JP5390908B2 - 高強度アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用の熱交換器等に使用されるアルミニウム合金ブレージングシートに関するもので、特に高温で使用される熱交換器用のものに関する。
自動車に搭載されるコンデンサ、エバポレータ、インタークーラ等の熱交換器は、流体通路を有する形状にロール成形したチューブ材やプレス成形したプレート材と、コルゲート成形したフィン材とを交互に重ね合わせて組み合わされた状態でろう付けされることによって製造される。これらのチューブ材、プレート材、およびフィン材に成形される板材は、ろう付け用のアルミニウム合金板、またはアルミニウム合金を心材としてこれにAl−Si系合金からなるろう材を積層したアルミニウム合金ブレージングシートが適用されている。アルミニウム合金ブレージングシートは、さらに、Znを添加したアルミニウム合金からなる犠牲陽極材を積層して耐食性を向上させたものも適用されている。熱交換器は小型化、軽量化が要求されており、そのためにこれらのアルミニウム合金材も薄肉化の可能な高強度ならびに高耐食性のものが開発されている。
例えば、従来Al−Mn系合金が主流であったアルミニウム合金ブレージングシートの心材に対して、特許文献1には、さらに、Cuを添加したアルミニウム合金を心材とし、Mgを添加したアルミニウム合金を犠牲陽極材として、ろう付け加熱後に所定条件で人工時効処理を施すことで強度と耐食性を向上させたアルミニウム合金ブレージングシートが開示されている。また、特許文献2には、Al−Mn系合金にさらにCu,Siを添加したアルミニウム合金を心材とし、Mnを添加したアルミニウム合金を犠牲陽極材とすることで強度と耐食性を向上させたアルミニウム合金ブレージングシートが開示されている。
特開平9−95749号公報(段落0011,0016〜0018,0023〜0025) 特開2005−232507号公報(段落0019,0020,0028〜0030)
前記従来技術のアルミニウム合金ブレージングシートから製造される熱交換器の使用温度は、概ね100℃以下である。しかしながら、近年、熱交換器の使用条件は高温化する方向にあるので、ブレージングシートについては150℃以上の高温経時における高強度化が要求されている。このような高温経時において、前記特許文献1,2のアルミニウム合金ブレージングシートは、強度が十分でなく使用に限界がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、薄肉化されても高温経時強度および耐食性に優れるアルミニウム合金ブレージングシートを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る高強度アルミニウム合金ブレージングシートは、心材とその片面または両面にAl−Si合金からなるろう材とを備える厚さ0.15〜0.7mmのアルミニウム合金ブレージングシートであって、前記心材、Cu:1.5質量%を超え2.5質量%以下、Mg:0.05質量%以上0.4質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物としてMnを0.06質量%未満に規制され、前記ろう材厚さが15〜70μmであることを特徴とする。あるいは、本発明に係る高強度アルミニウム合金ブレージングシートは、前記心材が、Cu:2.1質量%以上2.5質量%以下、Mg:0.4質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物としてMnを0.06質量%未満に規制されていることを特徴とし、さらに前記心材がNi:0.05〜1.5質量%を含有してもよい。
このように、心材において、Cu濃度を従来技術より高い範囲に制限することにより、Cuの固溶、析出強化によるアルミニウム合金の強度向上効果が得られ、さらに、高温経時での心材の強度低下を小さくすることができ、耐食性を向上させることもできる。また、Mgを所定範囲で含有することにより、心材の強度を向上させながら、アルミニウム合金ブレージングシートとしての成形加工性とろう付け性とを保持することができる。一方、Mnの濃度を制限することで、Cuの多量添加による耐食性の低下を防ぎ、高耐食性を維持できる。また、ろう材の厚さを制限することで、アルミニウム合金ブレージングシートとして適度なろう付け性を保持することができる。
また、本発明に係る高強度アルミニウム合金ブレージングシートは、前記ろう材がさらにZn:0.05〜6.0質量%を含有してもよい。ろう材にアルミニウム合金の電位を卑にするZnを添加することにより、心材のろう材を積層した側からの耐食性を向上させることができる。
