JP4182134B2 - インクセット、インクカートリッジのセット、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクセット、インクカートリッジのセット、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 Download PDF

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本発明は、インクセットを構成する複数のインクがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有するインクカートリッジに収容されたインクセット、インクカートリッジのセット、記録ユニット、及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置においては、記録ヘッドからのインク漏れやインク供給過多による記録性能の低下を招かないように、インクカートリッジから記録ヘッドにインクを安定に供給することが要求されている。
従来から、インクを安定に供給するために、インクカートリッジにおけるインク収容部の圧力を様々な方法で調整することが検討されている。例えば、記録ヘッドにインクの水頭圧がかかることを防止する方法に関する提案がある(特許文献1参照)。又、インク収容部の内部に負圧発生部材として多孔質部材を有する構成とし、インクを保持することに関する提案がある(特許文献2乃至4参照)。更に、負圧発生部材として、圧力板やバネ部材を用いることに関する提案がある(特許文献5及び6参照)。
特開2002−234183号公報 特開昭63−118260号公報 特開平02−522号公報 特開平07−060984号公報 特開2003−191489号公報 特開2003−251821号公報
本発明者らは、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)を収容するのに適したインクカートリッジとして、以下のようなインク収容部を有するインクカートリッジを用いることについて検討した。具体的には、多孔質のインク保持部材を有さないインクカートリッジを用ることについての検討を行った。このようなインクカートリッジは、顔料の沈降を抑制することができ、又、インクを使い切った後のインクカートリッジ内のインク残量を極力少なくすることができると考えられる。更に、インクジェット記録装置として、上記で述べたようなインクカートリッジを複数搭載することができるインクジェット記録装置を用いて検討を行った。
本発明者らは、上記インクジェット記録装置が記録を行っていないときに、記録ヘッドの吐出口列を覆うキャップに連通する吸引ポンプにより負圧を発生させることにより吐出口から不要なインク等を吸引して排出する、所謂クリーニング操作を行った。その後、再び記録ヘッドからインクを吐出させたところ、以下のような問題が起きることがわかった。即ち、同一のキャップで吸引して排出した複数の吐出口列のうち、特定のインク流路に他のインクが入り込む現象(以後、混色現象と呼ぶ)が起きることがわかった。
前記現象を本発明者らが初めて確認した際には、この混色現象は、以下に述べるような、これまでにも知られていた混色現象と同様のメカニズムにより生じるものであると考えた。即ち、記録ヘッドの表面に付着したインクやキャップ内に存在するインク(以後、インク残渣と呼ぶ)が、インク流路の毛管力等により、インク流路に入り込む。その結果、インク流路の吐出口近傍に、他のインクが入り込むようになる、と考えた。
そこで、本発明者らは、前記現象を回避する一般的な手法として通常行われる、記録の開始前にキャップ内にインクを吐出する操作(以後、予備吐出と呼ぶ)を行った。しかし、予備吐出するインク滴の数(予備吐出数)を通常の混色現象を解決するのに十分な予備吐出数と比較して大幅に増やしても、混色現象が解決することはなかった。
そこで、本発明者らは、インク流路の内部における、混色現象が起きた部分のインクを全て排出することを目的として、クリーニング操作を数回繰り返して行った。しかし、クリーニング操作の回数を増やしても、混色現象はなくなるどころか、かえって混色現象が悪化するという、本発明者らの予想に反した結果となった。
上記で述べた結果に基づいて、本発明者らは、混色現象について詳細に検討を行った結果、以下のことがわかった。即ち、この混色現象は、従来から確認されているインク流路の吐出口近傍や共通液室のうち、個々の吐出口に連通するインク流路の近傍での混色現象ではなく、インク流路の内部にまで、他のインクが入り込むという、新たな混色現象であることがわかった。尚、共通液室とは、記録ヘッドにおける、インクを吐出する複数の吐出口にそれぞれ連通する複数のインク流路に共通して連通する共通液室のことである。又、本発明におけるインク流路の内部とは、記録ヘッドのインク流路及び共通液室、更には、インクカートリッジのインク収容部から共通液室へインクを供給するためのインク供給路の全体のことである。
更に、上記で述べた混色現象が起きた場合に、クリーニング操作を行った後、インクを記録ヘッドより吐出しない状態でインクジェット記録装置をしばらく放置した。その後、再び記録を行うと、始めのうちは、前記吐出口が本来吐出するはずのインクを吐出した。しかし、この状態でしばらく記録を継続すると、突如、前記吐出口から吐出するはずのインクではないインクが吐出されるという、これまでに確認されることがなかった新たな現象が発生することがわかった。そして、吐出口から吐出するはずのインクではないインクとは、上記で述べた、インク流路の内部に入り込んだ他のインクであることがわかった。更に、クリーニング操作を行った後に、記録を行わない時間が長くなればなる程、特定のインク流路に入り込んだ他のインクが、インク流路の内部にまで入り込む現象が起きた。このような状態になると、予備吐出数を多少増やす程度で解決できる混色現象のレベルを遥かに超えることがわかった。
従って、本発明の目的は、上記で述べたような、新たな混色現象を抑制できるインクセットを提供することにある。又、本発明の別の目的は、前記インクセットを用いたインクカートリッジのセット、記録ユニット、及びインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかるインクセットは、複数のインクで構成されるインクセットであって、前記インクセットを構成する複数のインクがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有するインクカートリッジに収容されてなり、前記インクセットを構成する複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差が、0.020未満であることを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかるインクカートリッジのセットは、複数のインクカートリッジを有するインクカートリッジのセットであって、前記複数のインクカートリッジがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有し、前記インク収容部それぞれ収容されている複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差が、0.020未満であることを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかる記録ユニットは、複数のインクカートリッジと、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットであって前記複数のインクカートリッジがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有し、前記インク収容部にそれぞれ収容されている複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差が、0.020未満であることを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット記録装置は、複数のインクカートリッジと、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって前記複数のインクカートリッジがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有し、前記インク収容部にそれぞれ収容されている複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差が、0.020未満であることを特徴とする。
