JP2004172250A - 厚膜抵抗体組成物、これを用いた厚膜抵抗体及びその形成方法 - Google Patents

厚膜抵抗体組成物、これを用いた厚膜抵抗体及びその形成方法 Download PDF

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Keisuke Mori
圭介 森
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Abstract

【課題】高い抵抗値を示し、抵抗値のバラツキが小さい厚膜抵抗体を与え、焼成表面の強度も有し、視認性に優れ、しかもガラス基板にも適用可能な低い焼成温度を有する厚膜抵抗体組成物、これを用いた厚膜抵抗体及びその形成方法の提供。
【解決手段】非導電性ガラス粉末(A)と導電性粉末(B)と有機ビヒクル(C)とを含有する厚膜抵抗体組成物において、(A)成分が酸化物換算で2〜72重量%のPbO、5〜30重量%のB及び3〜35重量%のSiOを含有し、(B)成分が酸化インジウム−酸化錫粉末(b1)及びルテニウム化合物粉末(b2)からなり、さらに、(A)成分と(B)成分とが、前者が80〜95重量%に対して後者が5〜20重量%の割合で配合されていることを特徴とする厚膜抵抗体組成物などにより提供。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、厚膜抵抗体組成物、及びこれを用いた厚膜抵抗体とその形成方法に関し、さらに詳しくは、高い抵抗値を示し、抵抗値のバラツキが小さい厚膜抵抗体を与え、焼成表面の強度が高く、視認性に優れ、しかもガラス基板にも適用可能な低い焼成温度を有する厚膜抵抗体組成物、これを用いた厚膜抵抗体及びその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、厚膜抵抗体組成物は、例えば、厚膜チップ抵抗器用の抵抗素子材料などとして使用されてきた。この組成物は、非導電性のガラス粉末と導電性の微粉末とを有機ビヒクルとともに混練して調製され、その際、有機ビヒクルは、テルピノール等の有機溶剤にエチルセルロース樹脂等を溶解して製造される。
【0003】
調製された厚膜抵抗体組成物は、ガラスやセラミック等の絶縁性基板にスクリーン印刷などで塗付した後、有機溶剤を蒸発できる温度で乾燥させ、さらにガラス粉末を軟化するに充分な温度で焼成させることにより、目的の厚膜チップ抵抗器に形成される。
従来の厚膜抵抗体組成物においては、その焼成温度が700℃〜900℃と高温であり、一方、得られた抵抗体の抵抗値は、単位面積当たり0.1〜1010Ωまでの範囲で所望の値を実現できていた。
【0004】
近年、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPということもある)、フィールドエミッションディスプレイなどの装置が脚光を浴びており、大型テレビモニター、コンピュータなどのディスプレイに活用され始めた。
【0005】
薄型で省電力なPDPは、将来の壁掛けハイビジョンテレビモニターとして大いに期待されている。PDPは、一対のガラス板に微小間隔をあけて対向配置し、周囲を封着して放電空間を設けたディスプレイパネルであり、放電空間に封入したキセノンなどの稀ガスが放電により励起し、このエネルギーで蛍光体が発光して映像を表示する。
【0006】
一対のガラス板のうち、PDPで映像が表示される側のガラス板は、一方が前面板、他方が背面板と呼ばれている。PDP背面板は、まず、ガラス基板に、ストライプ状の電極を銀ペースト等の厚膜材料などでパターン形成した後、焼成し、次いで、この電極の上に誘電体層となる専用のガラスペースト等の厚膜抵抗体組成物を塗付して焼成し、最後に、この誘電体層の上に障壁用ガラスペーストを塗付し、障壁をパターンニングした後に、焼成して製造されている。
【0007】
このように、PDPなどの装置では、基板にソーダライムガラス等を用いており、点灯方式によっては厚膜抵抗体が必須の構成要素となっているが、ソーダライムガラス等の基板は、加熱により軟化するために、加熱できる温度には限界がある。基板に厚膜抵抗体を形成する場合には、厚膜抵抗体組成物の焼成温度を650℃よりも低い温度に制限する必要があるが、従来の厚膜抵抗体組成物ではかかる低い温度を達成することは不可能であった。