また、本発明に係る高強度アルミニウム合金ブレージングシートは、前記心材が、さらに、Fe:0.05〜1.5質量%、Si:0.05〜1.0質量%、Cr:0.05〜0.3質量%、Ti:0.05〜0.3質量%、Zr:0.05〜0.3質量%、V:0.05〜0.3質量%、Sn:0.01〜0.1質量%、Cd:0.01〜0.1質量%、In:0.01〜0.1質量%、Ag:0.01〜0.2質量%のうち1種以上を含有してもよい。これらの元素を添加したアルミニウム合金とすることで、心材の強度をさらに向上させることができる。
また、本発明に係る高強度アルミニウム合金ブレージングシートは、前記心材の一面側に前記ろう材を備え、前記心材の他面側にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる犠牲陽極材をさらに備える構成としてもよい。このように、片面に犠牲陽極材を備えることにより、この面の側からの耐食性を向上させることができる。
また、本発明に係る高強度アルミニウム合金ブレージングシートは、前記心材と前記ろう材との間にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる中間材をさらに備える構成としてもよい。このように、中間材を備えることで、心材に含有されるMgがろう付け時にろう材に拡散してろう付け性を低下させることを防止することができる。
本発明に係る高強度アルミニウム合金ブレージングシートによれば、薄肉化しても、高強度および高耐食性を長期に亘って維持することができる。特に、150℃以上の高温経時において、熱交換器のチューブ材やプレート材等として十分な強度を有する。
実施例におけるろう付け性評価のためのろう付けの模式図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
以下、本発明に係る高強度アルミニウム合金ブレージングシート(以下、アルミニウム合金ブレージングシート)を実現するための形態について説明する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、アルミニウム合金からなる心材の片面または両面にろう材がクラッドされている。アルミニウム合金ブレージングシートの厚さは、薄肉化するほど作製される熱交換器を軽量化することができるが、0.15mm未満では強度および耐食性を維持できないため、0.15〜0.7mmとする。
なお、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートで熱交換器を製造する際は、当該アルミニウム合金ブレージングシートを流体通路を有する形状にロール成形してチューブ材として使用でき、またはプレス成形してプレート材やサイドサポート材等としてもよい。このチューブ材等を、常法にて、コルゲート成形したフィン材と交互に重ね合わせて組み合わせた状態でろう付け接合することにより熱交換器を製造できる。
以下に、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートを構成する各要素について説明する。
〔心材〕
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの心材は、Cu:1.5質量%を超え2.5質量%以下、Mg:0.4質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成されるものである。そして、不可避的不純物として、Mn:0.06質量%未満に規制される。なお、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおける心材の厚さは特に限定されないが、100μm以上が好ましい。
(心材Cu:1.5質量%を超え2.5質量%以下)
Cuは、アルミニウム合金中で固溶強化してその強度を向上させる。さらに、Cuは、高温環境下では、Alと析出物を形成することで析出強化して、初期においてアルミニウム合金の強度を向上させ、高温経時においても強度低下を抑制する。また、Cuはアルミニウム合金の電位を貴にする作用があるため、心材がろう材のアルミニウム合金の電位よりも貴となるので、ろう材が心材を犠牲防食し、アルミニウム合金ブレージングシートの耐食性を向上させる。Cuの含有量が1.5質量%以下では、これらの効果が不十分である。一方、Cuの含有量が2.5質量%を超えると、アルミニウム合金の自己耐食性が低下するため、特にアルミニウム合金ブレージングシートが薄肉化された場合に耐食性を低下させる。したがって、Cuの含有量は、1.5質量%を超え2.5質量%以下とする。
(心材Mg:0.4質量%以下)
Mgは、Cuと同様に、アルミニウム合金中で固溶、析出強化してその強度を向上させる。特にCuと共存することで、金属間化合物を生成して、その析出強化により強度を向上させることができる。Mgの含有量の下限は規制されないが、これらの効果を得るためには0.01質量%以上が好ましい。しかし一方で、Mgはフラックスろう付け性を低下させる作用があるため、Mgの含有量が0.4質量%を超えると、非腐食性フラックスを用いた雰囲気下でのろう付けの際にろう材までMgが拡散してろう付け性が著しく低下する。また、ろう付け前のアルミニウム合金ブレージングシートの伸びが低下して成形加工性が低下する場合がある。したがって、Mgの含有量は0.4質量%以下とする。
