JP5089070B2 - インクジェット記録用インク及び記録方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録方法に適したインクジェット記録用インク(以下「インク」と略す)と、これを用いたインクジェット記録方法に関する。更に詳しくは、セルロースを含有する記録媒体に水系インクを多量に付与しても記録媒体のカールが問題とならず、高い駆動周波数吐出時における良好な応答性と良好なスタートアップ特性を与えるインク、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて記録を行うものである。該方法においては、吐出エネルギー供給手段として電気熱変換体を用い、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させるサーマル方式がある。該方式によれば、記録ヘッドの高密度マルチノズル化が容易に実現でき、高解像度及び高品質の画像を高速で記録できるという提案がある(例えば、特許文献1から3参照)。
近年、銀塩写真レベルの極めて高品位なインクジェット記録画像に対応するために、単一のノズルから吐出させるインクの液滴のサイズが小さくなってきている。現在では、インクの液滴量が約5pl(ピコリットル)以下のインクジェットプリンタが市販されている。又、記録速度に関しても、より一層の高速化を求められてきている。該高速化に伴って、より高い駆動周波数への対応やスタートアップ特性の向上が急務である。
又、インクジェット記録に用いられるインクは、水を主成分とし、これに乾燥防止や記録ヘッドの耐固着性向上等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有したものが一般的である。このようなインクを用いて普通紙や、微量コート紙等に代表されるセルロースを含有する記録媒体に記録を行った場合、一定の面積以上の領域に短時間に多量のインクを打ち込むと、記録媒体が反ってしまう、いわゆるカールが生じるという問題が発生する。カール現象の発生は、従来の主流であった文字中心の記録に際しては、インクの打ち込み量が少ないためあまり問題とならなかった。しかしながら、近年広く行われるようになってきた、インターネットのホームページや写真画像の記録をする場合には、普通紙等に多量のインクを付与する必要があるため、カール現象の発生は解決すべき大きな課題となっている。
こうした課題に際して、各種カール防止溶剤を含有する水性インク組成物が提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。こうした物質を用いると、耐カール性(カール発生の抑制効果が認められることを意味する)についてはある程度の効果は認められるものの、高い駆動周波数吐出時の応答性、スタートアップ特性と耐カール性の両立については、更なる向上が望まれている。
特公昭61−59911号公報 特公昭61−59912号公報 特公昭61−59914号公報 特開平6−157955号公報 特開平11−12520号公報
上記従来技術の各課題の概要を以下に示す。
1.耐カール性
普通紙に代表されるセルロースを含有する記録媒体に水系インクを多量に付与すると、いわゆるカールという現象が生じる。強いカール現象が発生すると、紙が筒状に丸まってしまう。カール発生のメカニズムは、抄紙段階における紙を乾燥する工程において、一定方向にテンションが加わった状態で水が蒸発し、セルロース間での水素結合が形成されることに起因していると考えられる。この状態の紙に水系インクが付着すると水によりセルロース間の水素結合が壊れ、水によって結合部が置換されるが、その水が蒸発すると再びセルロース間の水素結合が形成される。水素結合の再形成の際には紙にテンションが働いていないため、インク付着面側に紙が収縮し、その結果カールが発生するものと考えられる。
形成する画像が文字中心である従来の記録ではインクの付与量が比較的少ないので、この現象は注目されていなかった。しかしながら、インクの付与量が多いグラフィックの印刷頻度が増してきた昨今では、大きな問題となり、画像形成において格段の耐カール性の向上が求められている。特に、セルロースを含有する普通紙等の記録媒体に、記録面積が15cm2以上で、水系インク打ち込み量が0.03mg/cm2から30mg/cm2という条件で記録する場合に、カールの発生が著しい。
2.周波数応答性
オンデマンド型インクジェット方式、特にサーマルジェット方式において、高い駆動周波数で連続して吐出させようとした場合、インクの物理的・化学的性質によってはインクのノズルへのリフィルが間に合わなくなる。そのためにリフィルされる前に次のインク吐出が始まってしまうことがある。この結果、インクの吐出不良を起こしたり、インクの吐出量が極端に低下したりする状況となる。又、この現象は吐出させるインクの液滴が5pl(ピコリットル)以下といった小液滴であるほどより顕著である。
3.スタートアップ特性
オンデマンド方式において液滴形成が一定時間行われないと、ノズル先端でのインク中の水分の蒸発による相対的な色材濃度の増加が起こる。そのためにノズル先端部分のインク粘度が上昇し、インクの吐出が正常に行われなくなる。その結果、ドットプレスメントが正確でなくなったり書き始めの部分でドット径が小さくなったりする、いわゆるスタートアップ特性の低下が生じる。そして、このような現象は、インクのノズル先端からの蒸発が促進される低湿度環境下やインク全体の粘度が上昇する低温環境下で特に顕著になる。この特性は、インクの小液滴化が進むと、特に顕著になる問題である。
従来、上記の如き問題に対して、例えば、シリアルプリンタの場合、記録ヘッドが記録面に対峙している時間が連続して5秒未満である場合は、印字領域外でのインクの吐出を行い、ノズル内のインクの置換を行ってきた。又、一般には、プリント動作をストップし、インクの吸引や加圧による回復操作を頻繁に入れることによって対応してきた。しかしながら、例えば、大判プリンタの場合は、1スキャンの距離が長いため、従来と同等以上の性能が要求されている。又、ヘッドをシリアルに駆動させず固定して使用するラインヘッド搭載プリンタでは、装置の構造上、回復操作を頻繁に行えないことからより深刻な課題である。
従って、本発明の目的は、セルロースを含有する記録媒体に対してもカールが問題とならず、高い駆動周波数吐出時における良好な応答性と良好なスタートアップ特性を高いレベルで維持しつつ、高精細な画像記録に対応し得るインクを提供することにある。又、本発明の他の目的は、高品位な画像を、安定に形成することのできるインクジェット記録方法を提供することにある
