JP2008260172A - インクジェット記録装置および該装置のメンテナンス方法 - Google Patents

インクジェット記録装置および該装置のメンテナンス方法 Download PDF

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Abstract

【課題】実質的に密閉状態となるインク収容部を備えたカラー顔料インクのインクセットを用いながらも、インク収容部のリップルやインクの比重の差に伴って発生する混色現象を、効率的に解決することが可能なインクジェット記録装置およびメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】吸引動作の後に、複数のノズル列のそれぞれからインクの比重に応じた量の予備吐出を実行する。具体的には、相対的に比重の大きいインクの予備吐出量を相対的に比重の小さいインクの予備吐出量よりも多く設定する。また、比重の差が大きいインクの組み合わせは、互いに距離をおいたノズル列から吐出させるように配置する。これにより、インクの比重の差によって引き起こされるノズル内への他色インクの流入を極力抑えながらも、その流入量に応じた適切な量の予備吐出を実行することが出来る。
【選択図】図6

Description

本発明は、複数のインク収容部から供給された複数種類のインクを、複数のノズル列から吐出することによって画像を記録するインクジェット記録装置に関する。特に、密閉状態となるインク収容部の複数から供給されたインクを、複数のノズル列から吐出する記録ヘッドに対する、メンテナンス処理に関する。
インクジェット記録装置においては、インクを吐出する記録素子(ノズル)を備えた記録ヘッドに対し、安定してインクを供給することが求められる。一般に、インクは、インクタンクのインク収容部から記録ヘッドへと供給され、ノズルを形成する微細なインク路の毛細管力によって個々のノズルの吐出口近傍まで導かれる。しかし、この供給が過多になってしまうと、記録ヘッドの記録性能の低下やインク漏れが招致されるので、吐出口近傍では上記毛細管力とは反対方向への力によって、好適なインクメニスカスが形成されているのが好ましい状態とされている。通常、このような反対方向の力は、インク収容部内の負圧によって生み出され、従来では、インク収容部の圧力を調整するために、様々な方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、記録ヘッドに対するインク水頭圧を抑制する構成が開示されている。また、特許文献2、3および4には、インク収容部の内部に負圧発生部材としての多孔質部材を収容し、ここにインクを保持する構成が開示されている。このような構成であれば、多孔質部材がそれ自身の吸収力によってインクを保持するので、インク収容部には大気連通口を設けることが可能となり、収容室内部は大気圧が維持される。しかし一方で、このような構成のインクタンクは、インク収容部の全てをインクのために使用することが出来なかったり、多孔質部材に吸収されているインクの全てを最後まで使い切ることが出来なかったり、といういくつかの欠点も有している。更に、画像の耐侯性向上を図るために、顔料インクを吐出するインクジェット記録装置も提供されているが、顔料は水溶液中に溶解し難く、多孔質部材に吸収させても、その粒子が沈降してしまう。よって、顔料インクを使用する場合には上記構成のインクタンクは適切ではない。
これに対し、特許文献5および6には、多孔質部材などによって保持されていない生のインクをインク収容部内に収容し、負圧発生部材として圧力板やバネ部材を用いる構成が開示されている。このような構成であれば、収容部内における顔料粒子の沈降を、様々な工夫を施すことによって妨げることが出来る。また、インク収容部内の容積はインクのためにのみ使用することが出来、更にそのインクを略最後まで使い切ることが出来る。よって、顔料インクを用いたインクジェット記録装置では、このような構成を有するインクタンクを用いるのが一般になっている。この場合、生のインクが収容されているインク収容部に大気連通口を設けることは出来ないので、インク収容部の内部は記録ヘッドにインクを供給する供給口を除いて実質的に密閉状態となる。以下、このようなインク収容部のことを、本明細書において「密閉状態となるインク収容部」と称する。
ところで、インクジェット記録装置においては、記録ヘッドの吐出を安定した状態に維持するために、記録ヘッドに対するメンテナンス処理を適宜行っている。メンテナンス処理には、主に、記録ヘッドの吐出口から強制的にインクを吸引することによりヘッド内部の泡や不純物を除去する吸引動作、吐出口表面の液滴を払拭するためのワイピング動作、さらに実際の記録に先立って吐出動作を整える予備吐出動作が含まれる。
このうち、吸引動作では、記録ヘッドに配列する吐出口列をキャップで覆い、当該キャップに連通された吸引ポンプによってキャップ内に負圧を発生させ、吐出口列からインクを吸引する。このとき、複数のインク色のノズル列それぞれに対し、個別にキャップが用意される場合もあるが、パーソナルユース向けに小型に製造された記録装置においては、複数のノズル列の吸引を、1つのキャップによって一括して行う構成が主流になっている。但し、この場合には、キャップ内に複数色のインクが混在する状態で吸引されるので、吸引動作を行った後には、ワイピング動作を行うことによって、吐出口表面に付着するインクを払拭する必要がある。また、吸引動作時には、ポンプの作動を停止してからキャップを外すまでの短い時間内で、吐出口表面に付着したインクやキャップ内に残存するインク(以下、インク残渣と言う)がインク収容部の負圧力によって、ノズル内の液路にまで引きこまれる現象が生じる。よって、吸引動作を行った後には、このような液路に存在する混色インクが充分に排出される程度に、予備吐出動作を行うことが一般になっている。以下、本明細書においてこのようなメカニズムで発生する液路内の混色を第1の混色現象と称する。
