JPWO2007086318A1 - 環状エステル変性グルカン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
環状エステルのホモポリマーの生成を高いレベルで抑制できる環状エステル変性グルカン誘導体の製造方法を提供する。溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させて、環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体を製造する方法において、(1)前記開環重合触媒を、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体とし、かつ(2)前記溶媒を、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成する。
Description
本発明は、熱可塑性プラスチックとして使用可能な環状エステル変性グルカン誘導体(例えば、セルロースアシレート誘導体)を効率よく製造する方法、この方法により得られる変性グルカン誘導体、およびこの変性グルカン誘導体で形成された成形品に関する。
セルロース、デンプン(又はアミロース)、デキストランなどのグルコースを構成単位とするグルカンは、熱可塑性を有しておらず、そのままでは、プラスチック(熱可塑性プラスチック)として使用できない。そのため、このようなグルカン(特にセルロース)は、熱可塑化のため、アシル化(アセチル化など)されることにより、熱可塑性プラスチックとして利用されている。
前記グルカンのうち、特に、セルロースは、アシル化され、セルロースアシレート(特に、セルロースアセテート)として種々の用途に用いられている。例えば、平均置換度2.4〜2.5程度のセルロースアセテート(セルロースジアセテート)は、熱可塑性の観点から、可塑剤を含む形態で熱成形に用いられている。
このようなセルロースアシレートを変性することにより、溶解性、熱溶融性や溶融成形性を改良する技術も報告されている。例えば、特開昭59−86621号公報(特許文献1)には、セルロース誘導体(セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、ベンジルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)の存在下で環状エステル(ε−カプロラクトンなど)の開環重合触媒を加えて、環状エステルを開環重合させるグラフト重合体の製造方法が開示されている。この文献には開環重合反応において、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属及びその誘導体、ピリジンなどの三級アミン、トリエチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム及びその誘導体、テトラブチルチタネートなどのアルコキシチタン化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズラウレートなどの有機金属化合物、塩化スズなどの金属ハロゲン化物を用いることができることが記載されている。具体的には、例えば、実施例1において、酢酸セルロース100部、ε−カプロラクトン244.4部、キシレン55部を加えて、90℃に加温し、酢酸セルロースを溶解させた後、攪拌を続けながらテトラブチルチタネート0.0024部を含むキシレン30部を加えて150℃で20時間加熱し反応させることにより、淡黄色の透明なグラフト重合体が得られたことが記載されている。
また、特開昭60−188401号公報(特許文献2)には、遊離水酸基を有する脂肪酸セルロースエステル(セルロースアセテートなど)に対してその無水グルコース単位あたり0.5〜4.0モルの環状エステル(ε−カプロラクトンなど)を付加(グラフト)させて得られる脂肪酸セルロースエステル系熱可塑性成形材料が開示されている。この文献には、脂肪酸セルロースエステルへの環状エステルの付加は、開環重合触媒の存在下で両者を適当な溶媒中もしくは無溶媒で加熱することによって得られることが記載されており、適当な触媒として、前記文献と同様に、テトラブチルチタネート、ジブチルスズラウレートなどの有機金属化合物、塩化スズなどの金属ハロゲン化合物、アルカリ金属、三級アミンなどを例示している。また、この文献には、内部可塑化により、多量の可塑剤を添加することなく、射出成形、押出成形などにより成形加工でき、シート、フィルムなどの成形品に使用できることも記載されている。具体的には、例えば、実施例1において、セルロースアセテート100g、ε−カプロラクトン64.4g、キシレン73.1gを加えて、140℃に加温し、セルロースアセテートを均一に溶解させた後、攪拌を続けながらチタンテトラブトキシド0.664mgを含むキシレン4gを加えて140℃で加熱し反応させることにより、淡黄色の透明なグラフト重合体が得られたことが記載されている。
さらに、特開2001−181302号公報(特許文献3)には、水酸基を有するセルロース誘導体に、環状エステルの開環重合触媒の存在下で、環状エステル類を開環グラフト重合して環状エステル変性セルロース誘導体を製造する際に、常圧沸点が140℃以上の溶剤であって、水酸基を有するセルロース誘導体および環状エステル変性セルロース誘導体が溶解可能で、環状エステルの開環重合の開始剤となる官能基を持たない溶剤(シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなど)中で重合を行う環状エステル変性セルロース誘導体の製造方法が開示されている。この文献の方法では、沸点140℃以上のセルロース誘導体に対する良溶媒を用いることにより、反応系の粘度上昇を抑制してグラフト重合させることができる。具体的には、実施例1では、反応器に、絶乾燥状態の酢酸セルロース100部、精製ε−カプロラクトン50部、精製シクロヘキサノン50部を加え、反応系内の水分濃度を0.1質量%以下にして、180℃に加熱、攪拌して酢酸セルロースを均一に溶解させたのち、触媒としてオクチル酸スズ(II)0.24部を、滴下により加え、2時間反応させている。
なお、この文献には、前記溶剤は、原料である水酸基を有する酢酸セルロースおよび生成物である環状エステル変性セルロース誘導体を溶解し、かつ、環状エステル類の開環重合の開始剤となる水酸基やアミノ基のような官能基を含有しないものであればよく、このような溶剤として、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノイックラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、γ−ノナノイックラクトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、4−ノナノン、5−ノナノンなどを例示しているが、これらの溶媒のうち、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、4−ノナノン、および5−ノナノンは酢酸セルロースを溶解しないセルロースエステルに対する貧溶媒である。
しかし、これらの文献に記載の方法では、環状エステルのホモポリマー(オリゴマー)が多量に副生する。このような環状エステルのオリゴマーは、カルボキシル基を有しており、生成物中の酸価を増大させる。そのため、生成物中にこのようなオリゴマーを含んでいると、セルロースアシレートが加水分解しやすくなる。さらに、このようなオリゴマーは生成物の外観を悪化させ、しかもブリードアウトにより製品品質を低下させる。
そのため、環状エステルのオリゴマーを生成物から除去することが好ましい。このようなオリゴマーの除去は、前記文献においても行われており、例えば、前記特許文献1の実施例1では、得られたグラフト重合体にアセトンを加え、溶解した後、四塩化炭素に沈殿した固体を真空乾燥した後、四塩化炭素により10時間ソックスレー抽出を行っている。また、前記特許文献2の実施例1では、セルロースアセテートにε−カプロラクトンおよびキシレンを加えて溶解させ、チタンテトラブトキシドを含むキシレンを加えて140℃で反応させたのち、反応物を再沈させてソックスレー抽出を10時間行っている。
このように、一般的には、環状エステルをグラフト重合させる場合、環状エステルのオリゴマーの副生が生じるため、このような副生物を再沈操作により除去している。
しかし、再沈をはじめとする環状エステルオリゴマーの除去作業は工業的に大量の溶剤を必要とし、工程の複雑さから一般的ではない。また、製造コストの上昇を招き、好ましくない。また、流動性に寄与する低分子量成分、特にグラフト化している低分子量成分をも除去してしまい、生成物の流動性が損なわれる。
そのため、このようなオリゴマーの副生自体を抑制することが望まれていた。
特開昭59−86621号公報(特許請求の範囲、第2頁左上及び右上欄、実施例)
特開昭60−188401号公報(特許請求の範囲、第2頁右下欄、実施例)
特開2001−181302号公報(特許請求の範囲、段落番号[0023]、段落番号[0029]、実施例)
従って、本発明の目的は、環状エステルのホモポリマー(オリゴマー)の生成を高いレベルで抑制できる環状エステル変性グルカン誘導体(例えば、環状エステル変性セルロースアセテートなどの環状エステル変性セルロースアシレート)の製造方法、この方法により得られる変性グルカン誘導体、およびこの変性グルカン誘導体で形成された成形品を提供することにある。
本発明の他の目的は、高いグラフト効率で効率よく環状エステル変性グルカン誘導体を製造できる方法、この方法により得られる変性グルカン誘導体、およびこの変性グルカン誘導体で形成された成形品を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体(例えば、セルロース誘導体)と、環状エステルとを反応させて環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体(詳細には、環状エステルが前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体にグラフト重合した化合物)を製造する方法において、特定の触媒と特定の溶媒とを組み合わせて反応させることにより、環状エステルのホモポリマーの生成を著しく抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の製造方法は、溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させ、環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体(グラフト体)を製造する方法であって、(1)前記開環重合触媒が、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体であり、かつ(2)前記溶媒が、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成されている変性グルカン誘導体の製造方法である。
前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体は、セルロース誘導体などであってもよく、例えば、平均置換度1.5〜2.95のセルロースC2−4アシレートであってもよい。
また、前記環状エステルは、C4−10ラクトンおよびC4−10環状ジエステルから選択された少なくとも1種であってもよい。
また、前記開環重合触媒は、ハロゲン原子、酸素原子、炭化水素、β−ジケトンおよびカルボン酸から選択された少なくとも1種に対応するアニオン性配位子を有する金属錯体であってもよく、特にこのような金属錯体は、少なくとも脂肪族カルボン酸に対応するアニオン性配位子を有するスズ錯体[すなわち、中心金属がスズであり、アニオン性配位子が少なくとも脂肪族カルボン酸で構成されている金属錯体](例えば、スズカルボキシレート類など)で構成されていてもよい。前記方法において、開環重合触媒の割合(使用割合)は、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体100重量部に対して、例えば、0.3〜1.2重量部程度であってもよい。
前記溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素類、脂肪族ケトン類、および鎖状エーテル類から選択された少なくとも1種で構成されていてもよい。また、前記溶媒は、ハロゲン化炭化水素類で構成されていてもよい。溶媒の割合は、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体100重量部に対して、例えば、60重量部以上(例えば、60〜300重量部程度)であってもよい。また、溶媒の割合は、環状エステル100重量部に対して、例えば、80〜350重量部程度であってもよい。また、溶媒の割合は、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体および環状エステルの総量100重量部に対して、例えば、40〜95重量部程度であってもよい。
前記方法において、反応は極力少ない水分量で行うのが好ましく、例えば、前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と環状エステルとは、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体、環状エステルおよび溶媒の総量に対して、水分含有量0.3重量%以下の条件下で反応させてもよい。
代表的な前記方法には、(i)ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体が、平均置換度1.9〜2.6のセルロースC2−4アシレートであり、(ii)開環重合触媒が、スズC6−10アルカンカルボキシレート、およびモノ又はジC3−8アルキルスズC6−10アルカンカルボキシレートから選択された少なくとも1種の有機スズ錯体で構成されており、(iii)溶媒が、沸点80℃以上及び20℃における水に対する溶解度が5重量%以下であって、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、脂肪族ケトン類、鎖状エーテル類、およびハロゲン化炭化水素類から選択された少なくとも1種の溶媒で構成されており、(iv)溶媒の割合が、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体100重量部に対して65〜250重量部および環状エステル100重量部に対して90〜280重量部であり、かつ(v)ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体、環状エステル、および溶媒全体の水分含有量が0.15重量%以下である条件下で反応させる方法などが含まれる。
