JP6467799B2 - ロールイン用乳化油脂組成物 - Google Patents

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本発明は、ロールイン用乳化油脂組成物に関する。
従来、クロワッサン等の層状膨化小麦粉食品に使用されるロールイン用乳化油脂組成物は、良好な展延性等の作業性と、焼成品においてきれいな層の形成が求められるために、融点が高く、口溶けの悪い油脂を主体に製造がなされてきた。しかし、そのようなロールイン用乳化油脂を用いて焼成したクロワッサン、パイ、デニッシュ等の層状膨化小麦粉食品は口溶けが悪く、油脂本来のおいしさを味わうことができないという問題があった。そこで、例えば、特許文献1では、口溶けがシャープなカカオバター代用脂およびラウリン系油脂をそれぞれ特定量含有するシート状油中水型乳化油脂組成物およびその製造法が開示されている。
また、特許文献2及び特許文献3では、油脂中のトリグリセリド組成を規定したロールイン用乳化油脂組成物及びロールインマーガリンが開示されている。
さらに近年は、得られた層状膨化小麦粉食品におけるジューシーな食感が消費者より求められる場合があり、例えば、特許文献4には、ラウリン系ハードバター及びパーム油起源の非選択的エステル交換油をそれぞれ特定量含有するロールイン用可塑性油中水型乳化物が開示されている。また、特許文献5でも、全油脂中のトリグリセリド組成を規定した、口溶けが良く、ジューシー感を有するベーカリー食品用油脂組成物が開示されている。
一方、特許文献6には、従来のようなワキシ−感の残る食感ではなく、シャープな口溶けを有する非ラウリン、非トランス、非テンパリング型製菓用油脂及びその製造法が開示されている。
特開2007‐60912号公報 特開2006‐25671号公報 WO2013‐133138号公報 特開2008‐193974号公報 特開2013‐188205号公報 WO2012‐2373号公報
本発明は、トランス酸を実質的に含まない配合でありながら、低温での展延性が良好なロールイン用乳化油脂組成物であり、当該ロールイン用乳化油脂組成物を使用して焼成した層状膨化小麦粉食品においては、きれいな層を形成し、かつ良好な口溶けとジューシーな食感を発現することを課題とした。
本発明者は、まず先行技術文献について詳細に検討を行った。
特許文献1記載の発明では、チョコレート用対称型油脂であるカカオバター代用脂が必須であるために低温で硬くなり、展延性が不十分であった。また、硬化油及びエステル交換油を一切使用しないことを特徴とするなど、配合上の制限が多く、さらに、実施例では加圧晶析による製造法が開示されているのみである。
特許文献2記載の発明では、パームステアリン及び、パーム油又はパーム分別油のエステル交換油脂を含有することにより、口溶けが非常に良好なロールイン用乳化油脂組成物を提供することができると記載されている。しかし、PPO/(POP+OPO)の比率が0.85以下と低いために、結晶化が遅く経時的に結晶化が起こり、ひび割れが発生するなどして物性が悪化する問題があった。また、PPPを3〜15重量%含有するため、口溶けが損なわれ、ジューシー感は得られなかった。なお、ここで、Pとはパルミチン酸、Oとはオレイン酸を示す。
そこで、特許文献3記載の発明では、パームステアリンのエステル交換分別液状部を30重量%以上含有することによって、SSU/(SUS+USU)の比率を1.0以上としている。しかし、特許文献2と同様に、油相の飽和脂肪酸はパルミチン酸が主体であるために、ロールインマーガリンの結晶粗大化などの組織状態を十分に改良するには至っておらず、経時的に組織が硬くなるという欠点があった。なお、ここで、Sとは、C16〜22の飽和脂肪酸、Uとは、C16〜22の不飽和脂肪酸を示し、SSUとは、Uがα位に結合している1,2‐飽和‐3‐不飽和グリセリドであり、SUSとは、Uがβ位に結合している1,3‐飽和‐2‐不飽和グリセリドであり、USUとは、Sがβ位に結合している1,3‐不飽和‐2‐飽和グリセリドである。
特許文献4記載の発明では、高融点部を除去していないパーム油起源の非選択的エステル交換油脂を使用しているため、良好な口溶けを得られない場合があった。例えば、実施例で使用しているパーム油の非選択的エステル交換油脂は、炭素数が16以上の脂肪酸からなるトリ飽和脂肪酸グリセリドを13重量%(その内、トリパルミチンを9重量%)含有している。また、ラウリン酸が45重量%以上のラウリン系ハードバターを併用しているために、特に低温での展延性が劣る場合があった。
特許文献5記載の発明では、豚脂、パームの分別中部油及びパーム極度硬化油を用いて、規定のトリグリセリド組成を満たしている。しかし、豚脂を規定量含有することが好ましいと記載されていることから、油相配合上の制限が多いものである。また、パームの分別中部油を用いると、トリグリセリド組成に偏りが生じやすくなるために、特に低温で組織が硬くなり十分な展延性が得られない場合があった。さらに、実施例では構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が1重量%以下の組成物が開示されているのみである。
特許文献6記載の発明では、カカオ脂との相溶性が高いことを特徴としており、実施例でも水分を含まないチョコレートでの評価が開示されているのみである。そのため、マーガリン等の練り込み油脂組成物等を使用して作製した小麦粉の生地に、折り込んで使用されるロールイン用乳化油脂組成物に求められる乳化性や展延性についての記載もない。

すなわち、トランス酸を実質的に含まない配合でありながら、低温での展延性が良好であり、焼成した層状膨化小麦粉食品においてはきれいな層を形成し、かつ良好な口溶けとジューシーな食感を発現するロールイン用乳化油脂組成物は得られていなかった。
