JP2010095588A - ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物の製造方法 - Google Patents

ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物の製造方法 Download PDF

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浩一 梅本
Noriyuki Yaegashi
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Abstract

【課題】グルカン誘導体(セルロースアシレートなど)のヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分(C4−10ラクトンなど)がグラフト重合したヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を含むドープに、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体に対する貧溶媒である極性有機溶媒を混合し、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる。前記極性有機溶媒は、アルコール類(特に、イソプロパノールなどのC1−4アルカノール)であってもよい。また、前記極性有機溶媒の混合割合は、ドープ1重量部に対して1〜15重量部程度であってもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性プラスチックとして使用可能なヒドロキシ酸変性グルカン誘導体(例えば、セルロースアシレート誘導体)の粒状物を製造する方法、およびこの方法により得られる粒状物に関する。
セルロース、デンプン(又はアミロース)、デキストランなどのグルコースを構成単位とするグルカンは、熱可塑性を有しておらず、そのままでは、プラスチック(熱可塑性プラスチック)として使用できない。そのため、このようなグルカン(特にセルロース)は、熱可塑化、溶剤への溶解性向上や、可塑剤との親和性向上のため、アシル化(アセチル化など)されることにより、フィルムや繊維など各種形態に加工され種々の用途に利用されている。前記グルカンのうち、特に、セルロースは、アシル化され、セルロースアシレート(特に、セルロースアセテート)として広く用いられている。そして、このようなセルロースアシレート(特に、セルロースエステル)と、ラクトン、ラクチドなどとを反応させ、セルロースアシレートを変性することにより、セルロースアシレートの溶解性、熱溶融性や溶融成形性を改良する技術も報告されている。
このような変性セルロースアシレートは、前記のように、ラクトン、ラクチドなどの環状エステルや、乳酸などのヒドロキシカルボン酸などと、セルロースアシレートを反応させることにより得られる。このような反応により得られる反応生成物には、通常、変性セルロースアシレート以外にも、未反応成分(環状エステル、セルロースアシレートなど)、副生成物(環状エステルのオリゴ又はポリマーなど)などが含まれているため、変性セルロースアシレートとして得るためには、反応生成物から慣用の方法により分離(精製)する必要がある。
例えば、特開昭59−86621号公報(特許文献1)には、セルロース誘導体(セルロースアセテートなど)の存在下で環状エステル(ε−カプロラクトンなど)の開環重合触媒を加えて、環状エステルを開環重合させるグラフト重合体の製造方法が開示されている。この文献には、開環重合により得られる反応物は、グラフト重合体と、環状エステルのグラフトしていないセルロース誘導体及び環状エステルのホモポリマーが一部含まれることもあるが、たとえセルロース誘導体と環状エステルのホモポリマーとの相溶性がそれ程良くなくても、グラフト重合体が仲介役となりグラフトしていないセルロース誘導体と環状エステルのホモポリマーとの混和性を良くするので、見かけ上均一な樹脂となること、またグラフト重合体単独を得たい場合には、常法に従って溶剤及び非溶剤を用いて分別すればグラフト重合体だけを得ることができること記載されている。具体的には、反応により得られた淡黄色の透明なグラフト重合体にアセトンを加えて溶解した後、四塩化炭素に沈殿させ、生成した固体を分離し、さらにこの固体を四塩化炭素によりソックスレー抽出により精製したこと(実施例1)、反応により得られた淡黄色の透明なグラフト重合体5部をアセトン25部に溶解した後、溶液を攪拌しながらベンゼン600部を加えて重合物を析出させることにより分離精製したこと(実施例2)が記載されている。
また、WO2007/086318号公報(特許文献2)には、溶媒中、開環重合触媒の存在下、ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体と、環状エステルとを反応させ、環状エステルがグラフト重合した変性グルカン誘導体(グラフト体)を製造する方法であって、(1)前記開環重合触媒が、単独で環状エステルの重合を開始しない金属錯体であり、かつ(2)前記溶媒が、20℃において水に対する溶解度が10重量%以下の非芳香族炭化水素系溶媒で構成されている変性グルカン誘導体の製造方法が開示されている。そして、この文献には、反応終了後(グラフト重合後、グラフト重合およびヒドロキシル基の保護後)の反応混合物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、中和、沈澱などの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できると記載されており、具体的には、クロロホルム90部に対して反応物10部を溶解後、この溶液を大過剰のメタノール900部中にゆっくりと滴下し、沈殿したグラフト体を濾別することによって、少量存在する未反応のカプロラクトンの単独重合体を除去したことが記載されている。
このような方法では、変性セルロースアシレートを含む分離成分(析出物、沈殿物)を、糸鞠状や透明ゲル状など、分離工程の容器内ではおよそひとかたまりの固体状(塊状)として得ることができる。
一方、変性セルロースアシレートは、前記分離段階における精製効率や、分離後の乾燥処理の効率、また、湿式成形加工時の再溶解工程における溶解性の点などを考慮すると、析出物または沈殿物を粒状状態で得るのが好ましい場合もある。また、粒状状態であれば、流動性が付与でき、処理槽(容器)からの排出や、次またはそれ以降の工程設備への移送が行いやすく、取扱性(ハンドリング性)が向上するという点でも粒状が好ましい場合もある。しかし、反応終了後の分離精製工程や、再溶解後の再沈殿工程(または再回収工程)において、このような粒状の変性セルロースアシレートを製造する方法については知られていない。
粒状にする慣用の方法としては、例えば、塊状の変性セルロースアシレートを粉砕する方法などが考えられるが、このような粉砕法では、塊状物を新たに粉砕する工程が必要であり、粒状物を得るには煩雑な工程を経る必要がある。また、粉砕により、変性セルロースアシレートそのものの特性又は物性が変化(例えば、重合度の低下、さらにはそれに伴う成型品における機械的強度の低下など)する可能性もある。
特開昭59−86621号公報(特許請求の範囲、第3頁左下欄4〜15行、第5頁左上欄4〜6行) WO2007/086318号公報(特許請求の範囲、段落番号[0112])
従って、本発明の目的は、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を効率よく製造する方法、およびこの方法により得られる粒状物を提供することにある。
本発明の他の目的は、少ない溶媒の使用量でヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を製造する方法、およびこの方法により得られる粒状物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、精製しつつ粒状化できるヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物の製造方法、およびこの方法により得られる粒状物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を含むドープに、特定の溶媒を混合することにより、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物が生成すること、しかも、生成する粒状物は、ヒドロキシ酸成分の単独重合体の含有割合などが少なく、高度に精製された粒状物であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の製造方法は、グルカン誘導体のヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合したヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を製造する方法であって、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を含むドープに、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体に対する貧溶媒である極性有機溶媒を攪拌下で混合し、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる造粒工程を少なくとも含む製造方法である。
前記製造方法において、グルカン誘導体は、例えば、セルロースアシレート(例えば、セルロースアセテートなどのセルロースC2−4アシレートなど)であってもよく、ヒドロキシ酸成分は、ヒドロキシ酸(例えば、ヒドロキシC2−10アルカンカルボン酸など)、ラクトン(例えば、C4−10ラクトンなど)、および環状ジエステル(例えば、C4−10環状ジエステルなど)から選択された少なくとも1種であってもよい。
また、前記製造方法において、ドープを構成する溶媒は、例えば、環状エーテル、アミド類、環状ケトン類、スルホキシド類、ハロアルカン類、及び環状エステルから選択された少なくとも1種であってもよい。特に、前記ドープを構成する溶媒は、C5−8シクロアルカノンで構成されていてもよい。
前記製造方法において、ドープ中のヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の濃度は、例えば、2〜70重量%程度であってもよい。なお、前記ドープは、溶媒(例えば、C5−8シクロアルカノン)中で、グルカン誘導体とヒドロキシ酸成分とを反応させる工程を経て得られた反応液で構成されていてもよい。このような反応液で構成されたドープには、反応副生成物(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の単独重合体など)、未反応のヒドロキシ酸成分などが含まれているが、このような不純物を含んでいても、造粒工程において効率よく精製できる。
また、前記製造方法において、極性有機溶媒は、アルコール類であってもよい。特に、前記極性有機溶媒は、C1−4アルカノールで構成されていてもよい。前記極性有機溶媒の混合割合は、ドープ1重量部に対して、例えば、1〜15重量部程度であってもよい。
特に、極性有機溶媒がイソプロパノールである場合には、極性有機溶媒の混合割合を少なくできる。そのため、例えば、前記方法において、極性有機溶媒がイソプロパノールで構成されており、極性有機溶媒の混合割合がドープ1重量部に対して1〜5.5重量部程度であってもよい。
前記造粒工程は、具体的には、攪拌下で、ドープに貧溶媒を混合して、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を60℃未満の温度で生成させる攪拌造粒工程を少なくとも含んでいてもよい。
代表的には、前記造粒工程は、以下の(1)〜(3)のいずれかであってもよい。
(1)攪拌下で、ドープに貧溶媒を混合し、60℃未満の温度でヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程を含む造粒工程
(2)ドープに貧溶媒の一部を60℃以上の温度で混合する混合工程と、この混合工程により得られた混合液に、攪拌下で残りの貧溶媒を混合し、60℃未満の温度で前記変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程とを含む造粒工程
(3)ドープに貧溶媒を60℃以上の温度で混合する混合工程と、この混合工程により得られた混合液を60℃未満の温度で攪拌し、前記変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程とを含む造粒工程。
本発明には、前記製造方法により得られる粒状物も含まれる。このような粒状物において、平均粒子径は、例えば、30〜5000μm程度であってもよく、平均真球度は、例えば、0.1〜1程度であってもよい。また、前記粒状物は、高いレベルで精製されており、例えば、酸価は1.5mgKOH/g以下であってもよい。
なお、本明細書において、「平均置換度」とは、グルコース単位の2,3および6位のヒドロキシル基のうち、誘導体化(エーテル化、エステル化、グラフト化など)されたヒドロキシル基(例えば、アシル基、グラフト鎖)の置換度(置換割合)の平均(又はグルコース単位の2,3および6位における誘導体化されたヒドロキシル基の平均モル数)を意味し、セルロースエステルなどにおける「平均置換度」と同意である。
本発明の方法では、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を効率よく製造できる。また、本発明の方法では、少ない溶媒の使用量でヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を製造できる。さらに、本発明の方法では、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を精製しつつ粒状化できる。このような本発明の方法は、煩雑な精製工程を伴うことなく、簡便な工程により、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状化、さらには精製を行うことができ、極めて有用である。
本発明では、グルカン誘導体のヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合したヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を製造する。そして、このような本発明の方法は、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を含むドープに、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体に対する貧溶媒である極性有機溶媒を混合し、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる造粒工程を少なくとも含む。
[ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体]
ドープに含まれるヒドロキシ酸変性グルカン誘導体は、グルカン誘導体のヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合した化合物であり、詳細には、グルカン誘導体(ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体)と、このグルカン誘導体のヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合して形成されたグラフト鎖とで構成されている。
(グルカン誘導体)
グラフト重合反応に使用するグルカン誘導体(ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体)としては、ヒドロキシ酸成分がグラフト重合するためのヒドロキシル基を有している限り特に限定されないが、通常、グルカンのグルコース単位のヒドロキシル基の一部が誘導体化(エーテル化、エステル化など)されたグルカン誘導体であってもよい。すなわち、前記グルカン誘導体は、グルカンのグルコース単位(又はグルコース骨格)に含まれるヒドロキシル基(グルコース単位の2,3および6位に位置するヒドロキシル基)に、アシル基などが置換(結合)して誘導体化されたグルカン誘導体であって、前記ヒドロキシル基の一部が残存したグルカン誘導体である場合が多い。ヒドロキシル基を有するグルカン誘導体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
グルカンとしては、特に限定されず、例えば、β−1,4−グルカン、α−1,4−グルカン、β−1,3−グルカン、α−1,6−グルカンなどが挙げられる。代表的なグルカンとしては、例えば、セルロース、アミロース、デンプン、レンチナン、デキストランなどの多糖類が挙げられる。これらのグルカンうち、産業的な観点から、セルロース、デンプン(又はアミロース)が好ましく、特に、セルロースが好ましい。グルカンは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
具体的なグルカン誘導体としては、例えば、エーテル化されたグルカン、エステル化されたグルカンなどが挙げられる。以下に、代表的なグルカン誘導体として、セルロース誘導体について詳述する。
セルロース誘導体としては、セルロースエーテル[例えば、アルキルセルロース(例えば、C1−4アルキルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシC2−4アルキルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(ヒドロキシC2−4アルキルC1−4アルキルセルロースなど)、シアノアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロースなど)など]、セルロースエステル(セルロースアシレート;硝酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル;硝酸酢酸セルロースなどの無機酸及び有機酸の混酸セルロースエステルなど)などが挙げられる。
好ましいセルロース誘導体には、アシルセルロース(又はセルロースアシレート)が含まれる。セルロースアシレートにおいて、アシル基は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、アルキルカルボニル基[例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などのC2−10アルキルカルボニル基(例えば、C2−8アルキルカルボニル基、好ましくはC2−6アルキルカルボニル基、さらに好ましくはC2−4アルキルカルボニル基)など]、シクロアルキルカルボニル基(例えば、シクロヘキシルカルボニル基などのC5−10シクロアルキルカルボニル基など)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、カルボキシベンゾイル基などのC7−12アリールカルボニル基など)などが挙げられる。アシル基は、単独で又は2種以上組み合わせてセルロースのグルコース単位に結合していてもよい。これらのアシル基のうち、アルキルカルボニル基が好ましい。特に、これらのアシル基のうち、少なくともアセチル基がグルコース単位に結合しているのが好ましく、例えば、アセチル基のみが結合していてもよく、アセチル基と他のアシル基(C3−4アシル基など)とが結合していてもよい。
代表的なセルロースアシレートとしては、セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−6アシレート、好ましくはセルロースC2−4アシレートなどが挙げられ、特にセルロースアセテート(特に、セルロースジアセテート又はセルローストリアセテート)が好ましい。
グルカン誘導体(特に、セルロース誘導体、例えば、セルロースアセテートなどのセルロースアシレート)において、平均置換度(アシル基などの平均置換度、グルコース単位の2,3および6位における誘導体化されたヒドロキシル基のグルコース単位1モルあたりの平均モル数)は、0.5〜2.999の範囲から選択でき、例えば、0.5〜2.99(例えば、0.7〜2.98)、好ましくは0.8〜2.97(例えば、1〜2.96)、さらに好ましくは1.5〜2.95[例えば、1.7以上(例えば、1.8〜2.95、好ましくは1.9〜2.93)]、特に2.25以上[例えば、2.3以上(例えば、2.3〜2.95)、好ましくは2.35〜2.93(例えば、2.38〜2.88)、さらに好ましくは2.4以上(例えば、2.5〜2.85)]であってもよく、通常2〜2.95(例えば、2.05〜2.92)であってもよい。比較的高い置換度[例えば、平均置換度2.25以上(例えば、2.3以上、好ましくは2.4以上)]を有するグルカン誘導体を用いると、耐湿性などにおいて有利である(すなわち、吸湿性は低いほうが望ましい)。また、比較的高い置換度を有するグルカン誘導体は、グルカン誘導体の含水率を低減しやすい。そのため、変性グルカン誘導体の製造において、ヒドロキシ酸成分の単独重合体の生成を十分に低減するのに有用である。しかも、含水率を低減しやすいため、成形品の寸法安定性に優れ、屈折率の変化を低減できる。なお、ヒドロキシ酸成分が、ラクトン成分とα−ヒドロキシ酸成分[α−ヒドロキシ酸及び環状ジエステルから選択された少なくとも1種(例えば、乳酸及び/又はラクチド)]とで構成されている場合、グルカン誘導体において、アシル基などの平均置換度は、特に、2.6以下[例えば、1.5〜2.55、好ましくは2.5未満(例えば、1.7〜2.49)、さらに好ましくは1.8〜2.48、通常1.9〜2.46(例えば、2〜2.45)程度]であってもよい。このような平均置換度を有するグルカン誘導体を用いると、ヒドロキシ酸成分をα−ヒドロキシ酸成分で構成しても、グラフトによりグルカン誘導体を可塑化しやすく、熱可塑化の観点で有利である。