【0008】
そのため、これまでも低い焼成温度でも適用可能な厚膜抵抗体組成物を調製する試みがなされ、例えば、軟化点が350〜550℃のPbO−SiO−B−Al系、又はPbO−SiO−B−Al−ZnO系の非導電性ガラス粉末と導電性のルテニウム系粉末に、酸化チタン粉末、及び導電性酸化チタン粉末又は導電性酸化錫粉末を添加して有機ビヒクル中に分散させてなる、焼成温度500〜600℃の厚膜抵抗体組成物が提案されている(特許文献1、参照)。
ところが、得られる厚膜抵抗体の単位面積当たりの抵抗値は、いずれも、0.6×10Ω程度であり、10Ω以上の高い抵抗値は実現されていない。
【0009】
ところで、厚膜抵抗体組成物においては、得られる抵抗体の抵抗値を制御するために、導電性粉末と非導電性のガラス粉末の配合率が調整されるが、抵抗体の抵抗値は、ガラス粉末の配合率を増加させると指数関数的に上昇する。酸化ルテニウム系の導電性粉末を用いた場合、特に抵抗値が10Ωを超える領域では、ガラス粉末の増加に伴なう抵抗値の上昇が急峻となり、抵抗値の制御が困難となるとともに、抵抗値のバラツキも大きくなるという問題がある。
かかる問題に対処するために、700℃〜900℃で焼成する厚膜抵抗体組成物では、抵抗値を調整するための無機添加物(酸化チタン等)が見出され、その効果が実証されている。
【0010】
上記のように、厚膜抵抗体の用途は、基板にソーダライムガラス等を用いるプラズマディスプレイやフィールドエミッションディスプレイ等の分野にも拡大しているが、従来の厚膜抵抗体組成物ではかかる用途に充分対応できないため、高い抵抗値を示し、かつ抵抗値のバラツキが小さい厚膜抵抗体を与え、しかもガラス基板にも適用できる低温焼成型の厚膜抵抗体組成物が求められていた。
【0011】
しかしながら、450〜650℃の焼成温度を有する低温焼成型の厚膜抵抗体組成物では、抵抗値を調整するための無機添加物は見出されておらず、特に抵抗値が10Ωを超える領域において、抵抗値の制御に問題が残されていた。
【0012】
そこで、本出願人は、非導電性ガラス粉末、導電性微粉末につき酸化インジウム−酸化錫粉末および有機ビヒクルからなり、無機添加剤としてTiO又はSnOを配合した厚膜抵抗体組成物を提案した(特許文献2)。
【0013】
しかし、所望とする抵抗値が10Ωの場合は、非導電性ガラス粉末の含有量が少なくなり、焼成表面が粗くなり次工程に支障をきたすことがある。また、得られた焼成体は、黄色または透明な黄色であり、視認性が劣り、抵抗器の視認性を確保するために別途、黒色顔料を含有するガラスペーストを塗付する手間が生じており、抵抗値が高く、表面粗さが小さく、しかも視認性に優れた厚膜抵抗体が形成できる厚膜抵抗体組成物の出現が切望されていた。
【0014】
【特許文献1】
特開平9−219301号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特願2001−145233号(特許請求の範囲)
【0015】
【発明の解決する課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題に鑑み、高い抵抗値を示し、抵抗値のバラツキが小さい厚膜抵抗体を与え、焼成表面の強度が大きく、視認性に優れ、しかもガラス基板にも適用可能な低い焼成温度を有する厚膜抵抗体組成物、これを用いた厚膜抵抗体及びその形成方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決する手段】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意研究した結果、非導電性ガラス粉末と導電性粉末と有機ビヒクルとを含有する厚膜抵抗体組成物において、ガラス粉末として特定の組成のガラス粉末を用い、さらに、導電性粉末として酸化インジウム−酸化錫粉末とルテニウム化合物粉末を用いた上で、ガラス粉末と導電性粉末を