本発明者は、鋭意検討した結果、油相の構成トリグリセリド組成におけるX3含有量及びPPP含有量、構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比、ラウリン酸及びトランス酸含有量の各値が、特定条件を満たすロールイン用乳化油脂組成物において、クロワッサン等の層状膨化小麦粉食品の調製作業時には良好な展延性を示し、焼成後にきれいな層を形成し、かつ良好な口溶けと非常にジューシーな食感を発現することを見出し、本発明を完成させた。(但し、X : 炭素数が4〜24の偶数である飽和脂肪酸、P : パルミチン酸を意味し、X3はトリ飽和脂肪酸グリセリド、PPPはトリパルミチンである。)
すなわち本発明は、
(1)下記の(i)〜(v)の条件をすべて満たすことを特徴とする、ロールイン用乳化油脂組成物、
(i)油相の構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が8〜30重量%
(ii)油相の構成トリグリセリド組成におけるPPP含有量が3重量%未満
(iii)油相の構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比(St/P)が0.2〜1.0
(iv)油相の構成脂肪酸としてラウリン酸含有量が2〜18重量%
(v)油相の構成脂肪酸としてトランス酸含有量が5重量%未満
(但し、X : 炭素数が4〜24の偶数である飽和脂肪酸、P : パルミチン酸、St : ステアリン酸を意味する。)
(2)油相のSFCが10℃で35〜60%、35℃で7%以下である、(1)記載のロールイン用乳化油脂組成物、
(3)油相に、下記に示す油脂A、油脂B及び油脂Cを含有する(1)または(2)記載のロールイン用乳化油脂組成物、
油脂Aは、構成トリグリセリド組成におけるSUS/SSUの重量比が0.4〜0.8、SSS含有量が4〜20重量%、S2U含有量が50〜80重量%であり、構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.1〜0.4である、エステル交換油の高融点部を除去した分別画分
油脂Bは、液状植物油
油脂Cは、ラウリン酸を含有する油脂
(但し、S : 炭素数が14〜24の飽和脂肪酸、U : 炭素数が14〜24の不飽和脂肪酸を意味する。)
(4)油相に、油脂Aを7〜45重量%、油脂Bを10〜50重量%及び油脂Cを10〜75重量%含有する、(3)記載のロールイン用乳化油脂組成物、
(5)油脂Aが、パーム油、及び/又はパーム分別油に、構成脂肪酸中にステアリン酸を25重量%以上含有する油脂を配合して、エステル交換した後、高融点部及び低融点部を除去した中融点画分である、(3)または(4)記載のロールイン用乳化油脂組成物、
(6)(1)乃至(5)の何れか1つに記載のロールイン用乳化油脂組成物を使用した、層状膨化小麦粉食品、
に関するものである。
本発明によれば、トランス酸を実質的に含まない配合でありながら、低温での展延性が良好なロールイン用乳化油脂組成物であり、当該ロールイン用乳化油脂組成物を使用して焼成した層状膨化小麦粉食品においては、きれいな層を形成し、かつ良好な口溶けとジューシーな食感を発現することができる。
本発明でいうロールイン用乳化油脂組成物とは、クロワッサン等の層状膨化小麦粉食品のロールイン用に使用できる油脂組成物であり、通常は油中水型の乳化物である。そして、その形状はシート状である場合が多いが、ブロック状の油脂組成物を使用する場合もある。
本発明でいう油相とは、ロールイン用乳化油脂組成物における、油脂および油脂に溶解する成分が混合した状態のものであり、乳化油脂組成物を加熱溶解して乳化状態を破壊した際に、油脂を主体とした部分として分離し、認識されるものである。
以下、本発明のロールイン用乳化油脂組成物について詳しく説明する。
本発明の乳化とは、油中水型乳化であり、油中水型または油中水中油型の何れでも構わない。
本発明でいう低温とは、10℃以下、より好ましくは5℃以下を意味する。一般的に、ロールイン用乳化油脂組成物は10〜20℃に温調後、折り込み(展延)を行い、リタードの工程により冷却される。この際、生地品温は5℃以下となるが、さらに展延して成型する必要がある。したがって、この低温での展延性が、焼成した層状膨化小麦粉食品においてきれいな層を形成するために非常に重要となる。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相において、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量は8〜30重量%であり、より好ましくは8.5〜28重量%、さらに好ましくは9〜25重量%である。構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が8重量%未満の場合には、ロールイン用乳化油脂組成物の組織が軟らかくなりすぎるために生地へ練り込まれてしまったり、ホイロで耐熱性が不足したりすることで、焼成品にきれいな層を形成することができない場合がある。一方、30重量%超の場合には、組織が硬くなり、展延性が損なわれる場合がある。なお、Xは炭素数が4〜24の偶数である飽和脂肪酸、具体的には、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸を意味する。よって、X3はトリ飽和脂肪酸グリセリドを示し、X3を構成する3つの脂肪酸は、同一であっても、異なっていても良い。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相において、構成トリグリセリド組成におけるPPP含有量は3重量%未満であり、より好ましくは2.5重量%以下である。