JP4474059B2 - 液体組成物、インクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

液体組成物、インクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体組成物、インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。詳しくは、ブリードを低減した画像、更には、耐水性の優れた画像の形成が可能な液体組成物、インクジェット記録用インクセット、これらいずれかを用いたインクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクを被記録材上に直接吐出して画像を記録する低騒音、且つノンインパクトな記録方法である。また、この方法は、実施するにあたって複雑な装置を必要としないため、低ランニングコスト、装置の小型化、カラー化等が容易である。従って、従来からインクジェット記録方式を適用したプリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録装置が実用化されている。また、このようなインクジェット記録技術を利用してブラックインクとカラーインク(例えば、イエローインク、シアンインク、マゼンタインク、レッドインク、グリーンインク及びブルーインクから選ばれる少なくとも1つのカラーインク)を用いて多色の画像を形成するためのカラーインクジェット記録装置も実用化されている。
【0003】
しかし一方で、インクジェット記録方法による画像形成においては、異なる2種のインクが隣接して被記録材に付与された場合、該インク同士がそれらの境界部で混ざり合ってしまい、カラー画像の品位が低下する現象(ブリーディング)が発生するという問題がある。特に、ブラックインクとカラーインクの境界部での混色は、画像品位低下への影響が大きいため、様々な解決方法の開発が行なわれている。
【0004】
その代表的な解決方法は、2種のインクが隣接して被記録材に付与された時、少なくともどちらか一方の増粘、或いは少なくともどちらか一方の色材の凝集又は沈殿を生起させ、ブリードを防止させるメカニズムを有するインクセット及び記録方法である。
【0005】
例えば、特開平5−202328号公報、米国特許第5,198,023号明細書及び特開平6−106841号公報に記載されているように、沈殿剤を含む第1の液と、沈殿剤によって沈殿物を生成し得る着色剤を含む第2の液とを併用することで、カラーブリードを制御する技術が開示されている。そして、この沈殿剤として多価金属塩が開示され、多価金属塩によって沈殿し得る着色剤として少なくとも1つのカルボキシル基を有する染料等が開示されている。
【0006】
また、更に第1の液は着色剤を含んでもよく、その場合は第1の液もインクとして使用できる。しかし、これらはいずれも多価金属塩の陰イオンとして、Cl-、NO3 -、I-、Br-、ClO3 -、CH3COO-イオンを使用している。また、特開2000−136337公報には、沈殿剤として、上記の多価金属塩の他に乳酸等の配位子を有する化合物に多価金属イオンが配位した金属配位化合物が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らがブリードを改善すべく鋭意検討した結果、アルドン酸の多価金属塩を含む第1の液と、アルドン酸の多価金属塩と反応する着色剤を含む第2の液を併用し、被記録媒体上に、これらが接触状態を形成せしめるように付与すると、該着色剤と該多価金属イオンが反応し、ブリーディングが緩和されることを見出した。本発明での「反応」とは、凝集もしくは沈殿の生成、或いは該第2の液の増粘を意味し、被記録媒体中に該液類が浸透してから反応する場合も含む。更にアルドン酸の多価金属塩はインクに対する溶解性に優れ、インクの成分として有効に利用することができ、且つ人体への安全性にも優れることも見出した。また、第1の液と第2の液とを重ねて付与すると、形成される画像の耐水性の向上が認められることも確認した。
【0008】
従って、本発明の目的は、着色インクとともにインクジェト記録方法に用いて、ブリードが抑制され、また、記録画像の耐水性がより向上した、高品位な画像を形成することのできる液体組成物を提供することにある。
また、本発明は、ブリードが少なく、また、耐水性にも優れた高品位な画像を形成することのできるインクセットを提供することを他の目的とする。
また、本発明は、耐水性の良好な画像を形成することのできるインクジェット記録方法を提供することを他の目的とする。
【0009】
また、本発明は、異色の画像が隣接した時に、その境界領域でブリードが抑制されたカラー画像を形成することのできるインクジェット記録方法を提供することを他の目的とする。
更に本発明は、ブリードの抑制されたカラー画像や耐水性の良好な画像の形成に好適に用いることのできるインクジェット記録装置を提供することを他の目的とする。
更にまた本発明は、上記したインクジェット記録装置に好適に用いることのできる記録ユニットを提供することを他の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は下記の本発明によって達成される。即ち、本発明の一実施形態にかかる液体組成物は、着色インクとともに使用され、該着色インクと接触すると反応を生じるインクジェット記録用液体組成物であって、アルドン酸の多価金属塩と液媒体とを含み、前記アルドン酸の多価金属塩が、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸バリウム、グルコン酸鉄(II)、グルコン酸銅(II)、グルコン酸亜鉛及びグリセリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録方法は、
(i)前記の液体組成物及び着色インクにエネルギーを付与して各々を被記録媒体に向けて吐出する工程;及び
(ii)被記録媒体上に、該液体組成物と該着色インクとの接触状態を形成せしめる工程、
を有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録用インクセットは、
(1)前記の液体組成物と、
(2)色材と液媒体とを含み、且つ該液体組成物との接触によって該液体組成物と反応する着色インク、
とを組み合わせてなることを特徴とするものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
[第1の実施形態]
先ず、本発明の具体的な実施形態として、アルドン酸の多価金属塩を含む液体組成物と、色材を含む着色インクとを併用する形態を説明する。
【0022】
本実施形態では、着色インク中の色材と接触すると反応が生じ、凝集、沈殿、或いは該着色インクの増粘を生じさせる多価金属を含む液体組成物と着色インクとを接触するように記録媒体上に付与し、記録を行なう。液体組成物は記録画像において着色インクの色調には影響を及ぼさないものであることが好ましい。
【0023】
以下、本実施形態にかかる液体組成物に含有させるアルドン酸について詳しく述べる。
アルドン酸は、アルドースのアルデヒド基を酸化してカルボキシル基としたものに相当するポリオキシカルボン酸であり、下記の一般式で表される。
Figure 0004474059
【0024】
上記のように、アルドン酸は不斉炭素原子を有するので、光学異性体が多く存在する。炭素数5個以上(前記一般式のn=3以上)のアルドン酸は単独で水溶液中に存在することはまれで、通常、アルドン酸の一部はγ位或いはδ位の水酸基との間にラクトンを形成し、夫々、γ−アルドノラクトン及びδ−アルドノラクトンになり、アルドン酸、γ−アルドノラクトン及びδ−アルドノラクトンの3者の平衡混合物として存在すると言われている。また、炭素数4個(前記一般式のn=2)のアルドン酸も単独で水溶液中に存在することはまれで、通常、アルドン酸の一部はγ位の水酸基との間にラクトンを形成し、夫々、γ−アルドノラクトンになり、アルドン酸及びγ−アルドノラクトンの2者の平衡混合物として存在すると言われている。
【0025】
アルドン酸は炭素数で分類され、炭素数4個(前記一般式のn=2)のものはテトロン酸;炭素数5個(前記一般式のn=3)のものはペントン酸;炭素数6個(前記一般式のn=4)のものはヘキソン酸と総称されている。アルドン酸の具体例としては、例えば、炭素数2個(前記一般式のn=0)のグリコール酸(別名:ヒドロキシ酢酸);炭素数3個(前記一般式のn=1)のグリセリン酸;炭素数4個(前記一般式のn=2)のエリトロン酸、トレオン酸;炭素数5個(前記一般式のn=3)のリボン酸、アラボン酸、キシロン酸、リキソン酸;炭素数6個(前記一般式のn=4)のグルコン酸、アロン酸、アルトロン酸、マンノン酸、グロン酸、イドン酸、ガラクトン酸、タロン酸;炭素数7個(前記一般式のn=5)のグルコヘプトン酸等が挙げられ、夫々に、D体、L体及びDL体が存在するものもある。
