JP2005088297A - ロール状転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 折れやシワのないロール状転写シートを提供すること。また、該ロール状転写シートを用いた誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板を提供すること。
【解決手段】 支持フィルム、膜形成材料層、及び保護フィルムがこの順で積層されている転写シートを多重に巻いたロール状転写シートにおいて、内側に巻かれるフィルム(保護フィルム又は支持フィルム)の厚さが、外側のフィルム(支持フィルム又は保護フィルム)の厚さと同じ又はより大きいことを特徴とするロール状転写シート。
【選択図】 図1
【解決手段】 支持フィルム、膜形成材料層、及び保護フィルムがこの順で積層されている転写シートを多重に巻いたロール状転写シートにおいて、内側に巻かれるフィルム(保護フィルム又は支持フィルム)の厚さが、外側のフィルム(支持フィルム又は保護フィルム)の厚さと同じ又はより大きいことを特徴とするロール状転写シート。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ロール状転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板に関する。特に、本発明のロール状転写シートの膜形成材料層はプラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成材料として有用である。
近年、薄型平板状の大型ディスプレイとしては、液晶ディスプレイと共にプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という)が注目されている。PDPの一部分は、ガラス基板の表面上にガラス焼結体からなる誘電体層が形成された構造をしている。この誘電体層の形成方法としては、ガラス粉末、アクリル酸エステル系樹脂及び溶剤を含有するペースト状組成物をスクリーン印刷法等によってガラス基板の表面に直接塗布して乾燥することにより膜形成材料層を形成し、次いでこの膜形成材料層を焼成することにより有機物質を除去して誘電体層を形成していた。
近年、生産性の向上等を目的として、ペースト状組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成し、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を、電極が固定されたガラス基板の表面に転写し、転写された膜形成材料層を焼成することにより、前記ガラス基板の表面に誘電体層を形成する方法が提案されている(特許文献1〜4)。
特開平9−102273号公報
特開平11−35780号公報
特開2001−185024号公報
国際公開第00/42622号パンフレット
通常、上記のような支持フィルム上に膜形成材料層を形成した転写シートは、さらに膜形成材料層上に保護フィルムを積層し、それを巻き芯に多重に巻いてロール状にして保存されている。
しかし、従来のように転写シートを巻き芯に巻き取ると、特にロールの中心部分で折れやシワが発生して転写シートの外観を損ねたり、膜形成材料層が変形することにより誘電体層の性能に悪影響を与える等の問題を有していた。
本発明は、このような従来技術の課題を解決したものであって、折れやシワのないロール状転写シートを提供することを目的とする。また、該ロール状転写シートを用いた誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示すロール状転写シートにより上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、支持フィルム、膜形成材料層、及び保護フィルムがこの順で積層されている転写シートを多重に巻いたロール状転写シートにおいて、内側に巻かれるフィルム(保護フィルム又は支持フィルム)の厚さが、外側のフィルム(支持フィルム又は保護フィルム)の厚さと同じ又はより大きいことを特徴とするロール状転写シート、に関する。
本発明のロール状転写シートは、折れやシワがないため外観性に優れ、また膜形成材料層が変形することもないので誘電体層の性能に悪影響を与えることもない。このような効果が発現する理由は明らかではないが、転写シートを巻き取ると特に中心部分に大きな応力がかかりそれにより折れやシワが発生すると考えられる。そして、内側に巻かれるフィルムの厚さを外側のフィルムの厚さと同じ又はそれより大きくすることにより、応力がかかっても内側のフィルムが厚いのでシワが入る等の変形が起きにくいと考えられる。
本発明においては、内側に巻かれるフィルムの厚さが、外側のフィルムの厚さの1〜2倍であることが好ましく、さらに好ましくは1〜1.5倍である。内側に巻かれるフィルムの厚さが、外側のフィルムの厚さより薄い場合には膜形成材料層が変形し、誘電体層の性能に悪影響を与える傾向にある。
本発明においては、前記ロール状転写シートの膜形成材料層が、無機粉体及びバインダ樹脂として重量平均分子量5〜50万、且つ、ガラス転移温度−70〜30℃の(メタ)アクリル系樹脂を含有する無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなるものであることが好ましい。また、前記無機粉体がガラス粉末であることが好ましい。前記膜形成材料層は、誘電体層の形成材料として好適に用いられる。
また、本発明は、前記ロール状転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法、及び前記方法によって製造される誘電体層形成基板、に関する。
以下、本発明について詳細に説明する。図1に示すように、本発明のロール状転写シート1は、外側フィルム(支持フィルム又は保護フィルム)2、膜形成材料層3、内側フィルム(保護フィルム又は支持フィルム)4がこの順で積層されている転写シートを多重に巻いてテープ状にしたものである。使用時の利便性から数十又は数百メートル程度の転写シートの長尺を円形の巻き芯5に巻きつけたものが好ましい。内側に巻かれるフィルムは、保護フィルムであってもよく支持フィルムであってもよい。
本発明のロール状転写シートの膜形成材料層3は、無機粉体及びバインダ樹脂を含有する無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなるものであることが好ましい。
無機粉体は、公知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化亜鉛、ガラス粉末などが挙げられる。無機粉体の平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましい。