このときの予備吐出動作については、必要とされる予備吐出の発数がインク色によって異なることを鑑みて、従来より様々な提案がなされている。例えば、特許文献7や8には、他色インクが混入しても色相が変化し難いブラックインクは、他色よりも予備吐出数を少なくし、他色インクの混入により色相が変化しやすいイエローインクは、他色よりも予備吐出発数を多くする予備吐出方法が開示されている。特に、上記特許文献7には、キャッピングした際に端部に位置するノズル列ほど混色の度合いが大きいことに着目し、端部に位置するノズル列の予備吐出数を中央部に位置するノズル列よりも多く設定する方法も開示されている。また、特許文献9には、インク収容部の内部の負圧を想定し、当該負圧に応じて予備吐出数を調整する方法が開示されている。更に特許文献10には、加圧回復後の各色インクタンクの圧力を調整するためにインク色毎に予備吐出数を変える提案がなされている。
特開2002−234183号公報 特開昭63−118260号公報 特開平02−522号公報 特開平07−060984号公報 特開2003−191489号公報 特開2003−251821号公報 特開平07−125263号公報 特開昭07−195708号公報 特開平08−90796号公報 特開2005−28780号公報
しかしながら、本発明者らの鋭意検討によれば、上述したような第1の混色現象とは異なるメカニズムで発生し、従来の予備吐出方法では解決しきれない新たな混色現象が発生することが確認された。このような新たな混色現象を、以下、便宜上第2の混色現象と称する。
第1の混色現象は、インク収容部の負圧力によってキャップ内のインク残渣が個々の液路に吸引されて起こる現象であり、インク色によって多少のばらつきがあるにせよ、液路内の混色インクが排出される程度の予備吐出を行えば解決されるものであった。よって、多孔質部材にインクを保持した大気連通口を有するインクタンクでも、実質的に密閉状態となるインク収容部を有するインクタンクでも確認される現象であった。
これに対し、第2の混色現象は、特異的なインク色にのみ発生する現象であり、第1の混色現象を解決するために要される程度の予備吐出では解決に及ばないものであった。そして、実質的に密閉状態となるインク収容部を有するインクタンクで、且つインク収容部内のインクが僅かになった場合に顕著に現れることが確認された。更に、このような第2の混色現象が発生したノズル列内の混色インクを除去することを目的として、繰り返し吸引動作を行うと、むしろ当該ノズル列での混色現象が悪化する結果となってしまった。具体的には、吸引動作を繰り返すほど、当該ノズル列が吐出するインクとは異なるインクが、ノズルの液路に止まらず、個々のノズルに共通して連結された共通液室や、更にその奥のインク供給路にまで流入してしまっていたのである。
本発明者らは、上記現象を踏まえ鋭意検討を行った結果、第2の混色現象は、吸引動作時に伴う液路内部の負圧変動(以下、リップルと呼ぶ)と、複数のノズル列が吐出するインクの比重のバランスによって引き起こされる現象であるという知見に至った。具体的には、比重の小さいインクの方が比重の大きいインクよりも流動的であるので、比重の大きいインクのノズル列での負圧が大きくなると、比重の小さいインクが比重の大きいインクのノズル内部に流入して行ってしまうのである。そして、このように一度液路に流入した比重の小さいインクは、そこに負圧が存在し、且つ液路の内部で液体の流動性が失われない限り、記録ヘッドの内部へと移動し続ける。その結果、インク流路の内部には、複数の色材が偏った分布で存在するようになり、負圧をかけた状態で放置したり吸引動作を重ねたりするほど、この現象は強くなっていくのである。
上記リップルは、大気連通口を有するインク収容部よりも、大気連通口を有さない実質的に密閉状態となるインク収容部を有するインクタンクのほうが大きい。また、インク収容部内のインクが僅かになった場合に大きくなる。このようなことからも、上記第2の混色現象の発生状況についての説明がつく。
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものである。よって、その目的とするところは密閉状態となるインク収容部を備えたカラーインクのインクセットを用いながらも、上記第2の混色現象を効率的に解消することが可能なインクジェット記録装置、および記録装置のメンテナンス方法を提供することである。
そのために本発明では、第1のインクと、該第1のインクよりも比重の大きい第2のインクを少なくとも含む複数のインクをそれぞれ収容する複数のインク収容部と、該インク収容部のそれぞれから供給されるインクを吐出する複数のノズル列を備えた記録ヘッドと、該記録ヘッドの前記複数のノズル列の吐出口を一括してキャップするキャップ手段と、前記キャップ手段によるキャップ中に前記キャップ内に負圧を発生させることにより、前記複数のノズル列からインクを吸引する手段と、前記吸引の後に、前記第1のインクよりも前記第2のインクの方が多く吐出されるように、前記複数のノズル列のそれぞれから前記複数のインクを吐出する予備吐出手段とを有することを特徴とする。
また、第1のインクと該第1のインクよりも比重の大きい第2のインクを少なくとも含む複数のインクを、それぞれ収容する複数のインク収容部から供給されたインクを吐出する複数のノズル列を備えた記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置のメンテナンス方法であって、前記記録ヘッドの前記複数のノズル列の吐出口を1つのキャップを用いて一括してキャップする工程と、前記キャップ工程の間に前記キャップ内に負圧を発生させることにより、前記複数のノズル列からインクを吸引する工程と、前記吸引の後に、前記第1のインクよりも前記第2のインクの方が多く吐出されるように、前記複数のノズル列のそれぞれから前記複数のインクを吐出する予備吐出工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、インクの比重の差によって引き起こされるノズル内への他色インクの流入量に応じた適切な量の予備吐出を実行することが出来る。
以下、本発明に適用可能な実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に適用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。また、図2及び図3は、インクジェット記録装置の内部機構を説明するための図であり、図2は右上部からの斜視図、図3はインクジェット記録装置の側断面図をそれぞれ示したものである。
