JP4300760B2 - 電極被覆用ガラスおよびプラズマディスプレイ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ITO(スズがドープされた酸化インジウム)、酸化スズ等の透明電極、特にその表面の一部に銀電極が形成されている透明電極を絶縁被覆するのに適した低融点ガラス、およびプラズマディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、薄型の平板型カラー表示装置が注目を集めている。このような表示装置においては、画像を形成する画素における表示状態を制御するために各画素に電極を形成しなければならない。画像の質の低下を防ぐために、前記電極として透明電極が用いられている。透明電極としては、ガラス基板上に形成されたITOまたは酸化スズの薄膜が多く用いられている。
【0003】
前記表示装置の表示面として使用されるガラス基板の表面に形成される透明電極は、精細な画像を実現するために細い線状に加工される。そして各画素を独自に制御するためには、このような微細に加工された透明電極相互の絶縁性を確保する必要がある。ところが、ガラス基板の表面に水分が存在する場合やガラス基板中にアルカリ成分が存在する場合、このガラス基板の表面を介して若干の電流が流れることがある。このような電流を防止するには、透明電極間に絶縁層を形成することが有効である。また、透明電極間に形成される絶縁層による画像の質の低下を防ぐためには、この絶縁層は透明であることが好ましい。
【0004】
このような絶縁層を形成する絶縁材料としては種々のものが知られているが、なかでも、透明であり信頼性の高い絶縁材料であるガラス材料が広く用いられている。
【0005】
最近大型平面カラーディスプレイ装置として期待されているプラズマディスプレイ装置(以下PDPという。)においては、表示面として使用される前面基板、背面基板および隔壁によりセルが区画形成されており、該セル中でプラズマ放電を発生させることにより画像が形成される。前記前面基板の表面には透明電極が形成されており、この透明電極をプラズマから保護するために、プラズマ耐久性に優れたガラスにより前記透明電極の被覆することが必須である。
【0006】
このような電極被覆に用いられるガラスは、通常はガラス粉末にして使用される。すなわち、前記ガラス粉末に必要に応じてフィラー等を添加後ペースト化し、このようにして得られたガラスペーストを、透明電極が形成されているガラス基板に塗布、焼成することによって前記透明電極を被覆する。
【0007】
電極被覆用ガラスには、先に述べたような電気絶縁性の他に、たとえば、軟化点が650℃以下であること、線膨張係数が60×10−7〜100×10−7/℃であること、焼成して得られる電極被覆ガラス層の透明性が高いこと、等が求められており、種々のガラスが従来提案されている。たとえば、特開2001−39734号公報の表1には実施例1として、質量百分率表示で、PbO:76.0%、B2O3:19.0%、SiO2:2.0%、ZnO:3.0%、CuO:0.5%からなる電極被覆用ガラスが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、PDPの消費電力を低減するために電極被覆ガラス層の誘電率を小さくすることが求められている。
また、上記公報に開示されているガラスは鉛を含有しているが、一方で鉛を含有しない電極被覆用ガラスを求める動きも強い。
本発明はこれら課題を解決するための電極被覆用ガラスおよびプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記酸化物基準の質量百分率表示で、B2O3 10〜60%、SiO2 1〜20%、ZnO 5〜55%、Al2O3 0〜11%、CaO 0〜30%、SrO 0〜30%、BaO 0〜30%、Li2O 0〜30%、Na2O 0〜30%、K2O 0〜30%、CuO+CeO2 0.3〜0.9%、から本質的になる電極被覆用ガラスを提供する。
また、前記電極被覆用ガラスであって、B 2 O 3 が15〜25%、SiO 2 が6〜15%、ZnOが40〜50%、Al 2 O 3 が1〜7%、CaOが3〜10%、BaOが1〜10%、Na 2 O+K 2 Oが5〜15%であるもの、および、前記電極被覆用ガラスであって、B 2 O 3 が15〜25%、SiO 2 が6〜15%、ZnOが40〜50%、Al 2 O 3 が1〜7%、CaOが1〜10%、BaOが5〜10%、Na 2 O+K 2 Oが5〜15%であるものを提供する。
