JP2010162690A - 記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】組成が異なる複数のインクを搭載した場合に生じることのあった記録不良の問題が抑制されたインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】水のモル分率N(%)が互いに異なる4種以上のインクのセットで記録を行う記録手段と、装置の回復機構の一部となる、各インクに対応した複数の吐出口列を覆うためのキャップとを具備し、該キャップが吐出口列群を2以上に分割した領域をそれぞれ覆う構造をし、各キャップのみを介して記録手段からインクを吸引する手段を有し、各キャップに対応するインク種の組み合わせにおいて、セット全種のインクのNの平均値Navgと、セットを構成する水のモル分率が一番高いインクを含むキャップに対応するインク種の組み合わせにおけるNの平均値をNCavg[num]としたときに、Navg>NCavg[num]の関係が成立し、複数のキャップのそれぞれの内部を互いに連通させるための経路を備えている記録装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数のインクセットを有する記録装置に関する。
インクジェット用インクを複数種備えたフルカラーの画像を記録できるインクジェット記録装置は、近年、オフィスやホームにおいて使用される小型のものばかりでなく、ポスターや広告などに使用される大判のものまで、多岐にわたり普及している。そして、多岐にわたる普及に伴い、記録に用いるインクセットも、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローといったカラープリントの基本4種のインクジェット用インクを組み合わせたもの以外に、下記に挙げるような種々の態様のものが提供されている。具体的には、記録装置に、上記カラープリントの基本4種に、種々の目的から、さらに別のインクを加えた4種類以上のインクの組み合わせからなるインクセットが採用されている。例えば、グレーの階調性を重視するために、さらに別のブラック(濃ブラック、淡ブラック)インクを採用した系がある。また、マット調の記録媒体とフォト調の記録媒体で個々の画像品位適正を最適化するために異なる複数のブラック(マット用ブラック、フォト用ブラック)インクを採用する系もある。さらに、カラー記録の色再現領域や、階調性を重視し、濃・淡のカラーインクや、レッド、グリーン、ブルーといった特色カラーインクを採用した系などもある。このように、インクジェット記録装置は、4種から約10数種のインクジェット用インクを組み合わせたインクセットを用いるなど、多色化されることが多くなっている。
上記したように広範な用途で用いられるようになったこともあり、特に近年、インクジェット記録方法により得られる画像品位に対する要求が高まっており、インクジェット用インクに求められる性能も高くなっている。複数種類のインクを組み合わせて使用する場合、従来は、色材が違うだけで、組成はほぼ同じインクを組み合わせたもので、インクセットとしての性能を十分に満足できていた。しかし、近年では、複数種類のインクを組み合わせて使用する場合に、選択する色材種(染料、顔料)の違いや、特に顔料を分散させる際の分散剤と合わせた顔料分散体としての分散性の差などから、インク組成が各インクで同じでないことが必然となっている。
一方で、上記したように多色化するインクセットに対し、記録ヘッドを含む記録装置での対応も多用化する方向になっている。記録ヘッドに関していえば、多色化したインク種のそれぞれに対応した吐出口列を複数備えなければならない。さらに、記録ヘッドの吐出口列が増加すると、記録ヘッドの目詰まりなどの保守、インクカートリッジ装着の際の記録ヘッドへのインク充填などを担う、所謂、記録装置の回復系の構成も複雑になってきている。このように、装置に搭載するインクの種類が多くなると、インク数に応じて装置が複雑化し、これに伴って多くの新たな課題が生じる。
例えば、複数種類のインクを搭載した記録装置では、吐出口列からの各インクの蒸発を防止するために、所謂、ゴム部材で形成されたキャップを吐出口列の周囲と密着させて覆う回復系構成部品が必要となる。そして、インクカートリッジ交換時のインク充填などのために、このキャップを記録ヘッドに密着させた状態で、キャップ経由で、設置したポンプ圧による吐出口からのインク吸引が行われている。また、同様にして、インクの目詰まりのクリーニングと称したインク吸引も行われている。
この回復系構成部品は、記録装置の中で記録ヘッドの性能を維持するためには重要な部品である。しかし、インク種がより多色化していくと、下記のような問題を生じる。すなわち、この場合は、多くのインク種に対応した吐出口列を覆うことになるため、密着する多くの部位の精度を満足する必要があるという問題がある。また、多くのインク種を同時に吸引する際に、吸引する必要がないインクも消費してしまうことが起こるため、このインク吸引による無駄なインク消費量に対して改善の必要性がある。さらに、ブラックのような濃色のインクと、イエローのような明度の高いインクとが、吸引時のキャップ内残留で混色することによる画像品位への影響も課題として挙げられる。
これに対し、基本4種のインクを搭載させた装置構成で、インク消費量の低減、混色の防止と合わせ、装置の小型化も考慮した、1種のブラックインクと複数のカラーインクとのキャップ分割が提案されている(特許文献1参照)。また、インク吸引の動作能力を向上させるために、キャップと吸引ポンプの間、及び、キャップから大気連通する間に、吸引弁を取り付けることについての提案がある(特許文献2参照)。この提案では、この吸引弁と吸引ポンプの動作によりインク流路に高い流速を発生させることが可能となり、吸引能力の向上が図られている。使用する複数インクの全てに対応した吐出口列全体での一括インク吸引の際、インク消費量を節約するために、1種のブラックインクと複数のカラーインクのキャップを分割し、吸引ポンプとキャップの間の流路抵抗を調整する提案もある(特許文献3参照)。また、特許文献3に記載の構成に類似しているが、流路抵抗バランスを規定しながら流路抵抗の異なる吐出口列のインク吸引を効率化することについての提案がある(特許文献4参照)。上記に挙げたように、少なくとも4種のインクを組み合わせてなるインクセットに対して、インクセットを構成する複数のインクをグループ化し、これに合わせてキャップが分割された構成の装置が存在する。
特開平06−191061号公報 特開2003−237109号公報 特開2004−249631号公報 特開平07−052406号公報
しかしながら、本発明者らの検討の結果、各色のインク組成がそれぞれに異なるインクセットであって、分割された構成の回復系キャップを具備した記録装置において、下記に述べるような課題が見いだされた。すなわち、多色化し、複数のインクがそれぞれに最適化された組成が異なる複数のインクをインクジェット記録装置に適用し、比較的短期間(5日間程度)放置した後に再び記録を行ったところ、インクによっては記録画像の始めの部分が欠落する記録不良が生じた。特に、装置の信頼性試験(記録装置を使用せず長期間放置した状態からの固着回復性、低温環境でのインクの吐出安定性などの性能)に対し、それぞれを最適の組成とした複数のインクを収容したインクカートリッジを記録ヘッドに装着した系で記録不良が生じた。
より具体的には、画像の前半の書き出し部分が欠け、記録データを再現できない記録不良現象が発生した。該記録不良は、記録ヘッドの走査の記録開始直後(1回走査)から10行目(10回走査)、ないしはそれ以上の範囲にて発生した。そして、さらに装置の放置期間を長くしていくと、A4サイズの用紙で複数枚記録が終了するまで、正常に記録できない場合もあることが判明した。また、本発明者らの検討によって、この記録不良の原因は、記録ヘッドのノズル部のインクが増粘、固着していることによることが判明し、放置期間に応じた各インクの蒸発の要因が見いだされた。