本発明の方法では、環状エステルのホモポリマーの生成を高いレベルで抑制しつつ変性グルカン誘導体を得ることができ、例えば、前記方法では、グラフト重合した環状エステル(環状エステルユニット)をA1(モル)、生成した環状エステルのホモポリマーを構成する環状エステル(環状エステルユニット)をA2(モル)とするとき、[A1/(A1+A2)]×100(%)で表されるグラフト効率90%以上で変性グルカン誘導体を得ることができる。
本発明には、溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させ、環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体を製造する際に、以下の(1)および(2)の条件で反応させることにより、環状エステルのホモポリマーの生成を抑制する方法も含まれる。
(1)前記開環重合触媒が、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体である
(2)前記溶媒が、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成されている。
(1)前記開環重合触媒が、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体である
(2)前記溶媒が、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成されている。
本発明には前記製造方法により得られた変性グルカン誘導体(環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体)も含まれる。また、本発明には、前記変性グルカン誘導体(前記製造方法により得られた変性グルカン誘導体)で形成された成形品(又は成形体)も含まれる。
なお、本明細書において、「平均置換度」とは、グルコース単位の2,3および6位のヒドロキシル基のうち、誘導体化(エーテル化、エステル化など)されたヒドロキシル基(例えば、アシル基)の置換度(置換割合)の平均(又はグルコース単位1モルに対する、グルコース単位の2,3および6位における誘導体化されたヒドロキシル基の平均モル数)を意味し、セルロースエステルなどにおける「平均置換度」と同意である。
本発明の方法では、特定の触媒と特定の溶媒とを組み合わせることにより、環状エステルのホモポリマー(オリゴマー)の生成を高いレベルで抑制しつつ環状エステル変性グルカン誘導体(例えば、環状エステル変性セルロースアセテートなどの環状エステル変性セルロースアシレート)を得ることができる。そして、本発明の方法では、環状エステルのホモポリマーの生成を著しく抑制できるため、高いグラフト効率で効率よく環状エステル変性グルカン誘導体を製造できる。
本発明の方法では、溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させ、環状エステルがグラフト重合した(ヒドロキシル基に環状エステルがグラフト重合した)変性グルカン誘導体(すなわち、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、このグルカン誘導体のヒドロキシル基に環状エステルがグラフト重合して形成されたグラフト鎖とで構成された化合物)を製造する方法において、以下の条件(1)および(2)の特定の条件下で、前記グルカン誘導体と環状エステルとを反応させる。
(1)前記開環重合触媒が、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体である
(2)前記溶媒が、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成されている。
(2)前記溶媒が、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成されている。
(ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体)
ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体としては、ヒドロキシル基を有している限り特に限定されないが、通常、グルカンのグルコース単位のヒドロキシル基の一部が誘導体化(エーテル化、エステル化など)されたグルカン誘導体であってもよい。すなわち、前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体は、グルカンのグルコース単位(又はグルコース骨格)に含まれるヒドロキシル基(グルコース単位の2,3および6位に位置するヒドロキシル基)に、アシル基などが置換(結合)して誘導体化されたグルカン誘導体であって、前記ヒドロキシル基の一部が残存したグルカン誘導体である場合が多い。ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体としては、ヒドロキシル基を有している限り特に限定されないが、通常、グルカンのグルコース単位のヒドロキシル基の一部が誘導体化(エーテル化、エステル化など)されたグルカン誘導体であってもよい。すなわち、前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体は、グルカンのグルコース単位(又はグルコース骨格)に含まれるヒドロキシル基(グルコース単位の2,3および6位に位置するヒドロキシル基)に、アシル基などが置換(結合)して誘導体化されたグルカン誘導体であって、前記ヒドロキシル基の一部が残存したグルカン誘導体である場合が多い。ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
グルカンとしては、特に限定されず、例えば、β−1,4−グルカン、α−1,4−グルカン、β−1,3−グルカン、α−1,6−グルカンなどが挙げられる。代表的なグルカンとしては、例えば、セルロース、アミロース、デンプン、レンチナン、デキストランなどの多糖類が挙げられる。これらのグルカンうち、産業的な観点から、セルロース、デンプン(又はアミロース)が好ましく、特に、セルロースが好ましい。グルカンは、単独で又は2種以上合わせてもよい。
具体的なグルカン誘導体としては、例えば、エーテル化されたグルカン、エステル化されたグルカンなどが挙げられる。以下に、代表的なグルカン誘導体として、誘導体化されたセルロース(セルロース誘導体)について詳述する。
セルロース誘導体としては、セルロースエーテル[例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−4アルキルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルC1−4アルキルセルロースなど)、シアノアルキルセルロース(シアノエチルセルロースなど)、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロースなど)など]、セルロースエステル(アシルセルロース又はセルロースアシレート;硝酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル;硝酸酢酸セルロースなどの無機酸及び有機酸の混酸セルロースエステルなど)などが挙げられる。
好ましいセルロース誘導体には、アシルセルロース(又はセルロースアシレート)が含まれる。セルロースアシレートにおいて、アシル基としては、用途に応じて適宜選択でき、例えば、アルキルカルボニル基[例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などのC2−10アルキルカルボニル基(例えば、C2−8アルキルカルボニル基、好ましくはC2−6アルキルカルボニル基、さらに好ましくはC2−4アルキルカルボニル基)など]、シクロアルキルカルボニル基(例えば、シクロヘキシルカルボニル基などのC5−10シクロアルキルカルボニル基など)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、カルボキシベンゾイル基などのC7−12アリールカルボニル基など)などが挙げられる。アシル基は、単独で又は2種以上組みあわせてセルロースのグルコース単位に結合していてもよい。これらのアシル基のうち、アルキルカルボニル基が好ましい。特に、これらのアシル基のうち、少なくともアセチル基がグルコース単位に結合しているのが好ましく、例えば、アセチル基のみが結合していてもよく、アセチル基と他のアシル基(C3−4アシル基など)とが結合していてもよい。
代表的なセルロースアシレートとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−6アシレート、好ましくはセルロースC2−4アシレートなどが挙げられ、特にセルロースアセテート(特にセルロースジアセテート)が好ましい。
ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体(特に、セルロース誘導体、例えば、セルロースアセテートなどのセルロースアシレート)において、平均置換度(アシル基などの平均置換度、グルコース単位の2,3および6位における誘導体化されたヒドロキシル基の平均モル数)は、特に制限されないが、0.5〜2.99(例えば、0.7〜2.98)程度の範囲から選択でき、例えば、0.8〜2.97(例えば、1〜2.96)、好ましくは1.5〜2.95(例えば、1.8〜2.8)、さらに好ましくは1.9〜2.6(例えば、2.0〜2.5)程度であってもよく、通常2.25以上[例えば、2.3以上(例えば、2.3〜2.95)、好ましくは2.35〜2.93(例えば、2.38〜2.88)程度]であってもよい。
ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体(例えば、セルロースアシレートなどのセルロース誘導体)において、ヒドロキシル基(残存するヒドロキシル基、グルコース単位のヒドロキシル基)の割合は、特に制限されないが、グルコース単位1モルに対して、例えば、平均0.1〜2.5モル(例えば、0.15〜2モル)、好ましくは0.2〜1.5モル(例えば、0.3〜1.2モル)、さらに好ましくは0.4〜1モル(例えば、0.5〜0.7モル)程度であってもよい。
ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体(又はグルカン)の重合度は、本発明の方法で得られる変性グルカン誘導体を所望の目的に使用できれば特に制限はなく、現在工業的に入手可能な市販品と同程度であれば好適に使用可能である。例えば、グルカン誘導体の平均重合度(粘度平均重合度)は、70以上(例えば、80〜800)の範囲から選択でき、100〜500、好ましくは110〜400、さらに好ましくは120〜350程度であってもよい。
反応に使用するヒドロキシル基を有するグルカン誘導体は、反応における環状エステルのホモポリマーの生成をより一層効率よく抑制するため、水分含有量において極力少ないグルカン誘導体であってもよい。例えば、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体の水分含有量は、できるだけ少ないのが好ましく、全体に対して0.5重量%以下[0(又は検出限界)〜0.3重量%程度]、好ましくは0.1重量%以下(例えば、0.0001〜0.05重量%程度)、さらに好ましくは0.05重量%以下(例えば、0.0002〜0.03重量%程度)、特に0.01重量%以下(例えば、0.0003〜0.005重量%程度)であってもよい。なお、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体の水分含有量は、減圧乾燥などの慣用の乾燥処理により低減することができる。減圧乾燥は、加温下(例えば、50〜200℃、好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは90〜150℃程度)で行ってもよい。
なお、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体(セルロースアシレートなど)は、市販の化合物(例えば、セルロースアセテートなど)を使用してもよく、慣用の方法により合成してもよい。例えば、セルロースアシレートは、通常、セルロースをアシル基に対応する有機カルボン酸(酢酸など)により活性化処理した後、硫酸触媒を用いてアシル化剤(例えば、無水酢酸などの酸無水物)によりトリアシルエステル(特に、セルローストリアセテート)を調製し、過剰量のアシル化剤(特に、無水酢酸などの酸無水物)を分解し、脱アシル化又はケン化(加水分解又は熟成)によりアシル化度を調整することにより製造できる。アシル化剤としては、酢酸クロライドなどの有機酸ハライドであってもよいが、通常、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などのC2−6アルカンカルボン酸無水物などが使用できる。
なお、一般的なセルロースアシレートの製造方法については、「木材化学(上)」(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。また、他のグルカン(例えば、デンプンなど)についても、セルロースアシレートの場合と同様の方法でアシル化(および脱アシル化)できる。
(環状エステル)
環状エステルとしては、分子内に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を有する環状化合物であって、グルカンに対してグラフト重合可能な化合物であれば特に限定されず、例えば、ラクトン(又は環状モノエステル、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ラウロラクトン、エナントラクトン、ドデカノラクトン、ステアロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトンなどのC3−20ラクトン、好ましくはC4−15ラクトン、さらに好ましくはC4−10ラクトン)、環状ジエステル(例えば、グリコリド、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド又はこれらの混合物)などのC4−15環状ジエステル、好ましくはC4−10環状ジエステルなど)などが挙げられる。
