JP4267295B2 - 無機粉体含有樹脂組成物、転写シート、及び誘電体層形成基板の製造方法 - Google Patents
無機粉体含有樹脂組成物、転写シート、及び誘電体層形成基板の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機粉体含有樹脂組成物、該組成物からなる膜形成材料層、転写シート、誘電体層、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板に関する。特に、本発明の無機粉体含有樹脂組成物はプラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、薄型平板状の大型ディスプレイとしては、液晶ディスプレイと共にプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という)が注目されている。PDPの一部分は、ガラス基板の表面上にガラス焼結体からなる誘電体層が形成された構造をしている。この誘電体層の形成方法としては、ガラス粉末、アクリル酸エステル系樹脂及び溶剤を含有するペースト状組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成し、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を、電極が固定されたガラス基板の表面に転写し、転写された膜形成材料層を焼成することにより、前記ガラス基板の表面に誘電体層を形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、誘電体層形成用樹脂組成物としては、C1 〜C12のメタアクリル酸エステル80〜100重量%と、これと共重合可能な他のモノマー0〜20重量%を共重合させることにより得られ、重量平均分子量が2万から100万であり、そのガラス転移温度が15℃以下である自着性樹脂100重量部に対し、誘電性無機粉末100〜500重量部を加えたものが開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−185024号公報
【特許文献2】
国際公開第00/42622号パンフレット
【発明が解決しようとする課題】
前記ようにペースト状組成物や誘電体層形成用樹脂組成物中のバインダ樹脂としては、一般に(メタ)アクリル系樹脂が用いられるが、(メタ)アクリル系樹脂とガラス粉末(無機粉体)とは極性差があり、両者は界面化学的な濡れ性が悪いためガラス粉末の分散性が悪く、均一な誘電体層を形成することが困難となる。そのため、ガラス粉末の分散性の向上を目的として、水酸基やカルボキシル基などの極性基を有するモノマーを共重合させた(メタ)アクリル系樹脂をバインダ樹脂として用いている。
【0005】
しかし、これらの極性基はガラス粉末表面との相互作用が強く、ガラス粉末表面上で強く引き合ったり、反応してしまう。さらに、極性基を有するモノマーを共重合させたバインダ樹脂を用いた場合、高分子であるバインダ樹脂がガラス粉末表面上で引き合い、その表面を覆うこととなり、極性基自体のガラス粉末への引き合い作用に加えて、高分子鎖の絡み合い作用や高分子間での極性基の相互作用などの高分子であるがゆえに発生する作用によって、より一層ガラス粉末表面上で強く引き合う傾向にある。ガラス粉末表面上で強く引き合ったバインダ樹脂は、誘電体層を形成するための焼結処理の際に分解除去されにくく、ガラス焼結体に残留して炭化したり、焼結時の微細ボイドやクラックの発生原因となる。このようなバインダ樹脂の残渣、微細ボイドやクラックの発生は、誘電体層の透過率などの光学特性の低下を招くため好ましくない。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決したものであって、無機焼結体にバインダ樹脂が残らず、さらに微細ボイドやクラックの発生を抑制し、誘電体層の光学特性の低下を招くことのない無機粉体含有樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該組成物からなる膜形成材料層、転写シート、誘電体層、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す無機粉体含有樹脂組成物により上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ガラス粉末及びバインダ樹脂を含有する無機粉体含有樹脂組成物において、前記バインダ樹脂は、
重量平均分子量10万〜80万、(酸価+水酸基価)の合計値が5(KOHmg/g)以下、且つ、ガラス転移温度−30〜30℃の(メタ)アクリル系樹脂(A)と、
重量平均分子量200〜50000、且つ、(酸価+水酸基価)の合計値が5〜200(KOHmg/g)の(メタ)アクリル系樹脂(B)とを含有することを特徴とする無機粉体含有樹脂組成物、に関する。
【0009】
本発明では無機粉体含有樹脂組成物のバインダ樹脂として、水酸基やカルボキシル基などの極性基が極めて少ない、又は全く含まない高分子量の(メタ)アクリル系樹脂(A)と、極性基を所定範囲で含有する低分子量の(メタ)アクリル系樹脂(B)とを併用することにより、ガラス粉末を良好に分散させることができ、また焼結時においては有機残渣、微細ボイド、及びクラックなどの発生を抑制し、光学特性に優れる誘電体層を形成することができる。このような顕著な効果が発現する理由としては、(メタ)アクリル系樹脂(B)は、(メタ)アクリル系樹脂(A)と同種の樹脂であるため良く混じり合い、また極性基をある程度含有するためガラス粉末とも良く混じり合い、ガラス粉末を組成物中に均一に分散させることができる。そして、(メタ)アクリル系樹脂(B)はガラス粉末と比較的強い相互作用があると考えられるが、(メタ)アクリル系樹脂(B)は分子量が小さいためガラス粉末表面を十分に覆っておらず、高分子鎖の絡み合い作用も小さいため、焼結時には容易にガラス粉末表面から剥がれ、有機残渣として残ることがなく、微細ボイド及びクラックなどの発生も抑制することができる。一方、(メタ)アクリル系樹脂(A)は、分子量が大きいためガラス粉末表面を覆いはするが、極性基をほとんど含有しないか、又は全く含有しないため焼結時には容易にガラス粉末表面から剥がれ分解除去される。このように、特定の2種の(メタ)アクリル系樹脂を用いることにより前記のような顕著な効果が発現するものと考えられる。
