JP4192857B2 - 高強度冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、高強度冷延鋼板及びその製造方法に関し、詳しくは、ドアインパクトビームなど自動車衝突時の安全を確保するための部品やシートレールなど乗員の安全に関わる部品の素材として好適な、曲げ性に優れた引張強度が980MPa以上の高強度冷延鋼板及びその製造方法に関する。
近年、自動車の安全及び軽量化対策として、980MPa以上の引張強度を有する高強度冷延鋼板に対する要望が大きくなっている。
一般に、鋼板を高強度化すると曲げ性の劣化が顕著となるが、引張強度が980MPa以上の高強度冷延鋼板が適用される部品の加工方法は曲げ加工が主体であるので、このような高強度冷延鋼板に良好な曲げ性を確保することが重要な課題となっている。
更に、鋼板の高強度化に伴い、コイル内での幅方向における特性、とりわけ曲げ性が不均一となる傾向が大きくなる。そして、コイル内での幅方向の曲げ特性が不均一な場合には、たとえ出荷試験において所期の曲げ性を有することが確認できたコイルであっても、試験片の採取位置によって曲げ性が異なることがあるため、曲げ加工時に割れが発生する可能性がある。したがって、同じコイル内において曲げ性を均一化することは非常に重要である。
このため、特許文献1に「伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法」が、また、特許文献2に「曲げ特性の優れた超高強度冷延鋼板の製造方法」が、更に、特許文献3に「曲げ成形性が優れ、かつ幅方向の曲げ成形性の変動の少ない超高強度冷延鋼板の製造方法」が提案されている。
特開平7−188767号公報 特開平5−105959号号公報 特開平7−316660号公報
本発明の目的は、引張強度で980MPa以上の高強度を有するとともに均一かつ良好な曲げ性を備える高強度冷延鋼板とその製造方法を提供することである。
前述の特許文献1で提案された技術は、ベイナイト主体の組織にすることによって伸びフランジ性を改善しようとするもので、曲げ特性の向上が可能となるものである。しかしながら、ベイナイトは冷却条件の影響を大きく受ける。このため、単にベイナイト主体の組織とするだけでは、コイルの幅方向及び長手方向にわたって均一かつ安定した曲げ性を確保することは困難であるが、特許文献1では、幅方向及び長手方向の曲げ性の変動抑制に対する配慮がなされていないばかりか、示唆すらされていない。
特許文献2で提案された技術は、ガスジェット冷却法を用いてベイナイト組織分率を90%以上とすることで曲げ性を向上させるものであるが、上記の特許文献1と同様に、幅方向及び長手方向の曲げ性の変動抑制に対する配慮がなされていないばかりか、示唆すらされていない。
特許文献3で提案された技術は、気水冷却設備を用いてマルテンサイト主体(残部はフェライト)の組織とすることによって、幅方向での曲げ特性の変動を抑制しようとするものである。しかしながら、マルテンサイトは非常に硬質な組織である。このため、曲げ加工時に、マルテンサイトと軟質な組織であるフェライトとの境界でボイドが発生し、曲げ加工時に割れが発生することがある。更に、特許文献3には、冷却条件の影響を大きく受けるベイナイト主体の組織を前提として組織を均一なものとして、幅方向の特性を安定化させるという配慮がなされていないばかりか、示唆すらされていない。
そこで、本発明者らは、980MPa以上の引張強度を有し、しかも、同じコイル内において均一な曲げ性を有する高強度冷延鋼板を得るために種々検討を行った。その結果、下記(a)〜(c)の知見を得た。
(a)低温変態生成物として、比較的硬質ではあるものの、マルテンサイトよりも軟質で延伸が容易なベイナイトを面積割合で95%以上含有させることにより、組織間の硬度差を低減できるので、曲げ加工時の割れの起点となるボイドの発生を抑制して曲げ性を向上させることが可能となる。
(b)ベイナイト主体の組織であっても、隣接するベイナイトのサイズに大きな差がある場合には、ベイナイト同士の境界でボイドが発生して曲げ加工時の割れの起点となりやすい。しかしながら、ベイナイトのサイズ差が小さい場合、具体的には、旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、幅方向の任意の3点における旧オーステナイト粒径の最大径と最小径の比が5.0以下の場合には、曲げ加工時の割れの起点が低減されて、良好な曲げ性を幅方向に均一に確保することができる。
(c)焼鈍後の冷却工程でベイナイト主体の組織とする際、均一冷却が可能な水冷設備を用いることによって、幅方向だけではなく長手方向にも曲げ特性が均一な鋼板が得られる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
