JP6787011B2 - 油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、特有の物性を有する油脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、ペストリー等の多層構造を有するベーカリー製品の作製時に折り生地に使用されるロールイン用の油脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、口溶けが良く、ジューシー感を有するペストリー等のベーカリー製品を製造することができるロールイン用の油脂組成物に関する。
パイ、デニッシュ、クロワッサンに代表されるペストリーは、特有の食感を有するために消費者から広く支持されている。ペストリーとは、一般のパンとは異なり、薄い生地膜から形成される多層構造を有するベーカリー製品である。
ペストリーの製造過程では、小麦粉、砂糖、食塩、イースト、水等を練込用油脂とともに捏和して作製したパン生地に、シート状に成形されたロールイン用の油脂組成物を乗せ、その上にパン生地を折り返してロールイン用油脂組成物を挟み込み、さらに、このロールイン用油脂組成物を挟み込んだパン生地に対して、伸展と折りたたみの操作を繰り返すことにより、パン生地の多層構造を形成する。
ロールイン用の油脂組成物は、上述したように、生地の間に挟まれた状態で伸展と折りたたみの操作を繰り返すため、軟化して生地に練り込まれないように、一般的に融点の高い油脂組成物が利用される。しかし、融点の高い油脂組成物は、口溶けが悪くなるという課題があった。一方で、バターを使用したベーカリー製品、特にバターをロールインしたペストリーでは、濃厚なバターの風味とともに、咀嚼時に口中に広がるジューシー感を得ることができる。このジューシー感が油脂本来のおいしさとして注目されてきている。なお、「ジューシー感」とは、ベーカリー製品を咀嚼した際に、ベーカリー製品から油脂が溶けにじみ出てくる食感である。
また、油脂の加工技術では、トランス脂肪酸を低減する加工方法としてエステル交換油が注目されている。エステル交換油は、種々の油脂を混合し、触媒や酵素の働きによってこれらの油脂の脂肪酸を交換するという技術である。エステル交換油の技術は、原料となる油脂の組み合わせにより、様々な物性を有する新たな油脂組成物を得ることができる。そして、近年、このエステル交換油の技術を利用して、ペストリーのジューシー感を高める開発が行われている。
例えば、特許文献1には、生地浮きが良好で、食したときのジューシー感が良好な層状小麦粉膨化食品を得られるロールイン用油脂組成物であって、パーム核油40質量部とパーム油60質量部のエステル交換油や、パーム油65質量部と菜種油35質量部のエステル交換油を配合した油脂組成物が開示されている。
特許文献2には、層状膨化小麦粉食品において、きれいな層を形成し、かつ良好な口溶けとジューシー感を発現するロールイン用乳化油脂組成物であって、パーム油60重量%とパームステアリン20重量%とパーム極度硬化油20重量%のエステル交換油、菜種油、及び、パーム核分別低融点部とパーム油のエステル交換油を配合した油脂組成物が開示されている。
特許文献3には、生地浮きが良好で、製造後長時間にわたってサクサクとした食感を維持でき、且つ口溶けの良好な層状小麦粉膨化食品をえることのできるロールイン用に適した可塑性油脂組成物であって、パーム核油40質量部とパーム油60質量部のエステル交換油、パームステアリン50質量部とパーム核オレイン50質量部のエステル交換油、又は、パーム核ステアリン40質量部とパーム油ハードステアリン60質量部のエステル交換油、及び、パームオレイン65質量部と菜種油35質量部のエステル交換油、又は、ハイオレイックヒマワリ油70質量部と菜種油の極度硬化油30質量部のエステル交換油を配合した油脂組成物が開示されている。
特許文献4には、ソフトな食感で、口溶けや呈味性も良好な焼成品を得ることができ、かつ、生地を作製する際の作業性が良好な層状食品用油脂組成物であって、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満とパーム系油脂70質量%超95質量%以下のエステル交換油を配合した油脂組成物が開示されている。