【0010】
前記無機粉体含有樹脂組成物は、特に誘電体層の形成材料として有用である。
【0011】
本発明において、バインダ樹脂は、ガラス粉末100重量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂(A)を5〜50重量部、及び(メタ)アクリル系樹脂(B)を0.5〜25重量部含有することが好ましい。さらには、(メタ)アクリル系樹脂(A)を7〜30重量部、及び(メタ)アクリル系樹脂(B)を0.5〜10重量部含有することが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A)が5重量部未満の場合には、無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成することが困難になり、50重量部を超える場合には、樹脂成分が多くなりすぎて適切な分散操作が行えず、樹脂成分とガラス粉末との界面化学的な十分な濡れ性が得られにくくなり、ガラス粉末の分散性が悪くなる傾向にある。また、(メタ)アクリル系樹脂(B)が0.5重量部未満の場合はガラス粉末の分散性が悪くなり、25重量部を超える場合には、極性基とガラス粉末との相互作用が強くなりすぎ、無機焼結体に有機残渣が残り、その結果、ボイドや白濁などが発生する傾向にある。
【0013】
本発明は、前記記載の無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなる膜形成材料層、に関する。
【0014】
また、本発明は、支持フィルム上に、少なくとも前記記載の膜形成材料層が積層されている転写シート、に関する。
【0015】
本発明の誘電体層は、前記膜形成材料層を焼結させてなるものである。
【0016】
また、本発明は、前記記載の転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法、及び前記方法によって製造される誘電体層形成基板、に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、無機粉体としてガラス粉末及びバインダ樹脂を含有する。
【0019】
また、無機粉体として酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化亜鉛を含有していてもよい。無機粉体の平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましい。
【0020】
ガラス粉末としては公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、1)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−B2O3−SiO2系)の混合物、2)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−ZnO−B2O3−SiO2系)の混合物、3)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(PbO−B2O3−SiO2−Al2O3系)の混合物、4)酸化鉛、酸化バリウム、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−BaO−B2O3−SiO2系)の混合物、5)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化バリウム、酸化珪素(PbO−ZnO−B2O3−BaO−SiO2系)の混合物などを挙げることができる。焼結処理により誘電体層を形成することを考慮すると、軟化点が400〜650℃であるガラス粉末が好ましい。
【0021】
バインダ樹脂は、重量平均分子量10万〜80万、(酸価+水酸基価)の合計値が5(KOHmg/g)以下、且つ、ガラス転移温度−30〜30℃の(メタ)アクリル系樹脂(A)と、重量平均分子量200〜50000、且つ、(酸価+水酸基価)の合計値が5〜200(KOHmg/g)の(メタ)アクリル系樹脂(B)とを含有する。
【0022】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、アクリル系モノマー又はメタクリル系モノマーの1種モノマーの重合体、前記モノマーの共重合体、又はそれらの混合物である。前記モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレ−ト、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0023】
また、(メタ)アクリル系樹脂(A)の(酸価+水酸基価)の合計値が5(KOHmg/g)以下となる範囲で水酸基やカルボキシル基などの極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いてもよい。該極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、イミノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル系樹脂(A)の(酸価+水酸基価)の合計値が5(KOHmg/g)を超える場合には、無機粉体表面との相互作用が強く、焼結処理の際に分解除去されにくく、誘電体層の透過率などの光学特性の低下を招く。
【0025】
また、(メタ)アクリル系樹脂(A)は、重量平均分子量10万〜80万のポリマーであり、好ましくは重量平均分子量10万〜70万である。重量平均分子量が10万未満の場合には、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの強度が低くなり、その後の作業上好ましくなく、一方、80万を超える場合には、無機粉体含有樹脂組成物の粘度が高くなり、無機粉体の分散性が悪くなるため好ましくない。
【0026】
