JP2001328836A - 銀被覆用ガラス・ペースト、その製造方法、および銀被覆ガラス膜を備えた構造体 - Google Patents
銀被覆用ガラス・ペースト、その製造方法、および銀被覆ガラス膜を備えた構造体Info
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- C03—GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
- C03C—CHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
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Abstract
その製造方法、および銀被覆ガラス膜を備えた構造体を
提供する。 【解決手段】ガラス原料とNi、Cu等の添加物とから成る
混合原料が、1000〜 1500(℃) 程度の高温で加熱処理さ
れると、添加物或いはその還元物(NiまたはCu)が組織
の一部を構成するガラスが生成され、これを粉砕するこ
とにより、厚膜絶縁ペーストを作製するために用いられ
るガラス粉末が得られる。そのため、ガラス粉末中に予
めその組織の一部を構成するようにCu、Ni等が含まれて
いることから、厚膜絶縁ペーストを前面板内面に塗布し
て焼成することにより、組織中にCuまたはNiの含まれる
誘電体層が得られ、銀電極を覆って設けてもその黄変が
抑制される。
Description
として含む膜を被覆するための銀被覆用ガラス・ペース
ト、その製造方法、および銀被覆ガラス膜を備えた構造
体に関する。
isplay Panel:プラズマ・ディスプレイ・パネル)の前
面板、或いは複写機や印刷機のトナー定着用加熱ローラ
等の一形式として、ガラス板やガラス管等の絶縁体の一
面に銀(Ag)を導体成分とする膜(以下、本願において
は、導体として用いられるか抵抗体として用いられるか
を問わず、便宜上「銀導体膜」という)を設けると共
に、その銀導体膜の略全体をガラス膜で覆った構造体が
知られている。例えば、AC型PDPの前面板において
は、透明なガラス平板の一面に放電電極或いはバス電極
として機能する複数本の銀電極が互いに平行に設けら
れ、且つその略全長が誘電体膜として機能するガラス膜
で覆われる。また、例えば、トナー定着用加熱ローラに
おいては、ガラス或いはセラミックス等の絶縁材料製円
筒の表面に抵抗発熱体として機能する銀を含む抵抗体膜
が螺旋状等の適宜の形状で設けられ、且つその略全体が
保護膜として機能するガラス膜で覆われる。
な銀導体膜を銀被覆ガラス膜で覆う構造を形成するに際
しては、例えば、ガラス基板等の基体の上に銀ペースト
を厚膜印刷法で印刷し且つ焼成して、或いは蒸着等の薄
膜法でその構成材料を固着して銀導体膜を形成した後、
その上にガラス・ペーストを塗布し且つ焼成してガラス
膜を生成する。しかしながら、従来においては、このよ
うにして生成された銀被覆ガラス膜が本来の色調、例え
ば無色透明に保たれず、銀導体膜上やその近傍において
黄変すると共に、銀導体膜も黄変することが問題になっ
ていた。これらの黄変は、ガラス膜の形成時の加熱に起
因して銀導体膜中のAgイオンが移動し、更にガラス膜内
に拡散するために生じるものと考えられる。
な表示装置用の基板においては、放電空間内で発生した
光がガラス膜およびガラス基板を通して射出されるた
め、銀導体膜上の部分を除くその近傍の黄変が特に問題
となる。変色部分を一部の光が通るため、色むらや輝度
の低下が引き起こされるのである。輝度の低下は、特に
青色近傍の短波長域で著しく、元々蛍光体の発光効率の
低い青色の発光が一層弱められるため、広い色範囲に亘
る高輝度表示を困難とする。また、トナー定着用加熱ロ
ーラのような光の透過が不要な他の用途においては、外
観の悪化そのものが表面或いは裏面のうち人の目に触れ
る側で特に問題になる。また、黄変はガラス膜やガラス
基板の化学組成の変動であるため、それらの物性や機能
の経時的な変化が生じるおそれ等から全体的な黄変が問
題となる。そのため、前述したようなAC型PDPの前
面板やトナー定着用加熱ローラに限られず、銀被覆ガラ
ス膜が設けられる種々の構造体において、従来から銀被
覆ガラス膜の黄変を抑制することが望まれていた。
意研究を重ねたところ、銀導体膜を覆うガラス膜中にそ
の組織の一部を構成するようにCu或いはNiが含まれてい
