JP4495666B2 - 電子写真感光体および画像形成装置 - Google Patents

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本発明は、有機光導電性材料を用いた電子写真感光体および画像形成装置に関する。
近年、有機光導電性材料は幅広く研究開発され、電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称す)に利用されるだけでなく、静電記録素子、センサ材料または有機エレクトロルミネセント(Electro Luminescent;EL)素子などに応用され始めている。
また、有機光導電性材料を用いた電子写真感光体は、複写機の分野に限らず、従来では写真技術が使われていた印刷版材、スライドフィルムおよびマイクロフィルムなどの分野においても利用されており、レーザ、発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)または陰極線管(Cathode Ray Tube;CRT)などを光源とする高速プリンタにも応用されている。
したがって、有機光導電性材料およびそれを用いた電子写真感光体の用途は急激に広がりつつあり、これらに対する要求も、より高度で幅広いものになりつつある。
従来から、電子写真感光体としては、セレン、酸化亜鉛またはカドミウムなどの無機光導電性材料を主成分とする感光層を備える無機感光体が広く用いられている。
しかしながら無機感光体は感光体としての基礎特性をある程度は備えているけれども、感光層の成膜が困難で可塑性が悪く製造原価が高いなどの問題がある。
さらに、無機光導電性材料は一般に毒性が強く製造上および取り扱い上、大きな制約がある。
これに対し、有機光導電性材料を用いた有機感光体を形成する、感光層は、その成膜性がよく、可撓性も優れている上に、軽量で、透明性もよく、適当な増感方法によって広範囲の波長域に対して良好な感度を示す感光体を容易に設計できるなどの利点を有しているので、次第に電子写真感光体の主力として開発されてきている。初期の有機感光体は、その感度および耐久性に欠点を有していたが、これらの欠点は電荷発生機能と電荷輸送機能とをそれぞれ別々の物質に分担させた機能分離型電子写真感光体の開発によって著しく改善されている。
また、機能分離型感光体は、電荷発生機能を担う電荷発生物質および電荷輸送機能を担う電荷輸送物質に関してそれぞれの材料選択範囲が広く、任意の特性を有する電子写真感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。
このような機能分離型感光体に使用される電荷発生物質として、フタロシアニン顔料、スクアリリウム色素、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、シアニン色素、スクアリン酸染料およびピリリウム塩系色素などの多種の物質が検討され、耐光性が強く電荷発生能力の高い種々の材料が提案されている。
一方、電荷輸送物質としては、例えばピラゾリン化合物(例えば、特許文献1)、ヒドラゾン化合物(例えば、特許文献2〜4)、トリフェニルアミン化合物(例えば、特許文献5および6)スチルベン化合物(例えば、特許文献7および8)などの種々の化合物が知られている。
電荷輸送物質に関しては以下に記載の:
(1)光および熱に対して安定であること、
(2)感光体の表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(NOX)および硝酸などに対して安定であること、
(3)高い電荷輸送能力を有すること、
(4)有機溶剤や結着剤との相溶性が高いこと、
(5)製造が容易で安価であること
などの5項目が要求されているが、前記の電荷輸送物質は、これらの要求の一部を満足するが、すべてを高いレベルで満足するには至っていない。
また、上記の5項目の中でも、特に、(3)の「高い電荷輸送能力を有すること」が求められる。これは、電荷輸送物質がバインダー樹脂とともに分散されて形成された電荷輸送層が感光体の表面層となる場合、充分な光応答性を確保するために、電荷輸送物質には高い電荷輸送能力が求められているからである。
また、感光体が複写機またはレーザビームプリンタなどに搭載されて使用される際、感光体の表面層は、クリーニングブレードや帯電ローラなどの接触部材によってその一部が削り取られることを余儀なくされる。したがって、複写機やレーザビームプリンタの高耐久化のためには、それらの接触部材に対して強い表面層、すなわちそれらの接触部材によって削り取られることの少ない耐刷性の高い表面層が求められる。
そこで、表面層を強くして耐久性を向上させるために、表面層である電荷輸送層中のバインダー樹脂の含有率を高くすると、光応答性が低下する。これは、電荷輸送物質の電荷輸送能力が低いため、バインダー樹脂の含有率の増加に伴って電荷輸送層中の電荷輸送物質が希釈され、電荷輸送層の電荷輸送能力が一層低下して光応答性が悪くなるからである。
また、光応答性が悪いと、残留電位が上昇し、感光体の表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになるので、露光によって消去されるべき部分の表面電荷が充分に消去されず、早期に画像品質が低下するなどの弊害が生じる。
したがって、充分な光応答性を確保するために、電荷輸送物質には高い電荷輸送能力が求められる。
また最近ではデジタル複写機およびプリンタなどの電子写真装置の小型化および高速化が進み、感光体特性としては、高速化に対応したより高感度なものが要求されており、また、低温環境下で用いた場合にも感度が低下せず、種々の環境下において特性の変化が小さく信頼性が高いものが求められている。
したがって、電荷輸送物質としてはますます高い電荷輸送能力が求められている。また高速プロセスでは露光から現像までの時間が短いので、光応答性がよい感光体が求められている。前記のように、光応答性は電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存するのでこのような点からもより高い電荷輸送能力を有する電荷輸送物質が求められている。
従来、このような要求を満たす電荷輸送物質の開発を目的として、種々の分子デザインが行われ、基本構造中により大きく共役系を広げるために、ヒドラゾン構造とスチリル構造を合わせ持つ化合物なども、優れた性能を有する化合物として提案されている(例えば、特許文献9参照)。しかしながら、これらの化合物でも低温環境下で用いた場合には感度低下が起こり、十分な電荷輸送能力を示すという点では改良しなければならず、感光体の性能は十分ではない。
特公昭52−4188号公報 特開昭54−50128号公報 特公昭55−42380号公報 特開昭55−52063号公報 特公昭58−32372号公報 特開昭54−151955号公報 特開昭58−198043号公報 特開平2−190862号公報 特開平5−66587号公報
したがって、本発明は、高いホール輸送能力を有する電荷輸送物質を開発することにより、バインダー樹脂の含有量を増やすことを可能にし、その結果、耐久性が高く、かつ低温環境下または高速プロセスで用いた場合にもその特性が低下しない信頼性が高い電子写真感光体および画像形成装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意努力研究を重ねた結果、電荷輸送物質がヒドラゾン構造と、ビスジエン構造またはビストリエン構造とを併せ持ち広がった共役系を形成することにより、帯電電位が高く高感度で、かつ十分な光応答性を示し、さらに高いホール輸送力を有することを見出し、該電荷輸送物質を含む電子写真感光体を開発することにより本発明を完成するに至った。
しかるに、本発明によれば、導電性材料からなる導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する感光層を備える電子写真感光体において、前記電荷輸送物質が、一般式(1):
Figure 0004495666
(式中、Ar1は任意に置換されていてもよいアリール基または複素環基を示し、Ar2は水素原子または任意に置換されていてもよいアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはアラルキル基を示し、Ar3およびAr6は任意に置換されていてもよいアリーレン基を示し、Ar4は任意に置換されていてもよい、アリール基、複素環基、アラルキル基またはアルキル基を示し、Ar5は水素原子または任意に置換されていてもよいアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはアラルキル基を示し、また、Ar1とAr2およびAr4とAr5は、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよく、R1、R2およびR3は同一または異なって、水素原子または任意に置換されていてもよいアルキル基、アリール基、複素環基もしくはアラルキル基を示し、nは1または2を示し、nが2のとき、R2およびR3はそれぞれ同一または異なっていてもよい)
で示され、有機光導電性材料として含まれることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、前記有機光導電性材料が、一般式(1)の具体例として、一般式(2):
Figure 0004495666
(式中、Ar1、Ar2、Ar4、Ar5およびAr6、は前記一般式(1)において定義したとおりであり、aは水素原子、ハロゲン原子または任意に置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基もしくは炭素数1〜8のジアルキルアミノ基を示し、mは1〜6の整数を示すが、ただし、mが2以上の時、それぞれのaは互いに独立して同一または異なってもよい)
で示される電荷輸送物質であることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
さらに本発明によれば、さらに前記有機光導電性材料が、一般式(1)または(2)の化合物の具体例として、一般式(3):
Figure 0004495666
(式中、Ar4、Ar5、Ar6、aおよびmは前記一般式(1)において定義したとおりであり、また、bは水素原子、ハロゲン原子または任意に置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基もしくは炭素数1〜8のジアルキルアミノ基示し、lは1〜5の整数を示すが、ただし、lが2以上の時、それぞれのbは互いに独立して同一または異なっていてもよい)
で示される電荷輸送物質であることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
本発明によれば、感光層に有機光導電性材料として、前記一般式(1)、さらに詳しくは前記一般式(2)、より詳しくは前記一般式(3)で示される構造、すなわち、ヒドラゾン構造と、ビスジエン構造またはビストリエン構造とを併せ持ち広がった共役系を形成している電荷輸送物質を、電子写真感光体に含有させることにより、帯電電位が高く高感度で、かつ十分な光応答性を示し、さらに高いホール輸送能力を有することにより、バインダー樹脂の含有量を増やすことを可能にし、その結果耐久性が高く、かつ低温環境下または高速プロセスで用いた場合にもこれらの特性が低下しない、信頼性の高い電子写真感光体を提供することができる。
さらに本発明によれば、合成的に最も入手が容易な種々の置換の導入されたベンゾフェノン誘導体を原料とする電荷輸送物質を有機光導電性材料として使用できるので、上記のように信頼性の高い電子写真感光体を安価で製造できる。
また、本発明によれば、前記のように、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また耐久性に優れ、低温環境下または高速プロセスで用いた場合にもそれらの特性が低下しない電子写真感光体が備えられるので、各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い画像形成装置を提供することができる。
本発明による電子写真感光体は、前記のように一般式(1):
Figure 0004495666
一般式(2):
Figure 0004495666
または一般式(3):
Figure 0004495666
のいずれかで示される電荷移動度の高い電荷輸送物質を有機光導電性材料として含有することを特徴とする。
上記一般式(1)のAr1で定義されているアリール基または複素環基の例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチルおよびビフェニリルなどのアリール基、ならびにフリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリルおよびベンゾチエニルなどの複素環基を挙げることができる。
Ar2で定義されているアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピルおよびiso−プロピルなどのアルキル基が挙げられ、アリール基および複素環基に関しては、Ar1における定義と同一であり、アラルキル基の例としてはベンジルおよびp−メトキシベンジルなどが挙げられる。
Ar3およびAr6で定義されているアリーレン基としては、p-フェニレン、メチル-p-フェニレン、m-フェニレン、1、4-ナフチレン、ビフェニレンなどが挙げられる。
