JP3877173B2 - 膜形成材料層、転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、および誘電体層形成基板 - Google Patents

膜形成材料層、転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、および誘電体層形成基板 Download PDF

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Description

本発明はプラズマディスプレイパネルの誘電体層形成に好適に使用することのできる膜形成材料層、および転写シートに関し、より詳細には、優れた光学特性を有する品質の高い誘電体層を形成することができる新規な膜形成材料層、転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、誘電体層形成基板、及びプラズマディスプレイパネルに関する。
近年、フラットパネルディスプレイの技術分野において、大型で且つ薄型のディスプレイを容易に実現できるプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう。)が注目されており、家庭向け大型壁掛けテレビ用の表示デバイスとしての需要拡大が期待されている。一般に、PDPは前面板と背面板を貼り合わせて構成されているが、AC型PDPの場合、前面板を構成するガラス基板の表面には電極がパターン形成され、その表面は透明誘電体層で覆われた構造になっている。従来からこの誘電体層の形成方法として、無機粉体、結着(バインダ)樹脂および溶剤などからなるペースト状組成物を、電極が固定されたガラス基板上に所定の厚さになるまで複数回塗布するスクリーン印刷法などが用いられてきた。しかし、このようなスクリーン印刷法による多重印刷では、膜厚のバラツキを制御することが難しく、また、ペースト状組成物を重ねて塗布する際に空気中の微小なゴミなどを巻き込むことで、焼成後の誘電体層に欠陥を生じる原因となったり、作業が煩雑で量産性に劣ることが問題となっていた。
そこで、上記スクリーン印刷による問題点を解決するため、支持フィルム上に無機粉体を含有する前記ペースト状組成物をシート状に塗布し、乾燥させて膜形成材料層が支持フィルム上に積層された転写フィルムが考案されている。この転写フィルムを用いて、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を、電極が固定されたガラス基板の表面に一括転写し、転写された膜形成材料層を焼成することにより、前記ガラス基板表面に誘電体層を形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。
これまでも、このような転写フィルムを用いた誘電体層の形成に関し、得られる誘電体層の特性向上を目指して種々の検討が行われてきた。中でもPDPの高輝度・高画質を実現するため、ディスプレイの構成部材として用いられる誘電体層には高い光透過率、即ち透明性が求められていることから、誘電体層の光透過率の向上を目的として、ガラスペースト組成物に用いるバインダ樹脂の改良なども検討されてきた。
例えば、前記ガラスペースト組成物において、バインダ樹脂に親水基を有するアクリル樹脂を含有させることで、ガラス粉末を安定的に分散させる方法が開示されている。前記ガラスペースト組成物は、当該ガラスペースト組成物中にガラス粉末の凝集物を生成させることがないため、当該組成物をシート状に成形してなる膜形成材料層には膜欠陥などが発生することなく、当該膜形成材料層を焼成処理することによって、高い光透過率を有するガラス焼結体が得られることなどが記載されている(特許文献2参照)。
特開平9−102273号公報 特開平10−324541号公報
しかしながら、従来公知の誘電体層形成に使用されているガラスペースト組成物を用いて転写フィルムを作成した場合、支持フィルム上に膜形成材料層を形成する際に当該膜形成材料層に混入された気泡や、焼成工程において膜形成材料層中の有機成分が分解されることで発生するガスが、焼成時に十分に抜け切れず誘電体層中に微細な気泡として残存し、誘電体層に曇りを生じさせ光透過率の低下を招くことが問題となっていた。また、誘電体層形成に用いるガラス粉末の溶融時における粘度が高い場合、膜形成材料層に内在された気泡、あるいは有機成分由来のガスが気泡となって抜け出た跡が、クレーターやピンホールなどの欠陥となり、誘電体層の表面を粗面化させてしまう原因となっていた。
また、誘電体層形成において、焼成時の熱によるガラス基板の変形や、当該ガラス基板にパターン形成された電極の腐食を防ぐため低温度域での焼成が求められているが、溶融時の粘度が高いガラス粉末を用いてなるペースト状組成物を使用した場合、当該ペースト状組成物からなる膜形成材料層中に内在および発生する気泡が低温度域での焼成ではさらに抜けにくくなり、残存した気泡により誘電体層の光学特性に悪影響を与えることが課題となっていた。
本発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、本発明者らは膜形成材料層の原料である無機粉体含有樹脂組成物として、ガラス粉末および(メタ)アクリル系樹脂に加え、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の金属化合物を添加することにより、焼成工程での脱泡性(気泡抜け性)において極めて優れた効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の膜形成材料層は、特に誘電体層における気泡の残存防止に顕著な効果を有するため、該膜形成材料層を用いてなる転写シートを使用した場合には、低温度域(例えば600℃以下)で焼成させても焼成後には欠陥や曇りがなく、高い光透過率を有する光学特性に優れた誘電体層を形成することができる。
