JP2004327122A - 無機粉体含有樹脂組成物、転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】転写シートを室温保存した場合であっても変形、端部はみ出しすることがなく、厚みの均一な誘電体層を形成することができる無機粉体含有樹脂組成物を提供すること。また、該組成物からなる膜形成材料層、転写シート、誘電体層、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板を提供すること。
【解決手段】無機粉体と、活性水素基を有するバインダ樹脂と、架橋剤とを含有することを特徴とする無機粉体含有樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】無機粉体と、活性水素基を有するバインダ樹脂と、架橋剤とを含有することを特徴とする無機粉体含有樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機粉体含有樹脂組成物、該組成物からなる膜形成材料層、転写シート、誘電体層、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板に関する。特に、本発明の無機粉体含有樹脂組成物はプラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、薄型平板状の大型ディスプレイとしては、液晶ディスプレイと共にプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という)が注目されている。PDPの一部分は、電極が固定されたガラス基板の表面上にガラス焼結体からなる誘電体層が形成された構造をしている。
【0003】
この誘電体層の形成方法としては、ガラス粉末、アクリル酸エステル系樹脂及び溶剤を含有するペースト状組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成し、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を、電極が固定されたガラス基板の表面に転写し、転写された膜形成材料層を焼成することにより、前記ガラス基板の表面に誘電体層を形成する方法が開示されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
また、誘電体層形成用樹脂組成物としては、C1 〜C12のメタアクリル酸エステル80〜100重量%と、これと共重合可能な他のモノマー0〜20重量%を共重合させることにより得られ、重量平均分子量が2万から100万であり、そのガラス転移温度が15℃以下である自着性樹脂100重量部に対し、誘電性無機粉末100〜500重量部を加えたものが開示されている(特許文献3、4参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−102273号公報
【特許文献2】
特開2001−185024号公報
【特許文献3】
特開平11−35780号公報
【特許文献4】
国際公開第00/42622号パンフレット
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のペースト状組成物又は誘電体層形成用樹脂組成物を支持フィルム上に塗布した転写シートは、ロール状に巻きとって室温保存した場合に変形するという問題があった。こような転写シートの変形は、転写シートの膜形成材料層を転写・焼結して形成される誘電体層の厚みのバラツキにつながり、結果的にPDPにおける表示欠陥(輝度ムラ)などの原因になる。さらに、シート端部においてペースト状組成物又は誘電体層形成用樹脂組成物のはみ出しが起こり、ロールに付着するなどの問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決したものであって、転写シートを室温保存した場合であっても変形、端部はみ出しすることがなく、厚みの均一な誘電体層を形成することができる無機粉体含有樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該組成物からなる膜形成材料層、転写シート、誘電体層、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す無機粉体含有樹脂組成物により上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、無機粉体と、活性水素基を有するバインダ樹脂と、架橋剤とを含有することを特徴とする無機粉体含有樹脂組成物、に関する。
【0009】
本発明では、無機粉体含有樹脂組成物のバインダ樹脂として、活性水素基を有するバインダ樹脂を用い、さらに架橋剤を添加して架橋することにより、室温保存した場合の転写シートの変形、端部はみ出しを抑制でき、それにより厚みの均一な誘電体層を形成することができる。
【0010】
このような顕著な効果が発現する理由は明らかではないが、以下のような理由によるものと考えられる。
【0011】
転写シート用のバインダ樹脂には、ガラス基板上に固定された電極に追従するための段差吸収性、転写性が要求されるため、可とう性のある樹脂が用いられる。そして、シート作成時には均一な厚みであるが、ロール状に巻き取って室温で保存すると、しだいに樹脂の流動、局所的な凝集が起こり、転写シートの変形、端部はみ出しが起こると考えられる。本発明では、架橋剤を添加して樹脂を架橋することにより、樹脂の流動、局所的な凝集を抑え、転写シートの変形、端部はみ出しを抑制することができたと考えられる。
【0012】
本発明においては、前記バインダ樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0013】
また本発明においては、前記バインダ樹脂が、重量平均分子量1万〜80万であり、かつ活性水素基含有モノマーを0.001〜30モル%含有してなる樹脂であることが好ましい。
【0014】
前記無機粉体含有樹脂組成物は、特に誘電体層の形成材料として有用である。
【0015】
本発明において、無機粉体含有樹脂組成物は、無機粉体100重量部に対して、活性水素基を有するバインダ樹脂を5〜50重量部、及び架橋剤を0.001〜5重量部含有することが好ましい。バインダ樹脂が5重量部未満の場合には、無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成することが困難になり、50重量部を超える場合には、シートの変形が起こりやすくなる傾向にある。また、架橋剤が0.001重量部未満の場合には、架橋ポリマーが十分に形成されないため転写シートの変形を十分に抑制することができず、5重量部を超える場合には、架橋ポリマーが過剰に形成され、段差吸収性が低下する傾向にある。
【0016】
本発明においては、無機粉体がガラス粉末であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、前記無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなる膜形成材料層、に関する。
【0018】
また本発明は、支持フィルム上に、少なくとも前記膜形成材料層が積層されている転写シート、に関する。
【0019】
本発明の誘電体層は、前記膜形成材料層を焼結させてなるものである。
【0020】
また、本発明は、前記転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法、及び前記方法によって製造される誘電体層形成基板、に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、無機粉体、活性水素基を有するバインダ樹脂、及び架橋剤を含有する。
【0023】
無機粉体は、公知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化亜鉛、ガラス粉末などが挙げられる。無機粉体の平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましい。
【0024】