【0026】
以下、本実施形態に好適に使用できるアルドン酸の中でも特に好ましいグルコン酸(前記一般式のn=4)について述べる。グルコン酸は、食品添加物として広く使用されており、人体に対して安全である。グルコン酸は単独で水溶液中に存在することはまれで、通常、グルコン酸の一部はγ位或いはδ位の水酸基との間に夫々ラクトンを形成し、夫々、γ−グルコノラクトンやδ−グルコノラクトンになり、グルコン酸、γ−グルコノラクトン及びδ−グルコノラクトンの3者の平衡混合物として存在すると言われている。
【0027】
グルコン酸は、D体、L体、DL体が存在しており、本発明ではどれを使用してもよいが、一般的には、D体のD−グルコン酸が容易に入手できる。また、グルコン酸の光学異性体として、アロン酸、アルトロン酸、マンノン酸、グロン酸、イドン酸、ガラクトン酸、タロン酸等が存在し、グルコン酸と似た性質を示すので、これらを使用してもよい。
【0028】
本発明では、好ましくは、グルコン酸の多価金属塩を使用するが、特に好適なものとしては、例えば、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸バリウム、グルコン酸鉄(II)、グルコン酸銅(II)、グルコン酸亜鉛等が挙げられる。これらの中でも特に、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウムを使用することが好ましい。また、これら化合物は単独で使用することは勿論、2種類以上を併用して使用することもできる。
【0029】
上記に挙げたようなアルドン酸の多価金属塩から選択される少なくとも1種の化合物の液体組成物宙における総含有量は、より高いブリード低減効果や吐出安定性を得るために、液体組成物全量に対して0.005〜20質量%とすることが好ましく、更に好ましくは、液体組成物全量に対して0.05〜12質量%である。
【0030】
次に、本実施形態にかかる液体組成物とともに用いる着色インクについて説明する。着色インクは、少なくとも色材と液媒体とを含有するが、該インクは、本実施形態にかかるアルドン酸の多価金属塩を含有する液体組成物と接触した際に、該多価金属塩と反応して該着色インク中の色材を凝集もしくは沈殿の生成、或いは該着色インクの増粘を生起させるものである。該着色剤としては、染料や顔料が挙げられる。顔料としては、無機顔料や有機顔料等、殆ど全ての顔料を用いることができる。
【0031】
具体的には、カーボンブラック;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、129、151、154、195;C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、57(Sr)、112、122、123、168、184、202;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:34、16、22、60;C.I.ヴァットブルー4、6等が挙げられる。
【0032】
上記に挙げたような顔料をインクの色材として使用した場合には、顔料をインク中で安定に分散させるために、分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤や界面活性剤系分散剤等を用いることができる。
高分子分散剤の具体例としては、例えば、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物塩、スチレン−メタクリル酸共重合物塩、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合物塩、スチレン−マレイン酸共重合物塩、アクリル酸エステル−マレイン酸共重合物塩、スチレン−メタクリルスルホン酸共重合物塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物塩、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、その重量平均分子量が1,000〜30,000であって、酸価が100〜430の範囲のものが好ましい。
【0033】
界面活性剤系分散剤としては、例えば、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ラウリルベンゼンカルボン酸塩、ラウリルナフタレンスルホン酸塩、脂肪族アミン塩、ポリエチレンオキサイド縮合物等が挙げられ、これらをいずれも使用することができる。これらの分散剤の使用量は、顔料の質量:分散剤の質量=10:5〜10:0.5の範囲とすることが好ましい。
【0034】
本実施形態において、例えば、特開平5−186704号公報や特開平8−3498号公報に記載されているような、カーボンブラックの表面に水溶性基を導入することにより自己分散が可能になったカーボンブラック顔料を、色材として使用することもできる。このような自己分散が可能なカーボンブラックを使用すれば、前記したような分散剤の使用が必ずしも必要でなくなるため、少なくとも分散剤の使用量を格段に低減させることができる。
【0035】
そして上記したような顔料インクが本形態にかかる液体組成物と接触すると、該液体組成物中の多価金属イオンの塩析作用等によって該顔料インク中の顔料の分散安定性が破壊され、顔料の分散状態が不安定化する。その結果、顔料インク中の顔料が速やかに凝集、沈殿し、顔料インク中の色材の被記録媒体への定着が高速化され、隣接して異色の2種以上のインクが付与された時にも、ブリードが生じ難くなるものと考えられる。そして、本形態においては、上記したような作用に基づく顔料の分散状態の不安定化も、また、着色インクと液体組成物との間の「反応」とみなす。
【0036】
次に、本実施形態にかかる着色インクに色材として染料を用いる場合には、水溶性染料が好適に用いられる。水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等、あらゆる染料を用いることができる。色材として染料を含む着色インクは、本形態にかかる液体組成物との接触によって、塩析効果による染料の析出や、2価金属イオンと染料との反応による水難溶性或いは水不溶性の塩又は化合物の形成、或いはこれらの作用の複合によって、着色インク中の染料の被記録媒体への定着が高速に進むものが好適に用いられる。そしてこのような着色インクに用いることのできる染料としては、本実施形態にかかるアルドン酸の多価金属塩を含有する液体組成物と接触した際に、該多価金属と反応して不溶性の塩又は化合物を形成しやすいので、少なくとも1つのカルボキシル基を有する染料が好ましい。具体的には、下記の例示化合物1〜30に挙げるような構造を有する染料を用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0037】
Figure 0004474059
【0038】
Figure 0004474059
【0039】
Figure 0004474059
【0040】
Figure 0004474059
【0041】
Figure 0004474059
【0042】
Figure 0004474059
【0043】
Figure 0004474059
【0044】
Figure 0004474059
【0045】
Figure 0004474059
【0046】
Figure 0004474059
【0047】
Figure 0004474059
【0048】
Figure 0004474059
【0049】
本実施形態にかかる着色インクに含まれる色材として、前記した染料及び顔料を1種類で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。また、これら染料及び顔料の濃度は、インク全量に対して0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
次に、本実施形態にかかる液体組成物、及びこれとともに用いる着色インクに用いられる液媒体について説明する。液媒体としては、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を用いることが好ましい。
【0050】
本実施形態で使用される水は、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが望ましい。また、水の含有量としては、インク全量に対して、35〜96質量%の範囲とすることが好ましい。水と混合して用いる水溶性有機溶剤としては、下記に挙げるような水溶性有機溶剤の中から、目的に併せて適宜に選択して使用すればよい。水溶性有機溶剤は、インクの粘度を使用上好ましい適当な粘度に調整できるため、インクの乾燥速度を遅らせたり、色材の溶解性を高め、記録ヘッドのノズルの目詰まりを防止する等の種々の目的で用いられる。