特定の割合で配合したところ、PDP用のガラス基板にも適用可能な低い焼成温度で、高い抵抗値を示し、抵抗値のバラツキが小さい厚膜抵抗体が得られ、上記の目的が達成されることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明の第1の発明によれば、非導電性ガラス粉末(A)と導電性粉末(B)と有機ビヒクル(C)とを含有する厚膜抵抗体組成物において、(A)成分が酸化物換算で2〜72重量%のPbO、5〜30重量%のB及び3〜35重量%のSiOを含有し、(B)成分が酸化インジウム−酸化錫粉末(b1)及びルテニウム化合物粉末(b2)からなり、さらに、(A)成分と(B)成分とが、前者が80〜95重量%に対して後者が5〜20重量%の割合で配合されていることを特徴とする厚膜抵抗体組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、(b1)成分が40〜88重量%に対して(b2)成分が12〜60重量%の割合で配合されていることを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、(b2)成分が、酸化ルテニウム又はルテニウム酸鉛のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物が提供される。
【0020】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの厚膜抵抗体組成物を、絶縁基板に塗付した後、450〜650℃の温度範囲で焼成することを特徴とする厚膜抵抗体を成形方法が提案される。
【0021】
さらに、本発明の第5の発明によれば、第4の発明の形成方法により得られてなる厚膜抵抗体が提供される。
【0022】
さらに、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、抵抗値が10Ω以上で、かつ抵抗値の変動係数が10%未満であることを特徴とする厚膜抵抗体が提供される。
【0023】
さらに、本発明の第7の発明によれば、第5の発明において、明度L値が25以下で、かつ表面粗さRa値が0.3以下であることを特徴とする請求項5に記載の厚膜抵抗体が提供される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の厚膜抵抗体組成物、これを用いた厚膜抵抗体及びその形成方法を詳細に説明する。
【0025】
1.非導電性ガラス粉末(A)
本発明に用いられる非導電性ガラス粉末(A)は、特定の組成からなるPbO−B−SiO系のガラス粉末であり、430〜650℃の軟化点を有することを特徴とする。
【0026】
ガラス粉末に含まれる鉛成分の割合としては、酸化物(PbO)換算で、2〜72重量%が好ましい。鉛成分の割合が2重量%未満では軟化点が高くなり過ぎ、焼成温度を高くしないと結合剤の機能を発揮できない。一方、72重量%を超えると非導電性ガラスの軟化点が低くなり過ぎ、本発明の用途に適さない。
【0027】
ガラス粉末に含まれるホウ素成分の割合としては酸化物(B)換算で、5〜30重量%が好ましい。ホウ素成分の割合が5重量%未満では軟化点が高くなり過ぎ、焼成温度を高くしないと結合剤の機能を発揮できない恐れがある。一方、30重量%を超えると軟化点が低くなり過ぎ、本発明の用途に適さない。
【0028】
ガラスに含まれるケイ素成分は、ガラスを構成する元素の骨格を構成するが、その割合としては、酸化物(SiO)換算で、3〜35重量%が好ましい。ケイ素成分が35重量%を超えると軟化点が高くなり過ぎ、結合剤の機能を発揮できない恐れがある。一方、3重量%未満では軟化点が低くなり過ぎ本発明の用途に適さない。なお、原因は不明であるが、SiOが少ないと、導電性粉末(B)の添加量により抵抗値を制御することが困難となる。
【0029】
非導電性ガラス粉末は、厚膜抵抗体の導電性微粉末の結合剤として機能し、その配合比は、80〜95重量%、好ましくは80〜90重量%である。非導電性ガラス粉末の配合比が80重量%未満では結合剤として機能せず、また焼成表面の平滑性が確保できない。一方、95重量%を超えると、導電性微粉末が少なくなり抵抗値の制御を困難にする。
