JP2007254708A - 変性セルロースアシレートおよび光学用成形体 - Google Patents

変性セルロースアシレートおよび光学用成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】光学的等方性に優れ、光学フィルムなどに好適に利用できる変性セルロースアシレート(例えば、変性セルロースアセテートなど)を提供する。
【解決手段】セルロースアシレート(セルロースアセテートなど)と、このセルロースアシレートのヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分(乳酸などのヒドロキシ酸、ラクトン、ラクチドなどの環状エステルなど)がグラフト重合して形成されたグラフト鎖とを有するヒドロキシ酸変性セルロースアシレートにおいて、前記セルロースアシレートのアシル基の置換度を2.7以上とするとともに、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合をセルロースアシレートのグルコース単位1モルに対してヒドロキシ酸換算で平均0.1〜5モルとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学用途(例えば、光学フィルムなど)などとして有用なヒドロキシ酸変性セルロースアシレート(例えば、ヒドロキシ酸変性セルロースアセテート)、およびこの変性セルロースアシレートで形成された光学用成形体(例えば、光学フィルムなど)に関する。
セルロースエステル(セルロースアシレート)は光学的特性に優れるため、写真感光材料の支持体、液晶表示装置の偏光板保護フィルム、位相差フィルムやカラーフィルタなどの光学用成形体に利用されている。
セルロースエステルのうち、光学フィルムに用いられるアシルセルロースとして、アシル基の置換度が大きいセルロースアシレート(例えば、セルロースアセテート(セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートアシレート)が広く用いられており、特に、光学的等方性を付与するためにはセルローストリアセテートが用いられている。
このようなセルローストリアセテートは、熱成形に不向きであり、塩化メチレンなどの限定された溶媒を用いた成形法によりフィルム成形されている。例えば、特開平11−5851号公報(特許文献1)には、2位、3位及び6位のアセチル置換度の合計が2.67以上(例えば、2.77以上)であり、かつ2位及び3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であるセルロースアセテートを含むフィルムが開示されている。この文献には、上記セルロースアセテートを用いると冷却溶解法により、非ハロゲン系溶媒を使用しても、安定な溶液を調製でき、流延法により厚み方向のレタデーション値が小さく偏光板保護膜として適したフィルムが得られることが記載されている。
一方、このようなセルロースエステルの光学的特性は、吸湿による変形、剥離、屈折率の変化などを伴って低下する。このため、カーナビゲーションのように車内で高温高湿に曝される場合には無論のこと、一般的な家庭での使用でも、耐湿性(又は耐湿熱性)が要求される。しかし、セルローストリアセテートは、吸湿性又は吸水性が大きく、耐湿性が十分でない。また、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどは、セルローストリアセテートに比べて幾分か吸水性が低いものの、未だ疎水性が十分でなく、耐湿性が十分でない。
一方、セルロースアシレートをヒドロキシカルボン酸や環状エステル(ラクチド、ラクトンなど)により変性する技術も報告されている。例えば、特開昭60−188401号公報(特許文献2)には、遊離水酸基を有する脂肪酸セルロースエステル(セルロースアセテートなど)に対してその無水グルコース単位あたり0.5〜4.0モルの環状エステル(ε−カプロラクトンなど)を付加させて得られる脂肪酸セルロースエステル系熱可塑性成形材料が開示されている。この文献には、内部可塑化により、多量の可塑剤を添加することなく、射出成形、押出成形などにより成形加工でき、シート、フィルムなどの成形品に使用できることも記載されている。なお、この文献では、実施例において、アセチル置換度が最高で2.25のε−カプロラクトン付加セルロースアセテートを得たことが記載されている。しかし、このようなアセチル置換度が低いセルロースアセテートは、耐湿性に乏しく、また、光学的特性の点でもアセチル置換度が高いものに比べて劣る。また、この文献の方法では、環状エステルの付加反応において、アシル基の加水分解が生じるためか、生成物として環状エステル付加脂肪酸セルロースエステルのアシル置換度が、原料となる脂肪酸セルロースエステルのアシル置換度に比べて低下し、所望のアシル置換度の環状エステル付加物を得ることが困難であり、さらにはアシル置換度の低下により前記のように光学的特性を低下させる虞がある。
また、特開平6−287279号公報(特許文献3)には、ラクタイド(A)とセルロースエステルまたはセルロースエーテル(B)とをエステル化触媒(C)の存在下に開環グラフト共重合させるラクタイド系グラフト共重合体の製造方法が開示されている。この文献には、ラクタイド系グラフト共重合体は、透明性を持ち、かつ分解性、熱可塑的性質を有し、ラミネーション、インキ用樹脂を始め、フィルム用材料、成形用樹脂として有用であることが記載されている。
ヒドロキシカルボン酸や環状エステル(ラクチド、ラクトンなど)により変性されたセルロースエステルは、セルロースアセテートなどと同様に光学フィルムなどの光学用途に適用することも考えられる。例えば、特開2001−281448号公報(特許文献4)には、乳酸と乳酸以外の(共)重合可能な多官能性化合物との共重合体を含む光学素子(請求項1)、乳酸以外の(共)重合可能な多官能性化合物が、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸、環状エステル、多価カルボン酸、多価カルボン酸の無水物、多価アルコール、多糖類、及び、アミノカルボン酸からなる群から選択された少なくとも一種である光学素子(請求項4)、多糖類が、セルロース及び化学修飾セルロースからなる群から選択された少なくとも一種である光学素子(請求項9)が開示されている。なお、この文献には、共重合可能な多官能性化合物の一例として、セルロース等の多糖類と記載しているだけで、前記化学修飾セルロースの詳細には何ら記載されていない。
また、特開2005−300978号公報(特許文献5)には、溶融流延製膜法により成形したセルロースエステル樹脂シートを幅手方向に延伸配向したセルロースエステルフィルムからなり、厚みが20〜100μm、面内リタデーション(Ro)が20〜100nm、厚み方向リタデーション(Rt)が90〜200nmである位相差フィルムが開示されている。この文献には、セルロースエステルとして、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロースアシレートや、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖(グラフト重合体側鎖)を有するセルロースアセテートなどを例示している。そして、この文献には、(i)脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートとして、乳酸を主たる繰り返し単位とする脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが挙げられること、(ii)乳酸を主たる繰り返し単位とする脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートのアセチル置換度は、グルコース単位あたり2.5〜3.0であることが好ましいこと、(iii)脂肪族ポリエステルグラフト側鎖の分子量は1000〜10000であることが好ましいことが記載されている。具体的には、実施例2において、60℃で24時間真空乾燥済みのセルロースアセテート(アセチル置換度:2.8、数平均分子量120000)100重量部と、L−ラクチド400重量部とを反応させて、最終的にフレーク状の反応生成物を得、この反応生成物と酸化防止剤を含む混合物をペレット化し、樹脂シートを得て、さらに延伸し、厚み100μmの位相差フィルムを得たことが記載されている。
しかし、この文献に記載の脂肪族ポリエステルグラフト鎖を有するセルロースアセテートでは、セルロースアセテートに置換する乳酸(ポリ乳酸又はポリラクチド)の量が多すぎるため、変性したセルロースアセテートの特性を損なう。また、乳酸のグラフト鎖の重合度や分子量が大きくなると、グラフト鎖部分が結晶性を示すため、白化(又は白濁)などの透明性に欠陥が生じやすくなる。さらに、セルロースアセテートのガラス転移温度が低く、耐熱性が十分でない。そのため、このような乳酸のグラフト量が多いセルロースアセテートは、熱により光学的特性が変化しやすくなり、実用性に乏しい。
特開平11−5851号公報(特許請求の範囲、段落番号[0005]) 特開昭60−188401号公報(特許請求の範囲、第2頁右下欄) 特開平6−287279号公報(特許請求の範囲、発明の効果の欄) 特開2001−281448号公報(特許請求の範囲、段落番号[0033]) 特開2005−300978号公報(特許請求の範囲、段落番号[0023][0029][0030][0074]〜[0076])
従って、本発明の目的は、光学的等方性に優れた新規な変性セルロースアシレートを提供することにある。
