JP2006025671A - ロールイン用油脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 油相中のPMP+MPM+PPP含量、PPP含量、PPM/(PMP+MPM)、(MPM+PPP)/PMP、PPP/SSSの各値が、特定条件を満たすロールイン用油脂組成物、又は、油相中のSt MSt +MSt M+St St St 含量、St St St 含量、St St M/(St MSt +MSt M)、(MSt M+St St St )/St MSt 、St St St /SSSの各値が、特定条件を満たすロールイン用油脂組成物。ただし、S:炭素数16〜18の飽和脂肪酸、M:炭素数16〜18のシス型モノエンの不飽和脂肪酸、P:炭素数16の飽和脂肪酸、St :炭素数18の飽和脂肪酸である。
【選択図】 なし
Description
具体的には、トリラウリンと液状油を配合する方法(例えば特許文献1参照)や、パーム軟質油の異性化水添油を分別し、その硬部油と軟部油を配合する方法(例えば特許文献2参照)等がある。
しかし、これらは、作業性と口溶性だけに重点をおいたもので、パイの浮き(パフ性)を改良することはできなかった。
なお、S1 US2 (S1 、S2 は飽和脂肪酸、Uは不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリドとUS3 U(S3 は飽和脂肪酸、Uは不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリドとからなるコンパウンド結晶を含有することを特徴とする油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献6、特許文献7参照)も見出されているが、耐熱性が低いためホイロ耐性がないこと、さらにパイに使用した場合これ単独ではパイの浮きが十分ではなかった。
i) (PMP+MPM+PPP)が10〜60重量%
ii) PPPが3〜15重量%
iii) PPM/(PMP+MPM)が0.85以下(重量基準)
iv) (MPM+PPP)/PMPが0.5以上(重量基準)
v) PPP/SSSが0.65以上(重量基準)
vi) (St MSt +MSt M+St St St )が10〜60重量%
vii) St St St が3〜15重量%
viii) St St M/(St MSt +MSt M)が0.85以下(重量基準)
ix) (MSt M+St St St )/St MSt が0.5以上(重量基準)
x) St St St /SSSが0.65以上(重量基準)
上記i)〜x)中、S、M、P及びSt は、それぞれ下記の脂肪酸を示す。
S :炭素数16〜18の飽和脂肪酸
M :炭素数16〜18のシス型モノエンの不飽和脂肪酸
P :炭素数16の飽和脂肪酸。
St :炭素数18の飽和脂肪酸。
なお、トリグリセリドをXYZと表記した場合、グリセリンの1位にXが、2位にYが、3位にZが結合しているか、又は、グリセリンの1位にZが、2位にYが、3位にXが結合していることを示す。
本発明のロールイン用油脂組成物においては、油相中のトリグリセリド組成が、上記i)〜v)の条件を全て又は上記vi)〜x)の条件を全て満たすことが必要である。
まず、本発明のロールイン用油脂組成物の、油相中のトリグリセリド組成が上記i)〜v)の条件を全て満たす場合について詳細に説明する。
(MPM+PPP)/PMPの上限値については、特に制限はないが、好ましくは3以下、より好ましくは1.8以下である。
本発明のロールイン用油脂組成物は、上記vi)の条件の通り、油相中のSt MSt 、MSt M、St St St を合計した含量が、10〜60重量%であり、好ましくは13〜57重量%、さらに好ましくは15〜55重量%、最も好ましくは20〜50重量%である。上記油相中のSt MSt 、MSt M、St St St を合計した含量が10重量%未満では、油相中の結晶量が少なくロールイン用油脂としては適しておらず、さらには、ベーカリー製品に用いた場合、十分な浮きが得られない。上記含量が60重量%を超えると、伸展性が悪くなる。
(MSt M+St St St )/St MSt の上限値については、特に制限はないが、好ましくは3以下、より好ましくは1.8以下である。
本発明のロールイン用油脂組成物は、油相を70℃で完全に融解し、0℃で30分間保持した後、5℃で保持した際に、7日以内に油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶になるロールイン用油脂組成物が好ましく、4日以内に油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶になるロールイン用油脂組成物がさらに好ましく、1日以内に油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶になるロールイン用油脂組成物が一層好ましく、1時間以内に油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶になるロールイン用油脂組成物がさらに一層好ましく、30分以内に油脂結晶が2鎖長構造のβ型結晶になるロールイン用油脂組成物が最も好ましい。
