本発明のアミン化合物は、下記一般式(1)で表される。
前記一般式(1)において、Ar1、Ar2およびAr3は、それぞれ置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいチエニルメチル基を示す。Ar4は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。Ar3およびAr4は、これらが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよい。R1およびR2は、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは1または2の整数を示す。nが2のとき、2個のR1は同一でも異なってもよく、2個のR2は同一でも異なってもよい。R3は、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示す。mは1〜4の整数を示す。mが2以上のとき、複数のR3は、同一でも異なってもよい。
前記一般式(1)において、符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ピレニル基、アントリル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基などの単環式または二環式のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基、モノフルオロエチル基などの炭素数1〜5のハロアルキル基、2−プロペニル基およびスチリル基などのアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などの炭素数1〜3のアルコキシ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基などの炭素数1〜4のモノアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などの炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、フッ素原子、塩素原子および臭素原子などのハロゲン原子、フェノキシ基などのアリールオキシ基、ならびにフェニルチオ基などのアリールチオ基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。置換基を有するアリール基としては、トリル基、メトキシフェニル基などが挙げられる。また、置換基は結合するアリール基とともに環構造を形成してもよく、置換基がアリール基とともに環構造を形成してなるアリール基としては、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号Ar1、Ar2およびAr3で示される複素環基としては、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基などの、ヘテロ原子として、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子など、好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を有する5員、6員または縮合環、好ましくは5員の複素環基が挙げられる。Ar1、Ar2およびAr3で示される複素環基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。置換基を有する複素環基としては、たとえばN−メチルインドリル基、N−エチルカルバゾリル基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアラルキル基としては、ベンジル基、1−ナフチルメチル基などの、アリール基で置換されたメチル基、フェネチル基、1−ナフチルエチル基などの、アリール基で置換されたエチル基などが挙げられ、これらの中でも、ベンジル基、1−ナフチルメチル基などの、アリール基で置換されたメチル基が好ましい。Ar1、Ar2およびAr3で示されるアラルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、メトキシ基が特に好ましい。
前記一般式(1)において、符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるチエニルメチル基としては、2−チエニルメチル基、3−チエニルメチル基などが挙げられる。Ar1、Ar2およびAr3で示されるチエニルメチル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、メトキシ基が特に好ましい。
前記一般式(1)において、符号Ar4で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの分岐鎖状アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましい。Ar4で示されるアルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でもフッ素原子、塩素原子および臭素原子などのハロゲン原子が好ましい。
前記一般式(1)において、符号Ar4で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ピレニル基、アントリル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基などの単環式または二環式のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。Ar4で示されるアリール基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、メトキシ基が特に好ましい。置換基を有するアリール基としては、トリル基、メトキシフェニル基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号Ar4で示される複素環基としては、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基などの、ヘテロ原子として、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子など、好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を有する5員、6員または縮合環、好ましくは5員の複素環基が挙げられる。Ar4で示される複素環基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、メトキシ基が特に好ましい。
前記一般式(1)において、符号Ar4で示されるアラルキル基としては、ベンジル基、1−ナフチルメチル基などの、アリール基で置換されたメチル基、フェネチル基、1−ナフチルエチル基などの、アリール基で置換されたエチル基などが挙げられ、これらの中でも、ベンジル基、1−ナフチルメチル基などの、アリール基で置換されたメチル基が好ましい。Ar4で示されるアラルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、メトキシ基が特に好ましい。置換基を有するアラルキル基としては、たとえばp−メトキシベンジル基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、Ar3およびAr4がこれらの結合する炭素原子とともに形成する環構造としては、インダン、テトラヒドロナフタレン、ベンゾスベロンなどの縮合環、好ましくは二環または三環の縮合環などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの分岐鎖状アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましい。Ar4で示されるアルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でもフッ素原子、塩素原子および臭素原子などのハロゲン原子が好ましい。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ピレニル基、アントリル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基などの単環式または二環式のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。Ar4で示されるアリール基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、メトキシ基が特に好ましい。置換基を有するアリール基としては、トリル基、メトキシフェニル基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2で示される複素環基としては、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基などの、ヘテロ原子として、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子など、好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を有する5員、6員または縮合環、好ましくは5員の複素環基が挙げられる。Ar4で示される複素環基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、メトキシ基が特に好ましい。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2で示されるアラルキル基としては、ベンジル基、1−ナフチルメチル基などの、アリール基で置換されたメチル基、フェネチル基、1−ナフチルエチル基などの、アリール基で置換されたエチル基などが挙げられ、これらの中でも、ベンジル基、1−ナフチルメチル基などの、アリール基で置換されたメチル基が好ましい。Ar4で示されるアラルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができ、その中でも、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、メチル基、メトキシ基が特に好ましい。置換基を有するアラルキル基としては、たとえばp−メトキシベンジル基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R3で示される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの、炭素数1〜3の直鎖状アルキル基、イソプロピル基などの、炭素数1〜3の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。R3で示されるアルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができる。
前記一般式(1)において、符号R3で示される炭素数1〜5のフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、1−モノフルオロエチル基などの、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のモノフルオロアルキル基、1,1−ジフロオロエチル基、1,1−ジフルオロプロピル基などの、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のジフルオロアルキル基、1,1,1−トリフルオロブチル基、1,1,1−トリフルオロペンチル基などの、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のトリフルオロアルキル基などが挙げられる。R3で示される炭素数1〜5のフルオロアルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができる。
