JP5729220B2 - ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
従来、3個以上の官能基を有する化合物を、ポリエステル樹脂製造過程で添加することにより、高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、開示されている技術では良流動性PBTは得られるものの、多官能分岐剤添加の影響か、重縮合反応速度が遅くなる傾向にあった。これを補うために、高温かつ触媒を多量に用いて重合しているため、ポリエステル樹脂の品質(色調、AV)が劣化し、増粘(ゲル化)が懸念されるという問題点がある。
[1] テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸成分と、1、4ブタンジオールを主たる成分とするジオールとのエステル化反応及び/またはエステル交換反応を行うエステル化工程、及びエステル化工程により得られたオリゴマーを重縮合反応する重縮合工程を経てポリエステルを製造する方法において、反応系に3個以上の官能基を有する化合物を添加し、反応触媒としてチタン化合物および周期表第2族金属の化合物を使用することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
[2] 前記周期表第2族金属の化合物の反応系への添加量が、得られるポリエステル樹脂に対して金属原子として5〜100重量ppmである、[1]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
[3] 3個以上の官能基を有する化合物を、得られるポリエステル樹脂100重量部に対し0.2〜2.0重量部添加する、[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。[4] 前記重縮合反応温度が235℃以上、245℃以下であることを特徴とする、[1]〜[3]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
尚、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書における、下限値又は上限値は、その下限値又は上限値の数値を含む範囲を意味する。
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸成分と、1、4ブタンジオールを主たる成分とするジオールとをエステル化反応及び/またはエステル交換反応させた後、重縮合反応させることにより得られる。
本発明において用いられるテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸成分とは、ジカルボン酸中のテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体が通常80モル%以上のことである。好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。そのほかのジカルボン酸として、イソフタル酸、2,6−ナフタレインジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらは1種または2種以上を用いても良い。
ルとしてエステルを形成し得るものであり、テレフタル酸またはその他ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的にはメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステル等が挙げられる。これらの1種、または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。
具体的には、3個以上の水酸基を有する化合物である多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、ペンタエリスリトールモノステアラート等の脂肪族炭化水素の多価アルコールが挙げられ、3個以上の水酸基を有する化合物である多価アルコールの炭素数としては3〜30が好ましい。水酸基の数は、好ましくは3〜12、特に好ましくは3〜8、最も好ましくは3〜6である。これらの、3個以上の水酸基を有する化合物である多価アルコールは、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが重縮合反応性をあまり損なわず、高い流動性を発現させるという点で好ましく用いられる。
3個以上の官能基を有し、該官能基が水酸基およびカルボキシル基からなる化合物であるオキシカルボン酸としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
ステル樹脂を得難い傾向にある。
PBTの公知の製造方法として、テレフタル酸と1,4−BGを主原料として用いるい
わゆる直接重合法と、テレフタル酸ジアルキルエステルと 1,4−BGを主原料として用いるエステル交換法がある。
本発明においては反応系に3個以上の官能基を有する化合物を添加し、反応触媒としてチタン化合物および周期表第2族金属の化合物を使用する以外は従来公知の方法、即ち、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸成分と、1、4ブタンジオールを主たる成分とするジオールとのエステル化反応及び/またはエステル交換反応を行うエステル化工程、及びエステル化工程により得られたオリゴマーを重縮合反応する重縮合工程を経てポリエステルを得る方法で行うことが出来る。
本発明において、反応系とは、エステル化工程、重縮合工程である。エステル化工程は、エステル化反応槽、及びエステル化反応槽と配管で繋がる機器を含み、重縮合工程は、重縮合反応槽、及び重縮合反応槽と配管で繋がる機器を含む。
エステル化工程により、1、4ブタンジオールを主たる成分とするジオール、テレフタル酸又はエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸成分が反応したオリゴマーが生成する。そして、後述する重縮合工程においては、このオリゴマーの重縮合反応を行なう。
反応触媒として用いられるチタン化合物の添加時期はエステル化反応及び/またはエステル交換反応の開始時、エステル化反応及び/またはエステル交換反応中、エステル化反応及び/またはエステル交換反応後、あるいは重縮合反応時等がありうるが、エステル化反応又はエステル交換反応開始時と重縮合反応前とに分割して添加するのが好ましい。
本発明で用いられるチタン化合物は、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート等のテトラアルキルチタネートであり、中でも特にテトラ−n−ブチルチタネートが好ましい。なお、チタン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
