JP2015168779A - ポリエステル樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】主にジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなるポリエステル樹脂であって、ジオール構成単位として少なくとも環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂を製造する際に、ジカルボン酸のカルボキシル基、及び水による環状アセタール骨格の分解、それによるポリエステル樹脂のゲル化や分子量分布の著しい増大を起こすことなく、工業的に有利な製造方法で、成形性、機械的性能に優れたポリエステル樹脂を安定的に製造する方法を提供する。
【解決手段】ジオール構成単位として少なくとも環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂を製造する際に、環状アセタール骨格を有するエステル化合物および環状アセタール骨格を有しないエステル化合物とを高分子量化する工程を含む製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】ジオール構成単位として少なくとも環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂を製造する際に、環状アセタール骨格を有するエステル化合物および環状アセタール骨格を有しないエステル化合物とを高分子量化する工程を含む製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、主にジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂の製造方法に関するものである。
環状アセタール骨格を有するジオールを構成単位に含有するポリエステル樹脂は、環状アセタールの剛直な骨格やアセタール結合に由来して耐熱性や接着性、難燃性等が向上することが知られている。例えば、特許文献1では、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン(以下「SPG」ということがある)で変性されたPETは、ガラス転移点が高く耐熱性に優れるとの記載がなされている。
我々は特許文献2においてSPGを共重合成分とする、ガラス転移温度が高く、透明性、機械強度に優れたポリエステル樹脂について開示した。更に我々は特許文献3、特許文献4においてSPGを共重合成分とするポリエステル樹脂の製造方法について開示した。
特許文献4に記載の通り、環状アセタール骨格を有するジオールは酸により環状アセタール骨格が分解しやすい為、ジカルボン酸を原料とする通常の直接エステル化法で得られるポリエステル樹脂は、著しく分子量分布が広かったり、ゲル状であったりする問題がある。このため、環状アセタール骨格を有するジオールを構成単位に持つポリエステル樹脂の製造方法としては、特許文献3や特許文献5などに記載されるジカルボン酸のエステル化物を原料とするエステル交換法や、特許文献4などに記載されるエステルとして低酸価のポリエステルやそのオリゴマーを用いた特殊なエステル交換法が開示されている。
また、特許文献6には、環状アセタール骨格を有するエステル化合物、ジカルボン酸、環状アセタール骨格を有しないジオールを原料とする粉体塗料向けのポリエステル樹脂の製造方法が開示されている。
前記、特許文献3や特許文献5などに記載されるエステル交換法では、原料のジカルボン酸のエステル化物が比較的高価であること、及びジカルボン酸のエステル化物に由来するアルコールの副生が問題となる。
また、特許文献4などに記載される方法では、エステルとして酸価の低いポリエステルやそのオリゴマーを用いる必要があるが、それらを製造するためにはエステル製造時のジカルボン酸構成単位に対するジオール構成単位のモル比を大きくする必要があるため、エステル化合物中のジオールの脱水反応で生成するエーテル量が増大する問題があったり、反応器の利用効率が悪いといった問題がある。またエステル化反応を十分行う必要性があり、エステル製造時間が長時間になるといった問題がある。
さらに、特許文献6に記載の製造方法で得られるポリエステル樹脂は、末端酸価が大きく、極限粘度が低く高分子量化が十分でなく、成形性や機械的性能に問題がある。
また、特許文献4などに記載される方法では、エステルとして酸価の低いポリエステルやそのオリゴマーを用いる必要があるが、それらを製造するためにはエステル製造時のジカルボン酸構成単位に対するジオール構成単位のモル比を大きくする必要があるため、エステル化合物中のジオールの脱水反応で生成するエーテル量が増大する問題があったり、反応器の利用効率が悪いといった問題がある。またエステル化反応を十分行う必要性があり、エステル製造時間が長時間になるといった問題がある。
さらに、特許文献6に記載の製造方法で得られるポリエステル樹脂は、末端酸価が大きく、極限粘度が低く高分子量化が十分でなく、成形性や機械的性能に問題がある。
本発明の目的は、主にジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂を製造する際に、ジカルボン酸のカルボキシル基、及び水による環状アセタール骨格の分解、それによるポリエステル樹脂のゲル化や分子量分布の著しい増大を起こすことなく、工業的に有利な製造方法で、安定的に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、環状アセタール骨格を有するジオールを構成単位として含有するポリエステル樹脂を製造する際に、環状アセタール骨格を有するジオール単位の供給源として、環状アセタール骨格を有するジオールを構成単位に含むエステル化合物を用いる事で、昇華性のあるジオールの昇華を抑制して製造可能とするとともに、先行文献の直接エステル化法で問題となるジカルボン酸による環状アセタール骨格の分解、及びそれによるポリエステル樹脂のゲル化を防げる事を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
主にジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂(C)の製造方法であって、環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)および環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)とを混合し反応させる工程を含み、以下の(1)〜(2)の条件を同時に満たすことを特徴とする製造方法。
