JP2006260902A - 誘電体形成シート及び誘電体層形成基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ガラス基板上の電極脇に大気泡を生じさせることのない誘電体層を形成するための誘電体形成シートを提供することを目的とする。また、転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、誘電体層形成基板、及びプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【解決手段】 無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層の片面に粘弾性層が積層されている誘電体形成シート。
【選択図】 なし

Description

本発明は、誘電体形成シート、転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、誘電体層形成基板、及びプラズマディスプレイパネルに関する。
近年、薄型平板状の大型ディスプレイとしては、液晶ディスプレイと共にプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう)が注目されている。PDPの一部分は、ガラス基板の表面上にガラス焼結体からなる誘電体層が形成された構造をしている。
誘電体層の形成方法としては、無機粉体、樹脂および溶剤を含有するペースト状組成物を調製し、このペースト状組成物をスクリーン印刷法によってガラス基板の表面に塗布して乾燥することにより膜形成材料層を形成し、次いでこの膜形成材料層を焼成することにより有機物質を除去し、無機粉体を焼結させて形成する方法が知られている。
近年、生産性向上などの目的で、無機粉体、樹脂及び溶剤を含有するペースト状組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成し、支持フィルム上に形成された膜形成材料層(グリーンシート)を、電極が固定されたガラス基板の表面に転写し、転写された膜形成材料層を焼成することにより、ガラス基板の表面に誘電体層を形成する方法が開示されている(特許文献1〜5)。
しかし、上記方法により電極が固定されたガラス基板の表面に誘電体層を形成すると、電極脇に大気泡が生じやすいという問題があった。電極脇に大気泡が存在すると、画素抜けやにじみや輝度ムラなどの重大な画面欠点となり、PDPの歩留まりに大きく影響する。
特開平9−102273号公報 特開平11−35780号公報 特開2001−185024号公報 国際公開第00/42622号パンフレット 特開2002−249667号公報
本発明は、このような従来技術の課題を解決したものであって、ガラス基板上の電極脇に大気泡を生じさせることのない誘電体層を形成するための誘電体形成シートを提供することを目的とする。また、転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、誘電体層形成基板、及びプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す誘電体形成シートにより上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層の片面に粘弾性層が積層されている誘電体形成シート、に関する。
本発明者らは、膜形成材料層中の無機粉体と有機成分との体積比率を最適化し、さらに膜形成材料層の片面に粘弾性層を設けた誘電体形成シートを用いることにより、ガラス基板上の電極脇に大気泡を生じさせることのない誘電体層を形成することができることを見出した。従来の膜形成材料層は、転写性や無機粉体の分散性等を十分確保するためにバインダ成分や可塑剤や分散剤等の有機成分を大量に含有していた。このような有機成分を大量に含有する膜形成材料層を焼成すると残存するカーボンの影響により電極脇に大気泡が発生すると考えられる。本発明は、膜形成材料層中の無機粉体と有機成分との体積比率を最適化し、有機成分の含有量低下による転写性の悪化を粘弾性層によって防止したことに特徴がある。
前記無機粉体は鉛成分を含有しない無鉛ガラス成分、或いは鉛成分の含有率の小さい低鉛ガラス成分であることが好ましい。なぜなら、鉛成分はガラスを低融点化させるうえで重要な成分であるが、鉛成分は人体や環境に与える弊害が大きいためである。
本発明の転写シートは、前記誘電体形成シートの膜形成材料層の他面側に支持フィルムを有するものであり、支持フィルム上に形成された誘電体形成シート(粘弾性層+膜形成材料層)をガラス基板表面に一括転写するために用いられるものである。前記支持フィルムは、少なくとも膜形成材料層と接触する側の面上に粘着処理が施されていることが好ましい。
また前記転写シートは、粘弾性層上に保護フィルムが設けられていることが好ましい。保護フィルムを設けることにより、誘電体形成シートをガラス基板上に転写するまでの間、粘弾性層の表面に異物が付着することを防止することができる。また、保護フィルムでカバーされた転写シートは、ロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。
また本発明は、無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層の片面に粘弾性層が積層されている誘電体形成シートを、該粘弾性層と電極とが接触するように電極を有するガラス基板上に転写する転写工程、及び転写された誘電体形成シートを焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む誘電体層形成基板の製造方法、に関する。
また本発明は、電極を有するガラス基板上に粘弾性層を転写し、該粘弾性層上に無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層を転写する転写工程、及び転写された粘弾性層及び膜形成材料層を焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む誘電体層形成基板の製造方法、に関する。