上記の結晶転移の確認方法において、5℃で保持後の油脂結晶がβ型結晶であることを判断する方法としては、X線回析測定において、以下のように短面間隔を測定することにより判断できる。
具体的には、油脂結晶について、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する強い回析ピークを示した場合に、該油脂結晶はβ型結晶であると判断する。さらにより高い精度で測定する場合は、短面間隔を2θ:17〜26度の範囲で測定し、4.5〜4.7オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度1)と4.2〜4.3オングストロームの面間隔に対応する範囲に最大値を有するピーク強度(ピーク強度2)をとり、ピーク強度1/ピーク強度2の比が1.3以上となった場合にβ型結晶であると判断する。
具体的には、油脂結晶について、長面間隔を2θ:0〜8度の範囲で測定し、40〜50オングストロームに相当する回折ピークを示した場合に、該油脂結晶は2鎖長構造をとっていると判断する。
油脂結晶のサイズが20μmを越えと、ロールイン用油脂組成物がざらつき、液状油成分を保持することが困難となり、またロールイン用油脂組成物が油にじみを起こしやすく、水相成分と油脂結晶により形成される3次元構造を維持できにくくなる上に、ロールイン時に油脂切れが起こりやすいため良好な層状構造が得られず、十分な浮きが得られない。
この油脂(A)としては、SMSを含有する油脂(A1)、MSMを含有する油脂(A2)、SSSを含有する油脂(A3)、SMS及びSSSを含有する油脂(A4)、SMS、MSM及びSSSを含有する油脂(A5)の1種又は2種以上の油脂を使用することができる。
このような油脂(A)の含量は、本発明のロールイン用油脂組成物の油相中、好ましくは10〜100重量%、さらに好ましくは20〜90重量%、最も好ましくは30〜80重量%である。
上記の油脂(B)としては、牛乳、クリーム、バター、チーズ等の乳脂を含有する乳製品をそのまま使用しても、これらから脂質分だけを抽出した乳脂そのものを使用してもよい。また上記の乳脂を乾式分別、溶剤分別した分別乳脂硬部油、分別乳脂中部油、分別乳脂軟部油等を使用しても構わない。
上記油脂(B)の含量は、本発明のロールイン用油脂組成物の油相中、好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは0〜45重量%、最も好ましくは0〜40重量%である。なお、上記油脂(B)として、牛乳、クリーム、バター、チーズ等の乳脂を含有する乳製品を使用した場合、上記油脂(B)の含量とは、それらに含まれる油脂以外の原料を除いた純油分を指す。
上記油脂(C)としては、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、サンフラワー油、ハイオレイックサンフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、米糠油等の液状油やその低融点の硬化油、ヨウ素価64以上のパーム軟質油、シア脂、マンゴー脂、サル脂等の分別軟質油を用いることができる。
上記油脂(C)の含量は、本発明のロールイン用油脂組成物の油相中、好ましくは0〜70重量%、さらに好ましくは5〜65重量%、最も好ましくは10〜60重量%である。
水素添加は油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、これによって得られる水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50重量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10重量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものが要求されている。
ここでいう「実質的に」とは、トランス酸含量が、本発明のロールイン用油脂組成物の全構成脂肪酸中、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満であることを意味する。
本発明では、ロールイン用油脂組成物が水素添加油脂を使用せずとも良好なコンステンシーを有するため、トランス酸を実質的に含有しないロールイン用油脂組成物を得ることができる。
特に、上記油脂(A5)としてヨウ素価50〜75のパーム油又はパーム軟質油のランダムエステル交換油を使用することにより、乳化剤無添加でも高水分のロールイン用油脂組成物を得ることが可能である。