(1)環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)は、ジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有し、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶液中25℃で測定した極限粘度が0.1〜1.5dl/gである。
(2)環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)は、環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有しないジオール構成単位からなり、酸価が150〜2000μ当量/gである。
[1]
主にジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂(C)の製造方法であって、環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)および環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)とを混合し反応させる工程を含み、以下の(1)〜(2)の条件を同時に満たすことを特徴とする製造方法。
(1)環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)は、ジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有し、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶液中25℃で測定した極限粘度が0.1〜1.5dl/gである。
(2)環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)は、環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有しないジオール構成単位からなり、酸価が150〜2000μ当量/gである。
[2]
環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位として含有する環状アセタール骨格を有するジオール単位が、一般式(a):
(式中R1、R2はそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の2価の脂環式炭化水素基及び炭素数が6〜10の2価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)または一般式(b):
(式中R1は前記と同様であり、R3は炭素数が1〜10の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の1価の脂環式炭化水素基及び炭素数が6〜10の1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)で表わされるジオール単位である[1]に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位として含有する環状アセタール骨格を有するジオール単位が、一般式(a):
[3]
環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位として含有する環状アセタール骨格を有するジオール単位が、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である[1]または[2]に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位として含有する環状アセタール骨格を有するジオール単位が、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である[1]または[2]に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
[4]
環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位の2〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位の2〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
[5]
ポリエステル樹脂(C)のジオール構成単位の1〜40モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
ポリエステル樹脂(C)のジオール構成単位の1〜40モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、環状アセタール骨格を有するジオールを構成単位として含有するポリエステル樹脂を製造する際に、従来は使用できなかった酸価の高いエステルを原料として使用する方法を提供するものであり、機械物性の良好なポリエステル樹脂を安定して製造することができ、本発明の工業的意義は大きい。
以下に本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態の製造方法で使用する環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)は、ジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有する。
環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)の環状アセタール骨格を有するジオール単位は、一般式(a):
または一般式(b):
で表されるジオール単位が好ましい。
一般式(a)と(b)において、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。R1およびR2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの構造異性体が好ましい。これらの構造異性体としては、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基が例示される。R3は炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。R3は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はこれらの構造異性体が好ましい。これらの構造異性体としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基が例示される。
