JP4276959B2 - 新規なアミンービスジエン及びービストリエン系化合物並びにそれを用いた電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光導電性材料として非対称構造を有する新規なアミン−ビスジエン系化合物並びにそれを用いた電子写真感光体及び画像形成装置に関する。
近年、有機光導電性材料は幅広く研究開発され、電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称す)に利用されるだけでなく、静電記録素子、センサ材料或は有機エレクトロルミネセント(Electro Luminescent;略称:EL)素子などに応用され始めている。また、有機光導電性材料を用いた電子写真感光体は、複写機の分野に限らず、従来では写真技術が使われていた印刷版材、スライドフィルムあるいはマイクロフィルムなどの分野においても利用されており、レーザ、発光ダイオード(Light Emitting Diode;略称:LED)あるいは陰極線管(Cathode Ray Tube;略称:CRT)などを光源とする高速プリンタにも応用されている。したがって、有機光導電性材料及びそれを用いた電子写真感光体に対する要求は、高度で幅広いものになりつつある。
従来から、電子写真感光体としては、セレン、酸化亜鉛あるいはカドミウムなどの無機光導電性材料を主成分とする感光層を備える無機感光体が広く用いられている。無機感光体は感光体としての基礎特性をある程度は備えているけれども、感光層の成膜が困難で可塑性が悪く製造原価が高いなどの問題がある。また無機光導電性材料は一般に毒性が強く製造上あるいは取り扱い上、大きな制約がある。
これに対し、有機光導電性材料を用いた有機感光体は、感光層の成膜性がよく、可撓性も優れている上に、軽量で、透明性がよく、適当な増感方法によって広範囲の波長域に対して良好な感度を示す感光体を容易に設計できるなどの利点を有しているので、次第に電子写真感光体の主力として開発されてきている。初期の有機感光体は感度あるいは耐久性に欠点を有していたけれども、これらの欠点は電荷発生機能と電荷輸送機能とをそれぞれ別々の物質に分担させた機能分離型電子写真感光体の開発によって改善されている。機能分離型感光体は、電荷発生機能を担う電荷発生物質及び電荷輸送機能を担う電荷輸送物質それぞれの材料選択範囲が広く、任意の特性を有する電子写真感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。
このような機能分離型感光体に使用される電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料、スクアリリウム色素、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、シアニン色素、スクアリン酸染料及びピリリウム塩系色素などの多種の物質が検討され、耐光性が強く電荷発生能力の高い種々の材料が提案されている。
一方、電荷輸送物質としては、例えば、ピラゾリン化合物(例えば、特許文献1参照)、ヒドラゾン化合物(例えば、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)、トリフェニルアミン化合物(例えば、特許文献5及び特許文献6参照)、スチルベン化合物(例えば、特許文献7及び特許文献8参照)などの種々の化合物が知られている。電荷輸送物質には下記(1)〜(5)の特性が要求されているが、前述の電荷輸送物質は、これらの特性の一部を満足するけれども、すべてを高いレベルで満足するまでに至っていない。
(1)光及び熱に対して安定であること、
(2)感光体の表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(NO)及び硝酸などに対して安定であること、
(3)高い電荷輸送能力を有すること、
(4)有機溶剤や結着剤との相溶性が高いこと、
(5)製造が容易で安価であること。
また、前述の特性の中でも、特に、高い電荷輸送能力を有することが求められる。例えば、電荷輸送物質がバインダ樹脂とともに分散されて形成された電荷輸送層が感光体の表面層となる場合、充分な光応答性を確保するために、電荷輸送物質には高い電荷輸送能力が求められる。感光体が複写機又はレーザビームプリンタなどに搭載されて使用される際、感光体の表面層は、クリーニングブレードや帯電ローラなどの接触部材によってその一部が削り取られることを余儀なくされる。複写機やレーザビームプリンタの高耐久化のためには、それらの接触部材に対して強い表面層、すなわち接触部材によって削り取られることの少ない耐刷性の高い表面層が求められる。
そこで、表面層を強くして耐久性を向上させるために、表面層である電荷輸送層中のバインダ樹脂の含有率を高くすると、光応答性が低下する。これは、電荷輸送物質の電荷輸送能力が低いため、バインダ樹脂の含有率の増加に伴って電荷輸送層中の電荷輸送物質が希釈され、電荷輸送層の電荷輸送能力が一層低下して光応答性が悪くなるものである。光応答性が悪いと、残留電位が上昇し、感光体の表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになるので、露光によって消去されるべき部分の表面電荷が充分に消去されず、早期に画像品質が低下するなどの弊害が生じる。したがって、充分な光応答性を確保するためには、電荷輸送物質に高い電荷輸送能力が求められる。
また最近ではデジタル複写機及びプリンタなどの電子写真装置の小型化及び高速化が進み、感光体特性として高速化に対応した高感度化が要求されており、感光体の特性としては、低温環境下で用いた場合にも感度が低下せず、種々の環境下において特性の変化が小さく信頼性が高いことが求められる。電荷輸送物質としてはますます高い電荷輸送能力が求められている。また高速プロセスでは露光から現像までの時間が短いので、光応答性のよい感光体が求められる。前述のように、光応答性は電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存するのでこのような点からもより高い電荷輸送能力を有する電荷輸送物質が求められる。
このような要求を満たす電荷輸送物質として、共役系が大きく広がったトリアリールアミン−ビスブタジエン化合物(例えば、特許文献9及び特許文献10参照)などが前述の電荷輸送物質よりも優れた性能を有する化合物として提案されている。しかし、これらの化合物は、対称性の化合物であるために溶性が悪く、かつ、製膜時あるいは感光体DRとしてからの長期保存時に部分的な結晶化が発生する等の新たな弊害がある。
特公昭52−4188号公報 特開昭54〜50128号公報 特公昭55−42380号公報 特開昭55−52063号公報 特公昭58−32372号公報 特開昭54−151955号公報 特開昭58−198043号公報 特開平2−190862号公報 特開平7−173112号公報 特開平8−295655号公報
本発明の目的は、製膜時あるいは感光体DRとしてからの長期保存時に部分的な結晶化弊害を起こすことが無く、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また、高いホール輸送能力を有し、耐久性が高く、かつ低温環境下又は高速プロセスで用いた場合にもこれらの特性が低下しない、信頼性の高い電子写真感光体及び画像形成装置を開発することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する為鋭意研究を進めた結果、有機光導電性材料として優れた特性を有する新規な非対称構造からなるアミン−ビスジエン系化合物を見出し、かかる化合物からなる有機光導電性材料を電荷輸送物質として含有させることにより、上記特性を備えた電子写真感光体及び画像形成装置を得ることに成功した。
すなわち、本発明は、下記一般式()で示される新規な非対称構造からなるアミンービスジエン系化合物を提供するものであり、また、導電性材料からなる導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する感光層とを備えた電子写真感光体において、前記電荷輸送物質として下記一般式()で示される非対称構造を有するアミンービスジエン系化合物からなる有機光導電性材料を含有する電子写真感光体並びにかかる電子写真感光体を搭載した画像形成装置を提供するものである。
Figure 0004276959
(式中、Zはベンゼン環と共に窒素、酸素、硫黄原子を含んで環を形成してもよい飽和の4〜8員環を示す。a及びbは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基、炭素数が1〜5のフルオロアルキル基、炭素数が1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子あるいは水素原子を示す。mは1〜3の整数を示す。但し、mが2以上の時、aは同一でも、異なってもよい。lは1〜6の整数を示す。但し、lが2以上の時、bは同一でも、異なってもよい。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子を有してもよいアリレン基もしくは2価の複素環基を示す。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基、又はハロゲン原子を有してもよいアリール基もしくは複素環基を示す。Arは、水素原子又は低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基もしくはハロゲン原子を有してもよいアリール基、複素環基、アラルキル基もしくはアルキル基を示す。但し、Ar 及びAr は、互いに結合して、ナフタレン環、アントラセン環を形成してもよい。)
本発明に従えば、感光層に電荷輸送物質として、前記一般式()で示される非対称構造からなる新規なアミン−ビスジエン系化合物を含有させることにより、製膜時あるいは感光体DRとしてからの長期保存時に部分的な結晶化の弊害を起こすことが無く、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また、高いホール輸送能力を有するため応答性によるバインダー樹脂の含有量を増やすことができるので、耐久性が高く、かつ低温環境下あるいは高速プロセスで用いた場合においてもこれらの特性が低下しない信頼性の高い電子写真感光体が得られる。
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の実施形態の例である電子写真感光体の概略断面図である。図4は、本発明に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の概略図である。尚、本発明の電子写真感光体及び画像形成装置は、図に示した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
下記一般式(1)で示される非対称構造からなるアミン−ビスジエンあるいは−ビストリエン構造を有する化合物は、高いホール輸送能力を有しており、電荷輸送物質として用いることによって、信頼性の高い電子写真感光体を実現することができるが、本発明は、下記一般式(1)で示される化合物において、さらにホール輸送能力等に優れている後記一般式(2)で示されるアミン−ビスジエン系化合物、これを有機光導電性材料として用いたセンサ材料、EL素子あるいは静電記録素子(これらを広く電子写真感光体として含む。)などとして、応答性に優れたデバイスを提供するものである
Figure 0004276959