また、(メタ)アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は−30〜30℃である。ガラス転移温度が−30℃未満の場合には、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの強度が低くなり、その後の作業上好ましくなく、一方、30℃を超える場合には、転写シートとした際に可とう性のない膜となり転写性やハンドリングが悪化してしまうため好ましくない。
【0027】
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、前記(メタ)アクリル系モノマーと前記極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーの共重合体、又はそれらの混合物である。
【0028】
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、(酸価+水酸基価)の合計値が5〜200(KOHmg/g)である。合計値が5(KOHmg/g)未満の場合には、無機粉体表面での相互作用が小さく、充分な分散性向上の効果が得られず、一方、合計値が200(KOHmg/g)を超えるの場合には、無機粉体表面での相互作用が大きすぎて焼結処理の際に分解除去されにくくなり、誘電体層の透過率などの光学特性の低下を招く。
【0029】
(メタ)アクリル系樹脂(B)の(酸価+水酸基価)の合計値は、前記極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーの共重合比率によって調製することができ、具体的には、極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーの共重合比率を2〜30重量%にすることにより(酸価+水酸基価)の合計値を目的の範囲内にすることができる。また、(メタ)アクリル系樹脂(B)は、無機粉体とバインダ樹脂との分散性を向上させることを目的に添加されるものであって、重量平均分子量は200〜50000であり、好ましくは重量平均分子量1000〜20000である。(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量が200未満の場合には、転写シートを形成する際の溶媒を乾燥する工程で揮発する恐れがある。一方、重量平均分子量が50000を超える場合には、前述のように無機粉体表面での相互作用が強く、焼結処理の際に分解除去されにくくなり、誘電体層の透過率などの光学特性の低下を招く。
【0030】
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートを作製する場合には、支持フィルム上に均一に塗布できるように該組成物中に溶剤を加えることが好ましい。
【0031】
溶剤としては、無機粉体との親和性がよく、且つ、バインダ樹脂との溶解性がよいものであれば特に制限されるものではない。例えば、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、テレビン油、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロへキサノン、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロへキサノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコ−ルモノメチルエーテル、エチレングリコ−ルモノエチルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコ−ルモノメチルエーテル、ジエチレングリコ−ルモノエチルエーテル、ジエチレングリコ−ルモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、任意の割合で2種類以上を併用してもよい。
【0032】
溶剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましい。
【0033】
また、本発明の無機粉体含有樹脂組成物には、可塑剤を添加してもよい。可塑剤を添加することにより、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの柔軟性や膜形成材料層の基板への転写性などを調整することができる。
【0034】
可塑剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、ジイソノニルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジベート、ジブチルジグリコールアジべ−トなどのアジピン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのセバシン酸誘導体、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテートなどのピロメリット酸誘導体、プロピレングリコールモノオレートなどのオレイン酸誘導体、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのグリコール系可塑剤などがあげられる。
【0035】
可塑剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましい。可塑剤の添加量が20重量部を超えると、得られる転写シートの強度が低下してしまうため好ましくない。
【0036】
無機粉体含有樹脂組成物には、上記の成分の他、分散剤、シランカップリング剤、粘着性付与剤、レベリング剤、安定剤、消泡剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0037】
本発明の転写シートは、支持フィルムと、少なくともこの支持フィルム上に形成された膜形成材料層とにより構成されており、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を基板表面に一括転写するために用いられるものである。
【0038】
転写シートは、前記無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、溶剤を乾燥除去して膜形成材料層を形成することにより作製される。
