JP3980499B2 - 電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタおよびファクシミリ装置などの電子写真方式の画像形成装置に用いられる電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置に関し、より詳細には、特定の電荷輸送物質と特定の樹脂とを含有する感光層を有する電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンタおよびファクシミリ装置などの電子写真方式の画像形成装置(以下、「電子写真装置」とも称する)では、以下のような電子写真プロセスを経て画像を形成する。まず、電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称する)の表面を所定の電位に帯電させ、帯電された感光体の表面に画像情報に応じた露光を施すことによって静電潜像を形成する。形成された静電潜像を、トナーなどを含む現像剤で現像し、トナー画像として顕像化する。トナー画像を感光体の表面から紙などの記録媒体上に転写し、転写されたトナー画像を定着させる。
【0003】
このような電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体は、導電性材料から成る導電性基体と、導電性基体上に設けられ光導電性材料を含有する感光層とを含んで構成される。近年、電子写真感光体に用いられる光導電性材料の開発が進み、従来から用いられている無機系の光導電性材料に代えて、有機系の光導電性材料、すなわち有機光導電体(Organic Photoconductor;略称:OPC)が多く使用されるようになっている。
【0004】
無機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以下、「無機系感光体」と称する)の代表的なものとしては、アモルファスセレン(a−Se)またはアモルファスセレンひ素(a−AsSe)などを用いたセレン系感光体、酸化亜鉛(ZnO)を増感剤である色素とともに結着樹脂中に分散した酸化亜鉛系感光体、硫化カドミウム(CdS)を結着樹脂中に分散した硫化カドミウム系感光体、アモルファスシリコン(a−Si)を用いたアモルファスシリコン系感光体(以下、「a−Si感光体」と称する)などがある。しかしながら、無機系感光体には以下のような欠点がある。セレン系感光体および硫化カドミウム系感光体は、耐熱性および保存安定性に問題がある。またセレンおよびカドミウムは人体や環境に対する毒性を有するので、これらを用いた感光体は、使用後には回収され、適切に廃棄される必要がある。また酸化亜鉛系感光体は、低感度であって、かつ耐久性が低いという欠点があり、現在ではほとんど使用されていない。また、無公害性の無機系感光体として注目されるa−Si感光体は、高感度および高耐久性などの長所を有する反面、プラズマ化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;略称:CVD)法を用いて製造されるので、感光層を均一に成膜することが難しく、画像欠陥が発生しやすいなどの短所を有する。また生産性が低く、製造原価が高いという短所も有する。
【0005】
これに対し、有機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以下、「有機系感光体」と称する)は、感度、耐久性および環境に対する安定性などに若干の問題を有するけれども、毒性、製造原価および材料設計の自由度などの点において、無機系感光体に比べ、多くの利点を有する。また感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することが可能であるという利点も有する。このような利点を有することから、有機系感光体は次第に電子写真感光体の主流を占めてきている。近年、特に研究が重ねられ、急激に感度や耐久性の向上が図られており、現在では、特別な場合を除き、電子写真感光体としては、有機系感光体が用いられるようになってきている。
【0006】
特に、有機系感光体の性能は、電荷発生機能と電荷輸送機能とをそれぞれ別々の物質に分担させた機能分離型感光体の開発によって著しく改善されている。また機能分離型感光体は、電荷発生機能を担う電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送機能を担う電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る感光層を有するので、電荷発生物質および電荷輸送物質それぞれの材料選択範囲が広く、任意の特性を有する電子写真感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。電荷発生層および電荷輸送層は、通常、電荷発生物質または電荷輸送物質が結着剤であるバインダ樹脂中に分散された形で形成される。
【0007】
機能分離型感光体に使用される電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料、スクアリリウム色素、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、シアニン色素、スクアリン酸染料およびピリリウム塩系色素などの多種の物質が検討され、耐光性が強く電荷発生能力の高い種々の材料が提案されている。
【0008】
一方、電荷輸送物質としては、たとえばピラゾリン化合物(たとえば、特許文献1参照)、ヒドラゾン化合物(たとえば、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)、トリフェニルアミン化合物(たとえば、特許文献5および特許文献6参照)およびスチルベン化合物(たとえば、特許文献7および特許文献8参照)などの種々の化合物が知られている。最近では、縮合多環式炭化水素系をその中心母核に持つ、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体およびターフェニル誘導体(たとえば、特許文献9参照)なども開発されている。
【0009】
電荷輸送物質には、
(1)光および熱に対して安定であること、
(2)感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(化学式:NOx)および硝酸などに対して安定であること、
(3)高い電荷輸送能力を有すること、
(4)有機溶剤やバインダ樹脂との相溶性が高いこと、
(5)製造が容易で安価であること
などが要求される。しかしながら、前述の電荷輸送物質は、これらの要求の一部を満足するけれども、すべてを高いレベルで満足するには至っていない。
【0010】
また、電荷輸送物質がバインダ樹脂に分散されて成る電荷輸送層が感光体の表面層となる場合、電荷輸送物質には特に高い電荷輸送能力が求められる。
【0011】
複写機またはレーザビームプリンタなどの電子写真装置は、感光体と、感光体の表面を所定の電位に帯電させる帯電ローラなどの帯電手段と、帯電された感光体の表面に露光を施す露光手段と、感光体表面に磁気ブラシなどでトナーを含む現像剤を供給し、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段と、現像によって得られるトナー画像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写されたトナー画像を定着させる定着手段と、転写手段による転写動作後にクリーニングブレードなどによって感光体表面に残留するトナーを除去し感光体表面を清掃する清掃手段とを含んで構成される。感光体が電子写真装置に搭載されて使用される際、感光体の表面層は、クリーニングブレードや帯電ローラなどの接触部材によってその一部が削り取られることを余儀なくされる。感光体の表面層の削り取られる量が大きいと、感光体の帯電保持能が低下し、長期に渡って良好な品質の画像を提供することができなくなる。したがって、複写機やレーザビームプリンタなどの電子写真装置の高耐久化のためには、それらの接触部材に対して強い表面層、すなわちそれらの接触部材によって削り取られる量の少ない耐刷性の高い表面層を有する耐久性の高い感光体が求められる。
【0012】
表面層を強くして感光体の耐久性を向上させるためには、表面層となる電荷輸送層中のバインダ樹脂の含有率を高くすることが考えられる。しかしながら、電荷輸送層中のバインダ樹脂の含有率を高くすると、光応答性が低下する。光応答性が低い、すなわち露光後の表面電位の減衰速度が遅いと、残留電位が上昇し、感光体の表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになるので、露光によって消去されるべき部分の表面電荷が充分に消去されず、早期に画像品質が低下するなどの弊害が生じる。光応答性は、電荷輸送物質の電荷移動度に依存することが知られており、この光応答性の低下は、電荷輸送物質の電荷輸送能力が低いことに起因する。すなわち、バインダ樹脂の含有率の増加に伴って電荷輸送層中の電荷輸送物質が希釈され、電荷輸送層の電荷輸送能力が一層低下して光応答性が低下するのである。したがって、この光応答性の低下を防ぎ、充分な光応答性を確保するために、電荷輸送物質には特に高い電荷輸送能力が求められる。
【0013】
また、近年、デジタル複写機およびプリンタなどの電子写真装置の小型化および高速化が進み、感光体特性として高速化に対応した高感度化が要求されており、電荷輸送物質としてはますます高い電荷輸送能力が求められている。また高速の電子写真プロセスでは、露光から現像までの時間が短いので、光応答性の高い感光体が求められる。前述のように、光応答性は電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存するので、このような点からもより高い電荷輸送能力を有する電荷輸送物質が求められる。
【0014】
このような要求を満たす電荷輸送物質として、前述の電荷輸送物質よりも高い電荷移動度を有するエナミン化合物が提案されている(たとえば、特許文献10、特許文献11および特許文献12参照)。
【0015】
また、ポリシランを含有させることによって高い電荷輸送能力を持たせ、さらに特定の構造を有するエナミン化合物を含有させることによって帯電能および膜強度を改善した感光体が提案されている(特許文献13参照)。
【0016】
一方、機能分離型感光体の耐久性などの性能は、バインダ樹脂自体にも大きく左右される。
【0017】
機能分離型感光体の電荷輸送層に用いられるバインダ樹脂としては、帯電性、感度、残留電位および繰返し性能などの面で、下記構造式(A)で示される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェノール)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)を原料とするビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が良好な特性を発揮することがよく知られている(たとえば、特許文献14参照)。
【0018】
【化4】
Figure 0003980499
【0019】
また、感光層表面に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェノール)シクロヘキサン(慣用名:ビスフェノールZ)を原料とするビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂をバインダ樹脂として含有させることによって、耐久性を改良する技術が提案されている(たとえば、特許文献15参照)。
【0020】
【特許文献1】
特公昭52−4188号公報
【特許文献2】
特開昭54−150128号公報
【特許文献3】
特公昭55−42380号公報
【特許文献4】
特開昭55−52063号公報
【特許文献5】
特公昭58−32372号公報
【特許文献6】
特開平2−190862号公報
【特許文献7】
特開昭54−151955号公報
【特許文献8】
特開昭58−198043号公報
【特許文献9】
特開平7−48324号公報
【特許文献10】
特開平2−51162号公報
【特許文献11】
特開平6−43674号公報
【特許文献12】
特開平10−69107号公報
【特許文献13】
特開平7−134430号公報
【特許文献14】
特開平5−61215号公報(第4頁)
【特許文献15】
特許第2844215号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献14などに記載の感光体に用いられるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAの構造上の対称性に起因する以下のような欠点を有している。
【0022】
(1)溶解性が悪く、ジクロロメタンや1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系有機溶剤の一部にしか良好な溶解性を示さない。これらのハロゲン系有機溶剤は低沸点であるので、これらの溶剤で調製した塗布液を用いて感光体を製造すると、溶剤の蒸発速度が速すぎるため、気化熱により塗布膜が白濁しやすい。またジクロロメタンや1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系有機溶剤は、毒性が高く、オゾン層を破壊するなど、作業者や地球環境に対する影響が大きいので、製造工程の管理が煩雑となる。
【0023】
(2)前述のハロゲン系有機溶剤以外では、テトラヒドロフラン、ジオキサンもしくはシクロヘキサノン、またはそれらの混合溶剤に一部は可溶であるけれども、これらの溶剤で調製された塗布液は、調製後数日以内でゲル化するなど経時安定性が悪い。特に浸漬塗布のような製造方法で感光体を製造する場合、塗布槽内の塗布液がゲル化してしまい、感光体の生産に支障をきたすことがある。
【0024】
(3)樹脂自身の分子間引力が強いので、形成した塗布膜は、接着性が悪く、他の層との界面からクラックが入りやすい。また密着性が悪いので、界面付近に形成される電位障壁層が増大し、電荷発生物質で発生した電荷が感光層表面まで円滑に輸送されず、感光体を連続使用した際、露光された部分の表面電位である明部電位と露光されなかった部分の表面電位である暗部電位との差が小さくなる。このため、正規現像の場合には形成された画像のかぶりが大きくなり、反転現像の場合には画像濃度が低下し、良好な画像を形成することができない。
【0025】
(4)樹脂自身の結晶性が高いので、塗膜形成時に膜表面に結晶化したポリカーボネート樹脂が析出して凸部が生じやすい。このため、塗布膜の尾引きが生じて生産性が低下する。また感光体としての使用時に凸部にトナーが付着してクリーニングされずに残り、いわゆるクリーニング不良による画像欠陥が生じやすい。
【0026】
(5)樹脂自身の機械的強度が乏しいので、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂をバインダ樹脂に用いた感光層は、帯電ローラ、磁気ブラシまたはクリーニングブレードなどで摺擦されることによって、表面に傷が付きやすく、次第に摩耗する。
【0027】
また、感光体の特性としては、低温環境下で用いられた場合にも光応答性が低下せず、種々の環境下において特性の変化が小さく信頼性の高いことが求められる。しかしながら、特許文献15に記載のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂をバインダ樹脂として用いた感光体は、耐刷性および耐摩耗性は良好であるけれども、光応答性が低く、特に低温環境下で用いられた場合には、応答性の低下が生じ、形成される画像の品質が低下するという問題がある。
【0028】
このような低温環境下における光応答性の低下を抑えるためには、前述のように電荷移動度の高い電荷輸送物質を用いることが考えられる。しかしながら、前述の特許文献10、特許文献11または特許文献12に記載の感光体に用いられる電荷移動度の高いエナミン化合物を用いても、低温環境下では充分な光応答性を得ることはできない。また特許文献13に記載の感光体では、ポリシランを含有させることによって高い電荷輸送能力を持たせているけれども、ポリシランを用いた感光体は、光暴露に弱く、メンテナンス時などに光に曝されることによって感光体としての諸特性が低下するという問題がある。
【0029】
本発明の目的は、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有し、また耐久性に優れ、低温環境下もしくは高速の電子写真プロセスで用いられた場合または光に曝された場合であってもそれらの特性が低下せず、高い信頼性を有するとともに、生産性が良好な電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置を提供することである。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性材料から成る導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられ、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂および下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0031】
【化5】
Figure 0003980499
【0032】
(式中、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
【0033】
本発明に従えば、電子写真感光体の導電性基体上に設けられる感光層は、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂および前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する。前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は高い電荷移動度を有するので、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質として感光層に含有させることによって、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有するとともに、耐久性に優れる電子写真感光体を得ることができる。また感光層にポリシランを含有させることなく、高い電荷輸送能力を実現することができるので、光暴露によって特性の低下することのない信頼性の高い電子写真感光体を得ることができる。また、感光層に含有される非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、溶剤がハロゲン系有機溶剤であるか、非ハロゲン系有機溶剤であるかに関わらず、溶剤に対して高い溶解性を示すので、塗布によって感光層を形成する際に、非ハロゲン系有機溶剤を用いて塗布液を調製しても、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含む塗布液は、ゲル化することがなく、成膜性が良好で、また安定性に優れ、調製から数日経過してもゲル化することはない。このような塗布液を用いることによって、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。また非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、機械的強度に優れるので、感光層表面における傷の発生を抑え、感光層の膜減り量を低減することができ、感光層の摩耗に起因する特性変化を小さくすることができる。一方、このように感光層が非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含有する場合、光応答性などの特性の低下することがある。しかしながら、本発明の電子写真感光体に設けられる感光層には、前述のように前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物が電荷輸送物質として含有されるので、低温環境下または高速の電子写真プロセスで用いられた場合にも前述の特性は低下しない。したがって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物と非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂とを組合せて感光層に含有させることによって、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有し、また耐久性に優れ、低温環境下もしくは高速の電子写真プロセスで用いられた場合または光に曝された場合であってもそれらの特性が低下せず、高い信頼性を有するとともに、生産性が良好な電子写真感光体を得ることができる。
