JP2008150543A - インク及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法に用いた際に、良好な吐出安定性が得られるインクを提供すること。
【解決手段】熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクであって、(a)顔料、(b)分散剤、(c)液媒体、(d)ポリグリセリン及び(e)カルボン酸のカリウム塩、カルボン酸のルビジウム塩及びカルボン酸のセシウム塩から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするインク。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録において使用するインク、かかるインクを用いるインクジェット記録方法に関する。さらには、顔料を色材として用いたインクの吐出安定性を向上させ、前記インクを用いて画像記録を行った場合に高堅牢性を実現するインク及びかかるインクを用いるインクジェット記録方法に関する。
従来より、インクジェット記録方法を用いた印刷には様々な方式が案出されている。その中でも、例えば、特許文献1に記載されているインクを熱エネルギーの作用によりインク滴として吐出させるインクジェット記録方法(所謂、バブルジェット(登録商標)方法)は、高密度マルチノズルが非常に簡単である。そのため、高画質の画像が高速でかつ非常に安いコストで得られ、しかも特別なコート層などを有しない普通紙にも印刷できるという特徴を有している。この方法では、記録ヘッドのヒータが急速に加熱されることにより、ヒータ上の液体が気泡を発生して急激な体積の増大を起こす。この急激な体積の増大に基づく作用力によって記録ヘッド部先端のノズルより液滴が吐出、飛翔して記録媒体に付着して印刷が行われる。
このようなインクジェット記録方法においては、通常は水性染料インクが用いられているが、最近ではインクジェット記録に水性顔料インクを用いる試みがなされるようになってきた。その理由は、水性顔料インクによって形成された画像に、耐水性及び耐光性などの堅牢性を与える最もよい材料であるからである。このような水性顔料インクについては、例えば、特許文献2乃至5に、画像の記録品位、インクの吐出特性、保存安定性、目詰まり性及び定着性などの基本的な特性を満たすインクジェット記録用水性顔料インクが開示されている。
しかしながら、水性顔料インクをバブルジェット(登録商標)方法で吐出させる場合における課題として、インクが記録ヘッドのヒータ表面で高熱に曝されることが挙げられる。バブルジェット(登録商標)方法はノズルの高密度化の可能性などに大きな特徴があり、優れてはいる。しかし、記録ヘッドのヒータ表面の高熱の影響でインクに含まれる成分が変質して加熱素子表面に付着物として堆積する。これにつれて、記録ヘッドのヒータ表面の熱伝達性能が経時的に悪くなり、発泡に伴う衝撃圧力が低下して吐出性能が劣化し、ひいては形成画像の品質を悪くする。
特開昭54−51837号公報 特開平2−255875号公報 特開平4−334870号公報 特開平4−57859号公報 特開平4−57860号公報
したがって、本発明の目的は、バブルジェット(登録商標)方法による画像形成方法に用いた際に、良好な吐出安定性が得られるインクを提供することである。また、さらに、耐水性及び耐光性などの堅牢性を有する高品位の画像が得られる着色剤として顔料を用いたインク及びそれを用いた画像形成方法を提供することにある。
上記の目的は下記の本発明によって達成することができる。すなわち、本発明は、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクであって、(a)顔料、(b)分散剤、(c)液媒体、(d)ポリグリセリン及び(e)カルボン酸のカリウム塩、カルボン酸のルビジウム塩及びカルボン酸のセシウム塩から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするインクを提供する。
また、本発明は、上記本発明のインクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録する工程を有することを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。
上記バブルジェット(登録商標)方式のインクジェットプリンタに、上記本発明のインクを用いて画像を形成した場合には、インクに熱エネルギーを印加してオリフィスから顔料インクを吐出させるためのヒータへの付着物を極めて有効に低減させ、吐出性能を安定化させることが可能となる。
本発明のインクを用いることで、このような吐出性能が安定する効果が得られる理由は明らかでない。しかし、本発明者らの検討によれば、インク中に上記(d)成分であるポリグリセリンが非常に高粘度であるため、顔料粒子と樹脂の接着剤になり、ヒータ表面で高温に曝されても顔料粒子と樹脂が分離して分散性が低下するのを防止することが推測される。
また、カルボン酸のカリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩から選ばれる少なくとも1種の金属イオンのイオン半径が、リチウムイオンやナトリウムイオンと比べて大きい。そのため立体障害により、樹脂の可溶化基であるカルボキシル基やスルホン基の会合を阻害する。この会合阻害によりカルボキシル基やスルホン基の熱による酸無水物反応などの脱水反応を防ぎ、ヒータ表面で高温に曝されても樹脂の可溶化基が熱分解して分散性が低下するのを防止することが推測される。
さらに、カルボン酸は弱酸であるためカルボン酸のカリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩は弱アルカリ性となり、樹脂の溶解性が向上し分散性が高まると考えられる。以上述べたポリグリセリンとカルボン酸のカリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩から選ばれる少なくとも1種による相乗効果で吐出性能を安定化させると推測される。
以上のように、本発明によれば、バブルジェット(登録商標)方式の画像形成方法に用いた際に、良好な吐出安定性が得られ、さらに、耐水性及び耐光性などの堅牢性を有する高品位の画像が得られる、着色剤として顔料を用いたインク及びそれを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をより詳細に説明する。
