JP2008222158A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性を損ねることなくワンダリングを効果的に防止する。
【解決手段】トレッド部2に、最も接地端E側をのびるショルダー縦溝6cと、該ショルダー縦溝6cから接地端Eまでのびるショルダー横溝7dとが設けられ、しかもトレッド部2の外面2aと、接地端Eからタイヤ半径方向内方にのびるバットレス面14とがエッジを有して交差するスクエアショルダーの空気入りタイヤである。ショルダーブロックB4には、接地端Eから軸方向内側に2mm以上かつ10mm以下の領域に周方向サイプ11が設けられる。周方向サイプ11をバットレス面14に投影した投影領域Zの少なくとも一部に、周方向にのびる凹み部15が設けられる。凹み部15の半径方向の最内端位置15Bは周方向サイプ11の深さの50〜100%の範囲に設けられる。
【選択図】図4

Description

本発明は、氷雪路面での走行に適した空気入りタイヤに関し、詳しくは耐摩耗性を損ねることなくワンダリングを効果的に防止しうる空気入りタイヤに関する。
氷雪路の走行に適した例えばスタッドレスタイヤを含む空気入りタイヤにあっては、通常、スクエアショルダーで形成される。スクエアショルダーは、図7に実線で示されるように、ショルダーブロックの外面aと、タイヤ半径方向内方にかつタイヤ軸方向外側に傾斜してのびるバットレス面bとが実質的にエッジ(角)を有して接地端eで交差する。なお、「実質的なエッジ」であるから、例えば接地端eが半径2.0mm以下の小円弧で面取りされたようなものは、ここで言うスクエアショルダに含まれ得る。このようなトレッド部は、大きな接地幅TWを確保し、氷路において十分な駆動力等を得ることができる。なお、ラウンドショルダーの輪郭線の一例が、仮想線にて示されている。
しかしながら、スクエアショルダーの空気入りタイヤにあっては、轍路面等を走行する際、前記接地端e又はその近傍のバットレス面bの一部が轍の斜面等に接触しやすく、ひいては路面からの外力等によってタイヤがふらつく所謂ワンダリング現象が発生しやすい。このようなワンダリング減少を抑制するものとして、下記特許文献1ないし2が提案されているが、いずれも耐摩耗性等に関してさらなる改善の余地がある。
特開平6−87303号公報 特開平10−138713号公報
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ショルダーブロックの接地端からタイヤ軸方向内側に2mm以上かつ10mm以下の領域にタイヤ周方向にのびる周方向サイプを設ける一方、該周方向サイプをタイヤ軸方向に沿ってバットレス面に投影した投影領域の少なくとも一部に、深さを制限したタイヤ周方向にのびる凹み部を設け、しかもそのタイヤ半径方向の最内端位置を前記周方向サイプの深さと関連付けて規制することを基本として、耐摩耗性を損ねることなくワンダリング現象を抑制しうる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部に、最も接地端側をタイヤ周方向に連続してのびるショルダー縦溝と、該ショルダー縦溝から前記接地端までのびる複数本のショルダー横溝とが設けられることにより、前記接地端に沿ってショルダーブロックが並ぶショルダーブロック列を有し、しかも前記ショルダーブロックの外面と、タイヤ半径方向内方に向かってタイヤ軸方向外側にのびるバットレス面とが前記接地端で実質的にエッジを有して交差するスクエアショルダーを具えた空気入りタイヤであって、前記ショルダーブロックには、前記接地端からタイヤ軸方向内側2mm以上かつ10mm以下の領域にタイヤ周方向にのびる周方向サイプが設けられ、かつ前記周方向サイプをタイヤ軸方向に沿って前記バットレス面に投影した投影領域の少なくとも一部に、該バットレス面からの深さが0.5〜3mmでタイヤ周方向にのびる凹み部が設けられるとともに、該凹み部のタイヤ半径方向の最内端位置が前記周方向サイプの深さの50〜100%の範囲に設けられることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、正規リムにリム組みしかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記凹み部は、バットレス面からタイヤ半径方向内側にかつタイヤ半径方向線に対して±10度以内の角度でのびる縦面と、前記縦面よりもタイヤ半径方向内側に位置しかつバットレス面からタイヤ軸方向線に対して±10度以内の角度でタイヤ軸方向内側にのびる横面と、前記縦面と前記横面とを滑らかな円弧で継ぐ円弧面とからなる断面略三角形状である請求項1記載の空気入りタイヤである。