上記の乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の、合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。
本発明のロールイン用油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではなく、上記i)〜v)の条件を全て満たす油相又は上記vi)〜x)の条件を全て満たす油相を溶解し、冷却し、結晶化することによって得ることができる。
具体的には、まず、上記油相を溶解し、必要により水相を混合乳化する。そして次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法はタンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせが挙げられる。
また、本発明のロールイン用油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
ヨウ素価56のパームオレインを15℃で乾式分別を行い、ヨウ素価42のパーム中融点部を得た。これを25℃で乾式分別し、高融点画分を除去した後、油脂:アセトン=1:4の重量比で混合し、10℃で溶剤分別を行って得られた結晶部を漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A1)に該当する油脂1を得た。
得られた油脂1は、SSSを0.8%、PPPを0.7%、POPを70.3%、PPOを2.0%を含有し、OPOは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.7%であった。
ヨウ素価30のパームステアリンとアセトンを1:3の重量比で混合し、これを35℃で溶剤分別し、得られた結晶部とオレイン酸エチル(純度98%:当社調製)を重量比1:4で混合し、触媒として1,3位置選択性のリパーゼ(リパーゼEG:天野製薬(株)製)を(油脂+オレイン酸エチル)の総重量に対し5%添加し、反応温度40℃で72時間反応を行った。反応終了後、分子蒸留(150℃)で脂肪酸エチルを除去した後、シリカカラムでトリグリセリド画分のみ分画した。この分画したトリグリセリド画分とアセトンを1:3の重量比で混合し、30℃で溶剤分別した低融点画分を更に0℃で溶剤分別を行って得られた低融点画分を、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A2)に該当する油脂2を得た。
得られた油脂2は、POPを0.4%、PPOを5.3%、OPOを84.1%含有し、SSS、PPPは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.6%であった。
ヨウ素価30のパームステアリンとアセトンを1:3の重量比で混合し、これを35℃で溶剤分別して得られた結晶部を、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A3)に該当する油脂3を得た。
得られた油脂3は、SSSを96.3%、PPPを78.1%、POPを2.7%、PPOを1.2%含有し、OPOは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.4%であった。
ヨウ素価30のパームステアリンとアセトンを1:3の重量比で混合し、これを35℃で溶剤分別し、得られた結晶部とオレイン酸エチル(純度98%:当社調製)を重量比1:4で混合し、触媒として1,3位置選択性のリパーゼ(リパーゼEG:天野製薬(株)製)を(油脂+オレイン酸エチル)の総重量に対し5%添加し、反応温度40℃で72時間反応を行った。反応終了後、分子蒸留(150℃)で脂肪酸エチルを除去した後、シリカカラムでトリグリセリド画分のみ分画した。この分画したトリグリセリド画分とアセトンを1:3の重量比で混合し、30℃で溶剤分別した低融点画分を更に0℃で溶剤分別を行って得られた結晶部を、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、油脂4を得た。
得られた油脂4は、SSSを3.1%、PPPを2.4%、POPを1.0%、PPOを74.2%、OPOを7.4%含有し、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.4%であった。
(パーム極度硬化油の調製)
ヨウ素価52のパーム油をニッケル触媒(SO−850:堺化学製)を用いて、反応温度190℃、水素圧3.0kg/cm2 下で、ヨウ素価0.8まで硬化反応を行った。脱触媒後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、ヨウ素価0.8の油脂5を得た。