る場合には、そのガラス膜を生成するための焼成の際に
おけるAgイオンの移動、拡散延いては黄変が抑制される
ことを見出した。本発明は、斯かる知見に基づいて為さ
れたものであり、その目的は、黄変を防止し得る銀被覆
用ガラス・ペースト、その製造方法、および銀被覆ガラ
ス膜を備えた構造体を提供することにある。
するための第1発明のガラス・ペーストの要旨とすると
ころは、ガラス粉末がビヒクル中に分散させられて成
り、Agを導体成分とする導体膜を覆うガラス膜を形成す
るために用いられる銀被覆用ガラス・ペーストであっ
て、(a) 前記ガラス粉末が組織中にCuおよびNiの少なく
とも一方を含むことにある。
織中にCuまたはNiが含まれることから、このガラス粉末
を含むガラス・ペーストを銀導体膜を覆って塗布し、焼
成して銀被覆ガラス膜を生成した場合にも、その黄変が
抑制される。
達成するための第2発明のガラス・ペーストの製造方法
の要旨とするところは、ガラス粉末をビヒクル中に分散
させることにより請求項1の銀被覆用ガラス・ペースト
を製造する方法であって、(a) ガラス原料と、Cuまたは
Niおよびそれぞれの化合物の少なくとも一種から成る添
加物とを混合する混合工程と、(b) その混合工程により
得られた混合原料を前記ガラス原料および前記添加物が
熔融する温度で加熱処理することにより、前記添加物ま
たはその還元物が組織の一部を構成するガラスを形成す
るガラス化工程と、(c) 前記ガラスを粉砕することによ
り、前記ガラス粉末を得る粉砕工程とを、含むことにあ
る。
て作成されたガラス原料と添加物とから成る混合原料
が、ガラス化工程においてそのガラス原料および添加物
が熔融する温度で加熱処理されると、その冷却過程にお
いて、その添加物または還元物すなわちCuおよびNiの少
なくとも一方が組織の一部を構成するガラスが生成さ
れ、粉砕工程においてそのガラスを粉砕することによ
り、ガラス・ペーストを作製するために用いられるガラ
ス粉末が得られる。そのため、このように一旦熔融させ
ることにより、ガラス粉末中に予めその組織の一部を構
成するようにCuおよびNiの少なくとも一方が含まれるこ
とから、このガラス粉末を含むガラス・ペーストを適当
な膜形成温度、例えば、軟化点よりも10〜 20(℃) 程度
だけ高い加熱処理温度で処理することにより、組織中に
CuおよびNiの何れかを含むガラス膜が好適に生成され
る。なお、ガラス・ペーストを作製する際にガラス粉末
と添加物粉末とをビヒクル中に分散する方法では、ガラ
ス粉末が熔融しないような膜形成温度で加熱してもガラ
スの組織が変化しないことから、ガラスと添加物とが化
学的に独立した状態に保たれるため、ガラス膜中へのAg
の拡散抑制効果が得られない。
方法において、前記添加物は、単体または酸化物であ
る。このようにすれば、CuおよびNiが単体または酸化物
の形態で添加されることから、前記ガラス化工程におい
て加熱処理することにより、CuおよびNiの何れかを組織
中に含むガラスが好適に生成される。
達成するための第3発明の銀被覆ガラス膜を備えた構造
体の要旨とするところは、絶縁体の表面に設けられた銀
を導体成分とする導体膜と、その導体膜の一部または全
体を覆って設けられた銀被覆ガラス膜とを含む銀被覆ガ
ラス膜を備えた構造体であって、(a) 前記銀被覆ガラス
膜は、ガラス組織中にCuおよびNiの少なくとも一方を含
むことにある。
を構成するガラス組織中にCuおよびNiの何れかが含まれ
ることから、その生成過程における黄変が好適に抑制さ
れる。
び第3発明の何れかの態様において、前記CuおよびNi
は、酸化物に換算したそれらの合計量が前記ガラス組織
の他の構成要素100(%)に対して0.01〜1.0(%)(但し、Ni
の上限を0.5(%)とする)の範囲内の質量比で含まれるも
のであり、前記第2発明の何れかの態様において、前記
添加物は、酸化物に換算した量がガラス原料100(%)に対
して0.01〜1.0(%)(但し、Niの上限を0.5(%)とする)の
範囲内の質量比で含まれるものである。このようにすれ
ば、Agの拡散抑制に十分効果があり、且つCuやNiの添加
に起因するガラス膜自身の着色が問題にならない範囲で
それらが添加されることから、黄変が少なく且つ透光性
の高いガラス膜およびそれを備えた構造体が得られる。
なお、添加量或いは含有量が0.01(%) 未満では、黄変の
抑制効果が実質的に得られない。また、Cuにおいては1.