【0030】
さらに、非導電性ガラス粉末(A)には、熱膨張係数等を調整するために、必要に応じて、Al、ZnO等の周知の酸化物を加えても良い。
【0031】
一方、非導電性ガラス粉末(A)の軟化点は、厚膜抵抗体組成物の焼成温度を450〜650℃にするために、上記ガラス成分の割合を変化させて、430〜650℃の温度範囲に調整することが好ましい。ガラス粉末の軟化点が430℃未満では、原因は不明であるが、酸化インジウム−酸化錫の添加量により抵抗値を制御することが困難となる。一方、軟化点が650℃を超えると、本発明で用いられる焼成条件ではガラスの軟化が不十分となり厚膜抵抗体を形成できない。
【0032】
非導電性ガラス粉末(A)の粒径は、微粉末である導電性粉末と均一に混合し、また、焼成効率を向上させるためにも、5μm以下、特に3μm以下が望ましい。粒径5μm以下のガラス粉末を得るには、原料を溶融、冷却して得られたガラス塊を公知のボールミルやジェットミル等を用いて粉砕すれば良い。
【0033】
また、ガラス粉末は、厚膜抵抗体の導電性粉末の結合剤として機能するが、本発明においては、非導電性ガラス粉末(A)と導電性粉末(B)の配合割合は、(A)成分が80〜95重量%、(B)成分が20〜5重量%であり、好ましくは、(A)成分が80〜90重量%、(B)成分が20〜10重量%とする。
【0034】
(A)成分の配合割合が80重量%未満では、結合剤の成分が少なすぎて、取り扱いによっては表面を破損することがある。また、焼成面の表面粗さが粗くなり、当該厚膜抵抗体の上に新たに別の膜を厚膜または薄膜技術で成膜する際の障害となる。特に薄膜技術で成膜する場合、厚膜抵抗体の表面粗さは、中心線表面粗さ(Ra)で0.3μm以下とするのが望ましい。一方、95重量%を超えると、導電性粉末による抵抗値の制御が困難となる。
【0035】
2.導電性粉末(B)
本発明においては、導電性粉末(B)として酸化インジウム−酸化錫粉末とルテニウム化合物粉末を用いることを特徴とする。
【0036】
酸化インジウム−酸化錫は、比抵抗値が1×10−4Ω/cmであり、酸化ルテニウムの比抵抗値(1×10−5Ω/cm)よりも高い。比抵抗値が高い導電性粉末を用いると、抵抗値を指数関数的に上昇させる非導電性のガラス粉末の配合比率を増加させなくとも、高い抵抗値を得ることができるため、抵抗値の制御が容易となる。
【0037】
しかし、酸化インジウム−酸化錫粉末のみで構成すると、所望の抵抗値が10Ωである場合、導電性微粉末を25重量%以上も添加しなければならない。その結果として、抵抗体の焼成面の表面粗さが粗くなる。そこで、酸化インジウム−酸化錫粉末の導電性を補うために、ルテニウム化合物粉末を添加することで、非導電性ガラス粉末の含有率を下げることなく、所望の抵抗値を実現することができるようにする。
【0038】
(b1)酸化インジウム−酸化錫微粉末
酸化インジウム−酸化錫微粉末は、透明導電膜の原料として知られる導電性粉末である。
【0039】
上述のとおり、厚膜抵抗体組成物の無機成分に占める酸化インジウム−酸化錫微粉末の配合率は、5〜20重量%であり、望ましくは10〜20重量%である。酸化インジウム−酸化錫粉末が5重量%未満では、導電性微粉末が少ない為に抵抗値の制御が困難となり、一方、20重量%を超えると、厚膜抵抗体組成物の焼結が困難となり破損しやすくなる。
また、酸化インジウム−酸化錫粉末の粒径は、抵抗体を均質とするため、1μm以下が望ましい。
【0040】
(b2)ルテニウム化合物粉末
ルテニウム化合物は、酸化ルテニウム(RuO)又はルテニウム酸鉛(PbRuOx;x=6〜7)から選ばれる少なくとも1種類を用いることを特徴とする。ルテニウム化合物の粒径は、抵抗体を均質とするため1μm以下が望ましい。
このうち、酸化ルテニウム(RuO)は、ルテニウム酸鉛よりも1桁低い比抵抗を示し、遜色のない導電性を有するだけでなく、1μm以下の粉末を容易に入手しやすいことから、本発明の厚膜抵抗体組成物の原料となるルテニウム化合物粉末として好適である。
【0041】
