JP3845949B2 - ガラスペースト組成物および転写フィルム並びにプラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents

ガラスペースト組成物および転写フィルム並びにプラズマディスプレイパネルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガラスペースト組成物に関し、さらに詳しくは、誘電体層を形成するために好適に使用することができるガラスペースト組成物、および当該ガラスペースト組成物による膜形成材料層を有する転写フィルム並びにプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近において、平板状の蛍光表示体としてプラズマディスプレイが注目されている。図1は交流型のプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう。)の断面形状を示す模式図である。同図において、1及び2は、対向配置されたガラス基板、3は隔壁であり、ガラス基板1、ガラス基板2及び隔壁3によりセルが区画形成されている。4はガラス基板1に固定されたバス電極、5はガラス基板2に固定されたアドレス電極、6はセル内に保持された蛍光物質、7はバス電極4を被覆するようガラス基板1の表面に形成された誘電体層、8は例えば酸化マグネシウムよりなる保護膜である。誘電体層7はガラス焼結体より形成され、その膜厚は例えば20〜50μmとされる。
【0003】
誘電体層7の形成方法としては、ガラス粉末、結着樹脂および溶剤を含有するペースト状の組成物(ガラスペースト組成物)を調製し、このガラスペースト組成物をスクリーン印刷法によってガラス基板1の表面に塗布して乾燥することにより膜形成材料層を形成し、次いでこの膜形成材料層を焼成することにより有機物質を除去してガラス粉末を焼結させる方法が知られている。
【0004】
ここに、ガラスペースト組成物を構成する結着樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリα−メチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂などが知られており、これらのうち、ガラス粉末の分散性、組成物の塗布特性、燃焼の容易性などの観点から、エチルセルロースが好ましいとされている(例えば特開平6−321619号、特開平2−124744号公報参照)。
【0005】
しかして、ガラス基板1上に形成する膜形成材料層の厚さは、焼成工程における有機物質の除去に伴う膜厚の目減量を考慮して、形成すべき誘電体層7の膜厚の1.3〜2.0倍程度とすることが必要であり、例えば、誘電体層7の膜厚を20〜50μmとするためには、30〜100μm程度の厚さの膜形成材料層を形成する必要がある。
一方、前記ガラスペースト組成物をスクリーン印刷法により塗布する場合に、1回の塗布処理によって形成される塗膜の厚さは15〜25μm程度である。
このため、膜形成材料層を所定の厚さとするためには、ガラス基板の表面に対して、当該ガラスペースト組成物を複数回(例えば2〜7回)にわたり繰り返して塗布(多重印刷)する必要がある。
【0006】
しかしながら、スクリーン印刷法を利用する多重印刷によって膜形成材料層を形成する場合には、当該膜形成材料層を焼成して形成される誘電体層が均一な膜厚(例えば公差が±5%以内)を有するものとならない。これは、スクリーン印刷法による多重印刷では、ガラス基板の表面に対してガラスペースト組成物を均一に塗布することが困難だからであり、塗布面積(パネルサイズ)が大きいほど、また、塗布回数が多いほど誘電体層における膜厚のバラツキの程度は大きいものとなる。そして、多重印刷による塗布工程を経て得られるパネル材料(当該誘電体層を有するガラス基板)には、その面内において、膜厚のバラツキに起因する誘電特性にバラツキが生じ、誘電特性のバラツキは、PDPにおける表示欠陥(輝度ムラ)の原因となる。
さらに、スクリーン印刷法では、スクリーン版のメッシュ形状が膜形成材料層の表面に転写されることがあり、このような膜形成材料層を焼成して形成される誘電体層は、表面の平滑性に劣るものとなる。
【0007】
スクリーン印刷法によって膜形成材料層を形成する場合における上記のような問題を解決する手段として、本発明者らは、ガラスペースト組成物を支持フィルム上に塗布し、塗膜を乾燥して膜形成材料層を形成し、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を、電極が固定されたガラス基板の表面に転写し、転写された膜形成材料層を焼成することにより、前記ガラス基板の表面に誘電体層を形成する工程(以下、「ドライフィルム法」ともいう。)を含むPDPの製造方法を提案している(特願平8−196304号明細書参照)。
このような製造方法によれば、膜厚の均一性および表面の均一性に優れた誘電体層を形成することができ、また、膜形成材料層が支持フィルム上に形成されてなる複合フィルム(以下、「転写フィルム」ともいう。)は、これをロール状に巻き取って保存することができる点でも有利である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セルロース誘導体などの従来公知の樹脂を含有するガラスペースト組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成する(転写フィルムを製造する)場合には、形成される膜形成材料層が十分な可撓性を有するものとならず、転写フィルムを折り曲げると、当該膜形成材料層の表面に微小な亀裂(ひび割れ)が発生するという問題がある。
また、セルロース誘導体を含有する膜形成材料層は、ガラス基板に対して十分な接着性(加熱接着性)を発揮することができないため、支持フィルムからガラス基板の表面に転写されにくいという問題もある。
【0009】