本発明においては、無機粉体としてガラス粉末を用いることが好ましい。ガラス粉末としては公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、1)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、2)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−ZnO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、3)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(PbO−B2 O3 −SiO2 −Al2 O3 系)の混合物、4)酸化鉛、酸化バリウム、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−BaO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物などを挙げることができる。焼結処理により誘電体層を形成することを考慮すると、軟化点が400〜650℃であるガラス粉末が好ましい。
【0025】
活性水素基を有するバインダ樹脂は特に制限されず公知のものを用いることができるが、特に活性水素基を有する(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0026】
前記(メタ)アクリル系樹脂等のバインダ樹脂は、重量平均分子量1万〜80万であり、かつ活性水素基含有モノマーを0.001〜30モル%含有することが好ましい。
【0027】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーと、活性水素基含有モノマーとの共重合体、又はそれらの混合物である。
【0028】
(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレ−ト、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
活性水素基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、イミノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル系樹脂は、活性水素基含有モノマーを0.001〜30モル%含有することが好ましい。0.001モル%未満の場合には、架橋ポリマーが十分に形成されないため転写シートの変形抑制効果が得られず、30モル%を超える場合には、無機粉体との相互作用が大きくなりすぎて焼結時に分解除去されにくく、誘電体層の光学特性の低下を招く。
【0031】
(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量1万〜80万のポリマーであることが好ましい。重量平均分子量が1万未満の場合には、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの凝集力が乏しく強度が低くなり、その後の作業上好ましくない。一方、80万を超える場合には、無機粉体含有樹脂組成物の粘度が高くなり、無機粉体の分散性が悪くなるため好ましくない。
【0032】
また、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は30℃以下であことが好ましい。ガラス転移温度が30℃を超える場合には、転写シートとした際に可とう性のないシートとなり、凹凸追従性や転写性やハンドリング性が悪化してしまうため好ましくない。なお、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、用いる共重合体の組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調製することができる。
【0033】
架橋剤は、バインダ樹脂である(メタ)アクリル系樹脂等を架橋することによって転写シートの強度を高め、室温保存時の変形を防ぐことを目的に添加されるものである。
【0034】
架橋剤は、バインダ樹脂の活性水素基と反応する2以上の官能基を有するものであり、具体的には、ヘキサメチロールメラミンなどのメラミン樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどのエポキシ樹脂、トリメチロールプロパン−トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン−ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物などのイソシアネート化合物が挙げられる。
【0035】
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートを作製する場合には、支持フィルム上に均一に塗布できるように該組成物中に溶剤を加えることが好ましい。
【0036】
溶剤としては、無機粉体との親和性がよく、且つ、バインダ樹脂との溶解性がよいものであれば特に制限されるものではない。例えば、テルピネオール、ジヒドロ−α−テルピネオール、ジヒドロ−α−テルピニルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、テレビン油、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロへキサノン、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロへキサノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコ−ルモノメチルエーテル、エチレングリコ−ルモノエチルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−1−イソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−3−イソブチレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、任意の割合で2種類以上を併用してもよい。
【0037】
溶剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましい。
【0038】
また、本発明の無機粉体含有樹脂組成物には、可塑剤を添加してもよい。可塑剤を添加することにより、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの可とう性や柔軟性、膜形成材料層の基板への転写性などを調整することができる。
【0039】
可塑剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、ジイソノニルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペ−トなどのアジピン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのセバシン酸誘導体、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテートなどのピロメリット酸誘導体、プロピレングリコールモノオレートなどのオレイン酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール系可塑剤などが挙げられる。
【0040】
可塑剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましい。可塑剤の添加量が20重量部を超えると、得られる転写シートの強度が低下してしまうため好ましくない。
【0041】
無機粉体含有樹脂組成物には、上記の成分の他、分散剤、シランカップリング剤、粘着性付与剤、レベリング剤、安定剤、消泡剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0042】
本発明の転写シートは、支持フィルムと、少なくともこの支持フィルム上に形成された膜形成材料層とにより構成されており、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を基板表面に一括転写するために用いられるものである。