【0051】
水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類:ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−へキサントリオール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0052】
また、本実施形態にかかる着色インクのpH値を一定にしてインク中における染料の溶解性及び顔料の分散性を安定化させるために、着色インク中にpH調整剤を含有させてもよい。pH調整剤として、具体的には、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウム等の水酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム及び硫酸アンモニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウム等の炭酸塩、リン酸リチウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム等のリン酸塩、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及び酢酸アンモニウム等の酢酸塩等が挙げられる。
【0053】
これらの塩は、単独で着色インク中に添加して使用してもよいが、これらのうちの2種類以上の塩を併用するのが更に好ましい。また、pHを安定に保ち、着色インク中に含まれている水溶性染料の溶解安定性を高め、且つノズルの目詰まり等の問題を防止するために、これらの塩を好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは1〜8質量%添加する。
更に本実施形態にかかる液体組成物及びこれとともに用いる着色インクには、前記の成分の他に必要に応じて、従来公知の一般的な各種添加剤、例えば、粘度調整剤、防かび剤、防腐剤、酸化防止剤、消泡剤、尿素等のノズル乾燥防止剤を適宜併用することができる。
【0054】
また、本実施形態の液体組成物及びこれとともに用いる着色インクの物性の好適な範囲としては、インクジェット記録に特に好適な、25℃付近におけるpH値が、好ましくは3〜12、より好ましくは4〜10、表面張力が、好ましくは10〜60mN/m(dyn/cm)、より好ましくは15〜50mN/m(dyn/cm)、粘度が、好ましくは1〜30cps、より好ましくは1〜10cpsの範囲である。
【0055】
本実施形態にかかるインクジェット記録方法は、上記で説明したような構成を有する液体組成物と着色インクとを併用し、両者が接触し、反応するように被記録媒体上に付与して記録を行うインクジェット記録方法である。この際に使用する被記録媒体は、特に限定されるものではない。しかし、本実施形態にかかるインクジェット記録方法は、特に、従来から使用されている、コピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通紙に画像を形成する場合に、ブリード低減効果が顕著に現れるので好適である。
【0056】
また、画像を形成する際に被記録媒体上へ液体組成物と着色インクとを付与する順序は、液体組成物が先であっても、着色インクが先であってもいずれでもよい。また、着色インクを付与した後、液体組成物を付与し、更に着色インクを付与する方法でもよい。即ち、本実施形態においては、これらを付与する順番や方法によらず、液体組成物を、着色インクと接触せしめるように被記録媒体上に付与することによって、着色インクにより形成される画像の良好な文字品位、定着性、耐水性及びブリーディング抑制効果の向上が達成される。これは、被記録媒体上において、例えば、液体組成物中の多価金属イオンと着色インク中の顔料及び染料とが混合されることによって凝集、沈殿、或いは着色インクの増粘が生じるためと考えられる。
【0057】
特に、画像濃度及び定着性を更に向上させるという観点から、例えば、着色インクを付与した後に、液体組成物を付与し、更にそれに続いて再度着色インクの付与を行うことがより好ましい。また、例えば、液体組成物の付与を着色インクの付与に先立って行う場合に、液体組成物を被記録媒体に付着せしめてから、着色インクを付着させるまでの時間についても特に制限されるものではないが、本発明を一層効果的なものにするためには、数秒以内、特に好ましくは1秒以内である。これは、液体組成物と着色インクとを逆の順序で被記録媒体上に付与した場合についても同様である。また、図17に示すように液体組成物(804)と着色インク(805)とをインクジェット記録装置のそれぞれの記録ヘッド(801、802)から吐出し、吐出直後に混合(806)して被記録媒体(803)上へ付与してもよい。
【0058】
画像形成領域における着色インクと液体組成物との被記録媒体の単位面積当たりへの付与量の比は、1:1であってもよいが、着色インク:液体組成物=10:1〜10:10としてもよい。尚、画像形成領域における被記録媒体上の単位面積当たりの着色インクと液体組成物の付与量の調整は、具体的には、例えば、液体組成物と着色インクの付与をともにインクジェット記録方式で行い、被記録媒体上に付着させる液体組成物の画素数が、被記録媒体上に付着する着色インクの画素数の10〜100%の範囲となるように制御する方法、液体組成物と着色インクの付与をともにインクジェット記録方式で行い、その際に液体組成物の吐出量を着色インクの吐出量よりも小さくなるように制御して、被記録媒体上に付着する着色インクの吐出量の10〜100%の範囲となるようにする方法、或いはこれらを組み合わせた方法等によって行うことができる。
【0059】
本実施形態にかかる液体組成物と着色インクを被記録媒体上に付着せしめる方法としては、先に述べたようにインクジェット記録方法を用いることが好ましいが、インクジェット記録方法としては、従来公知の種々のインクジェット記録方式を用いることができる。本発明において好ましいのは、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法及び圧電素子の変形による機械的エネルギーを利用したインクジェット記録方法を用いることが好ましい。
【0060】
まず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置について図を用いて以下に説明する。熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を図1及び図2に示す。図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は、図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13は、インクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン、ポリサルホン又はプラスチック板等と、発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16−1、白金等の金属又は白金の酸化物等の金属の酸化物、好ましくはタンタル又はタンタルの酸化物等で形成される最表面保護層16−2、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、ハフニウムボライド、窒化タンタル、タンタルアルミニウム等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20よりなっている。
【0061】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域(ヒーター)が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、被記録媒体25に向かって飛翔する。図3には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0062】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、また、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0063】
62は、記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって、吐出口面の水分や塵埃等の除去が行われる。
【0064】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は、記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部は、モーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0065】