(心材Mn:0.06質量%未満)
Mnは、アルミニウム合金中で金属間化合物として晶出、析出して分散強化に寄与するが、多量のCuが共存する場合、Al−Mn系化合物を生成し、Mnが0.06質量%以上になると、この化合物が粒界に析出して粒界腐食を発生させ、耐食性を低下させる虞がある。したがって、Mnは0.06質量%未満に規制する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの心材は、さらに、Fe:0.05〜1.5質量%、Si:0.05〜1.0質量%、Ni:0.05〜1.5質量%、Cr:0.05〜0.3質量%、Ti:0.05〜0.3質量%、Zr:0.05〜0.3質量%、V:0.05〜0.3質量%、Sn:0.01〜0.1質量%、Cd:0.01〜0.1質量%、In:0.01〜0.1質量%、Ag:0.01〜0.2質量%のうち1種以上を含有してもよい。
(心材Fe:0.05〜1.5質量%)
Feは、アルミニウム合金中で金属間化合物として晶出、析出して分散強化に寄与する。また、晶出、析出した金属間化合物は、再結晶の核となって再結晶を促進させるので、組織を微細化する効果を有し、アルミニウム合金ブレージングシートの成形加工性を向上させる。これらの効果を十分なものとするために、Feの含有量は0.05質量%以上が好ましい。一方、Feの含有量が1.5質量%を超えると、金属間化合物が過剰に晶出、析出してアルミニウム合金ブレージングシートの成形加工性を低下させる虞がある。したがって、Feの含有量は0.05〜1.5質量%とする。
(心材Si:0.05〜1.0質量%)
Siは、アルミニウム合金中で固溶、析出強化してその強度を向上させる。この効果を十分なものとするために、Siの含有量は0.05質量%以上が好ましい。一方、Siはアルミニウム合金の固相線温度を降下させるため、Siの含有量が1.0質量%を超えると、多量のCuと合わせて融点がさらに降下して、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付け加熱の際に心材が溶融する。したがって、Siの含有量は0.05〜1.0質量%とする。
(心材Ni:0.05〜1.5質量%)
Niは、アルミニウム合金中で金属間化合物として存在して分散強化に寄与する。この効果を十分なものとするために、Niの含有量は0.05質量%以上が好ましい。一方、Niの含有量が1.5質量%を超えると、金属間化合物が過剰となってアルミニウム合金ブレージングシートの成形加工性を低下させる虞がある。したがって、Niの含有量は0.05〜1.5質量%とする。
(心材Cr,Ti,Zr,V:各0.05〜0.3質量%)
Cr,Ti,Zr,Vは、それぞれアルミニウム合金中で微細な金属間化合物を生成して、その強度を向上させる。それぞれの含有量は、0.05質量%未満では効果が十分に得られず、一方、0.3質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生成してアルミニウム合金ブレージングシートの成形加工性を低下させる虞がある。したがって、Cr,Ti,Zr,Vの含有量は各0.05〜0.3質量%とする。
(心材Sn,Cd,In:各0.01〜0.1質量%、心材Ag:0.01〜0.2質量%)
Sn,Cd,In,Agは、それぞれアルミニウム合金中で高温時におけるCuの析出を促進して強度向上に寄与する。それぞれの含有量が0.01質量%未満では、効果が十分に得られない。また、Sn,Cd,Inはそれぞれ0.1質量%を、Agは0.2質量%を超えると強度は飽和して、それ以上添加されてもさらなる強度向上効果は得られず、原材料費高となる。したがって、Sn,Cd,Inの含有量は各0.01〜0.1質量%、Agの含有量は0.01〜0.2質量%とする。
Fe,Si,Ni,Cr,Ti,Zr,V,Sn,Cd,In,Agは、前記の規定含有量未満を不可避的不純物として含有してもよい。これらの元素をそれぞれの規定含有量未満含有していても、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの性能を何ら妨げるものではない。
〔ろう材〕