本発明においては、無機粉体としてガラス粉末を用いることが好ましい。ガラス粉末としては公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、1)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、2)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−ZnO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、3)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(PbO−B2 O3 −SiO2 −Al2 O3 系)の混合物、4)酸化鉛、酸化バリウム、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−BaO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、5)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化バリウム、酸化珪素(PbO−ZnO−B2 O3 −BaO−SiO2 系)の混合物などを挙げることができる。焼結処理により誘電体層を形成することを考慮すると、軟化点が400〜650℃であるガラス粉末が好ましい。
バインダ樹脂は特に制限されず公知の樹脂を用いることができるが、重量平均分子量5〜50万、且つ、ガラス転移温度−70〜30℃の(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。
前記(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマー又はメタクリル系モノマーの1種モノマーの重合体、前記モノマーの共重合体、又はそれらの混合物である。前記モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレ−ト、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、水酸基やカルボキシル基などの極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いてもよい。該極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、イミノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ただし、樹脂中に水酸基やカルボキシル基などの極性基を導入した場合、無機粉体表面との相互作用により焼結処理の際に分解除去されにくくなり、誘電体層の光学特性(透過率など)が低下する傾向にある。そのため、極性基含有モノマーの導入はできるだけ少ないことが好ましく、具体的には全モノマーに対して5重量%以下であることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量とガラス転移温度は、用いるモノマーや共重合組成比等によって前記目的とする範囲に調整することができる。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は5〜40万であることがさらに好ましく、ガラス転移温度は−30〜30℃であることがさらに好ましい。重量平均分子量が5万未満の場合には凝集力に乏しい強度の低い膜形成材料層となる傾向にあり、一方、重量平均分子量が50万を超える場合には粘度が高くなりすぎて無機粉体の分散性が低下する傾向にある。また、ガラス転移温度が−70℃より低い場合には凝集力に乏しい強度の低い膜形成材料層となる傾向にあり、一方、ガラス転移温度が30℃を超える場合には可とう性に劣る膜形成材料層となり、転写性やハンドリング性が低下する傾向にある。
バインダ樹脂は、無機粉体100重量部に対して5〜50重量部用いることが好ましく、さらに好ましくは10〜30重量部である。
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートを作製する場合には、支持フィルム上に均一に塗布できるように該組成物中に溶剤を加えることが好ましい。
溶剤としては、無機粉体との親和性がよく、且つ、バインダ樹脂との溶解性がよいものであれば特に制限されるものではない。例えば、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、テレビン油、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロへキサノン、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロへキサノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコ−ルモノメチルエーテル、エチレングリコ−ルモノエチルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコ−ルモノメチルエーテル、ジエチレングリコ−ルモノエチルエーテル、ジエチレングリコ−ルモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、任意の割合で2種類以上を併用してもよい。
溶剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、10〜50重量部であることが好ましい。
また、無機粉体含有樹脂組成物には、可塑剤を添加してもよい。可塑剤を添加することにより、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの柔軟性や膜形成材料層の基板への転写性などを調整することができる。
可塑剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、ジイソノニルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジベート、ジブチルジグリコールアジべ−トなどのアジピン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのセバシン酸誘導体、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテートなどのピロメリット酸誘導体、プロピレングリコールモノオレートなどのオレイン酸誘導体、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのグリコール系可塑剤などがあげられる。
可塑剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましい。可塑剤の添加量が20重量部を超えると、得られる膜形成材料層の強度が低下してしまうため好ましくない。
無機粉体含有樹脂組成物には、上記の成分の他、分散剤、シランカップリング剤、粘着性付与剤、レベリング剤、安定剤、消泡剤などの各種添加剤を添加してもよい。
本発明のロール状転写シートは、支持フィルムと、この支持フィルム上に形成された膜形成材料層と、保護フィルムとにより構成されており、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を基板表面に一括転写するために用いられるものである。
転写シートは、前記無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、溶剤を乾燥除去して膜形成材料層を形成することにより作製される。