【0034】
また本発明は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物であることを特徴とする。
【0035】
【化6】
Figure 0003980499
【0036】
(式中、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0037】
本発明に従えば、感光層は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、特に高い電荷移動度を有する前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を含有するので、さらに高い光応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。また、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、合成が比較的容易で、かつ収率が高いので、安価に製造することが可能である。したがって、前述のように優れた特性を有する前記本発明の電子写真感光体を低い製造原価で製造することができる。
【0038】
また本発明は、前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、下記一般式(II)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂であることを特徴とする。
【0039】
【化7】
Figure 0003980499
【0040】
(式中、R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17およびR18は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいアルコキシ基を示す。R19およびR20は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。ただし、R19およびR20は、互いに異なる基であるか、または互いに結合して環構造を形成する。)
【0041】
本発明に従えば、前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、前記一般式(II)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂であり、主鎖に嵩高い置換基を有し、樹脂自身のパッキング密度が高いので、特に高い機械的強度を有する。したがって、耐久性に特に優れ、感光層表面における傷の発生が少なく、感光層の膜減り量の小さい電子写真感光体を得ることができる。
【0042】
また本発明は、前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、さらにシロキサン構造を有することを特徴とする。
【0043】
本発明に従えば、前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、さらにシロキサン構造を有するので、感光層の表面摩擦係数が低減され、滑り性が向上する。したがって、感光層表面に付着するトナーが剥離されやすくなるので、感光層表面に形成されるトナー画像を記録媒体に転写する際の転写効率や転写後の感光層表面のクリーニング性が改善され、良好な画像を得ることが可能となる。また、感光層表面に発生する傷の原因となる紙粉なども剥離されやすくなるので、感光層表面に傷が付くことが少ない。また、転写後に感光層表面に残留するトナーを除去する際にクリーニングブレードを摺動させても、感光層表面とクリーニングブレードとの物理的接触に伴う摩擦や振動は小さいので、鳴きと呼ばれる異音が発生しにくい。
【0044】
また本発明は、前記感光層は、さらにオキソチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする。
【0045】
本発明に従えば、感光層は、さらにオキソチタニウムフタロシアニンを含有する。オキソチタニウムフタロシアニンは、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質に効率よく注入する。また、前述のように、感光層には電荷輸送物質として前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物が含有されるので、光吸収によって電荷発生物質で発生する電荷は、電荷輸送物質に効率的に注入されて円滑に輸送される。したがって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物とオキソチタニウムフタロシアニンとを感光層に含有させることによって、高感度かつ高解像度の電子写真感光体を得ることができる。また、オキソチタニウムフタロシアニンは、赤外線レーザから照射されるレーザ光の波長域に最大吸収ピークを有するので、前記本発明の電子写真感光体を用いることによって、赤外線レーザを露光光源とするデジタルの画像形成装置において、高品質の画像を提供することができる。
【0046】
また本発明は、前記感光層は、少なくとも、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造から成り、
前記電荷輸送物質は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含み、
前記電荷発生層および前記電荷輸送層のうちの少なくとも前記電荷輸送層は、前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする。
【0047】
本発明に従えば、感光層は、少なくとも、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造から成る。このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、より高感度で、さらに繰返し使用時の安定性も増した耐久性の高い電子写真感光体を得ることができる。また、電荷発生層および電荷輸送層のうちの少なくとも電荷輸送層は、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含有するので、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。特に、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂の含有される電荷輸送層が感光層の表面層である場合、感光層表面における傷の発生を抑え、感光層の膜減り量を低減することができ、感光層の摩耗に起因する特性変化を小さくすることができる。
【0048】
また本発明は、前記感光層は、前記電荷発生層と、前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含むバインダ樹脂を含有する前記電荷輸送層とが、前記導電性基体から外方に向かってこの順序で積層されて成る積層構造を有し、
前記電荷輸送層において、前記電荷輸送物質(A)と前記バインダ樹脂(B)との比率A/Bは、重量比で10/12〜10/30であることを特徴とする。
【0049】
本発明に従えば、感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質および非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含むバインダ樹脂を含有する電荷輸送層とが、導電性基体から外方に向かってこの順序で積層されて成る積層構造を有し、電荷輸送層における電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率A/Bは、重量比で12分の10(10/12)〜30分の10(10/30)である。感光層の表面層である電荷輸送層に含有される電荷輸送物質は、前述のように前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物を含むので、前記比率A/Bを10/12〜10/30とし、従来公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率でバインダ樹脂を加えても、光応答性を維持することができる。すなわち、光応答性を低下させることなく、前述の非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含むバインダ樹脂を電荷輸送層に高濃度に含有させることができる。したがって、電荷輸送層の耐刷性を向上させ、感光層の摩耗に起因する特性変化を抑えることができるので、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。また、バインダ樹脂に含まれる非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、前述のように、溶剤がハロゲン系有機溶剤であるか、非ハロゲン系有機溶剤であるかに関わらず、溶剤に対して高い溶解性を示すので、このように高い比率でバインダ樹脂を加える場合であっても、塗布液はゲル化せず安定であり、長期に渡って効率良く電子写真感光体を生産することが可能である。
【0050】
また本発明は、前記本発明の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、
露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0051】
本発明に従えば、画像形成装置は、前記本発明の電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段とを備える。前記本発明の電子写真感光体は、前述のように、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有し、また耐久性に優れ、低温環境下または高速の電子写真プロセスで用いられた場合にもそれらの特性が低下しないので、各種の環境下で長期に渡って高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い画像形成装置を得ることができる。また、前記本発明の電子写真感光体は、光暴露によっても特性の低下することがないので、メンテナンス時などに電子写真感光体が光に曝されることに起因する画質の低下を防ぎ、画像形成装置の信頼性を向上させることができる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明するけれども、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
図1(a)は、本発明の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す斜視図である。図1(b)は、電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。電子写真感光体1(以下、単に「感光体」と略称することがある)は、導電性材料から成る円筒状の導電性基体11と、導電性基体11の外周面上に設けられる感光層14とを含んで構成される。感光層14は、光を吸収することによって電荷を発生させる電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷発生物質12で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有する電荷輸送物質13および電荷輸送物質13を結着させるバインダ樹脂17を含有する電荷輸送層16とが、導電性基体11の外周面上にこの順序で積層されて成る積層構造を有する。すなわち、電子写真感光体1は、積層型感光体である。
【0054】
電荷輸送層16は、バインダ樹脂17に電荷輸送物質13が結着されて成る。電荷輸送物質13には、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物が用いられる。
【0055】
【化8】
Figure 0003980499
【0056】
前記一般式(1)において、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。ArおよびArの具体例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチルおよびビフェニリルなどのアリール基、ならびにフリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリルおよびN−メチルインドリルなどの複素環基を挙げることができる。
【0057】
また前記一般式(1)において、Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Arの具体例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル、ピレニル、ビフェニリル、フェノキシフェニルおよびp−(フェニルチオ)フェニルなどのアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリルおよびN−エチルカルバゾリルなどの複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジルおよび1−ナフチルメチルなどのアラルキル基、ならびにイソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシルおよびシクロペンチルなどのアルキル基を挙げることができる。
【0058】
また前記一般式(1)において、ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArの具体例としては、水素原子以外では、フェニル、トリル、メトキシフェニル、ナフチル、ピレニル、ビフェニリル、フェノキシフェニル、p−(フェニルチオ)フェニルおよびp−スチリルフェニルなどのアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリルおよびN−エチルカルバゾリルなどの複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジルおよび1−ナフチルメチルなどのアラルキル基、ならびにメチル、エチル、トリフルオロメチル、フルオロメチル、イソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルおよび2−チエニルメチルなどのアルキル基を挙げることができる。
【0059】
ArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。ArとArとを結合する原子の具体例としては、酸素原子および硫黄原子などを挙げることができる。ArとArとを結合する原子団の具体例としては、アルキル基を有する窒素原子などの2価の原子団、ならびにメチレン、エチレンおよびメチルメチレンなどのアルキレン基、ビニレンおよびプロペニレンなどの不飽和アルキレン基、オキシメチレン(化学式:−O−CH−)などのヘテロ原子を含むアルキレン基、チオビニレン(化学式:−S−CH=CH−)などのヘテロ原子を含む不飽和アルキレン基などの2価基などを挙げることができる。
【0060】
また前記一般式(1)において、aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。aの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチル、フルオロメチルおよび1−メトキシエチルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどのアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジイソプロピルアミノなどのジアルキルアミノ基、フェニル、トリル、メトキシフェニルおよびナフチルなどのアリール基、ならびにフッ素原子および塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
【0061】
また前記一般式(1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Rの具体例としては、水素原子以外では、フッ素原子および塩素原子などのハロゲン原子、ならびにメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびトリフルオロメチルなどのアルキル基を挙げることができる。
【0062】
また前記一般式(1)において、R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。R,RおよびRの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチルおよび2−チエニルメチルなどのアルキル基、フェニル、トリル、メトキシフェニルおよびナフチルなどのアリール基、フリル、チエニルおよびチアゾリルなどの複素環基、ならびにベンジルおよびp−メトキシベンジルなどのアラルキル基を挙げることができる。
【0063】
また前記一般式(1)において、nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。
【0064】
ただし、前記一般式(1)において、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。
【0065】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、高い電荷移動度を有するので、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質13として感光層14に含有させることによって、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有するとともに、耐久性に優れる電子写真感光体を得ることができる。また感光層14にポリシランを含有させることなく、高い電荷輸送能力を実現することができるので、光暴露によって特性の低下することのない信頼性の高い電子写真感光体を得ることができる。