すなわち、本発明は、ガラス粉末と、ガラス粉末100重量部に対して(メタ)アクリル系樹脂5〜50重量部と、ガラス粉末100重量部に対してアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の金属化合物0.01〜10重量部とを含有する無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなる膜形成材料層、に関する。
前記アルカリ金属化合物は、リチウム系化合物、カリウム系化合物及びナトリウム系化合物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明においては、ガラス粉末の600℃での粘度が150Pa・s以下であることが好ましい。
また本発明は、前記膜形成材料層が支持フィルム上に積層されている転写シートに関する。
さらに本発明は、前記転写シートの膜形成材料層を基板上に転写し、当該膜形成材料層を焼成処理する工程を含む誘電体層形成基板の製造方法、前記方法により製造される誘電体層形成基板、及び該誘電体層形成基板を用いたプラズマディスプレイパネルに関する。前記誘電体層形成基板の光透過率は80%以上であることが好ましく、さらに好ましくは81%以上、特に好ましくは82%以上である。
本発明の膜形成材料層は、ガラス粉末(メタ)アクリル系樹脂に加え、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の金属化合物を添加剤として含有しており、該添加剤の効果により焼成工程において脱泡が促進されるため、焼成後の誘電体層に気泡が残存することがない。特に、本発明の膜形成材料層は600℃以下の低温度域での焼成においても有効であり、焼成後には気泡が起因して生じるクレーターやピンホールなどの欠陥や曇りの発生がなく、且つ高い光透過率を有する誘電体層、および当該誘電体層が形成された誘電体層形成基板を製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、ガラス粉末および(メタ)アクリル系樹脂に加え、添加剤としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の金属化合物を含有している。そのため、本発明の無機粉体含有樹脂組成物からなる膜形成材料層を有する転写シートを、電極がパターン形成されたガラス基板上に転写し、転写された膜形成材料層を焼成する工程において、前記膜形成材料層の有機成分が分解して発生するガスおよび内在気泡を焼成時に脱泡させる能力に優れている。また、焼成後には気泡が残存することがないので誘電体層に欠陥や曇りを生じることがなく、且つ高い光透過率を有する光学特性に優れた誘電体層の形成が可能となる。
また、本発明は特に、熱によるガラス基板の変形や、当該ガラス基板にパターン形成された電極の腐食などを生じない低温度域(例えば600℃以下)での焼成において有効である。
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、ガラス粉末および(メタ)アクリル系樹脂に加え、脱泡を促進し、誘電体層への気泡の残存を防止するため、添加剤としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の金属化合物を含有することを特徴としている。
本発明において、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物は、後述するガラス粉末の構成成分としてあらかじめ含まれている材料(例えば酸化鉛など)を指すのではなく、誘電体層への気泡の残存を防止することを目的として、本発明の無機粉体含有樹脂組成物に対し、ガラス粉末とは別に敢えて別途添加するものであり、これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明で使用するアルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムの酸化物、過酸化物、水酸化物、無機塩、及び有機塩を用いることができる。ナトリウム系化合物としては具体的に、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、無水リン酸ナトリウムなどを挙げることができる。また、カリウム系化合物としては具体的に、酸化カリウム、過酸化カリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、酪酸カリウム、リン酸カリウムなどを挙げることができる。他のアルカリ金属についても同様の化合物を挙げることができる。これらの中でも、脱泡性に顕著な効果を示し、誘電体層の光透過率を向上させる点からリチウム系化合物やナトリウム系化合物やカリウム系化合物を用いることが好ましい。特に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いることにより、誘電体層形成基板の光透過率を81%以上にすることが可能である。
本発明で使用するアルカリ土類金属化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びラジウムの酸化物、過酸化物、水酸化物、無機塩、及び有機塩を用いることができる。
