JP2006260864A - リチウム二次電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 充電時における負極と非水電解液との反応に伴うガス発生に起因する膨れを抑制できる筒形リチウム二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】 リチウム二次電池を製造する方法であって、上記電池缶と上記電池蓋とから構成された外装体の内部に正極、負極およびセパレータを備えた電極体が装填されている電池前駆体の内部に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から非水電解液を注入する電解液注入工程を有し、電解液注入工程の後に、電解液注入口を封止する工程を有し、且つ電解液注入工程後、電解液注入口の封止工程より前に、少なくとも1回の充電工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法である。

Description

本発明は、リチウム二次電池、特に角形リチウム二次電池の製造方法に関するものである。
リチウムイオン二次電池などのリチウム二次電池は、容量が大きく、且つ高電圧、高エネルギー密度を有することから、ますます需要が増える傾向にある。現在では、リチウム二次電池の更なる高容量化を達成する目的で、電極密度を増加させることが行われている(例えば、特許文献1〜2)。
特開2003−142075(第2〜6頁) 特開2004−355996(第3〜6頁)
ところで、リチウム二次電池では、特に初回充電の際に、負極と非水電解液が接触することで、非水電解液の構成成分(非水溶媒や電解質塩など)の分解反応が生じてガスが発生するが、負極活物質の比表面積増加に伴って、電気化学的に活性となり、高容量化が可能となる一方、負極と電解液との反応面積が増大し、その分解反応によるガス発生量も増大しており、電池の膨れの原因となっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、充電時における負極と非水電解液との反応に伴うガス発生に起因する膨れを抑制できるリチウム二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成し得た本発明の製造方法は、リチウム二次電池を製造する方法であって、上記電池缶と上記電池蓋とから構成された外装体の内部に正極、負極およびセパレータを備えた電極体が装填されている電池前駆体の内部に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から非水電解液を注入する電解液注入工程を有し、電解液注入工程の後に、電解液注入口を封止する工程を有し、且つ電解液注入工程後、電解液注入口の封止工程より前に、少なくとも1回の充電工程を有することを特徴とする製造方法である。
なお、本発明の製造方法においては、上記電解液注入工程を少なくとも2回有し、上記充電工程を、最終の電解液注入工程より前に、設けることが好ましい。また、本発明の製造方法では、上記電解液注入工程が少なくとも2回の場合、上記充電工程を、少なくとも、初回の電解液注入工程と、2回目の電解液注入工程との間に設けることも好ましい。
更に、本発明の製造方法においては、電池高容量化に伴って、非水電解液の電極への浸透性が悪くなるのを改善するために、少なくとも2回の電解液注入工程のうち、1回目の電解液注入工程で注入する非水電解液には、それ以外の電解液注入工程で注入する非水電解液よりも、電解質塩濃度の低いものを使用することが好ましい。
本発明によれば、充電時における膨れの発生が抑制されたリチウム二次電池が提供できる。
リチウム二次電池の製法としては、例えば、有底角筒状の電池缶内に、正極、負極およびセパレータで構成される電極体を装填し、電池缶の開口部を、電池蓋により封止した後に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から非水電解液を注入し、その後電解液注入口を封止する方法が採用されている。こうして完成されたリチウム二次電池は、電池缶と電池蓋を有して構成された外装体により、発電要素が装填された空間が実質的に密閉されている密閉式電池である。そのため、充電時に負極と非水電解液との接触による非水電解液成分の分解反応によって発生したガスは、電池内から排出されることはなく、その内圧を増大させて電池の膨れを引き起こす。
なお、充電時における負極と非水電解液との反応によって発生する非水電解液成分の分解物は、負極表面に堆積して皮膜を形成し、その後の充放電時における負極と非水電解液との直接の接触が、該皮膜によってある程度防止されるため、更なる非水電解液成分の分解は抑制され、また、この分解に伴うガス発生も抑えられる。そのため、充電時の非水電解液成分の分解に起因して生じるガスによる電池膨れの発生は、特に電池製造後の初回充電時に顕著である。そこで、本発明では、電解液注入口からの電解液注入後、電解液注入口を封止する前に充電を行うこととし、初回充電の際に生じていた非水電解液成分の分解反応を、この分解反応で発生するガスが電池外部に漏出可能な状態で生じさせて、かかる分解反応によって生ずるガスに起因する電池膨れの発生を防止している。
次に、本発明の製造方法によって得られるリチウム二次電池の構造を図に示して説明する。
図1および図2は、角形リチウム二次電池の一例を示しており、図1の(a)はリチウム二次電池の平面図、(b)は部分縦断面図である。また、図2は、図1のリチウム二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。なお、本発明に係るリチウム二次電池は、図1や図2に示すような内容積の小さな薄形の角形リチウム二次電池の場合には、内部でのガス発生による影響を受けやすく、本発明の製法を採用することによる電池膨れの抑制効果が顕著となるので、より好ましい。また、電池の外装体としてアルミラミネート材を用い、開口部を熱シール封止したラミネート電池の場合にもガス発生による膨れの影響が大きいので本発明の製造方法を用いることが好ましい。さらに、円筒形の電池に本発明の製造方法を用いることにより電解液の注液性が向上するので好ましい。