環状エステルとしては、分子内に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を有する環状化合物であって、グルカンに対してグラフト重合可能な化合物であれば特に限定されず、例えば、ラクトン(又は環状モノエステル、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ラウロラクトン、エナントラクトン、ドデカノラクトン、ステアロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトンなどのC3−20ラクトン、好ましくはC4−15ラクトン、さらに好ましくはC4−10ラクトン)、環状ジエステル(例えば、グリコリド、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド又はこれらの混合物)などのC4−15環状ジエステル、好ましくはC4−10環状ジエステルなど)などが挙げられる。
これら環状エステルのうち、好ましい環状エステルとしては、得られる環状エステル変性グルカン誘導体の溶融成形性や機械的物性が使用目的に適合するように適宜選択が可能であるが、例えば、C4−10ラクトン(例えば、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなど)、C4−10環状ジエステル[ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)など]が挙げられる。より好ましい環状エステルとしては、工業的に容易に入手可能であれば特に限定されないが、例えば、ε−カプロラクトン、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)などが挙げられる。
環状エステルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。2種以上組み合わせる場合、好ましい組合せとしては、得られる環状エステル変性グルカン誘導体の溶融成形性や機械的物性が使用目的に適合すれば特に限定されないが、例えば、例えば、ε−カプロラクトンとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)の組合せなどが例示できる。
開環重合(グラフト重合)反応において、環状エステルの割合(使用割合)は、特に制限されないが、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体100重量部に対して、例えば、5〜1000重量部(例えば、10〜400重量部)、好ましくは20〜200重量部、さらに好ましくは30〜150重量部(例えば、35〜130重量部)程度であってもよく、通常50〜170重量部(例えば、60〜140重量部、好ましくは65〜120重量部)程度であってもよい。
反応に使用する環状エステルの水分含有量は、できるだけ少ないのが好ましく、環状エステル全体に対して0.5重量%以下[0(又は検出限界)〜0.3重量%程度]、好ましくは0.1重量%以下(例えば、0.0001〜0.05重量%程度)、さらに好ましくは0.01重量%以下(例えば、0.0003〜0.005重量%程度)であってもよい。なお、環状エステルの水分含有量は、慣用の方法、例えば、蒸留、乾燥剤(硫酸マグネシウムなど)に対する接触などにより低減できる。
(開環重合触媒)
本発明では、まず、グラフト重合反応の触媒として、前記のように、環状エステルの開環重合(又はグラフト重合)の触媒となる化合物であって、かつ、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体(又は金属化合物)を使用する。なお、「単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体」とは、活性水素を有する化合物(例えば、水、アルコール、アミンなど)との共存(又は併用)下において、環状エステルの重合を開始可能な金属錯体であって、活性水素を有する化合物(特に、水)が共存しない場合には環状エステルの重合を開始しない(又は実質的に開始しない)金属錯体であってもよい。これらの金属錯体は、ヒドロキシル基(例えば、前記グルカン誘導体のヒドロキシル基など)やアミノ基(第三級アミノ基を除く)などの活性水素を持つ化合物が共存してはじめて環状エステルの開環重合を開始しうる。すなわち、本発明者らは、前記金属錯体をグラフト重合反応触媒として使用することにより、開環重合錯体そのものからの環状エステルの単独重合が進行せず(又は環状エステルの単独重合が実質的に進行せず又は環状エステルの単独重合体を高いレベルで抑制でき)、高効率でグラフト重合体が得られることを見出した。
本発明では、まず、グラフト重合反応の触媒として、前記のように、環状エステルの開環重合(又はグラフト重合)の触媒となる化合物であって、かつ、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体(又は金属化合物)を使用する。なお、「単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体」とは、活性水素を有する化合物(例えば、水、アルコール、アミンなど)との共存(又は併用)下において、環状エステルの重合を開始可能な金属錯体であって、活性水素を有する化合物(特に、水)が共存しない場合には環状エステルの重合を開始しない(又は実質的に開始しない)金属錯体であってもよい。これらの金属錯体は、ヒドロキシル基(例えば、前記グルカン誘導体のヒドロキシル基など)やアミノ基(第三級アミノ基を除く)などの活性水素を持つ化合物が共存してはじめて環状エステルの開環重合を開始しうる。すなわち、本発明者らは、前記金属錯体をグラフト重合反応触媒として使用することにより、開環重合錯体そのものからの環状エステルの単独重合が進行せず(又は環状エステルの単独重合が実質的に進行せず又は環状エステルの単独重合体を高いレベルで抑制でき)、高効率でグラフト重合体が得られることを見出した。
なお、単独で環状エステルの重合を開始しうる金属錯体としては、アルコキシ基、アミノ基などを配位子として有する金属錯体(例えば、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、トリブチルスズモノメトキサイドのような金属アルコキシド)が挙げられる。これらの金属錯体、すなわち、環状エステルの開環重合触媒で、アルコキシ基、アミノ基などを配位子として有する金属錯体(以下、不適合金属錯体と称する)を用いて環状エステルの開環重合を行うと、前記配位子と中心金属との間に環状エステルが開環した構造で連鎖的に挿入され、前記金属錯体そのものが重合開始剤となる環状エステルの単独重合反応が進行する。したがって、前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と環状エステルとの混合系に前記不適合金属錯体を共存させると、グルカン誘導体からのグラフト重合反応のみならず、前記不適合金属錯体自身からの環状エステルの単独重合が進行し、目的のグラフト重合体のほかに多量の環状エステルのホモポリマー(オリゴマー)が副生し、グラフト効率が大きく低下する。
そこで、本発明では、このような特定の開環重合触媒を用い、さらにこのような触媒と特定の溶媒とを組み合わせることにより、環状エステル単独の重合(すなわち、環状エステルのホモポリマーの生成)を抑制する。
前記金属錯体は、中心金属とこの中心金属に配位する配位子とで構成されており、前記金属錯体を構成する具体的な配位子(又は環状エステルに対する重合活性を示さない配位子又は環状エステルに対して不活性な配位子)としては、例えば、一酸化炭素(CO)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など)、酸素原子、炭化水素[例えば、アルカン(メタン、エタン、プロパン、ブタンなどのC1−20アルカン、好ましくはC1−10アルカン、さらに好ましくはC1−6アルカンなど)、シクロアルカン(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのC4−10シクロアルカンなど)、アレーン(ベンゼン、トルエンなどのC6−10アレーンなど)など]、β−ジケトン(例えば、アセチルアセトンなどのβ−C5−10ジケトンなど)、カルボン酸[例えば、アルカンカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸などのC1−20アルカンカルボン酸、好ましくはC2−12アルカンカルボン酸)などの脂肪族カルボン酸;安息香酸などの芳香族カルボン酸など]、炭酸、ホウ酸などに対応する配位子(例えば、ハロ、アルキル、アシルアセトナト、アシルなどのアニオン性配位子)などが挙げられる。これらの配位子は、単独で又は2種以上組み合わせて中心金属に配位していてもよい。配位子は、前記重合活性を示さない限り、少なくともアニオン性配位子(ハロゲン原子、酸素原子、炭化水素、β−ジケトン、カルボン酸などに対応するアニオン性配位子)で構成されていてもよく、特に、脂肪族カルボン酸に対応するアニオン性配位子で構成されていてもよい。
また、開環重合触媒の中心金属としては、例えば、典型金属[例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなど)、周期表第12族金属(亜鉛など)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(アンチモン、ビスマスなど)など]、遷移金属[例えば、希土類金属(又は周期表第3族金属、例えば、イットリウム、ランタン、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、エルビウムなど)、周期表第4族金属(チタン、ジルコニウム、イッテルビウムなど)、周期表第5族金属(ニオブなど)、周期表第6族金属(モリブデンなど)、周期表第7〜9族金属(鉄など)など]などが挙げられる。好ましい中心金属には、スズなどが含まれる。
開環重合触媒は、それ自身が単独で環状エステルの重合を開始しない限り特に制限されることはないが、代表的な開環重合触媒としては、アルコキシ基(及びヒドロキシル基)及び/又はアミノ基(第3級アミノ基以外のアミノ基)を配位子として有しない金属錯体、例えば、カルボン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、酸化物、アセチルアセトネートキレートなどが挙げられる。具体的な開環重合触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、安息香酸リチウムなどのアルカンカルボン酸アルカリ金属塩など)、アルカリ土類金属化合物(例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどアルカンカルボン酸アルカリ土類金属塩)、亜鉛化合物(酢酸亜鉛、アセチルアセトネート亜鉛など)、アルミニウム錯体又はアルミニウム化合物(例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム)、ゲルマニウム錯体又はゲルマニウム化合物(例えば、酸化ゲルマニウムなど)、スズ錯体又はスズ化合物[例えば、スズカルボキシレート(例えば、オクチル酸スズ(オクチル酸第一スズなど)などのスズC2−18アルカンカルボキシレート(又はC2−18アルカンカルボン酸スズ)、好ましくはスズC4−14アルカンカルボキシレート)、アルキルスズカルボキシレート(例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、モノブチルスズトリオクチレート、モノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズジラウリレートなどのモノ又はジC1−12アルキルスズC2−18アルカンカルボキシレート、好ましくはモノ又はジC2−10アルキルスズC2−14アルカンカルボキシレートなど)などのスズ(又はチン)カルボキシレート類;アルキルスズオキサイド(例えば、モノブチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド、ジイソブチルスズオキシドなどのモノ又はジアルキルスズオキサイドなど);ハロゲン化スズ(塩化スズなど);ハロゲン化スズアセチルアセトナト(塩化スズアセチルアセトナトなど);無機酸スズ(硝酸スズ、硫酸スズなど)など]、鉛化合物(酢酸鉛など)、アンチモン化合物(三酸化アンチモンなど)、ビスマス化合物(酢酸ビスマスなど)などの典型金属化合物又は典型金属錯体;希土類金属化合物(例えば、酢酸ランタン、酢酸サマリウム、酢酸ユウロピウム、酢酸エルビウム、酢酸イッテルビウムなどのカルボン酸希土類金属塩)、チタン化合物(酢酸チタンなど)、ジルコニウム化合物(酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネートなど)、ニオブ化合物(酢酸ニオブなど)、鉄錯体又は鉄化合物(例えば、酢酸鉄、鉄アセチルアセトナトなど)などの遷移金属化合物又は遷移金属錯体が挙げられる。
これらの開環重合触媒のうち、特に、スズカルボキシレート類[例えば、スズ(又はチン)カルボキシレート(例えば、オクチル酸第一スズなどのスズC2−10アルカンカルボキシレート)、アルキルスズカルボキシレート(例えば、モノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズビス(2−エチルヘキサノエート)などのモノ又はジC3−8アルキルスズC2−10アルカンカルボキシレート)など]などのスズ錯体(又はスズ化合物)が好ましい。開環重合触媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
グラフト重合反応(開環重合反応)において、前記開環重合触媒の割合(使用割合)は、前記グルカン誘導体(詳細には開始点となるグルカン誘導体)のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、10−7〜10−1モル、好ましくは5×10−7〜5×10−2モル、さらに好ましくは10−6〜3×10−2モル、特に10−5〜10−2モル(例えば、10−5〜8×10−3モル)程度であってもよく、通常2×10−5〜5×10−3モル(例えば2×10−5〜2×10−3モル、好ましくは5×10−5〜10−3モル、さらに好ましくは5×10−5〜5×10−4モル)程度であってもよい。
(溶媒)
本発明では、前記特定の触媒に加えて、さらに水に対する溶解度が小さい特定の溶媒を使用することにより、重合系又は反応における水の影響を極力抑えることができるためか、環状エステルのホモポリマーの生成を高いレベルで抑制する。特定の溶媒を使用することによりホモポリマーの生成を抑制できる理由としては、(1)特定の溶媒が反応系中に存在する水と共沸すること、(2)特定の溶媒が水を包囲してクラスターを形成することなどが考えられる。詳細には、(1)特定の溶媒の沸点は、反応温度付近である場合が多く、反応において系内に存在している水は前記溶媒と共沸し、反応系外(気相)に押し出され、環状エステルの重合に関与する水の影響が緩和される。また、(2)水分子は溶媒中で安定して存在するため複数集まって各分子が自由に交換可能なクラスターを形成しているが、このようなクラスターを形成する傾向は、系内が疎水性になるほど水分子の安定性が低くなることに起因して、疎水性溶媒中において親水性溶媒中よりも大きくなる。そのため、疎水性溶媒中においては溶媒との接触面積をより小さくすべく安定した大きな水分子のクラスターが形成されてこのクラスターが特定の溶媒のクラスターに包囲され、水分子の運動性および反応性が制御され、結果として水を開始剤とする環状エステルの重合反応が抑制される。
