JP2016176112A - アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【課題】耐食性、及び成形性に優れるとともに、ろう付け後の強度に優れるアルミニウム合金ブレージングシートを提供することを課題とする。
【解決手段】アルミニウム合金ブレージングシート1は、心材2と、前記心材2の一方の面に設けられるろう材3と、前記心材2の他方の面に設けられる犠牲陽極材4と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシート1であって、前記心材2は、所定の組成からなり、前記心材2のSiの含有量(質量%)を[Si]、前記心材2のMnの含有量(質量%)を[Mn]、前記心材2のMgの含有量(質量%)を[Mg]と表したときに、X=[Si]−([Mn]−0.2)/2.55−[Mg]/1.7で算出される前記Xが、0.01以上0.85以下であり、前記犠牲陽極材4は、所定の組成からなることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】アルミニウム合金ブレージングシート1は、心材2と、前記心材2の一方の面に設けられるろう材3と、前記心材2の他方の面に設けられる犠牲陽極材4と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシート1であって、前記心材2は、所定の組成からなり、前記心材2のSiの含有量(質量%)を[Si]、前記心材2のMnの含有量(質量%)を[Mn]、前記心材2のMgの含有量(質量%)を[Mg]と表したときに、X=[Si]−([Mn]−0.2)/2.55−[Mg]/1.7で算出される前記Xが、0.01以上0.85以下であり、前記犠牲陽極材4は、所定の組成からなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、アルミニウム合金ブレージングシートに関し、特に、自動車等の熱交換器に使用されるアルミニウム合金ブレージングシートに関する。
近年、自動車等の熱交換器に対して軽量化が要求されていることから、熱交換器の材料として使用されるアルミニウム合金ブレージングシートには薄肉化が求められている。この薄肉化を達成するためには、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付け後の強度の向上が不可欠である。
そして、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付け後の強度を向上させる手段として、従来から、Al−Mn−Si−Cu系合金にMgを添加させた心材を用いるという手段が採用されている。
そして、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付け後の強度を向上させる手段として、従来から、Al−Mn−Si−Cu系合金にMgを添加させた心材を用いるという手段が採用されている。
例えば、特許文献1には、心材の片面または両面にAl−Si系ろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、前記心材が、Si:0.3〜1.2%(質量%、以下同じ)、Fe:0.05〜0.4%、Cu:0.3〜1.2%、Mn:0.3〜1.8%、Mg:0.05〜0.6%を含有し、さらにTi:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Cr:0.02〜0.3%、V:0.02〜0.3%のうち1種以上を含有し、残部Alと不可避的不純物からなり、ろう付後の金属組織は、粒径0.1μm以上の金属間化合物の密度が10個/μm2以下であるAl合金であることを特徴とする高強度アルミニウム合金ブレージングシートが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、ろう付け後の強度の向上という点において、改善の余地が存在する。
また、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付け後の強度を向上させる技術として、特許文献1に開示されているような従来の技術とは異なる観点に基づいた技術の創出が望まれている。
また、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付け後の強度を向上させる技術として、特許文献1に開示されているような従来の技術とは異なる観点に基づいた技術の創出が望まれている。
加えて、アルミニウム合金ブレージングシートは、自動車等の熱交換器に適用する際に要求される一定のレベルの耐食性、及び成形性についても、満足する必要がある。
そこで、本発明は、耐食性、及び成形性に優れるとともに、ろう付け後の強度に優れるアルミニウム合金ブレージングシートを提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、心材と犠牲陽極材との組成だけでなく、心材中の固溶Si量に着目することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材と、前記心材の一方の面に設けられるろう材と、前記心材の他方の面に設けられる犠牲陽極材と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシートであって、前記心材は、Si:0.70質量%を超えて1.50質量%以下、Mn:0.90質量%を超えて1.80質量%以下、Cu:0.20質量%を超えて0.90質量%以下、Mg:0.50質量%を超えて1.00質量%以下、Ti:0.01質量%を超えて0.25質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、前記心材のSiの含有量(質量%)を[Si]、前記心材のMnの含有量(質量%)を[Mn]、前記心材のMgの含有量(質量%)を[Mg]と表したときに、X=[Si]−([Mn]−0.2)/2.55−[Mg]/1.7で算出される前記Xが、0.01以上0.85以下であり、前記犠牲陽極材は、Zn:1.00質量%を超えて5.00質量%以下、Mn:0.01質量%を超えて0.50質量%以下、Si:0.30質量%を超えて1.00質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材のSi、Mn、Cu、Mg、Tiの含有量、犠牲陽極材のZn、Mn、Siの含有量を所定の範囲内とするとともに、心材中の固溶Si量を推定するX値を所定の範囲内としていることから、耐食性、及び成形性に優れるとともに、ろう付け後の強度に優れる。さらに、ろう付け時の心材や犠牲陽極材の溶融を回避することができる。
