.1〜No.28について、熱間圧延によりクラッド接合するとともに、トータル板厚を6mmとした。この熱間圧延は1h以内に終了し、その間の材料温度は予備加熱温度より低いことが確認された。その後冷間圧延を行なって板厚2mmとし、さらに400℃、3hの最終焼鈍を実施し、最終的に板厚2mmの熱交換器用複合材を得た。
その後、上記の熱交換器用複合材に対して、流路形成加工に相当する加工歪を与えることを目的として、圧下率88%の冷間圧延を行なって、板厚0.25mmとした。この冷間加工は、複合材製造プロセスとしての冷間加工でないことはもちろんである。
これらについて、600℃、3minのろう付け相当加熱を行った後、電解研磨法により透過型電子顕微鏡(TEM)用の薄膜サンプルを作製した。TEMは薄膜サンプルの厚さ40−60nmの範囲で観察を行ない、加速電圧200eV、5万倍の条件で明視野像を16枚撮影し、撮影した総面積を400μm2とした。ここで、予め分析により、Al−Mn系金属間化合物のみが存在することを確認してから、TEM明視野像の撮影を行なった。撮影したTEM明視野像について、編集ソフトにより、AlマトリックスとAl−Mn系金属間化合物とに二値化し、Al−Mn系金属間化合物の面積から円相当径を計算した。その結果を表4中に示す。
一方、前述のようにして板厚0.25mmとした複合材について、次のようにろう付け加熱後の状態で腐食試験を行なった。
すなわち、複合材におけるAl−Si−Zn合金ろう材側の面に、5g/m2のノコロック用フラックスを塗布し、コルゲート加工したAl−0.2%Si−0.4%Fe−1.1%Mn−1.5%Zn合金フィン材と組合せ、窒素雰囲気中で600℃、3minのろう付け加熱を行ない、そのろう付け加熱後のろう付け構造体における複合材部分について、耐食性試験を行なった。この耐食性試験は、SWAAT 1000hにより実施した。試験終了後、各材料はリン酸・クロム酸混合溶液で腐食性生物を除去した後、最大孔食深さを光学顕微鏡を用いて焦点深度法により求め、さらに断面観察により粒界腐食発生の有無を調査した。その結果を表4中に示す。
さらに、自然冷媒熱交換器の使用環境を想定して、ろう付け加熱後に180℃、24hの熱処理を施した場合についても同様に耐食性試験を行ない、最大孔食深さおよび粒界腐食発生の有無を調査したので、その結果も表4中に併せて示す。
また、前述のように板厚0.25mmとした複合材について、ろう付けに相当する600℃、3minの加熱処理後の状態で、引張試験をJIS5号引張試験片によって行ない、引張強度を調べた。その結果も表4中に示す。
Figure 0005214899
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表4から明らかなように、式(1)を満たす複合材No.1〜No.14では、ろう付け加熱後において円相当径0.4μm以上のAl−Mn系化合物の数が105個/mm2以下であり、これらはいずれも引張強度が高く、かつ孔食深さが浅いことが確認された。
一方、式(1)を満たさない複合材No.15〜No.28では、ろう付け加熱後における円相当径0.4μm以上のAl−Mn系化合物の数が105個/mm2を越え、これらの例では引張強度が低く、また孔食深さも深いことが判明した。
実施例2:
表1に示す各合金を用いて、表5、表6の組合わせで複合材を次のようにして作製した。
すなわち、芯材の鋳塊を面削し、両面のクラッド率が各8%となるよう板厚を調整して予備熱間圧延されたろう材を芯材の両面に重ね合わせた。その後、表5、表6中に示す条件で熱間圧延前の予備加熱を実施した。ここで、熱間圧延前予備加熱は図1、2に示す2種の方法で実施した。すなわち、図1に示すように所定温度T0まで昇温速度33℃/hで加熱し、到達後±4℃の範囲で所定時間の温度保持を行なう方法、または図2に示すように所定温度T1まで昇温速度33℃/hで加熱し、到達後±4℃の範囲で所定時間の温度保持を行い、さらに所定温度T2まで昇温速度33℃/hで加熱し、到達後±4℃の範囲で所定時間の温度保持を行なう方法である。
これらについて、熱間圧延によりクラッド接合するとともに、トータル板厚を6mmとした。なおこの熱間圧延は1h以内に終了させたものであり、その間の材料温度は予備加熱温度より低かった。その後冷間圧延を行なって板厚2mmとした。さらに400℃、3hの最終焼鈍を実施し、最終的に板厚2mmの熱交換器用複合材とした。
その後、上記の熱交換器用複合材に対して、流路形成加工に相当する加工歪を付与するため、圧下率88%の冷間圧延を行なって、板厚0.25mmとした。
これらについて、実施例1と全く同様にして、ろう付けに相当する加熱後における円相当径0.4μm以上のAl−Mn系金属間化合物の数を調べるとともに、その加熱後の耐食性を調べ、また引張強度を調べた。
これらの結果を表7、表8に示す。
Figure 0005214899
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Figure 0005214899
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表7に示す複合材No.35、No.38は、いずれも製造途中で割れが発生したためにその後の評価を行なうことができなかった。また複合材No.32はろう付け加熱後に芯材の溶融が観察されたために、その後の評価を行なうことができなかった。
