JP6787011B2 - 油脂組成物 - Google Patents
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Description
ペストリーの製造過程では、小麦粉、砂糖、食塩、イースト、水等を練込用油脂とともに捏和して作製したパン生地に、シート状に成形されたロールイン用の油脂組成物を乗せ、その上にパン生地を折り返してロールイン用油脂組成物を挟み込み、さらに、このロールイン用油脂組成物を挟み込んだパン生地に対して、伸展と折りたたみの操作を繰り返すことにより、パン生地の多層構造を形成する。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔3〕である。
下記のエステル交換油(A)を30〜85質量%、エステル交換油(B)を5〜25質量%、および液状油脂(C)を5〜35質量%含有する油脂組成物。
エステル交換油(A):融点が32〜36℃のエステル交換油であり、25℃における固体脂含量が8〜18%、かつ、35℃における固体脂含量が0〜5%であるエステル交換油
エステル交換油(B):融点が38〜42℃であり、25℃における固体脂含量が49〜59%、かつ、35℃における固体脂含量が7〜17%であるエステル交換油
液状油脂(C):融点が0℃以下の油脂
〔2〕
〔1〕に記載の油脂組成物を含有する、ロールイン用油脂組成物。
〔3〕
〔2〕に記載のロールイン用油脂組成物を含有する、ペストリー。
本発明の油脂組成物は、エステル交換油(A)、エステル交換油(B)および液状油脂(C)を含有し、エステル交換油(A)を30〜85質量%、エステル交換油(B)を50〜25質量%、液状油脂(C)を5〜35質量%含有することを特徴とするものである。以下に、これらの油脂について詳述する。
エステル交換油(A)は、融点が32〜36℃のエステル交換油であり、25℃における固体脂含量が8〜18%、かつ、35℃における固体脂含量が0〜5%であるエステル交換油である。
固体脂含量の測定は、基準油脂分析試験法「2.2.9 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定する。測定装置は、「SFC−2000R」(アステック株式会社製)を使用する。なお、本発明における固体脂含量は、この方法に従い測定する。
エステル交換油(A)の製造に使用される原料油脂としては、特に制限されないが、例えば、パルミチン酸を30〜50質量%及びオレイン酸を30〜50質量%含有する油脂(以下、「原料油脂a1」という。)と、オレイン酸を20〜90質量%含有する油脂(以下、「原料油脂a2」という。)と、ラウリン酸を30〜60質量%含有する油脂(以下、「原料油脂a3」という。)を混合した混合油等が挙げられる。
上記原料油脂a2としては、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイック紅花油、オリーブ油等が例示される。
上記原料油脂a3としては、例えば、ヤシ油、パーム核油及びそれらの硬化油等が例示される。
エステル交換油(B)は、融点が38〜42℃であり、25℃における固体脂含量が49〜59%、かつ、35℃における固体脂含量が7〜17%である。
25℃から35℃における固体脂含量の変化量「固体脂含量(25℃)−固体脂含量(35℃)」は、好ましくは25〜60%であり、より好ましくは30〜55%であり、更に好ましくは35〜50%である。
上記原料油脂b2としては、例えば、ヤシ油、パーム核油及びそれらの硬化油等が例示される。
液状油脂(C)は、融点が0℃以下の油脂である。例えば、菜種油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、紅花油、ゴマ油、綿実油、米油、落花生油、亜麻仁油等、及び、これらの油脂を複数種類配合した混合油などが挙げられる。また、融点が0℃以下であれば、分別油やエステル交換油でもよい。
本発明の油脂組成物は、上記エステル交換油(A)、(B)および液状油脂(C)以外のその他の油脂を添加してもよい。その他の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油ヤシ油、豚脂、牛脂等やこれらの分別油、また菜種硬化油等の硬化油、さらに上記エステル交換油(A)および(B)以外のエステル交換油のうち融点が0℃を超えるもの等が例示される。