上記一般式(1)において、Ar及びArは、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示す。その具体例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル及びビフェニリルなどのアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル及びベンゾチエニルなどの複素環基を挙げることができる。
また上記一般式(1)において、Ar及びArは、互いに異なって、置換基を有してもよいアリレン基又は置換基を有してもよい2価の複素環基を示す。そのArの具体例としては、p−フェニレン、1,4−ナフチレン、ピレニレン及び4,4’−ビフェニレンなどのアリレン基、2,5−フリレン、2,5−チエニレン及び2,5−チアゾリレンなどの2価の複素環基を挙げることができる。
また上記一般式(1)において、Arは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基及び水素原子を示す。
Arの水素原子以外の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びn−ブチルなどのアルキル基、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル及びビフェニルなどのアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル及びベンゾチエニルなどの複素環基ならびにベンジル、p−メチルベンジル及びp−メトキシベンジルなどのアラルキル基を挙げることができる。
また上記一般式(1)において、R、R及びRは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基及び置換基を有してもよいアラルキル基又は水素原子を示す。R、R及びRの水素原子以外の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びn−ブチルなどのアルキル基、フェニル、トリル、メトキシフェニル及びナフチルなどのアリール基、フリル、チエニル及びチアゾリルなどの複素環基、ならびにベンジル及びp−メトキシベンジルなどのアラルキル基を挙げることができる。また、一般式(1)において、nは1〜2の整数を示す。
上記一般式(1)で示される有機光導電性材料が、特定の環状飽和構造が導入され、かつ、非対称構造からなるアミン−ビスジエン構造からなる、高いホール輸送能力を有する下記一般式(2)で示されるより具体的な化合物を電荷輸送物質として用いることによって、比較的製造コストが安価で、製膜時あるいは感光体DRとしてからの長期保存時に部分的な結晶化の弊害を心配すことが無く、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また、高いホール輸送能力を有するため応答性によるバインダー樹脂の含有量を増やすことができるので耐久性が高く、かつ低温環境下または高速プロセスで用いた場合にもこれらの特性が低下しない、信頼性の高い電子写真感光体を得ることができる。
Figure 0004276959
上記一般式(2)において、Zはベンゼン環と共に飽和の4〜8員環を形成するのに必要な水素、窒素、炭素、酸素、硫黄原子から構成される2価の原子団を示す。Zの具体例としては、下記表1のものを挙げることができる。
Figure 0004276959
また上記一般式(2)において、a及びbは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基、炭素数が1〜5のフルオロアルキル基、炭素数が1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子あるいは水素原子を示す。a、bの水素原子以外の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル及びiso−プロピルなどのアルキル基、モノフルオロメチル、1,1−ビスフロオロエチル及び1,1,1−トリスフルオロブチルなどのフルオロアルキル基、トリフルオロメチル、ヘキサフルオロエチル及びヘプタフルオロポロピルなどのパーフルオロアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ及びiso−プロポキシなどのアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ及びジ−iso−プロピルアミノなどのジアルキルアミノ基、フッ素及び塩素などのハロゲン原子を挙げることができる。また、上記一般式(2)において、mは1〜3の整数、lは1〜6の整数を示し、また、上記一般式(2)中に、2個以上のa、bが示される場合は、それぞれ同一基でも或いは互いに異なった基であってもよい。また、Ar、Ar及びArは前記一般式(1)において定義したものと同義である。
前記一般式(1)又は(2)で示される有機光導電性材料が合成的に最も導入が簡単で、かつ反応の選択性が高い環状飽和5員環が導入された非対称構造からなるアミン−ビスジエン構造を有する下記一般式(3)で示されるより具体的な化合物を電荷輸送物質として用いることによって、製造コストがさらに安価で、製膜時あるいは感光体DRとしてからの長期保存時に部分的な結晶化の弊害を心配すことが無く、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また、高いホール輸送能力を有するため応答性によるバインダー樹脂の含有量を増やすことができるので耐久性が高く、かつ低温環境下または高速プロセスで用いた場合にもこれらの特性が低下しない、信頼性の高い電子写真感光体を安価に実現することができる。
Figure 0004276959
同一般式(3)中、X及びYは、それぞれメチレン基又は窒素原子もしくは酸素原子又は硫黄原子を示す。X及びYを含む飽和の5員環が結合したベンゼン環の具体例としては、前記表1に挙げたZを含む飽和の4〜8員環が結合したベンゼン環の具体例中の5員環が結合したベンゼン環の化合物を挙げることができる。また、Ar、Ar、Ar、a、b、m及びlは前記一般式(2)において定義したものと同義である。
また前記一般式()で示される有機光導電性材料のうち、特性、原価及び生産性などの観点から特に優れた化合物としては、表1に示したZ含む飽和の4〜8員環が結合したベンゼン環構造のうち、下記表2に示す構造のものが好適であり、その具体例として、Arがp−フェニレン基、メチル−p−フェニレン基、メトキシ−p−フェニレン基又は4,4’−ビフェニレン基であり、Arがフェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル基であり、Arが水素原子、メチル、フェニル、p−トリル基であり、a及びbが共に水素原子である化合物を挙げることができる。
Figure 0004276959
前記一般式(1)で示される本発明の有機光導電性材料の具体例としては、例えば以下の表3−1〜5に示す基を有する化合物を挙げることができるけれども、これによって本発明の有機光導電性材料が限定されるものではない。なお、同表に示す各基は、前記一般式(1)の各基に対応する。
例えば、表3−1に示す例示化合物No.1は、下記構造式(1−1)で示される化合物である。
Figure 0004276959
Figure 0004276959
Figure 0004276959
Figure 0004276959
Figure 0004276959
Figure 0004276959
本発明において、感光層に含有させる前記一般式(1)で示される非対称構造からなるアミン−ビスジエンあるいは−ビストリエン化合物は、新規化合物であり、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、2級アミンと置換基を有してもよいハロゲン化アリール化合物あるいは、炭素原子、水素原子、あるいは酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子含む飽和の4〜8員環が結合したハロゲン化ベンゼン誘導体とを縮合反応させる事によって得られる下記一般式(4)で示されるアミン化合物に対して、ビルスマイヤー反応によるビスフォルミル化またはフリーデル−クラフト反応によるビスアシル化を行うことにより、下記一般式(5)で示されるアミン−ビスカルボニル中間体を製造する。このとき、ビルスマイヤー反応によるビスフォルミル化を行うと、下記一般式(5)で示されるアミン−ビスカルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるアミン−ビスアルデヒド中間体を製造することができ、フリーデル−クラフト反応によるビスアシル化を行うと、下記一般式(5)で示されるアミン−ビスカルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるアミン−ビスケト中間体を製造することができる。
Figure 0004276959
(式中、Ar、Ar及びArは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
Figure 0004276959
(式中、Ar、Ar、Ar及びRは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
ビルスマイヤー反応は、例えば次のように行う。N,N−ジメチルホルムアミド(略称:DMF)、トルエン又は1,2−ジクロロエタンなどの溶剤中に、オキシ塩化リンとN,N−ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンとN−メチル−N−フェニルホルムアミド又はオキシ塩化リンとN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、ビルスマイヤー試薬を調製する。調製したビルスマイヤー試薬2.0当量〜2.2当量に、前記一般式(4)で示されるアミン中間体1.0当量を加え、80〜100℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(5)で示されるアミン−ビスカルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるアミン−ビスアルデヒド中間体を高収率で製造することができる。
また、フリーデル−クラフト反応は、例えば次のように行う。クロロフォルム、1,2−ジクロロエタン、ニトロベンゼンなどの溶剤中に、塩化アルミニウムと酸塩化物あるいは酸無水物とによって調製した試薬2.0当量〜2.2当量と、前記一般式(4)で示されるアミン中間体1.0当量とを加え、−40〜30℃で、2〜8時間撹拌する。このとき、場合によっては加熱する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(5)で示されるアミン−ビスカルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるアミン−ビスケト中間体を高収率で製造することができる。
次に、前記一般式(5)で示されるアミン−ビスカルボニル中間体と下記一般式(6)で示されるウィッティッヒ試薬(Wittig試薬)とを塩基性条件下で反応させるウィッティッヒ−ホルナー(Wittig−Horner)反応を行うことによって、本発明の有機光導電性材料である前記一般式(1)で示される特定のアリール基あるいは環状飽和構造が導入され、かつ、非対称構造からなるトリアリールアミン−ジエンあるいは−トリエン化合物を製造することができる。
Figure 0004276959