また請求項3記載の発明は、前記バットレス面は、前記接地端からタイヤ半径方向内方に向かってタイヤ軸方向外側にのびる傾斜を具える外側斜面と、この外側斜面に連なりかつ外側斜面の傾斜よりも緩やかな傾斜でタイヤ半径方向内方にのびる中間斜面と、この中間斜面に連なりかつ前記外側斜面の傾斜と略平行にのびる内側斜面とを含み、かつ前記凹み部が前記中間斜面に設けられている請求項1又は2に記載の空気入りタイヤである。
また請求項4記載の発明は、前記周方向サイプは、両端部が前記ショルダー横溝に開口することなくブロック内部に位置する請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
また請求項5記載の発明は、前記凹み部は、周方向サイプよりも大きいタイヤ周方向長さを有し、しかも、凹み部の両端部は前記ショルダー横溝に開口することなくバットレス面に位置するとともに、該凹み部の端部が、いずれも周方向サイプの端部と、それと近い側のショルダー横溝との間に設けられている請求項4に記載の空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤは、周方向サイプ及び凹み部により、トレッド部の接地端付近の剛性が低く抑えられる。該接地端等が轍の斜面と接触した場合、通常、キャンバースラストと同様の作用によってショルダーブロックには斜面を上ろうとする横力が作用する。しかし、ショルダーブロックの周方向サイプよりもタイヤ軸方向外側の部分は、凹み部を支点としてタイヤ軸方向外側へと柔軟に変形しうる結果、前記横力をタイヤ全体に伝えることなく逃がすことができる。従って、ワンダリング性能が向上する。
しかも、凹み部は、その深さが限定されるとともに、そのタイヤ半径方向の内端位置が、周方向サイプの深さの50〜100%の範囲に設けられる。このような凹み部は、ショルダーブロックのエッジ付近の剛性を過度に低下させることなく上述の柔軟な変形作用を発揮させ得る。従って、ショルダーブロックの耐摩耗性が向上する。
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態の空気入りタイヤ1の左半分断面図、図2はその展開図がそれぞれ示される。なお、図1の断面は、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面である。特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim"となる。また、前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
前記空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、その両端部からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部3と、該サイドウォール部3の内方に連設されたビード部(図示せず)とを有し、この実施形態では乗用車用のスタッドレスタイヤが示される。また、空気入りタイヤ1は、トロイド状にのびる例えば有機繊維コードからなるカーカス4と、該カーカス4のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配された例えば2枚のスチールコードベルト5A、5Bからなるベルト層5とによって補強されている。
前記トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の縦溝6と、該縦溝6と交わる向きにのびる複数本の横溝7とが設けられている。これらの縦溝6及び横溝7は、排水及び排雪機能を発揮しうる。