マグネシウム系化合物としては具体的に、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、無水リン酸マグネシウムなどを挙げることができる。また、カルシウム系化合物としては具体的に、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを挙げることができる。他のアルカリ土類金属についても同様の化合物を挙げることができる。これらの中でも、脱泡性に顕著な効果を示し、誘電体層の光透過率を向上させる点からマグネシウム系化合物やカルシウム系化合物を用いることが好ましく、特に酸化マグネシウムや酸化カルシウムを用いることが好ましい。
本発明の無機粉体含有樹脂組成物に添加するアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物の割合は、ガラス粉末100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下であり好ましくは、0.05重量部以上1.0重量部以下である。アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物の添加量が、ガラス粉末100重量部に対して0.01重量部未満の場合には、焼成工程において脱泡効果が乏しくなり、誘電体層に気泡が残存して高い光透過率が得られなくなる一方、ガラス粉末100重量部に対して10重量部を超える場合は、焼成工程で膜形成材料層中にアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が局所的に偏析し、焼成後には完全に分解除去しきれなかったこれらの化合物が残渣となって誘電体層中に残り、光学特性の低下と共に表面平滑性の悪化を招く
また、本発明で使用する鉛系化合物としては、酸化物、過酸化物、水酸化物、無機塩、有機塩を用いることができ、具体的には酸化鉛、過酸化鉛、水酸化鉛、塩化鉛、臭化鉛、ヨウ化鉛、硝酸鉛、酢酸鉛などを挙げることができる。これらの中でも、脱泡性に顕著な効果を示し、誘電体層の光透過率を向上させる点から酸化鉛を好適に使用することができる。酸化鉛を用いることにより、誘電体層形成基板の光透過率を81%以上にすることが可能である。
本発明の無機粉体含有樹脂組成物に添加する前記鉛系化合物の割合は、ガラス粉末100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下であり好ましくは0.1重量部以上6重量部以下である。前記鉛系化合物の添加量が、ガラス粉末100重量部に対して0.01重量部未満の場合は、焼成工程において脱泡効果が乏しくなり、誘電体層に気泡が残存して高い光透過率が得られなくなる一方、ガラス粉末100重量部に対して10重量部を超える場合は、焼成工程で膜形成材料層中に鉛系化合物が局所的に偏析し、焼成後には完全に分解除去しきれなかったこれらの化合物が残渣となって誘電体層中に残り、光学特性の低下と共に表面平滑性の悪化を招く
本発明おけるガラス粉末は分散安定性の点から、平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましい。
ガラス粉末としては公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、1)酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(ZnO−B−SiO系)の混合物、2)酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(ZnO−B−SiO−Al系)の混合物、3)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化カルシウム(PbO−B−SiO−CaO系)の混合物、4)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(PbO−B−SiO−Al系)の混合物、5)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−ZnO−B−SiO系)の混合物、6)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(PbO−ZnO−B−SiO−Al系)の混合物などを挙げることができる。また、必要に応じてこれらにNaO、CaO、BaO、Bi、SrO、TiO、CuO、又はInなどを添加したものであってもよい。
また、前記ガラス粉末を用いて焼成処理により誘電体層を形成することを考慮すると、軟化点が400℃から650℃の範囲にあるガラス粉末が好ましい。中でも、600℃での粘度が150Pa・s以下であるガラス粉末が誘電体層形成用途として好ましく、さらに好ましくは20Pa・s以上140Pa・s以下である。一方、前記ガラス粉末の600℃での粘度が150Pa・sを超える場合は、本発明に特有の添加剤として記載した前記アルカリ金属化合物などの添加により、気泡を効果的に除去し高い光透過率が得られたとしても、誘電体層に該気泡の抜け跡が残ってしまい、良好な表面平滑性が得られない場合がある。
本発明では、基板上にパターン形成された電極に、転写シートとしての膜形成材料層を追従させるために必要な段差吸収性および転写性を向上させる点から、バインダ樹脂として(メタ)アクリル系樹脂を使用する。特に本発明ではカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂にカルボキシル基を導入することにより、膜形成材料層を形成した転写シートの凝集性を高め強度を上げることができ、また焼成後の誘電体層の表面平滑性を向上させることができる。
本発明の無機粉体含有樹脂組成物における前記(メタ)アクリル系樹脂含有量はガラス粉末100重量部に対して5重量部以上50重量部以下であり、好ましくは10重量部以上40重量部以下であり、さらに好ましくは15重量部以上30重量部以下である。(メタ)アクリル系樹脂の含有量がガラス粉末100重量部に対して5重量部未満の場合はガラス粉末をシート状の膜形成材料層に形成することが困難になり、一方、50重量部を超える場合には、シート変形が起こり易くなり、保存時の形状安定性に劣るため好ましくない。