さらに、本発明者らが記録装置での放置形態での差異を追求し検討した結果、下記の知見を得た。記録ヘッドにおける4種以上のインクの吐出口を、1つのキャップで被覆した場合と、2つの領域に分割したキャップで被覆した場合とでは、同一の放置期間であっても、また、キャップの保湿性能に差がない状態であっても、下記の課題があることを見い出した。すなわち、分割したキャップ形態の場合に装置を放置すると記録不良が発生し、また、特定のインクにおいて、増粘、固着が低下するまでの期間に差が生じていることが判明した。これらのことから、同一のインクセットであっても、回復機構のキャップを分割する際のインクのグループ分けによっては、各グループにおいてインクの増粘、固着性能に差が生じるまでの期間に差が生じ、このことが記録不良の原因となっていると推論された。さらに、本発明者らは、この要因が、インク中の水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率の影響と、分割されるキャップの構成との関係で発生していることを見い出し、この点に着目し、検討を行った。
上記課題の対策としては、上記で問題となる記録不良はインクの増粘が原因であることから、記録装置の回復系の保守制御(放置期間に応じて所定の間隔で行う自動インク吸引)での対処や、キャップ部材、構成での保湿性の向上も考えられる。また、記録装置を放置した場合におけるインクの増粘、固着性能(以下、放置固着性能と呼ぶ)に差が生じないインク群をグループ化し、これに対応してキャップの分割を行うことも対処法として考えられる。ここで、これらの対策は、本発明者らによって得られた先の知見を前提としたものであり、その前提があって初めて考えられることである。すなわち、インクセットと回復機構における分割するキャップのグループ化如何で、同一のインクセットであっても、画像品位、信頼性などの性能に問題が生じるという現象は、これまでには考えていなかった課題であり、本発明者らが初めて認識したものである。
したがって、本発明は、各インクを最適化した、組成が異なる複数のインクを組み合わせたインクセットを搭載した場合に生じることのあった記録不良の問題を生じることがないインクジェット記録装置を提供することを目的とする。より具体的には、インクセット全体でのキャップ状態による放置固着性能が、分割されたキャップ構成によって低下することを防止し、分割されたキャップ構成を維持しつつ、インクセット全体での放置固着性能に均一化できる技術の提供を目的とする。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、インク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率が互いに異なる少なくとも4種のインクが組み合わされたインクセットによって記録を行う記録手段と、該インクセットを構成するそれぞれのインク種に対応して記録手段に設けられた複数の吐出口列を覆うためのキャップであって、かつ、記録装置の回復機構の一部となるキャップとを具備してなるインクジェット記録装置であって、前記キャップは複数のキャップを具備し、各キャップは、インクセットを構成するそれぞれのインクに対応した吐出口列群を少なくとも2つに分割した領域をそれぞれ覆う構造をしており、該複数のキャップを構成するそれぞれのキャップのみを介して前記記録手段からインクを吸引するように構成した吸引手段を具備し、かつ、前記インクの吐出口列群を少なくとも2つの領域に分割するように構成された複数のキャップの、それぞれのキャップに対応するインク種の組み合わせにおいて、前記インクセットを構成する一種のインク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率をN(%)とした時の、インクセットを構成するインク中の、水のモル分率が一番高いインクが含まれている当該キャップに対応するインク種の組み合わせにおける前記水のモル分率N(%)の平均値を、NCavg[num]としたときに(但し[num]はインク種を構成するインクの数)、Navg>NCavg[num]の関係が成立するものであり、さらに、複数のキャップのそれぞれの内部を互いに連通した状態とする経路を備えていることを特徴とする記録装置である。
本発明によれば、構成する各インクを最適化し、組成が異なる複数のインクを組み合わせたインクセットを搭載した場合に生じることのあった記録不良の問題を生じることがないインクジェット記録装置が提供できる。より具体的には、本発明者らが見出した、記録装置の回復系課題を両立するためのキャップ分割を行うことで発生するインクグループごとの放置固着性能の差を、インクセット全体での放置固着性能に均一化できる記録装置が提供される。すなわち、本発明で規定する要件を満足するようにキャップを分割して各インクに対応させることで、インクセット全体での水のモル分率による蒸発性能が、キャップを分割することによりグループ化されたインク種によって助長されることを防ぐことができる。
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明のインクジェット記録装置は、インク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率が互いに異なる少なくとも4種のインクが組み合わされたインクセットを搭載し、これらのインクを用いて記録を行う記録手段を有するものである。そして、該インクセットを構成するそれぞれのインク種に対応して記録手段に設けられた複数の吐出口列を覆うためのキャップであって、かつ、記録装置の回復機構の一部となる下記のように構成されているキャップを具備する。該キャップは、インクセットを構成するそれぞれのインクに対応した吐出口列群を少なくとも2つに分割した領域(インク種)ごとに、それぞれのキャップで覆うように構成された複数のキャップからなる。また、本発明の記録装置は、この複数のキャップを構成するそれぞれのキャップのみを介して前記記録手段からインクを吸引するように構成した吸引手段と、複数のキャップのそれぞれの内部を互いに連通した状態とするための経路とを備えている。本発明の特徴は、複数のキャップによって、インクセットを構成するそれぞれのインクに対応した吐出口列群を少なくとも2つの領域に分割する場合に、それぞれのキャップに対応するインク種の組み合わせが下記の要件を満足するようにしたことにある。インクセットを構成する一種のインク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率をN(%)とした時の、インクセットを構成する全インク種における該N(%)の平均値をNavg(%)とする。また、インクセットを構成するインク中の、水のモル分率が一番高いインクが含まれている当該キャップに該当するインク種の組み合わせにおける前記水のモル分率N(%)の平均値をNCavg[num]とする。但し、[num]は、インク種のインクの数である。ここで、一のキャップにグループ化されるインクの数は、それぞれ2以上であることが好ましい。そして、この場合に、Navg>NCavg[num]の関係が成立するように、それぞれのキャップに対応するインク種の組み合わせを選択した構成とすることを特徴とする。
後述の実施例において説明するインクの組成や水のモル分率などはこれに限定した数値ではない。これは、インクジェット用のインク組成は、インクジェットの吐出方式によって選択する水溶性有機溶剤などの水溶性化合物や、配合量に差が生じるためである。また、インクセットを構成する複数のインクにおける、分割するキャップに対応するインクのグループ化は一例であり、記録装置の画像性能を追求する上でインクのグループ化(記録ヘッドでの並び順)は様々な組み合わせが考えられる。
先ず、本発明の記録装置で使用されるものとして最良と考える形態のインク、インク材料、インクカートリッジ、記録ヘッド、及び、記録装置の構成を説明する。
<インク>
以下、インクを構成する各成分について説明する。
(水性媒体)
インクには、水、及び水溶性有機溶剤などの水溶性化合物を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として3.0質量%以上50.0質量%以下とすることが好ましい。水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メタノール、エタノール、プロパノール、プロパンジオール、ブタノール、ブタンジオール、ペンタノール、ペンタンジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオール、などの炭素数1乃至6のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。平均分子量が200乃至1,000程度のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどの炭素数2乃至6のアルキレン基を持つアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど。中でも特に、1,5−ペンタンジオール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、又は2−ピロリドンを用いることが好ましい。
