JP4006777B2 - プラズマディスプレイパネルの誘電体層形成用ガラスペースト組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの誘電体層を形成するために使用されるプラズマディスプレイパネルの誘電体層形成用ガラスペースト組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近において、平板状の蛍光表示体としてプラズマディスプレイが注目されている。図1は交流型のプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう。)の断面形状を示す模式図である。同図において、1及び2は、対向配置されたガラス基板、3は隔壁であり、ガラス基板1、ガラス基板2及び隔壁3によりセルが区画形成されている。4はガラス基板1に固定されたバス電極、5はガラス基板2に固定されたアドレス電極、6はセル内に保持された蛍光物質、7はバス電極4を被覆するようガラス基板1の表面に形成された誘電体層、8は例えば酸化マグネシウムよりなる保護膜である。誘電体層7はガラス焼結体より形成され、その膜厚は例えば20〜50μmとされる。
【0003】
誘電体層7の形成方法としては、ガラス粉末、結着樹脂および溶剤を含有するペースト状の組成物(ガラスペースト組成物)を調製し、このガラスペースト組成物をスクリーン印刷法によってガラス基板1の表面に塗布して乾燥することにより膜形成材料層を形成し、次いでこの膜形成材料層を焼成することにより有機物質を除去してガラス粉末を焼結させる方法が知られている。
【0004】
ここに、ガラスペースト組成物を構成する結着樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂などが知られており、これらのうち、ガラス粉末の分散性、組成物の塗布特性、燃焼の容易性などの観点から、エチルセルロースが好ましいとされている(例えば特開平6−321619号公報参照)。
【0005】
しかして、ガラス基板1上に形成する膜形成材料層の厚さは、焼成工程における有機物質の除去に伴う膜厚の目減量を考慮して、形成すべき誘電体層7の膜厚の1.3〜2.0倍程度とすることが必要であり、例えば、誘電体層7の膜厚を20〜50μmとするためには、30〜100μm程度の厚さの膜形成材料層を形成する必要がある。
一方、前記ガラスペースト組成物をスクリーン印刷法により塗布する場合に、1回の塗布処理によって形成される塗膜の厚さは15〜25μm程度である。
このため、膜形成材料層を所定の厚さとするためには、ガラス基板の表面に対して、当該ガラスペースト組成物を複数回(例えば2〜7回)にわたり繰り返して塗布(多重印刷)する必要がある。
【0006】
しかしながら、スクリーン印刷法を利用する多重印刷によって膜形成材料層を形成する場合には、当該膜形成材料層を焼成して形成される誘電体層が均一な膜厚(例えば公差が±5%以内)を有するものとならない。これは、スクリーン印刷法による多重印刷では、ガラス基板の表面に対してガラスペースト組成物を均一に塗布することが困難だからであり、塗布面積(パネルサイズ)が大きいほど、また、塗布回数が多いほど誘電体層における膜厚のバラツキの程度は大きいものとなる。そして、多重印刷による塗布工程を経て得られるパネル材料(当該誘電体層を有するガラス基板)には、その面内において、膜厚のバラツキに起因する誘電特性にバラツキが生じ、誘電特性のバラツキは、PDPにおける表示欠陥(輝度ムラ)の原因となる。
さらに、スクリーン印刷法では、スクリーン版のメッシュ形状が膜形成材料層の表面に転写されることがあり、このような膜形成材料層を焼成して形成される誘電体層は、表面の平滑性に劣るものとなる。
【0007】
スクリーン印刷法によって膜形成材料層を形成する場合における上記のような問題を解決する手段として、本発明者らは、ガラスペースト組成物を支持フィルム上に塗布し、塗膜を乾燥して膜形成材料層を形成し、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を、電極が固定されたガラス基板の表面に転写し、転写された膜形成材料層を焼成することにより、前記ガラス基板の表面に誘電体層を形成する方法(以下、「ドライフィルム法」という。)を含むPDPの製造方法を提案している(特願平8−196304号明細書参照)。
ここに、ドライフィルム法における転写工程の一例としては、支持フィルム上に膜形成材料層が形成されてなる複合フィルム(以下、「転写フィルム」という。)をガラス基板の表面(電極固定面)に重ね合わせた後、当該転写フィルム上に加熱ローラを移動させることにより、膜形成材料層をガラス基板の表面に加熱接着させ、次いで、ガラス基板の表面に接着固定された膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去する方法を挙げることができる。
そして、このようなドライフィルム法を含むPDPの製造方法によれば、膜厚均一性および表面平滑性の良好な誘電体層を形成することができる。