本発明の他の目的は、光学的等方性と耐湿性とを高いレベルで両立できる変性セルロースアシレート、およびこの変性セルロースアシレートで形成された光学用成形体(例えば、光学フィルム)を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ヒドロキシ酸成分で変性されていても、優れた耐熱性を付与でき、光学フィルムなどの光学用途に好適に利用できる変性セルロースアシレート(例えば、変性セルロースアシレートなど)、およびこの変性セルロースアシレートで形成された光学用成形体(例えば、光学フィルム)を提供することにある。
本発明の別の目的は、光学的等方性に優れ、耐熱性が要求される用途であっても好適に使用できる実用性が高い変性セルロースアシレート、およびこの変性セルロースアシレートで形成された光学用成形体(例えば、光学フィルム)を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の置換度を有するセルロースアシレート(特にセルロースアセテート)に、特定の割合でヒドロキシ酸成分(例えば、ラクトン、乳酸、ラクチドなど)をグラフト重合させると、光学的等方性および高い耐湿性を両立できる新規な変性セルロースアシレートが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のヒドロキシ酸変性セルロースアシレートは、セルロースアシレートと、このセルロースアシレートのヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合して形成されたグラフト鎖とで構成されている変性セルロースアシレートであって、アシル基の平均置換度が2.7以上であり、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合が、セルロースアシレートを構成するグルコース単位1モルに対して、ヒドロキシ酸換算で平均0.1〜5モルである。
前記セルロースアシレートは、例えば、アシル基の平均置換度2.7〜2.99程度のセルロースアシレート(特にセルロースアセテート)であってもよい。前記ヒドロキシ酸成分は、ヒドロキシ酸(例えば、乳酸などのヒドロキシC2−10アルカンカルボン酸など)、ラクトン(例えば、C4−10ラクトンなど)、および環状ジエステル(例えば、ラクチドなどのC4−10環状ジエステル)から選択された少なくとも1種であってもよい。
代表的な前記変性セルロースアシレートには、セルロースアシレートがセルロースアセテートであり、アセチル基の平均置換度とグラフト鎖の平均置換度との割合が、前者/後者=90/10〜99.5/0.5であり、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合が、セルロースアシレートを構成するグルコース単位1モルに対して、ヒドロキシ酸換算で平均0.2〜4モルである変性セルロースアシレートが含まれる。
前記変性アシレートにおいて、グラフト鎖の平均重合度は、ヒドロキシ酸換算で、例えば、2〜40程度であってもよい。特に、前記変性セルロースアシレートは、前記セルロースアシレートが、アセチル基の平均置換度2.85〜2.95のセルロースアセテートであり、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合が、セルロースアシレートを構成するグルコース単位1モルに対してヒドロキシ酸換算で平均0.3〜3モルであり、グラフト鎖の平均重合度がヒドロキシ酸換算で4〜25である変性セルロースアシレートであってもよい。
本発明の変性セルロースアシレートは、ヒドロキシ酸成分がグラフト重合しているにもかかわらず、高いガラス転移温度を有しており、例えば、前記変性セルロースアシレートのガラス転移温度は80℃以上であってもよい。また、前記変性セルロースアシレートは、セルローストリアセテートなどに比べて耐湿性にも優れ、例えば、吸水率は3%以下であってもよい。
本発明の変性セルロースアシレートは、前記のように光学的等方性に優れ、光学用途に好適に用いることができる。このため、本発明には、前記変性セルロースアシレートで形成された光学用成形体も含まれる。このような光学用成形体は、特に、光学フィルムであってもよい。このような光学フィルムは、光学的等方性に優れており、例えば、フィルム面内のリタデーション値Reが0〜10nmであり、かつフィルム厚み方向のレタデーション値Rthが−20nm〜+20nmであってもよい。
なお、本明細書において、「平均置換度」とは、グルコース単位の2,3および6位のヒドロキシル基のうち、アシル化、グラフト化などされたヒドロキシル基(例えば、アシル基、グラフト鎖)の置換度(置換割合)の平均を意味し、セルロースエステルなどにおける「平均置換度」と同意である。
また、本明細書において、「ヒドロキシ酸成分」とは、ヒドロキシ酸のみならず、ヒドロキシ酸の低級アルキルエステル(例えば、C1−2アルキルエステル)、ヒドロキシ酸の環状エステルも含む意味に用いる。
本発明では、セルロースアシレート(特にセルロースアセテート)にヒドロキシ酸成分がグラフト重合した変性セルロースアシレートにおいて、特定のアシル置換度と、ヒドロキシ酸成分の特定のグラフト割合とを組み合わせているので、光学的等方性に優れた新規な変性セルロースアシレートを得ることができる。また、本発明の変性セルロースアシレートは、セルローストリアセテートなどに比べて耐湿性が改善されており、光学的等方性と耐湿性とを高いレベルで両立できる。さらに、本発明の変性セルロースアシレートは、ヒドロキシ酸成分で変性されていても、優れた耐熱性を付与でき、光学フィルムなどの光学用途に好適に利用できる。このため、光学的等方性に優れ、耐熱性が要求される用途であっても好適に使用でき、実用性が高い。
[変性セルロースアシレート]
本発明の変性セルロースアシレートは、特定のアシル置換度を有するセルロースアシレート(セルロースアシレート骨格)と、このセルロースアシレートのヒドロキシル基に、特定の割合でヒドロキシ酸成分がグラフト重合して形成されたグラフト鎖とで構成されている。
(セルロースアシレート)
セルロースアシレート(アシルセルロース)において、アシル基としては、例えば、アルキルカルボニル基[例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などのC2−10アルキルカルボニル基(例えば、C2−8アルキルカルボニル基、好ましくはC2−6アルキルカルボニル基、さらに好ましくはC2−4アルキルカルボニル基)など]、シクロアルキルカルボニル基(例えば、シクロヘキシルカルボニル基などのC5−10シクロアルキルカルボニル基など)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、カルボキシベンゾイル基などのC7−12アリールカルボニル基など)などが挙げられる。アシル基は、単独で又は2種以上組みあわせてセルロースのグルコース単位に結合していてもよい。これらのアシル基のうち、アルキルカルボニル基が好ましい。特に、これらのアシル基のうち、少なくともアセチル基がグルコース単位に結合しているのが好ましく、例えば、アセチル基のみが結合していてもよく、アセチル基と他のアシル基(C3−4アシル基など)とが結合していてもよい。
代表的なセルロースアシレートとしては、セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−6アシレート、好ましくはセルロースC2−4アシレートなどが挙げられ、特にセルロースアセテート(セルローストリアセテート)が好ましい。
セルロースアシレートにおいて、アシル基の平均置換度は、2.7以上(例えば、2.72〜2.999)であればよく、例えば、2.75以上(例えば、2.78〜2.996)、好ましくは2.8以上(例えば、2.83〜2.995)、さらに好ましくは2.84以上(例えば、2.85〜2.99)、特に2.87以上(例えば、2.88〜2.96)、通常2.7〜2.99[例えば、2.85〜2.95(例えば、2.87〜2.93)]程度であってもよい。本発明では上記のようにアシル置換度を高め、この高いアシル置換度と特定のグラフト割合とを組み合わせることにより、光学的等方性を高めつつ、耐湿性などの特性も改善できる。
また、セルロースアシレートにおいて、ヒドロキシル基(残存するヒドロキシル基)の割合は、特に制限されないが、グルコース単位1モルに対して、例えば、平均0.001〜0.22モル、好ましくは0.01〜0.2モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モル(例えば、0.05〜0.12モル)程度であってもよい。
セルロースアシレートの重合度は、所望の目的に使用できれば特に制限はなく、現在工業的に入手可能な市販品と同程度であれば好適に使用可能である。例えば、セルロースアシレートの平均重合度(粘度平均重合度)は、70以上(例えば、80〜800)の範囲から選択でき、100〜500、好ましくは110〜400、さらに好ましくは120〜350程度であってもよい。
なお、セルロースアシレートは、市販の化合物を使用してもよく、慣用の方法により合成してもよい。例えば、セルロースアシレートは、通常、セルロースをアシル基に対応する有機カルボン酸(酢酸など)により活性化処理した後、硫酸触媒を用いてアシル化剤(例えば、無水酢酸などの酸無水物)によりトリアシルエステル(特に、セルローストリアセテート)を調製し、過剰量のアシル化剤(特に、無水酢酸などの酸無水物)を不活性化し、脱アシル化又はケン化(加水分解又は熟成)によりアシル化度を調整することにより製造できる。アシル化剤としては、酢酸クロライドなどの有機酸ハライドであってもよいが、通常、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などのC2−6アルカンカルボン酸無水物などが使用できる。