また、グルカン誘導体(例えば、セルロースアシレートなどのセルロース誘導体)において、ヒドロキシル基(残存するヒドロキシル基、グルコース単位のヒドロキシル基)の割合は、特に制限されないが、グルコース単位1モルに対して、例えば、平均0.01〜2.5モル(例えば、0.05〜2モル)、好ましくは0.1〜1.5モル(例えば、0.2〜1.2モル)、さらに好ましくは0.3〜1モル(例えば、0.4〜0.7モル)程度であってもよい。
グルカン誘導体(又はグルカン)の重合度は、変性グルカン誘導体を所望の目的に使用できれば特に制限はなく、現在工業的に入手可能な市販品と同程度であれば好適に使用可能である。例えば、グルカン誘導体の平均重合度(粘度平均重合度)は、70以上(例えば、80〜800)の範囲から選択でき、100〜500、好ましくは110〜400、さらに好ましくは120〜350程度であってもよい。
なお、グルカン誘導体(セルロースアシレートなど)は、市販の化合物(例えば、セルロースアセテートなど)を使用してもよく、慣用の方法により合成してもよい。例えば、セルロースアシレートは、通常、セルロースをアシル基に対応する有機カルボン酸(酢酸など)により活性化処理した後、硫酸触媒を用いてアシル化剤(例えば、無水酢酸などの酸無水物)によりトリアシルエステル(特に、セルローストリアセテート)を調製し、過剰量のアシル化剤(特に、無水酢酸などの酸無水物)を不活性化し、脱アシル化又はケン化(加水分解又は熟成)によりアシル化度を調整することにより製造できる。アシル化剤としては、酢酸クロライドなどの有機酸ハライドであってもよいが、通常、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などのC2−6アルカンカルボン酸無水物などが使用できる。
なお、一般的なセルロースアシレートの製造方法については、「木材化学(上)」(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。また、他のグルカン(例えば、デンプンなど)についても、セルロースアシレートの場合と同様の方法でアシル化(および脱アシル化)できる。
グラフト鎖は、このグルカン誘導体のヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合(又は反応)して形成されている。すなわち、変性グルカン誘導体では、元のグルカンを構成するグルコース単位のヒドロキシル基が、誘導体化された基(アシル基など)およびヒドロキシ酸成分のグラフト鎖によって置換されている。なお、変性グルカン誘導体は、誘導体化(アシル化、グラフト化など)されることなく残存したヒドロキシル基(未置換のヒドロキシル基)を有していてもよい。
(ヒドロキシ酸成分)
ヒドロキシ酸成分としては、ヒドロキシ酸、環状エステルなどが挙げられる。これらのヒドロキシ酸成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。本発明では、環状エステルを好適に用いることができる。
ヒドロキシ酸(オキシカルボン酸)としては、脂肪族オキシカルボン酸、例えば、グリコール酸、乳酸(L−乳酸、D−乳酸、又はこれらの混合物)、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、6−ヒドロキシヘキサン酸などのヒドロキシC2−10アルカンカルボン酸(好ましくはα−ヒドロキシC2−6アルカンカルボン酸、さらに好ましくはα−ヒドロキシC2−4アルカンカルボン酸)などが例示できる。なお、ヒドロキシ酸は、低級アルキルエステル(例えば、C1−2アルキルエステル)化されていてもよい。これらのヒドロキシ酸のうち、特に、α−ヒドロキシ酸[特に、乳酸(L−乳酸、D―乳酸、又はこれらの混合物)]が好ましい。ヒドロキシ酸は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
環状エステルとしては、分子内に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を有し、かつ、グルカン誘導体に対してグラフト可能な化合物であれば特に限定されず、例えば、ラクトン(又は環状モノエステル、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ラウロラクトン、エナントラクトン、ドデカノラクトン、ステアロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトンなどのC3−20ラクトン、好ましくはC4−15ラクトン、さらに好ましくはC4−10ラクトン)、環状ジエステル(例えば、グリコリド、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド又はこれらの混合物)などのC4−15環状ジエステル、好ましくはC4−10環状ジエステルなど)などが挙げられる。
これら環状エステルのうち、好ましい環状エステルとしては、得られる変性グルカン誘導体の溶融成形性や機械的物性が使用目的に適合するように適宜選択が可能であり、例えば、C4−10ラクトン(例えば、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのC5−8ラクトン)、C4−10環状ジエステル[ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)など]が挙げられる。より好ましい環状エステルとしては、例えば、ε−カプロラクトン、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)などが挙げられる。このような環状エステルは、後述するように、グラフト重合により単独重合体を生成しても、精製しやすいという点でも有利である。
環状エステルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。2種以上組み合わせる場合、好ましい組合せとしては、例えば、ε−カプロラクトンとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)との組み合わせなどが例示できる。
(グラフト鎖)
グラフト鎖の平均重合度(又はグラフト鎖を構成するヒドロキシ酸成分のヒドロキシ酸換算での平均付加モル数)は、特に限定されないが、ヒドロキシ酸換算(例えば、ε−カプロラクトンではヒドロキシヘキサン酸換算、ラクチドでは乳酸換算など)で、1〜100(例えば、1〜50)の範囲から選択でき、例えば、1〜50、好ましくは1.5〜30(例えば、1.8〜25)、さらに好ましくは2〜20(例えば、2.5〜18)、特に3〜15、通常1〜20(好ましくは2〜12、さらに好ましくは3〜10)程度であってもよい。
特に、グラフト鎖が、少なくともα−ヒドロキシ酸成分[例えば、α−ヒドロキシ酸及び/又は環状ジエステル(例えば、乳酸およびラクチドから選択された少なくとも1種)]で構成されたヒドロキシ酸成分がグラフト重合して形成されたグラフト鎖である場合、グラフト鎖の平均重合度は、ヒドロキシ酸換算で、例えば、1〜13、好ましくは1.5〜12(例えば、2〜12)、さらに好ましくは2.5〜11(例えば、3〜10)程度であってもよい。グラフト鎖の重合度を上記のような範囲に調整すると、グルカン誘導体(セルロースアシレートなど)の優れた特性を損なうことなく、高い耐熱性を効率よく変性グルカン誘導体に付与できる。
グラフト鎖(特にラクチドなどのα−ヒドロキシ酸成分のグラフト鎖)の重合度又は分子量が大きくなると、グラフト鎖部分が結晶性を有する場合がある。その場合、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体に、結晶化温度以上の熱履歴が作用すると、結晶化により白化などが生じやすくなる。このため、用途に応じて、グラフト鎖の重合度や分子量を比較的小さくしてもよい[例えば、平均重合度で20以下としてもよい]。
変性グルカン誘導体において、グラフト重合したヒドロキシ酸成分の割合は、例えば、グルカン誘導体の(又はグルカン誘導体を構成する)グルコース単位1モルに対して、ヒドロキシ酸換算で、平均0.0001〜10モル(例えば、0.005〜8モル)の範囲から選択でき、例えば、0.05〜5モル(例えば、0.1〜4.5モル)、好ましくは0.15〜4モル(例えば、0.2〜3.5モル)、さらに好ましくは0.3〜3モル、通常0.35〜3.2モル程度であってもよく、特に3モル以下(例えば、0.1〜2.5モル、好ましくは0.15〜2モル、さらに好ましくは0.2〜1.8モル)、通常、1.2以下{例えば、0.02〜1.2モル(例えば、0.05〜1.2モル)、好ましくは1モル以下[例えば、0.05〜1モル(例えば、0.1〜0.9モル)]}であってもよい。なお、前記ヒドロキシ酸成分の割合(モル)とは、グラフト鎖の重合度が、1又は1より大きいか否かにかかわらず、変性グルカン誘導体(セルロースアシレートなど)のグルコース単位全体に付加(又はグラフト)したヒドロキシ酸成分の平均付加モル数を示す。このような比較的少ない割合でヒドロキシ酸成分をグラフト化させると、グルカン誘導体(例えば、セルロースアシレート)のガラス転移温度を大きく低下させることなく保持しつつ、グルカン誘導体を効率よく変性できる。
変性グルカン誘導体において、グラフト鎖の平均置換度(すなわち、グルカン誘導体のヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフトしたグラフト鎖の平均置換度、ヒドロキシ酸成分でグラフト置換されたヒドロキシル基の平均置換度、グルコース単位の2,3および6位におけるグラフト重合により誘導体化されたヒドロキシル基のグルコース単位1モルあたりの平均モル数)は、例えば、0.01〜2(例えば、0.015〜1.5)、好ましくは0.02〜1(例えば、0.025〜0.8)、さらに好ましくは0.03〜0.7(例えば、0.035〜0.6)、特に0.04〜0.5(例えば、0.045〜0.4)程度であってもよい。
なお、ヒドロキシ酸成分をラクトン成分(例えば、ラクトン)とα−ヒドロキシ酸成分[例えば、乳酸、環状ジエステル(ラクチドなど)など]とで構成する場合、変性グルカン誘導体において、グラフト重合したラクトン成分とグラフト重合したα−ヒドロキシ酸成分との割合は、ヒドロキシ酸換算で、前者/後者(モル比)=99/1〜1/99、好ましくは95/5〜5/95(例えば、90/10〜10/90)、さらに好ましくは80/20〜20/80(例えば、75/25〜25/75)程度であってもよい。
また、変性グルカン誘導体において、グラフト鎖以外の誘導体化されたヒドロキシル基(例えば、アシル基)の平均置換度(モル数)とグラフト鎖の平均置換度(モル数)との割合は、前者/後者=40/60〜99.9/0.1(例えば、50/50〜99.5/0.5)、好ましくは70/30〜99/1(例えば、75/25〜98.5/1.5)、さらに好ましくは80/20〜98/2(例えば、85/15〜97.5/2.5)程度であってもよい。
なお、変性グルカン誘導体において、ヒドロキシル基(残存ヒドロキシル基)の割合(又はグルコース単位1モルに対して、誘導体化又はグラフト化されることなく残存したヒドロキシル基の割合)は、グルコース単位1モルに対して、例えば、平均0〜1.2モルの範囲から選択でき、例えば、0.01〜1モル(例えば、0.02〜0.8モル)、好ましくは0.03〜0.7モル、さらに好ましくは0.04〜0.6モル、通常0.05〜0.55モル程度であってもよい。
なお、変性グルカン誘導体において、誘導体化された基(アシル基など)やグラフト鎖の置換度、ヒドロキシル基濃度、グラフト鎖の重合度(分子量)などは、慣用の方法、例えば、核磁気共鳴スペクトル(NMR)(H−NMR、13C−NMRなど)などを用いて測定できる。
なお、変性グルカン誘導体は、通常、ヒドロキシル基を有していてもよい。このようなヒドロキシル基には、グラフト鎖の末端のヒドロキシル基、グルコース単位に残存したヒドロキシル基などが挙げられる。このようなヒドロキシル基は、変性グラフト誘導体の吸湿性を抑制又は調整するなどの目的により、必要に応じて保護基により保護してもよい。
保護基としては、ヒドロキシル基を保護可能な非反応性基であれば特に限定されず、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、2−シクロヘキシル−2−プロピル基、ヘキシル基、クロロメチル基などの置換基(ハロゲン原子など)を有していてもよいC1−12アルキル基(好ましくはC1−6アルキル基)など]、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などの置換基を有していてもよいC5−8シクロアルキル基)、芳香族炭化水素基(フェニル基などのC6−12アリール基、ベンジル基などのアラルキル基など)、架橋環式炭化水素基(アダマンチル基など)などの炭化水素基;オキサシクロアルキル基(例えば、5〜8員オキサシクロアルキル基);アルコキシアルキル基(例えば、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル基)などのアセタール系保護基;アルキルカルボニル基(アセチル、プロピオニルなどのC1−10アルキルカルボニル基)、シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基などのアシル基などが挙げられる。
保護基は、単独で又は2種以上組み合わせて、ヒドロキシル基を保護してもよい。
保護基によりヒドロキシル基が保護された変性グルカン誘導体において、保護基の割合(又はグラフト鎖のヒドロキシ基の保護割合)は、グラフト鎖1モルに対して、0.7〜1モルの範囲から選択でき、例えば、0.9〜1モル、好ましくは0.95〜0.999モル程度であってもよい。
また、変性グルカン誘導体は、わずかであるが、カルボキシル基を有している場合がある。このようなカルボキシル基もまた、前記ヒドロキシル基と同様に保護(又は封止)されていてもよい。カルボキシル基の保護基に対応する保護剤としては、後述するように、カルボジイミド化合物などが挙げられる。
変性グルカン誘導体(又はドープ)は、前記変性グルカン誘導体に加えて、ヒドロキシ酸成分の単独重合体(ポリマー又はオリゴマー)、未反応のグルカン誘導体、未反応のヒドロキシ酸成分などを含んでいてもよい。すなわち、このような不純物(例えば、ヒドロキシ酸成分の単独重合体)は、グルカン誘導体とヒドロキシ酸成分との反応(グラフト重合反応)中に副生成分として生成するか、又は未反応成分となって残存する成分である場合が多い。
特に、グラフト重合反応中に副生するヒドロキシ酸成分の単独重合体は、通常、末端にカルボキシル基を有しており、また、変性グルカン誘導体としての樹脂特性に影響を及ぼす可能性があるため、最終生成物としての粒状物においてはできるだけ少ない含有割合であるのが好ましい。本発明の方法では、造粒工程に供するドープ中に、このような不純物が含まれていても、分離精製することができる。すなわち、本発明では、造粒工程において、造粒とともに精製も行うことができる。
例えば、変性グルカン誘導体(又はドープ又は反応液)に含まれるヒドロキシ酸成分の単独重合体の含有割合は、変性グルカン誘導体100重量部に対して、例えば、0.5〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは2〜50重量部、特に3〜30重量部程度であってもよい。
このようなヒドロキシ酸成分の単独重合体を含む場合において、ヒドロキシ酸成分の単独重合体を構成するヒドロキシ酸成分としては、前記と同様のヒドロキシ酸、環状エステルなどが挙げられる。なお、本発明では、後述するように、前記ドープを、このようなグルカン誘導体とヒドロキシ酸成分との反応により得られた反応液で構成してもよいが、このような未反応成分や前記ヒドロキシ酸成分の単独重合体などを含むドープを用いても、造粒工程において精製された粒状物を効率よく得ることができる。造粒工程において、造粒とともに精製を行うことが可能な理由として、本発明の粒状物の分散媒となるドープを構成する溶媒(例えば、反応に使用した溶媒と反応液に対して加える貧溶媒との混合溶媒)に、前記ヒドロキシ酸成分の単独重合体が溶解可能であることが挙げられる。造粒工程において、造粒とともに精製を効率よく行うという観点から前記ヒドロキシ酸成分の単独重合体が前記ドープを構成する溶媒に溶解すれば、ヒドロキシ酸成分の単独重合体を構成するヒドロキシ酸成分に特に制限はないが、本発明では、特に、環状エステル(例えば、C4−10ラクトン、C4−10環状ジエステルなど)由来のヒドロキシ酸成分であれば、効率よく精製が行えるために好適である。より好ましい環状エステルとしては、例えば、ε−カプロラクトン、ラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、又はそれらの混合物)などが挙げられる。なお、このようなヒドロキシ酸成分の単独重合体を含む場合において、ヒドロキシ酸成分の単独重合体の平均重合度は、前記グラフト鎖の平均重合度と同様の範囲(例えば、1〜50程度)であってもよい。
[ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の製造方法]
造粒工程に供する前記変性グルカン誘導体は、市販品であってもよく、合成したものを用いてもよい。合成する場合、このような変性グルカン誘導体は、前記グルカン誘導体と前記ヒドロキシ酸成分とを反応(開環重合反応又は重縮合反応)させる工程(グラフト反応工程)を経ることにより得ることができる。すなわち、グルカン誘導体にヒドロキシ酸成分をグラフト重合することにより変性グルカン誘導体を調製できる。このようなグラフト反応工程は、通常、溶媒中で行ってもよい。なお、グラフト反応(グラフト重合反応)は、ヒドロキシ酸成分として環状エステル(例えば、ラクトン類、又はラクチドなどの環状ジエステル類)を用いるときには、環状エステルの開環を伴う開環反応(開環重合反応、開環グラフト重合反応)であり、ヒドロキシ酸(乳酸、ヒドロキシヘキサン酸など)を用いるときには重縮合反応である。本発明では、通常、環状エステルを用いた開環グラフト重合反応を好適に利用できる。
(グルカン誘導体)
グラフト重合(特に、環状エステルを用いた開環重合反応)に使用するグルカン誘導体の水分含有量は、できるだけ少ない方が好ましい。水分含有量を低減することによって、グラフト重合反応中のヒドロキシ酸成分(例えば、環状エステル)のホモポリマーの副生をより一層効率よく抑制することができる。
そのため、例えば、反応(グラフト重合反応)に使用するグルカン誘導体は、水分含有量において極力少ないグルカン誘導体(例えば、脱水処理又は乾燥処理されたグルカン誘導体)であってもよい。前記グルカン誘導体の水分含有量は、例えば、2重量%以下[0(又は検出限界)〜1.5重量%程度]、好ましくは1重量%以下(例えば、0.001〜0.8重量%程度)、さらに好ましくは0.5重量%以下(例えば、0.005〜0.3重量%程度)、特に0.08重量%以下(例えば、0.01〜0.05重量%程度)であってもよい。
(グルカン誘導体の乾燥)
グルカン誘導体の水分含有量は、熱風乾燥や減圧乾燥などの慣用の乾燥処理などにより低減することができる。乾燥処理は、加温下(例えば、40〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃程度)で行ってもよい。減圧乾燥の減圧度はできるだけ高いこと(すなわち、圧力が低いこと)が好ましく、例えば、減圧乾燥における圧力は、200Torr以下(例えば0.0001〜100Torr程度)、好ましくは20Torr以下(例えば0.001〜10Torr程度)、さらに好ましくは5Torr以下(例えば0.01〜2Torr程度)であり、特に1Torr以下(例えば、0.1〜0.8Torr程度)であってもよい。
グルカン誘導体の乾燥処理はグラフト重合反応に先立って行うことができ、反応に使用する反応器(又は反応槽)内で行ってもよく、また、前記反応器(又は反応槽)とは異なる処理槽又は乾燥用装置によって予め行ってもよい。
(ヒドロキシ酸成分)
反応に使用するヒドロキシ酸成分の水分含有量もまた、前記と同様の理由によりできるだけ少ないことが好ましく、例えば、0.5重量%以下[0(又は検出限界)〜0.3重量%程度]、好ましくは0.2重量%以下(例えば、0.00001〜0.1重量%程度)、さらに好ましくは0.08重量%以下(例えば、0.0001〜0.05重量%程度)、特に0.01重量%以下(例えば、0.0003〜0.008重量%程度)であってもよい。ヒドロキシ酸成分の水分含有量は、慣用の方法、例えば、蒸留、乾燥剤(硫酸マグネシウムなど)に対する接触、加熱乾燥、減圧乾燥などにより低減できる。
(ヒドロキシ酸成分の使用割合)
反応(グラフト重合反応)において、ヒドロキシ酸成分の割合(使用割合)は、特に制限されず、グルカン誘導体100重量部に対して、例えば、1〜300重量部(例えば、5〜250重量部)、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは15〜150重量部(例えば、20〜120重量部)程度であってもよく、通常110重量部以下(例えば、5〜105重量部、好ましくは8〜100重量部、さらに好ましくは10〜90重量部、特に15〜80重量部)程度であってもよい。
(グラフト重合反応触媒)
反応(グラフト重合反応)は、ヒドロキシ酸成分の種類(例えば、環状エステル)にもよるが、慣用の触媒[例えば、有機酸類、無機酸類、金属(アルカリ金属、マグネシウム、亜鉛、スズ、アルミニウムなど)、金属化合物[スズ化合物(ジブチルチンラウレート、塩化スズ)、有機アルカリ金属化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物(チタンアルコキシドなど)、有機ジルコニウム化合物など]など]の存在下で行ってもよい。触媒は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