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう材は、当該アルミニウム合金ブレージングシートにおいて片面厚さ15〜70μmでクラッドされる。ろう材厚さが15μm未満ではろうの量が不足してろう付け性が低下する。一方、ろう材厚さが70μmを超えると、ろうの流動量が過剰となって、一部が心材へ拡散し、心材のエロージョンが発生する。したがって、ろう材の厚さは15〜70μmとする。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう材は、アルミニウム合金のろう付けにおいて通常用いられるAl−Si系合金からなり、Siの含有量は5.0〜12.0質量%が好ましい。このようなAl−Si系合金をろう材としてクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートは、590〜610℃でろう付けされる。なお、両面にろう材を備えたアルミニウム合金ブレージングシートとする場合は、それぞれの面におけるろう材が同じ成分のアルミニウム合金であっても異なるものであってもよく、例えば一方の面のみを後記のAl−Si−Zn系合金としてもよい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう材は、さらにZn:0.05〜6.0質量%を含有するAl−Si−Zn系合金としてもよい。Znを0.05質量%以上添加することでアルミニウム合金の電位が卑となって、アルミニウム合金ブレージングシート(心材)の、このろう材を積層した側からの耐食性を向上させることができる。Znの含有量が6.0質量%を超えると、自己腐食を生じて、却ってアルミニウム合金ブレージングシートの耐食性を低下させる虞がある。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう材は、さらに、Fe:0.3質量%以下、Ti:0.05質量%以下をそれぞれ添加してもよい。また、不可避的不純物として、Cu:2.0質量%以下、In,Sn:各0.03質量%以下を含有してもよい。
〔犠牲陽極材〕
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、前記の心材の一方の面に前記ろう材を備え、他方の面には犠牲陽極材を備えてこの面の側からの耐食性を向上させてもよい。このような、犠牲陽極材を備えたアルミニウム合金ブレージングシートで熱交換器を作製する際は、犠牲陽極材を備えた面を腐食環境側となるように形成する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートに備える犠牲陽極材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる公知の材料を使用することができ、また、その厚さは特に限定されないが、耐食性向上の十分な効果を得るためには20μm以上が好ましい。アルミニウム合金としては、例えば、Al−Zn系合金、そしてAl−Zn系合金またはアルミニウムにMn,Si,Mg等を添加した合金が挙げられる。
〔中間材〕
さらに、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、ろう材と心材との間に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる中間材を挿入し、特に心材がMgを積極的に添加された場合のろう材へのMg拡散防止層としてもよい。このような中間材の厚さは特に限定されないが、Mg拡散防止層として十分な効果を得るためには20μm以上が好ましい。アルミニウム合金としては、例えば、Mn,Si,Fe等を添加した合金が挙げられる。また、前記犠牲陽極材として挙げたAl−Zn系合金(Mgを添加していないもの)を中間材として備えて、犠牲陽極効果を付与してもよい。両面にろう材を備えたアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、それぞれのろう材に対して中間材を挿入した5層構成としても、一方のろう材のみに対して中間材を挿入した4層構成としてもよく、両面側に中間材を挿入する場合は、それぞれの中間材が同じ成分のアルミニウム合金であっても異なるものであってもよい。
〔製造方法〕
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、公知のクラッド材の製造方法により製造される。以下にその一例を説明する。
まず、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの心材の成分のアルミニウム合金を連続鋳造にて溶解、鋳造し、必要に応じて面削、均質化熱処理して、心材用鋳塊を得る。同様に、ろう材用、そして必要に応じて犠牲陽極材用、中間材用の鋳塊を、前記の心材用鋳塊と同様の方法で得る。それぞれの鋳塊は、熱間圧延または切断によって、アルミニウム合金ブレージングシートにおけるクラッド率に合わせた比の厚さのアルミニウム合金板(またはアルミニウム板)とする。