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。Ar,Ar,R,R及びnは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
このウィッティッヒ−ホルナー反応は、例えば以下のように行う。トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(略称:THF)、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドなどの溶剤中に、前記一般式(5)で示されるアミン−ビスカルボニル中間体1.0当量と、前記一般式(6)で示されるウィッティッヒ試薬2.1〜2.2当量と、カリウム−t−ブトキサイド、ナトリウムエトキサイド又はナトリウムメトキサイドなどの金属アルコキシド塩基2.2〜2.4当量とを加え、室温〜60℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。これによって、前記一般式(1)で示される特定のアリール基あるいは環状飽和構造が導入され、かつ、非対称構造からなるトリアリールアミンジエンあるいは−トリエン化合物を高収率で製造することができる。
本発明による電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称する)は、以上に述べた前記一般式(1)、例えば、(2)及び(3)で示される本発明の有機光導電性材料を電荷輸送物質として1種又は2種以上用いるものであり、種々の実施形態がある。図1は、本発明による電子写真感光体の一例を簡略化して示した概略断面図であるが、電子写真感光体1は、導電性材料からなるシート状の導電性支持体11上に、電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13及び電荷輸送物質13を結着させるバインダ樹脂17を含有する電荷輸送層16とが、導電性支持体11から外方に向かってこの順序で積層されてなる積層構造からなる感光層14を有する積層型感光体である(図においては電荷発生物質12および電荷輸送物質13を示すために強調描写してあるが、実際は各層を構成、或いはバインダ樹脂等の成分に均一に分散しているものである。)。
電荷輸送層16には、電荷輸送物質13として、本発明の有機光導電性材料である前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される非対称構造からなるアミン−ビスジエンあるいは−ビストリエン化合物が含有される。したがって、製膜時あるいは感光体DRとしてからの長期保存時に部分的な結晶化弊害を起こすことが無く、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また、高いホール輸送能力を有するため応答性によるバインダー樹脂の含有量を増やすことができるので耐久性が高く、かつ低温環境下または高速プロセスで用いた場合にもこれらの特性が低下しない、信頼性の高い電子写真感光体を得ることができる。更に前述のように、感光層14は、電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と電荷輸送物質13を含有する電荷輸送層16との積層構造からなる。このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、より高感度で、さらに繰り返し使用時の安定性も増した高耐久性を有する電子写真感光体を得ることができる。
導電性支持体11を構成する導電性材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼あるいはチタンなどの金属材料を用いることができる。またこれらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン及びポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙又はガラスなどの表面に、金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの又は導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。導電性支持体11の形状は、電子写真感光体1ではシート状であるけれども、これに限定されることなく、円筒状、円柱状または無端ベルト状などであってもよい。
導電性支持体11の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理又は表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているため、入射するレーザ光と電子写真感光体内で反射された光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥を起こすことがある。導電性支持体11の表面に前述のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
電荷発生層15は、光を吸収することによって電荷を発生させる電荷発生物質12を主成分として含有する。電荷発生物質12として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料及びトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミド及びペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノン及びピレンキノンなどの多環キノン系顔料、金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類及びチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素、ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機材料などを挙げることができる。これらの電荷発生物質は、1種が単独で又は2種以上が組合わされて使用される。
これらの電荷発生物質の中でも、オキソチタニウムフタロシアニンを用いることが好ましい。オキソチタニウムフタロシアニンは、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質13に効率よく注入する。また、前述のように電荷輸送物質13には、前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される電荷移動度の高い有機光導電性材料が使用される。したがって、光吸収によって電荷発生物質12で発生する電荷は、電荷輸送物質13に効率的に注入されて円滑に輸送されるので、高感度かつ高解像度の電子写真感光体を得ることができる。
電荷発生物質12は、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー及びビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ及びフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルー及びメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルー及びメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料又はチオピリリウム塩染料などの増感染料と組合わされて使用されてもよい。
電荷発生層15の形成方法としては、電荷発生物質12を導電性支持体11上に真空蒸着する方法、または溶剤中に電荷発生物質12を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体11上に塗布する方法などがある。これらの中でも、結着剤であるバインダ樹脂を溶剤中に溶解して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質12を従来公知の方法によって分散し、得られた塗布液を導電性支持体11上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂には、例えばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などからなる群から選ばれる1種が単独で又は2種以上が混合されて使用される。共重合体樹脂の具体例としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。バインダ樹脂はこれらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。
溶剤には、例えばジクロロメタン及びジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル及び酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素類又はN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが用いられる。また、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤を用いることもできる。
電荷発生物質12とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質12の割合が10質量%〜99質量%の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質12の割合が10質量%未満であると、感度が低下する。電荷発生物質12の割合が99質量%を越えると、電荷発生層15の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質12の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき以外の表面電荷が減少するので、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。したがって、10質量%〜99質量%とした。
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質12を分散させる前に、予め電荷発生物質12を粉砕機によって粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル及び超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質12をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミル又はサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器及び分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