【0039】
転写フィルムを構成する支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可とう性を有することにより、ロールコーターなどによってペースト状の無機粉体含有樹脂組成物を塗布することができ、膜形成材料層をロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。
【0040】
支持フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
【0041】
支持フィルムの厚さは特に制限されないが、25〜100μm程度であることが好ましい。
【0042】
なお、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、膜形成材料層を基板上に転写する工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【0043】
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロ−ルコ−タ−、スロット、ファンテンなどのダイコータ−、スクイズコータ−、カーテンコータ−などの塗布方法を採用することができるが、支持フィルム上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
【0044】
塗布された無機粉体含有樹脂組成物の乾燥条件としては、例えば、100〜150℃で3〜10分間程度である。
【0045】
膜形成材料層の厚さは、無機粉体の含有率、パネルの種類やサイズなどによっても異なるが、10〜200μmであることが好ましく、さらに好ましくは30〜100μmである。この厚さが10μm未満である場合には、最終的に形成される誘電体層の膜厚が不十分となり、所望の誘電特性を確保することができない傾向にある。通常、この厚さが30〜100μmであれば、大型のパネルに要求される誘電体層の膜厚を十分に確保することができる。また、膜厚は均一であるほど好ましく、膜厚公差は±5%以内であることが好ましい。
【0046】
なお、転写シートは、膜形成材料層の表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。保護フィルムでカバーされた転写シートは、ロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。
【0047】
本発明の誘電体層形成基板の製造方法は、前記記載の転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする。
【0048】
基板としては、セラミックや金属などの基板が挙げられ、特にPDPを作製する場合には、適切な電極が固定されたガラス基板が用いられる。
【0049】
転写工程の一例を以下に示すが、基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態にできれば、その方法は特に制限されるものではない。
【0050】
適宜使用される転写シートの保護フィルムを剥離した後、電極が固定されたガラス基板の表面に、膜形成材料層表面を当接するように転写シートを重ね合わせ、この転写シートを加熱ロール式のラミネーターなどにより熱圧着した後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去する。これにより、ガラス基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態となる。
【0051】
転写条件としては、例えば、ラミネーターの表面温度25〜100℃、ロール線圧0.5〜15kg/cm、移動速度0.1〜5m/分であるが、これら条件に限定されるものではない。また、ガラス基板は予熱されていてもよく、予熱温度は50〜100℃程度である。
【0052】
膜形成材料層の焼結工程の一例を以下に示すが、膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成できれば、その方法は特に制限されるものではない。
【0053】
膜形成材料層が形成された前記ガラス基板を、400〜650℃の高温雰囲気下に配置することにより、膜形成材料層中の有機物質(バインダ樹脂、残存溶剤、各種の添加剤など)が分解除去され、無機粉体(ガラス粉末)が軟化して焼結する。これにより、ガラス基板上には、無機焼結体(ガラス焼結体)からなる誘電体層が形成され、誘電体層形成基板が製造される。
【0054】
誘電体層の厚さは、使用する膜形成材料層の厚さよって異なるが、15〜50μm程度である。
【0055】
本発明の誘電体層形成基板は、誘電体層に微細ボイドやクラックがなく、透過率などの光学特性に優れている。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(重量平均分子量の測定)
作製したポリマーをTHFに0.1wt%で溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量を測定した。
【0058】
(ガラス転移温度の測定)
作製したポリマーを厚さ1mmに成形し、φ8mmに打ち抜いたものを動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて、周波数1Hzにて損失弾性率G”の温度依存性を測定した。得られた損失弾性率G”のカーブにおけるピークトップの温度をガラス転移温度Tgとした。
【0059】
(酸価及び水酸基価の測定)
酸価は、作製したポリマー0.5gを精秤し、トルエン/イソプロピルアルコール/蒸留水=50/49.5/0.5の混合溶媒50mlに溶解する。これを自動滴定装置を用いて0.1NのKOH水溶液にて滴定して測定した。
【0060】
水酸基価は、作製したポリマー1gを精秤し、アセチル化試薬(無水酢酸/ピリジン)5mlに溶解する。これを95〜100℃で1時間加熱し、アセチル化する。純水1mlを加えて無水酢酸を加水分解し、エタノール10mlを加えて自動滴定装置を用いて0.1NのKOH水溶液にて滴定して測定した(JIS K0070に準ずる)。
【0061】