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、前記Xが、0.03以上0.70以下であることが好ましい。
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、X値をさらに所定の範囲内となるように限定していることから、ろう付け後の強度の向上という効果を確実なものとすることができるとともに、ろう付け時の心材の溶融を確実に回避することができる。
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、X値をさらに所定の範囲内となるように限定していることから、ろう付け後の強度の向上という効果を確実なものとすることができるとともに、ろう付け時の心材の溶融を確実に回避することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材、及び犠牲陽極材の組成の含有量を制限するとともに、心材中の固溶Si量を推定するX値を制限していることから、耐食性、及び成形性に優れるとともに、ろう付け後の強度に優れる。
以下、適宜図面を参照して、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートを実施するための形態(実施形態)について説明する。
[アルミニウム合金ブレージングシート]
本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシート(以下、適宜、ブレージングシートという)は、図1に示すように、心材2と、心材2の一方の面に設けられるろう材3と、心材2の他方の面に設けられる犠牲陽極材4と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシート1である。
そして、本実施形態に係るブレージングシート1は、心材2、及び犠牲陽極材4の組成の含有量が所定の範囲内であるとともに、心材2のSi、Mn、Mg含有量を用いた数式(以下、適宜「固溶Si量算出式」という)により算出されるX値が所定の範囲内であることを特徴とする。
本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシート(以下、適宜、ブレージングシートという)は、図1に示すように、心材2と、心材2の一方の面に設けられるろう材3と、心材2の他方の面に設けられる犠牲陽極材4と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシート1である。
そして、本実施形態に係るブレージングシート1は、心材2、及び犠牲陽極材4の組成の含有量が所定の範囲内であるとともに、心材2のSi、Mn、Mg含有量を用いた数式(以下、適宜「固溶Si量算出式」という)により算出されるX値が所定の範囲内であることを特徴とする。
なお、本実施形態に係るブレージングシート1の厚さ、及び当該ブレージングシート1を構成する心材2、ろう材3、犠牲陽極材4の厚さについては特に制限されない。
ただし、ブレージングシートに対する薄肉化の要望に応じるとともに、ろう付け後の強度を確保するため、ブレージングシート1の厚さは、100〜250μmが好ましく、心材2の厚さは50〜200μmが好ましく、ろう材3の厚さは10〜50μmが好ましく、犠牲陽極材4の厚さは10〜50μmが好ましい。
ただし、ブレージングシートに対する薄肉化の要望に応じるとともに、ろう付け後の強度を確保するため、ブレージングシート1の厚さは、100〜250μmが好ましく、心材2の厚さは50〜200μmが好ましく、ろう材3の厚さは10〜50μmが好ましく、犠牲陽極材4の厚さは10〜50μmが好ましい。
以下、本実施形態に係るブレージングシートの心材の組成、心材のX値、犠牲陽極材の組成について数値限定した理由を詳細に説明する。
[心材(組成)]
本実施形態に係るブレージングシートの心材は、Si:0.70質量%を超えて1.50質量%以下、Mn:0.90質量%を超えて1.80質量%以下、Cu:0.20質量%を超えて0.90質量%以下、Mg:0.50質量%を超えて1.00質量%以下、Ti:0.01質量%を超えて0.25質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。
本実施形態に係るブレージングシートの心材は、Si:0.70質量%を超えて1.50質量%以下、Mn:0.90質量%を超えて1.80質量%以下、Cu:0.20質量%を超えて0.90質量%以下、Mg:0.50質量%を超えて1.00質量%以下、Ti:0.01質量%を超えて0.25質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。
(心材のSi:0.70質量%を超えて1.50質量%以下)
Siは、Al−Mn−Si系金属間化合物やMg−Si系化合物の形成、及び固溶することによりろう付け後の強度を向上させる。
Siの含有量が0.70質量%以下では、ろう付け後の強度向上という効果が小さい。一方、Siの含有量が1.50質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に心材が溶融する。
したがって、心材のSiの含有量は、0.70質量%を超えて1.50質量%以下である。
Siは、Al−Mn−Si系金属間化合物やMg−Si系化合物の形成、及び固溶することによりろう付け後の強度を向上させる。