本発明の要旨は、下記(1)〜(4)に示す高強度冷延鋼板及び(5)に示す高強度冷延鋼板の製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.1〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.20%及びN:0.020%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径の比が5.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
(2)質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.4〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.20%及びN:0.020%以下に加えて、更に、Ti:0.01〜0.30%及びNb: 0.01〜0.30%のうちの1種又は2種を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径の比が5.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
(3)質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.1〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.20%及びN:0.020%以下に加えて、更に、Cr:0.01〜0.50%及びMo:0.01〜0.50%のうちの1種又は2種を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径の比が5.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
(4)質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.4〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.20%及びN:0.020%以下に加えて、更に、Ti:0.01〜0.30%及びNb: 0.01〜0.30%のうちの1種又は2種、並びにCr:0.01〜0.50%及びMo:0.01〜0.50%のうちの1種又は2種を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径の比が5.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
(5)上記(1)から(4)までのいずれかに記載の化学組成を有する高強度冷延鋼板の製造方法であって、下記(1)〜(3)の工程をこの順に備えることを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法。
(1)熱間工程:鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃に加熱してから熱間圧延し、1030〜780℃で熱間圧延を完了した後、10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、700℃以下で巻き取る、
(2)冷間圧延工程:30〜70%の圧下率で冷間圧延を施す、
(3)連続焼鈍工程:720〜900℃の温度域で10秒以上保持した後、750〜650℃の温度域から450〜200℃の温度域まで20〜100℃/秒の平均冷却速度で水冷却し、その後450〜200℃の温度域に60〜400秒保持する。
本発明でいう「ベイナイト」には、いわゆる「ベイニティックフェライト」を含むものとする。そして、「粒径」とは、各々の粒についての長径と短径の和の1/2で定義される値を指す。なお、上記の「長径」と「短径」はそれぞれ、いわゆる「切片法」で求めた切片長さを1.128倍した値を指す。
また、鋼板の「幅方向」とは圧延方向に対して板面内直角方向のことを指す。鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径は、例えば、コイルの幅方向の1/4の位置、1/2の位置及び3/4の位置など任意の3箇所について、例えば、各々10視野の観察を行ない、観察された全体の旧オーステナイトの粒径のうちの最大のものを最大粒径、最小のものを最小粒径として求めることができる。なお、以下の説明においては、上記鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの「最大粒径」及び「最小粒径」をそれぞれ、「Dmax」及び「Dmin」ということがある。
本発明でいう「鋼塊」は、JIS G 0203(1984)に規定されているとおり、「鋳片」を含むものをいう。
温度及び平均冷却速度はいずれも、鋼塊、鋼片及び鋼板の表面におけるものを指し、また、「平均冷却速度」とは、冷却前後の温度差を冷却時間(例えば、冷却水噴射時間)で割った値をいう。
圧延工程における「%単位」での圧下率とは{(圧延前の被圧延材の厚さ−圧延後の被圧延材の厚さ)/(圧延前の被圧延材の厚さ)}×100で表される値をいう。