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、水と、色材と、インク全量のうちの8質量%から40質量%の下記一般式(I)で示される化合物と、総含有量がインク全量のうちの0.4質量%から質量%の複数種のノニオン界面活性剤とを少なくとも含有し、前記複数種のノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、下記一般式(I)で示される化合物の質量(A)と上記複数種のノニオン界面活性剤の質量(B)との質量比(A:B)が、5:1から90:1の範囲であることを特徴とするインクである。
Figure 0005089070
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素原子、同一又は異なる炭素数1から4のアルキル基を示し、R4は、炭素数1から5のアルキレン基を示す。)
又、本発明は、インクジェット記録ヘッドを用いて、セルロースを含有する記録媒体にインクを付与して記録を行う工程を有するインクジェット記録方法において、上記記録媒体における記録面積が15cm2以上であって、該記録媒体へのインクの付与量が0.03mg/cm2から30mg/cm2であり、該記録媒体に付与するインクが、水と、色材と、インク全量のうちの8質量%から40質量%の下記一般式(I)で示される化合物と、総含有量がインク全量のうちの0.4質量%から質量%の複数種のノニオン界面活性剤とを少なくとも含有し、前記複数種のノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、下記一般式(I)で示される化合物の質量(A)と上記複数種のノニオン界面活性剤の質量(B)との質量比(A:B)が、5:1から90:1の範囲であることを特徴とするインクジェット記録方法である。
Figure 0005089070
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素原子、同一又は異なる炭素数1から4のアルキル基を示し、R4は、炭素数1から5のアルキレン基を示す。)
又、本発明は、前記本発明のインクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
本発明によれば、セルロースを含有する記録媒体に対して水系インクを多く付与した場合にもカールが問題となりにくい。特にセルロースを含有する記録面積が15cm2以上の記録媒体に、インクの付与量が0.03mg/cm2から30mg/cm2の範囲である場合に効果的である。インクの付与量が0.1mg/cm2から20mg/cm2の範囲であると、本発明の効果の発現はより顕著になる。
又、本発明によれば、高い駆動周波数吐出時における良好な応答性と良好なスタートアップ特性を高いレベルで維持しつつ、高精細な画像記録に対応することができる。高周波数吐出時の応答性については、とりわけサーマルインクジェット方式を用いた場合にその効果が顕著である。
本発明者らは、前述したように今後の技術トレンドを背景とした課題に対し、インクジェット記録用のインクとしての基本特性を検討した。又、セルロースを含有する記録媒体に対しても記録媒体のカールが問題とならないインクを検討した。又、高い駆動周波数(具体的には10kHzを超えるような周波数)吐出時における良好な応答性と良好なスタートアップ特性等を高いレベルで維持しつつ、高精細な画像記録に対応し得るインクについての精力的な検討を行った。その結果、特定の性質を有した化合物を特定の構成で含む組成のインクが、上記目的を極めて高いレベルで達成できることを見出し、本発明を為すに至った。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
(インクの全体構成)
本発明のインクは、水と、色材と、インク全量のうちの8質量%から40質量%の下記一般式(I)で示される化合物と、総量がインク全量のうちの0.4質量%から質量%の複数種のノニオン界面活性剤とを少なくとも含有し、前記複数種のノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、下記一般式(I)で示される化合物の質量(A)と上記複数種のノニオン界面活性剤の質量(B)との質量比(A:B)が、5:1から90:1の範囲であることを特徴としている。
Figure 0005089070
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素原子、同一又は異なる炭素数1から4のアルキル基を示し、R4は、炭素数1から5のアルキレン基を示す。)
(一般式(I)で示される化合物)
本発明のインクは、本発明を特徴づける前記一般式(I)で示される両性イオン化合物を含有することが必須である。一般式(I)で示される化合物は、砂糖大根より精製分離することにより得ることもできるが、常法によって各種合成可能でもある。上記一般式(I)で示される化合物の好ましい具体例をその置換基であるR1、R2、R3及びR4を記載することによって下記表1に示すが、本発明はこれらの例示に限定するものではない。これらの化合物の中で特に好ましい化合物としては、単位質量あたりの保水力等の点から化合物(1)であるトリメチルグリシンが挙げられる。
Figure 0005089070
上記一般式(I)の化合物のインク中における含有量は、インク全質量中において8質量%から40質量%であり、好ましくは8質量%から35質量%であり、更に好ましくは8質量%から30質量%である。インク中における前記一般式(I)で示される化合物の量が8質量%未満であると十分なスタートアップ性が得られない。一方、インク中における前記一般式(I)で示される化合物の量が40質量%を超えるとインクの粘度が上昇し、十分な周波数応答性が得られない。
(ノニオン界面活性剤)
本発明のインクは、よりバランスのよい吐出安定性を得るために、インク中に複数のノニオン界面活性剤を含有することが必須である。2種類以上のノニオン界面活性剤であれば特に制約はないが、中でも複数の内の1種は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ノニオン界面活性剤a)又はアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(ノニオン界面活性剤b)であることが好ましい。特に好ましい組み合わせはノニオン界面活性剤aとノニオン界面活性剤bとの併用である。上記ノニオン界面活性剤aのエチレンオキサイドの付加数は10から40が好ましく、アルキル基としては、例えば、セチル基、ステアリル基等が挙げられ、特にセチル基が好ましい。又、他方の界面活性剤bとしてはアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。そのエチレンオキサイドの付加数は3から30が好ましい。界面活性剤aと界面活性剤bとの併用質量比は、界面活性剤a100質量部あたり界面活性剤bが10質量部から1,000質量部であることが好ましい。