得られた油脂5は、SSSを92.9%、PPPを5.9%含有し、POP、PPO、OPOは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.1%であった。
(ロールイン用油脂組成物の調製)
ロールイン用油脂組成物の油相として上記油脂1〜油脂4、大豆液状油(トランス酸含量0%)を表1の比率で混合した混合油83.2%に、レシチン0.5%及びグリセリンモノステアリン酸エステル0.5%を溶解混合した油相と、食塩1%及び水14.8%からなる水相とを乳化した予備乳化物を、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、マーガリンタイプのロールイン用油脂組成物をそれぞれ作成した。
得られたロールイン用油脂組成物の油相中の(PMP+MPM+PPP)の含量、PPPの含量、PPM/(PMP+MPM)、(MPM+PPP)/PMP、PPP/SSSの各数値、トランス酸含量、油脂の結晶構造、油脂の結晶型、及び油脂の結晶サイズを測定した。その結果を表2及び表3に示した。
なお、油脂の結晶構造、油脂の結晶型、及び油脂の結晶サイズについては、ロールイン用油脂組成物の油相を70℃で完全に溶解し、0℃で30分間保持した後、5℃で7日間保持したときの結晶構造、油脂の結晶型、及び油脂の結晶サイズである。
強力粉 70 重量部
薄力粉 30 重量部
食塩 1.3重量部
砂糖 2 重量部
脱脂粉乳 3 重量部
練り込み油脂(マーガリン) 5 重量部
水 54 重量部
ロールイン用油脂組成物 80 重量部
ロールイン用油脂組成物以外の原料を竪型ミキサーにて低速2分及び中速3分ミキシングした後、5℃の冷蔵庫内で生地を一晩リタードした。この生地にロールイン用油脂組成物をのせ、定法によりロールイン(4つ折4回)、成型(縦100mm×横100mm×厚さ3mm)し、ピケローラーでピケをうった後、焼成した。
◎ :コシがあり、非常に良好
○ :良好
△ :若干油脂切れが起こるか、生地に練込まれる傾向があり、やや不良である
× :油脂切れが起こるか、生地に練込まれ、不良である
◎ :非常に良好
○ :良好
△ :若干ワキシー感あり
× :ワキシー感あり
焼成後のパイの厚みを焼成前の生地厚で除した値について、焼成品10個の平均値を算出し、下記の4段階で評価した。
◎ :12以上
○ :11以上〜12未満
△ :10以上〜11未満
× :10未満
また、油相中の(PMP+MPM+PPP)の含量が10重量%未満である油脂組成物(比較例3)や60重量%を超える油脂組成物(比較例4)は、製造時には安定な微細β結晶が得られるものの、得られたマーガリンはロールイン用油脂組成物としての物性がきわめて悪かった。
さらに、油相中のPPPの含量が3重量%未満である油脂組成物(比較例5)や15重量%を超える油脂組成物(比較例6)は、製造時に安定な微細β結晶が得られるが、PPPの含量が3重量%未満である油脂組成物は耐熱性が悪く、15重量%を超える油脂組成物は口溶けが悪く、また共にパイの浮きが悪かった。
ロールイン用油脂組成物の油相として上記油脂1〜油脂3、油脂5、大豆液状油(トランス酸含量0%)を表5の比率で混合した混合油を用いた以外は実施例1〜4と同様に、マーガリンタイプのロールイン用油脂組成物をそれぞれ作成した。
得られたロールイン用油脂組成物の油相中の(PMP+MPM+PPP)の含量、PPPの含量、PPM/(PMP+MPM)、(MPM+PPP)/PMP、PPP/SSSの各数値、トランス酸含量、油脂の結晶構造、油脂の結晶型、及び油脂の結晶サイズを測定した。その結果を表6及び表7に示した。
ロールイン用油脂組成物の油相として上記油脂1〜油脂3、大豆液状油(トランス酸含量0%)を表9の比率で混合した混合油を用いた以外は実施例1〜4と同様に、マーガリンタイプのロールイン用油脂組成物をそれぞれ作成した。
得られたロールイン用油脂組成物の油相中の(PMP+MPM+PPP)の含量、PPPの含量、PPM/(PMP+MPM)、(MPM+PPP)/PMP、PPP/SSSの各数値、トランス酸含量、油脂の結晶構造、油脂の結晶型、及び油脂の結晶サイズを測定した。その結果を表10及び表11に示した。
マンゴー脂とアセトンを重量比1:4で混合し、10℃で溶剤分別を行って得られた結晶部を、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A1)に該当する油脂6を得た。
得られた油脂6は、SSSを1.3%、St St St を0.9%、St OSt を64.7%、St St Oを3.0%含有し、OSt Oは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.3%であった。
