JP2008166579A - 放熱部材および半導体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】基体を含金属材料によって形成しているにも拘らず、他部材との接続時に、溶融した半田が、前記基体の側面を這い上がりにくいため、半導体レーザの短絡や、半導体レーザの出射面から出射されるレーザ光の光束が遮られたりするのを抑制できる放熱部材と、それを用いた半導体装置とを提供する。
【解決手段】放熱部材1は、基体7の他部材接続面6に、半田に対する濡れ性を付与すると共に、側面13の、少なくとも他部材接続面6と隣接する領域、および他部材接続面6の、側面13と隣接する領域のうちの少なくとも一方に、前記半田の流れを阻止するための半田ブロック層14を形成した。半導体装置は、素子接続面に、半田からなる素子接続層を介して半導体素子を接続し、他部材接続面に、前記素子接続層を形成する半田より融点の低い半田からなる他部材接続層を介して他部材を接続した。
【選択図】図2

Description

本発明は、特に、レーザ加工用の高出力の半導体レーザ等の、高い放熱性が求められる半導体素子の放熱用として、好適に使用することができる放熱部材と、前記放熱部材を用いた半導体装置に関するものである。
半導体レーザや発光ダイオード等の半導体発光素子に代表される、半導体素子の動作時に発生する熱を、前記素子外、より詳しくは、さらにヒートシンク、ステム等の他部材を通して環境中等に放熱するために、前記半導体素子と他部材との間に介在させて用いる、サブマウント、ヒートシンク、放熱基板等の放熱部材としては、従来、切断等の加工のしやすさや、半導体素子への配線のパターン形成の容易さ、あるいは製造コストの低さ等を考慮して、Siやセラミックス等からなるものが、広く用いられてきた(例えば特許文献1、2参照)。
図15は、前記従来の放熱部材としてのサブマウント1に、半導体素子としての半導体レーザ2と、他部材としてのヒートシンク3とを接続して構成され、前記半導体レーザ2の動作時に発生する熱を、サブマウント1を介してヒートシンク3に伝達して環境中に放熱するための、従来の半導体装置4の一例を示す断面図である。図15を参照して、この例の半導体装置4のうち、サブマウント1は、前記のようにSiやセラミックスによって形成されていると共に、図において上側の面が、半導体レーザ2を接続するための素子接続面5、下面が、ヒートシンク3を接続するための他部材接続面6とされた平板状の基体7を備えている。
また、前記基体7の素子接続面5の、半導体レーザ2を接続する領域には、半田からなる素子接続層8が被覆されており、他部材接続面6には、前記素子接続層8を形成する半田よりも融点の低い半田からなる他部材接続層9が被覆されている。また、基体7の素子接続面5には、素子接続層8を形成する半田に対する良好な濡れ性を付与するため、前記素子接続層8を被覆するに先立って、図示していないが、例えばAu等の金属層を、スパッタリング法、真空蒸着法、湿式メッキ法等によって被覆しておくこともある。
半導体レーザ2は、図において上下方向に、複数の半導体層や電極層等を積層して形成されていると共に、前記積層方向と交差する一側面が、積層方向の途中に設けた活性層10で発生したレーザ光11を出射するための出射面12とされたものである。また、ヒートシンク3は、半導体レーザ2の動作時に発生して、素子接続層8、サブマウント1、他部材接続層9を介して伝えられた熱を環境中に放出したり、さらに別部材に伝達したりするためのものであり、通常は、Cu等によって形成されるのが一般的である。
前記各部を備えた、図の例の半導体装置4は、例えば、サブマウント1と半導体レーザ2とを、素子接続層8を挟んで積層した状態で加熱して、前記素子接続層8を形成する半田を溶融させて、半導体レーザ2の下面に半田接合させることで、前記サブマウント1と半導体レーザ2とを接続した後、サブマウント1とヒートシンク3とを、他部材接続層9を挟んで積層した状態で、素子接続層8を形成する半田の溶融温度以下で、かつ他部材接続層9を形成する半田の溶融温度以上の温度に加熱して、前記他部材接続層9を選択的に溶融させて、ヒートシンク3の上面に半田接合させることで、サブマウント1とヒートシンク3と接続して製造される。
サブマウント1と半導体レーザ2とは、出射面12から出射されるレーザ光11の光束が、サブマウント1によって遮られるのを防止するため、図に見るように、前記出射面12と、サブマウント1の基体7の、素子接続面5および他部材接続面6と交差する各側面のうち、出射面12と同じ側の側面13とが同一平面となるように位置合わせした状態で、接続されるのが一般的である。しかし、サブマウント1と半導体レーザ2とを接続する際に、素子接続層8を形成する半田が、加熱によって溶融して、前記出射面12側にはみ出した状態で固化される場合があり、その場合には、はみ出した半田によって、出射面12から出射されるレーザ光11の光束が遮られたり、半導体レーザ2が短絡したりするという問題を生じるおそれがある。
そこで、基体7の素子接続面5に、半田に対する良好な濡れ性を付与するために形成する、Au等の金属層を、前記素子接続面5だけでなく、側面13にも連続させて形成することで、前記側面13にも、半田に対する良好な濡れ性を付与しておき、サブマウント1と半導体レーザ2とを接続する際に溶融してはみ出した半田を、前記金属層の機能によって、側面13側に流れるように誘導して、出射面12側にはみ出すのを防止することが、先に説明した特許文献1や、あるいは特許文献3等に記載されている。また、同様の効果を得るため、特許文献2、4には、側面13に形成した金属層上に、あらかじめ、素子接続層8と連続させて、半田の層を形成しておくことが記載されている。
近年、特に半導体レーザ等の半導体素子の高出力化に伴って、前記半導体素子に、大電流を流す必要が生じてきたことから、サブマウント等の放熱部材の基体を、金属を含み、導電性を有する材料で形成して、それ自体を素子の電極としても機能させることが試みられている。例えば特許文献5には、サブマウント等の放熱部材の基体を、Wからなる多孔質体の細孔内に、Cuを溶浸させて形成した複合構造を有するCu−W複合材料によって形成することが記載されている。
特開平6−350202号公報 特開2003−46181号公報 特開平5−243690号公報 特開平8−330672号公報 特開2003−152145号公報
基体を、前記Cu−W複合材料等の、金属を含む材料(以下「含金属材料」と記載することがある)によって形成した放熱部材を用いて半導体装置を構成する場合も、その基本的な構造は、図15に示すとおりとされるのが一般的である。放熱部材としてのサブマウント1と、半導体素子としての半導体レーザ2とを接続する際に、溶融した半田が、半導体レーザ2の出射面12側にはみ出すのを防止するための構造も、基本的には、従来と同じでよいと考えられている。
ところが、前記含金属材料からなる基体7は、それ自体が、従来の、Siやセラミックス等からなるものと比較して半田に対する濡れ性が良いことから、サブマウント1をヒートシンク3と接続する際に、他部材接続層9を形成する半田が、加熱によって溶融した状態で、基体7の側面13を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がって、前記半導体レーザ2を短絡させたり、前記出射面12から出射されるレーザ光11の光束を遮ったりする不良を生じやすいという問題がある。
特に、他部材接続層9を形成する半田として、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良を生じにくく、良好な半田接合を得ることができるため、半導体装置4の製造の歩留まりを向上させる効果に優れた、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田を使用した際に、前記の不良を生じやすい。ペースト状、箔状の半田を使用した際に、前記の不良を生じやすいのは、その量の制御が容易でなく、過剰量の半田が発生しやすいためである。
本発明の目的は、基体を含金属材料によって形成しているにも拘らず、他部材との接続時に、溶融した半田が、前記基体の側面を、半導体素子の近傍まで這い上がったりしにくいため、例えば、前記半田として、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田等を使用した場合であっても、前記這い上がりによる、半導体素子の短絡や、半導体素子が半導体レーザ等である場合に、その出射面から出射されるレーザ光等の光束が遮られたりする不良が発生するのを、これまでよりも抑制しながら、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良の少ない、良好な半田接合を得ることができる放熱部材と、それを用いた半導体装置とを提供することにある。
本発明は、片面が、半導体素子との接続のための素子接続面、反対面が、他部材との接続のための他部材接続面とされた、少なくとも金属を含む材料からなる平板状の基体を備え、前記他部材接続面に、半田に対する濡れ性が付与されていると共に、前記基体の、素子接続面および他部材接続面と交差する側面の、少なくとも一部の領域、および他部材接続面の、側面と隣接する領域のうちの少なくとも一方に、前記半田の流れを阻止するための半田ブロック処理が施されていることを特徴とする放熱部材である。
本発明によれば、含金属材料からなる基体の他部材接続面に、半田に対する良好な濡れ性を付与したことと、前記基体の側面の、少なくとも一部の領域、および他部材接続面の、側面と隣接する領域のうちの少なくとも一方に、前記半田の流れを阻止するための半田ブロック処理を施したこととの相乗効果によって、基体として含金属材料からなるものを使用しているにも拘らず、他部材との接続時に、溶融した半田が、前記基体の側面を、半導体素子の近傍まで這い上がったりしにくくすることができる。