Siの含有量が0.70質量%以下では、ろう付け後の強度向上という効果が小さい。一方、Siの含有量が1.50質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に心材が溶融する。
したがって、心材のSiの含有量は、0.70質量%を超えて1.50質量%以下である。
なお、Siを含有することに基づくろう付け後の強度向上という効果を確実なものとするため、心材のSiの含有量は、0.75質量%以上が好ましく、0.80質量%以上がさらに好ましい。また、Siの含有量が多いことに基づくろう付け時の心材の溶融を確実に回避するため、心材のSiの含有量は、1.40質量%以下が好ましく、1.30質量%以下がさらに好ましい。
(心材のMn:0.90質量%を超えて1.80質量%以下)
Mnは、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成することによりろう付け後の強度を向上させる。
Mnの含有量が0.90質量%以下では、ろう付け後の強度向上という効果が不十分である。一方、Mnの含有量が1.80質量%を超えると、鋳造時に形成される粗大な金属間化合物の量が増加し、成形性を低下させる。
したがって、心材のMnの含有量は、0.90質量%を超えて1.80質量%以下である。
Mnは、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成することによりろう付け後の強度を向上させる。
Mnの含有量が0.90質量%以下では、ろう付け後の強度向上という効果が不十分である。一方、Mnの含有量が1.80質量%を超えると、鋳造時に形成される粗大な金属間化合物の量が増加し、成形性を低下させる。
したがって、心材のMnの含有量は、0.90質量%を超えて1.80質量%以下である。
なお、Mnを含有することに基づくろう付け後の強度向上という効果を確実なものとするため、心材のMnの含有量は、0.95質量%以上が好ましく、1.00質量%以上がさらに好ましい。また、Mnの含有量が多いことに基づく成形性の低下を確実に回避するため、心材のSiの含有量は、1.70質量%以下が好ましく、1.60質量%以下がさらに好ましい。
(心材のCu:0.20質量%を超えて0.90質量%以下)
Cuは、心材の電位を貴化させ耐食性を向上させる。
Cuの含有量が0.20質量%以下では、耐食性の向上という効果が不十分である。一方、Cuの含有量が0.90質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に心材が溶融する。
したがって、心材のCuの含有量は、0.20質量%を超えて0.90質量%以下である。
Cuは、心材の電位を貴化させ耐食性を向上させる。
Cuの含有量が0.20質量%以下では、耐食性の向上という効果が不十分である。一方、Cuの含有量が0.90質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に心材が溶融する。
したがって、心材のCuの含有量は、0.20質量%を超えて0.90質量%以下である。
なお、Cuを含有することに基づく耐食性の向上という効果を確実なものとするため、心材のCuの含有量は、0.25質量%以上が好ましく、0.30質量%以上がさらに好ましい。また、Cuの含有量が多いことに基づくろう付け時の心材の溶融を確実に回避するため、心材のCuの含有量は、0.85質量%以下が好ましく、0.80質量%以下がさらに好ましい。
(心材のMg:0.50質量%を超えて1.00質量%以下)
Mgは、Siと共存させた場合、Mg−Si系金属間化合物を形成することによりろう付け後強度を向上させる。
Mgの含有量が0.50質量%以下では、ろう付け後の強度向上という効果が小さい。一方、Mgの含有量が1.00質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に心材が溶融する。
したがって、心材のMgの含有量は、0.50質量%を超えて1.00質量%以下である。
Mgは、Siと共存させた場合、Mg−Si系金属間化合物を形成することによりろう付け後強度を向上させる。
Mgの含有量が0.50質量%以下では、ろう付け後の強度向上という効果が小さい。一方、Mgの含有量が1.00質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に心材が溶融する。
したがって、心材のMgの含有量は、0.50質量%を超えて1.00質量%以下である。
なお、Mgを含有することに基づくろう付け後の強度向上という効果を確実なものとするため、心材のMgの含有量は、0.55質量%以上が好ましく、0.60質量%以上がさらに好ましい。また、Mgの含有量が多いことに基づくろう付け時の心材の溶融を確実に回避するため、心材のMgの含有量は、0.95質量%以下が好ましく、0.90質量%以下がさらに好ましい。
(心材のTi:0.01質量%を超えて0.25質量%以下)
Tiは、Al合金中でTi−Al系化合物を形成して層状に分散する。そして、このTi−Al系化合物は電位が貴であるため、腐食形態が層状化し、厚さ方向への腐食(孔食)に進展し難くなる効果、つまり、耐食性の向上という効果を発揮する。
Tiの含有量が0.01質量%以下では腐食形態の層状化の効果、つまり耐食性の向上という効果が小さい。一方、Tiの含有量が0.25質量%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が形成することで、成形性が低下する。
したがって、心材のTiの含有量は、0.01質量%を超えて0.25質量%以下である。
Tiは、Al合金中でTi−Al系化合物を形成して層状に分散する。そして、このTi−Al系化合物は電位が貴であるため、腐食形態が層状化し、厚さ方向への腐食(孔食)に進展し難くなる効果、つまり、耐食性の向上という効果を発揮する。
Tiの含有量が0.01質量%以下では腐食形態の層状化の効果、つまり耐食性の向上という効果が小さい。一方、Tiの含有量が0.25質量%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が形成することで、成形性が低下する。
したがって、心材のTiの含有量は、0.01質量%を超えて0.25質量%以下である。