一方、表7に示す複合材No.29、No.30は、いずれもこの発明で規定する範囲を満たすため、引張強度が高く、ろう付け加熱後、およびろう付け加熱後に180℃、24hの熱処理を行ったサンプルの耐食性に優れていることが判明した。
さらに表7に示す複合材No.31では、Cuの添加量がこの発明で規定する範囲を越えるため、粒界腐食が発生した。さらに複合材No.33は、Siの添加量がこの発明で規定する範囲に満たないため、引張強度が低く、また複合材No.34では、Feの添加量がこの発明で規定する範囲を越えるため、Fe系化合物が多く存在し、孔食深さが深くなった。そしてまた複合材No.36では、Mnの添加量がこの発明で規定する範囲に満たないため、芯材の電位が卑になり、孔食深さが深くなり、また複合材No.37では、Tiの添加量がこの発明で規定する範囲に満たないため、孔食深さが深くなった。
さらに表8に示す複合材No.39〜No.43は、いずれもこの発明で規定する範囲を満たしているため、引張強度が高く、ろう付け加熱後、およびろう付け加熱後に180℃、24hの熱処理を行なったサンプルの耐食性に優れていた。
一方、表8に示す複合材No.44〜No.48は式(1)のXの値が1以上であるため、引張強度が低く、孔食深さが深くなった。特に複合材No.48では大きなAl−Mn系化合物が数多く存在して、円相当径0.4μm以上のAl−Mn系化合物の数が105個/mm2を越え、その周囲に選択的にAl−Cu系金属間化合物の析出が生じて、粒界腐食が発生した。
この発明の実施例における熱間圧延開始前予備加熱の温度−時間パターンの一例を示す線図である。 この発明の実施例における熱間圧延開始前予備加熱の温度−時間パターンの他の例を示す線図である。

Claims (3)

  1. アルミニウム合金芯材の少なくとも片面にアルミニウム合金ろう材を積層し、熱間圧延により接合してなる熱交換器用アルミニウム合金複合材において、
    前記アルミニウム合金芯材として、Mn:0.5〜1.8%(mass%、以下同じ)、Si:0.3〜1.0%、Ti:0.05〜0.25%を含有し、かつFe:0.4%以下、Cu:0.05%未満に規制され、残部がAlおよび不可避不純物よりなるアルミニウム合金が用いられ、かつ片面のろう材としてAl−Si−Zn合金ろう材が用いられ、しかも600℃、3分の加熱を施した後において芯材中に存在する円相当径0.4μm以上のAl−Mn系金属間化合物が105個/mm2以下となる組織を有することを特徴とする、熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合材。
  2. アルミニウム合金芯材の少なくとも片面にアルミニウム合金ろう材を積層し、熱間圧延により接合してなる熱交換器用アルミニウム合金複合材において、
    前記アルミニウム合金芯材として、Mn:0.5〜1.8%、Si:0.3〜1.0%、Ti:0.05〜0.25%、Cu:0.05〜0.20%未満を含有し、かつFe:0.4%以下に規制され、残部がAlおよび不可避不純物よりなるアルミニウム合金が用いられ、かつ片面のろう材としてAl−Si−Zn合金ろう材が用いられ、しかも600℃、3分の加熱を施した後において芯材中に存在する円相当径0.4μm以上のAl−Mn系金属間化合物が10個/mm以下となる組織を有することを特徴とする、熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合材。
  3. 請求項1もしくは請求項2に記載の熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合材を製造する方法において、
    請求項1もしくは請求項2に記載の成分組成のアルミニウム合金からなる芯材の少なくとも片面にろう材を積層して熱間圧延し、さらに冷間圧延を施すにあたり、熱間圧延開始直前までに、芯材が450℃以上、520℃未満の範囲内の温度に曝される加熱処理を受け、かつその加熱処理が次の(1)式を満たす条件で行われることを特徴とする、熱交換器用高耐食アルミニウム合金複合材の製造方法。
    X<1 ・・・(1)
    ただし、
    X={(t/45)+(t/27)+(t/17)+(t/10)+(t/6.1)+(t/2.5)+(t/1.0)}×[芯材中のMn含有量(mass%)]
    ここで、
    :加熱処理中に芯材温度が450℃以上、460℃未満の範囲内にある時間(h)
    :加熱処理中に芯材温度が460℃以上、470℃未満の範囲内にある時間(h)
    :加熱処理中に芯材温度が470℃以上、480℃未満の範囲内にある時間(h)
    :加熱処理中に芯材温度が480℃以上、490℃未満の範囲内にある時間(h)
    :加熱処理中に芯材温度が490℃以上、500℃未満の範囲内にある時間(h)
    :加熱処理中に芯材温度が500℃以上、510℃未満の範囲内にある時間(h)
    :加熱処理中に芯材温度が510℃以上、520℃未満の範囲内にある時間(h)
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