そのため、本発明によれば、例えば、他部材接続層を形成する半田として、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田等を使用した場合であっても、前記半田の這い上がりによる、半導体素子の短絡や、半導体素子が半導体レーザ等である場合に、その出射面から出射されるレーザ光等の光束が遮られたりする不良が発生するのを、これまでよりも抑制しながら、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良の少ない、良好な半田接合を得ることができる放熱部材を提供することが可能となる。なお、前記基体の側面の、少なくとも一部の領域、および他部材接続面の、側面と隣接する領域のうちの少なくとも一方を半田ブロック処理するためには、前記いずれかの領域を、半田に対する濡れ性、および半田の流れ性の低い材料からなる半田ブロック層によって被覆するのが好ましい。
前記材料としては、Pt、Mo、Pd、Cr、およびAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。また、基体の素子接続面の少なくとも一部には、半導体素子との良好な接続を図るために、半田からなる素子接続層を被覆するのが好ましく、前記半田が、半導体素子としての半導体レーザ等の出射面にはみ出すのを防止するためには、基体の側面の、少なくとも素子接続面と隣接する領域にも、前記素子接続層を被覆して、溶融した半田を、側面側へ誘導できるようにしておくのが好ましい。
基体の側面は、表面粗さを示す、粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.1〜1.6μmとなるように仕上げるのが好ましい。算術平均粗さRaが前記範囲未満では、側面の、少なくとも一部の領域、および他部材接続面の、側面と隣接する領域のうちの少なくとも一方を、半田ブロック層で被覆しているにも拘らず、他部材との接続時に、溶融した半田が、側面を、半導体素子の近傍まで這い上がるおそれがある。これは、側面の平滑性が高いため、溶融した半田の這い上がりを阻止する凹凸が小さく、かつ少ないことに起因すると考えられる。そのため、這い上がった半田が半導体素子を短絡させたり、半導体素子が半導体レーザ等である場合に、その出射面から出射されるレーザ光等の光束を遮ったりする不良が発生するのを、十分に抑制できなくなるおそれがある。
また、算術平均粗さRaが前記範囲未満となるように仕上げるには、切断および研磨加工に長時間を要することから、基体の、ひいては放熱部材や半導体装置の生産性を低下させて、製造コストを高騰させる要因ともなる。一方、算術平均粗さRaが前記範囲を超える場合には、半導体素子の接続時に溶融した半田が、側面を伝って流れ落ちにくくなる傾向がある。これは、先の場合と逆に、溶融した半田の流れ落ちを阻害する凹凸が大きく、かつ多いことに起因すると考えられる。そのため、たとえ、前記側面に素子接続層を被覆しておいても、溶融してはみ出した半田が側面側に誘導されずに、半導体素子の側にはみ出して、前記半導体素子を短絡させたり、半導体素子が半導体レーザ等である場合に、その出射面から出射されるレーザ光等の光束を遮ったりする不良が発生しやすくなるおそれがある。
基体を、導電性を有する含金属材料で形成して、それ自体を素子の電極としても機能させる効果を、より一層、向上することを考慮すると、前記含金属材料からなる基体の比抵抗は1.6×10-8〜1.0×10-3Ωmであるのが好ましい。比抵抗が前記範囲を超える場合には、それ自体を素子の電極として機能させる効果が十分に得られないだけでなく、電極として機能させた際に、基体自体が発熱するおそれもある。また、比抵抗が前記範囲未満である材料(複合材料を含む)は、特別なものに限られており、高価で、しかも製造が容易でないことから、基体の、ひいては放熱部材や半導体装置の生産性を低下させ、製造コストを高騰させる要因となる。
前記基体の、比抵抗以外の特性は、特に限定されないものの、特にレーザ加工用の高出力の半導体レーザ等の、高い放熱性が求められる半導体素子の放熱用として用いる基体において、前記半導体素子の動作時に発生する熱を、できるだけスムースに放熱することを考慮すると、基体の熱伝導率は150〜650W/m・Kであるのが好ましい。また、半導体素子の動作時に発生する熱によって大きく膨張したり、その後の冷却によって大きく収縮したりして、半導体素子に過剰な応力を生じさせて、その特性を劣化させたり、半導体素子を破損させたり、半導体素子や他部材との接続が破断したりするのを防止することを考慮すると、前記基体の熱膨張係数は2.0×10-6〜10×10-6/Kであるのが好ましい。
また、前記各特性を満足する、含金属材料からなる基体としては、W、Mo、SiC、およびダイヤモンドからなる群より選ばれた少なくとも1種と、Cu、Al、およびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種とからなるものが好ましい。本発明の放熱部材の、具体的な構成の一例としては、前記複合材料等の、含金属材料からなる基体の素子接続面、他部材接続面、および側面が、NiまたはNiを含む化合物からなり、基体の各面と、先に説明した半田ブロック層、素子接続層、他部材接続層や、次に述べる拡散防止層、半田濡れ層、あるいは基体自体を素子の電極として機能させるための電極層等の、各層との密着性を向上する機能に優れ、かつ、半田に対する濡れ性にも優れた密着層によって被覆されていると共に、他部材接続面において、前記密着層が露出されることで、前記他部材接続面に、半田に対する濡れ性が付与されたものが挙げられる。
また、本発明の放熱部材の、具体的な構成の他の例としては、前記基体の素子接続面、他部材接続面、および側面が、Ni、Ti、Cr、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物からなり、基体の各面と、先に説明した半田ブロック層、素子接続層、他部材接続層や、次に述べる拡散防止層、半田濡れ層、あるいは基体自体を素子の電極として機能させるための電極層等の、各層との密着性を向上する機能に優れた密着層と、Pt、Mo、およびPdからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物からなり、前記密着層を形成する金属の、半導体素子を接続するための半田や、他部材との接続のための半田への拡散による、前記半田の、組成の変化を防止する機能を有すると共に、半田に対する濡れ性の低い材料からなる拡散防止層とで、この順に被覆されており、なおかつ、側面の、少なくとも他部材接続面と隣接する領域、および他部材接続面の、側面と隣接する領域のうちの少なくとも一方において、前記拡散防止層が、半田ブロック層として露出されることで、前記領域が半田ブロック処理されたものも挙げられる。
また、前記例の放熱部材においては、他部材接続面に、半田に対する濡れ性を付与するために、前記他部材接続面のうち、拡散防止層が露出されている必要がある領域以外の領域を、Au、Ni、およびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物からなる半田濡れ層によって被覆するのが好ましい。
本発明は、前記本発明の放熱部材の、基体の素子接続面に、半田からなる素子接続層を介して、半導体素子が接続されていると共に、他部材接続面に、前記素子接続層を形成する半田よりも融点の低い半田からなる他部材接続層を介して、他部材が接続されていることを特徴とする半導体装置である。本発明によれば、先に説明した放熱部材の機能によって、半導体素子の短絡や、半導体素子が半導体レーザ等である場合に、その出射面から出射されるレーザ光等の光束が遮られたりする不良が生じにくい、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
半導体素子との接続のための半田としては、Au−Sn系、またはAu−Ge系の半田を用いるのが好ましく、前記半田よりも融点の低い、他部材との接続のための半田としては、半田ブロック処理の効果によって、前記半田が、基体の側面を這い上がりにくいことから、低温での流れ性がよく、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良を生じにくい、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、Sn−Ge系、Sn−Bi系、Sn−Sb系、Sn−Zn系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi系、またはSn−Zn−Bi系の半田を用いるのが好ましい。さらに、本発明の構成は、特に、レーザ加工用の高出力の半導体レーザ等の、高い放熱性が求められる半導体発光素子に適用した際に、より一層、良好な効果を得ることができる。
本発明によれば、基体を含金属材料によって形成しているにも拘らず、他部材との接続時に、溶融した半田が、前記基体の側面を、半導体素子の近傍まで這い上がったりしにくいため、例えば、前記半田として、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田等を使用した場合であっても、前記這い上がりによる、半導体素子の短絡や、半導体素子が半導体レーザ等である場合に、その出射面から出射されるレーザ光等の光束が遮られたりする不良が発生するのを、これまでよりも抑制しながら、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良の少ない、良好な半田接合を得ることができる放熱部材と、それを用いた半導体装置とを提供することができる。