本発明では、前記特定の触媒に加えて、さらに水に対する溶解度が小さい特定の溶媒を使用することにより、重合系又は反応における水の影響を極力抑えることができるためか、環状エステルのホモポリマーの生成を高いレベルで抑制する。特定の溶媒を使用することによりホモポリマーの生成を抑制できる理由としては、(1)特定の溶媒が反応系中に存在する水と共沸すること、(2)特定の溶媒が水を包囲してクラスターを形成することなどが考えられる。詳細には、(1)特定の溶媒の沸点は、反応温度付近である場合が多く、反応において系内に存在している水は前記溶媒と共沸し、反応系外(気相)に押し出され、環状エステルの重合に関与する水の影響が緩和される。また、(2)水分子は溶媒中で安定して存在するため複数集まって各分子が自由に交換可能なクラスターを形成しているが、このようなクラスターを形成する傾向は、系内が疎水性になるほど水分子の安定性が低くなることに起因して、疎水性溶媒中において親水性溶媒中よりも大きくなる。そのため、疎水性溶媒中においては溶媒との接触面積をより小さくすべく安定した大きな水分子のクラスターが形成されてこのクラスターが特定の溶媒のクラスターに包囲され、水分子の運動性および反応性が制御され、結果として水を開始剤とする環状エステルの重合反応が抑制される。
すなわち、本発明では、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒(疎水性非芳香族炭化水素系溶媒、単に溶媒、疎水性溶媒などということがある)を使用する。
非芳香族炭化水素系溶媒の20℃における水に対する溶解度は、10重量%以下[例えば、0(又は検出限界)〜8重量%]であればよく、7重量%以下(例えば、0.0001〜6重量%程度)、好ましくは5重量%以下(例えば、0.0005〜4重量%程度)、さらに好ましくは3重量%以下(例えば、0.0008〜2重量%程度)、特に1重量%以下(例えば、0.001〜0.8重量%程度)であってもよく、より効率よくホモポリマーを抑制するためには、0.7重量%以下(例えば、0.002〜0.5重量%、好ましくは0.003〜0.3重量%、さらに好ましくは0.005〜0.1重量%、特に0.007〜0.05重量%程度)であってもよい。水に対する溶解度が20℃において10重量%を越えると、重合系における水の影響を抑える効果が小さく、ホモポリマーの生成を抑制しきれない。
また、非芳香族炭化水素系溶媒の沸点は、環状エステルを反応させるという観点から、例えば、60℃以上(例えば、70〜250℃程度)、好ましくは80℃以上(例えば、85〜220℃程度)、さらに好ましくは90℃以上(例えば、95〜200℃程度)、特に100℃以上(例えば、105〜180℃程度)であってもよい。非芳香族炭化水素系溶媒の沸点があまりに低いと、好適な反応温度に上げる事が出来ず、重合の速度が低下する。
前記溶媒(詳細には、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒)としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素類[例えば、アルカン(例えば、ヘプタン(n−ヘプタンなど)、オクタン(n−オクタン、イソオクタンなど)、ノナン(n−ノナンなど)、デカン(n−デカンなど)、ウンデカン(n−デカンなど)、ドデカン(n−ドデカン、イソドデカンなど)、トリデカン(n−トリデカンなど)、テトラデカン(n−テトラデカンなど)、ヘキサデカン(n−ヘキサデカンなど)などのC7−20アルカン、好ましくはC8−16アルカン、さらに好ましくはC8−12アルカンなど)、シクロアルカン(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのC4−10シクロアルカン、好ましくはC5−8シクロアルカン)など]、脂肪族ケトン類[例えば、ジアルキルケトン(例えば、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジn−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノンなどのC5−15ジアルキルケトン、好ましくはC6−12ジアルキルケトン、さらに好ましくはC7−10ジアルキルケトン)など]、鎖状エーテル類[例えば、ジアルキルエーテル(例えば、ジn−プロピルエーテル、ジn−ブチルエーテルなどのC6−18ジアルキルエーテル、好ましくはC6−14ジアルキルエーテル、さらに好ましくはC6−10ジアルキルエーテル)、アルキルアリールエーテル(例えば、アニソールなどのC1−6アルキル−C6−10アリールエーテル、好ましくはC1−4アルキル−C6−8アリールエーテルなど)など]などの非ハロゲン系溶媒、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。
ハロゲン系溶媒(ハロゲン系非芳香族炭化水素系溶媒)としては、例えば、ハロアルカン[例えば、ジクロロエタン(1,2−ジクロロエタンなど)、トリクロロエタン(1,1,2−トリクロロエタンなど)、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン(1,3−ジクロロプロパンなど)、クロロペンタン(1−クロロペンタン、3−クロロペンタン、2−クロロ−2−メチルブタンなど)、クロロヘキサン(1−クロロヘキサンなど)、クロロオクタンなどのハロC1−10アルカン、好ましくはハロC2−6アルカン、さらに好ましくはクロロC2−4アルカン]、ハロシクロアルカン(例えば、クロロシクロペンタン、クロロシクロヘキサンなどのハロC4−10シクロアルカン、好ましくはハロC5−8シクロアルカン)などのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、前記溶媒は、非ハロゲン系溶媒のみで構成してもよく、ハロゲン系溶媒のみで構成してもよく、非ハロゲン系溶媒とハロゲン系溶媒とで構成してもよい。
なお、前記溶媒は、前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体を溶解しない(又はほとんど溶解しない)溶媒、又は前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体を溶解可能な溶媒であってもよい。
前記非ハロゲン系溶媒は、通常、前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体を溶解しない溶媒であってもよく、前記ハロゲン系溶媒は、通常、前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体を溶解可能な溶媒であってもよい。
なお、前記ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体を溶解しない溶媒は、単独では、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体を溶解しない溶媒であればよく、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と環状エステルとの混合系では、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体は、非溶解状態(又は分散状態)であってもよく、溶解していてもよい。
なお、溶媒は、非芳香族炭化水素系溶媒で構成されていればよく、非芳香族炭化水素系溶媒のみで構成されていてもよく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、非芳香族炭化水素系溶媒と他の溶媒(例えば、20℃において水に対する溶解度が10重量%を越える溶媒、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の芳香族炭化水素系溶媒など)とで構成されていてもよい。通常、溶媒は、20℃において水に対する溶解度が10重量%を越える溶媒を実質的に含まない溶媒、例えば、非芳香族炭化水素系溶媒単独、又は非芳香族炭化水素系溶媒と20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の芳香族炭化水素系溶媒との混合溶媒であってもよい。
20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類[例えば、ベンゼン、アルキル基を有するアレーン(例えば、トルエン、キシレン(o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン)、エチルベンゼンなどのC1−6アルキルベンゼン、好ましくはC1−4アルキルベンゼン、さらに好ましくはC1−2アルキルベンゼン)などのC6−12アレーン、好ましくはC6−10アレーン、さらに好ましくはC6−8アレーンなど]、ハロゲン系芳香族炭化水素類(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロメチルベンゼン、クロロエチルベンゼンなどのなどのハロC6−12アレーン、好ましくはハロC6−10アレーン、さらに好ましくはクロロC6−8アレーンなど)が挙げられる。これらの芳香族炭化水素系溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
溶媒が芳香族炭化水素系溶媒を含む場合、非芳香族炭化水素系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜1/99、好ましくは95/5〜5/95、さらに好ましくは90/10〜10/90程度であってもよい。
なお、前記溶媒は、反応系の粘度や均一性を調整するなどの目的で、親水性の溶媒(詳細には、20℃において水に対する溶解度が10重量%を越える溶媒)を含んでいてもよい。
前記親水性溶媒としては、20℃において水に対する溶解度が10重量%を越える溶媒であり、環状エステルの開環重合の開始剤となる官能基(ヒドロキシル基、一級又は二級アミノ基など)を有しない溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、窒素含有溶媒(ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)、末端ヒドロキシル基が修飾されたグリコール類(例えば、メチルグリコールアセテートなど)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、炭酸プロピレンなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
前記親水性溶媒を使用する場合、親水性溶媒の水分量はできるだけ少ないのが好ましく、親水性溶媒全体に対して0.5重量%以下[0(又は検出限界)〜0.3重量%程度]、好ましくは0.1重量%以下(例えば、0.07重量%以下)、さらに好ましくは0.04重量%以下[例えば、0.01重量%以下(例えば、0.0003〜0.005重量%程度)]であってもよい。
また、前記溶媒において、20℃において水に対する溶解度が10重量%を越える溶媒の割合は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に制限されないが、前記非芳香族炭化水素系溶媒(20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒)100重量部に対して、例えば、200重量部以下(例えば、0.5〜150重量部程度)、好ましくは100重量部以下(例えば、1〜80重量部程度)、さらに好ましくは60重量部以下(例えば、2〜40重量部程度)であればよく、通常30重量部以下[例えば、10重量部以下(例えば、3〜10重量部程度)]であればよい。親水性溶媒の使用割合が多すぎると、重合系における水の影響を抑える効果が小さくなり、環状エステルホモポリマーの生成を抑制しきれない。
溶媒の割合は、溶媒(非ハロゲン系溶媒、ハロゲン系溶媒、これらの溶媒と20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の芳香族炭化水素系溶媒との混合溶媒など)の種類などにもよるが、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体100重量部に対して、60重量部以上(例えば、65〜500重量部程度)程度から選択でき、例えば、60〜450重量部(例えば、65〜400重量部)、好ましくは60〜300重量部(例えば、65〜250重量部)、さらに好ましくは70〜200重量部(例えば、75〜190重量部)、特に80〜180重量部(例えば、85〜170重量部)、通常90〜160重量部(例えば、95〜150重量部、好ましくは100〜160重量部、さらに好ましくは110〜150重量部)程度であってもよい。
また、溶媒の割合は、特に制限されないが、環状エステル100重量部に対して、40〜800重量部(例えば、50〜600重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、60〜500重量部(例えば、70〜400重量部)、好ましくは80〜350重量部(例えば、85〜300重量部)、さらに好ましくは90〜280重量部(例えば、95〜270重量部)、特に100〜250重量部(例えば、110〜240重量部)程度であってもよく、通常100〜180重量部(例えば、110〜150重量部)程度であってもよい。
さらに、溶媒の割合は、特に制限されないが、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体及び環状エステルの総量100重量部に対して、10〜200重量部の範囲から選択でき、例えば、20〜180重量部、好ましくは30〜170重量部(例えば、35〜160重量部)、さらに好ましくは40〜150重量部(例えば、45〜130重量部)、特に50〜120重量部(例えば、55〜100重量部)、通常40〜95重量部(例えば、45〜90重量部、好ましくは50〜85重量部、さらに好ましくは55〜80重量部)程度であってもよい。用いる溶媒の量が少なすぎると、重合系における水の影響を抑える効果が小さくなり、ホモポリマーの生成を抑制しきれず、多すぎると経済的にも環境に対しても好適でない。