このような問題に対して、本発明者らは、結着樹脂としてアクリル樹脂を含有するガラスペースト組成物を調製し、当該ガラスペースト組成物を支持フィルム上に塗布することにより、膜形成材料層の転写性(ガラス基板に対する接着性)に優れた転写フィルムが得られることを見出した。
【0010】
しかしながら、アクリル樹脂を含有するガラスペースト組成物は、ガラス粉末の分散安定性が不十分であるために、当該組成物中においてガラス粉末の凝集物が経時的に発生したり、これらが沈降して、保存容器の底部にケーキ状の堆積物が発生したりする、という新たな問題が生じた。
そして、ガラス粉末の凝集物を含むガラスペースト組成物を塗布して形成される膜形成材料層には、前記凝集物に起因する筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥が発生し、また、ガラス粉末が沈降分離された組成物によれば、所期のガラス焼結体(誘電体層)を形成することができない。
また、アクリル樹脂を含有するガラスペースト組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成する場合において、形成される膜形成材料層の可撓性は依然として十分なものではない。
【0011】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、ガラス粉末の分散安定性に優れたガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ガラス粉末の凝集物を含有せず、当該凝集物を経時的にも発生させないガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の第3の目的は、保存容器の底部において、ケーキ状の堆積物を発生させない保存安定性に優れたガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の第4の目的は、塗膜を乾燥して形成される膜形成材料層に、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥を発生させないガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の第5の目的は、得られる膜形成材料層を焼成することにより、高い光透過率を有するガラス焼結体(例えばPDPの誘電体層)を形成することができるガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の第6の目的は、転写フィルムの製造に好適に用いることができるガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の第7の目的は、可撓性に優れた膜形成材料層を備えた転写フィルムを製造することのできるガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の第8の目的は、膜形成材料層の転写性(ガラス基板に対する膜形成材料層の加熱接着性)に優れた転写フィルムを製造することのできるガラスペースト組成物を提供することにある。
本発明の第9の目的は、膜形成材料層の転写性(ガラス基板に対する膜形成材料層の加熱接着性)に優れた転写フィルムを提供することにある。
本発明の第10の目的は、プラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラスペースト組成物は、(A)ガラス粉末、(B)結着樹脂および(C)下記一般式(1)で表される飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシランが含有されていることを特徴とする。
【0013】
【化2】
Figure 0003845949
【0014】
(式中、pは3〜20の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数である。)
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガラスペースト組成物について詳細に説明する。
本発明のガラスペースト組成物は、ガラス粉末、結着樹脂および特定の飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシラン(以下、「特定のアルコキシシラン化合物」ともいう。)を必須成分として含有する。
【0016】
<ガラス粉末>
本発明の組成物を構成するガラス粉体としては、その軟化点が400〜600℃の範囲内にあるものが好ましい。
ガラス粉末の軟化点が400℃未満である場合には、当該組成物による膜形成材料層の焼成工程において、結着樹脂などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラス粉末が溶融してしまうため、形成される誘電体層中に有機物質の一部が残留し、この結果、誘電体層の光透過率が低下する傾向がある。一方、ガラス粉末の軟化点が600℃を超える場合には、600℃より高温で焼成する必要があるために、ガラス基板に歪みなどが発生しやすい。
好適なガラス粉末の具体例としては、▲1▼ 酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(PbO−B2 3 −SiO2 系)の混合物、▲2▼ 酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(ZnO−B2 3 −SiO2 系)の混合物、▲3▼ 酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム(PbO−B2 3 −SiO2 −Al2 3 系)の混合物、▲4▼ 酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素(PbO−ZnO−B2 3 −SiO2 系)の混合物などを例示することができる。
【0017】