環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)の環状アセタール骨格を有するジオール単位は、一般式(a):
一般式(a)と(b)において、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。R1およびR2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの構造異性体が好ましい。これらの構造異性体としては、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基が例示される。R3は炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。R3は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はこれらの構造異性体が好ましい。これらの構造異性体としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基が例示される。
一般式(1)及び(2)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等が特に好ましい。
本実施形態の製造方法で使用する環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)は環状アセタール骨格を有しないジオール単位を含有していても良い。エステル化合物(A)の環状アセタール骨格を有しないジオール単位としては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等のジオールが例示できる。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性、及びジオールの入手の容易さを考慮するとエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。なお、環状アセタール骨格を有しないジオールは上記したものの中から1種類でも、2種類以上でも良い。
本実施形態の製造方法で使用する環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジカルボン酸構成単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサン、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が例示できる。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性を考慮すると芳香族ジカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸の入手の容易さを考慮するとテレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。なお、ジカルボン酸は上記したものの中から1種類でも、2種類以上でも良い。
エステル化合物(A)は、従来公知のポリエステル樹脂製造方法を用いて製造する事が出来る。
エステル化合物(A)の好ましい形態の一つはジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合が2〜80モル%であり、好ましくは10〜75モル%、更に好ましくは20〜70モル%、特に好ましくは30〜60モル%である。ポリエステル樹脂(C)のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合はエステル化合物(A)のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合よりも低くなるため、エステル化合物(A)のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合が小さいと限定された組成の樹脂しか得られず好ましくない。また、エステル化合物(A)のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合が大きすぎるとエステル化合物(A)の結晶性が高くなり、エステル化合物(B)と混合し反応させる際に溶解しにくくなるなど、取り扱いにくくなるため好ましくない。
エステル化合物(A)の更に好ましい形態の一つは、ジオール構成単位の90モル%以上が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとエチレングリコールからなり、ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合は前記したものである。また、ジカルボン酸構成単位中のテレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸の合計の割合が60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であるエステル化合物である。
エステル化合物(A)は金属種を含んでいてよく、例えば亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、スズ、リンなどが挙げられる。特に好ましくは、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、カリウム、リン、コバルトの中から少なくとも一つ含んでいるとよい。これらは単独で含んでいてもよく、複数のものを同時に含んでいてもよい。金属種の量はそれぞれエステル化合物(A)に対して好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、更に好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。