また、水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として50.0質量%以上95.0質量%以下とすることが好ましい。
(色材)
色材は、従来のインクに用いられるものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、アニオン性基を有する染料や、顔料を用いることができる。顔料は、分散剤を用いて顔料を分散する樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を用いることができる。また、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合した顔料(樹脂結合型自己分散顔料)、顔料の分散性を高めて分散剤などを用いることなく分散可能としたマイクロカプセル型顔料なども用いることができる。
[染料]
染料は、カラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されている酸性染料、直接染料、反応性染料であればいずれのものも用いることができる。また、カラーインデックスに記載のない染料であっても用いることができる。本発明においては、特に、アニオン性基、例えば、カルボキシル基やスルホン酸基を有する染料を用いることが好ましい。インク中の染料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには0.5質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。なお、所謂濃インクや淡インクを具備してなるインクセットとする場合、上記の範囲内において、濃インク及び淡インクの染料の含有量がそれぞれ異なるように適宜決定すればよい。
染料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、98、100、110など。C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、230など。C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226など。C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99など。C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、94、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289など。C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161など。
[顔料]
顔料は、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには0.5質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。なお、所謂濃インクや淡インクを具備してなるインクセットとする場合、上記の範囲内において、濃インク及び淡インクの顔料の含有量がそれぞれ異なるように適宜決定すればよい。
ブラックインクは、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックを顔料として用いることが好ましい。具体的には、例えば、以下の市販品などを用いることができる。レイヴァン:7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上、コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:330R、400R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170。プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上、デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。また、本発明のために新たに調製したカーボンブラックを用いることもできる。勿論、本発明はこれらに限定されるものではなく、従来のカーボンブラックをいずれも用いることができる。また、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライトなどの磁性体微粒子や、チタンブラックなどを顔料として用いてもよい。
有機顔料は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなど。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185など。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71など。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192など。同、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272など。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50など。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64など。C.I.ピグメントグリーン:7、36など。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26など。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
[分散剤]
上記で挙げたような顔料を水性媒体に分散するための分散剤は、水溶性を有する樹脂であればいずれのものも用いることができる。中でも特に、分散剤の重量平均分子量が1,000以上30,000以下、さらには3,000以上15,000以下のものが好ましい。インク中の分散剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上5.0質量%以下とすることが好ましい。
分散剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン、ビニルナフタレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はこれらの誘導体などを単量体とするポリマー。なお、ポリマーを構成する単量体のうち1つ以上は親水性単量体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩などを用いてもよい。又は、ロジン、シェラック、デンプンなどの天然樹脂を用いることもできる。これらの樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶である、すなわち、アルカリ可溶型であることが好ましい。
(その他の成分)
インクは、前記成分の他に、保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの保湿性固形分を含有してもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上20.0質量%以下、さらには3.0質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。
さらに、インクには、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤などの界面活性剤を用いてもよい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール類、アセチレングリコール化合物、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物などを用いることができる。