を回収した後、ICP(Inductively Coupled Plasma)−MS(Mass Spectrometer)法
により測定する。
本発明において用いられる周期表第2族金属の化合物の金属原子はベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。中でも取扱や入手の容易さ、触媒効果の点から、マグネシウム、カルシウムの化合物が好ましい。マグネシウム化合物としては、酢酸マグネシウム及びその水和物、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等が挙げられる。カルシウム化合物としては、酢酸カルシウム及びその水和物、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらの中では、酢酸マグネシウムが特に好ましい。なお、周期表第2族金属の化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明では、熱安定剤を反応系に添加して使用することもできる。使用する熱安定剤に特に制限は無いが、ヒンダードフェノール系熱安定剤が好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。中でも、ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、溶融滞留時の熱安定性の点でより好ましい。 なお、ヒンダードフェノール系熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2
種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明のPBTの末端カルボキシル基濃度に特に制限はないが、下限は、1当量/トンであることが好ましく、2当量/トンであることが更に好ましく、3当量/トンであることが特に好ましく、5当量/トンであることが最も好ましく、上限は、50当量/トンであることが好ましく、40当量/トンであることが更に好ましく、30当量/トンであることが特に好ましく、25当量/トンであることが最も好ましい。PBTの末端カルボキシル基濃度が上限値未満であるとPBTの耐加水分解性が良好となる傾向にあり、下限値超過であると重縮合反応性が良好な傾向にある。
り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性および評価項目の測定方法は次の通りである。
<固有粘度(IV) dL/g>
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において濃度1.0g/dLのポリマー溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(1)より求めた。
(但し、ηSP=η/η0−1であり、ηはポリマー溶液落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。)
<末端カルボキシル基濃度(AV)当量/トン>
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料を溶解させずに同様の操作を実施し、以下の式(2)によって末端カルボキシル基濃度(酸価)を算出した。
(ここで、aは、滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、bは、ブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、wはポリエステル樹脂の試料の量(g)、fは、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。)
なお、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は以下の方法で求めた。試験管にメタノール5mlを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液の指示薬として1〜2滴加え、0.lNの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mlで変色点まで滴定し、次いで力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2ml採取して加え、再度、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)。以下の式(3)によって力価(f)を算出した。
<ペレット色調(b値)>
ペレット状ポリエステルを内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計Z300A(日本電色工業(株)社製)を使用して、JIS Z8730の参考例1に記載されるLab表示系におけるハンターの色差式の色座標によるb値を、反射法により、測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
試料約20mgを重クロロホルム/重ヘキサフルオロイソプロパノール(7/3)混合溶
媒0.75mlに溶かし、重ピリジン25μl添加して、外径5mmのNMR試料管に移した。Bruker社製AVANCE400分光計を用い、室温で1H NMRスペクトルを測定した。化学シ
フトの基準は、TMS(トリメチルシラン)のシグナルを0.00ppmとした。末端ビニル基に対応するシグナル強度から末端ビニル基濃度(当量/トン)を算出した。
溶融粘度の測定、東洋精機製キャピログラフ(キャピログラフ1B)を用いて、温度245℃、せん断速度10〜10000、キャピラリー長10mm、キャピラリー直径1mmの条件で溶融粘度を測定した。
(参考例1)
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、減圧用排気口を備えた反応容器に、ジメチルテレフタレート(帝人製)132重量部、1,4−ブタンジオール74重量部及び触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートをあらかじめ6重量%溶解させた1,4―ブタンジオール溶液0.59重量部(得られるPBTに対するチタン原子として33重量ppm)を仕込み、窒素―減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートをあらかじめ6重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液1.08重量部(得られるPBTに対するチタン原子として61重量ppm)を仕込み、および酢酸マグネシウム4水和物をあらかじめ10重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液を0.64重量部(得られるPBTに対するMg原子として48重量ppm)仕込んだ。