<結着樹脂>
本発明の組成物は、結着樹脂がアクリル樹脂であることが好ましい。
結着樹脂としてアクリル樹脂が含有されていることにより、形成される膜形成材料層には、ガラス基板に対する優れた(加熱)接着性が発揮される。従って、本発明の組成物を支持フィルム上に塗布して転写フィルムを製造する場合において、得られる転写フィルムは、膜形成材料層の転写性(ガラス基板への転写性)に優れたものとなる。
かかるアクリル樹脂としては、適度な粘着性を有してガラス粉末を結着させることができ、膜形成材料の焼成処理(400℃〜600℃)によって完全に酸化除去される(共)重合体の中から選択される。かかるアクリル樹脂には、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物の2種以上の共重合体、および下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物と共重合性単量体との共重合体が含まれる。
【0018】
【化3】
Figure 0003845949
【0019】
〔式中、R1 は水素原子またはメチル基を示し、R2 は1価の有機機を示す。〕
【0020】
上記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
これらのうち、上記一般式(2)中、R2 で示される基が、アルキル基またはオキシアルキル基を含有する基であることが好ましく、特に好ましい(メタ)アクリレート化合物として、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
他の共重合性単量体としては、上記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物ならば特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マイレン酸、ビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物が挙げられる。本発明の組成物を構成するアクリル樹脂における、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物由来の共重合成分は、通常70重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。
【0021】
本発明の組成物を構成するアクリル樹脂の分子量としては、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量として4,000〜300,000であることが好ましく、さらに好ましくは10,000〜200,000とされる。
本発明の組成物における結着樹脂の含有割合としては、ガラス粉末100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜30重量部とされる。結着樹脂の割合が過小である場合には、ガラス粉末を確実に結着保持することができず、一方、この割合が過大である場合には、焼成工程に長い時間を要したり、形成されるガラス焼結体(誘電体層)が十分な強度や膜厚を有するものとならなかったりする。
【0022】
<特定のアルコキシシラン化合物>
本発明の組成物においては、上記一般式(1)で表される飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシランが含有されている点に特徴を有している。
上記一般式(1)において、飽和アルキル基の炭素数を示すpは3〜20の整数とされ、好ましくは4〜16の整数とされる。
pが3未満である飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシランを含有させても、得られるガラスペースト組成物により形成される膜形成材料層において十分な可撓性が発現されない。一方、pの値が20を超える飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシランは分解温度が高く、得られるガラスペースト組成物による膜形成材料層の焼成工程において、有機物質(前記シラン誘導体)が完全に分解除去されない段階でガラス粉末が溶融してしまうため、形成される誘電体層中に有機物質の一部が残留し、この結果、誘電体層の光透過率が低下する傾向がある。
【0023】
特定のアルコキシシラン化合物の具体例としては、n−プロピルジメチルメトキシシラン、n−ブチルジメチルメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシラン、n−イコサンジメチルメトキシシランなどの飽和アルキルジメチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=1);
n−プロピルジエチルメトキシシラン、n−ブチルジエチルメトキシシラン、n−デシルジエチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルメトキシシラン、n−イコサンジエチルメトキシシランなどの飽和アルキルジエチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=2);
n−ブチルジプロピルメトキシシラン、n−デシルジプロピルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルメトキシシラン、n−イコサンジプロピルメトキシシランなどの飽和アルキルジプロピルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=3);
n−プロピルジメチルエトキシシラン、n−ブチルジメチルエトキシシラン、n−デシルジメチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルエトキシシラン、n−イコサンジメチルエトキシシランなどの飽和アルキルジメチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=1);