本発明によれば、インク収容部が密閉状態となるインクカートリッジを用いる場合でも、混色現象の発生を抑制することができるインクセットを提供することができる。このため、従来と同程度の予備吐出を行うことで、優れた画像を提供することが可能となる。又、本発明の別の実施態様によれば、前記インクセットを用いたインクカートリッジのセット、記録ユニット、及びインクジェット記録装置を提供することができる。
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。尚、インク、水溶性有機溶剤、色材等の比重、インクの粘度及び表面張力は、25℃において常法によって測定することができる。後述の実施例においては、インク、水溶性有機溶剤、色材等の比重は、浮き型の比重計(商品名:標準比重計;テックジャム製)を用いて25℃で測定した。又、インクの粘度は、RE80L型粘度計(東機産業製)を用いて25℃で測定した。又、インクの表面張力は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学製)を用いて25℃で測定した。更に、本発明においては、差の値は絶対値として考えるものとする。
本発明者らは、上記で述べたような、従来にない混色現象が起きるメカニズムを解明するために、様々な検討を行った。先ず、どのような条件が揃ったときに混色現象が起きるのかということについて検討を行ったところ、以下の条件が揃ったときに、混色現象が顕著に起きることがわかった。即ち、(1)インクジェット記録装置に搭載されている複数のインクのうち、吐出口が隣接し合う少なくとも2種のインクにおける比重の差が0.020以上である。又、(2)前記少なくとも2種のインクが、インクを収容するインク収容部が密閉状態となるインクカートリッジにそれぞれ収容されている。
前記(1)及び(2)の2つの条件が揃うと、比重が相対的に大きいインクを吐出するインク流路の内部に、比重が相対的に小さいインクが入り込む。その結果、本発明の課題であるインク流路の内部における混色現象(以下、第1の混色現象と呼ぶ)が発生することがわかった。
尚、本発明における、「密閉状態となるインク収容部」は、クリーニング操作の際に、インク収容部と大気が接する部分が実質的に存在しない状態となり得ることを意味する。具体的には、インク収容部と大気が接する部分がインク供給口のみであること、つまり、インク収容部に収容されたインクと大気とが、インク供給口のみを介して連通することを意味する。
インク収容部は、より具体的には以下のような構成となっている。インクジェット記録装置は、インクの乾燥等を防ぐために記録ヘッドの吐出口をキャップで覆うようになっており、前記キャップはチューブを介して廃インク吸収体と連通する構成を有する。そして、クリーニング操作を行う際には、記録ヘッドの吐出口と前記キャップとが当接する。キャップに連通するチューブは廃インク吸収体と連通しているものの、クリーニング操作を行っている間は、前記チューブの内部はインクで満たされる。そのため、インク収容部と大気が接する部分がインク供給口のみであるインク収容部は実質的に密閉状態となる。尚、前記キャップは、複数の吐出口列をまとめて同一のキャップでキャッピングして、クリーニング操作、即ち吸引を行う構成となっている。
上記で挙げた(1)及び(2)の条件が揃ったときに、第1の混色現象の起きる原因は明確ではないが、本発明者らはその原因を以下のように推測している。負圧発生部材として、圧力板やバネ部材を用いたインクカートリッジは、インク供給口のみを介してインクと大気とが連通する。このようなインクカートリッジを搭載したインクジェット記録装置においてクリーニング操作が行われている間は、インク収容部は実質的に密閉状態となる。一方、クリーニング操作が終了した後には、インク収容部は再び開放状態となる。
このような構成のインクカートリッジは、記録ヘッドのインク流路の内部における負圧変動(以下、リップルと呼ぶ)が、インク収容部が常に大気と接する構成、例えば、インク供給口に加えて大気連通口を有するインクカートリッジと比較して大きくなる。具体的には、インク供給口に加えて大気連通口を有するインクカートリッジのリップルが10mmHg程度である。これに対して、密閉状態となるインク収容部を有するインクカートリッジのリップルは、20mmHgから30mmHg程度である。本発明者らは、このようにリップルが大きいことにより、インク残渣がインク流路の内部に引き込まれる力が急激に大きくなることが、第1の混色現象が起きる主な原因の1つであると推測する。
本発明者らの検討の結果、インクジェット記録装置に搭載された複数のインクカートリッジのうち、インクカートリッジ内のインク残量が他のインクカートリッジと比較して極端に少ないインクカートリッジが存在する場合、以下の現象が起きることがわかった。即ち、インク残量が少ないインクカートリッジと連通する記録ヘッドのインク流路は、他のインクカートリッジと連通する記録ヘッドのインク流路と比較して、クリーニング操作前後のリップルがより大きくなることがわかった。その結果、インク残渣が、インク残量が少ないインクカートリッジと連通するインク流路の内部に特に顕著に引き込まれることが確認された。
次に、本発明の最大の特徴である、複数のインクにおける比重の差と第1の混色現象との関係を説明する。上記で述べたように、インク収容部が密閉状態となるインクカートリッジを用いる場合、インク残渣がインク流路の内部に入り込む現象が顕著に発生する。このとき、もともとインク流路の内部に存在するインクの比重よりも、比重が小さいインク残渣が前記インク流路の内部に引き込まれた場合、前記インク流路の内部では以下に述べるような現象が起きる。
第1の混色現象が起きる場合、従来から知られている、インク流路の吐出口近傍や共通液室のうち、個々の吐出口に連通するインク流路の近傍での混色現象(以下、第2の混色現象と呼ぶ)とは異なり、インク流路の内部にまでインク残渣が存在する。しかし、これらの第1の混色現象及び第2の混色現象における、クリーニング操作直後のインク流路におけるインク残渣の存在状態はほぼ同様であると考えられる。即ち、第1の混色現象が起きた場合の方がインク流路の内部のより広範囲にインク残渣が分布する。
しかし、第1の混色現象が起きる場合は、リップルに起因する流体の移動の影響が低下し始めると、複数のインクにおける比重の差に起因する、つまり重力に従った流体の移動が支配的になる。即ち、もともとインク流路の内部に存在していた比重が大きいインクは、インク流路の吐出口近傍に移動する。又、前記インク流路に引き込まれたインク残渣のうち比重が小さいインク残渣は、インク流路の内部、特にはインクカートリッジのインク収容部から共通液室へインクを供給するインク供給路にまで移動する。このようにして、インク流路の内部には、色材の濃度分布が存在するようになる。その結果、クリーニング操作を行った後、インクを吐出口より吐出しない状態でインクジェット記録装置をしばらく放置して、その後再び記録を行うと、始めのうちは、吐出口が吐出するはずのインクを吐出する。しかし、この状態でしばらく記録を継続すると、突如、前記吐出口から吐出するはずのインクではないインク、即ち、前記インク流路の内部に引き込まれた他のインクが吐出されるという、これまでに確認されることがなかった現象が発生したものと推測している。従って、これまでに述べてきたことからも明らかであるように、この第1の混色現象は、従来から知られている第2の混色現象とは全く異なる現象である。
更に、本発明者は、色材として染料を含有するインク(染料インク)と比較して、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)を用いると、上記で述べた第1の混色現象がより顕著に起きることを確認した。この理由は明確ではないが、本発明者らはその理由を以下のように推測している。即ち、顔料、特には後述する樹脂分散型顔料は、染料と比較して、色材、即ち顔料や顔料分散体そのものの比重の差が大きい。このため、顔料インクを用いると、インク流路の内部では、複数のインクにおける比重の差に起因する流体の移動に加えて、複数の色材における比重の差に起因する色材の移動が起きることになり、第1の混色現象がより顕著に起きると考えられる。複数のインクにおける比重の差は、時間の経過と共に減少するが、色材の比重の差は、時間が経過しても減少しない。このため、インク流路の内部で液体の流動性が失われない限りは常に、色材の比重の差に起因する色材の移動が発生している状態となる。クリーニング操作を行った後、記録を行わない時間が長い程、インク流路の内部に入り込んだインク残渣中の色材が、インク流路の内部にまで入り込む現象は、この色材の比重の差に起因するものでもあると推測する。