給紙を行う際、給紙トレイM2060に積載されている記録媒体の一部が、給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる。この記録媒体のうち、最上位の記録媒体のみがニップ部で分離され、装置内部へと搬送される。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070で構成されるローラ対は、LFモータの駆動により回転され、この回転により記録媒体はプラテンM3040上を搬送される。
キャリッジM4000は、記録ヘッドH1001とこれにインクを供給するインクタンクを搭載した状態で、キャリッジモータE0001の駆動力によって図2のX方向に走査可能になっている。この走査の間に、記録ヘッドH1001は、電気基板E0014から送信される記録信号に基づいて、インクを吐出する。このような1回の記録走査が終了すると、搬送ローラM3060とピンチローラM3070から成るローラ対によって、記録媒体が図2のY方向に所定量搬送される。以上のような記録走査と搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に段階的に画像が形成される。なお、本実施例の記録ヘッドH1001は、個々のノズルに熱エネルギ発生源となる電気熱変換素子を備えており、記録信号に基づいた熱エネルギの作用により吐出口からインクを吐出する仕組みになっている。
画像の記録が完了した記録媒体は、第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ、排紙トレイM3160に排出される。
M5010は、記録ヘッドH1001の吐出口面に密着するキャップである。また、M5000は、キャップM5010に密着された記録ヘッドの複数のノズル列から、インクを吸引するためのポンプである。本実施例のインクジェット記録装置において、キャップM5010は、記録ヘッドH1001に配列し複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列を一括して覆う1つのキャップで構成されている。キャップM5010を記録ヘッドH1001に対しキャップし、そのキャップ中にポンプM5000による吸引動作を行う。更に、吸引動作が終了した後、キャップM5010は記録ヘッドから離される。更にその状態でポンプM5000を動作させることにより、キャップM5010に残っているインクは廃インクタンクへと吸引される。
図4は、本実施例で適用する記録ヘッドカートリッジH1000に、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段、及びインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有しており、キャリッジM4000に着脱可能に搭載される。本実施例の記録ヘッドH1001は、異なるインクを吐出可能な6列のノズル列が備わっており、図に示すように、それぞれのインクタンクH1900がヘッドカートリッジH1000に着脱自在となっている。尚、インクカートリッジH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行うことが出来る。
以下、インクジェット記録装置で適用可能なインクセットの例について具体的に説明する。
(水性媒体)
インクセットを構成するインクには、水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として3.0質量%以上50.0質量%以下とすることが好ましい。又、インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として50.0質量%以上95.0質量%以下とすることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メタノール、エタノール、プロパノール、プロパンジオール、ブタノール、ブタンジオール、ペンタノール、ペンタンジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオール、等の炭素数1〜6のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類。アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の平均分子量200、300、400、600、及び1,000等のポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレン基を持つアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等。中でも特に、1,5−ペンタンジオール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、又は2−ピロリドンを用いることが好ましい。又、水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。
(色材)
色材は、従来のインクに用いられるものであれば、何れのものも用いることができる。具体的には、アニオン性基を有する染料や、顔料を用いることができる。但し、各色の比重ばらつきの点から、染料を用いる場合よりも顔料を用いる場合の方が、本発明の効果がより顕著に現れる。顔料は、分散剤を用いて顔料を分散する樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を用いることができる。又、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合した顔料(樹脂結合型自己分散顔料)、顔料の分散性を高めて分散剤等を用いることなく分散可能としたマイクロカプセル型顔料等も用いることができる。
色材として染料を用いる場合には、カラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されている酸性染料、直接染料、反応性染料であれば何れのものも用いることができる。又、カラーインデックスに記載のない染料であっても用いることができる。本発明においては、特に、アニオン性基、例えば、カルボキシル基やスルホン酸基を有する染料を用いることが好ましい。インク中の染料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として1.0質量%以上10.0質量%以下、更には1.0質量%以上5.0質量%以下とすることが好ましい。