導電性粉末(B)を構成するルテニウム化合物は、導電性粉末中に12〜60重量%含有することが必要である。ルテニウム化合物の含有率が12重量%未満では導電性を充分には補助できず、60重量%を超えると抵抗値を下げすぎ、本発明の目的とする10Ω以上の抵抗値を実現できない。
【0042】
また、厚膜抵抗体は、非導電性ガラス粉末(A)、導電性粉末(B)と有機ビヒクル(C)から構成され、この導電性粉末(B)が酸化インジウム−酸化錫粉末のみであると黄色又は透明な黄色を呈する。
そのため基板の有する色彩によっては、目視により抵抗体の有無を判断できない場合も生じるので、黒く着色できることが望まれている。導電性粉末に酸化インジウム−酸化錫のみを用いた系では別途、黒色の顔料を含有するガラスペーストを塗付する必要も生じる。
【0043】
かかる問題に対処するため、本発明の非導電性ガラス粉末(A)、導電性粉末(B)および有機ビヒクル(C)から構成される厚膜抵抗体組成物に耐熱性のある無機黒色顔料、例えば、Fe−Co−Crスピネル型酸化物を添加して着色することができる。
【0044】
しかし、黒色顔料を添加することは、絶縁成分を添加することとなり、非導電性ガラス粉末の配合比率を減じなければ、所望の抵抗値を実現できなくなる。特に、厚膜抵抗体の抵抗値が10Ωである場合、非導電性ガラス粉末(A)の配合割合は80重量%以下であり、この配合割合で非導電性ガラス粉末をさらに減じなければならない。
黒色顔料を無機成分で5重量%以上添加しなければ、黒色と視認するだけの呈色をさせることはできず、非導電性ガラス粉末の無機成分中の配合比率は75重量%以下となる。これは厚膜抵抗体の接着剤の成分たる非導電性ガラス粉末を減じることとなり、厚膜抵抗体の膜の強度を確保できなくなる恐れがあり、また、厚膜抵抗体の表面粗さが粗くなるという問題がある。
【0045】
ルテニウム化合物粉末は、黒色の粉末であり、750℃以上の温度に加熱されても変色せず、かつ導電性を有する。したがって、本発明の厚膜抵抗体において、ルテニウム化合物粉末が無機組成の2.5重量%以上を占めれば、焼成膜を黒色化することができる。
【0046】
そこで、ルテニウム化合物粉末を導電性粉末(B)の一部として用いることで、非導電性ガラス粉末の含有率を80重量%以下にすることなく、10Ω以上の抵抗値をもつ黒色の厚膜抵抗体を得ることができる。
【0047】
3.有機ビヒクル(C)
本発明に用いる有機ビヒクル(C)としては、特に制限されず、厚膜組成物の技術で汎用されている有機ビヒクル、例えば、エチルセルロースやアクリル樹脂等を、テルピノールやブチルカルビトールアセテート等の有機溶剤に溶解したものを用いることができる。樹脂と有機溶剤の配合率は、厚膜抵抗体組成物のスクリーン印刷の適性を考慮して適宜に定めれば良い。
【0048】
4.厚膜抵抗体組成物
本発明の厚膜抵抗体組成物は、430〜650℃の軟化点を有する特定組成のPbO−B−SiO系ガラス粉末と酸化インジウム−酸化錫粉末とを特定割合で配合した組成物であり、低温で焼成可能であることを特徴とする。
【0049】
厚膜抵抗体組成物は、焼成温度が450〜650℃になるように、ガラス粉末の組成(軟化点)を変えて調整される。焼成温度が450℃未満であると、プラズマディスプレイやフィールドエミッションディスプレイ等のデバイスでは、厚膜抵抗体等の素子を形成した後、350℃〜430℃に加熱して封着する工程があるため、封着工程において厚膜抵抗体の抵抗値が大きく変化してしまう問題が発生する。一方、焼成温度が650℃を超えると、これらデバイスの基板であるソーダライムガラスが軟化し変形するため、デバイス自体の寸法精度が確保できない。
【0050】
組成物各成分の混合方法は、特に制限されず、例えば、ガラス粉末と酸化インジウム−酸化錫粉末、及び有機ビヒクルを3本ロール等で混練することで厚膜抵抗体組成物が得られる。
また、本発明の厚膜抵抗体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、潤滑剤、酸化防止剤、粘度調整剤、消泡剤等を添加することができる。
【0051】
5.厚膜抵抗体の形成方法