また、この製造方法によれば、誘電体層の形成材料である転写フィルムをロール状に巻き取って保存することができる点からも有利である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セルロース誘導体などの従来公知の樹脂を含有するガラスペースト組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成する(転写フィルムを製造する)場合において、転写フィルムを構成する膜形成材料層が、ガラス基板に対して十分な接着性(加熱接着性)を有するものではないため、支持フィルムからガラス基板の表面に転写されにくいという問題がある。
また、PDPを構成する誘電体層に良好な電気的特性を発現させる観点から、当該誘電体層には、更に優れた表面平滑性が要求される。
さらに、PDPを構成する誘電体層には、光透過率が高く、無色透明性に優れていることが要求される。
【0009】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、表面平滑性に優れ、無色透明性に優れたガラス焼結体を形成することができる、PDPの誘電体層形成用ガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、比較的低温条件(600℃以下)で行われる焼成処理によって結着樹脂を完全に分解除去することができ、これに由来する有機物質を含有しない無色透明性に優れたガラス焼結体を形成することができる、PDPの誘電体層形成用ガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、転写フィルムの製造に好適に用いることができるPDPの誘電体層形成用ガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、膜形成材料層の転写性(ガラス基板に対する膜形成材料層の加熱接着性)に優れた転写フィルムを製造することのできるPDPの誘電体層形成用ガラスペースト組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のPDPの誘電体層形成用ガラスペースト組成物は、(A)平均粒子径が1〜8μmであり、粒子径分布が下記(1)および(2)に示す条件を満足することを特徴とするガラス粉末、(B)アクリル樹脂よりなる結着樹脂および(C)溶剤を含有することを特徴とする。
(1)粒子径が10μm以上である粒子の割合が20重量%以下であること。
(2)粒子径が2.5〜3.8μmの範囲にある粒子の割合が20重量%以上であること。
本発明の組成物においては、当該組成物中に占めるガラス粉末の割合が50重量%以上であることが好ましい。
【0011】
【作用】
(1)組成物中に分散されるガラス粉末の平均粒子径および粒子径分布を特定の範囲に制御することにより、優れた表面平滑性と無色透明性とを兼ね備えたガラス焼結体(例えば、PDPの誘電体層)を形成することができる。
(2)結着樹脂としてアクリル樹脂が含有されていることにより、形成される膜形成材料層には、ガラス基板に対する優れた加熱接着性が発揮される。従って、本発明の組成物を支持フィルム上に塗布して転写フィルムを製造する場合において、得られる転写フィルムは、膜形成材料層の転写性(ガラス基板への転写性)に優れたものとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガラスペースト組成物について詳細に説明する。
本発明のガラスペースト組成物は、ガラス粉末、アクリル樹脂からなる結着樹脂および溶剤を必須成分として含有する。
【0013】
<ガラス粉末の構成材料>
本発明の組成物を構成するガラス粉体としては、その軟化点が400〜600℃の範囲内にあるものが好ましい。
ガラス粉末の軟化点が400℃未満である場合には、当該組成物による膜形成材料層の焼成工程において、結着樹脂などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラス粉末が溶融してしまうため、形成される誘電体層中に有機物質の一部が残留し、この結果、誘電体層が着色されて光透過率が低下する傾向がある。一方、ガラス粉末の軟化点が600℃を超える場合には、600℃より高温で焼成する必要があるために、ガラス基板に歪みなどが発生しやすい。
好適なガラス粉末の具体例としては、▲1▼ 酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(PbO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、▲2▼ 酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(ZnO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、▲3▼ 酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム(PbO−B2 O3 −SiO2 −Al2 O3 系)の混合物、▲4▼ 酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(PbO−ZnO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物などを例示することができる。
【0014】
<ガラス粉末の平均粒子径>
本発明の組成物を構成するガラス粉末の平均粒子径は、通常1〜8μmとされ、好ましくは2〜5μmとされる。