本発明の油脂組成物は、エステル交換油(B)の作用により、25℃から35℃に変化すると固体脂含量が急激に低下するという作用を有する。そのため、本発明の油脂組成物によれば、口溶けのよい油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の油脂組成物は、加熱溶解後、室温(25℃)に戻した際に、液油の分離がないという特性を有する。この特性によれば、ベーカリー製品等からの油の染みだしがなくなるという効果を奏し、包材への油染み等の汚れや見た目の悪さ、油っぽいイメージ等の製品価値の低下を防ぐことができる。
本発明の油脂組成物の用途としては、例えば、パイ、デニッシュ、クロワッサン等のペストリー、及びこれらの生地を利用した食パンやドーナツ、たい焼きやベーグル等のバラエティーブレッド、さらにブリオッシュ、あんパン、レーズンパン、メロンパン等の菓子パン、ホットドック、ハンバーガー等の調理パンなどが挙げられる。口溶けが良く、油の染みだしが少ないという作用効果やロールイン用途に適する物性を備えている点を鑑みれば、好ましくはペストリーである。
本発明のロールイン用油脂組成物は、上記油脂組成物を含有することを特徴とするものであり、層状膨化構造を有するペストリーに利用するものである。
本発明のロールイン用油脂組成物によれば、上述したとおり、ペストリーの製造における作業性を損なわず、優れた層状膨化構造を有するペストリーを調製することができるという効果を奏する。
本発明のペストリーは、層状膨化構造を形成したベーカリー製品であり、上記ロールイン用油脂組成物を含有することを特徴とする。例えば、パイ、デニッシュ、クロワッサン等が挙げられる。
表1に示す原料油脂の組成に従って、混合油を調製し、以下の方法でエステル交換を行った。得られたエステル交換油の試料名を、それぞれ「A−1」、「A−2」、「B−1」、「B−2」、「Z−1」、「Z−2」とした。「Z−2」は、パーム核油極度硬化油とパーム油極度硬化油をエステル交換後に、パーム油を混合して調整した。なお、「A−1」、「A−2」は、本発明のエステル交換油(A)に相当し、「B−1」、「B−2」は、本発明のエステル交換油(B)に相当するものである。
エステル交換方法:反応容器に原料油脂の混合油を仕込み、90〜95℃、真空下で攪拌し、油脂中の水分が100ppm以下になるまで脱水した。その後、油脂を85〜90℃まで冷却し、アルカリ触媒(ナトリウムメチラート)を0.1〜0.2質量部加え、30〜60分間反応させた。触媒除去のため、反応液に70℃の温水を加え、攪拌して洗浄した後、静置して油層と水層を分離した。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、窒素気流中、攪拌しつつ加熱し、100〜120℃で水分が蒸発しなくなるまで脱水した。次いで、活性白土を3質量部加え、15分間脱色した後、濾過した。
得られたエステル交換油について、上昇融点、5〜35℃における固体脂含量、及び、脂肪酸組成を測定した。各項目の測定方法は、以下のとおりである。
上昇融点:基準油脂分析試験法「2.2.4.2 融点(上昇融点)」に準じて測定した。
固体脂含量:基準油脂分析試験法「2.2.9 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定した。測定装置は、「SFC−2000R」(アステック株式会社製)を用いた。
脂肪酸組成:基準油脂分析試験法「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成」に準じて測定した。ガスクロマトグラフィー装置は、「Agilent 6850」(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、カラムは、「DB−WAX」(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。
測定結果を表2に示す。
表3、4に示す配合割合に従って、油脂を混合して、実施例1〜10および比較例1〜7の油脂組成物を調製した。
更に、実施例および比較例の油脂組成物を用いて、以下に示す方法により、ロールイン用油脂組成物を作製した。
ロールイン用油脂組成物の作製方法:実施例1〜10および比較例1〜7の油脂組成物100質量部に対し、モノグリセリン脂肪酸エステル0.3質量部、大豆レシチン0.3質量部、香料0.3質量部、およびβ−カロチンを適量添加し、70℃に加熱し油相部とした。この油相部に対し、油脂組成物100質量部に対して水20質量部、食塩1質量部、脱脂粉乳1質量部となるように調整した水相部を添加し、70℃に加熱しながらプロペラ攪拌機で攪拌し乳化した。これをコンビネーターにて急冷捏和し、レスティングチューブを通した後、シート状に成形し充填を行い、シート状ロールイン用油脂組成物を得た。