上記のノニオン界面活性剤のHLB値(Hydrophile-Lipophile Balance)は10以上であることが好ましい。こうして併用されるノニオン界面活性剤の総含有量は、インク全質量中において0.3質量%から5質量%であり、好ましくは0.4質量%から4質量%、より好ましくは0.5質量%から3質量%である。上記界面活性剤の含有量が0.3質量%未満であると、得られるインクの周波数応答性が悪くなり、5質量%を超えるとスタートアップ性が悪くなる。
更に、本発明の技術課題をバランスよく達成するためには、上記一般式(I)で示される化合物の質量(A)と複数のノニオン界面活性剤の混合物である上記ノニオン界面活性剤の質量(B)との質量比(A:B)が、5:1から90:1であることも必須である。上記において一般式(I)で示される化合物の使用量が、界面活性剤の使用量の5質量倍未満であると十分なスタートアップ性が得られない。一方、一般式(I)で示される化合物の使用量が、界面活性剤の使用量の90質量倍を超えると十分な周波数応答性が得られない。
尚、前記一般式(I)で示される化合物の一部を含有するインクが、特開平11−256083号公報及び特開平11−43637号公報において提案されている。しかしながら、前記一般式(I)で示される化合物とノニオン界面活性剤の含有量や、それらを併用する際の含有比やノニオン界面活性剤の複数を用いることは記載されていない。
更に、本発明においては、より高い吐出速度が必要な場合、本発明のインクが、特定の化合物を併有することが好ましい。かかる特定の化合物は、具体的には、下記一般式(II)の化合物、分子量200から1,000のポリアルキレングリコール、ポリグリセリン及びビスヒドロキシエチルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらの化合物の含有量は、インク全質量に対して5質量%から40質量%であることが好ましく、5質量%から30質量%であることがより好ましい。
Figure 0005089070
(式中、R5及びR6は、水素原子若しくはCn2nOH(n=2、3)を示し、R5及びR6は、同時に水素原子ではない。)
(水性媒体)
本発明のインクは、水を必須成分とするが、インク中の水の含有量は、インク全質量中において30質量%以上であることが好ましく、又、85質量%以下であることが好ましい。又、水と水溶性物質が併用された水性媒体が使用される場合も多い。水と併用される水溶性物質としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1から5のアルキルアルコール類が挙げられる。又、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられる。又、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類が挙げられる。又、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。又、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン重合体が挙げられる。又、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレン基が2から6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類が挙げられる。又、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類が挙げられる。又、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル類が挙げられる。又、トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類が挙げられる。又、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。又、ジグリセリン、トリグリセリン等のポリグリセリン類が挙げられる。又、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、エチレン尿素、ビスヒドロキシエチルスルホン等が挙げられる。
(色材)
本発明のインクに含まれる色材としては、染料及び顔料が使用できる。色材のインク中の含有量は、この範囲に限定されるものではないが、インク全質量中において0.1質量%から15質量%、好ましくは0.2質量%から12質量%、より好ましくは、0.3質量%から10質量%である。インクに用いられる染料としては、カラーインデックス(COLOR INDEX)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、塩基性染料及び反応性染料はその殆ど全てが使用できる。又、カラーインデックスに記載のないものでも、水溶性染料であれば使用できる。
本発明で使用する上記染料の具体例を以下に挙げる。イエローインクに使用される染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー173、142、144、86、132及びC.I.アシッドイエロー23、17等が挙げられる。又、マゼンタインクに使用される染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド92、289、35、37、52等が挙げられる。又、シアンインクに使用される染料としては、例えば、C.I.アシッドブルー9、7、103、1、90、C.I.ダイレクトブルー86、87、199等が挙げられる。又、ブラックインクに使用される染料としては、例えば、C.I.フードブラック2、C.I.ダイレクトブラック52、154、168、195等が挙げられる。本発明は上記の色材に限定されるものではない。
又、本発明においては、色材として顔料を用いることもできる。黒色インクに使用される顔料としてはカーボンブラックが好適に使用される。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料が挙げられる。カーボンブラック顔料では、一次粒径が15nmから40nm、BET法による比表面積が50m2/gから300m2/g、DBP吸油量が40ml/100gから150ml/100g及び揮発分が0.5質量%から10質量%の特性を持つものが好ましく用いられる。