構成トリグリセリド組成におけるPPP含有量が3重量%以上の場合には、焼成品の口溶けが悪くなり、ジューシーな食感が得られない場合がある。なお、Pはパルミチン酸を意味し、PPPはトリパルミチンを示す。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相において、構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比(St/P)は0.2〜1.0であり、より好ましくは0.25〜0.8である。構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.2未満の場合には、ロールイン用乳化油脂組成物の組織が軟らかくなりすぎるため生地へ練り込まれてしまったり、ホイロで耐熱性が不足したりすることで、焼成品にきれいな層を形成することができない場合がある。一方、1.0を超える場合には、ロールイン用乳化油脂組成物の融点が上がり、焼成品の口溶けが損なわれるため、ジューシーな食感が得られない場合がある。なお、Stはステアリン酸、Pはパルミチン酸を意味し、St/Pとは、構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比を示す。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相において、構成脂肪酸中のラウリン酸含有量は2〜18重量%であり、より好ましくは2.5〜16重量%、さらに好ましくは3〜15重量%である。構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が2重量%未満では、ロールイン用乳化油脂組成物の組織が脆く、粗いものとなり十分な展延性が得られない場合がある。また、焼成品の口溶けが悪く、ジューシーな食感が得られない場合がある。逆に、18重量%を超えると、焼成品の口溶けは良くなり、ジューシーな食感が得られる場合もあるが、ラウリン脂特有の低温で硬くなる性質によりロールイン用乳化油脂組成物の展延性を損なってしまう場合がある。すなわち、ラウリン酸含有量がこの範囲にあると、ロールイン用乳化油脂組成物に良好な組織、展延性、口溶け及びジューシーな食感を与えることができる。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相において、構成脂肪酸中のトランス酸含有量は5重量%未満であり、実質的にトランス酸を含まないものである。構成脂肪酸中のトランス酸含有量は、より好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満である。これは、硬化油由来のトランス酸を含有しないということを意味し、例えば乳脂など微量ながらトランス酸を含む天然油脂を用いる場合には、当該トランス酸量は考慮しない趣旨である。また、液状油も精製工程で生成される少量のトランス酸を含有する場合があるが、本発明ではかかる液状油の使用も排除しない。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相は、10℃におけるSFC(固体脂含量)が35〜60%であることが好ましく、より好ましくは37〜58%であり、さらに好ましくは39〜56%である。10℃におけるSFCが60%を超えると、ロールイン用乳化油脂組成物が硬くなりすぎ、展延性が劣る場合がある。また、ロールイン作業時に割れて焼成品の内層が不均一になる場合がある。一方、35%未満になると、ロールイン用乳化油脂組成物が軟らかすぎて、ロールイン作業時に生地に馴染んでしまったり、油脂が滲み出したりして、展延作業での生地が安定せずに、焼成品の浮きに影響を及ぼす場合がある。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相は、35℃におけるSFCが7%以下であることが好ましく、より好ましくは6%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。35℃におけるSFCが7%を超えると、得られるロールイン用乳化油脂組成物及び焼成品の口溶けが悪化してしまう場合があるので好ましくない。
ここで、油脂の固体脂指数を表わすSFCは、AOCS Official Method第5版Cd16-81に準じて、60℃に60分置いた後、0℃に移し60分置き、各測定温度に移し30分後に測定したものである。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相において、上記の(i)〜(v)の条件をすべて満たすためには、以下に示す油脂A、油脂B及び油脂Cを用いることにより比較的容易に調整することができる。
本発明における油脂Aは、構成トリグリセリド組成におけるSUS/SSUの重量比が0.4〜0.8であることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.6である。構成トリグリセリド組成におけるSUS/SSUの重量比が0.8を超えると、得られるロールイン用乳化油脂組成物の組織が脆くなり、展延性が悪くなってしまう場合がある。また、0.4未満では、油脂のエステル交換と一般的な分別だけでは調製が困難で、例えばカラムを使用した濃縮工程が必要となるために製造コストが高くなりすぎる場合があり好ましくない。なお、Sは炭素数が14〜24の飽和脂肪酸、Uは炭素数が14〜24の不飽和脂肪酸を意味する。よって、SUSとは、Sが2残基とUが1残基結合したグリセリドで、Uがβ位に結合している1,3‐飽和‐2‐不飽和グリセリドであり、SSUとは、Sが2残基とUが1残基結合したグリセリドで、Uがα位に結合している1,2‐飽和‐3‐不飽和グリセリドを示す。