特に、触媒(グラフト重合触媒)として、ヒドロキシ酸成分(環状エステルなど)のグラフト重合(特に、環状エステルを用いた開環重合反応)の触媒となる化合物であって、かつ、単独で重合を開始しない金属錯体(又は金属化合物)を使用してもよい。前記金属錯体は、環状エステルなどのヒドロキシル基を持たないモノマーと共存してもそれら2成分のみでは重合を開始せず、グルカン誘導体や系中に不純物として存在する水のような、ヒドロキシル基を有する化合物が存在して初めて重合を開始し得る。このような触媒(及び後述の特定溶媒)を使用することにより、触媒由来のヒドロキシ酸成分の単独重合体(ホモポリマー)の生成を著しく抑制できる。また、このような触媒(および後述の特定溶媒)を用いると、アシル基の置換度の低下を生じることがなく、グラフト重合後の生成物(すなわち、変性グルカン誘導体)において、原料としてのグルカン誘導体のアシル置換度を反映でき、所望のアシル置換度(およびグラフト鎖置換度)を有する変性グルカン誘導体を効率よく得ることができる。
前記重合を開始しない金属錯体(金属化合物)は、中心金属とこの中心金属に配位する配位子とで構成されており、前記金属錯体を構成する具体的な配位子(又は環状エステルに対する重合開始活性を示さない配位子又は環状エステルに対して不活性な配位子)としては、例えば、一酸化炭素、ハロゲン原子(塩素原子など)、酸素原子、炭化水素[例えば、アルカン(C1−20アルカンなど)、シクロアルカン、アレーン(ベンゼン、トルエンなど)など]、β−ジケトン(アセチルアセトンなどのβ−C5−10ジケトンなど)、カルボン酸[例えば、アルカン酸(酢酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸などのC1−20アルカン酸)などの脂肪族カルボン酸;安息香酸などの芳香族カルボン酸など]、炭酸、ホウ酸などに対応する配位子(例えば、ハロ、アルキル、アシルアセトナト、アシル)などが挙げられる。これらの配位子は、単独で又は2種以上組み合わせて中心金属に配位していてもよい。
代表的なグラフト重合触媒としては、アルコキシ基(及びヒドロキシル基)及び/又はアミノ基(第3級アミノ基以外のアミノ基)を配位子として有しない金属錯体、例えば、アルカリ金属化合物(炭酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウムなどのカルボン酸アルカリ金属塩など)、アルカリ土類金属化合物(例えば、炭酸アルカリ土類金属塩、酢酸カルシウムなどのカルボン酸アルカリ土類金属塩など)、亜鉛化合物(酢酸亜鉛、アセチルアセトネート亜鉛など)、アルミニウム化合物(例えば、トリアルキルアルミニウム)、ゲルマニウム化合物(例えば、酸化ゲルマニウムなど)、スズ化合物[例えば、スズカルボキシレート(例えば、オクチル酸スズ(オクチル酸第一スズなど)などのスズC2−18アルカンカルボキシレート、好ましくはスズC4−14アルカンカルボキシレート)、アルキルスズカルボキシレート(例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、モノブチルスズトリオクチレートなどのモノ又はジC1−12アルキルスズC2−18アルカンカルボキシレートなど)などのスズ(又はチン)カルボキシレート類;アルキルスズオキサイド(例えば、モノブチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどのモノ又はジアルキルスズオキサイドなど);ハロゲン化スズ;ハロゲン化スズアセチルアセトナト;無機酸スズ(硝酸スズ、硫酸スズなど);ポリスタノキサン(例えば、ジハロテトラアルキルジスタノキサン類、ジアシルオキシテトラアルキルジスタノキサンなどのジスタノキサン、特開2008−106208号公報に記載のポリスタノキサン触媒など)など]、鉛化合物(酢酸鉛など)、アンチモン化合物(三酸化アンチモンなど)、ビスマス化合物(酢酸ビスマスなど)などの典型金属化合物又は典型金属錯体;希土類金属化合物(例えば、酢酸ランタン、酢酸サマリウムなどのカルボン酸希土類金属塩)、チタン化合物(酢酸チタンなど)、ジルコニウム化合物(酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナトなど)、ニオブ化合物(酢酸ニオブなど)、鉄化合物(酢酸鉄、鉄アセチルアセトナトなど)などの遷移金属化合物が挙げられる。
これらの触媒のうち、特に、スズカルボキシレート類などのスズ系触媒(又はスズ化合物)が好ましい。触媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
反応(グラフト重合反応)において、前記触媒の割合(使用割合)は、前記グルカン誘導体のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、10−7〜10−1モル、好ましくは5×10−7〜5×10−2モル、さらに好ましくは10−6〜3×10−2モル程度であってもよい。
(グラフト重合反応に用いる溶媒)
また、反応(グラフト重合反応)は、無溶媒又は溶媒中で行ってもよく、通常、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、窒素含有溶媒(ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの鎖状ケトン類;シクロアルカノン(シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのC5−8シクロアルカノン、好ましくはC5−6シクロアルカノン)などの環状ケトン類)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などを使用してもよい。また、過剰のヒドロキシ酸成分(例えば、ラクトン、ラクチドなど)を溶媒として用いてもよい。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、環状エステルを用いた開環重合反応系では、前記特定の触媒に加えて、水に対する溶解度が小さい特定の溶媒を使用することにより、重合系又は反応における水の影響を極力抑えることができるためか、ヒドロキシ酸成分のホモポリマーの生成を高いレベルで抑制しつつ変性グルカン誘導体を得ることができる。具体的には、グラフト重合反応に用いる溶媒の20℃における水に対する溶解度は、10重量%以下[例えば、0(又は検出限界)〜8重量%]の範囲から選択でき、例えば、7重量%以下(例えば、0.0001〜6重量%程度)、好ましくは5重量%以下(例えば、0.0005〜4重量%程度)、さらに好ましくは3重量%以下(例えば、0.0008〜2重量%程度)、特に1重量%以下(例えば、0.001〜0.8重量、好ましくは0.002〜0.5重量%、さらに好ましくは0.003〜0.3重量%程度)であってもよい。
水に対する溶解度が小さい溶媒としては、具体的には、例えば、脂肪族炭化水素類[例えば、アルカン(例えば、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのC7−20アルカンなど)、シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンなどのC4−10シクロアルカン)など]、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(o,m又はp−キシレン)、エチルベンゼンなどのC6−12アレーン、好ましくはC6−10アレーン)、脂肪族ケトン類[例えば、ジアルキルケトン(例えば、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジn−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのC5−15ジアルキルケトン、好ましくはC7−10ジアルキルケトン)など]、鎖状エーテル類[例えば、ジアルキルエーテル(C6−10ジアルキルエーテルなど)、アルキルアリールエーテル(アニソールなど)など]などの非ハロゲン系溶媒、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、ハロアルカン(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパンなどのハロC1−10アルカン)、ハロシクロアルカン(クロロシクロヘキサンなどのハロC4−10シクロアルカン)、ハロゲン系芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロメチルベンゼン、クロロエチルベンゼンなどのハロC6−12アレーン、好ましくはハロC6−10アレーンなど)などのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
これらの溶媒のうち、特に、シクロアルカノン(シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのC5−8シクロアルカノン)などが好ましい。
溶媒は、脱水処理されていてもよい。脱水処理された溶媒を使用すると、オリゴマーの副生をより一層抑制しやすくなる。溶媒の水分含有量はできるだけ少ないことが好ましく、例えば、0.5重量%以下[0(又は検出限界)〜0.3重量%程度]、好ましくは0.2重量%以下(例えば、0.00001〜0.1重量%程度)、さらに好ましくは0.08重量%以下(例えば、0.0001〜0.05重量%程度)、特に0.01重量%以下(例えば、0.0003〜0.008重量%程度)であってもよい。溶媒の水分含有量は、慣用の方法、例えば、蒸留、乾燥剤(硫酸マグネシウムなど)に対する接触、加熱乾燥、減圧乾燥などにより低減できる。
溶媒の割合は、溶媒の種類などにもよるが、グルカン誘導体100重量部に対して、50重量部以上(例えば、55〜500重量部程度)の範囲から選択でき、例えば、60〜450重量部(例えば、65〜400重量部)、好ましくは60〜300重量部(例えば、65〜250重量部)、さらに好ましくは70〜200重量部(例えば、75〜190重量部)、特に80〜180重量部(例えば、85〜170重量部、好ましくは90〜150重量部)程度であってもよい。また、溶媒の割合は、グルカン誘導体及びヒドロキシ酸成分の総量100重量部に対して、例えば、10〜200重量部、好ましくは30〜150重量部、さらに好ましくは40〜120重量部(例えば、50〜100重量部)、通常45〜90重量部(例えば、50〜80重量部)程度であってもよい。
また、水に対する溶解度が小さい溶媒(20℃における水に対する溶解度が10重量%以下の溶媒)で溶媒を構成する場合、溶媒全体に対する前記水に対する溶解度が小さい溶媒の割合は、例えば、30重量%以上(例えば、35〜100重量%程度)、好ましくは40重量%以上(例えば、45〜99重量%程度)、さらに好ましくは50重量%以上(例えば、55〜95重量%程度)、特に60重量%以上(例えば、65〜90重量%程度)であってもよい。
(グルカン誘導体の溶解)
グルカン誘導体とヒドロキシ酸成分との反応は、グルカン誘導体とヒドロキシ酸成分を単に接触させただけの不均一な状態で行ってもよく、通常、反応を効率よく行うため、グルカン誘導体が均一に溶解(又は分散、或いは混合)した状態で行ってもよい。このため、変性グルカン誘導体は、グラフト反応工程に先だって、グルカン誘導体を溶解(又は分散、或いは混合)する溶解工程を経て調製してもよい。
溶解工程を行う場合は、ヒドロキシ酸成分のみにグルカン誘導体を溶解させてもよいが、通常、反応を効率よく行うために、前記のような溶媒(又は希釈剤)を溶解工程に用いることが可能である。溶媒を使用する場合は、投入方法などに特に制限はないが、例えば、(1)ヒドロキシ酸成分および溶媒にグルカン誘導体を溶解してもよく、(2)ヒドロキシ酸成分にグルカン誘導体を溶解したのち、溶媒を混合してもよく、(3)溶媒にグルカン誘導体を溶解したのち、ヒドロキシ酸成分を混合してもよい。
溶解工程では、前記グラフト重合触媒を添加することも可能であるが、通常、反応を均一に効率よく進行させるため、溶解工程の後に前記グラフト重合触媒を添加してもよい。特に、溶解工程後、グラフト重合触媒を混合してグラフト反応を行ってもよい。
溶解工程は、溶解工程に用いる溶媒及び/又はヒドロキシ酸成分を留去しながら脱水する処理(すなわち共沸処理)を含んでいてもよい。共沸処理を行う場合は、溶解混合物全体の含水量を高いレベルで低減できるため、オリゴマー(ヒドロキシ酸成分の単独重合体)の副生をより一層抑制しやすくなる。
(その他グラフト重合反応条件)
反応(グラフ重合反応)は、常温下で行ってもよく、通常、反応を効率よく行うため、加温下で行ってもよい。具体的な反応温度は、溶媒の種類にもよるが、例えば、60〜250℃、好ましくは80〜220℃、さらに好ましくは100〜200℃(例えば、105〜180℃)、通常110〜170℃程度であってもよい。
反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、ヘリウムなどの希ガスなど)中で行ってもよく、通常不活性雰囲気下で行うことができる。また、反応は、常圧又は加圧下で行ってもよい。さらに、グラフト化は、攪拌しながら行ってもよい。
なお、反応は、ヒドロキシ酸成分のホモポリマーの生成や副反応を効率よく抑えるため、出来る限り水分が少ない状態で行ってもよい。例えば、反応(特に、開環重合反応)において、グルカン誘導体、ヒドロキシ酸成分、および溶媒の総量に対する水分含有量は、例えば、0.3重量%以下[0(又は検出限界)〜0.25重量%程度]、好ましくは0.2重量%以下(例えば、0.0001〜0.18重量%程度)、さらに好ましくは0.15重量%以下(例えば、0.0005〜0.12重量%程度)、特に0.1重量%以下(例えば、0.001〜0.05重量%程度)であってもよい。なお、縮合反応によりグラフト化する場合には、前記のように、水よりも高沸点の溶媒を用い、共沸などを利用して生成する水を除去しつつ反応を行ってもよい。
グラフト重合反応において、反応時間は、特に制限されないが、例えば、10分〜24時間、好ましくは30分〜10時間、さらに好ましくは1〜6時間程度であってもよい。
なお、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を保護する場合、保護は、前記反応(グラフト重合反応)で得られた生成物を分離(及び精製)し、この分離(及び精製)したグラフト生成物と、前記保護基に対応する保護剤[例えば、酸ハライド、酸無水物などのアシル化剤、アルケニルアシレート(例えば、酢酸イソプロペニルなど)などのヒドロキシル基の保護剤;カルボジイミド化合物などのカルボキシル基の保護剤など]とを反応させて行ってもよく、前記グラフト重合反応と同一の反応系で連続して行ってもよい。同一の反応系で行う場合、反応系の粘度を下げるため、必要に応じて、溶媒を添加してもよく、グラフト重合反応において予め多量又は過剰量のヒドロキシ酸成分を使用し、この過剰量のヒドロキシ酸成分を溶媒として用いてもよい。
特に、カルボキシル基に対する保護剤(特にカルボジイミド化合物)を反応系に存在させると、反応系の粘度上昇を抑えつつグラフト重合を行うことができる。すなわち、カルボジイミド化合物などの保護剤は、グラフト重合反応工程におけるこのような重合系の粘度上昇抑制剤としても作用させることができる。このような粘度上昇抑制剤として作用する理由は定かではないが、次のような理由が考えられる。グラフト重合過程(例えば、重合後期)では、グルカン誘導体又はヒドロキシ酸変性グルカン誘導体にわずかに含まれるカルボキシル基(例えば、ヘミセルロース残基に結合したカルボキシル基など)により、分子間架橋のような反応が起こるためか、系の粘度が急上昇することがあるが、重合系にカルボジイミド化合物を共存させると、カルボジイミド化合物が前記カルボキシル基を封止(保護)し、系の粘度上昇が抑制されるものと考えられる。
カルボジイミド化合物は、分子内にカルボジイミド基[−N=C=N−]を少なくとも1つ有する化合物であればよく、モノカルボジイミド化合物であってもよく、ポリカルボジイミド化合物であってもよい。代表的なカルボジイミド化合物には、脂肪族モノカルボジイミド化合物{例えば、ジアルキルカルボジイミド[例えば、1,3−ジメチルカルボジイミド、1,3−ジイソプロピルカルボジイミドなどのジC1−30アルキルカルボジイミド(好ましくはジC1−25アルキルカルボジイミド、さらに好ましくはジC1−20アルキルカルボジイミド)など]など}、脂環族モノカルボジイミド化合物{例えば、ジシクロアルキルカルボジイミド[例えば、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのジC4−10シクロアルキルカルボジイミド(好ましくはジC5−8シクロアルキルカルボジイミド、さらに好ましくはジC5−6シクロアルキルカルボジイミド)など]など}、芳香族モノカルボジイミド化合物{例えば、ジアリールカルボジイミド[例えば、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジトリルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジメチルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドなど)、N,N’−ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ビス(2−イソブチル−6−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジt−ブチルフェニル)カルボジイミド、N−フェニル−N’−トリルカルボジイミドなどのジC6−15アリールカルボジイミド(好ましくはジC6−10アリールカルボジイミド、さらに好ましくはジC6−8アリールカルボジイミド)、ベンジルイソプロピルカルボジイミドなど]、脂肪族ポリカルボジイミド化合物{例えば、ポリアルキレンカルボジイミド[例えば、ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリ(3−メチルヘキサメチレンカルボジイミド)などのポリ(C2−30アルキレンカルボジイミド)、好ましくはポリ(C2−25アルキレンカルボジイミド)など]など}、脂環族ポリカルボジイミド化合物{例えば、ポリジシクロアルキルアルカンカルボジイミド[例えば、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)などのポリ(ジC4−10シクロアルキル−C1−10アルカンカルボジイミド)など]など}、芳香族ポリカルボジイミド化合物{例えば、ポリアリーレンカルボジイミド[例えば、ポリm−フェニレンカルボジイミド、ポリp−フェニレンカルボジイミド、ポリトリレンカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリ(C6−15アリーレンカルボジイミド)、好ましくはポリ(C6−10アリーレンカルボジイミド)、さらに好ましくはポリ(C6−8アリーレンカルボジイミド)など]、ポリジアリールアルカンカルボジイミド[例えば、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)などのポリ(ジC6−15アリール−C1−10アルカンカルボジイミド)など]など}などが挙げられる。
これらのカルボジイミド化合物は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらのうち、モノカルボジイミド化合物、特に、芳香族モノカルボジイミド化合物[例えば、N,N−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド(DPC)などのジC6−10アリールカルボジイミドなど}が好ましい。
なお、カルボジイミド化合物として、例えば、特開2007−161943号公報に例示の化合物などを使用してもよい。
カルボジイミド化合物の使用割合は、カルボジイミド化合物の種類などにもよるが、グルカン誘導体の無水グルコース単位100モルに対して、カルボジイミド基[−N=C=N−]換算で、0.01モル以上(例えば、0.03〜100モル程度)の範囲から選択でき、例えば、0.1〜90モル(例えば、0.2〜80モル)、好ましくは0.4〜70モル(例えば、0.5〜55モル)、さらに好ましくは0.7〜40モル(例えば、0.9〜30モル)、特に1.0〜20モル(例えば、1.5〜10モル、好ましくは2〜7モル)程度であってもよい。
なお、前記粘度上昇が進行する場合、粘度上昇した重合液中のヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の分子量分布は高分子量側に偏って大きくなっているが、カルボジイミド化合物を重合初期または前半から共存させることにより、分子量分布の増大を抑えて、粘度上昇を抑制することができる。ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の分子量分布増大が抑えられることにより、造粒工程の処理液粘度をも低く保持することができ、相対的にヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の濃度を高くして製造の効率を向上させ、コストダウンに繋げることが可能となる。
このようなヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の製造方法により、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を含む反応混合物が得られる。すなわち、このような反応混合物には、目的とするヒドロキシ酸変性グルカン誘導体に加えて、不用成分(または不純物、すなわち、ヒドロキシ酸成分の単独重合体、溶媒、未反応のヒドロキシ酸成分など)を含んでいる。なお、前記反応混合物は、前記のように、通常、溶媒中、グルカン誘導体とヒドロキシ酸成分とを反応させて得られる反応混合物であり、液状(又は液体状又は液体状態)の反応混合物、すなわち、反応混合液である場合が多い。
前記反応混合物(又は反応混合液)に含まれるヒドロキシ酸成分の単独重合体の量は、例えば、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体100重量部に対して0.01〜200重量部、好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは0.5〜50重量部(例えば、1〜30重量部)程度であってもよい。また、反応混合物(又は反応混合液)に含まれる未反応モノマー(ヒドロキシ酸成分)の量は、例えば、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体100重量部に対して、0.005〜200重量部、好ましくは0.01〜100重量部、さらに好ましくは0.05〜50重量部(例えば、0.1〜30重量部)程度であってもよい。