カラーインクに使用される顔料としては有機顔料が好適に使用される。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料が挙げられる。又、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の水溶性アゾ顔料が挙げられる。又、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体が挙げられる。又、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料が挙げられる。又、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料が挙げられる。又、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料が挙げられる。又、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料が挙げられる。又、ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料が挙げられる。又、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料が挙げられる。又、チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料が挙げられる。又、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエローが挙げられる。又、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等の顔料が挙げられる。
又、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示す。すなわち、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、55、74、83、86、93、97、98、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185が挙げられる。又、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71が挙げられる。又、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272が挙げられる。又、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50が挙げられる。又、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64が挙げられる。又、C.I.ピグメントグリーン7、36が挙げられる。又、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。又、上記のような顔料以外でも使用することができる。特に、これらの顔料の中でも、C.I.ピグメントイエロー13、17、55、74、93、97、98、110、128、139、147、150、151、154、155、180、185が挙げられる。又、C.I.ピグメントレッド122、202、209が挙げられる。又、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4が挙げられる。
色材として顔料を用いた場合の顔料の平均粒径は、50nmから200nmの範囲が好ましい。平均粒径は、レーザ光の散乱を利用した、ELS−8000(大塚電子製)、マイクロトラックUPA 150(日機装製)等を使用して測定できる。
(分散剤)
色材として顔料を使用する場合には、顔料の分散剤を用いることが好ましい。顔料を分散する分散剤としては、水溶性であれば特に制約はないが、具体的には下記の如き単量体のブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等の共重合体、或いはその塩等が挙げられる。上記共重合体を構成する単量体としては、少なくとも1つは親水性単量体であることが好ましい。単量体としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等が挙げられる。又、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体が挙げられる。又、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等が挙げられる。中でも、本発明を実施する上で特に好ましい分散剤は、ブロック共重合体である。特に熱エネルギーを用いたヘッドにて、高い駆動周波数、例えば、10kHz以上で駆動させた場合に、上記のブロック共重合体を本発明のインクに用いることにより、吐出性の向上効果はより顕著になる。
又、好ましいインク中の分散剤の量はインク全量中において0.5質量%から10質量%、好ましくは0.8質量%から8質量%、より好ましくは1質量%から6質量%の範囲である。もし、分散剤の含有量がこの範囲よりも高い場合、所望のインク粘度を維持するのが困難となる。
(その他の添加剤)
又、本発明のインクは、所望の物性値を有するインクとするために、上記した成分の他に、必要に応じて、添加剤として、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤等を添加することができる。添加剤の選択はインクの表面張力が25mN/m以上、好ましくは28mN/m以上になるようにすることが好ましい。
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、以上の本発明のインクを、インクジェットヘッドを用いて、セルロースを含有する記録媒体に、記録面積が15cm2以上で、且つインク付与量が0.03mg/cm2から30mg/cm2の範囲でインクを付与する工程を有することを特徴としている。
本発明の方法で使用するインクジェットヘッドは、従来公知のいずれのインクジェットヘッドでもよく、特に限定されない。好適例は後述のインクジェット記録装置において説明する。本発明の方法では、前記本発明のインクを、セルロースを含有する記録媒体に、記録面積が15cm2以上で、且つ特定のインク付与量で付与する。該記録媒体としては普通紙、微量コート紙等が挙げられるが、本発明の効果が特に顕著に得られる記録媒体は普通紙である。