また、「水冷却」には、鋼板に気水スプレーを噴射するいわゆる「気水冷却」を含む。
以下、上記(1)〜(4)の高強度冷延鋼板に係る発明及び(5)の高強度冷延鋼板の製造方法に係る発明を、それぞれ「(1)の発明」〜「(5)の発明」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の高強度冷延鋼板は、980MPa以上の引張強度を有し、しかも、コイルの幅方向及び長手方向に安定して均一かつ良好な曲げ性を備えるので、ドアインパクトビームなど自動車衝突時の安全を確保するための部品やシートレールなど乗員の安全に関わる部品の素材として利用することができる。この高強度冷延鋼板は、本発明の方法によって比較的容易に製造することができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)鋼の化学組成
C:0.05〜0.20%
Cは、強度確保のために必要な元素である。しかし、その含有量が0.05%未満では所望の980MPa以上の引張強度が確保できない。一方、0.20%を超えると靱性及び溶接性が低下する。更に、焼入れ性が上がるため組織に占めるマルテンサイトの割合が増えて、所定の組織を確保できない場合がある。したがって、Cの含有量を0.05〜0.20%とした。なお、Cの含有量は0.05〜0.10%とすることが好ましい。
Si:0.1〜2.0%
Siは、高強度化に有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%未満では所望の980MPa以上の引張強度が確保できない。一方、2.0%を超えて含有させると、化成処理性が大きく劣化する。更に、組織に占めるベイナイトの割合が低下し、フェライトの割合が増加するので、所定の組織を得ることができない。したがって、前記(1)の発明および(3)の発明におけるSiの含有量を0.1〜2.0%とした。Si含有量の好ましい下限は0.4%である。このため、前記(2)の発明および(4)の発明におけるSiの含有量を0.4〜2.0%とした。なお、Si含有量の好ましい上限は1.6%で、更に好ましい上限は1.0%である。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、オーステナイトを安定化することでベイナイトの生成を促進する作用を有する。しかし、Mnの含有量が1.0%未満では、組織に占めるベイナイトの割合が少なくなって所定の組織を得ることができないので、所望の良好な曲げ性と高強度を両立させることができない。一方、その含有量が3.0%を超えるといわゆる「バンド組織」が発達するので、曲げ性が低下する。更に、焼入れ性が上がるため組織に占めるマルテンサイトの割合が増えて、所定の組織を確保できない場合がある。したがって、Mnの含有量を1.0〜3.0%とした。なお、Mnの含有量の好ましい下限は2.0%で、好ましい上限は2.6%である。
P:0.10%以下
Pは、靱性を低下させる好ましくない元素である。特に、その含有量が0.10%を超えると靱性の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.10%以下とした。なお、Pの含有量は溶接性の観点から0.05%以下とすることが好ましい。
S:0.010%以下
Sは、曲げ成形時のボイドの発生起点となるMnSを形成して、曲げ性を低下させる。特に、その含有量が0.010%を超えると曲げ性の低下が大きくなる。したがって、Sの含有量を0.010%以下とした。Sの含有量は、好ましくは0.0040%以下、更に好ましくは0.0015%以下とするのがよい。
Al:0.001〜0.20%
Alは、鋼の脱酸に有用な元素である。その効果を得るには、少なくとも0.001%の含有量が必要である。一方、0.20%を超えて含有させても前記の効果が飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Alの含有量を0.001〜0.20%とした。なお、Alの含有量の好ましい下限は0.01%で、好ましい上限は0.10%である。
N:0.020%以下
Nは、連続鋳造中に窒化物を形成し、スラブのひび割れの原因となる。特に、その含有量が0.020%を超えると、スラブのひび割れが多発する。したがって、Nの含有量を0.020%以下とした。なお、Nの含有量は0.010%以下とすることが好ましい。
したがって、前記(1)の発明に係る高強度冷延鋼板の化学組成について、上述した範囲のCからNまでの元素を含み、残部はFe及び不純物からなることと規定した。
なお、本発明に係る高強度冷延鋼板には、上記の成分元素に加え、必要に応じて、後述する第1群及び第2群のうちの少なくとも1群から選んだ1種以上の元素を任意添加元素として添加し、含有させてもよい。
以下、任意添加元素に関して説明する。
第1群:Ti:0.01〜0.30%及びNb:0.01〜0.30%