さらに、溶媒を含有する場合、反応混合物(又は反応混合液)に含まれる溶媒の量は、例えば、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体100重量部に対して10〜1000重量部、好ましくは30〜700重量部、さらに好ましくは40〜550重量部(例えば、50〜400重量部)程度であってもよい。
グラフト反応工程で生成した反応混合物[又はグラフト反応終了後(グラフト重合後、グラフト重合およびヒドロキシル基の保護後)の反応混合物](又は反応生成物)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、中和、沈澱などの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段を用いて、分離精製してもよい。なお、後述するように、本発明では、このような反応混合物をそのまま用いてドープとすることもできる。
[ドープ]
ドープ(又は溶液)は、前記変性グルカン誘導体を含むドープであればよい。ドープを構成する溶媒としては、変性グルカン誘導体を溶解可能な溶媒(良溶媒)であればよく、例えば、エーテル類[例えば、環状エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどの5〜8員環状エーテル)など]、エステル類[例えば、酢酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど)などのC1−4アルカン酸C1−4アルキルエステルなど]、窒素含有溶媒[ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN,N−ジC1−4アルキルC1−4アルカン酸アミド)など]、ケトン類[例えば、鎖状ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジn−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのジC1−4アルキルケトン)、環状ケトン類(例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノン、好ましくはC5−8シクロアルカノン、さらに好ましくはC5−6シクロアルカノン)など]、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなどのジC1−4アルキルスルホキシド)、ハロゲン化炭化水素類[例えば、ハロアルカン類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパンなどのハロC1−10アルカン、好ましくはハロC1−4アルカン)、ハロゲン系芳香族炭化水素類(クロロベンゼンなど)など]、ヒドロキシ酸成分[例えば、ラクトン、ラクチドなどの前記例示のヒドロキシ酸成分(例えば、環状エステル)など]などが挙げられる。これらの溶媒(良溶媒)は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらの溶媒のうち、環状エーテル類(例えば、5〜8員環状エーテル)、アミド類(例えば、N,N−ジC1−4アルキルC1−4アルカン酸アミド)、環状ケトン類(例えば、C5−8シクロアルカノン)、スルホキシド類(例えば、ジC1−4アルキルスルホキシドなど)、ハロアルカン類(例えば、ハロC1−4アルカンなど)、環状エステルなどが好ましい。なお、環状エステルは、前記変性グルカン誘導体にグラフト重合した環状エステルと同じであってもよく、異なっていてもよい。特に、好ましい溶媒は、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノン(例えば、C5−8シクロアルカノン)である。このようなシクロヘキサノンなどの溶媒は、グラフト重合反応の反応溶媒としても好適な溶媒であるため、反応液をそのまま利用する場合に有利であり、また、後述の極性有機溶媒との組み合わせにおいて、粒状物を得やすい点でも有利である。
なお、造粒工程に用いるドープの溶媒成分は、前記良溶媒で構成されているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、ドープ全体としての均一性を保つことができれば、変性グルカン誘導体を溶解しない溶媒(又は溶解しにくい溶媒)を含んでいてもよい。このような溶媒としては、グラフト反応に使用した溶媒(ヒドロキシ酸成分およびグルカン誘導体を溶解するが、反応により生成した変性グルカン誘導体を溶解しない又は溶解しにくい溶媒など)や、後述の極性有機溶媒などが含まれる。このようなドープにおいて、溶媒成分全体に対する前記良溶媒の割合は、例えば、40%以上(例えば、45〜99.999重量%)、好ましくは50重量%以上(例えば、60〜99.99重量%)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、75〜99.9重量%)、特に80重量%以上(例えば、90〜99.5重量%)であってもよい。
ドープにおいて、変性グルカン誘導体の割合は、ドープ全体に対して、例えば、1〜80重量%(例えば、1.5〜75重量%)、好ましくは2〜70重量%(例えば、2.5〜60重量%)、さらに好ましくは3〜55重量%(例えば、4〜50重量%)、特に5〜45重量%(例えば、6〜42重量%)程度であってもよい。
ドープは、前記変性グルカン誘導体を含んでいる限り、その製造方法(調製方法)は特に限定されず、例えば、前記変性グルカン誘導体と良溶媒とを混合することにより製造(調製)できる。このようなドープの調製は、前記グラフト反応工程を経て得られた反応液(すなわち、溶媒中で、グルカン誘導体とヒドロキシ酸成分とを(必要に応じて触媒の存在下で)グラフト重合反応させる工程を経て得られた反応液)で構成してもよい。このような反応液には、前記のようにヒドロキシ酸成分の単独重合体などの不純物が含まれているが、本発明では、このような不純物を含む反応液でドープを構成しても、後述の造粒工程において精製可能である。このような反応液を用いる場合、ドープは、反応液そのものであってもよく、反応液と前記良溶媒とで構成してもよい。後者の場合、ドープは、反応液と前記良溶媒とを混合することにより調製できる。
ドープの調製において、変性グルカン誘導体又は反応液と良溶媒との混合は、常温下で行ってもよく、加温下で行ってもよい。加温下で行うと、均一なドープを効率よく調製しやすい。混合温度は、例えば、20〜150℃、好ましくは40〜130℃、さらに好ましくは50〜120℃(例えば、55〜100℃)程度であってもよい。なお、混合は、攪拌下で行ってもよい。
[造粒工程]
本発明の方法は、前記のように、前記ドープに、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体に対する貧溶媒である極性有機溶媒を混合し、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる(又は前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を粒状化させる)造粒工程を少なくとも含む。
なお、従来、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を、再沈殿法などの慣用の方法により精製することについては知られていたものの、このような方法では、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体は、糸鞠様の塊状物などとして回収されていた。本発明では、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体に対する貧溶媒の中でも、特に、極性有機溶媒を使用し、かつ、このような極性溶媒を再沈殿(貧溶媒に対するドープの添加)ではなく、前記ドープに対して混合(又は添加)することにより、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体が粒状化されることを見出した。
極性有機溶媒としては、前記変性グルカン誘導体に対する貧溶媒(前記変性グルカン誘導体を溶解しない又は溶解しにくい溶媒)であればよく、代表的には、アルコール類が含まれる。
アルコール類としては、例えば、アルカノール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、1−ブタノール、2−ブタノールなどのC1−10アルカノール、好ましくはC1−6アルカノール、さらに好ましくはC1−4アルカノール)、ポリオール類(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−4アルキレングリコール;ジエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルキレングリコールなどのグリコール類;グリセリンなどのヒドロキシル基を3以上有するポリオール類)、グリコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのC2−4アルキレングリコールモノC1−4アルキルエーテル;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのジ又はトリC2−4アルキレングリコールモノC1−4アルキルエーテルなど)などが挙げられる。
極性有機溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらの極性有機溶媒は、アルカノール類(C1−4アルカノールなど)で構成するのが好ましく、さらに好ましくはエタノール及び/又はイソプロパノール、特にイソプロパノールで構成するのが好ましい。イソプロパノールは、ドープに対して少ない混合割合でも効率よく変性グルカン誘導体を粒状化できる。特に、前記グラフト重合反応の反応液を希釈する形でドープを調製した場合には、イソプロパノールは、ドープに対してやはり少ない混合割合でも効率よく精製(不用成分の除去)を行うことができる。また、イソプロパノールは、汎用の溶媒であるため、非常に有用性が高い。
なお、極性有機溶媒をイソプロパノールで構成する場合、極性有機溶媒は、イソプロパノールのみで構成してもよく、イソプロパノールと他の極性有機溶媒とで構成してもよい。極性有機溶媒中のイソプロパノールの割合は、例えば、50〜100重量%(例えば、70〜100重量%)、好ましくは80〜100重量%(例えば、90〜100重量%)、さらに好ましくは95〜100重量%程度であってもよい。
ドープに混合する貧溶媒の割合は、ドープ1重量部に対して、例えば、0.5〜15重量部(例えば、0.7〜12重量部)、好ましくは0.8〜10重量部(例えば、1〜9重量部)、さらに好ましくは1.2〜8重量部(例えば、1.3〜7重量部)程度であってもよく、通常1〜15重量部(例えば、1.5〜10重量部)程度であってもよい。特に、貧溶媒の種類によっては(例えば、イソプロパノールを使用した場合など)、ドープに混合する貧溶媒の割合を、ドープ1重量部に対して、8重量部以下(例えば、0.5〜7.5重量部)、好ましくは7重量部以下(例えば、0.7〜6.5重量部)、さらに好ましくは6重量部以下(例えば、1〜5.5重量部)、特に5重量部以下[例えば、0.8〜4重量部、好ましくは1〜3.5重量部(例えば、1.1〜3重量部)程度]とすることもできる。本発明では、このような比較的小さい割合で貧溶媒を使用しても粒状物が得られるため、比較的大規模な合成(例えば、工業的大規模な合成)にも有利であり、また、コスト的にも有利である。なお、貧溶媒は、後述するように連続的に又は段階的に混合してもよい。このような場合、上記割合は、ドープに混合した貧溶媒の総量の割合である。
また、ドープに混合する貧溶媒の割合は、変性グルカン誘導体1重量部に対して、例えば、1〜150重量部(例えば、2〜100重量部)、好ましくは3〜80重量部(例えば、4〜60重量部)、さらに好ましくは5〜50重量部(例えば、5〜40重量部)程度であってもよい。
造粒工程では、少なくともドープに貧溶媒(又は非溶媒)を混合することにより、前記変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる。すなわち、造粒工程では、貧溶媒(又は非溶媒)を混合(さらには温度を低下)することによって、ドープ(均一溶液)の状態(均一系)から不均一系に相転移させることによって変性グルカン誘導体を粒状化させる。このような造粒工程は、通常、攪拌下でドープに貧溶媒を混合して(又はドープと貧溶媒との混合系を攪拌して)粒状化させる(又は粒状物を生成させる)工程(攪拌造粒工程)を少なくとも含む場合が多い。すなわち、ドープに対する貧溶媒の混合によっても粒状化が進行するが、通常、効率よく粒状化させるためには、攪拌下で貧溶媒を混合してもよい。
攪拌下で行う場合、攪拌速度は、そのスケール(製造の規模)にもよるが、例えば、10〜10000rpm、好ましくは20〜5000rpm、さらに好ましくは30〜3000rpm、特に50〜2000rpm程度であってもよい。特に、攪拌速度は、10〜2000rpm(例えば、20〜1500rpm)、好ましくは30〜1000rpm(例えば、40〜800rpm)、さらに好ましくは50〜500rpm(例えば、60〜300rpm)、特に70〜200rpm程度であってもよい。
なお、攪拌速度は、粒状化に十分な程度に大きいことが望ましい。攪拌速度が小さすぎる場合、添加する貧溶媒(又は非溶媒)の局在化や温度分布の不均一化を招き、粒状化の制御(粒子径制御や粒径分布制御など)が難しくなったり、極端な場合には系の全体又は一部が塊状(又はモチ状又は糸鞠状)となり、製品(析出物)の回収を困難にしたり、収率を低下させる場合がある。
本発明の造粒工程では、撹拌下での貧溶媒(又は非溶媒)の添加(さらには系の温度降下)によって、均一溶液の状態から不均一系に相転移させることによって変性グルカン誘導体の粒状化を達成する。効率よく粒状化させるために、撹拌は、少なくとも相転移点(又は曇点)において所定の撹拌力を作用させてもよい。このような観点から、撹拌は、相転移点(又は曇点)[又は相転移点(曇点)の近傍]における単位体積あたりの攪拌所要動力(Pv)が、例えば、0.01kW/m以上(例えば、0.02〜100kW/m)、好ましくは0.03kW/m以上(例えば、0.05〜50kW/m)、さらに好ましくは0.1kW/m以上(例えば、0.3〜20kW/m)、特に0.3kW/m以上(例えば、0.5〜7.0kW/m)程度となるように行ってもよい。
なお、単位体積あたりの攪拌所要動力(Pv)は、粒状化に十分な程度に大きいことが望ましいが、Pvが小さい場合は相転移点(曇点)で生成する粒子の核を十分に拡散させることができないために粒子同士が十分に分離しないまま成長が進み、系の全体又は一部が塊状(又はモチ状又は糸鞠状)となりやすい。
なお、本発明の造粒工程では、相転移点(曇点)(又はその近傍の均一相)における系の粘度は変性グルカン誘導体を含むために、比較的高くてもよい。前記系の粘度は、例えば、10〜100000mPa・s、好ましくは100〜50000mPa・s、さらに好ましくは500〜30000mPa・s程度であってもよい。粒状化が効率よく行える限りにおいて、粘度に上限はないが、粘度が高すぎると、生成した粒子核または粒子の拡散が十分でないために粒子同士が十分に分離しないまま成長が進んだり、粒子成長が進む準安定領域を経ないままスピノーダル分解が進行するなどして、系の全体又は一部が塊状(又はモチ状又は糸鞠状)となりやすい。
このような粘度のため、造粒工程を攪拌下で行う場合、相転移点(曇点)(又はその近傍の均一相)における系の攪拌レイノルズ数は、例えば、0.01〜50000、好ましくは0.03〜5000(例えば、0.05〜1000)、さらに好ましくは0.1〜500(例えば、0.2〜300)、通常、0.3〜200程度であってもよい。
また、粒状化は、比較的低温(例えば、50℃以下程度)で生じやすくなるようであり、温度も重要である。そのため、造粒工程は、少なくとも粒状化可能な温度で行ってもよい。このような温度(造粒温度)としては、例えば、60℃未満(例えば、−30℃〜58℃)、好ましくは55℃以下(例えば、−20℃〜53℃)、さらに好ましくは50℃以下(例えば、0〜48℃)、特に45℃以下(例えば、10〜45℃程度)であってもよい。このような造粒温度は、前記攪拌造粒工程と組み合わせるのが好ましく、代表的には、造粒工程は、攪拌下で、ドープに貧溶媒を混合し、上記造粒温度(例えば、60℃未満)で前記粒状物を生成させる攪拌造粒工程を少なくとも含んでいてもよい。なお、前記相転移点又は曇点は、通常、上記造粒温度において現れる(観察される)。
前記攪拌造粒工程(特に、造粒温度で混合する攪拌造粒工程)で混合系を保持する時間(保持時間)は、スケールにもよるが、例えば、10分〜24時間、好ましくは20分〜18時間、さらに好ましくは30分〜12時間、特に1〜8時間程度であってもよい。なお、粒状物の粒径は、この保持時間や、攪拌速度、後述の降温速度などにより調整することもできる。
なお、造粒工程は、少なくとも上記温度(および攪拌下)で行えばよく、工程の一部において混合系の温度を上記温度よりも高い温度としてもよい。例えば、ドープへの貧溶媒の混合を前記造粒温度よりも高い温度で行った後、前記造粒温度まで降温することにより粒状化させてもよい。造粒温度よりも高い温度は、例えば、造粒温度をT(℃)とするとき、(T+5)℃〜(T+150)℃、好ましくは(T+10)℃〜(T+100)℃、さらに好ましくは(T+15)℃〜(T+80)℃程度であってもよい。具体的には、造粒温度よりも高い温度は、60℃以上(例えば、60〜150℃)、好ましくは65℃以上(例えば、65〜120℃)、さらに好ましくは70℃以上(例えば、70〜100℃)であってもよい。
なお、降温は、造粒温度まで一気に行ってもよく、連続的に又は段階的に行ってもよい。このような降温において、降温速度は、例えば、1時間あたり、1〜20℃、好ましくは3〜18℃、さらに好ましくは5〜15℃程度であってもよい。
貧溶媒の混合方法は、特に限定されず、通常、効率よく粒状化させるためには、滴下する方法であってもよい。また、貧溶媒は、連続的に添加してドープに混合してもよく、段階的にドープに混合してもよい。例えば、貧溶媒の一部をドープに混合(第1の混合)したのち、攪拌下でドープに貧溶媒を混合(第2の混合、例えば、滴下)してもよい。このような段階的混合において、第1の混合は攪拌下で行ってもよいが、必ずしも攪拌下で行わなくてもよい。このような第1の混合と第2の混合とに分けて段階的に混合する場合、第1の混合で使用する貧溶媒の使用量と第2の混合で使用する貧溶媒の使用量との割合は、前者/後者(重量比)=5/95〜80/20、好ましくは10/90〜75/25(例えば、20/80〜70/30)、さらに好ましくは25/75〜60/40(例えば、30/70〜50/50)程度であってもよい。
代表的な造粒工程には、以下の工程などが挙げられる。
(1)攪拌下で、ドープに貧溶媒を混合(例えば、滴下により混合)し、造粒温度(例えば、60℃未満)で(相転移を生じさせつつ又は曇点に到達させつつ)前記変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程を含む造粒工程:
(2)ドープに貧溶媒の一部を造粒温度よりも高い温度(例えば、60℃以上の温度)で混合する混合工程と、この混合工程により得られた混合液に、攪拌下で残りの貧溶媒を混合し(例えば、滴下により混合し)、造粒温度(例えば、60℃未満の温度)で(相転移を生じさせつつ又は曇点に到達させつつ)前記変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程とを含む造粒工程:
なお、上記工程において、混合液は、造粒温度まで降温されるが、降温は残りの貧溶媒を混合しつつ(さらには相転移を生じさせつつ又は曇点に到達させつつ)行ってもよく、降温した後(さらには相転移が生じた後又は曇点に到達した後)、貧溶媒を混合してもよい。
(3)ドープに貧溶媒を造粒温度よりも高い温度(例えば、60℃以上の温度)で混合する混合工程と、この混合工程により得られた混合液を造粒温度(例えば、60℃未満の温度)で攪拌し(相転移を生じさせつつ又は曇点に到達させつつ)、前記変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程とを含む造粒工程:
なお、上記工程において、混合液は、造粒温度まで降温されるが、比較的高い造粒温度であって、粒状物が生成していない温度(例えば、35℃〜59℃、好ましくは40〜58℃、好ましくは45〜57℃程度)において保持した後、さらに降温して造粒してもよい。このような造粒工程では、比較的大きな粒子径の粒状物を得やすい。
以上のようにして、変性グルカン誘導体の粒状物が得られる。このような造粒工程を経て得られる本発明の粒状物は、粒状化されているだけでなく、前記グラフト反応工程を経て得られた反応液をそのまま用いたドープを用いても、後述するように、高度に精製されており、有用性が高い。すなわち、本発明では、前記造粒工程において、精製(例えば、ヒドロキシ酸成分の単独重合体を分離)しつつ粒状物を生成させることができる。
なお、造粒工程後の混合液からの粒状物の回収(分離)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、遠心分離や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。また、必要に応じて、回収後の粒状物をさらに洗浄してもよい。洗浄に用いる溶媒としては、前記例示の溶媒(特に、極性有機溶媒)などが挙げられる。
<ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物>
以上のようにしてヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を得ることができる。そして、本発明には、前記方法により得られた粒状物(又は粒子)も含まれる。