(無機粉体の分散性の評価)
無機粉体の分散性は、分散装置内での無機粉体の分散のし易さ、得られた無機粉体含有樹脂組成物の粘度、及びグラインドケージでの分散粒子の大きさを総合的に判断し、得られた無機粉体含有樹脂組成物が流動性のあるスラリー状態となって、グラインドゲージでの粒度が10μm以下である場合を○とし、これに比べて、流動性に乏しい高粘度なスラリーとなるが、グラインドゲージでの粒度が10μm以下である場合を△とし、さらに高粘度なパテ状スラリーとなり、グラインドゲージでの粒度が10μmを超える場合を×とした。
【0062】
(誘電体層の透過率の測定)
得られた無機焼結体について、透過率を測定した。透過率の測定は、分光光度計(島津製作所製、MPS2000)を用いて、550nmの波長光に対する吸収量を測定し、予め測定しておいたバックグラウンドであるガラス基板の吸収量をキャンセルして、無機焼結体のみの吸収量を算出し、その値を用いて透過率を測定した。
【0063】
実施例1
〔(メタ)アクリル系樹脂(A)の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコにブチルメタクリレート100重量部、重合開始剤、酢酸エチル100重量部を仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂(A−1)溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂(A−1)の重量平均分子量は60万であり、ガラス転移温度は20℃であり、(酸価+水酸基価)の合計値は0(KOHmg/g)であった。
【0064】
〔(メタ)アクリル系樹脂(B)の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコにブチルメタクリレート90重量部、メタクリル酸10重量部、重合開始剤、メルカプトエタノール3重量部、トルエン100重量部を仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂(B−1)溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂(B−1)の重量平均分子量は5000であり、(酸価+水酸基価)の合計値は65(KOHmg/g)であった。
【0065】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
無機粉体としてPbO/B2 O3 /ZnO/SiO2 /BaO/CuO/In2 O3 のガラス粉末100重量部、前記メタクリル系樹脂(A−1)10重量部、前記メタクリル系樹脂(B−1)2重量部、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチル10重量部、及び溶剤としてα−テルピネオール50重量部を配合し、分散機を用いて混合分散して無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
【0066】
〔転写シートの作製〕
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:75μm)に剥離剤処理を施した支持フィルム上に、前記調製した無機粉体含有樹脂組成物をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:60μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET、厚さ:25μm)をカバーして転写シートを作製し、ロール状に巻き取った。
【0067】
〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
前記転写シートの保護フィルムを剥離後、転写シートの膜形成材料層表面をパネル用ガラス基板の表面(バス電極の固定面)に当接するように重ね合わせ、加熱ロール式ラミネータを用いて熱圧着した。圧着条件は、加熱ロールの表面温度80℃、ロール線圧1kg/cm、ロール移動速度1m/分であった。熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態になっていた。
【0068】
膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、600℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層を形成し、誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μm±2μmであった。
【0069】
実施例2
〔(メタ)アクリル系樹脂(A)の調製〕
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂(A−1)を調製した。
【0070】
〔(メタ)アクリル系樹脂(B)の調製〕
ブチルメタクリレート97重量部、メタクリル酸3重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル系樹脂(B−2)を調製した。得られたメタクリル系樹脂(B−2)の重量平均分子量は5000であり、(酸価+水酸基価)の合計値は20(KOHmg/g)であった。
【0071】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
前記メタクリル系樹脂(B−2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
【0072】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μm±2μmであった。
【0073】
実施例3
〔(メタ)アクリル系樹脂(A)の調製〕
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂(A−1)を調製した。
【0074】
〔(メタ)アクリル系樹脂(B)の調製〕
ブチルメタクリレート90重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル系樹脂(B−3)を調製した。得られたメタクリル系樹脂(B−3)の重量平均分子量は5000であり、(酸価+水酸基価)の合計値は47(KOHmg/g)であった。