前記縦溝6は、例えばタイヤ赤道Cの最も近くに配されかつその両側をのびる一対のセンター縦溝6aと、その外側に配された一対のミドル縦溝6bと、さらにそのタイヤ軸方向外側に配されかつ最も接地端E側をのびる一対のショルダー縦溝6cとを含む。本実施形態において、センター縦溝6a及びミドル縦溝6bは、ジグザグ状で形成される一方、ショルダー縦溝6cは直線状で形成される。溝の形状、溝幅及び溝深さ等は、例示の形態に制限されることなく適宜変更できる。
なお、前記接地端Eは、正規状態の空気入りタイヤ1に正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置とする。また、前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用の場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
前記横溝7は、センター縦溝6a、6a間をのびる複数のセンター横溝7aと、センター縦溝6aとミドル縦溝6bとの間をのびる複数の第1のミドル横溝7bと、ミドル縦溝6bとショルダー縦溝6cとの間をのびる複数の第2のミドル横溝7cと、ショルダー縦溝6cと接地端Eとの間をのびる複数のショルダー横溝7dとを含む。本実施形態の各横溝7aないし7dは、溝壁がジグザグ状で形成される。これは、横溝7aないし7dの溝縁の長さを増加させ、ひいては氷路面でのグリップを高める点で望ましい。
本実施形態のトレッド部2には、前記縦溝6及び横溝7により、タイヤ赤道C上でセンターブロックB1がタイヤ周方向に並ぶセンターブロック列BR1と、その両外側で第1のミドルブロックB2がタイヤ周方向に並ぶ第1のミドルブロック列BR2と、さらにその両外側で第2のミドルブロックB3がタイヤ周方向に並ぶ第2のミドルブロック列BR3と、さらにその両外側で接地端Eに沿ってショルダーブロックB4がタイヤ周方向に並ぶショルダーブロック列BR4とが区分される。
なお、特に限定されるわけではないが、各ブロックB1ないしB4のタイヤ軸方向の幅BW(図1及び図3にショルダーブロックB4の幅を代表して示す。)は、小さすぎると横剛性が過度に低下して操縦安定性が悪化するおそれがあるし、逆に大きすぎると縦溝6の溝容積が少なくなり、雪上性能が低下するおそれがある。このような観点より、各ブロックB1ないしB4の幅BWは、好ましくは16mm以上、より好ましくは20mm以上が望ましく、また、好ましくは30mm以下、より好ましくは26mm以下が望ましい。
各ブロックB1ないしB4には、それぞれタイヤ軸方向にのびる複数本の軸方向サイプ10が設けられる。図3にはショルダーブロックB4の拡大平面図が示される。図3に示されるように、軸方向サイプ10は、その厚さ(溝で言う溝幅に相当するもので以下同じ。)W1が0.5〜1.5mm程度の薄い切り込み状で形成される。該軸方向サイプ10は、そのエッジによって主として直進走行時の氷路面に対する摩擦力を高め、駆動乃至制動力を効果的に発揮させ得る。このような作用を有効に発揮させるために、軸方向サイプ10は、その両端10a及び10bを結ぶ直線L1のタイヤ軸方向に対する角度θ1が、好ましくは±20度以内、より好ましくは±15度以内で設けられるのが望ましい。なお、本実施形態の軸方向サイプ10は、タイヤ軸方向にジグザグ状でのびるものが示されるが、波状や直線状、さらにはこれらを組み合わせたものでも良い。
図1に示されるように、本発明の空気入りタイヤ1は、ショルダーブロックB4の外面2aと、タイヤ半径方向内方に向かってかつタイヤ軸方向外側に傾く傾斜を有するバットレス面14とが実質的なエッジを有して前記接地端Eで交差するスクエアショルダーとして形成される。換言すれば、接地端Eがエッジ(角)上にある。従って、空気入りタイヤ1は、いわゆるラウンドショルダーのタイヤに比べ、大きな接地幅TWを確保できるので、氷路において接地面積を増大させ、ひいては大きな駆動ないし制動力を得ることができる。
図3に示されるように、前記ショルダーブロックB4には、接地端Eからタイヤ軸方向内側に2mm以上かつ10mm以下の領域Fに、タイヤ周方向にのびる周方向サイプ11が設けられる。