本発明の粒状物の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、1〜10000μm(例えば、10〜7000μm)、好ましくは30〜5000μm(例えば、50〜4000μm)、さらに好ましくは70〜3000μm(例えば、80〜2500μm)程度であってもよい。比較的小さい粒径の粒状物では、平均粒子径が500μm以下(例えば、10〜450μm、好ましくは30〜400μm、さらに好ましくは50〜350μm程度)であってもよい。なお、平均粒子径は、ドープに対する貧溶媒の種類やその混合割合、混合方法などを選択(変更)することにより調整することもできる。なお、粒子径は、粒子の長径をR1、短径をR2とするとき、「(R1+R2)/2」で表される。
また、粒状物の平均真球度は、例えば、0.07〜1(例えば、0.1〜1)、好ましくは0.15〜0.95、さらに好ましくは0.2〜0.9程度であってもよい。比較的平均真球度の高い粒状物では、平均真球度が0.3以上(例えば、0.35〜1、好ましくは0.4〜0.95、さらに好ましくは0.45〜0.9程度)であってもよい。なお、真球度は、粒子の長径をR1、短径をR2とするとき、「R2/R1」で表される。
なお、平均粒子径および平均真球度は、その測定方法に特に限定はなく、慣用の方法(例えば、後述の実施例における方法など)により測定できる。
また、本発明の方法により得られる粒状物は、単一の粒子であってもよいが、複数の粒子が凝集した複合粒子である場合が多いようであり、微視的には表面に多くの凹凸部又は孔を有するという特徴がある。すなわち、本発明の粒状物は、通常の粒状物に比べて高い表面積を有しているようである。このため、本発明の粒状物は、溶媒(良溶媒)に対する溶解性などにおいても優れ、粒状物として非常に有用である。
本発明の方法により得られる粒状物は、粒状であるとともに、不純物の含有量が少なく、高いレベルで精製されている。例えば、前記粒状物において、ヒドロキシ酸成分の単独重合体の含有割合は、粒状物(又は変性グルカン誘導体)全体に対して、20重量%以下(例えば、0又は検出限界〜15重量%程度)の範囲から選択でき、例えば、10重量%以下(例えば、0.01〜9重量%程度)、好ましくは8重量%以下(例えば、0.05〜7重量%程度)、さらに好ましくは5重量%以下(例えば、0.1〜4.5重量%、特に0.1〜3重量%程度)であってもよい。なお、粒状物中の前記単独重合体の割合は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などにより測定できる。このようなヒドロキシ酸成分の遊離の単独重合体の含有量が少ない変性グルカン誘導体は、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の特性を損なうことがなく有用である。例えば、このような変性グルカン誘導体は、光学用途において、光学的特性(透明性など)を向上しやすく、また、前記単独重合体の成形体表面への漏出(ブリードアウト)、チョーキングや白化などの外観不良を招きにくい。
また、粒状物(又は変性グルカン誘導体)の酸価は、3mgKOH/g以下(例えば、0〜2.5mgKOH/g程度)の範囲から選択でき、例えば、好ましくは2mgKOH/g以下(例えば、0.1〜1.8mgKOH/g程度)、さらに好ましくは1.5mgKOH/g以下(例えば、0.15〜1.2mgKOH/g程度)、特に1mgKOH/g以下(例えば、0.2〜0.8mgKOH/g程度)である。酸価が小さな変性グルカン誘導体は、耐加水分解性に優れている。そして、ブリードアウト、チョーキングや白化などの外観不良を招きにくいために、光学用途において、光学的特性(透明性など)を向上しやすい。また、加水分解に伴う分子量低下による脆化を防止(抑制)できる。酸価は、前記ヒドロキシ酸成分の単独重合体および未反応のヒドロキシ酸成分の含有量などを低減することにより小さくすることができるが、本発明では、前記造粒工程などによりこれらの成分の含有量が著しく低減されており、粒状物は上記のような非常に小さい酸価を有している。なお、酸価は、JISK0070(1992年発行)に準拠し、フェノールフタレインを指示薬とした中和滴定法などによって測定できる。
さらに、粒状物(又は変性グルカン誘導体)は、着色が抑えられており、例えば、塩化メチレンとメタノールとの混合溶媒[前者/後者=9/1(体積比)]に濃度6重量%で、粒状物(又は変性グルカン誘導体)を溶解した溶液のハーゼン色数(APHA)は、例えば、130以下(例えば、1〜120程度)、好ましくは110以下(例えば、20〜110程度)、さらに好ましくは100以下(例えば、50〜90程度)程度であってもよい。
なお、前記粒状物(又は変性グルカン誘導体)は、特に限定されないが、比較的高いガラス転移温度を有しているのが好ましい。例えば、前記粒状物(変性グルカン誘導体)のガラス転移温度は、70℃以上(例えば、73〜220℃程度)の範囲から選択でき、例えば、75〜200℃(例えば、78〜190℃)、好ましくは80℃以上[例えば、80〜180℃(例えば、82〜170℃)]、さらに好ましくは85〜160℃程度であってもよく、通常90〜155℃(例えば、95〜150℃)程度であってもよい。このようなガラス転移温度は、例えば、ヒドロキシ酸成分のグラフト割合、グラフト鎖の重合度、グルカン誘導体の種類(置換度、アシル基などの置換基の種類など)などを調整することにより調整できる。通常、グルカン誘導体が同一である場合、グルカン誘導体に付加させる環状エステルの量やグラフト鎖の重合度を大きくするほど、ガラス転移温度は低下するようである。
粒状物は、熱可塑性プラスチックとして利用でき、粉状物としてそのまま使用してもよく、ペレット(樹脂ペレット、マスターバッチペレットなど)状、溶媒を含む組成物(ドープ、コーティング組成物など)などの形態として使用することもできる。本発明の粒状物では、予め粒状物となっているため、保存性やハンドリング性に優れており、前記のように表面積が大きいためか溶剤溶解性を向上しやすい。また、成形にも供しやすいため、変性グルカン誘導体としての適用範囲が広い。
なお、前記変性グルカン誘導体は、樹脂組成物を構成してもよい。このような樹脂組成物において、変性グルカン誘導体は、単独で又は2種以上組みあわせて使用できる。また、前記樹脂組成物は、樹脂成分として、他の樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、熱可塑性エラストマー、前記範疇に属さないグルカン誘導体(例えば、セルロースアセテートなどのセルロースアシレート)などを含んでいてもよい。他の樹脂は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
前記樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、充填剤(フィラー)又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記変性グルカン誘導体(及びその組成物)は、前記のように、成形性や溶剤溶解性などに優れており、熱可塑性プラスチックとして好適に使用でき、種々の成形体(繊維などの一次元的成形体、フィルム、シート、塗膜(又は薄膜)などの二次元的成形体、三次元的成形体など)を成形するのに有用である。また、本発明の変性グルカン誘導体は、高い耐熱性を付与できることに加えて、優れた透明性や光学的特性(光学的等方性、光学的異方性など)を有している場合が多く、好適に光学用成形体(特に、光学フィルム)を形成することもできる。
前記変性グルカン誘導体の成形法としては、公知の成形方法、例えば、押出成形法、射出成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、塗布法(スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、キャスティング成形法などの溶液成膜法)、紡糸法(溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法など)などを利用できる。
本発明の方法では、前記変性グルカン誘導体を粒状物として得ることができる。しかも、本発明の方法は、簡便であり、また、貧溶媒の使用量も比較的少なくできるため、実用的であり、工業的にも有利である。また、得られる粒状物は、粒状化のみならず、高レベルで精製されているため、粒状物そのものとしても実用的に優れている。
このような本発明の方法により得られた変性グルカン誘導体(例えば、セルロースアシレート誘導体)の粒状物は、各種用途、例えば、オフィスオートメーション(OA)・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車などの輸送車両分野、家具・建材などの住宅関連分野、雑貨分野などの各パーツ、ハウジングなどに好適に使用することができる。また、本発明の粒状物は、耐熱性や光学的特性(光学的等方性、光学的異方性など)に優れている場合が多く、特に、このような光学的特性は、グルカン誘導体の種類、グラフト割合、延伸倍率などを調整することにより簡便に制御でき、用途に応じて幅広い範囲の光学的特性を付与できる。しかも、成形温度範囲が広く、幅広い成形温度で優れた特性(光学的特性など)を簡便に付与できる。そのため、フィルム(包装用フィルムなど)、光学用途の成形体[例えば、液晶パネルなどの表示材料又は表示素子、レンズ(眼鏡用レンズ、コンタクトレンズなど)など]を形成するのに有用である。光学用途の成形体は、三次元的形態の成形体であってもよく、特に、フィルム状成形体に好適である。フィルム(光学フィルム)としては、付与する光学的特性に応じて、例えば、カラーフィルタ、写真感光材料の基材フィルム、表示装置用フィルム(例えば、液晶表示装置用光学補償フィルムなどの光学補償フィルム)、位相差フィルム、保護フィルム(偏光板用保護フィルムなど)、反射防止フィルムの基材フィルムなどとして利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例において、各種特性は以下のようにして測定した。
(1)揮発成分の重量分率
グラフト重合反応後の重合反応液や粒状物(または析出物)に含まれる揮発成分は、キャピラリーガスクロマトグラフィー測定(GC測定)の結果から絶対検量線定量法により決定した。なお、前記揮発成分には、グラフト重合反応の重合溶媒(例えば、シクロヘキサノン)、希釈剤(良溶媒)、造粒剤(貧溶媒又は非溶媒)などが該当する。
(i)機器
GC本体:(株)島津製作所製「GC−2014」
検出器:水素炎イオン化検出器[FID]
カラム:アジレント・テクノロジー製「DB−1」
(長さ30m、直径0.25mm、膜厚0.25mm)
キャリアガス:ヘリウム
(ii)測定条件
注入方式:スプリット注入(スプリット比1:50)
注入部温度:250℃
検出器温度:280℃
カラム温度:40℃で3分保持後10℃/分の速度で210℃まで昇温。
(2)モノマー転化率、残存モノマーの重量分率
モノマー転化率(ε−カプロラクトンモノマー)および残存モノマーの重量分率は、重合反応液や粒状物(または析出物)のH−NMR測定から得られる未反応モノマーと重合物中のモノマー成分の積分値の比より算出した。
(3)酸価
酸価は、JISK0070(1992年発行)に準拠し、フェノールフタレインを指示薬とした中和滴定法によって測定した。
(4)ハーゼン色数(ハーゼン単位色数、色度、色相)
ハーゼン単位色数は、JIS K 0071−1(1998年発行)に準拠して判定した。すなわち、色数判定用の対象物質(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体など)を、塩化メチレン/メタノール=9/1(体積比)の混合溶媒を用いて、重量比で6%の均一な溶液とし、この溶液の色味を標準比色液と比較した。対象物質がグラフト反応工程における反応混合物(又は反応混合液)である場合は、反応混合物中のヒドロキシ酸変性グルカン誘導体が重量割合で6%含まれるように溶液を調製した。
(5)水分
液体試料及び固体試料(粒状物など)の水分は、加熱式水分気化装置を備えたカールフィッシャー式電量法水分測定装置((株)ダイヤインスツルメンツ製)を用いて、JIS K 0113(2005年発行)に準拠して測定した。固体試料(粒状物など)の水分(例えば、下記の実施例において原料として用いた酢酸セルロースの水分)を測定する際には、気化装置の加熱炉の温度は200℃に設定した。重合開始前の反応液の水分は、原料の水分と仕込み比から算出した。
(6)ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の特性値
実施例中で用いるヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の特性値に関する用語を、グルカン誘導体として酢酸セルロース、ヒドロキシ酸成分(モノマー)としてε−カプロラクトンを使用して場合を例として、以下のように定義する:
(i)「MS(CL)」は、グルコース単位1モルあたりの、グルコース単位に結合したグラフト鎖を構成するε−カプロラクトン単位の平均総モル数(平均モル置換度)を表す。
(ii)「DS(PCL)」は、グルコース単位1モルあたりの、グルコース単位に結合したグラフト鎖の平均総モル数(平均置換度)を表す。
(iii)「DPn(PCL)」は、グラフト鎖および重合中に副生するPCLオリゴマーのε−カプロラクトン単位の数平均重合度である。
そして、上記(i)〜(iii)の特性値はH−NMR測定により求めた。
なお、上記特性値(i)〜(iii)は、(1)酢酸セルロースのアセチル基の平均置換度は反応前後において実質的に変わらず、かつ(2)グラフト鎖とCL単独重合体とは、数平均重合度において同じであるとして算出した。
(7)重合液中各成分の重量分率
グラフト重合反応終了後の重合液を構成する各成分の重量は下記式を用いて算出した。
(i)グラフト体重量
ここで、「FW(CA)AGU」はグルカン誘導体(酢酸セルロース)の無水グルコースユニットあたりの平均式量、「DS(Ac)」はグルカン誘導体(酢酸セルロース)のグルコース水酸基の置換基(例えば、アセチル基)の平均置換度、「FW(CAgHA)AGU」はヒドロキシ酸変性グルカン誘導体(グラフト体)の無水グルコースユニットあたりの平均式量、「W(CAgHA)」、「W(CA)」は、それぞれ、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体(グラフト体)、グルカン誘導体(酢酸セルロース)の重合液中の重量を表す。
(ii)残存モノマー重量
ここで、「W(CLM)」はε−カプロラクトンモノマー(CLM)の重合開始前重量(または、仕込み重量)を、「W(residualCLM)」は、重合液中に残存するCLMの重量を、Conv(CLM)はCLMの転化率(モノマー転化率)をそれぞれ表す。
(iii)副生PCLオリゴマーの重量
ここで、「W(Oligo−PCL)」は重合液中の副生ポリ(ε−カプロラクトン)オリゴマー(PCLオリゴマー)の重量を表し、「W(CA+CLM)」はグルカン誘導体(例えば、酢酸セルロース)及びCLMの重合開始前重量(または、仕込み重量)の和を表す。
各成分の重量分率は、前記式で求めた各成分の重量を仕込み総重量で除して求めた。
(8)比重
グラフト体の比重、及び造粒液の比重は下記式を用いて算出した。造粒液の比重の算出式として、重合溶媒及び希釈溶媒がシクロヘキサノン、塩化メチレン、造粒剤(貧溶媒/非溶媒)がイソプロピルアルコール(IPA)の場合を例示する。
(i)グラフト体の比重
ここで「ρ(CAgHA)」はヒドロキシ酸変性グルカン誘導体(グラフト体)の比重を表す。
(ii)造粒液の比重
ここで「ρtotal」は造粒液の比重を、「ρ(PCL)」はポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)の比重を、「ρ(CLM)」はε−カプロラクトンモノマー(CLM)の比重を、「ρ(ANON)」は重合溶媒{例えば、シクロヘキサノン(ANON)}の比重を、「ρ(DCM)」は希釈溶媒{例えば、塩化メチレン(DCM)}の比重を、「ρ(IPA)」は貧溶媒{例えば、イソプロパノール(IPA)}の比重を、それぞれ表す。また、「W(ANON)」は重合溶媒{例えば、シクロヘキサノン(ANON)}の比重を、「W(DCM)」は希釈溶媒{例えば、塩化メチレン(DCM)}の比重を、「W(IPA)」は貧溶媒{例えば、イソプロパノール(IPA)}の比重を、それぞれ表す。
(9)粘度
処理液の粘度は、B形粘度計を使用し、JIS K 7117−1(1987年発行)に準拠した見掛け粘度ηとして求めた。粘度範囲に合わせて適切な回転数及びスピンドルを選択した。
(10)GPC測定
グラフト体の分子量、分子量分布、及び副生PCLオリゴマーの有無はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定より、決定又は確認を行った。分子量計算にはポリスチレン標準試料に基づく検量線を用い、ポリスチレン換算分子量を算出した。
(i)機器
ポンプ:(株)島津製作所製「LC−20A」
デガッサー:(株)島津製作所製「DGU−20A」
カラムオーブン:東ソー(株)製「CO−8020」
検出器:示差屈折率計[RI]、(株)島津製作所製「RID−10A」
(ii)測定条件
溶離液:クロロホルム
流量:1.0ml/min
カラム構成:昭和電工(株)製GPCカラム「GPCK−806L」3本
カラム温度・検出器温度:40℃
検出信号記録頻度:0.5秒毎に1回。
(11)平均粒子径、平均真球度、及び粒子形状観察
粒子状物を、デジタルマイクロスコープVH−7000(キーエンス社製)により観察し、各粒子径の長径(R1)、短径(R2)を測定し、以下の計算式に基づいて粒子100個について粒子径および真球度を求め、これらの平均値から、平均粒子径および平均真球度を求めた。
粒子径=(R1+R2)/2 (8)
真球度=R2/R1 (9)
粒子形状観察には、さらに高倍率の卓上型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、Miniscope TM−1000)を用いて、低真空タイプの走査電子顕微鏡原理を利用した顕微鏡観察を行った。
(12)粒度分布
レーザー回折型粒度分布計(島津製作所(株)製、SALD −2000J)を用いて粒度分布を測定した。分散媒には水を使用した。
(実施例1)
<グラフト重合工程>
攪拌機、いかり型攪拌翼を備えた反応器(500mLセパラブルフラスコ)に酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製、L−20、アセチル基平均置換度(DS(Ac)2.41、6%粘度50mPa・s)70重量部を加え、110℃、4時間、4Torr以下で減圧乾燥した。その後、系を乾燥窒素により常圧に戻し、還流冷却管を取り付け、ε−カプロラクトンモノマー(ダイセル化学工業(株)製、CLM)30重量部、ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド(DPC)(和光純薬工業(株)製)2.7重量部、および重合溶媒としてシクロヘキサノン(ANON)(和光純薬工業(株)製)67重量部を加えて160℃に加熱、攪拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。ε−カプロラクトンモノマーとシクロヘキサノンは、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥後、蒸留して精製した。この混合液中の水分含量は、280ppmであった。この混合液に重合触媒としてモノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)(MBTTEH)(Aldrich製)0.25重量部を添加し、160℃で2時間攪拌した。その後、水浴中で20℃まで冷却し反応を終了させ、重合液を得た。
H−NMR測定の結果、反応停止後の重合液中におけるCLMの転化率は98%、重合液中のグラフト体(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体)、副生したポリ(ε−カプロラクトン)オリゴマー(PCLオリゴマー)、残存CLMの濃度は、それぞれ、55.1重量%、3.4重量%、0.4重量%であった。重合液の酸価は7.6mgKOH/gであり、色相は150(APHA)であった。
<造粒工程>
得られた重合液の一部である15重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)としてシクロヘキサノン85重量部(重合液の5.7重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は8.3重量%であった。その後、ドープを冷却し、20℃で保持し、100rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてメタノール600重量部(ドープの6.0重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。メタノールを加えていくとドープは途中で強く濁り、粒子状の析出物が生成した。粒子状物の析出後も攪拌と貧溶媒の滴下を継続し、前記所定量の滴下完了後、攪拌粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下での減圧乾燥(10kPa以下)を5時間以上行い、乾燥した粒子状物を得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.78、DS(PCL)0.12、DPn(PCL)6.5であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(メタノール)残量は、ガスクロマトグラフィー(GC)測定からそれぞれ、0.4重量%、0.1重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。
また、粒状物の酸価は0.46mgKOH/g、色相は80(APHA)であり、カプロラクトンオリゴマーが高いレベルで除去されたグラフト体粒子を得ることができた。 粒状化前後のGPCチャート(GPCクロマトグラム)をそれぞれ図1および図2に示す。