また、インクは、前記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及び蒸発促進剤などの種々の添加剤を含有してもよい。なお、本発明においては、上記で挙げたような保湿性固形分、界面活性剤、添加剤は水溶性化合物に包含されるものとして水のモル分率の算出の際に考慮する。
<インクセット>
インクセットは、インク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率が互いに異なる4種以上のインクを組み合わせて本発明の記録装置に用いるものであれば、下記に挙げるいずれの形態をとるものであってもよい。セットを構成する複数のインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの基本色であっても、さらに、これに他の色を加えて多色化したものであってもよい。特に、基本の4色以上の複数のインクの組み合わせからなるものが好ましい。さらに、これらのインクセットを記録装置に搭載する方式としては、下記のような構造のものが挙げられる。例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの各インクをそれぞれ収容するインク収容部が一体となった構造の、インクカートリッジ又は記録ヘッド付きインクカートリッジで構成されるインクセットが挙げられる。また、シアン、マゼンタ、イエローなどの各インクをそれぞれ収容するインク収容部が一体となった構造の、インクカートリッジ又は記録ヘッド付きインクカートリッジで構成されるインクセットが挙げられる。さらに、上記で挙げたようなインクを収容するそれぞれ個別のインクカートリッジが、インクジェット記録装置に着脱自在であるインクセットが挙げられる。本発明は、上記で挙げた形態に限らず、どのような変形の形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方式>
本発明の記録装置は、インクをインクジェット方式で吐出するインクジェット記録方法を実行するものであればよい。インクジェット記録方式としては、インクに力学的エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方式や、インクに熱エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方式などがある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方式を好ましく用いることができる。
<インクカートリッジ>
複数のインクを用いて記録を行う本発明の記録装置に好適なインクカートリッジとしては、複数のインクを収容するインク収容部を備えてなるインクカートリッジが挙げられる。以下に、本発明の記録装置で使用し得るインクカートリッジの構成を説明する。図9は、インクカートリッジの分解斜視図である。図9において、インクカートリッジ100は、筐体1と蓋部材2で構成されるケース部材と、筐体1に接着され折り返し部を有する凸型シート3を備え、これらによってインク収容部を形成する。インク収容部内には、圧力板4とこれを凸型シート側へ付与する圧縮コイルバネ5が設けられる。このように凸型シート3を外方に付勢することによって、インク収容部内に負圧が発生している。筐体1の一側部には記録ヘッド(不図示)へのインク流路と接触するインク供給口6が設けられる。筐体1は前記の通りインクを収容する容器を構成する。凸型シート3は、筐体1の外周部に溶接される。筐体1の開口部には蓋部材2が取り付けられ、外方に凸型となる凸型シート3を保護している。
<記録ユニット>
複数のインクを用いて記録を行う本発明の記録装置に好適な記録ユニットとしては、複数のインクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジと、記録ヘッドとを備えた記録ユニットが挙げられる。本発明においては特に、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出する記録ユニットを用いることが好ましい。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、4種以上のインクが組み合わされたインクセットによって記録を行う記録手段と、該インクセットを構成するそれぞれのインク種に対応して記録手段に設けられた複数の吐出口列を覆うためのキャップとを具備してなる。該キャップは、記録装置の回復機構の一部となるものであるが、該キャップは、インクセットを構成するそれぞれのインクに対応した吐出口列群を少なくとも2つに分割した領域ごとに、それぞれのキャップで覆うように構成された複数のキャップからなる。また、この複数のキャップを構成するそれぞれのキャップのみを介して前記記録手段からインクを吸引するように構成した吸引手段と、複数のキャップのそれぞれが連通した状態となる構造の経路とを備えている。本発明のインクジェット記録装置は、インクセットを構成するそれぞれのインクに対応した吐出口列群を2以上に分割し、それぞれを覆うキャップとする場合に、特定の要件を具備するように構成したものであることを要する。この点の詳細については、後述する。
本発明のインクジェット記録装置の基本的な構成は、従来のインクジェット記録装置と同様でよく、記録手段として、複数のインクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジと、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたものが挙げられる。本発明の記録装置は、記録手段として、特に、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録方式を用いることが好ましい。以下に、インクジェット記録装置の機構部の概略構成を説明する。インクジェット記録装置は、各機構の役割から、給紙部、搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部、及びこれらを保護し、意匠性を持たせる外装部で構成される。以下、これらの概略を説明する。
図3は、インクジェット記録装置の一例の斜視図である。また、図4及び図5は、インクジェット記録装置の内部機構を説明するための図であり、図4は右上部からの斜視図、図5はインクジェット記録装置の側断面図をそれぞれ示したものである。
給紙を行う際には、先ず、給紙トレイM2060を含む給紙部において所定枚数の記録媒体が、給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる(図3及び図5参照)。記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される(以上、図4及び図5参照)。
画像を形成する際には、キャリッジ部は記録ヘッドH1001(図6及び7参照)を目的の画像形成位置に配置して、電気基板E0014(図4参照)からの信号にしたがって記録媒体にインクが吐出される。なお、記録ヘッドH1001についての詳細な構成は後述する。記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000(図4参照)が列方向に走査する主走査と、搬送ローラM3060(図4及び図5参照)が記録媒体を行方向に搬送する副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に画像を形成する。最後に、記録媒体は、排紙部で第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ(図5参照)、搬送されて排紙トレイM3160(図3参照)に排出される。
図8は、本発明のインクジェット記録装置のクリーニング部の構成を示す模式図である。記録ヘッドH1001のクリーニング操作の概略を、図4及び図6を参照して説明する。クリーニング部では、キャップM5010を記録ヘッドH1001の吐出口を有する面(吐出口面)に当接させた状態で、ポンプM5000を作動し、記録ヘッドH1001からインクなどを吸引して、記録ヘッドH1001のクリーニング操作を行う。上下可動機構により不図示のキャップホルダを上昇させてキャップM5010を記録ヘッドH1001の吐出口面に適当な密着力で当接させてキャッピングする。キャッピングされた状態でポンプM5000を作動すると、吐出口面とキャップM5010との間に負圧が発生し、吐出口列を構成する各吐出口からインクが吸引される。このキャッピングされた状態では、前記吐出口列は吐出口面及びキャップM5010で形成される吸引室によって密閉された状態となる。