本実施形態の周方向サイプ11は、その中央部をなすジグザグ状部11cと、その両側に連なる直線部11a及び11bとで構成される。ただし、このような形状に限定されるものではない。周方向サイプ11も、軸方向サイプ10と同様、厚さW2が0.5〜1.5mm程度の切り込み状で形成される。該周方向サイプ11は、氷路面での旋回時等において効果的なエッジ作用を発揮する。
上述の作用を有効に発揮させるために、周方向サイプ11の両端11e、11eを結ぶ直線L2のタイヤ周方向に対する角度θ2は、好ましくは±20度以内、より好ましくは±10度以内、さらに好ましくは±5度以内が望ましい。なお、本実施形態の周方向サイプ11全体がは、領域Fからはみ出すことなく設けられる好ましい態様を示す。ただし、前記直線L2が前記領域F内からはみ出すことなく設けられていれば、そのサイプは、接地端Eからタイヤ軸方向内側2mm以上かつ10mm以下の領域Fに設けられているものと定義される。
また、周方向サイプ11により、ショルダーブロックB4は、該周方向サイプ11よりもタイヤ軸方向内側の主部12と、周方向サイプ11よりもタイヤ軸方向外側かつ前記主部12よりも幅の小さい側縁部13とに区分される。側縁部13は、主部12に比べてタイヤ軸方向の幅が小さいので、剛性が小さく、ひいては外力を受けたときに変形しやすい。従って、側縁部13は、轍の斜面との接触時に柔軟に変形し、斜面との引っ掛かりや乗り上げを防止できる。
ここで、周方向サイプ11が接地端Eからタイヤ軸方向内側に2mm以上隔てられていない場合、側縁部13が過度に薄肉化し、ひいては走行によって該側縁部13のちぎれや偏摩耗が発生しやすくなる。逆に、周方向サイプ11が、接地端Eからタイヤ軸方向内側に10mmを超える領域に設けられた場合、側縁部13が厚肉化して柔軟な変形が損なわれ、ひいてはワンダリング抑制効果が低下する。
また、上述の側縁部13の作用は、側縁部13が主部12から完全に分断されていなくても達成され得る。しかしながら、周方向サイプ11のタイヤ周方向の長さLSが過度に小さい場合、ショルダーブロックB4の側縁部13の剛性を十分に低下させることができない。このような観点より、前記長さLSは、好ましくはショルダーブロックB4の接地端Eにおけるタイヤ周方向の長さLBの50%以上、より好ましくは60%以上が望ましい。
また、周方向サイプ11はショルダー横溝7dで開口しても良い。ただし、この場合には、側縁部13の剛性がやや低下するおそれがある。このような観点より、周方向サイプ11の両端部11eは、いずれもショルダー横溝7dに開口することなくブロック内部に位置するクローズドタイプが望ましい。とりわけ、周方向サイプ11の端部11eでの偏摩耗等を防止するために、各端部11eと、ショルダー横溝7dとの間のタイヤ周方向の長さKは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上が望ましい。
また、図1に示されるように、周方向サイプ11の深さSDは特に限定されないが、小さすぎると、摩耗によって側縁部13が早期に消失するおそれがある。逆に、周方向サイプ11の深さSDが過度に大きくなると、ショルダーブロックB4の剛性が低下し、操縦安定性や耐摩耗性が悪化するおそれがある。このような観点より、周方向サイプ11の深さSDは、好ましくはショルダー縦溝6cの深さGDの20%以上、より好ましくは30%以上が望ましく、また、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下が望ましい。なお、溝の深さは、溝断面の中心線に沿って測定される。
図4はショルダーブロックB4を含むトレッド部2の部分斜視図、図5(a)は図4のI−I拡大断面図、同図(b)はさらにその要部拡大図をそれぞれ示す。本実施形態のバットレス面14は、接地端Eからタイヤ半径方向内方に向かってタイヤ軸方向外側にのびる傾斜(例えばタイヤ半径方向線に対する角度αが5〜30度)-を有した外側斜面14aと、この外側斜面14aに連なりかつ外側斜面14aの傾斜よりも緩やかな(即ち、タイヤ軸方向線に対する角度が小さい)傾斜でタイヤ半径方向内方にのびる中間斜面14bと、この中間斜面14bに連なりかつ前記外側斜面14aの傾斜と略平行な傾斜を有する内側斜面14cとを含んで構成される。本実施形態では、各斜面14aないし14bが稜線を有してステップ状に接続された態様が示される。従って、内側傾斜面14cは、外側斜面14aに比べてゴム厚さが大に形成される。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、前記周方向サイプ11をタイヤ軸方向に沿ってバットレス面14に投影した投影領域Z(図4にてグレー色で示される)の少なくとも一部に、タイヤ周方向にのびる凹み部15が設けられる。本実施形態の凹み部15は、バットレス面14の中間斜面14bをタイヤ周方向にのびるものが示される。