記録媒体における記録面積が15cm2以上であると、カール現象が生じやすい。又、記録媒体へのインクの付与量が0.03mg/cm2から30mg/cm2の範囲であると、カール現象が生じやすい。本発明においては、インクの打ち込み量は0.1mg/cm2から20mg/cm2の範囲であることが更に好ましい。インクの付与量が0.03mg/cm2未満の場合には、本発明の効果が得られず、一方、インクの打ち込み量が30mg/cm2を超えると、紙の種類によっては、本発明の効果が得られにくくなる。
上記本発明の方法では、インクジェット記録方法が、サーマル方式である場合に、本発明の効果がより顕著に得られる。サーマルインクジェット記録方式は、ヒーターによる熱エネルギーでインクを発泡させ、その圧力でインクを飛翔させるものである。この方式では発泡時にインクは高温且つ高圧にさらされるため、発泡のたびに、その量は定かではないが、インク構成材料に起因する堆積物が若干発生する。これらの堆積物は水に対して難溶性であるため、ヒーター上のコゲの原因となる。更には発泡不良や吐出量の低下を引き起こし、ヘッドの寿命を短くする。しかしながら、前記本発明のインクを使用する場合にはこのような課題が発生しない。
(インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録装置は、前記本発明のインクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるインクジェットヘッドとを具備していることを特徴としている。前記インクジェットヘッドは、サーマルインクジェットヘッドであることが好ましい。
本発明のインクジェット記録装置について、インクジェットプリンタを具体例として説明する。図1は、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッド及びこのヘッドを用いる液体吐出装置であるインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
図1において、インクジェットプリンタは、ケーシング1008内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙1028を図中に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送装置1030と、搬送装置1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する矢印S方向に、ガイド軸1014に沿って略平行に往復運動せしめられる記録部1010と、記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成されている。
上記搬送装置1030は、互いに略平行に対向配置されている一対のローラユニット1022a及び1022bと、一対のローラユニット1024a及び1024bと、これらの各ローラユニットを駆動させるための駆動部1020とを備えている。かかる構成により、搬送装置1030の駆動部1020が作動状態とされると、用紙1028が、それぞれのローラユニット1022a及び1022bと、ローラユニット1024a及び1024bにより狭持されて、矢印P方向に間欠送りで搬送されることとなる。移動駆動部1006は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ1026a、及び、プーリ1026bに巻きかけられるベルト1016、ローラユニット1022a、及び、ローラユニット1022bに略平行に配置され記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を、順方向及び逆方向に駆動させるモータ1018とを含んで構成されている。
モータ1018が作動状態とされてベルト1016が矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。又、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図中に示した矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。更に、移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。
記録部1010は、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012Y、1012M、1012C及び1012Bkが各色、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック毎にそれぞれ、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。
図2は、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。図示した例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド100と、インクを収容するインクタンク1001とで主要部が構成されている。
インクジェット記録ヘッド100には、インクを吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インクは、インクタンク1001から図示しないインク供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(不図示)へと導かれるようになっている。図2に示したカートリッジ1012は、インクジェット記録ヘッド100とインクタンク1001とを一体的に形成し、必要に応じてインクタンク1001内に液体を補給できるようにしたものであるが、この液体吐出ヘッド100に対し、インクタンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。尚、インクジェット記録ヘッドを備えたインクジェットカートリッジが記録ユニットである。
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。又、残部とは全体を100%とし、各成分を差し引いた残りをいう。
<実施例1>
(インク1の調製)
下記の成分を十分に混合撹拌して、インク1を調製した。
・C.I.ダイレクトブルー199 3.5%
・前記表1に記載の化合物(1) 20%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 0.5%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.5%
・イオン交換水 残部
<実施例2>
(インク2の調製)
下記の成分を十分に混合撹拌して、インク2を調製した。
・C.I.アシッドレッド35 3%
・前記表1に記載の化合物(2) 15%
・R56NCONHCH2CH2OH