Ar4で定義されているアルキル基、アリール基、複素環基およびアラルキル基に関しては、上記Ar1およびAr2で例示したとおりである。
Ar5で定義されているアルキル基、アリール基、複素環基およびアラルキル基に関しては、上記Ar1およびAr2で例示したとおりである。
また、上記一般式(1)において、Ar1とAr2およびAr4とAr5が、互いに結合し手形成し得る環構造としては、インダン、テトラヒドロナフタレン、ベンゾスベロン等を挙げることができる。
また、上記一般式(1)においてR1、R2、およびR3の水素原子以外のアルキル基、アリール基、複素環基およびアラルキル基の具体例は、上記で例示したとおりである。
上記一般式(2)で定義したaの任意に置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピルおよびiso−プロピルなどのアルキル基、モノフルオロメチル、1,1−ビスフロオロエチルおよび1,1,1−トリスフルオロブチルなどのフルオロアルキル基、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよびヘプタフルオロプロピルなどのパーフルオロアルキル基を挙げることができ、炭素数1〜3のアルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびiso−プロポキシなどのアルコキシ基を挙げることができ、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基としてはジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジ−iso−プロピルアミノなどのジアルキルアミノ基を挙げることができる。
さらに上記一般式(3)で定義したbについては、上記一般式(2)のaに対する定義と同じである。
本発明において、感光層に含有される前記一般式(1)で示される電荷輸送物質は新規化合物であり、例えば以下のようにして製造することができる。
例えば、一般式(1)においてR1が水素原子である化合物は、一般式(4):
Figure 0004495666
(式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr6は一般式(1)における定義と同じである)
で表されるヒドラゾン中間体を、ビルスマイヤー反応によりビスホルミル化し、一般式(5):
Figure 0004495666
(式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr6は一般式(1)における定義と同じである)
で表されるヒドラゾン−ビスアルデヒド中間体を得、これを一般式(6):
Figure 0004495666
(式中、Ar4、Ar5、R2、R3およびnは一般式(1)における定義と同じであり、R4は、炭素数1〜3のアルキル基またはアリール基を示す)
で表されるウィッティッヒ(Wittig)試薬と、塩基性条件下で反応させることによって製造することができる。
なお、上記の一般式(4)で表されるヒドラゾン中間体は、例えば一般式(4a):
Figure 0004495666
(式中、Ar1およびAr2は一般式(1)における定義と同じである)
で表されるケトン化合物と、一般式(4b):
Figure 0004495666
(式中、Ar3およびAr6は一般式(1)における定義と同じである)
で表されるヒドラジン化合物とを、脱水縮合させることによって製造することができる。
この脱水縮合反応は、一般式(4a)で表されるケトン化合物と一般式(4b)で表されるヒドラジン化合物とをアルコール系溶媒中で酸触媒の存在下に加熱することによってほぼ定量的に行うことができる。
この脱水縮合反応の反応温度および反応時間は、特に限定されるものではなく、使用されるケトン化合物およびヒドラジン化合物の種類および量ならびに使用する溶媒などの各種条件に応じて適宜選択されるが、反応温度は70〜80℃で、反応時間は4〜8時間で十分である。
脱水縮合反応に使用されるアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。
また、酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸および酢酸などが挙げられる。酸触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、一般式(4a)で表されるケトン化合物1.0モル当量に対して、0.001〜0.01モル当量程度で十分である。
例えば、前記一般式(4)において、Ar3がフェニレン基であり、Ar6がナフチレン基であり、Ar1およびAr2がフェニル基であるヒドラゾン中間体は、一般式(4a)で表されるケトン化合物としてベンゾフェノンを用い、一般式(4b)で表されるヒドラジン化合物としてN-フェニル-N-ナフチルヒドラジンを用いて製造することができる。
一般式(4)で表されるヒドラゾン中間体のビスホルミル化は、例えばビルスマイヤー反応などの公知のホルミル化反応を用いて行なうことができる。
すなわち、適当な溶媒中、オキシ塩化リンとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−N−フェニルホルムアミドまたはN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、ビルスマイヤー試薬を調製する。
ビルスマイヤー試薬の調製に使用される溶媒としては、DMFなどの非プロトン性極性溶媒、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素およびトルエンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
次いで、調製したビルスマイヤー試薬2.0〜2.3モル当量に対して、一般式(4)で表されるヒドラゾン中間体1.0モル当量を加え、80〜120℃の加熱下で2〜10時間撹拌する。反応終了後、アルカリ水溶液で加水分解を行ない、一般式(5a)で表されるヒドラゾン−ビスアルデヒド中間体を得る。
加水分解に使用されるアルカリ水溶液としては、1〜8規定の水酸化ナトリウムまたはカリウム水溶液などが挙げられる。
上記の一般式(6)で表されるウィッティッヒ試薬は、例えば、一般式(6a):
(R4O)3P (6a)
(式中、R4は一般式(6)における定義と同じである)
で表される亜リン酸化合物と、一般式(7):
Figure 0004495666
(式中、Ar4、Ar5、R2、R3、R3およびnは一般式(1)における定義と同じであり、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるハロゲン化アリル化合物とを略等モル量ずつ無溶媒で、加熱下に撹拌混合して製造することができる。
上記一般式(6a)で表される亜リン酸化合物としては、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリイソプロピルなどの亜リン酸トリアルキル、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸トリアリールなどが挙げられる。
また、一般式(7)で表されるハロゲン化アリル化合物としては、一般式(7)においてXが塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であるものなどが挙げられ、これらの中でも、Xが塩素原子または臭素原子であるものが好適に用いられる。
一般式(5a)で表されるヒドラゾン−ビスアルデヒド中間体と一般式(6)で表されるウィッティッヒ試薬によるウィッティッヒ−ホルナー反応は、例えば以下のようにして行なわれる。まず、適当な溶媒中に、一般式(5a)で表されるヒドラゾン−ビスアルデヒド中間体1.0モル当量と、一般式(6)で表されるウィッティッヒ試薬2.0〜2.2モル当量と、金属アルコキシド塩基2.0〜2.5モル当量とを加え、室温(20〜30℃)下または30〜60℃の加熱下で、2〜10時間撹拌する。この反応によって、一般式(1)においてR1が水素原子である化合物を高収率で製造することができる。
ウィッティッヒ−ホルナー反応において使用される溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、DMF、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
金属アルコキシド塩基としては、カリウムt−ブトキサイド、ナトリウムエトキサイドおよびナトリウムメトキサイドなどが挙げられる。
また、一般式(1)においてR1が水素原子以外の基である化合物は、例えば、前記の一般式(4)で表されるヒドラゾン中間体をフリーデル−クラフト反応によりビスアシル化し、一般式(5b):
Figure 0004495666
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar6およびR1は一般式(1)における定義と同じであるが、ただしR1は水素原子ではない)
で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体を得、この中間体と、前記の一般式(7)で表されるハロゲン化アリル化合物を金属マグネシウムで処理して得られるグリニヤール試薬とを反応させることによって製造することができる。
フリーデル−クラフト反応によりビスアシル化を行なう場合には、例えば、一般式(4)で表されるヒドラゾン中間体と、一般式(7a):
Figure 0004495666
(式中、R1は一般式(1)における定義と同じであるが、ただしR1は水素原子ではなく、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるハロゲン化アシル化合物か、または一般式(7b):
Figure 0004495666
(式中、R1は一般式(1)における定義と同じであるが、ただしR1は水素原子ではない)
で表されるカルボン酸無水物とを、ルイス酸の存在下に反応させて、一般式(7)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体を得ることができる。
一般式(4)で表されるヒドラゾン中間体に対するフリーデル−クラフト反応は、例えば以下のようにして行なわれる。まず、適当な溶媒中にルイス酸と一般式(7a)で表されるハロゲン化アシル化合物または一般式(7b)で表されるカルボン酸無水物とを加え、0.5〜1時間程度撹拌してフリーデル−クラフトアシル化試薬を調製する。
このフリーデル−クラフト反応に使用される溶媒としては、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられ、ルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化亜鉛などが挙げられる。
ルイス酸は、一般式(7a)で表されるハロゲン化アシル1.0モル当量に対しては、例えば1.0〜1.2モル当量、また一般式(7b)で表されるカルボン酸無水物1.0モル当量に対しては、例えば2.0〜2.2モル当量の量で用いることができる。
次いで、調製されたフリーデル−クラフトアシル化試薬2.0〜2.4モル当量に対して、一般式(4)で表されるヒドラゾン中間体1.0モル当量を加え、反応溶液を−40℃〜30℃に保持しながら2〜8時間、さらに室温あるいは40〜60℃に加熱しながら撹拌する。反応終了後、水酸化ナトリウムまたはカリウムの1〜8規定水溶液で加水分解を行ない、一般式(5b)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体を得る。
以上のようにして、一般式(5b)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体を高収率で製造することができる。
一般式(5b)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体と前記のグリニヤール試薬とのグリニヤール反応は、例えば以下のようにして行なわれる。まず、適当な溶媒中に、一般式(7)で表されるハロゲン化アリル化合物と金属マグネシウムとを略等モル量ずつ加え、グリニヤール試薬を調製する。
グリニャール反応に使用される溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられ、金属ナトリウムなどで脱水して用いることが特に好ましい。
調製したグリニヤール試薬2.1〜2.4モル当量に対して、冷却下で一般式(5b)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体1.0モル当量を加え、室温下または30℃〜60℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。以上のようにして、一般式(1)で表される本発明のヒドラゾン構造とビスブタジエン構造あるいはビストリエン構造を合わせ持つ化合物のうち、一般式(1)においてR1が水素原子以外の基である化合物を高収率で製造することができる。
以上のようにして製造される一般式(1)で表される本発明の電荷輸送物質は、通常の分離手段、例えば溶媒抽出法、再結晶法またはカラムクロマトグラフィーなどによって反応生成物から容易に単離精製でき、高純度のものとして得ることができる。