図1は、本発明の放熱部材の一例としてのサブマウント1と、前記サブマウント1に接続される半導体素子としての、半導体レーザ2の外観を示す斜視図である。図2は、前記サブマウント1の、図1におけるII−II線断面図である。両図を参照して、この例のサブマウント1は、両図において上側の面が、半導体レーザ2を接続するための素子接続面5、下面が、他部材としてのヒートシンク3(図14参照)を接続するための他部材接続面6とされた、平面形状が矩形状で、かつ平板状の基体7を備えている。図1を参照して、半導体レーザ2は、図において上下方向に、複数の半導体層や電極層等を積層して形成されていると共に、前記積層方向と交差する一側面が、積層方向の途中に設けた活性層で発生したレーザ光を出射するための出射面12とされたものである。
前記サブマウント1と半導体レーザ2とは、出射面12から出射されるレーザ光の光束が、サブマウント1によって遮られるのを防止するため、図に一点鎖線の矢印で示すように、前記出射面12と、サブマウント1の基体7の、素子接続面5および他部材接続面6と交差する各側面のうち、出射面12と同じ側の側面13とが同一平面となるように位置合わせした状態で接続される。基体7は、それ自体を素子の電極としても機能させるために、含金属材料によって形成される。前記含金属材料としては、Cu、Ag、W、Mo、Al等の金属単体、前記金属の2種以上の合金または複合材料、前記金属の1種または2種以上と、Si、SiC、ダイヤモンド等との複合材料等が挙げられる。
前記複合材料の具体例としては、
(1) WまたはMoからなる多孔質体の細孔内に、Cuを溶浸させて形成した複合構造を有するCu−W複合材料、Cu−Mo複合材料や、
(2) 多数の微小なダイヤモンド粒子を、結合材としてのCuで結合した複合構造を有するCu−ダイヤモンド複合材料、
(3) Al中に、SiCが粒子状に分散して存在する複合構造を有するAl−SiC複合材料、
(4) Al中に、Siが粒子状に分散して存在する複合構造を有するAl−Si合金、
等が挙げられる。
また、前記いずれかの金属や合金、複合材料等からなる2種以上の層を積層した積層構造を有するクラッド材も、基体7を形成する含金属材料として、好適に使用することができる。前記クラッド材の具体例としては、
(5) 前記(1)の、Moからなる多孔質体の細孔内に、Cuを溶浸させて形成した複合構造を有するCu−Mo複合材料層の両面に、Cu層を積層したCu/Cu−Mo/Cuクラッド材や、
(6) Cu層とMo層とCu層とをこの順に積層したCu/Mo/Cuクラッド材、
(7) 前記(2)の、多数の微小なダイヤモンド粒子を、結合材としてのCuで結合した複合構造を有するCu−ダイヤモンド複合材料層の両面に、Cu層を積層したCu/Cu−ダイヤモンド/Cuクラッド材、
(8) 前記(3)の、Al中に、SiCが粒子状に分散して存在する複合構造を有するAl−SiC複合材料層の両面に、Al層を積層したAl/Al−SiC/Alクラッド材、
等が挙げられる。
前記複合材料やクラッド材等の、含金属材料によって形成される基体7は、それ自体を素子の電極としても機能させる効果を、より一層、向上することを考慮すると、比抵抗が1.6×10-8〜1.0×10-3Ωm、特に1.6×10-8〜4.0×10-4Ωmであるのが好ましい。比抵抗が前記範囲を超える場合には、それ自体を素子の電極として機能させる効果が十分に得られないだけでなく、電極として機能させた際に、発熱するおそれもある。また、比抵抗が前記範囲未満である材料は、特別なものに限られており、高価で、しかも製造が容易でないことから、基体の、ひいてはサブマウント1や、前記サブマウント1を用いて形成される半導体装置4(図14参照)の生産性を低下させて、製造コストを高騰させる要因となる。
また、前記基体7は、特にレーザ加工用の高出力の半導体レーザ2の放熱用として用いる場合に、その動作時に発生する熱を、できるだけスムースに放熱することを考慮すると、熱伝導率が150〜650W/m・K、特に300〜650W/m・Kであるのが好ましい。熱伝導率が前記範囲未満であるものは、半導体レーザ2が発する熱を、効率的に、ヒートシンク3に逃がすことができないため、半導体レーザ2の動作効率を低下させたり、寿命を短くしたり、寿命前に、半導体レーザ2を破損させたりするおそれがある。また、熱伝導率が前記範囲を超えるものは、金属を含む含金属材料としては作製することが困難である。
また、基体7は、前記動作時に発生する熱によって大きく膨張したり、その後の冷却によって大きく収縮したりして、半導体レーザ2に過剰な応力を生じさせて、その特性を劣化させたり、破損させたり、接続が破断したりするのを防止することを考慮すると、熱膨張係数が2.0×10-6〜10×10-6/Kであるのが好ましく、特に、半導体レーザ2としてGaAs系やGaN系の半導体材料からなるものを用いる場合には、前記半導体材料の熱膨張係数と近い4.0×10-6〜8.0×10-6/Kであるのが好ましい。
前記各特性を、好適な範囲内に調整するためには、基体7を形成する含金属材料の組成を調整したり、複合材料の複合構造を調整したり、クラッド材の複合構造、および各層の厚みを調整したりすればよい。かかる調整によって、各特性が、いずれも前記範囲を満足する基体7を形成することができる、好適な含金属材料としては、先に説明した各種の材料のうち、W、Mo、SiC、およびダイヤモンドからなる群より選ばれた少なくとも1種と、Cu、Al、およびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種とからなるものが挙げられる。特に、熱伝導率の観点からは、前記(2)のCu−ダイヤモンド複合材料が好ましい。一方、比抵抗の観点、および製造コストの観点からは、(1)のCu−W複合材料やCu−Mo複合材料、(5)のCu/Cu−Mo/Cuクラッド材等が好ましい。
図2を参照して、図の例のサブマウント1は、前記複合材料等の、含金属材料によって形成される基体7の他部材接続面6に、半田に対する濡れ性が付与されていると共に、前記基体7の、半導体レーザ2との接続時に、その出射面12側とされる側面13のうち、前記他部材接続面6と隣接する、図において下側の領域が、前記半田に対する濡れ性、および半田の流れ性の低い材料からなり、その流れを阻止する機能を有する半田ブロック層14によって被覆されて、半田ブロック処理されたものである。
前記半田ブロック層14を形成する等して側面13を半田ブロック処理すると、基体7の他部材接続面6に、半田に対する濡れ性を付与したこととの相乗効果によって、ヒートシンク3との接続時に、溶融した半田が、他部材接続面6から側面13にはみ出したり、はみ出した半田が、側面13を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がったりしにくいため、例えば、前記半田として、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田等を使用した場合であっても、這い上がった半田によって半導体レーザ2が短絡したり、前記半導体レーザ2の出射面12から出射されるレーザ光の光束が遮られたりする不良が発生するのを、これまでよりも抑制しながら、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良の少ない、良好な半田接合を得ることができる。
半田ブロック層14を形成する、半田に対する濡れ性、および半田の流れ性の低い材料としては、Pt、Mo、Pd、Cr、およびAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。特に、Pt、Mo、Pd等を、単独で使用して、半田ブロック層14を形成するのが好ましい。前記いずれか単独の金属からなる半田ブロック層14は、半田をブロックする機能に優れている上、真空蒸着法等によって形成するのが容易であるという利点がある。また、拡散防止層と兼用させることも容易である。
半田ブロック層14の厚みは0.01〜1μmであるのが好ましい。厚みが前記範囲未満では、前記半田ブロック層14による、半田の流れを阻止する効果が十分に得られないおそれがある。また、厚みが前記範囲を超えても、それ以上の効果が得られないだけでなく、サブマウント1の、ひいては半導体装置4の製造コストを高騰させる要因ともなる。また、半田ブロック層14の、基体7の厚み方向における形成幅W1は0.025mm以上であるのが好ましい。形成幅W1が前記範囲未満では、半田ブロック層としての、半田の流れを阻止する効果が十分に得られないおそれがある。
形成幅W1の上限は、基体7の厚みまで、つまり、基体7の側面13の全面に、半田ブロック層14を形成してもよい。ただし、前記側面13の、素子接続面5と接する上側の領域には、図に見るように、基体7の厚み方向の幅が0.075mm以上の、半田ブロック層14を形成しない領域を設けるのが好ましい。これにより、半導体レーザ2の接続時に溶融した半田が、側面を伝って流れ落ちるのを助けて、前記半田が、半導体レーザ2の出射面12にはみ出すのを防止することができる。半田ブロック層14は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、湿式メッキ法等の種々の成膜方法によって形成することができる。
基体7の他部材接続面6に、半田に対する濡れ性を付与するためには、前記他部材接続面6を、図示していないが、前記半田の濡れ性のよい材料からなる層によって被覆すればよい。前記層を形成する、半田の濡れ性のよい材料としては、Au、Ni、およびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。基体7の側面13は、望ましくはその全面を、日本工業規格JIS B0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」において規定された、表面粗さを示す、粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.1〜1.6μm、特に0.1〜0.9μmとなるように仕上げるのが好ましい。