上記で述べた第1の混色現象を抑制するために本発明者らが検討を行った結果、インクセットを構成する複数のインク間の特性を以下の関係とすることで、上記で述べた課題を解決することができるという知見を得た。即ち、インクセットを構成する複数のインクをそれぞれ収容するインクカートリッジとして、インク収容部が密閉状態となるインクカートリッジを用いる場合に、以下の構成を満たすことが必要であることがわかった。前記複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差を0.020未満とすることで、第1の混色現象を抑制できるという知見を得た。
尚、本発明者らが、インク収容部が常に大気と接する構成のインクカートリッジ、例えば、インク供給口に加えて大気連通口を有するインクカートリッジを用いて検討を行った結果、以下のことがわかった。即ち、前記インクカートリッジに、比重の差が0.020以上である複数のインクをそれぞれ充填して、クリーニング操作を行った後、インクを吐出口より吐出しない状態でインクジェット記録装置をしばらく放置して、その後再び記録を行った。しかし、この場合には、第1の混色現象が起きないことがわかった。
この事実は、以下のことを裏付けるものであると言える。即ち、インク供給口に加えて大気連通口を有するインクカートリッジを用いる場合と、インク収容部が密閉状態となるインクカートリッジを用いる場合では、クリーニング操作の前後におけるリップルが異なる。具体的には、インク収容部が密閉状態となるインクカートリッジを用いる場合の方が、クリーニング操作の前後におけるリップルが相対的に大きくなる。このため、これらの2種類のインクカートリッジを用いる場合には、インク流路の内部での複数のインクにおける比重の差に起因する流体の移動の程度が異なり、このことが第1の混色現象の発生に影響を与える。
一般に、複数のインクにおける比重の差に起因する流体の移動は、リップルの値によらず生じる現象と考えられる。しかし、上記の事実から判断すると、一定値以上のリップルに起因する流体の移動速度が存在するようになることで初めて、比重の差に起因する流体の移動が起きると考えられる。
上記で述べたように、第1の混色現象を抑制するためには、インクセットを構成する複数のインクをそれぞれ収容するインクカートリッジとして、インク収容部が密閉状態となるインクカートリッジを用いる場合に、以下の構成を満たすことが必要である。即ち、前記複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差を0.020未満とすることが重要である。しかし、色材として顔料を含有するインクを用いる場合、顔料の分散安定性やインクの吐出安定性等の信頼性を考慮すると、インクセットを構成する全てのインクの比重を全く同じ値に揃えることは困難であることがわかった。そこで、本発明者らが検討を行った結果、第1のインク及び第2のインクにおける比重の差を0.0030以上とすることが好ましい。本発明においては、第1のインク及び第2のインクにおける比重の差を0.0030以上0.020未満とすることがより好ましい。
従来のインクセットは、顔料の分散安定性やインクの吐出安定性等の信頼性、及び、ブリーディングや光学濃度等の画像特性、の向上を課題としたものが多かった。かかるインクセットは上記で述べた課題を解決するために、顔料の種類やその表面状態に応じて、分散剤、水性媒体等の種類や、インク中のこれらの含有量等を、適切に決定しているものであった。しかし、従来のインクセットにおいては、密閉状態となるインク収容部を有するインクカートリッジに収容されたインクを吐出するわけではなかったため、本発明が課題とする第1の混色現象が起きることが確認されていなかった。当然のことながら、従来のインクセットにおいては起きることがない第1の混色現象という課題を認識して、かかる課題を解決するために、インクセットを構成する複数のインクの比重をあえて揃えることは行われていなかったと言える。このことは、インクセットを構成する複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差を0.020未満に規定することで、第1の混色現象を解決するような発明はこれまでに存在しないことを意味する。つまり、本発明は、従来のインクセットでは認識されていなかった、第1の混色現象を抑制するという新規な課題を解決することを目的とするものである。そして、本発明者らは、インクセットを構成する複数のインクの比重をできるだけ揃えるという従来にない概念を考慮した。その結果、インクセットを構成する複数のインクにおいて、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差を0.020未満とすることで初めて、第1の混色現象を解決できるという知見を得て、本発明を為すに至った。
本発明者らの検討の結果、第1のインクの比重及び第2のインクの比重を、それぞれ1.030以上とすることで、第1の混色現象をより効果的に抑制することができることがわかった。第1のインク及び第2のインクの比重がそれぞれ1.030未満であると、インク流路の内部にインク残渣が引き込まれた際に、クリーニング操作の前後におけるリップルが大きいことに起因する液体の移動の速度が大きくなる。この結果、インク流路に引き込まれたインク残渣は、インク流路の内部に移動しやすくなる。このため、第1のインクの比重及び第2のインクの比重が、それぞれ1.030以上である場合と比較して、第2の混色現象が悪化することがあり、予備吐出数を増やす必要が生じる場合がある。又、インクの吐出安定性や耐固着性等の信頼性を考慮すると、第1のインクの比重及び第2のインクの比重を、それぞれ1.100以下とすることが好ましい。更には、第1のインクの比重及び第2のインクの比重を、それぞれ1.030以上1.100以下、更には、それぞれ1.041以上1.093以下とすることで、混色現象を抑制する効果をより顕著に得ることができるため、特に好ましい。又、インクセットを構成する全てのインクの比重を、それぞれ1.030以上1.100以下、更には、それぞれ1.041以上1.093以下とすることが特に好ましい。
更に、インク流路の内部に複数のインクが存在する場合、これらのインクが含有する色材の比重の差に起因する色材の移動を抑制するために、インクセットを構成する複数のインクがそれぞれ含有する色材の比重が、以下の関係を満たすことが好ましい。即ち、第1のインクが含有する色材及び第2のインクが含有する色材のうち、比重が最も大きい第1の色材及び比重が最も小さい第2の色材における比重の差を、0.020以下とすることが好ましい。本発明者らは、色材として有機顔料を用いた場合の、色材の比重と混色現象の関係について検討を行った。具体的には、比重が比較的大きいC.I.ピグメントグリーン7と平均的な比重のC.I.ピグメントレッド122の混色現象と、比重がやや大きいC.I.ピグメントブルー15:3とC.I.ピグメントレッド122の混色現象を比較した。その結果、後者の方が、即ち、比重の差が小さい色材の組み合わせの方が、第2の混色現象をより少ない予備吐出数で抑制できることを確認した。又、インクの吐出安定性や耐沈降性等の信頼性を考慮すると、第1の色材及び第2の色材における比重の差を0.010以下とすることが好ましい。
尚、本発明における色材とは、染料や顔料を指す。更に、本発明において、色材が顔料である場合は、色材とは、顔料及び分散剤を含有する顔料分散体のことも指す。又、本発明における色材の比重とは、インク中の色材(色材が顔料である場合は、顔料及び分散剤を含有する顔料分散体)と水以外の成分を全て水に置換した液体の比重のことを言う。
更に、第1のインク及び第2のインクの各インク中の色材の含有量を以下のようにすることが好ましい。即ち、第1の色材の含有量及び第2の色材の含有量が同じであるか、又は第1の色材の含有量が第2の色材の含有量よりも小さい方が好ましい。このような色材の含有量とすることで、色材の比重の差に起因する混色現象が起きにくくなるためである。尚、前記現象は、第1のインク及び第2のインクの各インクの色材の比重が、1.017以上1.039以下である場合に、より顕著な差として現れる。
又、第1のインクが含有する水溶性有機溶剤及び第2のインクが含有する水溶性有機溶剤のうち、比重が最も小さい水溶性有機溶剤を第1の水溶性有機溶剤とする。このとき、第1の水溶性有機溶剤及び第1の色材における比重の差を、0.049以下とすることが好ましい。このようにすることで、インク流路の内部に複数のインクが存在する状態で、インクジェット記録装置を長時間放置した際の、色材の移動を抑制することができるためである。