Ti及びNbは、いずれも再結晶を遅らせて、結晶粒を微細化する作用を有する。この効果を確実に得るには、少なくとも一方を0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかしながら、Ti又はNbを0.30%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Ti及びNbを添加する場合のそれぞれの含有量は、Tiは0.01〜0.30%及びNbは0.01〜0.30%とするのがよい。なお、上記のTi及びNbはいずれか1種のみ、又は2種の複合で添加することができる。
第2群:Cr:0.01〜0.50%及びMo:0.01〜0.50%
Cr及びMoは、いずれもMnと同様にオーステナイトを安定化することで、ベイナイトの生成を促進する作用を有する。この効果を確実に得るには、少なくとも一方を0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかしながら、Cr又はMoを0.50%を超えて含有させると、化成処理性の低下を招く。したがって、Cr及びMoを添加する場合のそれぞれの含有量は、Crは0.01〜0.50%及びMoは0.01〜0.50%とするのがよい。なお、上記のCr及びMoはいずれか1種のみ、又は2種の複合で添加することができる。
したがって、前記(2)の発明に係る高強度冷延鋼板の化学組成について、前述した範囲のCからNまでの元素に加えて更に、上述した範囲のTi及びNbのうちの1種又は2種を含み、残部はFe及び不純物からなることと規定した。
また、前記(3)の発明に係る高強度冷延鋼板の化学組成について、前述した範囲のCからNまでの元素に加えて更に、上述した範囲のCr及びMoのうちの1種又は2種を含み、残部はFe及び不純物からなることと規定した。
更に、前記(4)の発明に係る高強度冷延鋼板の化学組成について、前述した範囲のCからNまでの元素に加えて更に、上述した範囲のTi及びNbのうちの1種又は2種、並びにCr及びMoのうちの1種又は2種を含み、残部はFe及び不純物からなることと規定した。
上述の化学組成を有する鋼は、例えば転炉や電気炉等により溶製される。鋼塊の製造は、鋳型に注入する「造塊法」又は「連続鋳造法」のいずれの手段を用いても構わない。
(B)鋼板の組織
鋼板の組織は本発明の重要な要素であり、前記(1)の発明〜(4)の発明に係る高強度冷延鋼板は、その組織が、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径(Dmax)と最小粒径(Dmin)の比が5.0以下でなければならない。
これは、引張強度で980MPa以上の高強度鋼板が使用される部材の加工が、絞り成形や張り出し成形ではなく、曲げ成形が主体であり、しかも、こうした高強度鋼板においてさえ、JIS Z 2248(1996)に規定された「金属材料曲げ試験方法」による「押曲げ法」で、0.5tから密着曲げまでの良好な曲げ性が要求されるようになってきたことに基づく規定である。
ベイナイトを主体とした組織、なかでも、面積割合で95%以上のベイナイトを含む組織は、曲げ性に優れる。
しかし、面積割合で95%以上のベイナイトを含む組織であっても、旧オーステナイトの粒径が20μmを超えると、曲げ加工時にボイドが発生しやすく、割れが生じる。このため、旧オーステナイト粒径は20μm以下に微細化する必要がある。
また、ベイナイトは焼鈍後の冷却条件の影響を受けやすく、冷却のばらつきに起因してコイルの幅方向及び長手方向にベイナイトの粒径ばらつきが生じると、コイルの幅方向及び長手方向の曲げ性もばらついてしまう。そして、特に、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちのDmaxとDminの比が5.0を超えると、コイルの幅方向の曲げ性のばらつきが顕著になる。
したがって、前記(1)の発明〜(4)の発明に係る高強度冷延鋼板は、その組織が、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちのDmaxとDminの比が5.0以下と規定した。
前記(A)項の化学組成と上記の組織規定を満足させることで、冷延鋼板に980MPa以上の引張強度を具備させることができ、しかも、コイルの幅方向及び長手方向に安定して均一かつ良好な曲げ性を備えさせることができる。
なお、ベイナイトが組織に占める割合の上限は特に規定するものではなく、ベイナイト100%の組織であってもよい。ベイナイトが組織の100%に達しない場合の「残部組織」としては、フェライト、マルテンサイト、変態せずに残ったいわゆる「残留オーステナイト」、パーライトや粒界に析出したセメンタイトを例示することができる。なお、「残部組織」における上記各々の組織はいずれも2%以下であることが好ましい。
また、旧オーステナイト粒径の下限も特に規定するものではなく微細な程好ましいが、工業的な量産の場合、その下限は3μm程度である。
更に、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちのDmaxとDminの比は1に近い程好ましい。これは、Dmax/Dminの値が1の場合、整粒組織になって、極めて均質な特性が得られるからである。