本発明による電子写真感光体は、導電性材料からなる導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生物質と前記一般式(1)で表される電荷輸送物質とを有機光導電性材料として含有する感光層を備えることを特徴とする。
本発明における導電性支持体は、感光体の電極としての役割を果たすとともに感光層の支持部材としても機能する。該導電性支持体の形状としては、シート状に限定されることなく、円柱状、円筒状または無端ベルト状などであってもよい。
本発明において導電性支持体を構成する導電性材料としては、例えばアルミニウム、銅、亜鉛、チタンなどの金属単体、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの合金を用いることができる。
さらに、上記の金属材料だけに限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンもしくはポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙もしくはガラスなどの表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。これらの導電性材料は所望の形状に加工されて使用される。
また、導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。
レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているために、感光体表面で反射されるレーザ光と感光体内部で反射されるレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となることがある。しかしながら、導電性支持体の表面に上記のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉に基づく画像欠陥を防止することができる。
導電性支持体上に設けられる感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を含む一層でもよいが、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層から形成される積層構造であってもよい。
上記のように感光層が積層構造である場合、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、電荷発生層と電荷輸送層のそれぞれに最適な材料を選択することが可能となる。これにより、より高感度で、さらに繰り返し使用時の安定性も増した高耐久性を有する電子写真感光体を得ることができる。
電荷発生物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料、オキソチタニウムフタロシアニン化合物などの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料、ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられる。
これらの電荷発生物質は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が組合わされて使用されてもよい。
本発明者らは、上記の電荷発生物質と、一般式(1)で表される電荷輸送物質を用いて種々の感光体を作製し、その感度および解像度について検討した結果、中でも、フタロシアニン化合物、特にオキソチタニウムフタロシアニン化合物を用いることが好ましいことを見出した。該オキソチタニウムフタロシアニン化合物とは、オキソチタニウムフタロシアニンおよびその誘導体のことを意味し、オキソチタニウムフタロシアニン誘導体としては、オキソチタニウムフタロシアニンのフタロシアニン基に含まれる芳香環の水素原子が塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基などの置換基で置換されたもの、オキソチタニウムフタロシアニンの中心金属であるチタン原子に塩素原子などの配位子が配位したものなどが挙げられる。
本発明において用いられるオキソチタニウムフタロシアニン化合物は、Cu−Kα特性X線(波長:1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて、入射X線と回折X線とが成す角度を表すブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)が少なくとも27.2°に回折ピークを有する結晶構造を有するものが、前記一般式(1)で表される電荷輸送物質と併用した際に、感度および解像度に優れる感光体を実現させることができるので特に好ましい。
すなわち、上記オキソチタニウムフタロシアニン化合物は、電荷発生能力および電荷注入能力に優れるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生するとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく、電荷輸送物質に効率よく注入できるものと考えられる。さらに、本発明の一般式(1)で表される電荷輸送物質は、電荷輸送能力に優れるので、該オキソチタニウムフタロシアニン化合物から注入される電荷を感光層表面に円滑に輸送することができ、優れた感度および解像度有する感光体を実現することができるものと考えられる。
上記のオキソチタニウムフタロシアニン化合物は、例えばMoser, Frank HおよびArthur L. ThomasによるPhthalocyanine Compounds、Reinhold Publishing Corp.、New York、1963に記載されている方法などの従来公知の製造方法に従って製造することができる。
すなわち、オキソチタニウムフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンとを、加熱融解するか、またはα−クロロナフタレンなどの適当な溶媒中で加熱することによってジクロロチタニウムフタロシアニンを合成し、これを塩基または水で加水分解することによって製造できる。また、イソインドリンとテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N−メチルピロリドンなどの適当な溶媒中で加熱反応させることによっても、オキソチタニウムフタロシアニンを製造することができる。
本発明において用いられる電荷発生物質は、他の増感染料と併用してもよい。
そのような増感染料としては、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料が挙げられる。
上記の電荷発生物質が電荷発生層に含有される場合には、結着性を向上させるために、バインダー樹脂が含有されてもよい。
該バインダー樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などが挙げられる。
該共重合体樹脂の具体例としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などが挙げられるが、バインダー樹脂は上記のものに限定されるものではなく、当該技術分野において一般に用いられる樹脂をバインダー樹脂として使用することができる。バインダー樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
電荷発生層中における電荷発生物質の割合は、10重量%以上、99重量%以下であることが好ましい。電荷発生物質の割合が10重量%未満であると、感光体の感度が低下するおそれがあり、電荷発生物質の割合が99重量%を超えると、バインダー樹脂の含有量が低すぎて電荷発生層の膜強度が低下する可能性があり、さらに電荷発生層中における電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、消去されるべき部分以外の表面電荷が露光によって減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなるおそれがあるからである。
電荷発生層の形成方法としては、前記の電荷発生物質を導電性支持体の表面に真空蒸着する真空蒸着法、前記の電荷発生物質を含む電荷発生層用塗布液を導電性支持体の表面に塗布する塗布法などが挙げられ、これらの中でも操作の簡便性などの点から塗布法が好ましい。
電荷発生層用塗布液は、例えば、適当な溶剤中に電荷発生物質と、必要に応じてバインダー樹脂を加え、従来公知の方法で分散させて調製できる。
電荷発生層用塗布液に使用される溶剤としては、例えばジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して混合溶剤として使用してもよい。
電荷発生物質は、溶剤中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理さうることができる。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などが挙げられる。
電荷発生物質の溶剤中への分散に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどが挙げられる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択できる。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成でき、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、好適に用いられる。
浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。なお、塗布方法はこれらに限定されるものではなく、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択することができる。
なお、電荷発生層の層厚は、0.05μm〜5μmが好ましく、さらに0.1μm〜1μmがより好ましい。これは、電荷発生層の層厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体1の感度が低下するおそれがあるからであり、逆に層厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体の感度が低下するおそれがあるからである。
電荷発生層上に設けられる電荷輸送層は、電荷発生層に含まれる電荷発生物質が発生した電荷を受入れ、これを輸送する能力を有する前記の一般式(1)、(2)または(3)で表される電荷輸送物質と、該電荷輸送物質を結着させるバインダー樹脂とを含んで形成することができる。
前記のように、一般式(1)で表される本発明の電荷輸送物質は、電荷輸送能力、特にホール輸送能力に優れるので、帯電性、感度および光応答性などの電気特性、電気的耐久性および環境安定性に優れる信頼性の高い感光体を実現することができる。またメンテナンス時などに外光に曝されても上記の電気特性が低下しない感光体が実現される。
一般式(1)で表される電荷輸送物質は、例えば以下の表1〜表4に示されている例示化合物No.1〜No.60からなる群から選択される1種を単独で、または2種以上を混合して使用できる。
電荷輸送層13を形成するバインダー樹脂には、一般式(1)で表される本発明の電荷輸送物質との相溶性に優れるものが選択される。
このバインダー樹脂の具体例としては、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびこれらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。
またこれらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂も挙げられる。これらの樹脂は、1種が単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
上記の樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので、好適に用いられる。
電荷輸送層において、一般式(1)で表される電荷輸送物質の重量(A)に対するバインダー樹脂の重量(B)の比率(B/A)は、1.2〜3.0であることが好ましい。
該比率を1.2以上とし、バインダー樹脂を高い比率で電荷輸送層に含有させることによって、電荷輸送層の耐刷性を向上させることができる。
該比率が1.2未満であると、バインダー樹脂の比率が低くなり過ぎ、電荷輸送層の耐刷性が低下して感光層の膜減り量が増加し、感光体の帯電性が低下するおそれがある。また、該比率B/Aが3.0を超えると、バインダー樹脂の比率が高くなり過ぎ、感光体の感度が低下するおそれがある。さらに電荷輸送層を浸漬塗布法によって形成する場合に塗布液の粘度が増大して塗布速度が低下し、生産性が著しく悪くなるおそれもある。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層に白濁が発生する可能性がある。