【0043】
転写シートは、前記無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、溶剤を乾燥除去して膜形成材料層を形成することにより作製される。
【0044】
転写フィルムを構成する支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可とう性を有することにより、ロールコーターなどによってペースト状の無機粉体含有樹脂組成物を塗布することができ、膜形成材料層をロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。
【0045】
支持フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
【0046】
支持フィルムの厚さは特に制限されないが、25〜100μm程度であることが好ましい。
【0047】
なお、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、膜形成材料層を基板上に転写する工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【0048】
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロ−ルコ−タ−、スロット、ファンテンなどのダイコータ−、スクイズコータ−、カーテンコータ−などの塗布方法を採用することができるが、支持フィルム上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
【0049】
膜形成材料層の厚さは、無機粉体の含有率、パネルの種類やサイズなどによっても異なるが、10〜200μmであることが好ましく、さらに好ましくは30〜100μmである。この厚さが10μm未満である場合には、最終的に形成される誘電体層の膜厚が不十分となり、所望の誘電特性を確保することができない傾向にある。通常、この厚さが30〜100μmであれば、大型のパネルに要求される誘電体層の膜厚を十分に確保することができる。また、膜厚は均一であるほど好ましく、膜厚公差は±5%以内であることが好ましい。
【0050】
なお、転写シートは、膜形成材料層の表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。保護フィルムでカバーされた転写シートは、ロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。なお、保護フィルムの表面は離型処理が施されていることが好ましい。
【0051】
本発明の誘電体層形成基板の製造方法は、前記記載の転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする。
【0052】
基板としては、セラミックや金属などの基板が挙げられ、特にPDPを作製する場合には、適切な電極が固定されたガラス基板が用いられる。
【0053】
転写工程の一例を以下に示すが、基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態にできれば、その方法は特に制限されるものではない。
【0054】
適宜使用される転写シートの保護フィルムを剥離した後、電極が固定されたガラス基板の表面に、膜形成材料層表面を当接するように転写シートを重ね合わせ、この転写シートを加熱ロール式のラミネーターなどにより熱圧着した後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去する。これにより、ガラス基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態となる。
【0055】
転写条件としては、例えば、ラミネーターの表面温度25〜100℃、ロール線圧0.5〜15kg/cm、移動速度0.1〜5m/分であるが、これら条件に限定されるものではない。また、ガラス基板は予熱されていてもよく、予熱温度は50〜100℃程度である。
【0056】
膜形成材料層の焼結工程の一例を以下に示すが、膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成できれば、その方法は特に制限されるものではない。
【0057】
膜形成材料層の焼結工程の一例を以下に示すが、膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成できればその方法は特に制限されるものではない。
【0058】
膜形成材料層が形成されたガラス基板を、400〜650℃の高温雰囲気下に配置することにより、膜形成材料層中の有機物質(バインダ樹脂、残存溶剤、各種の添加剤など)が分解除去され、無機粉体(ガラス粉末)が溶融して焼結する。これによりガラス基板上には、無機焼結体(ガラス焼結体)からなる誘電体層が形成され、誘電体層形成基板が製造される。
【0059】
誘電体層の厚さは、使用する膜形成材料層の厚さよって異なるが、15〜50μm程度である。
【0060】
本発明の誘電体層形成基板は、誘電体層に微細ボイドやクラックがなく、光透過率などの光学特性に優れている。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
(重量平均分子量の測定)
作製したポリマーをTHFに0.1wt%で溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量を測定した。
【0063】
(ガラス転移温度の測定)
作製したポリマーを厚さ1mmに成形し、φ8mmに打ち抜いたものを動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて、周波数1Hzにて損失弾性率G”の温度依存性を測定した。得られた損失弾性率G”のカーブにおけるピークトップの温度をガラス転移温度Tgとした。
【0064】
(転写シートの強度測定)
引張試験を行い、弾性率(N/mm2 )及び最大点荷重(N)を測定した。30mm×30mmの転写シートを棒状にまるめてサンプルとした(断面積:1.5mm2 、長さ:30mm)。引張試験機(島津製作所、AG−20kNG)を用い、チャック間1cm、剥離速度5mm/minの条件下で測定した。弾性率及び最大点荷重の値が高いほど、転写シートの室温保存時の変形は小さい。
【0065】
(誘電体層の光透過率の測定)
得られた無機焼結体の光透過率(%)を測定した。光透過率の測定は、分光光度計(島津製作所製、MPD2000)を用いて、550nmの波長光における吸収量を測定し、予め測定しておいたバックグラウンドであるガラス基板の吸収量をキャンセルして、無機焼結体のみの光透過率を算出した。
【0066】
(端部はみ出しの評価)
転写シート(100mm幅)を巻き取り張力90Nで巻き芯(φ76.5mm、厚さ8mm、ABS製)に50m巻き取り、温度23℃及び湿度50%の環境下で、宙吊り状態で1ヶ月保管後の端部はみ出しを評価した。端部はみ出しがない場合を良好とし、端部はみ出しが発生している場合を不良とした。
【0067】
実施例1
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコにブチルメタクリレート(BMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(重量部比:BMA/HEMA=97/3)、ベンゾイルパーオキサイド、酢酸エチルを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は35万であり、ガラス転移温度は22℃であった。
【0068】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
無機粉体としてガラス粉体100重量部、前記メタクリル系樹脂(A)8重量部、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチル12重量部、溶剤としてα−テルピネオール50重量部、及び架橋剤としてトリメチロールプロパン−ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)0.24重量部を配合し、分散機を用いて混合分散してペースト状の無機粉体含有樹脂組成物(a)を調製した。