(R5=H、R6=CH2CH2OH) 5%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 1%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数40、HLB20、
ノニオン界面活性剤) 0.3%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.4%
・イオン交換水 残部
<実施例3>
(インク3の調製)
下記の成分を十分に混合撹拌して、インク3を調製した。
・C.I.ダイレクトイエロー132 3%
・前記表1に記載の化合物(5) 15%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・ポリエチレングリコール(平均分子量200)5%
・トリグリセリン 1%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 2%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.5%
・イオン交換水 残部
<実施例4>
(インク4の調製)
下記の成分を十分に混合撹拌して、インク4を調製した。
・C.I.フードブラック2 3%
・前記表1に記載の化合物(1) 30%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数40、HLB20、
ノニオン界面活性剤) 0.2%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.2%
・イオン交換水 残部
<実施例5>
(顔料分散液1の調製)
先ず、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、重量平均分子量3,000のAB型ブロックポリマーを合成した。更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作成した。得られたポリマー水溶液を180g、C.I.ピグメントブルー15:3を100g及びイオン交換水220gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70MPa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン色の顔料分散液1とした。得られた顔料分散液1は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度が10%であった。
(インク5の調製)
インク5の調製は、上記で得たシアン色の顔料分散液1を使用し、これに下記の成分を加えて所定の濃度にした。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2%、分散剤濃度2%のインク5を調製した。
・上記顔料分散液1 20%
・前記表1に記載の化合物(9) 9%
・ジグリセリン 3%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 0.4%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.2%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:サーフィノール 440;日信化学工業製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.1%
・イオン交換水 残部
<実施例6>
(顔料分散液2の調製)
顔料分散液1の調製で使用したと同様のポリマー水溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100g、及びイオン交換水300gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70MPa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ色の顔料分散液2とした。得られた顔料分散液2は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度が5%であった。
(インク6の調製)
インク6の調製は、上記マゼンタ色の顔料分散液2を使用し、これに下記の成分を加えて所定の濃度にした。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度4%、分散剤濃度2%のインク6を調製した。
・上記顔料分散液2 40%
・前記表1に記載の化合物(1) 15%
・ポリエチレングリコール(平均分子量300)2%
・ポリエチレングリコール(平均分子量1,000)
1%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 0.5%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.2%
・イオン交換水 残部
<実施例7>
(顔料分散液3の調製)
先ず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価300、重量平均分子量4,000のAB型ブロックポリマーを合成した。更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作成した。上記のポリマー水溶液を110g、C.I.ピグメントイエロー128を100g及びイオン交換水290gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70MPa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。更に、上記で得た顔料分散液3を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去して顔料分散液3とした。得られた顔料分散液3は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度が6%であった。
(インク7の調製)
インク7の調製は、上記イエロー色の顔料分散液3を使用し、これに下記の成分を加えて所定の濃度にした。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度5%、分散剤濃度3%のインク7を調製した。
・上記顔料分散液3 50%
・前記表1に記載の化合物(1) 15%
・トリエチレングリコール 4%