エステル化合物(A)の極限粘度はフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒中25℃で測定した値が0.1〜1.5dl/gである必要がある。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度は好ましくは0.3〜1.0dl/g、更に好ましくは0.4〜0.8dl/g、特に好ましくは0.45〜0.75dl/gである。極限粘度が0.1dl/g以下ではエステル化合物(A)の扱いが難しくなるため好ましくない。具体的には溶融状態での粘度が低すぎる事、機械物性が低く脆い事から、例えばポリエステル樹脂の製造装置から取り出してペレット化する事が難しくなる。極限粘度が1.5dl/g以上では、ポリエステル樹脂(C)の原料として使用する際に溶融粘度が大き過ぎて、他の原料であるエステル化合物(B)との混合物の流動性が損なわれたり、流動性を得るために過度の加熱が必要になったりする事があり好ましくない。
エステル化合物(A)の形状は特に制限されないが、ペレット、フレーク、粉体等が例示できる。
エステル化合物(A)の具体的な例として、三菱ガス化学株式会社製のALTESTER S4500,同 ALTESTER S3000,ALTESTER S2000,同 ALTESTER SN4500,同 ALTESTER SN3000,同 ALTESTER SN1500が挙げられる。
本実施形態の製造方法で使用する環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)は、主に環状アセタール骨格を有しないジオール構成単位と環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸構成単位からなる。(ここで「主に」とは、エステル化合物の全構成単位中の90モル%以上であることを意味する。)
本実施形態のエステル化合物(B)の環状アセタール骨格を有しないジオール構成単位としては、特に制限はされないが、前記エステル化合物(A)の環状アセタール骨格を有しないジオール単位で例示したものを用いることができる。
本実施形態のエステル化合物(B)の環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸構成単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が例示できる。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性を考慮すると芳香族ジカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸の入手の容易さを考慮するとテレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸がより好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。なお、ジカルボン酸は上記したものの中から1種類でも、2種類以上でも良い。また、一部をアルキルエステルとしてもよい。
本実施形態のエステル化合物(B)では、溶融粘弾性や分子量などを調整するために、本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなどのモノアルコールやトリメチロールプロパン、グリセリン、1,3,5−ペンタントリオール、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール、安息香酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸やそのエステル形成性誘導体、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸やそのエステル形成性誘導体、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸やそのエステル形成性誘導体を原料として使用しても良い。
エステル化合物(B)の製造方法は、特に制限はされないが、従来のポリエステル樹脂の直接エステル化法による製造方法におけるエステル化工程及び重縮合工程となんら変わる事なく行う事が出来、従来既知の条件、触媒を適用することができる。具体的にはジカルボン酸とジオールを直接エステル化反応する製造方法、種オリゴマーにジカルボン酸とジオールを添加しエステル化反応する製造方法が挙げられる。
エステル化合物(B)の製造方法は、特には制限されないが、原料ジカルボン酸に対するジオールの仕込み比はモル比で、1.01〜10、好ましくは1.05〜5、更に好ましくは1.10〜2である。仕込み比を上記範囲とする事で、ジオールの脱水エーテル化などの好ましくない副反応を抑制することが出来る。
エステル化合物(B)の製造におけるエステル化工程の温度、圧力も従来のポリエステル樹脂の直接エステル化法による製造方法における条件と同様であり、特に制限されないが、反応系の圧力は10〜500kPa、反応温度は80〜270℃、好ましくは150〜265℃、更に好ましくは200〜260℃である。エステル化反応は生成する水を反応系外に抜き出しながら、水の抜出し量から算出されたエステル転化率が80〜98%、好ましくは85〜96%、更に好ましくは92〜95%となるまで行う。
エステル化合物(B)の製造工程ではエステル化合物の透明性、色調の面から無触媒で行うことが好ましいが、従来既知の触媒を用いても良い。特に制限はされないが例えば亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、スズ等の金属の化合物(例えば、脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物、アルコキシド); 金属マグネシウムなどが挙げられる。これらは単独で用いる事もできるし、複数のものを同時に用いる事もできる。触媒成分はエステル化合物(B)に対してそれぞれ1000ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、更に好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。
