JP6236207B2 - 成形加工用アルミニウム合金板とその製造方法、およびアルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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Description
Mn:
Mnは、強度を高めるとともに、耐食性とくに耐孔食性を向上させるよう機能する元素である。Mnの好ましい含有量は1.2〜2.0%の範囲であり、1.2%未満ではその効果が十分でなく、2.0%を超えると、粗大な金属間化合物が生成し、成形加工性が低下する。Mnのさらに好ましい含有範囲は1.3%以上1.8%未満である。
Tiは、濃度の高い領域と濃度の低い領域に分かれ、それらの領域が肉厚方向に交互に層状に分布し、Ti濃度の低い領域はTi濃度の高い領域に比べて優先的に腐食するために腐食形態が層状となり、その結果、肉厚方向への腐食の進行が妨げられて、材料の耐孔食性、耐粒界腐食性および耐隙間腐食性が向上する。Tiの好ましい含有量は0.10〜0.20%の範囲であり、0.10%未満ではその効果が十分でなく、0.20%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が生成して加工性が劣化するため健全な材料が得られない。Tiのさらに好ましい含有範囲は0.11〜0.18%である。
Vは、溶融塩電解法によりアルミニウムを製錬する際に用いられる黒鉛電極に不純物として含まれる元素である。酸化アルミニウムの酸素と電極の炭素が反応し、アルミニウムと二酸化炭素となるため、炭素からなる黒鉛電極は次第に消耗し、Vは不可避的不純物としてアルミニウム中に混入することになる。
Siは、Al−Mn−Si系化合物やAl−Mn−Fe−Si系化合物を形成し、強度を向上するよう機能する。Siの好ましい含有量は0.5〜1.0%の範囲であり、0.5%未満ではその効果が小さく、1.0%を超えると、Si系化合物の粒子が多数形成され耐食性が低下する。Siのさらに好ましい含有範囲は0.60〜0.80%である。
Cuは、合金の強度向上のために機能する。好ましい含有量は1.20%以下の範囲であり、1.20%を超えて含有すると耐食性が低下する。Cuのさらに好ましい含有範囲は0.20〜1.00%である。
Feは、アルミニウム合金材の結晶粒径を小さくして、成形性を向上させ、肌荒れの発生を防止するよう機能する。Feの好ましい含有量は0.1〜0.8%の範囲であり、0.1%未満ではその効果が小さく、0.8%を超えると、Fe系化合物の粒子が多数形成され耐食性が低下する。Feのさらに好ましい含有範囲は0.20〜0.70%である。
Mgは、合金の強度向上のために機能するが、フラックスろう付けを行う場合はフラックスに含まれるFがMgと反応して化合物を生成し、ろう付け性が低下する。Mgの好ましい含有量は0.4%以下の範囲であり、0.4%を超えるとろう付け性が低下する。Mgのさらに好ましい含有範囲は0.20%以下である。
Cr、Zrは、ろう付け前及びろう付け後の材料強度を向上させる。CrおよびZrの好ましい含有量は、それぞれ0.3%以下であり、0.3%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が生成して加工性が低下するため、健全な材料が得られなくなる。
Znは板材あるいはブレージングシートの心材の電位を卑にする効果がある。0.3%を超えると自己耐食性が悪くなる。
鋳造時に生成する金属間化合物を確認する方法としては、鋳塊を長さ方向に10〜30mm程度の厚さに切断し、X線を照射して透過したX線像を観察する方法や、鋳塊のミクロ組織を観察する方法などがある。ミクロ組織を観察する方法では、小さい金属間化合物を確認できるが確認できる範囲が小さいため、鋳塊全体を調べるには向いていない。一方、X線透過像を観察する方法では、鋳塊全体の広い範囲で粗大な金属間化合物を調査することができるが、1mm未満の大きさの金属間化合物を確認することは困難である。