支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可とう性を有することにより、ロールコーターなどによってペースト状の無機粉体含有樹脂組成物を塗布することができ、また膜形成材料層をロール状に巻き取るのに都合がよい。
支持フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
支持フィルムの厚さは特に制限されないが、5〜200μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは10〜100μmである。
なお、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、膜形成材料層を基板上に転写する工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロ−ルコ−タ−、スロット、ファンテンなどのダイコータ−、スクイズコータ−、カーテンコータ−などの塗布方法を採用することができるが、支持フィルム上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
塗布された無機粉体含有樹脂組成物の乾燥条件としては、例えば、100〜150℃で3〜10分間程度である。
膜形成材料層の厚さは、無機粉体の含有率、パネルの種類やサイズなどによっても異なるが、10〜200μmであることが好ましく、さらに好ましくは30〜100μmである。この厚さが10μm未満である場合には、最終的に形成される誘電体層の膜厚が不十分となり、所望の誘電特性を確保することができない傾向にある。通常、この厚さが30〜100μmであれば、大型のパネルに要求される誘電体層の膜厚を十分に確保することができる。また、膜厚は均一であるほど好ましく、膜厚公差は±5%以内であることが好ましい。
膜形成材料層の表面には保護フィルムが設けられる。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。保護フィルムでカバーされた転写シートは、ロール状に巻き取った状態で保存するのに都合がよい。
保護フィルムの厚さは特に制限されないが、5〜200μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは10〜100μmである。
ただし、保護フィルムを内側にして巻き取る場合には、保護フィルムの厚さは支持フィルムの厚さと同じ又はより大きくすることが必要であり、逆に保護フィルムを外側にして巻き取る場合には、保護フィルムの厚さは支持フィルムの厚さより小さくすることが必要である。
なお、転写シートをロール状に巻き取る際には、折れやシワの発生を防止するために転写シートに50〜150N程度の張力を加えることが好ましい。
本発明の誘電体層形成基板の製造方法は、前記ロール状転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする。 基板としては、セラミックや金属などの基板が挙げられ、特にPDPを作製する場合には、適切な電極が固定されたガラス基板が用いられる。
転写工程の一例を以下に示すが、基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態にできれば、その方法は特に制限されるものではない。
例えば、基板の形状に合わせてロール状転写シートを裁断して、所定形状の転写シートを得る。該転写シートの保護フィルムを剥離した後、電極が固定されたガラス基板の表面に、膜形成材料層表面を当接するように転写シートを重ね合わせ、この転写シートを加熱ロール式のラミネーターなどにより熱圧着した後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去する。これにより、ガラス基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態となる。
転写条件としては、例えば、ラミネーターの表面温度25〜100℃、ロール線圧0.5〜15kg/cm、移動速度0.1〜5m/分であるが、これら条件に限定されるものではない。また、ガラス基板は予熱されていてもよく、予熱温度は50〜100℃程度である。
本発明のロール状転写シートの膜形成材料層は、折れやシワによる変形等がなく平滑な表面を有するため、外観性に優れた誘電体層を形成することができる。
膜形成材料層の焼結工程の一例を以下に示すが、膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成できれば、その方法は特に制限されるものではない。
膜形成材料層が形成された前記ガラス基板を、400〜650℃の高温雰囲気下に配置することにより、膜形成材料層中の有機物質(バインダ樹脂、残存溶剤、各種の添加剤など)が分解除去され、無機粉体(ガラス粉末)が軟化して焼結する。これにより、ガラス基板上には、無機焼結体(ガラス焼結体)からなる誘電体層が形成され、誘電体層形成基板が製造される。
誘電体層の厚さは、使用する膜形成材料層の厚さよって異なるが、15〜50μm程度である。
本発明の誘電体層形成基板は、誘電体層に微細ボイドやクラックがなく、透過率などの光学特性に優れている。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(重量平均分子量の測定)
作製したポリマーをTHFに0.1wt%で溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量を測定した。詳しい測定条件は以下の通りである。
GPC装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM−H、H−RC、HZ−H
流量:0.6ml/min
濃度:0.2wt%
注入量:20μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF
(ガラス転移温度の測定)
作製したポリマーを厚さ1mmに成形し、φ8mmに打ち抜いたものを動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて、周波数1Hzにて損失弾性率G”の温度依存性を測定した。得られた損失弾性率G”のカーブにおけるピークトップの温度をガラス転移温度Tgとした。
作製したポリマーをTHFに0.1wt%で溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量を測定した。詳しい測定条件は以下の通りである。
GPC装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM−H、H−RC、HZ−H
流量:0.6ml/min
濃度:0.2wt%
注入量:20μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF
(ガラス転移温度の測定)
作製したポリマーを厚さ1mmに成形し、φ8mmに打ち抜いたものを動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて、周波数1Hzにて損失弾性率G”の温度依存性を測定した。得られた損失弾性率G”のカーブにおけるピークトップの温度をガラス転移温度Tgとした。
(転写シートの外観評価)
作成したロール状転写シートの端部から30m繰り出した部分の転写シートの外観を下記の基準で評価した。