更に、第1のインクを吐出する記録ヘッドの流路抵抗を、第2のインクを吐出する記録ヘッドの流路抵抗よりも大きくすることが好ましい。このようにすることにより、クリーニング操作を行う際に、第1のインクを吐出口から吸引して排出するインクの体積を、第2のインクを吐出口から吸引して排出するインクの体積よりも少なくすることができる。この結果、第1のインクを吐出する記録ヘッドのリップルが、第2のインクを吐出する記録ヘッドのリップルよりも小さくなり、第1のインクを吐出するインク流路の内部にインク残渣が引き込まれることを抑制できる。更に、第1のインクを吐出するインク流路の内部では、リップルに起因する流体の移動を抑制できるため、複数のインクにおける比重の差に起因する流体の移動を抑制することが可能となる。この結果、第1の混色現象を抑制するという効果を顕著に得ることができると考えられる。
尚、記録ヘッドの流路抵抗を調整する手段には様々な方法がある。本発明においては、インクの粘度を調整することで、記録ヘッドの流路抵抗を適切に調整することができる。具体的には、第1のインクの粘度を第2のインクの粘度よりも大きくすることで、第1のインクを吐出する記録ヘッドの流路抵抗を、第2のインクを吐出する記録ヘッドの流路抵抗よりも大きくすることができる。尚、第1のインク及び第2のインクにおける粘度の差は、インク流路の構成によって多少の違いがあるが、具体的には、第1のインクの粘度を第2のインクの粘度に対して10%以上、更には15%以上大きくすることが好ましい。但し、インクの吐出安定性や保存安定性等の信頼性を考慮すると、第1のインク及び第2のインクの粘度を、それぞれ2.0mPa・s以上5.0mPa・s以下とすることが好ましい。又、インクセットを構成する全てのインクの粘度を、それぞれ2.0mPa・s以上5.0mPa・s以下とすることが特に好ましい。
更に、本発明者らは、第1の混色現象をより効果的に抑制する方法を見つけることを目的として、以下のような検討を行った。
一般に、2種の液体が互いに接触する場合、その拡散の状態は、以下に述べる2つのパターンにわけられる。以下、2種の液体が互いに接触したときの挙動を示す模式図である図9を参照して説明する。先ず、第1のパターンは図9のAに示すように、一方の液体(液体2:Z1001)が、他方の液体(液体1:Z1000)中に一方的に広がっていくものである。次に、第2のパターンは図9のBに示すように、互いの液体が他方の液体中に拡散しようとするため、これらの液体が接触した境界部分で混ざり合った液体(Z1002)の状態となるものである。このとき、これらの2種の液体がインクである場合には、インクが接触した境界部分では、インクが滲んだような状態となる。これらのような2つのパターンの現象が起きる要因には様々なことが考えられる。例えば、表面張力が異なる2種の液体を互いに接触させる場合や、表面張力が実質的に等しい2種の液体を互いに接触させる場合等が挙げられる。このとき、表面張力が異なる2種の液体を互いに接触させる場合は、図9のAのようになり、表面張力が実質的に等しい2種の液体を互いに接触させる場合は、図9のBのようになる。尚、前記現象は、例えば、2種のインクを等量(質量比)でシャーレ等に滴下して、インクを互いに接触させたときの挙動を観察することで確認することができる。
そこで、本発明者らは、上記で述べた現象を利用して、第1の混色現象をより効果的に抑制することを目的として検討を行った。即ち、インクセットを構成する複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインクの表面張力を、比重が最も小さい第2のインクの表面張力よりも小さくなるようにインクセットを構成する。このようにすることで、インク残渣が第1のインクを吐出するインク流路の方向へ引っ張られることを予想して、検討を行った。その結果、インクの表面張力の関係を、上記関係となるようにしなかった場合と比較して、第1のインクの表面張力が第2のインクの表面張力よりも小さい場合はより少ない予備吐出数で第1の混色現象を抑制できることがわかった。
前記知見に基づいて本発明者らが検討した結果、以下の構成を満たすことが好ましいことがわかった。即ち、第1のインクの表面張力を、第2のインクの表面張力よりも小さくすることが好ましい。更には、前記第2のインクの表面張力が、前記第1のインクの表面張力よりも3mN/m以上大きいことが好ましい。このような構成とすることにより、吐出安定性や保存安定性等の信頼性が高いレベルで得られ、且つ、第1の混色現象をより効果的に抑制できることがわかった。
本発明においては、第1のインク及び第2のインクの表面張力を、それぞれ25.0mN/m以上50.0mN/m以下、更には、25.0mN/m以上45mN/m以下とすることが好ましい。又、インクセットを構成する全てのインクの表面張力を、それぞれ25.0mN/m以上50.0mN/m以下、更には、25.0mN/m以上45mN/m以下とすることが特に好ましい。
尚、本発明においては、インクを構成する成分の種類や含有量を適切に決定することで、インクの比重、粘度、及び表面張力を調整することができる。又、樹脂を分散剤として用いて顔料を水性媒体中に分散している顔料インクの場合は、樹脂の種類や含有量等を適切に決定することでも、インクの比重、粘度、及び表面張力を調整することができる。
<インク>
以下、インクを構成する各成分について説明する。
(水性媒体)
インクセットを構成する各インクには、水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として3.0質量%以上50.0質量%以下とすることが好ましい。又、インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として50.0質量%以上95.0質量%以下とすることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メタノール、エタノール、プロパノール、プロパンジオール、ブタノール、ブタンジオール、ペンタノール、ペンタンジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオール、等の炭素数1〜6のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類。アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類。平均分子量200、300、400、600、及び1,000等の、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレン基を持つアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等。中でも特に、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、又は2−ピロリドンを用いることが好ましい。又、水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。
(色材)
色材は、従来のインクに用いられるものであれば、何れのものも用いることができる。具体的には、アニオン性基を有する染料や、顔料を用いることができる。顔料は、分散剤を用いて顔料を分散する樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を用いることができる。又、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合した顔料(樹脂結合型自己分散顔料)、顔料の分散性を高めて分散剤等を用いることなく分散可能としたマイクロカプセル型顔料等も用いることができる。
[染料]
染料は、カラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されている酸性染料、直接染料、反応性染料であれば何れのものも用いることができる。又、カラーインデックスに記載のない染料であっても用いることができる。本発明においては、特に、アニオン性基、例えば、カルボキシル基やスルホン酸基を有する染料を用いることが好ましい。インク中の染料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として1.0質量%以上10.0質量%以下、更には1.0質量%以上5.0質量%以下とすることが好ましい。
染料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、98、100、110等。C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、230等。C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226等。C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99等。C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、94、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289等。C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161等。