なお、一般的なセルロースアシレートの製造方法については、「木材化学(上)」(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
グラフト鎖は、このセルロースアシレートのヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合(又は反応)して形成されている。すなわち、変性セルロースアシレートでは、セルロースのグルコース単位のヒドロキシル基を介して、アシル基およびヒドロキシ酸成分のグラフト鎖が結合している。なお、後述するように、変性セルロースアシレートは、アシル化、およびグラフト化されることなく残存したヒドロキシル基(未置換のヒドロキシル基)を有していてもよい。
(ヒドロキシ酸成分)
ヒドロキシ酸成分としては、ヒドロキシ酸、環状エステルなどが挙げられる。これらのヒドロキシ酸成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。本発明では、環状エステルを好適に用いることができる。
ヒドロキシ酸(オキシカルボン酸)としては、脂肪族オキシカルボン酸、例えば、グリコール酸、乳酸(L−乳酸、D−乳酸、)、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、6−ヒドロキシヘキサン酸などのヒドロキシC2−10アルカンカルボン酸(好ましくはα−ヒドロキシC2−6アルカンカルボン酸、さらに好ましくはα−ヒドロキシC2−4アルカンカルボン酸)などが例示できる。なお、ヒドロキシ酸は、低級アルキルエステル(例えば、C1−2アルキルエステル)化されていてもよい。これらのヒドロキシ酸のうち、特に、α−ヒドロキシ酸[特に、乳酸(L−乳酸、D―乳酸、又はこれらの混合物)]が好ましい。ヒドロキシ酸は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
環状エステルとしては、分子内に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を有し、かつ、セルロースアシレートに対してグラフト可能な化合物であれば特に限定されず、例えば、ラクトン(又は環状モノエステル、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ラウロラクトン、エナントラクトン、ドデカノラクトン、ステアロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトンなどのC3−20ラクトン、好ましくはC4−15ラクトン、さらに好ましくはC4−10ラクトン)、環状ジエステル(例えば、グリコリド、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド又はこれらの混合物)などのC4−15環状ジエステル、好ましくはC4−10環状ジエステルなど)などが挙げられる。
これら環状エステルのうち、好ましい環状エステルとしては、例えば、C4−10ラクトン(例えば、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのC5−8ラクトン)、C4−10環状ジエステル[ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)など]が挙げられる。より好ましい環状エステルとしては、工業的に容易に入手可能であれば特に限定されないが、例えば、ε−カプロラクトン、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)などが挙げられる。
環状エステルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。2種以上組み合わせる場合、好ましい組合せとしては、例えば、ε−カプロラクトンとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)との組み合わせなどが例示できる。
(グラフト鎖)
本発明では、前記特定のアシル置換度のセルロースアシレートに、特定の少割合でヒドロキシ酸成分をグラフト化させることにより、セルロースアシレートの優れた特性を損なうことなく、優れた光学的等方性を付与できる。すなわち、セルロースアシレートにグラフト化させるヒドロキシ酸成分の割合を大きくするほど、得られる変性セルロースアシレートの光学的等方性を向上できるが、一方でセルロースアシレートの特性(透明性、耐熱性など)が大きく低下する。また、グラフト重合に用いるヒドロキシ酸成分の割合をセルロースアシレートに対して小さくしても、汎用のセルロースアシレートにグラフト化するヒドロキシ酸の割合を小さくすることは容易でなく、ヒドロキシ酸成分のグラフト割合を小さくできても、光学的等方性を改善することは困難である。そこで、本発明では、特定の高いアシル置換度を有するセルロースアシレートを使用するとともに、ヒドロキシ酸成分のグラフト割合を前記のような特定の小割合に調整することにより、優れた光学的等方性を付与する。
すなわち、本発明の変性セルロースアシレートにおいて、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合は、セルロースアシレートを構成するグルコース単位1モルに対して、ヒドロキシ酸換算(例えば、ラクチドでは乳酸換算)で、平均0.1〜5モル(例えば、0.15〜4.5モル)であればよく、例えば、好ましくは0.2〜4モル(例えば、0.25〜3.5モル)、さらに好ましくは0.3〜3モル、通常0.35〜3.2モル程度であってもよく、特に3モル以下(例えば、0.1〜2.5モル、好ましくは0.15〜2モル、さらに好ましくは0.2〜1.8モル)、通常1.2モル以下[例えば、0.1〜1.1モル、好ましくは0.05〜1モル(例えば、0.1〜0.9モル)程度]であってもよい。なお、セルロースアシレート全体に対するヒドロキシ酸成分のグラフト割合を上記割合とすることにより、セルロースアシレート(セルロースアシレートなど)の耐熱性を極端に低下させることなく保持でき、耐熱性に優れた変性セルロースアシレートを得ることができる。なお、前記ヒドロキシ酸成分の割合(モル)とは、グラフト鎖の重合度が、1又は1より大きいか否かにかかわらず、セルロースアシレートのグルコース単位全体に付加(又はグラフト)したヒドロキシ酸成分の平均付加モル数を示す。
グラフト鎖の平均重合度(又はグラフト鎖を構成するヒドロキシ酸成分のヒドロキシ酸換算での平均付加モル数)は、ヒドロキシ酸換算(例えば、ε−カプロラクトンではヒドロキシヘキサン酸換算、ラクチドでは乳酸換算など)で、例えば、1〜100(例えば、1.5〜70)程度の範囲から選択でき、1〜60(例えば、1.5〜50)、好ましくは2〜40(例えば、3〜30)、さらに好ましくは4〜25(例えば、5〜22)、特に7〜20、通常3〜18(例えば、5〜15)程度であってもよい。
また、グラフト鎖の平均分子量(数平均分子量など)は、例えば、80〜20000、好ましくは100〜10000(例えば、150〜7000)、さらに好ましくは500〜5000、特に800〜3000(例えば、1000〜2000)であってもよい。
なお、グラフト鎖(特にラクチドなどのα−ヒドロキシ酸成分のグラフト鎖)の重合度や分子量が大きくなると、グラフト鎖部分が結晶性を有し、変性セルロースアシレートに、ガラス転移温度以上の熱履歴が作用すると、結晶化により白化やヘーズの悪化が生じやすくなる。このため、グラフト鎖の重合度や分子量を比較的小さくしてもよい。
変性セルロースアシレートにおいて、グラフト鎖の平均置換度(すなわち、セルロースアシレートのヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフトしたグラフト鎖の平均置換度、ヒドロキシ酸成分でグラフト置換されたヒドロキシル基の平均置換度)は、例えば、0.001〜0.25(例えば、0.005〜0.22)、好ましくは0.01〜0.2(例えば、0.015〜0.18)、さらに好ましくは0.02〜0.15(例えば、0.025〜0.12)、特に0.03〜0.1(例えば、0.04〜0.08)程度であってもよい。
なお、ヒドロキシ酸成分をラクトン成分(例えば、ラクトン)とα−ヒドロキシ酸成分[例えば、乳酸、環状ジエステル(ラクチド)など]とで構成する場合、変性セルロースアシレートにおいて、グラフト重合したラクトン成分とグラフト重合したα−ヒドロキシ酸成分との割合は、ヒドロキシ酸換算で、前者/後者(モル比)=99/1〜1/99、好ましくは95/5〜5/95(例えば、90/10〜10/90)、さらに好ましくは80/20〜20/80(例えば、75/25〜25/75)程度であってもよい。
また、変性セルロースアシレートにおいて、アシル基の平均置換度(又はモル数)とグラフト鎖の平均置換度(又はモル数)との割合は、前者/後者=90/10〜99.9/0.1(例えば、92/8〜99.7/0.3)、好ましくは95/5〜99.5/0.5(例えば、96/4〜99.2/0.8)、さらに好ましくは97/3〜99/1(例えば、98/2〜98.8/1.2)、通常90/10〜99.5/0.5程度であってもよい。