染料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、98、100、110等。C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、230等。C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226等。C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99等。C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、94、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289等。C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161等。
色材として顔料を用いる場合には、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下、更には1.0質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。
ブラックインクは、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを顔料として用いることが好ましい。具体的には、例えば、以下の市販品等を用いることができる。レイヴァン:7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上、コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:330R、400R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上、デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。又、本発明のために新たに調製したカーボンブラックを用いることもできる。勿論、本発明はこれらに限定されるものではなく、従来のカーボンブラックを何れも用いることができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を顔料として用いてもよい。
有機顔料は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料。インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
又、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71等。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192等。同、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50等。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等。C.I.ピグメントグリーン:7、36等。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
顔料を用いた場合、これを水性媒体に分散するための分散剤は、水溶性を有する樹脂であれば何れのものも用いることができる。中でも特に、分散剤の重量平均分子量が1,000以上30,000以下、更には3,000以上15,000以下のものが好ましい。インク中の分散剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上5.0質量%以下とすることが好ましい。
分散剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン、ビニルナフタレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はこれらの誘導体等を単量体とするポリマー。尚、ポリマーを構成する単量体のうち1つ以上は親水性単量体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等を用いても良い。又は、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂を用いることもできる。これらの樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶である、即ち、アルカリ可溶型であることが好ましい。
(その他の成分)
インクセットを構成するインクは、前記した成分の他に、保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタン等の保湿性固形分を含有してもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上20.0質量%以下、更には3.0質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。
更に、インクセットを構成するインクには、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等の界面活性剤を用いてもよい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール類、アセチレングリコール化合物、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。
又、インクセットを構成するインクは、前記した成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及び蒸発促進剤等の種々の添加剤を含有してもよい。