本発明においてバインダ樹脂として使用する前記(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量が5万以上50万以下であることが好ましく、さらに好ましくは5万以上30万以下である。前記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が5万未満の場合には、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布してシート状に膜形成材料層を形成する際、前記膜形成材料層の強度が劣りもろくひび割れの原因となり、また転写シートとして用いる際には、基板への十分な転写性が得られず作業性の低下を招くため好ましくない。一方、前記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が50万を超える場合には、無機粉体含有樹脂組成物の粘度が高くなり、無機粉体の分散性が悪くなるため好ましくない。
前記(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマーの重合体、前記モノマーと他の重合性単量体との共重合体、またはそれらの混合物であってよい。また、本発明では特に、誘電体層の表面平滑性を向上させる点から前記モノマーにカルボキシル基含有モノマーを共重合させてカルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂とすることが好ましい。
前記(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メグ)アクリレ−ト、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレ一ト、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、およびフェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、2−メチルシス(メタ)アクリル酸、アリル酢酸、クロトン酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、ジメチルフマル酸、イタコン酸、およびビニル酢酸などが挙げられる。本発明では特に、誘電体層の表面平滑性を高めることを目的として、これらのカルボキシル基含有モノマーが好適に使用される。
前記(メタ)アクリル系樹脂はカルボキシル基含有モノマーを0.1〜10モル%含有することが好ましい。含有する前記カルボキシル基含有モノマーの割合が0.1モル%未満の場合には、支持フィルム上に形成された膜形成材料層の凝集力が乏しくなり転写シートとしての強度に劣るため好ましくなく、一方、10モル%を超える場合には、焼成時に分解除去されにくく、誘電体層の光学特性の低下を招く傾向となり好ましくない。
また、前記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は30℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは20℃以下である。前記ガラス転移温度が30℃を超える場合には、転写シートとした際に可とう性のないシートとなり、段差吸収性および転写性に乏しくハンドリング性が低下するため好ましくない。なお、前記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、用いる共重合体の組成比を適宜変化させることにより30℃以下に調整することが可能である。
本発明において、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートを作成する場合には、支持フィルム上に均一に塗布できるように当該組成物中に溶剤を加えることが好ましい。
本発明で用いる溶剤としては、ガラス粉末との親和性がよく、且つ、(メタ)アクリル系樹脂の溶解性がよいものであれば特に制限されるものではない。例えば、テルピネオール、ジヒドロ−α−テルピネオール、ジヒドロ−α−テルピニルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、テレビン油、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロへキサノン、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロへキサノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコ−ルモノメチルエーテル、エチレングリコ−ルモノエチルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−1−イソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−3−イソブチレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、任意の割合で2種類以上を併用してもよい。
本発明に用いる前記溶剤の添加量は、ガラス粉末100重量部に対して、10重量部以上100重量部以下であることが好ましく、より好ましくは20重量部以上70重量部以下、特に好ましくは30重量部以上50重量部以下である。溶剤の添加量が10重量部未満の場合は、ガラス粉末の分散が困難となり、また転写シートとした際には膜形成材料層がもろくシート成形性に劣るため好ましくなく、100重量部を超える場合には、転写シートの乾燥が不十分となり、基板に転写して焼成炉にて焼成する際、蒸発する溶剤により作業環境を悪化させるため好ましくない。
