JP2008240084A - 熱交換器用アルミニウム合金クラッド材およびブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定量のSi,Mn,Mg,Cu,Tiを含有するAl合金からなる心材と、この心材の一面側に配置されて熱交換器内部側となる、所定量のSi,Mn,Cuを含有するAl合金からなる内面層と、前記心材の他面側に配置されて熱交換器外部側となる、所定量のSi,Mn,Znを含有するAl合金からなる外面層と、を備えた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材であって、内面層のCu濃度は心材のCu濃度以上であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
図1は、本発明の第1の実施の形態である熱交換器用アルミニウム合金クラッド材におけるCu,Znの濃度分布および電位勾配を示す図であり、(a)はCu,Znの濃度分布図、(b)は電位勾配図である。
すなわち、図1(a)、(b)に示すように、本実施形態の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材は、その板厚方向(横軸)に、外部側から、外面層、心材、内面層の順に積層された3層構造となる。そして、各層におけるCuおよびZnの濃度分布を図1(a)に示すように制御したことで、図1(b)に示すように外部側から内部側に向かって電位が常に貴となる。
心材は、Si:0.3〜1.5質量%、Mn:0.5〜1.8質量%、Mg:1.5質量%以下、Cu:1.0質量%以下かつ内面層のCu濃度以下、Ti:0.1〜0.35質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。なお、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金クラッド材およびブレージングシートにおける心材の厚さは特に限定されないが、好ましくは0.05〜0.4mmである。
Siはろう付け後強度を向上させる効果があり、特にMg,Mnと共存させた場合、Mg−Si系金属間化合物、Al−Mn−Si系金属間化合物の形成により、さらにろう付け後強度を高めることができる。0.3質量%未満では効果が小さく、1.5質量%を超えると心材の融点低下および低融点相増加により、心材の溶融が生じる。したがって、心材におけるSiの含有量は、0.3〜1.5質量%とする。
Mnはろう付け後強度を向上させる効果があり、含有量増加によりろう付け後強度を高めることができる。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。0.5質量%未満では効果が小さく、1.8質量%を超えると粗大な金属間化合物が形成され、成形性の低下、耐食性低下を起こしやすい。したがって、心材におけるMnの含有量は、0.5〜1.8質量%とする。
Mgはろう付け後強度を向上させる効果がある。しかし一方で、Mgはフラックスろう付け性を低下させる作用があるため、1.5質量%を超えると、ろう付けの際、外面層および内面層を通してろう材までMgが拡散し、ろう付け性が著しく低下する。したがって、心材におけるMgの含有量は、1.5質量%以下とする。また、0.05質量%未満では効果が小さい。したがって、心材における好ましいMgの含有量は、0.05〜1.0質量%である。
Cuはろう付け後強度を向上させる効果がある。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。一方、1.0質量%を超えると、融点の低下に伴ってバーニングが発生する可能性がある。また、内面層のCu濃度を超えると、内面層に対して心材側の電位が貴になるため、心材以深で孔食進展が促進される。したがって、心材におけるCuの含有量は、1.0質量%以下であり、かつ内面層のCu濃度以下である。また、0.01質量%未満では上記の効果が小さく、好ましくは0.05質量%以上である。したがって、心材における好ましいCuの含有量は、0.05〜0.9質量%かつ内面層のCu濃度以下で、より好ましくは、さらに内面層のCu濃度−0.1質量%以下である。
TiはAl合金中でTi−Al系化合物を形成して層状に分散する。Ti−Al系化合物は電位が貴であるため、腐食形態が層状化し、深さ方向への腐食(孔食)に進展し難くなる効果がある。0.1質量%未満では腐食形態の層状化効果が小さく、0.35質量%を超えると粗大な金属間化合物形成により、加工性および耐食性が低下する。したがって、心材におけるTiの含有量は、0.1〜0.35質量%とする。
内面層は、Si:1.5質量%以下、Mn:1.8質量%以下、Cu:1.0質量%以下かつ心材のCu濃度以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。なお、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金クラッド材およびブレージングシートにおける内面層の厚さは特に限定されないが、好ましくは0.01〜0.1mmである。
Siはろう付け後強度を向上させる効果があり、特にMg,Mnと共存させた場合、Mg−Si系金属間化合物、Al−Mn−Si系金属間化合物の形成により、さらにろう付け後強度を高めることができる。一方、1.5質量%を超えると内面層の融点低下と低融点相増加により、内面層の溶融が生じる。したがって、内面層におけるSiの含有量は、1.5質量%以下とする。また、0.03質量%未満では効果が小さい。したがって、内面層における好ましいSiの含有量は、0.03〜1.2質量%である。