エステル化合物(B)の製造工程ではリン化合物を使用する事ができる。リン化合物はエステル化合物(B)に対して1000ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、更に好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。リン化合物としては、リン酸エステル、亜リン酸エステルが挙げられ、中でもリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルが好ましく、特にはリン酸トリエチルが好ましい。
エステル化合物(B)の製造工程では塩基性化合物を使用する事ができる。塩基性化合物はエステル化合物(B)に対して1000ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、更に好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。塩基性化合物としては、特に制限されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、水酸化物、カルボン酸塩、酸化物、塩化物、アルコキシド; ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、カルボン酸塩、酸化物、塩化物、アルコキシド; トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物が例示できる。これらの中で、アルカリ金属の炭酸塩、水酸化物、およびカルボン酸塩; アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、およびカルボン酸塩が好ましく、アルカリ金属のカルボン酸塩が特に好ましい。アルカリ金属のカルボン酸塩を使用する事で、耐熱分解性を特に向上させる事ができ、加えて樹脂の透明性が特に優れたものとなる。アルカリ金属のカルボン酸塩として、例えば、アルカリ金属のギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、イソ酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩が挙げられるが、中でもアルカリ金属のギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、イソ酪酸塩、および安息香酸塩が好ましく、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびプロピオン酸リチウムが特に好ましい。これらは単独で用いる事もできるし、複数のものを同時に用いる事もできる。
エステル化合物(B)の酸価は150〜2000μ当量/gが好ましく、より好ましくは200〜1500μ当量/gであり、更に好ましくは300〜1000μ当量/gであり、特に好ましくは400〜800μ当量/gである。酸価が150μ当量/g以下のエステル化合物(B)を得るためには、エステル化合物(B)製造時のジカルボン酸構成単位に対するジオール構成単位のモル比を大きくする手法があるが、エステル化合物(B)中のジオールの脱水反応で生成するエーテル量が増大することがある。またエステル化反応を十分行う必要性がありエステル化合物(B)の製造時間が長時間になることがあるため好ましくない。
エステル化合物(B)のジカルボン酸構成単位に対するジオール構成単位のモル比は1.01〜10、好ましくは1.05〜5、更に好ましくは1.10〜2である。
本実施形態のポリエステル樹脂(C)は、主にジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂である。(ここで「主に」とは、ポリエステル樹脂の全構成単位中の90モル%以上であることを意味する。)
本実施形態のポリエステル樹脂(C)の製造方法は、エステル化合物(B)とエステル化合物(A)とを混合し反応させる方法であり、従来既知のポリエステル樹脂の重縮合工程における条件、触媒等を適用する事ができる。最も好ましい形態としては、ジカルボン酸と環状アセタール骨格を有しないジオールとを従来条件でエステル化した溶融状態のエステル化合物(B)にエステル化合物(A)を添加する形態が挙げられる。本製造方法ではエステル化合物(A)が高分子であったとしても、重縮合工程でランダム化が同時に起きる可能性があり、本工程の前にランダム化の工程はあっても良いが必須ではない。
本実施形態のポリエステル樹脂(C)の製造工程の温度、圧力も従来のポリエステル樹脂の製造方法における重縮合工程となんら変わる事なく行うことが出来、温度は徐々に上げていき、最終的に好ましくは200〜300℃、圧力は徐々に下げていき、最終的に好ましくは300Pa以下である。この条件で主に環状アセタール骨格を有しないジオールを系外に抜き出す。
本実施形態のポリエステル樹脂(C)の製造工程の触媒は従来既知のものを用いる事が出来、特に制限されるものではないが、例えば亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、スズ等の金属の化合物(例えば、脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物、アルコキシド);金属マグネシウムなどが挙げられる。これらは単独で用いる事もできるし、複数のものを同時に用いる事もできる。中でもチタンのアルコキシド、ゲルマニウム酸化物、アンチモン酸化物が好ましく、特にテトラブトキシチタン、二酸化ゲルマニウム、三酸化アンチモンが好ましい。触媒成分は環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)由来または環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)由来でも良く、新規に触媒を添加する必要はない。触媒量は得られるポリエステル樹脂(C)に対してそれぞれ1000ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、更に好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。
本実施形態のポリエステル樹脂(C)の製造方法では、エステル化合物(A)および(B)以外に、環状アセタール骨格を有しないジオールを使用しても良く、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等のジオールを原料として使用しても良い。耐衝撃性向上を考慮すると1,4−シクロヘキサンジメタノールの使用がより好ましい。なお、環状アセタール骨格を有しないジオールは上記したものの中から1種類を使用しても、2種類以上を使用しても良い。