また、本発明の無機粉体含有樹脂組成物には、可塑剤を添加してもよい。可塑剤を添加することにより、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの可とう性や柔軟性、膜形成材料層の基板への転写性などを調整することができる。
本発明における前記可塑剤の添加量は、ガラス粉末100重量部に対して20重量部以下であることがよく、好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。可塑剤の添加量が20重量部を超えると、得られる転写シートの強度が低下してしまうため好ましくない。
本発明の無機粉体含有樹脂組成物には、上記成分の他、シランカップリング剤、粘着性付与剤、レベリング剤、安定剤、消泡剤などの各種添加剤を添加してもよい。
本発明の転写シートは、支持フィルムと、少なくともこの支持フィルム上に形成された膜形成材料層とにより構成されており、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を基板表面に一括転写するために用いられるものである。
前記転写シートは、前記無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、溶剤を乾燥除去して腹形成材料層を形成することにより作製される。
本発明における転写シートを構成する支持フィルムは耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可とう性を有することにより、ロールコータなどによってペースト状の無機粉体含有樹脂組成物を塗布することができ、膜形成材料層をロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。
本発明で使用する支持フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルや、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
前記支持フィルムの厚さは特に制限されないが、転写シートの形状を安定に保持するためには、25μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。
なお、前記支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、膜形成材料層を基板上に転写する工程において支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
本発明の無機粉体含有樹脂組成物を前記支持フィルム上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロールコータ、スロット、ファウンテンなどのダイコータ、スクイズコータ、カーテンコータなどの塗布方法を採用することができるが、支持フィルム上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
本発明の無機粉体含有樹脂組成物からなる膜形成材料層の厚さは、ガラス粉末の含有率、誘電体層を形成する基板の種類やサイズなどによっても異なるが、10μm以上200μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは30μm以上100μm以下である。この厚さが10μm未満である場合には、最終的に形成される誘電体層の膜厚が不十分となり、所望の誘電特性を確保することができない傾向にあり、200μmを超える場合は、転写シートの形状保持が困難となり、膜形成材料層をロール状に巻き取った状態での保存安定性に欠けるため好ましくない。通常、該膜形成材料層の厚さが30μm以上100μm以下であれば焼成後、PDPにおける誘電体層に要求される膜厚を十分に確保することができる。さらに、当該膜形成材料層の膜厚は均一であるほど好ましく、膜厚公差は±5%以内であることが望ましい。
また、本発明における転写シートには、前記膜形成材料層の表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルや、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどが挙げられる。該保護フィルムでカバーされた転写シートは、ロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。なお、当該保護フィルムの表面には離型処理が施されていてもよい。
本発明における誘電体層形成基板の製造方法は、前記記載の転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を例えば400℃以上650℃以下で焼成し、基板上に誘電体層を形成する焼成工程を含む。
本発明において、誘電体層が形成される基板としては、セラミックや金属などの基板が挙げられ、特にPDPを作製する場合には、適切な電極が固定されたガラス基板が用いられる。
本発明における膜形成材料層の前記ガラス基板への転写工程の一例を以下に示すが、基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態にできれば、その方法は特に制限されるものではない。
本発明において適宜使用される転写シートの保護フィルムを剥離した後、電極が固定されたガラス基板の表面に、膜形成材料層表面を当接するように転写シートを重ね合わせ、この転写シートを加熱ロール式のラミネータなどにより熱圧着した後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去する。これにより、ガラス基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態となる。