【0069】
〔転写シートの作製〕
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに剥離剤処理を施した支持フィルム上に、前記調製した無機粉体含有樹脂組成物(a)をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:60μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET、厚さ25μm)をカバーし、ロール状に巻き取った。そして、50℃で1日間エージングを行い、メタクリル系樹脂を架橋して転写シートを作製した。
〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
前記転写シートの保護フィルムを剥離後、転写シートの膜形成材料層表面をパネル用ガラス基板の表面(バス電極の固定面)に当接するように重ね合わせ、加熱ロール式ラミネータを用いて熱圧着した。圧着条件は、加熱ロールの表面温度80℃、ロール線圧1kg/cm、ロール移動速度1m/分であった。熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態になっていた。
膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、600℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層を形成し、誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0070】
実施例2
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコにブチルメタクリレート(BMA)、メタクリル酸(MAA)(重量部比:BMA/MAA=98/2)、ベンゾイルパーオキサイド、酢酸エチルを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は35万であり、ガラス転移温度は22℃であった。
【0071】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、メタクリル系樹脂(A)の代わりにメタクリル系樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(b)を調製した。
【0072】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(b)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0073】
実施例3
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
実施例2と同様の方法によりメタクリル系樹脂(B)を調製した。
【0074】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、メタクリル系樹脂(A)の代わりにメタクリル系樹脂(B)を用い、架橋剤として、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製、テトラッドC)を0.004重量部用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(c)を調製した。
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(c)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0075】
実施例4
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコにブチルメタクリレート(BMA)、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(HOMS)(重量部比:BMA/HOMS=95/5)、ベンゾイルパーオキサイド、酢酸エチルを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂(D)の重量平均分子量は35万であった。
【0076】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、メタクリル系樹脂(A)の代わりにメタクリル系樹脂(D)を用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(d)を調製した。
【0077】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(d)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0078】
実施例5
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
実施例4と同様の方法によりメタクリル系樹脂(D)を調製した。
【0079】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、メタクリル系樹脂(A)の代わりにメタクリル系樹脂(D)を用い、架橋剤として、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製、テトラッドC)を0.004重量部用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(e)を調製した。
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(e)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0080】
比較例1
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
実施例1と同様の方法によりメタクリル系樹脂(A)を調製した。
【0081】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、架橋剤を用いなかった以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(f)を調製した。
【0082】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(f)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0083】
【表1】
表1の結果から明らかなように、活性水素基を有するバインダ樹脂を用い、さらに架橋剤により架橋した場合(実施例1〜5)には、架橋剤を用いなかった場合(比較例1)に比べて弾性率及び最大点荷重が高く、室温保存後の転写シートの変形は小さかった。そのため誘電体層の膜厚均一性もより優れていた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機粉体含有樹脂組成物、該組成物からなる膜形成材料層、転写シート、誘電体層、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板に関する。特に、本発明の無機粉体含有樹脂組成物はプラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、薄型平板状の大型ディスプレイとしては、液晶ディスプレイと共にプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という)が注目されている。PDPの一部分は、電極が固定されたガラス基板の表面上にガラス焼結体からなる誘電体層が形成された構造をしている。
【0003】