通常、電荷輸送層におけるバインダー樹脂の比率を高くすると、結果として電荷輸送物質の含有比率が低下する。従来公知の電荷輸送物質を用いた場合には、電荷輸送層における電荷輸送物質の重量に対するバインダー樹脂の重量の比率(バインダー樹脂/電荷輸送物質)を同様に1.2以上とすると、感光体の光応答性が不足し、画像欠陥の生じることがある。しかしながら、これに対し、一般式(1)で表される電荷輸送物質は、特に優れた電荷輸送能力を有するので、上記比率B/Aを1.2以上として、電荷輸送層中におけるバインダー樹脂の比率を高くしても、感光体は、充分に高い光応答性を示し、高品質の画像を提供することが可能である。
したがって、本発明によれば、前記比率B/Aを1.2〜3.0としても光応答性を低下させることなく、電荷輸送層の耐刷性が向上し、機械的耐久性も向上した感光体を提供することができる。
電荷輸送層は、本発明の好ましい特性を損なわない範囲内で、一般式(1)で表される電荷輸送物質以外の、従来の電荷輸送物質を含有してもよい。
一般式(1)で表される電荷輸送物質と併用可能な電荷輸送物質としては、エナミン−スチリル誘導体、エナミン−ヒドラゾン誘導体、エナミン−ブタジエン誘導体およびエナミン−ヘキサトリエン誘導体などのエナミン化合物、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、一般式(1)で表される電荷輸送物質以外のヒドラゾン化合物、スチリル化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ならびにベンジジン誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、例えばポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(1−ビニルピレン)およびポリ(9−ビニルアントラセン)なども挙げられる。
また、電荷輸送層には、本発明の好ましい特性を損なわない範囲内で、可塑剤、レベリング剤、または無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などの各種添加剤を添加してもよい。
可塑剤またはレベリング剤を添加することによって、電荷輸送層の成膜性、可撓性または表面平滑性を向上させることができる。
そのような可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
無機化合物または有機化合物の微粒子を添加することによって、電荷輸送層の機械的強度を増強し、また電気特性を向上させることができる。このような無機化合物の具体的な例としては、酸化チタンなどの金属酸化物微粒子が挙げられる。また有機化合物の微粒子の具体的な例としては、四フッ化エチレン重合体微粒子などのフッ素原子含有ポリマーの微粒子が挙げられる。
電荷輸送層は、前記の電荷発生層の形成と同様に、塗布法によって形成できる。すなわち、一般式(1)で表される電荷輸送物質および前記のバインダー樹脂を含む電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布することによって形成することができる。
電荷輸送層用塗布液は、例えば、適当な溶媒中に一般式(1)で表される電荷輸送物質およびバインダー樹脂、ならびに必要に応じて前記の一般式(1)で表される電荷輸送物質以外の電荷輸送物質および添加剤を加え、溶解または分散させることによって調製することができる。
電荷輸送層用塗布液に使用される溶剤としては、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また前記の溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。
電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、前記の電荷発生層用塗布液の塗布方法として挙げられたものを用いることができるが、中でも、特に浸漬塗布法は、前記のように種々の点で優れているので、電荷輸送層を形成する場合にも好適に用いられる。
電荷輸送層の膜厚は、5μm〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜40μmである。
電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがあり、膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下する可能性がある。
本発明における感光層は、前記電荷発生物質と電荷輸送物質を含む一層であってもよいが、前記のようにして形成される電荷発生層と電荷輸送層とが積層されて成る積層構造を有してもよい。
上記のように電荷発生層と電荷輸送層とが積層されている場合、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、各層を構成する材料を独立して選択することができるので、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することができる。したがって、帯電性、感度および光応答性などの電気特性、ならびに電気的および機械的耐久性に特に優れる感光体を製造することができる。
感光層の各層、すなわち電荷発生層および電荷輸送層には、本発明の好ましい特性を損なわない範囲内で、電子受容物質および色素などの増感剤を1種または2種以上添加してもよい。
増感剤を添加することによって、感光体の感度が向上し、さらに繰返し使用による残留電位の上昇および疲労などが抑えることができ、電気的耐久性を向上させることができる。
添加し得る電子受容物質としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド化合物、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物、またはジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料、またこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることができる。
色素などの増感剤としては、例えばキサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料または銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
また、感光層を構成する電荷発生層および電荷輸送層の各層には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加してもよい。
感光層を構成する電荷発生層および電荷輸送層の各層、好ましくは電荷輸送層に酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加することによって、感光体の電位特性を向上させることができる。また各層を塗布によって形成する際の塗布液の安定性を高めることもできる。さらに感光体の繰返し使用による疲労劣化を軽減し、電気的耐久性を向上させることもできる。
添加できる酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物またはアミン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、フェノール系化合物またはアミン系化合物、特にヒンダードフェノール誘導体もしくはヒンダードアミン誘導体、またはこれらの混合物が好適に用いられる。
酸化防止剤の使用量としては、電荷輸送物質100重量部に対して、0.1重量部〜50重量部の範囲内で使用されることが好ましい。電荷輸送物質100重量部に対する酸化防止剤の使用量が0.1重量部未満であると、塗布液の安定性および感光体の電気的耐久性を向上する効果が充分に発揮されない可能性があり、逆に50重量部を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
本発明の感光体において、導電性支持体と感光層との間に中間層を設けることができる。
導電性支持体と感光層との間に中間層がない場合、導電性支持体から感光層に電荷が注入され、感光層の帯電性が低下し、露光される部分以外の表面電荷が減少し、画像にかぶりなどの欠陥の発生することがある。特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合には、露光によって表面電荷の減少した部分にトナーが付着してトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが発生し、画質の著しい劣化が生じるおそれがある。
しかしながら、感光体において前記のように導電性支持体と感光層との間に中間層を設けると、導電性支持体からの感光層への電荷の注入を防止することができる。したがって、感光層の帯電性の低下を防ぐことができ、露光される部分以外での表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止することができる。
また、中間層を設けることによって、導電性支持体11表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができ、感光層の成膜性を高めることができる。さらにこの中間層が導電性支持体と感光層とを接着する接着剤として機能できるので、感光層の導電性支持体からの剥離を抑えることもできる。
ただし、このように導電性支持体と感光層との間に中間層を設けると、感光体の感度が低下するおそれがある。しかしながら、本発明の感光体の感光層において、優れた電荷輸送能力を有する本発明の電荷輸送物質を使用することにより、感光体において、中間層を設けたことによる感度を損なうことはない。すなわち、本発明の感光体では、一般式(1)で表される電荷輸送物質を用いることにより感度を低下させることなく、導電性支持体と感光層との間に中間層を設けることができる。
中間層には、各種樹脂材料から成る樹脂層、アルマイト層などが用いることができる。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリアミド樹脂などの合成樹脂、ならびにこれらの合成樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などが挙げられる。また、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびエチルセルロースなども挙げられる。
これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好適に用いられる。好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンなどの、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
また、中間層は、金属酸化物粒子などの粒子を含有してもよい。中間層にこれらの粒子を含有させることによって、中間層の体積抵抗値を調節でき、導電性支持体からの感光層への電荷の注入を防止する効果を高めることができ、また様々な環境下において感光体の電気特性を維持し、環境安定性を向上させることができる。
含有できる金属酸化物粒子としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどの粒子を挙げることができる。
中間層は、例えば上記の樹脂を適当な溶剤中に溶解または分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体表面に塗布することによって形成することができる。中間層に上記の金属酸化物粒子などの粒子を含有させる場合には、例えば上記の樹脂溶液中に、これらの金属酸化物粒子を分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布することによって中間層を形成することができる。
中間層用塗布液の溶剤としては、水もしくは各種有機溶剤、またはこれらの混合溶剤が用いられる。その中でも、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶剤、または水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤とアルコール類などの混合溶剤が好適に用いられる。
上記の金属酸化物粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機またはペイントシェーカなどを用いる公知の分散方法を使用することができる。
中間層用塗布液中において、中間層用塗布液に使用されている溶剤の重量(D)に対する樹脂および金属酸化物の合計重量(C)の比率(C/D)は、1/99〜40/60であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70である。また樹脂の重量Eと金属酸化物の重量Fとの比率E/Fは、90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。
中間層用塗布液の塗布方法としては、前記電荷発生層の塗布方法で記載した方法を用いることができる。
中間層の膜厚は、0.01μm〜20μmが好ましく、より好ましくは0.05μm〜10μmである。