また、本発明は、前面基板を構成するガラス基板上の透明電極が前記電極被覆用ガラスにより被覆されているプラズマディスプレイ装置を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の電極被覆用ガラス(以下単に本発明のガラスという。)は、通常は粉末状にして使用される。たとえば、本発明のガラスの粉末は印刷性を付与するための有機ビヒクル等を用いてガラスペーストとされ、ガラス基板上に形成された電極上に前記ガラスペーストを塗布、焼成して電極を被覆する。ここでいう有機ビヒクルは、エチルセルロース等のバインダをα−テルピネオール等の有機溶剤に溶解したものである。
PDPにおいては、本発明のガラスは前面基板の透明電極の被覆に好適に使用される。
【0011】
本発明のガラスの軟化点は450〜650℃であることが好ましい。650℃超では、通常使用されているガラス転移点が550〜620℃のガラス基板が焼成時に変形するおそれがある。軟化点はより好ましくは630℃以下である。
また、単層構造の電極被覆ガラス層に用いる場合等には軟化点は520℃以上であることが好ましい。より好ましくは550℃以上、特に好ましくは580℃以上である。
【0012】
前記ガラス基板としては、通常、50〜350℃における平均線膨張係数(以下単に膨張係数という。)が80×10−7〜90×10−7/℃のものが用いられる。したがってこのようなガラス基板と膨張特性をマッチングさせ、ガラス基板のそりや強度の低下を防止するためには、本発明のガラスの膨張係数は60×10−7〜90×10−7/℃であることが好ましく、70×10−7〜85×10−7/℃であることがより好ましい。
【0013】
本発明のガラスの比誘電率は12以下であることが好ましい。12超ではPDPのセルの静電容量が大きくなりすぎ、PDPの消費電力が増大するおそれがある。より好ましくは10.5以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは9.5以下である。
【0014】
本発明のガラスにおいては、B2O3が15〜25%、SiO2が6〜15%、ZnOが40〜50%、Al2O3が1〜7%、CaOが1〜10%、BaOが1〜10%、Na2O+K2Oが5〜15%であることが好ましい。
【0015】
次に本発明のガラスの組成について質量百分率表示を用いて説明する。
B2O3はガラスを安定化させる成分であり、必須である。10%未満ではガラスが不安定になる。好ましくは15%以上である。60%超では軟化点が高くなる。好ましくは55%以下である。
【0016】
SiO2はガラスを安定化させ、また銀発色現象を抑制する成分であり、必須である。1%未満では銀発色現象抑制効果が小さい。好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上である。20%超では軟化点が高くなる。好ましくは15%以下である。なお銀発色現象とは、PDP前面基板のガラス基板上の透明電極上に形成された銀含有バス電極をガラスで被覆した場合に、該ガラスに銀が拡散しガラスが茶色に着色しPDPの画質が低下する現象である。
【0017】
ZnOは軟化点を低下させる成分であり、必須である。5%未満では軟化点が高くなる。好ましくは10%以上である。55%超では失透しやすくなる。好ましくは50%以下である。
【0018】
Al2O3は必須ではないが、ガラスを安定化させるために11%まで含有してもよい。11%超では失透しやすくなる。好ましくは7%以下である。Al2O3を含有する場合その含有量は1%以上であることが好ましい。
【0019】
CaO、SrOおよびBaOはいずれも必須ではないが、耐水性を向上させるため、分相を抑制するため、または膨張係数を大きくするためにそれぞれ30%まで含有してもよい。30%超では膨張係数が大きくなりすぎる。好ましくはそれぞれ20%以下、より好ましくはそれぞれ10%以下である。CaO、SrOまたはBaOを含有する場合それらの含有量はそれぞれ1%以上であることが好ましい。
【0020】
CaO、SrOおよびBaOのいずれか1種以上を含有する場合CaO+SrO+BaOは1〜30%であることが好ましい。より好ましくは5〜15%である。
【0021】
Li2O、Na2OおよびK2Oはいずれも必須ではないが、軟化点を低下させるため、または膨張係数を大きくするためにそれぞれ30%まで含有してもよい。30%超ではガラスが不安定になる。好ましくはそれぞれ20%以下、より好ましくはそれぞれ10%以下である。Li2O、Na2OまたはK2Oを含有する場合それらの含有量はそれぞれ1%以上であることが好ましい。