特許文献5には、生地との伸展性が良好でサクさのある食感が得られ、層の形成状態が良くボリュームのある焼成品を得ることができ、かつ液状油の染みだしや層状食品用可塑性油脂の硬さ変化が少なく高温や経時に対する安定性に優れた層状食品用油脂組成物であって、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満とパーム系油脂70質量%超95質量%以下のエステル交換油を配合した油脂組成物が開示されている。
特開2014−140346号公報 特開2016−21941号公報 特開2014−36608号公報 特開2015−123016号公報 特開2015−142570号公報
従来の油脂組成物では、ジューシー感を改善するべく、種々のエステル交換油が検討されてきたが、未だ不十分であり、さらなるジューシー感の向上が求められている。また、ジューシー感の向上を検討するにあたっては、包材を汚し外観を損ねるベーカリー製品からの油の染みだしや、ロールイン用油脂組成物として伸展性や焼成品の浮き等が低下しないように留意する必要がある。
そこで、本発明の課題は、ジューシー感に優れ、常温(25℃)において油の染みだしのないベーカリー製品を得るための油脂組成物を提供することにある。また、ロールイン用油脂組成物としての伸展性や焼成品の浮きにおいて、十分な機能を有するロールイン用油脂組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のエステル交換油2種と液状油脂を特定の配合量で配合することにより、ジューシー感に優れ、常温において油の染みだしのないベーカリー製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔3〕である。
〔1〕
下記のエステル交換油(A)を30〜85質量%、エステル交換油(B)を5〜25質量%、および液状油脂(C)を5〜35質量%含有する油脂組成物。
エステル交換油(A):融点が32〜36℃のエステル交換油であり、25℃における固体脂含量が8〜18%、かつ、35℃における固体脂含量が0〜5%であるエステル交換油
エステル交換油(B):融点が38〜42℃であり、25℃における固体脂含量が49〜59%、かつ、35℃における固体脂含量が7〜17%であるエステル交換油
液状油脂(C):融点が0℃以下の油脂
〔2〕
〔1〕に記載の油脂組成物を含有する、ロールイン用油脂組成物。
〔3〕
〔2〕に記載のロールイン用油脂組成物を含有する、ペストリー。
本発明の油脂組成物によれば、ジューシー感に優れ、常温において油の染みだしのないベーカリー製品を得るための油脂組成物を提供することができる。また、ロールイン用油脂組成物としての伸展性や焼成品の浮きにおいて、十分な機能を有するロールイン用油脂組成物を提供することができる。
〔油脂組成物〕
本発明の油脂組成物は、エステル交換油(A)、エステル交換油(B)および液状油脂(C)を含有し、エステル交換油(A)を30〜85質量%、エステル交換油(B)を50〜25質量%、液状油脂(C)を5〜35質量%含有することを特徴とするものである。以下に、これらの油脂について詳述する。
[エステル交換油(A)]
エステル交換油(A)は、融点が32〜36℃のエステル交換油であり、25℃における固体脂含量が8〜18%、かつ、35℃における固体脂含量が0〜5%であるエステル交換油である。
エステル交換油(A)の融点は、32〜36℃であり、好ましくは33〜35℃である。融点の測定は、基準油脂分析試験法「2.2.4.2 融点(上昇融点)」に準じて測定する。なお、本発明における融点は、この方法に従い測定する。
エステル交換油(A)の25℃における固体脂含量は、8〜18%であり、好ましくは10〜16%である。また、35℃における固体脂含量は、0〜5%であり、好ましくは0.1〜3%である。25℃から35℃における固体脂含量の変化量「固体脂含量(25℃)−固体脂含量(35℃)」は、好ましくは5〜20%であり、より好ましくは8〜15%である。
固体脂含量の測定は、基準油脂分析試験法「2.2.9 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定する。測定装置は、「SFC−2000R」(アステック株式会社製)を使用する。なお、本発明における固体脂含量は、この方法に従い測定する。
エステル交換油(A)の脂肪酸組成は、特に制限されないが、例えば、ラウリン酸(C12:0)を好ましくは5〜15質量%、より好ましくは7〜13質量%含有し、パルミチン酸(C16:0)を好ましくは20〜40質量%、より好ましくは25〜35質量%含有し、オレイン酸(C18:1)を好ましくは25〜45質量%、より好ましくは30〜40質量%含有する。