n−プロピルジエチルエトキシシラン、n−ブチルジエチルエトキシシラン、n−デシルジエチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルエトキシシラン、n−イコサンジエチルエトキシシランなどの飽和アルキルジエチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=2);
n−ブチルジプロピルエトキシシラン、n−デシルジプロピルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルエトキシシラン、n−イコサンジプロピルエトキシシランなどの飽和アルキルジプロピルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=3);
n−プロピルジメチルプロポキシシラン、n−ブチルジメチルプロポキシシラン、n−デシルジメチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルプロポキシシラン、n−イコサンジメチルプロポキシシランなどの飽和アルキルジメチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=1);
n−プロピルジエチルプロポキシシラン、n−ブチルジエチルプロポキシシラン、n−デシルジエチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルプロポキシシラン、n−イコサンジエチルプロポキシシランなどの飽和アルキルジエチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=2);
n−ブチルジプロピルプロポキシシラン、n−デシルジプロピルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルプロポキシシラン、n−イコサンジプロピルプロポキシシランなどの飽和アルキルジプロピルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=3);
【0024】
n−プロピルメチルジメトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、n−デシルメチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジメトキシシラン、n−イコサンメチルジメトキシシランなどの飽和アルキルメチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=1);
n−プロピルエチルジメトキシシラン、n−ブチルエチルジメトキシシラン、n−デシルエチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジメトキシシラン、n−イコサンエチルジメトキシシランなどの飽和アルキルエチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=2);
n−ブチルプロピルジメトキシシラン、n−デシルプロピルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジメトキシシラン、n−イコサンプロピルジメトキシシランなどの飽和アルキルプロピルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=3)
n−プロピルメチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジエトキシシラン、n−デシルメチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジエトキシシラン、n−イコサンメチルジエトキシシランなどの飽和アルキルメチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=1);
n−プロピルエチルジエトキシシラン、n−ブチルエチルジエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−イコサンエチルジエトキシシランなどの飽和アルキルエチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=2);
n−ブチルプロピルジエトキシシラン、n−デシルプロピルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジエトキシシラン、n−イコサンプロピルジエトキシシランなどの飽和アルキルプロピルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=3);
n−プロピルメチルジプロポキシシラン、n−ブチルメチルジプロポキシシラン、n−デシルメチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジプロポキシシラン、n−イコサンメチルジプロポキシシランなどの飽和アルキルメチルジプロポキシシラン類 (a=2,m=3,n=1);
n−プロピルエチルジプロポキシシラン、n−ブチルエチルジプロポキシシラン、n−デシルエチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジプロポキシシラン、n−イコサンエチルジプロポキシシランなどの飽和アルキルエチルジプロポキシシラン類 (a=2,m=3,n=2);
n−ブチルプロピルジプロポキシシラン、n−デシルプロピルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジプロポキシシラン、n−イコサンプロピルジプロポキシシランなどの飽和アルキルプロピルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=3);