○:折れやシワなどの欠陥が全くない。
×:折れやシワがある。
作成したロール状転写シートの端部から30m繰り出した部分の転写シートの外観を下記の基準で評価した。
○:折れやシワなどの欠陥が全くない。
×:折れやシワがある。
実施例1
〔(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに2−エチルヘキシルメタクリレート98重量部、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸2重量部、重合開始剤、及びトルエンを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂の重量平均分子量は10万であり、ガラス転移温度は−10℃であった。
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
無機粉体としてPbO/B2 O3 /ZnO/SiO2 /BaO/CuO/In2 O3 のガラス粉末100重量部、前記メタクリル系樹脂16重量部、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチル3重量部、及び溶剤としてα−テルピネオール40重量部を配合し、分散機を用いて混合分散して無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
〔ロール状転写シートの作製〕
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:50μm)に剥離剤処理を施した支持フィルム上に、前記調製した無機粉体含有樹脂組成物をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:60μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET、厚さ:50μm)をカバーして転写シートを作製した。その後、円形の巻き芯に保護フィルムを内側にして該転写シートを100m巻き取ってロール状転写シートを作成した。なお、巻き取る際に転写シートに100Nの張力を加えた。
〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
パネル用ガラス基板の形状に合わせて前記ロール状転写シートの端部から30m繰り出した部分のシートを裁断して転写シートを得た。該転写シートの保護フィルムを剥離後、転写シートの膜形成材料層表面をパネル用ガラス基板の表面(バス電極の固定面)に当接するように重ね合わせ、加熱ロール式ラミネータを用いて熱圧着した。圧着条件は、加熱ロールの表面温度80℃、ロール線圧1kg/cm、ロール移動速度1m/分であった。熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が気泡の噛み込みもなく転写されて密着した状態になっていた。膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、600℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層を形成し、誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは約30μmであった。
〔(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに2−エチルヘキシルメタクリレート98重量部、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸2重量部、重合開始剤、及びトルエンを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂の重量平均分子量は10万であり、ガラス転移温度は−10℃であった。
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
無機粉体としてPbO/B2 O3 /ZnO/SiO2 /BaO/CuO/In2 O3 のガラス粉末100重量部、前記メタクリル系樹脂16重量部、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチル3重量部、及び溶剤としてα−テルピネオール40重量部を配合し、分散機を用いて混合分散して無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
〔ロール状転写シートの作製〕
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:50μm)に剥離剤処理を施した支持フィルム上に、前記調製した無機粉体含有樹脂組成物をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:60μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET、厚さ:50μm)をカバーして転写シートを作製した。その後、円形の巻き芯に保護フィルムを内側にして該転写シートを100m巻き取ってロール状転写シートを作成した。なお、巻き取る際に転写シートに100Nの張力を加えた。
〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
パネル用ガラス基板の形状に合わせて前記ロール状転写シートの端部から30m繰り出した部分のシートを裁断して転写シートを得た。該転写シートの保護フィルムを剥離後、転写シートの膜形成材料層表面をパネル用ガラス基板の表面(バス電極の固定面)に当接するように重ね合わせ、加熱ロール式ラミネータを用いて熱圧着した。圧着条件は、加熱ロールの表面温度80℃、ロール線圧1kg/cm、ロール移動速度1m/分であった。熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が気泡の噛み込みもなく転写されて密着した状態になっていた。膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、600℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層を形成し、誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは約30μmであった。
実施例2
円形の巻き芯に支持フィルムを内側にして巻き取った以外は実施例1と同様の方法でロール状転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。なお、熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が気泡の噛み込みもなく転写されて密着した状態になっていた。また、この誘電体層の厚さは約30μmであった。
円形の巻き芯に支持フィルムを内側にして巻き取った以外は実施例1と同様の方法でロール状転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。なお、熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が気泡の噛み込みもなく転写されて密着した状態になっていた。また、この誘電体層の厚さは約30μmであった。