上記実施例1〜10および比較例1〜7のロールイン用油脂組成物を用いて、以下に示す方法により、デニッシュを作製した。
デニッシュの作製方法:以下に示す配合に従い、デニッシュの生地を作製した。ミキサーボールに全ての原料を入れ、低速3分、中高速4分ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は25℃とし、−3℃の恒温庫に生地を入れ2時間リタードを取った。生地100質量部に対して28質量部の割合で実施例および比較例で得たロールイン用油脂組成物を使用して折り込み、4つ折りを1回、3つ折りを1回行い、−3℃の恒温庫で数時間寝かせてリタードを取った。リタード後、3mmまで圧延した後、9cm四方に分割、俵成型し、33℃のホイロに50分間入れた後、210℃のオーブンで12分間焼成してデニッシュを得た。
強力粉 100質量部
砂糖 7質量部
食塩 1質量部
脱脂粉乳 2質量部
イーストフード 0.1質量部
イースト 5質量部
ショートニング 5質量部
全卵 5質量部
水 51質量部
実施例および比較例の油脂組成物、ロールイン用油脂組成物について、「加熱溶解後の25℃における状態」、ロールイン時の「伸展性」、及びデニッシュの「ジューシー感」、「焼成品の浮き」を評価した。これらの評価方法を以下に示す。
実施例および比較例の各ロールイン用油脂組成物を150mL用の透明瓶に入れ、80℃で加熱溶解した後、静置して自然放熱により25℃に戻した。25℃、24時間後における状態を次の基準により評価した。評価結果を表3、4の下段の「25℃における状態(加熱後)」の欄に示す。
◎:液状油の分離(染み出し)がない
○:液状油の分離(染み出し)がわずか
△:液状油の分離(染み出し)があり
×:液状油の分離(染み出し)が多い
上記方法にてデニッシュを作製する際に、4つ折りおよび成型時のロールイン用油脂組成物の伸展性について次の基準により評価した。評価結果を表3、4の下段の「伸展性(作業性)」の欄に示す。
◎:生地に割れが生じず生地と同様に良好に伸展する。
○:生地に割れが生じず伸展する。
△:生地に若干割れが発生する。
×:生地に割れが多く発生する。
焼成後1日間、室温条件下で保管したデニッシュを15名のパネラーにて官能評価を行い、次の基準により評価した。評価結果を表3、4の下段の「ジューシー感」の欄に示す。
◎:15名中13名以上が、口溶けが良くジューシーさを感じると判断した。
○:15名中8〜12名以上が、口溶けが良くジューシーさを感じると判断した。
△:15名中3〜7名以上が、口溶けが良くジューシーさを感じると判断した。
×:15名中2名以下が、口溶けが良くジューシーさを感じると判断した。
焼成後室温に冷却したデニッシュを「3D Laser Volume Measurement Selnac Win VM2100」(Astex社製)を使用し、比容積を測定した。測定結果について次の基準により評価した。評価結果を表3、4の下段の「焼成品の浮き」の欄に示す。
◎:比容積4.0以上
○:比容積3.5以上〜4.0未満
△:比容積3.0以上〜3.5未満
×:比容積3.0未満
Claims (2)
- 下記のエステル交換油(A)を30〜85質量%、エステル交換油(B)を5〜25質量%、および液状油脂(C)を5〜35質量%含有する油脂組成物を含有する、ロールイン用油脂組成物。
エステル交換油(A):ヤシ油、パーム核油又はそれらの硬化油を原料油脂として含有するエステル交換油であって、ラウリン酸を5〜15質量%含有し、融点が32〜36℃であり、25℃における固体脂含量が8〜18%、かつ、35℃における固体脂含量が0〜5%であるエステル交換油
エステル交換油(B):ヤシ油、パーム核油又はそれらの硬化油を原料油脂として含有するエステル交換油であって、ラウリン酸を20〜50質量%含有し、融点が38〜42℃であり、25℃における固体脂含量が49〜59%、かつ、35℃における固体脂含量が7〜17%であるエステル交換油
液状油脂(C):融点が0℃以下の油脂 - 請求項1に記載のロールイン用油脂組成物を含有する、ペストリー。
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