バットレス面14は、タイヤ半径方向内側に向かってタイヤ軸方向外側に傾く斜面で形成される。このため、ショルダーブロックB4に周方向サイプ11を設けただけでは、側縁部13を十分にタイヤ軸方向外側に変形させるには限界がある。これに対し、バットレス面14の前記投影領域Zに凹み部15を設けた場合には、図5から明らかなように、側縁部13の根元側の幅を小さくでき、ひいては側縁部13をタイヤ軸方向外側へとより大きく変形させる得る。
従って、ショルダーブロックB4に、轍の斜面を上ろうとする横力が作用した場合、凹み部15を支点として側縁部13をタイヤ軸方向外側へと柔軟にかつ大きく変形させることができる。轍によって発生するキャンバースラスト(横力)を側縁部13の変形によって逃がすことができ、ひいてはワンダリング性能が大幅に向上する。
また、本実施形態の周方向サイプ11がジグザグ状部11cを含むことにより、ショルダーブロックB4の主部12と側縁部13とは、該ジグザグ状部11cで互いに噛み合うことによって一体として周方向に変形しうる。従って、側縁部13側の偏摩耗などがより確実に防止される。
ここで、前記投影領域Zは、図5(a)において、接地端Eと符号P(周方向サイプ11のサイプ底11Bをタイヤ軸方向に沿ってバットレス面14に投影した位置)とで挟まれるタイヤ外面上の領域であり、周方向サイプ11と同じタイヤ周方向の長さLSを持つ。
また、凹み部15は、図5(b)に示されるように、バットレス面14からの深さHdが0.5〜3mmである必要がある。該深さHdが0.5mm未満では、側縁部13をタイヤ軸方向外側に十分に変形させることができず、ひいてはワンダリング抑制効果が低下する。逆に前記深さHdが3mmを超えると、側縁部13の剛性が低下しやすくなり、ひいては耐摩耗性が悪化するおそれがある。このような観点より、凹み部15の深さHdは、より好ましくは1mm以上かつ2mm以下が望ましい。なお、凹み部15の深さHdは、図5(b)に示されるように、凹み部15のタイヤ半径方向の外縁15oと、タイヤ半径方向の内縁15iとを継ぐ平面HPと直角方向に測定されるものとする。
さらに、凹み部15は、そのタイヤ半径方向の最内端位置15Bが、タイヤ半径方向における周方向サイプ11の深さSDの50〜100%の範囲Mに設けられる必要がある。凹み部15の最内端位置15Bが、タイヤ半径方向において、周方向サイプ11の深さSDの50%未満の範囲に設けられると、側縁部13の根元部分の剛性を十分に低下させることができず、ひいては上述のワンダリング抑制効果が十分に得られない。逆に、前記凹み部15の最内端位置15Bが周方向サイプ11の深さSdの100%を超える範囲に設けられると、側縁部13の変形量が著しく大きくなり、周方向サイプ11のサイプ底11Bなどにクラックや亀裂が発生する他、側縁部13を起点とした偏摩耗が生じやすくなる。このような観点より、凹み部15の最内端位置15Bは、特に好ましくは、周方向サイプ11の深さSDの50%以上かつ70%以下の領域に設けられるのが望ましい。
図5から明らかなように、タイヤ子午線断面において、本実施形態の凹み部15は、バットレス面14からタイヤ半径方向内側にかつタイヤ半径方向線に対して±10度以内の角度でのびる縦面15aと、該縦面15aよりもタイヤ半径方向内方に設けられかつバットレス面14からタイヤ軸方向線に対して±10度の角度でのびる横面15bと、縦面15aと横面15bとを滑らかな円弧で継ぐ円弧面15cとからなり、断面略三角形状で形成されている。なお、本実施形態においては、横面15bが、凹み部15のタイヤ半径方向の最内端位置15Bを構成する。