【0022】
Li2O、Na2OおよびK2Oのいずれか1種以上を含有する場合Li2O+Na2O+K2Oは5〜20%であることが好ましい。より好ましくは5〜15%である。
【0023】
CuOおよびCeO2は銀発色現象を抑制する成分であり少なくともいずれか1種を含有しなければならない。CuO+CeO2が0.3%未満では銀発色現象抑制効果が小さく、透明電極上に銀含有電極が形成されている場合への本発明のガラスの適用が困難になる。0.9%超では電極被覆ガラス層の着色が顕著となり透明性が低下する。好ましくは0.7%以下である。
【0024】
本発明のガラスは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。
該その他の成分の含有量の合計は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0025】
前記その他の成分としては、軟化点または膨張係数の調整、ガラスの安定化、化学的耐久性の向上等のためのTiO2、ZrO2、La2O3、軟化点を低下させるためのF等ハロゲン成分、等が例示される。
なお、本発明のガラスはPbOを含有しない、またはPbOを含有するとしても0.5%以下である。さらに、本発明のガラスはBi2O3を含有しない、またはBi2O3を含有するとしても0.5%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明のガラスの用途はPDP前面基板の透明電極の被覆に限定されず、たとえばPDP背面基板の不透明電極の被覆にも使用できる。
【0027】
本発明のプラズマディスプレイ装置(以下本発明のPDPという。)の前面基板においては、ガラス基板の上に透明電極が形成されており、該透明電極が形成されているガラス基板の表面が本発明のガラスにより被覆されている。
【0028】
前面基板に用いられるガラス基板の厚さは通常2.8mmであり、このガラス基板自体の波長550nmの光に対する透過率(以下T550と記す。)は典型的には90%である。また、その濁度は典型的には0.4%である。
【0029】
また、透明電極は、たとえば幅0.5mmの帯状であり、それぞれの帯状電極が互いに平行となるように形成される。各帯状電極中心線間の距離は、たとえば0.83〜1.0mmであり、この場合、透明電極がガラス基板表面を占める割合は50〜60%である。
【0030】
本発明のPDPの前面基板については、T550は70%以上であることが好ましい。70%未満ではPDPの画質が低下するおそれがある。より好ましくは75%以上、特に好ましくは77%以上である。
また、その濁度は30%以下であることが好ましい。30%超ではPDPの画質が低下するおそれがある。より好ましくは27%以下である。
【0031】
本発明のPDPは、たとえば交流方式のものであれば次のようにして製造される。
ガラス基板の表面にパターニングされた透明電極およびバス線(典型的には銀線)を形成したのち、本発明のガラスの粉末を塗布・焼成してガラス層を形成し、最後に保護膜として酸化マグネシウムの層を形成し、前面基板とする。一方、別のガラス基板の上には、パターニングされたアドレス用電極を形成したのち、ストライプ状に隔壁を形成し、さらに蛍光体層を印刷・焼成して背面基板とする。
【0032】
前面基板と背面基板の周縁にシール材をディスペンサで塗布し、前記透明電極と前記アドレス用電極が対向するように組み立てた後、焼成してPDPとする。そしてPDP内部を排気して、放電空間(セル)にNeやHe−Xeなどの放電ガスを封入する。
なお、上記の例は交流方式のものであるが、本発明は直流方式のものにも適用できる。
【0033】
【実施例】
表のB2O3からCeO2までの欄に質量百分率で示す組成となるように、原料を調合して混合し、1200〜1350℃の電気炉中で白金ルツボを用いて1時間溶融し、薄板状ガラスに成形した後、ボールミルで粉砕し、ガラス粉末を得た(例1、2)。
【0034】
これらガラス粉末について、軟化点(単位:℃)、膨張係数(単位:10−7/℃)および比誘電率を以下に述べるようにして測定した。結果を表に示す。
軟化点:示差熱分析計を用いて測定した。
【0035】
膨張係数:ガラス粉末を成形後、580℃で10分間焼成して得た焼成体を直径5mm、長さ2cmの円柱状に加工し、熱膨張計で50〜350℃の平均線膨張係数を測定した。