0(%)を越えると、Niにおいては0.5(%)を越えると、ガラ
スに対する着色成分であるCuやNiが過剰になることから
黄変を抑制してもガラスの着色に起因する透明性の低下
等の弊害が生じることになる。
参照して詳細に説明する。
構造体の一適用例である面放電AC型PDPの前面板1
0の要部断面を表した図である。前面板10は、図示し
ない背面板と重ね合わされ且つ周縁部において封着され
ることにより気密容器を構成するものである。その背面
板側となる内面12には、適当な相互間隔を以て互いに
平行に配列された複数本の細幅の電極14が誘電体層1
6に覆われた状態で備えられている。
程度の均一な厚さを備えて透光性を有するソーダライム
・ガラス等から成るガラス平板である。また、上記電極
14は、例えば、銀を導体成分とする厚膜導体材料から
成る厚さ寸法が5(μm)程度、幅寸法が 80(μm)程度の銀
導体膜である。この銀導体膜14は、例えば、球状或い
はフレーク状の銀粉末をガラス粉末と共にビヒクル中に
分散させ、厚膜スクリーン印刷法を用いて予め定められ
た厚みに塗布され且つ焼成処理が施されることにより生
成される。なお、一般の面放電構造においては、内面1
2上にITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)
やATO(Antimon Tin Oxide :酸化アンチモン錫)等
の透明導体材料から成る幅広の透明電極が放電電極とし
て設けられると共に、銀導体膜がその透明電極の導電性
を補う目的で重ねて設けられるが、図においては透明電
極を省略している。但し、図に示されるように銀導体膜
14で放電電極を構成することも可能である。
電荷を蓄えることにより内面12上において対を成す電
極14間で交流放電を発生させるためのものであって、
例えば有鉛系のPbO-B2O3-SiO2-Al2O3 系低軟化点ガラ
ス、或いは無鉛系のB2O3-SiO2-Al2O3 系低軟化点ガラス
等から成り、前記の電極14上における厚さ寸法が 40
(μm)程度となるように設けられている。このガラス膜
は、例えば、ガラス粉末をビヒクル中に分散させた厚膜
絶縁ペーストを用意し、厚膜スクリーン印刷法を用いて
内面12の全面に印刷し、軟化点よりも10〜 20(℃) 程
度だけ高い温度、例えば540(℃) 程度の温度で30分間程
度保持する加熱処理を施すことによって生成されたもの
である。ガラス膜16は、例えば、主成分の構成比が下
記の表1に示すような範囲内の質量割合のものであり、
酸化物に換算した含有量がこれらの合計100(%)に対して
0.01〜1.0(%)程度(但し、Niの上限を0.5(%)程度とす
る)の範囲内の質量比でCuおよびNiの少なくとも一方を
添加成分として、例えばイオン化した状態で含んでい
る。
る電極14を覆って設けられているにも拘わらず、その
電極14中のAgイオンがその誘電体層16内や基板10
内に拡散することが抑制されることから、それらの黄変
延いては外観劣化や可視光透過率の低下が好適に抑制さ
れる。ここで、可視光透過率は、例えば誘電体層16の
表面18から光を入射させて、基板10の裏面20から
射出される光量を測定して求めたものである。なお、透
過率は、入射光の入射方向を表面18に対して垂直に設
定し、裏面20に対して垂直を成す向きで射出された光
だけを測定した直線透過率と、積分球を用いることによ
り基板10および誘電体層16内およびそれらの界面や
表面で屈折或いは散乱して射出方向が変化した光も測定
した積分球透過率とをそれぞれ測定したが、何れにおい
ても従来に比較して可視光透過率が高められることを確
認できた。
ための厚膜絶縁ペーストは、例えば、図2に示される工
程に従って製造される。先ず、粉体混合22において
は、ガラス原料粉末および添加物粉末をそれぞれ用意
し、これらを攪拌機等で混合する。ここで、ガラス原料
粉末としては、前記の主成分組成を備えた球形或いは適
宜の形状の粉末を用いることができる。また、添加物粉
末としては、例えば球形或いはフレーク状等の適宜の形
状のCuまたはNiの酸化物CuO またはNiO 粉末を用いるこ
とができる。後述するように、ガラス化工程においてこ
れらは熔融させられるため、合成されるガラス材料の品
質に関する限り、その粒径は何ら限定されることは無
く、適宜の大きさのものを用い得る。
記のようにして混合した原料を白金製坩堝等に入れて加
熱して熔融させ、更に硬化させることによりガラス塊を
製造する。なお、加熱処理温度は、ガラス原料粉末の軟