図1の電池では、正極1、負極2およびセパレータ3を備えた電極体6が内填されている。図1の電池では、電極体6として、正極1と負極2とがセパレータ3を介して渦巻状に巻回された後、扁平状になるように加圧された扁平状巻回構造の積層電極体(巻回電極体)を示している。ただし、電極体は、図1で示す構造のものの他に、電池の形状に応じて、扁平状としていない巻回構造の巻回電極体であってもよく、また、正極と負極とをセパレータを介して積層した構造の積層電極体であっても構わない。ただし、図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製に当たって使用した導電性基体としての金属箔や非水電解液などは図示していない。
電池缶4は、電池の外装体の主要部分を構成するものであり、この電池缶4は正極端子を兼ねている。電池缶4の素材としては、例えば、鉄(表面にNiめっきなどを施したものが好ましい)、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金などが好適である。そして、電池缶4の底部には、ポリテトラフルオロエチレンシートなどからなる絶縁体5が配置されている。また、電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。電池缶4の開口部を封口する電池蓋9には、ポリプロピレン製などの絶縁パッキング10を介して、ステンレス鋼製などの端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製などのリード板13が取り付けられている。電池蓋9の素材としては、電池缶4と同じものが挙げられる。
そして、この電池蓋9は、電池缶4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池缶4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。なお、図1では、電池の外装体が、電池缶4と電池蓋9で構成されているが、例えば、電池缶と電池蓋とがポリプロピレンなどの樹脂製の絶縁パッキングを介して封止された構造の外装体(すなわち、電池缶と電池蓋と絶縁パッキングで構成された外装体)であっても構わない。また、図1の電池では、電池蓋9に電解液注入口14が設けられており、この電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている(従って、図1および図2の電池では、実際には、電解液注入口14は、電解液注入口と封止部材であるが、説明を容易にするために、電解液注入口14として示している)。なお、図1では、電解液注入口14が電池蓋9に設けられた例を示しているが、電解液注入口は、電池缶に形成されていても構わない。
また、図1の電池では、正極リード体7を電池蓋9に直接溶接することによって電池缶4と電池蓋9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、電池缶4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。なお、電池蓋9には、防爆ベント15が設けられている。
図2は図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図2は上記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図2では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のもののみを示している。また、図1においても、電極体の内周側の部分は断面にしていない。
次に、本発明の製造方法を、工程を追って説明する。
<電解液注入工程前の工程>
まず、有底角筒状の電池缶内に、正極、負極およびセパレータを備えた電極体(上述の巻回電極体や積層電極体など)を装填し、正負極のリード体の溶接を行った後、電池蓋を用いて電池缶の開口部を封口し、電池外装体内に電極体が装填された電池前駆体とする。
本発明で用いる負極としては、例えば、負極活物質にバインダーなどを加えて調製した負極合剤を、溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製し(ただし、バインダーはあらかじめ溶剤などに分散または溶解させておいてから、負極活物質などと混合してもよい)、得られた負極合剤含有ぺーストを銅箔などからなる負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、必要に応じて負極合剤層を加圧成形する工程を経由することによって作製されたものが挙げられる。ただし、負極の作製は、上記例示の方法のみに限られることなく、他の方法によってもよい。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、特開2004−119350号公報に開示されている炭素材料、すなわち、002面の面間隔(d002)がd002≦0.3360nmであり、c軸方向の結晶子サイズ(Lc)がLc≧70nmであり、かつ波長514.5nmのアルゴンレーザーで励起させた時のラマンスペクトルのR値〔R=I1350/I1530(1350cm−1付近のラマン強度と1580cm−1付近のラマン強度との比)〕が0.01≦R≦0.3である炭素材料を用いることも好ましい。