この誘電体層の形成方法としては、ガラス粉末、アクリル酸エステル系樹脂及び溶剤を含有するペースト状組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成し、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を、電極が固定されたガラス基板の表面に転写し、転写された膜形成材料層を焼成することにより、前記ガラス基板の表面に誘電体層を形成する方法が開示されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
また、誘電体層形成用樹脂組成物としては、C1 〜C12のメタアクリル酸エステル80〜100重量%と、これと共重合可能な他のモノマー0〜20重量%を共重合させることにより得られ、重量平均分子量が2万から100万であり、そのガラス転移温度が15℃以下である自着性樹脂100重量部に対し、誘電性無機粉末100〜500重量部を加えたものが開示されている(特許文献3、4参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−102273号公報
【特許文献2】
特開2001−185024号公報
【特許文献3】
特開平11−35780号公報
【特許文献4】
国際公開第00/42622号パンフレット
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のペースト状組成物又は誘電体層形成用樹脂組成物を支持フィルム上に塗布した転写シートは、ロール状に巻きとって室温保存した場合に変形するという問題があった。こような転写シートの変形は、転写シートの膜形成材料層を転写・焼結して形成される誘電体層の厚みのバラツキにつながり、結果的にPDPにおける表示欠陥(輝度ムラ)などの原因になる。さらに、シート端部においてペースト状組成物又は誘電体層形成用樹脂組成物のはみ出しが起こり、ロールに付着するなどの問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決したものであって、転写シートを室温保存した場合であっても変形、端部はみ出しすることがなく、厚みの均一な誘電体層を形成することができる無機粉体含有樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該組成物からなる膜形成材料層、転写シート、誘電体層、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す無機粉体含有樹脂組成物により上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、無機粉体と、活性水素基を有するバインダ樹脂と、架橋剤とを含有することを特徴とする無機粉体含有樹脂組成物、に関する。
【0009】
本発明では、無機粉体含有樹脂組成物のバインダ樹脂として、活性水素基を有するバインダ樹脂を用い、さらに架橋剤を添加して架橋することにより、室温保存した場合の転写シートの変形、端部はみ出しを抑制でき、それにより厚みの均一な誘電体層を形成することができる。
【0010】
このような顕著な効果が発現する理由は明らかではないが、以下のような理由によるものと考えられる。
【0011】
転写シート用のバインダ樹脂には、ガラス基板上に固定された電極に追従するための段差吸収性、転写性が要求されるため、可とう性のある樹脂が用いられる。そして、シート作成時には均一な厚みであるが、ロール状に巻き取って室温で保存すると、しだいに樹脂の流動、局所的な凝集が起こり、転写シートの変形、端部はみ出しが起こると考えられる。本発明では、架橋剤を添加して樹脂を架橋することにより、樹脂の流動、局所的な凝集を抑え、転写シートの変形、端部はみ出しを抑制することができたと考えられる。
【0012】
本発明においては、前記バインダ樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0013】
また本発明においては、前記バインダ樹脂が、重量平均分子量1万〜80万であり、かつ活性水素基含有モノマーを0.001〜30モル%含有してなる樹脂であることが好ましい。
【0014】
前記無機粉体含有樹脂組成物は、特に誘電体層の形成材料として有用である。
【0015】
本発明において、無機粉体含有樹脂組成物は、無機粉体100重量部に対して、活性水素基を有するバインダ樹脂を5〜50重量部、及び架橋剤を0.001〜5重量部含有することが好ましい。バインダ樹脂が5重量部未満の場合には、無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成することが困難になり、50重量部を超える場合には、シートの変形が起こりやすくなる傾向にある。また、架橋剤が0.001重量部未満の場合には、架橋ポリマーが十分に形成されないため転写シートの変形を十分に抑制することができず、5重量部を超える場合には、架橋ポリマーが過剰に形成され、段差吸収性が低下する傾向にある。
【0016】
本発明においては、無機粉体がガラス粉末であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、前記無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなる膜形成材料層、に関する。
【0018】
また本発明は、支持フィルム上に、少なくとも前記膜形成材料層が積層されている転写シート、に関する。
【0019】
本発明の誘電体層は、前記膜形成材料層を焼結させてなるものである。
【0020】
また、本発明は、前記転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法、及び前記方法によって製造される誘電体層形成基板、に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明の無機粉体含有樹脂組成物は、無機粉体、活性水素基を有するバインダ樹脂、及び架橋剤を含有する。
【0023】
無機粉体は、公知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化亜鉛、ガラス粉末などが挙げられる。無機粉体の平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましい。
【0024】
本発明においては、無機粉体としてガラス粉末を用いることが好ましい。ガラス粉末としては公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、1)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、2)酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−ZnO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物、3)酸化鉛、酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム(PbO−B2 O3 −SiO2 −Al2 O3 系)の混合物、4)酸化鉛、酸化バリウム、酸化ホウ素、酸化珪素(PbO−BaO−B2 O3 −SiO2 系)の混合物などを挙げることができる。焼結処理により誘電体層を形成することを考慮すると、軟化点が400〜650℃であるガラス粉末が好ましい。
【0025】
活性水素基を有するバインダ樹脂は特に制限されず公知のものを用いることができるが、特に活性水素基を有する(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0026】
前記(メタ)アクリル系樹脂等のバインダ樹脂は、重量平均分子量1万〜80万であり、かつ活性水素基含有モノマーを0.001〜30モル%含有することが好ましい。
【0027】
前記(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーと、活性水素基含有モノマーとの共重合体、又はそれらの混合物である。
【0028】
(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレ−ト、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