上述の縦面15aは、周方向サイプ11と略平行にのびる。これにより、側縁部13の根元部を実質的に一定幅とし、その剛性を確実に低下させる。これにより、轍走行時に側縁部13を十分に変形させて、ワンダリング抑制効果をより確実に発揮させることができる。もし、縦面15aの前記角度がタイヤ半径方向線に対して+10度(反時計回りを正とし、プラス10度の縦面とは、タイヤ半径方向内側に向かってタイヤ軸方向内側に傾斜する態様を指す。)を超える場合、側縁部13の剛性が過度に低下し、ゴム欠けや偏摩耗が生じやすいおそれがある。逆に、縦面15aの前記角度がタイヤ半径方向線に対して−10度(マイナス10度の縦面とは、タイヤ半径方向内側に向かってタイヤ軸方向外側に傾斜する態様を指す。)よりも小さい場合、側縁部13の剛性を十分に低下させることができず、ワンダリング抑制効果が低下しやすい。
また、横面15bは、側縁部13がタイヤ軸方向外側に十分に変形した際にこれを妨げないように十分な変形空間を提供する。従って、轍走行時に生じるキャンバースラストを確実に逃がすことができる。しかも、横面15bは、バットレス面14の内側斜面14cに接続される。該内側斜面14cは、外側斜面14aに比してゴム厚さが大きく形成されるため、周方向サイプ11のサイプ底11Bでの損傷を効果的に防止しうる。
なお、横面15bの前記角度がタイヤ軸方向線に対して+10度(反時計回りを正とし、プラス10度の横面とは、タイヤ半径方向内側に向かってタイヤ軸方向外側に傾斜する態様を指す。)を超える場合、側縁部13の剛性が低下し易くなる他、縦面15aと横面15bとの交差部(円弧面15c)に適度な応力集中が生じないおそれがある。逆に、横面15bの前記角度がタイヤ軸方向線に対して−10度(マイナス10度の横面とは、タイヤ半径方向内側に向かってタイヤ軸方向内側に傾斜する態様を指す。)よりも小さい場合、上述の十分な変形空間が小さくなるおそれがある。これらはいずれも、キャンバースラストを逃がすのを妨げるため好ましくない。
なお、凹み部15の円弧面15cは、側縁部13の変形時、縦面15aと横面15bとの交差部に応力が集中するのを効果的に防止し、クラックの発生などを長期に亘って防止できる。
本実施形態の凹み部15は、周方向サイプ11よりも大きいタイヤ周方向の長さLhを有する。また、凹み部15の端部15eは、いずれも周方向サイプ11の端部11eと、該端部11eに近い方のショルダー横溝7dとの間に設けられている。このような凹み部15は、側縁部13の根元部分をより確実に柔軟化し、ワンダリング抑制効果をより一層高めうる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は例示の実施形態に限定されることなく種々の態様に実施して変更することができる。例えば図6に示されるように、バットレス面14(この実施形態では内側斜面14c)に、該バットレス面14の剛性を低下させる少なくとも1本の周方向凹溝17ないし19が設けられても良い。
本発明の効果を確認するために、図1〜5の基本構造及び表1の仕様に基づいてテストタイヤ(実施例及び比較例)が試作され、それらの耐ワンダリング性能、耐摩耗性及びTGC性能がテストされた。共通仕様は次の通りである。
ショルダーブロックの幅BW:25mm
ショルダーブロックの長さLB:31.8〜39.3mm(ピッチバリエーション)
ショルダー縦溝の深さGD:9.9mm
ショルダー縦溝の溝幅:6.9mm
周方向サイプの深さSD:5.0mm
周方向サイプの厚さW2:0.3mm
周方向サイプの長さLS:17.9〜21.9mm(ピッチバリエーション)
テスト方法は次の通りである。
<耐ワンダリング性能>
テストタイヤが全輪に装着された車両を、轍が設けられた氷雪路テストコースにて走行させた。そして、轍路面でのハンドルの取られ方などを重視して、耐ワンダリング性能がドライバーの官能により10点法で評価された。数値が大きいほど良好である。試験条件は次の通りである。
タイヤサイズ:195/65R15
リム:6.5×15
内圧:200kPa
車両:排気量2000ccのFR車
<耐摩耗性能>
上記車両にて乾燥アスファルト路面を約8000km走行させた。そして、ショルダーブロックの摩耗量が測定された。結果は、比較例2を100とする指数とした。数値が大きい程、良好である。
<TGC性能>
各試供タイヤに濃度50pphmのオゾン(500L/H)を吹き付けながらドラム試験機上を走行させ後、凹み部の状況が肉眼で観察された。試験条件は次の通りである。