[顔料]
顔料は、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下、更には1.0質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。
ブラックインクは、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを顔料として用いることが好ましい。具体的には、例えば、以下の市販品等を用いることができる。レイヴァン:7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上、コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:330R、400R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上、デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。又、本発明のために新たに調製したカーボンブラックを用いることもできる。勿論、本発明はこれらに限定されるものではなく、従来のカーボンブラックを何れも用いることができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を顔料として用いてもよい。
有機顔料は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料。インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
又、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71等。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192等。同、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50等。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等。C.I.ピグメントグリーン:7、36等。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
[分散剤]
上記で挙げたような顔料を水性媒体に分散するための分散剤は、水溶性を有する樹脂であれば何れのものも用いることができる。中でも特に、分散剤の重量平均分子量が1,000以上30,000以下、更には3,000以上15,000以下のものが好ましい。インク中の分散剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上5.0質量%以下とすることが好ましい。
分散剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン、ビニルナフタレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はこれらの誘導体等を単量体とするポリマー。尚、ポリマーを構成する単量体のうち1つ以上は親水性単量体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等を用いても良い。又は、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂を用いることもできる。これらの樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶である、即ち、アルカリ可溶型であることが好ましい。
(その他の成分)
インクセットを構成する各インクは、前記成分の他に、保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタン等の保湿性固形分を含有してもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上20.0質量%以下、更には3.0質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。
更に、インクセットを構成する各インクには、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等の界面活性剤を用いてもよい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール類、アセチレングリコール化合物、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。
又、インクセットを構成する各インクは、前記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及び蒸発促進剤等の種々の添加剤を含有してもよい。
<インクセット、インクカートリッジのセット>
本発明にかかるインクセット又はインクカートリッジのセットは、複数のインクを組み合わせて用いるものであれば、下記に挙げる何れの形態をとるものであってもよい。例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インクをそれぞれ収容するインク収容部が一体となった構造の、インクカートリッジ又は記録ヘッド付きインクカートリッジで構成されるインクセット又はインクカートリッジのセットが挙げられる。又、シアン、マゼンタ、イエローの各インクをそれぞれ収容するインク収容部が一体となった構造の、インクカートリッジ又は記録ヘッド付きインクカートリッジで構成されるインクセット又はインクカートリッジのセットが挙げられる。更に、上記で挙げたようなインクを収容するそれぞれ個別のインクカートリッジが、インクジェット記録装置に着脱自在であるインクセット又はインクカートリッジのセットが挙げられる。何れにしても、本発明は、インクジェット記録装置において、又はインクカートリッジとして、組み合わせて用いる他のインクに対して、インクそのものの特性を相対的に規定するものであり、上記で挙げた形態に限らず、どのような変形の形態としてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明にかかるインクセットを構成する複数のインクは、インクをインクジェット方式で吐出するインクジェット記録方法に適用することが特に好ましい。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方法や、インクに熱エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方法などがある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。
<インクカートリッジ>
本発明にかかるインクセットを構成する複数のインクを用いて記録を行うのに好適なインクカートリッジは、これらのインクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジが挙げられる。以下に、インクカートリッジの構成を説明する。
図8は、インクカートリッジの分解斜視図である。図8において、インクカートリッジ100は、筐体1と蓋部材2で構成されるケース部材と、筐体1に接着され折り返し部を有する凸型シート3を備え、これらによってインク収容部を形成する。インク収容部内には、圧力板4とこれを凸型シート側へ付与する圧縮コイルバネ5が設けられる。このように凸型シート3を外方に付勢することによって、インク収容部内に負圧が発生している。筐体1の一側部には記録ヘッド(不図示)へのインク流路と接触するインク供給口6が設けられる。筐体1は前記の通りインクを収容する容器を構成する。凸型シート3は、筐体1の外周部に溶接される。筐体1の開口部には蓋部材2が取り付けられ、外方に凸型となる凸型シート3を保護している。
<記録ユニット>
本発明にかかるインクセットを構成する複数のインクを用いて記録を行うのに好適な記録ユニットは、これらのインクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジと、記録ヘッドとを備えた記録ユニットが挙げられる。本発明においては特に、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出する記録ユニットを用いることが好ましい。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、本発明のインクセットを構成する複数のインクをそれぞれ収容するインク収容部を有するインクカートリッジと、インクを吐出する記録ヘッドとを備えたものであることを特徴とする。本発明においては特に、記録ヘッドが、熱エネルギーをインクに付与することにより、インクを吐出するインクジェット記録装置である場合に、顕著な効果を得ることができる。