算術平均粗さRaが前記範囲未満では、側面13の前記領域を、半田ブロック層14で被覆する等して半田ブロック処理しているにも拘らず、ヒートシンク3との接続時に、溶融した半田が、側面13を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がるおそれがある。これは、側面13の平滑性が高いため、溶融した半田の這い上がりを阻止する凹凸が小さく、かつ少ないことに起因すると考えられる。そのため、這い上がった半田が半導体レーザ2を短絡させたり、その出射面12から出射されるレーザ光の光束を遮ったりする不良が発生するのを、十分に抑制できなくなるおそれがある。
また、算術平均粗さRaが前記範囲未満となるように側面13を仕上げるには、切断および研磨加工に長時間を要することから、基体7の、ひいてはサブマウント1や半導体装置4の生産性を低下させて、製造コストを高騰させる要因ともなる。一方、算術平均粗さRaが前記範囲を超える場合には、半導体レーザ2の接続時に溶融した半田が、側面を伝って流れ落ちにくくなる傾向がある。これは、先の場合と逆に、溶融した半田の流れ落ちを阻害する凹凸が大きく、かつ多いことに起因すると考えられる。そのため、溶融してはみ出した半田が側面13側に誘導されずに、半導体レーザ2の出射面12側にはみ出して、出射面12から出射されるレーザ光等の光束を遮ったりする不良が発生しやすくなるおそれがある。
基体7の、その他の構成は、特に限定されないが、素子接続面5、および他部材接続面6の算術平均粗さRaは1.6μm以下、特に0.01〜0.9μmであるのが好ましい。算術平均粗さRaが前記範囲を超える場合には、前記両面5、6の凹凸が大きくなって、半導体レーザ2やヒートシンク3を接続する際に、その接続界面に、前記凹凸が、熱伝導を妨げるボイドとして残留しやすい。そのため、半導体レーザ2が発する熱を、効率的に、ヒートシンク3に逃がすことができず、半導体レーザ2の動作効率が低下したり、寿命が短くなったり、寿命前に、半導体レーザ2が破損したりするおそれがある。
一方、算術平均粗さRaが前記範囲未満となるように、素子接続面5や他部材接続面6を仕上げるには、研磨加工に長時間を要することから、基体7の、ひいてはサブマウント1や半導体装置4の生産性を低下させて、製造コストを高騰させる要因ともなる。基体7の厚みは、0.15〜10mmであるのが好ましい。厚みが、前記範囲未満では、たとえ、その側面13を、半田ブロック層14で被覆する等して半田ブロック処理したとしても、ヒートシンク3との接続時に、溶融した半田が、側面13を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がるおそれがある。これは、側面13によって隔てられる、素子接続面5と他部材接続面6との距離が近いことに起因すると考えられる。
そのため、這い上がった半田が半導体レーザ2を短絡させたり、その出射面12から出射されるレーザ光の光束を遮ったりする不良が発生するのを、十分に抑制できなくなるおそれがある。一方、厚みが、前記範囲を超えても、それ以上の、半田の這い上がりを防止する効果や、放熱量を増加させる効果が得られにくいと共に、材料費が嵩むため、基体7の、ひいてはサブマウント1や半導体装置4の製造コストを高騰させる要因ともなる。
基体7を、所定の形状と、所定の表面粗さとに加工するためには、種々の加工方法を採用することができる。例えば、先に説明した(1)のCu−W複合材料やCu−Mo複合材料、(2)のCu−ダイヤモンド複合材料、(5)のCu/Cu−Mo/Cuクラッド材等の場合は、平板状に形成した基体前駆体を、ワイヤ放電加工によって、所定の平面形状に切り出したり、その側面を、所定の表面粗さに仕上げたりすることが可能である。特に、ワイヤ放電加工を切断工程、切断面の粗仕上げ工程、および切断面の最終仕上げ工程に分け、それぞれの工程において、放電条件を変えながら加工するようにすると、側面を、容易に、所定の表面粗さに仕上げることができる。
基体7の所定の面に、前記各処理を施した、本発明の放熱部材としてのサブマウント1は、素子接続面5側の平面の、対角線方向の反り量が、前記対角線方向の長さ1mmあたり1μm以下、特に0.5μm以下であるのが好ましい。反り量が、前記範囲を超える場合には、サブマウント1と、半導体レーザ2やヒートシンク3とを隙間なく密着させることができず、その接続界面に隙間を生じやすい。そのため、半導体レーザ2が発する熱を、効率的に、ヒートシンク3に逃がすことができず、半導体レーザ2の動作効率が低下したり、寿命が短くなったり、寿命前に、半導体レーザ2が破損したりするおそれがある。なお、反り量の最小値は、1mmあたり0μmであり、反りがないのが最も好ましい。
図3は、サブマウント1の変形例を示す断面図である。図3を参照して、この例のサブマウント1は、半田ブロック層14が、側面13の、厚み方向の中間の領域に形成されている点が、先の図2の例と相違している。ただし、基体7自体の構成は、先の図2の例と同様である。他部材接続面6の、半田ブロック層14を形成していない領域に、半田との濡れ性のよい層が被覆される等して濡れ性が付与されることや、側面13が、所定の表面粗さに仕上げられるのが好ましいこと等も同様である。半田ブロック層14の厚みも、同程度であるのが好ましい。半田ブロック層14の、基体7の厚み方向における形成幅W1は0.025mm以上であるのが好ましい。形成幅W1が前記範囲未満では、半田ブロック層としての、半田の流れを阻止する効果が十分に得られないおそれがある。
この例においても、基体7の他部材接続面6に、ヒートシンク3との接続のための半田に対する濡れ性を付与したことと、半田ブロック層14を形成したこととの相乗効果によって、ヒートシンク3との接続時に、溶融した半田が、他部材接続面6から側面13にはみ出したり、はみ出した半田が、側面13を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がったりしにくいため、例えば、前記半田として、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田等を使用した場合であっても、這い上がった半田によって半導体レーザ2が短絡したり、前記半導体レーザ2の出射面12から出射されるレーザ光の光束が遮られたりする不良が発生するのを、これまでよりも抑制しながら、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良の少ない、良好な半田接合を得ることができる。
図4は、サブマウント1の、他の変形例を示す断面図である。図4を参照して、この例のサブマウント1は、半田ブロック層14が、側面13ではなく、他部材接続面6の、側面13と隣接する領域に形成されている点が、先の図2、3の例と相違している。ただし、基体7自体の構成は、先の図2の例と同様である。他部材接続面6の、半田ブロック層14を形成していない領域に、半田との濡れ性のよい層が被覆される等して濡れ性が付与されることや、側面13が、所定の表面粗さに仕上げられるのが好ましいこと等も同様である。
半田ブロック層14の厚みも、同程度であるのが好ましい。なお、半田ブロック層14の、基体7の幅方向における形成幅W2は0.025〜0.5mmであるのが好ましい。形成幅W2が前記範囲未満では、半田ブロック層としての、半田の流れを阻止する効果が十分に得られないおそれがある。また、形成幅W2が前記範囲を超えても、それ以上の効果が得られないおそれがある。
この例においても、基体7の他部材接続面6に、ヒートシンク3との接続のための半田に対する濡れ性を付与したことと、半田ブロック層14を形成したこととの相乗効果によって、ヒートシンク3との接続時に、溶融した半田が、他部材接続面6から側面13にはみ出したり、はみ出した半田が、側面13を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がったりしにくいため、例えば、前記半田として、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田等を使用した場合であっても、這い上がった半田によって半導体レーザ2が短絡したり、前記半導体レーザ2の出射面12から出射されるレーザ光の光束が遮られたりする不良が発生するのを、これまでよりも抑制しながら、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良の少ない、良好な半田接合を得ることができる。
図5は、サブマウント1の、さらに他の変形例を示す断面図である。図5を参照して、この例のサブマウント1は、半田ブロック層14が、側面13の、他部材接続面6と隣接する、図において下半分の領域と、他部材接続面6の、側面13と隣接する領域に、互いに連続させて形成されている点が、先の図2〜4の例と相違している。この例においても、基体7自体の構成は、先の図2の例と同様である。他部材接続面6の、半田ブロック層14を形成していない領域に、図示していないものの、半田との濡れ性のよい層が被覆される等して濡れ性が付与されることや、側面13が、所定の表面粗さに仕上げられるのが好ましいこと等も同様である。
半田ブロック層14の厚みも、同程度であるのが好ましい。また、半田ブロック層14の、基体7の幅方向および厚み方向における形成幅W3は、前記と同様に0.025〜0.5mmであるのが好ましい。形成幅W3が前記範囲未満では、半田ブロック層としての、半田の流れを阻止する効果が十分に得られないおそれがある。また、形成幅W3が前記範囲を超えても、それ以上の効果が得られないおそれがある。基体7の側面13の半田ブロック層14は、その全面に形成してもよい。しかし、図2の例の場合と同じ理由で、側面13の、素子接続面5と接する上側の領域には、基体7の厚み方向の幅が0.075mm以上の、半田ブロック層14を形成しない領域を設けるのが好ましい。