本実施形態のポリエステル樹脂(C)の製造方法では、溶融粘弾性や分子量などを調整するために、エステル化合物(A)および(B)以外に、本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなどのモノアルコールやトリメチロールプロパン、グリセリン、1,3,5−ペンタントリオール、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール、安息香酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸やそのエステル形成性誘導体、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸やそのエステル形成性誘導体、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸やそのエステル形成性誘導体を原料として使用しても良い。
本実施形態のポリエステル樹脂(C)の製造方法では、リン化合物を使用する事ができる。リン化合物は、環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)由来または環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)由来でも良く、得られるポリエステル樹脂(C)に対して1000ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、更に好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。リン化合物としては、リン酸エステル、亜リン酸エステルが挙げられ、中でもリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルが好ましく、特にはリン酸トリエチルが好ましい。
本実施形態のポリエステル樹脂(C)の製造方法では、塩基性化合物を使用する事ができる。塩基性化合物は環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)由来または環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)由来でも良く、得られるポリエステル樹脂(C)に対して1000ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、更に好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。特に制限されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、水酸化物、カルボン酸塩、酸化物、塩化物、アルコキシド; ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、カルボン酸塩、酸化物、塩化物、アルコキシド; トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物が例示できる。これらの中で、アルカリ金属の炭酸塩、水酸化物、およびカルボン酸塩; アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、およびカルボン酸塩が好ましく、アルカリ金属のカルボン酸塩が特に好ましい。アルカリ金属のカルボン酸塩を使用する事で、耐熱分解性を特に向上させる事ができ、加えて樹脂の透明性が特に優れたものとなる。アルカリ金属のカルボン酸塩として、例えば、アルカリ金属のギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、イソ酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩が挙げられるが、中でもアルカリ金属のギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、イソ酪酸塩、および安息香酸塩が好ましく、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびプロピオン酸リチウムが特に好ましい。これらは単独で用いる事もできるし、複数のものを同時に用いる事もできる。
また、本実施形態のポリエステル樹脂(C)の製造方法では、公知のエーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等を用いることが出来る。具体的には、エーテル化防止剤としてアミン化合物等が例示される。その他光安定剤、耐電防止剤、滑剤、酸化防止剤、離型剤、補色剤等を加えても良い。具体的には、補色剤としてはコバルト化合物が例示される。
本実施形態の製造方法で得られるポリエステル樹脂(C)について述べる。ポリエステル樹脂(C)はジオール構成単位中の1〜40モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であり、好ましくは2〜35モル%であり、より好ましくは3〜30モル%である。環状アセタール骨格を有するジオール単位を含む事で、ポリエステル樹脂(C)の耐熱性、機械的な強度が向上する。
本実施形態の製造方法で得られるポリエステル樹脂(C)のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合はエステル化合物(A)のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合よりも低くなる。生産性を考慮すると、ポリエステル樹脂(C)のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合は、エステル化合物(A)のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の1/2以下となることが好ましい。
ポリエステル樹脂(C)の極限粘度はフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒中25℃で測定した値で0.1〜1.5dl/gであり、より好ましくは0.3〜1.0dl/gであり、更に好ましくは0.5〜0.8dl/gであり、特に好ましくは0.55〜0.75dl/gである。