次に、それぞれのアルミニウム合金板を、所望のアルミニウム合金ブレージングシートの積層順に重ね合わせて、400℃以上の温度で加熱した後、熱間圧延により圧着して(クラッド圧延)一体の板材とする。その後、必要に応じて粗鈍、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を行うことにより所望の板厚(0.15〜0.7mm)とする。なお、冷間圧延は、所望の板厚になるまで適宜中間焼鈍を挟んで繰り返す。さらに、最終の板厚とした冷間圧延の後、仕上げ焼鈍を実施してもよい。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と比較して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(供試材の作製)
表1、表2、表3に示す組成を有する心材(C1〜C33)用、ろう材(F1〜F3)用、犠牲陽極材(S1,S2)用、および中間材(M1,M2)用のアルミニウム合金を、連続鋳造にて溶解、鋳造した後、均質化熱処理、熱間圧延を施し、心材用アルミニウム合金板、ろう材用アルミニウム合金板、犠牲陽極材用アルミニウム合金板、中間材用アルミニウム合金板を得た。それぞれのアルミニウム合金板を表4および表5に示す組合せおよび最終板厚となるような板厚比で重ね合わせて熱間圧延にてクラッドし、冷間圧延にて、表4に示す板厚の2層材(供試材No.1〜3)および3層材(供試材No.4〜37)、ならびに表5に示す板厚の4層材(供試材No.38〜41)および5層材(供試材No.42,43)を作製した。
(ろう付け熱処理材の作製)
供試材を、幅100mm×長さ200mmの短冊状に切り出し、切り出した供試材の長手方向が垂直になるように吊り下げて、窒素雰囲気中にて590℃で2分間保持することによりろう付け加熱を模擬し、ろう付け熱処理材を作製した。
ろう付け加熱前の供試材で成形加工性およびろう付け性の評価を、ろう付け熱処理材で高温経時強度および耐エロージョン性の評価を、それぞれ以下に示す方法で行った。さらに、これらの評価のすべてで合格基準を満たした供試材について、ろう付け熱処理材で耐食性の評価を以下に示す方法にて行った。結果を表4および表5に示す。なお、行わなかった評価については結果を「−」で示す。
(成形加工性の評価)
成形加工性はエリクセン試験(JIS B7729,Z2247、A法に準ずる)にて評価した。詳しくは、供試材から幅90mm×長さ300mmの試験片を切り出し、この試験片に20mmφの球頭張出治具を押し込んで、割れが発生したときの押込み深さを測定した。3回の試験による測定値の平均が6.0mm以上のものを成形加工性が良好であると判定して「○」、6.0mm未満のものを不良として「×」で示す。
(ろう付け性の評価)
供試材から幅25mm×長さ55mmに切り出して試験片とし、その両面に非腐食性のフラックスFL−7(森田化学工業株式会社製)10(±0.2)g/m2を塗布して乾燥させた。厚さ2mm、幅25mm×長さ60mmの3003合金を基板として、図1(a)に示すように水平に載置し、その上にφ2mmの丸棒をスペーサとして挟んで、前記試験片を鉛直に立てて、ワイヤで固定した。このとき、スペーサの位置は試験片の一端から50mmの距離とした。これを窒素雰囲気中にて595℃で2分間保持することにより、ろう付け加熱を行った。試験片と基板の隙間に充填されたフィレットの長さ(図1(b)に示すフィレット長)を測定し、15mm以上のものをろう付け性が良好であると判定して「○」、15mm未満のものあるいは測定不能なものを不良として「×」で示す。
(高温経時強度の評価)
ろう付け熱処理材からJIS Z2201に規定される5号試験片を切り出し、この試験片を180℃で300時間保持した後、さらに180℃にて引張試験機で引張強度を測定して値を示す。高温経時強度の合格基準は、引張強度が100MPa以上とした。
(耐エロージョン性の評価)
ろう付け熱処理材、および、ろう付け加熱前の供試材にさらに10%、20%の加工率で冷間圧延を追加したものをろう付け熱処理材と同条件でろう付け加熱を模擬した供試材を、それぞれ切り出して樹脂に埋め込み、切断面を研磨し、その研磨面を顕微鏡にて倍率100倍で観察した。評価結果を、心材へのろうのエロージョンのないものを「○」、エロージョンの発生したものを「×」で示す。3種類すべての冷間圧延量においてエロージョンのないものを合格とした。
(耐食性の評価)
ろう付け熱処理材から60mm×70mmの試験片を切り出し、ろう材側(一面側)を試験面とし、試験面の中央の50mm×60mmの領域を空けて、周縁部ならびに他面および端面をシールテープで覆った。この試験片について、ASTM G85に規定のSWAAT試験を7日間行い、試験後の最大腐食深さを測定して値を示す。耐食性の合格基準は最大腐食深さが100μm以下とした。
Figure 0005390908
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表4および表5に示すように、心材のアルミニウム合金成分、ならびにろう材のアルミニウム合金成分および厚さが本発明の範囲の実施例である供試材No.1,4〜26,34,35,38,39,42,43は、いずれも成形加工性、ろう付け性、高温経時強度、および耐食性のすべてが合格基準であった。すなわち、片面にろう材を備えた2層材(供試材No.1)、両面にろう材を備えた3層材(供試材No.4〜26)、各面にろう材と犠牲陽極材をそれぞれ備えた3層材(供試材No.34,35)、ならびにろう材と心材の間に中間材を備えた4層材および5層材(供試材No.38,39,42,43)のいずれの構成としても、かつ本発明の範囲の厚さにて、熱交換器用ブレージングシートとして十分な特性を示した。