【0066】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、好ましい化合物としては、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物を挙げることができる。
【0067】
【化9】
Figure 0003980499
【0068】
前記一般式(2)において、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。b,cおよびdの具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、トリフルオロメチル、フルオロメチルおよび1−メトキシエチルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどのアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジイソプロピルアミノなどのジアルキルアミノ基、フェニル、トリル、メトキシフェニルおよびナフチルなどのアリール基、ならびにフッ素原子および塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
【0069】
また前記一般式(2)において、Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。
【0070】
前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、特に高い電荷移動度を有するので、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質13に用いることによって、さらに高い光応答性を示す電子写真感光体を得ることができる。また、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、合成が比較的容易で、かつ収率が高いので、安価に製造することが可能である。したがって、前述のように優れた特性を有する電子写真感光体を低い製造原価で製造することができる。
【0071】
また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、特性、原価および生産性などの観点から特に優れた化合物としては、ArおよびArがフェニル基であり、Arがフェニル基、トリル基、p−メトキシフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基またはチエニル基であり、ArおよびArのうちの少なくともいずれか一方がフェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基、チエニル基またはチアゾリル基であり、R,R,RおよびRが共に水素原子であり、nが1であるものを挙げることができる。
【0072】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の具体例としては、たとえば以下の表1〜表32に示す基を有する例示化合物を挙げることができるけれども、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、これに限定されるものではない。なお、表1〜表32に示す各基は、前記一般式(1)の各基に対応する。たとえば、表1に示す例示化合物No.1は、下記構造式(1−1)で示されるエナミン化合物である。
【0073】
【化10】
Figure 0003980499
【0074】
ただし、ArおよびArが、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成するものについては、Arの欄からArの欄に渡って、ArおよびArが結合する炭素−炭素二重結合と、その炭素−炭素二重結合の炭素原子と共にArおよびArが形成する環構造とを合わせて示す。
【0075】
【表1】
Figure 0003980499
【0076】
【表2】
Figure 0003980499
【0077】
【表3】
Figure 0003980499
【0078】
【表4】
Figure 0003980499
【0079】
【表5】
Figure 0003980499
【0080】
【表6】
Figure 0003980499
【0081】
【表7】
Figure 0003980499
【0082】
【表8】
Figure 0003980499
【0083】
【表9】
Figure 0003980499
【0084】
【表10】
Figure 0003980499
【0085】
【表11】
Figure 0003980499
【0086】
【表12】
Figure 0003980499
【0087】
【表13】
Figure 0003980499
【0088】
【表14】
Figure 0003980499
【0089】
【表15】
Figure 0003980499
【0090】
【表16】
Figure 0003980499
【0091】
【表17】
Figure 0003980499
【0092】
【表18】
Figure 0003980499
【0093】
【表19】
Figure 0003980499
【0094】
【表20】
Figure 0003980499
【0095】
【表21】
Figure 0003980499
【0096】
【表22】
Figure 0003980499
【0097】
【表23】
Figure 0003980499
【0098】
【表24】
Figure 0003980499
【0099】
【表25】
Figure 0003980499
【0100】
【表26】
Figure 0003980499
【0101】
【表27】
Figure 0003980499
【0102】
【表28】
Figure 0003980499
【0103】
【表29】
Figure 0003980499
【0104】
【表30】
Figure 0003980499
【0105】
【表31】
Figure 0003980499
【0106】
【表32】
Figure 0003980499
【0107】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、たとえば前述の表1〜表32に示す例示化合物からなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。
【0108】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0109】
まず、下記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、下記一般式(4)で示される2級アミン化合物との脱水縮合反応を行うことによって、下記一般式(5)で示されるエナミン中間体を製造する。
【0110】
【化11】
Figure 0003980499
【0111】
(式中、Ar,ArおよびRは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0112】
【化12】
Figure 0003980499
【0113】
(式中、Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0114】
【化13】
Figure 0003980499
【0115】
(式中、Ar,Ar,Ar,R,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0116】
この脱水縮合反応は、たとえば以下のように行う。前記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、これと略等モル量の前記一般式(4)で示される2級アミン化合物とを、芳香族系溶剤、アルコール類またはエーテル類などの溶剤に溶解させ、溶液を調製する。用いる溶剤の具体例としては、たとえばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ブタノールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができる。調製した溶液中に、触媒、たとえばp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸またはピリジニュウム−p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を加え、加熱下で反応させる。触媒の添加量は、前記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物に対して、10分の1(1/10)〜1000分の1(1/1000)モル当量であることが好ましく、より好ましくは25分の1(1/25)〜500分の1(1/500)モル当量であり、50分の1(1/50)〜200分の1(1/200)モル当量が最適である。反応中、水が副成し反応を妨げるので、生成した水を溶剤と共沸させ系外に取除く。これによって、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体を高収率で製造することができる。
【0117】
次に、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化またはフリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うことによって、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体を製造する。このとき、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うと、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を製造することができ、フリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うと、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を製造することができる。
【0118】
【化14】
Figure 0003980499
【0119】
(式中、Rは、前記一般式(1)において、nが0のときRを示し、nが1,2または3のときRを示す。Ar,Ar,Ar,R,R,R,a,mおよびnは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0120】
ビルスマイヤー反応は、たとえば以下のように行う。N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−Dimethylformamide;略称:DMF)または1,2−ジクロロエタンなどの溶剤中に、オキシ塩化リンとN,N−ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンとN−メチル−N−フェニルホルムアミド、またはオキシ塩化リンとN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、ビルスマイヤー試薬を調製する。調製したビルスマイヤー試薬1.0当量〜1.3当量に、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量を加え、60〜110℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を高収率で製造することができる。
【0121】
また、フリーデル−クラフト反応は、たとえば以下のように行う。1,2−ジクロロエタンなどの溶剤中に、塩化アルミニウムと酸塩化物とによって調製した試薬1.0当量〜1.3当量と、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量とを加え、−40〜80℃で、2〜8時間撹拌する。このとき、場合によっては加熱する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、Rが水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を高収率で製造することができる。
【0122】
最後に、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体と下記一般式(7−1)または(7−2)で示されるWittig試薬とを塩基性条件下で反応させるWittig−Horner反応を行うことによって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を製造することができる。このとき、下記一般式(7−1)で示されるWittig試薬を用いると、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、nが0であるものを得ることができ、下記一般式(7−2)で示されるWittig試薬を用いると、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、nが1,2または3であるものを得ることができる。
【0123】
【化15】
Figure 0003980499
【0124】
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。ArおよびArは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0125】
【化16】
Figure 0003980499
【0126】
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。nは1〜3の整数を示す。Ar,Ar,R,RおよびRは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
【0127】
このWittig−Horner反応は、たとえば以下のように行う。トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;略称:THF)、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの溶剤中に、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体1.0当量と、前記一般式(7−1)または(7−2)で示されるWittig試薬1.0〜1.20当量と、カリウムt−ブトキサイド、ナトリウムエトキサイドまたはナトリウムメトキサイドなどの金属アルコキシド塩基1.0〜1.5当量とを加え、室温または30〜60℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。これによって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を高収率で製造することができる。
【0128】
前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、他の電荷輸送物質と混合されて使用されてもよい。前記一般式(1)で示されるエナミン化合物に混合されて使用される他の電荷輸送物質としては、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体およびベンジジン誘導体などを挙げることができる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、たとえばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレンおよびポリ−9−ビニルアントラセンなども挙げられる。
【0129】
しかしながら、特に高い電荷輸送能力を実現するためには、電荷輸送物質13の全量が、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物であることが好ましい。
【0130】
電荷輸送層16に含有されるバインダ樹脂17には、特定のジオール成分を有するポリカーボネート樹脂が用いられる。
【0131】
ポリカーボネート樹脂は、下記一般式(8)で示される構造単位を有する重合体であり、下記一般式(9)で示されるジオール化合物から合成される。ここで、ジオール化合物とは、下記一般式(9)で示されるように、1分子中に2つのヒドロキシル基(化学式:−OH)を有する化合物のことである。
【0132】
【化17】
Figure 0003980499
HO−R10−OH (9)
前記一般式(8)および(9)において、R10は有機基を示す。
【0133】
前記一般式(8)で示される構造単位において、−O−R10−O−の部分は前記一般式(9)で示されるジオール化合物に由来するので、本明細書ではこの部分をジオール成分と呼ぶ。
【0134】
本実施形態で用いられるポリカーボネート樹脂は、前述のように特定のジオール成分を有し、特定のジオール成分とは、非対称ジオール化合物に由来する非対称ジオール成分のことである。
【0135】
ここで、非対称ジオール化合物とは、前記一般式(9)のように、2つのヒドロキシル基(−OH)の結合する有機基(−R10−)を主鎖として、主鎖が紙面に向かって左右に延びる水平線方向に直線的に配置され、かつ2つのヒドロキシル基が主鎖の両端に配置されるように平面構造式で表されるとき、紙面上において、主鎖を含む直線に関して対称でないジオール化合物のことである。
【0136】
非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、溶剤がハロゲン系有機溶剤であるか、非ハロゲン系有機溶剤であるかに関わらず、溶剤に対して高い溶解性を示すので、後述するように塗布によって電荷輸送層16を形成する際に、非ハロゲン系有機溶剤を用いて塗布液を調製しても、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含む塗布液は、ゲル化することがなく、成膜性が良好で、また安定性に優れ、調製から数日経過してもゲル化することはない。このような塗布液を用いることによって、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。また非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、機械的強度に優れるので、感光層表面における傷の発生を抑え、感光層14の膜減り量を低減することができ、感光層14の摩耗に起因する特性変化を小さくすることができる。また非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって絶縁性に優れ、かつ耐電圧が高いので、良好な電気特性を得ることができる。
【0137】
一方、このようにバインダ樹脂17に非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂が用いられる場合、光応答性などの特性の低下することがある。しかしながら、本実施形態では、電荷輸送物質13に、前述のように前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物が用いられるので、低温環境下または高速の電子写真プロセスで用いられた場合にも前述の特性は低下しない。
【0138】