また、変性セルロースアシレートにおいて、ヒドロキシル基(残存ヒドロキシル基)の割合(又はグルコース単位1モルに対して、アシル化又はグラフト化されることなく残存したヒドロキシル基の割合)は、グルコース単位1モルに対して、例えば、平均0〜0.25モル、好ましくは0.01〜0.2モル(例えば、0.015〜0.15モル)、好ましくは0.02〜0.1モル、さらに好ましくは0.03〜0.08モル程度であってもよい。
なお、変性セルロースアシレートにおいて、アシル基やグラフト鎖の置換度、ヒドロキシル基濃度、グラフト鎖の重合度(分子量)などは、慣用の方法、例えば、核磁気共鳴スペクトル(NMR)(H−NMR、13C−NMRなど)などを用いて測定できる。
なお、変性セルロースアシレートは、通常、ヒドロキシル基を有していてもよい。このようなヒドロキシル基には、グラフト鎖の末端のヒドロキシル基、グルコース単位に残存したヒドロキシル基などが挙げられる。このようなヒドロキシル基は、変性グラフト誘導体の吸湿性を抑制又は調整するなどの目的により、必要に応じて保護基により保護してもよい。
保護基としては、ヒドロキシル基を保護可能な非反応性基であれば特に限定されず、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、2−シクロヘキシル−2−プロピル基、ヘキシル基、クロロメチル基などの置換基(ハロゲン原子など)を有していてもよいC1−12アルキル基(好ましくはC1−6アルキル基)など]、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などの置換基を有していてもよいC5−8シクロアルキル基)、芳香族炭化水素基(フェニル基などのC6−12アリール基、ベンジル基などのアラルキル基など)、架橋環式炭化水素基(アダマンチル基など)などの炭化水素基;オキサシクロアルキル基(例えば、5〜8員オキサシクロアルキル基);アルコキシアルキル基(例えば、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル基)などのアセタール系保護基;アルキルカルボニル基(アセチル、プロピオニルなどのC1−10アルキルカルボニル基)、シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基などのアシル基などが挙げられる。
保護基は、単独で又は2種以上組み合わせて、ヒドロキシル基を保護してもよい。
保護基によりヒドロキシル基が保護された変性セルロースアシレートにおいて、保護基の割合(又はグラフト鎖のヒドロキシ基の保護割合)は、グラフト鎖1モルに対して、0.7〜1モルの範囲から選択でき、例えば、0.9〜1モル、好ましくは0.95〜0.999モル程度であってもよい。
また、変性セルロースアシレートは、わずかであるが、カルボキシル基を有している場合がある。このようなカルボキシル基もまた、前記ヒドロキシル基と同様に保護(又は封止)されていてもよい。
本発明の変性セルロースアシレートは、ヒドロキシ酸成分がグラフトしたグラフト鎖を有しているにもかかわらず、ヒドロキシ酸成分のグラフト割合が特定の小割合であるため、比較的高いガラス転移温度を有しており、耐熱性が高い。本発明のセルロースアシレートのガラス転移温度は、70℃以上(例えば、75〜240℃程度)の範囲から選択でき、例えば、80℃以上[例えば、80〜220℃(例えば、90〜200℃)程度]、好ましくは100〜190℃(例えば、110〜180℃、さらに好ましくは120〜170℃程度であってもよく、通常130〜180℃(例えば、140〜170℃)程度であってもよい。なお、変性セルロースアシレートのガラス転移温度は、グラフト鎖の重合度、セルロースアシレートの種類(置換度、アシル基などの置換基の種類など)などを調整しても調整可能である。
また、本発明の変性セルロースアシレートは、特にグラフト鎖がラクトン成分(例えば、ラクトン)由来のグラフト鎖(例えば、ポリカプロラクトン鎖など)である場合、通常のセルロースアシレート(例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど)などに比べて、ガラス域からゴム域に転移するいわゆる転移域における貯蔵弾性率の温度依存性(貯蔵弾性率の変化)が比較的小さいという特性を有している。そのため、本発明の変性セルロースアシレートは、成形温度変化に対して光学的特性が敏感に変化することがなく、安定して所望の特性[例えば、光学的特性(例えば、所望のレタデーション値)]を付与できる。
例えば、本発明の変性セルロースアシレートの貯蔵弾性率において、横軸(又はX軸)を温度、縦軸(Y軸)を変性セルロースアシレートの貯蔵弾性率(E')とする貯蔵弾性率曲線において、貯蔵弾性率が10〜100MPaを示す範囲の最大傾き(δy/δx)は、−12〜0MPa・℃−1(例えば、−12〜−1MPa・℃−1)、好ましくは−11〜−1.5MPa・℃−1、さらに好ましくは−10〜−2MPa・℃−1であってもよい。なお、前記転移域において、変性セルロースアシレートの貯蔵弾性率は、温度上昇とともに低下する場合が多い。そのため、上記最大傾きは、貯蔵弾性率10MPaを示す温度をt1(℃)、貯蔵弾性率100MPaを示す温度をt2(℃)とするとき、90×(t2−t1)−1(MPa・℃−1)で求められる値と近似してもよい。また、貯蔵弾性率の測定に用いる前記変性グルカン誘導体の形態は特に限定されないが、例えば、フィルム状成形体(特に、未延伸フィルム)を用いて測定してもよい。
また、本発明の変性セルロースアシレートは、耐湿性においても優れている。例えば、本発明の変性セルロースアシレートの吸水率は、5%以下(例えば、0〜4.5%程度)の範囲から選択でき、例えば、4%以下(例えば、0.1〜3.5%程度)、好ましくは3%以下(例えば、0.2〜2.7%程度)、さらに好ましくは2.5%以下(例えば、0.3〜2.2%程度)、特に2%以下(例えば、0.5〜1.8%程度)である。
(変性セルロースアシレートの製造方法)
本発明の変性セルロースアシレートは、セルロースアシレートとヒドロキシ酸成分とを反応(開環重合反応又は縮合反応)させることにより得ることができる。すなわち、セルロースアシレートにヒドロキシ酸成分をグラフト重合することにより変性セルロースアシレートを調製できる。なお、グラフト反応(グラフト重合反応)は、ヒドロキシ酸成分として環状エステル(例えば、ラクトン、ラクチドなどの環状ジエステル)を用いるときには、環状エステルの開環を伴う開環反応(開環重合反応、開環グラフト化反応)であり、ヒドロキシ酸(乳酸、ヒドロキシヘキサン酸など)を用いるときには縮合反応(縮合グラフト化反応)である。本発明では、通常、環状エステルを用いた開環グラフト化反応を好適に利用できる。
なお、グラフト重合(特に、環状エステルを用いた開環重合反応)に使用するセルロースアシレートおよびヒドロキシ酸成分の水分含有量は、できるだけ少ない方が好ましく、それぞれ、全体に対して0.5重量%以下[0(又は検出限界)〜0.3重量%程度]、好ましくは0.1重量%以下(例えば、0.0001〜0.05重量%程度)、さらに好ましくは0.01重量%以下(例えば、0.0003〜0.005重量%程度)であってもよい。なお、水分含有量は、慣用の方法、例えば、蒸留、乾燥剤(硫酸マグネシウムなど)に対する接触などにより低減できる。
反応(グラフト重合)において、ヒドロキシ酸成分の割合(使用割合)は、特に制限されず、セルロースアシレート100重量部に対して、例えば、1〜300重量部(例えば、5〜250重量部)、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは15〜150重量部(例えば、20〜130重量部)、通常120重量部以下(例えば、20〜110重量部)程度であってもよい。
反応(又はグラフト重合)は、ヒドロキシ酸成分の種類(例えば、環状エステル)にもよるが、慣用の触媒[例えば、有機酸類、無機酸類、金属(アルカリ金属、マグネシウム、亜鉛、スズ、アルミニウムなど)、金属化合物[スズ化合物(ジブチルチンラウレート、塩化スズ)、有機アルカリ金属化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物(チタンアルコキシドなど)、有機ジルコニウム化合物など]など]の存在下で行ってもよい。触媒は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
特に、触媒(グラフト重合触媒)としてヒドロキシ酸成分のグラフト重合(特に、環状エステルを用いた開環重合反応)の触媒となる化合物であって、かつ、単独で重合を開始しない金属錯体(又は金属化合物)を使用してもよい。このような触媒(及び後述の特定溶媒)を使用することにより、ヒドロキシ酸成分のホモポリマーの生成を著しく抑制でき、高い効率でグラフト重合体(変性セルロースアシレート)を得ることができる。また、このような触媒(および後述の特定溶媒)を用いると、前記特許文献2の方法において見られるようなアシル基の置換度の低下を生じることがなく、グラフト重合後の生成物(すなわち、変性セルロースアシレート)において、原料としてのセルロースアシレートのアシル置換度を反映でき、所望のアシル置換度(およびグラフト鎖置換度)を有する変性セルロースアシレートを効率よく得ることができる。