前記一般式(1)において、符号R3で示される炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基などの、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R3で示される炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの、炭素数1〜3の直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基などの、炭素数1〜3の分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられる。R3で示される炭素数1〜3のアルコキシ基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができる。
前記一般式(1)において、符号R3で示される炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などの、炭素数2〜8の対称ジアルキルアミノ基、エチルメチルアミノ基、イソプロピルエチルアミノ基などの、炭素数2〜8の非対称ジアルキルアミノ基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数2〜8の対称ジアルキルアミノ基が好ましい。R3で示される炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができる。これらの置換基は炭素数2〜8のジアルキルアミノ基のアルキル部分に置換し、置換基を有する炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ビス(2−クロロエチル)アミノ基、2−クロロエチルメチルアミノ基などの、アルキル部分が置換基を有する炭素数2〜8のジアルキルアミノ基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R3で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられ、これらの中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
一般式(1)で示される本発明のアミン化合物は、電荷輸送能力、特にホール輸送能力に優れるので、電荷輸送物質として好適に使用することができる。たとえば、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を電子写真感光体などの静電記録素子、センサまたはEL素子などのデバイスの電荷輸送物質として用いることによって、応答性に優れるデバイスを提供することができる。特に、本発明のアミン化合物を電荷輸送物質として電子写真感光体の感光層に含有させることによって、帯電性、感度および光応答性などの電気特性が良好であり、かつ電気的および機械的耐久性、ならびに環境安定性に優れ、各種の環境下において長期間にわたって安定して高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い電子写真感光体を実現することができる。
一般式(1)で示される本発明のアミン化合物のうち、製造原価および生産性などの観点から特に優れる化合物としては、一般式(1)においてn=1のアミン化合物、すなわち下記一般式(1a)で示されるアミン化合物が挙げられる。
一般式(1a)において、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、R3およびmは、一般式(1)において定義したものと同義である。
一般式(1a)で示されるアミン化合物は、合成の比較的容易なベンゾフランアミン−ジエン構造を有するので、合成収率が高く、比較的安価に製造することができる。したがって、一般式(1a)で示されるアミン化合物を電子写真感光体などの静電記録素子、センサまたはEL素子などのデバイスに用いることによって、これらのデバイスの製造原価を低減することができる。
また、一般式(1a)で示されるアミン化合物の中でも、下記一般式(2)で示されるアミン化合物がさらに好ましい。
前記一般式(2)において、R4およびR5は、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のフルオロアルキル基、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子または水素原子を示す。jおよびkは、それぞれ1〜5の整数を示す。jが2以上のとき、複数のR4は、同一でも異なってもよい。kが2以上のとき、複数のR5は、同一でも異なってもよい。Ar3、Ar4、R3およびmは、一般式(1)において定義したものと同義である。
前記一般式(2)において、符号R4およびR5で示される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの、炭素数1〜3の直鎖状アルキル基、イソプロピル基などの、炭素数1〜3の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。R4およびR5で示されるアルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができる。
前記一般式(2)において、符号R4およびR5で示される炭素数1〜5のフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、1−モノフルオロエチル基などの、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のモノフルオロアルキル基、1,1−ジフロオロエチル基、1,1−ジフルオロプロピル基などの、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のジフルオロアルキル基、1,1,1−トリフルオロブチル基、1,1,1−トリフルオロペンチル基などの、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のトリフルオロアルキル基などが挙げられる。R4およびR5で示される炭素数1〜5のフルオロアルキル基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができる。
前記一般式(2)において、符号R4およびR5で示される炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基などの、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。
前記一般式(2)において、符号R4およびR5で示される炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの、炭素数1〜3の直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基などの、炭素数1〜3の分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられる。R4およびR5で示される炭素数1〜3のアルコキシ基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができる。
前記一般式(2)において、符号R4およびR5で示される炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などの、炭素数2〜8の対称ジアルキルアミノ基、エチルメチルアミノ基、イソプロピルエチルアミノ基などの、炭素数2〜8の非対称ジアルキルアミノ基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数2〜8の対称ジアルキルアミノ基が好ましい。R4およびR5で示される炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が有することのできる置換基としては、前述の符号Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリール基が有することのできる置換基として例示したものなどを挙げることができる。これらの置換基は炭素数2〜8のジアルキルアミノ基のアルキル部分に置換し、置換基を有する炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ビス(2−クロロエチル)アミノ基、2−クロロエチルメチルアミノ基などの、アルキル部分が置換基を有する炭素数2〜8のジアルキルアミノ基などが挙げられる。
前記一般式(2)において、符号R4およびR5で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられ、これらの中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
一般式(2)で示されるアミン化合物は、合成の特に容易なN,N−ジフェニルベンゾフランアミン−ジエン構造を有するので、一般式(1a)で示されるアミン化合物よりもさらに安価に製造することができる。したがって、一般式(2)で示されるアミン化合物を電子写真感光体などの静電記録素子、センサまたはEL素子などのデバイスに用いることによって、これらのデバイスの製造原価を一層低減することができる。
また、一般式(1)で示されるアミン化合物のうち、電荷輸送性能などの特性の観点から特に優れる化合物としては、一般式(1)においてAr1およびAr2がそれぞれフェニル基、または炭素数1〜3のアルキル基もしくは炭素数1〜3のアルコキシ基で置換されたフェニル基であり、Ar3がフェニル基、または炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基もしくはスチリル基で置換されたフェニル基であり、Ar4が水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、または炭素数1〜3のアルキル基で置換されたフェニル基であり、R1およびR2がそれぞれ水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R3が水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基または炭素数1〜3のフルオロアルキル基であるアミン化合物が挙げられる。
その中でも、製造原価および生産性などを考慮すると、前述の一般式(1a)で示されるアミン化合物に含まれるものが好ましく、一般式(2)で示されるアミン化合物に含まれるものがさらに好ましく、一般式(2)で示されるアミン化合物に含まれるアミン化合物であって、一般式(1)においてAr1、Ar2およびAr3がそれぞれフェニル基、p−トリル基またはp−メトキシフェニル基であり、Ar4が水素原子、メチル基、フェニル基またはp−トリル基であり、R1、R2およびR3がいずれも水素原子であり、nが1であるアミン化合物が特に好ましい。
一般式(1)で示される本発明のアミン化合物の具体例としては、たとえば以下の表1〜表7に示す例示化合物No.1〜No.70を挙げることができるけれども、本発明のアミン化合物は、これらに限定されるものではない。なお、表1〜表7では、各例示化合物を一般式(1)の各基に対応する基で表している。たとえば、表1に示す例示化合物No.1は、下記構造式(3)で示されるアミン化合物である。ただし、一般式(1)においてAr3およびAr4がこれらの結合する炭素原子とともに環構造を形成するアミン化合物を例示する場合には、Ar3の欄からAr4の欄にわたって、Ar3およびAr4がこれらの結合する炭素原子とともに形成する環構造と、Ar3およびAr4が結合する炭素−炭素二重結合とを示す。また一般式(1)においてn=2のアミン化合物のうち、2個のR1で示される基が同一であり、かつ2個のR2で示される基が同一であるものを例示する場合には、R1およびR2をそれぞれ1個示す。また表1〜表7において、n−C3H7はn−プロピル基を示し、n−C4H8はn−ブチレン基を示す。
一般式(1)で示される本発明のアミン化合物は、公知の反応を利用して製造することができ、たとえば、下記一般式(4)
(式中、Ar1、Ar2、R3およびmは、一般式(1)において定義したものと同義である。)で示されるベンゾフランアミン化合物をホルミル化し、下記一般式(5)
(式中、Ar1、Ar2、R3およびmは、一般式(1)において定義したものと同義である。)で示されるアミン−アルデヒド中間体を合成し、得られた一般式(5)で示されるアミン−アルデヒド中間体と、下記一般式(6)
(式中、R6は、炭素数1〜3のアルキル基またはアリール基を示す。Ar3、Ar4、R1、R2およびnは、一般式(1)において定義したものと同義である。)で示されるウィッティッヒ(Wittig)試薬とを塩基性条件下に反応させるウィッティッヒ−ホルナー(Wittig−Horner)反応を行なうことによって製造することができる。