この例においても、基体7の他部材接続面6に、ヒートシンク3との接続のための半田に対する濡れ性を付与したことと、半田ブロック層14を形成したこととの相乗効果によって、ヒートシンク3との接続時に、溶融した半田が、他部材接続面6から側面13にはみ出したり、はみ出した半田が、側面13を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がったりしにくいため、例えば、前記半田として、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田等を使用した場合であっても、這い上がった半田によって半導体レーザ2が短絡したり、前記半導体レーザ2の出射面12から出射されるレーザ光の光束が遮られたりする不良が発生するのを、これまでよりも抑制しながら、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良の少ない、良好な半田接合を得ることができる。
図6は、前記図2〜図5のサブマウント1を形成するための基体7の、変形例を示す断面図である。図6を参照して、この例の基体7は、側面13と、他部材接続面6との稜線にC面15を設けた点が、先の各例の基体7と相違している。前記位置にC面15を設けた場合には、サブマウント1とヒートシンク3との接続時に、前記C面15の部分が、基体7の側面13から凹入した半田溜りとして、溶融した半田を受容するために機能する。
そのため、這い上がった半田が半導体レーザ2を短絡させたり、その出射面12から出射されるレーザ光の光束を遮ったりする不良が発生するのを、より一層、確実に防止することができる。前記C面15の大きさは0.05〜0.3mmであるのが好ましい。半田ブロック層14は、側面13の、少なくともC面15と隣接する、図において下側の領域、C面15、および他部材接続面6の、C面15と隣接する領域のうちの、少なくとも1個所に形成すればよい。
図7〜図9は、それぞれ、サブマウント1の、さらに他の変形例を示す断面図である。図7を参照して、この例のサブマウント1は、基体7の素子接続面5のうち、半導体レーザ2が接続される領域が、前記半導体レーザ2との接続のための半田からなる素子接続層16によって被覆されている点が、先の図2の例と相違している。素子接続層16を形成する半田としては、In、Sn、Ag、Au、Ge、Si、Cu、およびAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物からなり、ヒートシンク3を接続するための半田よりも融点が高い、種々の半田が使用可能である。
特に、融点が270℃以上の、Au−Sn系、またはAu−Ge系の半田が、好適に使用される。前記半田は、融点が高く、比較的流れにくいため、例えば箔状の半田プリフォームを加熱して溶融させることで、均一に膜化するのは容易でないが、前記半田を、真空蒸着法等によって、あらかじめ、素子接続面5に、素子接続層16として被覆しておけば、必要最小限の量の半田で、半導体レーザ2との良好な接続を図ることが可能となる。素子接続層16の厚みは1〜15μm、特に3〜7μmであるのが好ましい。
厚みが、前記範囲未満では、半田の量が不足して、サブマウント1と半導体レーザ2の接続面に、熱伝導の妨げとなるボイドが生じやすい。また、厚みが前記範囲を超える場合には、半田が、熱抵抗として働いて、熱伝導の妨げとなりやすい。そのため、いずれの場合にも、半導体レーザ2が発する熱を、効率的に、ヒートシンク3に逃がすことができず、半導体レーザ2の動作効率が低下したり、寿命が短くなったり、寿命前に、半導体レーザ2が破損したりするおそれがある。
素子接続層16は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、湿式メッキ法等の種々の成膜方法によって形成することができる。また、箔状の半田プリフォームを、基体7の所定の位置に重ねた状態で、加熱して溶着させて、素子接続層16を形成することもできる。特に、厚みおよび組成が均一な素子接続層16を形成するためには、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が好ましい。素子接続層16は、組成の異なる半田からなる2層以上の積層構造としてもよい。
前記素子接続層16は、図8に示すように、基体7の素子接続面5のうち、半導体レーザ2が接続される領域と、側面13のうち、素子接続面5に隣接する、半田ブロック層14を形成した領域より上側の領域とに、連続させて形成してもよい。これにより、素子接続面5への半導体レーザ2の接続時に溶融してはみ出した半田を、素子接続層16の機能によって、側面13側に流れるように誘導して、前記半導体レーザ2の出射面12側にはみ出すのを防止することができる。
また、図9に示すように、素子接続層16は、基体7の素子接続面5の全面と、側面13のうち、素子接続面5に隣接する、半田ブロック層14を形成した領域より上側の領域だけでなく、その他の側面17の、素子接続面5に隣接する上側の領域等にも、連続させて形成することができる。これにより、素子接続面5への半導体レーザ2の接続時に溶融してはみ出した半田を、素子接続層16の機能によって、側面13、17側に流れるように誘導して、前記半導体レーザ2の出射面12側にはみ出すのを防止することができる。なお、図の例では、側面13だけでなく、側面17の、他部材接続面6に隣接する下側の領域にも、半田ブロック層14を形成しているが、前記半田ブロック層14は、先の2つの例と同様に、側面13側だけに形成してもよいし、全ての側面に形成してもよい。
図10は、サブマウント1の、さらに他の変形例を示す断面図である。図10を参照して、この例のサブマウント1は、基体7の全表面、すなわち素子接続面5、他部材接続面6、側面13、および側面17等が、基体7の各面と、その上に形成される種々の層との密着性を向上する機能に優れ、かつ、半田に対する濡れ性にも優れた材料からなる密着層18によって被覆されていると共に、他部材接続面6において、前記密着層18が露出されることで、前記他部材接続面6に、半田に対する濡れ性が付与されたものである。前記密着層18を形成する、前記機能を有する材料としては、NiまたはNiを含む化合物が挙げられる。
密着層18の厚みは0.01〜5μmであるのが好ましい。厚みが前記範囲未満では、前記密着層18による、半田の密着性を向上させる効果が十分に得られないおそれがある。また、厚みが前記範囲を超える場合には、密着層18が熱抵抗として働いて、熱伝導の妨げとなりやすい。そのため、半導体レーザ2が発する熱を、効率的に、ヒートシンク3に逃がすことができず、半導体レーザ2の動作効率が低下したり、寿命が短くなったり、寿命前に、半導体レーザ2が破損したりするおそれがある。また、密着層が剥離しやすくなるという問題を生じるおそれもある。密着層18は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、湿式メッキ法等の種々の成膜方法によって形成することができる。
基体7の、前記他部材接続面6以外の表面、すなわち素子接続面5、側面13、および側面17等の密着層18は、その上に被覆された、前記密着層18を形成する金属の、半田への拡散による、前記半田の、組成の変化を防止する機能を有すると共に、半田に対する濡れ性の低い材料からなる拡散防止層19によって被覆されて隠蔽されている。前記拡散防止層19を形成する、前記機能を有する材料としては、Pt、Mo、およびPdからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。そして、図の例では、基体7の側面13、17等において、前記拡散防止層19が、半田ブロック層として露出されることで、前記両側面13、17等が、半田ブロック処理されている。また、素子接続面5の、拡散防止層19の上には、半導体レーザ2との接続のための半田からなる素子接続層16が被覆されている。
拡散防止層19の厚みは0.01〜1μmであるのが好ましい。厚みが前記範囲未満では、前記拡散防止層19による、密着層18を形成する金属の拡散を防止する効果が十分に得られないおそれがある。また、厚みが前記範囲を超えても、それ以上の効果が得られないだけでなく、サブマウント1の、ひいては半導体装置4の製造コストを高騰させる要因ともなる。拡散防止層19は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、湿式メッキ法等の種々の成膜方法によって形成することができる。
前記例のサブマウント1によれば、基体7の他部材接続面6において密着層18を露出させて、ヒートシンク3との接続のための半田に対する濡れ性を付与したことと、両側面13、17等において拡散防止層19を露出させて、半田ブロック処理をしたこととの相乗効果によって、ヒートシンク3との接続時に、溶融した半田が、他部材接続面6から側面13、17にはみ出したり、はみ出した半田が、側面13、17を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がったりするのを抑制して、這い上がった半田によって半導体レーザ2が短絡したり、前記半導体レーザ2の出射面12から出射されるレーザ光の光束が遮られたりする不良が発生するのを防止することができる。
図11は、サブマウント1の、さらに他の変形例を示す断面図である。図11を参照して、この例のサブマウント1は、素子接続層16が、基体7の素子接続面5の全面と、側面13、17等のうち、素子接続面5に隣接する上側の領域にも連続させて形成された点が、先の図10の例と相違している。素子接続層16を、図のように形成すると、素子接続面5への半導体レーザ2の接続時に溶融してはみ出した半田を、前記素子接続層16の機能によって、側面13、17側に流れるように誘導して、前記半導体レーザ2の出射面12側にはみ出すのを防止することができる。