活性水素基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、イミノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル系樹脂は、活性水素基含有モノマーを0.001〜30モル%含有することが好ましい。0.001モル%未満の場合には、架橋ポリマーが十分に形成されないため転写シートの変形抑制効果が得られず、30モル%を超える場合には、無機粉体との相互作用が大きくなりすぎて焼結時に分解除去されにくく、誘電体層の光学特性の低下を招く。
【0031】
(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量1万〜80万のポリマーであることが好ましい。重量平均分子量が1万未満の場合には、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの凝集力が乏しく強度が低くなり、その後の作業上好ましくない。一方、80万を超える場合には、無機粉体含有樹脂組成物の粘度が高くなり、無機粉体の分散性が悪くなるため好ましくない。
【0032】
また、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は30℃以下であことが好ましい。ガラス転移温度が30℃を超える場合には、転写シートとした際に可とう性のないシートとなり、凹凸追従性や転写性やハンドリング性が悪化してしまうため好ましくない。なお、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、用いる共重合体の組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調製することができる。
【0033】
架橋剤は、バインダ樹脂である(メタ)アクリル系樹脂等を架橋することによって転写シートの強度を高め、室温保存時の変形を防ぐことを目的に添加されるものである。
【0034】
架橋剤は、バインダ樹脂の活性水素基と反応する2以上の官能基を有するものであり、具体的には、ヘキサメチロールメラミンなどのメラミン樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどのエポキシ樹脂、トリメチロールプロパン−トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン−ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物などのイソシアネート化合物が挙げられる。
【0035】
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートを作製する場合には、支持フィルム上に均一に塗布できるように該組成物中に溶剤を加えることが好ましい。
【0036】
溶剤としては、無機粉体との親和性がよく、且つ、バインダ樹脂との溶解性がよいものであれば特に制限されるものではない。例えば、テルピネオール、ジヒドロ−α−テルピネオール、ジヒドロ−α−テルピニルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、テレビン油、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロへキサノン、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロへキサノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコ−ルモノメチルエーテル、エチレングリコ−ルモノエチルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−1−イソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−3−イソブチレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、任意の割合で2種類以上を併用してもよい。
【0037】
溶剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましい。
【0038】
また、本発明の無機粉体含有樹脂組成物には、可塑剤を添加してもよい。可塑剤を添加することにより、無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して膜形成材料層を形成した転写シートの可とう性や柔軟性、膜形成材料層の基板への転写性などを調整することができる。
【0039】
可塑剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、ジイソノニルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペ−トなどのアジピン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのセバシン酸誘導体、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体、テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテートなどのピロメリット酸誘導体、プロピレングリコールモノオレートなどのオレイン酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール系可塑剤などが挙げられる。
【0040】
可塑剤の添加量は、無機粉体100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましい。可塑剤の添加量が20重量部を超えると、得られる転写シートの強度が低下してしまうため好ましくない。
【0041】
無機粉体含有樹脂組成物には、上記の成分の他、分散剤、シランカップリング剤、粘着性付与剤、レベリング剤、安定剤、消泡剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0042】
本発明の転写シートは、支持フィルムと、少なくともこの支持フィルム上に形成された膜形成材料層とにより構成されており、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を基板表面に一括転写するために用いられるものである。
【0043】
転写シートは、前記無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、溶剤を乾燥除去して膜形成材料層を形成することにより作製される。
【0044】
転写フィルムを構成する支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可とう性を有することにより、ロールコーターなどによってペースト状の無機粉体含有樹脂組成物を塗布することができ、膜形成材料層をロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。
【0045】
支持フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
【0046】
支持フィルムの厚さは特に制限されないが、25〜100μm程度であることが好ましい。
【0047】
なお、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、膜形成材料層を基板上に転写する工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【0048】
無機粉体含有樹脂組成物を支持フィルム上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロ−ルコ−タ−、スロット、ファンテンなどのダイコータ−、スクイズコータ−、カーテンコータ−などの塗布方法を採用することができるが、支持フィルム上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
【0049】