また本発明は、電極を有するガラス基板上に粘弾性樹脂組成物を塗布し、乾燥して粘弾性層を形成する工程、該粘弾性層上に無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層を転写する転写工程、及び粘弾性層と膜形成材料層とを焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む誘電体層形成基板の製造方法、に関する。
前記方法によって製造される誘電体層形成基板は、電極脇に大気泡が全くなく、表示特性に優れたものである。
さらに本発明は、前記誘電体層形成基板を用いたプラズマディスプレイパネル、に関する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の誘電体形成シートの膜形成材料層は、少なくとも無機粉体及び有機成分を含有する。
無機粉体は公知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、酸化鉛、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化亜鉛、ガラス粉末などが挙げられる。無機粉体の平均粒子径は、溶融性の観点から0.1〜10μmであることが好ましい。
本発明においては、無機粉体としてガラス粉末を用いることが好ましい。ガラス粉末としては公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、1)酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(ZnO−B−SiO系)の混合物、2)酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(ZnO−B−SiO−Al系)の混合物、3)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化カルシウム(PbO−B−SiO−CaO系)の混合物、4)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(PbO−B−SiO−Al系)の混合物、5)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−ZnO−B−SiO系)の混合物、6)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(PbO−ZnO−B−SiO−Al系)の混合物などを挙げることができる。また、必要に応じてこれらにNaO、CaO、BaO、Bi、SrO、TiO、CuO、又はInなどを添加したものであってもよい。ガラス粉末は鉛成分を含有しない無鉛ガラスか又は低鉛ガラスであることが好ましい。低鉛ガラス粉末としては、前記無鉛ガラス成分に少量の鉛成分を含んだもの、或いは従来の鉛成分を含んだガラスから鉛成分の含有量を低減させたものなどがある。焼成処理により誘電体層を形成することを考慮すると、軟化点が430℃以上のガラス粉末を用いることが好ましい。
有機成分としては、少なくともバインダ樹脂を用いる。バインダ樹脂は、前記無機粉体をシート状にするために添加されるものであり、公知のものを特に制限なく用いることができるが、無機粉体の分散性がよく、膜形成材料層の凝集性を向上させることができ、焼成工程において熱分解により完全に除去されるものが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルキルエーテル系樹脂、ポリ酢酸ビニル誘導体系樹脂などが挙げられる。
前記(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマー又はメタクリル系モノマーの1種モノマーの重合体、前記モノマーの共重合体、又はそれらの混合物である。前記モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレ−ト、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、水酸基やカルボキシル基などの極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いてもよい。該極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、イミノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ただし、ポリマー中に水酸基やカルボキシル基などの極性基を導入した場合、無機粉体の分散性が悪くなったり、無機粉体表面との相互作用により焼成処理の際に分解除去されにくくなり、誘電体層の光学特性(透過率など)が低下する。そのため、極性基含有モノマーの導入はできるだけ少ないことが好ましく、具体的には全モノマーに対して15重量%以下であることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、用いるモノマーや共重合組成比等によって適宜調整することができる。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は5〜50万であることが好ましく、さらに好ましくは7〜35万である。重量平均分子量が5万未満の場合には凝集力に乏しい強度の低い膜形成材料層となる傾向にあり、一方、重量平均分子量が50万を超える場合には粘度が高くなりすぎて無機粉体の分散性が低下し、無機粉体及びバインダ樹脂を含有する無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布する際に塗布ムラや凹凸等が生じやすくなる傾向にある。
セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース及び酪酸セルロールなどのセルロースエステル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラールなど、ポリビニルアルキルエーテル系樹脂としてはポリビニルメチルエーテルなど、ポリ酢酸ビニル誘導体系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールなどが挙げられる。
バインダ樹脂は、焼成により透明な誘電体層を形成するために熱分解して完全に消失させる必要がある。そのため、バインダ樹脂の熱分解性は焼成後の誘電体層の特性に影響を及ぼす傾向にある。本発明において、バインダ樹脂の熱分解性の程度は特に制限されるものではないが、400℃での重量減少率が30%〜100%であるバインダ樹脂を用いることが好ましい。重量減少率は樹脂を構成するモノマー組成によって異なるが、(メタ)アクリル系樹脂の400℃での重量減少率は40%〜100%程度、エチルセルロースは93%程度、ポリビニルブチラールは40%程度、ポリ酢酸ビニルは33%程度、ポリビニルアルコールは40%程度である。
無機粉体及びバインダ樹脂等の有機成分を含有する無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成する場合には、支持フィルム上に均一に塗布できるように該組成物中に溶剤を加えることが好ましい。
溶剤としては、無機粉体との親和性がよく、かつバインダ樹脂との溶解性がよいものであれば特に制限されるものではない。例えば、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、テレビン油、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロへキサノン、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロへキサノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、任意の割合で2種類以上を併用してもよい。
溶剤の添加量は特に制限されないが、無機粉体100重量部に対して、10〜50重量部であることが好ましい。
また、有機成分として可塑剤を添加してもよい。可塑剤を添加することにより、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して形成した膜形成材料層の柔軟性や誘電体形成シートのガラス基板上への転写性などを調整することができる。
可塑剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、ジイソノニルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジベート、ジブチルジグリコールアジペ−トなどのアジピン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのセバシン酸誘導体、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテートなどのピロメリット酸誘導体、プロピレングリコールモノオレートなどのオレイン酸誘導体、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのグリコール系可塑剤などがあげられる。
可塑剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは5重量部以下である。可塑剤の添加量が10重量部を超えると、得られる膜形成材料層の凝集力(強度)が低下したり、焼成時にカーボンが残存しやすくなるため好ましくない。
前記有機成分として、上記の成分の他、分散剤、シランカップリング剤、粘着性付与剤、レベリング剤、安定剤、消泡剤などの各種添加剤を添加してもよい。
本発明の膜形成材料層は、前記無機粉体と前記有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6であることが必要であり、好ましくは0.07〜0.55、特に好ましくは0.07〜0.5である。有機成分の体積比率が0.05未満の場合には、膜形成材料層をシート状に形成することが困難になる。また、たとえシート状に形成できたとしても、膜形成材料層に可とう性を十分付与できず、無機粉体の分散性も悪くなるため、ガラス基板上に膜形成材料層を均一に転写できなくなる。一方、有機成分の体積比率が0.6を超える場合には、膜形成材料層を焼成した際に電極脇に大気泡が発生しやすくなる。
無機粉体と有機成分との体積比率の算出は以下の方法で行う。
有機成分の体積比率を算出するためには用いる材料の比重が必要となる。無機粉体の比重は、無機粉体を入手した際のカタログデータや試験成績表などに一般的に記載されているものを用いても良いし、無機粉体を溶融させてガラスの固形物を作製し、その体積と質量を一般的な方法で計測することにより算出しても良い。有機成分の比重についても、入手した際のカタログデータや試験成績表などに一般的に記載されているものを用いても良いし、その体積と質量を一般的な方法で計測することにより算出しても良い。
用いる材料の重量部数は比重の値により体積部数に変換することができる。例えば、無機粉体100重量部で比重が5であれば20体積部となり、比重が2であれば50体積部となる。バインダ樹脂、可塑剤又は分散剤等の有機成分についても同様であり、有機成分の含有量が10重量部で比重が1であれば10体積部となる。このように比重を利用して体積部数を算出する。得られた無機粉体の体積部数に対する有機成分の体積部数の割合を体積比率とする。具体的には、無機粉体100重量部(比重5)に対して有機成分20重量部(比重1)であれば、無機粉体20体積部に対して有機成分20体積部となり、体積比率は、有機成分/無機粉体=20/20=1となる。
粘弾性層は、誘電体形成シートに柔軟性を付与して、誘電体形成シートの転写性を向上させる機能と、膜形成材料層をガラス基板上に保持させる機能とを有する層である。