リム:6.5×15
内圧:200kPa
荷重:6.96kN
速度:80km/H
走行時間:200時間
テストの結果を表1に示す。
Figure 2008222158
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べて、耐摩耗性等を損ねることなくワンダリング性能を向上していることが確認できた。
本発明の実施形態を示す空気入りタイヤの左半分断面図である。 その展開図である。 ショルダーブロックの拡大平面図である。 トレッド部の部分斜視図である。 (a)は図4のI−I拡大断面、(b)はその要部拡大図である。 本発明の他の実施形態を示すトレッド部の部分斜視図である。 トレッド部のスクエアショルダーを説明する断面図である。
符号の説明
2 トレッド部
6c ショルダー縦溝
7d ショルダー横溝
11 周方向サイプ
11e 周方向サイプの両端部
13 側縁部
14 バットレス面
14a 外側斜面
14b 中間斜面
14c 内側斜面
15 凹み部
15a 縦面
15b 横面
15c 円弧面
15e 凹み部の両端部
B4 ショルダーブロック
E 接地端

Claims (5)

  1. トレッド部に、最も接地端側をタイヤ周方向に連続してのびるショルダー縦溝と、該ショルダー縦溝から前記接地端までのびる複数本のショルダー横溝とが設けられることにより、前記接地端に沿ってショルダーブロックが並ぶショルダーブロック列を有し、しかも前記ショルダーブロックの外面と、タイヤ半径方向内方に向かってタイヤ軸方向外側にのびるバットレス面とが前記接地端で実質的にエッジを有して交差するスクエアショルダーを具えた空気入りタイヤであって、
    前記ショルダーブロックには、前記接地端からタイヤ軸方向内側2mm以上かつ10mm以下の領域にタイヤ周方向にのびる周方向サイプが設けられ、かつ
    前記周方向サイプをタイヤ軸方向に沿って前記バットレス面に投影した投影領域の少なくとも一部に、該バットレス面からの深さが0.5〜3mmでタイヤ周方向にのびる凹み部が設けられるとともに、
    該凹み部のタイヤ半径方向の最内端位置が前記周方向サイプの深さの50〜100%の範囲に設けられることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 正規リムにリム組みしかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、
    前記凹み部は、バットレス面からタイヤ半径方向内側にかつタイヤ半径方向線に対して±10度以内の角度でのびる縦面と、
    前記縦面よりもタイヤ半径方向内側に位置しかつバットレス面からタイヤ軸方向線に対して±10度以内の角度でタイヤ軸方向内側にのびる横面と、
    前記縦面と前記横面とを滑らかな円弧で継ぐ円弧面とからなる断面略三角形状である請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記バットレス面は、前記接地端からタイヤ半径方向内方に向かってタイヤ軸方向外側にのびる傾斜を具える外側斜面と、
    この外側斜面に連なりかつ外側斜面の傾斜よりも緩やかな傾斜でタイヤ半径方向内方にのびる中間斜面と、
    この中間斜面に連なりかつ前記外側斜面の傾斜と略平行にのびる内側斜面とを含み、
    かつ前記凹み部が前記中間斜面に設けられている請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記周方向サイプは、両端部が前記ショルダー横溝に開口することなくブロック内部に位置する請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記凹み部は、周方向サイプよりも大きいタイヤ周方向長さを有し、しかも、凹み部の両端部は前記ショルダー横溝に開口することなくバットレス面に位置するとともに、
    該凹み部の端部が、いずれも周方向サイプの端部と、それと近い側のショルダー横溝との間に設けられている請求項4に記載の空気入りタイヤ。
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