Mnはろう付け後強度を向上させる効果があり、含有量増加によりろう付け後強度を高めることができる。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。一方、1.8質量%を超えると粗大な金属間化合物が形成され、成形性の低下、耐食性低下を起こしやすい。したがって、内面層におけるMnの含有量は、1.8質量%以下とする。また、0.05質量%未満では効果が小さい。したがって、内面層における好ましいMnの含有量は、0.05〜1.5質量%である。
Cuはろう付け後強度を向上させる効果がある。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。一方、1.0質量%を超えると、融点の低下に伴ってバーニングが発生する可能性がある。また、心材のCu濃度未満であると、内面層に対して心材側の電位が貴になるため、心材以深で孔食進展が促進される。したがって、内面層におけるCuの含有量は、1.0質量%以下であり、かつ心材のCu濃度以上である。また、0.05質量%未満では上記の効果が小さい。したがって、内面層における好ましいCuの含有量は、0.05〜0.9質量%かつ心材のCu濃度以上で、より好ましくは、さらに心材のCu濃度+0.1質量%以上である。
外面層は、Si:1.5質量%以下、Mn:1.8質量%以下、Zn:2.5〜7.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。なお、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金クラッド材およびブレージングシートにおける外面層の厚さは特に限定されないが、好ましくは0.01〜0.1mmである。
Siはろう付け後強度を向上させる効果があり、特にMg,Mnと共存させた場合、Mg−Si系金属間化合物、Al−Mn−Si系金属間化合物の形成により、さらにろう付け後強度を高めることができる。一方、1.5質量%を超えると外面層の融点低下と低融点相増加により、外面層の溶融が生じる。したがって、外面層におけるSiの含有量は、1.5質量%以下とする。また、0.03質量%未満では効果が小さい。したがって、外面層における好ましいSiの含有量は、0.03〜1.2質量%である。
Mnはろう付け後強度を向上させる効果があり、含有量増加によりろう付け後強度を高めることができる。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。一方、1.8質量%を超えると粗大な金属間化合物が形成され、成形性の低下、耐食性低下を起こしやすい。したがって、外面層におけるMnの含有量は、1.8質量%以下とする。また、0.03質量%未満では効果が小さい。したがって、外面層における好ましいMnの含有量は、0.03〜1.2質量%である。
Znは電位を卑にする働きがあるため、外面層を犠牲陽極として作用させる。2.5質量%未満では電位卑化効果が不十分である。一方、7.0質量%を超えると、クラッド材およびブレージングシート単板の耐食性は良好であるが、ろう付け接合部に形成されるフィレット(ろう付け部)中のZn濃度が増加するためにフィレットの優先腐食が起こる怖れがある。また圧延割れが発生するため生産性が低下する。したがって、外面層におけるZnの含有量は、2.5〜7.0質量%とする。
内面層および外面層においてMgは必須元素ではなく、さらに、Mgはフラックスろう付け性を低下させる作用があり、0.1質量%を超えると、ろう付け性が著しく低下する。したがって、不可避的不純物としてのMgは、0.1質量%以下に制限する。
TiはAl合金中でTi−Al系化合物を形成して層状に分散する。Ti−Al系化合物は電位が貴であるため、腐食形態が層状化し、深さ方向への腐食(孔食)に進展し難くなる効果がある。0.1質量%未満では腐食形態の層状化効果が小さく、0.35質量%を超えると粗大な金属間化合物形成により、加工性および耐食性が低下する。したがって、内面層および外面層におけるTiの含有量は、0.1〜0.35質量%とする。
ろう材層は、本発明においては特にその組成を限定するものではないが、例えばAl−Si系Al合金である4000系合金に、MgやFeを添加して強度を向上させた合金が挙げられる。Mg添加量の許容範囲は心材との中間層である内面層や外面層の厚さ、またフラックス量によって異なり、中間層厚さが大きいほど、またはフラックス量が多いほどMg添加許容量は増加する。但し、Mg拡散は工程に依存するため、中間層厚さ、フラックス量、心材Mg含有量の相関関係は特に規定するものではなく、心材からろう材層へのMgの拡散障壁として内面層、外面層の厚さは15μm以上設けるのが望ましい。なお、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートにおけるろう材層の厚さは特に限定されるものではなく、ろう付け処理に対応するものとするが、好ましくは0.01mm以上である。また、ろう材層を配置する側は、熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートの用途に応じて、内面層側および外面層側のいずれかあるいは両方とする。