負極の作製に当たって用いるバインダーとしては、例えば、セルロースエーテル化合物やゴム系バインダーなどが挙げられる。セルロースエーテル化合物の具体例としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、それらのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。ゴム系バインダーの具体例としては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)などのスチレン・共役ジエン共重合体、ニトリル・ブタジエン共重合体ゴム(NBR)などのニトリル・共役ジエン共重合体ゴム、ポリオルガノシロキサンなどのシリコーンゴム、アクリル酸アルキルエステルの重合体、アクリル酸アルキルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸および/またはその他のエチレン性不飽和単量体との共重合により得られるアクリルゴム、ビニリデンフルオライド共重合体ゴムなどのフッ素ゴムなどが挙げられる。
そして、この負極用のバインダーとしては、特にセルロースエーテル化合物とゴム系バインダーとを併用することが好ましく、とりわけ、CMCとSBR、NBRなどのブタジエン共重合体系ゴムとを併用することが好ましい。これは、CMCなどのセルロースエーテル化合物が、主としてぺーストに対して増粘作用を発揮し、SBRなどのゴム系バインダーが、負極合剤に対して結着作用を発揮するからである。このように、CMCなどのセルロースエーテル化合物とSBRなどのゴム系バインダーとを併用する場合、両者の比率としては質量比で1:1〜1:15が好ましい。
なお、負極合剤層中における負極活物質の含有量は、90〜99質量%であることが好ましく、95〜98質量%であることがさらに好ましい。負極活物質の含有量が90質量%より少なくなると容量が小さくなり、99質量%より多くなると集電体との接着性、塗膜の強度が低下するからである。さらに、負極合剤層中におけるバインダーの含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、1.5〜6質量%であることがさらに好ましい。バインダーの含有量が1質量%より少ないと、集電体との接着性、負極合剤層の強度が低下し、10質量%より多くなると活物質比率が少なくなり容量が小さくなるからである。負極活物質、バインダーともに2種類以上を併用してもよく、導電助剤やフィラーを添加しても良い。また、負極密度(負極合剤層密度)は、1.20〜1.90g/cmであることが好ましく、1.40〜1.80g/cmであることがより好ましい。負極密度が1.20g/cmより低いと、負極の厚みによって電池空間内を大きく占めてしまうため電池容量が得られなくなり、1.90g/cmより高いと活物質の圧壊によって容量が得られず、さらに電解液への濡れ性が低下するためである。
本発明に係る電池で用いる正極としては、例えば、正極活物質に必要に応じて導電助剤やバインダーを加えて混合して調製した正極合剤を、溶剤に分散させて正極合剤含有ぺーストを調製し(ただし、バインダーはあらかじめ溶剤などに分散または溶解させておいてから、正極活物質などと混合してもよい)、得られた正極合剤含有ぺーストをアルミニウム箔などからなる正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じて正極合剤層を加圧成形する工程を経由することによって作製されるものが挙げられる。ただし、正極の作製は、上記例示の方法のみに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極活物質としては、高容量化に適するという観点から、リチウム含有複合金属酸化物が好ましい。このようなリチウム含有複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2などのリチウムコバルト酸化物、LiMnO、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物、LiMO(MはNi、Mn、CoおよびAlのうちの2種以上の元素を表し、0.9<x<1.2)などが好適に用いられる。
正極に用いる導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、鱗片状黒鉛などが挙げられる。そして、バインダーとしては、負極に用いるバインダーとして上で例示したものと同様のものを用いることができる。
正極合剤層中における組成としては、例えば、正極活物質の含有量が90〜99質量%であることが好ましく、92〜98質量%であることがさらに好ましい。導電助剤の含有量が0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがさらに好ましい。導電助剤の含有量が0.1質量%より少ないと、正極合剤の導電性を確保できず、電池の負荷特性が低下し、5質量%より多くなると活物質量低下により容量が低下するためである。また、バインダーの含有量は0.5〜8質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがさらに好ましい。バインダーの含有量が0.5質量%より少ないと、集電体との接着性、正極合剤層の強度が低下し、8質量%より多くなると容量が小さくなるためである。
そして、正極集電体や負極集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼などの箔、網などを用いることができる。正極集電体の厚みは、例えば、5〜60μmであることが好ましく、8〜40μmであることがさらに好ましい。また、同様に負極集電体の厚みは、例えば、5〜60μmであることが好まく、8〜40μmであることがさらに好ましい。集電体の厚みが5μmより薄くなると、強度が小さくなるために、電池製造時やサイクルにより電極が切断しやすくなり、60μmより厚くなると、電池内に占める集電体の割合が大きくなり、容量が低下するためである。