粘弾性層を形成するための粘弾性樹脂組成物は特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の各種粘着剤(感圧性接着剤)や、常温では粘着性を示さないが加熱により粘着性を示す感熱性接着剤を使用することができる。
アクリル系粘着剤はアクリル系ポリマーをベースポリマーとしており、該アクリル系ポリマーに使用されるモノマーとしては、各種(メタ)アクリル酸アルキルを使用できる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、イソノニルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステル、ラウリルエステル、トリデシルエステル、ペンタデシルエステル、ヘキサデシルエステル、ヘプタデシルエステル、オクタデシルエステル、ノナデシルエステル、エイコシルエステル等の炭素数1〜20アルキルエステル)を例示でき、これらを単独もしくは組合せて使用できる。
また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有単量体;N−メチロールアクリルアミド等のアミド基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体などを共重合モノマーとして用いることができる。なお、アクリル系ポリマーの重合法は特に制限されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、UV重合などの公知の重合法を採用できる。
ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレン−イソプレン−スチレン系ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム等があげられる。
シリコーン系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等があげられる。
感熱性接着剤のベースポリマーとしては、たとえば、セルロース樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。
前記粘着剤には、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。さらに前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を適宜に使用することもできる。
焼成時にガラス基板と粘弾性層との密着性を向上させるために、粘着剤に前記ガラス粉末を添加してもよい。ガラス粉末の添加量は、ベースポリマー100重量部に対して1〜280重量部程度であり、好ましくは2〜250重量部である。
粘弾性層は、膜形成材料層と同時に焼成され、熱分解により完全に消失させる必要がある。そのため、粘弾性樹脂組成物の熱分解性は焼成後の誘電体層の特性に影響を及ぼす傾向にある。本発明において、粘弾性樹脂組成物の熱分解性の程度は特に制限されるものではないが、400℃での重量減少率が40%〜99%であることが好ましい。
本発明の誘電体形成シート及び転写シートの製造方法は特に制限されないが、例えば、まず無機粉体、バインダ樹脂等の有機成分及び溶剤を含有する無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、溶剤を乾燥除去して膜形成材料層を形成する。その後、膜形成材料層上に直接、粘着剤(接着剤)を塗布し、乾燥して粘弾性層を形成することにより転写シートを製造することができる(直写法)。また、剥離ライナに粘着剤(接着剤)を塗布し、乾燥して形成した粘弾性層を膜形成材料層に転写して積層してもよい(転写法)。また、保護フィルムに粘着剤(接着剤)を塗布し、乾燥して形成した粘弾性層を膜形成材料層に貼り合せてもよい。
転写シートを構成する支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可とう性を有することにより、ロールコーターなどによってペースト状の無機粉体含有樹脂組成物を塗布することができ、膜形成材料層をロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。
支持フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
支持フィルムの厚さは特に制限されないが、25〜100μm程度であることが好ましい。
支持フィルムは、少なくとも膜形成材料層と接触する側の面上に粘着処理が施されていることが好ましい。本発明の膜形成材料層はバインダ樹脂等の有機成分の含有量が少ないため、支持フィルムと膜形成材料層との密着性が不足しやすい傾向にある。そのため、転写シートの切断時に支持フィルムが局部的に剥がれたり、膜形成材料層の端部が欠けて破片が飛散する場合がある。支持フィルムの膜形成材料層と接触する側の面上に粘着処理を施すことにより、支持フィルムの剥がれや膜形成材料層の破片の飛散を防止することができる。
粘着処理に用いられる粘着剤としては、粘弾性層を形成するための粘弾性樹脂組成物と同様の材料、例えば、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤等の各種粘着剤(感圧性接着剤)を使用することができる。ただし、転写するために用いられる支持フィルムの機能として、膜形成材料層から容易に剥離可能であることが求められることから、弱粘着性の粘着剤を用いることが好ましい。
また、支持フィルムと膜形成材料層との密着性が十分な場合には、支持フィルムの表面に剥離処理が施されていることが好ましい。それにより、膜形成材料層をガラス基板上に転写する工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。支持フィルムと膜形成材料層との密着性は、膜形成材料層中のバインダ樹脂の含有量とバインダ樹脂の物性により適宜調整される。