DC鋳造における鋳造時の冷却速度(鋳塊表面から20mm以内の表層部を除く部分の冷却速度)は0.09℃/s以上30℃/s以下とするのが好ましい。0.09℃/s未満では製造能率が低下して好ましくなく、金属間化合物も大きくなり易い。冷却速度が30℃/s以上になると、鋳型内の溶湯温度が高温になり溶湯漏れを発生し易くなる。
表1に示す組成を有するアルミニウム合金(A〜U)を溶解し、DC鋳造により造塊した。冷却速度の測定は、ダミーの鋳塊を鋳造することにより行った。ダミーの鋳塊の鋳造において、鋳型内の溶湯中に、鋳型上方からみて鋳型中心部と、幅方向中央部で幅方向の鋳型壁面から20mm内側の位置(2個所)および厚さ方向中央部で厚さ方向の鋳型壁面から20mm内側の位置(2個所)の計5個所に熱電対を入れて、そのまま溶湯が凝固するのと同時に埋め込んで冷却速度を測定し、凝固開始から500℃になるまでの冷却速度を求めた。平均冷却速度が0.10℃/s以上0.20℃/s以下、10℃/s以上12℃/s以下および27℃/s以上29℃/s以下となる鋳造条件をそれぞれ確認して、この鋳造条件と同じ鋳造条件で鋳造し、幅175mm×長さ175mm×厚さ30mmの鋳塊を得た。
成形性は素材の伸びで評価した。試験材からJIS5号引張試験片を採取して、JISに準拠する引張試験を行い、伸び(δ)を測定し、伸びが20%以上のものを優良(◎)、15%以上20%未満のものを良好(○)でいずれも合格、15%未満のものは不合格(×)とした。
図1に示すように、試験材2を25×50mmに切断して垂直板とし、25×50mmに切断したBAS121Pブレージングシート3(心材:3003合金、ろう材:4045合金片面クラッド、クラッド率:10%、板厚:1.0mm、調質:O材)を水平板として、ブレージングシート3のろう材面が垂直板(試験材2)と当接するようにして、逆T字試験片1を作製し、ブレージングシートのろう材面にフッ化物系フラックスとアルコールを混合した塗料を乾燥質量として5g/m2塗布して、窒素ガス雰囲気中で、平均50℃/分の昇温速度で600℃(到達温度)まで加熱するろう付け加熱を行った。接合された試験片4(図2)を樹脂に埋め込み、垂直板との接合面に形成されたフィレット5の断面積を測定した。その後、ろうが流動した割合(ろう付け後のフィレットの断面積/ろう付け前のろう材の断面積)を算出して、これを逆T字試験による流動係数とし、逆T字試験による流動係数の値が0.3以上を合格(○)、0.3未満を不合格(×)と評価した。
試験材を50×300mmに切断して、窒素ガス雰囲気中で、平均50℃/分の昇温速度で600℃(到達温度)まで加熱するろう付け加熱を行い、ろう付け加熱後の板から、JIS5号引張試験片を採取して、JISに準拠する引張試験を行い、引張強さ(σB)を測定した。引張強さが120MPa以上のものを合格(○)、120MPa未満のものを不合格(×)とした。
鋳塊の中心部から厚さ30mmの試料を切断、採取し、理学電機(株)製のX線透過装置(型番:RAD10FLEX−100GS)を用いて出力:125KV、2mAで透過X線像を撮影した。撮影した写真に写ったサイズ1mm以上の影を粗大な金属間化合物と判断し、大きさと個数を測定し、試料の大きさから1m3あたりの個数に換算した。
表3に示す組成を有するアルミニウム合金(a〜k)を溶解し、実施例1と同様、DC鋳造により冷却速度0.10℃/s以上0.20℃/s以下、0.03℃/s以上0.05℃/s以下で鋳造し、幅175mm×長さ175mm×厚さ30mmの鋳塊を得た。なお、冷却速度35℃/s以上40℃/s以下で鋳造したものは、鋳型から溶湯が漏れ出したため、途中で鋳造を中止した。表3において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
実施例1で鋳造した合金D〜Iの鋳塊を用いて、実施例1と同様に均質化処理、表面切削を行い、心材用鋳塊とした。Si:10%を含有し、残部アルミニウムおよび不可避不純物からなるろう材、およびZn:1%を含有し、残部アルミニウムおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、常法に従って溶解、DC鋳造し、得られた鋳塊の表面を10mm切削した後、500℃で所定の板厚まで熱間圧延を行い、ろう材用皮板および犠牲陽極材用皮板を作製した。