【0075】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
前記メタクリル系樹脂(B−3)を用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
【0076】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μm±2μmであった。
【0077】
実施例4
〔(メタ)アクリル系樹脂(A)の調製〕
ブチルメタクリレート60重量部、ラウリルメタクリレート40重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル系樹脂(A−2)を調製した。得られたメタクリル系樹脂(A−2)の重量平均分子量は35万であり、ガラス転移温度は−24℃であり、(酸価+水酸基価)の合計値は0(KOHmg/g)であった。
【0078】
〔(メタ)アクリル系樹脂(B)の調製〕
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂(B−1)を調製した。
【0079】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
前記メタクリル系樹脂(A−2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
【0080】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μm±2μmであった。
【0081】
比較例1
メタクリル系樹脂(B−1)を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法により誘電体層形成ガラス基板などを作製した。この誘電体層の厚さは30μm±2μmであったが、大きく表面粗れが生じていた。
【0082】
比較例2
〔(メタ)アクリル系樹脂(A)の調製〕
ブチルメタクリレート95重量部、メタクリル酸5重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル系樹脂(A−3)を調製した。得られたメタクリル系樹脂(A−3)の重量平均分子量は35万、ガラス転移温度は22℃であり、(酸価+水酸基価)の合計値は33(KOHmg/g)であった。
【0083】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
前記メタクリル系樹脂(A−3)を用い、且つ、メタクリル系樹脂(B−1)を用いなかった以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
【0084】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
前記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μm±2μmであったが、わずかに表面粗れが生じた。
【0085】
比較例3
〔(メタ)アクリル系樹脂(A)の調製〕
ブチルメタクリレート95重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりメタクリル系樹脂(A−4)を調製した。得られたメタクリル系樹脂(A−4)の重量平均分子量は35万、ガラス転移温度は22℃であり、(酸価+水酸基価)の合計値は22(KOHmg/g)であった。
【0086】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
前記メタクリル系樹脂(A−4)を用い、且つ、メタクリル系樹脂(B−1)を用いなかった以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
【0087】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
前記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μm±2μmであったが、わずかに表面粗れが生じた。
【0088】
【表1】
表1の結果から明らかなように、バインダ樹脂として、特定の(メタ)アクリル系樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とを併用した場合(実施例1〜4)には、併用しなかった場合(比較例2、3)に比べて分散性に優れ、かつ透過率も高く、優れた誘電体層を形成することができた。比較例1では透過率は高いが、ガラス粉末の分散性が極めて悪く、均一で欠陥のない膜形成材料層及び誘電体層を形成することは困難であった。
Claims (6)
- ガラス粉末及びバインダ樹脂を含有する無機粉体含有樹脂組成物において、前記バインダ樹脂は、
重量平均分子量10万〜80万、(酸価+水酸基価)の合計値が5(KOHmg/g)以下、且つ、ガラス転移温度−30〜30℃の(メタ)アクリル系樹脂(A)と、
重量平均分子量200〜50000、且つ、(酸価+水酸基価)の合計値が5〜200(KOHmg/g)の(メタ)アクリル系樹脂(B)とを含有することを特徴とする無機粉体含有樹脂組成物。 - 誘電体層の形成材料として用いられる請求項1記載の無機粉体含有樹脂組成物。
- バインダ樹脂は、ガラス粉末100重量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂(A)を5〜50重量部、及び(メタ)アクリル系樹脂(B)を0.5〜25重量部含有する請求項1又は2記載の無機粉体含有樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなる膜形成材料層。
- 支持フィルム上に、少なくとも請求項4記載の膜形成材料層が積層されている転写シート。
- 請求項5記載の転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法。
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