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロールコーター、スロット、ファンテンなどのダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーターなどの塗布方法を採用することができるが、支持フィルム上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
塗布された無機粉体含有樹脂組成物の乾燥条件としては、例えば、100〜150℃で3〜10分間程度である。
膜形成材料層の厚さ(乾燥膜厚)は、無機粉体の含有率、パネルの種類やサイズなどによっても異なるが、10〜200μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜100μmである。この厚さが10μm未満である場合には、最終的に形成される誘電体層の膜厚が不十分となり、所望の誘電特性を確保することができない傾向にある。通常、この厚さが20〜100μmであれば、大型のパネルに要求される誘電体層の膜厚を十分に確保することができる。
また、膜形成材料層の膜厚のばらつきは、誘電体層の厚さのばらつき、及び誘電特性のばらつきの原因となり、PDPにおける表示欠陥(輝度ムラ)を生じる。高鮮明な表示画像を得るためには、焼成後の誘電体層の膜厚公差が±5%以内であることが必要である。
粘弾性層の形成材料である粘着剤(接着剤)を膜形成材料層、剥離ライナ又は保護フィルム上に塗布する方法としては、前記塗布方法を採用することができるが、均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
粘弾性層の厚さ(乾燥膜厚)は、膜形成材料層を電極を有するガラス基板上に転写するために必要とされる誘電体形成シートの柔軟性、粘着力等に応じて適宜決定されるが、0.5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは1〜30μmである。粘弾性層の厚さが0.5μm未満の場合には、粘着力が十分でないため、誘電体形成シートをガラス基板に貼り合わせた際に剥がれや浮きが発生する傾向にある。また、誘電体形成シートの可とう性が不十分となり、誘電体形成シートの転写性が低下する。そのため、電極を有するガラス基板上に膜形成材料層を均一に形成することが困難になる傾向にある。一方、粘弾性層の厚さが50μmを超える場合には、焼成後にガラス基板上に有機成分が残存し、誘電体層形成基板の品質が低下する傾向にある。また、粘弾性層の強度が低くなるため、誘電体形成シートをガラス基板に貼り合わせる際に貼り合わせ位置がずれやすくなる傾向にある。
粘弾性層の表面には保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。保護フィルムでカバーされた転写シートは、ロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。なお、保護フィルムの表面は離型処理が施されていることが好ましい。保護フィルムの厚さは特に制限されないが、25〜100μm程度であることが好ましい。
本発明の誘電体層形成基板の製造方法は、前記転写シートの誘電体形成シートを、粘弾性層と電極とが接触するように電極を有するガラス基板上に転写する転写工程、及び転写された誘電体形成シートを焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む。
本発明の他の誘電体層形成基板の製造方法は、電極を有するガラス基板上に粘弾性層を転写し、該粘弾性層上に無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層を転写する転写工程、及び転写された粘弾性層及び膜形成材料層を焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む。
また本発明の他の誘電体層形成基板の製造方法は、電極を有するガラス基板上に粘弾性樹脂組成物を塗布し、乾燥して粘弾性層を形成する工程、該粘弾性層上に無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層を転写する転写工程、及び粘弾性層と膜形成材料層とを焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む。
前記ガラス基板としては、適切な電極が固定された前面又は背面ガラス基板が用いられる。
転写工程の具体例を以下に示すが、ガラス基板表面に誘電体形成シートが転写されて密着した状態にできれば、その方法は特に制限されるものではない。具体的には、転写シートの保護フィルムを剥離した後、電極が固定されたガラス基板の表面に、粘弾性層の表面を当接するように転写シートを重ね合わせ、この転写シートを加熱ロール式のラミネーターなどにより熱圧着した後、誘電体形成シートから支持フィルムを剥離除去する。これにより、ガラス基板表面に粘弾性層と膜形成材料層とが転写されて密着した状態となる。また、上記と同様の方法で、粘弾性層又は膜形成材料層を有する転写シートを用いて粘弾性層と膜形成材料層とをガラス基板表面等に1層ずつ転写してもよい。粘弾性層を有するガラス基板を用いることにより、バインダ成分等の有機成分の含有量が少ない膜形成材料層であっても容易かつ精度よく転写することが可能になる。
転写条件としては、例えば、ラミネーターの表面温度25〜100℃、ロール線圧0.5〜15kg/cm、移動速度0.1〜5m/分であるが、これら条件に限定されるものではない。また、ガラス基板は予熱されていてもよく、予熱温度は50〜100℃程度である。
また、転写法の代わりに、電極を有するガラス基板上に粘弾性樹脂組成物を塗布し、乾燥して粘弾性層を形成してもよい。粘弾性樹脂組成物をガラス基板上に塗布する方法としては、前記塗布方法を採用することができるが、均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