【0025】
n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−イコサントリメトキシシランなどの飽和アルキルトリメトキシシラン類(a=3,m=1);
n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−イコサントリエトキシシランなどの飽和アルキルトリエトキシシラン類(a=3,m=2);
n−プロピルトリプロポキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシラン、n−イコサントリプロポキシシランなどの飽和アルキルトリプロポキシシラン類(a=3,m=3)などを挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
これらのうち、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシランなどが特に好ましい。
【0027】
本発明の組成物における上記特定のアルコキシシラン化合物の含有割合としては、ガラス粉末100重量部に対して、0.001〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.001〜5重量部とされる。特定のアルコキシシラン化合物の割合が過小である場合には、ガラス粉末の分散安定性の向上効果、形成される膜形成材料層における可撓性の向上効果を十分に発揮させることができない。一方、この割合が過大である場合には、得られるガラスペースト組成物を保存する際に粘度が経時的に上昇したり、特定のアルコキシシラン化合物同士で反応が起こり、焼成後の光透過率を下げる原因になったりする場合がある。
【0028】
<溶剤>
本発明の組成物には、通常、溶剤が含有される。上記溶剤としては、ガラス粉末との親和性、結着樹脂の溶解性が良好で、ガラスペースト組成物に適度な粘性を付与することができ、乾燥されることによって容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。
かかる溶剤の具体例としては、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類などを例示することができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の組成物における溶剤の含有割合としては、組成物の粘度を好適な範囲に維持する観点から、ガラス粉末100重量部に対して、5〜50重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜40重量部とされる。
【0029】
本発明のガラスペースト組成物には、上記の必須成分のほかに、粘着性付与剤、可塑剤、表面張力調整剤、安定剤、消泡剤、分散剤などの各種添加剤が任意成分として含有されていてもよい。
好ましいガラスペースト組成物の一例を示せば、ガラス粉末として、酸化鉛50〜80重量%、酸化ホウ素5〜20重量%、酸化ケイ素10〜30重量%からなる混合物100重量部と、ポリブチルメタクリレート(アクリル樹脂)10〜30重量部と、n−デシルトリメトキシシラン(特定のアルコキシシラン化合物)0.1〜10重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤)10〜50重量部とを必須成分として含有する組成物を挙げることができる。
【0030】
本発明の組成物は、上記ガラス粉末、結着樹脂および溶剤並びに任意成分を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミルなどの混練機を用いて混練することにより調製することができる。
上記のようにして調製される本発明の組成物は、塗布に適した流動性を有するペースト状の組成物であり、その粘度は、通常1,000〜30,000cpとされ、好ましくは3,000〜10,000cpとされる。
【0031】
本発明の組成物は、転写フィルムを製造するために特に好適に使用することができる。この転写フィルムは、支持フィルムと、この支持フィルム上に形成された膜形成材料層とにより構成され、ドライフィルム法による誘電体層の形成工程に使用される複合材料である。
【0032】
転写フィルムを構成する支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーター、ブレードコーターなどによって本発明の組成物を塗布することができ、膜形成材料層をロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。支持フィルムを形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。支持フィルムの厚さとしては、例えば20〜100μmとされる。
【0033】
転写フィルムを構成する膜形成材料層は、本発明の組成物を前記支持フィルム上に塗布し、塗膜を乾燥して溶剤の一部又は全部を除去することにより形成することができる。
本発明の組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、膜厚の均一性に優れた膜厚の大きい(例えば20μm以上)塗膜を効率よく形成することができるものであることが好ましく、具体的には、ロールコーターによる塗布方法、ブレードコーターによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法、ワイヤーコーターによる塗布方法などを好ましいものとして挙げることができる。
なお、本発明の組成物が塗布される支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、ガラス基板への転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