51は、被記録媒体を挿入するための紙給部、52は、不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により、記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ被記録媒体が給紙され、記録が進行するにつれて排紙ローラー53を配した排紙部へと排紙される。以上の構成において、記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0066】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は、上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0067】
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0068】
本実施形態にかかるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示したような、それらが一体になったものでもよい。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、ポリウレタンを用いることが好ましい。また、インク吸収体を用いずに、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72は、カートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4に示したような記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0069】
上記と別の形態のインクジェット記録装置としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成例を図7に示した。
【0070】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を支持固定するための基体84とから構成されている。
【0071】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81には、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工等による穴あけにより吐出口85が形成されている。また、振動板82は、ステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成されている。
【0072】
以上のような構成を有する記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与えることで、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板82を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧し、インク滴(不図示)をオリフィスプレートの吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0073】
本実施形態にかかるインクジェット記録方法によってカラー画像を形成する場合には、例えば、図3に示したような記録ヘッドを5つキャリッジ(96)上に並べた記録装置を使用する。図8はその一例である。91、92、93、94は、夫々イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック各色のインクを吐出するための記録ヘッドである。また、95は液体組成物を吐出するヘッドである。該ヘッドは、前記した記録装置に配置され、記録信号に応じて、各色のインクを吐出する。また、液体組成物は、例えば、キャリッジを矢印方向に移動させ、少なくとも着床インクが被記録媒体に付着する画像形成部分に予め付着させておく。
【0074】
図8では記録ヘッドを5つ使用した例を示したが、これに限定されるものではなく、図9に示したように1つの記録ヘッドで、イエロー101、マゼンタ102、シアン103及びブラック104の着色インクと、液体組成物105とを液流路を分けて行う場合も好ましい。勿論、各インクと液体組成物の記録順が、上記した順序と逆になるようなヘッドの配置をとってもよい。
【0075】
本実施形態で好適に使用されるインクジェット記録ヘッドの配置の具体的な構成例としては、図10〜12に示したような3種が挙げられる。図10〜12において、111〜114、121〜124及び131〜134は、夫々、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各色のインクを吐出するための記録ヘッドである。また、115、125及び135は液体組成物(S)を吐出するための記録ヘッドである。各記録ヘッドは、図8で示したようにキャリッジ上に並べられる(構成例によって異なる)。各記録ヘッドは前記したような記録装置に配置され、記録信号に応じて、各色のインクを吐出する。また、液体組成物はそれに先立ち或いは後に、少なくとも各色のインクが被記録媒体に付着する画像領域に付着させる。尚、各記録ヘッドは矢印(1)の方向にキャリッジによって移動し、被記録媒体は矢印(2)方向に給紙ローラー等によって移動する。
【0076】
先ず、図10の第1の構成例では、S(115)、Bk(114)、Y(113)、M(112)、C(111)用の記録ヘッドが並列にキャリッジ上に配置されている。図11の第2の構成例は、並列に配置された液体組成物(125)及びブラックインク(124)用の記録ヘッドと、これらの記録ヘッドとは並列で、且つ互いに直列に配置されたY(123)、M(122)、C(121)用の記録ヘッドとからなる。ここで、各記録ヘッドの1ドットあたりの吐出体積は、必ずしも同一である必要はなく、液体組成物の組成等により、記録適性が最適になるように、各記録ヘッドの1ドットあたりの吐出体積(Vd)を調整してもよい。好適には、S、Y、M、CのVdを同一にしてBkをその2倍とする構成がよいが、これに限定されない。図12に示した第3の構成例では、吐出体積が同一の、Bk(134)、S(135)、Bk(134)、Y(133)、M(132)、C(131)用の記録ヘッドが並列にキャリッジ上に配置されており、ブラックインクの吐出量を、他の液体組成物及びカラーインクの吐出量の倍量とすることができる。
【0077】
[第2の実施形態]
次に、本発明の具体的な第2の実施形態として、アルドン酸の多価金属塩と色材とを含むカラーインクと、該多価金属と反応する色材を含むブラックインクとから構成されるインクジェット記録用インクセットを使用する場合について説明する。
【0078】
本実施形態では、カラーインクとブラックインクとを被記録媒体上において接触状態を形成するよう付与して記録を行なう。また、本実施形態にかかるインクセットでは、ブラックインクとカラーインクとの間のブリード防止を目的としており、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク等のカラーインク同士のブリード防止に対しては特に処置をしてないが、カラーインクに対してサイジングされた普通紙に対しても速い浸透性を持たせるように、例えば、カラーインクに界面活性剤を添加する等のインク設計をすれば、カラーインク間のブリード防止にも効果的である。
【0079】
先ず、本実施形態にかかるインクセットを構成するカラーインクについて説明する。本実施形態で使用するカラーインクは、色材、液媒体及びアルドン酸の多価金属塩を含む。アルドン酸の多価金属塩については上記第1の実施形態で詳述した通りである。
【0080】
次に、本実施形態にかかるインクセットを構成するカラーインクに含有される色材について説明する。色材としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料及び顔料が挙げられるが、アルドン酸の多価金属塩と調合された時にも、反応せずに可溶性が維持される色材であることが好ましい。このような色材として、具体的には、
【0081】
C.I.アシッドイエロー23;C.I.アシッドレッド52、289;C.I.アシッドブルー9;C.I.リアクティブレッド180;C.I.ダイレクトブルー 189、199;C.I.ベーシックイエロー 1、2、11、13、14、19、21、25、32、33、36、51;C.I.ベーシックオレンジ 2、15、21、22;C.I.ベーシックレッド 1、2、9、12、13、37、38、39、92;C.I.ベーシックバイオレット 1、3、7、10、14;C.I.ベーシックブルー 1、3、5、7、9、19、24、25、26、28、29、45、54、65;C.I.ベーシックグリーン 1、4;C.I.ベーシックブラウン 1、12;C.I.ベーシックブラック 2、8等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの水溶性染料は、1種類で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの水溶性染料の濃度は、インク全量に対して0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