ポリエステル樹脂(C)は、種々の用途に用いることができる。例えば、射出成形体、シート、フィルム、パイプ等の押し出し成形体、ボトル、発泡体、粘着材、接着剤、塗料等に用いることができる。更に詳しく述べるとすれば、シートは単層でも多層でもよく、フィルムも単層でも多層でもよく、また未延伸のものでも、一方向、又は二方向に延伸されたものでもよく、鋼板などに積層してもよい。ボトルはダイレクトブローボトルでもインジェクションブローボトルでもよく、射出成形されたものでもよい。発泡体は、ビーズ発泡体でも押出し発泡体でもよい。
なお、単純にエステル化合物(A)と環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂を押出機でブレンドしたものは、本発明のポリエステル樹脂(C)とは物性が異なり、ポリエステル樹脂(C)と比較し、色調が悪く、重合度の上がり具合も低い樹脂となる。
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は実施例により限定するものではない。各評価は以下のように行い、評価結果は表1〜3に示した。
〔ポリエステル樹脂(C)の評価〕
1.環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率
ポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率を1H−NMR測定にて算出した。測定装置はBruker BioSpin K.K.製、AscendTM500で測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。但し、重クロロホルムに不溶な場合はトリフルオロ酢酸を数滴使用し、重クロロホルムに溶解させた。
2.極限粘度
ポリエステル樹脂をフェノール/1,1,2,2,−テトラクロロエタンの混合溶媒(質量比=6:4)に90℃で加熱溶解させ、0.2、0.4、0.6g/dlの溶液を調製する。その後25℃まで冷却して測定用サンプルを調製した。装置はViscotek社製 相対粘度計Y501を用い、温度25℃で測定を行った。
3.分子量測定
ポリエステル樹脂5mgを5gの10mmol/lのテトラフルオロ酢酸ナトリウム/ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定、標準ポリメタクリル酸メチルで検量したものを数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)とした。GPCは東ソー株式会社製カラムTSKgel guardcolumn SuperH−Hを1本、TSKgel SuperHM−H(6.0mmI.D.×150mm)を2本接続した東ソー社製HLC−8320GPCを用い、カラム温度40℃で測定した。溶離液は10mmol/lのテトラフルオロ酢酸ナトリウム/ヘキサフルオロイソプロパノールを0.3ml/minの流速で流し、RI検出器で測定した。
1.環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率
ポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率を1H−NMR測定にて算出した。測定装置はBruker BioSpin K.K.製、AscendTM500で測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。但し、重クロロホルムに不溶な場合はトリフルオロ酢酸を数滴使用し、重クロロホルムに溶解させた。
2.極限粘度
ポリエステル樹脂をフェノール/1,1,2,2,−テトラクロロエタンの混合溶媒(質量比=6:4)に90℃で加熱溶解させ、0.2、0.4、0.6g/dlの溶液を調製する。その後25℃まで冷却して測定用サンプルを調製した。装置はViscotek社製 相対粘度計Y501を用い、温度25℃で測定を行った。
3.分子量測定
ポリエステル樹脂5mgを5gの10mmol/lのテトラフルオロ酢酸ナトリウム/ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定、標準ポリメタクリル酸メチルで検量したものを数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)とした。GPCは東ソー株式会社製カラムTSKgel guardcolumn SuperH−Hを1本、TSKgel SuperHM−H(6.0mmI.D.×150mm)を2本接続した東ソー社製HLC−8320GPCを用い、カラム温度40℃で測定した。溶離液は10mmol/lのテトラフルオロ酢酸ナトリウム/ヘキサフルオロイソプロパノールを0.3ml/minの流速で流し、RI検出器で測定した。
〔エステル化合物(A)の評価〕
1.環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率
上述した方法で実施した。
2.極限粘度
上述した方法で実施した。
1.環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率
上述した方法で実施した。
2.極限粘度
上述した方法で実施した。
〔エステル化合物(B)の評価〕
1.ジカルボン酸構成単位に対するジオールの構成単位(G/A)
エステル化合物中のジオールの共重合率とジカルボン酸の共重合率を1H−NMR測定にて算出した。測定装置はBruker BioSpin K.K.製、AscendTM500で測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。但し、重クロロホルムに不溶な場合はトリフルオロ酢酸を数滴使用し、重クロロホルムに溶解させた。
2.酸価
エステル化合物1.5gをO−クレゾール/1,1,2,2−テトラクロロエタン/クロロホルムの混合溶媒(質量比70:15:15)50mlに加熱溶解した。この溶液を0.1N水酸化カリウムのエタノール溶液で電位差滴定した。滴定は平沼産業株式会社製 自動滴定装置 COM−1600にて行った。
1.ジカルボン酸構成単位に対するジオールの構成単位(G/A)
エステル化合物中のジオールの共重合率とジカルボン酸の共重合率を1H−NMR測定にて算出した。測定装置はBruker BioSpin K.K.製、AscendTM500で測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。但し、重クロロホルムに不溶な場合はトリフルオロ酢酸を数滴使用し、重クロロホルムに溶解させた。