以下に、インクジェット記録装置の機構部の概略構成を説明する。インクジェット記録装置は、各機構の役割から、給紙部、搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部、及びこれらを保護し、意匠性を持たせる外装部で構成される。以下、これらの概略を説明する。
図1は、インクジェット記録装置の斜視図である。又、図2及び図3は、インクジェット記録装置の内部機構を説明するための図であり、図2は右上部からの斜視図、図3はインクジェット記録装置の側断面図をそれぞれ示したものである。
給紙を行う際には、先ず、給紙トレイM2060を含む給紙部において所定枚数の記録媒体が、給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる(図1及び図3参照)。記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される(以上、図2及び図3参照)。
画像を形成する際には、キャリッジ部は記録ヘッドH1001(図4参照)を目的の画像形成位置に配置して、電気基板E0014(図2参照)からの信号に従って記録媒体にインクが吐出される。尚、記録ヘッドH1001についての詳細な構成は後述する。記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000(図2参照)が列方向に走査する主走査と、搬送ローラM3060(図2及び図3参照)が記録媒体を行方向に搬送する副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に画像を形成する。
最後に、記録媒体は、排紙部で第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ(図3参照)、搬送されて排紙トレイM3160(図1参照)に排出される。
図7は、インクジェット記録装置のクリーニング部の構成を示す模式図である。クリーニング部は、キャップM5010を記録ヘッドH1001の吐出口を有する面(吐出口面)に当接させた状態で、ポンプM5000を作動すると、記録ヘッドH1001からインク等を吸引して、記録ヘッドH1001(図4参照)のクリーニング操作を行う。上下可動機構によりキャップホルダM5060を上昇させてキャップM5010を記録ヘッドH1001の吐出口面に適当な密着力で当接させてキャッピングする。キャッピングされた状態でポンプM5000を作動すると、吐出口面とキャップM5010との間に負圧が発生し、吐出口列を構成する各吐出口からインクが吸引される。本発明においては、第1のインクを吐出する吐出口列及び第2のインクを吐出する吐出口列を同一のキャップでキャッピングすることが好適である。このキャッピングされた状態では、前記吐出口列は吸引室M5020及びM5030によって密閉され、前記吐出口列は吸引室M5020及びM5030によって密閉される。
吸引室M5020及びM5030には、インク排出口M5070及びM5080が設けられている。図示の例では、吸引室M5020にはインク排出口M5070、又吸引室M5030にはインク排出口M5080がそれぞれ形成されている。これらのインク排出口M5070及びM5080にはそれぞれチューブM5090及びM5100が接続されている。更に、チューブM5090及びM5100はそれぞれポンプM5000に接続されている。前記キャップホルダM5060は、前記キャップM5010を保持するとともに、不図示の駆動機構によって記録ヘッドH1001の吐出口面に対してキャップM5010を当接又は離間する方向に駆動される。
又、キャップM5010を開いた状態で、キャップM5010に残っているインクを吸引すると、インクの固着やその他の弊害が起こらないようになっている。
尚、図7では、周壁部M5040で形成される吸引室が仕切壁M5050で同等の体積を有する2つ吸引室に区切られている構成について示したが、これらの吸引室の体積はそれぞれ異なっていても良く、更には吸引室が1つであっても良い。又、キャップの吸引室の内部にインク吸収材等を配置しても良い。
<記録ヘッドの構成>
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する(図4参照)。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有する。そして、ヘッドカートリッジH1000は、キャリッジM4000(図2参照)に対して着脱可能に搭載される。
図4は、ヘッドカートリッジH1000にインクカートリッジH1900を装着する様子を示した図である。インクジェット記録装置は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、淡マゼンタ、淡シアン、及びグリーン等の各インクを用いて画像を形成する。従って、インクカートリッジH1900も7色分が独立に用意されている。そして、図4に示すように、それぞれのインクカートリッジは、ヘッドカートリッジH1000に対して着脱可能となっている。尚、インクカートリッジH1900の着脱は、キャリッジM4000(図2参照)にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行うことができる。
図5は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録素子基板、プレート、電気配線基板H1300、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800等で構成される。記録素子基板は第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101で構成され、プレートは第1のプレートH1200及び第2のプレートH1400で構成される。
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソグラフィ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAl等の電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路もフォトリソグラフィ技術により形成されている。更に、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図6は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明する正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインクを供給する記録素子の列(以下吐出口列ともいう)である。第1の記録素子基板H1100には、イエローインクの吐出口列H2000、マゼンタインクの吐出口列H2100、及びシアンインクの吐出口列H2200の3色分の吐出口列が形成されている。第2の記録素子基板H1101には、淡シアンインクの吐出口列H2300、ブラックインクの吐出口列H2400、グリーンインクの吐出口列H2500、及び淡マゼンタインクの吐出口列H2600、の4色分の吐出口列が形成されている。各吐出口列は、記録媒体の搬送方向に所定の間隔で並ぶ複数のノズルによって構成され、前記ノズルの開口部、つまり吐出口は重力方向に形成されている。尚、図6では、吐出口列を構成するノズルのうち一部を省略して示す。
以下、図5及び図6を参照して説明する。第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されている。ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。更に、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されている。この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持する。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加する。この電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し、インクジェット記録装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有する。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