図5は、インクタンクH1900の内部構造を明らかにした斜視図である。図において、インクタンクH1900は、筐体1と蓋部材2で構成されるケース部材と、筐体1の外周部に溶接され折り返し部を有する凸型シート3を備え、これらによってインク収容部を形成する。インク収容部内には、圧力板4とこれを凸型シート側へ付与する圧縮コイルばね5が設けられる。このように凸型シート3を外方に付勢することによって、インク収容部内に負圧が発生している。筐体1の一側部には記録ヘッド(不図示)へのインク流路と接触するインク供給口6が設けられる。
本実施例では、このようなインクタンクH1900を6つ用意し、それぞれに対し上述したような異なるインクを収容させて、1組のインクセットを形成する。そして、それぞれのインクタンクH1900が記録ヘッドカートリッジH1000に装着されることにより、それぞれのインクがそれぞれのノズル列に供給され、記録が行われる。
図6(a)および(b)は、記録ヘッドH1001を吐出口面から観察した場合の、ノズル列の配列状態をインクセットの例と共に説明するための模式図である。図6(a)は、6つのノズル列のそれぞれに、左から、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタおよびイエローの順に吐出させるようにした状態を示している。このような6色のインクセットを用いれば、ハイライト部の記録をライトシアンやライトマゼンタで行うことが出来るので、粒状感が低減された高品位な写真画像を出力することが出来る。
一方、同図(b)は、左から、シアン、マゼンタ、イエロー、イエロー、マゼンタ、シアンと主走査方向に対し左右対称にインク色を対応させたインクセット例を示している。このような配列で記録を行うと、キャリッジM4000の往方向の走査でも、復方向の走査でも、記録媒体に対し、同じ順番でインクを付与することが出来る。よって、往路走査で記録された画像と復路走査で記録された画像との間で、インクの付与順序に伴う発色の差異が現れず、高速にカラー画像を出力することが可能となる。
本発明は、図6(a)のようなインクセットであっても、同図(b)のようなインクセットであっても対応することは出来る。但し、インクセットを構成する複数種類のインクでは、その比重もまちまちである。本発明者らの検討によれば、インクセットを構成するインクのうち、比重が最も大きいインクと比重が最も小さいインクの比重の差をなるべく小さくすることで、第2の混色現象を抑制できることが確認されている。しかし、特に顔料インクにおいては、色材自体の比重のばらつきや個々の色材に適切な分散溶液の比重のばらつきが大きく、各成分の種類や含有量は、画像濃度や顔料の分散安定性またはインクの吐出安定性を守ることを目的に、適切に調整されている。よって、各インクの比重を、画像濃度や顔料の分散安定性またはインクの吐出安定性を保守しながら所定範囲内に収めることは困難な場合もある。
よって、本実施例では、吐出するインクの比重に応じて、個々のノズル列における吸引動作後の予備吐出回数を異ならせることにより、効率的に第2の混色現象を解消する。すなわち、相対的に比重の大きいインクの予備吐出数を相対的に比重の小さいインクの予備吐出数よりも大きく設定することにより、比重の小さいインクを無駄に消費することなく、第2の混色現象を全ノズル列で解消する。
以下に、本実施例の効果を説明するために、本発明者らが行った検証例を具体的に説明する。まず、本発明者らは、本検証を行うにあたり、以下の説明に従って様々な比重を有する複数種類のインクを生成した。尚、文中「部」、及び「%」とあるものは、特に断りのない限り質量を基準とするものである。
まず、以下に示す手順により、マゼンタ、イエローおよびシアンインクにそれぞれ対応する顔料分散液1〜3を調製した。
(C.I.ピグメントレッド122を含む顔料分散液1の調製)
顔料(C.I.ピグメントレッド122)8部、分散剤2.8部、イオン交換水89.2部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が8質量%である顔料分散液1を得た。尚、前記分散剤は、酸価200、重量平均分子量12,000のポリ(ベンジルメタクリレート−co−アクリル酸)(組成(モル)比70:30)を、10質量%水酸化カリウム水溶液で中和することにより得られた樹脂を用いた。これにより、マゼンタインクに対応する顔料分散液1とした。
(C.I.ピグメントイエロー74を含む顔料分散液2の調製)
顔料(C.I.ピグメントイエロー74)8部、分散剤7部、イオン交換水85部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が8質量%である顔料分散液2を得た。尚、前記分散剤は、酸価200、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を、8質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得られた樹脂を用いた。これにより、イエローインクに対応する顔料分散液2とした。
(C.I.ピグメントブルー15:3を含む顔料分散液3の調製)
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)8部、分散剤8部、イオン交換水84部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が8質量%である顔料分散液3を得た。尚、前記分散剤は、酸価200、重量平均分子量12,000のポリ(ベンジルメタクリレート−co−アクリル酸)(組成(モル)比70:30)を、10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得られた樹脂を用いた。これにより、シアンインクに対応する顔料分散液3とした。
図7は、上記顔料分散液1〜3を用いて精製した互いに比重の異なる8種類のインクの成分を示す表である。インク1〜8は、図に示す各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過を行って精製した。精製後のインクについては、浮き型の比重計(商品名:標準比重計;テックジャム製)を用い、25℃で比重を測定した。また、RE80L型粘度計(東機産業製)を用い、25℃で粘度を測定した。得られた比重および粘度の値は表の下部に示した。
ここで、インク7およびインク8については、参考例として比重のみを重視して精製した。よって、吐出性能や保存性の点からは実使用には不適なインクである。