上記の吸引室は、キャップの数に対応して複数設けられており、それぞれの吸引室には、それぞれインク排出口が設けられている。また、これらのインク排出口にはそれぞれチューブが接続されており、さらに、チューブは、それぞれポンプM5000に接続されている。キャップホルダは、前記キャップM5010を保持するとともに、不図示の駆動機構によって記録ヘッドH1001の吐出口面に対してキャップM5010を当接又は離間する方向に駆動される。また、キャップM5010を開いた状態で、キャップM5010に残っているインクを吸引すると、インクの固着やその他の弊害が起こらないようになっている。
なお、複数の吸引室は、別々に設ける構成としても、周壁部で形成される吸引室を仕切壁で同等の体積を有する2つ吸引室に区切る構成としてもよい。また、これらの吸引室の体積を異なるものとしてもよい。さらに、キャップの吸引室の内部にインク吸収材などを配置してもよい。
<記録ヘッドの構成>
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する(図6及び7参照)。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有する。そして、ヘッドカートリッジH1000は、キャリッジM4000(図4参照)に対して着脱可能に搭載される。
図6は、ヘッドカートリッジH1000にインクカートリッジH1900を装着する様子を示した図である。インクジェット記録装置は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、淡マゼンタ、淡シアン、及びグリーンなどの各インクを用いて画像を形成する。したがって、インクカートリッジH1900も7種分が独立に用意されている。そして、図6に示すように、それぞれのインクカートリッジは、ヘッドカートリッジH1000に対して着脱可能となっている。なお、インクカートリッジH1900の着脱は、キャリッジM4000(図4参照)にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行うことができる。
図7は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録素子基板、プレート、電気配線基板H1300、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800などで構成される。記録素子基板は第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101で構成され、プレートは第1のプレートH1200及び第2のプレートH1400で構成される。
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソグラフィ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAlなどの電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路もフォトリソグラフィ技術により形成されている。さらに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図10は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明する正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインクを供給する記録素子の列(以下吐出口列ともいう)である。第1の記録素子基板H1100には、イエローインクの吐出口列H2000、マゼンタインクの吐出口列H2100、及びシアンインクの吐出口列H2200の3種分の吐出口列が形成されている。第2の記録素子基板H1101には、淡シアンインクの吐出口列H2300、ブラックインクの吐出口列H2400、グリーンインクの吐出口列H2500、及び淡マゼンタインクの吐出口列H2600、の4種分の吐出口列が形成されている。各吐出口列は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に所定の間隔で並ぶ複数のノズルによって構成され、前記ノズルの開口部、つまり吐出口は重力方向に形成されている。
以下、図7及び図10を参照して説明する。第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されている。ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されている。この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持する。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加する。この電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し、インクジェット記録装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有する。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
インクカートリッジH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が、例えば、超音波溶着により固定され、インクカートリッジH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成する。インクカートリッジH1900と係合するインク流路H1501のインクカートリッジ側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。また、インクカートリッジH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
さらに、上述の通り、タンクホルダー部と記録ヘッド部H1001とを接着などで結合することで、ヘッドカートリッジH1000が構成される。なお、タンクホルダー部は、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、及びシールゴムH1800から構成される。また、記録ヘッド部H1001は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される。
図10に示す記録ヘッドは、上記したように、インクを吐出する吐出口列を複数有する。画像を形成する際には、記録ヘッドを主走査方向の往方向に走査することで、1パス記録で記録媒体に画像を形成する。次に、記録ヘッドの復方向に走査する過程で、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に所定の距離だけ記録媒体の搬送を行う。この繰り返しにより、画像の形成を行う。
図11は、記録ヘッドの構成の別の一例を示す模式図である。図11に示す構成の記録ヘッドには、主走査の往方向と復方向とで、インクの付与順序が等しくなるように配置した吐出口列が形成された記録素子基板H1102を有する。具体的には、カラーインクの吐出口列が、シアン(C1及びC2)、マゼンタ(M1及びM2)、イエロー(Y1及びY2)について、それぞれ2列ずつ、主走査方向に対称に設けられている。このため、双方向記録が可能となる。なお、中央に設けられるイエローの吐出口列は1列のみとしてもよい。
以上が本発明で最良となるインク、インクセット、記録ヘッド、記録カートリッジ、記録装置の概略、記録方式の説明である。
ここで、本発明者らが初めて見出した本発明が課題とする記録不良が発生した要因を説明する。本発明者らは、特定のインクの放置固着性能が特に低下するという点から、更なる解析を実施した。この記録不良の解析の中、当初の記録不良で低下したインク種も含め、インクの放置固着性能と、記録装置での放置状態の差に着目した検討を行った。放置固着性能として具体的には、インクの水分蒸発に着目して検討した。