化点よりも400(℃) 以上、例えば500 〜800(℃) 程度だ
け高い温度、例えば1000〜 1500(℃) 程度である。これ
により、加熱処理の最高保持温度においてガラス原料粉
末が熔融して極めて高い流動性を得ると共に酸化物の形
態で混合された添加物が還元されるため、前記の主成分
元素の構成するネットワーク(ガラス組織)中にその還
元された添加物(NiまたはCu)が入り込んだガラス組織
が生成される。そのため、生成されたガラス塊には添加
物であるCuO またはNiO 特有の着色は実質的に見られ
ず、略無色透明な色調に保たれている。本実施例におい
ては、加熱処理工程24がガラス化工程に対応する。な
お、上記のガラス化工程では、例えば冷却過程にあるガ
ラスがローラ等により粗く砕かれるため、生成されたガ
ラス塊は例えば直径2 〜3(cm) 程度、厚さ1 〜5(mm) 程
度の不定形を成す。
ラス塊をボールミル等で粉砕することにより、平均粒径
が0.5 〜5(μm)程度のガラス粉末が得られ、混合工程2
8において、このガラス粉末と別途調製したビヒクルと
を攪拌機等で混合することにより、厚膜絶縁ペーストが
得られる。なお、上記ビヒクルは、例えば、エチルセル
ロースやアクリル等の樹脂成分(有機結合剤)をターピ
ネオールやブチルカルビトールアセテート等の有機溶剤
に分散したものが好適に用いられる。前記の誘電体層1
6は、このようにして製造された厚膜絶縁ペーストから
生成されたものであることから、Agの拡散を抑制するCu
またはNiがガラス組織のネットワーク中に含まれている
ため、前述したように黄変が抑制されているのである。
作製されたガラス原料とNi、Cu等の添加物とから成る混
合原料が、加熱処理工程24において1000〜 1500(℃)
程度の高温で加熱処理されると、添加物或いはその還元
物(NiまたはCu)が組織の一部を構成するガラスが生成
され、粉砕工程26においてこれを粉砕することによ
り、厚膜絶縁ペーストを作製するために用いられるガラ
ス粉末が得られる。そのため、ガラス粉末中に予めその
組織の一部を構成するようにCu、Ni等が含まれているこ
とから、厚膜絶縁ペーストを前面板10の内面12に塗
布して焼成することにより、前述したように組織中にCu
またはNiの含まれる誘電体層16が得られ、銀電極14
を覆って誘電体層16を設けてもその黄変が抑制される
のである。
電体層16に対するCu、Ni添加の影響や効果を種々の条
件で評価した結果について説明する。表2は、一定の組
成のガラス原料を用いてCuO 添加に伴うガラスの物性変
化や形成されたガラス膜(誘電体層16)の黄変の抑制
の程度を確かめた試験結果を示したものである。なお、
以下に説明する試験においては、黄変を色差計(例え
ば、ミノルタ(株)製 CR-300 色彩色差計)で測定した
b値で評価した。b値は黄色度を表すものであって、そ
の値が大きいほど黄変が著しいと言える。表において、
「CuO 添加量」はガラス原料粉末100(%)に対する質量比
であり、「ガラス転移点」および「軟化点」は、それぞ
れ前記図2に示される粉砕工程26で得られたガラス粉
末の物性である。また、「比誘電率」はそのガラス粉末
を円柱状に押し固めて焼成処理した試験片の両端面間の
静電容量を測定して求めた。また、「b値」は、混合工
程28において各々のガラス粉末をペースト化したガラ
ス・ペーストを用いて電極14上に誘電体層16を設
け、背景を黒色としてその表面18側から色差計で測定
した。なお、ガラス粉末およびガラス・ペーストの調製
方法や誘電体層16の形成方法等は、何れのサンプルに
おいても、前述した前面板10の場合と同様である。但
し、本評価では焼成条件を540(℃) で10分間保持とし
た。
b値が改善され、その添加量を多くするほどb値が小さ
くなることが判明した。一方、ガラス転移点および軟化
点は無添加の場合に比較して低くなるものの、その変化
は僅かであって製造工程上の支障が生じるほどではな
く、また、誘電体層16の機能上重要な比誘電率は何ら
変化が認められなかった。すなわち、CuO の添加によ
り、工程や電気的機能に何ら影響を与えることなく、誘
電体層16の黄変を抑制してその色調を制御できること
が確かめられた。
末に対する添加試験結果をまとめたものであって、上段
にガラス原料粉末の組成を、中段にCuO の添加量を、下
段に誘電体層16のb値をそれぞれ示した。ガラス原料
粉末は、有鉛系二種(No.1、No.2)、無鉛系一種(No.