図8は、上記精製した8種類のインクを、図6で示した記録ヘッドで吐出する際の、インクの種類とノズル列の位置との組み合わせを、シアン、マゼンタおよびイエローからなるインクセットとして様々に振った状態を示している。
既に説明したように、本発明者らの検討によれば、インクセットを構成する全てのインクにおける比重の差を極力(好ましくは0.02未満に)抑えることで、第2の混色現象をかなりの程度抑制できることが確認された。しかし、例えば、比重の差が0.02以上あるインク同士であっても、これらが互いに隣接しないようにノズル列を配置すれば、比重の低いインクによる比重の高いインクの液路への流入は起こり難く、結果的に第2の混色現象をある程度抑えることが出来る。
よって、図8では、互いに隣り合うノズル列から吐出するインクの比重の差を抑えた組み合わせのインクセット1−1〜1−3と、比重の差を特に抑えていない組み合わせのインクセット2−1〜2−8を用意した。さらに参考例としてのインク7および8を用いたインクセット3−1および3−2も用意した。
表中、第1〜第3のインクとは、記録ヘッド上の、どのノズル列から吐出させるインクであるかを示しており、例えば第1のインクとは図6(a)のYの位置すなわち最も右側のノズル列から吐出させるインクを示している。また、第2のインクとはMの位置すなわち右から2番目のノズル列から吐出させるインクのことを示し、第3のインクとはCの位置すなわち右から3番目のノズル列から吐出させるインクのことを示している。これらは、互いに隣接する関係にある。表では、個々のインクセットの第1〜第3のインクとして、精製した8種類のインクの何れかを対応させている。そして、互いに隣接するノズル列から吐出されるインクの比重の差と、3種類のインクのうち、最も比重の高いインクと最も比重の低いインクの比重の差が比重の差の総和として示されている。なお、全ての場合において、比重の差は絶対値で示されている。
インクセット1−1〜1−3では、選ばれた3つのインクのうち最も比重の高いインクと最も比重の低いインクが第1のインクあるいは第3のインクになるように設定されている。そして、第1のインクと第2のインクの比重の差、および第2のインクと第3のインクの比重の差が0.02未満に抑えられるようになっている。
インクセット2−1〜2−8では、第1のインクと第2のインクの比重の差、あるいは第2のインクと第3のインクの比重の差のいずれかが0.02以上になっている。また、参考例として示したインクセット3−1および3−2では、全てのインクの比重の差が0.014と非常に低い値に抑えられている。
本発明者らは、図8に示したインクセットを用いて実際の記録動作やメンテナンス処理を行い、第2の混色現象の程度をそれぞれのインクセットについて検証した。記録動作やメンテナンス処理は、市販のBJ F900(キヤノン製)を用いて行った。本記録装置に搭載される記録ヘッドは図6(a)で示した構成を備えており、各ノズル列は512個のノズルが1200dpi(ドット/インチ)のピッチで配列している。すなわち、1回の記録走査で約0.43インチ幅の画像が形成される。個々のノズルからは、約4.5plのインクが滴として吐出される。なお、本検証において、記録媒体には、プロフェッショナルフォトペーパーPR−101(キヤノン製)を用いた。
また、各インクインクセットにおいて、インクセットの中で比重が最も大きいインクはインクタンクH1900に対して半分の充填量、比重が最も小さいインクと比重が中間のインクはインクタンクの最大の充填量までインクを充填して検討を行った。このようにしたのは、比重が最も大きいインクを吐出するノズル列のリップルを大きくすることにより、第2の混色現象をより顕著に招致させるためである。
検証シーケンスとしては、まず、第1のインク、第2のインク、及び第3のインクそれぞれで、4cm×27cmのベタ画像(100%デューティ)を、互いに隣接するように2枚分記録し、その後吸引動作を1回行った後、10分停止した。次に、キャップ内に、1つの吐出口当たり16,000発の予備吐出を行い、再び上記と同様の記録物を1枚記録して、得られた記録物におけるベタ画像の混色の状態を確認した。
この段階で混色が確認された場合は、再び吸引動作を1回行った後、10分間停止し、更に、1つの吐出口当たり2,000発を加えた18,000発の予備吐出動作を行う。その後、再び上記と同様の記録物を1枚記録して、得られた記録物におけるベタ画像の混色の状態を確認した。
ここで得た記録物においても、尚、画像に混色が確認された場合には、ベタ画像に混色が確認されなくなるまで、予備吐出数を2000発ずつ増加させながら、上記動作を繰り返して行った。
さらに、上記と同じシーケンスでありながら吸引動作後の停止時間を、30分および60分に変更したシーケンスでの実験も行った。このように、停止時間を長くすることにより、比重の小さいインクの流入量および流入距離をさらに大きくした状態での、混色現象の程度を各インクセットで比較することができる。
なお、吸引動作を行う前に記録した2枚目の記録物においては、何れの場合も、ベタ画像に混色が発生しないことを確認している。
図9は、図8で示したインクセットのそれぞれにおける、混色を解消するのに要される予備吐出数をノズル列ごとに示した表である。図において、A〜Eは、混色が確認されない画像を記録する直前に行った予備吐出の回数に対応するレベルであり、予備吐出回数が少ないほど(Aに近いほど)混色の程度が少ないことを意味する。ここで、Aは、1つの吐出口当たりの予備吐出数が16,000発より多く18,000発以下で混色が確認されなくなった状態を示している。またBは、1つの吐出口当たりの予備吐出数が18,000発より多く20,000発以下で混色が確認されなくなった状態を示している。またCは、1つの吐出口当たりの予備吐出数が20,000発より多く22,000発以下で混色が確認されなくなった状態を示している。またDは、1つの吐出口当たりの予備吐出数が22,000発より多く24,000発以下で混色が確認されなくなった状態を示している。さらにEは、1つの吐出口当たりの予備吐出数が24,000発より多く26,000発以下で混色が確認されなくなった状態を示している。