本発明の厚膜抵抗体は、ガラス基板にも適用可能なように、上記厚膜抵抗体組成物を用いて450〜650℃の温度範囲で焼成することにより形成され、それ以外は特に制限されず、例えば、金電極や銀電極が形成されたガラスやセラミック等の絶縁基板にスクリーン印刷等で厚膜抵抗体組成物を塗付し、有機溶剤を蒸発、乾燥させた後、ベルト焼成炉を用いて焼成し、形成することができる。
【0052】
焼成温度が450℃よりも低いと、ガラス粉末の粒子間で焼結が不十分なため、粒子間のボイドが埋まらず、緻密な焼成膜が得られない。一方、焼成温度が650℃よりも高いと、ガラス粉末の粒子間に僅かながら残留するボイドが成長し、気泡となってピンホールを生じる。このようなボイドやピンホールは、PDP誘電体などでは致命的な欠陥となる。このようなことから、焼成温度は、特に480〜620℃とするのが好ましい。
【0053】
厚膜抵抗体組成物を、ガラス基板にスクリーン印刷で所定の形状に印刷・焼成することで、誘電体膜やPDP障壁などの厚膜抵抗体が形成できる。また、厚膜抵抗体組成物を、所定のガラス基板に塗付又は転写して、サンドブラストなどで所望とされる形状としてから、焼成してもよい。
【0054】
6.厚膜抵抗体
本発明の厚膜抵抗体は、10Ω以上の高い抵抗値を示すとともに、抵抗値のバラツキ(変動係数)が20%以下、明度L値が30以下、表面粗さRaが0.30μm以下という優れた特徴を有する。
【0055】
抵抗値のバラツキは、変動係数で示され、20%以下でなければならず、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。また、明度L値は、厚膜抵抗体の色の度合いを示すものであり、30以下、特に25以下であることが好ましい。さらに、表面粗さRaが0.30μm以下、特に0.25μm以下であることが好ましい。
これら抵抗値、抵抗値のバラツキ(変動係数)、明度L値、及び表面粗さRaの全てが所定の範囲内にあることが必要であり、いずれか一つでも範囲を外れると本発明の目的を達成することができない。
【0056】
PDPなど大型の壁掛けハイビジョンテレビモニターの製造には、多量の厚膜抵抗体組成物を消費するが、従来の組成物は、性能が充分でなく比較的高価であったために、PDPの実用化を阻害する原因ともなっていたが、本発明によればかかる問題点も解消される。
【0057】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1〜7)
表1、表2の記載に従って、非導電性ガラス粉末(A)、導電性粉末(B)及び有機ビヒクル(C)を用い、本発明の厚膜抵抗体組成物、及び厚膜抵抗体を以下に示す手順で製造した。得られた厚膜抵抗体の抵抗値を評価したところ、表2に示す通りの結果を得た。
【0059】
[非導電性ガラス粉末(A)の製造]
非導電性ガラス粉末(A)は、表1に示す組成のものを1300℃で溶融、急冷し、ボールミルで粉砕した。得られたガラス粉末の平均粒径を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 2004172250
【0061】
[厚膜抵抗体組成物の製造]
非導電性ガラス粉末(A)、粒径0.1μmの酸化インジウム−酸化錫微粉末(b1)、粒径0.1μmのRuO粉末(b2)を表2の割合で配合した無機成分70重量%と、有機ビヒクル(C)30重量%を3本ロールミルで混練し、厚膜抵抗体組成物を得た。なお、有機ビヒクルは、エチルセルロース(4重量%)とターピネオール(96重量%)を混合し、70℃に加熱、溶融したものを用いた。
【0062】
【表2】
Figure 2004172250
【0063】
[厚膜抵抗体の製造]
厚膜法で金電極を形成した96%アルミナ基板に、厚膜抵抗体組成物を1mm×1mmの大きさにスクリーン印刷した後、ベルト焼成炉にて表2に示す焼成温度、保持時間15分間で焼成して厚膜抵抗体を得た。15個の厚膜抵抗体の抵抗値をデジタルマルチメータで測定し、抵抗値のバラツキを示す変動係数を下記の式(1)で計算した。得られた結果を表2に示す。
変動係数=抵抗値の標準偏差/平均抵抗値×100…(1)