3)の合計三種類である。これらのガラス原料粉末100
(%)に対して、CuO の添加量は0.1 或いは0.3(%)とし
た。これらは、前記の表2に示した試験において十分な
添加効果が認められる値である。なお、「R1」はCuOを
添加しない従来例であり、ガラス原料粉末の組成はNo.1
と同じである。また、b値は、色差計で誘電体層16の
表面側から測定した値を、CuO 無添加の場合の値と共に
示した。なお、前記の表2に示す評価は、例えば下記の
No.1のガラス原料粉末を用いて行っている。表2と表3
でb値が異なるのは、表3の試験では誘電体層16形成
時の焼成温度を540(℃) で30分間保持としたことに専ら
依存するが、両者は膜厚も相違するため、これも影響し
ていると考えられる。誘電体層16に望まれる透光性を
得るためには、保持時間を30分間程度にする必要がある
が、CuO 無添加の場合には保持時間が長くなるほどAgの
拡散が進行するため、黄変が著しくなるのである。
ラスおよび無鉛系ガラスの何れにおいても、ガラス粉末
の調製時にCuO を混合したガラス・ペーストを用いるこ
とにより、CuO 無添加の場合に比較してb値を低くする
ことができる。
電極14上に誘電体層16を設けることによる黄変の程
度の比較を容易にする目的で新たに定義した特性値であ
る。具体的には、△bは、電極14を設けた後、誘電体
層16を設ける前の黄色度(bAg)すなわち銀電極14
のb値を測定しておき、誘電体層16を設けた後に測定
したb値とbAgとから、△b=b−bAgで算出した。し
たがって、△bは、電極14の表面側から見た前面板1
0の色調が、誘電体層16を設けることにより黄変した
程度を表すものと言える。前記表3の評価結果によれ
ば、No.1の誘電体層16は△b=4 であり、△b=23の
従来のものに比較して著しく黄変を抑制できることが判
る。
基板からなる前面板10の内面12に設けられた際にそ
の内面12側の裏面が黄変し、誘電体層16を設ける際
に更に黄色度が高まる傾向にある。そのため、電極14
の裏面側が人目に触れるようなPDP等の用途では、裏
面側の黄変を抑制することも望まれている。図3は、前
記のNo.1の組成のガラス原料を用いた誘電体層16にお
いて、前面板10の内面12側および外面20側のそれ
ぞれにおけるCuO の添加量とb値および△bとの関係を
評価した結果を表したグラフである。図において、表面
側b値は、CuOを僅かに添加することで著しく低下する
と共に、0.1(%)以上では添加量に応じてなだらかに低下
することが判る。但し、CuO の添加量が多くなるほど、
誘電体層16が青みを帯びていく傾向にある。肉眼によ
る観察では0.1 〜0.3(%)程度の添加量で問題となるよう
な黄変は見られなくなっており、それ以降のb値の低下
は誘電体層16が青くなることにより電極14の本来の
色が打ち消されるものである。すなわち、PDP用の基
板においては、表面側の色調に関する限り、0.3(%)以上
の添加量は好ましくないと言える。
おいては、CuO を添加してもb値の低下は僅かに過ぎ
ず、添加量が多くなると却ってb値が高められる傾向に
ある。図の△bのグラフによれば、誘電体層16を設け
ることに起因する黄変の著しいことが明らかである。し
たがって、CuO の添加量は、表面側および裏面側のそれ
ぞれの黄変傾向を考慮して、何れを重要とするかに基づ
いて定める必要があるものと言える。
率が全体的に低下すると共に、その変色により透過率の
波長依存性も変化する。そのため、本実施例のPDPの