セパレータとしては、例えば、微孔性樹脂フィルムが用いられる。微孔性樹脂フィルムとしては、例えば、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルムなどが挙げられる。セパレータの厚みは、例えば、10〜30μmであることが好ましく、15〜25μmであることがより好ましい。セパレータの厚みが30μmより厚いと電池容量が小さくなるだけでなく内部抵抗が大きくなるためである。また、電池の高容量化および負荷特性の向上のためにはセパレータの厚さは薄いほどよいが、機械的強度、電解液保持、短絡防止などを良好に維持するために、10μm以上であることが好ましい。さらに、その空孔率は小さすぎると電池用セパレータとしての機能が低下し、また大きすぎると機械的強度が低下するので、内部短絡を抑制しつつ負荷特性を向上するためには、30〜60%であることが好ましく、40〜50%であることがより好ましい。
<電解液注入工程および充電工程>
次に、電極体が装填されている電池前駆体の内部に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から、非水電解液を注入すると共に、充電を行う。電解液の注入は、少なくとも2回(例えば、2回、3回、4回など)に分けて注入することが好ましい。電池前駆体への非水電解液の注入方法は特に制限は無く、外装体内を減圧して行う方法や、ガスの圧力を利用する方法など、従来公知の各種方法が採用できる。なお、電池の生産性向上の観点からは、電解液注入工程の回数は、より少ないことが好ましく、2回であることが特に好ましい。
非水電解液としては、非水溶媒にリチウム塩などの電解質塩を溶解して調製したものが使用できる。
電解液溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、テトラヒドロフラン(THF)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン(DME)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種または2種以上の混合溶媒として用いることができ、特にECやPCなどの環状カーボネートと、DMCやMEC、DECなどの鎖状カーボネートとの混合溶媒が好適に用いられる。また、充放電サイクル寿命を長くするためには、ECやPCなどの環状カーボネートを全溶媒中で10体積%以上用いることが好ましい。そして、電解質塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)などが挙げられ、それらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
非水電解液の成分組成(電解液溶媒の種類、電解質塩の種類、その他の添加剤の有無)は、全ての電解液注入工程で、同じであってもよく、工程毎に異なっていても構わない。
また、非水電解液中の電解質塩濃度は、電解液注入工程が2回以上の場合には、全ての電解液注入工程で、同じであってもよく、工程毎に異なっていても構わないが、1回目の電解質注入工程で用いる非水電解液には、それ以外(2回目以降)の電解質注入工程で用いる非水電解質よりも、電解質塩濃度が小さいものを用いることが好ましい。非水電解液の電解質塩濃度が小さいほど、電極やセパレータ中への浸透性が良好であり、より短時間で非水電解液が含浸する。そのため、1回目の電解液注入工程で用いる非水電解液の濃度を小さくしておくことで、電極やセパレータ中への非水電解液の含浸速度を高めて、より生産性を向上させることができる。1回目の電解液注入工程で電解質塩濃度の小さな非水電解液を用いることによる効果は、電解液が含浸し難い構成のリチウム二次電池、例えば、電極体に係る正負極の面積が大きく、該電極体が高密度に巻回などされている薄形の角形リチウム二次電池や、高密度電極(正極合剤層密度が高い正極や負極合剤層密度が高い負極)を有するリチウム二次電池の場合に、特に顕著となる。なお、電解液注入工程を3回以上とする場合であって、1回目の電解液注入工程で用いる非水電解液を、2回目以降の電解液注入工程で用いる非水電解液の電解質塩濃度よりも低くするときには、2回目以降の電解液注入工程で用いる非水電解液の電解質塩濃度は、全ての工程で同じであってもよく、異なっていても構わない。
非水電解液中の電解質塩濃度は、例えば、0.6〜1.6mol/lであることが好ましく、0.8〜1.4mol/lであることがより好ましい。また、1回目の電解液注入工程の非水電解液の電解質塩濃度を、2回目以降の電解液注入工程で用いる非水電解液よりも低くする場合には、1回目で用いる非水電解液の電解質塩濃度を0.5〜1.0mol/lとし、2回目以降に用いる非水電解液の電解質塩濃度を1.0〜2.0mol/lとすることが好ましい。1回目で用いる非水電解液の電解質塩濃度が低すぎると、非水電解液中の最終電解質塩濃度を上記の範囲内とするために、2回目以降の電解液注入工程で用いる電解質塩濃度を著しく高くする必要が生じるためである。
非水電解液には、添加剤として、ビニレンカーボネートまたはその誘導体を含有させることが好ましい。ビニレンカーボネートまたはその誘導体を非水電解液に添加することで、電池の膨れを更に抑制し、充放電サイクル特性を高めることができる。上記の通り、充電の際に、負極と非水電解液との反応によって非水電解液成分が分解し、この分解物が負極表面に堆積して皮膜が形成されるが、非水電解液中にビニレンカーボネートまたはその誘導体を含有させておくことで、このビニレンカーボネートまたはその誘導体も負極表面の皮膜形成に関与し、より安定な皮膜を形成できるため、非水電解液成分の更なる分解によるガス発生がより抑えられる。そのため、このガス発生に起因する電池の膨れ発生や電池特性の低下(特に充放電サイクル特性の低下)が、更に抑制できる。
上記ビニレンカーボネートの誘導体としては、例えば、ジメチル−1,3−ジオキソル−2−オンが好適なものとして挙げられる。ビニレンカーボネートまたはその誘導体は、既に調製済みの非水電解液に添加することによって非水電解液中に含有させてもよいし、また、非水電解液の調製時に加えることによって、非水電解液をビニレンカーボネートまたはその誘導体を含有した状態で調製してもよい。