本発明の油脂Aは、構成トリグリセリド組成におけるSSSの含有量が4〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜19重量%、さらに好ましくは7〜13重量%である。構成トリグリセリド組成におけるSSSが4重量%未満では、ロールイン用乳化油脂組成物の組織が軟らかくなりすぎるために生地へ練り込まれてしまったり、ホイロで耐熱性が不足したりすることで、焼成品にきれいな層を形成することができない場合がある。一方、20重量%を超えると、ロールイン用乳化油脂組成物の融点が上昇して口溶けが損なわれるため、焼成品にジューシーな食感が得られない場合がある。すなわち、SSSの含有量が上述した範囲内にある場合には、得られるロールイン用乳化油脂組成物の組織や展延性がより良くなり、該ロールイン用乳化油脂組成物を使用した焼成品はきれいな層が形成され、かつジューシーな食感とすることができる。なお、SSSはトリ飽和グリセリドを示すが、SSSを構成する3つの脂肪酸酸残基は、同一であっても、異なっていても良い。
本発明の油脂Aは、構成トリグリセリド組成におけるS2Uの含有量が50〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは55〜80重量%、さらに好ましくは65〜75重量%である。構成トリグリセリド組成におけるS2Uが50重量%未満であると、得られるロールイン用乳化油脂組成物の組織が軟らかくなりすぎるために生地へ練り込まれてしまったり、ホイロで耐熱性が不足したりすることで、きれいな層を形成することができない場合がある。一方、80重量%超では、特に低温で組織が硬くなり十分な展延性が得られない場合がある。なお、S2Uとは、Sが2残基とUが1残基結合したグリセリドであり、Uがβ位に結合しているSUS(1,3‐飽和‐2‐不飽和グリセリド)と、Uがα位に結合しているSSU(1,2‐飽和‐3‐不飽和グリセリド)の両方を含む。
本発明の油脂Aは、構成脂肪酸組成におけるステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.1〜0.4であることが好ましく、より好ましくは、0.15〜0.35である。構成脂肪酸組成におけるステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.1未満では、ロールイン用乳化油脂組成物の組織が軟らかくなりすぎるために生地へ練り込まれてしまったり、ホイロで耐熱性が不足したりすることで、焼成品にきれいな層を形成することができない場合がある。一方、0.4を超えると、ロールイン用乳化油脂組成物の融点が上がり、焼成品の口溶けが損なわれるため、ジューシーな食感が得られない場合がある。すなわち、構成脂肪酸組成におけるステアリン酸/パルミチン酸の重量比が上述した範囲内にある場合には、得られるロールイン用乳化油脂組成物の組織や展延性がより良くなり、該ロールイン用乳化油脂組成物を使用した焼成品はきれいな層が形成され、かつジューシーな食感とすることができる。
また、本発明の油脂Aを構成する飽和脂肪酸は、実質的にステアリン酸とパルミチン酸で構成されるが、飽和脂肪酸のうちステアリン酸とパルミチン酸の合計含有量が90重量%以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上である。さらに、本発明の油脂Aは、構成脂肪酸組成中にラウリン酸含有量が5重量%未満であることが好ましく、より好ましくは3重量%未満である。
ここで、油脂中のトランス酸含有量を含む構成脂肪酸組成は、AOCS Ce1f-96に準じて測定した。
本発明の油脂Aは、具体的には、パーム油、及び/又はパーム分別油に、ステアリン酸を25重量%以上含有する油脂を配合して、エステル交換した後、高融点部を除去した分別画分が好ましく、より好ましくは高融点部及び低融点部を除去した中融点画分である。ここで、パーム分別油とは、パーム油を原料に分別されてできる油脂であり、例えば、パームステアリン、パームハードステアリン、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パーム中融点画分等が挙げられる。
本発明における高融点部とは、エステル交換油を分別して得られる結晶部であり、構成トリグリセリド組成におけるSSSの含有量が21重量%以上、かつヨウ素価が15以下の成分である。一方、低融点部とは、エステル交換油を分別して得られる液状部であり、構成トリグリセリド組成におけるSSSの含有量が3重量%以下の成分である。
ここで、本発明における融点及び沃素価は、社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)及び2.3.4 ヨウ素価に準じて測定したものである。
本発明において、構成脂肪酸中にステアリン酸を25重量%位上含有する油脂としては、特に制限されることはないが、例えば、パーム極度硬化油、パーム分別油の極度硬化油、大豆極度硬化油、ナタネ極度硬化油、ハイエルシン菜種油極度硬化油などを挙げることができる。また、StOSt脂質を生産する過程で、発生する高融点部及び/又は低融点部を利用することもできる。さらに、シア脂やサル脂などのStOOを主成分とする分別低融点部も同様に利用することができる。なお、Stはステアリン酸、Oはオレイン酸を示す。
このような、構成脂肪酸中にステアリン酸を高濃度に含有する油脂とパーム油、及び/又はパーム分別油を混合することで、上記のようなステアリン酸とパルミチン酸の含有量となる油脂を得ることができる。