前記膜形成材料層の転写条件としては、例えば、ラミネータの表面温度は25℃以上100℃以下、ロール線圧は0.5kg/cm以上15kg/cm以下、移動速度は0.1m/分以上5m/分以下であるが、これら条件に限定されるものではない。また、ガラス基板は予熱されていてもよく、予熱温度は60℃以上100℃以下の範囲であればよい。
本発明における膜形成材料層の焼成工程の一例を以下に示すが、膜形成材料層を適宜の加熱下で焼結させ、基板上に誘電体層を形成できればその方法は特に制限されるものではない。
前記記載の膜形成材料層が形成されたガラス基板を、例えば400℃以上650℃以下の雰囲気下に配置することにより、膜形成材料層中の有機物質((メタ)アクリル系樹脂、添加剤、残存溶剤など)が分解除去され、ガラス粉末が溶融して焼結する。これによりガラス基板上には、ガラス焼結体からなる誘電体層が形成され、本発明の誘電体層形成基板が製造される。
前記誘電体層形成基板における誘電体層の厚さは、使用する膜形成材料層の厚さによって異なるが、15μm以上50μm以下の範囲であればよい。
本発明の膜形成材料層を使用して得られた誘電体層形成基板は、誘電体層面にクレーターやピンホールなどの欠陥がなく、また曇りがないため光透過率などの光学特性においても優れており、特にPDPの前面板に設けられる誘電体層の形成に好適に用いられる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(重量平均分子量の測定)
作製したポリマーをTHFに0.1wt%で溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量を測定した。尚、使用したGPCは東ソー社製「HLC−8220GPC」であり、カラムとして東ソー社製「TSKgel Super HZM−H、H−RC、HZ−H」、溶離液としてTHFを用いた。この時の溶離液の流量は0.6mL/min、注入量は20μLであり、カラムの温度は40℃であった。
(ガラス転移温度の測定)
作製したポリマーを厚さ1mmに成形し、φ8mmに打ち抜いたものを動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて、周波数1Hzにて損失弾性率G”の温度依存性を測定した。得られた損失弾性率G”のカーブにおけるピークトップの温度をガラス転移温度Tgとした。
(ガラス粉末の溶融粘度の測定)
測定装置として、ガラス粘度測定装置である平行板変形/回転粘度計(アグネ技術センター製、製品名「WRVM‐313改」)を使用し、600℃におけるガラス粉末の粘度を測定した。試料であるガラス粉未を1000℃下で溶融した後、白金円筒容器内に投入し、冷却した前記試料を円筒形に成形した。この円筒形に形成した当該試料をφ30mmの平行円盤に挟み込み、600℃に加熱して、円盤ギャップ1.3mm、回転数60rpmでの粘度を測定した。
[実施例1]
<(メタ)アクリル系樹脂の調整>
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに2−エチルへキシルメタクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトエステルEH」)を99重量部、2−メククリロイロキシエチルコハク酸(共栄社化学社製、商品名「ライトエステルHOMS」)を1重量部、重合開始剤、およびトルエンを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を75℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調整した。得られたメタクリル系樹脂の重量平均分子量は10万であり、ガラス転移温度は−10℃であった。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
無機粉体としてPbO−B−SiO−ZnO−Al系ガラス粉末(ガラス転移温度420℃、軟化点480℃)を100重量部、前記メタクリル系樹脂を16重量部、溶剤としてのα−テルピネオール(ヤスハラケミカル社製)を40重量部、およびアルカリ金属化合物として、水酸化リチウム一水和物(LiOH、キシダ化学社製)を0.5重量部、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチル(花王社製、商品名「トリメックスT−10」)を3重量部配合し、分散機を用いて混合分散して、ペースト状の無機粉体含有樹脂組成物を調製した。なお、前記ガラス粉末の600℃での粘度は95Pa・sであった。
<転写シートの作製>
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに剥離剤処理を施した支持フィルム上に、前記調製した無機粉体含有樹脂組成物をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して厚さ68μmの膜形成材料層を形成した。その後、当該膜形成材料層上に保護フィルムとして表面にシリコーン系剥離処理をした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをカバーし、ロール状に巻き取って転写シートを作製した。
<誘電体層形成ガラス基板の作製>
前記転写シートの保護フィルムを剥離後、パネル用ガラス基板の表面(バス電極の固定面)に当接するように重ね合わせ、加熱ロール式ラミネータを用いて熱圧着した。圧着条件は加熱ロールの表面温度80℃、ロール線圧1kg/cm、ロール移動速度1m/分であった。熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層を転写されて密着した状態になっていた。