先ず、本発明にかかる顔料インクについて説明する。該インクは、(a)顔料、(b)分散剤、(c)液媒体、(d)ポリグリセリン及び(e)カルボン酸のカリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩から選ばれる少なくとも1種を構成成分として含む。本発明者らは、顔料インクをバブルジェット(登録商標)方式の記録方法において、顔料インクの吐出の安定化方法について鋭意検討した。その結果、使用するインクに、上記の(d)と(e)を使用すれば、非常に効果的に吐出性能が安定することを知見して本発明に至った。以下、本発明のインクの各構成成分について説明する。
<(d)成分>
先ず、本発明にかかるインクを特徴づける(d)成分について述べる。本発明で使用する(d)成分はポリグリセリンである。ポリグリセリンとしては、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリンが挙げられる。また、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン。デカグリセリンの混合物である重量平均分子量が200から1,000のポリグリセリンが挙げられる。中でも特に、ジグリセリンは入手が容易で、安価であり好ましい。
本発明にかかるインクを作製する場合に、上記の(d)成分の総含有量は、インク全量に対して0.5から20質量%の範囲で使用することが好ましい。さらには、インク全量に対して1から15質量%の範囲で含有させることがより好ましい。この範囲とすることで、優れた吐出の安定効果を有し、また、記録ヘッドのノズル詰まりなどの生じにくいインクを得ることができる。
<(e)成分>
次に、本発明にかかるインクを特徴づける(e)成分について述べる。本発明で使用する(e)成分としては、カルボン酸のカリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。具体的には、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、シュウ酸一カリウム、シュウ酸二カリウム、マロン酸一カリウム、マロン酸二カリウム、コハク酸一カリウム、コハク酸二カリウム、グルタル酸一カリウム。グルタル酸二カリウム、アジピン酸一カリウム、アジピン酸二カリウム、リンゴ酸一カリウム、リンゴ酸二カリウム、酒石酸一カリウム、酒石酸二カリウム、クエン酸一カリウム。クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、安息香酸カリウム、フタル酸カリウム、イソフタル酸カリウム、テレフタル酸カリウム、1−ナフトエ酸カリウム、2−ナフトエ酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウムなどが挙げられる。
(e)成分としては、カリウム塩型で市販されている化合物をそのまま使用してもよいが、カルボン酸に水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウムを添加してカリウム塩、ルビジウム塩及びセシウム塩を作成して使用してもよい。
本発明にかかるインクを作製する場合に、上記に挙げたような(e)成分は、単独で使用することは勿論、上記に挙げたような化合物の中から2種類以上を選択して併用してもよい。上記の(e)成分の総含有量は、インク全量に対して0.005から5質量%の範囲で使用することが好ましい。さらには、インク全量に対して0.05から1質量%の範囲で含有させることがより好ましい。この範囲とすることで、優れた吐出の安定効果を有する、また、記録ヘッドのノズル詰まりなどの生じにくいインクを得ることができる。
<(a)顔料>
次に、本発明にかかるインクの(a)成分である顔料について説明する。顔料としては、無機顔料や有機顔料など、あらゆる顔料を用いることができる。具体的には、下記に挙げるものを使用できる。しかし、これに限定されるものではない。
カーボンブラック、
C.I.ピグメントイエロー−1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、129、151、154、195。C.I.ピグメントレッド−5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、57(Sr)、112、122、123、168、184、202。C.I.ピグメントブルー−1、2、3、15:3、15:34、16、22、60。C.I.ヴァットブルー−4、6など。
インクの色材として用いる上記に挙げたような顔料は、1種類で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、顔料の濃度は限定されないが、通常は、インク全量に対して0.1から20質量%の範囲から適宜に選択される。
<(b)分散剤>
次に、本発明にかかるインクの(b)成分である分散剤について説明する。上記に挙げたような顔料をインクの色材として使用する場合には、顔料をインク中で安定に分散させるために、分散剤を使用することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤や界面活性剤系分散剤などを用いることができる。
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物塩、スチレン−メタクリル酸共重合物塩、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合物塩、スチレン−マレイン酸共重合物塩。アクリル酸エステル−マレイン酸共重合物塩、スチレン−メタクリルスルホン酸共重合物塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩。ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、及びポリビニルアルコールなどを使用することができる。これらの中でも、特に、重量平均分子量が1,000から30,000で、酸価が100から430の範囲のものが好ましい。
界面活性剤系分散剤としては、例えば、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ラウリルベンゼンカルボン酸塩、ラウリルナフタレンスルホン酸塩、脂肪族アミン塩、及びポリエチレンオキサイド縮合物などが挙げられる。これらの分散剤の使用量は、顔料の質量:分散剤の質量=10:5から10:0.5の範囲とすることが好ましい。
<(c)液媒体>