誘電体形成シート(粘弾性層+膜形成材料層)の焼成工程の一例を以下に示すが、誘電体形成シート中の無機粉体を焼結させ、ガラス基板上に誘電体層を形成できればその方法は特に制限されるものではない。具体的には、誘電体形成シートが積層されたガラス基板を、550〜650℃、好ましくは570〜630℃の高温雰囲気下に配置することにより、膜形成材料層中の有機成分(バインダ樹脂、各種の添加剤など)及び粘弾性層が分解除去され、無機粉体(ガラス粉末)が軟化、溶融して焼結する。焼成時間は特に制限されないが、前記高温雰囲気下において15〜90分であることが好ましい。15分未満の場合には、膜形成材料層中の無機粉体が十分に溶融しない恐れがあり、90分を超える場合には、無機粉体中の金属成分が蒸発したり、結晶化する恐れがあるため好ましくない。上記焼成工程により、電極を有するガラス基板上には、無機焼結体(ガラス焼結体)からなる誘電体層が形成され、誘電体層形成基板が製造される。
誘電体層の厚さは、使用する膜形成材料層の厚さよって異なるが、15〜50μm程度である。
本発明の誘電体層形成基板は、ガラス基板上の電極脇に大気泡が存在しないため表示特性に優れており、特にPDPの前面ガラス基板の製造に好適に用いられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(重量平均分子量の測定)
ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
GPC装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:東ソー社製、TSKgel Super HZM−H、H−RC、HZ−H
流量:0.6ml/min
濃度:0.2wt%
注入量:20μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF
(バインダ樹脂の重量減少率の測定)
重量減少率(%)の測定は、TG−DTA測定装置(SSIテクノロジー社製、TG/DTA220)を用い、常温から400℃まで10℃/分の条件で昇温し、400℃での重量値を測定して算出した。
実施例1
〔膜形成材料層の作成〕
−SiO−アルカリ金属酸化物−アルカリ土類金属酸化物系の無鉛ガラス成分(ガラスフリット、転移点:480℃、軟化点:600℃、比重:2.6)100重量部、及びエチルセルロース(比重:1.1、重量減少率:93%)8重量部を溶媒であるターピネオール(ヤスハラケミカル社製)35重量部中に加え、ディスパー(回転プロペラ式撹拌機)で予備分散した後、3本ロール分散機を用いて本分散を行い、均一に混合された無機粉体含有樹脂組成物を調製した。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに剥離処理を施した支持フィルム上に、調製した無機粉体含有樹脂組成物をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:30μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET)をカバーしてフィルム付き膜形成材料層を作成し、それをロール状に巻き取った。膜形成材料層における無機粉体と有機成分との体積比率は、有機成分/無機粉体=0.19であった。
〔アクリル系樹脂溶液Aの調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート/エチルアクリレート/メチルメタクリレート/ヒドロキシエチルアクリレート(重量比=28/64/4/4)、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド、及びトルエンを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のアクリル系樹脂溶液Aを調製した。得られたアクリル系樹脂Aの重量平均分子量は50万であった。
〔粘弾性層の作成〕
アクリル系樹脂溶液Aに架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)2.0重量部を添加してアクリル系粘着剤を調製した。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに剥離処理を施した剥離ライナ(保護フィルム)上に、調製したアクリル系粘着剤をロールコータを用いて塗布し、塗膜を80℃で3分間乾燥することにより溶剤を除去して粘弾性層(厚さ:5μm)を形成した。その後、粘弾性層上に保護フィルム(PET)をカバーしてフィルム付き粘弾性層を作成し、それをロール状に巻き取った。
〔転写シートの作製〕
前記フィルム付き膜形成材料層から保護フィルムを剥離した。また、前記フィルム付き粘弾性層から保護フィルムを剥離した。そして、剥離面の膜形成材料層と粘弾性層とを当接するように重ね合わせ、ロール式ラミネータを用いて圧着し、支持フィルム、膜形成材料層、粘弾性層及び保護フィルムからなる転写シートを作製した。
〔誘電体層形成基板の作製〕
前記転写シートの保護フィルムを剥離後、転写シートの粘弾性層表面をパネル用ガラス基板の表面(バス電極の固定面)に当接するように重ね合わせ、加熱ロール式ラミネータを用いて熱圧着した。圧着条件は、加熱ロールの表面温度80℃、ロール線圧1kg/cm、ロール移動速度1m/分であった。熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に粘弾性層及び膜形成材料層(誘電体形成シート)が転写されて密着した状態になっていた。粘弾性層及び膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、600℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層(厚さ:25μm)を形成し、誘電体層形成基板を作製した。
実施例2