・グリセリン 2%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 0.5%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.3%
・イオン交換水 残部
<実施例8>
(顔料分散液4の調製)
先ず、ベンジルメタクリレート、メタクリル酸及びエトキシエチレングリコールメタクリレートを原料として、常法により、酸価350、重量平均分子量5,000のABC型ブロックポリマーを合成した。更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作成した。上記のポリマー水溶液を60g、カーボンブラックを100g及びイオン交換水340gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70MPa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去して黒色の顔料分散液4とした。得られた顔料分散液4は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度が3.5%であった。
(インク8の調製)
インク8の調製は、上記黒色の顔料分散液4を使用し、これに下記の成分を加えて所定の濃度にした。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度3%、分散剤濃度1.05%のインク8を調製した。
・上記顔料分散液4 30%
・前記表1に記載の化合物(1) 15%
・ジグリセリン 4%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 0.5%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.3%
・イオン交換水 残部
<比較例1>
(インク9の調製)
実施例1の前記表1に記載の化合物(1)の含有量を20%から7%に変更し、次の組成として実施例1と同様にインク9を得た。
・C.I.ダイレクトブルー199 3.5%
・前記表1に記載の化合物(1) 7%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 0.5%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.5%
・イオン交換水 残部
<比較例2>
(インク10の調製)
実施例1の前記表1に記載の化合物(1)の含有量を20%から41%に変更し、次の組成として実施例1と同様にインク10を得た。
・C.I.ダイレクトブルー199 3.5%
・前記表1に記載の化合物(1) 41%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 0.5%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.5%
・イオン交換水 残部
<比較例3>
(インク11の調製)
実施例1のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を除去し、次の組成として実施例1と同様にインク11を得た。
・C.I.ダイレクトブルー199 3.5%
・前記表1に記載の化合物(1) 20%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 0.5%
・イオン交換水 残部
<比較例4>
(インク12の調製)
実施例1のポリオキシエチレンセチルエーテルを除去し、次の組成として実施例1と同様にインク12を得た。
・C.I.ダイレクトブルー199 3.5%
・前記表1に記載の化合物(1) 20%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.5%
・イオン交換水 残部
<比較例5>
(インク13の調製)
実施例2の2種のノニオン界面活性剤の含有量を変更し、次の組成として実施例2と同様にインク13を得た。
・C.I.アシッドレッド35 3%
・前記表1に記載の化合物(2) 15%
・R56NCONHCH2CH2OH
(R5=H、R6=CH2CH2OH) 5%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 1%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数40、HLB20、
ノニオン界面活性剤) 0.1%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.1%
・イオン交換水 残部
<比較例6>
(インク14の調製)
実施例2の2種のノニオン界面活性剤の含有量を変更し、次の組成として実施例2と同様にインク14を得た。
・C.I.アシッドレッド35 3%
・前記表1に記載の化合物(2) 15%
・R56NCONHCH2CH2OH
(R5=H、R6=CH2CH2OH) 5%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 1%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数40、HLB20、
ノニオン界面活性剤) 2.6%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 2.5%
・イオン交換水 残部
<比較例7>
(インク15の調製)
実施例3の前記表1に記載の化合物(5)の含有量を変更し、次の組成として実施例3と同様にインク15を得た。
・C.I.ダイレクトイエロー132 3%
・前記表1に記載の化合物(5) 10%
・ビスヒドロキシエチルスルホン 2%
・ポリエチレングリコール(平均分子量200)5%
・トリグリセリン 1%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17、
ノニオン界面活性剤) 2%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.5%
・イオン交換水 残部
<比較例8>
(インク16の調製)
実施例4の前記表1に記載の化合物(1)の含有量を変更し、次の組成として実施例4と同様にインク16を得た。
・C.I.フードブラック2 3%
・前記表1に記載の化合物(1) 37%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数40、HLB20、
ノニオン界面活性剤) 0.2%
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル製
、HLBが10以上のノニオン界面活性剤) 0.2%