(開環重合反応)
開環重合反応(グラフト化反応)は、溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させることができれば、特にその方法は限定されないが、通常、各成分(ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステル、開環重合触媒、および溶媒)を混合することにより行うことができる。
開環重合反応(グラフト化反応)は、溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させることができれば、特にその方法は限定されないが、通常、各成分(ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステル、開環重合触媒、および溶媒)を混合することにより行うことができる。
開環重合反応は、常温下で行ってもよく、通常、反応を効率よく行うため、加温下で行ってもよい。また、開環重合反応は、溶媒の沸点をA(℃)とするとき、反応温度は、(A−20)〜(A+40)(℃)(例えば、A〜(A+35)(℃)の範囲から選択でき、通常、溶媒の沸点以上の温度、例えば、A〜(A+30)(℃)[例えば、A〜(A+25)(℃)]、好ましくはA〜(A+22)(℃)、さらに好ましくは(A+3)〜(A+20)(℃)程度、通常(A+5)〜(A+18)(℃)程度であってもよい。なお、溶媒が混合溶媒である場合には、純物質における沸点が最も低い溶媒の沸点を上記沸点としてもよい。低い温度で反応を行うと、重合系における水の影響を抑える効果が小さく、ホモポリマーの生成を抑制しきれず、用いる溶媒の沸点よりも高すぎる温度で重合を行うと、溶媒の還流が激しくなり制御が困難になる、系内の圧力が上昇するなどの問題がある。
具体的な反応温度は、溶媒の種類にもよるが、例えば、60〜250℃(例えば、70〜240℃)、好ましくは80〜220℃(例えば、90〜200℃)、さらに好ましくは100〜180℃(例えば、105〜170℃)、通常110〜160℃程度であってもよく、反応温度150℃以下(例えば、90〜145℃、好ましくは100〜140℃程度)で反応させることもできる。なお、反応温度が低すぎる(例えば、60℃未満である)と、重合速度が著しく低下し、反応温度が高すぎる(例えば、250℃を越える)と、グルカン誘導体の種類によっては熱分解する虞がある。
開環重合反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、ヘリウムなどの希ガスなど)中で行ってもよく、通常不活性雰囲気下で行うことができる。また、開環重合反応は、常圧又は加圧下で行ってもよい。さらに、グラフト化は、攪拌しながら行ってもよい。
なお、開環重合反応は、環状エステルのホモポリマーの生成や副反応を効率よく抑えるため、出来る限り水分が少ない状態で行うのが好ましい。例えば、反応において、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体、環状エステル、および溶媒の総量に対する水分含有量は、例えば、0.3重量%以下[0(又は検出限界)〜0.25重量%程度]、好ましくは0.2重量%以下(例えば、0.0001〜0.18重量%程度)、さらに好ましくは0.15重量%以下(例えば、0.0005〜0.12重量%程度)、特に0.1重量%以下(例えば、0.001〜0.05重量%程度)であってもよい。
開環重合反応において、反応時間は、特に制限されないが、例えば、10分〜24時間、好ましくは30分〜10時間、さらに好ましくは1〜6時間程度であってもよい。
以上のような方法により、環状エステルのホモポリマー(オリゴマー)の生成を抑制しつつ、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体に環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体(グラフトされたグルカン誘導体)を効率よく得ることができる。
例えば、開環重合反応において、環状エステルの転化率は、70%以上(例えば、75〜100%程度)の範囲から選択でき、例えば、80%以上(例えば、82〜100%程度)、好ましくは85%以上(例えば、88〜99.9%程度)、さらに好ましくは90%以上(例えば、93〜99.8%程度)、特に95%以上(例えば、97〜99.6%程度)、通常98%以上(例えば、98.5〜100%程度)である。
また、本発明では、比較的低い環状エステルの転化率[例えば、10%以上(例えば、15〜70%程度)、好ましくは20%以上(例えば、25〜60%程度)、さらに好ましくは30%以上(例えば、35〜50%程度)]で変性グルカン誘導体を得ることもできる。このような比較的低い転化率でグラフト重合すると、多量に残存した環状エステルにより反応系の粘度上昇を効率よく抑制しつつグラフト重合反応を行うことができる。なお、残存した環状エステルは、後の工程で、脱揮などにより回収することができる。
また、本発明の方法において、グラフト重合した環状エステル(又は環状エステルユニット)をA1(モル)、生成した(詳細には副生成物として生成した)環状エステルのホモポリマーを構成する環状エステル(環状エステルユニット)をA2(モル)とするとき、[A1/(A1+A2)]×100(%)で表されるグラフト効率は、70%以上(例えば、75〜100%程度)の範囲から選択でき、85%以上(例えば、88〜99.9%程度)、好ましくは90%以上(例えば、93〜99.8%程度)、さらに好ましくは95%以上(例えば、96〜99.7%程度)、特に97%以上(例えば、98〜100%程度)である。なお、グラフト効率が高いほど、ホモポリマーの生成が抑制されていることを意味する。
このように、本発明の方法では、環状エステルの反応性を損なうことなく、環状エステルのホモポリマー化を高いレベルで抑制できる。
本発明の方法により得られる変性グルカン誘導体において、環状エステルがグラフトして形成されたグラフト鎖(すなわち、ヒドロキシル基に環状エステルがグラフトしたグラフト鎖、又は環状エステルでグラフト置換されたヒドロキシル基)の割合は、グルカンを構成するグルコース単位1モルに対して、例えば、0.01〜2モル(例えば、0.01〜1.7モル)、好ましくは0.02〜1.5(例えば、0.03〜1.2モル)、さらに好ましくは0.05〜1モル(例えば、0.07〜0.8モル)、特に0.08〜0.7モル(例えば、0.09〜0.5モル)程度である。
なお、変性グルカン誘導体において、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体由来のヒドロキシル基の全てがグラフト化されていてもよく、前記ヒドロキシル基の一部が残存していてもよい。このようなヒドロキシル基が残存した変性グルカン誘導体(例えば、セルロースアシレートなどのセルロース誘導体)において、ヒドロキシル基(残存するヒドロキシル基、グルコース単位のヒドロキシル基)とグラフト鎖との割合は、特に制限されないが、例えば、前者/後者(モル比)=95/5〜10/90、好ましくは90/10〜30/70(例えば、85/15〜50/50)、さらに好ましくは80/20〜60/40程度であってもよい。
なお、変性グルカン誘導体において、アシル基やグラフト鎖の置換度、ヒドロキシル基濃度、グラフト成分の割合などは、慣用の方法、例えば、核磁気共鳴スペクトル(NMR)(1H−NMR、13C−NMRなど)などを用いて測定できる。
なお、変性グラフト誘導体は、通常、ヒドロキシル基を有している。このようなヒドロキシル基には、グラフト鎖の末端のヒドロキシル基、グルコース単位に残存したヒドロキシル基などが挙げられる。このようなヒドロキシル基は、変性グラフト誘導体の吸湿性を抑制又は調整するなどの目的により、必要に応じて保護基により保護してもよい。
保護基としては、ヒドロキシル基を保護可能な非反応性基であれば特に限定されず、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、2−シクロヘキシル−2−プロピル基、ヘキシル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などの置換基(ハロゲン原子など)を有していてもよいC1−12アルキル基(好ましくはC1−6アルキル基)など]、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などの置換基を有していてもよいC5−8シクロアルキル基)、芳香族炭化水素基(フェニル基などのC6−12アリール基、ベンジル基などのアラルキル基など)、架橋環式炭化水素基(アダマンチル基、ノルボルニル基などの置換基を有していてもよい2乃至4架橋環式C3−30炭化水素基)などの炭化水素基;オキサシクロアルキル基(例えば、テトラヒドロフラニル基などの5〜8員オキサシクロアルキル基);アルコキシアルキル基(例えば、1−メトキシエチル基などのC1−6アルコキシ−C1−6アルキル基)などのアセタール系保護基;アルキルカルボニル基(アセチル、プロピオニルなどのC1−10アルキルカルボニル基、好ましくはC2−6アルキルカルボニル基)、シクロアルキルカルボニル基(シクロヘキシルカルボニル基などのC5−8シクロアルキルカルボニル基)、アリールカルボニル基(ベンゾイルなど)などのアシル基などが挙げられる。
保護基は、単独で又は2種以上組みあわせて、ヒドロキシル基を保護してもよい。
ヒドロキシル基を保護する方法としては、例えば、前記方法により得られた環状エステルがグラフト重合したグルカン誘導体と、保護剤(ヒドロキシル基の保護基に対応する保護剤)を反応させる方法などが挙げられる。保護剤としては、保護基に対応する化合物(又は保護基を有する化合物)であって、前記ヒドロキシル基と反応して結合を形成可能な化合物であれば特に限定されず、例えば、保護基がアルキル基である場合には、金属アルコキシドなどを保護剤として用いることができ、保護基がアシル基である場合には、アシル化剤などを保護剤として好適に用いることができる。アシル化剤としては、酸ハライド(例えば、酢酸クロライド、プロピオン酸クロライドなどのアルキルカルボニルクロライドなど)、酸無水物(無水酢酸など)の他、アルケニルアシレート[例えば、1−アルケニルアシレート(例えば、酢酸イソプロペニルなどのC2−6アルカンカルボン酸イソプロペニルエステル)]なども含まれる。保護剤(例えば、アシル化剤)は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。保護剤の使用量は、特に制限されないが、ヒドロキシル基1モルに対して、0.9〜8モル(例えば、1〜6モル)、好ましくは1.2〜5モル程度であってもよい。
前記グルカン誘導体と保護剤との反応においては、塩基触媒{例えば、金属水酸化物、金属炭酸塩などの無機塩基;アミン類、カルボン酸金属塩などの有機塩基など}、酸触媒{例えば、無機酸(硫酸など)、有機酸[例えば、有機スルホン酸、有機カルボン酸など]など}などの触媒を使用してもよい。触媒は単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
また、前記グルカン誘導体と保護剤との反応は、無溶媒又は溶媒(保護剤に対して非反応性の溶媒)中で行ってもよい。溶媒としては、保護剤に対して非反応性の溶媒であればよく、例えば、エーテル類、エステル類、ケトン類、ハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素類、窒素含有溶媒(ピリジンなど)などが挙げられる。溶媒は単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
前記グルカン誘導体と保護剤との反応は、常温下又は加温下で行ってもよく、通常、加温下(例えば、40〜150℃、好ましくは50〜130℃程度)で行ってもよい。また、前記グルカン誘導体と保護剤との反応は、常圧下又は加圧下で行ってもよい。さらに、前記反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。なお、反応時間は、例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜24時間程度であってもよい。
なお、ヒドロキシル基の保護は、前記グラフト化で得られた生成物を分離(及び精製)し、この分離(及び精製)したグラフト生成物と保護剤とを反応させて行ってもよく、前記グラフト化と同一の反応系で連続して行ってもよい。同一の反応系で行う場合、反応系の粘度を下げるため、必要に応じて、溶媒を添加してもよく、グラフト化において予め多量又は過剰量の環状エステルを使用し、この過剰量の環状エステルを溶媒として用いてもよい。
このようにして保護基によりヒドロキシル基が保護された変性グルカン誘導体において、保護基の割合(又はグラフト鎖のヒドロキシ基の保護割合)は、グラフト鎖1モルに対して、0.7〜1モルの範囲から選択でき、例えば、0.9〜1モル、好ましくは0.95〜0.999モル程度であってもよい。
また、変性グラフト誘導体は、わずかであるが、カルボキシル基を有している場合がある。このようなカルボキシル基は、前記残存したヒドロキシル基と同様に保護(又は封止)されていてもよい。このようなカルボキシル基に対する保護基に対応する保護剤としては、カルボジイミド化合物などが挙げられる。なお、カルボキシル基の保護は、前記ヒドロキシル基の保護と同様の条件で行ってもよい。
反応終了後(グラフト重合後、グラフト重合およびヒドロキシル基の保護後)の反応混合物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、中和、沈澱などの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
このようにして得られる変性グルカン誘導体は、熱可塑性プラスチックとして利用でき、粉粒状、ペレット(樹脂ペレット、マスターバッチペレットなど)状、溶媒を含む組成物(ドープ、コーティング組成物など)などの形態で使用できる。
前記変性グルカン誘導体は、樹脂組成物を構成してもよい。このような樹脂組成物において、グルカン誘導体は、単独で又は2種以上組みあわせて使用できる。また、前記樹脂組成物は、樹脂成分として、他の樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、熱可塑性エラストマー、前記範疇に属さないグルカン誘導体(例えば、セルロースアセテートなどのセルロースアシレート)などを含んでいてもよい。他の樹脂は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