なお、曲げ加工の場合、鋼板表面における加工度が最も大きいため、鋼板表面が曲げ加工時の割れ起点となりやすい。しかし、鋼板の組織が前記の条件を満たし、更に、鋼板の表層部における組織、なかでも鋼板の両表面から板厚中心に向かってそれぞれ20μmまでの深さにおける組織を、面積割合で95%以上のベイナイトとし、しかも、旧オーステナイトの粒径を20μm以下とすれば、曲げ加工の際に鋼板表面が割れ起点となることを抑制できるので、一層良好な曲げ性を、幅方向及び長手方向に均一に確保することができる。
したがって、本発明に係る高強度冷延鋼板は、鋼板の両表面から板厚中心に向かってそれぞれ20μmまでの深さの鋼板表層部に、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下であることが好ましい。
なお、上記鋼板の両表面から板厚中心に向かってそれぞれ20μmまでの深さにおける組織の場合にも、ベイナイトが組織に占める割合の上限は特に規定するものではなく、ベイナイト100%の組織であってもよい。ベイナイトが組織の100%に達しない場合の「残部組織」としては、フェライト、マルテンサイト、変態せずに残ったいわゆる「残留オーステナイト」、パーライトや粒界に析出したセメンタイトを例示することができる。なお、「残部組織」における上記各々の組織はいずれも2%以下であることが好ましい。更に、旧オーステナイト粒径の下限も特に規定するものではなく微細な程好ましいが、工業的な量産の場合、その下限は3μm程度である。
なお、本発明でいう「ベイナイト」には、いわゆる「ベイニティックフェライト」を含むこと、「粒径」とは、各々の粒についての長径と短径の和の1/2で定義される値を指すこと、更に、上記の「長径」と「短径」はそれぞれ、いわゆる「切片法」で求めた切片長さを1.128倍した値を指すことは既に述べたとおりである。
鋼板の「幅方向」が圧延方向に対して板面内直角方向のことを指すことも既に述べたとおりである。
(C)鋼板の製造方法
前記(A)項に記載の化学組成と(B)項に記載の組織とを有する(1)の発明〜(4)の発明に係る高強度冷延鋼板は、例えば、下記(1)〜(3)の工程をこの順に備える製造方法によって得ることができる。
(1)熱間工程:鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃に加熱してから熱間圧延し、1030〜780℃で熱間圧延を完了した後、10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、700℃以下で巻き取る、
(2)冷間圧延工程:30〜70%の圧下率で冷間圧延を施す、
(3)連続焼鈍工程:720〜900℃の温度域で10秒以上保持した後、750〜650℃の温度域から450〜200℃の温度域まで20〜100℃/秒の平均冷却速度で水冷却し、その後450〜200℃の温度域に60〜400秒保持する。
以下、上記の規定について詳しく説明する。
(1)熱間工程:
前記(A)項に記載の化学組成を備える鋼塊又は鋼片の加熱温度が1050℃未満では1030〜780℃という熱間圧延完了温度を確保できず、後述する問題が生じる場合がある。一方、上記加熱温度が1300℃を超えると、燃料コストが嵩むうえにスケールロスも生じる。
熱間での圧延完了温度が780℃未満では、Ar3変態点以下の圧延にともなって表層にフェライトの粗大組織が形成されることがあり、また、1030℃を超えると組織が粗大化することがあって、所望の引張強度と良好な曲げ性とを具備できない場合がある。
また、熱間での圧延完了後巻き取りまでの平均冷却速度が10℃/秒未満の場合には、組織の粗大化を招いて所望の引張強度と良好な曲げ性とを具備できなくなったり、冷却に必要な設備の長さを増やす必要が生じて設備コストの増大を招いたりする。
更に、巻き取り温度が700℃を超えると、パーライト組織が粗大化して製品段階において所定の組織が得られず、所望の引張強度と良好な曲げ性とを具備できない場合がある。
したがって、(5)の発明の熱間工程は、鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃に加熱してから熱間圧延し、1030〜780℃で熱間圧延を完了した後、10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、700℃以下で巻き取ることとした。
なお、熱間での圧延完了後巻き取りまでの平均冷却速度の上限は特に規定するものではなく、設備的に可能な上限の値であってもよい。
また、巻き取り温度の下限は、硬質なマルテンサイトが生成し、後工程の冷間圧延が困難となるのを防ぐために、500℃程度とするのが好ましい。
なお、既に述べたように、本発明でいう「鋼塊」には「鋳片」を含む。また、温度及び平均冷却速度はいずれも、鋼塊、鋼片及び鋼板の表面におけるものを指し、更に、「平均冷却速度」が、冷却前後の温度差を冷却時間で割った値を指すことも既に述べたとおりである。