また、転写フィルムには、膜形成材料層の表面に保護フィルム層が設けられてもよい。このような保護フィルム層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムなどを挙げることができる。
【0034】
本発明の組成物は、上記のように、支持フィルム上に膜形成材料層を形成して転写フィルムを製造する際に特に好適に使用することができるが、これらの用途に限定されるものではなく、従来において公知の膜形成材料層の形成方法、すなわち、スクリーン印刷法などによって当該組成物をガラス基板の表面に直接塗布し、塗膜を乾燥することにより膜形成材料層を形成する方法にも好適に使用することができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を示す。
<実施例1>
(1)ガラスペースト組成物の調製:
ガラス粉末として、酸化鉛70重量%、酸化ホウ素10重量%、酸化ケイ素20重量%の組成を有するPbO−B2 3 −SiO2 系の混合物(軟化点500℃)100部、結着樹脂として、ブチルメタクリレート(70重量%)とメチルメタクリレート(30重量%)とを共重合させて得られたアクリル樹脂(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量:80,000、以下「アクリル樹脂A」という。)20部、特定のアルコキシシラン化合物であるn−ブチルトリメトキシシラン1部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル20部を分散機を用いて混練することにより、粘度が5,000cpである本発明の組成物を調製した。
【0036】
(2)組成物の保存安定性の評価
上記(1)で調製した本発明の組成物を容器内に収容し、当該容器を40℃の恒温槽中において30日間放置した。次いで、当該容器の底部を観察したところ、ケーキ状の堆積物などは全く認められず、この組成物は保存安定性に優れているものであった。
【0037】
(3)転写フィルムの製造:
上記(1)で調製した本発明の組成物を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる支持フィルム(幅400mm,長さ30m,厚さ38μm)上にブレードコーターを用いて塗布し、形成された塗膜を100℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去し、これにより、厚さ50μmの膜形成材料層が支持フィルム上に形成されてなる転写フィルムを製造した。
【0038】
(4)転写フィルムの評価:
上記(3)で製造した転写フィルムについて、膜形成材料層の表面状態を顕微鏡を用いて観察したところ、ガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥は認められなかった。
また、転写フィルムを折り曲げても、膜形成材料層の表面にひび割れ(屈曲亀裂)が発生することはなく、当該膜形成材料層は良好な可撓性を有するものであった。
【0039】
(5)膜形成材料層の転写:
20インチパネル用のガラス基板の表面(バス電極の固定面)に、膜形成材料層の表面が当接されるよう、上記(3)で製造した転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムを加熱ロールにより熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ロールの表面温度を110℃、ロール圧を3kg/cm2 、加熱ロールの移動速度を1m/分とした。
熱圧着処理の終了後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去した。これにより、ガラス基板の表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態となった。
【0040】
(6)膜形成材料層の焼成(誘電体層の形成):
上記(5)により膜形成材料層を転写形成したガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を、常温から10℃/分の昇温速度で550℃まで昇温し、550℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、ガラス基板の表面に、ガラス焼結体よりなる誘電体層を形成した。
【0041】
(7)誘電体層の評価:
この誘電体層の膜厚(平均膜厚および公差)を測定したところ30μm±0.5μmの範囲にあり、膜厚の均一性に優れているものであった。
また、このようにして、誘電体層を有するガラス基板よりなるパネル材料を5台分作製し、形成された誘電体層の光透過率(測定波長600nm)を測定したところ92%であり、良好な透明性を有するものであることが認められた。
【0042】
<実施例2〜9>
表1に示す処方に従って特定のアルコキシシラン化合物を変更したこと以外は実施例1と同様にして本発明のガラスペースト組成物を調製した。
次いで、得られたガラスペースト組成物の各々を使用したこと以外は実施例1と同様にして転写フィルムを製造した。
その後、得られた転写フィルムの各々を使用したこと以外は実施例1と同様にして、膜形成材料層の転写および膜形成材料層の焼成処理を行って、20インチパネル用のガラス基板の表面に誘電体層(厚さ30μm±0.5μm)を形成した。
【0043】
実施例2〜9に係る組成物の各々について、実施例1と同様にして、▲1▼ 組成物の保存安定性(保存容器底部におけるケーキ状の堆積物の有無)、▲2▼ 組成物により形成された膜形成材料層の表面状態(ガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥の有無)、▲3▼ 当該膜形成材料層の可撓性(屈曲時におけるひび割れ発生の有無)、▲4▼ 当該膜形成材料層の転写性(ガラス基板への加熱接着性)を評価し、▲5▼ 形成された誘電体層の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