エステル交換の方法に特に制限はなく、例えば、1種の油脂又は2種以上の混合油脂に、触媒としてナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒、又はリパーゼ等の酵素を用いて反応させる方法が挙げられる。エステル交換は、位置特異的なエステル交換であっても、ランダムエステル交換であってもよいが、ランダムエステル交換が好ましい。
本発明の油脂Aは、このようにして得たランダムエステル交換油脂を、溶剤分別、非溶剤分別などの分別方法により、高融点部を除去した分別画分、より好ましくは高融点部と低融点部を除去した中融点画分として得ることができる。この際、分別前の油脂の組成に応じて、分別の歩留を調整することによって、当業者であれば構成トリグリセリド組成におけるSUS/SSUの重量比が0.4〜0.8、SSS含有量が4〜20重量%、S2U含有量が50〜80重量%であり、構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.1〜0.4を満たす分別画分を得ることが容易にできる。
本発明における油脂Bは、液状植物油であり、常温(20℃)において液体状である食用油である。具体的にはコーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油及びパーム油の分別油を挙げることができ、より好ましいのはコーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油であり、さらに好ましいのは大豆油、ナタネ油である。
本発明における油脂Cは、構成脂肪酸中にラウリン酸を含有している油脂、例えば、パーム核油、やし油及びこれらの分別油等を挙げることができる。より好ましくは、ラウリン系油脂を含有する混合油脂をエステル交換した油脂、例えば、ラウリン系油脂を30〜70重量%、及びパーム系油脂を70〜30重量%含有する混合油脂をエステル交換したエステル交換油脂、及び/又は乳脂を挙げることができる。ここで、ラウリン系油脂とは、該油脂の構成脂肪酸中におけるラウリン酸含有量が30重量%以上ものをいい、パーム核油や、ヤシ油及びこれらの分別油等が挙げられる。また、パーム系油脂とは、パーム油及びパーム油を原料に分別されてできるパーム分別油を含むものである。
本発明における乳脂は、乳脂肪自体をそのまま配合しても良いし、バター、牛乳などの乳製品により配合しても良い。また、乳脂肪の極度硬化、乳脂肪を分別した分別乳脂高融点部や分別乳脂低融点部を使用してもよい。ここで、乳脂肪が油相中30重量%以上であると、コストが高くなるだけでなく、低温で硬くなり十分な展延性が得られない場合がある。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の油相は、油脂Aを7〜45重量%、油脂Bを10〜50重量%及び油脂Cを10〜75重量%含有することが好ましく、より好ましくは油脂Aを10〜40重量%、油脂Bを15〜45重量%及び油脂Cを15〜70重量%である。油相における油脂A、油脂B及び油脂Cの含有量が上述した範囲内にある場合には、得られるロールイン用乳化油脂組成物の組織や展延性がより良くなり、該ロールイン用乳化油脂組成物を使用した焼成品にきれいな層を形成することができ、かつジューシーな食感とすることができる。
更に、本発明のロールイン用乳化油脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、油相に油脂A、油脂B及び油脂C以外のその他の油脂を含有させてもよい。その他の油脂の配合量は、油相中、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下、更に好ましくは30重量%以下であり、ラード等が挙げられる。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物中における油相の含有量は、50〜95重量%であることが好ましく、より好ましくは55〜90重量%である。油相の含有量が50重量%未満であると、油中水型のロールイン用乳化油脂組成物を得ることが困難になる場合がある。一方、95重量%を超えると、水相が少なくなり、ロールイン用乳化油脂組成物の組織が硬くなる場合がある。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物は、必要に応じて乳化剤を添加しても良い。乳化剤としてはレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、シュガーエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよび酢酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酢酸酒石酸混合モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、リンゴ酸モノグリセリド等各種有機酸モノグリセリド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明においては上記の原料、添加物の他に、所望により、色素、抗酸化剤、香料などの油溶性成分、食塩、糖類、粉乳、発酵乳、増粘安定剤などの水溶性成分を使用することができる。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の調製法は、以下に例示するような、一般的な方法を採用することができる。設定された配合において、油脂および油脂に溶解する成分、たとえば油溶性乳化剤を油脂に溶解し油相とする。油相は、油脂が完全に溶解された状態とする。これは、油脂の融点に依存し、概ね55〜75℃である。一方、設定された配合において、水および水に溶解する成分、たとえば水溶性の風味素材などは水に混合し水相とする。なお、液糖を使用する場合など、水を使用しない配合においては、液糖に水溶性の成分を溶解ないし混合することになる。