ヨウ素価2の大豆極度硬化油とオレイン酸エチル(純度98%:当社調製)を重量比1:4で混合し、触媒として1,3位置選択性のリパーゼ(リパーゼEG:天野製薬(株)製)を(油脂+オレイン酸エチル)の総重量に対し5%添加し、反応温度40℃で72時間反応を行った。反応終了後、分子蒸留(150℃)で脂肪酸エチルを除去した後、シリカカラムでトリグリセリド画分のみ分画した。この分画したトリグリセリド画分とアセトンを1:3の重量比で混合し、34℃で溶剤分別を行って得られた低融点画分を、更に5℃で溶剤分別を行って得られた低融点画分を、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A2)に該当する油脂7を得た。
得られた油脂7は、St OSt を0.4%、St St Oを2.7%、OSt Oを79.4%含有し、SSS、St St St は0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.7%であった。
ハイオレイックひまわり油をニッケル触媒(SO−850:堺化学製)を用いて、反応温度190℃、水素圧3.0kg/cm2 下で、ヨウ素価0.8まで硬化反応を行った。脱触媒後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、ヨウ素価0.8の油脂8を得た。
得られた油脂8は、SSSを99.0%、St St St を81.0%含有し、St OSt 、St St O、OSt Oは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.1%であった。
ヨウ素価2の大豆極度硬化油とオレイン酸エチル(純度98%:当社調製)を重量比1:4で混合し、触媒として1,3位置選択性のリパーゼ(リパーゼEG:天野製薬(株)製)を(油脂+オレイン酸エチル)の総重量に対し5%添加し、反応温度40℃で72時間反応を行った。反応終了後、分子蒸留(150℃)で脂肪酸エチルを除去した後、シリカカラムでトリグリセリド画分のみ分画した。この分画したトリグリセリド画分とアセトンを1:3の重量比で混合し、34℃で溶剤分別を行って得られた低融点画分を、更に5℃で溶剤分別を行って得られた結晶部を、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、油脂9を得た。
得られた油脂9は、SSSを4.2%、St St St を3.1%、St OSt を0.8%、St St Oを75.2%、OSt Oを5.3%含有し、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.4%であった。
ロールイン用油脂組成物の油相として上記油脂5〜油脂9、大豆液状油(トランス酸含量0%)を表13の比率で混合した混合油を用いた以外は実施例1〜4同様に、マーガリンタイプのロールイン用油脂組成物をそれぞれ作成した。
得られたロールイン用油脂組成物の油相中の(St MSt +MSt M+St St St )の含量、St St St の含量、St St M/(St MSt +MSt M)、(MSt M+St St St )/St MSt 、St St St /SSSの各数値、トランス酸含量、油脂の結晶構造、油脂の結晶型、及び油脂の結晶サイズを測定した。その結果を表14及び表15に示した。
また、油相中のSt St St の含量が3重量%未満であり且つSt St St /SSSが0.65未満である油脂組成物(比較例11、比較例12)は、製造時に安定な微細β結晶が得られず、また得られたマーガリンが経日的に硬くなり、粗大結晶が析出する傾向が認められた。また得られたパイは、口溶けは良好であったが、浮きが悪く、ロールイン時の油脂伸展性も悪かった。
ヨウ素価56のパームオレインを15℃で乾式分別を行い、ヨウ素価42のパーム中融点部を得た。これを漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A1)に該当する油脂10を得た。
得られた油脂10は、SSSを2.2%、PPPを1.7%、POPを42.7%、PPOを4.9%を含有し、OPOは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.4%であった。
ヨウ素価30のパームステアリンを漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A4)に該当する油脂11を得た。
得られた油脂11は、SSSを35.1%、PPPを28.7%、POPを25.8%、PPOを6.5%を含有し、OPOは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.4%であった。
ヨウ素価52のパーム油を漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A4)に該当する油脂12を得た。
得られた油脂12は、SSSを7.1%、PPPを5.9%、POPを21.0%、PPOを6.4%を含有し、OPOは0.1%未満、モノグリセリドについては0.05%未満であった。なお、トランス酸含量は0.8%であった。