エステル交換油(A)の製造方法は、複数の原料油脂を混合して混合油を調製し、この混合油を触媒や酵素等を用いてエステル交換することにより得られる。
エステル交換油(A)の製造に使用される原料油脂としては、特に制限されないが、例えば、パルミチン酸を30〜50質量%及びオレイン酸を30〜50質量%含有する油脂(以下、「原料油脂a1」という。)と、オレイン酸を20〜90質量%含有する油脂(以下、「原料油脂a2」という。)と、ラウリン酸を30〜60質量%含有する油脂(以下、「原料油脂a3」という。)を混合した混合油等が挙げられる。
上記原料油脂a1としては、例えば、パーム油、パームオレイン、牛脂、豚脂等が例示される。
上記原料油脂a2としては、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイック紅花油、オリーブ油等が例示される。
上記原料油脂a3としては、例えば、ヤシ油、パーム核油及びそれらの硬化油等が例示される。
エステル交換に供する混合油における原料油脂a1の含有量は、好ましくは50〜75質量%であり、より好ましくは55〜68質量%であり、特に好ましくは60〜65質量%であり、原料油脂a2の含有量は、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは5〜15質量%であり、特に好ましくは7〜13質量%であり、原料油脂a3の含有量は、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは15〜45質量%であり、特に好ましくは20〜35質量%である。
エステル交換の方法は、特に制限されないが、例えば、混合油に触媒としてナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒、又はリパーゼ等の酵素を用いて反応させる方法が挙げられる。エステル交換は、位置特異的なエステル交換であっても、ランダムエステル交換であってもよいが、ランダムエステル交換が好ましい。
本発明の油脂組成物におけるエステル交換油(A)の含有量は、30〜85質量%であり、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。また、上限としては、好ましくは80質量%以下である。エステル交換油(A)が30質量%未満の場合には、ペストリーの十分なボリュームやジューシー感が得られず、一方、85質量%を超える場合には、ロールイン油脂の伸展性が低下する。
[エステル交換油(B)]
エステル交換油(B)は、融点が38〜42℃であり、25℃における固体脂含量が49〜59%、かつ、35℃における固体脂含量が7〜17%である。
エステル交換油(B)の融点は、38〜42℃であり、好ましくは39〜41℃である。
エステル交換油(B)の25℃における固体脂含量は、49〜59%であり、好ましくは51〜57%である。また、35℃における固体脂含量は、7〜17%であり、好ましくは9〜15%である。
25℃から35℃における固体脂含量の変化量「固体脂含量(25℃)−固体脂含量(35℃)」は、好ましくは25〜60%であり、より好ましくは30〜55%であり、更に好ましくは35〜50%である。
エステル交換油(B)の脂肪酸組成は、特に制限されないが、例えば、ラウリン酸(C12:0)を好ましくは20〜50質量%、より好ましくは25〜45質量%含有し、ミリスチン酸(C14:0)を好ましくは5〜20質量%、より好ましくは7〜18質量%含有し、ステアリン酸(C18:0)を好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%含有し、べへン酸(C22:0)を好ましくは5〜20質量%、より好ましくは7〜18質量%含有する。
エステル交換油(B)の製造方法は、複数の原料油脂を混合してエステル交換することにより得られる。エステル交換油(B)の製造に使用される原料油脂としては、特に制限されないが、例えば、べへン酸を40〜60質量%及びステアリン酸を30〜50質量%含有する油脂、ステアリン酸を70〜100質量%含有する油脂、ステアリン酸を35〜55質量%及びパルミチン酸を35〜55質量%含有する油脂等(以下、「原料油脂b1」という。)と、ラウリン酸を30〜60質量%含有する油脂(以下、「原料油脂b2」という。)を混合した混合油等が挙げられる。