前記一般式(6)において、符号R6で示される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの、炭素数1〜3の直鎖状アルキル基、イソプロピル基などの、炭素数1〜3の分岐鎖状アルキル基などが挙げられ、これらの中でもエチル基、イソプロピル基が好ましい。また符号R6で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基などの単環式または二環式のアリール基が挙げられ、これらの中でもフェニル基が好ましい。
一般式(4)で示されるベンゾフランアミン化合物のホルミル化は、たとえばフィルスマイヤー反応などの公知のホルミル化反応を用いて行なうことができる。フィルスマイヤー反応を用いる場合には、たとえば以下のようにして一般式(4)で示されるベンゾフランアミン化合物をホルミル化することができる。まず、適当な溶媒中に、オキシ塩化リン、ホスゲンまたは塩化チオニルと、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−
Dimethylformamide;略称DMF)、N−メチル−N−フェニルホルムアミドまたはN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、フィルスマイヤー試薬を調製する。使用される溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
次いで、調製されたフィルスマイヤー試薬1.0〜1.3モル当量を含む溶液中に、一般式(4)で示されるベンゾフランアミン化合物1.0モル当量を加え、この反応溶液の温度を60〜110℃に保持しながら2〜8時間撹拌して反応させる。反応終了後、1〜8規定の、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ性水溶液で加水分解を行なう。これによって、一般式(5)で示されるアミン−アルデヒド中間体を高収率で製造することができる。
なお、一般式(4)で示されるベンゾフランアミン化合物は、市販品として入手することも可能であるけれども、たとえば、下記一般式(4a)
(式中、X1はハロゲン原子を示す。R3およびmは、一般式(1)において定義したものと同義である。)で示される5−ハロベンゾフラン化合物と、下記一般式(4b)
(式中、Ar1およびAr2は、一般式(1)において定義したものと同義である。)で示される2級アミン化合物とのウルマン反応によって製造することもできる。
前記一般式(4a)において、符号X1で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、これらの中でも、ヨウ素原子、臭素原子が好ましい。
一般式(4a)で示される5−ハロベンゾフラン化合物と一般式(4b)で示される2級アミン化合物とのウルマン反応は、以下のようにして行なわれる。たとえば、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類などの適当な溶媒中に、一般式(4a)で示される5−ハロベンゾフラン化合物を1.0〜1.2モル当量、一般式(4b)で示される2級アミン化合物を1.2〜1.4モル当量、銅粉末を2.0〜4.0モル当量、ならびに必要に応じて無水炭酸カリウムを2.0〜4.0モル当量、18−クラウン−6を0.1〜0.2モル当量加え、加熱下で撹拌して反応させる。これによって、一般式(4)で示されるベンゾフランアミン化合物を高収率で得ることができる。
一般式(5)で示されるアミン−アルデヒド中間体と一般式(6)で示されるウィッティッヒ(Wittig)試薬とのウィッティッヒ−ホルナー(Wittig−Horner)反応は、以下のようにして行なわれる。たとえば、適当な溶媒中に、一般式(5)で示されるアミン−アルデヒド中間体1.0モル当量と、一般式(6)で示されるウィッティッヒ試薬1.0〜2.2モル当量と、金属アルコキシド塩基1.0〜2.4モル当量とを加え、室温または30〜60℃の加熱下で、2〜8時間撹拌して反応させる。これによって、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を高収率で製造することができる。
ウィッティッヒ−ホルナー反応において使用される溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;略称THF)、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。金属アルコキシド塩基としては、カリウムt−ブトキサイド、ナトリウムエトキサイド、ナトリウムメトキサイドなどが挙げられる。
なお、一般式(6)で示されるウィッティッヒ(Wittig)試薬は、市販品として入手することも可能であるけれども、たとえば、下記一般式(6a)
(R6O)3P …(6a)
(式中、R6は一般式(6)において定義したものと同義である。)で示される亜リン酸トリアルキルまたは亜リン酸トリアリールと、下記一般式(6b)
(式中、X2はハロゲン原子を示す。Ar3、Ar4、R1、R2およびnは、一般式(1)において定義したものと同義である。)で示されるアリルハライドとを略等モル量ずつ無溶媒で混合し、加熱下で撹拌して反応させることによって製造することもできる。
一般式(6a)で示される亜リン酸トリアルキルとしては、一般式(6a)においてR6がエチル基である亜リン酸トリエチル、一般式(6a)においてR6がイソプロピル基である亜リン酸トリイソプロピルなどが好ましい。また一般式(6a)で示される亜リン酸トリアリールとしては、一般式(6a)においてR6がフェニル基である亜リン酸トリフェニルなどが好ましい。
前記一般式(6b)において、符号X2で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、これらの中でも、塩素原子、臭素原子が好ましい。
以上のようにして製造される一般式(1)で示される本発明のアミン化合物は、通常の分離手段、たとえば溶媒抽出法、再結晶法またはカラムクロマトグラフィーなどによって反応混合物から容易に単離精製でき、高純度のものとして得ることができる。
本発明による電子写真感光体(以下、単に感光体とも称する)は、以上に述べた一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を電荷輸送物質として用いるものであり、種々の実施形態がある。以下、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明による電子写真感光体の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施形態の電子写真感光体1は、導電性材料から成る円筒状の導電性支持体11と、導電性支持体11の外周面上に積層される層であって電荷発生物質を含有する電荷発生層12と、電荷発生層12の上にさらに積層される層であって電荷輸送物質を含有する電荷輸送層13とを含む。電荷発生層12と電荷輸送層13とは、感光層14を構成する。すなわち、感光体1は、積層型感光体である。
導電性支持体11は、感光体1の電極としての役割を果たすとともに他の各層12,13の支持部材としても機能する。なお導電性支持体11の形状は、感光体1では円筒状であるけれども、これに限定されることなく、円柱状、シート状または無端ベルト状などであってもよい。
導電性支持体11を構成する導電性材料としては、たとえばアルミニウム、銅、亜鉛、チタンなどの金属単体、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの合金を用いることができる。またこれらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンもしくはポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙またはガラスなどの表面に、金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。これらの導電性材料は所定の形状に加工されて使用される。
導電性支持体11の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体表面で反射されるレーザ光と感光体内部で反射されるレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となることがある。導電性支持体11の表面に前述のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
電荷発生層12は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。電荷発生物質として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料、金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料、ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などを挙げることができる。これらの電荷発生物質は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が組合わされて使用されてもよい。
なお、本明細書中において、フタロシアニン化合物とは、金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニン、ならびにこれらの誘導体のことであり、フタロシアニン基に含まれるベンゼン環の水素原子が、塩素原子もしくはフッ素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはスルホン酸基などの置換基で置換されたものを含む。また金属フタロシアニン化合物は、中心金属に配位子が配位したものであってもよい。
前述の電荷発生物質の中でも、フタロシアニン化合物を用いることが好ましく、下記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物を用いることがさらに好ましい。
一般式(A)において、R7,R8,R9およびR10は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示し、r,s,yおよびzは、それぞれ0〜4の整数を示す。
前記一般式(A)において、符号R7,R8,R9およびR10で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。またR7,R8,R9およびR10で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの、炭素数1〜3の直鎖状アルキル基、イソプロピル基などの、炭素数1〜3の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。またR7,R8,R9およびR10で示されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの、炭素数1〜5の直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基などの、炭素数1〜5の分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられる。
フタロシアニン化合物、特に一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物は、電荷発生能力および電荷注入能力に優れるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生するとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく、電荷輸送層13に含有される電荷輸送物質に効率よく注入する。また前述のように、電荷輸送層13に含有される電荷輸送物質には、電荷輸送能力に優れる一般式(1)で示される本発明のアミン化合物が用いられるので、光吸収によって一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物で発生する電荷は、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物に効率的に注入され、感光層14表面に円滑に輸送される。したがって、前述のように電荷輸送物質として一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を用いるとともに、電荷発生物質としてフタロシアニン化合物、好ましくは一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物を用いることによって、特に優れた感度を有し、さらに解像度にも優れる感光体1が実現される。