中間層の膜厚が0.01μmよりも薄いと、実質的に中間層として機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体からの感光層への電荷の注入を防止することができなくなる可能性があり、感光層の帯電性の低下が生じるおそれがある。また、中間層の膜厚を20μmよりも厚くすることは、中間層を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層の形成が困難になるとともに、中間層上に感光層を均一に形成することができず、感光体の感度が低下するおそれがあるので好ましくない。
本発明による感光層は、前記のように、電荷移動度の高い電荷輸送物質を有機光導電性材料として含むので、従来公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率でバインダー樹脂を加えても光応答性なんら損なうことなく高いホール輸送能力を維持することができる。したがって、光応答性を低下させることなく電荷輸送層の耐刷性を向上させ、有機光導電性材料自体の優れた耐摩耗特性との相乗効果により、さらに電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。
また本発明によれば、前記電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置も提供される。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1〜図3は、本実施形態の例である電子写真感光体の概略断面図である。図4は、本発明に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の概略図である。尚、本発明の電子写真感光体及び画像形成装置は、実施の形態および実施例ならびに製造例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
実施の形態1
図1は、本発明による電子写真感光体の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。電子写真感光体1は、導電性材料から成るシート状の導電性支持体11と、導電性支持体11上に積層される層であって電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷発生層15の上にさらに積層される層であって電荷輸送物質13を含有する電荷輸送層16とを含む。電荷発生層15と電荷輸送層16とは、積層型光感光層14を構成する。すなわち、感光体1は積層型感光体である。
実施の形態2
図2は、本発明による電子写真感光体の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施形態の電子写真感光体2は、図1に示す実施の第1形態の電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
電子写真感光体2において注目すべきは、導電性支持体11と感光層14との間に、中間層18が設けられていることである。
実施の形態3
図3は、本発明による電子写真感光体の実施の第3の形態である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施形態の電子写真感光体3は、図2に示す実施の第2形態の電子写真感光体2に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
電子写真感光体3において注目すべきは、感光層14が、電荷発生物質と電荷輸送物質との両方を含有する単一の層から成る単層構造を有することである。すなわち、感光体3が、単層型感光体であることである。
本実施の形態の単層型感光体3は、オゾン発生の少ない正帯電型画像形成装置用の感光体として好適であり、また塗布されるべき感光層14が一層のみであるので、製造原価および歩留が実施の第1形態および第2形態の積層型感光体1,2に比べて優れている。
感光層14は、一般式(1)で表される本発明の電荷輸送物質および必要に応じてその他の電荷輸送物質と、前記の電荷発生物質とを、バインダー樹脂で結着して形成することができる。バインダー樹脂としては、前記電荷輸送層のバインダー樹脂として例示したものを用いることができる。感光層14には、可塑剤、レベリング剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子、電子受容物質もしくは色素などの増感剤、酸化防止剤、または紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加してもよい。
感光層14は、実施の第1形態の感光体1に設けられる電荷輸送層16と同様の方法で形成することができる。例えば、前記の電荷発生物質、一般式(1)で表される本発明の電荷輸送物質およびバインダー樹脂の適量、ならびに必要に応じて前記の本発明の電荷輸送物質以外の電荷輸送物質および添加剤の適量を、前記の電荷輸送層用塗布液と同様の適当な溶剤に溶解または分散させて感光層用塗布液を調製し、この感光層用塗布液を浸漬塗布法などによって中間層18上に塗布することによって、感光層14を形成することができる。
感光層14における一般式(1)で表される電荷輸送物質の重量(A’)に対するバインダー樹脂の重量(B’)の比率(B’/A’)は、電荷輸送層における一般式(1)で表される電荷輸送物質の重量(A)に対するバインダー樹脂の重量(B)の比率B/Aと同様に、1.2〜3.0であることが好ましい。
また、感光層14の膜厚は、5μm〜100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm〜50μm以下である。感光層14の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがある。感光層14の膜厚が100μmを超えると、生産性が低下する可能性がある。
本発明による電子写真感光体は、以上に述べた図1〜図3に示す実施の第1形態〜第3形態の電子写真感光体1、2および3の構成に限定されるものではなく、一般式(1)で表される本発明の電荷輸送物質を感光層に含有するものであれば、他の異なる構成であってもよい。
例えば、感光層14の表面に、表面保護層が設けられる構成であってもよい。感光層14の表面に表面保護層を設けることによって、感光体1、2および3の機械的耐久性を向上させることができる。また感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾンおよび窒素酸化物(NOx)などの活性ガスの感光層14への化学的悪影響を防止し、感光体1、2および3の電気的耐久性を向上させることもできる。表面保護層には、例えば樹脂、無機フィラー含有樹脂または無機酸化物などから成る層が用いられる。
実施の形態4
次に、本発明による電子写真感光体を備える画像形成装置について説明する。
図4は、本発明による画像形成装置の実施の一形態である画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置側面図である。図4に示す画像形成装置100は、本発明による電子写真感光体の実施の第1形態である前記の図1に示す感光体1を搭載する。以下図4を参照して画像形成装置100の構成および画像形成動作について説明する。
画像形成装置100は、図示しない装置本体に回転自在に支持される前記の感光体1と、感光体1を回転軸線44まわりに矢符41方向に回転駆動させる図示しない駆動手段とを備える。駆動手段は、例えば動力源としてモータを備え、モータからの動力を図示しない歯車を介して感光体1の芯体を構成する支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度Vpで回転駆動させる(以下、この周速度Vpを感光体1の回転周速Vpとも称する)。
感光体1の周囲には、帯電器32と、露光手段30と、現像器33と、転写器34と、クリーナ36とが、矢符41で示される感光体1の回転方向の上流側から下流側に向かってこの順序で設けられる。クリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
帯電器32は、感光体1の表面43を所定の電位に帯電させる帯電手段である。帯電器32は、例えば帯電ローラなどの接触式の帯電手段である。
露光手段30は、例えば半導体レーザなどを光源として備え、光源から画像情報に応じて出力されるレーザビームなどの光31で、帯電された感光体1の表面43を露光し、これによって感光体1の表面43に静電潜像を形成させる。
現像器33は、感光体1の表面43に形成された静電潜像を現像剤によって現像し、可視像であるトナー画像を形成する現像手段であり、感光体1に対向して設けられ感光体1の表面43にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持するとともにその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
転写器34は、感光体1の表面43に形成されたトナー画像を、感光体1の表面43から転写材である記録紙51上に転写させる転写手段である。転写器34は、例えば、コロナ放電器などの帯電手段を備え、記録紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー画像を記録紙51上に転写させる非接触式の転写手段である。
クリーナ36は、トナー画像が転写された後の感光体1の表面を清掃する清掃手段であり、感光体表面43に押圧され、転写器34による転写動作後に感光体1の表面43に残留するトナーを前記表面43から剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。
また、感光体1と転写器34との間を通過した後に記録紙51が搬送される方向には、転写されたトナー画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
画像形成装置100による画像形成動作について説明する。まず、図示しない制御部からの指示に応じて、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動され、露光手段30からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向の上流側に設けられる帯電器32によって、その表面43が正または負の所定電位に均一に帯電される。
次いで、制御部からの指示に応じて、露光手段30から、帯電された感光体1の表面43に対して光31が照射される。光源からの光31は、画像情報に基づいて、主走査方向である感光体1の長手方向に繰返し走査される。感光体1を回転駆動させ、光源からの光31を画像情報に基づいて繰返し走査することによって、感光体1の表面43に対して画像情報に対応する露光を施すことができる。この露光によって、光31が照射された部分の表面電荷が減少し、光31が照射された部分の表面電位と光31が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、感光体1の表面43に静電潜像が形成される。また、感光体1への露光と同期して、記録紙51が、搬送手段によって矢符42方向から転写器34と感光体1との間の転写位置に供給される。
次いで、光源からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向の下流側に設けられる現像器33の現像ローラ33aから、静電潜像の形成された感光体1の表面43にトナーが供給される。これによって、静電潜像が現像され、感光体1の表面43に可視像であるトナー画像が形成される。感光体1と転写器34との間に記録紙51が供給されると、転写器34によってトナーと逆極性の電荷が記録紙51に与えられ、これによって感光体1の表面43に形成されたトナー画像が記録紙51上に転写される。
トナー画像の転写された記録紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧される。これによって、記録紙51上のトナー画像が記録紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された記録紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、トナー画像が記録紙51に転写された後に、さらに矢符41方向に回転する感光体1は、その表面43がクリーナ36に備わるクリーニングブレード36aによって擦過され、清掃される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面43は、除電ランプからの光によって電荷が除去され、これによって感光体1の表面43の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度感光体1の帯電から始まる一連の動作が繰返される。以上のようにして、連続的に画像が形成される。
画像形成装置100に備わる感光体1は、前記のように、一般式(1)で表される本発明の電荷輸送物質を有機光導電性材料として感光層14に含有するものであり、帯電性、感度および光応答性などの電気特性、電気的および機械的耐久性、ならびに環境安定性に優れる。したがって、各種の環境下において長期間にわたって安定して高品質の画像を形成することのできる信頼性の高い画像形成装置100が実現される。また感光体1の電気特性は、外光に曝されても低下しないので、メンテナンス時などに感光体1が外光に曝されることに起因する画質の低下が抑えられる。