したがって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物と非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂とを組合せて感光層14に含有させることによって、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有し、また耐久性に優れ、低温環境下もしくは高速の電子写真プロセスで用いられた場合または光に曝された場合であってもそれらの特性が低下せず、高い信頼性を有するとともに、生産性が良好な電子写真感光体を得ることができる。
【0139】
非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂のうち、好ましいものとしては、下記一般式(10)で示される非対称ジオール化合物に由来する非対称ジオール成分を有するもの、すなわち下記一般式(I)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するものを挙げることができる。
【0140】
【化18】
Figure 0003980499
【0141】
【化19】
Figure 0003980499
【0142】
前記一般式(10)および(I)において、Xは、単結合、−CR1920−、置換基を有してもよいアルキレン基、−S−、−O−、−SO−、−SO−または−CO−を示す。
【0143】
ここで、単結合とは、Xの両側のベンゼン環が直接結合していることを意味する。前記一般式(I)において、Xが単結合であるものの具体例としては、たとえば後述する表36に示す構造式(12−17)で示される構造単位などを挙げることができる。
【0144】
また−CR1920−において、R19およびR20は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。R19およびR20の具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、シクロヘキシルおよびシクロへプチルなどのアルキル基、フェニルおよびナフチルなどのアリール基、ならびにフッ素原子、塩素原子および臭素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。アルキル基は、炭素数が1〜7であることが好ましい。アルキル基およびアリール基が有してもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどの炭素数1〜7のアルキル基、フェニルおよびナフチルなどのアリール基、ベンジルおよびフェネチルなどのアラルキル基、メトキシ、エトキシおよびプロポキシなどの炭素数1〜7のアルコキシ基、ならびにフッ素原子、塩素原子および臭素原子などのハロゲン原子などを挙げることができる。これらの置換基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0145】
19およびR20は、互いに結合して環構造を形成してもよい。R19およびR20が互いに結合し、R19およびR20の結合する炭素原子(C)と共に環構造を形成する場合の−CR1920−の具体例としては、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、フルオレニリデンおよびインダニリデンなどの単環式または多環式炭化水素の環炭素原子に結合する2個の水素原子を除いてできる2価基などを挙げることができる。
【0146】
またXとなるアルキレン基の具体例としては、1,2−エチレン基および1,3−プロピレン基などの鎖状アルキレン基、ならびに1,6−シクロへキシレン基などの環状アルキレン基などを挙げることができる。
【0147】
また、前記一般式(10)および(I)において、R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17およびR18は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいアルコキシ基を示す。R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17およびR18の具体例としては、水素原子以外では、メチル、エチルおよびシクロヘキシルなどのアルキル基、フェニルおよびナフチルなどのアリール基、メトキシ、エトキシおよびプロポキシなどのアルコキシ基、ならびにフッ素原子、塩素原子および臭素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。アルキル基は、炭素数が1〜7であることが好ましい。アルコキシ基は、炭素数が1〜7であることが好ましい。アルキル基、アリール基およびアルコキシ基が有してもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどの炭素数1〜7のアルキル基、フェニルおよびナフチルなどのアリール基、ベンジルおよびフェネチルなどのアラルキル基、メトキシ、エトキシおよびプロポキシなどの炭素数1〜7のアルコキシ基、ならびにフッ素原子、塩素原子および臭素原子などのハロゲン原子などを挙げることができる。これらの置換基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0148】
ただし、前記一般式(10)および(I)において、R11とR13、R12とR14、R15とR17、R16とR18とがそれぞれ同一の基であるとき、Xは−CR1920−であって、R19およびR20は互いに異なる基であるか、もしくはR19およびR20は互いに結合して環構造を形成するか、またはXはアルキレン基であって、互いに異なる2つ以上の置換基を有するか、もしくは異なる置換位置に2つ以上の置換基を有する。
【0149】
また前記一般式(10)および(I)において、Xが−CR1920−であって、R19およびR20が同一の基であり、かつそれらが互いに結合していないとき、またはXがアルキレン基であって、アルキレン基の有する置換基がすべて同一の基であり、かつそれらが同一の置換位置に存在するとき、R11とR13とは互いに異なる基であるか、R12とR14とは互いに異なる基であるか、R15とR17とは互いに異なる基であるか、またはR16とR18とは互いに異なる基である。
【0150】
前記一般式(I)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂の中でも、下記一般式(11)で示される非対称ジオール化合物に由来する非対称ジオール成分を有するもの、すなわち下記一般式(II)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するものを用いることが特に好ましい。
【0151】
【化20】
Figure 0003980499
【0152】
【化21】
Figure 0003980499
【0153】
前記一般式(11)および(II)において、R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17、R18、R19およびR20は、前記一般式(10)および(I)において定義したものと同義である。
【0154】
ただし、前記一般式(11)および(II)において、R19およびR20は、互いに異なる基であるか、または互いに結合して環構造を形成する。
【0155】
前記一般式(II)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂は、主鎖に嵩高い置換基を有し、樹脂自身のパッキング密度が高いので、特に高い機械的強度を有する。したがって、前記一般式(II)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂をバインダ樹脂17に用いることによって、耐久性に特に優れ、感光層表面における傷の発生が少なく、感光層14の膜減り量の小さい電子写真感光体を得ることができる。
【0156】
非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂の具体例としては、たとえば以下の表33〜表36に示す構造式(12−1)〜(12−18)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するものを挙げることができるけれども、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、これに限定されるものではない。
【0157】
【表33】
Figure 0003980499
【0158】
【表34】
Figure 0003980499
【0159】
【表35】
Figure 0003980499
【0160】
【表36】
Figure 0003980499
【0161】
非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、たとえば前述の表33〜表36に示す構造式(12−1)〜(12−18)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位からなる群から選ばれる構造単位を1種のみ有しても、2種以上有してもよい。
【0162】
また、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、非対称ジオール成分に加えて、さらにシロキサン構造を有することが好ましい。ここで、シロキサン構造とは、シロキサン結合(Si−O)を含む構造のことである。
【0163】
非対称ジオール成分とシロキサン構造とを有するポリカーボネート樹脂をバインダ樹脂17に用いることによって、感光層14の表面摩擦係数が低減され、滑り性が向上する。したがって、感光層表面に付着するトナーが剥離されやすくなるので、感光層表面に形成されるトナー画像を記録媒体に転写する際の転写効率や転写後の感光層表面のクリーニング性が改善され、良好な画像を得ることが可能となる。また、感光層表面に発生する傷の原因となる紙粉なども剥離されやすくなるので、感光層表面に傷が付くことが少ない。また、転写後に感光層表面に残留するトナーを除去する際にクリーニングブレードを摺動させても、感光層表面とクリーニングブレードとの物理的接触に伴う摩擦や振動は小さいので、鳴きと呼ばれる異音が発生しにくい。
【0164】
非対称ジオール成分とシロキサン構造とを有するポリカーボネート樹脂としては、たとえば、前述の非対称ジオール成分を含む構造単位と、下記一般式(13)で示されるシロキサン構造を含む構造単位とを有する共重合ポリカーボネート樹脂を挙げることができる。
【0165】
【化22】
Figure 0003980499
【0166】
前記一般式(13)において、複数のR21は、それぞれ脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基を示す。R21となる一価炭化水素基としては、置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアリール基などを挙げることができる。R21となるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基などを挙げることができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基およびt−ブチル基が好ましい。R21となるアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基およびビフェニリル基などの炭素数6〜12のアリール基などを挙げることができる。これらの中でもフェニル基が好ましい。
【0167】
また前記一般式(13)において、複数のR22は、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、複数のuは、それぞれ1〜4の整数を示す。R22となるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基などを挙げることができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基およびt−ブチル基が好ましい。R22となるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基およびヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基などを挙げることができる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびイソプロポキシ基が好ましい。R22となるアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基およびビフェニリル基などの炭素数6〜12のアリール基などを挙げることができる。これらの中でもフェニル基が好ましい。R22となるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などを挙げることができる。これらの中でも、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が好ましい。
【0168】
また前記一般式(13)において、複数のYは、それぞれ置換基を有してもよいアルキレン基または置換基を有してもよいアルキレンオキシアルキレン基を示す。
【0169】
また前記一般式(13)において、Yは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルキレンオキシアルキレン基または酸素原子を示す。
【0170】
およびYとなるアルキレン基の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基およびヘキサメチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基などを挙げることができる。これらの中でも、エチレン基、トリメチレン基およびテトラメチレン基が好ましい。YおよびYとなるアルキレンオキシアルキレン基としては、メチレンオキシプロピレン基、メチレンオキシブチレン基、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基、エチレンオキシブチレン基、プロピレンオキシへキシレン基およびブチレンオキシへキシレン基などの炭素数4〜10のアルキレンオキシアルキレン基などを挙げることができる。これらの中でも、エチレンオキシプロピレン基およびエチレンオキシブチレン基が好ましい。
【0171】
また前記一般式(13)において、pは0または1を示し、pは1または2を示し、pは1または2を示す。ただし、p、pおよびpの和(p+p+p)は3である。なお、pが2であるとき、複数のYは、同一でも異なってもよい。
【0172】
また前記一般式(13)において、t、t、tおよびtは、それぞれ0以上の整数を示す。ただし、t、t、tおよびtの和(t+t+t+t)は0〜450の整数である。tおよびtは、それぞれ1〜20の整数であることが好ましい。tとtとの和(t+t)は、0〜100の整数であることが好ましい。t、t、tおよびtの和(t+t+t+t)は、2〜100の整数であることが好ましい。
【0173】
また、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、非対称ジオール成分およびシロキサン構造以外の他の構造を有してもよい。
【0174】
非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が、10,000以上70,000以下であることが好ましく、より好ましくは30,000以上60,000以下である。非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000未満であると、機械的強度が著しく弱くなり、感光層14の膜減り量が大きくキズに弱い感光体となってしまう。非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が70,000を超えると、塗布液を調製した際、粘度が大きすぎて塗布ムラが発生しやすい。したがって、10,000以上70,000以下とした。
【0175】
非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、ジオール化合物からポリカーボネート樹脂を製造する際に一般的に用いられている方法、たとえばホスゲン法またはエステル交換法などの方法で製造することができる。
【0176】
バインダ樹脂17には、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を1種単独で用いてもよく、異なる非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を2種以上混合して用いてもよい。
【0177】
また、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、他の樹脂と混合されてバインダ樹脂17に使用されてもよい。非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂に混合されて使用される他の樹脂には、電荷輸送物質13との相溶性に優れるものが用いられる。たとえば、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリケトン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂およびポリスルホン樹脂、ならびにこれらの共重合樹脂などからなる群から選ばれる1種または2種以上の樹脂を、前述の非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂に混合して用いることができる。前述の樹脂の中でも、ポリスチレン、ポリアリレートまたはポリエステルなどの樹脂は、前述の非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂と同様に体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって絶縁性に優れており、また成膜性および電位特性などにも優れているので、これらの樹脂を用いることが好ましい。
【0178】
他の樹脂と混合されて使用される場合、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、バインダ樹脂17の全量の5重量%以上95重量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは10重量%以上90重量%以下である。
【0179】