粒状化前の重合液のGPCクロマトグラム(図1)には、グラフト重合中に副生したPCLオリゴマーに由来するピークが確認された。図1において、溶出時間16分から33分の区間(以下、「解析対象区間」と呼ぶことがある)に検出されるピークのうち、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体(グラフト体)に由来する最初のピークの始点から終点または第2ピークとの重なりによって生じるピーク相対強度が極小となる点までを「第1ピーク区間」、第1ピーク区間の終点から、副生PCLオリゴマーに由来する第2ピークの終点または第3ピークとの重なりによって生じるピーク相対強度が極小となる点までを「第2ピーク区間」としたとき、第2ピーク区間内におけるピークトップの相対強度(以下、「第2ピーク区間相対強度最大値」と呼ぶことがある)は、21.6%であった。ここで言うGPCクロマトグラムのピーク相対強度とは、前記解析対象区間において検出されるピークの最大強度を100%に規格化した場合の、各溶出時間におけるピーク強度の相対値(%)である。また、ピークの始点、終点は、ピークの相対強度がそれぞれ、0.5%以上、0.5%以下となった点とした。
一方、粒状化後のGPCクロマトグラム(図2)には、前記オリゴマーのピークもほぼ消失し、粒状化工程で前記オリゴマーを除去できたことが確認された。粒状化後の第2ピーク区間相対強度最大値は0.82%であった。なお、図2のように、前記解析対象区間において明確な第2ピークが検出されない場合は、第1ピークの終点から溶出時間33分までを第2ピーク区間とし、その区間内におけるピーク相対強度の最大値を求めた。
GPC測定より、得られた粒状物の分子量(ポリスチレン換算値)は、Mn72,000、Mw214,000、Mw/Mn2.97であった。
また、粒状物の平均粒子径は235μm、真球度は0.61であった。図3に、得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真、図4に得られた粒状物の電子顕微鏡写真を示す。
さらに、得られた粒状物は、塩化メチレン/メタノール混合溶媒(重量比9:1)に容易に溶解し、所定の方法(特開2007−327026公報の実施例1に記載の方法)によりキャストフィルムを作成することができた。
(実施例2)
実施例1において、貧溶媒(非溶媒)としてのメタノール600重量部に代えてエタノール450重量部(ドープの4.5重量倍)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を得た。
分析の結果、粒状物の酸価は0.40mgKOH/gであり、GPC測定では実施例1と同様に副生PCLオリゴマーの残留は認められなかった。
得られた粒状物の粒子径および真球度を測定したところ、平均粒子径は249μm、平均真球度は0.55であった。
(実施例3)
実施例1において、貧溶媒(非溶媒)としてのメタノール600重量部に代えてイソプロパノール(IPA)250重量部(ドープの2.5重量倍)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を得た。
分析の結果、粒状物の酸価は0.33mgKOH/gであり、GPC測定では実施例1と同様に副生PCLオリゴマーの残留は認められなかった。
得られた粒状物の粒子径および真球度を測定したところ、平均粒子径は282μm、平均真球度は0.48であった。図5に、得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真、図6に得られた粒状物の電子顕微鏡写真を示す。
(参考例1)
実施例3において、貧溶媒(非溶媒)としてイソプロパノール(IPA)250重量部に代えて水250重量部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒子化を試みた。ドープに水を滴下していくと溶液は徐々に白濁していったが、攪拌を停止すると二層に分離し、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体が粒子としても固体としても析出することはなかった。
(参考例2)
実施例3において、貧溶媒(非溶媒)としてイソプロパノール(IPA)250重量部に代えてトルエン250重量部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒子化を試みたが、粒状化には成功しなかった。
すなわち、ドープにトルエンを滴下していくと溶液は透明なままであったが、グラフト体が透明なゲル状に沈殿した。そのため、デカンテーションによって上澄みを除き、再びトルエンを加えてゲル状沈殿物をリンスした後、濾別したものの、やはり粒子として得ることはできなかった。
トルエンはグラフト枝鎖であるPCLの良溶媒であるが、グラフト基材の酢酸セルロースにとっては非溶媒である。本参考例のヒドロキシ酸変性グルカン誘導体{ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト化酢酸セルロース}はトルエンのような芳香族炭化水素系溶媒によって膨潤はするが完全に溶解はしない。本参考例のように、このような溶媒を造粒工程の貧溶媒(非溶媒)として用いた場合、析出物(沈殿物)は透明ゲル状となって、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を得ることはできなかった。
濾別回収したゲル状沈殿物を、80℃加熱下、5時間以上10kPa以下で減圧乾燥し、乾燥した塊状物を得た。得られた塊状物(乾燥後)の酸価は3.43mgKOH/gであり、副生PCLオリゴマーの除去も十分ではなかった。
(参考例3)
実施例3において、貧溶媒(非溶媒)としてイソプロパノール(IPA)250重量部に代えてヘキサン250重量部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒子化を試みたが、粒状化には成功しなかった。
ドープにヘキサンを滴下していくとドープは徐々に白濁したが、析出物は粒子化せずひとかたまりの団子状(塊状)となった。デカンテーションによって上澄みを除き、再びヘキサンを加えて塊状沈殿物をリンスした後、濾別したがやはり粒子として得ることはできなかった。
ヘキサンはグラフト枝鎖であるPCL及びグラフト基材の酢酸セルロースのいずれにとっても非溶媒である。本参考例のヒドロキシ酸変性グルカン誘導体{ポリ(ε−カプロラクトン)グラフト化酢酸セルロース}も本例のヘキサンのような脂肪族炭化水素には溶解しない。このような溶媒(本例ではヘキサン)を造粒工程の貧溶媒(非溶媒)として用いた場合、析出物(沈殿物)は塊状(ひとかたまりの団子状)となって、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を得ることはできなかった。
濾別回収した塊状沈殿物を、80℃加熱下、5時間以上10kPa以下で減圧乾燥した。得られた塊状物(乾燥後)の酸価は2.53mgKOH/gであり、副生PCLオリゴマーの除去も十分ではなかった。
(実施例4〜7)
実施例1において、重合液の希釈溶媒(良溶媒)としてシクロヘキサノン85重量部に代えて、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、
又はテトラヒドロフラン(THF)をそれぞれ85重量部用いる以外は実施例3と同様にして、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を得た。結果を表1に示す。
表1からも明らかなように、粒状物は実施例1〜3の結果と同様に精製されており、GPC測定では副生PCLオリゴマーの残留は認められなかった。
なお、図7に、実施例4で得られた粒状物の電子顕微鏡写真を示す。
(参考例4)
ドープに貧溶媒(非溶媒)であるIPAを滴下する際、攪拌を実施しないこと以外は実施例3と同様にして、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体をドープから析出させた。このとき、析出物は粒子化せずひとかたまりの団子状(塊状)に析出した。デカンテーションによって上澄みを除き、再びIPAを加えて塊状沈殿物をリンスした後、濾別したがやはり粒子として得ることはできなかった。
得られた塊状物の酸価は2.00mgKOH/gであり、副生PCLオリゴマーの除去も十分ではなかった。
(参考例5)
実施例1で得られたドープ100重量部(グラフト体濃度8.3重量%)を滴下ロートに移し、別容器のIPA1000重量部(ドープの10重量倍)に対してゆっくり注いだ。ドープを注ぐ間、攪拌機及びいかり型攪拌翼を用いて100rpmの速度で別容器の内容物を攪拌したところ、糸鞠状の析出物が析出した。デカンテーションによって上澄みを除き、再びIPAを加えて糸鞠状沈殿物をリンスした後、濾別したがやはり粒子として得ることはできなかった。
濾別回収した糸鞠状沈殿物を、80℃加熱下、5時間以上10kPa以下で減圧乾燥した。得られた糸鞠状沈殿物(乾燥後)の酸価は0.55mgKOH/gであり、分析(GPC)の結果、副生PCLオリゴマーは除去されていることがわかった。
(参考例6)
実施例1で得られた重合液5重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)として塩化メチレン95重量部(重合液の19重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は2.8重量%であった。
ドープを滴下ロートに移し、別容器のメタノール2000重量部(ドープの20重量倍)に対してゆっくり注いだ。ドープを注ぐ間、攪拌機及び攪拌翼(3枚後退翼)を用いて150rpmの速度で別容器の内容物を攪拌した。その結果、糸鞠状の沈殿物が得られ、全体を粒状物として得ることができなかった。
濾別回収した糸鞠状沈殿物を、80℃加熱下、5時間以上10kPa以下で減圧乾燥した。得られた糸鞠状物(乾燥後)の酸価は0.32mgKOH/gであり、分析(GPC)の結果、副生PCLオリゴマーは除去されていることがわかった。
(実施例8)
実施例1の重合液33重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)としてジメチルアセトアミド(DMAc)67重量部(重合液の2.0重量倍)を添加し85℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は18.3重量%であった。その後、温度を保持したまま、翼回転数150rpmで攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてイソプロピルアルコール(IPA)200重量部(前記ドープの2.0重量倍)を、系が不均一化しないように注意しながらゆっくり滴下投入した。滴下終了後、系は均一状態であった。
前記量のIPA滴下終了後、セパラブルフラスコを温浴と切り離し、攪拌したまま、室温下放冷により系を冷却した。図8に、IPA滴下後の内温(液温)の経時変化を表すグラフを示す。内温が58℃になったところで系が不均一(曇点)となり、さらに温度を降下させると粒子状の析出物が生成した。内温が40℃になったところで、100重量部のIPAを滴下により追加し、内温も10℃までさらに降下させた。追加完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物を得た。
得られた粒状物の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値は実施例1の結果と同様であった。粒状物中のANON残量、DMAc残量、貧溶媒(IPA)残量は、GC測定からそれぞれ、0.41重量%、0.89重量%、0.08重量%であり、CLM残量は検出限界以下(検出されず)であった。粒状物の酸価は0.64mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
(実施例9)
実施例1の重合液33重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いでシクロヘキサノン(ANON)67重量部(重合液の2.0重量倍)を添加し80℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は18.2重量%であった。その後、温度を保持したまま、150rpmで攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてイソプロパノール(IPA)150重量部(前記ドープの1.5重量倍)を、系が不均一化しないように注意しながらゆっくり滴下投入した。滴下終了後、系は均一状態であった。
前記量のIPA滴下終了後、攪拌したまま、およそ−10℃/分の速度で系を冷却した。図9に内温(液温)の経時変化を表すグラフを示す。内温が53℃になったところで系が不均一(曇点)となり、さらに50℃まで冷却した。50℃で系内は一様に白濁した状態で、目視による観察では沈降性の粒状物の生成は確認できなかった。この状態で攪拌したまま2.5時間、温度を保持した。その後、再び系を冷却(セパラブルフラスコを温浴と切り離し、室温下放冷)すると、内温が47℃を下回ったあたりで沈降性粒子の一部が観察され、さらに温度を降下させると一様に粒子状の析出物が生成した。内温が40℃になったところで、150重量部のIPAを滴下により追加し、内温も10℃までさらに降下させた。
追加完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃の加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒子状物を得た。
得られた粒状物の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値は実施例1の結果と同様であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、GC測定からそ
れぞれ、0.35重量%、0.15重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。
粒状物の酸価は0.33mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
得られた粒状物の粒子径および真球度を測定したところ、平均粒子径は1645μm、平均真球度は0.28であった。図10に、得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真、図11に得られた粒状物の電子顕微鏡写真を示す。
(実施例10)
実施例1の重合液70重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いでシクロヘキサノン(ANON)30重量部(重合液の0.43重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は38.5重量%であった。その後、ドープを冷却し、40℃で保持し、100rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてイソプロパノール(IPA)250重量部(ドープの2.5重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープは途中で強く濁り、粒子状の析出物が生成した。粒子状物の析出後も攪拌と貧溶媒の滴下を継続し、前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下での減圧乾燥(10kPa以下)を5時間以上行い、乾燥した粒子状物を得た。
得られた粒状物の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値は実施例1の結果と同様であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、GC測定からそれぞれ、0.42重量%、0.15重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。
粒状物の酸価は0.35mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。粒状物の平均粒子径は306μm、真球度は0.73であった。図12に、得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真、図13に得られた粒状物の電子顕微鏡写真を示す。
(実施例11)
<グラフト重合工程>
攪拌機、いかり型攪拌翼を備えた反応器(1000mLセパラブルフラスコ)にシクロヘキサノン(ANON)600g、酢酸セルロース(L−20)84gを加え、オイルバスを用いて130℃に加熱し、攪拌しながら酢酸セルロースを溶解させた。ANONは、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥したものを使用し、投入前の水分量は50ppmであった。酢酸セルロースは事前に90℃の熱風乾燥機で一晩(10時間以上)予備乾燥したものを用い、投入前の水分量は2000ppmであった。
溶解終了後徐々に系内を減圧にし、ANON480gを留出させ、系内をさらに脱水した。最終到達圧力は8kPaで、留出したANONの水分量は300ppmであった。
その後、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥したCLM42g(投入前水分量50ppm)、ANON7.3gにDPC3.3gを溶解した溶液を加え均一化した後、ANON8.4gに重合触媒であるMBTTEH1.2gを溶解した触媒溶液を投入して、攪拌しながら130℃で6時間グラフト重合反応を行った。重合開始時点の系の水分量は210ppmであった。反応終了後のCLM転化率は91%、重合液中のグラフト体(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体)、副生したPCLオリゴマー、残存CLMの濃度は、それぞれ、42.1重量%、3.8重量%、1.4重量%であった。
<造粒工程>
得られた重合液の一部である46.8重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)としてANON53.2重量部(重合液の1.14重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は19.7重量%であった。その後、ドープを冷却し、40℃で保持し、150rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてIPA340重量部(ドープの3.4重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープはIPA100重量部を加えたところで強く濁り(曇点)、IPAの添加量が280重量部を超えると析出成分量の増加が認められなくなった。析出成分量の増加が無いことは、一部抜取った液相を乾固させ、残渣の重量減少が無いことで判定した。前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物を得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.77、DS(PCL)0.12、DPn(PCL)6.4であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、ガスクロマトグラフィー(GC)測定からそれぞれ、0.35重量%、0.07重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。粒状物の酸価は0.35mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。粒状物の平均粒子径は309μm、真球度は0.72であった。図14に、得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真、図15に得られた粒状物の電子顕微鏡写真を示す。
(実施例12)
実施例11の重合液22.8重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)としてANON77.2重量部(重合液の3.39重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は9.6重量%であった。その後、ドープを冷却し、40℃で保持し、150rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてIPA490重量部(ドープの4.9重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープはIPA140重量部を加えたところで強く濁り(曇点)、IPAの添加量が400重量部を超えると析出成分量の増加が認められなくなった。析出成分量の増加が無いことは、一部抜取った液相を乾固させ、残渣の重量減少が無いことで判定した。前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物を得た。
得られた粒状物の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値は実施例11の結果と同様であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、GC測定からそれぞれ、0.23重量%、0.04重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。粒状物の酸価は0.60mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
(実施例13)
<グラフト重合工程>
攪拌機、いかり型攪拌翼を備えた反応器(1000mLセパラブルフラスコ)にANON600g、酢酸セルロース(L−20)84gを加え、オイルバスを用いて130℃に加熱し、攪拌しながら酢酸セルロースを溶解させた。ANONは、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥したものを使用し、投入前の水分量は88ppmであった。酢酸セルロースは事前に90℃の熱風乾燥機で一晩(10時間以上)予備乾燥したものを用い、投入前の水分量は1650ppmであった。