なお、Tiを含有することに基づく耐食性の向上という効果を確実なものとするため、心材のTiの含有量は、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、Tiの含有量が多いことに基づく成形性の低下を確実に回避するため、心材のTiの含有量は、0.22質量%以下が好ましく、0.20質量%以下がさらに好ましい。
(心材の残部:Al及び不可避的不純物)
心材の組成は前記の通りであり、残部はAlおよび不可避的不純物からなる。そして、不可避的不純物は、ブレージングシートの諸特性を害さない範囲で許容される。なお、不可避的不純物としては、Fe、Zr、Cr等が挙げられる。
また、前記した特性をさらに向上させたり、他の特性を付加させたりするため、必要であれば、前記した不可避的不純物を積極的に含有させることも可能である。例えば、心材の材料特性(固相線温度、耐食性、強度など)をさらに高めるために、Cr、Zrであればそれぞれ0.5質量%以下含有させてもよい。
心材の組成は前記の通りであり、残部はAlおよび不可避的不純物からなる。そして、不可避的不純物は、ブレージングシートの諸特性を害さない範囲で許容される。なお、不可避的不純物としては、Fe、Zr、Cr等が挙げられる。
また、前記した特性をさらに向上させたり、他の特性を付加させたりするため、必要であれば、前記した不可避的不純物を積極的に含有させることも可能である。例えば、心材の材料特性(固相線温度、耐食性、強度など)をさらに高めるために、Cr、Zrであればそれぞれ0.5質量%以下含有させてもよい。
次に、本実施形態に係る心材のSi、Mn、Mgの含有量を用いた固溶Si量算出式について説明する。
(心材のSi、Mn、Mgの含有量を用いた固溶Si量算出式)
心材のSiの含有量(質量%)を[Si]、心材のMnの含有量(質量%)を[Mn]、心材のMgの含有量(質量%)を[Mg]と表したときに、固溶Si量算出式である「X=[Si]−([Mn]−0.2)/2.55−[Mg]/1.7」で算出されるX値が、0.01以上0.85以下である。
(心材のSi、Mn、Mgの含有量を用いた固溶Si量算出式)
心材のSiの含有量(質量%)を[Si]、心材のMnの含有量(質量%)を[Mn]、心材のMgの含有量(質量%)を[Mg]と表したときに、固溶Si量算出式である「X=[Si]−([Mn]−0.2)/2.55−[Mg]/1.7」で算出されるX値が、0.01以上0.85以下である。
本発明者らは、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付け後強度の向上という効果を確実に得るためには、心材及び犠牲陽極材の組成の含有量を制限するだけでなく、心材中の固溶Si量を制限する必要があることを見出した。
そして、本発明者らは、心材中の固溶Si量を算出するために、前記した固溶Si量算出式を創出した。
そして、本発明者らは、心材中の固溶Si量を算出するために、前記した固溶Si量算出式を創出した。
固溶Si量算出式の右辺の「([Mn]−0.2)/2.55」は、心材中のSiのうち、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成するSi量を推定し算出するものである。また、固溶Si量算出式の右辺の「[Mg]/1.7」は、心材中のSiのうち、Mg−Si系金属間化合物を形成するSi量を推定し算出するものである。
つまり、固溶Si量算出式は、心材中の全Si含有量から、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成するSi量と、Mg−Si系金属間化合物を形成するSi量とを減算することにより、心材中の固溶Si量を算出する式である。
つまり、固溶Si量算出式は、心材中の全Si含有量から、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成するSi量と、Mg−Si系金属間化合物を形成するSi量とを減算することにより、心材中の固溶Si量を算出する式である。
固溶Si量算出式中の各係数は、金属間化合物を形成する際のSiと各元素との比率、状態図(相図)により推定されるMnの固溶量、回帰分析などにより、発明者らが鋭意検討した結果、導きだしたものである。
具体的には、固溶Si量算出式の右辺の「0.2」は、状態図より推定されるMnの固溶量を推定することによって設定したものである。そして、固溶Si量算出式の右辺の「2.55」と「1.7」は、金属間化合物を形成する際のSiとMn、Mgとの比率を考慮しつつ、回帰分析を行い設定したものである。この回帰分析は、心材のSi、Mn、Mg等の含有量を適宜変更したブレージングシートのろう付け後の強度を測定し、図2に示すように、ろう付け後の強度と、X値との相関係数が高くなるように設定したものである。
具体的には、固溶Si量算出式の右辺の「0.2」は、状態図より推定されるMnの固溶量を推定することによって設定したものである。そして、固溶Si量算出式の右辺の「2.55」と「1.7」は、金属間化合物を形成する際のSiとMn、Mgとの比率を考慮しつつ、回帰分析を行い設定したものである。この回帰分析は、心材のSi、Mn、Mg等の含有量を適宜変更したブレージングシートのろう付け後の強度を測定し、図2に示すように、ろう付け後の強度と、X値との相関係数が高くなるように設定したものである。
X値が0.01未満では、固溶Si量が少なく、耐食性の向上という効果が不十分である。一方、X値が0.85を超えると、固溶Si量が多くなりすぎ、ろう付け時に心材が溶融する。
したがって、前記した固溶Si量算出式により算出されるX値は、0.01以上0.85以下である。
したがって、前記した固溶Si量算出式により算出されるX値は、0.01以上0.85以下である。
なお、固溶Siを含有することに基づくろう付け後の強度向上という効果を確実なものとするため、心材のX値は、0.02以上が好ましく、0.03以上がさらに好ましい。また、固溶Siの含有量が多いことに基づくろう付け時の心材の溶融を確実に回避するため、心材のX値は、0.80以下が好ましく、0.70以下がさらに好ましい。