前記樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、充填剤(フィラー)又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記変性グルカン誘導体(及びその組成物)は、前記のように、成形性や溶剤溶解性などに優れており、熱可塑性プラスチックとして好適に使用でき、種々の成形体(繊維などの一次元的成形体、フィルム、シート、塗膜(又は薄膜)などの二次元的成形体、三次元的成形体など)を成形するのに有用である。
前記変性グルカン誘導体の成形法としては、公知の成形方法、例えば、押出成形法、射出成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、塗布法(スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、キャスティング成形法などの溶液成膜法)、紡糸法(溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法など)などを利用できる。
本発明の方法では、反応系中に存在している水の影響を受けることなく、環状エステルのホモポリマー(オリゴマー)の生成を極力抑えつつ、グルカン誘導体(例えば、セルロースアセテートなどのセルロースアシレート)に環状エステルをグラフト化できる。このため、本発明では、グラフト効率が高く、低酸価の環状エステルグラフトグルカン誘導体を効率よく得ることができる。
このような本発明の方法により得られた変性グルカン誘導体(例えば、セルロースアシレート誘導体)(又は変性グルカン誘導体で形成された成形体)は、種々の成形体(又は成形品、例えば、射出成形品)は、各種用途、例えば、オフィスオートメーション(OA)・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車などの輸送車両分野、家具・建材などの住宅関連分野、雑貨分野などの各パーツ、ハウジングなどに好適に使用することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例において、特に断りのない限り、「部」とは「重量部」を意味する。
また、実施例において、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析および酸価測定は以下の条件で行った。
(GPC分析)
展開剤:クロロホルム
流量:1ml/min
カラム温度:40℃
カラム構成:4本のカラム(昭和電工(株)製、「Shodex K−6」1本、「Shodex K−801」1本、「Shodex K−802」2本の計4本)を連結したもの
使用機器
(1)ポンプ:(株)島津製作所製、「LC−10AD」
(2)デガッサー:(株)パーキンエルマー製、「ERC−3612」
(3)RI検出器:日本分光(株)製、「RI−930」
(4)UV検出器:日本分光(株)製、「UV−970」
(5)オーブン:(株)島津製作所製、「CTA−10A」。
展開剤:クロロホルム
流量:1ml/min
カラム温度:40℃
カラム構成:4本のカラム(昭和電工(株)製、「Shodex K−6」1本、「Shodex K−801」1本、「Shodex K−802」2本の計4本)を連結したもの
使用機器
(1)ポンプ:(株)島津製作所製、「LC−10AD」
(2)デガッサー:(株)パーキンエルマー製、「ERC−3612」
(3)RI検出器:日本分光(株)製、「RI−930」
(4)UV検出器:日本分光(株)製、「UV−970」
(5)オーブン:(株)島津製作所製、「CTA−10A」。
(酸価測定)
JIS K0070に基づいて測定した
測定方法:中和滴定法
溶剤:クロロホルム
指示薬:フェノールフタレイン溶液。
JIS K0070に基づいて測定した
測定方法:中和滴定法
溶剤:クロロホルム
指示薬:フェノールフタレイン溶液。
(機械的特性)
さらに、実施例1および比較例1で得られた生成物(グラフト体)をホットプレス機に供給し、プレス温度220℃、プレス圧力200kgf/cm2、および冷却温度3分の条件で厚み0.8mmのプレス片(試験片)を成形し、この試験片の引張り弾性率および伸びを、JIS K7113に準じて測定した。なお、引張り弾性率および伸びの測定は、精製前後(未反応の環状エステルの除去前後)の生成物(グラフト体)のそれぞれについて行った。
さらに、実施例1および比較例1で得られた生成物(グラフト体)をホットプレス機に供給し、プレス温度220℃、プレス圧力200kgf/cm2、および冷却温度3分の条件で厚み0.8mmのプレス片(試験片)を成形し、この試験片の引張り弾性率および伸びを、JIS K7113に準じて測定した。なお、引張り弾性率および伸びの測定は、精製前後(未反応の環状エステルの除去前後)の生成物(グラフト体)のそれぞれについて行った。
(実施例1)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torr(=約530Pa)で減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.5%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.30モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.05mgKOH/gであった。得られた生成物(カプロラクトンのホモポリマーの除去前の生成物)を成形した試験片の引張り弾性率は178.7MPaであり、伸びは149.5%であった。また、GPCチャートからは、グラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.28モルであった。また、得られた生成物(カプロラクトンのホモポリマーの除去後の生成物)を成形した試験片の引張り弾性率は180.5MPa、伸びは145.8%であり、ホモポリマーの除去前後(再沈前後)において機械的特性はほとんど変わりなかった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torr(=約530Pa)で減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.5%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.30モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.05mgKOH/gであった。得られた生成物(カプロラクトンのホモポリマーの除去前の生成物)を成形した試験片の引張り弾性率は178.7MPaであり、伸びは149.5%であった。また、GPCチャートからは、グラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.28モルであった。また、得られた生成物(カプロラクトンのホモポリマーの除去後の生成物)を成形した試験片の引張り弾性率は180.5MPa、伸びは145.8%であり、ホモポリマーの除去前後(再沈前後)において機械的特性はほとんど変わりなかった。
(実施例2)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン67部(DIPK)を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。ここで、水を添加して溶解した反応液の水分を0.1重量%となるように調整した。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.1%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.29モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.44mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.21モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン67部(DIPK)を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。ここで、水を添加して溶解した反応液の水分を0.1重量%となるように調整した。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.1%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.29モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.44mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.21モルであった。
(実施例3)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジエチルケトン(DEK)67部を加えて125℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、125℃で3時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は79.2%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は1.83モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.46mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は1.76モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジエチルケトン(DEK)67部を加えて125℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、125℃で3時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は79.2%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は1.83モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.46mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は1.76モルであった。
(実施例4)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、メチルイソブチルケトン(MIBK)67部を加えて135℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、135℃で3時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は98.8%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.24モルであった。)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.27mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.21モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、メチルイソブチルケトン(MIBK)67部を加えて135℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、135℃で3時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は98.8%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.24モルであった。)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.27mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.21モルであった。
(実施例5)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジ‐n‐プロピルケトン(DnPK)67部を加えて155℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、155℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.4%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.30であった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.37mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.25モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジ‐n‐プロピルケトン(DnPK)67部を加えて155℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、155℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.4%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.30であった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.37mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.25モルであった。
(実施例6)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、LM−80、平均置換度2.10、グルコース単位あたりの分子量250.2)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.1%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.17モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.03mgKOH/gであった。また、GPCチャートからは、グラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.15モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、LM−80、平均置換度2.10、グルコース単位あたりの分子量250.2)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.1%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.17モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.03mgKOH/gであった。また、GPCチャートからは、グラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.15モルであった。