なお、熱間圧延のための加熱炉や均熱炉などへの鋼塊又は鋼片の装入は、鋳造後や熱間加工後の高温のままの状態で行ってもよいし、一旦室温近傍まで冷却した状態から行ってもよい。また、熱間圧延における仕上げ圧延は、粗圧延した後の粗バーを加熱又は保熱してから行うことが望ましい。これは、粗バーを加熱又は保熱することによって、粗バー内の温度バラツキを低減することができ、圧延完了後の鋼板の組織が一層均一になって特性が向上するからである。
上記の熱間工程を経た後、必要に応じて、平坦矯正のためのスキンパス圧延やスケール除去のための酸洗を施し、次に述べる冷間圧延工程を実施することとなる。
(2)冷間圧延工程:
冷間圧延における圧下率が30%未満では、幅方向における板厚の均一性が確保できず、これに起因して冷却ムラが生じて幅方向の曲げ性が変動する場合がある。一方、冷間圧延における圧下率が70%を超えるようにして本発明が対象とする鋼板を製造するためには、極めて強力な冷間圧延設備が必要となるため、設備費用が嵩んでしまう。更には、本発明が対象とする鋼板の熱延板は強度が高く伸びが小さいため、圧下率が高いと破断するおそれがある。
したがって、(5)の発明においては、30〜70%の圧下率で冷間圧延を行うこととした。
なお、既に述べたように、圧延工程における「%単位」での圧下率とは、{(圧延前の被圧延材の厚さ−圧延後の被圧延材の厚さ)/(圧延前の被圧延材の厚さ)}×100で表される値を指す。
上記の冷間圧延工程を経た後、次に述べる連続焼鈍工程を実施することとなる。
(3)連続焼鈍工程:
連続焼鈍工程における焼鈍温度が720℃未満ではオーステナイト化が不十分となって、面積割合で95%以上のベイナイトという所望の組織が得られない場合がある。また、焼鈍温度が900℃を超えると、オーステナイト粒の粗大化が生じて所望の引張強度と良好な曲げ性とを具備できない場合がある。更に、焼鈍時間が10秒未満の場合にも、鋼板を均一に加熱できずオーステナイト化が不十分となって、面積割合で95%以上のベイナイトという所望の組織が安定して得られず、コイル内に強度ばらつきを生じる場合がある。
720〜920℃の温度域で10秒以上保持しても、その後、750℃を超える高い温度から後述する20〜100℃/秒という速い冷却速度で冷却を開始すると、鋼板の平坦形状が損なわれる場合がある。一方、冷却の開始温度が650℃未満の場合には、パーライトや粒界でのセメンタイトの生成が促進され、面積割合で95%以上のベイナイトという所望の組織が得られない場合がある。
また、720〜920℃の温度域で10秒以上保持した後の冷却時の平均冷却速度が20℃/秒未満の場合にも、パーライトや粒界でのセメンタイトの生成が促進され、面積割合で95%以上のベイナイトという所望の組織が得られない場合がある。一方、前記の平均冷却速度が100℃/秒を超える場合には、組織に占めるマルテンサイトの割合が増大して、所望の組織が得られないことがあり、この場合には平坦不良も生じる。
750〜650の温度域から20〜100℃/秒の平均冷却速度で冷却する際の冷却終端温度及び冷却後の保持温度が450℃を超えると、粒界に過剰なセメンタイトが生成されて引張強度で980MPa以上という所望の高強度が得られない場合がある。一方、前記の温度が200℃を下回ると、曲げ加工時の割れ起点となるマルテンサイトの割合が過剰となって、良好な曲げ性が得られない場合がある。
冷却後の450〜200℃での保持時間が60秒を下回ると、曲げ加工時の割れ起点となるマルテンサイトの割合が過剰となって、良好な曲げ性が得られない場合がある。一方、前記の保持時間が400秒を超えると、粒界に過剰なセメンタイトが生成されて引張強度で980MPa以上という所望の高強度が得られない場合がある。
したがって、(5)の発明の連続焼鈍工程は、720〜900℃の温度域で10秒以上保持した後、750〜650℃の温度域から450〜200℃の温度域まで20〜100℃/秒の平均冷却速度で冷却し、その後450〜200℃の温度域に60〜400秒保持することとした。
なお、720〜900℃の温度域での保持時間の上限は、オーステナイト粒の粗大化を抑制するために、80秒程度とするのが好ましい。
本連続焼鈍工程における冷却手段は、ロール冷却のような間接的冷却手段ではなく、鋼板に気水スプレー噴射したり水封容器内へ鋼板を浸漬させる直接的冷却手段である水冷却を用いる。
間接的冷却手段を用いる場合、例えば、ロール冷却の場合には、鋼板の片面のみがロールと接触する構成で鋼板を両面から同時に冷却することが困難であるため、長手方向に冷却のばらつきが生じ、その結果特性のばらつきが大きくなる場合がある。また、ロールとの接触に冷却状態が影響されるため、ロール幅方向に冷却むらが生じやすく、幅方向での特性のばらつきが大きくなる場合もある。
これに対して、直接的冷却手段を用いる場合、例えば、水冷設備を用いた水冷却の場合では、鋼板の両面が同時に均一に冷却され、幅方向及び長手方向での冷却のばらつきが小さくなり、その結果、鋼板の特性のばらつきも小さくなる。更には、冷却のばらつきの影響を受けやすい鋼板の両表面から板厚中心に向かってそれぞれ20μmまでの深さの鋼板表層部の均一冷却の観点からも有効である。