図12は、サブマウント1の、さらに他の変形例を示す断面図である。図12を参照して、この例のサブマウント1は、基体7の全表面、すなわち素子接続面5、他部材接続面6、側面13、および側面17等が、基体7の各面と、その上に形成される種々の層との密着性を向上する機能に優れた密着層18と、先に説明した拡散防止層19とで、この順に被覆されていると共に、側面13、17等の、他部材接続面6と隣接する領域、および他部材接続面6の、側面13、17等と隣接する領域において、前記拡散防止層19が、半田ブロック層として露出されることで、前記領域が半田ブロック処理されたものである。前記密着層18を形成する、前記機能を有する材料としては、Ni、Ti、Cr、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。
他部材接続面6のうち、拡散防止層19が露出された領域以外の領域には、半田濡れ層20が被覆されて、半田に対する濡れ性が付与されている。前記半田濡れ層20を形成する、半田の濡れ性のよい材料としては、Au、Ni、およびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。
半田濡れ層20の厚みは0.01〜5μmであるのが好ましい。厚みが前記範囲未満では、前記半田濡れ層20による、半田の濡れ性を向上させる効果が十分に得られないおそれがある。また、厚みが前記範囲を超えても、それ以上の効果が得られないだけでなく、サブマウント1の、ひいては半導体装置4の製造コストを高騰させる要因ともなる。半田濡れ層20は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、湿式メッキ法等の種々の成膜方法によって形成することができる。
図13は、サブマウント1の、さらに他の変形例を示す断面図である。図13を参照して、この例のサブマウント1は、拡散防止層19が、基体7の素子接続面5、および他部材接続面6の全面と、側面13、17等のうち、素子接続面5に隣接する上側の領域にのみ、選択的に形成されていると共に、前記素子接続面5と、側面13、17等の拡散防止層19が、素子接続層16で被覆され、かつ、他部材接続層6の拡散防止層19が、前記他部材接続面6の、側面13、17等と隣接する領域においてのみ露出されることで、前記領域が半田ブロック処理されている点が、図12の例と相違している。他部材接続層6のうち、拡散防止層19が露出された領域以外の領域には、半田濡れ層20が被覆されて、半田に対する濡れ性が付与されている。
前記図10〜図13の例のサブマウント1において、他部材接続面6で露出させた密着層18や、半田濡れ層20の表面には、先に説明した、ヒートシンク3との接続のための半田からなる他部材接続層を形成してもよいが、製造コストの低減のためには、前記他部材接続層を形成せず、ヒートシンク3との接続時に、前記各層の表面に、ペースト状の半田を塗布したり、箔状の半田プリフォームを挟んだりするのが好ましい。
図14は、図11のサブマウント1を用いて形成した、本発明の半導体装置4の一例を示す断面図である。すなわち、この例の半導体装置4は、前記サブマウント1の基体7の素子接続面5に、素子接続層16を介して、半導体レーザ2が接続されていると共に、前記基体7の他部材接続面6に、前記素子接続層16を形成する半田よりも融点の低い半田からなる他部材接続層21を介して、ヒートシンク3が接続されたものである。
前記例の半導体装置4においては、サブマウント1の素子接続層16を、素子接続面5だけでなく、側面13、17等にも連続して形成しているため、半導体レーザ2の接続時に溶融してはみ出した半田を、前記素子接続層16の機能によって、側面13、17側に流れるように誘導して、前記半導体レーザ2の出射面12側にはみ出すのを抑制することができ、はみ出した半田によって、出射面12から出射されるレーザ光11の光束が遮られたり、半導体レーザ2が短絡したりするのを防止することができる。
また、基体7の他部材接続面6において密着層18を露出させて、ヒートシンク3との接続のための半田に対する濡れ性を付与したことと、両側面13、17等において拡散防止層19を露出させて、半田ブロック処理をしたこととの相乗効果によって、ヒートシンク3との接続時に、溶融した半田が、他部材接続面6から側面13、17にはみ出したり、はみ出した半田が、側面13、17を、半導体レーザ2の出射面12の近傍まで這い上がったりしにくいため、例えば、前記半田として、低温での流れ性のよい半田や、ペースト状、箔状の半田等を使用した場合であっても、這い上がった半田によって半導体レーザ2が短絡したり、前記半導体レーザ2の出射面12から出射されるレーザ光の光束が遮られたりする不良が発生するのを、これまでよりも抑制しながら、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良の少ない、良好な半田接合を得ることができる。そのため、前記各種の不良を生じにくい、信頼性の高い半導体装置4を、高い歩留まりで製造することができる。
他部材接続層21を形成する、ヒートシンク3との接続のための半田としては、In、Sn、Ag、Au、Ge、Si、Cu、Al、Bi、Sb、およびZnからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、特にIn、Sn、Ag、Ge、Si、Cu、Al、Bi、Sb、およびZnからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなり、融点が270℃未満であって、低温での流れ性がよく、放熱の妨げとなるボイド等のハンダ濡れ不良を生じにくい半田が好適に使用される。前記半田としては、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、Sn−Ge系、Sn−Bi系、Sn−Sb系、Sn−Zn系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi系、またはSn−Zn−Bi系の半田が挙げられる。前記半田は、ペースト状、箔状等の状態で使用することもできる。他部材接続面6で露出させた密着層18の表面に、前記ペースト状の半田を塗布したり、箔状の半田プリフォームを挟んだりすることで、他部材接続層21が形成される。
本発明の構成は、以上で説明した各図の例のものには限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の設計変更を施すことができる。
《実施例1》
特開昭59−21032号公報に記載の製造方法に準拠して、Wからなる多孔質体の細孔内に、Cuを溶浸させて形成した複合構造を有するCu−W複合材料(Cu含量:10重量%)からなる、縦30mm×横30mm×厚み1.5mmの基体前駆体を形成した。次に、前記基体前駆体を、#400のWA砥石をセットした両頭研磨機を使用して、厚みが1.0mmになるまで平面粗研磨し、次いで、厚みが0.6mm、粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.4μmになるまで、アルミナ遊離砥粒を用いてラッピング加工して仕上げ、さらに、ワイヤ放電加工によって切断後に、放電出力を変えながら、切断面の粗加工と仕上げ加工を行って、縦2mm×横10mm×厚み0.6mmの平板状で、かつ、切断面である側面の算術平均粗さRaが0.7μmである基体を作製した。基体7の比抵抗は5.3×10-8Ωm、熱伝導率は180W/m・K、熱膨張係数は6.5×10-6/Kであった。
そして、前記基体7を用いて、図12に示す層構造を有する、放熱部材としてのサブマウント1を製造した。すなわち、前記基体7の全表面に、厚み2μmのNiめっき層を被覆して密着層18とし、前記密着層18の上に、スパッタリング法によって、厚み0.2μmのPt層を被覆して拡散防止層19とした。次に、前記基体7の側面13、17等と、素子接続面5とを、治具で隠蔽すると共に、他部材接続面6の中央の、縦1.6mm×横9.6mmの領域を露出させ、その周囲の領域を、メタルマスクで隠蔽した状態で、真空蒸着法によって、前記露出させた領域に、厚み0.1μmのAu層を被覆して半田濡れ層20とした。
次に、前記基体7の他部材接続面6と、側面13、17等の、前記他部材接続面6側の端縁から、基体7の厚み方向の幅0.3mmの領域とを治具で隠蔽して、素子接続面5と、側面13、17等の、前記素子接続面5側の端縁から、基体の厚み方向の幅0.3mmの領域とを露出させた状態で、真空蒸着法によって、前記露出させた領域に、厚み3μmのAu−Sn半田(Sn含量:20重量%)からなる素子接続層16を被覆して、図12に示すように、側面13、17等の、他部材接続面6と隣接する領域と、他部材接続面6の、側面13、17等と隣接する領域とにおいて、拡散防止層19が、半田ブロック層として露出されたサブマウント1を製造した。
《反り量の測定》
製造したサブマウント1の、素子接続面5側の平面の、対角線方向の表面形状を、長さ10mmに亘って、表面粗さ形状測定機〔(株)東京精密製のサーフコム(登録商標)1400D〕を用いて測定した測定結果から、日本工業規格JIS B 0610:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−転がり円うねりの定義及び表示」において規定された転がり円最大高さうねりWEMを、前記対角線方向の長さ1mmあたりの反り量として求めたところ0.35μmであった。
《実施例2》
基体7の他部材接続面6の全面を、Au層を被覆して半田濡れ層20としたこと以外は実施例1と同様にして、側面13、17等の、他部材接続面6と隣接する領域においてのみ、拡散防止層19が、半田ブロック層として露出されたサブマウント1を製造した。製造したサブマウント1の、対角線方向の長さ1mmあたりの反り量は0.22μmであった。
《実施例3》