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、減圧用排気口を備えた反応容器に、ジメチルテレフタレート(帝人製)132重量部、1,4−ブタンジオール74重量部及び触媒としてテトラブチルチタネートをあらかじめ6重量%溶解させた1,4―ブタンジオール溶液0.59重量部(得られるPBTに対するチタン原子として33重量ppm)を仕込み、さらに4個の官能基を有する化合物としてペンタエリスリトールを得られるPBTに対して0.75重量部仕込み、窒素―減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
続いて、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートをあらかじめ6重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液1.08重量部(得られるPBTに対するチタン原子として61重量ppm)を仕込み、および酢酸マグネシウム4水和物をあらかじめ10重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液を0.64重量部(得られるPBTに対するMg原子として48重量ppm)仕込んだ。
実施例1において4個の官能基を有する化合物を、6個の官能基を有する化合物のジペンタエリスリトールに変更した以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。各種分析結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において酢酸マグネシウム4水和物を溶解させた1,4−ブタンジオールの添加量を0.13重量部(得られるPBTに対するMg原子として10重量ppm)とした以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。各種分析結果を表1に示す。
実施例1において酢酸マグネシウム4水和物を溶解させた1,4−ブタンジオールの添加量を1.6重量部(得られるPBTに対するMg原子として120重量ppm)とした以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。各種分析結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1においてペンタエリスリトールの添加量を0.3重量部とした以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。各種分析結果を表1に示す。
実施例1においてペンタエリスリトールの添加量を3.0重量部とした以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。各種分析結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において重縮合温度を250℃とした以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。各種分析結果を表1に示す。
実施例1において、酢酸マグネシウム4水和物の代わりに酢酸カルシウム4水和物を10重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液0.41重量部(得られるPBTに対するCa原子として48重量ppm)を用いた以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。各種分析結果を表1に示す。
実施例1において酢酸マグネシウム4水和物を溶解させた1,4−ブタンジオールを添加しない以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。得られたPBTは重縮合速度が遅く、AVが高い結果となった。各種分析結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において酢酸マグネシウム4水和物を溶解させた1,4−ブタンジオールを添加せず、重縮合反応温度を250℃とした以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。得られたPBTは色調が悪く、耐加水分解性の低い品質であり、連続生産時に増粘しやすいため生産性も悪化した。各種分析結果を表1に示す。
実施例1において酢酸マグネシウム4水和物を溶解させた1,4−ブタンジオールを添加せず、3個以上の官能基を有する化合物を添加しない以外は実施例1と同様に行い、PBTを得た。得られたPBTの溶融粘度はせん断速度1000(/sec)の条件で17
0Pa・secであり、高い流動性は得られなかった。各種分析結果を表1に示す。
・電子部品、精密機器部品などの複雑な構造を持つ射出成形品に有効である。
Claims (4)
- テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸成分と、1、4ブタンジオールを主たる成分とするジオールとのエステル化反応及び/またはエステル交換反応を行うエステル化工程、及びエステル化工程により得られたオリゴマーを重縮合反応する重縮合工程を経てポリエステルを製造する方法において、反応系に3個以上の官能基を有する化合物を添加し、反応触媒としてチタン化合物および周期表第2族金属の化合物を使用することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
- 前記周期表第2族金属の化合物の反応系への添加量が、得られるポリエステル樹脂に対して金属原子として5〜100重量ppmである、請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
- 3個以上の官能基を有する化合物を、得られるポリエステル樹脂100重量部に対し0.2〜2.0重量部添加する、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
- 前記重縮合反応温度が235℃以上、245℃以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
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