電荷発生物質12をバインダ樹脂溶液中に分散して得られる電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法及び浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法のうちから、塗布の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を選択することができる。特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に導電性支持体11を浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で引上げることによって導電性支持体11上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているので、電子写真感光体を製造する場合に多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。
電荷発生層15の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層15の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感度が低下する。電荷発生層15の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下する。したがって、0.05μm以上5μm以下とした。
電荷輸送層16は、前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される本発明の有機光導電性材料を、電荷発生物質12で発生した電荷を輸送する能力を有する電荷輸送物質13として、バインダ樹脂17中に含有させることによって得られる。前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される有機光導電性材料は、前述の表3に示す例示化合物などからなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。なお、有機光導電性材料は、他の電荷輸送物質と混合されて使用されてもよい。
他の電荷輸送物質としては、エナミン誘導体、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、ヒドラゾン誘導体、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体及びベンジジン誘導体などを挙げることができる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖又は側鎖に有するポリマー、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン及びポリ−9−ビニルアントラセンなども挙げられる。しかし、特に高い電荷輸送能力を実現するためには、電荷輸送物質13の全量が、前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される本発明の有機光導電性材料であることが好ましい。
電荷輸送層16に使用するバインダ樹脂17には、電荷輸送物質13との相溶性に優れるものが選ばれる。具体例としては、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂及びそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂などの樹脂を挙げることができる。また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂を使用してもよい。これらの樹脂は、単独で使用されてもよく、また2種以上混合されて使用されてもよい。前述した樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂又はポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性及び電位特性などにも優れているので、これらをバインダ樹脂17に用いることが特に好ましい。
電荷輸送物質13(A)とバインダ樹脂17(B)との比率A/Bは、一般的には質量比で10/12程度であるけれども、本発明による電子写真感光体1では、質量比で10/12〜10/30である。
前述のように、電荷輸送物質13は前記一般式(1)、(2)及び(3)で示される電荷移動度の高い本発明の有機光導電性材料を含むので、前記比率A/Bを10/12〜10/30とし、従来公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率でバインダ樹脂を加えても、光応答性を維持することができる。したがって、光応答性を低下させることなく、電荷輸送層16の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。
なお、前記比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂17の比率が高くなると、浸漬塗布法によって電荷輸送層16を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層16に白濁が発生する。また前記比率A/Bが10/12を超えバインダ樹脂17の比率が低くなると、バインダ樹脂17の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加する。したがって、10/12以上10/30以下とした。
電荷輸送層16には、成膜性、可撓性及び表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤又はレベリング剤などの添加剤を添加してもよい。可塑剤としては、例えば二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、塩素化パラフィン及びエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤を挙げることができる。また電荷輸送層16には、機械的強度の増強や電気的特性の向上を図るために、無機化合物又は有機化合物の微粒子を添加してもよい。さらに電荷輸送層16には、必要に応じて酸化防止剤及び増感剤などの各種添加剤を添加してもよい。これによって、電位特性が向上するとともに、塗布液としての安定性が高まり、また感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
酸化防止剤には、ヒンダードフェノール誘導体ま又はヒンダードアミン誘導体が好適に用いられる。ヒンダードフェノール誘導体は電荷輸送物質13に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲で使用されることが好ましい。ヒンダードアミン誘導体は電荷輸送物質13に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲で使用されることが好ましい。ヒンダードフェノール誘導体とヒンダードアミン誘導体とは、混合されて使用されてもよい。この場合、ヒンダードフェノール誘導体及びヒンダードアミン誘導体の合計使用量は、電荷輸送物質13に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲にあることが好ましい。ヒンダードフェノール誘導体の使用量、ヒンダードアミン誘導体の使用量又はヒンダードフェノール誘導体及びヒンダードアミン誘導体の合計使用量が0.1質量%未満であると、塗布液の安定性の向上及び感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができない。また50質量%を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼす。したがって、0.1質量%以上50質量%以下とした。
電荷輸送層16は、例えば前述の電荷発生層15を形成する場合と同様に、適当な溶剤中に電荷輸送物質13及びバインダ樹脂17、ならびに必要な場合には前述の添加剤を溶解又は分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法又は浸漬塗布法などによって、電荷発生層15上に塗布することによって形成される。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層16を形成する場合にも多く利用されている。
塗布液に用いられる溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン及びジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサン及びジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などからなる群から選ばれる1種が単独で又は2種以上が混合されて使用される。また前述した溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリル又はメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。
電荷輸送層16の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層16の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。電荷輸送層16の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下する。したがって、5μm以上50μm以下とした。
感光層14には、感度の向上を図り、繰返し使用時の残留電位の上昇及び疲労などを抑えるために、さらに1種以上の電子受容物質や色素を添加してもよい。
電子受容物質には、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン及びテレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン及び1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン及び2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物、ならびにジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料、またはこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることができる。
また色素としては、例えばキサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料又は銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
感光層14の表面には、保護層を設けてもよい。保護層を設けることによって、感光層14の耐刷性を向上させることができるとともに、感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾンや窒素酸化物などの感光層14への化学的悪影響を防止することができる。保護層には、例えば樹脂、無機フィラー含有樹脂又は無機酸化物などからなる層が用いられる。
図2は、本発明による電子写真感光体の他の実施形態例である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す概略断面図である。電子写真感光体2は、図1に示す電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。注目すべきは導電性支持体11と感光層14との間に中間層18が設けられることである。