上記原料油脂b1としては、例えば、ハイエルシン菜種油、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、オリーブ油、米ぬか油、ごま油、ぶどう油、パーム油等の極度硬化油が例示される。
上記原料油脂b2としては、例えば、ヤシ油、パーム核油及びそれらの硬化油等が例示される。
エステル交換に供する混合油における原料油脂b1の含有量は、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは15〜35質量%であり、特に好ましくは20〜30質量%であり、原料油脂b2の含有量は、好ましくは60〜90質量%であり、より好ましくは65〜85質量%であり、特に好ましくは70〜80質量%である。
エステル交換の方法は、特に制限されず、例えば、混合油に触媒としてナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒、又はリパーゼ等の酵素を用いて反応させる方法が挙げられる。エステル交換は、位置特異的なエステル交換であっても、ランダムエステル交換であってもよいが、ランダムエステル交換が好ましい。
本発明の油脂組成物におけるエステル交換油(B)の含有量は、5〜25質量%である。エステル交換油(B)が5質量%未満の場合には、ペストリーのボリューム低下や油脂の染み出しが起こりやすく、一方、25質量%を超える場合には、ロールイン油脂の伸展性が低下しやすい。
[液状油脂(C)]
液状油脂(C)は、融点が0℃以下の油脂である。例えば、菜種油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、紅花油、ゴマ油、綿実油、米油、落花生油、亜麻仁油等、及び、これらの油脂を複数種類配合した混合油などが挙げられる。また、融点が0℃以下であれば、分別油やエステル交換油でもよい。
本発明の油脂組成物における液状油脂(C)の含有量は、5〜35質量%であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以下である。液状油脂(C)が5質量%未満の場合には、ロールイン油脂の伸展性が低下しやすく、一方、35質量%を超える場合には、ペストリーのボリューム低下が起こりやすい。
[その他の油脂]
本発明の油脂組成物は、上記エステル交換油(A)、(B)および液状油脂(C)以外のその他の油脂を添加してもよい。その他の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油ヤシ油、豚脂、牛脂等やこれらの分別油、また菜種硬化油等の硬化油、さらに上記エステル交換油(A)および(B)以外のエステル交換油のうち融点が0℃を超えるもの等が例示される。
本発明の油脂組成物におけるその他の油脂の含有量は、特に制限されないが、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
[油脂組成物の特性]
本発明の油脂組成物は、エステル交換油(B)の作用により、25℃から35℃に変化すると固体脂含量が急激に低下するという作用を有する。そのため、本発明の油脂組成物によれば、口溶けのよい油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の油脂組成物は、加熱溶解後、室温(25℃)に戻した際に、液油の分離がないという特性を有する。この特性によれば、ベーカリー製品等からの油の染みだしがなくなるという効果を奏し、包材への油染み等の汚れや見た目の悪さ、油っぽいイメージ等の製品価値の低下を防ぐことができる。
[油脂組成物の用途]
本発明の油脂組成物の用途としては、例えば、パイ、デニッシュ、クロワッサン等のペストリー、及びこれらの生地を利用した食パンやドーナツ、たい焼きやベーグル等のバラエティーブレッド、さらにブリオッシュ、あんパン、レーズンパン、メロンパン等の菓子パン、ホットドック、ハンバーガー等の調理パンなどが挙げられる。口溶けが良く、油の染みだしが少ないという作用効果やロールイン用途に適する物性を備えている点を鑑みれば、好ましくはペストリーである。