実施例3
厚み38μmの支持フィルム及び厚み50μmの保護フィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法でロール状転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。なお、熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が気泡の噛み込みもなく転写されて密着した状態になっていた。また、この誘電体層の厚さは約30μmであった。
厚み38μmの支持フィルム及び厚み50μmの保護フィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法でロール状転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。なお、熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が気泡の噛み込みもなく転写されて密着した状態になっていた。また、この誘電体層の厚さは約30μmであった。
比較例1
厚み38μmの支持フィルム及び厚み25μmの保護フィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法でロール状転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。なお、熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面と膜形成材料層との間に気泡の噛み込みが多少見られた。また、この誘電体層の厚さは約30μmであったが、わずかに表面粗れが生じていた。
厚み38μmの支持フィルム及び厚み25μmの保護フィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法でロール状転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。なお、熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面と膜形成材料層との間に気泡の噛み込みが多少見られた。また、この誘電体層の厚さは約30μmであったが、わずかに表面粗れが生じていた。
比較例2
厚み38μmの支持フィルム及び厚み50μmの保護フィルムを用い、円形の巻き芯に支持フィルムを内側にして巻き取った以外は実施例1と同様の方法でロール状転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。なお、熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面と膜形成材料層との間に気泡の噛み込みが多少見られた。また、この誘電体層の厚さは約30μmであったが、わずかに表面粗れが生じていた。
厚み38μmの支持フィルム及び厚み50μmの保護フィルムを用い、円形の巻き芯に支持フィルムを内側にして巻き取った以外は実施例1と同様の方法でロール状転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。なお、熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面と膜形成材料層との間に気泡の噛み込みが多少見られた。また、この誘電体層の厚さは約30μmであったが、わずかに表面粗れが生じていた。
表1の結果から明らかなように、内側に巻かれるフィルムの厚さが、外側のフィルムの厚さと同じ又はより大きい場合(実施例1〜3)には、ロール状転写シートの折れやシワを効果的に防止することができる。また、該転写シートを用いて膜形成材料層をガラス基板表面に転写した場合には、ガラス基板表面と膜形成材料層との間の気泡の噛み込みを抑制でき、その結果、ボイドやクラックのない光学特性に優れる誘電体層を形成することができる。一方、内側に巻かれるフィルムの厚さが、外側のフィルムの厚さより小さい場合(比較例1、2)には、ロール状転写シートに折れやシワが発生する。また、該転写シートを用いて膜形成材料層をガラス基板表面に転写した場合には、ガラス基板表面と膜形成材料層との間に気泡を噛み込み、その結果、誘電体層の光学特性に悪影響を与える。
1:ロール状転写シート
2:外側フィルム(支持フィルム又は保護フィルム)
3:膜形成材料層
4:内側フィルム(保護フィルム又は支持フィルム)
5:巻き芯
2:外側フィルム(支持フィルム又は保護フィルム)
3:膜形成材料層
4:内側フィルム(保護フィルム又は支持フィルム)
5:巻き芯
Claims (7)
- 支持フィルム、膜形成材料層、及び保護フィルムがこの順で積層されている転写シートを多重に巻いたロール状転写シートにおいて、内側に巻かれるフィルム(保護フィルム又は支持フィルム)の厚さが、外側のフィルム(支持フィルム又は保護フィルム)の厚さと同じ又はより大きいことを特徴とするロール状転写シート。
- 内側に巻かれるフィルムの厚さが、外側のフィルムの厚さの1〜2倍である請求項1記載のロール状転写シート。
- 前記膜形成材料層が、無機粉体及びバインダ樹脂として重量平均分子量5〜50万、且つ、ガラス転移温度−70〜30℃の(メタ)アクリル系樹脂を含有する無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなるものである請求項1又は2記載のロール状転写シート。
- 前記無機粉体がガラス粉末である請求項3記載のロール状転写シート。
- 前記膜形成材料層は、誘電体層の形成材料として用いられるものである請求項1〜4のいずれかに記載のロール状転写シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のロール状転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法。
- 請求項6記載の方法によって製造される誘電体層形成基板。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003323189A JP2005088297A (ja) | 2003-09-16 | 2003-09-16 | ロール状転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板 |
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JP2016203448A (ja) * | 2015-04-20 | 2016-12-08 | 京セラ株式会社 | 積層シート巻回体 |
CN106427145A (zh) * | 2016-07-11 | 2017-02-22 | 无锡格菲电子薄膜科技有限公司 | 一种用作石墨烯薄膜载体的超柔基底膜及其制备方法 |
-
2003
- 2003-09-16 JP JP2003323189A patent/JP2005088297A/ja active Pending
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