続いて、膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から590℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、90℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層を形成し、誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[実施例2]
<(メタ)アクリル系樹脂の調製>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
アルカリ金属化合物として、水酸化リチウム一水和物の代わりに水酸化ナトリウム(NaOH、東京化成工業社製)を0.1重量部配合した以外は、実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>および<誘電体層形成ガラス基板の作製>
上記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法により転写シートおよび誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[実施例3]
<(メタ)アクリル系樹脂の調製>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
アルカリ金属化合物として、水酸化リチウム一水和物の代わりに水酸化カリウム(KOH、和光純薬工業社製)を0.2重量部配合した以外は、実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>および<誘電体層形成ガラス基板の作製>
上記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法により転写シートおよび誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[実施例4]
<(メタ)アクリル系樹脂の調製>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
アルカリ金属化合物として、水酸化リチウム一水和物の代わりに無水リン酸ナトリウム(NaPO、和光純薬工業社製)を0.3重量部配合した以外は、実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>および<誘電体層形成ガラス基板の作製>
上記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法により転写シートおよび誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[実施例5]
<(メタ)アクリル系樹脂の調製>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
水酸化リチウム一水和物の代わりにアルカリ土類金属化合物である酸化マグネシウム(MgO、キシダ化学社製)を1重量部配合した以外は、実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>および<誘電体層形成ガラス基板の作製>
上記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法により転写シートおよび誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[実施例6]
<(メタ)アクリル系樹脂の調製>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
水酸化リチウム一水和物の代わりにアルカリ土類金属化合物である酸化カルシウム(CaO、和光純薬工業社製)を2重量部配合した以外は、実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>および<誘電体層形成ガラス基板の作製>
上記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法により転写シートおよび誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[実施例7]
<(メタ)アクリル系樹脂の調整>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
前記メタクリル系樹脂を17重量部、溶剤としてα−テルピネオールを30重量部、および鉛系化合物として、酸化鉛(PbO、和光純薬工業社製)を0.2重量部配合した以外は、実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>
実施例1と同様の方法で転写シートを作成した。
<誘電体層形成ガラス基板の作製>
膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、600℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層を形成した以外は、実施例1と同様の方法により誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[実施例8]
<(メタ)アクリル系樹脂の調整>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