インクカートリッジH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が、例えば、超音波溶着により固定され、インクカートリッジH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成する。インクカートリッジH1900と係合するインク流路H1501のインクカートリッジ側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。又、インクカートリッジH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
更に、上述の通り、タンクホルダー部と記録ヘッド部H1001とを接着等で結合することで、ヘッドカートリッジH1000が構成される。尚、タンクホルダー部は、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、及びシールゴムH1800から構成される。又、記録ヘッド部H1001は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、下記の実施例によって限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
[顔料分散液1〜4の調製]
以下に示す手順により、顔料分散液1〜4を調製した。尚、以下の記載において、色材の比重とはインク中の色材(顔料及び分散剤を含有する顔料分散体)と水以外の成分を、全て水に置換した液体の比重のことである。色材の比重は、浮き型の比重計(商品名:標準比重計;テックジャム製)を用いて25℃で測定した。
(C.I.ピグメントレッド122を含む顔料分散液1の調製)
顔料(C.I.ピグメントレッド122)8部、分散剤2.8部、イオン交換水89.2部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が8質量%である顔料分散液1を得た。尚、前記分散剤は、酸価200、重量平均分子量12,000のポリ(ベンジルメタクリレート−co−アクリル酸)(組成(モル)比70:30)を、10質量%水酸化カリウム水溶液で中和することにより得られた樹脂を用いた。
上記で得た顔料分散液1を、イオン交換水を用いて顔料濃度が4質量%になるように調整した液体の比重を測定したところ、1.017であった。又、同様に、上記で得た顔料分散液1を、イオン交換水を用いて顔料濃度が5質量%になるように調整した液体の比重を測定したところ、1.027であった。
(C.I.ピグメントレッド149を含む顔料分散液2の調製)
顔料(C.I.ピグメントレッド149)8部、分散剤5.6部、イオン交換水86.4部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が8質量%である顔料分散液2を得た。尚、前記分散剤は、酸価200、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を、10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得られた樹脂を用いた。
上記で得た顔料分散液2を、イオン交換水を用いて顔料濃度が4質量%になるように調整した液体の比重を測定したところ、1.028であった。
(C.I.ピグメントグリーン7を含む顔料分散液3の調製)
顔料(C.I.ピグメントグリーン7)8部、分散剤4.8部、イオン交換水87.2部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が8質量%である顔料分散液3を得た。尚、前記分散剤は、酸価250、重量平均分子量5000のベンジルメタクリレートとメタクリル酸のAB型ブロックポリマーを、10質量%水酸化カリウム水溶液で中和することにより得られた樹脂を用いた。
上記で得た顔料分散液3を、イオン交換水を用いて顔料濃度が4質量%になるように調整した液体の比重を測定したところ、1.039であった。
(C.I.ピグメントブルー15:3を含む顔料分散液4の調製)
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)8部、分散剤8部、イオン交換水84部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が8質量%である顔料分散液4を得た。尚、前記分散剤は、酸価200、重量平均分子量12,000のポリ(ベンジルメタクリレート−co−アクリル酸)(組成(モル)比70:30)を、10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得られた樹脂を用いた。
上記で得た顔料分散液4を、イオン交換水を用いて顔料濃度が4質量%になるように調整した液体の比重を測定したところ、1.027であった。
[インクの調製]
下記表1に示す各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過を行い、インク1〜12を調製した。尚、表1には、各インク及び色材の比重、インクの粘度及び表面張力の値を示した。比重は、浮き型の比重計(商品名:標準比重計;テックジャム製)を用いて25℃で測定した。又、粘度は、RE80L型粘度計(東機産業製)を用いて25℃で測定した。又、表面張力は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学製)を用いて25℃で測定した。
尚、調製したインクの顔料濃度は、インク1〜7及び9〜12は4質量%、又、インク8は5質量%であった。
Figure 0004182134
[水溶性有機溶剤の比重]
下記表2に、インクの調製に用いた各水溶性有機溶剤の比重を示す。比重は、浮き型の比重計(商品名:標準比重計;テックジャム製)を用いて25℃で測定した。
Figure 0004182134
[インクセットの作製]
上記で得られた各インクを、下記表3の上段に示す組み合わせで用いて、実施例1〜9及び比較例1〜3のインクセットとした。それぞれのインクセットを構成する各インクを、図8に示す構成を有するインクカートリッジにそれぞれ充填した。ここで、図8に示す構成を有するインクカートリッジは、密閉状態となるインク収容部を有する、即ち、インクが大気と接する部分がインク供給口のみであるインク収容部を有するものである。尚、各インクをインクカートリッジに充填する際の各インクの充填量は、インクカートリッジに充填することができる最大の充填量に対して、以下の通りとした。第1のインクはインクカートリッジの最大の充填量に対して半分の充填量、又、第2のインクはインクカートリッジの最大の充填量とした。インクセットを構成する各インクの充填量を上記のようにすることにより、各インクを吐出する記録ヘッドのリップルにより差が生じやすくなるようにした。尚、表3の下段には、インクセットを構成する各インクにおける各種の値をまとめて示した。
Figure 0004182134
[記録物の作製]
インクセットを構成する各インクをそれぞれ充填した2種のインクカートリッジを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名:PIXUS990i;キヤノン製)を改造したものに搭載した。前記インクジェット記録装置は、1パス、片方向で記録を行うものであり、記録ヘッドの吐出口列を形成する吐出口の数は1色当たり768、各吐出口列間の幅は0.64インチ、インク1滴当たりの吐出体積は約2pL(ピコリットル)である。尚、第1のインクを収容したインクカートリッジはイエローのポジション、第2のインクを収容したインクカートリッジはマゼンタのポジション、となるようにインクジェット記録装置に搭載して、インクセットを構成する各インクの吐出口が隣接するようにした。前記インクジェット記録装置は、イエロー及びマゼンタの各吐出口列を同一のキャップでキャッピングしてクリーニング操作を行うものである。記録媒体は、プロフェッショナルフォトペーパーPR−101(商品名;キヤノン製)を用いた。
前記記録媒体に、インクセットを構成する各インクを用いて、それぞれのインクで形成する4cm×27cmのベタ画像(100%デューティ)が隣接するように記録した記録物を、2枚作製した。そして、クリーニング操作を1回行った後、10分間記録を停止した。その後、再び前記と同様の記録物を1枚作製した。
更に、クリーニング操作を行った後の記録停止時間をそれぞれ30分間及び60分間とすること以外は、上記と同様にして、記録物を2枚作製、クリーニング操作、所定の時間の記録停止、記録物を1枚作製、の工程を2回繰り返して行った。
尚、クリーニング操作を行う前に作製した2枚目の記録物においては、何れの場合も、ベタ画像に混色が発生しないことを確認した。