前面板10では、可及的に広い色範囲に亘って高輝度が
得られるように、透過率が高く且つ可視光域におけるそ
の透過率の一様性が高いことが望まれることから、内面
12側で発生した光が透過させられる電極14相互間の
誘電体層16の黄変が最も問題になる。図4、図5は、
電極14の各々の幅寸法を100(μm)程度、相互間隔を10
0(μm)程度とした試料を用いて、その黄変の程度を直線
透過率および積分球透過率の波長依存性でそれぞれ評価
したものである。各曲線に付した「n(%) 」は、CuO の
添加量を表す。なお、各添加量の試料は膜厚や製造方法
が同一ではないため、透過率の値そのものを相互に比較
することはできない。
16では、可視光の短波長域、すなわち400 〜500(nm)
程度の青色の波長域で透過率の落ち込みが見られる。こ
の落ち込みの大きさは、他の波長域に比較して直線透過
率で17(%) 程度、積分球透過率で20(%) 程度と大きく、
そのため、従来においては青色の輝度低下が著しかった
のである。これに対して、CuO を0.01(%) 添加したもの
では直線透過率で8(%)程度、積分球透過率でも12(%) 程
度の落ち込みに過ぎず、透過率の波長依存性が緩和され
ている。また、0.1(%)の添加でも、落ち込みの大きさは
それぞれ12(%)程度、15(%) 程度であり、十分な緩和効
果が認められる。したがって、このように黄変を抑制し
た前面板10が備えられたPDPでは、透過率の波長依
存性が緩和されることにより、可視光域の全体に亘って
輝度の略一様な発光表示を得ることが可能となる。
による誘電体層16の着色が著しくなるため、却って上
記の短波長域における透過率の落ち込みが著しくなる。
そのため、可視光の短波長域を含む広範な波長域に亘る
一様な透過率が要求される場合には、このような傾向を
考慮してCuO の添加量を定める必要がある。透過率より
も色調が重要視される場合には、0.3(%)以上の添加率も
許容される余地があると言える。
を用いて形成した誘電体層16のb値を添加量が0(%)の
場合と比較して示したものである。ガラス原料は全て前
記の表3に示されるNo.1の組成のものを用いている。Cu
を添加した場合にも、僅かな添加量で黄変が著しく抑制
され、高い効果のあることが判る。また、NiおよびNiO
を添加した場合にも、Cuの場合ほどではないが、黄変抑
制効果は明らかに認められる。すなわち、Cuは酸化物に
限られず単体で添加してもよく、Cuに代えてNiを用いる
こともできる。
詳細に説明したが、本発明は、更に別の態様でも実施で
きる。
電構造のAC型PDPの前面板10に適用された場合に
ついて説明したが、本発明は、銀導体膜がガラス膜に覆
われた構造を有するものであれば種々のものに適用で
き、例えば、対向放電構造のAC型PDPの前面板およ
び背面板等の他の表示装置や、トナー定着用加熱ロー
ラ、サーマル・プリンタのヘッド等の他の構造体にも同
様に適用できる。
14)が厚膜である場合について説明したが、薄膜であ
る場合にも本発明は同様に適用できる。
にCu、Niおよびそれぞれの酸化物が添加される場合につ
いて説明したが、添加形態は特に限定されず、例えば炭
酸銅(CuCO3) 、硝酸ニッケル(NiNO3) 等を用いることも
できる。添加する化合物は、ガラス原料粉末からガラス
粉末を作製する過程で加熱することにより還元されてCu
或いはNiとなる化合物が特に好ましい。
としてガラスの他の構成要素100(%)に対してCuO では0.