【0036】
比誘電率:ガラス粉末を再溶融し板状に成形後、加工して50mm×50mm×厚さ3mmの測定試料とした。測定試料の両面にアルミニウム電極を蒸着により作製して周波数1MHzでの比誘電率をLCRメータを用いて測定した。
【0037】
また、前記ガラス粉末100gを有機ビヒクル25gと混練してガラスペーストを作製した。なお、有機ビヒクルは、α−テルピネオールにエチルセルロースを質量百分率表示で12%溶解して作製した。
【0038】
次に、大きさ50mm×75mm、厚さ2.8mmのガラス基板を用意し、このガラス基板の表面48mm×73mmの部分にスクリーン印刷用銀ペーストを印刷し焼成して銀層を形成した。なお、前記ガラス基板は、質量百分率表示組成が、SiO2:58%、Al2O3:7%、Na2O:4%、K2O:6.5%、MgO:2%、CaO:5%、SrO:7%、BaO:7.5%、ZrO2:3%、ガラス転移点が626℃、膨張係数が83×10−7/℃、であるガラスからなる。
【0039】
このように銀層が形成されたガラス基板と銀層が形成されていないガラス基板のそれぞれ50mm×50mmの部分に前記ガラスペーストを均一にスクリーン印刷後、120℃で10分間乾燥した。これらガラス基板を昇温速度10℃/分で580℃になるまで加熱し、さらにその温度に30分間保持して焼成した。このようにして得られたガラス層の厚さは22〜25μmであった。
【0040】
銀層が形成されていないガラス基板上に前記ガラス層が形成された試料について、波長550nmの光の透過率(単位:%)および濁度(単位:%)を以下に述べるようにして測定した。結果を表に示す。
透過率:日立製作所社製の自記分光光度計U−3500(積分球型)を用いて波長550nmの光の透過率を測定した。試料のない状態を100%とした。
【0041】
濁度:スガ試験器社製のヘーズメータ(ハロゲン球を用いたC光源)を使用した。ハロゲン球からの光をレンズによって平行光線として試料に入射させ、積分球により全光線透過率Ttと拡散透過率Tdを測定し、次式により算出した。
濁度(%)=(Td/Tt)×100 。
【0042】
銀層が形成されたガラス基板上に前記ガラス層が形成された試料について、波長430nmの光の反射率(単位:%)を測定した。結果を表に示す。
ガラス層に銀が拡散して黄色のコロイド発色が大きくなると前記反射率は低下する。すなわち、前記反射率は銀発色現象の目安であり、50%以上であることが好ましい。より好ましくは55%以上である。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明のガラスを用いることにより、ガラス基板上の透明電極を被覆するガラス層の透明性を高くでき、ガラス基板上の銀電極を被覆するガラス層の銀発色現象を抑制でき、または電極を被覆するガラス層の比誘電率を小さくできる、そのようなガラス層として鉛を含有しないものが得られる。
【0045】
本発明のPDPにおいては前面基板の電極被覆ガラス層が鉛を含有しないものであっても、その前面基板の透過率が高く、画質が優れている。また、輝度低下が起りにくい。さらに、前面基板の銀電極を被覆するガラス層の銀発色現象を抑制でき、この点でも画質が向上する。また、消費電力も低減できる。
Claims (4)
- 下記酸化物基準の質量百分率表示で、
B2O3 15〜25%、
SiO2 6〜15%、
ZnO 40〜50%、
Al2O3 1〜 7%、
CaO 3〜10%、
SrO 0〜30%、
BaO 1〜10%、
Li2O 0〜30%、
Na2O 0〜10%、
K2O 0〜10%、
CuO+CeO2 0.3〜0.9%、
から本質的になり、Na2O+K2Oが5〜15%である電極被覆用ガラス。 - 下記酸化物基準の質量百分率表示で、
B2O3 15〜25%、
SiO2 6〜15%、
ZnO 40〜50%、
Al2O3 1〜 7%、
CaO 1〜10%、
SrO 0〜30%、
BaO 5〜10%、
Li2O 0〜30%、
Na2O 0〜10%、
K2O 0〜10%、
CuO+CeO2 0.3〜0.9%、
から本質的になり、Na2O+K2Oが5〜15%である電極被覆用ガラス。 - CaO+SrO+BaOが8〜30%である請求項1または2に記載の電極被覆用ガラス。
- 前面基板を構成するガラス基板上の透明電極が請求項1、2または3に記載の電極被覆用ガラスにより被覆されているプラズマディスプレイ装置。
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