前記重合を開始しない金属錯体(金属化合物)は、中心金属とこの中心金属に配位する配位子とで構成されており、前記金属錯体を構成する具体的な配位子(又はヒドロキシ酸成分に対する重合活性を示さない配位子又はヒドロキシ酸成分に対して不活性な配位子)としては、例えば、一酸化炭素、ハロゲン原子(塩素原子など)、酸素原子、炭化水素[例えば、アルカン(C1−20アルカンなど)、シクロアルカン、アレーン(ベンゼン、トルエンなど)など]、β−ジケトン(アセチルアセトンなどのβ−C5−10ジケトンなど)、カルボン酸[例えば、アルカン酸(酢酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸などのC1−20アルカン酸)などの脂肪族カルボン酸;安息香酸などの芳香族カルボン酸など]、炭酸、ホウ酸などに対応する配位子(例えば、ハロ、アルキル、アシルアセトナト、アシル)などが挙げられる。これらの配位子は、単独で又は2種以上組み合わせて中心金属に配位していてもよい。
代表的なグラフト重合触媒としては、アルコキシ基(及びヒドロキシル基)及び/又はアミノ基(第3級アミノ基以外のアミノ基)を配位子として有しない金属錯体、例えば、アルカリ金属化合物(炭酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウムなどのカルボン酸アルカリ金属塩など)、アルカリ土類金属化合物(例えば、炭酸アルカリ土類金属塩、酢酸カルシウムなどのカルボン酸アルカリ土類金属塩)、亜鉛化合物(酢酸亜鉛、アセチルアセトネート亜鉛など)、アルミニウム化合物(例えば、トリアルキルアルミニウム)、ゲルマニウム化合物(例えば、酸化ゲルマニウムなど)、スズ化合物[例えば、スズカルボキシレート(例えば、オクチル酸スズ(オクチル酸第一スズなど)などのスズC2−18アルカンカルボキシレート、好ましくはスズC4−14アルカンカルボキシレート)、アルキルスズカルボキシレート(例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、モノブチルスズトリオクチレートなどのモノ又はジC1−12アルキルスズC2−18アルカンカルボキシレートなど)などのスズ(又はチン)カルボキシレート類;アルキルスズオキサイド(例えば、モノブチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどのモノ又はジアルキルスズオキサイドなど);ハロゲン化スズ;ハロゲン化スズアセチルアセトナト;無機酸スズ(硝酸スズ、硫酸スズなど)など]、鉛化合物(酢酸鉛など)、アンチモン化合物(三酸化アンチモンなど)、ビスマス化合物(酢酸ビスマスなど)などの典型金属化合物又は典型金属錯体;希土類金属化合物(例えば、酢酸ランタン、酢酸サマリウムなどのカルボン酸希土類金属塩)、チタン化合物(酢酸チタンなど)、ジルコニウム化合物(酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネートなど)、ニオブ化合物(酢酸ニオブなど)、鉄化合物(酢酸鉄、鉄アセチルアセトナトなど)などの遷移金属化合物が挙げられる。
これらの触媒のうち、特に、スズカルボキシレート類などのスズ錯体(又はスズ化合物)が好ましい。触媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
反応(グラフト重合反応)において、前記触媒の割合(使用割合)は、前記セルロースアシレートのヒドロキシル基1モルに対して、例えば、10−7〜10−1モル、好ましくは5×10−7〜5×10−2モル、さらに好ましくは10−6〜3×10−2モル程度であってもよい。
また、反応(グラフト重合反応)は、無溶媒又は溶媒中で行ってもよく、通常、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、窒素含有溶媒(ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などを使用してもよく、過剰のヒドロキシ酸成分(例えば、ラクトン、ラクチドなど)を溶媒に用いてもよい。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、環状エステルを用いた開環重合反応系では、前記特定の触媒に加えて、さらに水に対する溶解度が小さい特定の溶媒を使用することにより、重合系又は反応における水の影響を極力抑えることができるためか、ヒドロキシ酸成分のホモポリマーの生成を高いレベルで抑制しつつ変性セルロースアシレートを得ることができる。具体的には、グラフト重合反応に用いる溶媒の20℃における水に対する溶解度は、10重量%以下[例えば、0(又は検出限界)〜8重量%]の範囲から選択でき、例えば、7重量%以下(例えば、0.0001〜6重量%程度)、好ましくは5重量%以下(例えば、0.0005〜4重量%程度)、さらに好ましくは3重量%以下(例えば、0.0008〜2重量%程度)、特に1重量以下(例えば、0.001〜0.8重量、好ましくは0.002〜0.5重量%、さらに好ましくは0.003〜0.3重量%程度)であってもよい。
水に対する溶解度が小さい溶媒としては、具体的には、例えば、脂肪族炭化水素類[例えば、アルカン(例えば、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのC7−20アルカンなど)、シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンなどのC4−10シクロアルカン)など]、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(o,m又はp−キシレン)、エチルベンゼンなどのC6−12アレーン、好ましくはC6−10アレーン)、脂肪族ケトン類[例えば、ジアルキルケトン(例えば、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジn−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのC5−15ジアルキルケトン、好ましくはC7−10ジアルキルケトン)など]、鎖状エーテル類[例えば、ジアルキルエーテル(C6−10ジアルキルエーテルなど)、アルキルアリールエーテル(アニソールなど)など]などの非ハロゲン系溶媒、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、ハロアルカン(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパンなどのハロC1−10アルカン)、ハロシクロアルカン(クロロシクロヘキサンなどのハロC4−10シクロアルカン)、ハロゲン系芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロメチルベンゼン、クロロエチルベンゼンなどのハロC6−12アレーン、好ましくはハロC6−10アレーンなど)などのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
溶媒の割合は、溶媒の種類などにもよるが、セルロースアシレート100重量部に対して、50重量部以上(例えば、55〜500重量部程度)の範囲から選択でき、例えば、60〜450重量部(例えば、65〜400重量部)、好ましくは60〜300重量部(例えば、65〜250重量部)、さらに好ましくは70〜200重量部(例えば、75〜190重量部)、特に80〜180重量部(例えば、85〜170重量部、好ましくは90〜150重量部)程度であってもよい。また、溶媒の割合は、セルロースアシレート及びヒドロキシ酸成分の総量100重量部に対して、例えば、10〜200重量部、好ましくは30〜150重量部、さらに好ましくは40〜120重量部(例えば、50〜100重量部)、通常45〜90重量部(例えば、50〜80重量部)程度であってもよい。
反応(グラフト化反応)は、常温下で行ってもよく、通常、反応を効率よく行うため、加温下で行ってもよい。また、開環重合反応は、溶媒の沸点をA(℃)とするとき、反応温度は、通常、溶媒の沸点以上の温度、例えば、A〜(A+30)(℃)[例えば、A〜(A+25)(℃)]、好ましくはA〜(A+22)(℃)、さらに好ましくは(A+3)〜(A+20)(℃)程度であってもよい。なお、溶媒が混合溶媒である場合には、純物質における沸点が最も低い溶媒の沸点を上記沸点としてもよい。低い温度で反応を行うと、重合系(特に、開環重合系)における水の影響を抑える効果が小さく、ホモポリマーの生成を抑制しきれず、用いる溶媒の沸点よりも高すぎる温度で重合を行うと、溶媒の還流が激しくなり制御が困難になる場合がある。具体的な反応温度は、溶媒の種類にもよるが、例えば、60〜250℃、好ましくは80〜220℃、さらに好ましくは100〜180℃(例えば、105〜170℃)、通常110〜160℃程度であってもよい。
反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、ヘリウムなどの希ガスなど)中で行ってもよく、通常不活性雰囲気下で行うことができる。また、反応は、常圧又は加圧下で行ってもよい。さらに、グラフト化は、攪拌しながら行ってもよい。
なお、反応は、ヒドロキシ酸成分のホモポリマーの生成や副反応を効率よく抑えるため、出来る限り水分が少ない状態で行ってもよい。例えば、反応(特に、開環重合反応)において、セルロースアシレート、ヒドロキシ酸成分、および溶媒の総量に対する水分含有量は、例えば、0.3重量%以下[0(又は検出限界)〜0.25重量%程度]、好ましくは0.2重量%以下(例えば、0.0001〜0.18重量%程度)、さらに好ましくは0.15重量%以下(例えば、0.0005〜0.12重量%程度)、特に0.1重量%以下(例えば、0.001〜0.05重量%程度)であってもよい。なお、縮合反応によりグラフト化する場合には、水よりも高沸点の溶媒を用い、共沸などを利用して生成する水を除去しつつ反応を行ってもよい。