フタロシアニン化合物は、特定の結晶構造を有することが好ましい。無金属フタロシアニン化合物のうち好ましいものとしては、X型、α型、β型、γ型、τ型、π型、τ′型、η型またはη′型の無金属フタロシアニン化合物が挙げられ、これらの中でもX型の無金属フタロシアニンが好適に用いられる。また一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物のうち好ましいものとしては、Cu−Kα特性X線(波長:1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニン化合物が挙げられる。なお、本明細書において、ブラッグ角2θとは、入射X線と回折X線との成す角度のことであり、いわゆる回折角を表す。
一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物などのフタロシアニン化合物は、たとえばモーザ(Moser)およびトーマス(Thomas)による「フタロシアニン化合物(Phthalocyanine Compounds)」に記載されている方法などの従来公知の製造方法に従って製造することができる。たとえば、一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物のうち、R7,R8,R9およびR10が水素原子であるオキソチタニウムフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンとを、加熱融解するかまたはα−クロロナフタレンなどの適当な溶媒中で加熱反応させることによってジクロロチタニウムフタロシアニンを合成した後、塩基または水で加水分解することによって製造することができる。またイソインドリンとテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N−メチルピロリドンなどの適当な溶媒中で加熱反応させることによっても、オキソチタニウムフタロシアニンを製造することができる。
電荷発生物質は、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料と組合わされて使用されてもよい。
電荷発生層12の形成方法としては、前述の電荷発生物質を導電性支持体11の表面に真空蒸着する方法、または前述の電荷発生物質を適当な溶剤中に分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体11の表面に塗布する方法などが用いられる。これらの中でも、結着剤であるバインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の方法によって分散して電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を導電性支持体11の表面に塗布する方法が好適に用いられる。以下、この方法について説明する。
電荷発生層12に用いられるバインダ樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。共重合体樹脂の具体例としては、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。バインダ樹脂はこれらに限定されるものではなく、この分野において一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
電荷発生層用塗布液に使用される溶剤としては、たとえばジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。これらの溶剤は、1種が単独で使用されてもよく、2種以上が混合されて混合溶剤として使用されてもよい。
電荷発生物質とバインダ樹脂とを含んで構成される電荷発生層12において、電荷発生物質の重量W1とバインダ樹脂の重量W2との比率W1/W2は、100分の10(10/100)以上100分の99(99/100)以下であることが好ましい。前記比率W1/W2が10/100未満であると、感光体1の感度が低下する可能性がある。前記比率W1/W2が99/100を超えると、電荷発生層12の膜強度が低下する可能性がある。また電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、消去されるべき部分以外の表面電荷が露光によって減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなるおそれがある。
電荷発生物質は、バインダ樹脂溶液中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理されてもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、好適に用いられる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。なお、塗布方法はこれらに限定されるものではなく、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択することができる。
電荷発生層12の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層12の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体1の感度が低下するおそれがある。電荷発生層12の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層12内部での電荷移動が感光層14表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体1の感度が低下するおそれがある。
電荷発生層12上には電荷輸送層13が設けられる。電荷輸送層13は、電荷発生層12に含まれる電荷発生物質が発生した電荷を受入れ、これを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させるバインダ樹脂とを含んで構成することができる。電荷輸送物質としては、前述のように、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物が用いられる。
一般式(1)で示される本発明のアミン化合物は、前述のように電荷輸送能力、特にホール輸送能力に優れるので、本実施の形態のように一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を電荷輸送物質として電荷輸送層13に含有させることによって、帯電性、感度および光応答性などの電気特性、電気的耐久性および環境安定性に優れる信頼性の高い感光体1を実現することができる。したがって、感光体1は、低温環境下で用いられた場合であっても、高速の電子写真プロセスに用いられた場合であっても、形成される画像に画質低下を引起すことがなく、各種の環境下において長期間にわたって安定して高品質の画像を提供することができる。
一般式(1)で示される本発明のアミン化合物は、たとえば前述の表1〜表7に示す例示化合物からなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。
電荷輸送層13を構成するバインダ樹脂には、電荷輸送物質として使用される一般式(1)で示される本発明のアミン化合物との相溶性に優れるものが選ばれる。具体例としては、たとえばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびこれらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。またこれらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂も挙げられる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。前述の樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので、好適に用いられる。
電荷輸送層13において、電荷輸送物質として含有される一般式(1)で示されるアミン化合物の重量Aとバインダ樹脂の重量Bとの比率A/Bは、30分の10(10/30)以上、12分の10(10/12)以下であることが好ましい。前記比率A/Bを10/30以上、10/12以下とし、バインダ樹脂を高い比率で電荷輸送層13に含有させることによって、電荷輸送層13の耐刷性を向上させることができる。
このように、前記比率A/Bを10/12以下とし、バインダ樹脂の比率を高くすると、結果として電荷輸送物質として含有される一般式(1)で示されるアミン化合物の比率が低下する。従来公知の電荷輸送物質を用いた場合に、電荷輸送層13における電荷輸送物質の重量とバインダ樹脂の重量との比率(電荷輸送物質/バインダ樹脂)を同様に10/12以下とすると、光応答性が不足し、画像欠陥の生じることがある。しかしながら、一般式(1)で示されるアミン化合物は、電荷輸送能力に優れるので、前記比率A/Bを10/12以下として電荷輸送層13におけるバインダ樹脂の比率を高くしても、感光体1は、充分に高い光応答性を示し、高品質の画像を提供することができる。したがって、光応答性を低下させることなく、前記比率A/Bを10/30以上、10/12以下として電荷輸送層13の耐刷性を向上させ、感光体1の機械的耐久性を向上させることができる。
なお、前記比率A/Bが10/30未満であり、バインダ樹脂の比率が高くなり過ぎると、感光体1の感度が低下する可能性がある。また電荷輸送層13を浸漬塗布法によって形成する場合に前記比率A/Bが10/30未満であると、塗布液の粘度が増大して塗布速度が低下し、生産性が著しく悪くなるおそれがある。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層13に白濁が発生する可能性がある。一方、前記比率A/Bが10/12を超え、バインダ樹脂の比率が低くなり過ぎると、感光層14の耐刷性が低下して膜減り量が増加し、感光体1の帯電性が低下するおそれがある。
電荷輸送層13は、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物によって付与される好ましい特性を損なわない範囲内で、一般式(1)で示されるアミン化合物以外の他の電荷輸送物質を含有してもよい。一般式(1)で示されるアミン化合物と混合されて使用される他の電荷輸送物質としては、一般式(1)で示されるアミン化合物以外のベンゾフラン誘導体、エナミン−スチリル誘導体、エナミン−ヒドラゾン誘導体、エナミン−ブタジエン誘導体およびエナミン−ヘキサトリエン誘導体などのエナミン化合物、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ならびにベンジジン誘導体などを挙げることができる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、たとえばポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(1−ビニルピレン)およびポリ(9−ビニルアントラセン)なども挙げられる。これらの電荷輸送物質は、1種が単独でまたは2種以上が混合されて、一般式(1)で示されるアミン化合物と共に使用されてもよい。
また、電荷輸送層13には、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物によって付与される好ましい特性を損なわない範囲内で、可塑剤、レベリング剤、または無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などの各種添加剤を添加してもよい。可塑剤またはレベリング剤を添加することによって、電荷輸送層13の成膜性、可撓性または表面平滑性を向上させることができる。無機化合物または有機化合物の微粒子を添加することによって、電荷輸送層13の機械的強度を増強し、また電気特性を向上させることができる。可塑剤としては、たとえばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。レベリング剤としては、たとえばシリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