【0082】
本実施形態にかかるインクセットを構成するカラーインク中には、上記で述べた成分の他に、各カラーインク中に夫々、少なくとも1種の界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤を含有させることによって、カラーインクに所望の浸透性及び粘度を付与することができ、インクジェット記録用インクに要求される性能をより一層満足させることができる。即ち、先に述べたように、カラーインクに界面活性剤を添加することで、普通紙に対しても速い浸透性を有するようになり、カラーインク間のブリード防止に効果的である。
【0083】
上記界面活性剤のカラーインク中の添加量については特に制限はないが、所望の浸透性が得られ、適当なインク粘度を得るためにはインク全質量の0.01〜10%の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0%の範囲である。
【0084】
次に、本実施形態にかかるインクセットを構成するブラックインクについて説明する。本実施形態で使用するブラックインクには、アルドン酸の多価金属塩と反応する色材と液媒体とが含まれる。ブラックインクの色材としては、上記第1の実施形態の着色インクに使用し得るブラックの色材が使用できる。これらの色材は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの色材の添加量は、インク全量に対して0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0085】
更にブラックインク中にノニオン性界面活性剤を添加させることがより好ましい。ノニオン性界面活性剤を添加することで、ブラックインクとカラーインク間のブリーディングがより一層抑制されるとともに、下記に説明するように、ブラックインクとカラーインクとの境界部におけるブラックインクの濃度の低下、所謂、「白もや」の発生を抑制できるという効果も得られる。
【0086】
本実施形態にかかるインクセットに用いられるカラーインクには、先に述べたように、界面活性剤が含有されていることが好ましく、普通紙等の被記録材への浸透性が高く、表面張力が低いものが多い。そして、このような表面張力が低いカラーインクと表面張力の高いブラックインクが隣接すると、ブラックインクとカラーインクの隣接界面に色材が少ない領域が生じてしまい、「白もや」と呼ばれる現象が発生する場合がある。そこで、ブラックインクにノニオン性界面活性剤を添加させ、表面張力を低下させれば、上記の「白もや」現象を効果的に抑制させることが可能となる。
【0087】
本実施形態において、ブラックインク中に含有させるノニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定はないが、ブラックインクとカラーインク間のブリーディング抑制の向上が図れ、白もやの発生を効果的に抑制でき、且つインク吐出性や印字品位を良好に保つために、インク全質量の0.1〜0.5%の範囲とすることが好ましく、特に好ましくは0.2〜0.4%の範囲である。
【0088】
本実施形態にかかるブラックインクに含まれるノニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪族エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステル、アルカノールアミンの脂肪酸アミド類等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのものはいずれも好ましく使用されるが、より好ましくは、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物等のノニオン性界面活性剤を用いるとよい。更に好ましくは、上記エチレンオキサイド付加物の付加モル数が4〜20の範囲のものである。
【0089】
本実施形態にかかるインクセットを構成するブラックインク及びカラーインクに用いる液媒体としては、上記第1の実施形態の液体組成物、及びこれとともに用いられる着色インクに用いられる液媒体として詳述した水溶性有機溶剤、添加剤、添加量、物性値等を用いることができる。
【0090】
次に、本実施形態にかかるインクジェット記録方法及びこれを実現し得る本実施形態にかかる記録装置について説明する。
本実施形態にかかるインクジェット記録方法は、インクに吐出させるためのエネルギーを付与してインクを吐出し、被記録材にカラー画像を記録するインクジェット記録方法において、インクに前記した本実施形態にかかるインクジェット記録用インクセットを使用することを特徴とする。この際に使用する被記録材は、特に限定されるものではない。しかし、本実施形態にかかるインクジェット記録方法は、特に、従来から使用されているコピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通紙に画像を形成した場合に、ブラックインクとカラーインク間のブリード低減効果が顕著に現れる。勿論、本実施形態にかかるインクジェット記録方法は、例えば、インクジェット記録用に特別に作成されたコート紙やOHP用透明フィルムも好適に使用できる。更に一般の上質紙や光沢紙にも好適に使用することができる。
【0091】
また、本実施形態にかかるインクジェット記録方法において、ブラックインクとカラーインクとを被記録材上へ付与する方法としては、ブラックインクとカラーインクとが境界で接するように付与する方法が挙げられる。
他の形態として、ブラックインクとカラーインクとを被記録材上において重なるように付与し、且つカラーインクの被記録材への付与をブラックインクに先立って行う方法(以下、下打ち方法と呼ぶ)が挙げられる。このような下打ち方法を行うことで、ブラックインクとカラーインク間のブリード抑制の更なる向上が図られ、更に先に説明した「白もや」の軽減や耐水性の向上も図られる。上記の下打ち方法において、カラーインクを被記録材に付着せしめてからブラックインクを付着させるまでの時間についても特に制限されるものではないが、本発明を一層効果的なものにするためには、数秒以内、特には1秒以内とすることが好ましい。また、ブラックインクを付与した後、カラーインクを付与する(上打ち)、或いは図17に示すようにカラーインクとブラックインクを吐出直後に混合する形態もある。
【0092】
また、下打ち方法において、画像形成領域におけるブラックインクとカラーインクとの被記録材上の単位面積当たりの付与量の比は、1:1であってもよいが、ブラックインク:カラーインク=10:1〜10:10としてもよい。このようにすれば、得られる画像の白もやが軽減されて、ベタ均一性が達成される。尚、画像形成領域における被記録材上の単位面積当たりのブラックインクとカラーインクの付与量の調整は、具体的には、例えば、下記に挙げる各種の方法によって行なうことができる。即ち、被記録材上に付着させるカラーインクの画素数が、被記録材上に付着するブラックインクの画素数の10〜100%の範囲となるように制御する方法、ブラックインクとカラーインクの付与をともにインクジェット記録方式で行い、その際にカラーインクの吐出量をブラックインクの吐出量よりも小さくなるように制御する方法、或いはこれらを組み合わせて、被記録材上に付着させるカラーインクの画素数が被記録材上に付着するカラーインクとブラックインクの画素数の10〜100%の範囲となるように制御し、且つカラーインクとブラックインクの被記録材上への付与をともにインクジェット記録方式によって行い、その際のカラーインクの吐出量をブラックインクの吐出量よりも小さくする方法等が挙げられる。
【0093】
本発明では、ブラックインクとカラーインクとを被記録材上に付着せしめる方法として、インクジェット記録方法を用いるが、インクジェット記録方法としては、従来公知の種々のインクジェット方式を用いることができる。本発明において特に好ましいのは、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法及び圧電素子の変形による機械的エネルギーを利用したインクジェット記録方法である。熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置については上記第1の実施形態に詳述した通りである。
【0094】