〔アクリル系樹脂溶液Bの調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコにラウリルメタクリレート、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド、及び酢酸エチルを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のアクリル系樹脂溶液Bを調製した。得られたアクリル系樹脂Bの重量平均分子量は100万であった。
実施例1の粘弾性層の形成において、アクリル系樹脂溶液Aの代わりに、アクリル系樹脂溶液Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で粘弾性層(厚さ:4μm)を形成した。そして、該粘弾性層を用いた以外は実施例1と同様の方法で誘電体層形成基板を作製した。
実施例3
実施例1の膜形成材料層の形成において、エチルセルロース8重量部の代わりに、アクリル系樹脂A(比重:1.0、重量減少率:88%)4重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法で膜形成材料層(厚さ:28μm)を形成した。膜形成材料層における無機粉体と有機成分との体積比率は、有機成分/無機粉体=0.10であった。そして、該膜形成材料層を用いた以外は実施例1と同様の方法で誘電体層形成基板を作製した。誘電体層の厚さは25μmであった。
比較例1
〔アクリル系樹脂Cの合成〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコに2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)(重量比:2−EHMA/HPMA=90/10)、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド、及びトルエンを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を75℃付近に保って約8時間重合反応を行い、アクリル系樹脂C(重量平均分子量12万、比重:1.0、重量減少率:99%)を合成した。
〔転写シートの作製〕
−SiO−アルカリ金属酸化物−アルカリ土類金属酸化物系の無鉛ガラス成分(ガラスフリット、転移点:480℃、軟化点:600℃、比重:2.6)100重量部、及びアクリル系樹脂C35重量部、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチルエステル(比重:0.97)を5重量部、溶媒としてα−ターピネオール(ヤスハラケミカル社製)35重量部を混合し、ディスパー(回転プロペラ式撹拌機)で予備分散した後、3本ロール分散機を用いて本分散を行い、均一に混合された無機粉体含有樹脂組成物を調製した。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに剥離処理を施した支持フィルム上に、調製した無機粉体含有樹脂組成物をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:51μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET)をカバーして転写シートを作製した。膜形成材料層における無機粉体と有機成分との体積比率は、有機成分/無機粉体=1.04であった。
〔誘電体層形成基板の作製〕
前記転写シートの保護フィルムを剥離後、転写シートの膜形成材料層表面をパネル用ガラス基板の表面(バス電極の固定面)に当接するように重ね合わせ、加熱ロール式ラミネータを用いて熱圧着した。圧着条件は、加熱ロールの表面温度80℃、ロール線圧1kg/cm、ロール移動速度1m/分であった。熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去してガラス基板上に膜形成材料層を転写した。膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、600℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層(厚さ:25μm)を形成し、誘電体層形成基板を作製した。
比較例2
〔転写シートの作製〕
PbO−B−SiO系の鉛含有ガラス成分(ガラスフリット、転移点:410℃、軟化点:480℃、比重:5.1)100重量部、及びアクリル系樹脂C8重量部、可塑剤としてプロピレングリコールモノオレエート(比重:0.87)を4重量部、溶媒としてα−ターピネオール(ヤスハラケミカル社製)35重量部を混合し、ディスパー(回転プロペラ式撹拌機)で予備分散した後、3本ロール分散機を用いて本分散を行い、均一に混合された無機粉体含有樹脂組成物を調製した。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに剥離処理を施した支持フィルム上に、調製した無機粉体含有樹脂組成物をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:40μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET)をカバーして転写シートを作製した。膜形成材料層における無機粉体と有機成分との体積比率は、有機成分/無機粉体=0.64であった。
〔誘電体層形成基板の作製〕
前記転写シートの保護フィルムを剥離後、比較例1と同一条件で膜形成材料層をガラス基板に熱圧着したが、膜形成材料層の転写性が不十分であり、ガラス基板上の電極脇に気泡を噛んでいた。
比較例3
〔転写シートの作製〕