グラフト重合反応において、反応時間は、特に制限されないが、例えば、10分〜24時間、好ましくは30分〜10時間、さらに好ましくは1〜6時間程度であってもよい。
なお、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を保護する場合、保護は、前記反応(グラフト化)で得られた生成物を分離(及び精製)し、この分離(及び精製)したグラフト生成物と、前記保護基に対応する保護剤[例えば、酸ハライド、酸無水物などのアシル化剤、アルケニルアシレート(例えば、酢酸イソプロペニルなど)などのヒドロキシル基の保護剤;カルボジイミド化合物などのカルボキシル基の保護剤など]とを反応させて行ってもよく、前記グラフト化と同一の反応系で連続して行ってもよい。同一の反応系で行う場合、反応系の粘度を下げるため、必要に応じて、溶媒を添加してもよく、グラフト化において予め多量又は過剰量のヒドロキシ酸成分を使用し、この過剰量のヒドロキシ酸成分を溶媒として用いてもよい。
反応終了後(グラフト重合後、グラフト重合およびヒドロキシル基の保護後)の反応混合物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、中和、沈澱などの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
なお、上記方法において、グラフト重合したヒドロキシ酸成分をA1(モル)、生成した(詳細には副生成物として生成した)ヒドロキシ酸成分のホモポリマーを構成するヒドロキシ酸成分をA2(モル)とするとき、[A1/(A1+A2)]×100(%)で表されるグラフト効率は、20%以上(例えば、40〜100%程度)であり、70%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは85%以上(例えば、88〜99.9%程度)、さらに好ましくは90%以上(例えば、93〜99.8%程度)、さらに好ましくは95%以上(例えば、96〜99.7%程度)にすることもできる。なお、グラフト効率が高いほど、ヒドロキシ酸成分のホモポリマーの生成が抑制されていることを意味する。
[成形体]
本発明の変性セルロースアシレートは、種々の成形体(フィルム、シート、塗膜(又は薄膜)などの二次元的成形体、湾曲又は立体形状の三次元的成形体など)を形成するのに有用である。特に、本発明の変性セルロースアシレートは、優れた光学的等方性を有しているため、好適に光学用成形体(特に、光学フィルム)を形成することができる。すなわち、本発明の成形体[特に、光学フィルムなどの光学用成形体]は、前記変性セルロースアシレート(例えば、変性セルロースアシレート)で形成(又は構成)されている。
以下に、フィルム(特に光学フィルム)およびその製造方法について詳述する。
本発明のフィルム(変性セルロースアシレートフィルム)は、置換度やアシル基の種類などに応じて、溶融製膜方法(押出成形法など)、溶液製膜方法(流延法)のいずれで製造してもよい。通常、溶液製膜方法により平面性に優れたフィルムを製造してもよい。
溶液製膜方法において、フィルムは、変性セルロースアシレートと有機溶媒とを含むドープ(又は有機溶媒溶液)を剥離性支持体に流延し、生成した膜を剥離性支持体から剥離して乾燥することにより製造できる。剥離性支持体は、通常、金属支持体(ステンレススチールなど)であってもよく、ドラム状やエンドレスベルト状であってもよい。支持体の表面は、通常、鏡面仕上げされ、平滑である場合が多い。
ドープを調製するための有機溶媒は、ハロゲン系有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)であってもよく、非ハロゲン系有機溶媒(特に非塩素系有機溶媒)であってもよい。有機溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよく、例えば、塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒とを組み合わせてもよい。ハロゲン系有機溶媒(特に塩素系有機溶媒)としては、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類(特に塩素化炭化水素類)などが挙げられる。非ハロゲン系有機溶媒(特に非塩素系有機溶媒)としては、例えば、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのC1−4アルカノール類)などが例示できる。
ドープには、種々の添加剤、例えば、可塑剤[リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、クエン酸エステルなど)、トリアセチンなど]、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤など)、滑剤(微粒子状滑剤)、難燃剤、離型剤などを添加してもよい。また、ドープには、レタデーション上昇剤(特開2001−139621号公報に記載のレタデーション上昇剤など)、剥離剤(特開2002−309009号公報に記載の剥離剤など)などを添加してもよい。
なお、ドープは、慣用の方法、例えば、高温溶解法、冷却溶解法などを利用して調製できる。ドープ中のセルロースエステル濃度は、10〜35重量%、好ましくは20〜30重量%(例えば、15〜25重量%)程度であってもよい。また、高品質フィルム(液晶表示装置用フィルムなど)を得るため、ドープはさらに濾過処理してもよい。
流延ダイなどを利用してドープを支持体上に流延し、乾燥することによりフィルムを製造できる。通常、ドープを支持体上に流延し、予備乾燥した後、有機溶媒を含む予備乾燥膜を乾燥することによりフィルムが製造される。
溶融製膜方法では、例えば、前記変性セルロースアシレート(および必要に応じて可塑剤などの他の成分)を押出機などで溶融混合し、ダイ(Tダイ、リングダイなど)から押出成形し、冷却することによりフィルムを製造してもよい。溶融混合温度は、例えば、120〜250℃程度の範囲から選択できる。
フィルムの厚みは用途に応じて選択でき、例えば、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜120μm程度であってもよい。
なお、本発明のフィルムは、セルロースアシレートがヒドロキシ酸成分により変性されており、延伸性に優れているため、延伸処理を施してもよいが、通常、光学的等方性を付与するためにはフィルムを延伸処理しない場合が多い。
本発明のフィルムは、前記変性セルロースアシレートで形成されているため、光学的等方性に優れている。例えば、本発明のフィルム(未延伸フィルム)において、フィルム面内のレタデーション値Reは、例えば、0〜20nm、好ましくは0〜10nm、さらに好ましくは0〜5nm、特に0〜3nm(例えば、0〜2nm)程度であってもよい。また、本発明のフィルム(未延伸フィルム)において、フィルムの厚み方向のレタデーション値Rthは、例えば、−30nm〜+30nm(例えば、−25nm〜+25nm)、好ましくは−20nm〜+20nm(例えば、−15nm〜+15nm)、さらに好ましくは−10nm〜+10nm、特に−5nm〜+5nm(例えば、−3nm〜+3nm)程度であってもよい。
なお、フィルムのレタデーション値(面内のレタデーション値Re、厚み方向のレタデーション値Rth)は、遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率、および厚み方向の屈折率を測定し、これらの屈折率の値から、下記式で定義される式に基づいてそれぞれ算出できる。
Re=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚みを示す。)
なお、上記レタデーション値は、通常、可塑剤を含まないフィルムのレタデーション値であってもよい。また、面内のレタデーション値Reは、通常、フィルムの中央付近(又は中央部)の値であってもよい。
本発明の変性セルロースアシレートは、光学的等方性に優れるとともに、耐湿性が高い。また、ヒドロキシ酸成分のグラフト鎖を有しているにもかかわらず、高いガラス転移温度を有しており、耐熱性が高い。そのため、耐熱性が要求される用途であっても、光学的等方性などの光学的特性を低下又は変化させることがなく、実用性が高い。このため、本発明の変性セルロースアシレートは、光学用途の成形体(例えば、液晶パネルなどの表示材料又は表示素子)を形成するのに有用である。光学用途の成形体は、前記のように三次元的形態の成形体であってもよく、特に、フィルム状成形体に好適である。フィルム(光学フィルム)としては、種々の光学フィルム、例えば、カラーフィルタ、写真感光材料の基材フィルム、表示装置用フィルム(例えば、液晶表示装置用光学補償フィルムなどの光学補償フィルム)、位相差フィルム、保護フィルム(偏光板用保護フィルムなど)、反射防止フィルムの基材フィルムなどが挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例において、特に断りのない限り、「部」とは「重量部」を意味する。
なお、実施例において、各種特性は以下のようにして測定した。
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg)は、高感度型示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、「DSC6200」)を用い、JIS K7121の方法に従い、下記の条件で測定した。
サンプル重量:8.0mg
窒素ガス流入量:40ml/min.