ガラス粉末の平均粒子径が1μm未満であるガラスペースト組成物を使用する場合には、当該組成物による膜形成材料層を焼成処理するときに、ガラス粉末の分散媒である結着樹脂などが分解除去されにくくなり、最終的に形成されるガラス焼結体(誘電体層)に有機物質が残留してしまう。そして、この結果、当該ガラス焼結体が着色されたり、白濁したりして、無色透明性の著しい低下を招く。
一方、ガラス粉末の平均粒子径が8μmを超えるガラスペースト組成物を使用する場合には、当該組成物による膜形成材料層を焼成処理して形成されるガラス焼結体(誘電体層)が優れた表面平滑性(例えば中心線平均粗さRaの値が0.2μm以下)を有するものとならない。
なお、「ガラス粉末の平均粒子径」は、レーザー回折散乱法により測定された粒子径から求められる値をいうものとする。
【0015】
<ガラス粉末の粒子径分布>
本発明の組成物を構成するガラス粉末の粒子径分布としては、先ず、粒子径が10μm以上である粒子の割合が20重量%以下であることが必要である。
ガラス粉末の平均粒子径が1〜8μmの範囲内にあっても、粒子径が10μm以上である粗大粒子の割合が20重量%を超える場合には、最終的に形成されるガラス焼結体が、表面平滑性に劣るものとなる。
さらに、ガラス粉末の粒子径分布として、粒子径が2.5〜3.8μmの範囲にある粒子の割合が20重量%以上であることが必要である。
ガラス粉末の平均粒子径が1〜8μmの範囲内にあり、粗大粒子の割合が20重量%以下であっても、粒子径が2.5〜3.8μmの範囲にある粒子の割合が20重量%未満である場合には、ガラス粉末の粒度分布にバラつきが生じ、得られる転写フィルムのフィルム強度が不均一になるため、形成されるガラス焼結体にひび割れが起こる場合がある。
なお、「ガラス粉末の粒子径分布」は、レーザー回折散乱法により測定された粒子径から求められる値をいうものとする。
【0016】
ガラス粉末のBET比表面積は1.5〜5.5m2 /gの範囲にあることが好ましい。BET比表面積が1.5m2 /g未満である場合には、ガラスペースト組成物における結着樹脂の吸着面積が小さすぎて得られる転写フィルムのフィルム強度が小さくなるため、形成されるガラス焼結体が基板から剥離したり、ひび割れが起こったりする場合がある。一方、BET比表面積が5.5m2 /gを超える場合には、ガラス粉末と結着樹脂との吸着が強すぎて、焼成処理の際に結着樹脂が除去されにくくなり、ガラス焼結体に残留してしまう場合がある。
【0017】
また、ガラス粉末のBlain値は6,000〜20,000の範囲にあることが好ましい。ここで、「Blain値」とは、空気透過法により測定される比表面積であり、一般に、凝集二次粒子の比表面積を表すと言われている。
ガラス粉末のBlain値が6,000未満である場合には、ガラスペースト組成物中に凝集二次粒子が多く存在し、得られるガラス焼結体の表面平滑性に悪影響を与える場合がある。一方、Blain値が20,000を超える場合には、ガラス粉末と結着樹脂との吸着が強すぎて、焼成処理の際に結着樹脂が除去されにくくなり、ガラス焼結体に残留してしまう場合がある。
【0018】
本発明の組成物中に占めるガラス粉末の割合としては、形成されるガラス焼結体に更に優れた無色透明性(高い光透過率)を付与するという観点から、50重量%以上であることが好ましい。
【0019】
<結着樹脂>
本発明の組成物は、結着樹脂がアクリル樹脂であることが好ましい。
結着樹脂としてアクリル樹脂が含有されていることにより、形成される膜形成材料層には、ガラス基板に対する優れた(加熱)接着性が発揮される。従って、本発明の組成物を支持フィルム上に塗布して転写フィルムを製造する場合において、得られる転写フィルムは、膜形成材料層の転写性(ガラス基板への転写性)に優れたものとなる。
かかるアクリル樹脂としては、適度な粘着性を有してガラス粉末を結着させることができ、膜形成材料の焼成処理温度(400℃〜600℃)によって完全に酸化除去される(共)重合体の中から選択される。かかるアクリル樹脂には、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の2種以上の共重合体、および下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。
【0020】
【化1】
【0021】
〔式中、R1 は水素原子またはメチル基を示し、R2 は1価の有機機を示す。〕
【0022】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
これらのうち、上記一般式(1)中、R2 で示される基が、アルキル基またはオキシアルキレン基を含有する基であることが好ましく、特に好ましい(メタ)アクリレート化合物として、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
(メタ)アクリレート化合物との共重合に供される他の共重合性単量体としては、上記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に制限はなく、例えば(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物を挙げることができる。本発明の組成物を構成するアクリル樹脂において、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物由来の共重合成分は、通常70重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。