また、感光体1は高速の電子写真プロセスに用いられた場合であっても画質の低下を引起すことがないので、画像形成装置100は画像形成速度の高速化が可能である。例えば、感光体1として直径30mm、長手方向の長さ340mmのものを用い、感光体1の回転周速Vpを毎秒100〜140mm程度に設定して高速で電子写真プロセスを行ない、画像形成装置100の画像形成速度をJIS P0138に規定されるA4判用紙25枚/分程度の高速として画像を形成しても、高品質の画像を提供することができる。
本発明による画像形成装置は、以上に述べた図4に示す画像形成装置100の構成に限定されるものではなく、本発明に係る感光体を使用することができるものであれば、他の異なる構成であってもよい。
例えば、本実施形態の画像形成装置100では、帯電器32は、接触式の帯電手段であるけれども、これに限定されることなく、コロナ放電器などの非接触式の帯電手段であってもよい。また転写器34は、押圧力を用いずに転写を行う非接触式の転写手段であるけれども、これに限定されることなく、押圧力を利用して転写を行う接触式の転写手段であってもよい。接触式の転写手段としては、例えば、転写ローラを備え、感光体1の表面43に当接される記録紙51の当接面の反対面側から転写ローラを感光体1に対して押圧し、感光体1と記録紙51とを圧接させた状態で、転写ローラに電圧を印加することによって、トナー画像を記録紙51上に転写させるものなどを用いることができる。
一般式(1):
Figure 0004495666
で示される本発明の有機光導電性材料の具体例としては、例えば以下の表に示す基を有する例示化合物を挙げることができる。これらの化合物の製造方法を以下の製造例で詳細に説明する。なお、表1に示す各基は、前記一般式(1)の各基に対応する。
Figure 0004495666
Figure 0004495666
Figure 0004495666
Figure 0004495666
例えば、上記表1に示す例示化合物No.1は、下記構造式(1−1)で示される化合物である。
Figure 0004495666
製造例1:例示化合物No.1の製造
前記の一般式(4a)で表されるケトン化合物としてベンゾフェノンを用い、一般式(4b)で表されるヒドラジン化合物としてN-フェニル-N-ナフチルヒドラジンを用い、以下のようにして脱水縮合反応を行ない、下記構造式(8)で表されるヒドラゾン中間体を製造した。
Figure 0004495666
エタノール100mL中に、ベンゾフェノン18.2g(1.0モル当量)、N-フェニル-N-ナフチルヒドラジン24.6g(1.05モル当量)および触媒として酢酸0.06mL(0.01モル当量)を加え、80℃に加熱しながら6時間撹拌して反応させた。反応溶液を放冷した後、これにヘキサン100mLを加え、析出した結晶をろ取して減圧乾燥し、構造式(8)で表されるヒドラゾン中間体35.8gを黄色結晶として得た(収率90.0%)。
次いで、無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mL中に、氷冷下、オキシ塩化リン16.86g(2.2モル当量)を徐々に加え、約30分間撹拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、前記のようにして得られた構造式(12)で表されるヒドラゾン中間体19.92g(1.0モル当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応溶液の温度を80℃まで昇温させ、80〜90℃を保つように加熱しながら6時間撹拌して反応させた。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷却した4規定(4N)の水酸化ナトリウム水溶液800mL中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿をろ取して充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物18.4gを得た。
得られた結晶を液体クロマトグラフィー−質量分析法(Liquid Chromatography−Mass Spectrometry;略称LC−MS)で分析した結果、目的化合物である下記構造式(9)で表されるヒドラゾン−ビスアルデヒド中間体(分子量の計算値:454.17)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが455.6に観測された。このことから、得られた化合物が構造式(9)で表されるヒドラゾン−ビスアルデヒド中間体であることが確認された(収率:81%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたヒドラゾン−アルデヒド中間体の純度が99.0%であることが判った。
Figure 0004495666
次いで、無水DMF80mL中に、得られた構造式(9)で表されるヒドラゾン−ビスアルデヒド中間体4.54g(1.0モル当量)と、前記の一般式(6)で表されるウィッティッヒ試薬として下記構造式(13a)で表されるジエチルシンナミルホスホネート12.2g(2.4モル当量)とを加えて溶解させた後、0℃に冷却しながら、その溶液中にカリウムt−ブトキシド5.6g(2.5モル当量)を徐々に加えた。
Figure 0004495666
その後、反応溶液を室温で1時間撹拌した後、40℃まで加熱し、40℃を保つように加熱しながら7時間撹拌して反応させた。反応溶液を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物をろ取し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移して水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶5.9gを得た。
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的化合物である表3に示す例示化合物No.1のヒドラゾン-ビスブタジエン化合物(分子量の計算値:654.30)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが655.7に観測された。このことから、得られた結晶が例示化合物No.1のヒドラゾン-ビスブタジエン化合物であることが確認された(収率:90%)。
また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.1の純度が99.0%であることが判った。また、得られた例示化合物No.1の元素分析は、差動熱伝導度法による炭素(C)、水素(H)および窒素(N)同時定量法を用いて行なった。以下の製造例においても同様である。 <例示化合物No.1の元素分析値>
理論値…C:89.87%、H:5.86%、N:4.28%
実測値…C:89.69%、H:5.72%、N:4.15%
製造例2:例示化合物No.6の製造
無水DMF15mL中に、製造例1で得られた構造式(9)で表されるヒドラゾン−ビスアルデヒド中間体2.07g(1.0モル当量)と、下記構造式(13b)で表されるWittig試薬3.06g(2.4モル当量)とを加えて溶解させた後、0℃に冷却しながら、その溶液中にカリウムt−ブトキシド1.28g(2.50モル当量)を徐々に加えた。
Figure 0004495666
その後、反応溶液を室温で1時間撹拌した後、40℃まで加熱し、40℃を保つように加熱しながら7時間撹拌して反応させた。反応溶液を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物をろ取し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移して水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶2.73gを得た。
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的化合物である表1に示す例示化合物No.6のヒドラゾン-ビストリエン化合物(分子量の計算値:706.33)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが707.8に観測された。このことから、得られた結晶が例示化合物No.6のヒドラゾン-ビストリエン化合物であることが確認された(収率:85%)。
また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.6の純度が99.2%であることが判った。また、得られた例示化合物No.6の元素分析値は以下のとおりであった。
<例示化合物No.6の元素分析値>
理論値…C:90.05%、H:5.99%、N:3.96%
実測値…C:89.87%、H:5.74%、N:3.81%
製造例3:例示化合物No.17の製造
製造例1において、脱水縮合反応に際し、ベンゾフェノンに代えてp−メトキシアセトフェノンを用い、N-フェニル-N-ナフチルヒドラジンに代えてN,N-ジフェニルヒドラジンを用いて同様の操作を行ない、下記構造式(10)で表されるヒドラゾン中間体を黄色結晶として得た(収率95%)。
Figure 0004495666
次いで、前記の一般式(7a)で表されるハロゲン化アシル化合物として塩化アセチルを用い、以下のようにして構造式(10)で表されるヒドラゾン中間体のビスアシル化を行ない、下記構造式(11)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体を製造した。
Figure 0004495666
塩化アルミニウム16.0g(2.4モル当量)を懸濁させた無水塩化メチレン150mL中に、氷冷下、塩化アセチル9.42g(2.8モル当量)を徐々に加え、約30分間撹拌し、フリーデル-クラフトアセチル化試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、構造式(10)で表されるヒドラゾン中間体15.82g(1.0モル当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を30℃まで上げ、30℃を保つように加熱しながら6時間撹拌して反応させた。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷却した4規定(4N)の水酸化ナトリウム水溶液600mL中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿をろ取して充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物17.52gを得た。
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、目的化合物である下記構造式(11)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体(分子量の計算値:400.18)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが401.5に観測された。このことから、得られた化合物が構造式(11)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体であることが確認された(収率:87.5%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたヒドラゾン−ケトン中間体の純度が98.2%であることが判った。
次いで、無水THF20mL中に、前記の一般式(7)で表されるハロゲン化アリル化合物として下記構造式(12a)で表されるシンナミルブロマイド3.88g(2.4モル当量)と金属マグネシウムパウダー480mg(2.4モル当量)とを加えて撹拌し、グリニヤール試薬を調製した。
Figure 0004495666
氷冷下、調製したグリニヤール試薬溶液中に、前記のようにして得られた構造式(11)で表されるヒドラゾン−ビスケトン中間体3.29g(1.0モル当量)を徐々に加えた。その後、反応溶液を室温で1時間撹拌した後、40℃まで加熱し、40℃を保つように加熱しながら6時間撹拌して反応させた。反応溶液を放冷した後、過剰のメタノール中に注いた。析出物をろ取し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移して水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶4.15gを得た
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的化合物である表1に示す例示化合物No.17のヒドラゾン−ビスブタジエン化合物(分子量の計算値:632.38)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが633.8に観測された。このことから、得られた結晶が例示化合物No.17のヒドラゾン−ビスブタジエン化合物であることが確認された(収率:80%)。