次に、本発明にかかるインクを構成する(c)成分としての液媒体について説明する。液媒体としては、水を含むものを使用することが好ましく、特に、水と水溶性有機溶剤との混合媒体を用いることが好ましい。水は、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが望ましい。また、水の含有量としては、水性インク全量に対して、好ましくは35から96質量%の範囲である。水溶性有機溶剤は、インクの粘度を使用上好ましい適当な粘度に調整するためと、インクの乾燥速度を遅らせたり、色材の溶解性を高め記録ヘッドのノズルの目詰まりを防止するなどの種々の目的で用いられる。インク中の水溶性有機溶剤の総含有量は、インク全量に対して、0.5から20質量%の範囲で使用することが好ましく、さらには、インク全量に対して、1から15質量%の範囲で含有させることがより好ましい。上記範囲とすることで、優れた吐出の安定効果を有し、また、記録ヘッドのノズル詰まりなどの生じにくいインクを得ることができる。
上記において使用する水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノールなどの炭素数1から5のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体。エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオールなどのアルキレン基が2から6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類。グリセリン。トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの低級アルキルエーテル類。トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類。スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
<添加剤>
さらに、本発明にかかるインクには、上記の成分の他に、必要に応じて、従来公知の一般的な各種添加剤を含み得る。例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防かび剤、防腐剤、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤や、尿素などのノズル乾燥防止剤などを適宜に添加して用いることができる。
<インクの物性>
また、上記のような組成を有する本発明にかかるインクは、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法に好適に用いられる。このため、本発明のインクの物性が以下の範囲のものであることが好ましい。すなわち、25℃付近でのpHが3から12、より好ましくは4から10の範囲である。表面張力は、好ましくは10から60mN/m(dyn/cm)、より好ましくは15から50mN/m(dyn/cm)の範囲である。粘度は好ましくは1から30cps(mPa・s)、より好ましくは1から10cps(mPa・s)の範囲である。
次に、上述したインクを用いて記録媒体に画像記録を行うのに好適なインクジェット記録装置について説明する。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法を実施するインクジェット記録装置は、上記した本発明のインクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴として吐出させ、記録媒体上に画像を記録するための手段を有することを特徴とする。好適なものとしては、例えば、バブルジェット(登録商標)記録方式のインクジェット記録装置が挙げられる。本発明は、バブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッド、記録装置において、特に優れた効果をもたらすものである。
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されているが、本発明の記録方法は、これらの基本的な原理を用いて行うことが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。特に、オンデマンド型の場合には、下記のようにしてインク吐出が行われるため、特に応答性に優れたインク吐出が達成できるという利点がある。オンデマンド型の記録方式では、先ず、インクが保持されているシートや液路に対応して配置された電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加する。それによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめる。そして該熱エネルギーによって、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させるので、結果的に、この駆動信号に一対一対応し、インク内の気泡を形成できる。
そして、この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介してインクを吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4,463,359号明細書、同第4,345,262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4,313,124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
本発明の記録方法に用いられる記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)のものが使用できる。その他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4,558,333号明細書、米国特許第4,459,600号明細書を用いた構成の記録ヘッドも本発明の記録方法に有効に利用できる。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通する吐出口を電気熱変換体の吐出部とする構成(特開昭59−123670号公報など)の記録ヘッドも、本発明の記録方法に有効に利用できる。
さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、下記のようなものが適用できる。上述した明細書に開示されているような複数の記録ヘッドの組み合わせによって、その長さを満たす構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとして構成されたものがあるが、いずれでもよい。このような記録ヘッドを有する記録装置では、前述した本発明の効果が一層有効に発揮される。
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドも、本発明の記録方法に用いる記録ヘッドの構成として好適である。或いは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドも、本発明の記録方法に用いる記録ヘッドの構成として有効である。