非水電解液中におけるビニレンカーボネートまたはその誘導体の含有量は、0.5質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上であって、5質量%以下、より好ましくは4質量%以下であることが望ましい。非水電解液中におけるビニレンカーボネートまたはその誘導体の含有量が少なすぎると、これら添加することによる効果が十分に確保できないことがある。また、非水電解液中におけるビニレンカーボネートまたはその誘導体の含有量が多すぎると、負極表面の皮膜形成に寄与しない過剰のビニレンカーボネートまたはその誘導体が分解して、電池内でガスを発生する副作用が生じ、高温貯蔵により電池に膨れを生じさせることがある。
なお、非水電解液中のビニレンカーボネートまたはその誘導体の濃度は、全ての電解液注入工程で、同じであってもよく、工程毎に異なっていても構わない。
さらに、ビニレンカーボネート(VC)以外の添加剤として過充電時の安全性や充放電サイクルに伴う負荷特性低下改善を目的として、シクロヘキシルベンゼン(CHB)やフルオロベンゼン(FB)、ビフェニル(BP)などを用いてもよい。
また、例えば、後記する充電工程の前後に電解液注入工程を設け、その後、後記する電解液注入口の封止を行う場合には、充電工程前の電解液注入工程で使用する非水電解液では、ビニレンカーボネートまたはその誘導体の濃度を高くし、充電工程後の電解液注入工程で使用する非水電解液では、ビニレンカーボネートまたはその誘導体の濃度を低くすることが好ましい。上記の通り、充電工程の際に、ビニレンカーボネートまたはその誘導体も、負極との反応によって負極表面の皮膜形成に寄与するが、その反応の際にガスが発生することから、電解液注入口の封止前に行う充電工程において、非水電解液中のビニレンカーボネートまたはその誘導体をできるだけ反応させておくことが好ましいからである。この場合の非水電解液中のビニレンカーボネートまたはその誘導体の濃度としては、充電工程前の電解液注入工程で用いられる非水電解液においては、例えば、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、また、充電工程後の電解液注入工程で用いられる非水電解液では、例えば、0〜3質量%であることが好ましい。なお、電解液注入工程を3回以上とする場合であって、1回目の電解液注入工程でビニレンカーボネートまたはその誘導体の濃度の高い非水電解液を用い、該電解液注入工程後に充電工程を設け、2回目以降の電解液注入工程後に充電工程を設けない場合には、2回目以降の電解液注入工程で用いる非水電解液のビニレンカーボネートまたはその誘導体の濃度は、全ての工程で同じであってもよく、異なっていても構わない。
また、1回目の非水電解液注入を行った後、電解液注入口の封止を行うまでのいずれかの段階で、少なくとも1回充電を行う。この充電によって、電解液注入口を封止した後の充電によるガス発生を抑え、電池の膨れを抑制する。なお、この充電は、電解液注入口の封止前に行うため、負極と非水電解液成分との反応によるガスが発生しても、このガスの一部が電解液注入口から外部に排出されるため、電池の膨れは生じない。また、この充電時にガスが外部に排出されやすくするために、電池の厚みを規制する枠を設けたり、電池幅広面を押さえるなどの方法を行うことができる。さらに、負極表面には非水電解液成分の分解物が堆積して皮膜が形成され、電解液注入口封止後における充電の際には、該皮膜が負極と非水電解液との接触を防止するため、更なる非水電解液成分の分解と、それに伴うガス発生が抑えられて、電池の膨れが抑制される。
電解液注入口封止前の充電は、1回であってもよく、2回以上であっても構わないが、電池の生産性向上の観点からは、1回であることが好ましい。また、電解液注入口封止前の充電は、1回目の電解液注入工程以降のいずれの段階で実施しても構わないが、少なくとも、最終の電解液注入工程の前に実施することが好ましい。この充電の際には、上記の通り、ガスが発生するが、最終の電解液注入工程後では、電池に必要な非水電解液が完全に電池内に注入された状態であるため、その後に充電すると、発生したガスによって、非水電解液が電解液注入口から噴き出すことがある。このような非水電解液の噴き出しが生じると、電池の生産装置が汚染されて洗浄の必要が生じるなど、電池の生産性を損なうことがあり、また、噴き出した非水電解液が電池外装体に付着することで、電池の外観が損なわれることがある。よって、上記充電が終了した後に、更に電池外装体内に非水電解液を注入して、電池に必要な非水電解液の量を満足させるための電解液注入工程を設けることが好ましいのである。電池の生産性の向上を更に高める観点からは、電解液注入口封止前の充電工程が、少なくとも、1回目の電解液注入工程と2回目の電解液注入工程との間に設けられることが好ましい。電解液注入工程を2回とし、電解液注入口封止前の充電工程を1回として、1回目の電解液注入工程と、2回目の電解液注入工程との間に、上記充電工程を設けることが、最も好ましい。
電解液注入口封止前の充電工程における充電電気量としては、例えば、電池の容量の2〜80%相当であることが好ましく、5〜35%相当であることがより好ましい。充電電気量が2%より少ないと、負極と非水電解液やビニレンカーボネートとの反応が十分ではなく、電解液注入口封止後の充電時にガス発生による電池膨れが発生する恐れがあり、80%より多いと充電時間が長くなるためである。また、その際の充電条件としては、例えば、電流レートが0.01〜1C(1Cは電池の定格容量を1時間で放電する電流値)であることが好ましく、0.05〜0.5Cであることがより好ましい。この充電は、上記の電流値と電圧の範囲内にあれば、定電流充電であっても、定電圧充電であってもよい。また、所定電圧となるまで定電流充電を行い、その後定電圧で所定時間充電を行うなどのように、定電流充電と定電圧充電とを組み合わせて行っても構わない。上記充電工程を2回以上設ける場合には、最終の充電工程終了時点での充電の容量が、上記好適値にあればよい。また、充電条件は、全ての充電工程で同じとしてもよく、上記範囲内で充電工程毎に異なる条件を選択してもよい。