次に、本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートの犠牲陽極材について説明する。
[犠牲陽極材(組成)]
本実施形態に係るブレージングシートの犠牲陽極材は、Zn:1.00質量%を超えて5.00質量%以下、Mn:0.01質量%を超えて0.50質量%以下、Si:0.30質量%を超えて1.00質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。
[犠牲陽極材(組成)]
本実施形態に係るブレージングシートの犠牲陽極材は、Zn:1.00質量%を超えて5.00質量%以下、Mn:0.01質量%を超えて0.50質量%以下、Si:0.30質量%を超えて1.00質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。
(犠牲陽極材のZn:1.00質量%を超えて5.00質量%以下)
Znは、犠牲陽極材の電位を卑化させ耐食性を向上させる。
Znの含有量が1.00質量%以下では、耐食性の向上という効果が不十分である。一方、Znの含有量が5.00質量%を超えると、犠牲陽極材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に犠牲陽極材が溶融する。
したがって、犠牲陽極材のZnの含有量は、1.00質量%を超えて5.00質量%以下である。
Znは、犠牲陽極材の電位を卑化させ耐食性を向上させる。
Znの含有量が1.00質量%以下では、耐食性の向上という効果が不十分である。一方、Znの含有量が5.00質量%を超えると、犠牲陽極材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に犠牲陽極材が溶融する。
したがって、犠牲陽極材のZnの含有量は、1.00質量%を超えて5.00質量%以下である。
なお、Znを含有することに基づく耐食性の向上という効果を確実なものとするため、犠牲陽極材のZnの含有量は、1.50質量%以上が好ましく、2.00質量%以上がさらに好ましい。また、Znの含有量が多いことに基づくろう付け時の犠牲陽極材の溶融を確実に回避するため、犠牲陽極材のZnの含有量は、4.50質量%以下が好ましく、4.00質量%以下がさらに好ましい。
(犠牲陽極材のMn:0.01質量%を超えて0.50質量%以下)
Mnは、Al−Mn−Si系金属間化合物の形成により腐食の起点を分散させ耐食性を向上させる。
Mnの含有量が0.01質量%以下では、耐食性の向上という効果が小さい。一方、Mnの含有量が0.50質量%を超えると鋳造時に形成される粗大な金属間化合物の量が増加し、成形性を低下させる。
したがって、犠牲陽極材のMnの含有量は、0.01質量%を超えて0.50質量%以下である。
Mnは、Al−Mn−Si系金属間化合物の形成により腐食の起点を分散させ耐食性を向上させる。
Mnの含有量が0.01質量%以下では、耐食性の向上という効果が小さい。一方、Mnの含有量が0.50質量%を超えると鋳造時に形成される粗大な金属間化合物の量が増加し、成形性を低下させる。
したがって、犠牲陽極材のMnの含有量は、0.01質量%を超えて0.50質量%以下である。
なお、Mnを含有することに基づく耐食性の向上という効果を確実なものとするため、犠牲陽極材のMnの含有量は、0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましい。また、Mnの含有量が多いことに基づく成形性の低下を確実に回避するため、犠牲陽極材のMnの含有量は、0.45質量%以下が好ましく、0.40質量%以下がさらに好ましい。
(犠牲陽極材のSi:0.30質量%を超えて1.00質量%以下)
Siは、Al−Mn−Si系金属間化合物やMg−Si系化合物の形成により腐食の起点を分散させ耐食性を向上させる。
Siの含有量が0.30質量%以下では、耐食性の向上という効果が小さい。一方、Siの含有量が1.00質量%を超えると、犠牲陽極材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に犠牲陽極材が溶融する。
したがって、犠牲陽極材のSiの含有量は、0.30質量%を超えて1.00質量%以下である。
Siは、Al−Mn−Si系金属間化合物やMg−Si系化合物の形成により腐食の起点を分散させ耐食性を向上させる。
Siの含有量が0.30質量%以下では、耐食性の向上という効果が小さい。一方、Siの含有量が1.00質量%を超えると、犠牲陽極材の固相線温度が低下するため、ろう付け時に犠牲陽極材が溶融する。
したがって、犠牲陽極材のSiの含有量は、0.30質量%を超えて1.00質量%以下である。
なお、Siを含有することに基づく耐食性の向上という効果を確実なものとするため、犠牲陽極材のSiの含有量は、0.35質量%以上が好ましく、0.40質量%以上がさらに好ましい。また、Siの含有量が多いことに基づく犠牲陽極材の溶融を確実に回避するため、犠牲陽極材のSiの含有量は、0.95質量%以下が好ましく、0.90質量%以下がさらに好ましい。
(犠牲陽極材の残部:Al及び不可避的不純物)
犠牲陽極材の組成は前記の通りであり、残部はAlおよび不可避的不純物からなる。そして、不可避的不純物は、ブレージングシートの諸特性を害さない範囲で許容される。なお、不可避的不純物としては、Fe、Mg、Cr、Ti等が挙げられる。
犠牲陽極材の組成は前記の通りであり、残部はAlおよび不可避的不純物からなる。そして、不可避的不純物は、ブレージングシートの諸特性を害さない範囲で許容される。なお、不可避的不純物としては、Fe、Mg、Cr、Ti等が挙げられる。
次に、本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう材について説明する。
[ろう材(組成)]
本実施形態に係るブレージングシートのろう材は、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付けにおいて通常用いられる3〜13質量%程度のSiを含有するAl−Si系合金、例えばJISZ3263:2002に記載されている合金番号4343、4045相当のAl−Si合金等が適用できる。また、Si以外にZnを添加して、ろう材側にも犠牲防食効果を付与してもよい。さらにCu、Mn、Mg等を含有してもよい。ただし、Mgについては、0.1質量%を超えるとろう付け性が低下する虞があるため、Mg:0.1質量%以下であれば含有してもよい。