また、本発明は、適用される記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段などを付加することは本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或いは吸引手段、電気熱変換体或いはこれとは別の加熱素子或いはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードである。
次に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
<実施例1〜7>
[実施例1]
(顔料分散液1の調製)
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体
(酸価116、重量平均分子量3,700) 5部
・トリエタノールアミン 0.5部
・ジエチレングリコール 5部
・水 69.5部
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂成分を完全に溶解させる。この溶液にカーボンブラック「MA−100」(pH3.5;三菱化学(株)製)15部、2−プロパノール5部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグライダー
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積)
・粉砕時間:3時間
さらに、遠心分散処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して、固形分が20%である顔料分散液1とした。
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを本発明に使用する実施例1のインクとした。
・顔料分散液1 30部
・ジエチレングリコール 10部
・ジグリセリン 10部
・酢酸カリウム 1部
・水 49部
[実施例2]
(顔料分散液2の調製)
・スチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量:約7,000)
3.5部
・水酸化カリウム 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 65.5部
先ず、上記成分を容器の中に入れて混合し、ウォーターバスで70℃に加熱し、樹脂分を完全に溶解させた。次に、この溶液に、C.I.ピグメントイエロー93を24部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った。その後、上記顔料分散液1の作製の場合と同様の分散処理を行って顔料分散液2を作製した。さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を除去して、固形分が25%である顔料分散液2とした。
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを本発明に使用する実施例2のインクとした。
・顔料分散液2 20部
・ジエチレングリコール 10部
・ジグリセリン 10部
・酢酸カリウム 1部
・水 59部
[実施例3]
(顔料分散液3の調製)
・スチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量:約7,000)
3.5部
・水酸化カリウム 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 65.0部
先ず、上記成分を容器の中に入れて混合し、ウォーターバスで70℃に加熱し、樹脂分を完全に溶解させた。次に、この溶液に、C.I.ピグメントレッド122を24部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った。その後、上記顔料分散液1の作製の場合と同様の分散処理を行って顔料分散液3を作製した。さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を除去して、固形分が25%である顔料分散液3とした。
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを本発明に使用する実施例3のインクとした。
・顔料分散液3 20部
・ジエチレングリコール 10部
・ジグリセリン 10部
・酢酸カリウム 1部
・水 59部
[実施例4]
(顔料分散液4の調製)
・スチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量:約7,000)
3.5部
・水酸化カリウム 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 65.5部
先ず、上記成分を容器の中に入れて混合し、ウォーターバスで70℃に加熱し、樹脂分を完全に溶解させた。次に、この溶液に、C.I.ピグメントブルー15:3を24部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った。その後、上記顔料分散液2の作製の場合と同様の分散処理を行って、固形分が25%である顔料分散液4を作製した。さらに遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して顔料分散液4とした。
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを本発明に使用する実施例4のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・ジグリセリン 10部
・酢酸カリウム 1部
・水 59部
[実施例5]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを本発明に使用する実施例5のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・ジグリセリン 10部
・コハク酸二カリウム 1部
・水 59部
[実施例6]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを本発明に使用する実施例6のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・ジグリセリン 10部
・酢酸セシウム 1部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1部
・水 58部