(実施例7)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、NAC、平均置換度2.74、グルコース単位あたりの分子量277.1)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.0%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.41モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.01mgKOH/gであった。また、GPCチャートからは、グラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.36モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、NAC、平均置換度2.74、グルコース単位あたりの分子量277.1)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は99.0%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.41モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.01mgKOH/gであった。また、GPCチャートからは、グラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は2.36モルであった。
(実施例8)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2)50部、L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製)50部を加え、70℃、6時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.04重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で3時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のL−ラクチド転化率は84.1%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したL−ラクチドの平均モル数(MS’)は1.54モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は5.90mgKOH/gであった。また、GPCチャートからは、グラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のL−ラクチドの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたL−ラクチドの平均モル数(MS)は1.49モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2)50部、L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製)50部を加え、70℃、6時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.04重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で3時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のL−ラクチド転化率は84.1%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したL−ラクチドの平均モル数(MS’)は1.54モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は5.90mgKOH/gであった。また、GPCチャートからは、グラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のL−ラクチドの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたL−ラクチドの平均モル数(MS)は1.49モルであった。
(実施例9)
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、1グルコース単位の分子量263.2)70部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したカプロラクトン30部、ジイソプロピルケトン(DIPK)40部、シクロヘキサノン10部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したら0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は93.3%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は0.92モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.45mgKOH/gであった。また、GPCチャートからはグラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在するカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、1グルコース環にグラフトしたカプロラクトンの量(MS)は0.88となった。
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、1グルコース単位の分子量263.2)70部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したカプロラクトン30部、ジイソプロピルケトン(DIPK)40部、シクロヘキサノン10部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したら0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は93.3%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は0.92モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.45mgKOH/gであった。また、GPCチャートからはグラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在するカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、1グルコース環にグラフトしたカプロラクトンの量(MS)は0.88となった。
(実施例10)
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、1グルコース単位の分子量263.2)80部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したカプロラクトン20部、ジイソプロピルケトン(DIPK)30部、シクロヘキサノン37部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したら0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は86.4%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は0.50モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.76mgKOH/gであった。また、GPCチャートからはグラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在するカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、1グルコース環にグラフトしたカプロラクトンの量(MS)は0.46となった。
撹拌機、いかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、1グルコース単位の分子量263.2)80部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したカプロラクトン20部、ジイソプロピルケトン(DIPK)30部、シクロヘキサノン37部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したら0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は86.4%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は0.50モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は1.76mgKOH/gであった。また、GPCチャートからはグラフト体に由来する単峰性のピークが得られた。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在するカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、1グルコース環にグラフトしたカプロラクトンの量(MS)は0.46となった。
(比較例1)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、シクロヘキサノン(ANON)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は98.4%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.27モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は6.10mgKOH/gであった。得られた生成物(カプロラクトンのホモポリマーの除去前の生成物)を成形した試験片の引張り弾性率は175.2MPaであり、伸びは150.5%であった。また、GPCチャートからはグラフト体に由来するメインピークの裾部分にオリゴマーに由来するショルダーピークが観察された。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は1.94モルであった。また、得られた生成物(カプロラクトンのホモポリマーの除去後の生成物)を成形した試験片の引張り弾性率は281.3MPa、伸びは125.8%であり、多量のホモポリマーが除去されることにより、精製前後(再沈前後)において機械的特性が大きく変化した。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、シクロヘキサノン(ANON)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は98.4%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.27モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は6.10mgKOH/gであった。得られた生成物(カプロラクトンのホモポリマーの除去前の生成物)を成形した試験片の引張り弾性率は175.2MPaであり、伸びは150.5%であった。また、GPCチャートからはグラフト体に由来するメインピークの裾部分にオリゴマーに由来するショルダーピークが観察された。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は1.94モルであった。また、得られた生成物(カプロラクトンのホモポリマーの除去後の生成物)を成形した試験片の引張り弾性率は281.3MPa、伸びは125.8%であり、多量のホモポリマーが除去されることにより、精製前後(再沈前後)において機械的特性が大きく変化した。
(比較例2)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジメチルスルホキシド(DMSO)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は41.6%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は0.961モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は3.72mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は0.781モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジメチルスルホキシド(DMSO)67部を加えて160℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は41.6%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は0.961モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は3.72mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は0.781モルであった。