なお、電解液注入口封止前の充電の際には、非水電解液量が、少なくとも充電を実施できる程度でなければならない。上記充電の実施時における電池前駆体内の非水電解液量は、例えば、電池内空隙の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。よって、電解液注入口封止前の充電工程(かかる充電工程を2回以上設ける場合には、少なくとも1回目の充電工程)の直前の電解液注入工程終了時点で、電池前駆体内の非水電解液量が、上記下限値以上となるように、注入する非水電解液量を調整することが好ましい。すなわち、例えば、1回目の電解液注入工程の後に、上記充電工程(2回以上設ける場合には、初回の充電工程)を設ける場合には、1回目の電解液注入工程において、上記下限値以上の非水電解液を注入するようにすることが好ましく、また、2回目の電解液注入工程の後に、上記充電工程(2回以上設ける場合には、初回の充電工程)を設ける場合には、1回目の電解液注入工程で注入する非水電解液量と、2回目の電解液注入工程で注入する非水電解液量の合計が、上記下限値以上となるようにすることが好ましい。
また、電解液注入口封止前の充電工程時(2回以上設ける場合には、最終の充電工程時)における電池前駆体内の非水電解液量は、電池が最終的に有する非水電解液量の100%以下とする。なお、上述した上記充電時における非水電解液の噴き出しを防止するためには、上記充電工程時において、非水電解液量を、電池内空隙の80%以下、より好ましくは75%以下とし、上記充電工程後の電解液注入工程で、電池の必要とする非水電解液量を満たすように、各電解液注入工程での非水電解液の注入量を調整することが望ましい。
また、同様に電解液注入口封止前の充電の際には、非水電解液の電解質塩濃度が、少なくとも充電を実施できる程度でなければならない。非水電解液の電解質塩濃度が低すぎると、充電時に電極間のリチウムイオンの移動が困難になり、一方、高すぎても電解液の粘度が高くなり電解液抵抗が上昇してしまうからである。このため非水電解液の電解質塩濃度は0.3〜1.6mol/lが好ましく、0.5〜1.4mol/lであることがより好ましい。
<電解液注入口の封止工程およびその後の工程>
電解液注入工程および上記充電工程の全てが完了した後に、電解液注入口を封止する。電解液注入口の封止方法は、特に制限は無く、例えば、封止栓などの封止部材を挿入してレーザー溶接などの溶接手段により封止する方法など、従来公知の封止方法が採用できる。電解液注入口の封止後には、必要に応じてエ−ジングや予備充電を行って、製品(角形リチウム二次電池)とする。
本発明の製造方法により得られる角形リチウム二次電池は、従来公知の角形リチウム二次電池と同様の用途に用い得るが、その一例としては、携帯情報端末、ノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器、携帯電話、デジタルカメラなどの電源としての用途が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO(比表面積:0.5m/g、平均粒径:10μm):96質量部と、導電助剤であるカーボンブラック(粒径:3μm):2質量部と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン:2質量部との割合で、N−メチル−2−ピロリド(NMP)の存在下で混合してスラリー状の正極合剤含有ぺーストを調製した。得られた正極合剤含有ぺーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、ローラーで正極合剤層を所定の厚みになるまで加圧成形した後、所定の幅および長さになるように切断して正極を作製した。得られた正極の正極合剤層密度は、3.60g/cmであった。
<負極の作製>
負極活物質として、黒鉛A〔(002)面の面間隔(d002):0.3365nm、平均粒径20μm、c軸方向の結晶子サイズ(Lc:100nm)〕を用いた。また、バインダーには、CMCとSBRとを、CMC/SBR=1/0.5(質量比)の割合で用いた。この負極活物質:98.5質量部とバインダー:1.5質量部を、水の存在下で混合してスラリー状の負極合剤含有ぺーストを調製した。得られた負極合剤含有ぺーストを、厚みが8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、ローラーで負極合剤層が所定の厚みになるまで加圧成形した後、所定の幅および長さになるようにして切断して負極を作製した。得られた負極の負極合剤層密度は、1.60g/cmであった。
<非水電解液の調製>
低電解質塩濃度の非水電解液として、ECとMECとの体積比1:2の混合溶媒に、LiPFを0.7mol/lの濃度となるように溶解させ、更に添加剤として、VCを、3質量%の濃度となるように添加し溶解させて調製したものを用意した。また、高電解質塩濃度の非水電解液として、ECとMECとの体積比1:2の混合溶媒に、LiPFを1.67mol/lの濃度となるように溶解させ、更に添加剤として、VCを3質量%の濃度となるように添加し溶解させて調製したものを用意した。
<リチウム二次電池の組み立て>
上記の正極および負極に集電用のリード体を溶接した。この正極と負極とを、厚みが20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して積層し、渦巻状に捲回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体をアルミニウム合金製角形電池缶に挿入し、正負極のリード体の溶接と、電池缶の開口端部への電池蓋のレーザー溶接を行って、非水電解液を除く発電要素が内填された電池前駆体を得た。