油相および水相の準備が終了した後、油相を攪拌しながら水相を添加することで、油中水型に略乳化した「調合液」を得る。このとき、攪拌が不十分であったり、あるいは油相の温度が低すぎる場合は、乳化が反転する場合もあるので、十分に攪拌しかつ、十分な温度に保つ必要である。
調合液はポンプにより送液し、適宜殺菌装置等を通過させた後、油中水型乳化油脂組成物の製造装置へ供される。油中水型乳化油脂組成物の製造装置へ供される直前の段階で、調合液は溶解状態でかつ、40〜80℃である必要があり、より望ましくは50〜70℃であり、さらに望ましくは55〜65℃である。
本発明のロールイン用乳化油脂組成物の製造装置としては、冷却機能を有する各種のものを使用することができる。具体的には、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター等の掻き取り式急冷混和機を備えた装置をあげることができる。これらの装置により、一例として、調合液を1〜8℃/秒の速度で、冷却装置の出口で3〜20℃まで冷却する。冷却速度が遅すぎると、粒状結晶が発生しやすくなる場合があり、また冷却速度が速すぎると、不必要により大きな冷却エネルギーが必要となる場合がある。
冷却装置を出たロールイン用乳化油脂組成物は休止管に導入され、休止管出口に備えられた成型機により、シート状あるいはブロック状に成型される。このようにして得たロールイン用乳化油脂組成物の大きさは、成型機の形状により適宜設定することができる。成型後は包装、充填等の工程を経て冷蔵し、必要に応じてエージングを行う。なお、目標とする組織を得るために少なくとも24〜48時間程度の冷蔵時間を要する場合がある。
本発明の層状膨化小麦粉食品は、小麦粉を主原料とし水、塩などを加えて混捏し得られる小麦粉生地(ドウ)を薄く延ばし、これにロールイン用乳化油脂組成物を載せて折りたたみ、再び薄く延ばすことを繰り返して層状生地を作り、必要に応じ発酵、成形、焼成することにより得ることが出来る。このようにして得られる層状膨化小麦粉食品の具体例としてはデニッシュペストリー、クロワッサン、パイ等が例示できる。また、経時的な品質劣化が効果的に抑制されるため、数日間陳列・販売される製品において特に好適である。
以下、実施例等により本発明の実施形態をより具体的に記載する。
(油脂A)
パーム油(ヨウ素価52)60重量%、パームステアリン(ヨウ素価31)20重量%、パーム極度硬化油(ヨウ素価1以下)20重量%からなる配合油を、ナトリウムメチラートによりエステル交換を行い、さらにアセトン分別により高融点部と低融点部を除去した中融点画分を得て、油脂Aとした。得られた中融点画分Aは、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が13重量%、PPP含有量が5重量%、S2U含有量が75重量%及びSUS/SSUの重量比が0.5であり、構成脂肪酸中のラウリン酸、及びトランス酸含有量が0.5重量%未満、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.3であった。
油脂Bとしては、精製ナタネ油(「製菓用サラダ油」不二製油株式会社製)を使用した。
この精製ナタネ油は、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量及びPPP含有量が0重量%であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が0.5重量%未満、トランス酸含有量が1重量%、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.4であった。
(油脂C‐1)
ラウリン系油脂であるパーム核分別低融点部とパーム油を混合した後、触媒としてナトリウムメチラートを混合油に添加し、80℃、真空度20Torr、40分間攪拌してエステル交換反応を行った後、水洗、脱水し、通常の精製工程を施すことにより、エステル交換油脂C−1を得た。この油脂C−1は、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が22重量%、PPP含有量が3重量%であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が17重量%、トランス酸含有量が0.5重量%未満、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.1であった。
(油脂C−2)
油脂C−2としては、乳脂を使用した。この油脂C−2は、構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が4重量%、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.4であり、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が33重量%、PPP含有量が0.3重量%であった。ここで、乳脂は天然油脂であるため、トランス酸含有量は考慮しない。
(油脂C‐3)
ナタネ油、パーム核油、ハイエルシン菜種極度硬化油をランダムエステル交換した後、水洗、脱水し、沃素価0.5まで水素添加した。さらに精製を施して、エステル交換油脂C−3を得た。この油脂C−3は、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が100重量%、PPP含有量が0.5重量%未満であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が20重量%、トランス酸含有量が0.5重量%未満、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が8であった。