[評価]
所定の時間(10分間、30分間、及び60分間)記録を停止した後に得られた記録物における、混色の状態を目視で確認して評価を行った。混色の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示す。
尚、1スキャン目で記録する領域で僅かに確認される混色は、1つの吐出口当たり16,000滴より多く18,000滴以下の予備吐出を行うことで、混色が確認されなくなることがわかっている。又、2スキャン目で記録する領域で僅かに確認される混色も、1つの吐出口当たり18,000滴より多く19,000滴以下の予備吐出を行うことで、混色がほとんど確認されないレベルとなることがわかっている。
(評価基準)
A:1スキャン目で記録した領域で混色が僅かに確認されたが、2スキャン目以降で記録した領域では混色は確認されなかった。
B:1スキャン目及び2スキャン目で記録した領域で混色が僅かに確認されたが、3スキャン目以降で記録した領域では混色は確認されなかった。
C:1スキャン目で記録した領域では混色は確認されなかったが、2スキャン目から4スキャン目で記録した領域で混色が確認され、且つ、5スキャン目以降で記録した領域では混色は確認されなかった。
D:1スキャン目で記録した領域では混色は確認されなかったが、5スキャン目から10スキャン目で記録した領域で混色が確認され、且つ、10スキャン目以降で記録した領域では混色は確認されなかった。
E:1スキャン目で記録した領域では混色は確認されなかったが、5スキャン目から10スキャン目で記録した領域で混色が確認され、且つ、10スキャン目以降で記録した領域でも混色が確認された。
Figure 0004182134
実施例1、3、及び5〜8は、上記で挙げた評価基準に従って混色の評価を行ったところ、全く同じ評価結果となった。しかし、実施例3及び7は、実施例1、5、6、及び8と比較して、30分間記録停止後の画像における混色の状態が僅かに劣っていた。しかし、実施例3の60分間記録停止後の画像における混色の状態は、30分間記録停止後の画像における混色の状態と同様であった。一方、実施例1、5、及び6は、実施例3と比較して、30分間記録停止後の画像における混色の状態が僅かに優れていたが、60分間記録停止後の画像における混色は同レベルであった。更に、実施例5及び8の60分間記録停止後の画像における混色の状態を比較すると、実施例8の方が混色の状態が僅かに劣っていた。同様に、実施例5及び7の60分間記録停止後の画像における混色の状態を比較すると、実施例7の方が混色の状態が僅かに劣っていた。
インクジェット記録装置の斜視図である。 インクジェット記録装置の機構部の斜視図である。 インクジェット記録装置の断面図である。 ヘッドカートリッジにインクカートリッジを装着する状態を示す斜視図である。 ヘッドカートリッジの分解斜視図である。 ヘッドカートリッジにおける記録素子基板を示す正面図である。 インクジェット記録装置のクリーニング部の構成を示す模式図である。 インクカートリッジの分解斜視図である。 2種の液体が互いに接触したときの挙動を示す模式図である。
符号の説明
M2041 分離ローラ
M2060 給紙トレイ
M2080 給紙ローラ
M3000 ピンチローラホルダ
M3030 ペーパーガイドフラッパー
M3040 プラテン
M3060 搬送ローラ
M3070 ピンチローラ
M3110 排紙ローラ
M3120 拍車
M3160 排紙トレイ
M4000 キャリッジ
M5000 ポンプ
M5010 キャップ
M5020、M5030 吸引室
M5040 周壁部
M5050 仕切壁
M5060 キャップホルダ
M5070、M5080 インク排出口
M5090、M5100 チューブ
E0002 LFモータ
E0014 電気基板
H1000 ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1100 第1の記録素子基板
H1101 第2の記録素子基板
H1200 第1のプレート
H1201 インク供給口
H1300 電気配線基板
H1301 外部信号入力端子
H1400 第2のプレート
H1500 タンクホルダー
H1501 インク流路
H1600 流路形成部材
H1700 フィルター
H1800 シールゴム
H1900 インクカートリッジ
H2000〜H2600 吐出口列
1 筐体
2 蓋部材
3 凸型シート
4 圧力版
5 圧縮コイルバネ
100 インクカートリッジ
Z1000 液体1
Z1001 液体2
Z1002 液体1及び液体2が混ざり合った液体

Claims (11)

  1. 複数のインクで構成されるインクセットであって、
    前記インクセットを構成する複数のインクがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有するインクカートリッジに収容されてなり、
    前記インクセットを構成する複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差が、0.020未満であることを特徴とするインクセット。
  2. 前記第1のインクが含有する色材及び前記第2のインクが含有する色材のうち、比重が最も大きい第1の色材及び比重が最も小さい第2の色材における比重の差が、0.010以下である請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記第1のインクが含有する水溶性有機溶剤及び前記第2のインクが含有する水溶性有機溶剤のうち、比重が最も小さい第1の水溶性有機溶剤及び前記第1の色材における比重の差が、0.049以下である請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記第1のインクの粘度が、前記第2のインクの粘度よりも大きい請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクセット。
  5. 前記第1のインクの表面張力が、前記第2のインクの表面張力よりも小さい請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクセット。
  6. 前記第2のインクの表面張力が、前記第1のインクの表面張力よりも3mN/m以上大きい請求項1乃至5の何れか1項に記載のインクセット。
  7. 複数のインクカートリッジを有するインクカートリッジのセットであって、
    前記複数のインクカートリッジがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有し、
    前記インク収容部それぞれ収容されている複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差が、0.020未満であることを特徴とするインクカートリッジのセット。
  8. 複数のインクカートリッジと、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットであって
    前記複数のインクカートリッジがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有し、
    前記インク収容部にそれぞれ収容されている複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差が、0.020未満であることを特徴とする記録ユニット。
  9. 複数のインクカートリッジと、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって
    前記複数のインクカートリッジがそれぞれ、密閉状態となるインク収容部を有し、
    前記インク収容部にそれぞれ収容されている複数のインクのうち、比重が最も大きい第1のインク及び比重が最も小さい第2のインクにおける比重の差が、0.020未満であることを特徴とするインクジェット記録装置。
  10. 前記インクジェット記録装置が更に、記録ヘッドの吐出口を覆うためのキャップを有し、
    前記第1のインクを吐出する吐出口列及び前記第2のインクを吐出する吐出口列が、同一のキャップでキャッピングされるものである請求項9に記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記インクジェット記録装置が更に、記録ヘッドの吐出口を覆うためのキャップを有し、
    前記第1のインクを吐出する吐出口列及び前記第2のインクを吐出する吐出口列が、同一のキャップを介して吸引されるものである請求項9に記載のインクジェット記録装置。
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