このため、連続焼鈍工程における冷却手段としては、直接的冷却手段である水冷却を用いる。
なお、水封容器内へ鋼板を浸漬させる水冷設備を用いると、鋼板に形状不良が生じる場合があるので、直接的冷却手段を用いる場合には、鋼板に気水スプレーを噴射する気水冷却設備を適用することがより好ましい。
上記の連続焼鈍工程の後、更に平坦矯正のため伸び率1%以下のスキンパス圧延を施してもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜Qを溶解した。
Figure 0004192857
上記の鋼のうち、鋼A〜Pは転炉で溶解した後、通常の方法によって連続鋳造してスラブとし、そのスラブを実機圧延設備を用いて表2及び表3に示す条件で熱間圧延し、厚さ2.6mmの熱延鋼板に仕上げた。次いで、各熱延鋼板を通常の方法で酸洗してスケールを除去した後、通常の方法で厚さ1.2mmまで冷間圧延し、更に、表2及び表3に記載の条件で連続焼鈍して冷延鋼板を製造した。なお、冷却には実機の気水冷却設備を用いた。
また、鋼Qは30kg真空溶解炉にて溶製し、インゴットに鋳造した。次いで、そのインゴットを熱間鍛造により厚さ20mmの板とした後、表2及び表3に示す条件で熱間圧延して、厚さ2.6mmの熱延鋼板に仕上げた。なお、この熱間圧延には試験圧延機を用い、5パスで圧延した。次いで、上記のようにして得た熱延鋼板を、試験酸洗設備を用いて酸洗した後、試験圧延機を用いて5パスで1.2mmまで冷間圧延し、更に、試験焼鈍装置で焼鈍して冷延鋼板を製造した。なお、表2の試験番号16の場合の冷却は、試験水冷ロールを用いたロール冷却(試験番号16)とし、また、表3の試験番号19の場合の冷却は、試験気水冷却設備を用いた気水冷却とした。
なお、上記の厚さ2.6mmから1.2mmの冷間圧延における圧下率は53.8%である。
Figure 0004192857
Figure 0004192857
各冷延鋼板について、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて、鋼板板厚の断面組織を観察した。
すなわち、鋼板の幅方向における中央部位置(以下「W/2位置」という。)と、鋼板の幅方向中央部と2つの側端との中央部位置(以下「W/4位置」及び「3W/4位置」という。)の合計3位置の圧延方向断面をナイタルで腐食し、光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いて厚さ方向における組織の観察及び特定を行った。また、各組織の面積率を各位置で画像解析により求めた。
更に、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で旧オーステナイト粒界を現出させ、前述した方法によって旧オーステナイト粒径を求めた。なお、旧オーステナイトの粒径は、上記の3つの各位置についてそれぞれ、10視野測定して求めた。
各冷延鋼板の引張特性及び曲げ特性は以下に示す方法で調査した。
すなわち、鋼板の「W/4位置」、「W/2位置」及び「3W/4位置」から圧延直角方向にJIS Z 2201(1998)に記載の5号引張試験片とJIS Z 2204(1996)に記載の3号曲げ試験片とを切り出し、JIS Z 2241(1993)に記載の方法で引張試験を行い、引張強度(TS)、降伏強度(YS)及び伸び(El)を測定した。
引張特性の目標は、鋼板の「W/4位置」、「W/2位置」及び「3W/4位置」のいずれにおいても980MPa以上のTSを有することとした。
また、JIS Z 2248(1996)に記載の「押曲げ法」で曲げ試験を行い、亀裂が発生する限界曲げ半径で曲げ性を評価した。
曲げ性の目標は、鋼板の「W/4位置」、「W/2位置」及び「3W/4位置」のいずれにおいても亀裂が発生する限界曲げ半径(mm)が、「0.5×板厚(mm)」以下であること、つまり、0.6mm以下であることとした。
表4〜表6に、上記の各調査結果を整理して示す。
なお、表4〜表6において、組織に占める面積割合はベイナイト及びマルテンサイトについてのみ示した。
また、旧オーステナイト粒径は、上記鋼板の「W/4位置」、「W/2位置」及び「3W/4位置」の各位置における最大粒径と最小粒径をそれぞれ、「最大」、「最小」として示し、3つの位置を総合した場合の最大粒径と最小粒径をそれぞれ「Dmax」、「Dmin」としてその比を表中に記載した。
更に、曲げ性の評価となる限界曲げ半径(mm)は、板厚の1.2mmをt(mm)として、例えば「0.5t」のように、板厚の倍数で表示した。この表示での曲げ性の目標は、限界曲げ半径が0.5t以下を満たすことである。なお、鋼板の「W/4位置」における限界曲げ半径が0.6mmを超えるために、換言すれば0.5tを超えるために、曲げ性の目標に達しないものについては、「W/4位置」における各試験の結果のみを表4〜表6に示した。
Figure 0004192857
Figure 0004192857
Figure 0004192857