本発明の油脂組成物は、ロールイン用油脂組成物として使用すると、伸展性に優れ、また、生地の伸展操作等における機械的な加圧等に対する耐性も有するため、生地と油脂による良好な多層構造が形成され、良好な層状膨化構造を有するペストリーを調製することができる。
〔ロールイン用油脂組成物〕
本発明のロールイン用油脂組成物は、上記油脂組成物を含有することを特徴とするものであり、層状膨化構造を有するペストリーに利用するものである。
本発明のロールイン用油脂組成物によれば、上述したとおり、ペストリーの製造における作業性を損なわず、優れた層状膨化構造を有するペストリーを調製することができるという効果を奏する。
ロールイン用油脂組成物における上記油脂組成物の含有量は、特に制限されないが、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは70〜100質量%である。
ロールイン用油脂組成物は、水相を実質的に含有しない形態(水相の含有量が0.5質量%以下)、水相を含有する形態とすることができる。さらに、水相を含有する形態としては、油中水型、水中油型等の形態が挙げられる。ジューシー感の向上やロールイン適性、また生地物性への影響が少ないという観点から、油中水型とすることが好ましい。
ロールイン用油脂組成物には、上記油脂組成物の他、乳化剤、酸化防止剤、動植物蛋白、乳、乳製品、澱粉、糖類、塩類、増粘多糖類、酸味料、酵素、pH調整剤等の安定剤、香辛料、呈味素材、フレーバー等の原料を配合してもよい。
ロールイン用油脂組成物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。例えば、水相を含有する形態のものであれば、上記の油脂組成物を含有する油相と水相とを、適宜に加熱混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター等の冷却混合機により急冷捏和することにより得ることができる。また、水相を含有しない形態のものであれば、上記の油脂組成物を含有する油相を加熱後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター等の冷却混合機により急冷捏和し、必要に応じてテンパリングすることにより得ることができる。
ロールイン用油脂組成物の形状は、特に制限されないが、例えば、シート状、ブロック状、円柱状、直方体状、ペンシル状等が挙げられる。ペストリーの製造に使用する際に、伸展と折りたたみの操作に利用しやすいという観点から、シート状が好ましい。シート状とした場合のサイズとしては、特に制限されず、ペストリーの製造設備に応じて長さや幅、厚みなど適宜調整することができる。
〔ペストリー〕
本発明のペストリーは、層状膨化構造を形成したベーカリー製品であり、上記ロールイン用油脂組成物を含有することを特徴とする。例えば、パイ、デニッシュ、クロワッサン等が挙げられる。
ペストリーの製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。例えば、生地の間に、シート状に成形された本発明のロールイン用油脂組成物を挟み込み、その後、伸展と折りたたみを繰り返すことによって生地中にロールイン用油脂組成物を層状に折り込んで、生地とロールイン用油脂組成物の薄い層を何層にも作り上げる。そして、この層状の生地を焼成することにより、生地が膨化してペストリーを得ることができる。
ペストリーにおけるロールイン用油脂組成物の配合量は、焼成品の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、生地に配合される穀粉100質量部に対して、好ましくは20〜120質量部であり、より好ましくは20〜100質量部である。
生地は穀粉を主成分とし、穀粉としては、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等が挙げられる。
生地には、穀粉以外の他、通常、ベーカリー製品に使用される原料を配合してもよい。穀粉以外の原料としては、例えば、水、糖、糖アルコール、卵、卵加工品、澱粉、食塩、乳化剤、乳化起泡剤、チーズ、生クリーム、合成クリーム、ヨーグルト、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエー、カゼイン、牛乳、濃縮乳、合成乳、可塑性油脂、イースト、イーストフード、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆蛋白、膨張剤、甘味料、調味料、香辛料、着色料、フレーバー等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例中の配合量と配合割合は質量基準である。