[実施例7]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを本発明に使用する実施例7のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・ポリグリセリン(平均分子量750) 10部
・コハク酸二カリウム 1部
・水 59部
<比較例1〜6>
[比較例1]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを比較例1のインクとした。
・顔料分散液1 30部
・ジエチレングリコール 10部
・2−プロパノール 2部
・水 58部
[比較例2]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを比較例2のインクとした。
・顔料分散液2 20部
・ジエチレングリコール 10部
・水 54.7部
[比較例3]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを比較例3のインクとした。
・顔料分散液3 20部
・ジエチレングリコール 10部
・水 54.7部
[比較例4]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを比較例4のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・水 54.7部
[比較例5]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを比較例5のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・ジグリセリン 10部
・水 54.7部
[比較例6]
(インクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを比較例6のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・酢酸カリウム 1部
・水 54.7部
〔評価〕
・吐出速度
上記の実施例1〜7及び比較例1〜6のインクについて、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッド(BC−02(キヤノン(株)製))を有するインクジェット記録装置を用いて評価した。駆動条件を、駆動パルス幅4.4μs、駆動電圧24.6V、駆動周波数300ヘルツとし、各インクを搭載して、それぞれの吐出速度を測定した。結果を表1に示す。下記の基準で評価した。
A:液滴の吐出速度が10m/s以上12m/s以下。
B:液滴の吐出速度が8m/s以上10m/s未満。
C:液滴の吐出速度が8m/s未満。
・吐出耐久性
耐久試験も、吐出速度を測定したと同じインクジェット記録装置を用いて行った。駆動条件は、パルス幅4.4μs、駆動電圧24.6V、駆動周波数6,250Hzとした。上記の条件で、各インクについて連続吐出を行い、下記の方法で吐出耐久性を評価した。記録ヘッドから吐出される1×106発分の液滴を容器に収集して、電子天秤で秤量した。具体的には、1×106発分の液滴の吐出前後における容器の重さを秤量し、増加量を求めて、その1×106発における平均の吐出液滴量(すなわち、1発分の量)を算出した。そして、連続吐出を1×108発まで行い、耐久試験の最終の1×106発分の液滴量から求めた平均の吐出液滴量を、耐久試験の当初の1×106発分の液滴量から求めた平均の吐出液滴量と比較し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:9.9×107から1×108発間の平均の吐出液滴量が0から1×106発後の平均の吐出液滴量と比べて90%以上。
B:9.9×107から1×108発間の平均の吐出液滴量が0から1×106発後の平均の吐出液滴量と比べて90%未満70%以上。
C:9.9×107から1×108発間の平均の吐出液滴量が0から1×106発後の平均の吐出液滴量と比べて70%未満。
D:途中で吐出不能に陥った。
Figure 2008150543
Figure 2008150543
以上説明したように、本発明によれば、バブルジェット(登録商標)方式の画像形成方法に用いた際に、良好な吐出安定性が得られ、さらに、耐水性及び耐光性などの堅牢性を有する高品位の画像が得られる着色剤として顔料を用いたインク及びそれを用いた画像形成方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクであって、(a)顔料、(b)分散剤、(c)液媒体、(d)ポリグリセリン及び(e)カルボン酸のカリウム塩、カルボン酸のルビジウム塩及びカルボン酸のセシウム塩から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするインク。
  2. 前記(d)成分が、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン及び重量平均分子量が200から1,000のポリグリセリンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のインク。
  3. 前記(e)成分が、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、シュウ酸一カリウム、シュウ酸二カリウム、マロン酸一カリウム、マロン酸二カリウム、コハク酸一カリウム、コハク酸二カリウム、グルタル酸一カリウム、グルタル酸二カリウム、アジピン酸一カリウム、アジピン酸二カリウム、リンゴ酸一カリウム、リンゴ酸二カリウム、酒石酸一カリウム、酒石酸二カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、安息香酸カリウム、フタル酸カリウム、イソフタル酸カリウム、テレフタル酸カリウム、1−ナフトエ酸カリウム、2−ナフトエ酸カリウム、酢酸ルビジウム及び酢酸セシウムから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のインク。
  4. 前記(d)成分の含有量が、インク全量に対して0.5から20質量%である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
  5. 前記(e)成分の含有量が、インク全量に対して0.005から5質量%である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録する工程を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
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