検討したインクセットは、あるインクには特定の水溶性化合物を配合し、別のインクにはその化合物が性能上不要であるために配合しないといった、少なくとも水のモル分率が互いに異なる成分組成の複数のインクが組み合わされてなるものである。本発明者らの検討によれば、各インクの放置固着性能との関連で考えるインクの蒸発性能の視点からは、各インク中の水分量、及び、水溶性化合物の配合量比の比較だけでは不足する。ここでインクの蒸発性能を考える場合に使える値として、インクに配合した水分、水溶性化合物をモル換算し、インク全体のモル数と水分のモル数の比率を算出した水のモル分率がある。このモル分率の差は、各インクの蒸発性能の観点から重要である。例えば、一般的なインクセットを構成する各インクにおいては、水のモル分率は90%〜98%の間となることが多い(限定するものではない)。
表1に、本発明で使用し得るインクセットを構成する各インクについての成分組成及び水のモル分率を示した。水のモル分率の算出は、インクごとの組成で使用する水溶性化合物などの分子量から組成全体でのモル数を算出し、水のモル数/(水のモル数+全水溶性化合物のモル数)×100=モル分率(%)とした。なお、本発明においては、モル分率の算出を簡単にするために、色材や樹脂分散剤などは除外してもよい。通常、染料や顔料などの色材や樹脂分散剤の分子量はインク中のその他の水溶性化合物と比較しても非常に大きいため、一般的なインクジェット用インクに含有される程度の色材の含有量では、モル分率の値にほとんど影響を及ぼさないためである。また、モル分率の値は小数点以下を四捨五入した値とする。
本発明では、複数のインクからなるインクセットを搭載する記録装置において、この水のモル分率を用いて、クリーニング部を構成する前記したキャップの構造が決定されていることを特徴とする。より具体的には、複数のキャップによって各インクに対応した吐出口列群を少なくとも2つの領域に分割されるように構成する場合に、この水のモル分率を使用して特定の関係となるように設計する。すなわち、インクセットを構成する全インク種における水のモル分率N(%)の平均値をNavgとし、一のキャップに対応する特定のインク種における水のモル分率N(%)の平均値を、NCavg[num]とする。そして、これらの間に、Navg>NCavg[num]の関係が成立するように、キャップや各インクの吐出口列の配置を設計する。以下、かかる関係を見出した経緯について説明する。
Figure 2010162690
<モル分率の検証>
本発明では、インク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率が互いに異なる少なくとも4種のインクが組み合わされたインクセットを用いる。なお、インクに含有される各成分のモル分率の検証には、以下のような分析手法を用いることができる。
(1)水の含有量:カールフィッシャー水分計など
(2)水溶性有機溶剤などの水溶性化合物の含有量:高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなど
(3)水溶性有機溶剤などの水溶性化合物の分子量:マススペクトルにおけるM/Z(posi、nega)など
本発明では、使用される少なくとも4種のインクが、インク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率が互いに異なることを要するため、各インクにおける水のモル分率に差が生じていることを知る必要がある。本発明の主旨からすれば、上記した方法によらずとも以下の簡易な方法でも、2種のインク間における水のモル分率に差が生じていることを確認することができる。すなわち、2種のインクに対して、一方のインクには水溶性化合物Xが含有されているが、他方のインクには水溶性化合物Xが含有されていない、というインクの組み合わせを、例えば、相対湿度80%RHの環境で、水の蒸発が平衡に至るまで放置する。このとき、2種のインクの一方について、放置前のインクの質量及び放置後のインクの質量を測定して、放置前後における質量の変化量の最大値と最小値に差があれば、2種のインク間において水のモル分率が異なるということができる。
本発明者らは、以上を踏まえて、記録装置のキャップで吐出口周囲を被覆(以後、キャッピングと表記)した状態で記録装置での放置試験が成される際の状態を考察した。ここで、キャッピングされた状態とは完全密閉の系であることは少なく、一般的な記録装置の回復機構では、例えば、キャップを介した連通口が存在し、微小ながら大気と連通した状態である、准大気連通状態を成している。これは、記録装置の回復機構は、密閉化での気圧変動により、記録ヘッドの吐出口列からのインクの押し戻し(画像記録の弊害)を回避することを目的としていることによる。例えば、気圧に応じてキャッピング密閉内の気圧を調整するなどの構成があれば密閉系には近づくが、キャップの材質が、ゴム部材などの場合、ガスバリア性の性能からやはり完全密閉とはいえず、准大気連通の系と見なすこととなる。本発明で扱う回復系では、准大気連通を成す系(複数のキャップ内部が互いに連通した状態となっている系)でのインクセットの蒸発性能に着目している。なお、記録装置のキャップや、回復機構の説明は後述する。
図1は、本発明の記録装置の一例における記録ヘッドと回復機構との関係を示す模式図である。記録手段である記録ヘッド101には、使用するインクセットを構成する4種のインク、ここではmol1、mol2、mol3、mol4に対応した吐出口列102が開口している。図では、吐出口列102が、それぞれ2列でインク一種に対応している。各インクに対応した吐出口列102は、グループ化され分割されたキャップに吐出口列102の周囲を被覆する形(キャッピング)となる、2つの領域に分割された103及び104で構成されている。また、これらのキャップには、複数のキャップ間で准大気連通を成すための連通経路111が備えられ、さらに、インク吸引手段であるポンプPに連通する経路105で構成されている。上記したように、連通経路111によって複数のキャップ内部は互いに連通された状態となるため、複数のキャップによって覆われるキャップ内部は、准大気連通系となる。また、キャップ本来の役割である保湿性(ガスバリア性)を維持するといった理由から、連通経路は、ゴム材料や金属材料で構成されたものであることが好ましい。
例えば、キャッピングされた状態では、准大気連通の系であっても、キャップ103及び104内のそれぞれの飽和湿度までは、記録ヘッドの吐出口からグループ化された各インクの蒸発が起こる。例えば、インクセット4種の水のモル分率を高い順で、mol1(98%)、mol2(96%)、mol3(95%)、mol4(90%)と順列をつけた場合、分割するインク種の構成とキャップ内部でのインクの蒸発は、以下のようになると考えられる。
インクを分けて分割したキャップのグループ化が、図1に示したようなインク種の組み合わせになっている場合。
キャップ103:mol1(98%)+mol4(90%)
キャップ104:mol2(96%)+mol3(95%)
ここで、それぞれのキャップ内の飽和湿度は、キャップ内部の湿度と外気の湿度に差がある場合、以下のようになる。キャップが完全に密閉と考えると、キャップ内部の湿度が飽和点に達するまで吐出口列102からの各インクの蒸発が生じる。飽和湿度に関しては、インクの水溶性化合物は殆ど常温領域で蒸発しない成分(不揮発性分)と考えられるため、水のモル分率=相対湿度=飽和湿度(密閉系)とする。湿度が100%RHとならない理由は、溶液中の不揮発性分が含まれる際のインク自体の蒸気圧が下がる(蒸発が起こりにくくなる)ためである。
上記のことから、例えば、キャップ103、キャップ104でそれぞれ相対湿度を考えると、
キャップ103:(98%+90%)÷2種=94.0%RH
キャップ104:(96%+95%)÷2種=95.5%RH
となる。
ここで、インクの蒸発する量を考慮すると、初期のキャップ内部の湿度との差も考慮する必要がある。この差は、インクから水分が蒸発する量とも考えられる。
逆に言えば、キャッピングされた状態の密閉空間が殆ど存在しなければ、吐出口列102からの水分蒸発は起こらない。記録装置自体のキャップ内部の体積は、装置の小型化や保湿能力の設計視点で、概ね300mm3程度(8×10.5×2.5mm)〜1500mm3(20×30×2.5mm)といった狭い空間である。このため、キャッピング直後のキャップ内部の湿度との均衡状態(=飽和湿度)に至るまでは瞬間的な時間での飽和で、インクからの蒸発水分量自体は少ない。