(エステル交換油の作製)
表1に示す原料油脂の組成に従って、混合油を調製し、以下の方法でエステル交換を行った。得られたエステル交換油の試料名を、それぞれ「A−1」、「A−2」、「B−1」、「B−2」、「Z−1」、「Z−2」とした。「Z−2」は、パーム核油極度硬化油とパーム油極度硬化油をエステル交換後に、パーム油を混合して調整した。なお、「A−1」、「A−2」は、本発明のエステル交換油(A)に相当し、「B−1」、「B−2」は、本発明のエステル交換油(B)に相当するものである。
エステル交換方法:反応容器に原料油脂の混合油を仕込み、90〜95℃、真空下で攪拌し、油脂中の水分が100ppm以下になるまで脱水した。その後、油脂を85〜90℃まで冷却し、アルカリ触媒(ナトリウムメチラート)を0.1〜0.2質量部加え、30〜60分間反応させた。触媒除去のため、反応液に70℃の温水を加え、攪拌して洗浄した後、静置して油層と水層を分離した。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、窒素気流中、攪拌しつつ加熱し、100〜120℃で水分が蒸発しなくなるまで脱水した。次いで、活性白土を3質量部加え、15分間脱色した後、濾過した。
Figure 0006787011

(エステル交換油の分析評価)
得られたエステル交換油について、上昇融点、5〜35℃における固体脂含量、及び、脂肪酸組成を測定した。各項目の測定方法は、以下のとおりである。
上昇融点:基準油脂分析試験法「2.2.4.2 融点(上昇融点)」に準じて測定した。
固体脂含量:基準油脂分析試験法「2.2.9 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定した。測定装置は、「SFC−2000R」(アステック株式会社製)を用いた。
脂肪酸組成:基準油脂分析試験法「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成」に準じて測定した。ガスクロマトグラフィー装置は、「Agilent 6850」(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、カラムは、「DB−WAX」(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。
測定結果を表2に示す。
Figure 0006787011

表2の固体脂含量を見ると、「エステル交換油B−1、B−2」は、25℃(常温)から35℃にかけて急激に固体脂含量が低下している。すなわち、「エステル交換油B−1、B−2」は、口溶けのよい性質を有していることがわかる。
(油脂組成物およびロールイン用油脂組成物の作製)
表3、4に示す配合割合に従って、油脂を混合して、実施例1〜10および比較例1〜7の油脂組成物を調製した。
更に、実施例および比較例の油脂組成物を用いて、以下に示す方法により、ロールイン用油脂組成物を作製した。
ロールイン用油脂組成物の作製方法:実施例1〜10および比較例1〜7の油脂組成物100質量部に対し、モノグリセリン脂肪酸エステル0.3質量部、大豆レシチン0.3質量部、香料0.3質量部、およびβ−カロチンを適量添加し、70℃に加熱し油相部とした。この油相部に対し、油脂組成物100質量部に対して水20質量部、食塩1質量部、脱脂粉乳1質量部となるように調整した水相部を添加し、70℃に加熱しながらプロペラ攪拌機で攪拌し乳化した。これをコンビネーターにて急冷捏和し、レスティングチューブを通した後、シート状に成形し充填を行い、シート状ロールイン用油脂組成物を得た。
(デニッシュの作製)
上記実施例1〜10および比較例1〜7のロールイン用油脂組成物を用いて、以下に示す方法により、デニッシュを作製した。
デニッシュの作製方法:以下に示す配合に従い、デニッシュの生地を作製した。ミキサーボールに全ての原料を入れ、低速3分、中高速4分ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は25℃とし、−3℃の恒温庫に生地を入れ2時間リタードを取った。生地100質量部に対して28質量部の割合で実施例および比較例で得たロールイン用油脂組成物を使用して折り込み、4つ折りを1回、3つ折りを1回行い、−3℃の恒温庫で数時間寝かせてリタードを取った。リタード後、3mmまで圧延した後、9cm四方に分割、俵成型し、33℃のホイロに50分間入れた後、210℃のオーブンで12分間焼成してデニッシュを得た。