電荷輸送層13は、たとえば、前述の電荷発生層12を塗布によって形成する場合と同様に、適当な溶媒中に、一般式(1)で示されるアミン化合物を含む電荷輸送物質およびバインダ樹脂、ならびに必要に応じて前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、得られた塗布液を電荷発生層12上に塗布することによって形成することができる。
電荷輸送層用塗布液に使用される溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。また前述の溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。
電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述のように種々の点で優れているので、電荷輸送層13を形成する場合にも好適に用いられる。
電荷輸送層13の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層13の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがある。電荷輸送層13の膜厚が50μmを超えると、感光体1の解像度が低下する可能性がある。
感光層14は、以上のようにして形成される電荷発生層12と電荷輸送層13とが積層されて成る積層構造を有する。このように電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、各層を構成する材料を独立して選択することができるので、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することができる。したがって、感光体1は、帯電性、感度および光応答性などの電気特性、ならびに電気的および機械的耐久性に特に優れる。
感光層14の各層、すなわち電荷発生層12および電荷輸送層13には、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物によって付与される好ましい特性を損なわない範囲内で、電子受容物質および色素などの増感剤を1種または2種以上添加してもよい。増感剤を添加することによって、感光体1の感度が向上し、さらに繰返し使用による残留電位の上昇および疲労などが抑えられ、電気的耐久性が向上する。
電子受容物質としては、たとえば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物、またはジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料などを用いることができる。またこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることもできる。
色素としては、たとえばキサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料または銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
また、感光層14の各層12,13には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加してもよい。特に電荷輸送層13には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。感光層14の各層12,13、好ましくは電荷輸送層13に酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加することによって、感光体1の電位特性を向上させることができる。また各層を塗布によって形成する際の塗布液の安定性を高めることができる。また感光体1の繰返し使用による疲労劣化を軽減し、電気的耐久性を向上させることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物またはアミン系化合物などが用いられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール誘導体もしくはヒンダードアミン誘導体、またはこれらの混合物が好適に用いられる。酸化防止剤は、電荷輸送物質100重量部に対して、0.1重量部以上、50重量部以下の範囲内で使用されることが好ましい。電荷輸送物質100重量部に対する酸化防止剤の使用量が0.1重量部未満であると、塗布液の安定性および感光体の電気的耐久性を向上する効果が充分に発揮されない可能性があり、逆に50重量部を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
図2は、本発明による電子写真感光体の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施形態の電子写真感光体2は、図1に示す実施の第1形態の電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
電子写真感光体2において注目すべきは、導電性支持体11と感光層14との間に、中間層15が設けられていることである。
導電性支持体11と感光層14との間に中間層15がない場合、導電性支持体11から感光層14に電荷が注入され、感光層14の帯電性が低下し、露光される部分以外の表面電荷が減少し、画像にかぶりなどの欠陥の発生することがある。特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合には、露光によって表面電荷の減少した部分にトナーが付着してトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが発生し、画質の著しい劣化が生じるおそれがある。このように、導電性支持体11と感光層14との間に中間層15がない場合、導電性支持体11または感光層14の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ぽちなどの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥となる可能性がある。
本実施形態の感光体2では、前述のように導電性支持体11と感光層14との間に中間層15が設けられているので、導電性支持体11からの感光層14への電荷の注入を防止することができる。したがって、感光層14の帯電性の低下を防ぐことができ、露光される部分以外での表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止することができる。
また中間層15を設けることによって、導電性支持体11表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、感光層14の成膜性を高めることができる。また中間層15が導電性支持体11と感光層14とを接着する接着剤として機能するので、感光層14の導電性支持体11からの剥離を抑えることができる。
中間層15には、各種樹脂材料から成る樹脂層またはアルマイト層などが用いられる。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリアミド樹脂などの合成樹脂、ならびにこれらの合成樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。また、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびエチルセルロースなども挙げられる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好適に用いられる。好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、たとえば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などを挙げることができる。
中間層15は、金属酸化物粒子などの粒子を含有してもよい。中間層15にこれらの粒子を含有させることによって、中間層15の体積抵抗値を調節し、導電性支持体11からの感光層14への電荷の注入を防止する効果を高めることができるとともに、各種の環境下において感光体2の電気特性を維持し、環境安定性を向上させることができる。
金属酸化物粒子としては、たとえば酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどの粒子を挙げることができる。
中間層15は、たとえば前述の樹脂を適当な溶剤中に溶解または分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の表面に塗布することによって形成することができる。中間層15に前述の金属酸化物粒子などの粒子を含有させる場合には、たとえば前述の樹脂を適当な溶剤に溶解させて得られる樹脂溶液中に、これらの粒子を分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の表面に塗布することによって中間層15を形成することができる。
中間層用塗布液の溶剤には、水もしくは各種有機溶剤、またはこれらの混合溶剤が用いられる。その中でも、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶剤、または水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤とアルコール類などの混合溶剤が好適に用いられる。
前述の粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機またはペイントシェーカなどを用いる公知の分散方法を使用することができる。
中間層用塗布液中において、樹脂および金属酸化物の合計重量Cと、中間層用塗布液に使用されている溶剤の重量Dとの比率C/Dは、1/99〜40/60であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70である。また樹脂の重量Eと金属酸化物の重量Fとの比率E/Fは、90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。
中間層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの中でも、特に浸漬塗布法は、前述のように、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、中間層15を形成する場合にも好適に用いられる。
中間層15の膜厚は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上10μm以下である。中間層15の膜厚が0.01μmよりも薄いと、実質的に中間層15として機能しなくなり、導電性支持体11の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体11からの感光層14への電荷の注入を防止することができなくなる可能性があり、感光層14の帯電性の低下が生じるおそれがある。中間層15の膜厚を20μmよりも厚くすることは、中間層15を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層15の形成が困難になるとともに、中間層15上に感光層14を均一に形成することができず、感光体2の感度が低下するおそれがあるので好ましくない。
なお、本実施の形態においても、電荷輸送層13には、実施の第1形態と同様に、可塑剤、レベリング剤、または無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などの各種添加剤を添加してもよい。また感光層14の各層12,13には、電子受容物質もしくは色素などの増感剤、酸化防止剤、または紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
図3は、本発明による電子写真感光体の実施の第3の形態である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施形態の電子写真感光体3は、図2に示す実施の第2形態の電子写真感光体2に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