電荷輸送層16において、電荷輸送物質13(A)とバインダ樹脂17(B)との比率A/Bは、重量比で12分の10(10/12)〜30分の10(10/30)であることが好ましい。従来公知の電荷輸送物質を用いる場合、前記比率A/Bを10/12以下としバインダ樹脂17の比率を高くすると光応答性の低下することがあるので、前記比率A/Bは10/12程度である。しかしながら、本実施形態の電子写真感光体1では、前述のように電荷輸送物質13は前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物を含むので、前記比率A/Bを10/12〜10/30とし、従来公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率でバインダ樹脂を加えても、光応答性を維持することができる。すなわち、光応答性を低下させることなく、前述の非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含むバインダ樹脂17を電荷輸送層16に高濃度に含有させることができる。したがって、電荷輸送層16の耐刷性を向上させ、感光層14の摩耗に起因する特性変化を抑えることができるので、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。また、バインダ樹脂17に含まれる非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、前述のように、溶剤がハロゲン系有機溶剤であるか、非ハロゲン系有機溶剤であるかに関わらず、溶剤に対して高い溶解性を示すので、このように高い比率でバインダ樹脂17を加える場合であっても、塗布液はゲル化せず安定であり、長期に渡って効率良く電子写真感光体を生産することが可能である。
【0180】
なお、前記比率A/Bが10/12を超えバインダ樹脂17の比率が低くなりすぎると、前述のように機械的強度に優れる非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を用いる場合であっても、バインダ樹脂17の比率が高いときに比べ、電荷輸送層16の耐刷性が低くなり、感光層14の膜減り量が増加する。また前記比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂17の比率が高くなりすぎると、後述する浸漬塗布法によって電荷輸送層16を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度が低下し、生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層16に白濁が発生する。したがって、10/12〜10/30とした。
【0181】
電荷輸送層16には、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤またはレベリング剤などの添加剤を添加してもよい。可塑剤としては、たとえばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
【0182】
また電荷輸送層16には、機械的強度の増強や電気的特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物の微粒子を添加してもよい。
【0183】
さらに電荷輸送層16には、必要に応じて酸化防止剤および増感剤などの各種添加剤を添加してもよい。これによって、電位特性を向上させることができる。また後述するように塗布によって電荷輸送層16を形成する際の塗布液の安定性が高まる。また感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
【0184】
酸化防止剤には、ヒンダードフェノール誘導体またはヒンダードアミン誘導体が好適に用いられる。ヒンダードフェノール誘導体は、電荷輸送物質13に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲で使用されることが好ましい。ヒンダードアミン誘導体は、電荷輸送物質13に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲で使用されることが好ましい。ヒンダードフェノール誘導体とヒンダードアミン誘導体とは、混合されて使用されてもよい。この場合、ヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の合計使用量は、電荷輸送物質13に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲にあることが好ましい。ヒンダードフェノール誘導体の使用量、ヒンダードアミン誘導体の使用量、またはヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の合計使用量が0.1重量%未満であると、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができない。また50重量%を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼす。したがって、0.1重量%以上50重量%以下とした。
【0185】
電荷輸送層16は、たとえば適当な溶剤中に、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質13および非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含むバインダ樹脂17、ならびに必要な場合には前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、得られた塗布液を電荷発生層15の外周面上に塗布することによって形成される。
【0186】
電荷輸送層用塗布液の溶剤には、たとえばベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。また前述の溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。しかしながら、これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤を用いることが好ましい。前述のように、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、溶剤がハロゲン系有機溶剤であるか、非ハロゲン系有機溶剤であるかに関わらず、溶剤に対して高い溶解性を示すので、非ハロゲン系有機溶剤を用いて塗布液を調製しても、塗布液は、ゲル化することがなく、成膜性が良好で、また安定性に優れ、調製から数日経過してもゲル化することはない。
【0187】
電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法のうちから、塗布の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を選択することができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗布槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、電子写真感光体を製造する場合に多く利用されており、電荷輸送層16を形成する場合にも多く利用されている。
【0188】
電荷輸送層16の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層16の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。電荷輸送層16の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下する。したがって、5μm以上50μm以下とした。
【0189】
感光層14は、前述のように、電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13を含有する電荷輸送層16との積層構造から成る。このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、より高感度で、さらに繰返し使用時の安定性も増した耐久性の高い電子写真感光体を得ることができる。
【0190】
電荷発生層15は、電荷発生物質12を主成分として含有する。電荷発生物質12として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料、金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素、ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機材料などを挙げることができる。これらの電荷発生物質は、1種が単独でまたは2種以上が組合わされて使用される。
【0191】
これらの電荷発生物質の中でも、オキソチタニウムフタロシアニンを用いることが好ましい。オキソチタニウムフタロシアニンは、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質13に効率よく注入する。また、前述のように、電荷輸送物質13には、前記一般式(1)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物が使用されるので、光吸収によって電荷発生物質12で発生する電荷は、電荷輸送物質13に効率的に注入されて円滑に輸送される。したがって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物とオキソチタニウムフタロシアニンとを感光層14に含有させることによって、高感度かつ高解像度の電子写真感光体を得ることができる。また、近年の画像形成装置のデジタル化に伴い、露光光源には赤外線レーザが用いられるようになっているけれども、オキソチタニウムフタロシアニンは、赤外線レーザから照射されるレーザ光の波長域に最大吸収ピークを有するので、このような電子写真感光体を用いることによって、赤外線レーザを露光光源とするデジタルの画像形成装置において、高品質の画像を提供することができる。
【0192】
電荷発生物質12は、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料と組合わされて使用されてもよい。
【0193】
電荷発生層15の形成方法としては、電荷発生物質12を導電性基体11の外周面上に真空蒸着する方法、または適当な溶剤中に電荷発生物質12を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性基体11の外周面上に塗布する方法などがある。これらの中でも、適当な溶剤中に結着剤であるバインダ樹脂を混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質12を従来公知の方法によって分散して電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を導電性基体11の外周面上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
【0194】
電荷発生層15のバインダ樹脂には、たとえばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合樹脂などからなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。共重合樹脂の具体例としては、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。バインダ樹脂はこれらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。しかしながら、これらの樹脂の中でも、電荷輸送層16のバインダ樹脂17に使用される前述の非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、前述のように、溶剤がハロゲン系有機溶剤であるか、非ハロゲン系有機溶剤であるかに関わらず、溶剤に対して高い溶解性を示すので、これを用いることによって、ゲル化することがなく、成膜性が良好で、また安定性に優れ、調製から数日経過してもゲル化することのない電荷発生層用塗布液を得ることができ、感光体の生産性を向上させることができる。
【0195】
電荷発生層用塗布液の溶剤には、たとえばジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、またはN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが用いられる。また、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤を用いることもできる。しかしながら、これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤を用いることが好ましい。この場合、電荷発生層15のバインダ樹脂には、前述の非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。
【0196】
電荷発生物質12とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質12の割合が10重量%〜99重量%の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質12の割合が10重量%未満であると、感度が低下する。電荷発生物質12の割合が99重量%を越えると、電荷発生層15の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質12の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の部分の表面電荷が減少することがあるので、画像欠陥、特に白地にトナーが付着して微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。したがって、10重量%〜99重量%とした。
【0197】
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質12を分散させる前に、予め電荷発生物質12を粉砕機によって粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。
【0198】
電荷発生物質12をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器や分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
【0199】
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述のように種々の点で優れているので、電荷発生層15を形成する場合にも多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。
【0200】
電荷発生層15の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層15の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収効率が低下し、感度が低下する。電荷発生層15の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下する。したがって、0.05μm以上5μm以下とした。
【0201】
導電性基体11を構成する導電性材料としては、たとえばアルミニウム、銅、亜鉛およびチタンなどの金属単体、ならびにアルミニウム合金およびステンレス鋼などの合金などの金属材料を用いることができる。またこれらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンもしくはポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙またはガラスなどの表面に、金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。導電性基体11の形状は、本実施形態では円筒状であるけれども、これに限定されることなく、円柱状、シート状または無端ベルト状などであってもよい。
【0202】
導電性基体11の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理などを施してもよい。レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、入射するレーザ光と感光体内で反射された光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥の発生することがある。導電性基体11の表面に前述のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
【0203】
感光層14には、感度の向上を図り、繰返し使用した場合の残留電位の上昇および疲労などを抑えるために、さらに1種以上の電子受容物質や色素を添加してもよい。
【0204】
電子受容物質としては、たとえば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸および4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレンおよびテレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノンおよび1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノンおよび2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物、またはジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料などを用いることができる。またこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることもできる。
【0205】
色素としては、たとえばキサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料または銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
【0206】
感光層14の表面には、保護層を設けてもよい。保護層を設けることによって、感光層14の耐刷性を向上させることができるとともに、感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾンや窒素酸化物などによる感光層14への化学的悪影響を防止することができる。保護層には、たとえば樹脂、無機フィラー含有樹脂または無機酸化物などから成る層が用いられる。
【0207】
図2は、本発明の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す概略断面図である。本実施形態の電子写真感光体2は、実施の第1形態の電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0208】
電子写真感光体2において注目すべきは、導電性基体11と感光層14との間に中間層18が設けられていることである。
【0209】
導電性基体11と感光層14との間に中間層18がない場合、導電性基体11から感光層14に電荷が注入され、感光層14の帯電性が低下し、露光によって消去されるべき部分以外の部分の表面電荷が減少し、画像にかぶりなどの欠陥の発生することがある。特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合には、露光によって表面電荷が減少した部分にトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが発生し、画質の著しい劣化が生じる。すなわち、導電性基体11と感光層14との間に中間層18がない場合、導電性基体11または感光層14の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ポチなどの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥となる。
【0210】
しかしながら、本実施形態の電子写真感光体2では、前述のように導電性基体11と感光層14との間に中間層18が設けられるので、導電性基体11から感光層14への電荷の注入を防止することができる。したがって、感光層14の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の部分の表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥の発生することを防止することができる。
【0211】
また中間層18を設けることによって、導電性基体11表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、感光層14の成膜性を高めることができる。また感光層14の導電性基体11からの剥離を抑え、導電性基体11と感光層14との接着性を向上させることができる。
【0212】
中間層18には、各種樹脂材料から成る樹脂層またはアルマイト層などが用いられる。
【0213】
樹脂層を形成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリアミド樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合樹脂などを挙げることができる。また、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコールまたはエチルセルロースなどを用いることもできる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、たとえば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロンおよび2−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などを挙げることができる。
【0214】
中間層18は、金属酸化物などの粒子を含有してもよい。これらの粒子を含有させることによって、中間層18の体積抵抗値を調節し、導電性基体11から感光層14への電荷の注入を防止する効果を高めることができるとともに、各種環境下において感光体の電気特性を維持することができる。
【0215】
金属酸化物粒子としては、たとえば酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどの粒子を挙げることができる。
【0216】
中間層18に金属酸化物などの粒子を含有させる場合、樹脂と金属酸化物との比率(樹脂/金属酸化物)は、重量比で90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。
【0217】
またこの場合、中間層18は、たとえば適当な溶剤中に前述の樹脂を溶解させて得られる樹脂溶液中に、これらの粒子を分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体11の外周面上に塗布することによって形成することができる。
【0218】
樹脂溶液の溶剤には、水、各種有機溶剤、またはこれらの混合溶剤が用いられる。特に、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶剤、または水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤とアルコール類などの混合溶剤が好適に用いられる。
【0219】
前述の粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルまたは超音波分散機などを用いる一般的な方法を使用することができる。
【0220】
中間層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。特に浸漬塗布法は、前述のように、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、中間層18を形成する場合にも多く利用されている。
【0221】
中間層18の膜厚は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上10μm以下である。中間層18の膜厚が0.01μmより薄いと、実質的に中間層18として機能しなくなり、導電性基体11の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性基体11から感光層14への電荷の注入を防止することができなくなり、感光層14の帯電性の低下が生じる。中間層18の膜厚を20μmよりも厚くすることは、中間層18を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層18の形成が困難になるとともに、中間層18の外周面上に感光層14を均一に形成することができず、感光体の感度が低下するので好ましくない。
【0222】
以上に述べた実施の第1形態および第2形態の電子写真感光体の各層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤および紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加してもよい。これによって、電位特性を向上させることができる。また塗布によって層を形成する際の塗布液の安定性が高まる。また感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
【0223】
酸化防止剤として特に好ましいものとしては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物およびアミン系化合物などを挙げることができる。これらの酸化防止剤は、電荷輸送物質13に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲で使用されることが好ましい。酸化防止剤の使用量が0.1重量%未満であると、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができない。酸化防止剤の使用量が50重量%を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼす。したがって、0.1重量%以上50重量%以下とした。
【0224】
また、以上に述べた実施の第1形態および第2形態の電子写真感光体に設けられる感光層14は、電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13およびバインダ樹脂17を含有する電荷輸送層16との積層構造から成る積層型の感光層であるけれども、これに限定されることなく、電荷発生物質12、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質13および非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含むバインダ樹脂17を含有する単一の層からなる単層型の感光層であってもよい。
【0225】
本発明の実施の第3の形態である画像形成装置として、以下では前述の実施の第1形態の電子写真感光体1(感光体1)を備える画像形成装置100を例示する。なお、本発明による画像形成装置は、以下の記載内容に限定されるものではない。
【0226】
図3は、画像形成装置100の構成を簡略化して示す側面配置図である。
画像形成装置100は、図示しない画像形成装置本体に回転自在に支持される感光体1と、感光体1を回転軸線44まわりに矢符41方向に回転駆動させる図示しない駆動手段とを備える。図示しない駆動手段は、たとえば動力源としてモータを備え、モータからの動力を図示しない歯車を介して感光体1の芯体を構成する基体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。
【0227】
感光体1の周囲には、帯電器32と、図示しない露光手段と、現像器33と、転写帯電器34と、クリーナ36とが、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向かってこの順序で設けられる。クリーナ36は、図示しない除電器と共に設けられる。
【0228】
帯電器32は、感光体1の外周面43を所定の電位に帯電させる帯電手段である。帯電器32は、たとえばローラ帯電方式などの接触式の帯電手段である。
【0229】
露光手段は、たとえば半導体レーザなどを光源として備え、光源から出力されるレーザビームなどの光31を帯電器32と現像器33との間に位置する感光体1の外周面43に照射することによって、帯電された感光体1の外周面43に対して画像情報に応じた露光を施す。
【0230】
現像器33は、露光によって感光体1の外周面43に形成される静電潜像を、現像剤によって現像する現像手段であり、感光体1に対向して設けられ感光体1の外周面43にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持するとともにその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0231】
転写帯電器34は、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによって、感光体1の外周面43上に形成されるトナー画像を転写紙51上に転写させる転写手段である。
【0232】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面43に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面43に残留するトナーを前記外周面43から剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。
【0233】
また、感光体1と転写帯電器34との間を通過した後の転写紙51が搬送される方向には、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
【0234】
画像形成装置100による画像形成動作について説明する。まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の外周面43が正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、露光手段から感光体1の外周面43に対して光31が照射される。光源からの光31は、主走査方向である感光体1の長手方向に繰返し走査される。感光体1を回転させ、光源からの光31を繰返し走査することによって、感光体1の外周面43に対して画像情報に応じた露光が施される。この露光によって、光31が照射された部分の表面電荷が除去され、光31が照射された部分の表面電位と光31が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、感光体1の外周面43に静電潜像が形成される。次いで、光源からの光31の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33の現像ローラ33aから、静電潜像の形成された感光体1の外周面43にトナーが供給されることによって、静電潜像が現像され、感光体1の外周面43にトナー画像が形成される。
【0235】
また、感光体1への露光と同期して、転写紙51が、現像器33よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる転写帯電器34と感光体1との間に、搬送手段によって矢符42方向から供給される。
【0236】
感光体1と転写帯電器34との間に転写紙51が供給されると、転写帯電器34はトナーと逆極性の電荷を転写紙51に与える。これによって、感光体1の外周面43に形成されたトナー画像が、転写紙51上に転写される。
【0237】
トナー画像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧される。これによって、転写紙51上のトナー画像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
【0238】
一方、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面43上に残留するトナーは、転写帯電器34よりもさらに感光体1の回転方向下流側であって帯電器32よりも回転方向上流側に設けられるクリーナ36のクリーニングブレード36aによって感光体1の外周面43から剥離され、回収用ケーシング36b内に回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の外周面43の電荷は、除電器によって除去され、感光体1の外周面43上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転され、再度感光体1の帯電から始まる一連の動作が繰返される。以上のようにして、連続的に画像が形成される。
【0239】
画像形成装置100に備わる感光体1は、前述のように、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂および前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層14を有するので、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有し、また耐久性に優れ、低温環境下または高速の電子写真プロセスで用いられた場合にもそれらの特性が低下しない。したがって、各種の環境下で長期に渡って高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い画像形成装置を得ることができる。また、感光体1は光暴露によっても特性の低下することがないので、メンテナンス時などに感光体が光に曝されることに起因する画質の低下を防ぎ、画像形成装置の信頼性を向上させることができる。
【0240】
以上に述べたように、本実施形態の画像形成装置100は、実施の第1形態の電子写真感光体1を備えるけれども、これに限定されることなく、実施の第2形態の電子写真感光体2を備えてもよい。
【0241】
また、帯電器32は、接触式の帯電手段であるけれども、これに限定されることなく、コロナ帯電方式などの非接触式の帯電手段であってもよい。
【0242】
【実施例】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するけれども、本発明はこれに限定されるものではない。
【0243】
[製造例]
(製造例1)例示化合物No.1の製造
(製造例1−1)エナミン中間体の製造
トルエン100mLに、下記構造式(14)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)と、下記構造式(15)で示されるジフェニルアセトアルデヒド20.6g(1.05当量)と、DL−10−カンファースルホン酸0.23g(0.01当量)とを加えて加熱し、副生した水をトルエンと共沸させて系外に取除きながら、6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を10分の1(1/10)程度に濃縮し、激しく撹拌されているヘキサン100mL中に徐々に滴下し、結晶を生成させた。生成した結晶を濾別し、冷エタノールで洗浄することによって、淡黄色粉末状化合物36.2gを得た。
【0244】
【化23】
Figure 0003980499
【0245】
【化24】
Figure 0003980499
【0246】
得られた化合物を液体クロマトグラフィー−質量分析法(Liquid
Chromatography−Mass Spectrometry;略称:LC−MS)で分析した結果、下記構造式(16)で示されるエナミン中間体(分子量の計算値:411.20)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが412.5に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(16)で示されるエナミン中間体であることが判った(収率:88%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン中間体の純度は99.5%であることが判った。
【0247】
【化25】
Figure 0003980499
【0248】
以上のように、2級アミン化合物である前記構造式(14)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミンと、アルデヒド化合物である前記構造式(15)で示されるジフェニルアセトアルデヒドとの脱水縮合反応を行うことによって、前記構造式(16)で示されるエナミン中間体を得ることができた。
【0249】
(製造例1−2)エナミン−アルデヒド中間体の製造
無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mL中に、氷冷下、オキシ塩化リン9.2g(1.2当量)を徐々に加え、約30分間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、製造例1−1で得られた前記構造式(16)で示されるエナミン中間体20.6g(1.0当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を80℃まで上げ、80℃を保つように加熱しながら3時間攪拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷やした4規定(4N)−水酸化ナトリウム水溶液800mL中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿を濾別し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶媒で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物20.4gを得た。
【0250】
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、下記構造式(17)で示されるエナミン−アルデヒド中間体(分子量の計算値:439.19)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが440.5に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(17)で示されるエナミン−アルデヒド中間体であることが判った(収率:93%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン−アルデヒド中間体の純度は99.7%であることが判った。
【0251】
【化26】
Figure 0003980499
【0252】
以上のように、前記構造式(16)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うことによって、前記構造式(17)で示されるエナミン−アルデヒド中間体を得ることができた。
【0253】