導電性支持体11と感光層14との間に中間層18がない場合、導電性支持体11から感光層14に電荷が注入され、感光層14の帯電性が低下し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し画像にかぶりなどの欠陥が発生することがある。特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合には、露光によって表面電荷が減少した部分にトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが発生し、画質の著しい劣化が生じる。
すなわち、導電性支持体11または感光層14の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ポチなどの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥となる。前述の中間層18を設けることによって、導電性支持体11から感光層14への電荷の注入を防止することができるので、感光層14の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき以外の表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止することができる。また中間層18を設けることによって、導電性支持体11表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、感光層14の成膜性を高めることができる。また感光層14の導電性支持体11からの剥離を抑え、導電性支持体11と感光層14との接着性を向上させる。
中間層18には、各種樹脂材料からなる樹脂層又はアルマイト層などが用いられる。樹脂層を形成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びポリアミド樹脂などの樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ならびにエチルセルロースなどを挙げることができる。これらの中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン及び2−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロン及びN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などを挙げることができる。
中間層18は、金属酸化物などの粒子を含有してもよい。これらの粒子を含有させることによって、中間層18の体積抵抗値を調節し、導電性支持体11から感光層14への電荷の注入をさらに防止することができるとともに、各種環境下において感光体の電気特性を維持することができる。
金属酸化物粒子としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどの粒子を挙げることができる。
中間層18に金属酸化物などの粒子を含有させる場合、例えば、前述の樹脂が溶解した樹脂溶液中に、これらの粒子を分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11上に塗布することによって中間層18を形成することができる。
樹脂溶液の溶剤には、水又は各種有機溶剤が用いられる。特に、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶剤又は水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルム及びトリクロロエタンなどの塩素系溶剤とアルコール類などの混合溶剤が好適に用いられる。
前述の粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としてはボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル又は超音波分散機等を用いる一般的な方法を使用することができる。
中間層用塗布液中の樹脂及び金属酸化物の合計含有量Cは、中間層用塗布液に使用されている溶剤の含有量Dに対し、C/Dが質量比で1/99〜40/60であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70である。また樹脂と金属酸化物との比率(樹脂/金属酸化物)は、質量比で90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。
中間層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法及び浸漬塗布法などを挙げることができる。特に浸漬塗布法は、前述したように、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているので、中間層18を形成する場合にも多く利用されている。
中間層18の膜厚は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上10μm以下である。中間層18の膜厚が0.01μmより薄いと、実質的に中間層18として機能しなくなり、導電性支持体11の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体11から感光層14への電荷の注入を防止することができなくなり、感光層14の帯電性の低下が生じる。中間層18の膜厚を20μmよりも厚くすることは、中間層18を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層18の形成が困難になるとともに、中間層18上に感光層14を均一に形成することができず、感光体の感度が低下するので好ましくない。
図3は、本発明の更に他の実施形態である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す概略断面図である。電子写真感光体3は、図2に示す電子写真感光体2に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
注目すべきは、電子写真感光体3が、電荷発生物質12と電荷輸送物質13との両者をバインダ樹脂17中に含有させてなる単層構造からなる感光層14を有する単層型感光体であることである。
感光層14は、前述の電荷輸送層13を形成する場合と同様の方法で形成される。例えば、前述の電荷発生物質12と前記一般式(1)、(2)又は(3)で示される本発明の有機光導電性材料を含む電荷輸送物質13とバインダ樹脂17とを、前述の適当な溶剤に溶解または分散させて感光層用塗布液を調製し、この感光層用塗布液を浸漬塗布法などによって中間層18上に塗布することによって形成される。
感光層14中の電荷輸送物質13とバインダ樹脂17との比率は、前述の電荷輸送層16中の電荷輸送物質13とバインダ樹脂17との比率A/Bと同様に、質量比で10/12〜10/30である。
感光層14の膜厚は、5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下である。感光層140の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。感光層140の膜厚が100μmを超えると、生産性が低下する。したがって、5μm以上100μm以下とした。
本発明による電子写真感光体は、以上に述べた図1〜図3に示す構成に限定されることなく、種々の層構成を採ることができる。
また感光体の各層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤および紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加してもよい。これによって、電位特性を向上させることができる。また塗布によって層を形成する際の塗布液の安定性が高まる。また感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し耐久性を向上させることができる。
特に酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物およびアミン系化合物などを挙げることができる。これらの酸化防止剤は、電荷輸送物質13に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲で使用されることが好ましい。酸化防止剤の使用量が0.1質量%未満であると、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができない。酸化防止剤の使用量が50質量%を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼす。したがって、0.1質量%以上50質量%以下とした。
次に、本発明による電子写真感光体を備える画像形成装置について説明する。なお、本発明による画像形成装置は以下の記載内容に限定されるものではない。
図4は、本発明による電子写真感光体を備える画像形成装置の構成を簡略化して示す構成図である。
図に示す如く画像形成装置5は、本発明による電子写真感光体10(以下、単に「感光体10」とも称する。)を備える。感光体10は、円筒状であって、図示しない駆動手段によって参照符41の方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体10の周囲には、感光体10の回転方向に沿って、帯電器32、図示しない半導体レーザ、現像器33、転写帯電器34、クリーナ36がこの順序で設けられる。また転写紙51の進行方向には定着器35が設けられる。
この画像形成装置5による画像形成過程について説明する。まず感光体10は、接触式または非接触式の帯電器32によって、帯電器32を臨む表面43に正または負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、図示しない半導体レーザからレーザビーム31が照射され、感光体10の表面43に露光が施される。レーザビーム31は、主走査方向である感光体10の長手方向に繰返し走査され、これに伴って感光体10の表面43に静電潜像が順次形成される。静電潜像は、レーザビーム31の結像点よりも回転方向下流側に設けられた現像器33によって、トナー画像として現像される。
また、感光体10への露光と同期して、転写紙51が参照符42の方向から現像器33の回転方向下流側に設けられた転写帯電器34に与えられる。
現像器33において感光体10の表面43に形成されたトナー画像は、転写帯電器34によって転写紙51の表面上に転写される。トナー画像が転写された転写紙51は図示しない搬送ベルトによって定着器35に搬送され、定着器35によってトナー画像が転写紙51に定着され、画像の一部が形成される。
感光体10の表面43上に残留するトナーは、転写帯電器34のさらに回転方向下流側であって帯電器32の回転方向上流側に、図示しない除電ランプと共に設けられるクリーナ36によって除去される。感光体10をさらに回転させることによって以上の過程が繰返され、転写紙51上に画像が形成される。このようにして画像が形成された転写紙51は、画像形成装置5の外部に排紙される。
画像形成装置5に備えられる電子写真感光体10は、前述のように、前記一般式(1)、例えば、(2)、(3)で示される本発明の有機光導電性材料を電荷輸送物質として含有するので、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また耐久性に優れ、またそれらの特性は、低温環境下または高速プロセスで用いた場合にも低下しない。