実施例1で使用したのと同じ基体7を用いて、図13に示す層構造を有する、放熱部材としてのサブマウント1を製造した。すなわち、前記基体7の全表面に、厚み2μmのNiめっき層を被覆して密着層18とし、次に、前記基体7の側面13、17等と、素子接続面5とを、治具で隠蔽すると共に、他部材接続面6を露出させた状態で、前記他部材接続面6の全面に、スパッタリング法によって、厚み0.2μmのPt層を被覆して拡散防止層19とした。次に、前記基体7の側面13、17等と、素子接続面5とを、治具で隠蔽すると共に、他部材接続面6の中央の、縦1.6mm×横9.6mmの領域を露出させ、その周囲の領域を、メタルマスクで隠蔽した状態で、真空蒸着法によって、前記露出させた領域に、厚み0.1μmのAu層を被覆して半田濡れ層20とした。
次に、前記基体7の他部材接続面6と、側面13、17等の、前記他部材接続面6側の端縁から、基体7の厚み方向の幅0.3mmの領域とを治具で隠蔽して、素子接続面5と、側面13、17等の、前記素子接続面5側の端縁から、基体の厚み方向の幅0.3mmの領域とを露出させた状態で、スパッタリング法によって、前記露出させた領域に、厚み0.2μmのPt層を被覆して拡散防止層19とした。次に、前記露出させた領域に、引き続いて、真空蒸着法によって、厚み3μmのAu−Sn半田(Sn含量:20重量%)からなる素子接続層16を被覆して、図13に示すように、他部材接続面6の、側面13、17等と隣接する領域においてのみ、拡散防止層19が、半田ブロック層として露出されたサブマウント1を製造した。製造したサブマウント1の、対角線方向の長さ1mmあたりの反り量は0.22μmであった。
《実施例4》
基体前駆体を平面粗研磨し、ラッピング加工して仕上げた後、ワイヤ放電加工によって切断して作製した、縦2mm×横10mm×厚み0.6mmの平板状で、かつ、切断面である側面の算術平均粗さRaが2.0μmである基体を使用したこと以外は実施例1と同様にして、側面13、17等の、他部材接続面6と隣接する領域と、他部材接続面6の、側面13、17等と隣接する領域とにおいて拡散防止層19が、半田ブロック層として露出されたサブマウント1を製造した。製造したサブマウント1の、対角線方向の長さ1mmあたりの反り量は0.22μmであった。
《実施例5》
基体前駆体を平面粗研磨し、ラッピング加工して仕上げ、さらに、ワイヤ放電加工によって切断後に、放電出力を変えながら、切断面の粗加工と仕上げ加工を行って作製した、縦2mm×横10mm×厚み0.6mmの平板状で、かつ、切断面である側面の算術平均粗さRaが0.02μmである基体を使用したこと以外は実施例1と同様にして、側面13、17等の、他部材接続面6と隣接する領域と、他部材接続面6の、側面13、17等と隣接する領域とにおいて拡散防止層19が、半田ブロック層として露出されたサブマウント1を製造した。製造したサブマウント1の、対角線方向の長さ1mmあたりの反り量は0.35μmであった。
《実施例6》
実施例1で使用したのと同じ基体7を用いて、図11に示す層構造を有する、放熱部材としてのサブマウント1を製造した。すなわち、前記基体7の全表面に、厚み2μmのNiめっき層を被覆して密着層18とし、次に、前記基体7の他部材接続面6を治具で隠蔽すると共に、側面13、17等と、素子接続面5とを露出させた状態で、前記各面の全面に、スパッタリング法によって、厚み0.2μmのPt層を被覆して拡散防止層19とした。また、他部材接続面6において、密着層18を露出させて、前記他部材接続面6に半田に対する濡れ性を付与した。
次に、前記基体7の他部材接続面6と、側面13、17等の、前記他部材接続面6側の端縁から、基体7の厚み方向の幅0.3mmの領域とを治具で隠蔽して、素子接続面5と、側面13、17等の、前記素子接続面5側の端縁から、基体の厚み方向の幅0.3mmの領域とを露出させた状態で、スパッタリング法によって、前記露出させた領域に、真空蒸着法によって、厚み3μmのAu−Sn半田(Sn含量:20重量%)からなる素子接続層16を被覆して、図11に示すように、側面13、17等の、他部材接続面6と隣接する領域においてのみ、拡散防止層19が、半田ブロック層として露出されたサブマウント1を製造した。製造したサブマウント1の、対角線方向の長さ1mmあたりの反り量は0.22μmであった。
《比較例1》
他部材接続面6に拡散防止層19を形成せず、かつ、半田濡れ層20を、前記他部材接続面6の全面に形成したこと以外は実施例3と同様にして、拡散防止層19が、いずれの面においても半田ブロック層として露出されていないサブマウント1を製造した。製造したサブマウント1の、対角線方向の長さ1mmあたりの反り量は0.22μmであった。
《比較例2》
他部材接続面6に半田濡れ層20を形成しなかったこと以外は比較例1と同様にして、拡散防止層19が、いずれの面においても半田ブロック層として露出されていないサブマウント1を製造した。製造したサブマウント1の、対角線方向の長さ1mmあたりの反り量は0.22μmであった。
《半導体装置の製造》
前記各実施例、比較例で製造したサブマウントの素子接続面に、素子接続層を介して、半導体レーザを、その出射面が、基体の一側面と同一平面となるように位置合わせをして重ねて固定した状態で、N2中に15体積%のH2を含有させた還元性雰囲気中で、300℃×2分間の加熱をして、素子接続層を形成する半田を溶融させて、半導体レーザの下面に半田接合させることで、前記サブマウントと半導体レーザとを接続した。
次に、前記サブマウントと、縦15mm×横25mm×厚み3mmのCu製のヒートシンクとの間に、他部材接続層として、Sn−Ag−Cu半田(Ag含量:3.0重量%、Cu含量:0.5重量%)からなる、縦2mm×横10mm×厚み0.05mmの箔状の半田プリフォームを挟み、基体の、半導体レーザの出射面と同一平面に位置合わせした側面と、ヒートシンクの一側面とが同一平面となるように、前記各部を位置合わせして固定した状態で、N2雰囲気中で、240℃×3分間の加熱をして、他部材接続層を形成する半田を溶融させて、サブマウントの基体の下面に設けた半田濡れ層と、ヒートシンクの上面とに、それぞれ半田接合させることで、サブマウントと他部材と接続して半導体装置を製造した。
《特性評価》
各実施例、比較例のサブマウントごとに、それぞれ50個ずつ製造した半導体装置の半導体レーザに通電した際に、前記半導体レーザを動作させることができなかったもの、あるいは、動作はさせることができたものの、出射面から出射されたレーザ光の光束の断面形状を観察したところ、光束が、半田によって遮られて所定の断面形状になっていなかったものを不良品として、半導体装置の全個数に占める不良品の個数の割合を、不良率として算出した。結果を表1に示す。
Figure 2008166579
表より、基体の、側面および他部材接続面のいずれにおいても、拡散防止層を、半田ブロック層として露出させなかった比較例1、2のサブマウントを用いた場合には、不良率が82%と高かったことから、側面での半田の這い上がりを阻止して、前記不良のない、良好な半田接合が、歩留まり良く得られないことが判った。これに対し、基体の、側面および他部材接続面のいずれかにおいて、拡散防止層を、半田ブロック層として露出させた実施例1〜6のサブマウントを用いた場合には、不良率が36%以下であったことから、側面での半田の這い上がりを阻止して、前記不良のない、良好な半田接合が、高い歩留まりで得られることが確認された。また、実施例1〜3、6を比較した結果から、拡散防止層は、基体の側面および他部材接続面の、いずれにおいて露出させても、ほぼ同様の効果が得られることが判った。また、実施例1、4、5を比較した結果から、基体の側面の算術平均粗さRaは、0.1〜1.6μmであるのが好ましいことが判った。
《実施例7〜12、比較例3、4》
基体前駆体として、特開昭59−21032号公報に記載の製造方法に準拠して作製した、Moからなる多孔質体の細孔内に、Cuを溶浸させて形成した複合構造を有するCu−Mo複合材料(Cu含量:15重量%)からなるものを用いたこと以外は実施例1〜6、比較例1、2と同様にして、表2に示すサブマウントを製造し、前記サブマウントを用いて半導体装置を製造して、不良率を求めた。結果を表2に示す。なお基体の比抵抗は5.3×10-8Ωm、熱伝導率は160W/m・K、熱膨張係数は7.0×10-6/Kであった。
Figure 2008166579
表より、基体の、側面および他部材接続面のいずれにおいても、拡散防止層を、半田ブロック層として露出させなかった比較例3、4のサブマウントを用いた場合には、不良率が90%と高かったことから、側面での半田の這い上がりを阻止して、前記不良のない、良好な半田接合が、歩留まり良く得られないことが判った。これに対し、基体の、側面および他部材接続面のいずれかにおいて、拡散防止層を、半田ブロック層として露出させた実施例7〜12のサブマウントを用いた場合には、不良率が42%以下であったことから、側面での半田の這い上がりを阻止して、前記不良のない、良好な半田接合が、高い歩留まりで得られることが確認された。また、実施例7〜9、12を比較した結果から、拡散防止層は、基体の側面および他部材接続面の、いずれにおいて露出させても、ほぼ同様の効果が得られることが判った。また、実施例7、10、11を比較した結果から、基体の側面の算術平均粗さRaは、0.1〜1.6μmであるのが好ましいことが判った。
《実施例13、比較例5》
特開2004−175626号公報に記載の製造方法に準拠して、多数の微小なダイヤモンド粒子を、結合材としてのCuで結合した複合構造を有する複合材料(Cu含量:50重量%)からなる、直径50mm、厚み1.0mmの基体前駆体を形成した。次に、前記基体前駆体を、#400のダイヤモンド砥石をセットした平面研磨機を使用して、厚みが0.6mm、粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.5μmになるまで平面研磨して仕上げ、ワイヤ放電加工によって切断した後、放電出力を変えながら切断面の粗加工と仕上げ加工を行って、縦2mm×横10mm×厚み0.6mmの平板状で、かつ、切断面である側面の算術平均粗さRaが0.7μmであるの基体を作製した。前記基体の比抵抗は2.6×10-4Ωm、熱伝導率は550W/m・K、熱膨張係数は6.0×10-6/Kであった。そして、前記基体を使用したこと以外は実施例1、比較例1と同様にしてサブマウントを製造し、前記サブマウントを用いて半導体装置を製造して、不良率を求めた。結果を表3に示す。