01〜1.0(%)、NiO では0.01〜0.5(%)の範囲内の質量比で
添加していたが、適切な添加量は、ガラスの組成やガラ
ス膜の目的等に応じて適宜定められ、0.01(%) 未満の添
加量や1.0(%)或いは0.5(%)を越える添加量で用いること
もできる。
方だけが添加される場合について説明したが、両者を共
に添加することもできる。
び誘電体層16が設けられる絶縁体が透明ガラス平板か
ら成る前面板10である場合について説明したが、不透
明なガラス平板や、セラミック製或いは琺瑯製等の種々
の絶縁体の上に銀導体膜および銀被覆ガラス膜を設ける
場合にも本発明は同様に適用される。
の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものであ
る。
施例であるPDPの前面板の断面構造を説明する図であ
る。
れるガラス・ペーストの製造方法を説明する工程図であ
る。
係を説明するグラフである。
量毎に説明するグラフである。
加量毎に説明するグラフである。
Claims (7)
- 【請求項1】 ガラス粉末がビヒクル中に分散させられ
て成り、銀(Ag)を導体成分とする導体膜を覆うガラス膜
を形成するために用いられる銀被覆用ガラス・ペースト
であって、 前記ガラス粉末が組織中に銅(Cu)およびニッケル(Ni)の
少なくとも一方を含むことを特徴とする銀被覆用ガラス
・ペースト。 - 【請求項2】 前記CuおよびNiは、酸化物に換算したそ
れらの合計量が前記ガラス粉末の他の構成要素100(%)に
対して0.01乃至1.0(%)(但し、Niの上限を0.5(%)とす
る)の範囲内の質量比で含まれるものである請求項1の
銀被覆用ガラス・ペースト。 - 【請求項3】 ガラス粉末をビヒクル中に分散させるこ
とにより請求項1の銀被覆用ガラス・ペーストを製造す
る方法であって、 ガラス原料と、CuまたはNiおよびそれぞれの化合物の少
なくとも一種から成る添加物とを混合する混合工程と、 その混合工程により得られた混合原料を前記ガラス原料
および前記添加物が熔融する温度で加熱処理することに
より、前記添加物またはその還元物が組織の一部を構成
するガラスを形成するガラス化工程と、 前記ガラスを粉砕することにより、前記ガラス粉末を得
る粉砕工程とを、含むことを特徴とする銀被覆用ガラス
・ペーストの製造方法。 - 【請求項4】 前記添加物は、単体または酸化物である
請求項3の銀被覆用ガラス・ペーストの製造方法。 - 【請求項5】 前記添加物は、酸化物に換算した量がガ
ラス原料100(%)に対して0.01乃至1.0(%)(但し、Niの上
限を0.5(%)とする)の範囲内の質量比で含まれるもので
ある請求項4の銀被覆用ガラス・ペーストの製造方法。 - 【請求項6】 絶縁体の表面に設けられたAgを導体成分
とする導体膜と、その導体膜の一部または全体を覆って
設けられた銀被覆ガラス膜とを含む銀被覆ガラス膜を備
えた構造体であって、前記銀被覆ガラス膜は、ガラス組
織中にCuおよびNiの少なくとも一方を含むことを特徴と
する銀被覆ガラス膜を備えた構造体。 - 【請求項7】 前記CuおよびNiは、酸化物に換算したそ
れらの合計量が前記ガラス組織の他の構成要素100(%)に
対して0.01乃至1.0(%)(但し、Niの上限を0.5(%)とす
る)の範囲内の質量比で含まれるものである請求項6の
銀被覆用ガラス膜を備えた構造体。
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JP2000142067A JP2001328836A (ja) | 2000-05-15 | 2000-05-15 | 銀被覆用ガラス・ペースト、その製造方法、および銀被覆ガラス膜を備えた構造体 |
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JP (1) | JP2001328836A (ja) |
Cited By (1)
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WO2006098075A1 (ja) * | 2005-03-16 | 2006-09-21 | Nitto Denko Corporation | 誘電体形成シート及び誘電体層形成基板の製造方法 |
-
2000
- 2000-05-15 JP JP2000142067A patent/JP2001328836A/ja active Pending
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WO2006098075A1 (ja) * | 2005-03-16 | 2006-09-21 | Nitto Denko Corporation | 誘電体形成シート及び誘電体層形成基板の製造方法 |
JP2006260902A (ja) * | 2005-03-16 | 2006-09-28 | Nitto Denko Corp | 誘電体形成シート及び誘電体層形成基板の製造方法 |
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