これに対して、心材のアルミニウム合金成分が本発明の範囲を外れた比較例はいずれか1つ以上の特性が不十分であった。供試材No.2はCu含有量が不足したため、高温経時強度が低下した。一方、供試材No.3はCu含有量が過剰であるため、耐食性が低下した。供試材No.27はMg含有量が過剰であるため、ろう付け性が低下した。また、供試材No.28はMn含有量が過剰であるため、耐食性が低下した。また、供試材No.30はSi含有量が過剰であるため、心材の固相線温度が降下してろう付け加熱の際に心材が溶融し、高温経時強度および耐エロージョン性の評価を行うことができなかった。
また、供試材No.29はFeとVが、供試材No.31はNiが、供試材No.36はCrが、供試材No.37はTiが、供試材No.40はZrが、それぞれ含有量が過剰であるため、成形加工性が低下した。さらに、供試材No.31はCdが、供試材No.36はInが、供試材No.37はAgが、また供試材No.30はSnが、本発明の範囲を超えて多く添加されているが、これらの成分によるさらなる強度の向上はみられなかった。
供試材No.41は、心材のアルミニウム合金成分は本発明の範囲であるが、ろう材のZn含有量が過剰なため耐食性が低下した。供試材No.32,33は、心材およびろう材のアルミニウム合金成分は本発明の範囲であるが、供試材No.32はろう材の厚さが不足したため、ろう付け性が得られず、一方、供試材No.33はろう材が厚すぎてエロージョンが発生した。

Claims (7)

  1. 心材とその片面または両面にAl−Si合金からなるろう材とを備える厚さ0.15〜0.7mmの高強度アルミニウム合金ブレージングシートであって、
    前記心材は、Cu:1.5質量%を超え2.5質量%以下、Mg:0.05質量%以上0.4質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物としてMnを0.06質量%未満に規制され、
    前記ろう材は、厚さが15〜70μmであることを特徴とする高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  2. 心材とその片面または両面にAl−Si合金からなるろう材とを備える厚さ0.15〜0.7mmの高強度アルミニウム合金ブレージングシートであって、
    前記心材は、Cu:2.1質量%以上2.5質量%以下、Mg:0.4質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物としてMnを0.06質量%未満に規制され、
    前記ろう材は、厚さが15〜70μmであることを特徴とする高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  3. 前記心材が、さらに、Ni:0.05〜1.5質量%を含有することを特徴とする請求項2に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  4. 前記ろう材が、さらに、Zn:0.05〜6.0質量%を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  5. 前記心材が、さらに、Fe:0.05〜1.5質量%、Si:0.05〜1.0質量%、Cr:0.05〜0.3質量%、Ti:0.05〜0.3質量%、Zr:0.05〜0.3質量%、V:0.05〜0.3質量%、Sn:0.01〜0.1質量%、Cd:0.01〜0.1質量%、In:0.01〜0.1質量%、Ag:0.01〜0.2質量%のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  6. 前記心材の一面側に前記ろう材を備え、前記心材の他面側にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる犠牲陽極材をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
  7. 前記心材と前記ろう材との間にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる中間材をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の高強度アルミニウム合金ブレージングシート。
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