加熱速度:20℃/min.
冷却速度:20℃/min.
測定開始温度:20℃
測定終了温度:210℃
なお、ガラス転移温度は、サンプルを、23℃、相対湿度50%の恒温、恒湿室で48時間放置して調湿し、同環境下で測定した。
(レタデーション値)
自動複屈折計(王子計測機器(株)製、「KOBRA−21ADH」)を用いて、23℃、50%RHの環境下で、波長590nmにおいて、得られたフィルム(延伸前のフィルム、延伸後のフィルム)の3次元屈折率測定を行い、遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzを求め、これらの値から、フィルムの面内のレタデーション値Re、およびフィルムの厚み方向のレタデーション値Rthを、下記式で定義される式に基づいて算出した。なお、面内のレタデーション値Reは、フィルムの中央付近の値である。
Re=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚みを示す)
(屈折率)
実施例および比較例で得られたフィルムを、23℃、相対湿度50%の恒温、恒湿室で48時間放置し、同環境下で、アッベ屈折計((株)アタゴ製、「2T」)を用い、JIS K7142に準じて、屈折率を測定した。
(ヘーズ)
実施例および比較例で得られたフィルムを、23℃、相対湿度50%の恒温、恒湿室で48時間放置し、同環境下で、濁度計(日本電色工業(株)、「NDH5000W」)を用い、JIS K7136に準じて、ヘーズを測定した。
(全光線透過率)
実施例および比較例で得られたフィルムを、23℃、相対湿度50%の恒温、恒湿室で48時間放置し、濁度計(日本電色工業(株)、「NDH5000W」)を用い、JIS K7361−1に準じて、全光線透過率を測定した。
(吸水率)
実施例および比較例で得られたフィルムを、それぞれ3cm×3cmの正方形にカットしたサンプルを、23℃、500mlの蒸留水中に23℃を保ちつつ48時間浸漬した。浸漬後、吸水率をカールフィッシャー水分計(ダイアインスツルメンツ(株)、CA−100)、水分気化装置(ダイアインスツルメンツ(株)、VA−100)を用いて測定した。
[実施例1]
(グラフト体の合成)
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、LT―35、置換度2.90)70部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン30部、シクロヘキサノン(ANON)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で2時間撹拌しながら加熱した。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿した沈殿物(グラフト体)を濾別することによって、ε−カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、ε−カプロラクトンがセルロースアセテートにグラフトしたグラフト体(セルロースアセテート−カプロラクトングラフト共重合体)を得た。
そして、H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を分析した。その結果、グルコース単位1モルあたりにグラフトしたε−カプロラクトンの平均モル数(MS)は0.68、グラフト鎖(グラフトしたカプロラクトン)の平均置換度(DS)は0.05、グラフト鎖のε−カプロラクトンの平均重合度(DPn)は13.6であった。また、得られたグラフト体のガラス転移温度は、154.4℃であった。さらに、得られたグラフト体の吸水率は1.3%であった。
(フィルムの作成)
得られたグラフト体15重量部、塩化メチレン78重量部、およびメタノール7重量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら24時間かけて溶解した。このドープを加圧ろ過した後、さらに24時間静置しドープ中の泡を除いた。
上記ドープを、ガラス板上にバーコーターを用いてドープ温度30℃で流延した。流延したガラス板を密閉し、表面を均一にする(レベリングする)ために2分間静置した。レベリング後、40℃の温風乾燥機で8分間乾燥させた後、ガラス板からフィルムを剥離した。次いでフィルムをステンレス製の枠に支持し、100℃の温風乾燥機で20分間乾燥させて膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのReは0nmであり、Rthは−2nmであった。また、得られたフィルムの全光線透過率は93.4%、屈折率は1.48、ヘーズは0.3%であった。
[実施例2]
(グラフト体の合成)
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、LT−35、置換度2.90)70部、L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製)30部を加え、65℃、12時間、4Torrで減圧乾燥した。その後に乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したシクロヘキサノン(ANON)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部添加し、160℃、2時間加熱、撹拌を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿した沈殿物(グラフト体)を濾別することによって、L−ラクチドの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、L−ラクチドがセルロースアセテートにグラフトしたグラフト体(セルロースアセテート−ラクチドグラフト共重合体)を得た。
そして、H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、1グルコース環にグラフトした乳酸単位(乳酸ユニット)の平均モル数(MS)が0.75、グラフト鎖(グラフトしたL−ラクチド鎖)の平均置換度(DS)は0.06、グラフト鎖の乳酸単位の平均重合度(DPn)は12.5、ガラス転移温度158℃であった。さらに得られたグラフト体の吸水率は2.1%であった。
(フィルムの作成)
得られたグラフト体を用いて、実施例1と同様にして、膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのReは0nmであり、Rthは4nmであった。また、得られたフィルムの全光線透過率は93.4%、屈折率は1.47、ヘーズは0.6%であった。
[比較例1]
(グラフト体の合成)
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、置換度2.41)70部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン30部、シクロヘキサノン(ANON)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で2時間撹拌しながら加熱した。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿した沈殿物(グラフト体)を濾別することによって、ε−カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、ε−カプロラクトンがセルロースアセテートにグラフトしたグラフト体(セルロースアセテート−カプロラクトングラフト共重合体)を得た。
そして、H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を分析した。その結果、グルコース単位1モルあたりにグラフトしたε−カプロラクトンの平均モル数(MS)は0.86、グラフト鎖(グラフトしたカプロラクトン)の平均置換度(DS)は0.12、グラフト鎖のε−カプロラクトンの平均重合度(DPn)は7.4であった。また、得られたグラフト体のガラス転移温度は、125.4℃であった。さらに、得られたグラフト体の吸水率は4.7%であった。
(フィルムの作成)
得られたグラフト体を用いて、実施例1と同様にして、膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルム(延伸前フィルム)のReは11nmであり、Rthは130nmであった。また、得られたフィルムの全光線透過率は93.4%、屈折率は1.48、ヘーズは0.7%であった。
[比較例2]
(グラフト体の合成)
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、LM―80、置換度2.10)60部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン40部、シクロヘキサノン(ANON)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で2時間撹拌しながら加熱した。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿した沈殿物(グラフト体)を濾別することによって、ε−カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、ε−カプロラクトンがセルロースアセテートにグラフトしたグラフト体(セルロースアセテート−カプロラクトングラフト共重合体)を得た。
そして、H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を分析した。その結果、グルコース単位1モルあたりにグラフトしたε−カプロラクトンの平均モル数(MS)は1.29、グラフト鎖(グラフトしたカプロラクトン)の平均置換度(DS)は0.34、グラフト鎖のε−カプロラクトンの平均重合度(DPn)は3.9であった。また、得られたグラフト体のガラス転移温度は、104.3℃であった。さらに、得られたグラフト体の吸水率は5.56%であった。