したがって、各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い画像形成装置を得ることができる。また、電子写真感光体10は光暴露によって性能低下をすることがないので、メンテナンス時などに感光体が光に曝されることによる画質の低下を防ぎ、画像形成装置の信頼性を向上させることができる。
次に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するけれども、本発明はこれに限定されるものではない。
(製造例1)例示化合物No.1(表3−1)の製造
(製造例1−1)アミン−ビスアルデヒド中間体の製造
無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100ml中に、氷冷下、オキシ塩化リン18.4g(2.4当量)を徐々に加え、約30分間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、下記構造式(7)で示されるトリアリールアミン中間体16.9g(1.0当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を110℃まで上げ、110℃を保つように加熱しながら3時間攪拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷やした4規定(4N)水酸化ナトリウム水溶液800ml中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿を濾別し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物17.4gを得た。
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、下記構造式(8)で示されるトリアリールアミン−ビスアルデヒド中間体(分子量の計算値:395.12)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが396.4に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(8)で示されるトリアリールアミン−ビスアルデヒド中間体であることが判った(収率:88%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたトリアリールアミン−ビスアルデヒド中間体の純度は99.0%であることが判った。
Figure 0004276959
Figure 0004276959
以上のように、前記構造式(7)で示されるトリアリールアミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるビスフォルミル化を行うことによって、前記構造式(8)で示されるトリアリールアミン−ビスアルデヒド中間体を得ることができた。
(製造例1−2)
製造例1−1で得られた前記構造式(8)で示されるトリアリールアミン−ビスアルデヒド中間体7.90g(1.0当量)と、下記構造式(9)で示されるジエチルシンナミルホスホネート12.2g(2.4当量)とを、無水DMF80mlに溶解させ、その溶液中にカリウム−t−ブトキシド5.6g(3.5当量)を0℃で徐々に加えた、その後室温で1時間放置し、さらに50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶10.9gを得た。
Figure 0004276959
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とするNo.1の例示化合物(分子量の計算値:595.25)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが596.7に観測された。
LC−MSの分析結果から、得られた結晶は、例示化合物No.1であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、その純度は99.3%であることが判った。
以上のように、前記構造式(8)で示されるトリアリールアミン−ビスアルデヒド中間体と、Wittig試薬である前記構造式(9)で示されるジエチルシンナミルホスホネートとのWittig−Horner反応を行うことによって、表3−1に示す例示化合物No.1を得ることができた。
(製造例2)例示化合物No.46(表3−3)の製造
製造例1−1で得られた前記構造式(8)で示されるトリアリールアミン−ビスアルデヒド中間体1.80g(1.0当量)と、下記構造式(10)で示されるWittig試薬3.06g(2.4当量)とを、無水DMF15mlに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド1.42g(2.5当量)を0℃で徐々に加えた、その後室温で1時間放置し、さらに50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶2.38gを得た。
Figure 0004276959
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表3−3に示す例示化合物No.46の化合物(分子量の計算値:647.28)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが648.5に観測されたことから、得られた結晶は、例示化合物No.46であることが判った(収率:81%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.46の純度は、99.7%であることが判った。
以上のように、前記構造式(8)で示されるトリアリールアミン−ビスアルデヒド中間体と前記構造式(10)で示されるウィッティッヒ試薬とのウィッティッヒ−ホルナー反応を行うことによって、表3−3に示す例示化合物No.46を得ることができた。
[実施例1]
電荷発生物質12である下記構造式(11)で示されるアゾ化合物1質量部を、THF99質量部にフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製:PKHH)1質量部を溶解させて得た樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで2時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、導電性支持体11である、表面にアルミニウムが蒸着された膜厚80μmのポリエステルフィルムのアルミニウム上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層15を形成した。
Figure 0004276959
次に、電荷輸送物質13である表3−1に示す例示化合物No.1の特定のアリール基あるいは環状飽和構造が導入されかつ、非対称構造からなるトリアリールアミン−ジエン化合物8質量部と、バインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製:C−1400)10質量部とをTHF80質量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層15上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚10μmの電荷輸送層16を形成した。
以上のようにして、図1に示す構成の積層型の電子写真感光体を作製した。
[実施例2〜4]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、例示化合物No.15(表3−1)、30(表3−2)又は69(表3−4)の非対称構造からなるアミン−ビスジエンあるいは−ビストリエン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、3種類の電子写真感光体を作製した。
[比較例1]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(12)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0004276959
[比較例2]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(13)で示される比較化合物Bを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0004276959
[比較例3]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(14)で示される比較化合物Bを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。しかしながら本サンプルは製膜/乾燥後、シート表面上に比較化合物Cの相溶性の悪さに起因する微小結晶が無数に生じ現れ、移動度を測定することができなかった。
Figure 0004276959
[比較例4]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(15)で示される比較化合物Bを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 0004276959
[評価1]
以上の実施例1〜4及び比較例1〜4で作製した各電子写真感光体について、各電子写真感光体の感光層の表面に金を蒸着し、室温、減圧下で、飛行時間(Time−of−Flight)法によって電荷輸送物質13の電荷移動度を測定した。表4に測定結果を示す。なお、表4に示す電荷移動度の値は、電界強度が2.5×10V/cmのときの値である。
Figure 0004276959
実施例1〜4と比較例1〜4との比較から、前記一般式(1)で示される本発明の有機光導電性材料は、従来公知の電荷輸送物質である比較化合物Aなどのトリフェニルアミンダイマー(略称:TPD)や、特定の環状飽和構造が導入されたトリフェニルアミン−スチルベン比較化合物Bや、トリアリールアミン−ビススチルベンなどに比べ、2桁以上高い電荷移動度を有することが判った。
[実施例5]
酸化アルミニウム(Al)及び二酸化ジルコニウム(ZrO)で表面処理を行った樹脂状の酸化チタン(石原産業(株)製:TTO−D−1)9質量部と共重合ナイロン樹脂(東レ(株)製:CM8000)9質量部とを、1,3−ジオキソラン41質量部とメタノール41質量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、中間層用塗布液を調製した。調製した中間層用塗布液を、導電性支持体11である厚み0.2mmのアルミニウム基板上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚1μmの中間層18を形成した。
次いで、電荷発生物質12である下記構造式(16)で示されるアゾ化合物2質量部を、THF97質量部にポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製:BX−1)1質量部を溶解させて得た樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで10時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層18の上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層15を形成した。
Figure 0004276959