本実施形態にかかるインクジェット記録方法によってカラー画像を形成する場合には、例えば、図3に示した記録ヘッドを4つキャリッジ(146)上に並べた記録装置を使用する。図13はその一例である。141、142、143、144は、夫々、ブラックインク(Bk)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)及びシアンインク(C)のインクを吐出するための記録ヘッドである。該ヘッドは前記した記録装置に配置され、例えば、キャリッジを矢印方向に移動させながら、記録信号に応じて各色のインクを吐出する。
【0095】
図13では4個の記録ヘッドを使用した例を示したが、これに限定されるものではなく、図14に示したように、1つの記録ヘッドで、ブラックインク154、イエローインク151、マゼンタインク152及びシアンインク153の液流路を分けて行う場合も好ましい。
【0096】
本実施形態で好適に使用されるインクジェット記録ヘッドの配置の具体的な構成例としては、図15及び図16に示したような2種が挙げられる。図15及び図16において、161〜164及び171〜174は、夫々イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各種のインクを吐出するための記録ヘッドである。各記録ヘッドは、図13で示したと同様にキャリッジ上に並べられる(構成例によって異なる)。各記録ヘッドは、前記したようなインクジェット記録装置に配置され、記録信号に応じて、各種のインクを吐出する。尚、各記録ヘッドは矢印(1)の方向にキャリッジによって移動し、被記録材は矢印(2)の方向に給紙ローラー等によって移動する。
【0097】
先ず、図15に示した構成例では、Bk(164)、Y(163)、M(162)、C(161)用の記録ヘッドが並列にキャリッジ上に配置されている。図16に示した他の構成例では、ブラックインク(174)用の記録ヘッドと、この記録ヘッドとは並列で、且つ互いに直列に配置されたY(173)、M(172)、C(171)用の記録ヘッドとからなる。尚、図15において、キャリッジを固定し、被記録材を矢印(2)方向に給紙ローラー等によって移動させるようにした、所謂ラインプリンタに適用してもよい。
【0098】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
[第1の実施形態の実施例及び比較例]
(実施例1〜33及び比較例1〜11)
各々の液体組成物及び着色インクは、下記に挙げる成分を用いた。作製方法としては、液体組成物、及び染料を色材とする着色インクについては、下記の成分を溶解した後、更にポアサイズが0.2μmのミクロフィルター(富士写真フィルム(株)製)を用いて加圧濾過して、夫々の液体組成物及び着色インクを調製した。顔料を色材とする着色インクの場合は、先ず、夫々の方法で顔料分散液を作製した後、得られた分散液を液媒体等と混合した後、ポアサイズが3μmのミクロフィルター(住友電工(株)製)を用いて加圧濾過して、夫々の顔料インクを調製した。
【0099】
下記成分を溶解した後、更にポアサイズが0.2μmのミクロフィルター(富士写真フィルム(株)製)を用いて加圧濾過し、液体組成物1〜4を調製した。尚、液体組成物4は比較例に相当する。
Figure 0004474059
【0100】
Figure 0004474059
【0101】
Figure 0004474059
【0102】
Figure 0004474059
【0103】
<ブラックインク1の調製>
(顔料分散液1の作成)
市販の酸性カーボンブラック「MA77」(pH3;三菱化学(株)製)300gを水1,000mlによく混合した後、これに次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)450gを滴下して、100〜105℃で10時間攪拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、顔料粒子を十分に水洗した。この顔料ウェットケーキを水3,000mlに再分散し、電導度0.2μsまで逆浸透膜で脱塩した。更にこの顔料分散液(pH=8〜10)を顔料濃度10質量%に濃縮した。以上の方法により、カーボンブラックの表面に−COONa基を導入した自己分散性のカーボンブラックを含有する顔料分散液1を得た。
【0104】
(インクの調製)
上記で得られた顔料分散液1を含む下記の組成を混合して、更にポアサイズ3μmのミクロフィルター(住友電工(株)製)を用いて加圧濾過して、ブラックインク1を調製した。
・顔料分散液1 40部
・グリセリン 8部
・トリメチロールプロパン 5部
・イソプロピルアルコール 4部
・水 43部
【0105】
Figure 0004474059
【0106】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂成分を完全に溶解させる。この溶液にカーボンブラック「MA−100」(pH3.5;三菱化学(株)製)15部、2−プロパノール5部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグライダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積)
・粉砕時間:3時間
更に遠心分散処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去してカーボンブラックの顔料分散液2とした。
【0107】
(インクの調製)
上記で得られた顔料分散液2を含む下記の組成を混合して、更にポアサイズ3μmのミクロフィルター(住友電工(株)製)を用いて加圧濾過して、ブラックインク2を調製した。
Figure 0004474059
【0108】
<ブラックインク3の調製>
下記成分を溶解した後、更にポアサイズが0.2μmのミクロフィルター(富士写真フィルム(株)製)を用いて加圧濾過し、ブラックインク3を調製した。
・例示化合物1(MはNH4 +) 2部
・ジエチレングリコール 10部
・2−ピロリドン 5部
・2−プロパノール 5部
・水酸化ナトリウム 0.1部
・水 77.9部
【0109】
Figure 0004474059
【0110】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させた。この溶液に、C.I.ピグンメントイエロー93を20部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行なった。
・分散機:サンドグラインダー
・粉砕メディア:ガラスビーズ1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積)
・粉砕時間:3時間
更に遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液3とした。
【0111】
(インクの調製)
上記で得られた顔料分散液3を含む下記の組成を混合して、更にポアサイズ3μmのミクロフィルター(住友電工(株)製)を用いて加圧濾過して、イエローインク1を調製した。
Figure 0004474059
【0112】
<イエローインク2の調製>
下記成分を溶解した後、更にポアサイズが0.2μmのミクロフィルター(富士写真フィルム(株)製)を用いて加圧濾過し、イエローインク2を調製した。
・例示化合物2(MはNH4 +) 3部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 5部
・尿素 5部
・エタノール 2部
・水 78部
【0113】
Figure 0004474059
【0114】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させた。この溶液にC.I.ピグメントレッド122を20部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行なった。
・分散機:サンドグラインダー
・粉砕メディア:ガラスビーズ1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積)
・粉砕時間:3時間
更に遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液4とした。
【0115】
(インクの調製)
上記で得られた顔料分散液4を含む下記の組成を混合して、更にポアサイズ3μmのミクロフィルター(住友電工(株)製)を用いて加圧濾過して、マゼンタインク1を調製した。
Figure 0004474059
【0116】
<マゼンタインク2の調製>
下記成分を溶解した後、更にポアサイズが0.2μmのミクロフィルター(富士写真フィルム(株)製)を用いて加圧濾過し、マゼンタインク2を調製した。