(油脂C−4)
油脂C−4としては、パーム核分別高融点部を使用した。この油脂C−4は、構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が55重量%、トランス酸含有量が0.5重量%未満、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.2であり、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が80重量%、PPP含有量が0.5重量%であった。
実施例1〜5、比較例1〜4
表1に示す配合において、以下に記載する「ロールイン用乳化油脂組成物の調製法」に従い、ロールイン用乳化油脂組成物を調製した。
表1 ロールイン用乳化油脂組成物の配合
Figure 0006467799
・ 単位は重量%である。
・ 乳化剤としては、飽和モノグリセリド(「エマルジーMS」理研ビタミン株式会社製)、大豆レシチン(「SLPペースト」辻製油株式会社製)を使用した。
「ロールイン用乳化油脂組成物の調製法」
1.油脂及び油脂に溶解する乳化剤を融解、混合して油相とした。
2.水及び水に溶解する成分を混合し水相とした。
3.油相を55〜70℃で攪拌しつつ水相を投入し、略乳化した。
4.掻き取り式急冷混和機「コンビネーター」、休止管、成型機を通してシート状のロールイン用乳化油脂組成物を得た。
5.3〜7℃の冷蔵庫にて保管した。
表2に記載の実施例1〜5及び表3に記載の比較例1〜4の油脂配合に従って、ロールイン用乳化油脂組成物を調製した。
表2 ロールイン用乳化油脂組成物の油脂配合
Figure 0006467799
・単位は重量%である。
・ラードは、精製ラードを使用した。このラードは、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が6.5重量%、PPP含有量が0.5重量%であり、構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が0.5重量%未満、トランス酸含有量が1.0重量%であり、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.5であった。

表3 ロールイン用乳化油脂組成物の油脂配合
Figure 0006467799
・単位は重量%である。
・エステル交換油Dは、パーム油、ハイエルシン菜種極度硬化油等をランダムエステル交換した、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が25重量%、PPP含有量が16重量%であり、構成脂肪酸中のラウリン酸、及びトランス酸含有量が0.5重量%未満、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.1であった。
・エステル交換油Eは、パーム低融点部、ハイエルシン菜種極度硬化油をランダムエステル交換した、構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が10重量%、PPP含有量が5重量%であり、構成脂肪酸中のラウリン酸、及びトランス酸含有量が0.5重量%未満、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.1であった。
表4 ロールイン用乳化油脂組成物の油相物性
Figure 0006467799
・ここで、油相とは油脂配合に乳化剤を加えたものである。
・St/Pは、構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比を示す。
・天然油脂である乳脂(油脂C-2)は、トランス酸含有量(%)を考慮していない。
調製した各種ロールイン用乳化油脂組成物を使用して、「クロワッサン調製試験法」によりクロワッサンの焼成を行った。
表5 クロワッサン生地配合
Figure 0006467799
・単位は重量部である。
・強力粉としては、日本製粉株式会社製「イーグル」を使用した
・練り込み用油脂としては、不二製油株式会社製「デリソフト」を使用した。
「クロワッサン調製試験法」
上表5に記載の小麦粉生地原料を練り上げ、28℃、湿度75%の庫内にて60分間発酵させた後、−18℃のフリーザーで60分間リタードをとった。次に、実施例1〜5及び比較例1〜4のロールイン用乳化油脂組成物(10℃で温調)を折り込み、リバースシーターで3つ折りを2回行った後、−7℃のフリーザーで60分間リタードをとり、リバースシーターで3つ折りを1回行った後、−7℃のフリーザーで45分間リタードをとり、リバースシーターで生地厚4mmまで延ばして成形し、32℃、湿度75%のホイロで60分間発酵させた後、庫内温度200℃のオーブンで16分間焼成し、クロワッサンを得た。これを室温で18〜24保管後に焼成品の評価を行った。
得られたロールイン用乳化油脂組成物については、製造時の充填適正、組織状態、ロールイン時の作業性の3項目を、焼成後のクロワッサンについては、外観(浮き)及び内層について、熟練作業者3名で評価を行い、合議にて最終結果とした。また、口溶けの評価は、10名のパネラーにより下記評価基準に従って官能評価を行なった。すべての評価基準において、◎、○が合格であり、すべての評価結果を表6にまとめた。

「ロールイン用乳化油脂組成物の評価」
充填適正の評価基準
◎ : 充填時の組織に十分な硬さがあり、安定した充填が可能