《実施例14、比較例6》
特開平10−335538号公報に記載の製造方法に準拠して、Al中に、SiCが粒子状に分散して存在する複合構造を有する複合材料(Al含量:30重量%)からなる、縦30mm×横30mm×厚み1.5mmの基体前駆体を形成した。次に、前記基体前駆体を、#800のダイヤモンド砥石をセットした両頭研磨機を使用して、厚みが0.6mm、粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.8μmになるまで平面研磨し、ワイヤ放電加工によって切断した後、放電出力を変えながら切断面の粗加工と仕上げ加工を行って、縦2mm×横10mm×厚み0.6mmの平板状で、かつ、切断面である側面の算術平均粗さRaが1.0μmである基体を作製した。前記基体の比抵抗は2.0×10-8Ωm、熱伝導率は150W/m・K、熱膨張係数は8.0×10-6/Kであった。そして、前記基体を使用したこと以外は実施例1、比較例1と同様にしてサブマウントを製造し、前記サブマウントを用いて半導体装置を製造して、不良率を求めた。結果を表3に示す。
《実施例15、比較例7》
特開平6−268117号公報に記載の製造方法に準拠して、Cu層と、Moからなる多孔質体の細孔内に、Cuを溶浸させて形成した複合構造を有するCu−Mo複合材料層(Cu含量:40重量%)と、Cu層とをこの順に積層した複合構造を有するクラッド材からなる、縦30mm×横30mm×厚み0.6mmの基体前駆体を形成した。次に、前記基体前駆体を、縦3mm×横11mmの平板状に打ち抜き加工した後、その側面を、#400のWA砥石を用いて研磨して、縦2mm×横10mm×厚み0.6mmの平板状で、かつ、側面の算術平均粗さRaが0.6μmである基体を作製した。前記基体の比抵抗は4.0×10-8Ωm、熱伝導率は220W/m・K、熱膨張係数は8.3×10-6/Kであった。そして、前記基体を使用したこと以外は実施例1、比較例1と同様にしてサブマウントを製造し、前記サブマウントを用いて半導体装置を製造して、不良率を求めた。結果を表3に示す。
Figure 2008166579
表の各実施例、比較例の結果より、各種の材料からなる基体前駆体を用いた場合でも、基体の、側面および他部材接続面において、拡散防止層を、半田ブロック層として露出させることによって、側面での半田の這い上がりを阻止して、前記不良のない、良好な半田接合が得られることが確認された。
本発明の放熱部材の一例としてのサブマウントと、前記サブマウントに接続される半導体素子としての、半導体レーザの外観を示す斜視図である。 前記例のサブマウントの、図1におけるII−II線断面図である。 サブマウントの変形例を示す断面図である。 サブマウントの、他の変形例を示す断面図である。 サブマウントの、さらに他の変形例を示す断面図である。 図2〜図5のサブマウントを形成するための基体の、変形例を示す断面図である。 サブマウントの、さらに他の変形例を示す断面図である。 サブマウントの、さらに他の変形例を示す断面図である。 サブマウントの、さらに他の変形例を示す断面図である。 サブマウントの、さらに他の変形例を示す断面図である。 サブマウントの、さらに他の変形例を示す断面図である。 サブマウントの、さらに他の変形例を示す断面図である。 サブマウントの、さらに他の変形例を示す断面図である。 図11のサブマウントを用いて形成した、本発明の半導体装置の一例を示す断面図である。 従来のサブマウントを用いて形成した、従来の半導体装置の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 サブマウント
2 半導体レーザ
3 ヒートシンク
4 半導体装置
5 素子接続面
6 他部材接続面
7 基体
8 素子接続層
9 他部材接続層
10 活性層
11 レーザ光
12 出射面
13 側面
14 半田ブロック層
15 C面
16 素子接続層
17 側面
18 密着層
19 拡散防止層
20 半田濡れ層
21 他部材接続層

Claims (15)

  1. 片面が、半導体素子との接続のための素子接続面、反対面が、他部材との接続のための他部材接続面とされた、少なくとも金属を含む材料からなる平板状の基体を備え、
    前記他部材接続面に、半田に対する濡れ性が付与されていると共に、
    前記基体の、素子接続面および他部材接続面と交差する側面の、少なくとも一部の領域、および他部材接続面の、側面と隣接する領域のうちの少なくとも一方に、前記半田の流れを阻止するための半田ブロック処理が施されていることを特徴とする放熱部材。
  2. 前記側面の、少なくとも一部の領域、および他部材接続面の、側面と隣接する領域のうちの少なくとも一方が、Pt、Mo、Pd、Cr、およびAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物からなる半田ブロック層によって被覆されて、半田ブロック処理されていることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
  3. 前記素子接続面の少なくとも一部が、半田からなる素子接続層によって被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
  4. 前記側面の、少なくとも素子接続面と隣接する領域にも、素子接続層が被覆されていることを特徴とする請求項3に記載の放熱部材。
  5. 基体の側面の、表面粗さを示す、粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.1〜1.6μmであることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
  6. 基体の比抵抗が1.6×10-8〜1.0×10-3Ωmであることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
  7. 基体の熱伝導率が150〜650W/m・K、熱膨張係数が2.0×10-6〜10×10-6/Kであることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
  8. 基体が、W、Mo、SiC、およびダイヤモンドからなる群より選ばれた少なくとも1種と、Cu、Al、およびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種とからなることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
  9. 基体の、素子接続面、他部材接続面、および側面が、NiまたはNiを含む化合物からなる密着層によって被覆されていると共に、他部材接続面において、前記密着層が露出されることで、前記他部材接続面に、半田に対する濡れ性が付与されていることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
  10. 基体の、素子接続面、他部材接続面、および側面が、Ni、Ti、Cr、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物からなる密着層と、Pt、Mo、およびPdからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物からなる拡散防止層とで、この順に被覆されていると共に、側面の、少なくとも他部材接続面と隣接する領域、および他部材接続面の、側面と隣接する領域のうちの少なくとも一方において、前記拡散防止層が、半田ブロック層として露出されることで、前記領域が半田ブロック処理されていることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
  11. 他部材接続面のうち、拡散防止層が露出された領域以外の領域が、Au、Ni、およびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれら金属の少なくとも1種を含む化合物からなる半田濡れ層によって被覆されて、半田に対する濡れ性が付与されていることを特徴とする請求項10に記載の放熱部材。
  12. 請求項1に記載の放熱部材の、基体の素子接続面に、半田からなる素子接続層を介して、半導体素子が接続されていると共に、他部材接続面に、前記素子接続層を形成する半田よりも融点の低い半田からなる他部材接続層を介して、他部材が接続されていることを特徴とする半導体装置。
  13. 素子接続層を形成する半田が、Au−Sn系、またはAu−Ge系の半田であることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
  14. 他部材接続層を形成する半田が、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、Sn−Ge系、Sn−Bi系、Sn−Sb系、Sn−Zn系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi系、またはSn−Zn−Bi系の半田であることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
  15. 半導体素子が、半導体発光素子であることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
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