次いで、電荷輸送物質13である例示化合物No.1の特定の環状飽和構造が導入された特定のアリール基あるいは環状飽和構造が導入されかつ、非対称構造からなるトリアリールアミン−ジエン化合物10質量部と、バインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学(株)製:Z200)14質量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部とを、THF80質量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層15上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚18μmの電荷輸送層16を形成した。
以上のようにして、図2に示す構成の積層型の電子写真感光体を作製した。
[実施例6〜8]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、例示化合物No.23、36又は69の非対称構造からなるアミン−ビスジエンあるいは−ビストリエン化合物を用いる以外は実施例5と同様にして、3種類の電子写真感光体を作製した。
[比較例5〜7]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、前記構造式(12)で示される比較化合物A又は前記構造式(13)で示される比較化合物B又は前記構造式(15)で示される比較化合物Dを用いる以外は、実施例5と同様にして、3種類の電子写真感光体を作製した。
[実施例9]
実施例5と同様にして、中間層用塗布液を調製し、これを導電性支持体11である厚み0.2mmのアルミニウム基板上に塗布した後、乾燥させ、膜厚1μmの中間層18を形成した。
次に、電荷発生物質12である前記構造式(16)で示されるアゾ化合物1質量部、バインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学(株)製:Z−400)12質量部、電荷輸送物質13である例示化合物No.1の特定の環状飽和構造が導入されたトリフェニルアミン−ブタジエン化合物10質量部、3,5−ジメチル−3′,5′−ジ−t−ブチルジフェノキノン5質量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.5質量部及びTHF65質量部をボールミルで12時間分散し、感光層用塗布液を調製した。調製した感光層用塗布液を、先に形成した中間層18上に、ベーカアプリケータによって塗布した後、110℃で1時間、熱風乾燥し、図3に示す膜厚20μmの感光層14を形成した。
以上のようにして、図3に示す構成の単層型の電子写真感光体を作製した。
[実施例10]
電荷発生物質12に、前記構造式(16)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用いる以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体を作製した。
[実施例11〜13]
電荷発生物質12に、前記構造式(16)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、例示化合物No.2、30又は46の非対称構造からなるアミン−ビスジエンあるいは−ビストリエン化合物を用いる以外は、実施例5と同様にして、3種類の電子写真感光体を作製した。
[比較例8〜10]
電荷発生物質12に、前記構造式(16)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、前記構造式(12)で示される比較化合物A又は前記構造式(13)で示される比較化合物B又は前記構造式(15)で示される比較化合物Dを用いる以外は、実施例5と同様にして、3種類の電子写真感光体を作製した。
[評価2]
以上の実施例5〜13及び比較例5〜10で作製した各電子写真感光体について、静電複写紙試験装置((株)川口電機製作所製:EPA−8200)を用いて初期特性及び繰返し特性を評価した。なお、初期特性及び繰返し特性の評価は、温度22℃、相対湿度(Relative Humidity)65%(22℃/65%RH)の常温/常湿環境下(以下、N/N環境下と称する)と、温度5℃、相対湿度20%(5℃/20%RH)の低温/低湿環境下(以下、L/L環境下と称する)とにおいて行った。
初期特性の評価は以下のように行った。感光体にマイナス(−)5kVの電圧を印加することによって感光体表面を帯電させ、このときの感光体の表面電位を帯電電位V(V)として測定した。ただし、実施例9の単層型感光体の場合には、プラス(+)5kVの電圧を印加した。次に、帯電された感光体表面に対して露光を施した。このとき、感光体の表面電位を帯電電位Vから半減させるために要したエネルギーを半減露光量E1/2(μJ/cm)として測定し、感度の評価指標とした。また露光開始から10秒間経過した時点の感光体の表面電位を残留電位V(V)として測定し、光応答性の評価指標とした。なお、露光には、電荷発生物質12に、前記構造式(13)で示されるアゾ化合物を用いた実施例5〜9および比較例5、6、7の感光体の場合には露光エネルギー1μW/cmの白色光を用い、X型無金属フタロシアニンを用いた実施例10〜13および比較例8、9、10の感光体の場合にはモノクロメータにて分光して得られた波長780nm、露光エネルギー1μW/cmの光を用いた。
繰返し特性の評価は、以下のように行った。前述の帯電および露光の操作を1サイクルとして5000回繰返した後、初期特性の評価と同様にして、半減露光量E1/2、帯電電位V及び残留電位Vを測定した。
以上の測定結果を表5に示す。
Figure 0004276959
実施例5〜8と比較例5、6、7との比較及び実施例10〜13と比較例8、9、10との比較から、電荷輸送物質13に前記一般式(1)で示される本発明の有機光導電性材料を用いた実施例5〜8,10〜13の感光体の方が、電荷輸送物質13に比較化合物A又はB又はDを用いた比較例5〜10の感光体よりも、半減露光量E1/2が小さく高感度で、また残留電位Vが負の方向に低いすなわち残留電位Vと基準電位との電位差が小さく、光応答性に優れることが判った。またこの特性は、繰返し使用した場合であっても維持され、また低温/低湿(L/L)環境下においても維持されることが判った。
[実施例14]
酸化アルミニウム(Al)及び二酸化ジルコニウム(ZrO)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業(株)製:TTO−D−1)9質量部及び共重合ナイロン樹脂(東レ(株)製:CM8000)9質量部を、1,3−ジオキソラン41質量部とメタノール41質量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、中間層用塗布液を調製した。この中間層塗布液を塗工槽に満たし、直径40mm、全長340mmのアルミニウム製の円筒状導電性支持体11を塗工槽に浸漬した後引上げることによって、膜厚1.0μmの中間層18を導電性支持体11上に形成した。
次いで、電荷発生物質12であるオキソチタニウムフタロシアニンとしてCu−Kα特性X線(波長:1〜54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニンの2質量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製:エスレックBM−S)1質量部と、メチルエチルケトン97質量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層18と同様の方法、すなわち浸漬塗布法にて、先に形成した中間層18上に塗布することによって、膜厚0.4μmの電荷発生層15を中間層18上に形成した。
次いで、電荷輸送物質13である例示化合物No.1の特定のアリール基あるいは環状飽和構造が導入されかつ、非対称構造からなるトリアリールアミン−ジエン化合物10質量部と、バインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂(三菱E.P.(株)製:ユーピロンZ200)20質量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1質量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製:KF−96)0.004質量部とを、テトラヒドロフラン110質量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した中間層18と同様の浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層15上に塗布した後、110℃にて1時間乾燥させ、膜厚23μmの電荷輸送層16を形成した。
以上のようにして、電子写真感光体を作製した。
[実施例15〜16]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、例示化合物No.2又は69の特定のアリール基あるいは環状飽和構造が導入されかつ、非対称構造からなるトリアリールアミン−ジエンあるいは−トリエン化合物を用いる以外は、実施例14と同様にして、2種類の電子写真感光体を作製した。
[比較例11]
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、前記構造式(12)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例14と同様にして、電子写真感光体を作製した。
[実施例17]
電荷輸送層16のバインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂の量を25質量部とする以外は、実施例14と同様にして電子写真感光体を作製した。
[実施例18、19]
電荷輸送層16のバインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂の量を25質量部とし、電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、表3に示す例示化合物No.15又は30の非対称構造からなるアミン−ビスジエンあるいは−ビストリエン化合物を用いる以外は、実施例14と同様にして、2種類の電子写真感光体を作製した。
[参考例1]
電荷輸送層16のバインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂の量を10質量部とする以外は、実施例14と同様にして電子写真感光体を作製した。
[参考例2]
電荷輸送層16のバインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂の量を31質量部とする以外は、実施例14と同様にして電子写真感光体を作製した。
ただし、電荷輸送層16の形成の際、実施例14と同量のテトラヒドロフランではポリカーボネート樹脂が完全に溶解した電荷輸送層用塗布液を調製することができなかったので、テトラヒドロフランを追加し、ポリカーボネート樹脂が完全に溶解した電荷輸送層用塗布液を調製し、これを用いて電荷輸送層16を形成した。
しかしながら、電荷輸送層用塗布液中の溶剤の量が過剰であるために、円筒状の感光体の長手方向端部にブラッシング現象による白濁が生じ、特性評価を行うことができなかった。
[評価3]
以上の実施例14〜19、参考例1〜2及び比較例11で作製した各電子写真感光体について、耐刷性及び電気特性の安定性の評価を以下のように行った。