しかし、図1に示したような准大気連通状態でのキャッピングである記録装置では、密閉された状態で、外気との湿度と均衡にとする作用が記録装置の放置期間中継続される。例えば、外気が10%RHの時、キャップ103の94.0%RHの相対湿度から、10%RHの湿度と均衡しようとするインク蒸発が生じる。ただし、准大気連通状態でのキャップの保湿能力は瞬間的な均衡をもたらさず、水のモル分率のみの相対湿度から下がる湿度で一見、均衡状態となり、微小な外気との連通(准大気連通)作用で、その均衡状態を維持する分の水分蒸発が継続的に生じる。以後、上記の均衡状態のことを、暫定均衡湿度と称する。本発明者らが行った課題解決の検討の中、キャップ内部の暫定均衡湿度を観察すると、部品構成にもよるが、90%〜95%RHといった状態が観察された。このことから、上記で例示したインクの中で水分のモル分率が最も高いmol1(98%)のインクは、キャップ内部の飽和湿度以降、継続的に水分が蒸発していくことと考えられる。
例えば、キャップ内部の暫定均衡湿度が91%RHとすると、キャップ103で覆われた各インクでは、下記の挙動を示すと考えられる。すなわち、インクのmol1(98%)は、91%RHに均衡しようと水分が多く蒸発するが、インクのmol4(90%)ではほぼ同一の湿度であることから、mol4(90%)からの水分蒸発はmol1(90%RH)に比べ、非常に少ないと考えられる。これを、モル分率と実際のインク重量配分からの水分蒸発量を整理すると、インクの増粘で大きな差があることがわかる。水のモル分率=暫定均衡湿度=91%RHとしたとき、実際のインクの重量配合量からみた、水分の蒸発量はmol4(90%)が約十数%であるのに対し、mol1(98%)は約60%の水分が蒸発し、インクが増粘することとなる。
ここで、インクセットを構成する上記で例示した4種のインク全てにおいて、キャップで記録装置での放置を比較すると、下記に述べるように、グループ化される分割キャップごとのインクセットで放置期間での水分蒸発量の差が生じることがわかる。
先ず、4種全てでの相対湿度は(98%+90%+96%+95%)÷4種=94.75%RHである。したがって、キャップ103の相対湿度94.0%RHは、インクセット全体での相対湿度より低くなる。0.75%RHの相対湿度差は数値としては小さく考えられがちであるが、この程度であっても実際のインクでは水分蒸発量に大きな差が生じる。本発明では、装置に使用するインクセットを構成するインク中の、キャップによってその吐出口が分割されるインク種の組み合わせを決定する場合に、水のモル分率が一番高いインクが含まれているキャップに対応したインク種を、下記に規定するように構成する。インクセットのインク各種の水のモル分率をNとしたとき、インクセット全種のN(%)の平均値Navg(%)とし、上記インク種における水のモル分率N(%)の平均値を、NCavg[num]とする。但し[num]はインク種を構成するインクの数である。この場合に、Navg>NCavg[num]の関係が成立するインク種でグループ化されたキャップの分割構成をとるときに、本発明の効果が得られる。すなわち、インクセット全体でのキャップ状態による放置固着性能が、分割されたキャップ構成によって、水分が蒸発(インク増粘)して低下することが防止される。
本発明者らは、以上より、同一のインクセットであっても、回復機構のキャップを分割する際のインクのグループ化によって、記録不良となるインクの増粘、固着に至る放置期間の差が生じることを見いだし、本発明に至った。
次に、本発明の実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、下記の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
図1は、本実施例の記録装置を構成する記録ヘッドとキャップの構成を示す模式図である。なお、本実施例におけるインクセットの組成は表1と同一である。キャップは、図1に示したように分割された構成となっており、キャップ103とキャップ104との間に、これらのキャップを連通する経路111を有している。このため、記録装置を放置した際におけるキャップ内部のインク蒸発の状態は、放置されている間もキャップ103とキャップ104が連通したものとなる。したがって、放置されている間におけるキャップ103とキャップ104の内部の相対湿度は、インクセット全体でキャッピングした時と同様と考えられる。このため、相対湿度は(98%+90%+96%+95%)÷4種=94.75%RHとなる。ここで、本実施例では、図1に示したように分割されたキャップごとに、4種のインクを組み合わせてなるインクセットのインクが2つにグループ化されている。この際、水のモル分率の一番高いインクを含むインク種に対応したキャップ103の相対湿度は、(98%+90%)÷2種=94.0%RHとなるので、このグループ化の方法は、本発明で規定する要件を満足したものとなる。
比較のために、インクの組み合わせの中の、mol4(90%)とmol2(96%)とを変えて下記のようにグループ化した。
キャップ103:(98%+96%)÷2種=97.0%RH
キャップ104:(90%+95%)÷2種=92.5%RH
上記したように、比較例では、Navg>NCavg[num]の関係は成立しない。
上記した構成の実施例1の装置と、比較例の装置とで画像形成を行い、本発明で課題とする記録不良が生じるか否かについて、下記のようにして評価検討を行った。
先ず、実施例1及び比較例の装置となる、インクセットと記録ヘッドをそれぞれ準備する。実施例1は図1のインクセットの組み合わせ、比較例の装置では、実施例1のmol4とmol2とを交換したインクセットの組み合わせとなる。これらの装置を用いて先ず、初期の画像品位を確認するノズルチェックパターンを記録する。
このノズルチェックパターンは、記録ヘッドの使用ノズルからのインク吐出が全吐出口について正常に行われることを確認するものである。具体的には、各インク単色のパッチをA4サイズの記録媒体の幅(短辺)全域にわたって10行分の記録を行うことで、このようにして、インクセットを構成する各インクについて、初期のノズルチェックパターンを得る。なお、上記において、使用する装置はシリアル方式をとっているので、全ノズルからインクを吐出させて、1回の記録ヘッドの主走査で行う記録が1行となる。このノズルチェックパターンを目視で確認することにより、初期の画像品位をチェックする。そして、このチェックにより、実施例1の装置及び比較例の装置共に各インクが正常に吐出され、正常な画像品位が得られることを確認した。
正常な画像品位、すなわち正常なノズルチェックパターンでは、A4サイズの記録媒体の幅(短辺)の全域にわたって10行分の帯状の画像が形成される。一方、正常な記録が行われず、記録不良が生じた場合、以下のような状態の画像品位となる。A4サイズの記録媒体の幅(短辺)全域に10行の記録を行った際に、ノズルにおけるインクが増粘することにより、記録画像の所定の行における記録開始側での記録ヘッドからインクが吐出されず、記録開始側からの記録画像が欠落する。より詳細には、インクが正常に吐出されないため、画像を記録した部分を上とした場合の左側において、記録媒体の白地がそのまま残るか、スジ状に薄く画像が形成されながら、当該行の記録終了側に向かって次第に画像が正常に形成されるようになっていく。後述する実施例1の装置及び比較例の装置について放置評価を行う際には、上述の状態が1行、2行、とどの程度継続するかを行数の値として記録し、この数値から実施例1の装置及び比較例の装置における固着性能を評価する。
(放置評価)