デニッシュ生地の配合:
強力粉 100質量部
砂糖 7質量部
食塩 1質量部
脱脂粉乳 2質量部
イーストフード 0.1質量部
イースト 5質量部
ショートニング 5質量部
全卵 5質量部
水 51質量部
(油脂組成物およびロールイン用油脂組成物の評価)
実施例および比較例の油脂組成物、ロールイン用油脂組成物について、「加熱溶解後の25℃における状態」、ロールイン時の「伸展性」、及びデニッシュの「ジューシー感」、「焼成品の浮き」を評価した。これらの評価方法を以下に示す。
<加熱溶解後の25℃における状態>
実施例および比較例の各ロールイン用油脂組成物を150mL用の透明瓶に入れ、80℃で加熱溶解した後、静置して自然放熱により25℃に戻した。25℃、24時間後における状態を次の基準により評価した。評価結果を表3、4の下段の「25℃における状態(加熱後)」の欄に示す。
◎:液状油の分離(染み出し)がない
○:液状油の分離(染み出し)がわずか
△:液状油の分離(染み出し)があり
×:液状油の分離(染み出し)が多い
<伸展性>
上記方法にてデニッシュを作製する際に、4つ折りおよび成型時のロールイン用油脂組成物の伸展性について次の基準により評価した。評価結果を表3、4の下段の「伸展性(作業性)」の欄に示す。
◎:生地に割れが生じず生地と同様に良好に伸展する。
○:生地に割れが生じず伸展する。
△:生地に若干割れが発生する。
×:生地に割れが多く発生する。
<ジューシー感>
焼成後1日間、室温条件下で保管したデニッシュを15名のパネラーにて官能評価を行い、次の基準により評価した。評価結果を表3、4の下段の「ジューシー感」の欄に示す。
◎:15名中13名以上が、口溶けが良くジューシーさを感じると判断した。
○:15名中8〜12名以上が、口溶けが良くジューシーさを感じると判断した。
△:15名中3〜7名以上が、口溶けが良くジューシーさを感じると判断した。
×:15名中2名以下が、口溶けが良くジューシーさを感じると判断した。
<焼成品の浮き>
焼成後室温に冷却したデニッシュを「3D Laser Volume Measurement Selnac Win VM2100」(Astex社製)を使用し、比容積を測定した。測定結果について次の基準により評価した。評価結果を表3、4の下段の「焼成品の浮き」の欄に示す。
◎:比容積4.0以上
○:比容積3.5以上〜4.0未満
△:比容積3.0以上〜3.5未満
×:比容積3.0未満
Figure 0006787011

表3を見ると、本発明で規定したロールイン油脂組成物の実施例1〜10では25℃における油脂の染み出しがなく、伸展性やデニッシュのジューシー感や浮きが優れていることがわかる。
Figure 0006787011

表4を見ると、本発明で規定外のロールイン油脂組成物の比較例1〜7では25℃における油脂の染み出しや伸展性、デニッシュのジューシー感や浮きのいずれかの評価が劣ってしまうことがわかる。

Claims (2)

  1. 下記のエステル交換油(A)を30〜85質量%、エステル交換油(B)を5〜25質量%、および液状油脂(C)を5〜35質量%含有する油脂組成物を含有する、ロールイン用油脂組成物
    エステル交換油(A):ヤシ油、パーム核油又はそれらの硬化油を原料油脂として含有するエステル交換油であって、ラウリン酸を5〜15質量%含有し、融点が32〜36℃であり、25℃における固体脂含量が8〜18%、かつ、35℃における固体脂含量が0〜5%であるエステル交換油
    エステル交換油(B):ヤシ油、パーム核油又はそれらの硬化油を原料油脂として含有するエステル交換油であって、ラウリン酸を20〜50質量%含有し、融点が38〜42℃であり、25℃における固体脂含量が49〜59%、かつ、35℃における固体脂含量が7〜17%であるエステル交換油
    液状油脂(C):融点が0℃以下の油脂
  2. 請求項に記載のロールイン用油脂組成物を含有する、ペストリー。
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