電子写真感光体3において注目すべきは、感光層140が、電荷発生物質と電荷輸送物質との両方を含有する単一の層から成る単層構造を有することである。すなわち、感光体3が、単層型感光体であることである。
本実施の形態の単層型感光体3は、オゾン発生の少ない正帯電型画像形成装置用の感光体として好適であり、また塗布されるべき感光層140が一層のみであるので、製造原価および歩留が実施の第1形態および第2形態の積層型感光体1,2に比べて優れている。
感光層140は、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を含む電荷輸送物質と、前述の電荷発生物質とを、バインダ樹脂で結着して形成することができる。バインダ樹脂としては、実施の第1形態による電荷輸送層13のバインダ樹脂として例示したものを用いることができる。感光層140には、実施の第1形態による感光層14と同様に、可塑剤、レベリング剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子、電子受容物質もしくは色素などの増感剤、酸化防止剤、または紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加してもよい。
感光層140は、実施の第1形態の感光体1に設けられる電荷輸送層13と同様の方法で形成することができる。たとえば、前述の電荷発生物質と、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を含む電荷輸送物質と、バインダ樹脂と、必要に応じて前述の添加剤とを、前述の電荷輸送層用塗布液と同様の適当な溶剤に溶解または分散させて感光層用塗布液を調製し、この感光層用塗布液を浸漬塗布法などによって中間層15上に塗布することによって、感光層140を形成することができる。
感光層140における一般式(1)で示されるアミン化合物の重量A’とバインダ樹脂の重量B’との比率A’/B’は、実施の第1形態の電荷輸送層13における一般式(1)で示されるアミン化合物の重量Aとバインダ樹脂の重量Bとの比率A/Bと同様の理由から、10/30以上、10/12以下であることが好ましい。
感光層140の膜厚は、5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下である。感光層140の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがある。感光層140の膜厚が100μmを超えると、生産性が低下する可能性がある。
本発明による電子写真感光体は、以上に述べた図1〜図3に示す実施の第1形態〜第3形態の電子写真感光体1,2,3の構成に限定されるものではなく、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を感光層に含有するものであれば、他の異なる構成であってもよい。
たとえば、感光層14または140の表面に、表面保護層が設けられる構成であってもよい。感光層14または140の表面に表面保護層を設けることによって、感光体1,2,3の機械的耐久性を向上させることができる。また感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾンおよび窒素酸化物(NOx)などの活性ガスの感光層14,140への化学的悪影響を防止し、感光体1,2,3の電気的耐久性を向上させることができる。
表面保護層には、たとえば樹脂、無機フィラー含有樹脂または無機酸化物などから成る層が用いられる。
次に、本発明による電子写真感光体を備える画像形成装置について説明する。なお、本発明による画像形成装置は、以下の記載内容に限定されるものではない。
図4は、本発明による画像形成装置の実施の一形態である画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置側面図である。図4に示す画像形成装置100は、本発明による電子写真感光体の実施の第1形態である前述の図1に示す感光体1を搭載する。以下図4を参照して画像形成装置100の構成および画像形成動作について説明する。
画像形成装置100は、図示しない装置本体に回転自在に支持される前述の感光体1と、感光体1を回転軸線44まわりに矢符41方向に回転駆動させる図示しない駆動手段とを備える。駆動手段は、たとえば動力源としてモータを備え、モータからの動力を図示しない歯車を介して感光体1の芯体を構成する支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度Vpで回転駆動させる。(以下、この周速度Vpを感光体1の回転周速Vpとも称する。)
感光体1の周囲には、帯電器32と、露光手段30と、現像器33と、転写器34と、クリーナ36とが、矢符41で示される感光体1の回転方向の上流側から下流側に向かってこの順序で設けられる。クリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
帯電器32は、感光体1の表面43を所定の電位に帯電させる帯電手段である。帯電器32は、たとえば帯電ローラなどの接触式の帯電手段である。
露光手段30は、たとえば半導体レーザなどを光源として備え、光源から画像情報に応じて出力されるレーザビームなどの光31で、帯電された感光体1の表面43を露光し、これによって感光体1の表面43に静電潜像を形成させる。
現像器33は、感光体1の表面43に形成された静電潜像を現像剤によって現像し、可視像であるトナー画像を形成する現像手段であり、感光体1に対向して設けられ感光体1の表面43にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持するとともにその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
転写器34は、感光体1の表面43に形成されたトナー画像を、感光体1の表面43から転写材である記録紙51上に転写させる転写手段である。転写器34は、たとえば、コロナ放電器などの帯電手段を備え、記録紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー画像を記録紙51上に転写させる非接触式の転写手段である。
クリーナ36は、トナー画像が転写された後の感光体1の表面を清掃する清掃手段であり、感光体表面43に押圧され、転写器34による転写動作後に感光体1の表面43に残留するトナーを前記表面43から剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。
また、感光体1と転写器34との間を通過した後に記録紙51が搬送される方向には、転写されたトナー画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
画像形成装置100による画像形成動作について説明する。まず、図示しない制御部からの指示に応じて、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動され、露光手段30からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向の上流側に設けられる帯電器32によって、その表面43が正または負の所定電位に均一に帯電される。
次いで、制御部からの指示に応じて、露光手段30から、帯電された感光体1の表面43に対して光31が照射される。光源からの光31は、画像情報に基づいて、主走査方向である感光体1の長手方向に繰返し走査される。感光体1を回転駆動させ、光源からの光31を画像情報に基づいて繰返し走査することによって、感光体1の表面43に対して画像情報に対応する露光を施すことができる。この露光によって、光31が照射された部分の表面電荷が減少し、光31が照射された部分の表面電位と光31が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、感光体1の表面43に静電潜像が形成される。また、感光体1への露光と同期して、記録紙51が、搬送手段によって矢符42方向から転写器34と感光体1との間の転写位置に供給される。
次いで、光源からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向の下流側に設けられる現像器33の現像ローラ33aから、静電潜像の形成された感光体1の表面43にトナーが供給される。これによって、静電潜像が現像され、感光体1の表面43に可視像であるトナー画像が形成される。感光体1と転写器34との間に記録紙51が供給されると、転写器34によってトナーと逆極性の電荷が記録紙51に与えられ、これによって感光体1の表面43に形成されたトナー画像が記録紙51上に転写される。
トナー画像の転写された記録紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧される。これによって、記録紙51上のトナー画像が記録紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された記録紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、トナー画像が記録紙51に転写された後に、さらに矢符41方向に回転する感光体1は、その表面43がクリーナ36に備わるクリーニングブレード36aによって擦過され、清掃される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面43は、除電ランプからの光によって電荷が除去され、これによって感光体1の表面43の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度感光体1の帯電から始まる一連の動作が繰返される。以上のようにして、連続的に画像が形成される。
画像形成装置100に備わる感光体1は、前述のように、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を電荷輸送物質として感光層14に含有するものであり、帯電性、感度および光応答性などの電気特性、電気的および機械的耐久性、ならびに環境安定性に優れる。したがって、各種の環境下において長期間にわたって安定して高品質の画像を形成することのできる信頼性の高い画像形成装置100が実現される。
また、感光体1は高速の電子写真プロセスに用いられた場合であっても画質の低下を引起すことがないので、画像形成装置100は画像形成速度の高速化が可能である。たとえば、感光体1として直径30mm、長手方向の長さ340mmのものを用い、感光体1の回転周速Vpを毎秒100〜140mm程度に設定して高速で電子写真プロセスを行ない、画像形成装置100の画像形成速度をJIS P0138に規定されるA4判用紙25枚/分程度の高速として画像を形成しても、高品質の画像を提供することができる。
本発明による画像形成装置は、以上に述べた図4に示す画像形成装置100の構成に限定されるものではなく、本発明に係る感光体を使用することができるものであれば、他の異なる構成であってもよい。
たとえば、本実施形態の画像形成装置100では、帯電器32は、接触式の帯電手段であるけれども、これに限定されることなく、コロナ放電器などの非接触式の帯電手段であってもよい。また転写器34は、押圧力を用いずに転写を行う非接触式の転写手段であるけれども、これに限定されることなく、押圧力を利用して転写を行う接触式の転写手段であってもよい。接触式の転写手段としては、たとえば、転写ローラを備え、感光体1の表面43に当接される記録紙51の当接面の反対面側から転写ローラを感光体1に対して押圧し、感光体1と記録紙51とを圧接させた状態で、転写ローラに電圧を印加することによって、トナー画像を記録紙51上に転写させるものなどを用いることができる。
以下、製造例、実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するけれども、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
[製造例]
(製造例1)例示化合物No.1の製造
〔アミン−アルデヒド中間体の製造〕