(製造例1−3)例示化合物No.1の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(17)で示されるエナミン−アルデヒド中間体8.8g(1.0当量)と、下記構造式(18)で示されるジエチルシンナミルホスホネート6.1g(1.2当量)とを、無水DMF80mLに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド2.8g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶10.1gを得た。
【0254】
【化27】
Figure 0003980499
【0255】
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物(分子量の計算値:539.26)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが540.5に観測された。
【0256】
また、得られた結晶の重クロロホルム(化学式:CDCl)中における核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;略称:NMR)スペクトルを測定したところ、例示化合物No.1のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。図4は、製造例1−3の生成物のH−NMRスペクトルであり、図5は、図4に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。図6は、製造例1−3の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルであり、図7は、図6に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。図8は、製造例1−3の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルであり、図9は、図8に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。なお、図4〜図9において、横軸は化学シフト値δ(ppm)を示す。また図4および図5において、シグナルと横軸との間に記載されている値は、図4の参照符500で示されるシグナルの積分値を3としたときの各シグナルの相対的な積分値である。
【0257】
LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた結晶は、例示化合物No.1のエナミン化合物であることが判った(収率:94%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.1のエナミン化合物の純度は99.8%であることが判った。
【0258】
以上のように、前記構造式(17)で示されるエナミン−アルデヒド中間体と、Wittig試薬である前記構造式(18)で示されるジエチルシンナミルホスホネートとのWittig−Horner反応を行うことによって、表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物を得ることができた。
【0259】
(製造例2)例示化合物No.61の製造
前記構造式(14)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)に代えて、N−(p−メトキシフェニル)−α−ナフチルアミン4.9g(1.0当量)を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、脱水縮合反応によるエナミン中間体の製造(収率:94%)およびビルスマイヤー反応によるエナミン−アルデヒド中間体の製造(収率:85%)を行い、さらにWittig−Horner反応を行うことによって、黄色粉末状化合物7.9gを得た。なお、各反応において使用した試薬と基質との当量関係は、製造例1で使用した試薬と基質との当量関係と同様である。
【0260】
得られた化合物をLC−MSで分析した結果、目的とする表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物(分子量の計算値:555.26)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが556.7に観測された。
【0261】
また、得られた化合物の重クロロホルム(CDCl)中におけるNMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.61のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。図10は、製造例2の生成物のH−NMRスペクトルであり、図11は、図10に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。図12は、製造例2の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルであり、図13は、図12に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。図14は、製造例2の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルであり、図15は、図14に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。なお、図10〜図15において、横軸は化学シフト値δ(ppm)を示す。また図10および図11において、シグナルと横軸との間に記載されている値は、図10の参照符501で示されるシグナルの積分値を3としたときの各シグナルの相対的な積分値である。
【0262】
LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた化合物は、例示化合物No.61のエナミン化合物であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.61のエナミン化合物の純度は99.0%であることが判った。
【0263】
以上のように、脱水縮合反応、ビルスマイヤー反応およびWittig−Horner反応の3段階の反応を行うことによって、3段階収率73.5%で、表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物を得ることができた。
【0264】
(製造例3)例示化合物No.46の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(17)で示されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)と、下記構造式(19)で示されるWittig試薬1.53g(1.2当量)とを、無水DMF15mLに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド0.71g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶2.37gを得た。
【0265】
【化28】
Figure 0003980499
【0266】
得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物(分子量の計算値:565.28)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]に相当するピークが566.4に観測されたことから、得られた結晶は、例示化合物No.46のエナミン化合物であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.46のエナミン化合物の純度は、99.8%であることが判った。
【0267】
以上のように、前記構造式(17)で示されるエナミン−アルデヒド中間体と前記構造式(19)で示されるWittig試薬とのWittig−Horner反応を行うことによって、表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物を得ることができた。
【0268】
(比較製造例1)下記構造式(20)で示される化合物の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(17)で示されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)を無水THF15mLに溶解させ、その溶液中に、アリルブロマイドと金属マグネシウムとから調製したグリニヤール試薬であるアリルマグネシウムブロマイドのTHF溶液(モル濃度:1.0mol/L)5.23mL(1.15当量)を0℃で徐々に加えた。0℃で0.5時間撹拌した後、薄層クロマトグラフィーによって反応の進行状況を確認したところ、明確な反応生成物は確認できず、複数の生成物が確認された。常法により、後処理、抽出、濃縮を行った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、反応混合物の分離、精製を行った。
【0269】
しかしながら、目的とする下記構造式(20)で示される化合物を得ることはできなかった。
【0270】
【化29】
Figure 0003980499
【0271】
[実施例]
(実施例1)
酸化アルミニウム(化学式:Al)と二酸化ジルコニウム(化学式:ZrO)とで表面処理が施された樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9重量部と、共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:アミランCM8000)9重量部とを、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、中間層用塗布液を調製した。この中間層用塗布液を塗布槽に満たし、直径65mm、全長334mmのアルミニウム製の円筒状導電性基体11を塗布槽に浸漬した後引上げることによって、膜厚1.0μmの中間層18を導電性基体11の外周面上に形成した。
【0272】
次いで、電荷発生物質12であるオキソチタニウムフタロシアニンとしてCu−Kα特性X線(波長:1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニンの2重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:エスレックBM−S)1重量部と、メチルエチルケトン97重量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散処理し、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層18と同様の浸漬塗布法にて、中間層18の外周面上に塗布することによって、膜厚0.4μmの電荷発生層15を中間層18の外周面上に形成した。
【0273】
次いで、電荷輸送物質13である、表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物10重量部と、バインダ樹脂17である、表33に示す構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)10重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製:KF−96)0.01重量部とを、テトラヒドロフラン80重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した中間層18と同様の浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層15の外周面上に塗布した後、130℃にて1時間乾燥させ、膜厚30μmの電荷輸送層16を形成した。
【0274】
以上のようにして、本発明の要件を満足する図2に示す構成の電子写真感光体を作製した。
【0275】
(実施例2〜5)
電荷輸送層16のバインダ樹脂17である、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂の量を、12重量部、18重量部、30重量部または40重量部とする以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する4種類の電子写真感光体を作製した。ただし、各電荷輸送層用塗布液中のテトラヒドロフランの量は、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度が20重量%になるようにそれぞれ調整した。
【0276】
なお、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂の量を40重量部とした実施例5では、電荷輸送層用塗布液の粘度が非常に高くなった。
【0277】
(実施例6〜10)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物を用い、電荷輸送層16のバインダ樹脂17に、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂に代えて、表33に示す構造式(12−5)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)の10重量部、12重量部、18重量部、30重量部または40重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する5種類の電子写真感光体を作製した。ただし、各電荷輸送層用塗布液中のテトラヒドロフランの量は、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度が20重量%になるようにそれぞれ調整した。
【0278】
なお、構造式(12−5)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂の量を40重量部とした実施例10では、電荷輸送層用塗布液の粘度が非常に高くなった。
【0279】
(実施例11)
電荷輸送層16のバインダ樹脂17に、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂に代えて、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位と下記構造式(21)で示されるシロキサン構造を含む構造単位とを有する共重合ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)の18重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足する電子写真感光体を作製した。ただし、電荷輸送層用塗布液中のテトラヒドロフランの量は、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度が20重量%になるように調整した。
【0280】
【化30】
Figure 0003980499
【0281】
(比較例1〜5)
電荷輸送層16のバインダ樹脂17に、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂に代えて、下記構造式(A−1)で示されるビスフェノールAに由来するジオール成分を含む構造単位を有するビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)の10重量部、12重量部、18重量部、30重量部または40重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない5種類の電子写真感光体を作製した。
【0282】
しかしながら、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の量を30重量部とした比較例4および40重量部とした比較例5では、電荷輸送層用塗布液を調製する際、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の一部が溶解せず電荷輸送層用塗布液がゲル化し、感光体を作製することができなかった。
【0283】
また、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の量を10重量部とした比較例1、12重量部とした比較例2および18重量部とした比較例3では、感光体を作製することはできたけれども、用いた電荷輸送層用塗布液は調製後数日でゲル化した。
【0284】
【化31】
Figure 0003980499
【0285】
(比較例6)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(22)で示される比較化合物Aを用い、電荷輸送層16のバインダ樹脂17である、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂の量を18重量部とする以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。ただし、電荷輸送層用塗布液中のテトラヒドロフランの量は、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度が20重量%になるように調整した。
【0286】
【化32】
Figure 0003980499
【0287】
(比較例7)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(23)で示される比較化合物Bを用い、電荷輸送層16のバインダ樹脂17である、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂の量を18重量部とする以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。ただし、電荷輸送層用塗布液中のテトラヒドロフランの量は、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度が20重量%になるように調整した。
【0288】
【化33】
Figure 0003980499
【0289】
(比較例8)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、下記構造式(24)で示されるエナミン化合物(以下、「比較化合物C」と称する)を用い、電荷輸送層16のバインダ樹脂17である、構造式(12−3)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂の量を18重量部とする以外は、実施例1と同様にして、本発明の要件を満足しない電子写真感光体を作製した。ただし、電荷輸送層用塗布液中のテトラヒドロフランの量は、電荷輸送層用塗布液の固形分濃度が20重量%になるように調整した。
【0290】
【化34】
Figure 0003980499
【0291】
[評価1]
以上の実施例1〜11および比較例1〜3,6〜8で作製した各電子写真感光体について、耐刷性および電気特性の安定性を評価した。評価は以下のように行った。
【0292】
(耐刷性)