また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.17のヒドラゾン−ビスブタジエン化合物の純度が99.5%であることが判った。また、得られた例示化合物No.17の元素分析値は以下のとおりであった。なお、得られた例示化合物No.17の元素分析値は以下のとおりであった。
<例示化合物No.17の元素分析値>
理論値…C:85.40%、H:7.64%、N:4.43%
実測値…C:85.23%、H:7.48%、N:4.18%
製造例4:例示化合物No.29の製造
製造例3において、グリニヤール反応に際し、構造式(12a)で表されるシンナミルブロマイド(1.2モル当量)に代えて、下記構造式(12b)で表される5−ブロモ−1−フェニル−1,3−ペンタジエン4.4g(2.4モル当量)を用いること以外は、製造例3と同様にして、黄色粉末状化合物4.53gを得た。
Figure 0004495666
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、目的化合物である表1に示す例示化合物No.29のヒドラゾン−ビスヘキサトリエン化合物(分子量の計算値:684.41)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが655.7に観測された。このことから、得られた化合物が例示化合物No.18のヒドラゾン−ビスヘキサトリエン化合物であることが確認された(収率80.0%)。
また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.29のヒドラゾン化合物の純度が98.9%であることが判った。また、得られた例示化合物No.29の元素分析値は以下のとおりであった。
<例示化合物No.29の元素分析値>
理論値…C:85.92%、H:7.65%、N:4.09%
実測値…C:85.67%、H:7.39%、N:3.91%
製造例5〜11:例示化合物No.45の製造
製造例1において、一般式(4a)で表されるケトン化合物、一般式(4b)で表されるヒドラゾン化合物、一般式(12a)で表されるウィッティッヒ試薬として表2に示す各原料化合物を用いて同様の操作を行ない、例示化合物No.9、10、11、13、53、59および60をそれぞれ製造した。なお、表2には、例示化合物No.1および6の原料化合物も合わせて示す。
Figure 0004495666
製造例12〜15
製造例3において、一般式(4a)で表されるケトン化合物、一般式(4b)で表されるヒドラゾン化合物、一般式(12a)で表されるハロゲン化アリル化合物として表3に示す各原料化合物を用いて同様の操作を行ない、例示化合物No.5、18、38および45をそれぞれ製造した。なお、表3には、例示化合物No.17および29の原料化合物も合わせて示す。
Figure 0004495666
上記の製造例1〜15で得られた各例示化合物の元素分析値を表4に示す。
Figure 0004495666
Figure 0004495666
Figure 0004495666
実施例1
電荷発生物質として下記構造式(14)で表されるアゾ化合物1重量部を、テトラヒドロフラン(THF)99重量部にフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製:PKHH)1重量部を溶解させて得た樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで2時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、膜厚80μmのポリエステルフィルムの表面にアルミニウムを蒸着して成る導電性支持体のアルミニウム上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
Figure 0004495666
次に、電荷輸送物質として表1に示す例示化合物No.1のヒドラゾン化合物8重量部と、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製:C−1400)10重量部とを、THF80重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚10μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、図1に示す積層型の層構成を有する実施例1の電子写真感光体を作製した。
実施例2〜4
電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、表1〜表4に示す例示化合物No.6、17または29を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4の電子写真感光体を作製した。
比較例1
電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(15)で表される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を作製した。
Figure 0004495666
比較例2
電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(16)で表される比較化合物Bを用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電子写真感光体を作製した。
Figure 0004495666
[評価1]
以上のようにして作製した実施例1〜4および比較例1、2の各感光体を用い、各感光体に用いた電荷輸送物質の電荷移動度を以下のようにして測定した。各感光体の電荷輸送層表面に金を蒸着し、室温下で減圧しながら、飛行時間(Time−of−Flight)法によって電荷移動度(cm2/V・sec)を測定し、この値を各感光体に用いた電荷輸送物質の電荷移動度とした。測定結果を表5に示す。なお、表5に示す電荷移動度の値は、電界強度が2.5×105V/cmのときの値である。
Figure 0004495666
実施例1〜4と比較例1,2との比較から、一般式(1)で表される本発明のヒドラゾン-ビスブタジエンあるいはビシヘキサトリエン化合物は、一般式(1)と構造の類似な点を有する比較化合物Bなどのヒドラドン構造とブモノブタジエン構造とを合わせ持つ化合物および従来公知の電荷輸送物質である比較化合物Aなどのトリフェニルアミンダイマー(略称TPD)に比べ、1桁から2桁以上高い電荷移動度を有することが判った。
実施例5
酸化アルミニウム(化学式:Al23)と二酸化ジルコニウム(化学式:ZrO2)とで表面処理された樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9重量部と、共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:CM8000)9重量部とを、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、中間層用塗布液を調製した。調製した中間層用塗布液を、厚み0.2mmのアルミニウム製板状導電性支持体上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚1μmの中間層を形成した。
次いで、電荷発生物質として下記構造式(17)で表されるアゾ化合物2重量部を、THF97重量部にポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:BX−1)1重量部を溶解させて得た樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで10時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
Figure 0004495666
次いで、電荷輸送物質として表1に示す例示化合物No.1のヒドラゾン化合物10重量部と、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製:Z200)14重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2重量部とを、THF80重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、図2に示す積層型の層構成を有する実施例5の電子写真感光体を作製した。
実施例6〜8
電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、表1に示す例示化合物No.9、18または48を用いる以外は、実施例5と同様にして、実施例6〜8の電子写真感光体を作製した。
比較例3
電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、前記の構造式(15)で表される比較化合物Aを用いる以外は、実施例5と同様にして、比較例3の電子写真感光体を作製した。
実施例9
実施例6と同様にして、厚み0.2mmのアルミニウム製板状導電性支持体上に、膜厚1μmの中間層を形成した。
次に、電荷発生物質として前記の構造式(17)で表されるアゾ化合物1重量部と、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製:Z−400)12重量部と、電荷輸送物質として表1に示す例示化合物No.1のヒドラゾン化合物10重量部と、3,5−ジメチル−3′,5′−ジ−t−ブチルジフェノキノン5重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.5重量部と、THF65重量部とを、ボールミルで12時間分散し、感光層用塗布液を調製した。この感光層用塗布液を、先に形成した中間層上に、ベーカアプリケータによって塗布した後、温度110℃で1時間熱風乾燥させ、膜厚20μmの感光層を形成した。
以上のようにして、図3に示す単層型の層構成を有する実施例9の電子写真感光体を作製した。
実施例10
電荷発生物質として、構造式(17)で表されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用いる以外は、実施例5と同様にして、実施例10の電子写真感光体を作製した。
実施例11〜13
電荷発生物質として、構造式(20)で表されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、表1に示す例示化合物No.5,11または38を用いる以外は、実施例5と同様にして、実施例11〜13の電子写真感光体を作製した。
比較例4
電荷発生物質として、構造式(17)で表されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、前記の構造式(15)で表される比較化合物Aを用いる以外は、実施例5と同様にして、比較例4の電子写真感光体を作製した。
実施例14
電荷輸送層用塗布液を調製してから20日後に塗布した以外は、実施例10と同様にして、実施例14の電子写真感光体を作製した。
比較例5
電荷輸送物質として、下記構造式(18)で表される比較化合物Cを用いる以外は、実施例14と同様にして、比較例5の電子写真感光体を作製した。
Figure 0004495666
[評価2]
以上のようにして作製した実施例5〜13および比較例3〜5の各感光体について、静電複写紙試験装置(株式会社川口電機製作所製:EPA−8200)を用いて、初期特性および繰返し特性を評価した。評価は、温度22℃、相対湿度65%(65%RH)の常温/常湿(N/N:Normal Temperature/Normal Humidity)環境下および温度5℃、相対湿度20%(20%RH)の低温/低湿(L/L:Low Temperature/Low Humidity)環境下のそれぞれの環境下において行なった。
初期特性は以下のようにして評価した。感光体にマイナス(−)5kVの電圧を印加することによって感光体表面を帯電させ、このときの感光体の表面電位を帯電電位V0[V]として測定し、帯電電位V0の絶対値が大きいほど、帯電性に優れると評価した。ただし、実施例9の単層型感光体の場合には、プラス(+)5kVの電圧を印加することによって感光体表面を帯電させた。
次に、帯電された感光体表面に対して露光を施した。このとき、感光体の表面電位を帯電電位V0から半減させるのに要した露光エネルギを半減露光量E1/2[μJ/cm2]として測定し、半減露光量E1/2が小さいほど、感度に優れると評価した。また露光開始から10秒間経過した時点の感光体の表面電位を残留電位Vr[V]として測定し、残留電位Vrの絶対値が小さいほど、光応答性に優れると評価した。
なお、露光光としては、電荷発生物質として、構造式(17)で表されるアゾ化合物を用いた実施例5〜9および比較例3の感光体の場合には露光エネルギ1μW/cm2の白色光を用い、X型無金属フタロシアニンを用いた実施例10〜13および比較例4,の感光体の場合には、モノクロメータにて分光して得られた波長780nm、露光エネルギ1μW/cm2の単色光を用いた。
繰返し特性は以下のようにして評価した。前記の帯電および露光の操作を1サイクルとして5000回繰返した後、初期特性の評価と同様にして、帯電電位V0、半減露光量E1/2および残留電位Vrを測定し、帯電性、感度および光応答性を評価した。
以上の測定結果を表6に示す。
Figure 0004495666