本発明の組成物を構成する結着樹脂の分子量としては、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量として2,000〜300,000であることが好ましく、さらに好ましくは5,000〜200,000とされる。
【0023】
本発明の組成物における結着樹脂の含有割合としては、ガラス粉末100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜30重量部とされる。結着樹脂の割合が過小である場合には、ガラス粉末を確実に結着保持することができず、一方、この割合が過大である場合には、焼成工程に長い時間を要したり、形成されるガラス焼結体(誘電体層)が十分な強度や膜厚を有するものとならなかったりする。
【0024】
<溶剤>
本発明の組成物を構成する溶剤としては、ガラス粉末との親和性、結着樹脂の溶解性が良好で、ガラスペースト組成物に適度な粘性を付与することができると共に、乾燥されることにより容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。また、特に好ましい溶剤として、標準沸点(1気圧における沸点)が100〜200℃であるケトン類、アルコール類およびエステル類(以下、これらを「特定溶剤」という。)を挙げることができる。
かかる特定溶剤の具体例としては、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類などを例示することができ、これらのうち、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、エチル−3−エトキシプロピオネートなどが好ましい。これらの特定溶剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
特定溶剤以外の溶剤の具体例としては、テレビン油、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどを挙げることができる。
本発明の組成物における溶剤の含有割合としては、組成物の粘度を好適な範囲に維持する観点から、ガラス粉末100重量部に対して、5〜50重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜40重量部とされる。
また、全溶剤に対する特定溶剤の含有割合は、50重量%以上であることが好ましく、更に好ましくは70重量%以上とされる。
【0025】
本発明のガラスペースト組成物には、上記の必須成分のほかに、分散剤、粘着性付与剤、可塑剤、表面張力調整剤、安定剤、消泡剤、分散剤などの各種添加剤が任意成分として含有されていてもよい。
好ましいガラスペースト組成物の一例を示せば、酸化鉛50〜80重量%、酸化ホウ素5〜20重量%、酸化ケイ素10〜30重量%からなる混合物からなり、平均粒子径が3μm、粒子径が10μm以上である粒子の割合が1重量%、粒子径が2.5〜3.8μmの範囲にある粒子の割合が90重量%、BET比表面積が4.5m2 /g、Blain値が10,000であるガラス粉末100重量部と、ポリブチルメタクリレート(アクリル樹脂)10〜30重量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤)10〜50重量部とを必須成分として含有する組成物を挙げることができる。
本発明の組成物は、上記ガラス粉末、結着樹脂および溶剤並びに任意成分を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、サンドミルなどの混練・分散機を用いて混練することにより調製することができる。
上記のようにして調製される本発明の組成物は、塗布に適した流動性を有するペースト状の組成物である。
【0026】
本発明の組成物は、転写フィルムを製造するために特に好適に使用することができる。この転写フィルムは、支持フィルムと、この支持フィルム上に形成された膜形成材料層とにより構成され、ドライフィルム法による誘電体層の形成工程に使用される複合材料である。ここに、ドライフィルム法による支持フィルムへの塗布工程に供されるガラスペースト組成物(本発明の組成物)の粘度としては、1,000〜30,000であることが好ましい。
転写フィルムを構成する支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーター、ブレードコーターなどによって本発明の組成物を塗布することができ、膜形成材料層をロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。支持フィルムを形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。支持フィルムの厚さとしては、例えば20〜100μmとされる。
転写フィルムを構成する膜形成材料層は、本発明の組成物を前記支持フィルム上に塗布し、塗膜を乾燥して溶剤の一部又は全部を除去することにより形成することができる。