<比較例1>
表2に示す処方に従って、特定のアルコキシシラン化合物を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較用のガラスペースト組成物を調製し、当該組成物を使用して転写フィルムを製造し、当該転写フィルムを使用して膜形成材料層の転写およびその焼成処理を行うことにより、20インチパネル用のガラス基板の表面に誘電体層(厚さ30μm±1.5μm)を形成した。
比較例1に係る組成物について、実施例1と同様にして、組成物の保存安定性を評価したところ、保存容器の底部においてケーキ状で硬い堆積物が認められ、この組成物は保存安定性に劣るものであった。
また、当該組成物により形成された膜形成材料層の表面状態を顕微鏡を用いて観察したところ、20〜100μm程度のガラス粉末の凝集物および当該凝集物を核とするクレーターが多数認められた。
さらに、この転写フィルムは柔軟性に乏しく、当該転写フィルムを折り曲げたところ、膜形成材料層の表面にひび割れ(屈曲亀裂)が発生し、当該膜形成材料層は良好な可撓性を有するものではなかった。
なお、比較例1に係る転写フィルムによれば、これを構成する膜形成材料層をガラス基板の表面に転写することができ、当該膜形成材料層の焼成処理を経て形成された誘電体層の光透過率は90%であった。
以上の結果を表2にまとめて示す。
【0045】
<比較例2>
表2に示す処方に従って、n−ブチルトリメトキシシランに代えてトリメチルメトキシシラン1部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較用のガラスペースト組成物を調製し、当該組成物を使用して転写フィルムを製造し、当該転写フィルムを使用して膜形成材料層の転写およびその焼成処理を行うことにより、20インチパネル用のガラス基板の表面に誘電体層(厚さ30μm±1.0μm)を形成した。
この比較例2に係る組成物について、実施例1と同様にして、組成物の保存安定性を評価したところ、ケーキ状の堆積物などは認められず、この組成物は保存安定性に優れているものであった。
また、当該組成物により形成された膜形成材料層の表面状態を顕微鏡を用いて観察したところ、ガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥は認められなかった。
しかしながら、この転写フィルムは柔軟性に乏しく、当該転写フィルムを折り曲げたところ、膜形成材料層の表面にひび割れ(屈曲亀裂)が発生し、当該膜形成材料層は良好な可撓性を有するものではなかった。
なお、比較例2に係る転写フィルムによれば、これを構成する膜形成材料層をガラス基板の表面に転写することができ、当該膜形成材料層の焼成処理を経て形成された誘電体層の光透過率は92%であった。
以上の結果を表2にまとめて示す。
【0046】
<比較例3>
表2に示す処方に従って、n−ブチルトリメトキシシランに代えてn−テトラコサントリメトキシシラン1部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較用のガラスペースト組成物を調製し、当該組成物を使用して転写フィルムを製造し、当該転写フィルムを使用して膜形成材料層の転写およびその焼成処理を行うことにより、20インチパネル用のガラス基板の表面に誘電体層(厚さ30μm±1.0μm)を形成した。
この比較例3に係る組成物について、実施例1と同様にして、組成物の保存安定性を評価したところ、ケーキ状の堆積物などは認められず、この組成物は保存安定性に優れているものであった。
また、当該組成物により形成された膜形成材料層の表面状態を顕微鏡を用いて観察したところ、ガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥は認められなかった。
また、比較例3に係る転写フィルムを折り曲げても、膜形成材料層の表面にひび割れ(屈曲亀裂)が発生することはなく、当該膜形成材料層は良好な可撓性を有するものであり、これを構成する膜形成材料層をガラス基板の表面に転写することができた。
しかしながら、当該膜形成材料層の焼成処理を経て形成された誘電体層の光透過率は70%であり、透明性に劣るものであった。
以上の結果を表2にまとめて示す。
【0047】
<比較例4>
表2に示す処方に従って、n−ブチルトリメトキシシランに代えてN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較用のガラスペースト組成物を調製し、当該組成物を使用して転写フィルムを製造し、当該転写フィルムを使用して膜形成材料層の転写およびその焼成処理を行うことにより、20インチパネル用のガラス基板の表面に誘電体層(厚さ30μm±1.5μm)を形成した。
この比較例4に係る組成物について、実施例1と同様にして、組成物の保存安定性を評価したところ、ケーキ状の堆積物などは認められず、この組成物は保存安定性に優れているものであった。
また、当該組成物により形成された膜形成材料層の表面状態を顕微鏡を用いて観察したところ、ガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥は認められなかった。
また、比較例4に係る転写フィルムを折り曲げても、膜形成材料層の表面にひび割れ(屈曲亀裂)が発生することはなく、当該膜形成材料層は良好な可撓性を有するものであり、これを構成する膜形成材料層をガラス基板の表面に転写することができた。
しかしながら、当該膜形成材料層の焼成処理を経て形成された誘電体層の光透過率は60%であり、透明性に劣るものであった。
以上の結果を表2にまとめて示す。
【0048】
<比較例5>