なお、変動係数は小さい値が望ましく、大きくとも20%以下に抑えることが望ましい。
【0064】
表2に記載した厚膜抵抗体の明度の測定は、膜厚10μmの厚膜抵抗体を色差計で測定した。明度は小さい方が黒色の着色が強く、25以下が望ましい。なお、黒色顔料にはFe−Co−Crスピネル型酸化物を用いた。
【0065】
表2に記載の厚膜抵抗体の表面粗さは、表面粗さ計でRa値を測定した。表面粗さRa値は、小さいほどよく、特に0.3μm以下であることが好ましい。
【0066】
(比較例1〜7)
表3の記載に従って、非導電性ガラス粉末(A)、導電性粉末(B)、黒色顔料及び有機ビヒクル(C)を用いた以外は、上記実施例と同様にして、比較用の厚膜抵抗体組成物、及び厚膜抵抗体を製造した。得られた厚膜抵抗体の抵抗値を評価したところ、表3に示す通りの結果を得た。
【0067】
(比較例8)
酸化チタン粉末を4%配合し、非導電性ガラス粉末(A1)を83%にした以外は、比較例5と同様にして厚膜抵抗体組成物を調製した。これを用いて厚膜抵抗体を製造すると、抵抗値は1.0×10Ωに上昇するものの、変動係数が15%に、表面粗さが0.31μmに悪化した。
【0068】
【表3】
Figure 2004172250
【0069】
表2に示した結果から、本発明の厚膜抵抗体組成物は、650℃以下の低い焼成温度を有しており、これを焼成して得られた厚膜抵抗体は、10〜10Ωの高い抵抗値を示すとともに、抵抗値のバラツキ(変動係数)も10%未満、明度L値が25以下と小さく、表面粗さRa値が0.3以下であり、焼成表面も平滑で視認性も充分であった。
これに対して、比較例の厚膜抵抗体組成物は、表3に示したように650℃以下の低い焼成温度を有しているものの、これを焼成して得られた厚膜抵抗体は、抵抗値のバラツキ(変動係数)が20%以上になったり、視認性を示す明度L値が25を超えるか、焼成表面の粗さRaが0.3μmを超えて、充分な性能を発揮しないことが分かる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、高い抵抗値を示し、かつ抵抗値のバラツキが小さく低い焼成温度を有する厚膜抵抗体組成物が得られる。これを用いれば、明度L値、表面粗さRa値が小さく、焼成表面の強度が大きく視認性に優れた厚膜抵抗体を得ることができ、したがって、プラズマディスプレイパネル用のソーダライムガラス基板にも適用可能であることから、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (7)

  1. 非導電性ガラス粉末(A)と導電性粉末(B)と有機ビヒクル(C)とを含有する厚膜抵抗体組成物において、
    (A)成分が酸化物換算で2〜72重量%のPbO、5〜30重量%のB及び3〜35重量%のSiOを含有し、(B)成分が酸化インジウム−酸化錫粉末(b1)及びルテニウム化合物粉末(b2)からなり、さらに、(A)成分と(B)成分とが、前者が80〜95重量%に対して後者が5〜20重量%の割合で配合されていることを特徴とする厚膜抵抗体組成物。
  2. (b1)成分が40〜88重量%に対して(b2)成分が12〜60重量%の割合で配合されていることを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物。
  3. (b2)成分が、酸化ルテニウム又はルテニウム酸鉛のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載された厚膜抵抗体組成物を、絶縁基板に塗付した後に450℃〜650℃の温度範囲で焼成することを特徴とする厚膜抵抗体の形成方法。
  5. 請求項4に記載の形成方法により得られてなる厚膜抵抗体。
  6. 抵抗値が10Ω以上で、かつ抵抗値の変動係数が10%未満であることを特徴とする請求項5に記載の厚膜抵抗体。
  7. 明度L値が25以下で、かつ表面粗さRa値が0.3以下であることを特徴とする請求項5に記載の厚膜抵抗体。
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