(比較例3)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、シクロペンタノン(CYP)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は98.5%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.28モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は5.23mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は1.95モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、110℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、シクロペンタノン(CYP)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液にモノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は98.5%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.28モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は5.23mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は1.95モルであった。
(比較例4)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、100℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、メチルエチルケトン(MEK)67部を加えて100℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、100℃で3時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は28.1%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は0.650モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は3.58mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は0.557モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、100℃、4時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、メチルエチルケトン(MEK)67部を加えて100℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.02重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、100℃で3時間攪拌しながら加熱を行った。その後、反応液を室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は28.1%(転化率からグルコース単位1モルに対してホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は0.650モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は3.58mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、カプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は0.557モルであった。
(比較例5)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2)50部、L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製)50部を加え、70℃、6時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したシクロヘキサノン(ANON)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.04重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で3時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のL−ラクチド転化率は91.5%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したL−ラクチドの平均モル数(MS’)は1.68モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は37.7mgKOH/gであった。また、GPCチャートからはグラフト体に由来するメインピークの裾部分にオリゴマーに由来するショルダーピークが観察された。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、L−ラクチドの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたL−ラクチドの平均モル数(MS)は0.91モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2)50部、L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製)50部を加え、70℃、6時間、4Torrで減圧乾燥した。その後、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したシクロヘキサノン(ANON)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、0.04重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、160℃で3時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のL−ラクチド転化率は91.5%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したL−ラクチドの平均モル数(MS’)は1.68モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は37.7mgKOH/gであった。また、GPCチャートからはグラフト体に由来するメインピークの裾部分にオリゴマーに由来するショルダーピークが観察された。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、L−ラクチドの単独重合体を除去した。さらに60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたL−ラクチドの平均モル数(MS)は0.91モルであった。
(比較例6)
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、その後、予備乾燥することなく、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、1.1重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は98.5%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.28モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は11.3mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は0.50モルであった。
撹拌機、およびいかり型撹拌翼を備えた反応器に、酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、平均置換度2.41、グルコース単位あたりの分子量263.2、比重1.33、平均重合度140)50部を加え、その後、予備乾燥することなく、乾燥窒素によりパージを行い、還流冷却管を取り付け、事前に乾燥、蒸留したε−カプロラクトン50部、ジイソプロピルケトン(DIPK)67部を加えて140℃に加熱、撹拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。溶解した反応液の水分をカールフィッシャー水分計にて測定したところ、1.1重量%であった。この反応液に、モノブチルスズトリオクチレート0.25部を添加し、140℃で2時間撹拌しながら加熱を行った。その後、反応液を、室温まで冷却し反応を終結させ反応物を得た。得られた反応物のカプロラクトン転化率は98.5%(転化率からグルコース単位1モルに対して、ホモポリマー化したものも含め反応したカプロラクトンの平均モル数(MS’)は2.28モルであった)であり、60℃で減圧乾燥後、溶媒を取り除いた後の反応物の酸価は11.3mgKOH/gであった。さらに、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去した。さらに、60℃にて5時間以上加熱乾燥し、1H−NMRにより、得られたグラフト体の一次構造を評価した。その結果、グルコース単位1モルに対してグラフトしたカプロラクトンの平均モル数(MS)は0.50モルであった。
得られた結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2において、「CA」は酢酸セルロース、「CL」はε−カプロラクトン、「LA」はL−ラクチドを示す。
Claims (16)
- 溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させ、環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体を製造する方法であって、(1)前記開環重合触媒が、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体であり、かつ(2)前記溶媒が、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成されている変性グルカン誘導体の製造方法。
- ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体が、平均置換度1.5〜2.95のセルロースC2−4アシレートである請求項1記載の製造方法。
- 環状エステルが、C4−10ラクトンおよびC4−10環状ジエステルから選択された少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
- 開環重合触媒が、ハロゲン原子、酸素原子、炭化水素、β−ジケトンおよびカルボン酸から選択された少なくとも1種に対応するアニオン性配位子を有する金属錯体である請求項1記載の製造方法。
- 開環重合触媒が、少なくとも脂肪族カルボン酸に対応するアニオン性配位子を有するスズ錯体で構成されている請求項1記載の製造方法。
- 溶媒が、脂肪族炭化水素類、脂肪族ケトン類、および鎖状エーテル類から選択された少なくとも1種で構成されている請求項1記載の製造方法。
- 溶媒が、ハロゲン化炭化水素類で構成されている請求項1記載の製造方法。
- 溶媒の割合が、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体100重量部に対して60重量部以上である請求項1記載の製造方法。
- 溶媒の割合が、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体100重量部に対して60〜300重量部であり、環状エステル100重量部に対して80〜350重量部である請求項1記載の製造方法。
- 溶媒の割合が、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体および環状エステルの総量100重量部に対して40〜95重量部である請求項1記載の製造方法。
- ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体、環状エステルおよび溶媒の総量に対して、水分含有量0.3重量%以下の条件下で反応させる請求項1記載の製造方法。
- (i)ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体が、平均置換度1.9〜2.6のセルロースC2−4アシレートであり、(ii)開環重合触媒が、スズC6−10アルカンカルボキシレート、およびモノ又はジC3−8アルキルスズC6−10アルカンカルボキシレートから選択された少なくとも1種の有機スズ錯体で構成されており、(iii)溶媒が、脂肪族炭化水素類、脂肪族ケトン類、鎖状エーテル類、およびハロゲン化炭化水素類から選択された少なくとも1種であって、沸点80℃以上及び20℃における水に対する溶解度が5重量%以下の溶媒で構成されており、(iv)溶媒の割合が、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体100重量部に対して65〜250重量部および環状エステル100重量部に対して90〜280重量部であり、かつ(v)ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体、環状エステル、および溶媒の総量に対して水分含有量が0.15重量%以下である条件下で反応させる請求項1記載の製造方法。
- グラフト重合した環状エステルをA1(モル)、生成した環状エステルのホモポリマーを構成する環状エステルをA2(モル)とするとき、[A1/(A1+A2)]×100(%)で表されるグラフト効率90%以上で変性グルカン誘導体を得る請求項1記載の製造方法。
- 溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させ、環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体を製造する際に、以下の(1)および(2)の条件で反応させることにより、環状エステルのホモポリマーの生成を抑制する方法。
(1)前記開環重合触媒が、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体である
(2)前記溶媒が、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成されている - 請求項1記載の製造方法により得られた変性グルカン誘導体。
- 請求項15記載の変性グルカン誘導体で形成された成形品。
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