表1〜表3に示す組成を有する心材、内面層材、外面層材を作製し、表5に示す組合せで重ね合わせ、熱間圧延にて内面層材および外面層材の厚さをそれぞれ板厚全体の15%でクラッドし、冷間圧延にて板厚0.3mmとした。その後、400℃で5時間の中間焼鈍を行い、さらに冷間圧延を行うことで、板厚0.2mmとし、最後に仕上げ焼鈍を300℃で3時間行って、表5に示す3層材を作製した。
ろう付け後強度の測定は、ろう付け熱処理材からJIS5号試験材を切り出して引張試験を行い、引張強度の測定を行った。測定結果を表5および表6に示す。引張強度の合格基準は、200MPa以上とした。
腐食試験は、ろう付け熱処理材から60mm×50mmの試験材を切り出し、外面層側が試験面となるように内面層側の面および端面をシールテープによりシールして、CASS試験(JIS Z 2371)を1000時間実施した。試験後、最大腐食深さを測定し、最小残存板厚(=試験前の板厚−最大腐食深さ)を算出した。その結果を表5および表6に示す。耐食性の合格基準は、最小残存板厚が65μm(板厚0.2mmの約30%)以上とした。
実施例1〜3は、心材におけるSi含有量が本発明の範囲内であるので、ろう付け後強度が十分に高い。これに対して、比較例26は心材のSi含有量が不足し、さらにMg含有量が不足している(無添加である)ため、ろう付け後強度が十分に得られなかった。一方、比較例27は心材のSi含有量が過剰なため、ろう付け時に心材が溶融して良好な試験材が得られなかった。
実施例1,16,17は、内面層におけるSi含有量が本発明の範囲内であるので、ろう付け後強度が十分に高い。一方、比較例37は内面層のSi含有量が過剰なため、ろう付け時に内面層が溶融して良好な試験材が得られなかった。
実施例1,12,13は、外面層におけるSi含有量が本発明の範囲内であるので、ろう付け後強度が十分に高い。一方、比較例33は外面層のSi含有量が過剰なため、ろう付け時に外面層が溶融して良好な試験材が得られなかった。
実施例1,7〜11は、心材および内面層のそれぞれにおけるCu含有量が本発明の範囲内であるので、ろう付け後強度および耐食性が十分に高い。一方、比較例30は心材のCu含有量が過剰なため、比較例40は内面層のCu含有量が過剰なため、それぞれバーニングを発生して良好な試験材が得られなかった。また、比較例39,41,42は、心材のCu含有量が内面層のCu含有量を超えるため、試験材の厚み中心部すなわち心材で電位勾配が貴となり(図2(b)参照)、心材以深での犠牲防食効果が不十分であった。
実施例1は、内面層および外面層にMgを添加していないので、ろう付け性が良好であった。これに対して、比較例43は内面層および外面層の両層にMgを過剰に含有しているため、ろう付け性が低下してろう付け接合が困難となって、熱交換器用アルミニウム合金クラッド材として不適合であった。
実施例20は内面層にTiを含有し、実施例19は外面層にTiを含有し、実施例21は、内面層および外面層の両層にTiを含有し、それぞれの含有量が本発明の範囲内であるので、耐食性が十分に高い。一方、比較例45は内面層のTi含有量が過剰なため、比較例44は外面層のTi含有量が過剰なため、それぞれ粗大なTi化合物の形成により加工性が低下して良好な試験材が得られなかった。
実施例46は、実施例1と同じ組成の内面層/心材/外面層の両面にろう材層を配置したもので、本発明の範囲内であるので、ろう付け後強度が十分に高い。
Claims (4)
- 心材と、この心材の一面側に配置される内面層と、前記心材の他面側に配置される外面層とを備えた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材であって、
前記心材は、Si:0.3〜1.5質量%、Mn:0.5〜1.8質量%、Mg:1.5質量%以下、Cu:1.0質量%以下、Ti:0.1〜0.35質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記内面層は、Si:1.5質量%以下、Mn:1.8質量%以下、Cu:1.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記外面層は、Si:1.5質量%以下、Mn:1.8質量%以下、Zn:2.5〜7.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記内面層のCu含有量は、前記心材のCu含有量以上であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。 - 前記内面層および前記外面層のそれぞれの前記不可避的不純物としてのMgの含有量は0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記内面層および前記外面層の少なくとも一方は、さらにTi:0.1〜0.35質量%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 請求項1ないし請求項3に記載の熱交換器用アルミニウム合金クラッド材の前記内面層および前記外面層の少なくとも一方の外側に、ろう材層を備えることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシート。
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