膜形成材料層の厚さは、無機粉体の含有率、パネルの種類やサイズなどによっても異なるが、10〜200μmであることが好ましく、さらに好ましくは30〜100μmである。この厚さが10μm未満である場合には、最終的に形成される誘電体層の膜厚が不十分となり、所望の誘電特性を確保することができない傾向にある。通常、この厚さが30〜100μmであれば、大型のパネルに要求される誘電体層の膜厚を十分に確保することができる。また、膜厚は均一であるほど好ましく、膜厚公差は±5%以内であることが好ましい。
【0050】
なお、転写シートは、膜形成材料層の表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。保護フィルムでカバーされた転写シートは、ロール状に巻き取った状態で保存し、供給することができる。なお、保護フィルムの表面は離型処理が施されていることが好ましい。
【0051】
本発明の誘電体層形成基板の製造方法は、前記記載の転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする。
【0052】
基板としては、セラミックや金属などの基板が挙げられ、特にPDPを作製する場合には、適切な電極が固定されたガラス基板が用いられる。
【0053】
転写工程の一例を以下に示すが、基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態にできれば、その方法は特に制限されるものではない。
【0054】
適宜使用される転写シートの保護フィルムを剥離した後、電極が固定されたガラス基板の表面に、膜形成材料層表面を当接するように転写シートを重ね合わせ、この転写シートを加熱ロール式のラミネーターなどにより熱圧着した後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去する。これにより、ガラス基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態となる。
【0055】
転写条件としては、例えば、ラミネーターの表面温度25〜100℃、ロール線圧0.5〜15kg/cm、移動速度0.1〜5m/分であるが、これら条件に限定されるものではない。また、ガラス基板は予熱されていてもよく、予熱温度は50〜100℃程度である。
【0056】
膜形成材料層の焼結工程の一例を以下に示すが、膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成できれば、その方法は特に制限されるものではない。
【0057】
膜形成材料層の焼結工程の一例を以下に示すが、膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成できればその方法は特に制限されるものではない。
【0058】
膜形成材料層が形成されたガラス基板を、400〜650℃の高温雰囲気下に配置することにより、膜形成材料層中の有機物質(バインダ樹脂、残存溶剤、各種の添加剤など)が分解除去され、無機粉体(ガラス粉末)が溶融して焼結する。これによりガラス基板上には、無機焼結体(ガラス焼結体)からなる誘電体層が形成され、誘電体層形成基板が製造される。
【0059】
誘電体層の厚さは、使用する膜形成材料層の厚さよって異なるが、15〜50μm程度である。
【0060】
本発明の誘電体層形成基板は、誘電体層に微細ボイドやクラックがなく、光透過率などの光学特性に優れている。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
(重量平均分子量の測定)
作製したポリマーをTHFに0.1wt%で溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量を測定した。
【0063】
(ガラス転移温度の測定)
作製したポリマーを厚さ1mmに成形し、φ8mmに打ち抜いたものを動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用いて、周波数1Hzにて損失弾性率G”の温度依存性を測定した。得られた損失弾性率G”のカーブにおけるピークトップの温度をガラス転移温度Tgとした。
【0064】
(転写シートの強度測定)
引張試験を行い、弾性率(N/mm2 )及び最大点荷重(N)を測定した。30mm×30mmの転写シートを棒状にまるめてサンプルとした(断面積:1.5mm2 、長さ:30mm)。引張試験機(島津製作所、AG−20kNG)を用い、チャック間1cm、剥離速度5mm/minの条件下で測定した。弾性率及び最大点荷重の値が高いほど、転写シートの室温保存時の変形は小さい。
【0065】
(誘電体層の光透過率の測定)
得られた無機焼結体の光透過率(%)を測定した。光透過率の測定は、分光光度計(島津製作所製、MPD2000)を用いて、550nmの波長光における吸収量を測定し、予め測定しておいたバックグラウンドであるガラス基板の吸収量をキャンセルして、無機焼結体のみの光透過率を算出した。
【0066】
(端部はみ出しの評価)
転写シート(100mm幅)を巻き取り張力90Nで巻き芯(φ76.5mm、厚さ8mm、ABS製)に50m巻き取り、温度23℃及び湿度50%の環境下で、宙吊り状態で1ヶ月保管後の端部はみ出しを評価した。端部はみ出しがない場合を良好とし、端部はみ出しが発生している場合を不良とした。
【0067】
実施例1
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコにブチルメタクリレート(BMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(重量部比:BMA/HEMA=97/3)、ベンゾイルパーオキサイド、酢酸エチルを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は35万であり、ガラス転移温度は22℃であった。
【0068】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
無機粉体としてガラス粉体100重量部、前記メタクリル系樹脂(A)8重量部、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチル12重量部、溶剤としてα−テルピネオール50重量部、及び架橋剤としてトリメチロールプロパン−ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)0.24重量部を配合し、分散機を用いて混合分散してペースト状の無機粉体含有樹脂組成物(a)を調製した。
【0069】
〔転写シートの作製〕
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに剥離剤処理を施した支持フィルム上に、前記調製した無機粉体含有樹脂組成物(a)をロールコータを用いて塗布し、塗膜を150℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去して膜形成材料層(厚さ:60μm)を形成した。その後、膜形成材料層上に保護フィルム(PET、厚さ25μm)をカバーし、ロール状に巻き取った。そして、50℃で1日間エージングを行い、メタクリル系樹脂を架橋して転写シートを作製した。
〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
前記転写シートの保護フィルムを剥離後、転写シートの膜形成材料層表面をパネル用ガラス基板の表面(バス電極の固定面)に当接するように重ね合わせ、加熱ロール式ラミネータを用いて熱圧着した。圧着条件は、加熱ロールの表面温度80℃、ロール線圧1kg/cm、ロール移動速度1m/分であった。熱圧着処理後、膜形成材料層から支持フィルムを剥離除去すると、ガラス基板表面に膜形成材料層が転写されて密着した状態になっていた。
膜形成材料層が転写されたガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を室温から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、600℃の温度雰囲気下で60分間維持することにより、ガラス基板表面にガラス焼結体からなる誘電体層を形成し、誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0070】