まず、隣接するノズル列から吐出するインクの比重の差を0.02未満に抑えているインクセット1−1〜1−3では、どのセットにおいても、すべてのノズル列において、10分程度の停止時間では、レベルA程度の予備吐出で混色が解決されている。30分や60分の停止時間を設けることによって、比重の小さいインクの流入を促進させた場合であっても、レベルB程度、すなわち18,000発〜20,000発の予備吐出を行えば、混色現象が解決されている。
これに対し、インクセット2−1〜2−8では、より小さい比重のインクがより大きい比重のインクを吐出するノズル列の内部に進入し、レベルA程度の予備吐出では解決出来なくなるような第2の混色現象が発生してしまっている。さらに、このような箇所では、停止時間が増えるほど、比重の小さいインクの流入量および流入距離が増大するので、混色現象の程度もDからEへと悪化している。一方、同じインクセットの中でも、隣接するノズル列から吐出するインクの比重の差が0.02未満である組み合わせの箇所では、どの程度の停止時間を設けても、レベルA程度の予備吐出数で混色現象が解決されている。
また、参考例を参照するに、3−1または3−2のようなインクセットであれば、すべての場合において、少ない予備吐出数で混色現象が解決されている。これは、参考例における3種類のインクの比重の差が非常に少なく抑えられていることにより(図8参照)、どの位置のノズル列であっても、どの程度の停止時間を設けても、第2の現象自体が起こりにくいことを意味している。すなわち、第2の混色現象に対する本発明者らの想定したメカニズムが、ある程度立証されたことになる。ただし、これら2つのインクセットに用いているインク7および8は、すでに説明したように比重のバランスのみを重視して精製したものであり、実使用には適していない。
インクセット1−1〜1−3のように、隣接して配置するノズル列から吐出されるインクの比重の差を0.02未満に抑える、すなわち、そのような組み合わせのインクを選択し、これらを適切に配置すれば、第2の混色現象はある程度抑えることが出来る。しかし、記録に用いる個々のインクは、吐出安定性や保存性、あるいは発色性など様々な観点から実使用に適するものが選択され、更にその配列についても、好適な色再現性を実現するように決められている。よって、隣接するノズル列から吐出されるインクの比重の差を、どうしても0.02未満に抑えられない場合も多い。すなわち、2−1〜2−8のようなインクセットを用いる場合も十分ありうる。
本実施例では、このような場合に対応するため、吐出するインクの比重に応じて、個々のノズル列における吸引動作後の予備吐出回数を異ならせることを特徴とする。すなわち、相対的に比重の小さいインクを吐出するノズル列よりも、これに隣接する相対的に比重の大きいインクを吐出するノズル列の予備吐出数を大きく設定することにより、比重の小さいインクを無駄に消費することなく、第2の混色現象を効果的に解消する。
具体的には、たとえば2−1のインクセットにおいては、第2のインクと第3のインクに対しては吸引動作後の予備吐出数を16,000発〜18,000発に設定し、第1のインクに対しては22,000発〜24,000発に設定する。これにより、第2の混色現象が起きたノズル列でこれが解決される一方、第2の混色現象が発生しないノズル列では無駄な予備吐出動作によって消費されるインク量を抑えることが出来る。
ここで、停止時間を30分あるいは60分に設定した検討については、比重の小さいインクの流入量および流入距離をさらに大きくした状態での混色現象の程度を、各インクセットで比較するために行ったものである。しかし、通常のインクジェット記録装置では、吸引動作を行った後に比較的直ぐに予備吐出動作やワイピング動作を連続して行う。よって、実際には10分後の停止時間に合わせて、予備吐出数を設定すれば十分と言える。
但し、個々のノズル列においては、インクの比重の他にも、インク収容部の個体差や、温度や湿度のような環境条件、あるいはインク収容部内に残っているインクの量などの影響を受けて、第2の混色現象の程度が変動する場合も考えられる。また、メンテナンス処理の中に含まれる吸引動作、ワイピング動作、予備吐出動作のそれぞれが行われるタイミングは、記録装置の構成や様々な条件によって変化し、吸引動作が行われてから予備吐出動作が行われるまでの時間も一律には決まらない。よって、吸引動作後の予備吐出数を実際に設定する場合には、様々なばらつきを包含できるように、ある程度のマージンを設けることが好ましい。
上記検証例では、3つのノズル列から3種類のインクを吐出させる場合に、2段階の予備吐出数(レベルAおよびD)で対応する例で説明した。しかし、実際の記録装置においては、より多くのノズル列からより多くの種類のインクを吐出する構成上、隣接するノズル列から吐出するインクの比重の差も、様々となることが想定される。このような場合には、より多くの段階(3段階以上)の予備吐出数によって対応することも無論可能である。また、ノズル列ごとに予備吐出数を最適化し、全てのノズル列が互いに異なる予備吐出数に設定される形態であっても良い。
また、本実施例では、互いに隣接するノズル列が吐出するインクの比重の差を0.02未満に抑えながらも、即ちインクセット1−1〜1−3を用いながらも、更に個々のインクの比重や残存するインク量に応じて吸引動作後の予備吐出量を調整することも出来る。どのような組み合わせのインクセットにせよ、複数種類のインクを用いれば、隣接するノズル列が吐出するインクには、多かれ少なかれ比重の差が存在し、ある程度の第2の混色現象は発生する。隣接するノズル列が吐出するインクの比重の差が大きいにせよ、小さいにせよ、その差に応じて適切な予備吐出数がノズル列ごとに設定されていれば、本発明の効果を発揮することが出来る。
また、インク収容部内に残っているインクの量は、実質的に密閉状態となるインク収容部の場合には、吸引動作前後のリップルひいては第2の混色現象の程度に大きく影響する。よって、以上説明した実施例においては、インク収容部に残存しているインクの量を予測する手段を設け、インクの比重に加え、予測された残インク量に応じても、予備吐出数が調整されるような構成にしても良い。また、特許文献9に開示されているようなインク収容部の負圧を推測する手段を設け、更にこの負圧に応じても、予備吐出数が調整されるような構成にしても良い。更にまた、特許文献7や特許文献8に開示されている技術と上記実施例を組み合わせ、他色インクが混入することによって見た目の色相が変化しやすいインクであるか否かに応じて、予備吐出数を調整しても良い。