[ろう材(組成)]
本実施形態に係るブレージングシートのろう材は、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付けにおいて通常用いられる3〜13質量%程度のSiを含有するAl−Si系合金、例えばJISZ3263:2002に記載されている合金番号4343、4045相当のAl−Si合金等が適用できる。また、Si以外にZnを添加して、ろう材側にも犠牲防食効果を付与してもよい。さらにCu、Mn、Mg等を含有してもよい。ただし、Mgについては、0.1質量%を超えるとろう付け性が低下する虞があるため、Mg:0.1質量%以下であれば含有してもよい。
ろう材における不可避的不純物として、例えば、Ti:0.05質量%以下、Zr:0.2質量%以下、B:0.1質量%以下、Fe:0.2質量%以下等を含有していても、本発明の効果を妨げるものではない。なお、ろう材において、このような不可避的不純物の含有量が合計で0.4質量%まで許容できる。
次に、本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法について説明する。
[アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法]
本実施形態に係るブレージングシートの製造方法は特に限定されず、例えば公知のクラッド材の製造方法により製造される。以下にその一例を説明する。
まず、心材、犠牲陽極材、ろう材のそれぞれの成分組成のアルミニウム合金を、溶解、鋳造し、さらに必要に応じて面削(鋳塊の表面平滑化処理)、均質化処理して、それぞれの鋳塊を得る。均質化処理は、例えば、心材および犠牲陽極材では430〜600℃×10時間以下の熱処理、ろう材では430〜560℃×10時間以下の熱処理を行う。
[アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法]
本実施形態に係るブレージングシートの製造方法は特に限定されず、例えば公知のクラッド材の製造方法により製造される。以下にその一例を説明する。
まず、心材、犠牲陽極材、ろう材のそれぞれの成分組成のアルミニウム合金を、溶解、鋳造し、さらに必要に応じて面削(鋳塊の表面平滑化処理)、均質化処理して、それぞれの鋳塊を得る。均質化処理は、例えば、心材および犠牲陽極材では430〜600℃×10時間以下の熱処理、ろう材では430〜560℃×10時間以下の熱処理を行う。
次に、それぞれの鋳塊を熱間圧延により、所定のクラッド率になるようにそれぞれ所定厚さの板材とする。次に、心材用の板材を、犠牲陽極材用の板材とろう材用の板材で挟んで重ね合わせ、この重ね合わせ材に熱処理(再加熱)を行った後、熱間圧延により圧着して一体の板材とし、さらに所定の最終板厚となるまで冷間圧延を行い、アルミニウム合金ブレージングシートとする(クラッド圧延)。前記冷間圧延において、必要に応じて中間焼鈍(連続焼鈍)を行ってもよい。また、最終板厚とした後に仕上げ焼鈍を実施してもよい。
本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法は、以上説明したとおりであるが、前記各工程において、明示していない条件については、従来公知の条件を用いればよく、前記各工程での処理によって得られる効果を奏する限りにおいて、その条件を適宜変更できることは言うまでもない。
次に、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートについて、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較して具体的に説明する。
[供試材作製]
表1に示す組成の心材、Al−10%Si合金のろう材、表2に示す組成の犠牲陽極材をDC鋳造により造塊し、各々所望の厚さまで両面を面削した。そして、ろう材及び犠牲陽極材にはそれぞれ均質化処理(550℃×4h)を施し、ろう材−心材−犠牲陽極材の順で組み合わせて530℃×4hの加熱を施した後、3.0mm厚まで熱間圧延を施した。なお、ろう材及び犠牲陽極材のクラッド率はそれぞれ20%とした。そして、熱間圧延後、冷間圧延により0.20mmの板材(心材:120μm、ろう材:40μm、犠牲陽極材:40μm)とし、200℃×5hの条件で最終焼鈍を施すことで供試材を作製した。
表1に示す組成の心材、Al−10%Si合金のろう材、表2に示す組成の犠牲陽極材をDC鋳造により造塊し、各々所望の厚さまで両面を面削した。そして、ろう材及び犠牲陽極材にはそれぞれ均質化処理(550℃×4h)を施し、ろう材−心材−犠牲陽極材の順で組み合わせて530℃×4hの加熱を施した後、3.0mm厚まで熱間圧延を施した。なお、ろう材及び犠牲陽極材のクラッド率はそれぞれ20%とした。そして、熱間圧延後、冷間圧延により0.20mmの板材(心材:120μm、ろう材:40μm、犠牲陽極材:40μm)とし、200℃×5hの条件で最終焼鈍を施すことで供試材を作製した。
次に、ろう付け後強度評価、耐食性評価、成形性評価の評価方法及び評価基準を示す。
[ろう付け後強度評価]
供試材を、ろう付けの条件に相当する600℃で3分間という条件で加熱処理した後、室温で7日間保持し、引張方向が圧延方向と平行となるように、JIS5号試験片に加工した。そして、室温にて引張試験(JISZ2241:2011)を実施することにより引張強さ(ろう付け後強度)を測定した。
引張強さが175MPa以上のものをろう付強度が良好(○)、175MPa未満のものを不良(×)とした。なお、ろう付け時に心材もしくは犠牲陽極材が溶融するものについては、評価を行わなかった。
[ろう付け後強度評価]
供試材を、ろう付けの条件に相当する600℃で3分間という条件で加熱処理した後、室温で7日間保持し、引張方向が圧延方向と平行となるように、JIS5号試験片に加工した。そして、室温にて引張試験(JISZ2241:2011)を実施することにより引張強さ(ろう付け後強度)を測定した。