表2に示す処方に従って、n−ブチルトリメトキシシランに代えて3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較用のガラスペースト組成物を調製し、当該組成物を使用して転写フィルムを製造し、当該転写フィルムを使用して膜形成材料層の転写およびその焼成処理を行うことにより、20インチパネル用のガラス基板の表面に誘電体層(厚さ30μm±1.0μm)を形成した。
この比較例5に係る組成物について、実施例1と同様にして、組成物の保存安定性を評価したところ、ケーキ状の堆積物などは認められず、この組成物は保存安定性に優れているものであった。
また、当該組成物により形成された膜形成材料層の表面状態を顕微鏡を用いて観察したところ、ガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥は認められなかった。
しかしながら、この転写フィルムは柔軟性に乏しく、当該転写フィルムを折り曲げたところ、膜形成材料層の表面にひび割れ(屈曲亀裂)が発生し、当該膜形成材料層は良好な可撓性を有するものではなかった。
なお、比較例5に係る転写フィルムによれば、これを構成する膜形成材料層をガラス基板の表面に転写することができたが、当該膜形成材料層の焼成処理を経て形成された誘電体層の光透過率は70%であり、透明性に劣るものであった。
以上の結果を表2にまとめて示す。
【0049】
<比較例6>
ガラス粉末として、酸化鉛70重量%、酸化ホウ素10重量%、酸化ケイ素20重量%の組成を有するPbO−B2 3 −SiO2 系の混合物(軟化点500℃)100部、結着樹脂としてエチルセルロース(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量:300,000)5部、溶剤としてαテルピネオール20部を分散機を用いて混練することにより、粘度が50,000cpである比較用のガラスペースト組成物を調製し、当該組成物を使用して転写フィルムを製造した。
この比較例6に係る組成物について、実施例1と同様にして、組成物の保存安定性を評価したところ、ケーキ状の堆積物などは認められず、この組成物は保存安定性に優れているものであった。
また、当該組成物により形成された膜形成材料層の表面状態を顕微鏡を用いて観察したところ、ガラス粉末の凝集物、筋状の塗装跡、クレーター、ピンホールなどの膜欠陥は認められなかった。
しかしながら、この転写フィルムは柔軟性に乏しく、当該転写フィルムを折り曲げたところ、膜形成材料層の表面にひび割れ(屈曲亀裂)が発生し、当該膜形成材料層は良好な可撓性を有するものではなかった。
さらに、この転写フィルムを使用し、実施例1と同一の圧着条件でガラス基板の表面に膜形成材料層の転写を試みたが、当該膜形成材料層を転写することができなかった。
以上の結果を表2にまとめて示す。
【0050】
【表1】
Figure 0003845949
【0051】
【表2】
Figure 0003845949
【0052】
【発明の効果】
本発明の組成物によれば下記のような効果が奏される。
(1)本発明の組成物は、ガラス粉末の分散安定性に優れており、ガラス粉末の凝集物が生成することはない。
(2)本発明の組成物は保存安定性に優れており、本発明の組成物を長期間保存しても、ガラス粉末が沈降して容器の底部に堆積するようなことはない。
(3)膜欠陥のない均質な膜形成材料層を形成することができる。
(4)ガラス基板との接着性に優れた膜形成材料層を形成することができる。
(5)高い光透過率を有するガラス焼結体(PDPの誘電体層)を形成することができる。
(6)転写フィルムの製造に好適に使用することができる。
(7)可撓性に優れた膜形成材料層を支持フィルム上に形成することができる。
(8)膜形成材料層の転写性(ガラス基板への転写性)に優れた転写フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】交流型のプラズマディスプレイパネルの断面形状を示す模式図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 ガラス基板
3 隔壁
4 バス電極
5 アドレス電極
6 蛍光物質
7 誘電体層
8 保護層

Claims (6)

  1. (A)ガラス粉末、(B)結着樹脂および(C)下記一般式(1)で表される飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシランが含有されていることを特徴とするガラスペースト組成物。
    Figure 0003845949
    (式中、pは3〜20の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数である。)
  2. (A)ガラス粉末の軟化点が400〜600℃である、請求項1記載のガラスペースト組成物。
  3. (B)結着樹脂がアクリル樹脂である、請求項1記載のガラスペースト組成物。
  4. プラズマディスプレイパネルの誘電体層形成用に用いられる、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガラスペースト組成物。
  5. 支持フィルムと、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガラスペースト組成物を前記支持フィルム上に塗布して得られる膜形成材料層とにより構成される、転写フィルム。
  6. ガラス基板の表面に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガラスペースト組成物よりなる膜形成材料層を形成し、焼成処理することにより、当該ガラス基板の表面にガラス焼結体よりなる誘電体層を形成する工程を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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