上記した初期のノズルチェックを終えた後、実施例1の装置及び比較例の装置について、それぞれキャッピングを行った状態として、インクの増粘や固着を促進させた後の画像品位を確認するために、温度35℃、湿度5%RHの環境に装置を放置する。放置期間は5日から30日までとし、5日毎に初期と同様のノズルチェックパターンを確認するため、本評価では、実施例1の装置及び比較例の装置をそれぞれn=6台ずつ放置する。この評価ではn=1台が5日目、n=2台目が10日目、n=3台目が15日目・・・という放置期間毎の画像品位のチェックが可能となる。そして、5日毎に初期のノズルチェックパターンと同様の方法により画像品位をチェックし、10日目から30日目までも5日毎に同様に画像品位をチェックする。この際、記録不良の画像欠落部がA4サイズの記録媒体10行分の画像のうち、何行欠落するかを行数の値として取り、この数値から実施例1の装置及び比較例の装置における固着性能を評価した。実施例1の装置についての放置評価では、15日目で1〜2行程度の画像欠落であった。一方、比較例の装置では5日目でも1行〜2行の画像欠落が発生し、15日〜30日目においても、実施例1の装置と比較して、記録不良の行数が明らかに増加した。下記表2に、実施例1の装置及び比較例の装置における評価結果を示す。なお、表2に示す数値は、実施例1の装置及び比較例の装置に使用したインクセットを構成する各インクのうち、水のモル分率が一番高いため、記録不良が相対的に生じやすいmol1のインク種についてのデータである。
Figure 2010162690
上記の結果、実施例1の場合、放置固着の性能は水のモル分率の一番高いインクが不利でありながら、記録不良に至る増粘、固着に至るまでの放置期間の差が生じない効果が得られることが確認された。具体的には、比較例の装置では、mol1のインク種のみ記録不良に至るまでの放置期間が短くなった。また、表2中には示していないが、実施例1の装置では、mol2〜mol4のインク種と同程度の放置期間まで記録不良が発生しなかった。すなわち、本発明で規定する要件を満足するようにキャップを分割して各インクに対応させることで、キャップを分割することによりグループ化されたインク種によって、インクセット全体での水のモル分率による蒸発性能が助長されることを防ぐことができた。
<実施例2>
次に、本発明の特徴を成しながら、異なる効果が得られる実施例を示す。図2は本実施例の装置におけるキャップ部を示す模式図である。従来より、キャップを分割することの目的の一つには、インク吸引の性能向上がある。実施例1では、インク吸引の性能を個々のキャップで高めるために、個々のキャップごとにインクを吸引するためのポンプPが備えられていた。図2では、本発明の特徴となる分割されたキャップ103、キャップ104を連通する経路の構成が実施例1の場合と異なる。すなわち、図2の連通する経路111は、キャップ103、104を連通しているが、その途中に制御弁221が介在する。また、その弁を起点にポンプPに連通する経路を備えていることを特徴としている。
この連通する経路に設けられた制御弁221は、記録装置の吸引動作の際に電気的に制御される。また、制御弁221にはT字の経路を回転選択できる。キャップ103のインクを吸引する場合は、制御弁221はキャップ103とポンプPを連通する状態となりキャップ103のインク吸引を実施する。キャップ104のインクを吸引する際は、制御弁221の経路がキャップ104とポンプPとを連通する方向の姿勢となり、キャップ104のインク吸引が可能となる。そして、記録装置が放置される状態となる場合は、図2に図示している状態でキャップ103とキャップ104とを連通する状態で、本発明の特徴を実現できる。これ以外の、装置に使用するインクセットについては、実施例1の場合と同様のものを使用した。この結果、実施例1の場合と同様に、放置固着の性能は水のモル分率の一番高いインクが不利でありながら、記録不良に至る増粘、固着に至るまでの放置期間の差が生じない効果が得られることが確認された。
また、本実施例によれば、キャップそれぞれの吸引性能を維持しながら、ポンプPの構成部品を一つに構成することが可能となる。また、制御弁221の放置状態で准大気連通を成すための経路も確保できるため、実施例1の装置の場合における図1に示すような大気連通経路が不要となり、部品構成の削減も可能となる。
記録ヘッドとキャップの構成を示す模式図である。 記録ヘッドとキャップの構成を示す模式図である。 インクジェット記録装置の斜視図である。 インクジェット記録装置の機構部の斜視図である。 インクジェット記録装置の断面図である。 ヘッドカートリッジにインクカートリッジを装着する状態を示す斜視図である。 ヘッドカートリッジの分解斜視図である。 インクジェット記録装置のクリーニング部の構成を示す模式図である。 インクジェット記録装置のクリーニング部の構成を示す模式図である。 ヘッドカートリッジにおける記録素子基板を示す正面図である。 記録ヘッドの構成の別の一例を示す模式図である。
M2041:分離ローラ
M2060:給紙トレイ
M2080:給紙ローラ
M3000:ピンチローラホルダ
M3030:ペーパーガイドフラッパー
M3040:プラテン
M3060:搬送ローラ
M3070:ピンチローラ
M3110:排紙ローラ
M3120:拍車
M3160:排紙トレイ
M4000:キャリッジ
M5000:ポンプ
M5010:キャップ
M5020、M5030:吸引室
M5040:周壁部
M5050:仕切壁
M5060:キャップホルダ
M5070、M5080:インク排出口
M5090、M5100:チューブ
E0002:LFモータ
E0014:電気基板
H1000:ヘッドカートリッジ
H1001:記録ヘッド
H1100:第1の記録素子基板
H1101:第2の記録素子基板
H1102:記録素子基板
H1200:第1のプレート
H1201:インク供給口
H1300:電気配線基板
H1301:外部信号入力端子
H1400:第2のプレート
H1500:タンクホルダー
H1501:インク流路
H1600:流路形成部材
H1700:フィルター
H1800:シールゴム
H1900:インクカートリッジ
H2000〜H2600:吐出口列
1:筐体
2:蓋部材
3:凸型シート
4:圧力版
5:圧縮コイルバネ
100:インクカートリッジ
111:分割されたキャップを連通する経路
101:模式図で表す記録ヘッド
102:模式図で表す記録ヘッドの吐出口列
103:分割されたキャップ1
104:分割されたキャップ2
105:キャップを准大気連通する部材
106:キャップを介してポンプに連通する部材
221:制御弁
P:ポンプ

Claims (5)

  1. インク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率が互いに異なる少なくとも4種のインクが組み合わされたインクセットによって記録を行う記録手段と、該インクセットを構成するそれぞれのインク種に対応して記録手段に設けられた複数の吐出口列を覆うためのキャップであって、かつ、記録装置の回復機構の一部となるキャップとを具備してなるインクジェット記録装置であって、
    前記キャップは複数のキャップを具備し、各キャップは、インクセットを構成するそれぞれのインクに対応した吐出口列群を少なくとも2つに分割した領域をそれぞれ覆う構造をしており、
    該複数のキャップを構成するそれぞれのキャップのみを介して前記記録手段からインクを吸引するように構成した吸引手段を具備し、かつ、
    前記インクの吐出口列群を少なくとも2つの領域に分割するように構成された複数のキャップの、それぞれのキャップに対応するインク種の組み合わせにおいて、
    前記インクセットを構成する一種のインク中に含有される水溶性化合物及び水の合計モル数に占める水のモル分率をN(%)とした時の、インクセットを構成する全インク種における該N(%)の平均値をNavg(%)とし、
    インクセットを構成するインク中の、水のモル分率が一番高いインクが含まれている当該キャップに対応するインク種の組み合わせにおける前記水のモル分率N(%)の平均値を、NCavg[num]としたときに(但し[num]はインク種を構成するインクの数)、
    avg>NCavg[num]の関係が成立するものであり、
    さらに、複数のキャップのそれぞれの内部を互いに連通した状態とする経路を備えていることを特徴とする記録装置。
  2. 前記分割された一のキャップにグループ化されるインクの数は、それぞれ2以上である請求項1に記載の記録装置。
  3. 前記複数のキャップ内部を互いに連通させる経路が、金属材料で構成されている請求項1に記載の記録装置。
  4. 前記複数のキャップ内部を互いに連通させる経路は、ゴム材料で構成されている請求項1に記載の記録装置。
  5. 前記複数のキャップ内部を互いに連通させる経路に、制御弁が設けられている請求項1に記載の記録装置。
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