引張強さが175MPa以上のものをろう付強度が良好(○)、175MPa未満のものを不良(×)とした。なお、ろう付け時に心材もしくは犠牲陽極材が溶融するものについては、評価を行わなかった。
[耐食性評価]
供試材を、ろう付けの条件に相当する600℃で3分間という条件で加熱処理した後、供試材から50mm×50mmの試験片を切り出した。そして、当該試験片の犠牲陽極材側を試験面(中央の40mm×40mm)として、OY水(Cl−:195質量ppm、SO4 2−:60質量ppm、Cu2+:1質量ppm、Fe3+:30質量ppm、pH:3.0)に浸漬し、3ヶ月間、浸漬試験を実施することで耐食性を評価した。
そして、この浸漬試験は、OY水を、室温から1時間で88℃まで加熱し、この88℃で7時間保持した後、室温まで1時間で冷却し、この室温にて15時間保持するという一連の流れを1日1サイクルとし、3ヶ月間行うというものであった。試験後は、試験面の中でも腐食が最も顕著な領域を光学顕微鏡により断面観察し、腐食形態と腐食深さを求めた。
腐食深さが100μm未満の場合を良好(○)、腐食深さが100μm以上の場合を不良(×)とした。なお、ろう付け時に心材もしくは犠牲陽極材が溶融するものについては、評価を行わなかった。
供試材を、ろう付けの条件に相当する600℃で3分間という条件で加熱処理した後、供試材から50mm×50mmの試験片を切り出した。そして、当該試験片の犠牲陽極材側を試験面(中央の40mm×40mm)として、OY水(Cl−:195質量ppm、SO4 2−:60質量ppm、Cu2+:1質量ppm、Fe3+:30質量ppm、pH:3.0)に浸漬し、3ヶ月間、浸漬試験を実施することで耐食性を評価した。
そして、この浸漬試験は、OY水を、室温から1時間で88℃まで加熱し、この88℃で7時間保持した後、室温まで1時間で冷却し、この室温にて15時間保持するという一連の流れを1日1サイクルとし、3ヶ月間行うというものであった。試験後は、試験面の中でも腐食が最も顕著な領域を光学顕微鏡により断面観察し、腐食形態と腐食深さを求めた。
腐食深さが100μm未満の場合を良好(○)、腐食深さが100μm以上の場合を不良(×)とした。なお、ろう付け時に心材もしくは犠牲陽極材が溶融するものについては、評価を行わなかった。
[成形性評価]
供試材を、ろう付け加熱する前に、ろう材面側が張り出すように、JIS Z 2247:2006によりエリクセン試験を行い、張り出し高さを測定することにより評価した。詳細には、供試材から90mm×90mmの試験片を切り出し、この試験片に犠牲陽極材側から20mmφの球頭張出治具を押し込んで、割れが発生した時の張り出し高さ(押し込み深さ)を測定した。
張り出し高さが8mm以上である場合を良好(○)、張り出し高さが8mm未満(×)である場合を不良とした。なお、ろう付け時に心材もしくは犠牲陽極材が溶融するものについては、評価を行わなかった。
供試材を、ろう付け加熱する前に、ろう材面側が張り出すように、JIS Z 2247:2006によりエリクセン試験を行い、張り出し高さを測定することにより評価した。詳細には、供試材から90mm×90mmの試験片を切り出し、この試験片に犠牲陽極材側から20mmφの球頭張出治具を押し込んで、割れが発生した時の張り出し高さ(押し込み深さ)を測定した。
張り出し高さが8mm以上である場合を良好(○)、張り出し高さが8mm未満(×)である場合を不良とした。なお、ろう付け時に心材もしくは犠牲陽極材が溶融するものについては、評価を行わなかった。
以下、表1には、心材の組成、表2には、犠牲陽極材の組成、表3及び表4には、評価結果を示す。
なお、表1の心材、及び表2の犠牲陽極材の残部はAl及び不可避的不純物であり、表中の「−」は、含有していない(検出限界以下である)ことを示す。
なお、表1の心材、及び表2の犠牲陽極材の残部はAl及び不可避的不純物であり、表中の「−」は、含有していない(検出限界以下である)ことを示す。
[結果の検討]
供試材1−1〜1−10、及び供試材2−1〜2−6については、本発明の規定する要件を全て満たしていたことから、「ろう付け後強度」「耐食性」「成形性」のいずれの評価も良好という結果となった。
供試材1−1〜1−10、及び供試材2−1〜2−6については、本発明の規定する要件を全て満たしていたことから、「ろう付け後強度」「耐食性」「成形性」のいずれの評価も良好という結果となった。
供試材1−11は、心材のMgの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、ろう付け後強度が不良という結果となった。
供試材1−12は、心材のMgの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまった。
供試材1−13は、心材のSiの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、ろう付け後強度が不良という結果となった。
供試材1−14は、心材のSiの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまった。
供試材1−12は、心材のMgの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまった。
供試材1−13は、心材のSiの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、ろう付け後強度が不良という結果となった。
供試材1−14は、心材のSiの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまった。
供試材1−15は、心材のMnの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、ろう付け後強度が不良という結果となった。
供試材1−16は、心材のMnの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、成形性が不良という結果となった。