・例示化合物3(MはNH4 +) 3部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 5部
・尿素 5部
・エタノール 2部
・水 88部
【0117】
Figure 0004474059
【0118】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させた。この溶液にC.I.ピグメントブルー15:3を20部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行なった。
・分散機:サンドグラインダー
・粉砕メディア:ガラスビーズ1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積)
・粉砕時間:3時間
更に遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0119】
(インクの調製)
上記で得られた顔料分散液5を含む下記の組成を混合して、更にポアサイズ3μmのミクロフィルター(住友電工(株)製)を用いて加圧濾過して、シアンインク1を調製した。
Figure 0004474059
【0120】
<シアンインク2の調製>
下記成分を溶解した後、更にポアサイズが0.2μmのミクロフィルター(富士写真フィルム(株)製)を用いて加圧濾過し、シアンインク2を調製した。
・例示化合物4(MはNH4 +) 3部
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 5部
・尿素 5部
・エタノール 2部
・水 78部
【0121】
<評価及び評価基準>
(インク評価試験)
評価試験について以下に示す。
上記で得られた各着色インクと各液体組成物とを、表1に示した組み合わせを用いて、記録紙に記録を行った。使用したインクジェット記録装置としては、図4に示したと同様の構成の記録装置を用い、図8に示した5つの記録ヘッドの内の2つの記録ヘッドを用いて画像を形成した。この際、液体組成物を先に打ち、先ず記録紙上に付着させ、その後着色インクを付着させる構成とした。記録紙上への液体組成物を付与する位置が、記録紙上へ着色インクが付与される位置と正確に重なるように調整した。尚、ここで用いた記録ヘッドは、360dpiの記録密度を有し、駆動周波数は5kHzとした。また、1ドットあたりの吐出体積は着色インクは80pl/dot、液体組成物は40pl/dotのヘッドを使用した。また、記録紙はPB用紙(キヤノン株式会社製:複写機用とインクジェット記録用の共用紙)、XEROX 4024紙(ゼロックス株式会社製)を使用した。
【0122】
1.耐水性
各着色インクと液体組成物とを夫々表1に示した組み合わせで用いて、印字して、印字物を1時間放置後、印字濃度をマクベスRD915(商品名:マクベス社製)にて測定を行う。その後、印字物を水道水を満たした容器に3分間浸漬した後、放置し、乾燥して再度印字濃度を測定し、下記式より印字物濃度の残存率を求め、耐水性の評価とした。印字濃度の残存率が95%以上であることが実用上好ましい。評価結果を表1に示した。
【0123】
Figure 0004474059
A:印字物濃度の残存率が95%以上。
B:印字物濃度の残存率が85%以上95%未満。
C:印字物濃度の残存率が85%未満。
【0124】
2.印字品質(滲み)
同様の方法で英数文字(12ポイント)を印字し、1時間放置した後、目視で文字のシャープさや文字より発生するヒゲ状の滲みの度合いを評価した。評価結果を表1に示した。
A:文字がシャープでヒゲ状の滲みもない。
B:文字にシャープさがなく、滲みも少し発生。
C:文字にシャープさがなく、滲みも多い。
【0125】
Figure 0004474059
【0126】
3.ブリード
上記の普通紙2紙に、表2に示した組み合わせの液体組成物と各着色インクとからなるインクセットを用い、先ず、インクセット中のブラックインクでベタ部を印字し、その直後に、それと隣接するようにイエロー、又はマゼンタ、又はシアンインクで各色のインクのベタ部を印字した。次に、上記と同様にして、イエローインクでベタ部を印字し、その直後に、それと隣接するようにブラック、又はマゼンタ、又はシアンインクで各色のインクのベタ部を印字した。また、次に、上記と同様にして、マゼンタインクでベタ部を印字し、その直後に、それと隣接するようにブラック、又はイエロー、又はシアンインクで各色のインクのベタ部を印字した。更に上記と同様にして、シアンインクでベタ部を印字し、その直後にそれと隣接するようにブラック、又はマゼンタ、又はイエローインクで各色のインクのベタ部を印字した。以上のようにして得られたベタ印字の境界部分を目視にて観察して、各着色インクとの間のブリーディングの評価を行った。評価基準は以下の通りとし、この評価結果を表2に示す。
A:全ての境界部でブリーディングが認められない。
B:僅かにブリーディングが見られるが、あまり気にならない。
C:殆ど全ての境界部でブリーディングがひどい。
【0127】
Figure 0004474059
【0128】
[第2の実施形態の実施例及び比較例]
(実施例34〜37及び比較例12〜15)
ブラックインク及びイエロー、マゼンタ、シアンの各カラーインクを組み合わせて実施例34〜37及び比較例12〜15のインクセットを作製した。各々のインクは、下記に挙げる夫々の成分を用いて以下の方法で作製した。各インクセットを構成するブラックインクについては、上記で得られたカーボンブラック分散液1及び2を用い、下記に挙げた各成分とを混合した後、ポアサイズが3μmのミクロフィルター(住友電工(株)製)を用いて加圧濾過して作製した。また、各インクセットを構成するカラーインクについては、下記に示す各成分を混合し、充分に攪拌して溶解させた後、ポアサイズが0.2μmのミクロフィルター(富士写真フィルム(株)製)を用いて加圧濾過して、夫々のカラーインクを調製した。表3に、実施例34〜37及び比較例12〜15のインクセットの主な組成を示した。
【0129】
<実施例34のインクセット>
ブラックインク
・顔料分散液1 40部
・グリセリン 8部
・トリメチロールプロパン 5部
・イソプロピルアルコール 4部
・水 43部
【0130】
Figure 0004474059
【0131】
Figure 0004474059
【0132】
Figure 0004474059
【0133】
Figure 0004474059
【0134】
Figure 0004474059
【0135】
Figure 0004474059
【0136】
Figure 0004474059
【0137】
Figure 0004474059
【0138】
Figure 0004474059
【0139】
Figure 0004474059
【0140】
Figure 0004474059
【0141】
<実施例37のインクセット>
ブラックインク
・例示化合物1(MはNH4 + ) 2部
・グリセリン 8部
・トリメチロールプロパン 5部
・イソプロピルアルコール 4部
・水酸化ナトリウム 0.2部
・水 80.8部
【0142】
Figure 0004474059
【0143】
Figure 0004474059
【0144】
Figure 0004474059
【0145】
<比較例12のインクセット>
ブラックインク
・顔料分散液1 40部
・グリセリン 8部
・トリメチロールプロパン 5部
・イソプロピルアルコール 4部
・水 43部
【0146】
Figure 0004474059
【0147】
Figure 0004474059
【0148】
Figure 0004474059
【0149】
Figure 0004474059
【0150】
Figure 0004474059
【0151】
Figure 0004474059
【0152】
Figure 0004474059
【0153】
Figure 0004474059
【0154】
Figure 0004474059
【0155】
Figure 0004474059
【0156】
Figure 0004474059
【0157】
<比較例15のインクセット>
ブラックインク
・例示化合物1(MはNH4 +) 2部
・グリセリン 8部
・トリメチロールプロパン 5部
・イソプロピルアルコール 4部
・水 81部
【0158】
Figure 0004474059
【0159】
Figure 0004474059
【0160】
Figure 0004474059
【0161】
Figure 0004474059
【0162】
<評価方法及び評価基準>
上記で得られた実施例34〜37及び比較例12〜15のインクセットの各インクを、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であるカラーインクジェットプリンター(BJC−700J:キヤノン(株)製)に夫々搭載し、以下の1.及び2.についての評価を行った。評価試験の用紙には、PB用紙(キヤノン株式会社製:複写機用とインクジェット記録用の共用紙)、XEROX 4024紙(ゼロックス株式会社製)の普通紙2紙を用いた。得られた結果を、表4に示した。