・イオン交換水 残部
<評価>
実施例1から8(インク1から8)及び比較例1から8(インク9から16)で得られた各インクを、下記のようにして評価した。評価項目(1)、(2)及び(3)で使用されたインクジェット記録装置を図1、2に示した。尚、ここで用いた記録ヘッドは、1,200dpiの記録密度を有し、1ドット当たりの吐出体積は4plであった。
[評価項目]
(1)周波数応答性
サーマル方式のキヤノン製インクジェット記録装置を用いて、駆動周波数0.1kHzで吐出させ、徐々に周波数を上げてゆき、吐出形状が主滴の存在しない形状の不安定な吐出になった時点で周波数を測定し、判定した。評価結果を下記表2に示した。
A:10kHzを超える。
B:5から10kHz。
C:5kHz未満。
(2)スタートアップ特性
上記記録装置のヘッドクリーニング操作を行った後、周波数1kHzでA4サイズの普通紙(SW−101、キヤノン(株)製)にベタ印字し、キャッピングしない状態でヘッドを25℃、湿度30%環境下で放置した。30秒後に再びベタ印字し、各ノズルの最初の1発目の吐出状態を確かめた。評価基準は以下の通りである。評価結果を表2に示す。
A:各ノズルとも正常な吐出をしている。
B:吐出方向がずれたり、吐出量の低下がみられる。
C:不吐出のノズルがみられる。
(3)耐カール性
上記記録装置を用い、A4サイズの普通紙(SW−101、キヤノン(株)製)に、記録面積が4cm×5cmとなるようにインクの付与量10mg/cm2でベタ印字を行った。得られた記録物を25℃/55%環境下に置き、1時間後、10日後の状態を観察し、目視で評価した。評価基準は以下の通りである。評価結果を下記表2に示した。
A:ほぼ平らな状態を保っている。
B:端の部分が立ち上がっている。
C:筒状になっている。
Figure 0005089070
上記表2の評価(1)から(3)の結果より、実施例1から8のインク1から8はいずれも、良好なインクジェット吐出適性と耐カール性を備えたものであることが確認された。これに対して、比較例1から8の結果より、前記表1に記載の化合物の含有量が範囲外であったり、併用されるノニオン界面活性剤の量が、規定外であったり、両物質の質量比が本発明の範囲外であるインクは耐カール性が十分でなかった。又、良好なカール特性を示す場合であっても、スタートアップ性及び高周波数吐出時の応答性に問題があることが確認された。
液体吐出ヘッドを搭載可能なインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。 液体吐出ヘッドを備えたインクジェットカートリッジの一例を示す概略斜視図である。

Claims (7)

  1. 水と、色材と、インク全量のうちの8質量%から40質量%の下記一般式(I)で示される化合物と、総含有量がインク全量のうちの0.4質量%から質量%の複数種のノニオン界面活性剤とを少なくとも含有し、
    前記複数種のノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、
    下記一般式(I)で示される化合物の質量(A)と上記複数種のノニオン界面活性剤の質量(B)との質量比(A:B)が、5:1から90:1の範囲であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
    Figure 0005089070
    (式中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素原子、同一又は異なる炭素数1から4のアルキル基を示し、R4は、炭素数1から5のアルキレン基を示す。)
  2. 前記一般式(I)の化合物が、トリメチルグリシンである請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
  3. 更に下記一般式(II)の化合物、分子量200から1,000のポリアルキレングリコール、ポリグリセリン及びビスヒドロキシエチルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク。
    Figure 0005089070
    (式中、R5及びR6は、水素原子若しくはCn2nOH(n=2、3)を示し、R5及びR6は、同時に水素原子ではない。)
  4. インクジェット記録ヘッドを用いて、セルロースを含有する記録媒体にインクを付与して記録を行う工程を有するインクジェット記録方法において、上記記録媒体における記録面積が15cm2以上であって、該記録媒体へのインクの付与量が0.03mg/cm2から30mg/cm2であり、
    該記録媒体に付与するインクが、水と、色材と、インク全量のうちの8質量%から40質量%の下記一般式(I)で示される化合物と、総含有量がインク全量のうちの0.4質量%から質量%の複数種のノニオン界面活性剤とを少なくとも含有し、
    前記複数種のノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、
    下記一般式(I)で示される化合物の質量(A)と上記複数種のノニオン界面活性剤の質量(B)との質量比(A:B)が、5:1から90:1の範囲であることを特徴とするインクジェット記録方法。
    Figure 0005089070
    (式中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素原子、同一又は異なる炭素数1から4のアルキル基を示し、R4は、炭素数1から5のアルキレン基を示す。)
  5. 前記記録媒体へのインクの付与量が、0.1mg/cm2から20mg/cm2の範囲である請求項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記セルロースを含有する記録媒体が、普通紙である請求項又はに記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記インクが、更に下記一般式(II)の化合物、分子量200から1,000のポリアルキレングリコール、ポリグリセリン及びビスヒドロキシエチルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する請求項4から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
    Figure 0005089070
    (式中、R 5 及びR 6 は、水素原子若しくはC n 2n OH(n=2、3)を示し、R 5 及びR 6 は、同時に水素原子ではない。)
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