溶解終了後徐々に系内を減圧にし、ANON412.4gを留出させ、系内をさらに脱水した。最終到達圧力は8kPaで、留出したANONの水分量は330ppmであった。
その後、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥したCLM42g(投入前水分量66ppm)、ANON7.3gにDPC3.3gを溶解した溶液を加え均一化した後、ANON8.4gに重合触媒であるMBTTEH1.2gを溶解した触媒溶液を投入して、攪拌しながら130℃で6時間グラフト重合反応を行った。重合開始時点の系の水分量は180ppmであった。反応終了後のCLM転化率は92%、重合液中のグラフト体(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体)、副生したPCLオリゴマー、残存CLMの濃度は、それぞれ、31.9重量%、4.8重量%、1.0重量%であった。
<造粒工程>
得られた重合液の一部である200gを、攪拌機、翼径90mmのいかり型攪拌翼を備えた内径100mmの円筒型セパラブルフラスコ(1000mL容量)に秤取し、さらなる希釈を行わないまま40℃に調温し、150rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてIPA520g(ドープの2.6重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープはIPA160g(ドープの0.8重量倍)を加えたところで強く濁り(曇点)、IPAの添加量が440g(ドープの2.2重量倍)を超えると析出成分量の増加が認められなくなった。析出成分量の増加が無いことは、一部抜取った液相を乾固させ、残渣の重量減少が無いことで判定した。前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下での減圧乾燥(10kPa以下)を5時間以上行い、乾燥した粒状物を得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.62、DS(PCL)0.14、DPn(PCL)4.4であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、ガスクロマトグラフィー(GC)測定からそれぞれ、0.37重量%、0.10重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。粒状物の酸価は0.28mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
(実施例14)
<グラフト重合工程>
内径120mmの丸底セパラブルフラスコ(2L容量、バッフル3枚付き、バッフル幅15mm)に酢酸セルロース(L−20)のフレーク84.0gを秤取し、攪拌機、平板型の攪拌翼(翼幅70mm、翼高さ70mm)を取り付け、20rpmで攪拌しながら110℃、4Torr以下で4時間減圧乾燥した。その後、系を乾燥窒素により常圧に戻し、還流冷却管を取り付け、CLM42.0g、DPC3.2g、および、重合溶媒としてANON194.8gを加えて160℃に加熱、攪拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。CLMとANONは、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥後、蒸留して精製した。この混合液中の水分含量は、210ppmであった。
この混合液に、ANON8.4gで希釈したモノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)(重合触媒)1.2gを添加し、130℃で6時間攪拌した。その後、水浴中で冷却し反応を停止させ、重合液を得た。H−NMR測定の結果、反応停止後の重合液中におけるCLMの転化率は90%、重合液中のグラフト体、副生PCLオリゴマー、残存CLMの濃度は、それぞれ、31.6重量%、4.9重量%、1.3重量%であった。
<造粒工程>
重合後、重合反応槽に希釈溶媒(良溶媒)としてANON182.3g(重合液の0.55重量倍)を添加、攪拌して均一化し、内温が70℃になるまで放冷により冷却した。グラフト重合体の濃度は20.4重量%であった。70℃において、100rpmの速度で攪拌しながらIPA281.2gを1時間かけて滴下し、その後、系が40℃になるまで冷却した(IPA初回投入)。
温度が40℃に到達すると、翼回転数100rpmの攪拌条件(攪拌速度一定)下でさらに722.8gのIPAを2時間かけて滴下し、グラフト重合体粒子を生成させた(IPA2回目投入)。
相転移点(曇点)は、IPA2回目投入分(722.8g)のうち230g(IPA合計511.2g、IPA初回投入前のドープに対して重量比0.99倍)投入した時点で見られ、その後IPAの投入量が増えるにしたがって、系内の相分離が進み、粒子生成が進行した。
曇点に達するまでに要したIPA量の90重量%を投入した時点(IPAを合計で460g投入した時点)を曇点近傍の一例として取り上げると、前記曇点近傍状態において、プロセス液の密度は890kg/m、粘度は11000mPa・sであり、攪拌レイノルズ数(Re)は0.67であり、単位体積あたりの攪拌所要動力(Pv)は1.9kW/mであった。
なお、前記曇点近傍状態における攪拌所要動力(P)[W]を知るには、動力数N[無次元]が分かればよい。Nは「永田の式」と呼ばれる下記式(10)〜(15)から算出することができる:
ここで、Hは液深[m]、Dは槽内径[m]、bは翼高さ[m]、θは翼の角度[°]、dは翼径[m]、nは翼回転数[1/sec]、ρは液比重[kg/m]、μは液粘度[Pa・s]である。
攪拌所要動力(P)は、得られたNの値を式(15)に代入することによって計算できる。前記のようにRe値が十分小さい場合には式(10)の第2項が無視でき、N値は300と算出できる。このことから式(15)より、前記曇点近傍状態における攪拌所要動力(P)は2.1Wと求められ、このときの液量が1.09Lであったことから、単位体積あたりの攪拌所要動力(Pv)は1.9kW/mと知れた。
IPA2回目投入終了後、攪拌速度を100rpmで保持しながら、系の温度を20℃まで1.5時間かけて徐々に冷却した。同時に追加でIPA430gを滴下投入し、グラフト重合体粒子を含む不均一系を安定化させた(IPA3回目投入)。
所定量のIPA滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物を得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.59、DS(PCL)0.15、DPn(PCL)3.9であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、ガスクロマトグラフィー(GC)測定からそれぞれ、0.20重量%、0.15重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
(参考例7)
実施例14の造粒工程における攪拌翼の回転速度を8rpmにする以外は、実施例14と同様に粒状化を試みた。実施例14記載と同様の曇点近傍点において、Re値は0.054、Np値は3700、Pv値は0.012kW/mと計算された。このとき、IPAを初回および2回の合計1004gで実施例14と同じ要領で添加すると、析出物は塊状(一塊の綿状)となって沈降し、IPA添加量を増やしても粒状化することはなかった。
(実施例15)
<グラフト重合工程>
酢酸セルロース(L−20)25kgを棚式減圧乾燥機にて90℃加温下20Torr以下の条件で18時間予備乾燥した。予備乾燥後の酢酸セルロースの水分は2800ppmであった。
前記予備乾燥後の酢酸セルロースのうち15.2kgと、シクロヘキサノン(水分94ppm)152kgを、住友重機械工業(株)製「マックスブレンド」攪拌翼(翼径0.4m)と邪魔板2枚を備えた反応槽(容積0.5m、槽内径0.8m)に投入し、125℃に昇温して系内を十分に攪拌混合し、均一な溶液とした。その後、系内を13.3kPaに減圧し、内温を93℃以上に保った状態で投入したシクロヘキサノンのうち93.7kgをコンデンサを通じて系外に留出させた。留出したシクロヘキサノンが400ppmの水分量を含んでいたことから、系内のプロセス液の水分量は240ppmに低減された。
系を再び125℃に昇温した後、常圧下、ε−カプロラクトンモノマー(ダイセル化学工業(株)製、CLM)8.7kg(水分54ppm)、DPC溶液1.91kg、触媒溶液1.95kgを順に投入し、翼回転数106rpmの攪拌速度下で、グラフト重合反応を開始した。前記DPC溶液は、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド(DPC)(和光純薬工業(株)製)0.59kgを1.32kgのシクロヘキサノンに溶解させたものであり、前記触媒溶液は、グラフト重合触媒となるモノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)(Aldrich製)0.43kgをシクロヘキサノン1.52kgに溶解させたものである。グラフト重合反応開始時における系中の水分量は、DPC及び前記重合触媒の影響を無視して算出した結果、110ppmであった。
触媒溶液投入後、内温を125℃に保持しながらグラフト重合反応を6時間行った。H−NMR解析より、この時点でCLMの転化率は98%であり、重合液中のグラフト重合体(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体)、副生PCLオリゴマー、残存CLMの濃度は、それぞれ、22.0重量%、5.6重量%、0.2重量%であった。重合液の色相はAPHAで150であった。
<造粒工程>
重合反応終了後の反応槽にシクロヘキサノン22kgを投入して重合液を希釈し、グラフト重合体の濃度を17.5重量%とした。前記量のシクロヘキサノン投入後、翼回転数106rpmの速度で攪拌しながら、系の温度を125℃から75℃に1時間かけて冷却した。系の温度が75℃に到達したところで、攪拌を継続しながらイソプロパノール(IPA)70.3kgを定量ポンプを用いて少量ずつ30分かけて投入し、その後、系が43℃になるまで冷却した(IPA初回投入)。
温度が43℃に到達すると、内温を43〜38℃の範囲で調節しながら、翼回転数106rpmの攪拌条件(攪拌速度一定)下でさらに110.4kgのIPAを定量ポンプを用いて少量ずつ2時間30分をかけて投入し、グラフト重合体粒子を生成させた(IPA2回目投入)。
相転移点(曇点)は、IPA2回目投入分(110.4kg)のうち45.2kg(IPA合計115.5kg、IPA初回投入前のドープに対して重量比1.07倍)投入した時点で見られ、その後IPAの投入量が増えるにしたがって、系内の相分離が進み、粒子生成が進行した。
曇点に達するまでに要したIPA量の90重量%を投入した時点(IPAを合計で104kg投入した時点)を曇点近傍の一例として取り上げると、前記曇点近傍状態において、プロセス液の密度は890kg/m、粘度は8900mPa・sであり、攪拌レイノルズ数(Re)は前記式(11)式より、28であった。
攪拌所要動力(P)[W]は、動力数Nの値を前記式(15)に代入することによって算出できる。なお、N値は、前記式から求めることもできるが、「新型かくはん・混合槽”マックスブレンド”の特性」(住友重機械技報 第35巻、第104号、74−78頁(1987年))の図5から読み取った値、すなわち、10を近似値として用いた。このことから式(15)より、前記曇点近傍状態における攪拌所要動力(P)は0.57kWと求められ、このときの液量が0.24mであったことから、単位体積あたりの攪拌所要動力(Pv)は2.4kW/mと知れた。
IPA2回目投入終了後、攪拌速度を106rpmで保持しながら、系の温度を5℃まで1.5時間かけて徐々に冷却した。同時に追加でIPA70.3kgを定量ポンプを用いて少量ずつ投入し、グラフト重合体粒子を含む不均一系を安定化させた(IPA3回目投入)。
3回目のIPA投入工程終了後、槽内のグラフト重合体粒子を含むプロセス液を上排式遠心分離機上に排出し、遠心分離(固液分離)とリンス(表面洗浄)を行って、グラフト重合体粒子を回収した。リンスにはIPA120kgを使用した。遠心分離操作後のグラフト重合体粒子として、31.7kgの白色粒子(湿粉)を得た。ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、湿粉中からε−カプロラクトンモノマーは検出されず、シクロヘキサノン溶媒が2.7重量%、IPAが45.6重量%含有されていた。この時点の抜取りサンプルのGPC測定の結果、副生PCLオリゴマー由来のピークは検出されず、グラフト重合体に該当する単峰性ピークが検出されるのみであったので、残りの51.7重量%がグラフト重合体であった。
<抽出操作(湿粉のさらなる洗浄)>
前記造粒工程及び遠心分離操作で得られた湿粉を再び反応槽に投入し、さらにIPA100kgを投入し、40℃に温調し、翼回転数70rpmの攪拌速度で湿粉をIPA中に分散させ抽出洗浄を行った。抽出(洗浄)終了後、前記遠心分離操作を同様に行い、29.1kgの洗浄済み湿粉を得た。GC(ガスクロマトグラフィー)分析の結果、湿粉には、ε−カプロラクトンモノマー及びシクロヘキサノン溶媒は検出されず、IPAが44重量%含有されていた。
<乾燥>
回収した湿粉の全量を棚式減圧乾燥機に投入し、70℃、20Torr以下の条件にて18時間減圧乾燥(IPA除去)を行った。減圧乾燥後のIPA含量は0.2重量%であり、製品粒子として、15.2kgの粒状物を得た。乾燥後に得られた粒状物は互いに融着することなく、均質的な粒子形態を保持していた。
<製品粒子(乾燥後)の分析>
製品粒子(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.56、DS(PCL)0.15、DPn(PCL)3.7であった。粒状物の酸価は0.50mgKOH/gであった。色相は90(APHA)であった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
GPC測定より、得られた粒状物の分子量(ポリスチレン換算値)は、Mn48,000、Mw97,000、Mw/Mn2.01であった。図16に、得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真を示す。
(実施例16)
<グラフト重合工程>
攪拌機、いかり型攪拌翼を備えた反応器(1000mLセパラブルフラスコ)にANON400g、酢酸セルロース(L−20)56gを加え、オイルバスを用いて130℃に加熱し、攪拌しながら酢酸セルロースを溶解させた。ANONは、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥したものを使用し、投入前の水分量は50ppmであった。酢酸セルロースは事前に90℃の熱風乾燥機で一晩(10時間以上)予備乾燥したものを用い、投入前の水分量は2000ppmであった。
溶解終了後徐々に系内を減圧にし、ANON300gを留出させ、系内をさらに脱水した。最終到達圧力は8kPaで、留出したANONの水分量は300ppmであった。
その後、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥したCLM24g(投入前水分量50ppm)、ANON9.7gにDPC4.4gを溶解した溶液を加え均一化した後、ANON5.6gに重合触媒であるMBTTEH0.2gを溶解した触媒溶液を投入して、攪拌しながら130℃で9時間グラフト重合反応を行った。重合開始時点の系の水分量は220ppmであった。反応終了後のCLM転化率は70%、重合液中のグラフト体(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体)、副生したPCLオリゴマー、残存CLMの濃度は、それぞれ、33.7重量%、2.7重量%、3.6重量%であった。
<造粒工程>
得られた重合液の一部である29.3gを、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)としてANON20.8g(重合液の0.71重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は19.7重量%であった。その後、ドープを冷却し、40℃で保持し、150rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてIPA215g(ドープの4.3重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープはIPA55g(ドープの1.1重量倍)を加えたところで強く濁り(曇点)、IPAの添加量が180g(ドープの3.6重量倍)を超えると析出成分量の増加が認められなくなった。析出成分量の増加が無いことは、一部抜取った液相を乾固させ、残渣の重量減少が無いことで判定した。前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物を得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.47、DS(PCL)0.12、DPn(PCL)3.9であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、ガスクロマトグラフィー(GC)測定からそれぞれ、0.46重量%、0.08重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。粒状物の酸価は0.54mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
(実施例17)
<グラフト重合工程>
CLM(モノマー)及びMBTTEH(重合触媒)の使用量をそれぞれ、40g、0.8gとし、攪拌しながら130℃で6時間グラフト重合反応を行った以外は実施例16と同様にして重合液を得た。
反応終了後のCLM転化率は98%、重合液中のグラフト体(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体)、副生したPCLオリゴマー、残存CLMの濃度は、それぞれ、39.5重量%、2.0重量%、0.3重量%であった。
<造粒工程>
得られた重合液の一部である24.5gを、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)としてANON25.5g(重合液の1.04重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は19.3重量%であった。その後、ドープを冷却し、40℃で保持し、150rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてIPA225g(ドープの4.5重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープはIPA60g(ドープの1.2重量倍)を加えたところで強く濁り(曇点)、IPAの添加量が155g(ドープの3.1重量倍)を超えると析出成分量の増加が認められなくなった。析出成分量の増加が無いことは、一部抜取った液相を乾固させ、残渣の重量減少が無いことで判定した。前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物を得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)1.43、DS(PCL)0.16、DPn(PCL)8.9であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、ガスクロマトグラフィー(GC)測定からそれぞれ、0.28重量%、0.09重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。粒状物の酸価は0.50mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
(実施例18)
グラフト重合工程に用いる酢酸セルロースとして(ダイセル化学工業(株)製、L−50;アセチル基置換度2.41、6%粘度110mPa・s)を使用する以外は実施例1と同様にして重合液を得た。H−NMR測定の結果、反応停止後の重合液中におけるCLMの転化率は98%、重合液中のグラフト体、副生PCLオリゴマー、残存CLMの濃度は、それぞれ、53.5重量%、5.0重量%、0.4重量%であった。
<造粒工程>
得られた重合液37.5gを、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)として塩化メチレン227.5gを加え、さらに25gのイソプロピルアルコール(IPA)を加え、室温で一晩放置して均一な溶液とした。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は6.9重量%であった。その後、ドープを20℃で保持し、180rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてIPA725g(ドープの2.5重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープは途中で強く濁り、粒子状の析出物が生成した。粒子状物の析出後も攪拌と貧溶媒の滴下を継続し、前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物18.2gを得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.69、DS(PCL)0.10、DPn(PCL)6.9であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、ガスクロマトグラフィー(GC)測定からそれぞれ、0.26重量%、0.12重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。粒状物の酸価は0.56mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例1の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