鉛系化合物として、臭化鉛(PbBr、和光純薬工業社製)を0.4重量部配合した以外は、実施例7と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>および<誘電体層形成ガラス基板の作製>
上記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は、実施例7と同様の方法により転写シートおよび誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[比較例1]
<(メタ)アクリル系樹脂の調整>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉機含有樹脂組成物の調製>
アルカリ金属化合物を配合しなかった以外は、実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>および<誘電体層形成ガラス基板の作製>
上記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法により転写シートおよび誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
[比較例2]
<(メタ)アクリル系樹脂の調整>
実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂を調製した。
<無機粉体含有樹脂組成物の調製>
鉛系化合物を配合しなかった以外は、実施例7と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物を調製した。
<転写シートの作製>および<誘電体層形成ガラス基板の作製>
上記無機粉体含有樹脂組成物を用いた以外は、実施例7と同様の方法により転写シートおよび誘電体層形成ガラス基板を作製した。この誘電体層の厚さは30μmであった。
《誘電体層形成基板の光透過率の測定および評価》
得られた誘電体層形成ガラス基板の光透過率(%)を測定した。光透過率については、へイズメーター(村上色彩研究所製、HM−150)を使用し、全光線透過率を測定し評価を行った。なお、本発明において、誘電体層形成ガラス基板の光透過率が80%以上、さらには81%以上であれば、PDPの誘電体層形成ガラス基板に要求される透明性を十分に確保することが可能である。
Figure 0003877173
上記表1より、添加剤としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の金属化合物を含有する本発明の無機粉体含有樹脂組成物を用いた場合には、全実施例において、誘電体層形成ガラス基板の光透過率が80%以上となり、高い透明性を有することが明らかとなった。これに対し、比較例1及び2の無機粉体含有樹脂組成物は、前記添加剤を含有していないため焼成時における脱泡効果が得られず、誘電体層に気泡が残存して光透過率の低下を招き、PDPの誘電体層に要求される透明性を十分に確保できない結果となった。
以上のことから、本発明では、無機粉体含有樹脂組成物中にガラス粉末の構成成分とは別に、新たに添加剤としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の金属化合物を含有させることにより、焼成工程において極めて優れた脱泡性を発揮することができ、600℃以下の低温度域での焼成においても、焼成後には誘電体層に欠陥や曇りの原因となる気泡を残存させることなく、透明性の高い誘電体層の形成を可能とすることが明らかとなった。
本発明の膜形成材料層は、誘電体層における気泡の残存防止に顕著な効果を有するため、低温度域で焼成させても焼成後には誘電体層に欠陥や曇りを生じさせることがない。そのため、高い光透過率を有する光学特性に優れた誘電体層が形成された誘電体層形成基板を製造することが可能である。特に、本発明の転写シートは、高い透明性が要求されるPDPの前面板における誘電体層の形成に好適に利用できるものである。

Claims (9)

  1. ガラス粉末と、ガラス粉末100重量部に対して(メタ)アクリル系樹脂5〜50重量部と、ガラス粉末100重量部に対してアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び鉛系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の金属化合物0.01〜10重量部とを含有する無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなる膜形成材料層。
  2. アルカリ金属化合物がリチウム系化合物、カリウム系化合物及びナトリウム系化合物からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1記載の膜形成材料層。
  3. アルカリ土類金属化合物がマグネシウム系化合物及び/又はカルシウム系化合物である請求項1又は2記載の膜形成材料層。
  4. ガラス粉末の600℃での粘度が150Pa・s以下である請求項1〜のいずれかに記載の膜形成材料層。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の膜形成材料層が支持フィルム上に積層されている転写シート。
  6. 請求項記載の転写シートの膜形成材料層を基板上に転写し、前記膜形成材料層を焼成処理する工程を含む誘電体層形成基板の製造方法。
  7. 請求項記載の方法によって製造される誘電体層形成基板。
  8. 光透過率が80%以上である請求項記載の誘電体層形成基板。
  9. 請求項又は記載の誘電体層形成基板を用いたプラズマディスプレイパネル。
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