表6から、電荷輸送物質として一般式(1)で表される本発明のヒドラゾン-ビスブタジエンあるいはビシヘキサトリエン化合物を用いた実施例5〜13の感光体は、N/N環境下およびL/L環境下のいずれにおいても、帯電性、感度および光応答性に優れることが判る。また、実施例5〜13の感光体は、繰返し使用されても初期と同様に優れた電気特性を有することが判る。
また、ヒドラゾン部分がエナミン構造へと置き変わった比較化合物Cとの比較においては、エナミン結合の不安定性に起因する溶液状態での長期保存後の特性面で悪影響が現れているが、本発明のヒドラゾン-ビスブタジエンあるいはビシヘキサトリエン化合物を用いた実施例14の感光体は溶液状態での長期保存後の特性面でも問題がないことが判る。
実施例15
酸化アルミニウム(Al23)と二酸化ジルコニウム(ZrO2)とで表面処理された樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9重量部と、共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:CM8000)9重量部とを、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、中間層用塗布液を調製した。この中間層塗布液を塗工槽に満たし、この塗工層に直径40mm、長手方向の長さ340mmのアルミニウム製円筒状導電性支持体を浸漬した後引上げ、乾燥させ、膜厚1.0μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
次いで、電荷発生物質として、Cu−Kα特性X線(波長:1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニン2重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:エスレックBM−S)1重量部と、メチルエチルケトン97重量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層と同様の浸漬塗布法にて中間層上に塗布し、乾燥させ、膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質として表1に示す例示化合物No.1のヒドラゾン化合物10重量部と、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製:ユーピロンZ200)20重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製:KF−96)0.004重量部とを、テトラヒドロフラン(THF)110重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した中間層と同様の浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層上に塗布した後、温度110℃で1時間乾燥させ、膜厚23μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、実施例14の電子写真感光体を作製した。
実施例16、17
電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、表1に示す例示化合物No.10または13を用いる以外は、実施例15と同様にして、実施例16および17の電子写真感光体を作製した。
比較例6
電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、前記の構造式(15)で表される比較化合物Aを用いる以外は、実施例15と同様にして、比較例6の電子写真感光体を作製した。
実施例18
電荷輸送層の形成に際し、バインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を25重量部に変更する以外は、実施例15と同様にして、実施例18の電子写真感光体を作製した。
実施例19、20
電荷輸送層の形成に際し、バインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を25重量部に変更し、電荷輸送物質として、例示化合物No.1に代えて、表1に示す例示化合物No.45または53を用いる以外は、実施例15と同様にして、実施例19および20の電子写真感光体を作製した。
実施例21(参考例1)
電荷輸送層の形成に際し、バインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を10重量部に変更する以外は、実施例15と同様にして、実施例21の電子写真感光体を作製した。
(参考例2)
電荷輸送層の形成に際し、バインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を31重量部に変更する以外は、実施例15と同様にして、電子写真感光体を作製した。ただし、実施例15と同量のTHFではポリカーボネート樹脂が完全には溶解せず、電荷輸送層用塗布液の粘度が高くなったので、THFを追加し、ポリカーボネート樹脂が完全に溶解した電荷輸送層用塗布液を調製し、これを用いて電荷輸送層を形成した。
しかしながら、円筒状の感光体の長手方向端部にブラッシング現象による白濁が生じ、以下の評価3に示す特性評価を行なうことができなかった。このブラッシング現象は、電荷輸送層用塗布液中の溶剤の量が過剰であったために生じたものと推察される。
[評価3]
以上のようにして作製した実施例15〜21および比較例8の各感光体を、市販のデジタル複写機AR−C150(商品名、シャープ株式会社製)を感光体の回転周速が毎秒117mmになるように改造した試験用複写機にそれぞれ搭載し、各感光体の耐刷性、電気特性および環境安定性を以下のようにして評価した。なお、前記のデジタル複写機AR−C150は、感光体表面の帯電を負に帯電して電子写真プロセスを行なう負帯電型の画像形成装置である。
(a)耐刷性
試験用複写機を用い、所定のパターンのテスト画像を記録用紙4万枚に形成した後、搭載していた感光体を取出して感光層の膜厚d1[μm]を測定し、この値d1を作製時の感光層の膜厚d0から差引いた値(d0−d1)を膜減り量Δdとして求め、耐刷性の評価指標とした。なお、膜厚の測定は、光干渉法による瞬間マルチ測光システムMCPD−1100(商品名、大塚電子株式会社製)で行なった。
(b)電気特性および環境安定性
複写機内部に、画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(ジェンテック社製:CATE751)を設けた。前記複写機を用い、各感光体について、温度22℃、相対湿度65%のN/N環境下において、帯電器による帯電動作直後の感光体の表面電位を帯電電位V1[V]として測定した。また、レーザ光によって露光を施した直後の感光体の表面電位を残留電位VL[V]として測定し、これをN/N環境下における残留電位VLNとした。帯電電位V1の絶対値が大きい程、帯電性に優れると評価し、残留電位VLNの絶対値が小さい程、光応答性に優れると評価した。
また、温度5℃、相対湿度20%のL/L環境下において、N/N環境下と同様にして、残留電位VL[V]を測定し、これをL/L環境下における残留電位VLLとした。L/L環境下における残留電位VLLからN/N環境下における残留電位VLNを差引いた値の絶対値(|VLL−VLN|)を、電位変動ΔVLとして求めた。電位変動ΔVLが小さい程、電気的特性の安定性に優れると評価した。
これらの評価結果を表7に示す。
Figure 0004495666
実施例15〜20と比較例6との比較から、電荷輸送物質として一般式(1)で表される本発明のヒドラゾン-ビスブタジエンあるいはビシヘキサトリエン化合物を用いた実施例15〜20の感光体は、電荷輸送物質として比較化合物Aを用いた比較例6の感光体に比べ、N/N環境下の露光電位VLNの絶対値が小さいことが判る。このことから、実施例15〜20の感光体は、電荷輸送層における電荷輸送物質の重量に対するバインダー樹脂の重量の比率(バインダー樹脂/電荷輸送物質)が1.2以上であっても、優れた光応答性を有することが判った。また実施例15〜20の感光体は、比較例6の感光体に比べ、電位変動ΔVLの値が小さく環境安定性に優れ、L/L環境下においても充分な光応答性を示すことが判った。
また、実施例15〜20と実施例21との比較から、一般式(1)で表される本発明のヒドラゾン-ビスブタジエンあるいはビシヘキサトリエン化合物の重量(A)に対するバインダー樹脂の重量(B)の比率(B/A)が1.2〜3.0の範囲内にある実施例14〜19の感光体の方が、前記比率B/Aが1.2未満である実施例21の感光体よりも、膜減り量Δdが小さく、耐刷性に優れることが判った。
以上のように、一般式(1)で表される本発明の電荷輸送物質は、優れた電荷輸送能力を有することが判った。また該電荷輸送物質を有機光導電性材料として用いることによって、帯電性、感度および光応答性に優れるとともに、電気的および機械的耐久性、ならびに環境安定性にも優れる電子写真感光体を提供できる。さらに該電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供できる
本発明による電子写真感光体の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。 本発明による電子写真感光体の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。 本発明による電子写真感光体の実施の第3の形態である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す部分断面図である。 本発明による画像形成装置の実施の一形態である画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置側面図である。
符号の説明
1、2および3 電子写真感光体
11 導電性支持体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質
14 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 バインダー樹脂
18 中間層
30 露光手段
31 露光手段からの光
32 帯電器
33 現像器
34 転写器
35 定着器
36 クリーナ
100 画像形成装置

Claims (6)

  1. 導電性材料からなる導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する感光層を備える電子写真感光体において、前記電荷輸送物質が、一般式(1):
    Figure 0004495666
    (式中、Ar1、次の式:
    Figure 0004495666
    で表される基を示し、
    Ar2、次の式:
    Figure 0004495666
    で表される原子または基を示し、
    Ar3 は、次の式:
    Figure 0004495666
    で表される基を示し、
    Ar6、次の式:
    Figure 0004495666
    で表される基を示し、
    Ar4、次の式:
    Figure 0004495666
    で表される基を示し、
    Ar5、次の式:
    Figure 0004495666
    で表される原子または基を示し、
    また、Ar1とAr 2 、原子または原子団を介して互いに結合し、次の式:
    Figure 0004495666
    で表される環構造を形成してもよく、
    1、R2およびR3は同一または異なって、次の式:
    Figure 0004495666
    で表される原子または基を示し、
    nは1または2を示)
    で示され、有機光導電性材料として含まれることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記電荷発生物質として、Cu−Kα特性X線回折(波長:1.54Å)におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも27.2°に回折ピークを有するオキソチタニウムフタロシアニンを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記感光層が、前記電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造からなることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記電荷輸送層が、さらにバインダー樹脂を含有し、前記電荷輸送層における前記電荷輸送物質(A)に対する前記バインダー樹脂(B)との比率B/Aが、重量比で1.2〜3.0であることを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記導電性支持体と前記感光層との間には、中間層が設けられることを特徴とする請求項1〜の何れか一つに記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1〜の何れか一つに記載の電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置。
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