(フィルムの作成)
得られたグラフト体を用いて、実施例1と同様にして、膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのReは6nmであり、Rthは102nmであった。また、得られたフィルムの全光線透過率は93.4%、屈折率は1.48、ヘーズは0.7%であった。
[比較例3]
(グラフト体の合成)
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、置換度2.41)70部、L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製)30部を加え、65℃、12時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したシクロヘキサノン(ANON)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で2時間撹拌しながら加熱した。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿した沈殿物(グラフト体)を濾別することによって、L−ラクチドの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、L−ラクチドがセルロースアセテートにグラフトしたグラフト体(セルロースアセテート−ラクチドグラフト共重合体)を得た。
そして、H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を分析した。その結果、グルコース単位1モルあたりにグラフトした乳酸単位(乳酸ユニット)の平均モル数(MS)は0.85、グラフト鎖(グラフトしたL−ラクチド鎖)の平均置換度(DS)は0.22、グラフト鎖の乳酸単位の平均重合度(DPn)は3.9であった。また、得られたグラフト体のガラス転移温度は、155.9℃であった。さらに、得られたグラフト体の吸水率は4.5%であった。
(フィルムの作成)
得られたグラフト体15重量部、塩化メチレン78重量部、およびメタノール7重量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら24時間かけて溶解した。このドープを加圧ろ過した後、さらに24時間静置しドープ中の泡を除いた。
上記ドープを、ガラス板上にバーコーターを用いてドープ温度30℃で流延した。流延したガラス板を密閉し、表面を均一にする(レベリングする)ために2分間静置した。レベリング後、40℃の温風乾燥機で8分間乾燥させた後、ガラス板からフィルムを剥離した。次いでフィルムをステンレス製の枠に支持し、100℃の温風乾燥機で20分間乾燥させて膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのReは4nmであり、Rthは173nmであった。また、得られたフィルムの全光線透過率は93.5%、屈折率は1.47、ヘーズは0.5%であった。
[比較例4]
(グラフト体の合成)
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、NAC、置換度2.74)20部、L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製)80部を加え、65℃、24時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。この反応液にオクタン酸スズ0.10部を添加し、140℃で1時間撹拌しながら加熱した。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿した沈殿物(グラフト体)を濾別することによって、L−ラクチドの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、L−ラクチドがセルロースアセテートにグラフトしたグラフト体(セルロースアセテート−ラクチドグラフト共重合体)を得た。
そして、H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を分析した。その結果、グルコース単位1モルあたりにグラフトした乳酸単位(乳酸ユニット)の平均モル数(MS)は14.1、グラフト鎖(グラフトしたL−ラクチド鎖)の平均置換度(DS)は0.23、グラフト鎖の乳酸単位の平均重合度(DPn)は60.5であった。また、得られたグラフト体のガラス転移温度は、65.0℃であった。さらに、得られたグラフト体の吸水率は0.9%であった。
(フィルムの作成)
得られたグラフト体15重量部、塩化メチレン78重量部、およびメタノール7重量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら24時間かけて溶解した。このドープを加圧ろ過した後、さらに24時間静置しドープ中の泡を除いた。
上記ドープを、ガラス板上にバーコーターを用いてドープ温度30℃で流延した。流延したガラス板を密閉し、表面を均一にする(レベリングする)ために2分間静置した。レベリング後、40℃の温風乾燥機で8分間乾燥させた後、ガラス板からフィルムを剥離した。次いでフィルムをステンレス製の枠に支持し、45℃の温風乾燥機で120分間乾燥させて膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのReは1nmであり、Rthは4nmであった。また、得られたフィルムの全光線透過率は93.3%、屈折率は1.49、ヘーズは1.5%であった。
[比較例5]
(フィルムの作成)
グラフト体に代えて、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、LT―35、置換度2.90、ガラス転移温度194.1℃、吸水率5.2%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのReは4nmであり、Rthは80nmであった。また、得られたフィルムの全光線透過率は93.5%、屈折率は1.47、ヘーズは0.6%であった。
[比較例6]
(フィルムの作成)
グラフト体に代えて、セルロースアセテートブチレート(関東化学(株)製、カタログNo.40425−1A、アセチル基の置換度1.06、ブチリル基の置換度1.66、ガラス転移温度139.0℃、吸水率3.2%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚100μmのフィルムを得た。得られたフィルムのReは8nmであり、Rthは127nmであった。また、得られたフィルムの全光線透過率は93.4%、屈折率は1.47、ヘーズは0.8%であった。
得られた結果を表1に示す。なお、表1において、「CA」は酢酸セルロース、「CL」はε−カプロラクトン、「LA」はL−ラクチド、「Tg」はガラス転移温度を示す。
Figure 2007254708

Claims (10)

  1. セルロースアシレートと、このセルロースアシレートのヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合して形成されたグラフト鎖とで構成されている変性セルロースアシレートであって、アシル基の平均置換度が2.7以上であり、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合が、セルロースアシレートを構成するグルコース単位1モルに対して、ヒドロキシ酸換算で平均0.1〜5モルであるヒドロキシ酸変性セルロースアシレート。
  2. セルロースアシレートが、アシル基の平均置換度2.7〜2.99のセルロースアセテートである請求項1記載の変性セルロースアシレート。
  3. ヒドロキシ酸成分が、ヒドロキシC2−10アルカンカルボン酸、C4−10ラクトン、およびC4−10環状ジエステルから選択された少なくとも1種である請求項1記載の変性セルロースアシレート。
  4. セルロースアシレートがセルロースアセテートであり、アセチル基の平均置換度とグラフト鎖の平均置換度との割合が、前者/後者=90/10〜99.5/0.5であり、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合が、セルロースアシレートを構成するグルコース単位1モルに対して、ヒドロキシ酸換算で平均0.2〜4モルである請求項1記載の変性セルロースアシレート。
  5. グラフト鎖の平均重合度がヒドロキシ酸換算で2〜40である請求項1記載の変性セルロースアシレート。
  6. セルロースアシレートが、アセチル基の平均置換度2.85〜2.95のセルロースアセテートであり、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合が、セルロースアシレートを構成するグルコース単位1モルに対してヒドロキシ酸換算で平均0.3〜3モルであり、グラフト鎖の平均重合度がヒドロキシ酸換算で4〜25である請求項1記載の変性セルロースアシレート。
  7. ガラス転移温度が80℃以上であり、かつ吸水率が3%以下である請求項1記載の変性セルロースアシレート。
  8. 請求項1記載の変性セルロースアシレートで形成された光学用成形体。
  9. 光学フィルムである請求項8記載の光学用成形体。
  10. フィルム面内のリタデーション値Reが0〜10nmであり、かつフィルム厚み方向のレタデーション値Rthが−20nm〜+20nmである請求項9記載の光学用成形体。
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