供試材1−17は、心材のCuの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、耐食性が不良という結果となった。
供試材1−18は、心材のCuの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまった。
供試材1−16は、心材のMnの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、成形性が不良という結果となった。
供試材1−17は、心材のCuの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、耐食性が不良という結果となった。
供試材1−18は、心材のCuの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまった。
供試材1−19は、心材のTiの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、耐食性が不良という結果となった。
供試材1−20は、心材のTiの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、成形性が不良という結果となった。
供試材1−20は、心材のTiの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、成形性が不良という結果となった。
供試材1−21は、心材のX値が本発明の規定する下限値未満であったことから、ろう付け後強度が不良という結果となった。
供試材1−22は、心材のSiの含有量が本発明の規定する下限値以下であるとともに、X値も本発明の規定する下限値未満であったことから、ろう付け後強度が不良という結果となった。なお、供試材1−22は、特許文献1のブレージングシートを想定したものである。
供試材1−23は、心材のX値が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまった。
供試材1−22は、心材のSiの含有量が本発明の規定する下限値以下であるとともに、X値も本発明の規定する下限値未満であったことから、ろう付け後強度が不良という結果となった。なお、供試材1−22は、特許文献1のブレージングシートを想定したものである。
供試材1−23は、心材のX値が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に心材が溶融してしまった。
供試材2−7は、犠牲陽極材のZnの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、耐食性が不良という結果となった。
供試材2−8は、犠牲陽極材のZnの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に犠牲陽極材が溶融してしまった。
供試材2−9は、犠牲陽極材のMnの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、耐食性が不良という結果となった。
供試材2−10は、犠牲陽極材のMnの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、成形性が不良という結果となった。
供試材2−8は、犠牲陽極材のZnの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に犠牲陽極材が溶融してしまった。
供試材2−9は、犠牲陽極材のMnの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、耐食性が不良という結果となった。
供試材2−10は、犠牲陽極材のMnの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、成形性が不良という結果となった。
供試材2−11は、犠牲陽極材のSiの含有量が本発明の規定する下限値以下であったことから、耐食性が不良という結果となった。
供試材2−12は、犠牲陽極材のSiの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に犠牲陽極材が溶融してしまった。
供試材2−12は、犠牲陽極材のSiの含有量が本発明の規定する上限値を超えていたことから、ろう付け加熱時に犠牲陽極材が溶融してしまった。
1 アルミニウム合金ブレージングシート(ブレージングシート)
2 心材
3 ろう材
4 犠牲陽極材
2 心材
3 ろう材
4 犠牲陽極材
Claims (2)
- 心材と、前記心材の一方の面に設けられるろう材と、前記心材の他方の面に設けられる犠牲陽極材と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記心材は、Si:0.70質量%を超えて1.50質量%以下、Mn:0.90質量%を超えて1.80質量%以下、Cu:0.20質量%を超えて0.90質量%以下、Mg:0.50質量%を超えて1.00質量%以下、Ti:0.01質量%を超えて0.25質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、
前記心材のSiの含有量(質量%)を[Si]、前記心材のMnの含有量(質量%)を[Mn]、前記心材のMgの含有量(質量%)を[Mg]と表したときに、X=[Si]−([Mn]−0.2)/2.55−[Mg]/1.7で算出される前記Xが、0.01以上0.85以下であり、
前記犠牲陽極材は、Zn:1.00質量%を超えて5.00質量%以下、Mn:0.01質量%を超えて0.50質量%以下、Si:0.30質量%を超えて1.00質量%以下、を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記Xが、0.03以上0.70以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
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