ヨウ素価56のパーム軟質油(P/S=0.87、且つ、O/U=0.79)をソジウムメチラート(和光純薬(株)製)0.15%を触媒として、ランダムエステル交換を行った。これを脱触媒、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A5)に該当する油脂13を得た。
得られた油脂13は、SSSを12.4%、PPPを7.7%、POPを7.3%、PPOを14.5%、OPOを7.2%、モノグリセリドを0.12%含有していた。なお、トランス酸含量は0.8%であった。
ヨウ素価65のパーム軟質油(P/S=0.86、且つ、O/U=0.79)をソジウムメチラート(和光純薬(株)製)0.15%を触媒として、ランダムエステル交換を行った。これを脱触媒、漂白(白土3%、85℃、9.3×102 Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込む量5%、4.0×102 Pa以下の減圧下)を行い、上記油脂(A5)に該当する油脂14を得た。
得られた油脂14は、SSSを5.8%、PPPを4.3%、POPを5.7%、PPOを11.3%、OPOを7.8%、モノグリセリドを0.14%含有していた。なお、トランス酸含量は1.2%であった。
(ロールイン用油脂組成物の調製)
ロールイン用油脂組成物の油相として上記油脂5、油脂10〜油脂14、乳脂(トランス酸含量3%)、大豆液状油(トランス酸含量0%)を表17の比率で混合した混合油を用いた以外は実施例1〜4同様に、マーガリンタイプのロールイン用油脂組成物をそれぞれ作成した。
得られたロールイン用油脂組成物の油相中の(PMP+MPM+PPP)の含量、PPPの含量、PPM/(PMP+MPM)、(MPM+PPP)/PMP、PPP/SSSの各数値、トランス酸含量、油脂の結晶構造、油脂の結晶型、及び油脂の結晶サイズを測定した。その結果を表18及び表19に示した。
実施例14又は実施例19のロールイン用油脂組成物の油相を、乳化剤(レシチン0.5%及びグリセリンモノステアリン酸エステル0.5%)を無添加とした油相84.2重量%とした以外は実施例14又は実施例19と同様にして、マーガリンタイプの合成乳化剤無添加である実施例22及び実施例23のロールイン用油脂組成物をそれぞれ作成した。
また、上記表18及び表20からわかるように、油相中の(PMP+MPM+PPP)の含量、PPPの含量、PPM/(PMP+MPM)、(MPM+PPP)/PMP、PPP/SSSの何れかが、上記i)〜v)の条件の範囲外であると、得られたパイの口溶けは良好であっても、浮きが悪く、またロールイン時の油脂伸展性も悪い傾向が認められた。
なお、乳化剤無添加で調製したロールイン用油脂組成物(実施例22、実施例23)においても、乳化剤を添加して製造した実施例14及び19のロールイン用油脂組成物と同様に、製造時及びロールイン時とも離水なく、作業性が良好であった。また得られたパイの浮きや口溶けにおいても乳化剤を添加したものと差は認められなかった。
Claims (6)
- 油相中のトリグリセリド組成が、下記i)〜v)の条件又は下記vi)〜x)の条件を全て満たすことを特徴とするロールイン用油脂組成物。
i) (PMP+MPM+PPP)が10〜60重量%
ii) PPPが3〜15重量%
iii) PPM/(PMP+MPM)が0.85以下(重量基準)
iv) (MPM+PPP)/PMPが0.5以上(重量基準)
v) PPP/SSSが0.65以上(重量基準)
vi) (St MSt +MSt M+St St St )が10〜60重量%
vii) St St St が3〜15重量%
viii) St St M/(St MSt +MSt M)が0.85以下(重量基準)
ix) (MSt M+St St St )/St MSt が0.5以上(重量基準)
x) St St St /SSSが0.65以上(重量基準)
上記i)〜x)中、S、M、P及びSt は、それぞれ下記の脂肪酸を示す。
S :炭素数16〜18の飽和脂肪酸
M :炭素数16〜18のシス型モノエンの不飽和脂肪酸
P :炭素数16の飽和脂肪酸。
St :炭素数18の飽和脂肪酸。 - 油相含量が35〜100重量%である請求項1記載のロールイン用油脂組成物。
- ヨウ素価50〜75のパーム油又はパーム分別油をエステル交換した油脂、及び、パームステアリンを含有する請求項1又は2記載のロールイン用油脂組成物。
- トランス酸を実質的に含有しない請求項1〜3の何れかに記載のロールイン用油脂組成物。
- 乳化剤無添加である請求項1〜4の何れかに記載のロールイン用油脂組成物。
- 請求項1〜5の何れかに記載のロールイン用油脂組成物を用いた食品。
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