実施例1〜11および比較例1〜3,6〜8で作製した各電子写真感光体を、複写スピードを1分間あたり日本工業規格(JIS)A4判用紙50枚としたデジタル複写機(シャープ株式会社製:AR−S507)にそれぞれ搭載した。画像形成を300,000枚行った後、感光層の膜厚d1を測定し、この値と作製時の感光層の膜厚d0との差を膜減り量Δd(=d0−d1)として求め、耐刷性の評価指標とした。膜減り量Δdが10μm以下である場合を優良(◎)と評価し、膜減り量Δdが10μmを越え16μm以下である場合を良(○)と評価し、膜減り量Δdが16μmを越え20μm以下である場合を可(△)と評価し、膜減り量Δdが20μmを越える場合を不良(×)と評価した。なお、比較例1の感光体を搭載した複写機では、感光層の膜減りが大きすぎ、規定枚数(300,000枚)まで画像形成を行うことができなかったので、不良(×)と評価した。
【0293】
(電気特性の安定性)
実施例1〜11および比較例1〜3,6〜8で作製した各電子写真感光体を、画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように内部に表面電位計(トレック社製:model347)を設けたデジタル複写機(シャープ株式会社製:AR−S507)にそれぞれ搭載し、温度22℃、相対湿度(Relative
Humidity)65%(22℃/65%RH)の常温/常湿環境下(以下、「N/N環境下」と称する)において、感光体にマイナス(−)6kVの電圧を印加することによって感光体表面を帯電させ、帯電直後の感光体の表面電位を帯電電位V(V)として測定した。次に、帯電された感光体表面に対してレーザ光を用いて露光を施し、露光直後の感光体の表面電位を露光後電位V(V)として測定した。
【0294】
また、温度5℃、相対湿度20%(5℃/20%RH)の低温/低湿環境下(以下、「L/L環境下」と称する)において、N/N環境下と同様にして、レーザ光によって露光を施した直後の感光体の表面電位である露光後電位Vを測定した。
【0295】
N/N環境下で測定した露光後電位VをV(1)とし、L/L環境下で測定した露光後電位VをV(2)としたときのV(1)の絶対値とV(2)の絶対値との差を電位変動ΔV(=|V(2)|−|V(1)|)として求め、電気特性の安定性の評価指標とした。電位変動ΔVは、その値が大きい程、N/N環境下の露光後電位V(1)と基準電位との電位差に比べ、L/L環境下の露光後電位V(2)と基準電位との電位差が大きくなっていること、すなわちN/N環境下に比べ、L/L環境下の光応答性が低下していることを示す。したがって、電位変動ΔVの値が110V未満である場合を良(○)と評価し、電位変動ΔVの値が110V以上130V未満である場合を可(△)と評価し、電位変動ΔVの値が130V以上である場合を不良(×)と評価した。
【0296】
[評価2]
実施例1〜11および比較例1〜8でそれぞれ用いた電荷輸送層用塗布液の状態を評価し、電荷輸送層用塗布液の経時安定性の評価指標とした。電荷輸送層用塗布液が浸漬塗布に適した粘度を有し、かつ調製から数日経過してもゲル化しない場合を良(○)と評価し、電荷輸送層用塗布液が高い粘度を有するけれどもゲル化しない場合を可(△)と評価し、電荷輸送層用塗布液がゲル化する場合を不良(×)と評価した。
【0297】
これらの評価結果を表37に示す。なお、表37では、バインダ樹脂17に用いられるポリカーボネート樹脂を、それが有する構造単位を示す構造式の番号で表す。
【0298】
【表37】
Figure 0003980499
【0299】
実施例1〜11と比較例1〜5との比較から、溶剤に非ハロゲン系有機溶剤であるテトラヒドロフランを用いた場合、電荷輸送層16のバインダ樹脂17にビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を用いた比較例1〜5では電荷輸送層用塗布液がゲル化するけれども、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を用いた実施例1〜11では、電荷輸送層用塗布液はゲル化せず安定であることが判った。
【0300】
また、実施例2,7と比較例2との比較および実施例3,8と比較例3との比較から、電荷輸送層16のバインダ樹脂17に非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を用いた実施例2,3,7,8の感光体の方が、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を用いた比較例2,3の感光体に比べ、感光層の膜減り量Δdが少なく、耐刷性に優れることが判った。
【0301】
また、実施例3,8,11と比較例6〜8との比較から、電荷輸送物質13に前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用いた実施例3,8,11の感光体は、比較化合物Aを用いた比較例6の感光体、比較化合物Bを用いた比較例7の感光体および比較化合物Cを用いた比較例8の感光体と異なり、電荷輸送層16における電荷輸送物質13(A)とバインダ樹脂17(B)との比率A/Bを重量比で10/18とし、高い比率でバインダ樹脂17を加えた場合であっても、N/N環境下の露光後電位Vと基準電位との電位差が小さく、光応答性に優れることが判った。また電位変動ΔVの値が小さく、L/L環境下においても充分な光応答性を有することが判った。
【0302】
また、実施例1と実施例2〜5との比較および実施例6と実施例7〜10との比較から、前記比率A/Bが重量比で10/10であり、10/12を越えバインダ樹脂の比率が低い実施例1,6の感光体は、前記比率A/Bが10/12以下である実施例2〜5および実施例7〜10の感光体に比べ、膜減り量Δdが大きく、耐刷性に劣ることが判った。
【0303】
また、実施例1〜4と実施例5との比較および実施例6〜9と実施例10との比較から、前記比率A/Bが10/40であり、10/30未満であってバインダ樹脂の比率が高い実施例5,10の感光体は、前記比率A/Bが10/30以上である実施例1〜4および実施例6〜9の感光体に比べ、膜減り量Δdが小さく耐刷性に非常に優れるけれども、電位変動ΔVの値が大きく、L/L環境下では光応答性に劣ることが判った。また、実施例5,10では、電荷輸送層用塗布液の粘度が非常に高いので生産性が低く、形成された電荷輸送層16の均一性が悪くなり、これらの感光体を搭載した複写機によって形成された画像には、局所的な膜厚不均一に起因する画像不良が多く発生していた。
【0304】
また、実施例11と実施例3との比較から、電荷輸送層16のバインダ樹脂17に、非対称ジオール成分とシロキサン構造とを有するポリカーボネート樹脂を用いた実施例11の感光体は、シロキサン構造を有しないポリカーボネート樹脂を用いた実施例3の感光体に比べ、膜減り量Δdが少なく、耐刷性に優れることが判った。また、実施例11の感光体の表面は、300,000枚の画像形成後も傷が少なく、実施例11の感光体を搭載した複写機によって形成された画像には、クリーニング不良による画像欠陥は見られなかった。
【0305】
以上のように、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物と非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂とを組合せて感光層に含有させることによって、帯電電位が高く、高感度で充分な光応答性を有し、また耐久性に優れ、低温環境下で用いられた場合であってもそれらの特性が低下せず、高い信頼性を有するとともに、生産性が良好な電子写真感光体を得ることができた。また、光応答性を低下させることなく、電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率A/Bを重量比で10/12〜10/30とし、感光層の耐刷性を向上させることができた。
【0306】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、電子写真感光体の導電性基体上に設けられる感光層は、機械的強度に優れ、かつ溶剤がハロゲン系有機溶剤であるか、非ハロゲン系有機溶剤であるかに関わらず、溶剤に対して高い溶解性を示す非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂と、特定の構造を有する電荷移動度の高いエナミン化合物とを含有するので、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有し、また耐久性に優れ、低温環境下もしくは高速の電子写真プロセスで用いられた場合または光に曝された場合であってもそれらの特性が低下せず、高い信頼性を有するとともに、生産性が良好な電子写真感光体を提供することができる。
【0307】
また本発明によれば、感光層は、特に高い電荷移動度を有するとともに、合成が比較的容易で収率が高く、安価に製造することのできる特定の構造を有するエナミン化合物を含有するので、さらに高い光応答性を示す電子写真感光体を低い製造原価で製造することができる。
【0308】
また本発明によれば、感光層は、特定の非対称ジオール成分を含む構造単位を有する機械的強度の特に高いポリカーボネート樹脂を含有するので、耐久性に特に優れ、感光層表面における傷の発生が少なく、感光層の膜減り量の小さい電子写真感光体を得ることができる。
【0309】
また本発明によれば、感光層は、非対称ジオール成分とシロキサン構造とを有するポリカーボネート樹脂を含有するので、感光層の表面摩擦係数が低減されて滑り性が向上し、転写効率やクリーニング性が改善されて良好な画像を得ることができ、また感光層表面に傷が付くことが少なく、鳴きと呼ばれる異音も発生しにくい。
【0310】
また本発明によれば、感光層は、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有し、かつ赤外線レーザから照射されるレーザ光の波長域に最大吸収ピークを有するオキソチタニウムフタロシアニンをさらに含有するので、高感度かつ高解像度の電子写真感光体を得ることができ、赤外線レーザを露光光源とするデジタルの画像形成装置において、高品質の画像を提供することができる。
【0311】
また本発明によれば、感光層は、少なくとも、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、特定の構造を有する電荷移動度の高いエナミン化合物を含む電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造から成り、電荷発生層および電荷輸送層のうちの少なくとも電荷輸送層は、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含有するので、より高感度で、さらに繰返し使用時の安定性も増した耐久性の高い電子写真感光体を得ることができるとともに、電子写真感光体の生産性を向上させることができる。
【0312】
また本発明によれば、光応答性を低下させることなく、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含むバインダ樹脂を電荷輸送層に高濃度に含有させることができるので、電荷輸送層の耐刷性を向上させ、感光層の摩耗に起因する特性変化を抑えることができ、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。
【0313】
また本発明によれば、画像形成装置に備わる電子写真感光体は、帯電電位および電荷保持能が高く、高感度で充分な光応答性を有し、また耐久性に優れ、低温環境下もしくは高速の電子写真プロセスで用いられた場合または光に曝された場合であってもそれらの特性が低下しないので、各種の環境下で長期に渡って高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い画像形成装置を得ることができるとともに、メンテナンス時などに電子写真感光体が光に曝されることに起因する画質の低下を防ぎ、画像形成装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す斜視図である。図1(b)は、電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。
【図2】本発明の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す概略断面図である。
【図3】図3は、画像形成装置100の構成を簡略化して示す側面配置図である。
【図4】製造例1−3の生成物のH−NMRスペクトルである。
【図5】図4に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。
【図6】製造例1−3の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルである。
【図7】図6に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図8】製造例1−3の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルである。
【図9】図8に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図10】製造例2の生成物のH−NMRスペクトルである。
【図11】図10に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。
【図12】製造例2の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルである。
【図13】図12に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【図14】製造例2の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルである。
【図15】図14に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。
【符号の説明】
1,2 電子写真感光体
11 導電性基体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質
14 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 バインダ樹脂
18 中間層
31 光
32 帯電器
33 現像器
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写帯電器
35 定着器
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーナ
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
51 転写紙
100 画像形成装置

Claims (8)

  1. 導電性材料から成る導電性基体と、
    前記導電性基体上に設けられ、非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂および下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有する感光層とを有することを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 0003980499
    (式中、ArおよびArは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Arは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ArおよびArは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、ArおよびArが共に水素原子になることはない。ArおよびArは、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R,RおよびRは、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のRは同一でも異なってもよく、複数のRは同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Arは置換基を有してもよい複素環基を示す。)
  2. 前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
    Figure 0003980499
    (式中、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar,Ar,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)
  3. 前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、下記一般式(II)で示される非対称ジオール成分を含む構造単位を有するポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の電子写真感光体。
    Figure 0003980499
    (式中、R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17およびR18は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいアルコキシ基を示す。R19およびR20は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。ただし、R19およびR20は、互いに異なる基であるか、または互いに結合して環構造を形成する。)
  4. 前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂は、さらにシロキサン構造を有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  5. 前記感光層は、さらにオキソチタニウムフタロシアニンを含有することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  6. 前記感光層は、少なくとも、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造から成り、
    前記電荷輸送物質は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含み、
    前記電荷発生層および前記電荷輸送層のうちの少なくとも前記電荷輸送層は、前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  7. 前記感光層は、前記電荷発生層と、前記非対称ジオール成分を有するポリカーボネート樹脂を含むバインダ樹脂を含有する前記電荷輸送層とが、前記導電性基体から外方に向かってこの順序で積層されて成る積層構造を有し、
    前記電荷輸送層において、前記電荷輸送物質(A)と前記バインダ樹脂(B)との比率A/Bは、重量比で10/12〜10/30であることを特徴とする請求項6記載の電子写真感光体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、
    露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
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