以上説明した実施例では、実質的に密閉状態となるインク収容部に顔料インクを収容した形態のインクジェット記録装置で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明が課題とする第2の混色現象の程度は異なるが、多孔質部材を収容し大気連通口が供えられたインクタンクを用いた場合であっても、また、色材として染料を含有した染料インクを用いた場合であっても、本発明の効果を得ることは出来る。
また、上記実施例では、各色を収容したインク収容部を個別のインクタンクH1900として、ヘッドカートリッジH1000に着脱可能な形態で説明したが、無論このような構成も本発明を限定するものではない。例えば、インク収容部の複数を1つのインクタンクに収め、当該インクタンクと記録ヘッドを一体化した構成のヘッドカートリッジであってもよい。更に、インクタンクが記録装置内の所定の場所に固定され、チューブなどを用いて記録ヘッドのそれぞれのノズル列にインクが供給されるような形態であっても、個々のインク収容部の負圧を利用して吐出安定性が保たれていれば、本発明の効果を得ることは出来る。
更に、以上説明した実施例では、予備吐出の発数を制御することによって、ノズル内のインク残渣を排出する量をコントロールしたが、本発明は、このような排出量を制御できる他の手段を利用することも出来る。例えば、個々のノズル内に配置されている電気熱変換素子に印加するパルスの形状のような駆動条件を調整することによって、予備吐出によるインク滴の体積が変調され、その結果、排出量が制御されるような構成であってもよい。
本発明の実施例に適用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。 インクジェット記録装置の内部機構を説明するための斜視図である。 インクジェット記録装置の側断面図である。 本発明の実施例で適用する記録ヘッドカートリッジに、インクタンクを装着する様子を示した図である。 インクタンクの内部構造を明らかにした斜視図である。 (a)および(b)は、記録ヘッドを吐出口面から観察した場合の、ノズル列の配列状態例をインクセット例と共に説明するための模式図である。 顔料分散液1〜3を用いて精製した互いに比重の異なる8種類のインクの成分を示す表である。 精製した8種類のインクを記録ヘッドで吐出する際の、インクの種類とノズル列の位置との組み合わせを、インクセットとして振った状態を示す図である。 図8で示したインクセットのそれぞれにおける、混色の程度をノズル列ごとに評価した結果を示す表である。
符号の説明
1 筐体
2 蓋部材
3 凸型シート
4 圧力版
5 圧縮コイルばね
6 インク供給口
H1000 ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1900 インクタンク
M5000 ポンプ
M5010 キャップ

Claims (8)

  1. 第1のインクと、該第1のインクよりも比重の大きい第2のインクを少なくとも含む複数のインクをそれぞれ収容する複数のインク収容部と、
    該インク収容部のそれぞれから供給されるインクを吐出する複数のノズル列を備えた記録ヘッドと、
    該記録ヘッドの前記複数のノズル列の吐出口を一括してキャップするキャップ手段と、
    前記キャップ手段によるキャップ中に前記キャップ内に負圧を発生させることにより、前記複数のノズル列からインクを吸引する手段と、
    前記吸引の後に、前記第1のインクよりも前記第2のインクの方が多く吐出されるように、前記複数のノズル列のそれぞれから前記複数のインクを吐出する予備吐出手段と
    を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記第1のインクと前記第2のインクが、前記複数のノズル列のうち、隣り合うノズル列から吐出されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記第1のインクと前記第2のインクの比重の差が0.02以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記予備吐出手段は、前記複数のノズル列のそれぞれから吐出する回数を調整することにより、前記第1のインクよりも前記第2のインクの方が多く吐出されるようにすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記予備吐出手段は、前記複数のノズル列のそれぞれから吐出するインク滴の体積を調整することにより、前記第1のインクよりも前記第2のインクの方が多く吐出されるようにすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記複数のインクのうち、少なくとも前記第2のインクは、色材として顔料を含有するインクであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記インク収容部は、負圧を内部に発生させるための手段を備え、且つ前記記録ヘッドにインクを供給する供給口を除いて密閉状態となることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  8. 第1のインクと該第1のインクよりも比重の大きい第2のインクを少なくとも含む複数のインクを、それぞれ収容する複数のインク収容部から供給されたインクを吐出する複数のノズル列を備えた記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置のメンテナンス方法であって、
    前記記録ヘッドの前記複数のノズル列の吐出口を1つのキャップを用いて一括してキャップする工程と、
    前記キャップ工程の間に前記キャップ内に負圧を発生させることにより、前記複数のノズル列からインクを吸引する工程と、
    前記吸引の後に、前記第1のインクよりも前記第2のインクの方が多く吐出されるように、前記複数のノズル列のそれぞれから前記複数のインクを吐出する予備吐出工程と、
    を有することを特徴とするインクジェット記録装置のメンテナンス方法。
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