−SiO−アルカリ金属酸化物−アルカリ土類金属酸化物系の無鉛ガラス成分(ガラスフリット、転移点:480℃、軟化点:600℃、比重:2.6)100重量部、及びアクリル系樹脂C17重量部、可塑剤としてプロピレングリコールモノオレエート(比重:0.87)を4重量部、溶媒としてα−ターピネオール(ヤスハラケミカル社製)70重量部を混合し、ディスパー(回転プロペラ式撹拌機)で予備分散した後、3本ロール分散機を用いて本分散を行い、均一に混合された無機粉体含有樹脂組成物を調製した。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに剥離処理を施した支持フィルム上に、調製した無機粉体含有樹脂組成物をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:39μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET)をカバーして転写シートを作製した。膜形成材料層における無機粉体と有機成分との体積比率は、有機成分/無機粉体=0.56であった。
〔誘電体層形成基板の作製〕
前記転写シートの保護フィルムを剥離後、比較例1と同一条件で膜形成材料層をガラス基板に熱圧着したが、膜形成材料層の密着性が不十分であり、ガラス基板から膜形成材料層が容易に剥離して転写することができなかった。
<電極脇の大気泡の評価>
実施例及び比較例で作製した誘電体層形成基板を用いて、電極部分の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、島津製作所社製、加速電圧:1.5kV)により観察し、電極脇に10μm以上の大気泡を少なくとも1つ有する電極の数を数え、全電極に対する割合(%)を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2006260902
実施例4
〔アクリル系樹脂溶液Dの調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルアクリレート(重量比=95/5)、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド、及びトルエンを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のアクリル系樹脂溶液Dを調製した。得られたアクリル系樹脂Dの重量平均分子量は50万であった。
〔支持フィルムの作製〕
アクリル系樹脂D100重量部に対して架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)4重量部をアクリル系樹脂溶液Dに添加してアクリル系粘着剤を調製した。該粘着剤を支持フィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布し、塗膜を100℃で3分間乾燥して粘着剤層(厚さ20μm)を有する支持フィルムを作製した。
〔転写シートの作製〕
実施例1において、剥離処理を施した支持フィルムの代わりに前記粘着処理を施した支持フィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法で転写シートを作製した。
<転写シートの切断面の評価>
実施例1及び実施例4で得られた転写シートを支持フィルム上からNTカッターを用いて切断した。切断端面を目視で観察し、支持フィルムと膜形成材料層との密着性を評価した。その結果、実施例4の転写シートの切断端部では支持フィルムの剥がれが全くなかったのに対して、実施例1の転写シートの切断端部では支持フィルムの剥がれが僅かに見られた。

Claims (11)

  1. 無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層の片面に粘弾性層が積層されている誘電体形成シート。
  2. 前記無機粉体は、鉛成分を含有しない無鉛ガラス成分である請求項1記載の誘電体形成シート。
  3. 前記無機粉体は、鉛成分の含有率が小さい低鉛ガラス成分である請求項1記載の誘電体形成シート。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体形成シートの膜形成材料層の他面側に支持フィルムを有する転写シート。
  5. 前記支持フィルムは、少なくとも膜形成材料層と接触する側の面上に粘着処理が施されている請求項4記載の転写シート。
  6. 粘弾性層上に保護フィルムが設けられている請求項4又は5記載の転写シート。
  7. 無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層の片面に粘弾性層が積層されている誘電体形成シートを、該粘弾性層と電極とが接触するように電極を有するガラス基板上に転写する転写工程、及び転写された誘電体形成シートを焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む誘電体層形成基板の製造方法。
  8. 電極を有するガラス基板上に粘弾性層を転写し、該粘弾性層上に無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層を転写する転写工程、及び転写された粘弾性層及び膜形成材料層を焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む誘電体層形成基板の製造方法。
  9. 電極を有するガラス基板上に粘弾性樹脂組成物を塗布し、乾燥して粘弾性層を形成する工程、該粘弾性層上に無機粉体と有機成分との体積比率が、有機成分/無機粉体=0.05〜0.6である膜形成材料層を転写する転写工程、及び粘弾性層と膜形成材料層とを焼成し、電極を有するガラス基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む誘電体層形成基板の製造方法。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載の方法によって製造される誘電体層形成基板。
  11. 請求項10記載の誘電体層形成基板を用いたプラズマディスプレイパネル。
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