表4〜表6から明らかなように、本発明で定める化学組成と組織を有する試験番号1〜5及び試験番号21〜32の冷延鋼板は、引張強度で980MPa以上の高強度と0.5t以下の限界曲げ半径を有し、強度と曲げ性とに優れている。
これに対して、本発明で定める化学組成を有していても、その組織が本発明で規定する条件から外れた試験番号6〜20の冷延鋼板は、引張強度や曲げ性が劣ったり、鋼板の幅方向で曲げ性がばらついている。
また、鋼の化学組成が本発明で定める条件から外れた試験番号33〜35の冷延鋼板も曲げ性に劣ることが明らかである。なお、鋼のC含有量が本発明で定める条件から高めに外れた試験番号33の冷延鋼板はスポット溶接性にも問題があり、また、鋼のSi含有量が本発明で定める条件から高めに外れた試験番号34の冷延鋼板は、化成処理性にも問題があった。
本発明の高強度冷延鋼板は、980MPa以上の引張強度を有し、しかも、コイルの幅方向及び長手方向に安定して均一かつ良好な曲げ性を備えるので、ドアインパクトビームなど自動車衝突時の安全を確保するための部品やシートレールなど乗員の安全に関わる部品の素材として利用することができる。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.1〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.20%及びN:0.020%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径の比が5.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
  2. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.4〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.20%及びN:0.020%以下に加えて、更に、Ti:0.01〜0.30%及びNb: 0.01〜0.30%のうちの1種又は2種を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径の比が5.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
  3. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.1〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.20%及びN:0.020%以下に加えて、更に、Cr:0.01〜0.50%及びMo:0.01〜0.50%のうちの1種又は2種を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径の比が5.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
  4. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.4〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.20%及びN:0.020%以下に加えて、更に、Ti:0.01〜0.30%及びNb: 0.01〜0.30%のうちの1種又は2種、並びにCr:0.01〜0.50%及びMo:0.01〜0.50%のうちの1種又は2種を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、面積割合で95%以上のベイナイトを含み、かつ旧オーステナイトの粒径が20μm以下で、しかも、鋼板の幅方向の任意の3点における旧オーステナイトの粒径のうちの最大粒径と最小粒径の比が5.0以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載の化学組成を有する高強度冷延鋼板の製造方法であって、下記(1)〜(3)の工程をこの順に備えることを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法。
    (1)熱間工程:鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃に加熱してから熱間圧延し、1030〜780℃で熱間圧延を完了した後、10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、700℃以下で巻き取る、
    (2)冷間圧延工程:30〜70%の圧下率で冷間圧延を施す、
    (3)連続焼鈍工程:720〜900℃の温度域で10秒以上保持した後、750〜650℃の温度域から450〜200℃の温度域まで20〜100℃/秒の平均冷却速度で水冷却し、その後450〜200℃の温度域に60〜400秒保持する。
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