ブレージングシートの成形性は素材の伸びで評価した。試験材からJIS5号引張試験片を採取して、JISに準拠する引張試験を行い、伸び(δ)を測定した。伸びが、20%以上のものを優良(◎)、15%以上20%未満のものを良好(○)でいずれも合格、15%未満のものは不合格(×)とした。
試験材を50×300mmに切断して、ブレージングシートのろう材面にフッ化物系フラックスとアルコールを混合した塗料を乾燥質量として5g/m2塗布し、窒素ガス雰囲気中で、平均50℃/分の昇温速度で600℃(到達温度)まで加熱するろう付け加熱を行った。ろう付け加熱後の板から、JIS5号引張試験片を採取して、JISに準拠する引張試験を行い、引張強さ(σB)を測定し、引張強さが120MPa以上のものを合格(○)、120MPa未満のものを不合格(×)とした。
図1に示すように、25×50mmに切断した試験材3を、ろう材面が上になるようにして水平板とし、25×50mmの3003合金板2(板厚:1.0mm、調質:O材)を垂直板とし、試験材のろう材面と3003合金板を当接させて、逆T字試験片1を作製した。試験材のろう材面にフッ化物系フラックスとアルコール混合塗料を乾燥質量として5g/m2塗布し、窒素ガス雰囲気中で、平均50℃/分の昇温速度で600℃(到達温度)まで加熱するろう付け加熱を行った。接合された試験片4(図2)を樹脂に埋め込み、垂直板との接合面に形成されたフィレット5の断面積を測定した。その後、ろうが流動した割合(ろう付け後のフィレットの断面積/ろう付け前のろう材の断面積)を算出して、これを逆T字試験による流動係数と、逆T字試験による流動係数の値が0.3以上を合格(○)、0.3未満を不合格(×)と評価した。
2 実施例1、比較例1では試験片、実施例2では3003合金板
3 実施例2、比較例1ではブレージングシート、実施例2では試験片
4 接合された試験片
5 フィレット
Claims (5)
- Mn:1.2〜2.0%(質量%、以下同じ)、Si:0.5〜1.0%、Ti:0.10〜0.20%を含有し、不純物としてのVを80ppm以下に規制し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有し、生成しているサイズ(円相当直径)4mm以上の粗大金属間化合物が1個/m3以下で、1mm以上4mm未満の金属間化合物が10個/m3以下のアルミニウム合金鋳塊を熱間圧延および冷間圧延してなることを特徴とする成形加工用アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金鋳塊が、さらに、Fe:0.1〜0.8%及びCu:1.2%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の成形加工用アルミニウム合金板。
- 前記不純物としてのVを40ppm以下に規制したことを特徴とする請求項1または2記載の成形加工用アルミニウム合金板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金鋳塊の片面または両面にAl−Si系合金ろう材をクラッドし、熱間圧延および冷間圧延してなることを特徴とする成形加工用アルミニウム合金ブレージングシート。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金を溶解し、0.09℃/s以上30℃/s以下の冷却速度で鋳造する工程、得られた鋳塊を均質化熱処理する工程、均質化熱処理した鋳塊を熱間圧延する工程、得られた熱間圧延板を冷間圧延する工程を含んでなることを特徴とする成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
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