2.酸価
エステル化合物1.5gをO−クレゾール/1,1,2,2−テトラクロロエタン/クロロホルムの混合溶媒(質量比70:15:15)50mlに加熱溶解した。この溶液を0.1N水酸化カリウムのエタノール溶液で電位差滴定した。滴定は平沼産業株式会社製 自動滴定装置 COM−1600にて行った。
<製造例1:エステル化合物(B1)の製造>
充填塔式精留塔、分縮器、撹拌翼、加熱装置、窒素導入管を備えた1Lのポリエステル製造装置にジカルボン酸構成単位(全てテレフタル酸に由来するジカルボン酸単位)に対するジオール構成単位(全てエチレングリコールに由来するジオール単位)のモル比が1.26、酸価が71μ当量/gである種オリゴマー(D)と二酸化ゲルマニウムを仕込み、ジカルボン酸、環状アセタール骨格を持たないジオールを所定のモル比になるように添加し、240℃、常圧にてエステル化反応を行い、生成する水を留去しながら、エステル化合物(B1)を得た。
反応に使用した各成分の仕込み量およびエステル化合物(B1)の評価結果を表1に示す。
充填塔式精留塔、分縮器、撹拌翼、加熱装置、窒素導入管を備えた1Lのポリエステル製造装置にジカルボン酸構成単位(全てテレフタル酸に由来するジカルボン酸単位)に対するジオール構成単位(全てエチレングリコールに由来するジオール単位)のモル比が1.26、酸価が71μ当量/gである種オリゴマー(D)と二酸化ゲルマニウムを仕込み、ジカルボン酸、環状アセタール骨格を持たないジオールを所定のモル比になるように添加し、240℃、常圧にてエステル化反応を行い、生成する水を留去しながら、エステル化合物(B1)を得た。
反応に使用した各成分の仕込み量およびエステル化合物(B1)の評価結果を表1に示す。
<実施例1〜2>
エステル化合物(A)として、三菱ガス化学社製 ALTESTER S4500を使用した。(以下、エステル化合物(A1)と記載する。)その評価結果を表2に示す。また、エステル化合物(B)として、前記製造例1で製造したエステル化合物(B1)を使用した。
全縮器、コールドトラップ、撹拌翼、加熱装置、窒素導入管を備えた1Lのポリエステル製造装置に表3に記載の量のエステル化合物(B1)を仕込み、常圧、窒素雰囲気下で内温を250℃まで昇温した。昇温後、触媒としてテトラブトキシチタン、熱安定剤としてリン酸トリエチル、塩基性化合物として酢酸カリウム、補色剤として酢酸コバルトを添加し、エステル化合物(A1)を加え、280℃まで昇温しながら100Pa以下の圧力となるまで徐々に減圧し、主に環状アセタール骨格を有しないジオールを留去した。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹脂(C)を得た。
反応に使用した各成分の仕込み量および得られたポリエステル樹脂(C)の評価結果を表3に示す。
エステル化合物(A)として、三菱ガス化学社製 ALTESTER S4500を使用した。(以下、エステル化合物(A1)と記載する。)その評価結果を表2に示す。また、エステル化合物(B)として、前記製造例1で製造したエステル化合物(B1)を使用した。
全縮器、コールドトラップ、撹拌翼、加熱装置、窒素導入管を備えた1Lのポリエステル製造装置に表3に記載の量のエステル化合物(B1)を仕込み、常圧、窒素雰囲気下で内温を250℃まで昇温した。昇温後、触媒としてテトラブトキシチタン、熱安定剤としてリン酸トリエチル、塩基性化合物として酢酸カリウム、補色剤として酢酸コバルトを添加し、エステル化合物(A1)を加え、280℃まで昇温しながら100Pa以下の圧力となるまで徐々に減圧し、主に環状アセタール骨格を有しないジオールを留去した。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹脂(C)を得た。
反応に使用した各成分の仕込み量および得られたポリエステル樹脂(C)の評価結果を表3に示す。
Claims (5)
- 主にジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有するポリエステル樹脂(C)の製造方法であって、環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)および環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)とを混合し反応させる工程を含み、以下の(1)〜(2)の条件を同時に満たすことを特徴とする製造方法。
(1)環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)は、ジカルボン酸構成単位とジオール構成単位からなり、ジオール構成単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を含有し、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶液中25℃で測定した極限粘度が0.1〜1.5dl/gである。
(2)環状アセタール骨格を有しないエステル化合物(B)は、環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有しないジオール構成単位からなり、酸価が150〜2000μ当量/gである。 - 環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位として含有する環状アセタール骨格を有するジオール単位が、一般式(a):
- 環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位として含有する環状アセタール骨格を有するジオール単位が、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である請求項1または2に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
- 環状アセタール骨格を有するエステル化合物(A)のジオール構成単位の2〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
- ポリエステル樹脂(C)のジオール構成単位の1〜40モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂(C)の製造方法。
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