実施例2
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコにブチルメタクリレート(BMA)、メタクリル酸(MAA)(重量部比:BMA/MAA=98/2)、ベンゾイルパーオキサイド、酢酸エチルを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は35万であり、ガラス転移温度は22℃であった。
【0071】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、メタクリル系樹脂(A)の代わりにメタクリル系樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(b)を調製した。
【0072】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(b)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0073】
実施例3
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
実施例2と同様の方法によりメタクリル系樹脂(B)を調製した。
【0074】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、メタクリル系樹脂(A)の代わりにメタクリル系樹脂(B)を用い、架橋剤として、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製、テトラッドC)を0.004重量部用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(c)を調製した。
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(c)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0075】
実施例4
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロ−トを備えた四つ口フラスコにブチルメタクリレート(BMA)、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(HOMS)(重量部比:BMA/HOMS=95/5)、ベンゾイルパーオキサイド、酢酸エチルを仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を70℃付近に保って約8時間重合反応を行い、固形分50重量%のメタクリル系樹脂溶液を調製した。得られたメタクリル系樹脂(D)の重量平均分子量は35万であった。
【0076】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、メタクリル系樹脂(A)の代わりにメタクリル系樹脂(D)を用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(d)を調製した。
【0077】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(d)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0078】
実施例5
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
実施例4と同様の方法によりメタクリル系樹脂(D)を調製した。
【0079】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、メタクリル系樹脂(A)の代わりにメタクリル系樹脂(D)を用い、架橋剤として、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製、テトラッドC)を0.004重量部用いた以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(e)を調製した。
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(e)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0080】
比較例1
〔活性水素基含有(メタ)アクリル系樹脂の調製〕
実施例1と同様の方法によりメタクリル系樹脂(A)を調製した。
【0081】
〔無機粉体含有樹脂組成物の調製〕
実施例1において、架橋剤を用いなかった以外は実施例1と同様の方法により無機粉体含有樹脂組成物(f)を調製した。
【0082】
〔転写シートの作製〕及び〔誘電体層形成ガラス基板の作製〕
実施例1において、無機粉体含有樹脂組成物(a)に代わりに無機粉体含有樹脂組成物(f)を用いた以外は実施例1と同様の方法により転写シート及び誘電体層形成ガラス基板を作製した。
【0083】
【表1】
表1の結果から明らかなように、活性水素基を有するバインダ樹脂を用い、さらに架橋剤により架橋した場合(実施例1〜5)には、架橋剤を用いなかった場合(比較例1)に比べて弾性率及び最大点荷重が高く、室温保存後の転写シートの変形は小さかった。そのため誘電体層の膜厚均一性もより優れていた。
Claims (11)
- 無機粉体と、活性水素基を有するバインダ樹脂と、架橋剤とを含有することを特徴とする無機粉体含有樹脂組成物。
- 前記バインダ樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂である請求項1記載の無機粉体含有樹脂組成物。
- 前記バインダ樹脂は、重量平均分子量1万〜80万であり、かつ活性水素基含有モノマーを0.001〜30モル%含有してなる樹脂である請求項1又は2記載の無機粉体含有樹脂組成物。
- 誘電体層の形成材料として用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の無機粉体含有樹脂組成物。
- 無機粉体100重量部に対して、活性水素基を有するバインダ樹脂を5〜50重量部、及び架橋剤を0.001〜5重量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の無機粉体含有樹脂組成物。
- 無機粉体がガラス粉末である請求項1〜5のいずれかに記載の無機粉体含有樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の無機粉体含有樹脂組成物をシート状に形成してなる膜形成材料層。
- 支持フィルム上に、少なくとも請求項7記載の膜形成材料層が積層されている転写シート。
- 請求項7記載の膜形成材料層を焼結させてなる誘電体層。
- 請求項8記載の転写シートの膜形成材料層を基板に転写する転写工程、及び転写された膜形成材料層を400〜650℃で焼結させ、基板上に誘電体層を形成する焼結工程を含むことを特徴とする誘電体層形成基板の製造方法。
- 請求項10記載の方法によって製造される誘電体層形成基板。
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JP2003117040A JP2004327122A (ja) | 2003-04-22 | 2003-04-22 | 無機粉体含有樹脂組成物、転写シート、誘電体層形成基板の製造方法、及び誘電体層形成基板 |
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JP2010027460A (ja) * | 2008-07-22 | 2010-02-04 | Sekisui Chem Co Ltd | ガラスペースト組成物、及び、プラズマディスプレイパネルの製造方法 |
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- 2003-04-22 JP JP2003117040A patent/JP2004327122A/ja active Pending
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