無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mL中に、氷冷下、オキシ塩化リン9.2g(1.2モル当量)を徐々に加え、約30分間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、下記構造式(7)で示されるN,N−ビス(p−トリル)−1−ベンゾフラン−5−アミン15.7g(1.0モル当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を80℃まで上げ、80℃を保つように加熱しながら3時間攪拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷却されている4規定の水酸化ナトリウム水溶液800mL中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿を濾別し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶媒で再結晶することによって、黄色粉末状化合物15.4gを得た。
得られた化合物を液体クロマトグラフィー−質量分析法(Liquid Chromatography−
Mass Spectrometry;略称LC−MS)で分析した結果、下記構造式(8)で示されるアミン−アルデヒド中間体(分子量の計算値:341.41)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが342.5に観測された。このことから、得られた化合物が下記構造式(8)で示されるアミン−アルデヒド中間体であることが確認された(収率:90.0%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたアミン−アルデヒド中間体の純度は95.7%であることが判った。
〔例示化合物No.1の製造〕
得られた構造式(8)で示されるアミン−アルデヒド中間体7.90g(1.0モル当量)と、下記構造式(9)で示されるジエチルシンナミルホスホネート7.06g(1.2モル当量)とを、無水DMF80mLに溶解させ、得られた溶液を0℃に保持しながら、その溶液中にカリウムt−ブトキシド2.92g(1.1モル当量)を徐々に加えた。反応溶液を室温下で1時間撹拌した後、40℃まで加熱し、反応溶液の温度が40℃に保持されるように加熱しながら5時間撹拌して反応させた。反応溶液を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行なうことによって、黄色結晶9.5gを得た。
得られた黄色結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表1に示す例示化合物No.1のアミン化合物(分子量の計算値:441.21)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが442.5に観測された。このことから、得られた黄色結晶が例示化合物No.1のアミン化合物であることが確認された(収率:93%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.1の純度は99.4%であることが判った。
以上のように、構造式(7)で示されるベンゾフランアミン化合物をホルミル化し、得られた構造式(8)で示されるアミン−アルデヒド中間体に対して構造式(9)で示されるウィッティッヒ試薬を塩基性条件下に反応させることによって、表1に示す例示化合物No.1のアミン化合物を高収率で得ることができた。
(製造例2)例示化合物No.25の製造
製造例1と同様にして製造した構造式(8)で示されるアミン−アルデヒド中間体1.80g(1.0モル当量)と、下記構造式(10)で示されるウィッティッヒ試薬(Wittig試薬)1.41g(1.2モル当量)とを、無水DMF80mLに溶解させ、得られた溶液を0℃に保持しながら、その溶液中にカリウムt−ブトキシド0.82g(1.4モル当量)を徐々に加えた、反応溶液を室温下で1時間撹拌した後、40℃まで加熱し、反応溶液の温度が40℃に保持されるように加熱しながら5時間撹拌して反応させた。反応溶液を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行なうことによって、黄色結晶2.22gを得た。
得られた黄色結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表2に示す例示化合物No.25のアミン化合物(分子量の計算値:467.22)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが468.7に観測された。このことから、得られた黄色結晶が例示化合物No.25のアミン化合物であることが確認された(収率:90%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.25の純度は99.1%であることが判った。
以上のように、構造式(8)で示されるアミン−アルデヒド中間体に対して構造式(10)で示されるウィッティッヒ試薬(Wittig試薬)を塩基性条件下に反応させることによって、表2に示す例示化合物No.25のアミン化合物を高収率で得ることができた。
[実施例]
(実施例1)
電荷発生物質として下記構造式(11)で示されるアゾ化合物1重量部を、テトラヒドロフラン(THF)99重量部にフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製:PKHH)1重量部を溶解させて得た樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで2時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、膜厚80μmのポリエステルフィルムの表面にアルミニウムを蒸着して成る導電性支持体のアルミニウム上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として表1に示す例示化合物No.1のアミン化合物8重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製:C−1400)10重量部とを、THF80重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚10μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、図1に示す積層型の層構成を有する実施例1の電子写真感光体を作製した。
(実施例2〜5)
電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、表1〜表7に示す例示化合物No.14、23、41または61のアミン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5の電子写真感光体を作製した。
(比較例1)
電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、下記構造式(12)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を作製した。
(比較例2)
電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、下記構造式(13)で示される比較化合物Bを用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電子写真感光体を作製した。
[評価1]
以上のようにして作製した実施例1〜5および比較例1,2の各感光体を用い、各感光体に用いた電荷輸送物質の電荷移動度を以下のようにして測定した。各感光体の電荷輸送層表面に金を蒸着し、室温下で減圧しながら、感光体に電界強度2.5×105V/cmの電界を印加し、飛行時間(Time−of−Flight)法によって電荷移動度(cm2/V・sec)を測定し、この値を各感光体に用いた電荷輸送物質の電荷移動度とした。測定結果を表8に示す。
実施例1〜5と比較例1,2との比較から、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物は、一般式(1)においてn=0の化合物に相当する比較化合物Bなどのアミン−スチルベン化合物および従来公知の電荷輸送物質である比較化合物Aなどのトリフェニルアミンダイマー(Triphenylamine dimer;略称TPD)に比べ、2桁以上高い電荷移動度を有することが判った。
(実施例6)
酸化アルミニウム(化学式:Al2O3)と二酸化ジルコニウム(化学式:ZrO2)とで表面処理された樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9重量部と、共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:CM8000)9重量部とを、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、中間層用塗布液を調製した。調製した中間層用塗布液を、厚み0.2mmのアルミニウム製板状導電性支持体上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚1μmの中間層を形成した。
次いで、電荷発生物質として下記構造式(14)で示されるアゾ化合物2重量部を、THF97重量部にポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:BX−1)1重量部を溶解させて得た樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで10時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質として表1に示す例示化合物No.1のアミン化合物10重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製:Z200)14重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2重量部とを、THF80重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、図2に示す積層型の層構成を有する実施例6の電子写真感光体を作製した。
(実施例7〜9)
電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、表1〜表7に示す例示化合物No.18、25または38のアミン化合物を用いる以外は、実施例6と同様にして、実施例7〜9の電子写真感光体を作製した。
(比較例3,4)
電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、前記構造式(12)で示される比較化合物Aまたは前記構造式(13)で示される比較化合物Bを用いる以外は、実施例6と同様にして、比較例3および4の電子写真感光体を作製した。
(実施例10)
実施例6と同様にして、厚み0.2mmのアルミニウム製板状導電性支持体上に、膜厚1μmの中間層を形成した。
次に、電荷発生物質として前記構造式(14)で示されるアゾ化合物1重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製:Z−400)12重量部と、電荷輸送物質として表1に示す例示化合物No.1のアミン化合物10重量部と、3,5−ジメチル−3′,5′−ジ−t−ブチルジフェノキノン5重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.5重量部と、THF65重量部とを、ボールミルで12時間分散し、感光層用塗布液を調製した。この感光層用塗布液を、先に形成した中間層上に、ベーカアプリケータによって塗布した後、温度110℃で1時間熱風乾燥させ、膜厚20μmの感光層を形成した。
以上のようにして、図3に示す単層型の層構成を有する実施例10の電子写真感光体を作製した。
(実施例11)
電荷発生物質として、前記構造式(14)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用いる以外は、実施例6と同様にして、実施例11の電子写真感光体を作製した。
(実施例12〜14)
電荷発生物質として、前記構造式(14)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、表1〜表7に示す例示化合物No.10、28または45のアミン化合物を用いる以外は、実施例6と同様にして、実施例12〜14の電子写真感光体を作製した。
(比較例5,6)
電荷発生物質として、前記構造式(14)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、前記構造式(12)で示される比較化合物Aまたは前記構造式(13)で示される比較化合物Bを用いる以外は、実施例6と同様にして、比較例5および6の電子写真感光体を作製した。