次に、この電池前駆体内部を真空減圧し、1回目の電解液注入工程として、電池蓋に設けられた電解液注入口から、上記の低電解質塩濃度の非水電解液1.45mlを注入した。続いて、168mA(0.2C)の電流で、30分間充電し、電池内に注入した電解液を正負極およびセパレータ中に均一に含浸させつつ、ガス抜き(負極と非水電解液との反応生成ガス)を行った。その後、電池前駆体内部を真空減圧し、2回目(最終)の電解液注入工程として、電池蓋に設けられた電解液注入口から、上記の高電解質塩濃度の非水電解液:0.6mlを注入した。その後、電解液注入口にアルミ製の封止部材を挿入し、レーザー溶接して電解液注入口の封止後、通常の電池活性化処理を行い、図1に示す構造と図2に示す外観を有し、厚み(図1中、t)が4mm、幅(図1中、w)が34mm、高さが50mmの、薄形の角形(角筒形)リチウム二次電池を得た。なお、1回目に電解液注入工程による低電解質塩濃度の非水電解液量は、電池内空隙の75%に相当し、充電電気量は、電池容量の約10%に相当する。
実施例2
低電解質塩濃度の非水電解液として、ECとMECとの体積比1:2の混合溶媒に、LiPFを0.8mol/lの濃度となるように溶解させ、更に添加剤として、VCを3質量%の濃度となるように添加し溶解させて調製したものを用意した。また、高電解質塩濃度の非水電解液として、ECとMECとの体積比1:2の混合溶媒に、LiPFを1.4mol/lの濃度となるように溶解させ、更に添加剤として、3質量%の濃度となるように添加し溶解させて調製したものを用意した。
1回目の電解液注入工程において、上記の低電解質塩濃度の非水電解液(LiPF濃度が0.8mol/lのもの)を1.45ml注入し、2回目(最終)の電解液注入工程において、上記の高電解質塩濃度の非水電解液(LiPF濃度が1.4mol/lのもの)を0.6ml注入した他は、実施例1と同様にして、角形リチウム二次電池を作製した。なお、1回目の電解液注入工程による低電解質塩濃度の非水電解液量は、電池内空隙の75%に相当する。
実施例3
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO(比表面積:0.5m/g、平均粒径:10μm):97質量部と、導電助剤であるカーボンブラック(粒径:3μm):1.5質量部と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン:1.5質量部との割合で、NMPの存在下で混合してスラリー状の正極合剤含有ぺーストを調製した。得られた正極合剤含有ぺーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、ローラーで正極合剤層を所定の厚みになるまで加圧成形した後、所定の幅および長さになるように切断して、高密度の正極合剤層を有する正極を作製した。得られた正極の正極合剤層密度は、3.90g/cmであった。
<負極の作製>
負極活物質として、黒鉛A〔(002)面の面間隔(d002):0.3365nm、平均粒径20μm、c軸方向の結晶子サイズ(Lc:100nm)〕を用いた。また、バインダーには、CMCとSBRとを、CMC/SBR=1/0.5(質量比)の割合で用いた。この負極活物質:98.5質量部とバインダー:1.5質量部を、水の存在下で混合してスラリー状の負極合剤含有ぺーストを調製した。得られた負極合剤含有ぺーストを、厚みが8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、ローラーで負極合剤層が所定の厚みになるまで加圧成形した後、所定の幅および長さになるようにして切断して、高密度の負極合剤層を有する負極を作製した。得られた負極の負極合剤層密度は、1.75g/cmであった。
正負極に、上記の高密度の正極合剤層を有する正極および高密度の負極合剤層を有する負極を用いた他は、実施例1と同様にして、非水電解液を除く発電要素が内填された電池前駆体を作製した。この電池前駆体を用い、1回目の電解液注入工程における低電解質塩濃度の非水電解液の注入量を1.32mlとし、続いて、184mA(0.2C)の電流で、30分間充電し、その後2回目(最終)の電解液注入工程において高電解質塩濃度の非水電解液の注入量を0.5mlとした他は、実施例1と同様にして角形リチウム二次電池を作製した。なお、1回目の電解液注入工程によって電池前駆体内に注入した非水電解液量は、電池内空隙の73%に相当する。また、上記充電工程における充電電気量は、電池容量の10%に相当する。
実施例4
1回目の電解液注入工程における低電解質塩濃度の非水電解液の注入量を1.2mlとし、2回目(最終)の電解液注入工程における高電解質塩濃度の非水電解液の注入量を0.6mlとした他は、実施例3と同様にして角形リチウム二次電池を作製した。なお、1回目の電解液注入工程によって電池前駆体内に注入した非水電解液量は、電池内空隙の67%に相当する。
実施例5
1回目の電解液注入工程の後の充電工程における条件を、460mA(0.5C)、15分に変更した他は、実施例3と同様にして角形リチウム二次電池を作製した。なお、上記充電工程における充電容量は、最終的に得られる電池の容量の12.5%に相当する。
実施例6
電解質塩をLiPFに代えてLiN(SOとした他は、実施例1と同様にして低電解質塩濃度の非水電解液および高電解質塩濃度の非水電解液を調製し、実施例1と同様にして角形リチウム二次電池を作製した。
実施例7
非水電解液として、ECとMECとの体積比1:2の混合溶媒に、LiPFを1.0mol/lの濃度となるように溶解させ、更に添加剤として、VCを3質量%の濃度となるように添加し溶解させて調製したものを用意した。実施例1と同様にして非水電解液を除く発電要素が内填された電池前駆体を作製し、これに、上記の非水電解液(LiPF濃度が1.0mol/lのもの)1.92mlを、1度の電解液注入工程で全量注入し、その後に、168mA(0.2C)で、30分充電を行い、その後に電解液注入工程を設けずに、電解液注入口の封止を行った他は、実施例1と同様にして角形のリチウム二次電池を作製した。
実施例8