作製した各電子写真感光体を、プロセススピードを117mm/secとしたデジタル複写機(シャープ(株)製:AR−C150)にそれぞれ搭載した。画像形成を40,000枚行った後、感光層の膜厚d1を測定し、この値と作製時の感光層の膜厚d0との差を膜減り量Δd(=d0−d1)として求め、耐刷性の評価指標とした。
また複写機内部に、画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(ジェンテック社製:CATE751)を設け、22℃/65%RHのN/N環境下において、帯電直後の表面電位である帯電電位V(V)およびレーザ光によって露光を施した直後の表面電位V(V)を測定した。また5℃/20%RHのL/L環境下においても同様にして、レーザ光によって露光を施した直後の表面電位Vを測定した。N/N環境下で測定した表面電位VをV(1)とし、L/L環境下で測定した表面電位VをV(2)としたとき、V(1)とV(2)との差を電位変動ΔV(=V(2)−V(1))として求め、電気特性の安定性の評価指標とした。なお、感光体表面の帯電は、負帯電プロセスで行った。
これらの評価結果を表6に示す。
Figure 0004276959
実施例14〜19と比較例11との比較から、電荷輸送物質13に本発明の有機光導電性材料を用いた実施例14〜19の感光体は、比較化合物Aを用いた比較例11の感光体に比べ、高い比率でバインダ樹脂を加えた場合であっても、N/N環境下の表面電位Vが小さく光応答性に優れることが判った。また電位変動ΔVも小さく、L/L環境下においても充分な光応答性を示すことが判った。
実施例14〜19と参考例1、2との比較から、電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率A/Bが10/12〜10/30の範囲にある実施例17〜19の感光体の方が、前記比率A/Bが10/10であり10/12を超え、バインダ樹脂の比率が低い参考例1の感光体よりも、膜減り量Δdが小さく、耐刷性が高いことが判った。
以上のように、本発明の有機光導電性材料を含有させて電荷輸送層を形成することによって、バインダ樹脂の比率を高くしても光応答性を低下させることなく、電荷輸送層の耐刷性を向上させることができた。
本発明の電子写真感光体は、非対称構造からなるアミン−ビスジエン系の有機光導電性材料を電荷輸送物質として含有させることにより、製膜時あるいは感光体DRとしてからの長期保存時に部分的な結晶化による弊害を起こすことが無く、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また、高いホール輸送能力を有するため応答性によるバインダー樹脂の含有量を増やすことができるので耐久性が高く、かつ低温環境下又は高速プロセスで用いた場合にもこれらの特性が低下しないという特性を有しており産業上の利用可能性が高いものである。
本発明の実施形態の一例である電子写真感光体の構成を簡略化して示す概略断面図である。 本発明の実施形態の他の例である電子写真感光体の構成を簡略化して示す概略断面図である。 本発明の実施形態のさらに他の例である電子写真感光体の構成を簡略化して示す概略断面図である。 本発明による電子写真感光体を備える画像形成装置の構成を簡略化して示す構成図である。
符号の説明
1,2,3,10 電子写真感光体
5 画像形成装置
11 導電性支持体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質
14 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 バインダ樹脂
18 中間層
31 レーザビーム
32 帯電器
33 現像器
34 転写帯電器
35 定着器
36 クリーナ
51 転写紙

Claims (9)

  1. 下記一般式(2)で示される非対称性アミン−ビスジエン系化合物。
    Figure 0004276959
    (式中、Zはベンゼン環と共に窒素、酸素、硫黄原子を含んで環を形成してもよい飽和の4〜8員環を示す。a及びbは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基、炭素数が1〜5のフルオロアルキル基、炭素数が1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子あるいは水素原子を示す。mは1〜3の整数を示す。但し、mが2以上の時、aは同一でも、異なってもよい。lは1〜6の整数を示す。但し、lが2以上の時、bは同一でも、異なってもよい。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子を有してもよいアリレン基もしくは2価の複素環基を示す。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基又はハロゲン原子を有してもよいアリール基もしくは複素環基を示す。Arは、水素原子又は低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基もしくはハロゲン原子を有してもよいアリール基、複素環基、アラルキル基もしくはアルキル基を示す。但し、Ar 及びAr は、互いに結合して、ナフタレン環、アントラセン環を形成してもよい。)
  2. 前記一般式(2)で示される化合物が、下記一般式(3)で示される非対称性アミン−ビスジエン系化合物。
    Figure 0004276959
    (式中、X及びYは、それぞれメチレン基、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を示す。a及びbは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基、炭素数が1〜5のフルオロアルキル基、炭素数が1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子あるいは水素原子を示す。mは1〜3の整数を示す。但し、mが2以上の時、aは同一でも、異なってもよい。lは1〜6の整数を示す。但し、lが2以上の時、bは同一でも、異なってもよい。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子を有してもよいアリレン基もしくは2価の複素環基を示す。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基、又はハロゲン原子を有してもよいアリール基もしくは複素環基を示す。Arは、水素原子又は低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基もしくはハロゲン原子を有してもよいアリール基、複素環基、アラルキル基もしくはアルキル基を示す。但し、Ar 及びAr は、互いに結合して、ナフタレン環、アントラセン環を形成してもよい。)
  3. 導電性支持体上に設けられた電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する感光層を備えた電子写真感光体において、当該電荷輸送物質として下記一般式(2)で示される非対称性アミン−ビスジエン系化合物を有機光導電性材料として含有することを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 0004276959
    (式中、Zはベンゼン環と共に窒素、酸素、硫黄原子を含んで環を形成してもよい飽和の4〜8員環を示す。a及びbは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基、炭素数が1〜5のフルオロアルキル基、炭素数が1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子あるいは水素原子を示す。mは1〜3の整数を示す。但し、mが2以上の時、aは同一でも、異なってもよい。lは1〜6の整数を示す。但し、lが2以上の時、bは同一でも、異なってもよい。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子を有してもよいアリレン基もしくは2価の複素環基を示す。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基、又はハロゲン原子を有してもよいアリール基もしくは複素環基を示す。Arは、水素原子又は低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基もしくはハロゲン原子を有してもよいアリール基、複素環基、アラルキル基もしくはアルキル基を示す。但し、Ar及びArは、互いに結合して、ナフタレン環、アントラセン環を形成してもよい。)
  4. 前記有機光導電性材料が、下記一般式(3)で示される非対称性アミン−ビスジエン系化合物である請求項3記載の電子写真感光体。
    Figure 0004276959
    (式中、X及びYは、それぞれメチレン基、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を示す。a及びbは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基、炭素数が1〜5のフルオロアルキル基、炭素数が1〜5のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子あるいは水素原子を示す。mは1〜3の整数を示す。但し、mが2以上の時、aは同一でも、異なってもよい。lは1〜6の整数を示す。但し、lが2以上の時、bは同一でも、異なってもよい。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基又はハロゲン原子を有してもよいアリレン基もしくは2価の複素環基を示す。Arは、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基、又はハロゲン原子を有してもよいアリール基もしくは複素環基を示す。Arは、水素原子又は低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基、ハロゲン置換低級アルキル基もしくはハロゲン原子を有してもよいアリール基、複素環基、アラルキル基もしくはアルキル基を示す。但し、Ar 及びAr は、互いに結合して、ナフタレン環、アントラセン環を形成してもよい。)
  5. 前記電荷発生物質が、Cu−Kα特性X線回折(波長:1.54Å)におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも27.2°に回折ピークを有するオキソチタニウムフタロシアニンを含有するものである請求項3〜4の何れかに記載の電子写真感光体。
  6. 前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層との積層構造からなる請求項3〜5の何れかに記載の電子写真感光体。
  7. 前記電荷輸送層が、電荷輸送物質(A)と前記バインダ樹脂(B)との比率A/B(質量比)で10/12〜10/30を含有する請求項3〜6の何れかに記載の電子写真感光体。
  8. 前記感光体が、導電性支持体と前記感光層との間に中間層が設けられたものである請求項3〜7の何れかに記載の電子写真感光体。
  9. 請求項3〜8の何れかに記載の電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置。
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