[評価2]
以上のようにして作製した実施例6〜14および比較例3〜6の各感光体について、静電複写紙試験装置(株式会社川口電機製作所製:EPA−8200)を用いて、初期特性および繰返し特性を評価した。評価は、温度22℃、相対湿度65%(65%RH)の常温/常湿(N/N:Normal Temperature/Normal Humidity)環境下および温度5℃、相対湿度20%(20%RH)の低温/低湿(L/L:Low Temperature/Low Humidity)環境下のそれぞれの環境下において行なった。
初期特性は以下のようにして評価した。感光体にマイナス(−)5kVの電圧を印加することによって感光体表面を帯電させ、このときの感光体の表面電位を帯電電位V0(V)として測定し、帯電電位V0の絶対値が大きいほど、帯電性に優れると評価した。ただし、実施例10の単層型感光体の場合には、プラス(+)5kVの電圧を印加することによって感光体表面を帯電させた。
次に、帯電された感光体表面に対して露光を施した。このとき、感光体の表面電位を帯電電位V0から半減させるのに要した露光エネルギを半減露光量E1/2(μJ/cm2)として測定し、半減露光量E1/2が小さいほど、感度に優れると評価した。また露光開始から10秒間経過した時点の感光体の表面電位を残留電位Vr(V)として測定し、残留電位Vrの絶対値が小さいほど、光応答性に優れると評価した。なお、露光には、電荷発生物質として、前記構造式(14)で示されるアゾ化合物を用いた実施例6〜10および比較例3,4の感光体の場合には、露光エネルギ1μW/cm2の白色光を用い、X型無金属フタロシアニンを用いた実施例11〜14および比較例5,6の感光体の場合には、モノクロメータにて分光して得られた波長780nm、露光エネルギ1μW/cm2の単色光を用いた。
繰返し特性は以下のようにして評価した。前述の帯電および露光の操作を1サイクルとして5000回繰返した後、初期特性の評価と同様にして、帯電電位V0、半減露光量E1/2および残留電位Vrを測定し、帯電性、感度および光応答性を評価した。
以上の測定結果を表9に示す。
N/N環境下の初期特性の評価結果から、電荷輸送物質として一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を用いた実施例6〜9および11〜14の感光体は、電荷輸送物質として比較化合物AまたはBを用いた比較例3〜6の感光体に比べ、半減露光量E1/2が小さく高感度であり、また残留電位Vrの絶対値が小さく光応答性に優れることが判った。また電荷輸送物質として一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を用いた実施例10の感光体は、単層型であるにも拘らず、比較例3,4の積層型感光体に比べ、残留電位Vrの絶対値が小さく、光応答性に優れることが判った。
また実施例6〜9と実施例10との比較から、実施例6〜9の積層型感光体は、実施例10の単層型感光体に比べ、半減露光量E1/2が小さく高感度であることが判った。
また、N/N環境下の測定結果とL/L環境下の測定結果との比較から、実施例6〜14の感光体は、N/N環境下の測定結果とL/L環境下の測定結果との差が小さく環境安定性に優れ、L/L環境下においても充分な感度および光応答性を有することが判った。
また、初期特性と繰返し特性との比較から、実施例6〜14の感光体は、N/N環境下およびL/L環境下のいずれにおいても、初期特性と繰返し特性との差が小さく、電気的耐久性に優れることが判った。
(実施例15)
酸化アルミニウム(Al2O3)と二酸化ジルコニウム(ZrO2)とで表面処理された樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9重量部と、共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:CM8000)9重量部とを、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、中間層用塗布液を調製した。この中間層塗布液を塗工槽に満たし、この塗工層に直径40mm、長手方向の長さ340mmのアルミニウム製円筒状導電性支持体を浸漬した後引上げ、乾燥させ、膜厚1.0μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
次いで、電荷発生物質として、Cu−Kα特性X線(波長:1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニン(前記一般式(A)において、R7,R8,R9およびR10が水素原子であるもの)2重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:エスレックBM−S)1重量部と、メチルエチルケトン97重量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層と同様の浸漬塗布法にて中間層上に塗布し、乾燥させ、膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質として表1に示す例示化合物No.1のアミン化合物10重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製:ユーピロンZ200)20重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製:KF−96)0.004重量部とを、THF110重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した中間層と同様の浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層上に塗布した後、温度110℃で1時間乾燥させ、膜厚23μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、図2に示す積層型の層構成を有する実施例15の電子写真感光体を作製した。
(実施例16,17)
電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、表1〜表7に示す例示化合物No.18または25のアミン化合物を用いる以外は、実施例15と同様にして、実施例16および17の電子写真感光体を作製した。
(比較例7)
電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、前記構造式(12)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例15と同様にして、比較例7の電子写真感光体を作製した。
(実施例18)
電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を25重量部に変更する以外は、実施例15と同様にして、実施例18の電子写真感光体を作製した。
(実施例19,20)
電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を25重量部に変更し、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のアミン化合物に代えて、表1〜表7に示す例示化合物No.25または50のアミン化合物を用いる以外は、実施例15と同様にして、実施例19および20の電子写真感光体を作製した。
(実施例21)
電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を10重量部に変更する以外は、実施例15と同様にして、実施例21の電子写真感光体を作製した。
(参考例)
電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を31重量部に変更する以外は、実施例15と同様にして、電子写真感光体を作製した。ただし、実施例15と同量のTHFではポリカーボネート樹脂が完全には溶解せず、電荷輸送層用塗布液の粘度が高くなったので、THFを追加し、ポリカーボネート樹脂が完全に溶解した電荷輸送層用塗布液を調製し、これを用いて電荷輸送層を形成した。
しかしながら、円筒状の感光体の長手方向端部にブラッシング現象による白濁が生じ、以下の評価3に示す特性評価を行なうことができなかった。このブラッシング現象は、電荷輸送層用塗布液中の溶剤の量が過剰であったことが原因であると考えられる。
[評価3]
以上のようにして作製した実施例15〜21および比較例7の各感光体を、市販のデジタル複写機AR−C150(商品名、シャープ株式会社製)を感光体の回転周速が毎秒117mmになるように改造した試験用複写機にそれぞれ搭載し、各感光体の耐刷性、電気特性および環境安定性を以下のようにして評価した。なお、前述のデジタル複写機AR−C150は、感光体表面の帯電を負に帯電して電子写真プロセスを行なう負帯電型の画像形成装置である。
(a)耐刷性
試験用複写機を用い、所定のパターンのテスト画像を記録用紙4万枚に形成した後、搭載していた感光体を取出して感光層の膜厚d1(μm)を測定し、この値(d1)と作製時の感光層の膜厚d0との差を膜減り量Δd(=d0−d1)として求め、耐刷性の評価指標とした。なお、膜厚の測定は、光干渉法による瞬間マルチ測光システムMCPD−1100(商品名、大塚電子株式会社製)で行なった。
(b)電気特性および環境安定性
試験用複写機から現像器を取外し、代わりに現像部位に表面電位計(ジェンテック社製:CATE751)を設けた。この複写機を用い、温度22℃、相対湿度65%(65%RH)の常温/常湿(N/N)環境下において、レーザ光による露光を施さなかった場合の感光体の表面電位を帯電電位V1(V)として測定した。またレーザ光によって露光を施した場合の感光体の表面電位を露光電位VL(V)として測定し、これをN/N環境下における露光電位VLNとした。帯電電位V1の絶対値が大きいほど、帯電性に優れると評価し、露光電位VLNの絶対値が小さいほど、光応答性に優れると評価した。
また、温度5℃、相対湿度20%(20%RH)の低温/低湿(L/L)環境下において、N/N環境下と同様にして、露光電位VL(V)を測定し、これをL/L環境下における露光電位VLLとした。N/N環境下における露光電位VLNと、L/L環境下における露光電位VLLとの差の絶対値を、電位変動ΔVL(=|VLL−VLN|)として求めた。電位変動ΔVLが小さい程、環境安定性に優れると評価した。
これらの評価結果を表10に示す。
実施例15〜20と比較例7との比較から、電荷輸送物質として一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を用いた実施例15〜20の感光体は、電荷輸送物質として比較化合物Aを用いた比較例7の感光体に比べ、N/N環境下の露光電位VLNの絶対値が小さく、電荷輸送物質の重量とバインダ樹脂の重量との比率(電荷輸送物質/バインダ樹脂)を10/12以下とし、高い比率でバインダ樹脂を加えた場合であっても、光応答性に優れることが判った。また実施例15〜20の感光体は、比較例7の感光体に比べ、電位変動ΔVLの値が小さく環境安定性に優れ、L/L環境下においても充分な光応答性を示すことが判った。
また、実施例15〜20と実施例21との比較から、一般式(1)で示されるエナミン化合物の重量Aとバインダ樹脂の重量Bとの比率(A/B)が10/30〜10/12の範囲にある実施例15〜20の感光体の方が、前記比率A/Bが10/12を超え、バインダ樹脂の比率が低い実施例21の感光体よりも、膜減り量Δdが小さく、耐刷性に優れることが判った。
以上のように、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物は、電荷輸送能力に優れることが判った。また一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を電荷輸送物質として感光層に含有させることによって、帯電性、感度および光応答性に優れるとともに、環境安定性および電気的耐久性にも優れる電子写真感光体を得ることができた。また電荷輸送物質として、一般式(1)で示される本発明のアミン化合物を用いることによって、光応答性を低下させることなく、電荷輸送層における電荷輸送物質の重量とバインダ樹脂の重量との比率(電荷輸送物質/バインダ樹脂)を10/30以上10/12以下としてバインダ樹脂の比率を高くし、電荷輸送層の耐刷性を向上させることができた。