【0163】
1.ブラックインクとカラーインクとの間のブリーディング
上記の普通紙2紙に各インクセット中のブラックインクでベタ部を印字し、その直後にそれと隣接するように、イエロー、又はマゼンタ、又はシアンインクで各色のインクのベタ部を印字した。得られたベタ印字の境界部分を目視にて観察して、ブラックインクとカラーインクとの間のブリーディングの評価を行った。評価基準は以下の通りとした。
A:全ての境界部でブリーディングが認められない。
B:若干のブリーディングが見られる。
C:殆ど全ての境界部でブリーディングがひどい。
【0164】
2.ブラックインクとカラーインクとの隣接境界部におけるブラックインク部の濃度(白もやの発生)
上記の普通紙2紙に各インクセットでブラックインクでベタ部を印字し、その直後にそれと隣接するように、イエロー、又はマゼンタ、又はシアンインクでベタ部を印字し、ブラックインクとの隣接境界部における白もやの発生を目視にて観察して評価した。評価基準は以下の通りとした。
A:境界部におけるブラックインク部の濃度の低下は見られず、白もやは発生していない。
B:境界部のブラックインク部の濃度が低下し、白もやが発生しているのがわかるが、実用上問題ない程度である。
C:境界部のブラックインク部の濃度の低下がひどく、白もやの発生が著しい。
【0165】
(実施例38〜41及び比較例16〜19)
更に実施例34〜37、及び比較例12〜15のインクセットを夫々用い、ブラックインクとカラーインクを被記録材上の同じ位置に付与し、且つカラーインクの被記録材への付与をブラックインクに先立って行う下打ち方法で画像を作成した。この実施例34〜37のインクセットを用いた下打ち方法によるインクジェット記録方法を実施例38〜41とし、比較例12〜15のインクセットを用いた下打ち方法によるインクジェット記録方法を比較例16〜19とした。実施例38〜41及び比較例16〜19におけるブラックインクとカラーインクとの被記録材の単位面積当たりの付与量の比は、ブラックインク:カラーインク=10:2.5とした。評価結果を表4に示した。
【0166】
Figure 0004474059
【0167】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、インクジェット記録方法を用いて、ブリードが抑制された高品位な画像を得るための液体組成物及びインクジェト記録用インクセット、インクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置が得られる。更に耐水性にも優れた画像を得るための、液体組成物、インクジェト記録用インクセット、インクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す縦断面図。
【図2】 インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す横断面図。
【図3】 図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図。
【図4】 インクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図。
【図5】 インクカートリッジの一例を示す縦断面図。
【図6】 記録ユニットの一例を示す斜視図。
【図7】 圧電素子のエネルギーを利用したインクジェット記録ヘッドの構成の一例を示す概略断面図。
【図8】 複数の記録ヘッドが配列した記録部を示した斜視図。
【図9】 本発明に使用する別の記録ヘッドの斜視図。
【図10】 記録ヘッドの第1の構成例を示す図。
【図11】 記録ヘッドの第2の構成例を示す図。
【図12】 記録ヘッドの第3の構成例を示す図。
【図13】 複数の記録ヘッドが配列した記録部を示した斜視図。
【図14】 本発明に使用する別の記録ヘッドの斜視図。
【図15】 記録ヘッドの第4の構成例を示す図。
【図16】 記録ヘッドの第5の構成例を示す図。
【図17】 本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録方法の概略図。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:インク溝
15:発熱素子基板
16−1:保護膜
16−2:最表面保護膜
17−1,17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス
23:メニスカス
24:インク小滴
25:被記録媒体
26:マルチ溝
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
43:キャリッジ
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キヤリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:駆動ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部71
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基体
85:吐出口
91:イエローインク記録ヘッド
92:マゼンタインク記録ヘッド
93:シアンインク記録ヘッド
94:ブラックインク記録ヘッド
95:液体組成物記録ヘッド
96:キヤリッジ
101:イエローインク流路
102:マゼンタインク流路
103:シアンインク流路
104:ブラックインク流路
105:液体組成物流路
111:イエローインク記録ヘッド
112:マゼンタインク記録ヘッド
113:シアンインク記録ヘッド
114:ブラックインク記録ヘッド
115:液体組成物記録ヘッド
121:イエローインク記録ヘッド
122:マゼンタインク記録ヘッド
123:シアンインク記録ヘッド
124:ブラックインク記録ヘッド
125:液体組成物記録ヘッド
131:イエローインク記録ヘッド
132:マゼンタインク記録ヘッド
133:シアンインク記録ヘッド
134:ブラックインク記録ヘッド
135:液体組成物記録ヘッド
141:ブラックインク記録ヘッド
142:イエローインク記録ヘッド
143:マゼンタインク記録ヘッド
144:シアンインク記録ヘッド
145:キヤリッジ
151:イエローインク流路
152:マゼンタインク流路
153:シアンインク流路
154:ブラックインク流路
161:イエローインク記録ヘッド
162:マゼンタインク記録ヘッド
163:シアンインク記録ヘッド
164:ブラックインク記録ヘッド
171:イエローインク記録ヘッド
172:マゼンタインク記録ヘッド
173:シアンインク記録ヘッド
174:ブラックインク記録ヘッド
801:液体組成物記録ヘッド
802:着色インク記録ヘッド
803:被記録媒体
804:液体組成物
805:着色インク
806:液体組成物と着色インクの混合状態

Claims (5)

  1. 着色インクとともに使用され、該着色インクと接触すると反応を生じるインクジェット記録用液体組成物であって、アルドン酸の多価金属塩と液媒体とを含み、
    前記アルドン酸の多価金属塩が、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸バリウム、グルコン酸鉄(II)、グルコン酸銅(II)、グルコン酸亜鉛及びグリセリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする液体組成物。
  2. アルドン酸の多価金属塩の総含有量が、液体組成物全量に対して0.005〜20質量%である請求項1に記載の液体組成物。
  3. (i)請求項1又は2に記載の液体組成物及び着色インクにエネルギーを付与して各々を被記録媒体に向けて吐出する工程;及び
    (ii)被記録媒体上に、該液体組成物と該着色インクとの接触状態を形成せしめる工程、
    を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
  4. 液体組成物の被記録媒体上への付与を、着色インクの被記録媒体上への付与に先立って行う請求項に記載のインクジェット記録方法。
  5. (1)請求項1又は2に記載の液体組成物と、(2)色材と液媒体とを含み、且つ該液体組成物との接触によって該液体組成物と反応する着色インク、
    とを組み合わせてなることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
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