○ : 充填時の組織はやや軟らかいものの、充填が可能な範囲である
× : 充填時の組織が軟らかい又は不均一で、安定した充填が困難
組織状態の評価基準
◎ : 低温でも軟らかく滑らかで、コシもある
○ : 低温でやや硬いものの、脆さはなく滑らかさがあり、コシもある
× : 低温で硬くて脆い。
作業性の評価基準
◎ : 生地とともに非常によく伸び、割れもなく、良好な展延性を示す
○ : 割れずに生地とともに伸びており、許容範囲の展延性である
△ : 伸びがやや悪く、僅かに割れがみられて展延性が劣る
× : 伸びが悪く、割れが発生する

「焼成後のクロワッサン評価」
口溶けの評価基準 クロワッサンを実際に食して評価した。
◎ : 良好な口溶けで、非常にジューシー感がある
○ : 良好な口溶けで、ジューシー感がある
△ : 口溶けは許容範囲内であるが、ジューシー感はない
× : 口溶けが悪く、油性感がある。やや乾燥している感じでジューシー感はない
外観(浮き)及び内層の評価基準 内層はクロワッサンを切断して評価した。
◎ : 非常に浮きが良く、きれいな内層が形成されている
○ : 浮きが良く、きれいな内層が形成されている
△ : 浮いているが、不均一な内層である
× : 浮きが不十分で、目が詰まってパン目になっているところがあり、内層の出来も悪い
結果と考察
表6 ロールイン用乳化油脂組成物及び焼成後のクロワッサン(焼成品)の評価結果
Figure 0006467799
・比較例1は、製造時の充填適正、組織状態、低温での作業性、クロワッサンの外観、および内層は優れるものの、得られた焼成品の口溶けが劣り、ジューシーな食感を得ることができなかった。これは、エステル交換油の高融点部を除去した分別画分である本願発明の油脂Aではなく、単にエステル交換油を配合したため、油相のPPP含有量、St/P値及びSFC(35℃)の値が高くなってしまったためである。
・比較例2、3では、本願発明の油脂Aと油脂Bを組み合わせたが、油相の構成脂肪酸としてラウリン酸を規定量含有しないため、得られたロールイン用乳化油脂組成物の組織状態及び低温での良好な作業性が劣る結果であった。特に、比較例2は、実施例3の油相物性であるSFC値、PPP含有量及びSt/P値は同等である。しかし、構成脂肪酸であるラウリン酸を規定量含有せず、かつ構成トリグリセリド組成におけるX3含有量も規定量より少ないために、充填適正が悪く、組織状態、作業性も悪化しただけでなく、焼成品の浮きや層の出来が不十分で、ジューシーな食感も得られなかった。
・比較例4は、製造時の充填適正、組織状態、低温での作業性はいずれも良好で、クロワッサンの外観および内層も優れているものの、得られた焼成品の口溶けが劣り、ジューシーな食感を得ることができなかった。これは、乳脂を使用した場合でも、比較例1と同様に高融点部を除去していないエステル交換油を配合したため、油相のPPP含有量及びSFC(35℃)の値が高くなってしまったためである。
・一方、実施例にあるとおり、油相の構成トリグリセリド組成におけるX3含有量及びPPP含有量、St/P値(構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比)、ラウリン酸及びトランス酸含有量の各値が、特定条件を満たした場合に初めて、製造時の充填適正、組織状態、低温での作業性、クロワッサンの外観、及び内層が優れ、かつ得られたクロワッサンは良好な口溶けとジューシーな食感を示していた。

Claims (5)

  1. 油相に、下記に示す油脂A、油脂B及び油脂Cを含有し、かつ下記の(i)〜(v)の条件をすべて満たすことを特徴とする、ロールイン用乳化油脂組成物。
    油脂Aは、構成トリグリセリド組成におけるSUS/SSUの重量比が0.4〜0.8、SSS含有量が4〜20重量%、S2U含有量が50〜80重量%であり、構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比が0.1〜0.4である、エステル交換油の高融点部を除去した分別画分
    油脂Bは、液状植物油
    油脂Cは、ラウリン酸を含有する油脂であり、
    (i)油相の構成トリグリセリド組成におけるX3含有量が8〜21重量%
    (ii)油相の構成トリグリセリド組成におけるPPP含有量が3重量%未満
    (iii)油相の構成脂肪酸中のステアリン酸/パルミチン酸の重量比(St/P)が0.2〜1.0
    (iv)油相の構成脂肪酸としてラウリン酸含有量が2〜18重量%
    (v)油相の構成脂肪酸としてトランス酸含有量が5重量%未満
    (但し、X : 炭素数が4〜24の偶数である飽和脂肪酸、P : パルミチン酸、St : ステアリン酸を意味する。S : 炭素数が14〜24の飽和脂肪酸、U : 炭素数が14〜24の不飽和脂肪酸を意味する。以下、同じ。)
  2. 油相のSFCが10℃で35〜60%、35℃で7%以下である、請求項1記載のロールイン用乳化油脂組成物。
  3. 油相に、油脂Aを7〜45重量%、油脂Bを10〜50重量%及び油脂Cを10〜75重量%含有する、請求項1記載のロールイン用乳化油脂組成物。
  4. 油脂Aが、パーム油、及び/又はパーム分別油に、構成脂肪酸中にステアリン酸を25重量%以上含有する油脂を配合して、エステル交換した後、高融点部及び低融点部を除去した中融点画分である、請求項1または3記載のロールイン用乳化油脂組成物。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載のロールイン用乳化油脂組成物を使用した、層状膨化小麦粉食品。
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