本発明の組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、膜厚の均一性に優れた膜厚の大きい(例えば20μm以上)塗膜を効率よく形成することができるものであることが好ましく、具体的には、ロールコーターによる塗布方法、ブレードコーターによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法、ワイヤーコーターによる塗布方法などを好ましいものとして挙げることができる。
なお、本発明の組成物が塗布される支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、ガラス基板への転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
また、転写フィルムには、膜形成材料層の表面に保護フィルム層が設けられてもよい。このような保護フィルム層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムなどを挙げることができる。
【0027】
本発明の組成物は、上記のように、支持フィルム上に膜形成材料層を形成して転写フィルムを製造する際に特に好適に使用することができるが、これらの用途に限定されるものではなく、従来において公知の膜形成材料層の形成方法、すなわち、スクリーン印刷法などによって当該組成物をガラス基板の表面に直接塗布し、塗膜を乾燥することにより膜形成材料層を形成する方法にも好適に使用することができる。ここに、スクリーン印刷法によるガラス基板への塗布工程に供されるガラスペースト組成物(本発明の組成物)の粘度としては、10,000〜200,000であることが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を示す。
また、以下において使用されたガラス粉末の「平均粒子径および粒子径分布」、「BET比表面積」および「Blain値」、並びに、形成された誘電体層における「Ra中心線平均粗さ(Ra)」は、下記のようにして測定した。
【0029】
〔平均粒子径および粒子径分布〕
ガラス粉末に精製水を加えて2分間超音波をあてて分散した後、「マイクロトラック」(日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法により、平均粒子径および粒子径分布を測定した。なお、測定は非球形粒子モードで行った。
【0030】
〔BET比表面積〕
ガラス粉末をサンプルセルに入れ、200℃で20分間脱気処理を行った。その後、BET比表面積測定装置「FlowsorbII」(島津製作所製)を用い、吸着ガスを窒素、キャリアガスをヘリウムとして、BET1点法により、BET比表面積を算出した。
【0031】
〔Blain値〕
恒圧通気式比表面積測定装置「SS−100」(島津製作所製)を用い、測定を行った。計算式は、コゼニー・カーマン式を用いた。
【0032】
〔Ra中心線平均粗さ〕
表面形状測定装置「アルファステップ500」(テンコールインスツルメンツ(株)製)を用い、針圧5.8mg、スキャンスピード100μm/秒、スキャン処理2000μmで誘電体層表面をスキャンして、Ra中心線平均粗さ(Ra)を求めた。
【0033】
<実施例1>
(1)ガラスペースト組成物の調製:
ガラス粉末として、酸化鉛60重量%、酸化ホウ素10重量%、酸化ケイ素30重量%の組成を有するPbO−B2 O3 −SiO2 系の混合物(軟化点550℃)からなり、平均粒子径が3μm、粒子径が10μm以上である粒子の割合が2重量%、粒子径が2.5〜3.8μmの範囲にある粒子の割合が55重量%、BET比表面積が2.8m2 /g、Blain値が14000であるガラス粉末100部、結着樹脂として、ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとを共重合させて得られたアクリル樹脂(共重合割合:ブチルメタクリレート/メチルメタクリレート=70/30(重量比)、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量:80,000)20部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル20部を分散機を用いて混練することにより、粘度が7,000cpである本発明の組成物を調製した。
【0034】
(2)転写フィルムの製造:
上記(1)で調製した本発明の組成物を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる支持フィルム(幅400mm,長さ30m,厚さ38μm)上にロールコータを用いて塗布し、形成された塗膜を100℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去し、これにより、厚さ50μmの膜形成材料層が支持フィルム上に形成されてなる転写フィルムを製造した。この転写フィルムについて、膜形成材料層の表面状態を顕微鏡を用いて観察したところ、ガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥は認められなかった。
【0035】
(3)膜形成材料層の転写:
20インチパネル用のガラス基板の表面(バス電極の固定面)に、膜形成材料層の表面が当接されるよう、上記(2)で製造した転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムを加熱ロールにより熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ロールの表面温度を110℃、ロール圧を3kg/cm2 、加熱ロールの移動速度を1m/分とした。
熱圧着処理の終了後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去した。これにより、ガラス基板の表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態となった。
【0036】
(4)膜形成材料層の焼成処理および誘電体層の評価:
上記(3)により膜形成材料層を転写形成したガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を、常温から10℃/分の昇温速度で560℃まで昇温し、560℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、ガラス基板の表面に、無色透明なガラス焼結体よりなる誘電体層を形成した。
この誘電体層の形状を目視で観察したところ、ひび割れ、基板からの剥離などは認められなかった。
この誘電体層の膜厚(平均膜厚および公差)を測定したところ30μm±1.0μmの範囲にあり、膜厚の均一性に優れているものであった。
また、この誘電体層の中心線平均粗さ(Ra)を測定したところ0.1μmであり、表面平滑性に優れていることが確認された。
さらに、このようにして、誘電体層を有するガラス基板よりなるパネル材料を5台分作製し、形成された誘電体層の光透過率(測定波長600nm)を測定したところ90%であり、良好な透明性を有するものであることが認められた。
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0037】
<実施例2〜5および比較例1〜5>
表1に示す処方に従って、物性の異なるガラス粉末(酸化鉛60重量%、酸化ホウ素10重量%、酸化ケイ素30重量%の組成を有するPbO−B2 O3 −SiO2 系の混合物)を使用したこと以外は実施例1と同様にして本発明のガラスペースト組成物および比較用のガラスペースト組成物を調製した。
次いで、得られたガラスペースト組成物の各々を使用したこと以外は実施例1と同様にして転写フィルムを製造した。
この転写フィルムにおいて膜形成材料層の表面状態は、いずれもガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥は認められなかった。
その後、得られた転写フィルムの各々を使用したこと以外は実施例1と同様にして、膜形成材料層の転写および膜形成材料層の焼成処理を行って、20インチパネル用のガラス基板の表面に誘電体層(厚さ30μm±1.0μm)を形成した。
【0038】
実施例2〜5および比較例1〜5に係る組成物の各々について、▲1▼ 形成された誘電体層の形状を評価し、▲2▼ 当該誘電体層の中心線平均粗さ(Ra)を測定し、▲3▼ 当該誘電体層の光透過率(600nm)を測定した。
ここに、誘電体層の形状は、ひび割れ、基板からの剥離などの欠陥がなかった場合を「良好」と判定した。
以上の結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
本発明の組成物によれば下記のような効果が奏される。
(1)優れた表面平滑性(例えば、中心線平均粗さRaが0.2μm以下)と、優れた無色透明性(高い光透過率)とを兼ね備えたガラス焼結体を形成することができ、当該ガラス焼結体は、PDPの誘電体層として好適である。
(2)比較的低温条件(600℃以下)で行われる焼成によって結着樹脂を完全に分解除去することができ、これに由来する有機物質を含有しない無色透明性に優れたガラス焼結体を形成することができる。
(3)転写フィルムの製造に好適に使用することができる。
(4)膜形成材料層の転写性(ガラス基板に対する膜形成材料層の加熱接着性)に優れた転写フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】交流型のプラズマディスプレイパネルの断面形状を示す模式図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 ガラス基板
3 隔壁
4 バス電極
5 アドレス電極
6 蛍光物質
7 誘電体層
8 保護層
Claims (1)
- (A)平均粒子径が1〜8μmであり、粒子径分布が下記(1)および(2)に示す条件を満足することを特徴とするガラス粉末、(B)アクリル樹脂よりなる結着樹脂および(C)溶剤を含有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの誘電体層形成用ガラスペースト組成物。
(1)粒子径が10μm以上である粒子の割合が20重量%以下であること。
(2)粒子径が2.5〜3.8μmの範囲にある粒子の割合が20重量%以上であること。
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