(実施例19)
<グラフト重合工程>
攪拌機、いかり型攪拌翼を備えた反応器(500mLセパラブルフラスコ)に酢酸セルロース(L−20)70重量部を加え、110℃、4時間、4Torr以下で減圧乾燥した。その後、系を乾燥窒素により常圧に戻し、還流冷却管を取り付け、ε−カプロラクトンモノマー(ダイセル化学工業(株)製、CLM)30重量部、および、重合溶媒としてシクロヘキサノン(ANON)(和光純薬工業(株)製)67重量部を加えて160℃に加熱、攪拌して酢酸セルロースを均一に溶解させた。ε−カプロラクトンモノマーとシクロヘキサノンは、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥後、蒸留して精製した。この混合液中の水分含量は、200ppmであった。この混合液にMBTTEH(重合触媒)0.25重量部を添加し、160℃で2時間攪拌した。その後、水浴中で20℃まで冷却し反応を停止させ、重合液を得た。H−NMR測定の結果、反応停止後の重合液中におけるCLMの転化率は99%、重合液中のグラフト体(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体)、副生したポリ(ε−カプロラクトン)オリゴマー(PCLオリゴマー)、残存CLMの濃度は、それぞれ、56.5重量%、3.1重量%、0.2重量%であった。重合液の酸価は4.2mgKOH/gであり、色相は160(APHA)であった。
<造粒工程>
得られた重合液の一部である15重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)としてシクロヘキサノン85重量部(重合液の5.7重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は8.5重量%であった。その後、ドープを冷却し、20℃で保持し、100rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてメタノール600重量部(ドープの6.0重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。メタノールを加えていくとドープは途中で強く濁り、粒子状の析出物が生成した。粒子状物の析出後も攪拌と貧溶媒の滴下を継続し、前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物を得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.81、DS(PCL)0.14、DPn(PCL)5.8であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(メタノール)残量は、GC測定からそれぞれ、0.5重量%、0.2重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。粒状物の酸価は0.22mgKOH/gであった。色相は90(APHA)であった。
粒状化前後のGPCチャート(GPCクロマトグラム)をそれぞれ図17および図18に示す。粒状化前の重合液のGPCクロマトグラム(図17)には、グラフト重合中に副生したPCLオリゴマーに由来するピークが確認され、第2ピーク区間相対強度最大値は、3.5%であった。一方、粒状化後(図18)には、前記オリゴマーのピークもほぼ消失して第2ピーク区間相対強度最大値は0.76%となり、粒状化工程で前記オリゴマーを除去できたことが確認された。得られた粒状物の分子量(ポリスチレン換算値)は、Mn94,000、Mw307,000、Mw/Mn3.27であった。
<平均粒子径と粒子径分布>
得られた乾燥粒状物の粒子径分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所(株)製、SALD−2000J)を用いて測定したところ、体積平均粒子径Dは227.1μm、個数平均粒子径Dは176.2μm、粒度分布D/Dは1.29、標準偏差(体積基準)σは0.111、メディアン径X50%は227.6μmと算出された。なお、図19に、得られた粒状物の粒子径分布を表すグラフを示す。
(実施例20)
<グラフト重合工程>
グラフト重合工程に用いる酢酸セルロースとして(ダイセル化学工業(株)製、LT−35;アセチル基置換度2.90、6%粘度95mPa・s)を使用する以外は実施例19と同様にして重合液を得た。H−NMR測定の結果、反応停止後の重合液中におけるCLMの転化率は96%、重合液中のグラフト体、副生PCLオリゴマー、残存CLMの濃度は、それぞれ、53.6重量%、4.5重量%、0.7重量%であった。
<造粒工程>
得られた重合液37.5gを、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)として塩化メチレン227.5gを加え、さらに25gのイソプロピルアルコール(IPA)を加え、室温で一晩放置して均一な溶液とした。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は6.9重量%であった。その後、ドープを20℃で保持し、180rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてIPA725g(ドープの2.5重量倍)を滴下漏斗により、2時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープは途中で強く濁り、粒子状の析出物が生成した。粒子状物の析出後も攪拌と貧溶媒の滴下を継続し、前記所定量の滴下完了後、粒子状物(グラフト体)を濾別し、回収物を少量の前記貧溶媒でリンス(表面洗浄)を行った。その後、濾別回収した粒子状物を別容器に移し、80℃加熱下、10kPa以下での減圧乾燥を5時間以上行い、乾燥した粒状物19.0gを得た。
<粒状物の分析>
粒状物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)0.75、DS(PCL)0.06、DPn(PCL)12.5であった。粒状物中のANON残量、貧溶媒(IPA)残量は、GC測定からそれぞれ、0.5重量%、0.2重量%であり、CLM残量は検出限界以下であった。粒状物の酸価は0.23mgKOH/gであった。GPC測定からは実施例19の結果と同様に、造粒工程後に副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。
<平均粒子径と粒子径分布>
得られた乾燥粒状物の粒子径分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所(株)製、SALD−2000J)を用いて測定したところ、体積平均粒子径Dは240.4μm、個数平均粒子径Dは98.3μm、粒度分布D/Dは2.45、標準偏差(体積基準)σは0.215、メディアン径X50%は246.8μmと算出された。なお、図20に、得られた粒状物の粒子径分布を表すグラフを示す。また、図21に、得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真、図22に得られた粒状物の電子顕微鏡写真を示す。
(実施例21)
実施例20で得られた粒状物(乾燥後粒状物)13.4gを、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)として塩化メチレン160.2gを加え、さらに16.4gのイソプロピルアルコール(IPA)を加え、室温で一晩放置して均一な溶液とした。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は7.0重量%であった。その後、ドープを20℃で保持し、180rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてIPA475g(ドープの2.5重量倍)を滴下漏斗により、1時間かけて加えた。IPAを加えていくとドープは途中で強く濁り、粒子状の析出物が生成した。得られた粒子を実施例20と同様に濾別回収、乾燥して12.7gの粒状物を得た。
得られた粒状物の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値は実施例20の結果と同様であった。すなわち、一度粒状化および精製したグラフト体を溶解させたドープからも、同じ方法で再度グラフト体の粒子が得られた。
(参考例8)
<グラフト重合工程>
攪拌機、いかり型攪拌翼、冷却管を備えた乾燥した反応器(500mLセパラブルフラスコ)にCLM200g、テトラ−n−ブトキシチタン0.0036gを投入し、オイルバスを使用して120℃に加温した。CLMは、事前にモレキュラーシーブス4A上で乾燥したものを使用し、投入前の水分量は54ppmであった。
オイルバス温度が120℃に到達後、酢酸セルロース(L−50)200gを投入した。酢酸セルロースは事前に90℃の熱風乾燥機で一晩(10時間以上)予備乾燥したものを用い、投入前の水分量は2090ppmであった。その後、温度を120℃に保持しながら系内を攪拌し、酢酸セルロースを溶解した。
溶解完了後、オイルバス温度を170℃に変更し、この温度で4.5時間グラフト重合反応を行った。重合反応停止は水冷により行った。
H−NMR測定の結果、反応停止後の重合液中におけるCLMの転化率は95%、重合液中のグラフト体(ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体)、副生したポリ(ε−カプロラクトン)オリゴマー(PCLオリゴマー)、残存CLMの濃度は、それぞれ、84.2重量%、12.5重量%、3.3重量%であった。重合液の酸価は4.7mgKOH/gであった。重合液のGPCクロマトグラムを図23に示す。第2ピーク区間に副生PCLオリゴマーのピークが認められ、第2ピーク区間相対強度最大値は12.0%であった。
得られた重合液を用いて、2つの造粒工程を行った。
<造粒工程1>
得られた重合液3重量部を、攪拌機、翼径80mmのいかり型攪拌翼を備えた内径90mmの円筒型セパラブルフラスコに秤取した。次いで、希釈溶媒(良溶媒)としてクロロホルム90重量部(重合液の30重量倍)を添加し70℃において攪拌下、均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は2.7重量%であった。
ドープを滴下ロートに移し、別容器のメタノール1860重量部(ドープの20重量倍)に対してゆっくり注いだ。ドープを注ぐ間、攪拌機及び攪拌翼(3枚後退翼)を用いて150rpmの速度で別容器の内容物を攪拌した。その結果、糸鞠状の沈殿物が得られ、全体を粒状物として得ることができなかった。
濾別回収した糸鞠状沈殿物を、80℃加熱下、5時間以上10kPa以下で減圧乾燥した。得られた糸鞠状物(乾燥後)の酸価は1.0mgKOH/gであり、GPC測定からは副生PCLオリゴマーが除去されたことが確認された。図24に糸鞠状沈殿物のGPCクロマトグラムを示す。第2ピーク区間相対強度最大値は0.76%であった。また、糸鞠状精製物(乾燥後)の一次構造解析の結果、粒状物(グラフト体)の特性値(H−NMR測定による)は、MS(CL)3.52、DS(PCL)0.31、DPn(PCL)11.4であった。
<造粒工程2>
得られた重合液の一部である5重量部と希釈溶媒(良溶媒)のアセトン25重量部(重合液の5.0重量倍)を50mL容量のサンプル瓶に秤取し、室温で一晩放置して均一化(希釈)した。均一化後、ドープ(希釈液)中のグラフト体濃度は14.0重量%であった。次いで内容物を内径105mmのガラス製ビーカー(1000mL容量)に移し、攪拌機と翼径70mmの平板型攪拌翼(翼高さ70mm)を用いて、室温のまま、150rpmの速度で攪拌しながら、貧溶媒(非溶媒)としてベンゼン600重量部(ドープの20重量倍)を滴下漏斗により、ゆっくり加えた。ベンゼンを滴下してくと、ドープは全体的に透明なゼリー状(ゲル状)となり、最終的には透明ゲル部分と液相に相分離した状態となったが、粒状物は得られなかった。透明ゲル部分を回収し、真空乾燥機中、30℃で5時間、10kPa以下で減圧乾燥を行った。
得られたゲル部分の乾燥物(不定形)のGPC測定及びH−NMR測定の結果、副生PCLオリゴマー及びCLMモノマーの残留が認められた。H−NMRから得られる見掛けのMS(CL)appは3.93、全CL又はCLM単位中未反応CLMの割合(モル比)は97.7%であり、前記糸鞠状沈殿物を十分に精製された状態と仮定して差分を重量比に直すと、重合液中ではグラフト体100重量部に対してPCLオリゴマー、CLMがそれぞれ14.8重量部、3.9重量部含まれていたのに対し、前記造粒工程の処理により、その残留量がそれぞれ8.1重量部、1.7重量部には低減されたものの、除去は不完全であることがわかった。また、このときの酸価は4.0mgKOH/gであった。図25にゲル部分の乾燥物のGPCクロマトグラムを示す。第2ピーク区間相対強度最大値は、7.32%であった。
なお、特開昭59−86621号公報の実施例2にあるように、得られた乾燥物(不定形)5部に再度25部のアセトンを加えて溶解し、前記造粒工程と同様の操作で2度目のベンゼン添加による析出操作を行ったところ、やはり透明ゲル部分と液相に相分離するものの、粒状物は得られなかった。
2度目の析出操作で得られた透明ゲル部分を前記方法で減圧乾燥し、得られた乾燥物(不定形)を分析したところ、依然、副生PCLオリゴマー及びCLMモノマーの残留が認められた。H−NMR測定の結果から、副生PCLオリゴマー及びCLMモノマーの残留量はグラフト体100重量部に対して、それぞれ3.3重量部、0.06重量部となり、1度目より残留量が低減されたものの、高度に精製されることはなかった。このときの酸価は2.2mgKOH/gであった。図26にゲル部分の乾燥物のGPCクロマトグラムを示す。第2ピーク区間相対強度最大値は、2.59%であった。
(参考例9)
実施例1で得られた重合液を金属製バット上に薄く流延し、熱風乾燥機にて120℃で10時間予備乾燥した後、180℃、4Torrの加温および減圧条件で4時間、減圧乾燥を行い、重合溶媒のシクロヘキサノン(ANON)を留去した。その後、液体窒素中にて凍結粉砕を行い、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体(グラフト体)を含む粉砕物を得た。
この粉砕物の平均粒子径は202μm、平均真球度は0.64であった。図27に、得られた粉砕物のデジタルマイクロスコープ写真、図28に得られた粉砕物の電子顕微鏡写真を示す。これらの図からからも明らかなように、粉砕物は鋭利な切片を持ち、表面の凹凸も見られず、貧溶媒滴下による析出と攪拌の効果によって得られる前記各実施例のような粒状物とは明らかにことなる形状であった。また、本参考例の粉砕手順では、主に副生PCLオリゴマーが留去または抽出除去されないため、精製効果も得られない。
図1は、実施例1で得られた粒状化前の重合液(グラフト体)のGPCチャートである。 図2は、実施例1で得られた粒状物のGPCチャートである。 図3は、実施例1で得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真である。 図4は、実施例1で得られた粒状物の電子顕微鏡写真である。 図5は、実施例3で得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真である。 図6は、実施例3で得られた粒状物の電子顕微鏡写真である。 図7は、実施例4で得られた粒状物の電子顕微鏡写真である。 図8は、実施例8で得られた重合液にIPAを滴下した後の内温(液温)の経時変化を表すグラフである。 図9は、実施例9で得られた重合液にIPAを滴下した後の内温(液温)の経時変化を表すグラフである。 図10は、実施例9で得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真である。 図11は、実施例9で得られた粒状物の電子顕微鏡写真である。 図12は、実施例10で得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真である。 図13は、実施例10で得られた粒状物の電子顕微鏡写真である。 図14は、実施例11で得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真である。 図15は、実施例11で得られた粒状物の電子顕微鏡写真である。 図16は、実施例15で得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真である。 図17は、実施例19で得られた粒状化前の重合液(グラフト体)のGPCチャートである。 図18は、実施例19で得られた粒状物のGPCチャートである。 図19は、実施例19で得られた粒状物の粒子径分布を表すグラフである。 図20は、実施例20で得られた粒状物の粒子径分布を表すグラフである。 図21は、実施例20で得られた粒状物のデジタルマイクロスコープ写真である。 図22は、実施例20で得られた粒状物の電子顕微鏡写真である。 図23は、参考例8で得られた粒状化前の重合液(グラフト体)のGPCチャートである。 図24は、参考例8の造粒工程1で得られた糸鞠状沈殿物のGPCチャートである。 図25は、参考例8の造粒工程2で得られたゲル部分の乾燥物のGPCチャートである。 図26は、参考例8の造粒工程2で得られたゲル部分の乾燥物(二度目の析出操作後)のGPCチャートである。 図27は、参考例9で得られた粉砕物のデジタルマイクロスコープ写真である。 図28は、参考例9で得られた粉砕物の電子顕微鏡写真である。

Claims (15)

  1. グルカン誘導体のヒドロキシル基にヒドロキシ酸成分がグラフト重合したヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を製造する方法であって、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体を含むドープに、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体に対する貧溶媒である極性有機溶媒を攪拌下で混合し、前記ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる造粒工程を少なくとも含む製造方法。
  2. グルカン誘導体が、セルロースアシレートであり、ヒドロキシ酸成分が、ヒドロキシC2−10アルカンカルボン酸、C4−10ラクトン、およびC4−10環状ジエステルから選択された少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
  3. ドープを構成する溶媒が、環状エーテル、アミド類、環状ケトン類、スルホキシド類、ハロアルカン類、及び環状エステルから選択された少なくとも1種である請求項1又は2記載の製造方法。
  4. ドープを構成する溶媒が、C5−8シクロアルカノンで構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. ドープ中のヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の濃度が2〜70重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. ドープが、溶媒中で、グルカン誘導体とヒドロキシ酸成分とを反応させる工程を経て得られた反応液で構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 溶媒が、C5−8シクロアルカノンである請求項6記載の製造方法。
  8. 極性有機溶媒が、アルコール類である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 極性有機溶媒が、C1−4アルカノールで構成されている請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 極性有機溶媒の混合割合が、ドープ1重量部に対して1〜15重量部である請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 極性有機溶媒がイソプロパノールで構成されており、極性有機溶媒の混合割合がドープ1重量部に対して1〜5.5重量部である請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 造粒工程が、攪拌下で、ドープに貧溶媒を混合して、ヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を60℃未満の温度で生成させる攪拌造粒工程を少なくとも含む請求項1〜11記載の製造方法。
  13. 造粒工程が、以下の(1)〜(3)のいずれかである請求項1〜12記載の製造方法。
    (1)攪拌下で、ドープに貧溶媒を混合し、60℃未満の温度でヒドロキシ酸変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程を含む造粒工程
    (2)ドープに貧溶媒の一部を60℃以上の温度で混合する混合工程と、この混合工程により得られた混合液に、攪拌下で残りの貧溶媒を混合し、60℃未満の温度で前記変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程とを含む造粒工程
    (3)ドープに貧溶媒を60℃以上の温度で混合する混合工程と、この混合工程により得られた混合液を60℃未満の温度で攪拌し、前記変性グルカン誘導体の粒状物を生成させる攪拌造粒工程とを含む造粒工程
  14. 請求項1〜13のいずれかの製造方法により得られる粒状物であって、平均粒子径が30〜5000μmであり、平均真球度が0.1〜1である粒状物。
  15. 酸価が1.5mgKOH/g以下である請求項14記載の粒状物。
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