1回目と2回目の電解液の濃度を1.0mol/lとした他は、実施例1と同様にして角形のリチウム二次電池を作製した。
実施例9
1回目の電解液注入工程における電解質塩濃度を1.0mol/l、注液量を1.0mlとし、2回目の電解液注入工程における電解質塩濃度を1.0mol/l、注液量を
0.6mlとした他は、実施例1と同様にして角形のリチウム二次電池を作製した。
比較例1
電解液注入口の封止前に充電工程を設けなかった他は、実施例7と同様にして角形のリチウム二次電池を作製した。
実施例1〜9および比較例1で得られたリチウム二次電池について、下記の各評価を行った。結果を表1に示す。
<放電容量評価>
実施例1〜9および比較例1のリチウム二次電池について、それぞれ1C相当の電流で、電池電圧が4.2Vになるまで充電した後、それぞれ0.2C相当の電流で3.0Vになるまで放電し、放電容量を求めた。
<負荷特性評価>
実施例1〜9および比較例1のリチウム二次電池について、それぞれ1C相当の電流で、電池電圧が4.2Vになるまで充電した後、それぞれ2C相当の電流で3.0Vになるまで放電し、放電容量を求めた。この2Cでの放電容量を、上記の放電容量評価で求めた0.2Cでの放電容量で除して、負荷特性を評価した。
<サイクル特性評価>
実施例1〜9および比較例1リチウム二次電池について、それぞれ1C相当の電流レートで充電し、続いてそれぞれ1C相当の電流で3.0Vまでの放電を1サイクルとする試験を400サイクル行った。この400サイクル時での放電容量を、1サイクル目での放電容量で除して、容量維持率とした。
<電池膨れ評価>
実施例1〜9および比較例1のリチウム二次電池について、それぞれ1C相当の電流で、電池電圧が4.2Vになるまで充電した後、電池厚みの測定を行った。
Figure 2006260864
評価の結果、比較例1のように、充電工程を電池封止後に設けた場合には、ガス発生による電池の大きな膨れが生じたが、電池封止前に充電工程を設けた実施例1〜9では、電池の膨れが抑制されていた。そのため、比較例1では、0.2Cでの放電容量も大きく減少した。なお、実施例1と実施例8、実施例9を比べると、0.2C放電での容量に差は見られなかったが、1回目の注液と2回目の注液で、先に低濃度、後に高濃度電解液を用いた実施例1の場合は、2回の注液を同濃度の電解液を用いて行った実施例8や実施例9の場合と比べて、サイクル特性は、良好であった。また、実施例7では、初回充電時に注入した電解液の約30%に相当する電解液の吹きこぼれが充電後の重量測定により確認された。よって充電を行う際は、2回以上の注液工程を設け、封止を行う前に充電を行うことが好ましいことがわかった。
また、1回目の電解液注入工程において、2回目の電解液注入工程で用いるよりも電解質塩濃度の小さな非水電解液を用いることによる非水電解液の含浸速度向上効果を確認するための試験を行った。電極には、実施例1で作製したものと同じ正極および負極、並びに、実施例3で作製したものと同じ正極および負極(すなわち、高密度の正極合剤層を有する正極、および高密度の負極合剤層を有する負極)を用いた。また、非水電解液には、実施例1で用いた低電解質塩濃度の非水電解液(LiPF濃度が0.7mol/l)、および比較例1で用いた非水電解液(LiPF濃度が1.0mol/l)を使用した。試験は、上記の各電極に、上記の非水電解液をそれぞれ2μl滴下し、目視で非水電解液が電極中に浸透するまでの時間を測定すると共に、非水電解液が浸透した領域の直径を測定することで行った。結果を表2に示す。
Figure 2006260864
表2に示すように、低電解質塩濃度の非水電解液(LiPF濃度が0.7mol/l)の方が、より短時間で、より広範囲に浸透する傾向にあり、電極への含浸性が優れていた。さらに、電解質塩濃度による含浸性の相違は、高密度の合剤層を有する電極において顕著であった。よって、1回目の電解液注入工程において、低電解質塩濃度の非水電解液を用いることで、電極などへの含浸性を高めて生産性の向上を図ることができ、特に高密度の合剤層を有する電極を用いた電池の製造において、より有効であることが判明した。
本発明に係る筒形(角形)リチウム二次電池の一例を模式的に示す図で、(a)はその平面図、(b)はその部分縦断面図である。 図1に示すリチウム二次電池の斜視図である。
符号の説明
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電池缶
5 絶縁体
6 電極積層体
7 正極リード体
8 負極リード体
9 電池蓋
10 絶縁パッキング
11 端子
12 絶縁体
13 リード板
14 電解液注入口
15 防爆ベント

Claims (4)

  1. リチウム二次電池を製造する方法であって、
    上記電池缶と上記電池蓋とから構成された外装体の内部に正極、負極およびセパレータを備えた電極体が装填されている電池前駆体の内部に、電池缶または電池蓋に設けられた電解液注入口から非水電解液を注入する電解液注入工程を有し、
    電解液注入工程の後に、電解液注入口を封止する工程を有し、且つ
    電解液注入工程後、電解液注入口の封止工程より前に、少なくとも1回の充電工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
  2. 上記電解液注入工程を少なくとも2回有しており、上記充電工程を、最終の電解液注入工程より前に有する請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記充電工程を、少なくとも、初回の電解液注入工程と、2回目の電解液注入工程との間に有する請求項2に記載の製造方法。
  4. 少なくとも2回の電解液注入工程のうち、初回の電解液注入工程で注入する非水電解液は、それ以外の電解液注入工程で注入する非水電解液よりも、電解質塩濃度が低い請求項2または3に記載のリチウム二次電池の製造方法。
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